説明

ポリエステル化合物およびそれを用いたレジスト材料

【課題】 高いエッチング耐性、高い溶剤溶解性、基板への高い密着性を併せ持ったポリマー主鎖に脂肪族環状構造を有する新規なポリエステル化合物、それを用いたレジスト材料、及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 ジオール化合物とビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸無水物の重縮合反応から誘導される新規な主鎖環状型ポリエステル化合物、および、この主鎖環状型ポリエステル化合物を用いることによるレジスト材料及びそれを用いた微細パターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外波長領域のレジスト材料及びパターン形成方法に関しており、より具体的にはポリマー主鎖に脂肪族環状構造を有し、かつカルボン酸エステルまたはカルボン酸を含有する新規な高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
193nmリソグラフィ技術による90nm微細加工量産がすでに開始されている。今後、65nm、45nm、32nmと更なるデバイスの微細化、高密度化、高集積化が求められており、その微細加工へ向けたプロセス、および材料開発が急速に進展している。解像度65nm以下の微細化へ向けた問題点として、レジストのエッチング耐性、パターンのエッジが波打つラインエッジラフネス(LER)などが挙げられており、この課題を解決するために盛んに開発が行われている。エッチング耐性向上には、樹脂中に環状構造を多く導入することで改善が成されるとの報告例がある。またLERの発生メカニズムについては数多くの研究例が報告されているが未だはっきりとした原因はつかめておらず、現像液に対する溶解度のばらつきや低いエッチング耐性が原因と推測されている。
【0003】
193nmリソグラフィで用いられているレジスト用樹脂の一例として(メタ)アクリル酸エステル系の樹脂が用いられており、そこではエッチング耐性を向上させるためにエステル部位にアダンチル基、ノルボルネル基やコレステロール誘導体などの多環式構造を有する化合物を導入した報告例が発表されている。しかしながら、エッチング耐性を向上させるために、このような多環式構造を樹脂中に多く導入すると、溶剤溶解性、基盤との密着性、真空紫外領域でのエキシマレーザーに対する透過率などのレジスト材料に必要な他の物性低下が生じる。また、例え多環式構造を多く導入したとしても、254nmリソグラフィで用いられているヒドロキシスチレン系樹脂に比べエッチング耐性は悪く、更なるエッチング耐性の向上が求められている。一方、(メタ)アクリル酸エステル系の樹脂とは別のアプローチとしてポリマー主鎖に環状構造を有する樹脂についても検討が成されている。ポリマー主鎖にシクロペンタン環、シクロヘキサン環を含有させ、エッチング耐性の向上を図った例もあるが、溶剤溶解性、透過率、解像のコントラストなどの他物性とのバランスを図った場合、エッチング耐性の改善は成されていない。
【0004】
以上のようにレジスト材料として充分なエッチング耐性を有し、かつ透過率、密着性、溶剤溶解性などの他の必要物性を併せ持った新規な材料の創出が望まれていた。
【非特許文献1】Takuya Hagiwara, Yasuhide Kawaguchi, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 557(2003)
【非特許文献2】Francis Houlihan, Will Conley, Larry Rhodes, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 581(2003)
【非特許文献3】Shinichi Kanna, Sanjay Malik, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 16, 595(2003)
【非特許文献4】Takashi Sasaki, Shigeo Irie, Toshiro Itani, et al, J. Photopolym. Sci. Technol., 17, 639(2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高いエッチング耐性、高い溶剤溶解性、基板への高い密着性を併せ持ったレジスト材料として好適な新規な高分子化合物を提供し、さらにはそれを用いたパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、主鎖にノルボルネン環などの多環構造を有し、かつアルカリ水溶液に可溶な官能基であるカルボン酸基を樹脂の最小の繰り返し単位構造に2つ含有する高分子化合物が前述課題を解決するのに好適であることを見出した。すなわち当該高分子化合物、例えばポリエステル化合物の場合、主鎖環状構造によって高いエッチング耐性を有し、更にはArF波長で使用する場合は、芳香族基を含有させないことでArFの193nm波長域で高い透明性を発現することを見出した。またカルボン酸エステルの保護基を適切に選択することにより、基板への高い密着性及び優れた成膜性の発現や望ましい溶剤溶解性が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
1. 一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R、Rは、異なっていても同一であってもよく、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であってフッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基またはシリル基を含有しても良い。Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する2価の炭化水素基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、フッ素アルコール基を含んでもよい。Rは単結合、メチレン、エチレン、又は酸素原子である。)で表される構造の繰り返しからなる高分子化合物である。
2. 一般式(2)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R、Rは、一般式(1)と同じ。またl、mは、0〜1で表される整数である。)で表される構造の繰り返しからなる上記1に記載の高分子化合物である。
3. 一般式(3)
【0012】
【化3】

【0013】
(式中、R、R、は一般式(1)と同じ。Rは、水素原子、または炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基を含有しても良い。またl、mは、0〜1で表される整数であり、nは0〜2で表される整数である。)で表される構造の繰り返しからなる上記1に記載の高分子化合物である。
4. R、又はRの少なくとも片方に一般式(4)
【0014】
【化4】

【0015】
(式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。)のヘキサフルオロカルビノール基含有の置換基を有する上記1乃至3のいずれかにに記載の高分子化合物である。
5.R、又はRの少なくとも片方に一般式(5)
【0016】
【化5】

