説明

ポリエチレン系樹脂組成物およびそれよりなるフィルム

【目的】重量が大きい物品の包装袋に使用されるポリエチレン系樹脂組成およびフィルムを提供する。
【解決手段】特定の物性値を満たすメタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(a)95〜60重量%、特定の物性値を満たす高圧法低密度ポリエチレン(b)が5〜40重量%であり、(a)と(b)の合計量100重量部に対して、塩基性脂肪酸金属塩mMO・M(OOCR)が0.005〜2重量部からなるポリエチレン系樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料、セメント、化学品等の重量が大きい物品の包装袋(重包装袋)に使用されるポリエチレン系樹脂組成およびその組成物からなるフィルムに関する。更に詳しくは、成形加工性が良好で、重包装袋に要求される機械的強度に優れ、かつ外観の良好なフィルムが得られるポリエチレン系樹脂組成物およびその組成物からなるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用包装袋には包装の簡便さや生産コストの面から、インフレーション成形法により生産されたポリエチレン樹脂フィルムが使用されている。中でも、高圧法低密度ポリエチレン樹脂や酢酸ビニルを数%共重合した高圧法低密度ポリエチレン樹脂は、成形時の押出機負荷が小さく、バブル安定性にも優れるため、包装袋として広く使用されている。
しかしながら、これらの高圧法低密度ポリエチレン樹脂は機械的強度が小さいため、肥料、セメント、化学品等を包装するための重包装袋として使用する場合は、機械的強度を補うためにフィルム厚みを厚く(200〜250μm)して使用されている。
【0003】
一方、最近は廃棄物の減量、省エネルギー等の環境問題やコスト削減の観点から、各種包装フィルムに対する薄肉化の要求が高まっており、重包装袋においても機械的強度が高く、薄肉化が可能な直鎖状低密度ポリエチレン樹脂の使用が増加している。しかしながら、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、その樹脂の特性上、成形時の押出機負荷が大きく、フィルム成形時のバブル安定性も悪いため、成形加工性を改善する目的で高圧法低密度ポリエチレン樹脂等をブレンドして使用されるのが現状である。
【0004】
これについては、特定の物性を有するエチレン・α―オレフィン共重合体に特定の物性を有する高圧ラジカル法低密度ポリエチレンをブレンドし、成形加工性と機械強度をバランスさせた組成物が開示されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0005】
また、特定の物性を有し、密度とMFRが共に異なる2種のエチレン・α―オレフィン共重合体をブレンドしたエチレン・α―オレフィン共重合体組成物にさらに高圧ラジカル法による低密度ポリエチレンをブレンドしたエチレン系重合体組成物が開示されている(例えば、特許文献3〜4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平06−65443号公報
【特許文献2】特開平07−026080号公報
【特許文献3】特開平06−207059号公報
【特許文献4】特開平06−329848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載の組成物を用いて厚みの薄いフィルムを高速でインフレーション成形した場合は、成形時のバブルが不安定になると共に、成形フィルムに表面荒れが発生し易く、これを改良するため低密度ポリエチレンのブレンド量を増やすとフィルムの機械的強度が低下する問題が生じた。また、特許文献3、4に記載の組成物は、
MFRの大きく異なる2種のエチレン・α―オレフィン共重合体をブレンドすれば上記成形加工性の問題を解決できるが、MFRの大きく異なるエチレン・α―オレフィン共重合体の溶融混合時の不均一さに由来すると考えられるフィルム強度の低下が生じ、重包装袋のように高い機械的強度が要求される用途の薄肉化には自ずと限界があった。
【0008】
そこで、本発明は、重包装袋生産時の成形加工性が良好で、かつフィルムを薄肉化しても重包装袋に使用可能な充分な機械的強度、フィルム外観が得られるポリエチレン系樹脂組成物およびその組成物からなるフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討を行った結果、特定の要件を満たす直鎖状低密度ポリエチレンと特定のMFRおよび密度を有する高圧法低密度ポリエチレンからなるポリエチレン系樹脂組成物が、従来のポリエチレン系樹脂組成物に比べて、インフレーション成形時のバブル安定性が改善され、フィルムを薄肉化した場合でも重包装袋に使用可能な充分な衝撃強度、ヒートシール強度が得られることを見出した。更には、該ポリエチレン系樹脂組成物に特定の構造を有する塩基性脂肪酸金属塩を特定量配合することで、得られたフィルムの表面外観が極めて良好となり、ダート衝撃強さが大きく向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記(ア)〜(カ)の要件を満たすメタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(a)95〜60重量%、下記(キ)および(ク)の要件を満たす高圧法低密度ポリエチレン(b)5〜40重量%、および(a)と(b)の合計量100重量部に対して、下記式(1)で示される塩基性脂肪酸金属塩(c)が0.005〜2重量部からなることを特徴とするポリエチレン系樹脂組成物およびその組成物を成形してなるフィルムに関するものである。
【0011】
mMO・M(OOCR) (1)
(ここで、mは0.1〜1.0であり、MおよびMはそれぞれ周期表第2族金属であり、同一または異なっていてもよく、OOCRは飽和または不飽和の脂肪酸残基を示す。)
(ア)190℃で測定したメルトフローレートが0.1〜4.0g/10分、
(イ)密度が910〜930kg/m
(ウ)GPC法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が2.0〜4.0、
(エ)温度上昇溶離分別によって得られる微分溶出曲線のピークが2つ以上存在し、該ピーク温度が40℃以上90℃未満、
(オ)該微分溶出曲線の最大ピークの高さ(H)とその次に高いピークの高さ(H)との比(H/H)が0.25以上、
(カ)該微分溶出曲線の個々のピーク高さ(H)と該ピークの高さの1/2における幅(W)の比(W/H)と該ピーク温度(T)が下記式(2)を満たす。
【0012】
W/H<1.70−0.016T (2)
(キ)190℃で測定したMFRが0.1〜5.0g/10分、
(ク)密度が910〜935kg/m
また、本発明に係わる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、2種類のメタロセン触媒を用いて、単一の反応器により重合することが好ましい。
【0013】
更に、本発明のポリエチレン系樹脂組成物により得られるフィルムは、5%歪みでの引張弾性率が120MPa以上であり、ダート衝撃強さが700g以上であり、ヒートシール強さが35N/15mm以上であることが好ましい。
【0014】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明を構成する直鎖状低密度ポリエチレンの製造方法は、(特に限定するものではないが)、少なくとも2種類以上のメタロセン触媒の存在下において、エチレンとα−オレフィンを同一重合器内で共重合する方法が、コストパフォーマンスや本発明のポリエチレン系樹脂組成物をインフレーション成形等により成形して得られたフィルムの機械的強度(特に、ダート衝撃強度)に優れるため好ましい。メタロセン触媒とは、遷移金属化合物、活性化助触媒および有機金属化合物からなるものが用いられる。
