説明

ポリオレフィン微多孔膜

【課題】蓄電デバイスの長期信頼性と、高出力とを両立し得るセパレータとして好適なポリオレフィン微多孔膜を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを含み、突刺強度が2.4N/20μm以上、気孔率が50%以上90%以下、140℃における幅方向の収縮率が33%以下、突刺しクリープにおける膜厚さ保持率が16%以上、であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン微多孔膜、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの蓄電デバイス(リチウムイオンキャパシタ、非水系リチウム蓄電素子などと呼ばれるものも含む)の開発が活発に行われている。蓄電デバイスには通常、微多孔膜(セパレータ)が正負極間に設けられている。このようなセパレータは、正負極間の接触を防ぎ、イオンを透過させる機能を有する。
ここで、セパレータには、蓄電デバイスの良好な安全性確保の観点から、一定以上の物理的強度を備えることが求められる。即ち、蓄電デバイスの充放電に伴ってセパレータには電極からの圧力が加えられる場合があり、電極がセパレータを突き破って電極間の短絡が生じる可能性がある。
また、セパレータには、蓄電デバイスの高出力を達成する観点から、電気抵抗が小さいことも求められる。
【0003】
このような事情のもと、例えば特許文献1には、無機繊維を抄造してなるセパレータを使用した電気二重層キャパシタが提案されている。特許文献2には、ポリオレフィンと無機粉体からなるセパレータを使用した電気二重層キャパシタが提案されている。特許文献3には、超高分子量のポリエチレンを使用した微多孔膜が提案されている。更に、特許文献4には、無機粒子含有ポリオレフィン微多孔膜が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−158143号公報
【特許文献2】特開2003−297678号公報
【特許文献3】特許第2794179号公報
【特許文献4】国際公開2006/025323号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜4に記載されたセパレータ等はいずれも、蓄電デバイスの長期信頼性(セパレータの破膜による短絡が長期に亘り防止され、蓄電デバイスとしての安全性が長期に亘り確保されること)と、高出力とを両立する観点からは、なお改良の余地を有するものであった。
本発明は、蓄電デバイスの長期信頼性と、高出力とを両立し得るセパレータとして好適なポリオレフィン微多孔膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、蓄電デバイスにおける長期信頼性を向上させる指標として、引張強度や突刺強度といった微多孔膜に通常用いられる指標のみならず、膜の微小領域での長期耐圧縮性に着目した。
即ち、蓄電デバイスにおいて充放電が多数繰り返されると、電極とセパレータとの間の摩擦等により、電極から活物質が滑落するモデルが考えられる。滑落した活物質は、セパレータを突き破る原因となり得る。また、電極の活物質形状は平滑でない場合があり、このような平滑でない形状が、セパレータを突き破る原因となり得る。近年、蓄電デバイスには高エネルギー密度化、高出力化が求められており、その捲回構造、集電構造は多様化しているが、蓄電デバイスの多様化した形状は電池内の圧力分布の不均一化に繋がる傾向となる。電池内の圧力分布が不均一であると、上記滑落した活物質や平滑でない活物質形状が、蓄電デバイスの長期信頼性を損なう原因となり易いと考えられた。
そして、本発明者らは、膜の微小領域での長期耐圧縮性を示す指標として突刺しクリープにおける膜厚さ保持率を採用すると共に当該指標を特定範囲に設定し、更に、基材や他のパラメータを適切に選定して形成したポリオレフィン微多孔膜が、蓄電デバイスの長期信頼性と、高出力とを両立し得るセパレータとして好適であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを含み、突刺強度が2.4N/20μm以上、気孔率が50%以上90%以下、140℃における幅方向の収縮率が33%以下、突刺しクリープにおける膜厚さ保持率が16%以上、であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
[2]突刺しクリープにおける膜厚さ減少率が10%以下である[1]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[3]平均孔径が0.2μm以下、曲路率が2.0以下である[1]又は[2]に記載のポリオレフィン微多孔膜。
[4]前記無機粒子の含有量が30質量%以上70質量%以下である[1]〜[3]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[5]前記無機粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下である[1]〜[4]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[6]前記無機粒子が珪素酸化物である[1]〜[5]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[7]前記ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量が5万以上1000万以下である[1]〜[6]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[8]前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレンを1質量%以上50質量%以下の割合で含む[1]〜[7]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を用いてなる蓄電デバイス用セパレータ。
[10][9]に記載の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極と、電解液とを含む蓄電デバイス。
[11][1]〜[8]のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、以下の(1)〜(5)の各工程、
(1)ポリオレフィン樹脂、無機粒子、及び可塑剤を混練して混練物を形成する混練工程、
(2)前記混練工程の後、前記混練物をシート状成形体に加工する成形工程、
(3)前記成形工程の後、前記シート状成形体を面倍率が20倍以上200倍以下で二軸延伸し、延伸物を形成する延伸工程、
(4)前記延伸工程の後、前記延伸物から可塑剤を抽出して多孔体を形成する多孔体形成工程、
(5)前記多孔体形成工程の後、前記多孔体に対し、前記ポリオレフィン樹脂の融点以上、融点+40℃以下の温度条件で熱処理を行う熱処理工程、
を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリオレフィン微多孔膜は、蓄電デバイスの長期信頼性と、高出力とを両立し得るセパレータとして好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜は、ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを含むポリオレフィン樹脂組成物にて形成される。
