説明

ポリエステル樹脂粒子水分散液およびその製造方法、静電荷現像用トナーおよびその製造方法、静電荷現像用現像剤

【課題】かぶりのない、発色性に優れた画質を有する静電荷現像用トナーおよび静電荷現像用現像剤を提供するである。
【解決手段】ポリエステル樹脂粒子水分散液は、ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、必要に応じて、ポリカルボン酸塩とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した電子写真装置に利用し得る静電荷現像用トナー及び静電荷現像用現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳化重合凝集法によるトナーの製造方法がいくつか提案されている(例えば、特許文献1,2)。これらは、乳化重合法により樹脂分散液を作成し、他方溶媒に着色剤を分散した着色剤分散液を作成し、これらを混合してトナー粒径に相当する凝集体を形成し、加熱することによって融合・合一させるトナーの製造方法である。この製法では、結着樹脂を粒度分布が狭く、平均粒径数十〜数百nmの微粒子にしたものを、着色剤分散液などとともに凝集合一させることが必要となる。この乳化重合凝集法で使用される樹脂は、乳化重合で微粒子を作製することができるスチレン−アクリル系樹脂であった。一方、トナー用樹脂としては、定着時に急激に溶融し、画像表面が平滑になる樹脂として、低分子量化しても十分な可とう性を有すことで発色性が良く、また塩化ビニルフィルムと接触させておいてもトナーの張り付きがないポリエステル樹脂が、カラートナー用樹脂として用いられるようになってきている。
【0003】
ポリエステル樹脂を用いて粒子を作製するには、例えば特許文献3に記載されているように、酸価8mgKOH/g未満であるポリエステル樹脂とアミン系の塩基性化合物と界面活性剤または保護コロイド作用を有する化合物とを混合し、転相乳化法によりでポリエステル樹脂粒子水分散体を得る方法が提案されている。この方法は、用いる溶剤が比較的少量であることから、製造コストを下げられる点で好ましい。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−282752号公報
【特許文献2】特開平6−250439号公報
【特許文献3】特開2003−253102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献3に記載のポリエステル樹脂粒子水分散体をトナーの製造に用いた場合、塩基性化合物がトナー中に残留し、トナーの帯電性が低下し、その結果、かぶりが生じて画質が低下するという問題点が生じるおそれがあった。一方、塩基性化合物を除くと、ポリエステル樹脂の乳化能力が不十分となり、トナー作製に必要な平均粒径を持つ粒子が得られないという問題が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、ポリエステル樹脂粒子分散液中のポリエステル樹脂の安定性を向上させ、均一な粒子を得るとともに、優れた帯電性を有し、かぶりの少ない又はかぶりのない静電荷現像用トナーおよび静電荷現像用現像剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の特徴を有する。
【0008】
(1)ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩とを含むポリエステル樹脂粒子水分散液。
【0009】
(2)ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩とを含むポリエステル樹脂粒子水分散液。
【0010】
(3)ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、着色剤と、離型剤とを含有する静電荷現像用トナー。
【0011】
(4)ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩と、着色剤と、離型剤とを含有する静電荷現像用トナー。
【0012】
(5)上記(3)または(4)に記載の静電荷現像用トナーを用いる静電荷現像用現像剤。
【0013】
(6)ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液の製造方法。
【0014】
(7)ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩と、有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液の製造方法。
【0015】
(8)ポリエステル樹脂と一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤粒子および離型剤粒子の凝集粒子分散液を形成した後、前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して融合・合一する静電荷現像用トナーの製造方法。
【0016】
(9)ポリエステル樹脂と一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩とポリカルボン酸塩と有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤粒子および離型剤粒子の凝集粒子分散液を形成した後、前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して融合・合一する静電荷現像用トナーの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、メカニズムは明らかではないが、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。これにより、ポリエステル樹脂ラテックスの安定性が向上し、粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。さらに、一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸を用いた場合には、さらに粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、メカニズムは明らかではないが、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。これにより、ポリエステル樹脂ラテックスの安定性が向上し、粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。さらに、一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸を用いた場合には、さらに粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。また、ポリカルボン酸成分を添加したことにより、転送乳化時にポリカルボン酸成分が立体反発となり、より均一な粒子化が可能となる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。これにより、ポリエステル樹脂ラテックスの安定性が向上し、粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。さらに、一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸を用いた場合には、さらに粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。その結果、上記ポリエステル樹脂粒子を用いて作製されたトナーの粒子径は均一化し、画像のかぶりが改善される。また、上記ポリエステル樹脂の粒子化に、従来のように、アミン系塩基性化合物を用いていないため、上記ポリエステル樹脂粒子を用いた作製されたトナーは帯電性が損なわれず、これにより、かぶりの少ない又はかぶりのない良好な画質を得ることができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。これにより、ポリエステル樹脂ラテックスの安定性が向上し、粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。さらに、一分子に2個のカルボキシル基があるため、さらに粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。さらに、一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸を用いた場合には、さらに粒度分布の狭いより均一な粒子化が可能となる。その結果、上記ポリエステル樹脂粒子を用いて作製されたトナーの粒子径は均一化し、画像のかぶりが改善され、さらに、一分子に2個のカルボキシル基があるため、トナー粒子形成時の粒子形成性が改善され微小粒子量が低減できる。また、上記ポリエステル樹脂の粒子化に、従来のように、アミン系塩基性化合物を用いていないため、上記ポリエステル樹脂粒子を用いて作製されたトナーは帯電性が損なわれず、これにより、かぶりの少ない又はかぶりのない良好な画質を得ることができる。また、ポリエステル樹脂分散液中に存在するポリカルボン酸の立体反発により、トナー製造時において、粗大粒子の形成が抑制される。その結果、長期にわたっての現像剤を使用においても、粗大粒子由来の画像中のスジ発生を抑制することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、従来に比べ帯電性の高いトナーであって、トナー粒子形成時の粒子形成性が改善され微小粒子量が低減でき、長期にわたっての現像剤を使用においてもかぶりの発生を抑制することができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となり、さらに、一分子に2個のカルボキシル基があるため、1分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸に比べ少ない添加量であっても、転送乳化時のポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となり、さらに、一分子に2個のカルボキシル基があるため、1分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸に比べ少ない添加量であっても、転送乳化時のポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。