【0016】
2種類以上のメタロセン触媒を用いる場合、各々のメタロセン触媒の共重合パラメーターrの差が0.02以上であると、組成分布に広がりを持たせることが可能となり、フィルムのヒートシール性や機械的強度に優れるポリエチレン系樹脂組成物が得られるため好ましく、0.03以上であると更に好ましい。共重合パラメーターrは、下記式(3)により求められる。
【0017】
r = Cpoly / Crea (3)
式中、Creaは、反応器内のα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を、またCpolyは得られる共重合体に含まれるα−オレフィン/エチレンのモノマー比(モル/モル)を示す。また、rはその商(係数)である。また、Cpolyは既知の方法、例えば、13C−NMR測定により求められる。
【0018】
また、少なくとも一方のメタロセン触媒は、共重合パラメーターrが0.08以上であると、目的の密度の共重合体を製造する際のα−オレフィンの比率を下げることができ、共重合反応に使用されるα−オレフィンの回収工程への負荷の軽減、さらには共重合体中に残留するα−オレフィンを除去する工程の負荷を軽減することができるため好ましく、0.1以上の場合更に好ましい。
【0019】
また、少なくとも一方のメタロセン触媒は、前記rと同様の条件により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体が下記一般式(4)を満足することが好ましく、下記一般式(4)’を満足することが特に好ましい。
【0020】
MFR < EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 35.3) (4)
MFR < EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 32.5) (4)’
[式中、MFRは荷重2.16kg、温度190℃条件でのメルトフローレート(g/10分)を示し、RxTは重合器の内温もしくは重合器内に温度分布がある場合には観測された温度の平均値(℃)を示し、dは得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の密度(kg/m)を示す。]
さらに、もう一方のメタロセン触媒は、前記rと同様の条件により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体が下記一般式(5)を満足することが好ましく、下記一般式(5)’を満足することが特に好ましい。
【0021】
MFR > EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 35.3) (5)
MFR > EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 32.5) (5)’
[式中、MFRは荷重2.16kg、温度190℃条件でのメルトフローレート(g/10分)を示し、RxTは重合器の内温もしくは重合器内に温度分布がある場合には観測された温度の平均値(℃)を示し、dは得られたエチレン・α−オレフィン共重合体の密度(kg/m)を示す。]
メタロセン触媒の構成成分の一つである活性化助触媒としては、特に限定はなく、公知のものはすべて使用することができる。具体的には、下記一般式(6)で表されるプロトン酸、一般式(7)で表されるイオン化イオン性化合物、一般式(8)で表されるルイス酸、一般式(9)で表されるルイス酸性化合物、粘土鉱物、塩化マグネシウム化合物、スルホン酸塩、またはカルボン酸誘導体などを挙げることができる。
【0022】
[HR][E(Ar)] (6)
[GR][E(Ar)] (7)
[D][E(Ar)] (8)
E(Ar) (9)
(式中、Hは水素原子であり、Eはホウ素原子またはアルミニウム原子である。Rはエーテル類、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、ホスフィン類等のルイス塩基、RはRで例示したルイス塩基または置換もしくは無置換のシクロペンタジエニル基である。Gはリチウム原子、鉄原子または銀原子であり、Dはカルボニウムカチオンまたはトロピリウムカチオンである。Arは互いに同じでも異なっていてもよく、アリール基、アラルキル基、ハロゲン原子,炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基で置換されたアリール基もしくはアラルキル基、または炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基を有するシリル基で置換されたアリール基もしくはアラルキル基であり、好ましくはアリール基、ハロゲン,炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基で置換されたアリール基、または炭化水素基もしくはヘテロ原子含有炭化水素基を有するシリル基で置換されたアリール基である。pは0、1または2である。)
さらにメタロセン触媒に用いられる有機金属化合物としては、少なくとも1つの炭化水素基を有する周期表第1、2、13族の金属原子、スズ原子または亜鉛原子を有するものであり、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(10)、(11)または(12)で表される化合物を挙げることができる。
【0023】
(RAl (10)
(式中、Rは互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、または炭化水素基で置換されたアミノ基もしくはアルコキシ基を示し、そのうち少なくとも1つは炭化水素基である。)
(RMg (11)
(式中、Rは互いに同じでも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、または炭化水素基で置換されたアミノ基もしくはアルコキシ基を示し、そのうち少なくとも1つは炭化水素基である。)
Li (12)
(式中、Rは水素原子または炭化水素基である。)
メタロセン触媒調製の際の遷移金属化合物および活性化助触媒の量比は、活性化助触媒が一般式(6)、(7)、(8)、(9)で表される化合物、スルホン酸塩またはカルボン酸誘導体である場合、遷移金属化合物:活性化助触媒=10:1〜1:1000のモル比が好ましく用いられ、特に好ましくは3:1〜1:100の範囲が用いられる。また、さらに有機金属化合物を用いる際の遷移金属化合物と有機金属化合物の比は特に制限はないが、遷移金属化合物:有機金属化合物の金属原子当たりのモル比は100:1〜1:100000の範囲が好ましく用いられ、さらに好ましくは1:1〜1:10000の範囲が用いられる。有機金属化合物の使用量が10000倍モルを超えると脱灰の工程を考慮する必要がある。また、触媒安定性および触媒毒の除去の観点を考えあわせると、遷移金属化合物:有機金属化合物を1:1〜1:1000のモル比で使用することが特に好ましい。
【0024】
なお、上記の各成分の比率において、各メタロセン触媒の使用量の比率は特に制限がなく、任意の量で用いることができる。
【0025】
メタロセン触媒を調製する方法について特に制限はなく、各成分に対して不活性な溶媒またはモノマーを溶媒として用いて混合する方法が挙げられる。また、上述した触媒成分を反応させる順番についても特に制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も特に制限はない。