【0017】
(式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。)のトリフルオロメタンスルホニルアミド基を有する上記1乃至3のいずれかにに記載の高分子化合物である。
6.R、又はRの少なくとも片方にラクトン基を有する上記1乃至3のいずれかにに記載の高分子化合物である。
7.R、R、Rの一部に酸不安定性基を有する上記1乃至6のいずれかに記載の高分子化合物である。
8. 1乃至7のいずれかに記載の高分子化合物を有機溶剤に溶解したコーティング組成物である。
9. 1乃至7のいずれかに記載の高分子化合物を用いたフォトレジストである。
10.1乃至7のいずれかに記載の高分子化合物をフォトレジスト上に塗布した液浸リソグラフィー用のトップコートである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、新規な主鎖脂肪族環状型ポリエステル化合物及びそれを用いたレジスト材料、及びそれを用いたパターン形成方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一般式(1)に示される化合物について説明する。
【0020】
【化6】

【0021】
一般式(1)の合成方法は公知の方法を用いて行えばよく特に限定されないが、例示するならば、下記反応式[6]のように化合物(7)のビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸無水物と一般式(8)
【0022】
【化7】

【0023】
(式中、Rは、炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する2価の炭化水素基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、フッ素アルコール基を含んでもよい。)で表されるジオール化合物の重縮合反応により相当するカルボン酸化合物を合成後、カルボン酸部位をR、Rで保護する保護化反応を行うことで誘導される。
【0024】
【化8】

【0025】
或いは下記反応式[9]に示すように一般あらかじめ化合物(7)から誘導した一般式(10)のジカルボン酸化合物(式中、R、Rは一般式(1)と同じ)と一般式(8)のジオール化合物や一般式(11)のジイソシアネート化合物や一般式(12)のジエポキシ化合物との重縮合反応などから誘導される(但し、一般式(11)、一般式(12)中のRは一般式(8)と同じ)。
【0026】
【化9】

