説明

ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法

【課題】配合時における小粒子径の粉体の飛散を抑えた、生産性に優れ、物性のばらつきが少ないポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】(1)平均粒子径3〜20mmのポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対して、20℃の粘度が0.1〜100センチポイズ以下の液体(b)0.1〜10重量部を混合機を用いて混合して液体付着ポリオレフィン樹脂(A)を得る工程、(2)該液体付着ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、平均粒子径0.001〜0.5mmの粉体(c)0.01〜50重量部を添加した後、混合機を用いて混合してポリオレフィン樹脂混合物(B)を得る工程、および、(3)該ポリオレフィン樹脂混合物(B)を混練機を用いて溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程を含むポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に関する。さらに詳細には、配合時の粉体の飛散が少なく、生産性に優れ、物性のばらつきが少ないポリオレフィン樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法として、特定の触媒残渣を含むポリオレフィン100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤を0.01〜1重量部、ラジカル発生剤を0.001〜0.5重量部および変性剤を0.01〜5重量部配合し、溶融混練処理してポリオレフィンを変性する際、0.01〜1重量部の水を共存させて溶融混練処理することを特徴とする変性ポリオレフィン組成物の製造方法が開示されている(特許文献1)。
【0003】
また、特定のエチレン系重合体100重量部に対し、平均粒径20μ以下の無機充填剤の少なくとも一種を0.01〜1.0重量部混合する際に、水を0.1〜10重量部添加して溶融混合し、その後溶融状態で水を除去することを特徴とするフィルム用樹脂組成物の製造方法が開示されている(特許文献2)。
【0004】
さらに、ポリオレフィン、不飽和カルボン酸またはその誘導体及び有機過酸化物からなる混合物を溶融混練してグラフト反応条件に付して得られる変性ポリオレフィンを、該変性ポリオレフィン100重量部に対し、10〜200重量部の水の存在下で溶融混練することを特徴とする、変性ポリオレフィンの後処理方法が開示されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特許第3064499号公報
【特許文献2】特開平5−163361号公報
【特許文献3】特開平8−325322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の方法により大粒子のポリオレフィン樹脂が小粒子の粉体よりも数量、重量等が多い配合物に液体を一括添加した場合、液体の付着効果が得られず(1)配合時に小粒子の粉体が飛散する場合がある、(2)配合時に、小粒子の粉体が均一に分散せずにポリオレフィン組成物を安定的に製造することが困難な場合がある、(3)ポリオレフィン組成物の物性にばらつきが生じやすい、ということがある。
【0007】
かかる状況の下、本発明の目的は、生産性に優れ、物性のばらつきが少ないポリオレフィン樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成された。
<1>以下の工程を含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物の製造方法:
(1)平均粒子径3〜20mmのポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対して、20℃の粘度が0.1〜100センチポイズ以下の液体(b)0.1〜10重量部を混合機を用いて混合して液体付着ポリオレフィン樹脂(A)を得る工程、(2)該液体付着ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、平均粒子径0.001〜0.5mmの粉体(c)0.01〜50重量部を添加した後、混合機を用いて混合してポリオレフィン樹脂混合物(B)を得る工程、および、(3)該ポリオレフィン樹脂混合物(B)を混練機を用いて溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程、
<2>前記液体(b)が、水である<1>に記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法、
<3>前記粉体(c)が、少なくとも一種の不飽和基(i)および少なくとも一種の極性基(ii)を同一分子内に有する少なくとも一種の化合物(I)と、有機過酸化物(II)とを含むことを特徴とする<1>または<2>に記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、配合時における小粒子径の粉体の飛散を抑えることができた。また、大粒子径のポリオレフィン樹脂に小粒子径の粉体が均一に分散し安定的に付着した混合物を溶融混練することで、生産性に優れ、物性のばらつきが少ないポリオレフィン樹脂組成物を得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物の製造方法である。
(1)平均粒子径3〜20mmのポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対して、20℃の粘度が0.1〜100センチポイズ以下の液体(b)を0.1〜10重量部を混合機を用いて混合して液体付着ポリオレフィン樹脂(A)を得る工程、