【0026】
また、メタロセン触媒を用いる際、オレフィン類を通常の方法で予備重合させてなるメタロセン触媒の存在下に、直鎖状低密度ポリエチレンを製造することもできる。その際、高い触媒活性と粒子の移送を容易とし、安定な製造が実現される。
【0027】
メタロセン触媒または固体触媒成分を用いて予備重合を行う方法に関しては、メタロセン触媒または固体触媒成分とオレフィン類が重合しうる条件であれば特に限定されない。
【0028】
以下に、上記記載の触媒系を用いて実質的にポリマーが溶融あるいは溶解した状態で、直鎖状低密度ポリエチレンを安定的に生産する方法を示す。
【0029】
エチレンとα−オレフィンは、共重合体の融点以上の重合温度下、重合圧力40〜400MPaの高圧状態で重合される。
【0030】
反応温度は共重合体の融点〜300℃が好ましく、共重合体の融点より30℃以上高い温度〜300℃が反応器や後処理工程の制約の点から特に好ましい。反応器部位で温度を変更できる場合は、反応器内で温度変化を持たせる方法が分子量分布の広いポリマーを製造する際に好ましく用いられる。温度変化の度合いは特に制限されないが、30℃以上反応器下部(ポリマー排出側)を高く保つことが生産性を向上させ、分子量分布を広げる際に有利である。
【0031】
反応圧力は40〜400MPaの範囲が好ましく、特に好ましくは実用性を考慮すると40〜200MPaの範囲である。
【0032】
本触媒を反応器に供給する方法に特に制限はないが、1ヶ所より供給されても、複数ヶ所から供給されてもかまわない。好ましくは2ヶ所以上の複数ヶ所から供給することにより、分子量分布等をより容易に制御することができる。
【0033】
また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。共重合体は、重合終了後に従来既知の方法により分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0034】
本発明の直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(a)に用いられる直鎖状低密度ポリエチレンのコモノマーであるα−オレフィンは、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン等のα−オレフィン類;ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の共役および非共役ジエン類;シクロブテン、シクロペンテン等の環状オレフィン類等が挙げられ、エチレンとプロピレン、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテンのように2種の成分、あるいはエチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1−ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネンのように3種以上の成分を混合して重合することもできる。
【0035】
これらα−オレフィンの中でも、共重合体成膜後のフィルムサンプルにおける引張強度、引裂強度、衝撃強度、ヒートシール強度等に優れる炭素数5〜10のものが好ましく、特に好ましくは1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンである。該共重合体は、これらα−オレフィンの少なくとも1種をエチレンと共重合することにより得られ、具体的には、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ヘプテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン三元共重合体等が挙げられる。
【0036】
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、190℃で測定したMFRが0.1〜4.0g/10分、好ましくは0.2〜2.0g/10分、更に好ましくは0.3〜1.5g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では溶融押出時の押出機の負荷が大きくなると共に、フィルム成形時に表面荒れが発生するため、得られたフィルムの外観が悪化する。一方、MFRが4.0g/10分より大きい場合は、インフレーション成形時のバブル安定性が悪く、均一なフィルムが得られないとともに、得られたフィルムの機械的強度が低下する。
【0037】
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、密度が910〜930kg/m、好ましくは915〜927kg/m、更に好ましくは920〜925kg/mである。密度が910kg/m未満では得られたフィルムの剛性が低下し、包装袋として使用する際の自立性が悪いものとなる。一方、密度が930kg/mより大きい場合は、得られたフィルムの衝撃強さが低下する。
【0038】
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、Mw/Mnが2.0〜4.0、好ましくは2.3〜3.8、更に好ましくは2.5〜3.5である。Mw/Mnが2.0未満では溶融押出時の押出機の負荷が大きく、かつフィルム成形時に表面荒れが発生するため、得られたフィルムの外観が悪化する。一方、Mw/Mnが4.0を超える場合は、フィルムの機械的強度が低下するとともに、フィルムのブロッキングの原因となるべたつき成分が増加するので好ましくない。
【0039】
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、温度上昇溶離分別によって得られる微分溶出曲線のピークが2つ以上、好ましくはピークが2つ存在し、該ピーク温度が40℃以上90℃未満の範囲にある。微分溶出曲線のピークが1つの場合は、得られたフィルムのヒートシール強さが低下する。このヒートシール強さの低下はフィルムを低温または高速でヒートシールする場合に特に顕著になる。また、該溶出ピークが40℃未満に存在する場合は、得られたフィルムの剛性が低下するとともに、ブロッキングの原因となるべたつき成分が増加するので好ましくない。一方、該溶出ピークが90℃以上場合は、ダート衝撃強さ等の機械的強度が低下するので好ましくない。
【0040】
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、温度上昇溶離分別によって得られる微分溶出曲線において、40℃以上90℃未満の温度範囲に少なくとも2つの明瞭なピークが存在していれば良く、各ピークが出現する温度位置に特に制限はない。
【0041】
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、上記微分溶出曲線の最大ピークの高さ(H)とその次に高いピークの高さ(H)との比(H/H)が0.25以上である。H/Hが0.25未満ではフィルムを低温または高速でヒートシールする場合にヒートシール強さが低下する恐れがある。
【0042】
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、該微分溶出曲線の個々のピーク高さ(H)と該ピークの高さの1/2における幅(W)の比(W/H)と該ピーク温度(T)が下記式(2)
W/H<1.70−0.016T (2)
で示される関係にあり、好ましくは下記式(2)’
W/H<1.65−0.016T (2)’
で示される関係にあり、更に好ましくは下記式(2)”