加えて、ポリカルボン酸による立体反発の作用により、より転送乳化時のポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となり、さらに、一分子に2個のカルボキシル基があるため、1分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸に比べ少ない添加量であっても、転送乳化時のポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。したがって、得られたポリエステル樹脂粒子は従来に比べ、粒子分布の狭くより均一な粒子である。このポリエステル樹脂粒子を用いたトナーであれば、かぶりを生じにくく、また従来のように、上記ポリエステル樹脂の粒子化にアミン系塩基性化合物を用いていないため、トナーの帯電性が損なわれず、したがって、かぶりの少ない又はかぶりのない良好な画質を得ることができる。
【0025】
請求項9に係る発明によれば、長鎖または分岐のアルキル基と弱酸であるカルボキシル基をもつ界面活性剤を用いることで、転相乳化でのポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となり、さらに、一分子に2個のカルボキシル基があるため、1分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸に比べ少ない添加量であっても、転送乳化時のポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。加えて、ポリカルボン酸による立体反発の作用により、より転送乳化時のポリエステルを含む相、水相とのなじみのバランスが良好となる。したがって、得られたポリエステル樹脂粒子は従来に比べ、粒子分布の狭くより均一な粒子となる。このポリエステル樹脂粒子を用いたトナーであれば、かぶりを生じにくく、また従来のように、上記ポリエステル樹脂の粒子化にアミン系塩基性化合物を用いていないため、トナーの帯電性が損なわれず、したがって、かぶりの少ない又はかぶりのない良好な画質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のポリエステル樹脂粒子水分散液およびその製造方法、静電荷現像用トナーおよびその製造方法、静電荷現像用現像剤を詳細に説明する。
【0027】
<ポリエステル樹脂粒子水分散液>
本実施の形態のポリエステル樹脂粒子水分散液は、ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩とを含む。
【0028】
さらに、本実施の形態の他のポリエステル樹脂粒子水分散液は、ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩とを含む。
【0029】
以下に、上述の構成成分について具体的に説明する。
【0030】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂としては、主として多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。 非結晶性ポリエステル樹脂を用いる場合には、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、樹脂粒子分散液を容易に調製することができる点で有利である。
【0031】
多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することもできる。
【0032】
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0033】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステル樹脂に、さらにモノカルボン酸、および/またはモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシル基、および/またはカルボキシル基をエステル化し、ポリエステル樹脂の酸価を調整しても良い。モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
【0034】
ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造することができる。
【0035】
このポリエステル樹脂の合成に使用する触媒としては、アンチモン系、スズ系、チタン系、アルミニウム系の触媒が使用される。例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド等の有機金属やテトラブチルチタネート等の金属アルコキシドなどのエステル化触媒が挙げられる。環境への影響や安全性の観点から、チタン系やアルミニウム系が望ましい。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01〜1.00重量%とすることが好ましい。
【0036】
ポリエステル樹脂粒子水分散液の作成については、後述するカルボン酸、ポリカルボン酸の添加、樹脂の酸価の調整により乳化分散し、調製することが可能である。
【0037】
また、ホモジナイザーなどの分散機により水中に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。また、樹脂に後述するカルボン酸、ポリカルボン酸を加え、ホモジナイザーなどの分散機により水中にて乳化分散する方法や転相乳化法などにより、樹脂粒子分散液を調製してもよい。
【0038】
[一分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸]
本実施の形態で用いる一分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸としては、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)であり、具体的には、直鎖のカルボン酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリン酸、カプロン酸、オクタン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩などを単独あるいは混合して用いることができる。また、分岐のカルボン酸としては、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、トリメチルヘキサン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩などを単独あるいは混合して用いることができる。炭素原子数が6以下、20以上では樹脂粒子が安定化せず平均粒径が大きくなり、または粒子とならなくなる。上記カルボン酸において、炭素原子数11〜15であるのアルキル基またはアルキレン基を有するものがより好ましい。
【0039】
[一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸]
本実施の形態で用いる一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸としては、一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)であり、具体的には、直鎖のカルボン酸としては、オクタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸のナトリウム塩またはカリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩などを単独あるいは混合して用いることができる。また、分岐のカルボン酸としては、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、トリメチルヘキサン酸のナトリウム塩またはカリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩などを単独あるいは混合して用いることができる。
【0040】
[ポリカルボン酸]
本実施の形態で用いるポリカルボン酸としては、具体的には、カルボキシル基を含むビニルモノマーを含む単量体組成物を重合して得られるビニルポリマーのナトリウム塩またはカリウム塩、カルシウム塩またはマグネシウム塩であり、カルボキシル基を含むビニルモノマーとしては、(メタ)アクリル酸系単量体としては、アクリル酸、メタアクリル酸、β−カルボキキシエチルアクリレート、β−カルボキキシエチルメタアクリレート、4−カルボキシスチレン、2−アクロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−アクロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−アクロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−アクロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、フマル酸、マレイン酸、2−ブテン−1,4−ジカルボン酸、および、フマル酸、マレイン酸、2−ブテン−1,4−ジカルボン酸のハーフエステル体、イタコン酸等が挙げられるが、これに限られるものではない。また、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体、スチレンなどのスチレン系単量体、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸などのビニル系モノマーを共重合しても得られたポリカルボン酸塩が水に溶解できれば使用することができる。ポリカルボン酸塩は、ビニルモノマーとして添加し、樹脂微粒子分散液を作製したのち、ラジカル重合開始剤を添加して該ビニルモノマーを重合させてもよい。