(2)該液体付着ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、平均粒子径0.001〜0.5mmの粉体(c)0.01〜50重量部を添加した後、混合機を用いて混合してポリオレフィン樹脂混合物(B)を得る工程、および、
(3)該ポリオレフィン樹脂混合物(B)を混練機を用いて溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明するが、「平均粒子径3〜20mmのポリオレフィン樹脂(a)」、「20℃の粘度が0.1〜100センチポイズの液体(b)」、「平均粒子径0.03〜0.5mmの粉体(c)」、「液体付着ポリオレフィン樹脂(A)」および「ポリオレフィン樹脂混合物(B)」をそれぞれ単に、「成分(a)」、「成分(b)」、「成分(c)」、「成分(A)」および「成分(B)」といい、上記(1)〜(3)の工程をそれぞれ単に「工程(1)」、「工程(2)」および「工程(3)」ともいう。
【0011】
<成分(a)>
本発明で用いられる成分(a)とは、平均粒子径3〜20mmのポリオレフィン樹脂(a)をいう。具体的には、(1)高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、および直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数4以上のα−オレフィンまたは環状オレフィンからなる群から選ばれるポリエチレン樹脂や、(2)(i)プロピレン単独重合体、(ii)プロピレン単位51〜99.99重量%と、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンまたは環状オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンの単位0.01〜49重量%とからなるプロピレンランダム共重合体(前者の単位と後者の単位との合計を100重量%とする)、(iii)プロピレン単独重合体なる第一ポリマー55重量%〜95重量%と、プロピレン単位20〜90重量%およびエチレン単位10〜80重量%からなるエチレン−プロピレンランダム共重合体なる第二ポリマー5重量%〜45重量%(前者の単位と後者の単位との合計を100重量%とする)とからなるエチレン−プロピレンブロック共重合体、(iv)プロピレン単独重合体なる第一ポリマー55重量%〜95重量%と、プロピレン単位20〜90重量%および炭素数4以上のα−オレフィンまたは環状オレフィンの単位10〜80重量%からなるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体または環状オレフィン共重合体なる第二ポリマー5重量%〜45重量%(前者の単位と後者の単位との合計を100重量%とする)とからなるプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体、またはプロピレン−環状オレフィンブロック共重合体、(v)これら(i)〜(iv)の重合体または共重合体の少なくとも二種の混合物であるポリプロピレン樹脂、(3)ポリブテン樹脂、(4)ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂を意味する。中でも、(2)(ii)プロピレン単位51〜99.99重量%と、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンまたは環状オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも一種のオレフィンの単位0.01〜49重量%とからなるプロピレンランダム共重合体(前者の単位と後者の単位との合計を100重量%とする)が好ましく、プロピレン単位51〜99.99重量%と、炭素数4以上のα−オレフィンの単位0.01〜49重量%とからなるプロピレンランダム共重合体がより好ましい。
【0012】
炭素数4以上のα−オレフィンとして、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、および1−エイコセンのような直鎖状のα−オレフィン;ならびに、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、および2,2,4−トリメチル−1−ペンテンのような分岐状のα−オレフィンを例示することができる。
【0013】
環状オレフィンとして、シクロブテン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、4−メチルシクロペンテン、4,4−ジメチルシクロペンテン、シクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセン、4,4−ジメチルシクロヘキセン、1,3−ジメチルシクロヘキセン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、シクロヘプテン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3,5−シクロヘプタトリエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、およびシクロドデセンを例示することができる。
【0014】
成分(a)の平均粒子径は3〜20mm、好ましくは4〜15mmである。なお、本発明の平均粒子径は光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡等の画像上で粒子の投影像の最大長さを測定し、平均粒子径を求めたものである。
【0015】
<成分(b)>
本発明で用いられる成分(b)は、20℃の粘度が0.1〜100センチポイズの液体であり、好ましくは0.2〜50センチポイズ以下、さらに好ましくは0.3〜20センチポイズ以下の液体である。100センチポイズより粘度が高いと成分(b)の成分(a)へ拡散性が悪くなるため、付着液体としての効果が得られない場合がある。成分(b)としては、エチルアルコール、メチルアルコール、アセトン、アンモニア、トルエン、キシレン、オクタン、ペンタン、ヘキサン、水等が例示され、ポリオレフィンの品質等から好ましくは水であり、後述の溶融混練に用いられる混練機に使用されている材料の腐食などに対して悪影響を及ぼす不純物、例えば酸性物質を含まない純水、脱イオン水が特に好ましい。これらの液体は単独で用いても良く、少なくとも二種類を併用しても良い。本発明における粘度の測定方法は、公知の粘度計、例えば粘弾性測定装置やオストワルド粘度計を用いて測定することができる。