W/H<1.60−0.016T (2)”
で示される関係にある。(2)式を満たさない場合は、得られたフィルムの機械的強度が低下するとともに、ブロッキングの原因となるべたつき成分が増加するので好ましくない。
【0043】
尚、W/Hは、該微分溶出曲線を横軸に溶出温度を100℃当たり65mm、縦軸に微分量(全積分溶出量を100に規格化し、2℃の変化量を微分量とした)10当たり5.4mmのグラフに図示し、次に、この微分溶出曲線のピークの1/2高さの幅(W、単位:mm)とピーク高さ(H、単位:mm)を測定し、W/Hを求めた。
【0044】
また、隣接するピークどうしに重なりが存在し、ピークの1/2高さの幅が測定できない場合は、ピーク位置から垂線を降ろし、ピークの1/2高さにおける垂線と他のピークとの重なりがない側の幅を測定し、この幅を2倍した値をWとした。(この場合のWの算出方法を図1に示した。)
本発明に用いられる直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、2種類以上のメタロセン触媒を用いて単一反応器により重合することが、得られた樹脂組成物の均一性を高め、得られたフィルムの機械的強度を向上させる上で好ましい。2種類以上のメタロセン触媒を用いて単一反応器により重合した直鎖状低密度ポリエチレン(a)は、個別のメタロセン触媒を用いて異なる反応器で重合した直鎖状低密度ポリエチレンを押出機、ニーダー等を用いて機械的に溶融混合して得られた直鎖状低密度ポリエチレン(a)に比べて、前記微分溶出曲線が同一であったとしても、得られた樹脂組成物の機械的強度(特に、ダート衝撃強度)が優れたものとなるため好ましい。
【0045】
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(b)は、190℃で測定したMFRが0.1〜5.0g/10分、好ましくは0.2〜4.0g/10分、更に好ましくは0.3〜3.0g/10分である。MFRが0.1g/10分未満では溶融押出時の押出機の負荷が大きくなり、かつフィルム成形時に表面荒れが発生するため、得られたフィルムの外観が悪化するとともに、衝撃強さ等の機械的強度が低下する。一方、MFRが5.0g/10分より大きい場合は、インフレーション成形時のバブル安定性が悪く、均一なフィルムが得られないとともに、得られたフィルムの機械的強度が低下する。
【0046】
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(b)は、密度が910〜935kg/m、好ましくは915〜930kg/m、更に好ましくは918〜925kg/mである。密度が910kg/m未満では得られたフィルムの剛性が低下し、包装袋として使用する際の自立性が悪いものとなる。一方、密度が935kg/mを越える場合は、得られたフィルムの衝撃強さが低下する。
【0047】
本発明に用いられる高圧法低密度ポリエチレン(b)は、具体的には(商品名)ペトロセン172、(商品名)ペトロセン360、(商品名)ペトロセン205(以上、東ソー株式会社製)等を市販品として入手することが可能である。
【0048】
本発明に用いられる塩基性脂肪酸金属塩(c)は、下記式(1)に示される化合物である。
【0049】
mMO・M(OOCR) (1)
ここで、mは上記(1)式に示される塩基性脂肪酸金属塩中の金属酸化物の過剰モル数を示すものである。そして、mとしては0.1〜1.0であり、特に成形フィルムに発生する表面荒れの防止効果が高く、品質に優れた成形品が得られることから0.2〜0.5であることが好ましい。ここで、mが0.1未満の場合は成形フィルムに発生する表面荒れを充分に防止することができない。一方、mが1.0を越える場合は塩基性脂肪酸金属塩の融点が高くなり、ポリエチレン系樹脂に配合した場合に分散不良を生じてゲルや目やにを誘発するため好ましくない。
【0050】
、Mはそれぞれ周期表第2族に属する金属であり、それらは同一または異なっていてもよく、このような金属としては例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等を挙げることができ、その中でも特に表面荒れの防止効果に優れることからマグネシウム、亜鉛であることが好ましい。
【0051】
OOCRは飽和または不飽和の脂肪酸残基を示し、その中でも入手が容易で、表面荒れの防止効果に優れることから炭素数12〜22の飽和または不飽和の脂肪酸残基であることが好ましい。そのような飽和または不飽和の脂肪酸残基としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキド酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0052】
本発明に用いられる上記式(1)で示される塩基性脂肪酸金属塩としては、例えば塩基性ラウリン酸マグネシウム、塩基性ラウリン酸亜鉛、塩基性ミリスチン酸マグネシウム、塩基性ミリスチン酸亜鉛、塩基性パルミチン酸マグネシウム、塩基性パルミチン酸亜鉛、塩基性ステアリン酸マグネシウム、塩基性ステアリン酸亜鉛、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、塩基性ベヘン酸マグネシウム、塩基性ベヘン酸亜鉛等が挙げられ、その中でも特に表面荒れの防止効果に優れることから塩基性ステアリン酸マグネシウム、塩基性ステアリン酸亜鉛、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、塩基性12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛であることが好ましい。
【0053】
そして、このような塩基性脂肪酸金属塩は、例えば飽和または不飽和の脂肪酸と周期表第2族に属する金属の酸化物または水酸化物とを加熱反応させて得ることができる。その際の脂肪酸としては、例えば飽和または不飽和のモノカルボン酸であり、構造中に側鎖、水酸基、ケトン基、アルデヒド基、エポキシ基等が含まれる場合もあり、炭素数12〜22の飽和または不飽和の脂肪酸であることがより好ましい。
【0054】
本発明に用いられる塩基性脂肪酸金属塩(c)としては、具体的には(商品名)EMS−6(塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム:m=0.44、M,M=Mg、R=炭素数18)、(商品名)EM−612(塩基性12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム:m=0.12、M,M=Mg、R=炭素数18)、(商品名)EM−144(塩基性ステアリン酸マグネシウム:m=0.44、M,M=Mg、R=炭素数18)(以上、栄伸化成株式会社製)等を市販品として入手することが可能である。
【0055】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物の構成成分である直鎖状低密度ポリエチレン(a)と高圧法低密度ポリエチレン(b)の配合割合は、(a)成分が95〜60重量%、好ましくは90〜70重量%、(b)成分が5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0056】
直鎖状低密度ポリエチレン(A)の配合量が60重量%未満である場合(即ち、高圧法低密度ポリエチレン(b)の配合量が40重量%を越える場合)は、得られたフィルムの機械的強度が低下する。一方、直鎖状低密度ポリエチレン(a)の配合量が95重量%より多い場合(即ち、高圧法低密度ポリエチレン(b)の配合量が5重量%未満である場合)は、溶融押出時の押出機の負荷が大きくなり、かつフィルム成形時に表面荒れが発生するため、得られたフィルムの外観が悪化するとともに、衝撃強さ等の機械的強度が低下する。