【0041】
なお、上記(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸n−メチル、(メタ)アクリル酸n−エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル、(メタ)アクリル酸n−テトラデシル、(メタ)アクリル酸n−ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−β−カルボキシエチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等を用いることもできる。
【0042】
また、スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンや、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン、4−フルオロスチレン、2,5−ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン等を用いることもできる。
【0043】
また、ポリカルボン酸塩を、ビニルモノマーとして添加し、樹脂微粒子分散液を作製したのち、該ビニルモノマーを重合させる際に、連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に制限はないが、チオール成分を有する化合物を用いることができる。具体的には、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類が好ましく、特に分子量分布が狭く、そのため高温時のトナーの保存性が良好になる点で好ましい。
【0044】
上記ビニルモノマーを重合させるために、ラジカル重合用開始剤を用いて重合することができる。
【0045】
ここで用いるラジカル重合用開始剤としては、特に制限はない。具体的には、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル等の過酸化物類、2,2’−アゾビスプロパン、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスプロパン、1,1’−アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’−アゾビスイソブタン、2,2’−アゾビスイソブチルアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオン酸メチル、2,2’−ジクロロ−2,2’−アゾビスブタン、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、2−(4−メチルフェニルアゾ)−2−メチルマロノジニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸、3,5−ジヒドロキシメチルフェニルアゾ−2−メチルマロノジニトリル、2−(4−ブロモフェニルアゾ)−2−アリルマロノジニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸ジメチル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサンニトリル、2,2’−アゾビス−2−プロピルブチロニトリル、1,1’−アゾビス−1−クロロフェニルエタン、1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’−アゾビス−1−シクロへプタンニトリル、1,1’−アゾビス−1−フェニルエタン、1,1’−アゾビスクメン、4−ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フェニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4−ニトロフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’−アゾビス−1,2−ジフェニルエタン、ポリ(ビスフェノールA−4,4’−アゾビス−4−シアノペンタノエート)、ポリ(テトラエチレングリコール−2,2’−アゾビスイソブチレート)等のアゾ化合物類、1,4−ビス(ペンタエチレン)−2−テトラゼン、1,4−ジメトキシカルボニル−1,4−ジフェニル−2−テトラゼン等が挙げられる。
【0046】
上記ポリカルボン酸は、例えば、重量平均分子量(Mw)が1000〜20000が好ましく、2000〜10000であることがより好ましく、数均分子量(Mn)は500〜10000であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1〜10であることが好ましい。なお、ポリカルボン酸の分子量の測定は、後述する樹脂の分子量の測定方法に準じる。
【0047】
また、ポリカルボン酸と、上記一分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸または一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸のとの添加量の重量比は、9/1〜3/7である。
【0048】
本発明トナーに使用されるポリエステル樹脂は、テトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による分子量測定で、重量平均分子量(Mw)が5000〜50000が好ましく、8000〜20000であることがより好ましく、数均分子量(Mn)は2000〜10000であることが好ましく、分子量分布Mw/Mnが1.5〜10であることが好ましい。
【0049】
重量平均分子量及び数平均分子量が上記範囲より小さい場合には、低温定着性には効果的ではある一方で、耐ホットオフセット性が著しく悪化するばかりでなく、樹脂強度が低下する為、用紙に定着した画像強度が低下してしまう。また、トナーのガラス転移点を低下させる為、トナーのブロッキング等保存性にも悪影響を及ぼす。一方、上記範囲より分子量が大きい場合には、耐ホットオフセット性は充分付与できるものの、低温定着性は低下する他、トナー中に存在する結晶性ポリエステル相の染み出しを阻害する為、ドキュメント保存性に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、上述の条件を満たすことによって低温定着性と耐ホットオフセット性、ドキュメント保存性を両立し得ることが容易となる。
【0050】
本発明において、ポリエステル樹脂の分子量は、THF可溶物を、東ソー製GPC・HLC−9120、東ソー製カラム「TSKgel SuperHM−M」(15cm)を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出したものである。 ポリエステル樹脂の酸価(樹脂1gを中和するに必要なKOHのmg数)は、前記のような分子量分布を得やすいことや、乳化分散法によるトナー粒子の造粒性を確保しやすいことや、得られるトナーの環境安定性(温度・湿度が変化した時の帯電性の安定性)を良好なものに保ちやすいことなどから、5〜25mgKOH/gであることが好ましい。なお、酸価を上げると、後述するポリエステル樹脂の乳化時に。ポリエステル樹脂粒子の粒径は大きくなる傾向がある。
【0051】
ポリエステル樹脂の酸価は、原料の多価カルボン酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整することができる。あるいは多価カルボン酸成分として無水トリメリット酸を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。
【0052】
<ポリエステル樹脂粒子分散液の製造方法>
本実施の形態のポリエステル樹脂粒子分散液の製造方法は、上述した、ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られる。
【0053】
また、本実施の形態のポリエステル樹脂粒子分散液の製造方法は、上述した、ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩と、有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られる。
【0054】
<ポリエステル性樹脂の乳化>
ポリエステル樹脂を加熱するか、或いは有機溶剤にポリエステル樹脂を溶解させることにより、ポリマー液の粘性を下げ、機械的せん断を用いて乳化粒子を形成することができる。転相乳化法を用いてもよい。しかし、できるだけ有機溶剤は環境汚染の観点から使わない方がよい。また、乳化粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用することもできる。以下、かかる乳化粒子の分散液のことを、「樹脂粒子分散液」という場合がある。
【0055】
分散剤としては、上述した、一分子に1個のカルボキシル基を有するカルボン酸または一分子に2個のカルボキシル基を有するカルボン酸またはポリカルボン酸を用いる。
【0056】
上記分散剤の使用量としては、ポリエステル樹脂100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましい。
【0057】
