説明

ポリエステル樹脂およびそれからなるポリエステル樹脂組成物並びにポリエステル成形体

【課題】 上記従来の技術が有する、成形時の環状エステルオリゴマーやアルデヒド類の生成などの問題点を解決するために使用することができるポリエステル樹脂及び透明性や香味保持性に優れ、連続成形時に金型汚れによる透明性の悪化などの問題がなく、また耐熱寸法安定性にも優れた中空成形体などを効率よく生産することができるポリエステル樹脂組成物並びにそれからなる成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】 主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなり、リン化合物をリン原子として100〜5000ppmの量を共重合または配合したポリエステル樹脂であって、前記ポリエステル樹脂を290℃で射出成形した4mm厚みの成形体のヘイズが40%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステルの製造時に用いられる重縮合触媒の作用を失活させ、成形時の環状エステルオリゴマーやアルデヒド類の生成を抑制するために使用することができるポリエステル樹脂およびそれからなる透明性に優れ、適切な結晶化速度を持つ成形体を与えるポリエステル樹脂組成物並びにポリエステル成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポリエステル(以下、PET、あるいはPET樹脂と略称することがある)は、その優れた透明性、機械的強度、耐熱性、ガスバリアー性等の特性により、炭酸飲料、ジュース、ミネラルウォータ等の容器の素材として採用されており、その普及はめざましいものがある。これらの用途において、ポリエステル製ボトルに高温で殺菌した飲料を熱充填したり、また飲料を充填後高温で殺菌したりするが、通常のポリエステル製ボトルでは、このような熱充填処理時等に収縮、変形が起こり問題となる。ポリエステル製ボトルの耐熱性を向上させる方法として、ボトル口栓部を熱処理して結晶化度を高めたり、また延伸したボトルを熱固定させたりする方法が提案されている。特に口栓部の結晶化が不十分であったり、また結晶化度のばらつきが大きい場合にはキャップとの密封性が悪くなり、内容物の漏れが生ずることがある。
【0003】
具体的には、果汁飲料、ウーロン茶およびミネラルウオータなどのように熱充填を必要とする飲料の場合には、プリフォームまたは成形されたボトルの口栓部を熱処理して結晶化する方法(例えば、特許文献1、2参照)が一般的である。このような方法、すなわち口栓部、肩部を熱処理して耐熱性を向上させる方法は、結晶化処理をする時間・温度が生産性に大きく影響し、低温でかつ短時間で処理できる、結晶化速度が速いPETであることが好ましい。一方、胴部についてはボトル内容物の色調を悪化させないように、成形時の熱処理を施しても透明であることが要求されており、口栓部と胴部では相反する特性が必要である。
【0004】
また、ボトル胴部の耐熱性を向上させるため、例えば、延伸ブロー金型の温度を高温にして熱処理する方法が採られる(例えば、特許文献3参照)。しかし、このような方法によって同一金型を用いて多数のボトル成形を続けると、長時間の運転に伴って得られるボトルが白化して透明性が低下し、商品価値のないボトルしか得られなくなる。これは金型表面にPETに起因する付着物が付き、その結果金型汚れとなり、この金型汚れがボトルの表面に転写するためであることが分かった。
【0005】
また、PETは、副生物であるアセトアルデヒド(以下、AAと略称することがある)を含有する。ポリエステル中のアセトアルデヒド含有量が多い場合には、これから成形された容器やその他包装等の材質中のアセトアルデヒド含有量も多くなり、該容器等に充填された飲料等の風味や臭いに影響を及ぼす。したがって、従来よりポリエステル中のアセトアルデヒド含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。
【0006】
このような理由から、従来よりポリエステル中の環状エステルオリゴマー含有量を低減させるために種々の方策が採られてきた。これらの方策として、例えば、溶融重合によって得られたポリエステルプレポリマーを減圧下または不活性気体の流通下で固相重合に付することにより、オリゴマーおよびアルデヒド類を低下させる方法(例えば、特許文献4、5参照)、不活性気体雰囲気中で融点以下の温度で加熱処理する方法(例えば、特許文献6、7参照)、固相重合の前後に水または有機溶媒で抽出、洗浄処理する方法(例えば、特許文献8参照)などが提案されている。しかしながら、これらの方法で得られるポリエステルは融点以上の温度に於ける成形時に環状エステルオリゴマーを再生し、得られた成形体の前記環状オリゴマー含有量を問題ない水準に低減できず、金型汚れなどの問題は未解決であった。
【0007】
このような問題点をさらに解決する方法として、ポリエチレンテレフタレ−トを水と接触処理することによって触媒を失活さす方法(例えば、特許文献9、10、11,12参照)および水処理することによって触媒を失活させたPET(例えば、特許文献13,14参照)が開示されている。しかしながら、このような水との接触処理による触媒失活方法では、重縮合触媒としてゲルマニウム化合物を用いて製造したポリエステルにしか効果が無く、アンチモン化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物などを触媒として用いて製造したポリエステル中のこれらの触媒の失活にはほとんど効果が無いために、成形時のAA含有量の増加や成形時の環状エステルオリゴマー含有量の増加を抑制さすことはできない。このため、成形体の内容物の風味や臭いなどの特性や金型汚れがほとんど改良されず、したがって、透明性が悪く、香味保持性の悪い成形体しか得られない。さらには、前記処理のための装置と乾燥装置が必要となるために設備投資費用と処理費用が余分にかかるために原価上昇を招き採算性が悪くなるという問題があり解決が待たれている。
【0008】
また、リン化合物を含有する熱可塑性樹脂をPETに混練りすることによって重縮合触媒を失活させる方法(例えば、特許文献15参照)が開示されているが、このような方法によって金型汚れや香味保持性は改良される場合があるが、時には透明性が悪い成形体しか得られないことがあり、適度の、安定した結晶化速度を持ち、かつ透明性の優れた成形体を常時得るのが難しいという問題があり解決が望まれている。
【0009】
【特許文献1】特開昭55−79237号
【特許文献2】特開昭58−110221号
【特許文献3】特公昭59−6216号公報
【特許文献4】特開昭55−89330号公報
【特許文献5】特開昭55−89331号公報
【特許文献6】特開平2−298512号公報
【特許文献7】特開平8−120062号公報
【特許文献8】特開昭55−13715号公報
【特許文献9】特開平3−47830号公報
【特許文献10】特開平3−174441号公報
【特許文献11】特開平6−234834号公報
【特許文献12】特開平8−231689号公報
【特許文献13】特開平3−72524号公報
【特許文献14】特開平4−211424号公報
【特許文献15】特開平10−251393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の技術が有する、成形時の環状エステルオリゴマーやアルデヒド類の生成などの問題点を解決するために使用することができるポリエステル樹脂及び透明性や香味保持性に優れ、適切な結晶化速度を持ち、連続成形時に金型汚れによる透明性の悪化などの問題がなく、また耐熱寸法安定性にも優れた中空成形体などを効率よく生産することができるポリエステル樹脂組成物並びにポリエステル成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のポリエステル樹脂(1)は、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなり、リン化合物をリン原子として100〜5000ppmの量を共重合または配合したポリエステル樹脂であって、前記ポリエステル樹脂の290℃で射出成形した4mm厚みの成形体のヘイズが40%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂である。
【0012】
本発明のポリエステル樹脂(1)は、主に、ポリエステル樹脂(2)の製造時に用いられる触媒の作用を失活させるために使用されるポリエステル樹脂であり、成形時の環状エステルオリゴマーやアルデヒド類の生成などを抑制させるために使用することができるが、これを成形した際の透明性が重要な要素であることが判り、前記ポリエステル樹脂(2)とのポリエステル樹脂組成物からの成形体の透明性、結晶化速度およびその変動などに大きな影響を及ぼすことが分かってきた。
【0013】
前記ポリエステル樹脂の290℃で射出成形した4mm厚みの成形体のヘイズは好ましくは40%以下、さらに好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下である。前記のヘイズが40%を越える場合は、ポリエステル樹脂(2)との組成物から成形される成形体の透明性が悪くなり、また結晶化速度が早くなるなどの諸問題が発生し、本発明の目的を達成するポリエステル組成物およびポリエステル成形体が得られない。
【0014】
この場合に於いて、前記ポリエステル樹脂(1)のアセトアルデヒド含有量が150ppm以下であることが好ましい。
【0015】
この場合に於いて、前記リン化合物が、前記リン化合物が、リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、亜リン酸系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることことが好ましい。
【0016】
この場合に於いて、重縮合触媒が、Sb化合物、Ge化合物、W化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0017】
この場合に於いて、請求項1〜4に記載のポリエステル樹脂(1)と、Al、Ti、Mn、Fe、Co、Zn、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Ta、Pbからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物と必要に応じてアンチモン化合物および/またはゲルマニウム化合物を含有する、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコ−ル成分とから構成されるポリエステル樹脂(2)とからなるポリエステル樹脂組成物である。
【0018】
さらにまた、前記ポリエステル樹脂組成物は、香味保持性に優れ、また、環状エステルオリゴマー含有量が少なく、連続成形時に金型汚れの発生がほとんど無く、したがって、透明性に優れ、透明性の変動が少ない成形体、例えば、中空成形体、シート状物、延伸フイルムなどを与えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステルの製造時に用いられる重縮合触媒の作用を失活させ、成形時の環状エステルオリゴマーやアルデヒド類の生成などの問題点を解決するために使用することができるポリエステル樹脂であり、それからなるポリエステル樹脂組成物は、透明性や香味保持性に優れ、適切な結晶化速度を持ち、連続成形時に金型汚れによる透明性の悪化などの問題がなく、また耐熱寸法安定性にも優れた中空成形体などを与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のポリエステル樹脂およびポリエステル樹脂組成物並びにポリエステル成形体の実施の形態を具体的に説明する。
【0021】
(ポリエステル樹脂(1))
本発明のポリエステル樹脂(1)は、ポリエステル樹脂を290℃で射出成形した4mm厚みの成形体のヘイズが40%以下であることを特徴とする。ヘイズが40%を越える場合には、後述するポリエステル樹脂(2)と混合して成形したの成形体の透明性が低下することがある。ヘイズは好ましくは30%以下、さらに好ましくは25%以下、特に好ましくは20%以下である。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂(1)に共重合または配合されるリン化合物としては、リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、亜リン酸系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物が挙げられる。
【0023】
リン酸系化合物の具体例としては、例えば、リン酸、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジアミルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリアミルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、リン酸とアルキレングリコールとのエステルなどが挙げられる。
【0024】
ホスホン酸系化合物の具体例としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、トリエチルホスホノアセテート、トリブチルホスホノアセテート、トリ(ヒドロキシエチル)ホスホノアセテート、トリ(ヒドロキシプロピル)ホスホノアセテート、トリ(ヒドロキシブチル)ホスホノアセテートなどがあげられる。
【0025】
ホスフィン酸系化合物の具体例としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、2−カルボキシエチル−メチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−エチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−プロピルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−フェニルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−m−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−p−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−キシリルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−ベンジルホスフィン酸、2−カルボキシエチル−m−エチルベンジルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−メチルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−エチルホスフィン酸、2−カルボキシエチル-プロピルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−フェニルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−m−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−p−トルイルホスフィン酸、2−カルボキシメチル-キシリルホスフィン酸、2−カルボキシメチル-ベンジルホスフィン酸、2−カルボキシメチル−m−エチルベンジルホスフィン酸、及びこれらの環状酸無水物、或いはこれらのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、エチレングリコールエステル、プロピオングリコールエステル、ブタンジオールとのエステルなどが挙げられる。