【0057】
本発明に用いられる塩基性脂肪酸金属塩(c)は、直鎖状低密度ポリエチレン(a)と高圧法低密度ポリエチレン(b)の合計量100重量部に対して、0.005〜2重量部、好ましくは0.01〜1重量部、更に好ましくは0.02〜0.5重量部である。塩基性脂肪酸金属塩(c)の配合量が0.005重量部未満では成形フィルムに発生する表面荒れの防止効果が低いものとなる。一方、塩基性脂肪酸金属塩(c)の配合量が2重量部を越える場合は、フィルム表面に粉吹き等が発生し、フィルムが汚染されると共に、フィルムの印刷適正等が悪化する。
【0058】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、好ましくは190℃で測定したMFRが0.2〜2.0g/10分、更に好ましくは0.3〜1.5g/10分である。MFRを0.2〜2.0g/10分とすることで、本発明のポリエチレン系樹脂組成物を溶融押出する際の押出機負荷が低減されるとともに、インフレーション成形等により成形した場合に表面外観と機械的強度のバランスに優れたフィルムが得られるため好ましい。
【0059】
また、本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、好ましくは密度が915〜930kg/m、更に好ましくは920〜927kg/mである。密度を915〜930kg/mとすることで、本発明のポリエチレン系樹脂組成物をインフレーション成形等によりフィルム加工し、包装袋として使用する際の自立性と衝撃強さのバランスに優れるため好ましい。
【0060】
更に、本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、好ましくは190℃で測定したMSが50mN以上、更に好ましくは70mN以上、特に90mN以上である。MSを50mN以上とすることで、本発明のポリエチレン系樹脂組成物をインフレーション成形等によりフィルム加工する際のバブル安定性に優れ、均一なフィルムが得られるため好ましい。
【0061】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物に配合される直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(a)、高圧法低密度ポリエチレン(b)は、それぞれ1種類または2種類以上の混合物であっても良い。
【0062】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(a)、高圧法低密度ポリエチレン(b)、塩基性脂肪酸金属塩(c)を種々の配合方法、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー等で混合後、押出機等で造粒する方法、バンバリーミキサー、ニーダー、2本ロール等で溶融混練後、押出機で造粒する方法、塩基性脂肪酸金属塩(c)のマスターバッチを作製後、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(a)、高圧法低密度ポリエチレン(b)とドライブレンドする方法等により得ることができる。
【0063】
本発明のポリエチレン樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない程度の範囲内で、必要に応じて酸化防止剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、滑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、造核剤、透明化剤、有機過酸化物、可塑剤、難燃剤等の、一般に熱可塑性プラスチックに用いられる添加剤を使用してもよい。
【0064】
本発明に係わるポリエチレン樹脂フィルムは、前記ポリエチレン系樹脂組成物を空冷インフレーション、水冷インフレーション、Tダイキャスト等の各種成形法により成形して得ることができる。その中でも空冷インフレーション法が生産性、コストの面から好ましい。
【0065】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、機械的強度が高く、かつフィルム外観に優れるため、該ポリエチレン系樹脂組成物を成形して得られたフィルムは、衝撃強さ、ヒートシール強さに優れたものとなる。
【0066】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物により得られるフィルムは、5%歪みでの引張弾性率が好ましくは120MPa以上、更に好ましくは140MPa以上、特に160MPa以上であり、ダート衝撃強さが好ましくは700g以上、更に好ましくは800g以上であり、ヒートシール強さが好ましくは35N/15mm以上、更に好ましくは40N/15mm以上である。
【0067】
上記特徴により、本発明のポリエチレン系樹脂組成物、該ポリエチレン系樹脂組成物を成形してなるフィルムは、肥料、セメント、化学品等の重量が大きい物品を包装するための重包装袋として使用でき、特にフィルム厚みが80〜200μmの重包装袋に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0068】
本発明のポリエチレン系樹脂組成物は、フィルムの成形加工性が良好で、フィルムに成形した際の衝撃強さ、ヒートシール強さに優れ、かつ良好なフィルム外観が得られるため、肥料、セメント、化学品等の重量が大きい物品を包装する場合でもフィルムの厚みを薄くすることが可能であり、重包装袋用フィルムとして有用である。
【実施例】
【0069】
以下に、実施例および比較例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何等限定されるものではない。
【0070】
参考例、実施例、比較例に示した各種物性の測定および評価は下記の方法により行った。
<MFR>
JIS K 6922−1(1997)に準拠し、190℃、2.16kg荷重で測定した。
<密度>
JIS K 6922−1(1997)に準拠し、密度勾配管により測定した。
<分子量分布>
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定した。
[装置]HLC−8121GPC/HT(東ソー株式会社製)
[測定条件]カラム:TSKgel GMHHR−H(20)HT×3本
[溶離液]1,2,4−トリクロルベンゼン、酸化防止剤(BHT0.05%)
[流速]1.0ml/分
[試料濃度]1.0mg/ml
[注入量]0.3ml
[カラム温度]140℃
[検出器]HLC−8121GPC/HT
<微分溶出曲線>
クロス分別測定装置を用いて下記条件で測定した。
[装置]CFC T−101(三菱化学社製)
[溶離液]オルトジクロロベンゼン
[試料濃度]2.5mg/mol
[注入量]0.5ml
[溶出温度]0,5,10,15,20,25,30,35,40,50,55,60,65,70,73,76,79、82,85,88、91,94,97,100,120,140℃
[測定方法]
サンプルループへ注入された試料を、1℃/分の速度で140℃から0℃の温度まで冷却し、TREFカラムにコーティングさせた。TREFカラムを0℃で更に30分間保持した後、TREFカラムを以下に示す条件において昇温し、上記各溶出温度に5分間保持した後、溶解している成分を1ml/分の流速でTREFカラムからGPCカラム(東ソー(株)製 TSKgel GMHHR−H(20)1本、東ソー(株)製 TSKgel GMHHR−H(S)2本)へ注入した。