【0027】
反応式[6]および[9]、共に同様の一般式(1)を与えるが、反応式[9]では重縮合反応の条件によっては重合反応中にカルボン酸の保護基であるR或いはRの脱離反応が生じたり、またカルボン酸部位と重縮合反応が進行せずにR、或いはRのエステル部位との重縮合反応が進行する場合があり、反応式[6]に比べ反応系内はより複雑となる。よってここではより反応系内がシンプルである反応式[6]について詳細に説明する。
【0028】
一般式(1)は、一般式(8)のジオール化合物と式(7)のジカルボン酸無水物とを混合し重縮合体を得た後、生じる2つのカルボン酸基を目的に応じた種々のエステル基へ変換することにより得られる。
【0029】
一般式(8)中のRは、炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する2価の炭化水素基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、フッ素アルコール基を含んでもよい。すなわち、一部または全ての水素原子がフッ素原子に置換されていても良く、水酸基やカルボニル基やエーテル構造などのように酸素原子を含有していても使用することが可能である。
【0030】
上記置換基としては炭素数1〜40の炭化水素基が使用できるが、製造時のハンドリングの容易さ、原料調達の容易さの観点から炭素数2〜15が好適に採用される。好適な構造を例示するならば、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、2,2,3,3−テトラフルオロ−n−ブチル、シクロブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ−n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ−n−オクチル、シクロオクテル、n−ノナニル、デカン、ノルボルニル、ノルボルネン−2,3−ジメチル、4,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル、2,5−ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキシル、ベンゼン環などその構造は制限なく使用することができる。特にエッチング耐性を更に向上させる目的で脂環式炭化水素、芳香環等、環状構造化合物を使用することが好ましい。
【0031】
また水酸基を含有させることで重縮合後の変換反応部位を更に導入することができ、透明性、密着性、有機溶剤やアルカリ水溶液への溶解性、高いガラス転移温度、ハンダ耐熱性を目的とした架橋反応性、光酸発生剤によるポジ型感光性やエッチング耐性などの特徴を付与させる自由度を広げることが可能となる。
【0032】
続いて、一般式(8)と化合物(7)の重合反応について説明する。重縮合反応に用いる反応容器は特に限定されない。また、重縮合反応においては、重合溶媒を用いてもよい。重合溶媒としては、水やアルコール類などの縮合反応を阻害するような溶媒の使用は好ましくない。また不純物として水分が多く含有している場合は重合性に影響を及ぼすため脱水溶媒を使用することが好ましい。代表的なものとして酢酸エチル、酢酸n−ブチルなどのエステル系、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの高極性溶媒などがある。またエーテル系、環状エーテル系、フロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。
【0033】
重縮合反応の反応温度は適宜選択されるが、−50〜300℃が好ましく、特に−10〜150℃が好ましい。反応温度が低すぎる場合は反応の進行が遅くなるので好ましくなく、反応温度が高すぎる場合は副反応生成物が生成するため好ましくない。
【0034】
重縮合反応を促進させる目的で種々の添加剤を加えても良い。添加剤としては特に限定されるものではないが、例として硫酸、塩酸、フッ酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのプロトン酸化合物や、三フッ化ホウ素、四塩化チタン、四塩化すず、塩化亜鉛、ジンクトリフラート、スカンジウムトリフラート、ランタノイドトリフラートなどのルイス酸化合物が使用できる。しかしながら、レジスト材料分野では金属不純物のコンタミネーションは材料の欠陥原因となり致命的であることから、プロトン酸化合物を使用することがより好ましい。以上のような酸性化合物は、触媒量でも重縮合反応は加速されることから添加量は特に制限されないが、原料ジオール(8)に対して、0.001mol%〜1,000mol%が好ましい。後の酸除去のための洗浄の観点から0.1mol%〜50mol%がより好ましい。
【0035】
また塩基性化合物を添加することによっても同様に重縮合反応を加速させることが可能である。無機化合物、有機化合物共に制限なく使用できるが、例として水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、ピリジン、2,6−ルチジン、ジイソプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリオクチルアミンなどが挙げられる。金属不純物のコンタミネーションの観点から、有機系塩基化合物を使用することがより好ましい。添加量は特に制限されないが、原料ジオール(8)に対して、10mol%〜2,000mol%が好ましい。後の塩基の洗浄の観点から50mol%〜400mol%がより好ましい。
【0036】
次いで重合度の制御方法について説明する。本発明の高分子化合物は酸二無水物またはジカルボン酸とジオールなどの両者を付加反応または縮合させることで得られるが、重合度は温度や攪拌などの外的条件で制御できるばかりでなく、重合を任意のタイミングで止めることも可能である。すなわち、重合を止めたい場合、または低分子状態で重合が止まるように設計するには、モノカルボン酸化合物、モノアミン、モノオールなどの一官能性化合物を停止剤として添加する方法が好適である。この停止方法を採用する場合、ポリマー末端に任意の機能構造、例えばフルオロカルビノール基、スルホン酸基、不飽和オレフィン基、チオール基、シリコン含有基、アミノ基やその他の官能基を導入することも可能である。
【0037】
次に、一般式(1)乃至(3)中のR、R、Rについて説明する。ここで使用できるR、R、Rは、異なっていても同一であってもよく、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基およびその複合体であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基またはシリル基を含有しても良い。
【0038】
また本発明のR、R、Rは酸不安定基、密着性基、架橋反応基などを用いることが出来る。すなわち、アルコキシカルボニル基、アセタール基、アシル基、シリル基、イソシアネート基などを使用することもできる。
【0039】
これら置換基の構造の一例を一般式で表すならば、アルコキシカルボニル基としては、−Ra−C(=O)O−Rb(式中、Rは単結合、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。Rは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基である。)を用いることができる。
【0040】
アセタール基としては−Rc−C(−Rd)(−Re)−ORf(式中、Rは単結合、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。R,Rは水素原子、直鎖状又は分枝状のアルキル基、直鎖状又は分枝状のアルコキシ基、直鎖状又は分枝状のアルコキシアルキル基、直鎖状又は分枝状のアルケニル基、又はアリール基である。Rは直鎖状又は分枝状のアルキル基、直鎖状又は分枝状のアルコキシアルキル基、直鎖状又は分枝状のアルケニル基、又はアリール基であり、これら基は鎖中にカルボニル基を含んでいてもよい。あるいは、RはRと結合して環を形成していてもよい)で表されるものを用いることができる。
【0041】
アシル基としては、R−C(=O)−R(式中、Rは単結合、又は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基又はフッ素化アルキレン基である。Rは炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基又はフッ素化アルキル基である。)で表されるものを用いることができる。
【0042】
すなわちR、R、Rに使用できる官能基、または炭化水素基を具体的に挙げると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、sec−ペンチル基,ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロへキシル基、1−メチルシクロへキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、ノルボルネル基、2−メチルノルボルネル基、アダマンチル基、1−メチルアダマンチル基、1−エチルアダマンチル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、エチニル基、フェニル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基などが例示でき、上記官能基の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものでもよい。
【0043】
また、酸素原子を含むものとしてアルコキシカルボニル基、アセタール基、アシル基等を挙げることができ、アルコキシカルボニル基としてはtert−ブトキシカルボニル基、tert−アミルオキシカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基等を例示できる。アセタール基としては、メトキシメチル基、メトキシエトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基、シクロヘキシルオキシエチル基、ベンジルオキシエチル基、フェネチルオキシエチル基、エトキシプロピル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシイソブチル基の鎖状のエーテルやテトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の環状エーテルが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、バレリル基、ピバロイル基、イソバレリル基、ラウリロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、オキサリル基、マロニル基、スクシニル基、グルタリル基、アジポイル基、ピペロイル基、スベロイル基、アゼラオイル基、セバコイル基、アクリロイル基、プロピオロイル基、メタクリロイル基、クロトノイル基、オレオイル基、マレオイル基、フマロイル基、メサコノイル基、カンホロイル基、ベンゾイル基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、ナフトイル基、トルオイル基、ヒドロアトロポイル基、アトロポイル基、シンナモイル基、フロイル基、テノイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基等を挙げることができる。