【0016】
成分(b)の使用量は、成分(a)100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部である。該使用量が0.1重量部未満の場合、付着液体が不十分であることがあり、配合時の成分(c)の飛散が生じたり、小粒子の粉体が均一に分散しない可能性がある。該使用量が10重量部を超えた場合、物性の性能に悪影響を及ぼす場合がある。
【0017】
<成分(c)>
本発明で用いられる成分(c)とは、平均粒子径0.001〜0.5mmの粉体である。成分(c)としては、粉体フィラー、粉体樹脂、各種添加剤等が例示される。これらの粉体は、単独で用いても良く、少なくとも二種類を併用しても良い。
【0018】
上記の粉体フィラーとしては、金属粉、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズ、酸化アンチモン、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム、ガラス繊維、チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、窒化アルミニウム、炭素ケイ素、木材繊維、フラーレン、カーボンナノチューブ等が例示される。好ましくは、タルク、クレー、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、ガラス繊維であり、タルクがより好ましい。
【0019】
上記の粉体樹脂としては、ポリオレフィン樹脂粉体等が例示される。ポリオレフィン樹脂粉体としては、前述の成分(a)として例示されたポリオレフィン樹脂を粉体にしたものが例示される。
【0020】
各種添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、滑剤、帯電防止剤、造核剤、紫外線防止剤、難燃剤、可塑剤、発泡剤、発泡助剤、分散剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、抗菌剤、架橋剤、架橋助剤、有機多孔質パウダー、顔料、変性剤、有機過酸化物があげられる。中でも、変性剤および有機過酸化物が好ましく、これらを併用することがより好ましい。
【0021】
<変性剤>
本発明で用いられる変性剤は、少なくとも一種の不飽和基(i)および少なくとも一種の極性基(ii)を同一分子内に有する少なくとも一種の化合物(I)である。ここで、不飽和基(i)は、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合が好ましい。極性基(ii)として、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミノ基から誘導されるアンモニウム塩の構造を有する基、アミド基、イミド基、ニトリル基、エポキシ基、水酸基、イソシアナート基、2−オキサ−1,3−ジオキソ−1,3−プロパンジイル基、ジヒドロオキサゾリル基を例示することができる。
【0022】
化合物(I)として、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸無水物、不飽和エポキシ化合物、不飽和アルコール、不飽和アミン、および不飽和イソシアナートを例示することができる。具体的な化合物(I)として、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水メチルナジック酸、無水ジクロロマレイン酸、マレイン酸アミド、イタコン酸、無水イタコン酸を例示することができ、これらの化合物の二種以上を組合せても良い。中でも、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
【0023】
<有機過酸化物>
本発明で用いられる有機過酸化物(II)は、分解してラジカルを発生した後、成分(a)からプロトンを引き抜く作用を有する有機過酸化物であり、成分(a)へのグラフト量を向上させるという観点や、成分(a)の分解や架橋を防止するという観点から、好ましくは、半減期が1分である分解温度が50〜210℃の有機過酸化物である。
半減期が1分である分解温度が50〜210℃の有機過酸化物として、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、アルキルパーエステル、およびパーカボネートを例示することができる。中でも、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、アルキルパーエステル、またはパーカボネートが好ましい。
有機過酸化物(II)として具体的には、ジセチル パーオキシジカルボネート、ジ−3−メトキシ ブチル パーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシル パーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチル シクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピル パーオキシジカルボネート、t−ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカルボネート、1,1,3,3−テトラメチル ブチル ネオデカノエート、α―クミル パーオキシ ネオデカノエート、t−ブチル パーオキシ ネオデカノエート、1,1ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブテン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ベルオキシ)バレラート、ジ−t−ブチルベルオキシイソフタレート、ジクミルパーオキサイド、α−α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3を例示することができる。中でも、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好ましい。