【0071】
該GPCカラムで分子サイズによって分別された溶液について、装置付属の赤外分光光度計でポリマーの濃度に比例する吸光度を測定し(波長3.42μ,メチレンの伸縮振動で検出)、各溶出温度区分のクロマトグラムを得た。さらに、内蔵のデータ処理ソフトを用い、上記測定で得られた各溶出温度区分のクロマトグラムのベースラインを引き、演算処理し、微分溶出曲線を計算した。
<溶融張力(MS)>
東洋精機製作所製キャピラリーレオメーターを用いて、装置内にて190℃に加熱した樹脂を、直径2.095mm、長さ8.0mmのノズルから10mm/分の速度で23℃の大気中に押出してストランドとし、このストランドを3m/分の速度で引き取る際の張力を測定した。
【0072】
実施例および比較例に用いたフィルムは下記の方法により成形した。
<フィルムの成形方法>
フィルム成形は、空冷インフレーション成形機(株式会社プラコー製、型式 LL−50B)により行った。押出機のシリンダー温度を190℃に保持して押出した樹脂を190℃に加温したサーキュラーダイ(リップクリアランス3mm)に導入し、ブロー比1.8、引取速度12m/分で厚さ120μmの空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0073】
実施例および比較例に用いたフィルムの物性測定および評価は下記の方法により行った。
<引張弾性率>
前記インフレーションフィルムを用いて、JIS K 7113(1995)に準拠して測定した。フィルムを打抜いて2号形試験片を作製し、島津製作所製引張試験機(DCS−100)を使用して試験片が5%変形するのに必要な荷重を測定した。荷重の測定値を試験片の断面積と変形率(0.05)で除したものを5%引張弾性率とした。尚、5%引張弾性率値はMD方向とTD方向について測定し、両者の平均値[(MD方向の引張弾性率+TD方向の引張弾性率)/2]として算出した。
<ダート衝撃強さ>
前記インフレーションフィルムを用いて、JIS K 7124−1(1999)A法に準拠して測定した。
<ヒートシール強さ>
前記インフレーションフィルムを用いて、JIS Z 1711(1994)に準拠して測定した。
<バブル安定性評価>
上記、フィルムの成形方法に基づきフィルムを成形する際のバブル安定性の良否を目視で確認した。
【0074】
バブル安定性の良否の判断基準を以下に示す。
○;バブルの揺れ無し。
×;バブルの揺れ有り。
<フィルム外観>
上記、フィルムの成形方法に基づき得られたフィルムの外観の良否を目視で確認した。
【0075】
フィルム外観の良否の判断基準を以下に示す。
○;フィルム表面の荒れおよびゲル無し。
×;フィルム表面の荒れ有り。
×;ゲル有り。
【0076】
参考例1
[メタロセン触媒(A)の調製例]
塩酸ジメチルアニリニウム69gを300mLの水に加え、これをモンモリロナイト300gが入った水3Lに加えた。この上澄み液を除去した後、水、エタノールで洗浄した。その後減圧乾燥し、粉砕することで得られた変性モンモリロナイトを活性化助触媒として用い、遷移金属化合物としてジフェニルメチレン(4‐フェニル‐1−インデニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用い、有機金属化合物としてトリイソブチルアルミニウムを用いて、遷移金属化合物1μモルZr原子当たり活性化助触媒30mg(30μモル)、有機金属化合物450μモルAl原子を加え、遷移金属化合物の濃度が250μモル/Lとなるように脂肪族飽和炭化水素溶媒で希釈して調製したものをメタロセン触媒(A)として用いた。
【0077】
メタロセン触媒(A)を単独で用い、反応圧力を90MPa、1−ヘキセンの系内濃度を36.3mol%、反応器の内温(RxT)を204℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合した結果、Crea=0.57、Cpoly=0.062の数値を得た。すなわち、rは0.11であった。また、得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRは7.9g/10分、密度は899kg/mであった。EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 35.3)は41.1となり、式(4)を満たす。
[メタロセン触媒(B)の調製例]
塩酸ジメチルアニリニウム69gを300mLの水に加え、これをモンモリロナイト300gが入った水3Lに加えた。この上澄み液を除去した後、水、エタノールで洗浄した。その後減圧乾燥し、粉砕することで得られた変性モンモリロナイトを活性化助触媒として用い、遷移金属化合物としてジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを用い、有機金属化合物としてトリイソブチルアルミニウムを用いて、遷移金属化合物1μモルZr原子当たり活性化助触媒30mg(30μモル)、有機金属化合物450μモルAl原子を加え、遷移金属化合物の濃度が250μモル/Lとなるように脂肪族飽和炭化水素溶媒で希釈して調製したものをメタロセン触媒(B)として用いた。
【0078】
メタロセン触媒(B)を単独で用い、反応圧力を90MPa、1−ヘキセンの系内濃度を36.3mol%、反応器の内温(RxT)を204℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合した結果、Crea=0.57、Cpoly=0.041の数値を得た。すなわち、rは0.07であった。また、得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体のMFRは4.7g/10分、密度は921kg/mであった。EXP(12.6 × Ln(RxT) − 0.10967 × d + 35.3)は1.3となり、式(5)を満たす。
[直鎖状低密度ポリエチレン(a)の製造]
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、メタロセン触媒(A)およびメタロセン触媒(B)をメタロセン触媒(A)/(B)比=1/1(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、1−ヘキセンの系内濃度を12.2mol%として反応器の内温を185〜270℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。尚、メタロセン触媒(A)としてメタロセン触媒(A)の調製例、メタロセン触媒(B)としてメタロセン触媒(B)の調製例で得られたものをそれぞれ用いた。
【0079】
この直鎖状低密度ポリエチレン(以下、(a−1)という。)を実施例1、3および比較例6、8、9で用いた。(a−1)の諸性質を表1に示す。
【0080】
参考例2
[直鎖状低密度ポリエチレン(a)の製造]
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、メタロセン触媒(A)およびメタロセン触媒(B)をメタロセン触媒(A)/(B)比=1/1(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、1−ヘキセンの系内濃度を20.5mol%として反応器の内温を180〜270℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。尚、メタロセン触媒(A)としてメタロセン触媒(A)の調製例、メタロセン触媒(B)としてメタロセン触媒(B)の調製例で得られたものをそれぞれ用いた。
【0081】