【0026】
亜リン酸系化合物の具体例としては、例えば、亜リン酸ならびにジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジアミルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)4,4‘−ビフェニレンジホスファイト、亜リン酸とアルキレングリコールとのエステルなどが挙げられる。
亜ホスホン酸系化合物の具体例としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、メチル亜ホスホン酸ジメチル、メチル亜ホスホン酸ジフェニル、フェニル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸ジメチル、フェニル亜ホスホン酸ジフェニルなどがあげられる。
【0027】
その他のリン化合物としては、下記のポリエステル樹脂(2)で用いる上記以外のリン化合物も用いることができる。
【0028】
本発明に係るポリエステル樹脂(1)は、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とから得られる熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の70モル%以上含むポリエステルであり、さらに好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の85モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは、芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の95モル%以上含むポリエステルであって、前記のリン化合物を共重合または配合したものである。
【0029】
本発明に係るポリエステル樹脂(1)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニール−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0030】
また本発明に係るポリエステル樹脂(1)を構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
【0031】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、ジフェニール−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0032】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコールとしては、ジエチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ダイマーグリコール等の脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0033】
さらに、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂(1)の好ましい一例は、主たる構成単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、さらに好ましくはエチレンテレフタレート単位を70モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む共重合ポリエステルであり、特に好ましいくはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルであって、前記のリン化合物を共重合したものである。
【0034】
本発明のリン化合物を共重合または配合したポリエステル樹脂(1)は、重縮合時に前記リン化合物を添加して共重合する方法あるいはポリエステル樹脂と前記リン化合物から選ばれた少なくとも一種を押出機、例えば二軸押出機で混練する方法によって製造することが可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
共重合方法による場合は、例えば、テレフタル酸とエチレングリコールおよびリン化合物からの共重合ポリエステルの場合には、以下のような方法により製造することができる。
【0036】
テレフタル酸及び/またはそのエステル形成性誘導体とエチレングリコールとのエステル化反応生成物を重縮合して、ポリエステルにする際に採用される任意の方法で合成することができる。前記リン化合物はポリエステルの製造時に添加されるが、その添加時期は、エステル化工程初期から、初期縮合後期までの任意の段階で添加できるが、アセトアルデヒド生成などの副反応の抑制、反応機台の腐食の問題などから、エステル化工程の後期から初期縮合初期に添加するのが好ましい。
【0037】
前記の出発原料であるテレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのテレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したテレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
【0038】
重縮合触媒としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、インジウム、タリウム、ゲルマニウム、錫、鉛、ビスマス、スカンジウム、イットリウム、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、テルル、タンタル、タングステン、ガリウム、アルミニウム、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、ケイ素、銀などからなる群より選ばれる1種以上の金属化合物が用いられ、特に、前記のリン化合物によって触媒作用が失活され難い、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、タングステン化合物が最適である。
【0039】
Sb化合物としては、具体的には、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、酒石酸アンチモン、酒石酸アンチモンカリ、オキシ塩化アンチモン、アンチモングリコレート、五酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン等が挙げられる。Sb化合物は、生成ポリマー中のSb残存量として50〜190ppm、好ましくは55〜180ppm、さらに好ましくは60〜160ppmの範囲になるように添加する。190ppmを越える場合は、得られたポリエステル樹脂(1)のヘイズが本発明の範囲を越え問題となる。
【0040】
Ge化合物としては、具体的には、無定形二酸化ゲルマニウム、結晶性二酸化ゲルマニウム、四酸化ゲルマニウム、水酸化ゲルマニウム、蓚酸ゲルマニウム、塩化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラ−n−ブトキシド、亜リン酸ゲルマニウム等の化合物が挙げられる。Ge化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル樹脂(1)中のGe残存量として10〜50ppm、好ましくは11〜40ppm、更に好ましくは13〜30ppmである。
【0041】
W化合物としては、タングステン酸、タングステン酸リチウム、タングステン酸カリウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸カルシウム、タングステン酸バリウム、タングステン酸コバルト、タングステン酸銅、タングステン酸マンガン、タングステンエトキシド、タングステン酸アンモニウム等の化合物が挙げられる。W化合物を使用する場合、その使用量はポリエステル樹脂(1)中のW残存量として10〜250ppm、好ましくは20〜200ppm、更に好ましくは30〜150ppmである。250ppmを越える場合は、得られたポリエステル樹脂(1)のヘイズが本発明の範囲を越え問題となる。
【0042】
なお、本発明のポリエステル樹脂(1)を製造する方法としては、前記の方法に加えて、例えば、重縮合時の温度を285℃以下に維持して重縮合時の熱分解を出来るだけ抑制する方法、ポリエステル樹脂(1)としてIVが0.55デシリットル/グラム以上のポリエステル樹脂を用いる方法、成形前または固相重合前の結晶化または乾燥はチップに衝撃力ができるだけかからない設備を用いる方法などによることができ、またこれらの方法を適宜組み合せてもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0043】
また、ポリエステル樹脂にリン化合物を配合する方法による場合は、乾燥したポリエステル樹脂と前記リン化合物を二軸押出機で溶融混練してチップ化する方法、リン化合物の水溶液や有機溶媒の溶液を表面に付着させる方法などにより可能であり、この際も前記の製造方法を採用することが好ましい。
【0044】
また、本発明のポリエステル樹脂(1)の製造において、ジエチレングリコール含有量の生成抑制のために塩基性窒素化合物を用いることができる。塩基性窒素化合物としては、脂肪族、脂環式、芳香族および複素環式窒素化合物のいずれでもかまわない。具体例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルアニリン、ジメチルアニリン、ピリジン、キノリン、ジメチルベンジルアミン、ピペリジン、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリエチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイド、イミダゾール、イミダゾリン等が挙げられる。これらの化合物は遊離形で用いてもよいし、低級脂肪酸やTPAの塩として用いてもよい。またこれらの塩基性窒素化合物の反応系への添加は、初期重縮合反応が終了するまでの任意の段階で適宜選ぶことが出来、単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。これらの塩基性窒素化合物の配合量は、ポリエステル当り0.01〜1モル%、好ましくは0.05〜0.7モル%、更に好ましくは0.1〜0.5モル%である。
【0045】
本発明のポリエステル樹脂(1)の極限粘度は、0.55〜1.00デシリットル/グラム、好ましくは0.60〜0.90デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.65〜0.85デシリットル/グラム、最も好ましくは0.69〜0.80デシリットル/グラムの範囲であるであることが望ましい。
【0046】
極限粘度が0.60デシリットル/グラム以上の場合は、溶融重縮合したポリマーを固相状態で重合する方法によるのが好ましい。固相重合した場合には、チップの密度は1.37cm3/g以上である。
【0047】
また、ポリエステル樹脂(1)のアセトアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量は、含有量は150ppm以下、好ましくは100ppm以下、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは60ppm以下、特に好ましくは50ppm以下であることが望ましい。アルデヒド類含有量が多くなると、後述するポリエステル樹脂(2)と混合して成形したの成形体等のアルデヒド類の量が高くなり、内容物の香味保持性の効果が悪くなる。また、アルデヒド類の含有量の下限は製造上の問題から、0.1ppbであることが好ましい。
アルデヒド類の含有量は、固相重合を行う、重縮合時および固相重合時の酸素濃度を極力低くする、重縮合および固相重合完了後、速やかに樹脂温度を低下させる等、知られた手段により低下させることができる。
また、リン化合物を重合後に押出機により添加して配合する際にはベント付き押出機を用いることにより、アルデヒド類の増加を抑えることができる。
【0048】
本発明のポリエステル樹脂(1)のチップの形状は、シリンダー型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は、通常1.0〜4mm、好ましくは1.0〜3.5mm、さらに好ましくは1.0〜3.0mmの範囲である。例えば、シリンダー型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は5〜40mg/個の範囲が実用的である。
【0049】
また、ポリエステル樹脂(1)の製造工程を構成する、溶融重縮合ポリマーをチップ化する工程、固相重合工程、溶融重縮合ポリマーチップや固相重合ポリマーチップを輸送する工程等において、本来造粒時に設定した大きさのチップよりかなり小さな粒状体や粉等が発生する。ここでは、このような微細な粒状体や粉等をファインと称する。
【0050】
このようなファインは、ポリエステル樹脂組成物からの成形体の結晶化を促進させる性質を持っており、ポリエステル樹脂(1)のファイン含有量を1重量%以下に管理することが重要である。ファイン含有量が1重量%を越える場合には、ポリエステル樹脂(2)との組成物から成形される成形体の透明性が悪くなり、また結晶化速度が高くかつその変動が非常に早くなるなどの諸問題が発生し、本発明の目的を達成するポリエステル組成物およびポリエステル成形体が得られない。ポリエステル樹脂(1)のファイン含有量の下限値は約10ppm以下であり、これ以下にすることは経済性の点で問題である。
【0051】
ポリエステル樹脂(1)中のファインの含有量を1重量%以下にする方法としては、例えば、篩分工程や空気流によるファイン除去工程を通す方法などを採用することができる。
また、ポリマーカラー、加水分解性など物性を損なわない程度に従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、青み付け剤、染料、顔料などの各種の添加剤を併用することも可能である。
【0052】
(ポリエステル樹脂(2))
ポリエステル樹脂(2)は、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とから得られる熱可塑性ポリエステルであり、好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の55モル%以上含むポリエステルであり、より好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の70モル%以上含むポリエステルであり、さらに好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の80モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは芳香族ジカルボン酸単位が酸成分の90モル%以上含むポリエステルである。
【0053】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)を構成する芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、2、6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニール−4,4'−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体等が挙げられる。