本実施の形態において使用するポリオレフィン樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のモノマーを重合して得られる重合体(ホモ重合体や共重合体、多段重合体等)が挙げられる。これら重合体は1種を単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
また、前記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、ポリブテン、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。
【0011】
ここで、ポリオレフィン微多孔膜の融点を低下させる観点、又は突刺し強度を向上させる観点から、前記ポリオレフィン樹脂は高密度ポリエチレンを含むことが好ましい。
高密度ポリエチレンが、前記ポリオレフィン樹脂中に占める割合としては、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0012】
また、ポリオレフィン微多孔膜の耐熱性を向上させる観点から、前記ポリオレフィン樹脂はポリプロピレンを含むことが好ましい。
ポリプロピレンが、前記ポリオレフィン樹脂中に占める割合としては、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、上限として好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。当該割合を1質量%以上とすることは、ポリオレフィン微多孔膜の耐熱性を向上させる観点から好ましい。一方、当該割合を50質量%以下とすることは、延伸性が良好であり、高突刺強度な微多孔膜を実現する観点から好ましい。
【0013】
前記ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量(後述する実施例における測定法に準じて測定される。なお、複数のポリオレフィン樹脂が用いられる場合には、各々のポリオレフィン樹脂について測定される値を意味する。)としては、好ましくは5万以上、より好ましくは10万以上であり、上限として好ましくは1000万以下、より好ましくは300万以下である。当該粘度平均分子量を5万以上とすることは、溶融成形の際のメルトテンションを高く維持し良好な成形性を確保する観点、又は、十分な絡み合いを付与し微多孔膜の強度を高める観点から好ましい。一方、粘度平均分子量を1000万以下とすることは、均一な溶融混練を実現し、シートの成形性、特に厚み安定性を向上させる観点から好ましい。粘度平均分子量を300万以下とすることは、より成形性を向上させる観点から好ましい。
なお、成形性向上の観点から、粘度平均分子量の異なる数種のポリオレフィン樹脂を混合して用いることが好ましい。
【0014】
前記ポリオレフィン樹脂組成物には必要に応じて、フェノール系やリン系やイオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、着色顔料等の各種添加剤を混合して使用できる。
【0015】
前記無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ(珪素酸化物)、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス、シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリンクレー、カオリナイト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維などが挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を併用することができる。中でも、電気化学的安定性の観点から、シリカ、アルミナ、チタニウムがより好ましい。特にシリカが好ましい。
【0016】
前記無機粒子の平均粒径としては、好ましくは1nm以上、より好ましくは6nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、上限として好ましくは100nm以下、好ましくは80nm以下、更に好ましくは60nm以下である。
平均粒径を100nm以下とすることは、延伸等を施した場合でもポリオレフィン樹脂と無機粒子間での剥離が生じにくい傾向となり、マクロボイドの発生を抑制する観点から好ましい。ここで、ポリオレフィン樹脂と無機粒子間での剥離が生じにくいことは、微多孔膜を構成するフィブリル自身の高硬度化の観点から好ましく、ポリオレフィン微多孔膜の局所領域での耐圧縮性能に優れる傾向、又は耐熱性に優れる傾向が観察されるため好ましい。また、ポリオレフィン樹脂と無機粒子間とが密着していることは、蓄電デバイス用セパレータの非水電解液との親和性を向上させ、出力保持性能、サイクル保持性能等に優れたセパレータを実現する観点から好ましい。
一方、平均粒径を1nm以上とすることは、無機粒子の分散性を確保し、局所領域における耐圧縮性を向上させる観点から好ましい。
【0017】
更に、ポリエチレンとポリプロピレンとを含む組成物に対して粒径が1nm以上100nm以下の無機粒子を配合することは、ポリエチレンとポリプロピレンとの相溶性を向上させて両者の相分離を抑制し、良好な延伸性を確保する観点から好ましい。
なお、無機粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡にて計測できる。即ち、走査型電子顕微鏡(SEM)にて拡大した、10μm×10μmの視野を直接、あるいはネガより写真に焼き付けた後、画像解析装置に読み込み、これから計算される各粒子の円換算径(面積を同じくする円の直径)の数平均値を、無機フィラーの平均粒径とすることができる。ただし、写真から画像解析装置に入力する際に染色境界が不明瞭な場合には、写真のトレースを行い、この図を用いて画像解析装置に入力を行うことができる。
【0018】
また、前記無機粒子の可塑剤(後述)の吸油量としては、好ましくは150ml/100g以上であり、上限として好ましくは1000ml/100g以下、より好ましくは500ml/100g以下である。当該吸油量を150ml/100g以上とすることは、ポリオレフィン樹脂、無機粒子、可塑剤を含む混練物中に凝集物が生じることを抑制し、良好な成形性を確保する観点から好ましい。また、ポリオレフィン微多孔膜を蓄電デバイス用セパレータとして使用した場合の、非水電解液の含浸性、保液性に優れ、蓄電デバイス生産性や長期使用における性能維持を確保する観点から好ましい。一方、当該吸油量を1000ml/100g以下とすることは、ポリオレフィン微多孔膜を生産する際の、無機粒子の取り扱い性の観点から好ましい。
【0019】