この直鎖状低密度ポリエチレン(以下、(a−2)という。)を実施例2および比較例7で用いた。(a−2)の諸性質を表1に示す。
【0082】
参考例3
[直鎖状低密度ポリエチレン(a)の製造]
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、メタロセン触媒(A)およびメタロセン触媒(B)をメタロセン触媒(A)/(B)比=1/1(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、1−ヘキセンの系内濃度を15.7mol%として反応器の内温を185〜260℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。尚、メタロセン触媒(A)としてメタロセン触媒(A)の調製例、メタロセン触媒(B)としてメタロセン触媒(B)の調製例で得られたものをそれぞれ用いた。
この直鎖状低密度ポリエチレン(以下、(a−3)という。)を比較例1で用いた。(a−3)の諸性質を表1に示す。
【0083】
参考例4
[直鎖状低密度ポリエチレン(a)の製造]
10Lの攪拌機付き反応器を用いて、メタロセン触媒(A)およびメタロセン触媒(B)をメタロセン触媒(I)/(B)比=1/1(Zr原子モル比)で連続的に供給し、反応圧力を90MPa、1−ヘキセンの系内濃度を30.5mol%として反応器の内温を172〜234℃として、1500rpmで攪拌しながら連続的に重合し、直鎖状低密度ポリエチレンを製造した。尚、メタロセン触媒(I)としてメタロセン触媒(I)の調製例、メタロセン触媒(B)としてメタロセン触媒(B)の調製例で得られたものをそれぞれ用いた。
【0084】
この直鎖状低密度ポリエチレン(以下、(a−4)という。)を比較例2で用いた。(a−4)の諸性質を表1に示す。
【0085】
実施例1
参考例1に示した直鎖状低密度ポリエチレン(a−1)90重量%、高圧法低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名ペトロセン360;MFR1.6g/10分、密度919kg/m)(以下、(b−1)という。)10重量%、(a−1)と(b−1)の合計量100重量部に対して塩基性脂肪酸金属塩(栄伸化成株式会社製、商品名EMS−6;m=0.44、M,M=Mg、R=炭素数18)(以下、(c−1)という。)0.15重量部をタンブラーミキサーにて予備混合した後、シリンダー温度180℃に調製した単軸押出機(株式会社プラコー製、型式 PDA−50)で溶融混練、造粒し、ポリエチレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0086】
得られたペレットを<フィルムの成形方法>に示した方法により成形し、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0087】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表2に示す。
【0088】
実施例2
(a−1)90重量%の代わりに(a−2)を70重量%、(b−1)10重量%の代わりに高圧法低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名ペトロセン172;MFR0.3g/10分、密度920kg/m)(以下、(b−2)という。)を30重量%
、(c−1)0.15重量部の代わりに塩基性脂肪酸金属塩(栄伸化成株式会社製、商品名EM−612;m=0.12、M,M=Mg、R=炭素数18)(以下、(c−2)という。)を0.075重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0089】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表2に示す。
【0090】
実施例3
(a−1)90重量%の代わりに(a−1)を80重量%、(b−1)10重量%の代わりに(b−2)を20重量%、(c−1)0.15重量部の変わりに塩基性脂肪酸金属塩(栄伸化成株式会社製、商品名EM−144;m=0.44、M,M=Mg、R=炭素数18)(以下、(c−3)という。)を0.10重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0091】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表2に示す。
【0092】
実施例4
(a−2)70重量%の代わりにメタロセン触媒により得られた直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、商品名アフィニティーFM1570;MFR1.0g/10分、密度915kg/m)(以下、(a−5)という。)を40重量%およびメタロセン触媒により得られた直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル社製、商品名アフィニティーPL1845;MFR3.5g/10分、密度910kg/m)(以下、(a−8)という。)を30重量%、とした以外は、実施例2と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0093】
直鎖状低密度ポリエチレン(a−8)の諸性質を表1に示す。また、得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表2に示す。
【0094】
比較例1
(a−2)70重量%の代わりに参考例3に示した直鎖状低密度ポリエチレン(a−3)を80重量%、(b−2)30重量%の代わりに(b−2)を20重量%とした以外は、実施例2と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0095】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0096】
得られたポリエチレン樹脂組成物はインフレーション成形時のバブル安定性が悪く、成形フィルムはダート衝撃強さ、ヒートシール強さに劣るものであった。
【0097】
比較例2
(a−1)90重量%の代わりに参考例4に示した直鎖状低密度ポリエチレン(a−4)を90重量%とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0098】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0099】
得られたフィルムは引張弾性率が低く、包装袋として使用する際の自立性に劣るとともに、ヒートシール強さに劣るものであった。
【0100】
比較例3
(a−1)90重量%の代わりに(a−5)を90重量%とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0101】
直鎖状低密度ポリエチレン(a−5)の諸性質を表1に示す。また、得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0102】
得られたポリエチレン樹脂組成物は溶融押出時の押出負荷が大きく、成形フィルムは表面荒れが発生するとともに、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さに劣るものであった。
【0103】
比較例4
(a−2)70重量%の代わりにメタロセン触媒により得られた直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名ハーモレックスNC489A;MFR3.5g/10分、密度930kg/m)(以下、(a−6)という。)を70重量%とした以外は、実施例2と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0104】