【0054】
また本発明に係るポリエステル樹脂(2)を構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール等が挙げられる。
【0055】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としては、イソフタル酸、ジフェニール−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ジフェニルケトンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシ酸及びその機能的誘導体、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、グルタル酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸及びその機能的誘導体、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸及びその機能的誘導体などが挙げられる。
【0056】
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコールとしては、ジエチレングリコール、1,3−トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ダイマーグリコール等の脂肪族グリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、2,5−ノルボルナンジメチロール等の脂環族グリコール、キシリレングリコール、4,4'−ジヒドロキシビフェニル、2,2−ビス(4'−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン酸、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族グリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
【0057】
さらに、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としての多官能化合物としては、酸成分として、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げることができ、グリコール成分としてグリセリン、ペンタエリスリトールを挙げることができる。以上の共重合成分の使用量は、ポリエステルが実質的に線状を維持する程度でなければならない。また、単官能化合物、例えば安息香酸、ナフトエ酸等を共重合させてもよい。
【0058】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)の好ましい一例は、主たる構成単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、好ましくはエチレンテレフタレート単位を55モル%以上、より好ましくは70モル%以上含み、共重合成分としてイソフタル酸、1,4―シクロヘキサンジメタノールなどを含む共重合ポリエステルであり、特に好ましくはエチレンテレフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0059】
これらポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称)、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−ジオキシエチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート−エチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0060】
また本発明に係るポリエステル樹脂(2)の好ましいその他の一例は、主たる構成単位がエチレン−2、6−ナフタレートから構成されるポリエステルであり、好ましくはエチレン−2、6−ナフタレート単位を55モル%以上、より好ましくは70モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは、エチレン−2、6−ナフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0061】
これら熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−エチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート−ジオキシエチレン−2,6−ナフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0062】
また本発明に係るポリエステル樹脂(2)の好ましいその他の例としては、主たる構成単位が1,3−プロピレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、好ましくは1,3−プロピレンテレフタレート単位を55モル%以上、より好ましくは70モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくは1,3−プロピレンテレフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0063】
これらポリエステルの例としては、ポリプロピレンテレフタレート(PTT)、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,3−プロピレンイソフタレート)共重合体、ポリ(1,3−プロピレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体などが挙げられる。
【0064】
さらにまた本発明に係るポリエステル樹脂(2)の好ましいその他の例としては、主たる構成単位がブチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、好ましくはブチレンテレフタレート単位を55モル%以上、より好ましくは70モル%以上含むポリエステルであり、特に好ましくはブチレンテレフタレート単位を90モル%以上含むポリエステルである。
【0065】
これらポリエステルの例としては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンイソフタレート)共重合体、ポリ(ブレンテレフタレート−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−1,3−プロピレンテレフタレート)共重合体、ポリ(ブチレンテレフタレート−ブチレンシクロヘキシレンジカルボキシレート)共重合体などが挙げられる。
【0066】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)は、基本的には従来公知の溶融重縮合法、あるいは、この方法で製造されたプレポリマーの固相重合法によって製造することが出来る。溶融重縮合反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。これらは回分式反応装置から構成されていてもよいし、また連続式反応装置から構成されていてもよい。また溶融重縮合工程と固相重合工程は連続的に運転してもよいし、分割して運転してもよい。
【0067】
以下に、ポリエチレンテレフタレート(PET)を例にして、本発明に係るポリエステル樹脂(2)の好ましい連続式製造方法の一例について説明するが、これに限定されるものではない。即ち、テレフタール酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、重縮合触媒の存在下に減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、重縮合触媒の存在下に減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。また、極限粘度を増大させたり、また低フレーバー飲料用耐熱容器や飲料用金属缶の内面用フイルム等のように低アセトアルデヒド含有量や低環状3量体含有量とするために、このようにして得られた溶融重縮合されたポリエステルは、引き続き、固相重合される。
【0068】
前記の出発原料であるテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸またはエチレングリコールとしては、パラキシレンから誘導されるバージンのジメチルテレフタレート、テレフタル酸あるいはエチレンから誘導されるエチレングリコールは勿論のこと、使用済みPETボトルからメタノール分解やエチレングリコール分解などのケミカルリサイクル法により回収したジメチルテレフタレート、テレフタル酸、ビスヒドロキシエチルテレフタレートあるいはエチレングリコールなどの回収原料も、出発原料の少なくとも一部として利用することが出来る。前記回収原料の品質は、使用目的に応じた純度、品質に精製されていなければならないことは言うまでもない。
【0069】
重縮合反応は、重縮合触媒を用いて行う。重縮合触媒としては、主としてAl、Ti、Mn、Fe、Co、Zn、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Ta、Pbからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物と、必要に応じてGe化合物、Sb化合物、W化合物などの第2金属化合物から選ばれる少なくとも1種が用いられることが好ましい。これらの化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液、エチレングリコールのスラリー等として反応系に添加される。Al、Ti、Mn、Fe、Co、Zn、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Ta、Pbはポリエステル樹脂(1)のリン化合物により失活されやすく、好適である。これらの中から特にAlおよびTiが好適に用いられる。なお、主としてとは、重合活性を主として担うものであり、同量の単独で重合させた場合に、重合速度の高い方をいう。
【0070】
Ti化合物としては、具体的には、例えば、テトラエチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート等のテトラアルキルチタネートおよびそれらの部分加水分解物、酢酸チタン、蓚酸チタニル、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルナトリウム、蓚酸チタニルカリウム、蓚酸チタニルカルシウム、蓚酸チタニルストロンチウム等の蓚酸チタニル化合物、トリメリット酸チタン、硫酸チタン、塩化チタン、チタンハロゲン化物の加水分解物、シュウ化チタン、フッ化チタン、六フッ化チタン酸カリウム、六フッ化チタン酸アンモニウム、六フッ化チタン酸コバルト、六フッ化チタン酸マンガン、チタンアセチルアセトナート、チタンおよびケイ素あるいはジルコニウムからなる複合酸化物、チタンアルコキサイドとリン化合物の反応物等が挙げられる。Ti化合物は、生成ポリマー中のTi残存量として0.1〜50ppmの範囲になるように添加する。
【0071】
Al化合物としては、具体的には、ギ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性酢酸アルミニウム、プロピオン酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、アクリル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、トリクロロ酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、クエン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウムなどのカルボン酸塩、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、ホスホン酸アルミニウムなどの無機酸塩、アルミニウムメトキサイド、アルミニウムエトキサイド、アルミニウムn-プロポキサイド、アルミニウムiso-プロポキサイド、アルミニウムn-ブトキサイド、アルミニウムt−ブトキサイドなどアルミニウムアルコキサイド、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムアセチルアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテート、アルミニウムエチルアセトアセテートジiso-プロポキサイドなどのアルミニウムキレート化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物およびこれらの部分加水分解物、酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらのうちカルボン酸塩、無機酸塩およびキレート化合物が好ましく、これらの中でもさらに塩基性酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化塩化アルミニウムおよびアルミニウムアセチルアセトネートがとくに好ましい。Al化合物は、生成ポリマー中のAl残存量として5〜200ppmの範囲になるように添加する。
【0072】
また、本発明に係るポリエステル樹脂(2)の製造方法においては、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物を併用してもよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、アルカリ金属ないしその化合物の使用がより好ましい。アルカリ金属ないしその化合物を使用する場合、特にLi,Na,Kの使用が好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
【0073】
前記のアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、粉体、水溶液、エチレングリコール溶液等として反応系に添加される。アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物は、生成ポリマー中のこれらの元素の残存量として1〜100ppmの範囲になるように添加する。
本発明において用いられる重縮合触媒は、リン化合物と併用することが好ましい。
【0074】
本発明で使用されるP化合物としては、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のリン化合物であることが好ましい。ポリエステルの重合時に、これらのリン化合物を用いることで触媒活性の向上効果及びポリエステルの熱安定性の向上効果が見られる。これらの中でも、ホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果及びポリエステルの熱安定性の向上効果が大きく好ましい。上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果及びポリエステルの熱安定性の向上効果が大きく好ましい。
【0075】
本発明で言うホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物とは、それぞれ下記式(1)〜(6)で表される構造を有する化合物のことを言う。
【0076】
【化1】