前記無機粒子が、前記ポリオレフィン微多孔膜中に占める割合としては、好ましくは30質量%以上、より好ましくは35質量%以上であり、上限として通常70質量%以下、好ましくは67質量%以下である。当該割合を30質量%以上とすることは、ポリオレフィン微多孔膜を高気孔率に成膜する観点や、ポリオレフィン微多孔膜の140℃における横方向(幅方向、TD方向)の熱収縮率を向上させる観点、更には、突刺クリープにおける膜厚さ保持率を高く、膜厚さ減少率を小さく調整する観点から好ましい。一方、当該割合を70質量%以下とすることは、高延伸倍率での成膜性を向上させ、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度を向上させる観点から好ましい。また、当該割合を30質量%以上とすることは、耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0020】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、例えば、下記(1)〜(5)の各工程を含む製造方法を用いることができる。
(1)ポリオレフィン樹脂、無機粒子、及び可塑剤を混練して混練物を形成する混練工程、
(2)前記混練工程の後、前記混練物をシート状成形体に加工する成形工程、
(3)前記成形工程の後、前記シート状成形体を面倍率が20倍以上200倍以下で二軸延伸し、延伸物を形成する延伸工程、
(4)前記延伸工程の後、前記延伸物から可塑剤を抽出して多孔体を形成する多孔体形成工程、
(5)前記多孔体形成工程の後、前記多孔体に対し、前記ポリオレフィン樹脂の融点以上、融点+40℃以下の温度条件で熱処理(熱固定及び熱緩和)を行う熱処理工程。
【0021】
前記(1)の工程で用いられる可塑剤としては、ポリオレフィン樹脂と混合した際にポリオレフィン樹脂の融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒であることが好ましい。また、常温において液体であることが好ましい。
前記可塑剤としては、例えば、流動パラフィンやパラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジエチルヘキシルやフタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコールやステアリルアルコール等の高級アルコール類;等が挙げられる。
特にポリオレフィン樹脂にポリエチレンが含まれる場合、可塑剤として流動パラフィンを用いることは、ポリオレフィン樹脂と可塑剤との界面剥離を抑制し、均一な延伸を実施する観点、又は高突刺強度を実現する観点から好ましい。また、フタル酸ジエチルヘキシルを用いることは、混練物を溶融押出しする際の負荷を上昇させ、無機粒子の分散性を向上させる(品位の良い膜を実現する)観点から好ましい。
【0022】
前記可塑剤が、前記混練物中に占める割合としては、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、上限として好ましくは80質量%以下、好ましくは70質量%以下である。当該割合を80質量%以下とすることは、溶融成形時のメルトテンションを高く維持し、成形性を確保する観点から好ましい。一方、当該割合を30質量%以上とすることは、成形性を確保する観点、及び、ポリオレフィン樹脂の結晶領域におけるラメラ晶を効率よく引き伸ばす観点から好ましい。ここで、ラメラ晶が効率よく引き伸ばされることは、ポリオレフィン鎖の切断が生じずにポリオレフィン鎖が効率よく引き伸ばされることを意味し、均一かつ微細な孔構造の形成や、ポリオレフィン微多孔膜の強度乃至結晶化度の向上に寄与し得る。
【0023】
ポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤とを混練する方法としては、例えば、以下の(a),(b)の方法が挙げられる。
(a)ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを押出機、ニーダー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂を加熱溶融混練させながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
(b)予めポリオレフィン樹脂と無機粒子と可塑剤を、ヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練する工程を経て、該混練物を押出機に投入し、加熱溶融させながら更に可塑剤を導入し混練する方法。
【0024】
前記(b)の方法における事前混練に際しては、無機粒子の分散性を向上させ、高倍率の延伸を破膜することなく実施する観点から、ポリオレフィン樹脂と無機粒子に対し、下式(1)の範囲で設定される量の可塑剤を配合して事前混練することが好ましい。
0.6≦可塑剤重量/(可塑剤吸油量×無機粒子重量×可塑剤密度)×100≦1.2 (1)
【0025】
前記(2)の工程は、例えば、前記混練物をTダイ等を介してシート状に押し出し、熱伝導体に接触させて冷却固化させる工程である。当該熱伝導体としては、金属、水、空気、あるいは可塑剤自身等が使用できる。また、冷却固化をロール間で挟み込むことにより行なうことは、シート状成形体の膜強度を増加させる観点や、シート状成形体の表面平滑性を向上させる観点から好ましい。
【0026】
前記(3)の工程における延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等の方法が挙げられる。中でも、同時二軸延伸方法を採用することは、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度増加や膜厚均一化の観点から好ましい。
また、前記(3)の工程における面倍率としては、好ましくは20倍以上、好ましくは25倍以上であり、上限として好ましくは200倍以下、より好ましくは100倍以下、更に好ましくは70倍以下である。当該面倍率を20倍以上とすることは、ポリオレフィン樹脂と無機粒子との界面を密着させ、ポリオレフィン微多孔膜の局所的かつ微小領域での耐圧縮性能を向上させる観点から好ましい。
【0027】
前記(3)の工程における延伸温度としては、ポリオレフィン樹脂の融点温度を基準温度として、好ましくは融点温度−50℃以上、より好ましくは融点温度−30℃以上、更に好ましくは融点温度−20℃以上であり、上限として好ましくは融点温度−2℃以下、より好ましくは融点温度−3℃以下である。延伸温度を融点温度−50℃以上とすることは、ポリオレフィン樹脂と無機粒子との界面、もしくはポリオレフィン樹脂と可塑剤との界面を良好に密着させ、ポリオレフィン微多孔膜の局所的かつ微小領域での耐圧縮性能を向上させる観点から好ましい。例えば、ポリオレフィン樹脂として高密度ポリエチレンを用いた場合、延伸温度としては115℃以上132℃以下が好適である。複数のポリオレフィン樹脂を混合し用いた場合は、その融解熱量が大きい方のポリオレフィン樹脂の融点を基準とすることができる。
【0028】
前記(4)の工程は、ポリオレフィン微多孔膜の突刺強度を向上させる観点から、前記(3)の工程の後に行うことが好ましい。抽出方法としては、前記可塑剤の溶剤に対して前記延伸物を浸漬する方法が挙げられる。なお、抽出後の微多孔膜中の可塑剤残存量としては1質量%未満にすることが好ましい。
【0029】
前記(5)の工程は、熱固定、及び/又は熱緩和をおこなう工程であることが好ましい。
ここで、(5)の工程における延伸倍率としては、面倍率として好ましくは4倍未満、より好ましくは3倍未満である。面倍率を4倍未満とすることは、マクロボイドの発生や突刺強度低下を抑制する観点から好ましい。