【0044】
シリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、エチルジメチルシリル基、メチルジエチルシリル基、トリエチルシリル基、i−プロピルジメチルシリル基、メチルジ−i−プロピルシリル基、トリ−i−プロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリ−t−ブチルシリル基、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。さらに、上記置換基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものを使用することもできる。
【0045】
これら保護基の目的としては、透明性、密着性、有機溶剤やアルカリ水溶液への溶解性、高いガラス転移温度、ハンダ耐熱性を目的とした架橋反応性、光酸発生剤によるポジ型感光性やエッチング耐性などの特徴を付与させることであり使い分けることが可能である。なお、R、R、Rは同一であっても異なっていても良い。
【0046】
また溶剤溶解性をコントロールする目的として、一般式(4)、(5)
【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
に表されるヘキサフルオロカルビノール基やトリフルオロメタンスルホニルアミド基を含有するような化合物が挙げられる。このヘキサフルオロカルビノール基やトリフルオロメタンスルホニルアミド基は、R、R、Rのそれぞれに複数づつ含有させることも可能である。例えばRを複数のヘキサフルオロカルビノールが含有した構造とすることが可能である。
【0050】
ここで使用できるR、Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。すなわち、直鎖構造、分岐構造、環状構造、多環式構造、芳香族基である炭化水素基を用いることができ、一部または全ての水素原子がフッ素原子に置換されていても良い。さらに水酸基やカルボニル基やエーテル構造などのように酸素原子を含有していても使用することが可能である。
【0051】
好ましい構造としては炭素数1〜40の構造が良好であり、製造時のハンドリングの容易さ、原料調達の容易さの観点から炭素数2〜15が好適に採用される。好適な構造を例示するならば、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチル、2,2,3,3−テトラフルオロ−n−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、2−メチルブチル基、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、シクロオクテル、n−ノナニル、デカン、ノルボルニル、2−メチルノルボルニル、2−エチルノルボルニル、ノルボルネン−2,3−ジメチル、ベンゼン環などその構造は制限なく使用することができる。特に溶剤溶解性のコントロールとエッチング耐性を併せ持たせる目的で環状構造化合物を使用することが好ましい。
【0052】
また、RまたはRの少なくとも一方にラクトン構造を有する置換基を用いることが可能である。ラクトン化合物は、環状構造を有するのでエッチング耐性を向上させるばかりでなく、カルボニル基、酸素原子等の親水性部位を併せ持つことより基板密着性の向上にも寄与するため、好ましい置換基の一つである。
【0053】
なおポジ型感光性及び波長300nm以下の遠紫外線、エキシマレーザー、X線、軟X線等の高エネルギー線もしくは電子線の露光後のアルカリ水溶液への溶解性を発現させるためには、酸により脱離する保護基(以下、酸不安定性基)を使用することが望ましく、上記置換基の中から例示するならばtert−ブチル基、1−メチルシクロへキシル基、1−エチルシクロヘキシル基、2−メチルノルボルネル基、1−メチルアダマンチル基、1−エチルアダマンチル基等の3級エステルを形成する保護基、及びアルコキシカルボニル基、アセタール基等が挙げられる。また、その官能基にフッ素原子を持つものは透明性を、環状構造を含むものはエッチング耐性や高ガラス転移点などの特徴をさらに付与させるためで、本発明の応用分野ごとに使い分けることが可能である。
【0054】
これら保護基の導入方法は公知の方法を用いればよく特に制限されない。例えば、塩化チオニル等によりカルボン酸基を酸クロリド基へと変換した後に保護基に対応するアルコール等と反応させて保護基の導入を行う方法や水素化ナトリウム等の塩基を添加後、カルボン酸塩とした後に保護基に対応するハロゲン化物などと反応させて保護基の導入を行う方法、或いはカルボン酸基と保護基に対応する不飽和結合を含有する化合物との付加反応から保護基を形成する方法が挙げられる。
【0055】
反応温度は保護基の電子密度状態、嵩高さなどによる反応性により適宜変更可能であるが、−50〜200℃が好ましく、−10〜100℃がより好ましい。反応温度が低すぎる場合は反応の進行が遅くなるので好ましくなく、反応温度が高すぎる場合は副反応生成物が生成するため好ましくない。
【0056】
また反応溶媒は、用いなくても良いが、反応の均一性、放熱の観点から用いることが好ましい。例として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、ジ−tert−ブチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、トルエン、シクロヘキサンなどの炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などの塩素系、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの高極性溶媒などが挙げられる。またフロン系、芳香族系、などの種々の溶媒を使用することも可能である。これらの溶剤は単独でもあるいは2種類以上を混合しても使用できる。
なお2種類以上の保護基を導入する場合は、同時に保護化反応を行っても逐次的に保護化反応を行っても良い。
【0057】
2種以上の保護基を導入する時、保護化反応の条件が同じ場合は保護化反応を同時に行うことが可能である。またこの時、保護基導入反応は公知の方法を用いれば良く特に限定されない。保護基に対応する化合物の反応仕込み量をコントロールすることで任意の保護化を行うことが可能である。
【0058】
一方、保護化反応の反応条件が異なる場合は、多段階に分けて保護化反応を行わなくてはならない。この時、保護化導入反応は公知の方法を用いれば良く特に限定されないが、2段階目の保護化反応以降に前段階で導入した保護基が分解、或いは変性しないように、酸性、或いは塩基性に対する保護基の安定性を考慮しなくてはならない。保護基の比率は、反応仕込み量をコントロールすることで任意の保護化を行うことが可能となる。
【0059】
本発明の高分子化合物の数平均分子量としては、通常、1,000〜100,000、好ましくは2,000〜50,000の範囲が適切である。
【0060】
本発明によるレジスト材料としては、酸の作用によりアルカリ水溶液に対する溶解性が変化する溶解抑制剤と高分子化合物の双方を含有するもの、又は、高分子化合物に溶解抑制剤が組み込まれたものであり、これらは、特に、ポジ型レジスト材料として好適となり、最近の半導体の微細化に対応した248nmKrF又は193nmArFエキシマレーザー又は157nmに代表される真空紫外領域のF2レーザー用ポジ型レジスト、電子ビームレジスト、X線用のレジストとしても好適である。すなわち、酸の作用によりアルカリ性水溶液に対する溶解性が変化する溶解抑制剤は、カルボン酸基、またはヘキサフルオロカルビノール基の少なくともひとつが酸不安定基になるようにしたものであるが、その構造は特に制限なく使用可能である。一般的な酸不安定基としては前述した酸不安定基であり、酸によって切断される官能基である。このような溶解抑制剤を用いた高分子化合物は活性エネルギー線が照射される前にはアルカリ性水溶液に不溶もしくは難溶であって、活性エネルギー線を照射したことにより酸発生剤から発生した酸により加水分解されアルカリ性水溶液に対して溶解性を示すようになる。
【0061】
本発明組成物に用いられる光酸発生剤については特に制限はなく、化学増幅型レジストの酸発生剤として用いられるものの中から、任意のものを選択して使用することができる。このような酸発生剤の例としては、ビススルホニルジアゾメタン類、ニトロベンジル誘導体類、オニウム塩類、ハロゲン含有トリアジン化合物類、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物類、その他のオキシムスルホネート化合物などが挙げられる。これらの酸発生剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その含有量は、高分子化合物100重量部に対して、通常0.5〜20重量部の範囲で選ばれる。この量が0.5重量部未満では像形成性が不十分であるし、20重量部を超えると均一な溶液が形成されにくく、保存安定性が低下する傾向がみられる。
【0062】
本発明のレジストの使用方法としては、従来のフォトレジスト技術のレジストパターン形成方法が用いられるが、好適に行うには、まずシリコンウェハーのような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、これに露光装置などにより、エキシマレーザー光を所望のマスクパターンを介して照射し、加熱する。次いでこれを現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理する。この形成方法でマスクパターンに忠実なパターンを得ることができる。
【0063】
本発明の応用分野は、さらに所望により混和性のある添加物、例えば付加的樹脂、クエンチャー、可塑剤、安定剤、着色剤、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤、消泡剤、相溶化剤、密着剤、酸化防止剤などの種々添加剤を含有させることができる。
【0064】
本発明の高分子化合物は、トップコートとして用いることが可能である。トップコートは液浸リソグラフィーにおいてフォトレジスト表面にコーティングされる高分子の保護膜であり、液浸リソグラフィーで用いる液体とレジスト間の相互作用、例えば、レジストの膨潤や液体のレジスト中へのしみ込み、レジストからの化合物の留出等を防ぐ目的で用いられる。高分子化合物をトップコートと用いるにあたり、上記の機能を有することはもちろんのこと、もう一つ重要な項目として現像時に現像液(アルカリ水溶液)へ溶解する必要性があるが、特に溶解性の観点から本発明の高分子化合物はトップコートに適している。
【0065】
すなわち、トップコートに適している高分子化合物として、一般式(1)
【0066】
【化12】