【0077】
【化2】

【0078】
【化3】

【0079】
【化4】

【0080】
【化5】

【0081】
【化6】

【0082】
本発明で用いられるホスホン酸系化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルなどが挙げられる。本発明で用いられるホスフィン酸系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニルなどが挙げられる。本発明で用いられるホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0083】
ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物の中では、下記式(7)〜(12)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0084】
【化7】

【0085】
【化8】

【0086】
【化9】

【0087】
【化10】

【0088】
【化11】

【0089】
【化12】

【0090】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0091】
また、本発明で用いられるリン化合物としては、下記一般式(13)〜(15)で表される化合物を用いると特に触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0092】
【化13】

【0093】
【化14】

【0094】
【化15】

【0095】
(式(13)〜(15)中、R1、R4、R5、R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2、R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0096】
本発明で用いられるリン化合物としては、上記式(13)〜(15)中、R1、R4、R5、R6が芳香環構造を有する基である化合物がとくに好ましい。
【0097】
本発明で用いられるリン化合物としては、例えば、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニル、ベンジルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチル、ジフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸メチル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸メチル、フェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィンオキサイド、メチルジフェニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらのうちで、フェニルホスホン酸ジメチル、ベンジルホスホン酸ジエチルがとくに好ましい。
【0098】
上述したリン化合物の中でも、本発明で用いられるリン化合物としてはフェノール部を同一分子内に有するリン化合物を用いることがとくに好ましい。フェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、フェノール構造を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、フェノール部を同一分子内に有する、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物、ホスフィン系化合物からなる群より選ばれる一種または二種以上の化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらの中でも、一種または二種以上のフェノール部を同一分子内に有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果がとくに大きく好ましい。
【0099】
また、本発明で用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、下記一般式(16)〜(18)で表される化合物を用いると特に触媒活性が向上するため好ましい。
【0100】
【化16】

【0101】
【化17】

【0102】
【化18】

【0103】
(式(16)〜(18)中、R1はフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基およびフェノール部を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4,R5,R6はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基などの置換基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。ただし、炭化水素基は分岐構造やシクロヘキシル等の脂環構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。R2とR4の末端どうしは結合していてもよい。)
【0104】
本発明で用いられるフェノール部を同一分子内に有するリン化合物としては、例えば、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジエチル、p−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸メチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルフェニルホスフィン酸フェニル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸メチル、p−ヒドロキシフェニルホスフィン酸フェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、トリス(p−ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メチルホスフィンオキサイド、および下記式(19)〜(22)で表される化合物などが挙げられる。これらのうちで、下記式(21)で表される化合物およびp−ヒドロキシフェニルホスホン酸ジメチルがとくに好ましい。
【0105】
【化19】

【0106】
【化20】

【0107】
【化21】

【0108】
【化22】

【0109】
上記の式(21)にて示される化合物としては、SANKO-220(三光株式会社製)があり、使用可能である。
【0110】
これらのフェノール部を同一分子内に有するリン化合物をポリエステルの重合時に添加することによって重縮合触媒の触媒活性が向上するとともに、重合したポリエステルの熱安定性も向上する。
【0111】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてリンの金属塩化合物を用いることがとくに好ましい。リンの金属塩化合物とは、リン化合物の金属塩であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物の金属塩を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物の金属塩としては、モノ金属塩、ジ金属塩、トリ金属塩などが含まれる。
【0112】
また、上記したリン化合物の中でも、金属塩の金属部分が、Li、Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0113】
本発明で用いられるリンの金属塩化合物としては、下記一般式(23)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0114】
【化23】

【0115】
(式(23)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0116】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0117】
上記一般式(23)で表される化合物の中でも、下記一般式(24)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0118】
【化24】

【0119】
(式(24)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0120】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。R3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0121】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0122】
上記式(24)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0123】
本発明で用いられるリンの金属塩化合物としては、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、カリウム[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベリリウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ストロンチウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、マンガンビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]、ナトリウム[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−クロロベンジルホスホン酸フェニル]、マグネシウムビス[4−クロロベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、マグネシウムビス[4−アミノベンジルホスホン酸メチル]、フェニルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[フェニルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[フェニルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、ナトリウム[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル]、リチウム[ベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[ベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸エチル]、ベンジルホスホン酸ナトリウム、マグネシウムビス[ベンジルホスホン酸]がとくに好ましい。
【0124】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物として、下記一般式(25)で表される特定のリンの金属塩化合物から選択される少なくとも一種を用いることがとくに好ましい。
【0125】
【化25】

【0126】
((式(25)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは4以下である。Mは(l+m)価の金属カチオンを表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0127】
これらの中でも、下記一般式(26)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0128】
【化26】

【0129】
(式(26)中、Mn+はn価の金属カチオンを表す。nは1,2,3または4を表す。)
【0130】
上記式(25)または(26)の中でも、Mが、Li,Na、K、Be、Mg、Sr、Ba、Mn、Ni、Cu、Znから選択されたものを用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。これらのうち、Li、Na、Mgがとくに好ましい。
【0131】
本発明で用いられる特定のリンの金属塩化合物としては、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、カリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸]、ベリリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル]、ストロンチウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、バリウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル]、マンガンビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ニッケルビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、銅ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、亜鉛ビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]などが挙げられる。これらの中で、リチウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、ナトリウム[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]、マグネシウムビス[3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル]がとくに好ましい。
【0132】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてP-OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物を用いることがとくに好ましい。P-OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物とは、分子内にP-OHを少なくとも一つ有するリン化合物であれば特に限定はされない。これらのリン化合物の中でも、P-OH結合を少なくとも一つ有するホスホン酸系化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0133】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0134】
本発明で用いられるP-OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、下記一般式(27)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0135】
【化27】

【0136】
(式(27)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0137】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0138】
上記したリン化合物の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0139】
本発明で用いられるP−OH結合を少なくとも一つ有するリン化合物としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、(1−ナフチル)メチルホスホン酸、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチル、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、2−メチルベンジルホスホン酸エチル、4−クロロベンジルホスホン酸フェニル、4−アミノベンジルホスホン酸メチル、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルなどが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチル、ベンジルホスホン酸エチルがとくに好ましい。
【0140】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物としてP-OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物を用いることがとくに好ましい。P-OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物とは、下記一般式(28)で表される化合物から選択される少なくとも一種の化合物のことを言う。
【0141】
【化28】

【0142】
((式(28)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0143】
これらの中でも、下記一般式(29)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0144】
【化29】

【0145】
(式(29)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0146】
上記のR3としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0147】
本発明で用いられるP−OH結合を少なくとも一つ有する特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸オクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルがとくに好ましい。
【0148】
本発明で用いられる好ましいリン化合物としては、化学式(30)であらわされるリン化合物が挙げられる。
【0149】
【化30】

【0150】
(式(30)中、R1は炭素数1〜49の炭化水素基、または水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜49の炭化水素基を表し、R2,R3はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基は脂環構造や分岐構造や芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0151】
また、更に好ましくは、化学式(30)中のR1,R2,R3の少なくとも一つが芳香環構造を含む化合物である。
【0152】
これらのリン化合物の具体例を以下に示す。
【0153】
【化31】

【0154】
【化32】

【0155】
【化33】

【0156】
【化34】

【0157】
【化35】

【0158】
【化36】

【0159】
また、本発明で用いられるリン化合物は、分子量が大きいものの方が重合時に留去されにくいため効果が大きく好ましい。
【0160】
上述したリン化合物の中でも、本発明では、リン化合物として下記一般式(37)で表される特定のリン化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物を使用することが好ましい。
【0161】
【化37】