また、熱処理温度としては、ポリオレフィン樹脂の融点温度を基準として、好ましくは融点温度+40℃以下、より好ましくは融点温度+30℃以下であり、下限として好ましくは融点温度以上である。熱処理温度を融点温度以上とすることは、膜の破れ等の発生を抑制し、また、ポリオレフィン微多孔膜の140℃条件下での熱収縮率を低減する観点から好適である。一方、融点温度+40℃以下とすることは、ポリオレフィン樹脂の収縮を抑制し、ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮率を低減する観点から好適である。
【0030】
なお、前記(5)の工程の後、得られたポリオレフィン微多孔膜に対して後処理を施しても良い。このような後処理としては、例えば、界面活性剤等による親水化処理や、電離性放射線等による架橋処理、等が挙げられる。
【0031】
本実施の形態のポリオレフィン微多孔膜について、その突刺し強度(後述する実施例における測定法に準じて測定される)は、2.4N/20μm以上、好ましくは4N/20μm以上であり、上限として好ましくは20N/20μm以下、より好ましくは10N/20μm以下である。突刺し強度を2.4N/20μm以上とすることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点から好ましい。また、充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制し得る。一方、20N/20μm以下とすることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。
なお、上記突刺し強度は、ポリエチレン分子量、ポリオレフィン樹脂の割合、及び、前記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0032】
前記微多孔膜の気孔率(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、50%以上、好ましくは55%以上であり、上限として好ましくは90%以下、好ましくは80%以下である。気孔率を50%以上とすることは、出力を確保する観点から好適である。一方、90%以下とすることは、突刺し強さを確保する観点から好ましい。
なお、上記気孔率は、前記(3)の工程における延伸温度、延伸倍率を調整する及び/または、前記(5)の熱固定及び熱緩和工程の温度、倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0033】
前記微多孔膜の140℃における幅方向の熱収縮率(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは33%以下、より好ましくは20%以下である。140℃における幅方向の熱収縮率を33%以下とすることは、蓄電デバイス作成時に加熱工程があった場合、収縮が発生し電極同士が接触し短絡が発生してしまうようなおそれを低減し得る。また、収縮が小さいことは、長期の信頼性を確保する観点からも好ましい。
なお、上記熱収縮率は、前記(5)の熱固定及び熱緩和工程の温度、倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0034】
前記微多孔膜の、突刺しクリープにおける膜厚さ保持率(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは16%以上、より好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上であり、上限として好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下、更に好ましくは80%以下、特に好ましくは60%以下である。当該保持率を95%以下とすることは、捲回するのに十分な柔軟性を微多孔膜に付与する観点から好適である。一方、16%以上とすることは、蓄電デバイスの長期信頼性と、高出力とを両立し得るセパレータとして好適なポリオレフィン微多孔膜を実現する観点から好適である。
なお、上記膜厚さ保持率は、 ポリエチレン分子量、無機物の割合、気孔率を調整する方法等により調節可能である。
【0035】
前記微多孔膜の、突刺しクリープにおける膜厚さ減少率(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは10%以下、より好ましくは9%以下、更に好ましくは8%以下であり、下限として好ましくは0.1%以上である。当該減少率を10%以下とすることは、蓄電デバイスの長期信頼性と、高出力とを両立し得るセパレータとして好適なポリオレフィン微多孔膜を実現する観点から好適である。一方、0.1%以上とすることは、捲回するのに十分な柔軟性を微多孔膜に付与する観点から好適である。
なお、上記膜厚さ減少率は、ポリエチレン分子量、無機物の割合、気孔率を調整する方法等により調節可能である。
【0036】
前記微多孔膜の平均孔径(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは0.2μm以下、より好ましくは0.18μm以下であり、下限として好ましくは0.03μm以上である。平均孔径を0.2μm以下とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制し、容量低下を抑制する観点から好適である。
なお、上記平均孔径は、前記(5)の熱固定及び熱緩和工程の温度、倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0037】
前記微多孔膜の曲路率(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.8以下であり、下限として好ましくは0.5以上である。曲路率を2.0以下とすることは、電気抵抗が小さく、高出力の蓄電デバイスを得る観点から好適である。
なお、上記曲路率は、前記(5)の熱固定及び熱緩和工程の温度、倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0038】
前記微多孔膜の、最終的な膜厚さ(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、上限として好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。膜厚さを2μm以上とすることは、機械強度を向上させる観点から好適である。一方、100μm以下とすることは、セパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
【0039】
前記微多孔膜の透気度(後述する実施例における測定法に準じて測定される。)は、好ましくは10秒以上、より好ましくは50秒以上であり、上限として好ましくは1000秒以下、好ましくは500秒以下、さらに好ましくは300秒以下である。透気度を10秒以上とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制する観点から好適である。一方、1000秒以下とすることは、良好な充放電特性が得る観点から好ましい。