転相乳化に用いる有機溶剤としては、樹脂と相溶するもので、転相後に脱溶媒できるものが良く、例えばシクロヘキサン等の炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、イソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、イソプロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール類を単独または混合して使用できる。特に酢酸エチル、メチルエチルケトン単独またはイソプロピルアルコールの混合液が容易に脱溶媒できる点で好ましい。
【0058】
本発明の転相乳化とは、樹脂と溶剤の均一混合溶液にカルボン酸塩化合物溶液などを加え攪拌した後、イオン交換水を連続相が水相になるまで滴下する方法のことである。
【0059】
転相乳化に用いる攪拌機としては、従来の攪拌機が使用できたとえば、プロペラ羽根、ホモジナイザー、コロイドミル等のローターステーター型攪拌機,ディゾルバー等のインペラー型攪拌機、スタティックミキサー、プラネタリーミキサーなどが用いられる。
【0060】
このようにして得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LS13320:ベークマンコールター社製)で測定することができる。
【0061】
ポリエステル樹脂微粒子の体積平均粒径は、50〜1000nmである。50nm未満では、トナー粒子形成時に小粒子成分が凝集せず画質が低下するおそれがある。また1000nmを超えても、トナー粒子形成時に大粒子成分が凝集せず、画質が低下する。特に好ましくは、100nm〜500nmである。
【0062】
上記有機溶剤の使用量としては、ポリエステル樹脂の総量100重量部に対して、30〜5000重量部の範囲が好ましく、50〜1000重量部の範囲がより好ましい。
【0063】
<色材>
本実施の形態の静電荷現像用トナーにおける色材(「着色剤」ともいう)としては、特に制限はなく、公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。着色剤を1種単独で用いてもよいし、同系統の着色剤を2種以上混合して用いてもよい。また異系統の着色剤を2種以上混合して用いてもよい。前記着色剤としては、具体的には、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;ベンガラ、アニリンブラック、紺青、酸化チタン、磁性粉等の無機着色剤;ファストイエロー、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン(3B、6B等)、パラブラウン等のアゾ着色剤;銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン着色剤;フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系着色剤;等が挙げられる。
【0064】
また、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート、パラブラウンなどの種々の着色剤;アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジゴ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料;などが挙げられる。これらの着色剤に透明度を低下させない程度にカーボンブラック等の黒色着色剤、染料を混合してもよい。また、分散染料、油溶性染料等も挙げられる。
【0065】
本実施の形態の静電荷現像用トナーにおける着色剤の含有量としては、結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲が好ましいが、定着後における画像表面の平滑性を損なわない範囲で、かかる数値範囲の中でもできるだけ多い方が好ましい。着色剤の含有量を多くすると、同じ濃度の画像を得る際、画像の厚みを薄くすることができ、オフセットの防止に有効な点で有利である。なお、着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等の各色トナーが得られる。
【0066】
<離型剤>
離型剤は、一般に離型性を向上させる目的で使用される。離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル、カルボン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。本発明において、これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
これらの離型剤の添加量としては、トナー全量に対して、0.5〜50重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜30重量%の範囲、さらに好ましくは5〜15重量%の範囲である。添加量が0.5重量%未満であると離型剤添加の効果がなく、50重量%を超えると、帯電性に影響が現れやすくなったり、現像器内部においてトナーが破壊されやすくなり、離型剤のキャリアへのスペント化が生じ、帯電が低下しやすくなる等の影響が現れるばかりでなく、例えばカラートナーを用いた場合、定着時の画像表面への染み出しが不十分になり易く、画像中に離型剤が残留しやすくなってしまうため、透明性が悪化し好ましくない。
【0068】
<その他の成分>
本実施の形態の静電荷現像用トナーに用いられ得るその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、無機粒子、有機粒子、帯電制御剤、離型剤等の公知の各種添加剤等が挙げられる。
【0069】
上記無機粒子は、一般にトナーの流動性を向上させる目的で使用される。該無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の粒子が挙げられる。これらの中でも、シリカ粒子、酸化チタン粒子が好ましく、疎水化処理されたシリカ粒子かつ/または酸化チタン粒子が特に好ましい。
【0070】
無機粒子の平均1次粒子径(数平均粒子径)としては、1〜1000nmの範囲が好ましく、その添加量(外添)としては、トナー100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましい。
【0071】
有機粒子は、一般にクリーニング性や転写性、時には帯電性を向上させる目的で使用される。前記有機粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン−アクリル共重合体等の粒子が挙げられる。
【0072】
帯電制御剤は、一般に帯電性を向上させる目的で使用される。帯電制御剤としては、例えば、サリチル酸金属塩、含金属アゾ化合物、ニグロシンや4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0073】
また、金属、金属酸化物、金属塩、セラミック、樹脂、樹脂粒子、カーボンブラック等の粒子を、帯電性、導電性、粉体流動性、潤滑性等を改善する目的でさらに外添してもよい。
【0074】
<トナー製造法>
次に、本実施の形態のトナーの製造方法について説明する。
【0075】
本実施の形態の静電荷現像用トナーの製造方法は、ポリエステル樹脂と一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤粒子および離型剤粒子の凝集粒子分散液を形成した後、前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して融合・合一する製造方法である。
【0076】
本実施の形態の他の静電荷現像用トナーの製造方法は、ポリエステル樹脂と一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩とポリカルボン酸塩と有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤粒子および離型剤粒子の凝集粒子分散液を形成した後、前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して融合・合一する製造方法である。
【0077】
具体的には、一般に乳化重合法などによりイオン性界面活性剤を含有する樹脂粒子分散液を調製し、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液とを混合し、イオン性界面活性剤とは反対の極性を有する凝集剤によりヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成し、その後、樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合・合一し、洗浄、乾燥してトナーを得る。
【0078】
また、凝集工程において、ポリエステル樹脂微子分散液、着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液を混合する初期の段階では、予め各極性のイオン性分散剤の量のバランスをずらしておき、ポリ塩化アルミニウム等の無機金属塩の重合体を添加してイオン的に中和し、その後、ガラス転移点以下の温度で第1段階の母体凝集粒子を形成し、安定した後、第2段階としてイオン的バランスのずれを補填するような極性、量のイオン性分散剤で処理された樹脂粒子分散液を添加し、さらに必要に応じて凝集粒子中の樹脂粒子と追加樹脂粒子に含まれる樹脂のガラス転移点以下でわずかに加熱して、より高い温度で安定化させたのち、ガラス転移点以上に加熱することにより凝集形成の第2段階で加えた粒子を母体凝集粒子の表面に付着させたまま合一させたものでも良い。更にこの凝集の段階的操作は複数回、くり返し実施してもよい。またこの追加粒子は、凝集時の粒子と異なる材料を用いてもよい。この2段階法により、被覆層が形成され、結晶性樹脂、離型剤、着色剤の内包性が向上する。
【0079】
離型剤は、例えば、体積平均粒径が150〜1500nmの範囲の粒子として、静電荷現像用トナー中に分散させ、5〜25重量%の範囲で含有させることにより、オイルレス定着方法における定着画像の剥離性を向上できる。好ましい範囲は、体積平均粒径は160〜1400nm、添加量は1〜20重量%である。