【0162】
(上記式(37)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0163】
上記一般式(37)の中でも、下記一般式(38)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が高く好ましい。
【0164】
【化38】

【0165】
(上記式(38)中、R3、R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。炭化水素基はシクロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0166】
上記のR3、R4としては例えば、水素、メチル基、ブチル基等の短鎖の脂肪族基、オクタデシル等の長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基等の芳香族基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。
【0167】
本発明で用いられる特定のリン化合物としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジイソプロピル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジ−n−ブチル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルなどが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジオクタデシル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸ジフェニルがとくに好ましい。
【0168】
上述したリン化合物の中でも、本発明で使用する事がとくに望ましいリン化合物は、化学式(39)、(40)で表される化合物から選ばれる少なくとも一種のリン化合物である。
【0169】
【化39】

【0170】
【化40】

【0171】
上記の化学式(39)にて示される化合物としては、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、また化学式(40)にて示される化合物としてはIrganox1425(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)が市販されており、使用可能である。
【0172】
本発明で用いられるアルミニウム化合物もしくはリン化合物としては、リン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
リン化合物のアルミニウム塩とは、アルミニウム部を有するリン化合物であれば特に限定はされないが、ホスホン酸系化合物のアルミニウム塩を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。リン化合物のアルミニウム塩としては、モノアルミニウム塩、ジアルミニウム塩、トリアルミニウム塩などが含まれる。
【0173】
上記したリン化合物のアルミニウム塩の中でも、芳香環構造を有する化合物を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0174】
本発明で用いられるリン化合物のアルミニウム塩としては、下記一般式(41)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いると触媒活性の向上効果が大きく好ましい。
【0175】
【化41】

【0176】
((式(48)中、R1は水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはハロゲン基またはアルコキシル基またはアミノ基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R2は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0177】
上記のR1としては、例えば、フェニル、1―ナフチル、2―ナフチル、9−アンスリル、4−ビフェニル、2−ビフェニルなどが挙げられる。上記のR2としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。上記のR3-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0178】
本発明で用いられるリン化合物のアルミニウム塩としては、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、(1−ナフチル)メチルホスホン酸のアルミニウム塩、(2−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸のアルミニウム塩、(9−アンスリル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、2−メチルベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、4−クロロベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、4−アミノベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、4−メトキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、フェニルホスホン酸エチルのアルミニウム塩などが挙げられる。これらの中で、(1−ナフチル)メチルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、ベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩がとくに好ましい。
【0179】
本発明で用いられるアルミニウム化合物もしくはリン化合物としては、下記一般式(42)で表される特定のリン化合物のアルミニウム塩から選択される少なくとも一種を用いることがとくに好ましい。
【0180】
【化42】

【0181】
((式(42)中、R1、R2はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは3である。nは1以上の整数を表す。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0182】
これらの中でも、下記一般式(43)で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0183】
【化43】