【0067】
(式中、R、Rは、異なっていても同一であってもよく、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基またはシリル基を含有しても良い。Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する2価の炭化水素基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、フッ素アルコール基を含んでもよい。Rは単結合、メチレン、エチレン、又は酸素原子である。)で表される構造の繰り返しからなる高分子化合物のR、Rが水素原子である化合物、或いはR、Rが一般式(4)、(5)
【0068】
【化13】

【0069】
【化14】

【0070】
に表されるヘキサフルオロカルビノール基やトリフルオロメタンスルホニルアミド基を含有するような保護基(R、Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。すなわち、直鎖構造、分岐構造、環状構造、多環式構造、芳香族基である炭化水素基を用いることができ、一部または全ての水素原子がフッ素原子に置換されていても良い。さらに水酸基やカルボニル基やエーテル構造などのように酸素原子を含有していても良い。)を5〜100mol%含有する高分子化合物を使用することが好ましく、50〜100mol%含有する高分子化合物が更に好ましい。
【0071】
トップコート用途としては上述の高分子化合物を有機溶剤、又はアルカリ水溶液や水と有機溶媒の混合液に溶解させて使用する。使用できる有機溶剤としては、その溶剤が下層のレジスト膜を浸食したり、レジスト膜から添加剤等を抽出しにくいものであって、スピンコートに適した沸点範囲、すなわち、沸点が70℃〜170℃程度のものが好適に選択される。具体的には下層のレジスト膜組成に依存するが、各種、炭化水素溶媒、アルコール、エーテル、エステル、フッ素系溶剤などが好ましい。好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどのアルカンや脂環類の炭化水素溶媒やブタノール(ノルマル、イソ体、ターシャリー)、メチルエチルカルビノール、ペンタノール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコールなどの炭化水素系アルコール類、さらに好ましくは部分的にフッ素で置換された炭化水素系溶媒が好適に採用される。具体的に部分的にフッ素で置換された炭化水素溶媒とは、アルカンや脂環類の炭化水素溶媒や炭化水素系アルコール類であって、その水素の一部がフッ素が置換されたものが採用できる。フッ素を用いることで本発明の高分子化合物を効果的に溶解させ、かつ下地のレジスト膜にダメージを与えないコーティングを行うことが可能となる。
【0072】
また本発明によれば、下層からの抽出物があった場合に、その影響を最小限にする目的で、酸発生剤、クエンチャーなどの添加剤を予めトップコートに加えることが可能であり、特に、本発明に酸発生剤を加えた場合、液浸リソグラフィーにおける下層レジストの解像性能を高める効果が発現する。
【0073】
さらに水の膨潤やしみ込みに対する影響を抑制するための疎水性添加剤、現像液への溶解性を促進させるための酸性添加剤などが好適に使用できる。
【0074】
本発明によるトップコート組成物は、下層のレジストの種類に制限なく使用することができる。すなわち下層レジストが、ネガ型、ポジ型、複合型などの任意のレジストシステムであっても好適に使用でき、さらに、特に最近の半導体の微細化に対応した193nmのArFエキシマレーザーや157nmに代表される真空紫外領域のFレーザー、又は電子線やX線などの活性エネルギー線などの各種光源に依存することなく使用することができる。特に本発明のトップコートは液浸リソグラフィーにおいて、好適に応用される。
【0075】
すなわち、液浸リソグラフィーを用いたデバイス製造において本発明を使用する場合、まずシリコンウエハーや半導体製造基板のような支持体上に、レジスト組成物の溶液をスピンナーなどで塗布し、乾燥して感光層を形成させ、その上面に本発明による高分子をスピンナーでトップコートし、乾燥後、水などに浸漬してレーザー光を所望のマスクパターンを介して照射する。次いでこれを加熱後、現像液、例えば0.1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のようなアルカリ性水溶液などを用いて現像処理することで、一回の現像処理でトップコートを全溶解させると同時に露光部のレジスト膜を溶解させ、一段現像にてレジストパターンのみを残すものである。
【実施例1】
【0076】
「ポリエステル化合物(13)の合成」
【0077】
【化15】