なお、上記透気度は、前記(5)の熱固定及び熱緩和工程の温度、倍率を調整する方法等により調節可能である。
【0040】
前記微多孔膜は、特に非水電解液を用いるような蓄電デバイス用セパレータとして有用である。また、本実施の形態の蓄電デバイスは、上述したポリオレフィン微多孔膜をセパレータに用い、正極と、負極と、電解液とを含む。
前記蓄電デバイスは、例えば、前記微多孔膜を幅10〜500mm(好ましくは80〜500mm)、長さ200〜4000m(好ましくは1000〜4000m)の縦長形状のセパレータとして調製し、当該セパレータを、正極―セパレータ―負極―セパレータ、または負極―セパレータ―正極―セパレータの順で重ね、円または扁平な渦巻状に巻回して巻回体を得、当該巻回体を電池缶内に収納し、更に電解液を注入することにより製造することができる。
なお、前記蓄電デバイスは、正極―セパレータ―負極―セパレータ、または負極―セパレータ―正極―セパレータの順に平板状に積層し、袋状のフィルムでラミネートし、電解液を注入する工程を経て製造することもできる。
【0041】
本実施の形態の蓄電デバイスは高出力、長期信頼性に優れるので、電気自動車やハイブリッド自動車用として、特に有用である。
【実施例】
【0042】
次に、実施例及び比較例を挙げて本実施の形態をより具体的に説明するが、本実施の形態はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の物性は以下の方法により測定した。
【0043】
(1)膜厚さ
微小測厚器(東洋精機製 タイプKBM)を用いて室温23℃で測定した。
【0044】
(2)気孔率
10cm×10cm角の試料を微多孔膜から切り取り、その体積(cm)と質量(g)を求め、それらと膜密度(g/cm)より、次式を用いて計算した。
気孔率(%)=(体積−質量/混合組成物の密度)/体積×100
なお、混合組成物の密度は、用いたポリオレフィン樹脂と無機粒子の各々の密度と混合比より計算で求められる値を用いた。
【0045】
(3)透気度
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計(東洋精機製)にて測定した。
【0046】
(4)突刺し強度
カトーテック製、商標、KES−G5ハンディー圧縮試験器を用いて、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secの条件で突刺試験を行い、最大突刺荷重を突刺強度(N)とした。
【0047】
(5)突刺クリープ(膜厚さ保持率、膜厚さ減少率)
図1に示す、測定子の先端がφ0.1mmの針状測定子(尾崎製作所製 XT−4)を用い、定圧厚み測定器「尾崎製作所製 PEACOCK FFA−1」にて測定した。
測定力1.25Nの荷重を付与し続けた状態で、1時間後の膜厚さをd[1h]、24時間後の膜厚さをd[24h]とし、測定前の膜厚さをDとし、次式を用いて膜厚さ保持率と膜厚さ減少率を計算した。
測定は任意に5箇所を選択して実施し平均値を特性値とした。突刺クリープ評価では、時間軸を常用対数とした場合(log[時間])に、膜厚さ保持率は概ね直線状に低下することから、その傾き(減少率)を膜厚さ減少率と定義した。
膜厚さ保持率(%)=(d[24h]/D)×100
膜厚さ減少率(%)=[{(d[1h]−d[24h])/D}×100]/log1024
【0048】
(6)粘度平均分子量(Mv)
デカヒドロナフタリンへ試料の劣化防止のため2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノールを0.1w%の濃度となるように溶解させ、これ(以下DHNと略す)を試料溶媒として用いる。
試料をDHNへ0.1w%の濃度となるように150℃で溶解させ試料溶液を作成する。作成した試料溶液を10ml採取し、キャノンフェンスケ粘度計(SO100)により135℃での標線間通過秒数(t)を計測する。微多孔膜に無機粒子が含有している場合は、微多孔膜をDHNに溶解させた溶液をろ過し、無機粒子を除去した後に試料を採取した。なお、無機粒子が溶解除去可能な場合は、予め無機粒子を除去した微多孔膜を用いても良い。また、DHNを150℃に加熱した後、10ml採取し、同様の方法により粘度計の標線間を通過する秒数(t)を計測する。得られた通過秒数t、tBを用いて次の換算式により極限粘度[η]を算出した。
[η]=((1.651t/tB−0.651)0.5−1)/0.0834
求められた[η]より、次式によりMvを算出した。
[η]=6.77×10−4Mv0.67
【0049】
(7)平均孔径(μm)、屈曲率(曲路率)
キャピラリー内部の流体は、流体の平均自由工程がキャピラリーの孔径より大きいときはクヌーセンの流れに、小さい時はポアズイユの流れに従うことが知られている。そこで、微多孔膜の透気度測定における空気の流れがクヌーセンの流れに、また微多孔膜の透水度測定における水の流れがポアズイユの流れに従うと仮定する。
この場合、平均孔径d(μm)と屈曲率τ(無次元)は、空気の透過速度定数Rgas(m/(m・sec・Pa))、水の透過速度定数Rliq(m/(m・sec・Pa))、空気の分子速度ν(m/sec)、水の粘度η(Pa・sec)、標準圧力P(=101325Pa)、気孔率ε(%)、膜厚L(μm)から、次式を用いて求めることができる。
d=2ν×(Rliq/Rgas)×(16η/3P)×10
τ=(d×(ε/100)×ν/(3L×P×Rgas))1/2
ここで、Rgasは透気度(sec)から次式を用いて求められる。
gas=0.0001/(透気度×(6.424×10−4)×(0.01276×101325))
また、Rliqは透水度(cm/(cm・sec・Pa))から次式を用いて求められる。
liq=透水度/100
なお、透水度は次のように求められる。直径41mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた微多孔膜をセットし、該膜のアルコールを水で洗浄した後、約50000Paの差圧で水を透過させ、120sec間経過した際の透水量(cm)より、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度とした。
また、νは気体定数R(=8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、空気の平均分子量M(=2.896×10−2kg/mol)から次式を用いて求められる。
ν=((8R×T)/(π×M))1/2
【0050】
(8)140℃における幅方向の収縮率の測定(140℃TD収縮)
120mm×120mmに切り取ったサンプルの横方向(TD方向)に100mm間隔の印を打つ。金尺で印間の測定を行いT0とする。
コピー用紙にはさみ、140℃に加熱したオーブン内に、放置する。1時間後オーブンよりより取り出し、23℃雰囲気で1時間冷却後、前記印間の距離を、金尺を使用して測定し、T1とする。下記の式で熱収縮率を計算する。
140℃における幅方向の収縮率(%)=(T0−T1)/T0×100
【0051】
(9)内部抵抗(電気二重層キャパシタ内部抵抗の測定)