【0184】
(式(43)中、R3は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基を含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。R4は、水素、炭素数1〜50の炭化水素基、水酸基またはアルコキシル基またはカルボニルを含む炭素数1〜50の炭化水素基を表す。lは1以上の整数、mは0または1以上の整数を表し、l+mは3である。炭化水素基はシキロヘキシル等の脂環構造や分岐構造やフェニルやナフチル等の芳香環構造を含んでいてもよい。)
【0185】
上記のR3としては例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、長鎖の脂肪族基、フェニル基、ナフチル基、置換されたフェニル基やナフチル基、−CH2CH2OHで表される基などが挙げられる。上記のR4-としては例えば、水酸化物イオン、アルコラートイオン、エチレングリコラートイオン、アセテートイオンやアセチルアセトンイオンなどが挙げられる。
【0186】
本発明で用いられる特定のリン化合物のアルミニウム塩としては、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸イソプロピルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸フェニルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸のアルミニウム塩などが挙げられる。これらの中で、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸エチルのアルミニウム塩、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホン酸メチルのアルミニウム塩がとくに好ましい。
【0187】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)を製造する際に使用できる第2金属化合物には、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、アンチモン、ゲルマニウム、タンタル、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、珪素、鉄、ニッケル、ガリウムおよびそれらの化合物などがある。
【0188】
これらの化合物の添加が前述のようなポリエステル樹脂(2)の特性、加工性、色調など製品に問題を生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重縮合時間の短縮による生産性を向上させる際に有効であり、好ましい。
【0189】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)、特に、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステル樹脂(2)の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラム、好ましくは0.60〜1.30デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.65〜1.00デシリットル/グラム、最も好ましくは0.70〜0.85デシリットル/グラムの範囲である。ポリエステル樹脂の極限粘度が0.55デシリットル/グラム未満では、得られた成形体等の機械的特性が悪い。また、ポリエステル樹脂の極限粘度が1.50デシリットル/グラムを越える場合は、成形機等による溶融時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子量化合物が増加したり、成形体が黄色に着色する等の問題が起こる。
【0190】
また本発明に係るポリエステル樹脂(2)、特に、主たる繰り返し単位が1,3−プロピレンテレフタレ−トから構成されるポリエステル樹脂(2)の極限粘度は、0.50〜1.30デシリットル/グラム、好ましくは0.55〜1.20デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.60〜1.00デシリットル/グラムの範囲である。極限粘度が0.50デシリットル/グラム未満では、得られた成形体の弾性回復および耐久性が悪くなり問題である。また極限粘度の上限値は、1.30デシリットル/グラムであり、これを越える場合は、成形体成形時に樹脂温度が高くなって熱分解が激しくなり、分子量の低下が激しく、また黄色に着色する等の問題が起こる。
【0191】
また本発明に係るポリエステル樹脂(2)、特に、主たる繰り返し単位がエチレン−2,6−ナフタレートから構成されるポリエステル樹脂(2)の極限粘度は、0.40〜1.00 デシリットル/グラム、好ましくは0.42〜0.90デシリットル/グラム、さらに好ましくは0.45〜0.80デシリットル/グラムの範囲である。IVが0.40デシリットル/グラム未満では、得られた成形体などの機械的特性が悪い。また、1.00 デシリットル/グラムを超える場合は、成形機などによる溶融時の樹脂温度を高くする必要が生じるため熱分解を伴うようになり、保香性に影響を及ぼす遊離の低分子化合物の増加、成形体が黄色に着色するなどの問題点が起こる。
【0192】
また本発明に係るポリエステル樹脂(2)に共重合されたジアルキレングリコール含有量は、前記ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは0.5〜7.0モル%、より好ましくは1.0〜6.0モル%、さらに好ましくは1.0〜5.0モル%であることが望ましい。ジアルキレングリコ−ル量が7.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成型時に分子量低下が大きくなったり、またアルデヒド類の含有量の増加量が大となり好ましくない。またジアルキレングリコ−ル含有量が0.5モル%未満のポリエステルを製造するには、エステル交換条件、エステル化条件あるいは重合条件として非経済的な製造条件を選択することが必要となり、コストが合わない。ここで、ポリエステル中に共重合されたジアルキレングリコールとは、例えば、主たる構成単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルの場合には、グリコールであるエチレングリコールから製造時に副生したジエチレングリコ−ルのうちで、前記ポリエステルに共重合したジエチレングリコ−ル(以下、DEGと略称する)のことであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合には、グリコールである1,3−プロピレングリコールから製造時に副生したジ(1,3−プロピレングリコ−ル)(またはビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル)のうちで、前記ポリエステルに共重合したジ(1,3−プロピレングリコ−ル(以下、DPGと称する))のことである。
【0193】
そして本発明に係るポリエステル樹脂(2)、特に、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トから構成されるポリエステルに共重合されたジエチレングリコール含有量は、前記のポリエステル樹脂を構成するグリコール成分の1.0〜5.0モル%、好ましくは1.3〜4.5モル%、更に好ましくは1.5〜4.0モル%であることが望ましい。ジエチレングリコール含有量が5.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成形時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコール含有量が1.0モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
【0194】
また、本発明に係るポリエステル樹脂(2)が、エチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステル樹脂である場合は、これを射出成形して得た厚さ5mmの成形体のヘイズが30%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下であり、かつ昇温時の結晶化温度(Tc1)が150℃〜175℃、好ましくは152〜172℃、さらに好ましくは155〜170℃の範囲であることが好ましい。
【0195】
また、本発明に係るポリエステル樹脂(2)のアセトアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下であることが望ましい。アルデヒド類含有量が50ppmを超える場合は、このポリエステル樹脂組成物から成形された成形体等の内容物の香味保持性の効果が悪くなる。また、これらの下限は製造上の問題から、0.1ppbであることが好ましい。
【0196】
ここで、アルデヒド類とは、ポリエステルがエチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアセトアルデヒドであり、1,3−プロピレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの場合はアリルアルデヒドである。
【0197】
また、本発明に係るポリエステル樹脂(2)がエチレンテレフタレートを主繰返し単位とするポリエステル樹脂であり、これからなる前記ポリエステル樹脂組成物がミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、アセトアルデヒド含有量が10ppm以下、好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは4ppm以下であることが望ましい。
【0198】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)の環状エステルオリゴマーの含有量は、前記ポリエステルの溶融重縮合体が含有する環状エステルオリゴマーの含有量の70%以下、好ましくは60%以下、さらに好ましくは50%以下、特に好ましくは35%以下であることが好ましい。環状エステルオリゴマー含有量の下限値は、経済的な生産の面から溶融重縮合体が含有する環状エステルオリゴマー含有量の20%以上、好ましくは22%以上、さらに好ましくは25%以上である。なお、ポリエステル樹脂(2)の溶融重縮合体が含有する環状エステルオリゴマーの含有量とは、溶融重縮合した数平均分子量が約5000以上のポリエステル樹脂(2)中に存在している、遊離の数種の環状エステルオリゴマーのうちで最も含有量が高い環状n量体の含有量のことである。本発明に係るポリエステル樹脂(2)がエチレンテレフタレ−トを主たる構成単位とするポリエステルの代表であるPETの場合は、環状n量体は環状3量体のことであり、かつ、溶融重縮合ポリエステルの環状3量体の含有量は約1.0重量%であるから、環状3量体の含有量は、好ましくは0.70重量%以下、より好ましくは0.50重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下であることが望ましい。本発明のポリエステル樹脂組成物から耐熱性中空成形体等を成形する場合は加熱金型内で熱処理を行うが、環状3量体の含有量が0.70重量%以上含有する場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。
【0199】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)中のファインの含有量は、0.1〜5000ppm、好ましくは0.1〜3000ppm、より好ましくは0.1〜1000ppm、さらに好ましくは0.1〜500ppm、最も好ましくは0.1〜100ppmであることが望ましい。配合量が0.1ppm未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形容器の口栓部の結晶化が不十分となり、このため口栓部の収縮量が規定値の範囲内に収まらず、キャッピング不可能となったり、また耐熱性中空成形容器を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形容器を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また5000ppmを超える場合は、結晶化速度が必要以上に早くなると共に、その速度の変動も大きくなる。したがって、中空成形体の口栓部の結晶化度が過大、かつ変動大となり、このため口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないため口栓部のキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。特に、ポリエステル樹脂(2)が中空成形体用のポリエステル樹脂として用いられる場合は、そのファイン含有量は、0.1〜500ppmが好ましい。
【0200】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)のチップの形状は、シリンダー型、角型、球状または扁平な板状等の何れでもよい。その平均粒径は、通常1.0〜4mm、好ましくは1.0〜3.5mm、さらに好ましくは1.0〜3.0mmの範囲である。例えば、シリンダー型の場合は、長さは1.0〜4mm、径は1.0〜4mm程度であるのが実用的である。球状粒子の場合は、最大粒子径が平均粒子径の1.1〜2.0倍、最小粒子径が平均粒子径の0.7倍以上であるのが実用的である。また、チップの重量は2〜40mg/個の範囲が実用的である。 (ポリエステル樹脂組成物)
【0201】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂(1)と、前記ポリエステル樹脂(2)とを主成分として含むポリエステル樹脂組成物である。本発明のポリエステル樹脂組成物を構成する前記ポリエステル樹脂(1)と前記ポリエステル樹脂(2)の混合割合は、前記ポリエステル樹脂(2)100重量部に対して前記ポリエステル樹脂(1)0.01重量部〜10重量部であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂(1)の配合量が0.01重量部未満の場合は、ポリエステル樹脂(2)に含まれる重縮合触媒を十分に失活させることができず、得られた成形体のアセトアルデヒド含有量が非常に多くなって香味保持性に影響し問題となる。また成形体の環状エステルオリゴマー含有量が非常に多くなり、連続成形時の金型汚れが激しくなる。このために透明性の優れた成形体が得られなくなるという問題が生じる。また前記ポリエステル樹脂(1)の配合量が10重量部を越える場合は、得られた成形体の耐熱性が悪くなったり、黄色く着色したりして商品価値が落ちるという問題が生じる。
【0202】
また、ポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)はその樹脂組成が実質的に同じであることが好ましい。ここで実質的に同じとは、組成の差が10モル%以下、好ましくは8モル%以下、より好ましくは6モル%以下、さらに好ましくは4モル%以下、特に好ましくは3モル%以下、最も好ましくは2モル%以下である。なお、ポリエステル樹脂(1)とポリエステル樹脂(2)で用いられるアルキレングリコール由来のジアルキレングリコールの場合は組成の差が15モル%以下、好ましくは12モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは8モル%以下、特に好ましくは6モル%以下、最も好ましくは5モル%以下であっても良い。