【0024】
成分(c)の平均粒子径は0.001〜0.5mmであり、好ましくは、0.01〜0.45mmであり、より好ましくは0.05〜0.4mmである。なお、本発明の平均粒子径は光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡等の画像上で粒子の投影像の最大長さを測定し、平均粒子径を求めたものである。
【0025】
成分(c)の使用量は、成分(A)100重量部に対して、0.01〜50重量部、好ましくは0.1〜30重量部である。該使用量が0.01重量部未満の場合、成分(c)の性能が不十分であることがあり、該使用量が50重量部を超えた場合、液体付着の効果が不十分で、成分(c)が均一に分散しない恐れがある。
【0026】
<工程(1)>
以下、成分(a)に成分(b)を混合する工程を経て、成分(A)を得る工程(工程(1))について説明する。
工程(1)において、成分(a)に対して、成分(b)を混合機を用いて混合する方法として、
方法〔1〕成分(a)の全量と、成分(b)の全量を混合機を用いて混合する方法;
方法〔2〕成分(a)の全量と、成分(b)の一部とを混合機を用いて混合し、得られた混合物に成分(b)の残りの全量を添加して混合機を用いて混合する方法;
方法〔3〕成分(a)の一部と、成分(b)の全量とを混合機を用いて混合し、得られた混合物に成分(a)の残りの全量を添加して混合機を用いて混合する方法;
方法〔4〕成分(a)の一部と成分(b)の一部とを混合機を用いて混合し、得られた混合物に成分(a)の残りの全量と成分(b)の残りの全量を混合機を用いて混合する方法;
があげられるが、中でも成分(a)の全量に成分(b)を均一に混合するという観点から、方法〔1〕と〔2〕が好ましく、方法〔2〕が最も好ましい。
【0027】
本発明における混合機は公知の混合機があげられるが、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブルミキサー等の各種ミキサー、リボンブレンダー、タンブラーが好ましい。なお、混合する温度は成分(a)が溶融しない温度で混合することが好ましい。
【0028】
成分(A)として、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−デセン共重合体、エチレン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−デセン共重合体、プロピレン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−ビニルシクロヘキサン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−1−オクテン共重合体、1−ブテン−1−デセン共重合体、1−ブテン−1−オクタデセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ヘキセン−1−オクテン共重合体、1−ヘキセン−1−デセン共重合体、1−ヘキセン−1−オクタデセン共重合体、1−ヘキセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−オクテン−1−デセン共重合体、1−オクテン−1−オクタデセン共重合体、1−オクテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−デセン−1−オクタデセン共重合体、1−デセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、および1−オクタデセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体のような二種のモノマーの共重合体;エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−デセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−デセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−1−ブテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−1−デセン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−1−ヘキセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン−1−デセン共重合体、エチレン−1−オクテン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−1−オクテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−デセン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−1−デセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクタデセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ブテン−1−デセン共重合体、プロピレン−1−ブテン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−1−ブテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン−1−デセン