【0080】
離型剤は、水中にイオン性界面活性剤、高分子酸や高分子塩基などの高分子電解質とともに分散し、融点以上に加熱しながら、ホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて強い剪断を付与して粒子化し、1μm以下の離型剤粒子の分散液を作製することができる。
【0081】
離型剤分散液に用いる界面活性剤の濃度は、離型剤に対し、4重量%以下であることが好ましい。4重量%以上の場合、粒子形成の凝集速度が遅くなり加熱時間が長くなり、凝集体が増えるため好ましくない。
【0082】
また、着色剤は、体積平均粒径が100〜330nmの範囲の粒子として、静電荷現像用トナー中に分散させ、4〜15重量%の範囲で含有させることにより、発色性はもとより、OHP透過性も優れたものとなる。好ましい体積平均粒径は120〜310nmの範囲であり、好ましい添加量は5〜14重量%の範囲である。
【0083】
着色剤は公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、アトライター、コボールミル等のメディア式分散機、三本ロールミル等のロールミル、ナノマイザー等のキャビテーションミル、コロイドミル、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
【0084】
本発明のトナーの製造方法において、樹脂粒子の乳化重合、着色剤の分散、樹脂粒子の添加分散、離型剤の分散、それらの凝集、又は、その安定化などの目的で用いる界面活性剤を例示すると、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン性界面活性剤、及びアミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン性界面活性剤を使用することができる。また、ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン性界面活性剤を併用することも効果的である。これらの分散手段としては、回転剪断型ホモジナイザーやメディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的なものを使用できる。
【0085】
また、極性樹脂粒子で被覆した着色剤粒子を用いる場合、樹脂と着色剤を溶剤(水、界面活性剤、アルコールなど)中に溶解分散した後、上記のような適当な分散剤(活性剤を含む)と共に水中に分散させ、加熱、減圧して溶剤を除去して得る方法や、乳化重合により作成された樹脂粒子表面に機械的な剪断力、又は電気的な吸着力で着色剤粒子を固定化する方法などを採用することができる。これらの方法は、凝集粒子に添加される着色剤の遊離を抑制したり、帯電性の着色剤依存性を改善することに有効である。
【0086】
また、融合・合一の終了後、任意の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て所望のトナーを得ることができるが、洗浄工程は、帯電性を発現・維持するため、十分にイオン交換水による置換洗浄を施すことが好ましい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過、遠心濾過、デカンター等が好ましく用いられる。さらに乾燥工程も特に制限はないが、生産性の点から通気乾燥装置、噴霧乾燥装置、回転乾燥装置、気流乾燥装置、流動層乾燥装置、伝熱加熱型乾燥装置、凍結乾燥装置などが好ましく用いられる。
【0087】
さらに、流動性付与やクリーニング性向上の目的で、通常トナーの製造におけると同様に、炭酸カルシウムなどの金属塩、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、などの金属酸化物化合物、セラミック、カーボンブラック等、などの無機粒子や、ビニル樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態で剪断力をかけてトナー表面に添加することができる。
【0088】
これらの無機粒子は導電性、帯電性等を制御するためにカップリング材等で表面処理することが好ましく、カップリング材としては具体的にはメチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルシラザン、N,N−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γーメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、βー(3.4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γーグリシドキシプリピルトリメトキシシラン、γーグリシドキシプリピルメチルジエトキシシラン、γーメルカプトプロピルトリメトキシシラン、γークロロプロピルトリメトキシシラン、等のシランカップリング剤やチタンカップリング剤等をあげることができる。
【0089】
粒子の添加方法としては、トナーの乾燥後、Vブレンダー、ヘンシエルミキサー等の混合機を用いて乾式でトナー表面に付着させてもよいし、粒子を水又は水/アルコールのごとき水系の液体に分散させた後、スラリー状態のトナーに添加し乾燥させトナー表面に外添剤を付着させてもよい。また、乾燥粉体にスラリーをスプレーしながら乾燥してもよい。
【0090】
次に、本実施の形態の現像剤について説明する。
【0091】
本実施の形態の現像剤は、上記本実施の形態のトナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。本実施の形態の現像剤は、前記トナーを、単独で用いると一成分系の現像剤となり、また、トナーとキャリアとを組み合わせて用いると二成分系の現像剤となる。
【0092】
キャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアが挙げられる。
【0093】
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。該キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その体積平均粒径は、30〜200μm程度の範囲である。
【0094】
また、樹脂被覆キャリアの被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類;ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロぺニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;弗化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマー;などの単独重合体、又は2種類以上のモノマーからなる共重合体、さらに、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等を含むシリコーン樹脂類、ビスフェノール、グリコール等を含有するポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。被覆樹脂の被覆量としては、前記核体粒子100重量部に対して0.1〜10重量部程度の範囲が好ましく、0.5〜3.0重量部の範囲がより好ましい。
【0095】
キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用することができ、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用することができる。
【0096】
また、本発明の現像剤においては、トナーとキャリアとの混合比としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0097】
<画像形成方法>
次に、本実施の形態の画像形成方法について説明する。
【0098】
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、現像剤担持体に担持された現像剤を用い、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を熱定着する定着工程と、を有する画像形成方法であって、前記現像剤は、少なくとも、本発明の静電荷現像用トナーを含有する現像剤である。前記現像剤は、一成分系、二成分系のいずれの態様であってもよい。
【0099】
上記の各工程は、いずれも画像形成方法において公知の工程が利用できる。
【0100】
潜像保持体としては、例えば、電子写真感光体及び誘電記録体等が使用できる。電子写真感光体の場合、該電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電潜像を形成する(潜像形成工程)。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー画像を形成する(現像工程)。形成されたトナー画像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。さらに、被転写体表面に転写されたトナー画像は、定着機により熱定着され、最終的なトナー画像が形成される。
【0101】
尚、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【0102】
熱定着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、なかでも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。尚、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
【0103】