本発明のポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られた厚さ5mmの成形体のヘイズが30%以下、好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下であることが望ましい。特に、本発明のポリエステル樹脂組成物が中空成形体に用いられる場合は前記ヘイズは15%以下、また耐熱性中空成形体に用いられる場合は前記ヘイズは10%以下であることが望ましい。成形体のヘイズが30%を超える場合は,得られた成形体の透明性が悪くなって問題となり、商品価値がなくなる。
【0203】
また、前記ポリエステルがエチレンテレフタレートを主たる構成単位とするポリエステルの場合は、本発明のポリエステル樹脂組成物を射出成形して得た厚さ2mmの成形体からの試験片の昇温時の結晶化温度(以下「Tc1」と称する)が、140〜175℃の範囲、好ましくは142〜172℃の範囲、さらに好ましくは145〜170℃の範囲であることが望ましい。Tc1が175℃を越える場合は、加熱結晶化速度が非常に遅くなり中空成形体口栓部の結晶化が不十分となり、内容物の漏れの問題が発生する。また、Tc1が140℃未満の場合は、中空成形体の透明性が低下し問題となる。
【0204】
また、本発明に係るポリエステル樹脂(2)が、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステル樹脂の場合は、本発明のポリエステル樹脂組成物の環状三量体の含有量は、0.70重量%以下、好ましくは0.60重量%以下、より好ましくは0.50重量%以下であることが望ましい。本発明のポリエステル樹脂組成物から耐熱性の成形体等を成形する場合は加熱金型内などで熱処理を行うが、環状三量体の含有量が0.70重量%を越える場合には、加熱金型表面へのオリゴマ−付着が急激に増加し、得られた成形体等の透明性が非常に悪化する。特に、耐熱性中空成形体の場合には、環状三量体の含有量は0.40重量%以下であることが望ましい。
【0205】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物のアルデヒド類の含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。アルデヒド類の含有量が50ppm以上の場合は、このポリエステル樹脂組成物から成形された容器等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。特に、本発明に係るポリエステル樹脂が、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステル樹脂であり、これからなる前記ポリエステル樹脂組成物がミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、前記ポリエステル樹脂組成物のアルデヒド類の含有量は10ppm以下、好ましくは8ppm以下、より好ましくは6ppm以下、最も好ましくは5ppm以下であることが望ましい。
また、前記ポリエステル樹脂組成物を290℃で射出成形して得られた成形体のアセトアルデヒド含有量をBtppmとし、射出成形前の前記ポリエステル樹脂組成物のアセトアルデヒド含有量をB0ppmとした場合に、Bt−B0が1〜30ppmであることが好ましい。
【0206】
本発明のポリエステル樹脂組成物の前記のBt−B0の値が、1〜30ppmの範囲にあるポリエステル樹脂組成物を用いることにより内容物の風味や香りなどの特性が変化することのない成形体を得ることができる。前記のBt−B0の値が、30ppmを越える場合には、異臭がきつく、内容物の風味や香りなどの特性が悪くなり問題となる。また、前記のBt−B0の値を1ppm未満に低減させても香味保持性はほとんど変わらず,効果がないことが判っている。
【0207】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、従来公知の方法により前記のポリエステル樹脂(1)と前記のポリエステル樹脂(2)を混合して得ることができる。例えば、前記のポリエステル樹脂(1)と前記のポリエステル樹脂(2)とをタンブラー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等でドライブレンドする方法、さらにドライブレンドした混合物を一軸押出機、二軸押出機、ニーダー等で1回以上溶融混合する方法、さらには必要に応じて溶融混合物を高真空下または不活性ガス雰囲気下で固相重合する方法などが挙げられる。
【0208】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物にはポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタ−ル樹脂、ポリブチレンテレフタレ−ト樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の樹脂0.1ppb〜1000ppmを配合してもよい。本発明のポリエステル樹脂組成物中での前記のポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂の配合割合は0.1ppb〜1000ppm、好ましくは0.3ppb〜100ppm、より好ましくは0.5ppb〜1ppm、さらに好ましくは0.5ppb〜45pbbである。配合量が0.1ppb未満の場合は、結晶化速度が非常におそくなり、中空成形体の口栓部の結晶化が不十分となるため、サイクルタイムを短くすると口栓部の収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となったり、また、耐熱性中空成形体を成形する延伸熱固定金型の汚れが激しく、透明な中空成形体を得ようとすると頻繁に金型掃除をしなければならない。また1000ppmを超える場合は、結晶化速度が早くなり、中空成形体の口栓部の結晶化が過大となり、このため口栓部の収縮収縮量が規定値範囲内におさまらないためキャッピング不良となり内容物の漏れが生じたり、また中空成形体用予備成形体が白化し、このため正常な延伸が不可能となる。また、シ−ト状物の場合、1000ppmを越えると透明性が非常に悪くなり、また延伸性もわるくなって正常な延伸が不可能で、厚み斑の大きな、透明性の悪い延伸フイルムしか得られない。
【0209】
本発明のポリエステル樹脂組成物に配合されるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、またはα−オレフィン系樹脂が挙げられ、これらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0210】
本発明のポリエステル樹脂組成物に配合されるポリアミド樹脂としては、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン8、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン611、ナイロン612、ナイロン6T、ナイロン6I、ナイロンMXD6、ナイロン6/MXD6、ナイロンMXD6/MXDI、ナイロン6/66、ナイロン6/610、ナイロン6/12、ナイロン6/6T、ナイロン6I/6T等が挙げられる。またこれらの樹脂は結晶性でも非晶性でもかまわない。
【0211】
また、前記のポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂配合ポリエステル樹脂組成物の製造は、前記ポリエステル樹脂(2)に前記熱可塑性樹脂を、その含有量が前記範囲となるように、直接に添加し溶融混練する方法以外に、マスタ−バッチとして添加し溶融混練する方法等の慣用の方法、前記の熱可塑性樹脂を、前記ポリエステル樹脂(2)の製造段階、例えば、溶融重縮合時、溶融重縮合直後、予備結晶化直後、固相重合時、固相重合直後等のいずれかの段階、または、製造段階を終えてから成形段階に到るまでの間等、で粉粒体として直接に添加するか、或いは、ポリエステル樹脂(2)のチップの流動条件下に前記の熱可塑性樹脂製の部材に接触させる等の方法で混入させた後、溶融混練する方法等によることもできる。
【0212】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、中空成形体、トレー、2軸延伸フイルム等の包装材、金属缶被覆用フイルム、モノフィラメントを含む繊維などとして好ましく用いることが出来る。また、本発明のポリエステル樹脂組成物は、多層成形体や多層フイルム等の1構成層としても用いることが出来る。
【0213】
本発明に係るポリエステル樹脂(2)が、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステル樹脂の場合は、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体の極限粘度は、0.55〜1.50デシリットル/グラムであるのが好ましく、0.58〜1.20デシリットル/グラムであるのがより好ましい。
【0214】
また、本発明に係るポリエステル樹脂(2)が、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステル樹脂の場合は、本発明のポリエステル樹脂組成物からなる成形体のアセトアルデヒド含有量は、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは25ppm以下、さらに好ましくは18ppm以下である。
【0215】
本発明のポリエステル樹脂組成物は、一般的に用いられる溶融成形法を用いてフィルム、シート、容器、その他の包装材料を成形することができる。また、本発明のポリエステル樹脂組成物からなるシート状物を少なくとも一軸方向に延伸することにより機械的強度を改善することが可能である。本発明のポリエステル樹脂組成物からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また圧空成形、真空成形によリカップ状やトレイ状に成形することもできる。
【0216】
以下には、PETの場合の種々の用途についての具体的な製法を簡単に説明する。
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のポリエステル樹脂組成物から成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。この場合の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜300℃の範囲である。延伸温度ば通常70〜120℃、好ましくは90〜110℃で、延伸倍率は通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定処理を行い、耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常、圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
【0217】
また、口栓部に耐熱性を付与するために、射出成形または押出成形により得られたプリフォームの口栓部を遠赤外線や近赤外線ヒータ設置オーブン内で結晶化させたり、あるいはボトル成形後に口栓部を前記のヒータで結晶化させる。
【0218】
本発明のポリエステル樹脂組成物には、前記の添加量の熱可塑性樹脂以外に、その他の熱可塑性樹脂、例えばガスバリヤー性のポリエステル、紫外線吸収性ポリエステル、キシリレン基含有ポリアミドなどのガスバリヤー性のポリアミド樹脂等の適当量を、必要に応じて、本発明の作用効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0219】
また本発明のポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、酸素捕獲剤、外部より添加する滑剤や反応中に内部析出させた滑剤、離型剤、核剤、安定剤、帯電防止剤、青み付け剤、染料、顔料などの各種の添加剤を配合してもよい。
【0220】
また、本発明のポリエステル樹脂組成物をフイルム用途に使用する場合には、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、ポリエステル中に炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等の無機粒子、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等の有機塩粒子やジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体等の架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。
【実施例】
【0221】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこの実施例に限定されるものではない。
なお、主な特性値の測定法を以下に説明する。
【0222】
(1)ポリエステルの極限粘度(以下「IV」という)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
ポリエステルチップの極限粘度を測定するための試料は、ポリエステルを冷凍粉砕して測定に供する。
【0223】
(2)ポリエステルのアセトアルデヒド含有量(以下「AA含有量」という)
試料/蒸留水=0.2〜1グラム/2ccを窒素置換したガラスアンプルに入れた上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィーで測定し、濃度をppmで表示した。前記操作を5回繰返し、その平均値をAA含有量とする。
【0224】
(3)ポリエステルのジエチレングリコール含有量(以下[DEG含有量」という)
メタノールによって分解し、ガスクロマトグラフィーによりDEG含有量を定量し、全グリコール成分に対する割合(モル%)で表した。
【0225】
(4)ポリエステルの環状3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
試料を冷凍粉砕あるいは細片化し、これをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈する。これにメタノールを加えてポリマーを沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法よりエチレンテレフタレート単位から構成される環状3量体を定量した。前記操作を5回繰返し、その平均値をCT含有量とする。
【0226】
(5)ファインの含有量の測定
樹脂約0.5kgを、JIS−Z8801による呼び寸法5.6mmの金網をはった篩(A)と呼び寸法1.7mmの金網をはった篩(直径20cm)(B)を2段に組合せた篩の上に乗せ、テラオカ社製揺動型篩い振トウ機SNF−7で1800rpmで1分間篩った。この操作を繰り返し、樹脂を合計20kg篩った。ただし、ファイン含有量が少ない場合には、試料の量を適宜変更する。