直鎖状低密度ポリエチレン(a−6)の諸性質を表1に示す。また、得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0105】
得られたフィルムはダート衝撃強さ、ヒートシール強さに劣るものであった。
【0106】
比較例5
(a−2)70重量%の代わりにメタロセン触媒により得られた直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン株式会社製、商品名ハーモレックスNC479A;MFR3.5g/10分、密度925kg/m)(以下、(a−7)という。)を70重量%とした以外は、実施例2と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0107】
直鎖状低密度ポリエチレン(a−7)の諸性質を表1に示す。また、得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0108】
得られたフィルムはヒートシール強さに劣るものであった。
【0109】
比較例6
(a−1)90重量%の代わりに(a−1)を50重量%、(b−1)10重量%の代わりに(b−1)を50重量%とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0110】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0111】
得られたフィルムはダート衝撃強さに劣るものであった。
【0112】
比較例7
(b−2)30重量%の代わりに高圧法低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名ペトロセン203;MFR8.0g/10分、密度919kg/m)(以下、(b−3)という。)を30重量%とした以外は、実施例2と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0113】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0114】
得られたポリエチレン樹脂組成物はインフレーション成形時のバブル安定性が悪く、成形フィルムはヒートシール強さに劣るものであった。
【0115】
比較例8
(c−1)0.15重量部の代わりにステアリン酸カルシウム(栄伸化成株式会社製、商品名EC−102;m=0、M=Ca、R=炭素数18)(以下、(c−4)という。)を0.15重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0116】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0117】
得られた成形フィルムは表面荒れが発生するとともに、ダート衝撃強さに劣るものであった。
【0118】
比較例9
(c−3)0.10重量部の代わりにベヘン酸マグネシウム(栄伸化成株式会社製、商品名EM−700;m=0、M=Mg、R=炭素数22)(以下、(c−5)という。)を0.10重量部とした以外は、実施例3と同様の方法によりポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムを作製した。
【0119】
得られたポリエチレン樹脂組成物、空冷インフレーションフィルムによりMFR、密度、MS、インフレーション成形時のバブル安定性の評価及びフィルムの引張弾性率、ダート衝撃強さ、ヒートシール強さ、フィルム外観の評価を行った。これらの評価結果を表3に示す。
【0120】
得られた成形フィルムは表面荒れが発生するとともに、ダート衝撃強さに劣るものであった。
【0121】
【表1】

【0122】
【表2】

【0123】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】隣接するピークどうしに重なりが存在する場合の直鎖状低密度ポリエチレンの微分溶出曲線図。
【符号の説明】
【0125】
b:ピーク1におけるピーク位置での垂線
a:ピーク1の1/2高さにおける垂線と他のピークとの重なりがない側の幅
(ピーク1における1/2高さの幅:W=a×2)
c:ピーク2における1/2高さの幅(W)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(ア)〜(カ)の要件を満たすメタロセン触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(a)が95〜60重量%であり、下記(キ)および(ク)の要件を満たす高圧法低密度ポリエチレン(b)が5〜40重量%であり、(a)と(b)の合計量100重量部に対して、下記式(1)で示される塩基性脂肪酸金属塩(c)が0.005〜2重量部からなるポリエチレン系樹脂組成物。
mMO・M(OOCR) (1)
(ここで、mは0.1〜1.0であり、MおよびMはそれぞれ周期表第2族金属であり、同一または異なっていてもよく、OOCRは飽和または不飽和の脂肪酸残基を示す。)
(ア)190℃で測定したメルトフローレート(以下、MFRと言う。)が0.1〜4.0g/10分であり、
(イ)密度が910〜930kg/mであり、
(ウ)GPC法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が2.0〜4.0であり、
(エ)温度上昇溶離分別によって得られる微分溶出曲線のピークが2つ以上存在し、該ピーク温度が40℃以上90℃未満の範囲にあり、
(オ)該微分溶出曲線の最大ピークの高さ(H)とその次に高いピークの高さ(H)との比(H/H)が0.25以上であり、
(カ)該微分溶出曲線の個々のピーク高さ(H)と該ピークの高さの1/2における幅(W)の比(W/H)と該ピーク温度(T)が下記式(2)を満たす。
W/H<1.70−0.016T (2)
(キ)190℃で測定したMFRが0.1〜5.0g/10分であり、
(ク)密度が910〜935kg/mである。
【請求項2】
直鎖状低密度ポリエチレン(a)が、2種類のメタロセン触媒を用いて単一の反応器において重合することを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
190℃で測定したMFRが0.2〜2.0g/10分であり、密度が915〜930kg/mであり、190℃で測定した溶融張力(以下、MSと言う。)が50mN以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
JIS K 7113(1995)に準拠して5%歪みにおいて算出した引張弾性率が120MPa以上であり、JIS Z 7124−1(1999)A法に準拠して測定したダート衝撃強さが700g以上であり、JIS Z 1711(1994)に準拠して測定したヒートシール強さが35N/15mm以上であることを特徴とする請求項1〜3に記載のポリエチレン系樹脂組成物からなるフィルム。
【請求項5】
フィルムの厚みが80〜200μmであることを特徴とする請求項4に記載のフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−265387(P2006−265387A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85913(P2005−85913)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】