図1は、本発明の画像形成方法により画像を形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、像担持体201、帯電器202、像書き込み装置203、ロータリー現像装置204、一次転写ロール205、クリーニングブレード206、中間転写体207、複数(図では3つ)の支持ロール208,209,210、二次転写ロール211等を備えて構成されている。
【0104】
像担持体201は、全体としてドラム状に形成されたもので、その外周面(ドラム表面)に感光層を有している。この像担持体201は図1の矢印C方向に回転可能に設けられている。帯電器202は、像担持体201を一様に帯電するものである。像書き込み装置203は、帯電器202によって一様に帯電された像担持体201に像光を照射することにより、静電潜像を形成するものである。
【0105】
ロータリー現像装置204は、それぞれイエロー用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用のトナーを収容する5つの現像器204Y,204M,204C,204Kを有するものである。本装置では、画像形成のための現像剤にトナーを用いることから、現像器204Yにはイエロー色トナー、現像器204Mにはマゼンタ色トナー、現像器204Cにはシアン色トナー、現像器4Kにはブラック色トナーがそれぞれ収容されることになる。このロータリー現像装置204は、上記5つの現像器204Y,204M,204C,204Kが順に像担持体201と近接・対向するように回転駆動することにより、それぞれの色に対応する静電潜像にトナーを転移して可視トナー像及び不可視トナー像を形成するものである。
【0106】
ここで、必要とする可視画像に応じて、可視画像形成用の現像器をレッド、ブルー、グリーン等の所望する色の現像剤を収容した現像器に変換して使用しても良い。
【0107】
一次転写ロール205は、像担持体201との間で中間転写体207を挟持しつつ、像担持体201表面に形成されたトナー像(可視トナー像又は不可視トナー像)をエンドレスベルト状の中間転写体207の外周面に転写(一次転写)するものである。クリーニングブレード206は、転写後に像担持体201表面に残ったトナーをクリーニング(除去)するものである。中間転写体207は、その内周面を、複数の支持ロール208,209,210によって張架され、矢印D方向及びその逆方向に周回可能に支持されている。二次転写ロール211は、図示しない用紙搬送手段によって矢印E方向に搬送される記録用紙(画像出力媒体)を支持ロール210との間で挟持しつつ、中間転写体207外周面に転写されたトナー像を記録用紙に転写(二次転写)するものである。
【0108】
画像形成装置200は、順次、像担持体201表面にトナー像を形成して中間転写体207外周面に重ねて転写するものであり、次のように動作する。すなわち、先ず、像担持体201が回転駆動され、帯電器202によって像担持体201の表面が一様に帯電された後、その像担持体201に像書き込み装置203による像光が照射されて静電潜像が形成される。この静電潜像はイエロー用の現像器204Yによって現像された後、そのトナー像が一次転写ロール205によって中間転写体207外周面に転写される。このとき記録用紙に転写されずに像担持体201表面に残ったイエロー色トナーは、クリーニングブレード206によりクリーニングされる。また、イエロー色のトナー像が、外周面に形成された中間転写体207は、該外周面にイエロー色のトナー像を保持したまま、一旦矢印D方向と逆方向に周回移動し、次のマゼンタ色のトナー像が、イエロー色のトナー画像の上に積層されて転写される位置に備えられる。
【0109】
以降、マゼンタ、シアン、ブラックの各色についても、上記同様に帯電器202による帯電、像書き込み装置203による像光の照射、各現像器204M,204C,204Kによるトナー像の形成、中間転写体207外周面へのトナー像の転写が順次、繰り返される。
【0110】
こうして、中間転写体207外周面には、4色のトナー像が重ね合わされたフルカラー像(可視トナー像)が形成される。このフルカラーの可視トナー像は二次転写ロール211により一括して記録用紙に転写される。これにより、記録用紙の画像形成面には、フルカラーの可視画像からなる記録画像が得られる。
【0111】
なお、図1において、トナー像が二次転写ロール211によって記録用紙(画像出力媒体の一例)表面に転写された後に、110℃乃至200℃、好ましくは110℃乃至160℃の温度域で加熱定着させることが望ましい。
【0112】
トナー画像を転写する被転写体(記録材)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらにより本発明は限定されるものではない。
【0114】
まず、本実施例において、各測定は次のように行った。
【0115】
−粒度及び粒度分布測定方法−
粒径(「粒度」ともいう。)及び粒径分布測定(「粒度分布測定」ともいう。)について述べる。
【0116】
測定する粒子直径が2μm以上の場合、測定装置としてはレーザー回析式粒度分布測定装置(LS13320:ベークマンコールター社製)コールターマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0117】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100ml中に添加した。
【0118】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーII型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50,000であった。
【0119】
また、トナーの粒度分布は以下の方法により求めた。測定された粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、粒度の小さいほうから体積累積分布を描き、累積16%となる累積個数粒径をD16pと定義し、累積50%となる累積体積粒径をD50vと定義する。さらに累積84%となる累積個数粒径をD84pと定義する。
【0120】
本発明における体積平均粒径は該D50vであり、小径側個数平均粒度指標下GSDpは以下の式によって算出した。
式:下GSDp={(D84p)/(D16p)}0.5
【0121】
また、測定する粒子直径が2μm未満の場合、レーザー回析式粒度分布測定装置((LS13320:ベークマンコールター社製)を用いて測定した。測定法としては分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、約2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を、体積平均粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とした。
【0122】
なお、外添剤などの粉体を測定する場合は、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、前述の分散液と同様の方法で、測定した。
【0123】
−トナー、樹脂粒子の分子量、分子量分布測定方法−
分子量分布は、以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0124】
−酸価の測定方法−
樹脂約1gを精秤し、テトラヒドロフラン80mlに溶解する。指示薬としてフェノールフタレインを加え、0.1N KOH エタノール溶液を用いて滴定し、30秒間色が持続したところを終点とし、使用した0.1N KOH エタノール溶液量より、酸価(樹脂1gに含有する遊離脂肪酸を中和するのに必要なKOHのmg数 JIS K0070:92記載に準ずる)を算出した。
【0125】
−トナー中のカルボン酸、ポリカルボン酸の同定−
(i)ポリカルボン酸およびカルボン酸のアルキル炭素数の同定
トナーをTHF溶媒に溶解させ、沈殿物を分離濾過する。得られた溶液を、上述したGPC(「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)」)を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、樹脂と離型剤を分離する。GPCにより分離された樹脂分を重THFに溶解させて、核磁気共鳴測定装置(NMR)(JMN−AL400:日本電子 社製)を用いて構造を同定した。
【0126】
また、この樹脂溶液に水酸化ナトリウムを添加して加水分解することによって得られたアルコールの1μリットルをガスクロマトグラフに注入し分析を実施した。ガスクロマトグラフは島津製作所製GC−17Aを用い、以下の条件で実施した。
カラム:TC−1 60m
注入口温度:200℃
昇温条件:40℃で5分、4℃/minで140℃に
検出器:FID
【0127】
−ガラス転移温度の測定方法−
トナーのガラス転移温度は、DSC(示差走査型熱量計)測定法により決定し、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークより求めた。
【0128】
主体極大ピークの測定には、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0129】
−トナーの帯電量−
静電荷像現像用トナー各1.5質量部とスチレン/メチルメタクリレート樹脂で被覆されたフェライト粒子(平均粒子径35μm)30重量部とをフタ付きのガラス瓶に秤量し、高温高湿下(温度28℃、湿度85%)、及び、低温低湿下(温度10℃、湿度15%)で24時間シーズニングした後、ターブラミキサーで5分間攪拌震盪した。この両環境下のトナーの帯電量(μC/g)をブローオフ帯電量測定装置で測定した。 本発明における静電荷現像用トナーの帯電量については、絶対値で20〜50μC/gが好ましく、25〜45μC/gがより好ましい。前記帯電量が20μC/g未満であると背景汚れ(かぶり)が発生しやすくなり、55μC/gを超えると画像濃度が低下し易くなる。
【0130】
[樹脂粒子分散液の作製法]
<ポリエステル樹脂粒子分散液1>