【0078】
100mlの4口フラスコに、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸無水物(7)(5.51g)、1,4−ブタンジオール(3a)(2.19g)を入れてN,N−ジメチルホルムアミド(44.0ml)に混合した。この混合溶液を氷水バスに浸し内温を5℃まで冷却した後、トリエチルアミン(4.97g)を攪拌下15分間かけて滴下した。滴下終了後、氷水冷却下5分間攪拌した後、50℃までオイルバスで加熱して8時間攪拌した。反応液を放置冷却後、アセトン(2,000ml)中に室温にて攪拌下30分間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体をメタノール(40ml)に溶解させ、再度アセトン(2,000ml)中に室温にて攪拌下30時間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体を50℃オーブンにて10時間減圧乾燥したところ、白色紛体(0.71g)を得た。分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw13,000、Mw/Mn5.06であった。
【実施例2】
【0079】
「ポリエステル化合物(14)の合成」
【0080】
【化16】

【0081】
100mlの4口フラスコに、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸無水物(4)(10.18g)、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール(3b)(6.20g)を入れてトルエン(44.0ml)に混合した。これにメタンスルホン酸(0.38g)を量り入れ、80℃までオイルバスで加熱して5時間攪拌した。反応液には樹脂の析出が観られたため、反応液を放置冷却後、アセトン(88.0ml)を添加し溶解させた。高分子量体と推測される一部の樹脂は溶解せず膨潤状態であったため、ろ過して除去を行った。次にろ過して得られたろ液部をn−ヘキサン(2,000ml)中に室温にて攪拌下1時間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体を50℃オーブンにて6時間減圧乾燥したところ、白色紛体(15.18g)を得た。分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw5,900、Mw/Mn2.85であった。
【実施例3】
【0082】
「ポリエステル化合物(15)の合成」
【0083】
【化17】

【0084】
100mlの4口フラスコに、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3:5,6−テトラカルボン酸無水物(4)(5.13g)、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヒドロキシイソプロピル)シクロヘキサン−1,4−ジオール(3c)(6.13g)を入れてトルエン(21.7ml)に混合した。これにメタンスルホン酸(0.27g)を量り入れ、80℃までオイルバスで加熱して18時間攪拌した。反応液を放置冷却後、n−ヘキサン(2,000ml)中に室温にて攪拌下1時間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体を50℃オーブンにて6時間減圧乾燥したところ、白色紛体(9.30g)を得た。分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw1,300、Mw/Mn1.27であった。
【実施例4】
【0085】
「ポリエステル化合物(14a)の合成」
【0086】
【化18】

【0087】
50mlの3口フラスコに、実施例2で合成したポリエステル化合物(14)(2.000g)を入れ、テトラヒドロフラン(20.0ml)に溶解させた。この溶液に氷冷攪拌下、55%水素化ナトリウム(0.459g)を少量ずつ添加した。続いて、メトキシメチルクロリド(0.847g)を氷冷攪拌下滴下した。更に氷冷攪拌下、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド(0.097g)を添加し、室温に昇温後、8時間攪拌した。続いて反応溶液を氷水(100ml)に少量ずつ投入し、これに酢酸エチル(150ml)を加えて有機物を抽出した。得られた有機層を更に水で洗浄し、その後二層分離を行い有機層を回収した。この有機層をエヴァポレーターで減圧濃縮(20g)した後、室温攪拌下、n−ヘキサン(600ml)中に5分間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体を50℃オーブンにて8時間減圧乾燥したところ、白色紛体(1.234g)を得た。メトキシメチル基による保護化率は、差動型示差熱天秤(TG−DTA)より重量減少量を脱離したメトキシメチル基と見積もって算出したところ、56.3%であった。また分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw7,600、Mw/Mn3.01であった。
【実施例5】
【0088】
「ポリエステル化合物(15a)の合成」
【0089】
【化19】