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−オクテン−1−デセン共重合体、プロピレン−1−オクテン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−1−オクテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−デセン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−1−デセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−オクタデセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン−1−デセン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン−1−オクタデセン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ブテン−1−オクテン−1−デセン共重合体、1−ブテン−1−オクテン−1−オクタデセン共重合体、1−ブテン−1−オクテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、1−ブテン−1−デセン−1−オクタデセン共重合体、1−ブテン−1−デセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、および1−ブテン−1−オクタデセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、のような3種のモノマーの共重合体;ならびに、エチレン−プロピレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン−1−デセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン−1−デセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン−1−オクタデセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン−1−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン−1−デセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン−1−オクタデセン共重合体、およびエチレン−プロピレン−1−ヘキセン−4−メチル−1−ペンテン共重合体のような4種のモノマーの共重合体、を例示することができる。これらの共重合体は、それぞれ単独で、またはそれらの二種以上を組合せて用いられる。
【0029】
<工程(2)>
以下、成分(A)に成分(c)を混合する工程を経て、成分(B)を得る工程(工程(2)について説明する。工程(2)において、成分(A)に対して、成分(c)を混合機を用いて混合する方法として、
方法〔1〕成分(A)の全量と、成分(c)の全量を混合機を用いて混合する方法;
〔2〕成分(A)の全量と、成分(c)の一部とを混合機を用いて混合し、得られた混合物に成分(c)の残りの全量を添加して混合機を用いて混合する方法;
〔3〕成分(A)の一部と、成分(c)の全量とを混合機を用いて混合し、得られた混合物に成分(A)の残りの全量を添加して混合機を用いて混合する方法;
〔4〕成分(A)の一部と成分(c)の一部とを混合機を用いて混合し、得られた混合物に成分(A)の残りの全量と成分(c)の残りの全量を混合機を用いて混合する方法; があげられるが、中でも成分(A)の全量に成分(c)を均一に混合するという観点から、方法〔1〕と〔2〕が好ましく、方法〔2〕が最も好ましい。
【0030】
本発明における混合機は公知の混合機があげられるが、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブルミキサー等の各種ミキサー、リボンブレンダー、タンブラーが好ましい。なお、混合する温度は成分(A)が溶融しない温度で混合することが好ましい。なお、効率の面から、工程(1)と工程(2)とを同一の混合機で行う方法が好ましい。
【0031】
工程(3)において、成分(B)を混練機を用いて溶融混練する方法として、成分(B)の全量を混練機に添加して溶融混練を行う方法があげられる。本発明における混練機は公知の混練機があげられるが、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸押出機、および二軸押出機が好ましい。中でも、連続生産ができ生産性が高いという観点から、一軸押出機または二軸押出機がより好ましい。一軸押出機または二軸押出機の構造は、成分(b)を脱揮する観点から、成分(B)の投入口と、成分(B)の投入口よりも下流に少なくとも1個の真空ベント口を有する押出機が好ましい。
【0032】
溶融混練の温度(押出機の場合はシリンダーの温度)は、通常50〜300℃、好ましくは80〜270℃である。温度が50℃未満であると成分(b)が脱揮できない場合があり、また温度が300℃を超えると、成分(B)の分解や架橋が生じる場合がある。
押出機の溶融混練を行う部分の温度を、前半と後半の二段階に分け、後半の溶融混練部の温度を前半の溶融混練部の温度より高く設定することがより好ましい。前半の溶融混練部の温度は、50〜200℃であることが好ましく、80〜200℃であることがより好ましい。後半の溶融混練部の温度は、220〜280℃が好ましく、220〜270℃であることがより好ましい。
【0033】
溶融混練の時間は、通常0.1〜30分、より好ましくは0.5〜5分である。溶融混練時間が0.1分より短いと充分な脱揮ができない場合があり、溶融混練時間が5分より長いと成分(B)の分解や架橋が生じる場合がある。
【0034】
本発明におけるポリオレフィン樹脂組成物の用途として、射出成形用途、フィルム用途、押出成形用途、各種プライマーや接着剤用途等を例示することができる。
【実施例】
【0035】