加熱乾燥したフラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン40モル部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン40モル部と、テレフタル酸100モル部と、ヘキサンジオール18モル部とこれらの酸成分(テレフタル酸合計モル数)に対して0.05モル部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150〜230℃で約12時間共縮重合反応させ、その後、210〜250℃で徐々に減圧して、ポリエステル樹脂(1)を合成した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られたポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は15000であった。
【0131】
また、ポリエステル樹脂(1)のDSCスペクトルを、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移点は60℃であった。酸価は8mgKOH/gであった。
【0132】
ポリエステル樹脂(1)300重量部、メチルエチルケトン120重量部、イソプロピルアルコール60重量部を60℃に加熱し、均一になるまで乳化機(Ultra Turrax T−50、IKA製)を用いて8000rpmで攪拌し、樹脂溶液を作製した。得られた樹脂溶液にオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部を攪拌しながら添加した。さらに60℃で攪拌をしながら、イオン交換水を600重量部ゆっくり滴下して転相乳化を行い、さらに排風により溶媒を除去し固形分30%、体積平均粒径115nm、下GSDp1.18のポリエステル樹脂粒子分散液1を作製した。
【0133】
樹脂粒子分散液1中の溶媒を蒸発させた後の樹脂粒子の体積平均粒径は、ベックマンコールター社製LS13320で測定した。粒度分布GSDpは、上述したように、測定される体積粒度分布を分割し、それぞれの粒径範囲(チャンネル)に対し、小径側からの累積分布を描き、粒子の累積が16%となる粒径を数積平均粒径D16v 、粒子の累積が84%となる粒径を数積平均粒径D84v と定義し、GSD=(D84v/D16v)0.5として求めた。
【0134】
<ポリエステル樹脂粒子分散液2>
加熱乾燥したフラスコに、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン45モル部と、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン45モル部と、テレフタル酸100モル部と、ヘキサンジオール12モル部と無水トリメリット酸5モル部とこれらの酸成分(テレフタル酸合計モル数)に対して0.05モル部のジブチル錫オキサイドと、を入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、150〜230℃で約12時間共縮重合反応させ、その後、210〜250℃で徐々に減圧して、ポリエステル樹脂(1)を合成した。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定(ポリスチレン換算)で、得られた非結晶性ポリエステル樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は10000であった。
【0135】
また、非結晶性ポリエステル樹脂(1)のDSCスペクトルを、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、明確なピークを示さず、階段状の吸熱量変化が観察された。階段状の吸熱量変化の中間点をとったガラス転移点は65℃であった。酸価は13mgKOH/gであった。
【0136】
非結晶性ポリエステル樹脂(1)300重量部、メチルエチルケトン120重量部、イソプロピルアルコール60重量部を60℃に加熱し、均一になるまで乳化機(Ultra Turrax T−50、IKA製)を用いて8000rpmで攪拌し、樹脂溶液を作製した。得られた樹脂溶液にアラキン酸カルシウム20%水溶液98重量部を攪拌しながら添加した。さらに60℃で攪拌をしながら、イオン交換水を600重量部ゆっくり滴下して転相乳化を行い、さらに排風により溶媒を除去し固形分30%、体積平均粒径300nm、下GSDp1.30のポリエステル樹脂粒子分散液2を作製した。
【0137】
<ポリエステル樹脂粒子分散液3>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウムの代わりにオクタン酸ナトリウムを用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製した。得られた樹脂微粒子分散液の体積平均粒径は182nm、GSDpは1.34であった。
【0138】
<ポリエステル樹脂粒子分散液4>
樹脂粒子分散液2のアラキン酸カルシウムの代わりにトリメチルヘキサン酸マグネシウムを用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製した。得られた樹脂微粒子分散液の体積平均粒径は110nm、GSDpは1.30であった。
【0139】
<ポリエステル樹脂粒子分散液5>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部の代わりに、ドデシル硫酸ナトリウム20%水溶液98重量部を用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製したが、転相できず、粒子とならなかった。
【0140】
<ポリエステル樹脂粒子分散液6>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部の代わりに、ヘキサン酸ナトリウム20%水溶液98重量部を用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製したが、転相できず、粒子とならなかった。
【0141】
<ポリエステル樹脂粒子分散液7>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部の代わりに、ベヘン酸ナトリウム20%水溶液98重量部を用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製したが、転相できず、粒子とならなかった。
【0142】
<ポリエステル樹脂粒子分散液8>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部の代わりに、トリエチルアミン4.3重量部を用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製した。が、転相できず、微粒子とならなかった。
【0143】
<ポリエステル樹脂粒子分散液9>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部の代わりに、オクタデセニルコハク酸カリウム30%水溶液47重量部を用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製した。得られた樹脂微粒子分散液の体積平均粒径は179nm、GSDpは1.28であった。
【0144】
<ポリエステル樹脂粒子分散液10>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部の代わりに、オクタデセニルコハク酸カリウム30%水溶液47重量部と重量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム40%水溶液7.2重量部とを用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製した。得られた樹脂微粒子分散液の体積平均粒径は192nm、GSDpは1.30であった。
【0145】
<ポリエステル樹脂粒子分散液11>
樹脂粒子分散液1のオレイン酸カリウム20%水溶液98重量部の代わりに、オクタデセニルコハク酸カリウム30%水溶液87重量部とβ−カルボキシエチルアクリレート2.6重量部とを用いた以外は樹脂粒子分散液1と同様に樹脂微粒子分散液を作製した。樹脂微粒子分散液の体積平均粒径は150nm、GSDpは1.28であった。さらに得られた分散液を窒素置換したのち、過硫酸カリウム44重量部を加え攪拌しながら75℃で7時間過熱を行い、モノマーの重合を行った。
【0146】
<ポリエステル樹脂粒子分散液12>
樹脂粒子分散液2のアラキン酸カルシウム20%水溶液98重量部の代わりに、オクタデセニルコハク酸カリウム30%水溶液47重量部と重量平均分子量6000のポリアクリル酸ナトリウム40%水溶液7.2重量部とを用いた以外は樹脂粒子分散液2と同様に樹脂微粒子分散液を作製した。が、転相できず、微粒子とならなかった。得られた樹脂微粒子分散液の体積平均粒径は180nm、GSDpは1.30であった。
【0147】
−着色剤分散液の調製−
下記組成のものを混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)と超音波照射とにより分散し体積平均粒径150nmの青着色剤分散液を得た。
【0148】
−シアン着色剤分散液の調製−
C.I.Pigment Blue15:3 50重量部
(銅フタロシアニン、大日本インク製)
アニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬) 5重量部
イオン交換水 200重量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径175nm、固形分量22.5重量部のシアン着色剤分散液を得た。
【0149】
−イエロー着色剤分散液の調製−
C.I.PigmentYellow 74:(クラリアント製) 60重量部
イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 7重量部