【0090】
50mlの3口フラスコに、実施例3で合成したポリエステル化合物(15)(2.131g)を入れ、テトラヒドロフラン(21.0ml)に溶解させた。この溶液に氷冷攪拌下、55%水素化ナトリウム(0.524g)を少量ずつ添加した。続いて、メトキシメチルクロリド(0.967g)を氷冷攪拌下滴下した。更に氷冷攪拌下、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨージド(0.074g)を添加し、室温に昇温後、14時間攪拌した。続いて反応溶液を氷水(100ml)に少量ずつ投入し、これに酢酸エチル(150ml)を加えて有機物を抽出した。得られた有機層を更に水で洗浄し、その後二層分離を行い有機層を回収した。この有機層をエヴァポレーターで減圧濃縮(20g)した後、室温攪拌下、n−ヘキサン(600ml)中に5分間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体を50℃オーブンにて8時間減圧乾燥したところ、白色紛体(2.341g)を得た。メトキシメチル基による保護化率は、差動型示差熱天秤(TG−DTA)より重量減少量を脱離したメトキシメチル基と見積もって算出したところ、79.4%であった。また分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw1,300、Mw/Mn1.25であった。
【実施例6】
【0091】
「ポリエステル化合物(14b)の合成」
【0092】
【化20】

【0093】
50mlの3口フラスコに、実施例4で合成したポリエステル化合物(14a)(1.000g)を入れ、トルエン(10.0ml)に溶解させた。この溶液に室温攪拌下、化合物(17)(1.000g)を添加した。続いてこの混合溶液を70℃に昇温後2時間攪拌した。続いて反応溶液を氷水(100ml)に少量ずつ投入し、これに酢酸エチル(150ml)を加えて有機物を抽出した。得られた有機層を更に水で洗浄し、その後二層分離を行い有機層を回収した。この有機層をエヴァポレーターで減圧濃縮(10g)した後、室温攪拌下、n−ヘプタン(400ml)中に5分間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体を50℃オーブンにて8時間減圧乾燥したところ、白色紛体(1.153g)を得た。メトキシメチル基による保護化率は、差動型示差熱天秤(TG−DTA)より重量減少量を脱離したメトキシメチル基と見積もって算出したところ、32.4%と反応前後で低下が観測された。一方、ヘキサフルオロカルビノール基の含有量は19F−NMR測定より65.0%と算出(内部標準として既知量の4−フルオロ安息香酸を添加し、その積分比から保護基となった化合物(17)のモル量を算出し、樹脂中の化合物(17)の含量を算出)された。また分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw7,700、Mw/Mn2.99であった。
【実施例7】
【0094】
「ポリエステル化合物(15b)の合成」
【0095】
【化21】

【0096】
50mlの3口フラスコに、実施例5で合成したポリエステル化合物(15a)(0.500)、化合物(18)(0.500g)、トルエン(5.00ml)を添加した。続いてこの混合溶液を70℃に昇温後2時間攪拌した。続いて反応溶液を氷水(50ml)に少量ずつ投入し、これに酢酸エチル(100ml)を加えて有機物を抽出した。得られた有機層を更に水で洗浄し、その後二層分離を行い有機層を回収した。この有機層をエヴァポレーターで減圧濃縮(5g)した後、室温攪拌下、n−ヘプタン(200ml)中に3分間かけて滴下し再沈殿させた。滴下終了後、更に1時間攪拌した後に沈殿紛体を吸引ろ過にて回収した。回収した紛体を50℃オーブンにて8時間減圧乾燥したところ、白色紛体(0.512g)を得た。メトキシメチル基による保護化率は、差動型示差熱天秤(TG−DTA)より重量減少量を脱離したメトキシメチル基と見積もって算出したところ、31.1%と反応前後で若干の低下が観測された。一方、トリフルオロメタンスルホニルアミドを有するノルボルニル基の含有量は19F−NMR測定より65.4%と算出(内部標準として既知量の4−フルオロ安息香酸を添加し、その積分比から保護基となった化合物(18)のモル量を算出し、樹脂中の化合物(18)の含量を算出)された。また分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw1,300、Mw/Mn1.31であった。
【実施例8】
【0097】
実施例6、7のポリエステル化合物を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、固形分14%になるように調整した。さらに高分子化合物100重量部に対して、酸発生剤としてみどり化学製トリフェニルスルフォニウムトリフレート(TPS105)を2重量部になるように溶解し、2種類のレジスト溶液を調整した。これらをスピンコートし、膜厚100nmの光透過率を波長157nmにて測定したところ、実施例6、7に対しそれぞれ48%、45%であり、真空紫外域の波長で高い透明性を発現した。
【0098】
次いで、全レジスト溶液を孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、各組成物溶液をシリコンウェハー上にスピンコートし膜厚250nmのレジスト膜を得た。120℃でプリベークを行った後、フォトマスクを介して248nm紫外線での露光を行ったのち、130℃でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間現像した。この結果、いずれのレジスト溶液からも高解像のパターン形状が得られ、基板への密着不良欠陥、成膜不良欠陥、現像欠陥、エッチング耐性不良欠陥もほとんど見られなかった。
【実施例9】
【0099】
実施例3で得られた高分子化合物をt−ブタノール/n−ヘキサン=8/2の混合溶媒に溶解させ、固形分が3%になるように調整したところ、いずれの場合も均一で透明な高分子溶液が得られた。
【0100】
次いで、その高分子化合物の溶液をシリコンウエハー上にスピンコートし、110℃でベークしたところ、均一なトップコート膜を得た。これらのトップコート膜を2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸液したところすみやかに溶解し、膜が消失した。
【0101】
更に得られたトップコート膜を純水に30分間浸漬させたところ、特に膨潤も溶解も起きなかった。
【実施例10】
【0102】
実施例9で得られた高分子溶液を下記の比較例で得られたフォトレジスト膜上に約40nmの厚みになるようにスピンコートし、110℃でベークしたところ、レジスト膜上に均一なトップコート膜が得られた。これらの2層膜を2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に浸液したところ、上層のトップコート膜のみが速やかに溶解し、元のフォトレジスト膜のみが残った。
【実施例11】
【0103】
実施例9で得られた高分子溶液を比較例で得られたフォトレジスト膜上に約40nmの厚みになるようにスピンコートし、110℃でベークし2層膜を得た後、2層膜上に1mmの厚みで純水で覆った。それらの水面の上部からフォトマスクを介して高圧水銀ランプを用いて紫外線での露光を行ったのち、純水を除去し、130℃でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間現像した。この結果、いずれの場合も、トップコート膜は全面溶解し、かつレジスト膜の露光部が同時に溶解し、下地の未露光部のみが矩形のパターン形状として残った。
[比較例]
還流冷却器、撹拌子を備えた500mlのナス型フラスコに、下記化合物(16)(20.00g)、化合物(17)(27.78g)、化合物(18)(36.72g)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(0.2540g)、n−ドデシルメルカプタン(0.3965g)、メチルエチルケトン(253.4g)を入れ、フラスコ内を窒素で置換した。これを75℃のオイルバスで加熱して18時間攪拌した。反応終了後、反応溶液をn−ヘキサン(2,000ml)に投入して撹拌し、生成した沈殿を濾過して取り出した。これを50℃のオーブンで20時間減圧乾燥し、ArFエキシマレーザーに適した高分子化合物(19)(38.97g)を得た。分子量、分子量分布(Mw、Mw/Mn)に関してはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準ポリスチレン)から求めたところ、Mw12,600、Mw/Mn1.81であった。
【0104】
【化22】