アルミニウム箔上に、微粒子黒鉛粉末とエチレン−アクリル酸樹脂をバインダーとした導電性ペーストを塗布し、乾燥させ5μmの導電層を設けた。ついで、市販の活性炭、導電体としてカーボンブラック、結着剤としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を8:1:1で混合したものを、上記アルミニウム箔の片面に塗布し電極を作成し、電解液に1.5Mのトリエチルメチルアンモニウム四フッ化ホウ酸塩のプロピレンカーボネート溶液を使用した単層ラミネートセルを作成し、セパレータの内部抵抗を測定した。測定値の指標は、実施例1の測定値を100として表した。蓄電デバイスの内部抵抗が小さいことは、蓄電デバイスが高出力であることを意味する。
【0052】
(10)融点
島津製作所社製DSC60を使用し測定した。多孔シートを直径5mmの円形に打ち抜き、数枚重ね合わせて3mgとしたのを測定サンプルとして用いた。これを直径5mmのアルミ製オープンサンプルパンに敷き詰め、クランピングカバーを乗せサンプルシーラーでアルミパン内に固定した。窒素雰囲気下、昇温速度10℃/minで30℃から200℃までを測定し、融解吸熱曲線を得た。得られた融解吸熱曲線のピークトップ温度を融点(℃)とした。
(11)長期信頼性
(9)の内部抵抗の測定で作成した単層ラミネートセルを使用した。初期の放電容量(I)を測定し、フロート試験(温度60℃の恒温槽、定電圧2.8V)を行なった。500時間後の放電容量(A)を測定した。この時の容量維持率(A/I×100%)を計算し、合格の判定は、95%以上が充分合格(◎)、90%以上95%未満が合格(○)、容量維持率90%未満が不合格(×)とした。
【0053】
[実施例1]
粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH800」(旭化成ケミカルズ(株)製)を18質量部、Mv200万の超高分子量ポリエチレン「UH850」(旭化成ケミカルズ(株)製)を12質量部、平均一次粒径が15nmであるシリカ「DM10C」((株)トクヤマ製)を20質量部、可塑剤として流動パラフィン「スモイル P−350P」((株)松村石油研究所製)を30質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをスーパーミキサーにて予備混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。また溶融混練し、押し出される全混合物(100質量部)中に占める流動パラフィン量比が60質量部となるように、流動パラフィンを二軸押出機シリンダーへサイドフィードし、ギアポンプ、導管、Tダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール間に押出し、厚み2000μmのシート状のポリオレフィン樹脂組成物を得た。次に連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に7倍に同時二軸延伸を行った。この時同時二軸テンターの設定温度は126℃である。次に塩化メチレン槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行った。さらに熱処理(HS)を行うため横テンター延伸機に導き横方向に1.7倍延伸(最大倍率)したのち最終出口は1.5倍(出口倍率)となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は143℃で緩和部の設定温度は148℃である。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
実施例1のMv27万の高密度ポリエチレンを15質量部に、Mv200万の超高分子量ポリエチレンを10質量部に、平均一次粒径が15nmであるシリカ「DM10C」((株)トクヤマ製)を25質量部に、流動パラフィンを40質量部にしスーパーミキサーにて予備混合した。熱処理条件を、横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和した。横延伸部の設定温度は143℃で緩和部の設定温度は148℃である。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
実施例2の横延伸の条件を、横方向に1.45倍延伸したのち最終出口は1.05倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は145℃で緩和部の設定温度は150℃である。これら以外は実施例2と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0056】
[実施例4]
実施例1のポリエチレンをMv27万の高密度ポリエチレンを10.8質量部、Mv200万の超高分子量ポリエチレンを7.2質量部にし、平均一次粒径が15nmであるシリカ「DM10C」(商標、(株)トクヤマ製)を22質量部、横延伸の条件を、横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は140℃で緩和部の設定温度は150℃である。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0057】
[実施例5]
実施例1のポリエチレンをMv27万の高密度ポリエチレン30質量部にし、横延伸の条件を、横方向に1.5倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は145℃で緩和部の設定温度は150℃である。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0058】
[実施例6]
実施例1のポリエチレンをMv90万の高密度ポリエチレン20質量部にし、平均一次粒径が15nmであるシリカ「DM10C」(商標、(株)トクヤマ製)を30質量部、可塑剤として流動パラフィン「スモイル P−350P」(商標、(株)松村石油研究所製)を45質量部、横延伸の条件を、横方向に1.5倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は145℃で緩和部の設定温度は150℃である。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
[実施例7]
実施例1のMv27万の高密度ポリエチレンを18質量部に、Mv200万の超高分子量ポリエチレンを12質量部に、平均一次粒径が13nmであるアルミナ「AluC」(商標、Degussa製)を36質量部に流動パラフィンを40質量部にしスーパーミキサーにて予備混合した点と、熱処理を行うため横テンターに導き横方向に1.3倍延伸したのち最終出口は1.1倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は145℃で緩和部の設定温度は148℃である。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
[実施例8]
実施例1のポリエチレンをMv200万の超高分子量ポリエチレンを22質量部にし、平均一次粒径が15nmであるシリカ「DM10C」(商標、(株)トクヤマ製)を41質量部にし、熱処理を行うため横テンターに導き横方向に1.4倍延伸したのち最終出口は1.3倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は145℃で緩和部の設定温度は148℃である。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0059】