イオン交換水 200重量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径150nm、固形分量24.5重量部のイエロー着色剤分散液を得た。
【0150】
−マゼンタ着色剤分散液の調製−
C.I.PigmentRed 122:(クラリアント製) 50重量部
イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 6重量部
イオン交換水 200重量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径185nm、固形分量23.5重量部のマゼンタ着色剤分散液を得た。
【0151】
−黒着色剤分散液の調製−
カーボンブラック リーガル330:(キャボット社製) 50重量部
イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬) 6重量部
イオン交換水 200重量部
以上を混合溶解し、ホモジナイザー(IKA製ウルトラタラックス)により10分間分散し、中心粒径240nm、固形分量24.0重量部の黒着色剤分散液を得た。
【0152】
−離型剤分散液の調製−
下記組成のものを混合し、95℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)にて分散した。その後、圧力吹出型ゴーリンホモジナイザー(盟和商事製)で分散処理し、105℃、550kg/cmの条件で20回処理することで、中心粒径250nm、固形分21%の離型剤分散液を得た。
【0153】
ワックス(WEP−2、日本油脂社製、融点75℃) 50重量部
アニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬) 2.3重量部
イオン交換水 200重量部
以上を95℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、中心径250nm、 固形分量21%の離型剤分散液を得た。
【0154】
<実施例1>
<トナー(1)の作製>
−静電荷現像用トナー(1)の作製−
ポリエステル樹脂粒子分散液1 386重量部
着色剤分散液 32.7重量部
離型剤分散液 66.2重量部
10重量%ポリ塩化アルミニウム水溶液(浅田化学社製) 2.7重量部
イオン交換水 628.9重量部
上記の成分を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジマイザー(IKA製、ウルトラタラックスT50)を用い十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら45℃まで加熱した。45℃(初期加熱温度)で30分間保持した後、ここにポリエステル樹脂粒子分散液1を緩やかに70重量部追加した。
【0155】
その後、濃度0.5mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを7.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら90℃まで加熱した。反応終了後、冷却し、pH9.0とした後、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに40℃のイオン交換水3リットル を用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナーを得た。
【0156】
その後、得られた内容物の温度を徐々に上げて55℃にした。得られた内容物を光学顕微鏡で観察すると、粒径が約6.5μmの凝集粒子が生成していることが確認された。水酸化ナトリウム水溶液で、pHを8に調整し、その後、温度を上げて90℃にしたのち約1時間かけて凝集体を合一させ、冷却後、ろ過し、イオン交換水で充分洗浄後、乾燥してトナー(1)を得た。
【0157】
<実施例2〜8、比較例1〜4>
実施例2〜8は、実施例1のポリエステル樹脂粒子分散液1を、それぞれポリエステル樹脂粒子分散液2〜4,9〜12に代えた以外は、実施例1に準じて、トナー(2)〜(4),(9)〜(12)を得た。
【0158】
(トナーの評価)
−評価方法−
これらのトナー粒子にシリカ(キャボット社製、TS720)を0.8重量%添加混合して、75Lヘンシェルミキサーにて10分間混合し、その後、風力篩分機ハイボルター300(新東京機械社製)にて篩分し、外添トナーを作製した。
【0159】
また、50μmのフェライトコア100重量%に対して、ポリメチルメタクリレート(総研化学社製)を1重量%をニーダー装置を用いコーティングし、キャリアを調製した。これらのキャリアとトナーを2リッターのVブレンダーで混合し、トナー濃度が8重量%となるように調製して現像剤を作製した。
【0160】
得られたトナーを富士ゼロックス製コピー紙(J紙)上にトナー量0.9mg/cmとなるようにソリッド画像を形成し、図1に示す複写機を用いて、500枚コピーを行った後の画像を定着し、目視で色抜けがあるか否か、画質の評価を行った。
【0161】
−トナーの帯電量−
上述したように、静電荷像現像用カラートナーのうちブラックトナー各1.5質量部とスチレン/メチルメタクリレート樹脂で被覆されたフェライト粒子(平均粒子径35μm)30重量部とをフタ付きのガラス瓶に秤量し、高温高湿下(温度28℃、湿度85%)、及び、低温低湿下(温度10℃、湿度15%)で24時間シーズニングした後、ターブラミキサーで5分間攪拌震盪した。この両環境下のトナーの帯電量(μC/g)をブローオフ帯電量測定装置で測定した。
【0162】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の静電荷現像用トナーは、特に電子写真法、静電記録法等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】本発明の画像形成方法により不可視画像と共に可視画像を同時に形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0165】
200 画像形成装置、201 像担持体、202 帯電器、203 像書き込み装置、204 ロータリー現像装置、204Y イエロー用現像器、204M マゼンタ用現像器、204C シアン用現像器、204K ブラック用現像器、205 転写ロール、206 クリーニングブレード、207 中間転写体、208,209,210 支持ロール、211 二次転写ロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩とを含むことを特徴とするポリエステル樹脂粒子水分散液。
【請求項2】
ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩とを含むことを特徴とするポリエステル樹脂粒子水分散液。
【請求項3】
ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、着色剤と、離型剤とを含有することを特徴とする静電荷現像用トナー。
【請求項4】
ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩と、着色剤と、離型剤とを含有することを特徴とする静電荷現像用トナー。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の静電荷現像用トナーを用いることを特徴とする静電荷現像用現像剤。
【請求項6】
ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られることを特徴とするポリエステル樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
ポリエステル樹脂と、一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と、ポリカルボン酸塩と、有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られることを特徴とするポリエステル樹脂粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
ポリエステル樹脂と一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩と有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤粒子および離型剤粒子の凝集粒子分散液を形成した後、前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して融合・合一することを特徴とする静電荷現像用トナーの製造方法。
【請求項9】
ポリエステル樹脂と一般式R−COOM(式中Rは炭素原子数7から19の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)または一般式R−CH(COOM)CHCOOM(式中Rは炭素原子数12から18の直鎖または分岐のアルキル基またはアルキレン基、Mはアルカリ金属原子またはアルカリ土類金属原子を示す。)で示すカルボン酸塩とポリカルボン酸塩と有機溶媒とを含有する混合物を転相乳化して得られるポリエステル樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、離型剤分散液とを混合し、樹脂粒子、着色剤粒子および離型剤粒子の凝集粒子分散液を形成した後、前記ポリエステル樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して融合・合一することを特徴とする静電荷現像用トナーの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−63426(P2008−63426A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242355(P2006−242355)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】