以下実施例により本発明を説明するが、これらは単なる例示であり、本発明を逸脱しない限りこれら実施例に限定されない。
1)平均粒子径測定
(株)キーエンス製デジタルマイクロスコープVHX−200を用いて顕微鏡の画像上で粒子の投影像の最大長さを測定し、平均粒子径を求めた。
2)グラフト率
ポリオレフィン樹脂組成物中の無水マレイン酸グラフト量を、以下の方法で測定した。
(1)変性樹脂1.0gをキシレン10mlに溶解して、溶液を調製する、
(2)該溶液をメタノール300mlに攪拌しながら滴下して樹脂を再沈殿させる、
(3)再沈殿された樹脂を回収する、
(4)回収した樹脂を真空乾燥する(80℃、8時間)、
(5)乾燥された樹脂を熱プレスして、厚さ100μmのフィルムを作成する、
(6)フィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、1780cm−1付近の吸収から無水マレイン酸グラフト量を定量する。
3)MFR
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.2Nで測定を行った。
4)小粒子径粉体の分散および臭気
成分(a)と成分(b)の配合時に、小粒子径の粉体の分散を目視による官能試験を行った。均一に分散している場合を良(○)とし、粉体同士で凝集してしまい均一に分散していない場合を不良(×)とした。
また、成分(A)と成分(c)の配合時に、嫌気臭の有無を官能評価にて判定した。においのパネリストは5名とした。嫌気臭が殆ど無い場合を良(○)とし、嫌気臭がある場合を不良(×)とした。
【0036】
(実施例1)
中部工機(株)製3Lミキサーに、プロピレン単独重合体で包装されたプロピレン−1−ブテン共重合体(住友化学(株)製 商品名タフセレンH3002)100重量部と脱イオン水2.0重量部を混合機を用いて混合し、脱イオン水付着プロピレン−1−ブテン共重合体(成分(A))を得た。
さらに無水マレイン酸3.0重量部と、1,3−ビス(t−ブチル パーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ(株)製 商品名パーカドックス14−40C)1.14重量部を添加して混合し、プロピレン−1−ブテン共重合体混合物(成分(B))を得た。配合時の無水マレイン酸の臭気は殆どしなかった。
該混合物を、(株)東洋精機製作所製二軸押出機(L/D=25、シリンダー径=20mm)中、前半の溶融混練部の温度を180℃、後半の溶融混練部の温度を260℃、スクリュー回転数70rpmで溶融混練し、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。溶融混練時にN=3以上のサンプリングを行い、そのサンプルからそれぞれのグラフト率を求め、最大値と最小値の差を物性のばらつきの指標とした。結果を表2に示した。
(実施例2)
脱イオン水を0.5重量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
(実施例3)
成分(c)をタルク(林化成(株)社製 商品名ミクロンホワイト5000S)21重量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂混合物を得た後、該混合物を実施例1と同様に溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得た。配合時の臭気および分散について実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
【0037】
(比較例1)
脱イオン水を添加しなかったこと以外は実施例1と同様に行い、ポリオレフィン樹脂組成物を得た。該樹脂組成物を実施例1と同様に評価し、結果を表2に示した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【0040】
実施例から分かるように、小粒子径の粉体は、大粒子径のポリオレフィン樹脂に均一に分散し安定的に付着した。得られたポリオレフィン樹脂混合物を溶融混練することにより、グラフト率の差が少ないポリオレフィン樹脂組成物を得ることができた。また、配合時に小粒子径の粉体の飛散が抑えられることから、無水マレイン酸の臭気が殆ど無く作業性も良好であった。この結果は、飛散による嫌気臭を伴う粉体の混合に応用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むことを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物の製造方法:
(1)平均粒子径3〜20mmのポリオレフィン樹脂(a)100重量部に対して、20℃の粘度が0.1〜100センチポイズ以下の液体(b)0.1〜10重量部を混合機を用いて混合して液体付着ポリオレフィン樹脂(A)を得る工程、
(2)該液体付着ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して、平均粒子径0.001〜0.5mmの粉体(c)0.01〜50重量部を添加した後、混合機を用いて混合してポリオレフィン樹脂混合物(B)を得る工程、および、
(3)該ポリオレフィン樹脂混合物(B)を混練機を用いて溶融混練してポリオレフィン樹脂組成物を得る工程。
【請求項2】
前記液体(b)が、水である請求項1に記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記粉体(c)が、少なくとも一種の不飽和基(i)および少なくとも一種の極性基(ii)を同一分子内に有する少なくとも一種の化合物(I)と、有機過酸化物(II)とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−40956(P2009−40956A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209891(P2007−209891)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】