[実施例9]
粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH850」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を12質量部、Mv80万の超高分子量ポリエチレン「UH650」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を18質量部、平均一次粒径が15nmであるシリカ「NIPSIL−LP」(商標、東ソーシリカ(株)製)を20質量部、可塑剤としてフタル酸エチルヘキシルを45質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをスーパーミキサーにて原料調整し押出し機に導き、ギアポンプ、導管、Tダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール間に押出し、厚み1300μmのシート状のポリオレフィン樹脂組成物を得た。次に連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に4倍に同時二軸延伸を行った。この時同時二軸テンターの設定温度は126℃である。次に塩化メチレン槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行った。さらに熱処理を行うため横テンターに導き横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は143℃で緩和部の設定温度は148℃である。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0060】
[実施例10]
実施例1のシリカを平均一次粒径が15nmであるシリカ「QS−10」(商標、(株)トクヤマ製)に変更し、横延伸の条件を、横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0061】
[実施例11]
実施例1の粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH800」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を14質量部、Mv200万の超高分子量ポリエチレン「UH850」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を10質量部、Mv40万のホモポリプロピレン「H−100M」(プライムポリマー製)を6質量部に変更し、横延伸の条件を、横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。これら以外は実施例1と同様にして微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0062】
[実施例12]
実施例1の横延伸の条件を、横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるようにし、温度条件を、横延伸部の設定温度130℃で緩和部の設定温度130℃にしたほかは、これら以外は実施例1と同様に行った。製膜条件および膜特性を表1に示す。
【0063】
[比較例1]
実施例1の粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH800」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を12.8質量部、Mv200万の超高分子量ポリエチレン「UH850」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を19.2質量部、平均一次粒径が15nmであるシリカ「DM10C」(商標、(株)トクヤマ製)を8質量部にし、熱処理を行うため横テンターに導き横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は143℃で緩和部の設定温度は148℃である。これら以外は実施例1と同様にして製膜したが、熱処理後の膜が透明になってしまい微多孔膜が得られなかった。製膜条件および膜特性を表2に示す。
【0064】
[比較例2]
比較例1の熱処理を行う条件を、横延伸部の設定温度130℃、緩和部の設定温度135℃で行ったほかは比較例1と同様に行った。製膜条件および膜特性を表2に示す。
【0065】
[比較例3]
粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH800」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を24質量部、Mv200万の超高分子量ポリエチレン「UH850」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を16質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをスーパーミキサーにて予備混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。また溶融混練し、押し出される全混合物(100質量部)中に占める流動パラフィン量比が60質量部となるように、流動パラフィンを二軸押出機シリンダーへサイドフィードし、ギアポンプ、導管、Tダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール間に押出し、厚み2000μmのシート状のポリオレフィン樹脂組成物を得た。次に連続して同時二軸テンターへ導き、縦方向に7倍、横方向に7倍に同時二軸延伸を行った。この時同時二軸テンターの設定温度は126℃である。次に塩化メチレン槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行った。さらに熱処理(HS)を行うため横テンター延伸機に導き横方向に1.7倍延伸(最大倍率)したのち最終出口は1.4倍(出口倍率)となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は128℃で緩和部の設定温度は128℃である。製膜条件および膜特性を表2に示す。
[比較例4]
粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH800」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を45質量部にした点と、熱処理を行うため横テンターに導き横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.5倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は125℃で緩和部の設定温度は130℃である。これら以外は比較例3と同様に行った。製膜条件および膜特性を表2に示す。
【0066】
[比較例5]