【0105】
次いで高分子化合物(19)をプロピレングリコールメモノチルアセテートに溶解させ、固形分12%になるように調整した。さらに酸発生剤としてみどり化学製トリフェニルスルフォニウムトリフレート(TPS105)を高分子化合物(19)100重量部に対して2重量部になるように溶解し、レジスト溶液を調整した。得られたレジスト溶液をスピンコートし、110℃でベークしレジスト膜を得た後、その上に1mmの厚みで純水で覆った。それらの水面の上部からフォトマスクを介して高圧水銀ランプを用いて紫外線での露光を行ったのち、純水を除去し、130℃でポストエクスポーザーベークを行った。その後、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用い、23℃で1分間現像した。この結果、露光部が溶解したレジストパターンが残ったが、その形状はTトップ形状であり、矩形にはならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R、Rは、異なっていても同一であってもよく、それぞれ独立に水素原子、または炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基またはシリル基を含有しても良い。Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する2価の炭化水素基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、硫黄原子、珪素原子、カルボニル基、水酸基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、フッ素アルコール基を含んでもよい。Rは単結合、メチレン、エチレン、又は酸素原子である。)で表される構造の繰り返しからなる高分子化合物。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中、R、Rは、一般式(1)と同じ。またl、mは、0〜1で表される整数である。)で表される構造の繰り返しからなる請求項1記載の高分子化合物。
【請求項3】
一般式(3)
【化3】

(式中、R、R、は一般式(1)と同じ。Rは、水素原子、または炭素数1〜40の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、その一部にフッ素原子、酸素原子、窒素原子、珪素原子、硫黄原子、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、グリシジル基、シアノ基、フルオロカルビノール基、スルホン酸基またはシリル基を含有しても良い。またl、mは、0〜1で表される整数であり、nは0〜2で表される整数である。)で表される構造の繰り返しからなる請求項1記載の高分子化合物。
【請求項4】
、又はRの少なくとも片方に一般式(4)
【化4】

(式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であってフッ素原子、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。)のヘキサフルオロカルビノール基含有の置換基を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の高分子化合物。
【請求項5】
、又はRの少なくとも片方に一般式(5)
【化5】

(式中、Rは、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状、脂環式炭化水素基または芳香環を有する炭化水素基であって、フッ素原子、酸素原子、窒素原子を含んでもよい。)のトリフルオロメタンスルホニルアミド基を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の高分子化合物。
【請求項6】
、又はRの少なくとも片方にラクトン基を有する請求項1乃至3のいずれかに記載の高分子化合物。
【請求項7】
、R、Rの一部に酸不安定性基を有する請求項1〜6のいずれかに記載の高分子化合物。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の高分子化合物を有機溶剤に溶解したコーティング組成物。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の高分子化合物を用いたフォトレジスト。
【請求項10】
請求項1乃至7のいずれかに記載の高分子化合物をフォトレジスト上に塗布した液浸リソグラフィー用のトップコート。


【公開番号】特開2007−2045(P2007−2045A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−181745(P2005−181745)
【出願日】平成17年6月22日(2005.6.22)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】