【0227】
前記の篩(B)の下にふるい落とされたファインは、0.1%のカチオン系界面活性剤水溶液で洗浄し、次いでイオン交換水で洗浄したあと岩城硝子社製G1ガラスフィルターで濾過して集めた。これらをガラスフィルターごと乾燥器内で100℃で2時間乾燥後、冷却して秤量した。再度、イオン交換水で洗浄、乾燥の同一操作を繰り返し、恒量になったことを確認し、この重量からガラスフィルターの重量を引き、ファイン重量を求めた。ファイン含有量は、ファイン重量/篩いにかけた全樹脂重量、である。
【0228】
(6)ヘイズ(霞度%)
下記(9)のポリエステル樹脂(1)の成形体(肉厚4mm)、ポリエステル樹脂(2)およびポリエステル樹脂組成物の成形体(肉厚5mm)、および(10)の中空成形体の胴部(肉厚約0.45mm)より試料を切り取り、日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定。
【0229】
(7)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)
セイコー電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。下記(9)の成形板の2mm厚みのプレートの中央部からの試料10mgを使用。昇温速度20度C/分で昇温し、その途中において観察される結晶化ピークの頂点温度を測定し、昇温時結晶化温度(Tc1)とする。
【0230】
(8)プリフォーム口栓部の加熱による密度上昇
プリフォーム口栓部を自家製の赤外線ヒーターによって180秒間熱処理し、天面から試料を採取し密度を測定した。
【0231】
(9)ポリエステル樹脂(1)、ポリエステル樹脂(2)およびポリエステル樹脂組成物の段付成形板の成形
本特許記載にかかる段付成形板の成形においては、減圧乾燥機を用いて水分率を約50ppm以下に減圧乾燥したポリエステルチップを名機製作所製射出成形機M−150C―DM型射出成形機により図1、図2に示すようにゲート部(G)を有する、2mm〜11mm(A部の厚み=2mm、B部の厚み=3mm、C部の厚み=4mm、D部の厚み=5mm、E部の厚み=10mm、F部の厚み=11mm)の厚さの段付成形板を射出成形した。
【0232】
ヤマト科学製真空乾燥器DP61型を用いて予め減圧乾燥したポリエステルチップを用い、成形中にチップの吸湿を防止するために、成形材料ホッパー内は乾燥不活性ガス(窒素ガス)パージを行った。
M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュウ回転数=70%、スクリュウ回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、以降ノズルを含め290℃に設定した。射出条件は射出速度及び保圧速度は20%、また成形品重量が146±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整し、その際保圧は射出圧力に対して0.5MPa低く調整した。
射出時間、保圧時間はそれぞれ上限を10秒、7秒,冷却時間は50秒に設定し、成形品取出時間も含めた全体のサイクルタイムは概ね75秒程度である。
【0233】
金型には常時、水温10℃の冷却水を導入し温調するが、成形安定時の金型表面温度は22℃前後である。
成形品特性評価用のテストプレートは、成形材料を導入し樹脂置換を行った後、成形開始から11〜18ショット目の安定した成形品の中から任意に選ぶものとした。
【0234】
2mm厚みのプレート(図1のA部)は昇温時の結晶化温度(Tc1)測定およびアセトアルデヒド含有量の測定、またポリエステル樹脂(1)の4mm厚みのプレート(図1のC部)およびポリエステル樹脂組成物の5mm厚みのプレート(図1のD部)はヘイズ(霞度%)測定、に使用する。
【0235】
(10)中空成形体の成形
乾燥したポリエステル樹脂組成物を用いて各機製作所製M−150C―DM射出成型機により樹脂温度290℃でプリフォームを成形した。このプリフォームの口栓部を自家製の口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた。次にこの予備成形体をCORPOPLAST社製のLB−01E成形機で二軸延伸ブローし、引き続き約130℃に設定した金型内で熱固定し、容量が1000ccの容器(胴部肉厚0.40mm)を成形した。延伸温度は100℃にコントロールした。
【0236】
(11)中空成形体からの内容物の漏れ評価
前記(10)で成形した中空成形体に90℃の温湯を充填し、キャッピング機によりキャッピングをしたあと容器を倒し放置後、内容物の漏洩を調べた。また、キャッピング後の口栓部の変形状態も調べた。
【0237】
(12)ポリエステルチップの平均密度およびプリフォーム口栓部の密度
硝酸カルシュウム/水溶液の密度勾配管で30℃で測定した。
【0238】
(ポリエステル樹脂(1)―A)
攪拌機付き熱媒循環式エステル化反応器に高純度テレフタル酸1162kgとその2倍モル量のエチレングリコールを仕込み、トリエチルアミンを酸成分に対して0.3モル%加え、0.25MPaの加圧下245℃にて水を系外に留去しながらエステル化反応を2時間行いエステル化率が95%のビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびオリゴマーの混合物(以下BHET混合物という)を得た。このBHET混合物を重縮合器に輸送し、これにリン酸のエチレングリコール溶液および重縮合触媒として結晶性二酸化ゲルマニウム/エチレングリコール溶液を得られるポリエステルに対し、それぞれP残存量で約2000ppmおよびGe残存量で約20ppmになるように添加した。次いで、窒素雰囲気下、常圧にて245℃で10分間攪拌した。その後、250℃まで昇温しつつ反応系の圧力を徐々に下げて13.3Pa(0.1Torr)として50分間第一段目の初期重縮合を行い、さらに275℃、13.3PaでIVが約0.65デシリットル/グラムになるまで重縮合反応を実施した。放圧に続き、微加圧下のレジンを冷水中にストランド状に吐出して急冷し、ストランドカッターでチップ化してシリンダー形状のチップを得た。
次いで、直ちに静置式乾燥機にて窒素気流下で約50〜約170℃で熱処理し、振動式篩分工程および気流分級工程によって処理して、結晶化ポリマーを得た。IVは0.65デシリットル/グラム、アセトアルデヒド含有量は43ppm、DEG含有量は5.0モル%、ファイン含有量は約70ppm、4mmm成形体のヘイズは18.4%であった。
【0239】
(ポリエステル樹脂(1)−B)
重縮合時間を短縮する以外は前記ポリエステル樹脂(1)−Aを得るのと同一条件でIVが約0.55デシリットル/グラムになるまで溶融重縮合反応を実施した。
【0240】
上記溶融重縮合反応で得られたポリエステルチップを加熱処理してポリエステルを結晶化させた後、静置固相重縮合塔で窒素気流下、約100℃〜130℃、次いで150℃で乾燥後、205℃で固相重合しIVが0.72デシリットル/グラム、アセトアルデヒド含有量(A0)は23ppm、DEG含有量は5.1モル%の固相重縮合ポリエステル樹脂を得た。さらに前記の固相重合PETチップを振動式篩分工程および気流分級工程によって処理し、ファイン含有量を約50ppmとした。4mmm成形体のヘイズは5.7%であった。
【0241】
(ポリエステル樹脂(1)−C)
重縮合触媒として三酸化アンチモンを残存量が約300ppmになるように添加し、重縮合温度を295℃とする以外は前記ポリエステル樹脂(1)−Aを得るのと同一条件でIVが約0.50デシリットル/グラムになるまで溶融重縮合反応を実施した。
【0242】
上記溶融重縮合反応で得られたポリエステルチップを回転式ブレンダーで加熱処理し、振動式篩分工程および気流分級工程によってファイン等除去処理して、結晶化ポリマーを得た。P残存量は1890ppm、アセトアルデヒド含有量は50ppm、DEG含有量は5.1モル%、ファイン含有量は約90ppm、4mmm成形体のヘイズは50.3%であった。
【0243】
(ポリエステル樹脂(2)−A)
予め反応物を含有している第1エステル化反応器に、高純度テレフタル酸とエチルグリコールとのスラリーを連続的に供給し、撹拌下、約250℃、0.5kg/cm2Gで平均滞留時間3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応器に送付し、撹拌下、約260℃、0.05kg/cm2Gで所定の反応度まで反応を行った。また、塩基性酢酸アルミニウムのエチレングリコール溶液と、Irganox1222(チバ・スペシャルティーケミカルズ社製)とエチレングリコールを事前に加熱処理したエチレングリコール溶液とをこの第2エステル化反応器に連続的に供給した。このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応器に供給し、撹拌下、約265℃、25torrで1時間、次いで第2重縮合反応器で撹拌下、約265℃、3torrで1時間、さらに最終重縮合反応器で撹拌下、約275℃、0.3〜1torrで重縮合させた。得られた溶融重縮合PETの極限粘度は0.57デシリットル/グラムであった。重縮合反応物をチップ化してシリンダー形状のチップとし、ひきつづき窒素雰囲気下、約155℃で結晶化し、さらに窒素雰囲気下で約200℃に予熱後、連続固相重合反応器に送り窒素雰囲気下で約206℃で固相重合した。固相重合後篩分工程およびファイン除去工程で連続的に処理しファインを除去した。
【0244】
得られたPETの極限粘度は0.75デシリットル/グラム、アセトアルデヒド含有量は3.3ppm、DEG含有量は2.8モル%、環状3量体の含有量は3400ppm、密度は1.398g/cm3であり、(9)の方法での成形体のヘイズは6.0%、Tc1は165℃あった。Al残存量は21ppm、P残存量は28ppm、ファイン含有量は約50pmであった。
【0245】
なお、環状3量体含有量は、ポリマーをヘキサフルオロイソプロパノール/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈した液にメタノールを加えてポリマーを沈殿させた後、濾過し、濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法より定量した。
【0246】
(実施例1)
上記ポリエステル樹脂(2)−A、95重量部および触媒失活用ポリエステル樹脂(1)−A、5重量部をブレンダーにて混合した。その後、(9)の方法で段付成形板、(10)の方法で中空成形体であるボトルを成形した。
段付成形板(5mm厚み)のヘイズは8.7%、ポリエステル樹脂組成物のTc1は168℃であり、口栓部の密度は1.381g/cm3と問題のない値であり、ボトルの透明性(ヘイズ)も1.5%と良好であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。ボトルのAA含有量は13.5pm、と問題なかった。
【0247】
(実施例2)
上記ポリエステル樹脂(2)−A、95重量部および触媒失活用ポリエステル樹脂(1)−B、5重量部を混合し、実施例1と同様にして成形評価(9)の方法で段付成形板、(11)の方法で中空成形体であるボトルを成形した。
段付成形板(5mm厚み)のヘイズは7.2%、ポリエステル樹脂組成物のTc1は169℃であり、口栓部の密度は1.380g/cm3と問題のない値であり、ボトルの透明性(ヘイズ)も1.2%と良好であった。また、内容物の漏れ試験でも、問題はなく、口栓部の変形もなかった。ボトルのAA含有量は12.6pm、と問題なかった。
【0248】
(比較例1)
上記ポリエステル樹脂(2)−A、95重量部および触媒失活用ポリエステル樹脂(1)−C、5重量部を混合し、実施例1と同様にして成形評価(9)の方法で段付成形板、(11)の方法で中空成形体であるボトルを成形した。
段付成形板(5mm厚み)のヘイズは39.8%と高く、Tc1は140℃と低く、ボトルのヘイズは7.0%と高く、透明性は非常に悪かった。また中空成形体口栓部の密度は1.395g/cm3と高く、内容物の漏れ試験では漏れが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0249】
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステルの製造時に用いられる重縮合触媒の作用を失活させ、成形時の環状エステルオリゴマーやアルデヒド類の生成を抑制するために使用することができるポリエステル樹脂として好適に用いることができる。特に本発明のポリエステル樹脂組成物は、適切な結晶化速度を持ち、透明性や香味保持性に優れ、連続成形時に金型汚れによる透明性の悪化などの問題がなく、また耐熱寸法安定性にも優れた中空成形体などを効率よく生産することができるポリエステル樹脂組成物であり、これから前記の特性を備えた成形体をえることができ、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0250】
【図1】実施例において使用した段付成形板の平面図
【図2】図1の段付成形板の側面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とからなり、リン化合物をリン原子として100〜5000ppmの量を共重合または配合したポリエステル樹脂であって、前記ポリエステル樹脂を290℃で射出成形した4mm厚みの成形体のヘイズが40%以下であることを特徴とするポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂(1)が、主たる構成単位がエチレンテレフタレートから構成されるポリエステルであり、アセトアルデヒド含有量が150ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記リン化合物が、リン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、亜リン酸系化合物、亜ホスホン酸系化合物、亜ホスフィン酸系化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
重縮合触媒が、Sb化合物、Ge化合物、W化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のポリエステル樹脂(1)と、Al、Ti、Mn、Fe、Co、Zn、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Ta、Pbからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む化合物と必要に応じてアンチモン化合物および/またはゲルマニウム化合物を含有する、主として芳香族ジカルボン酸成分とグリコール成分とから構成されるポリエステル樹脂(2)とからなるポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物を成形してなることを特徴とするポリエステル成形体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−28301(P2006−28301A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207335(P2004−207335)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】