粘度平均分子量(Mv)268万の高密度ポリエチレン「GUR2122」(商標、Ticona製)を8質量部、平均一次粒径が12nmであるシリカ「Aerosil200」(商標、日本アエロジル(株)製)を10質量部、可塑剤として流動パラフィン「スモイル P−350P」(商標、(株)松村石油研究所製)を82質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをヘンシェルミキサーにて予備混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給し、ギアポンプ、導管、Tダイを経てシート状に押出し、水浴により急冷し、厚さ約5mmのシート状成形物を得た。得られたシート状成形物を150℃に予備加熱した後、120℃で加熱圧延し、厚み0.2mmのシート状成形物を得た。シート状成形物から、塩化メチレンを使用し流動パラフィンを除去した後、岩本製作所社製二軸延伸機を用いて120℃で縦方向に2倍、横方向に2倍で同時二軸延伸した。次にステンレスの枠で四方を固定した状態でヘプタン中で残留流動パラフィンを除去した後、室温で乾燥し微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表2に示す。
【0067】
[比較例6]
粘度平均分子量(Mv)200万の超高分子量ポリエチレン「UH850」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を22質量部、平均一次粒径が12nmであるシリカ「Aerosil200」(商標、日本アエロジル(株)製 疎水処理未実施)を25質量部、可塑剤として流動パラフィン「スモイル P−350P」(商標、(株)松村石油研究所製)を53質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをスーパーミキサーにて予備混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給した。押出し機における、溶融混練条件は、設定温度200℃、スクリュー回転数180rpm、吐出量12kg/hで行った。続いて、溶融混練物をそれぞれ200℃に温度設定されたギアポンプ、導管、Tダイを経て表面温度25℃に制御された冷却ロール間に押出し、厚み200μmのシート状のポリオレフィン樹脂組成物を得た。次に連続してロール延伸機へ導き、縦方向に6倍、一軸延伸を行った。この時ロール延伸機の設定温度は120℃である。次に塩化メチレン槽に導き、十分に塩化メチレンに浸漬して流動パラフィンを抽出除去した。その後塩化メチレンの乾燥を行った。製膜条件および膜特性を表2に示す。
【0068】
[比較例7]
粘度平均分子量(Mv)27万の高密度ポリエチレン「SH800」(商標、旭化成ケミカルズ(株)製)を36質量部、Mv40万のホモポリプロピレン「H−100M」(プライムポリマー製)を9質量部、酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]を0.3質量部添加したものをヘンシェルミキサーにて予備混合した。得られた混合物をフィーダーにより二軸同方向スクリュー式押出機フィード口へ供給し、熱処理を行うため横テンターに導き横方向に1.7倍延伸したのち最終出口は1.4倍となるように緩和し巻取りを行った。横延伸部の設定温度は133℃で緩和部の設定温度は133℃である。これら以外は比較例2と同様に実施し微多孔膜を得た。製膜条件および膜特性を表2に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
表1,2の結果から明らかなように、本実施の形態の微多孔膜を用いて形成された蓄電デバイスは、蓄電デバイスの長期信頼性と、高出力とを両立するものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】突刺しクリープ試験において先端部に使用する針状測定子の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂と無機粒子とを含み、
突刺強度が2.4N/20μm以上、気孔率が50%以上90%以下、140℃における幅方向の収縮率が33%以下、突刺しクリープにおける膜厚さ保持率が16%以上、
であることを特徴とするポリオレフィン微多孔膜。
【請求項2】
突刺しクリープにおける膜厚さ減少率が10%以下である請求項1に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項3】
平均孔径が0.2μm以下、曲路率が2.0以下である請求項1又は2に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項4】
前記無機粒子の含有量が30質量%以上70質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項5】
前記無機粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項6】
前記無機粒子が珪素酸化物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項7】
前記ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量が5万以上1000万以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項8】
前記ポリオレフィン樹脂が、ポリプロピレンを1質量%以上50質量%以下の割合で含む請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリオレフィン微多孔膜。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜を用いてなる蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項10】
請求項9に記載の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、負極と、電解液とを含む蓄電デバイス。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のポリオレフィン微多孔膜の製造方法であって、以下の(1)〜(5)の各工程、
(1)ポリオレフィン樹脂、無機粒子、及び可塑剤を混練して混練物を形成する混練工程、
(2)前記混練工程の後、前記混練物をシート状成形体に加工する成形工程、
(3)前記成形工程の後、前記シート状成形体を面倍率が20倍以上200倍以下で二軸延伸し、延伸物を形成する延伸工程、
(4)前記延伸工程の後、前記延伸物から可塑剤を抽出して多孔体を形成する多孔体形成工程、
(5)前記多孔体形成工程の後、前記多孔体に対し、前記ポリオレフィン樹脂の融点以上、融点+40℃以下の温度条件で熱処理を行う熱処理工程、
を含むポリオレフィン微多孔膜の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−242631(P2009−242631A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91571(P2008−91571)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】