説明

ポリオレフィン系多層シュリンクフィルム

【課題】腰強度と低温収縮性が共に優れ、自動包装機における高速包装機適性と収縮包装
仕上がり性を保持しつつ、溶断シール時のシール線も良好で各種収縮包装に好適に用いる
ことができるポリオレフィン系多層シュリンクフィルムを提供する。
【解決手段】DSCによって測定される融解ピーク温度が135〜165℃、MFRが1
.0〜5.0g/10分であるポリプロピレン系樹脂(A)からなる両表面層(X)と、
DSCによって測定される融解ピーク温度が110〜135℃であり、メタロセン触媒に
よって重合された結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体を主体とする内部
層(Y)と、23℃における密度が0.900〜0.940g/cm3のポリエチレン系
樹脂(C)を主体とする内部層(Z)とを有し、内部層(Y)あるいは内部層(Z)にプ
ロピレン/3-メチルブテン−1共重合体(D)を添加した、縦横それぞれ3倍以上に延
伸した、少なくとも4層以上からなるポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は収縮包装材料に関し、より詳しくは、腰強度と低温収縮性が共に優れ、自動包装機における高速包装機適性と収縮包装仕上がり性を保持しつつ、溶断シール時のシール線が良好なポリオレフィン系多層シュリンクフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱収縮性包装材料として、ポリ塩化ビニル系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエチレン系フィルム等が知られているが、低価格、使用後の廃棄処理の容易さなどの点でポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系シュリンクフィルムが好んで用いられている。しかしながら、ポリプロピレン系シュリンクフィルムは腰強度、耐熱性等に優れるものの、低温収縮性、耐衝撃性、耐引裂性に乏しい等の欠点を有している。一方、ポリエチレン系シュリンクフィルムは、低温収縮性、耐衝撃性、耐引裂性等に優れるものの、腰強度、耐熱性に乏しい等の欠点を有している。このような問題を解決すべく、ポリプロピレン系樹脂を両表面層に、ポリエチレン系樹脂を内部層に用いたポリオレフィン系多層シュリンクフィルムが開示(特許文献1)されている。
これらポリオレフィン系多層シュリンクフィルムは、低温収縮性と耐熱性に優れているため、美麗な収縮包装仕上がりが得られると共に、耐衝撃性、耐引裂性も比較的高いという特徴を有している。しかしながら、腰強度と低温収縮性という特性を両立させることは難しいという問題点があった。
【0003】
本出願人は、先に、かかる欠点を有しない、腰強度と低温収縮性が共に優れたポリオレフィン系多層シュリンクフィルム(特許文献2)を提案した。該シュリンクフィルムは、自動包装機における高速包装機適性と収縮包装仕上がり性を両立させたものであるが、包装機としてL型シール式半折包装機を用いた場合には、溶断シール時に包装機のシールバーと受け台に樹脂が付着する事によって、フィルムとシールバーの間に溶融樹脂が糸のようになり(以下、糸引きという)、シール線が汚くなり、包装体の見栄えが悪くなるという問題があった。
【特許文献1】特開昭58−166049号公報、同63−17361号公報、同63−214446号公報、同64−56547号公報、同64−1535号公報、特開平4−5044号公報、同4−211936号公報、同6−50096号公報、同8−99393号公報、同11−254610号公報等
【特許文献2】特開2005−144725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記状況を鑑みてなされたもので、腰強度と低温収縮性が共に優れ、自動包
装機における高速包装機適性と収縮包装仕上がり性を保持しつつ、溶断シール時のシール
線も良好で、包装体の見栄えの良いポリオレフィン系多層シュリンクフィルムを提供する
ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の問題点を解決すべく鋭意検討した結果、内部層にプロピレン/3
-メチルブテン−1コポリマー共重合体を添加する事で、課題を解決できることを見い出
し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)示差走査熱量計(以下DSCと記す)によって測定される融解ピーク温度が135〜165℃、メルトフローレート(以下MFRと記す。測定温度230℃、荷重2.16kgf)が1.0〜10.0g/10分であるポリプロピレン系樹脂(A)からなる両表面層(X)と、DSCによって測定される融解ピーク温度が110〜135℃であり、メタロセン触媒によって重合された結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B;以下、メタロセンPPと記す)を主体とする内部層(Y)と、23℃における密度が0.900〜0.940g/cmのポリエチレン系樹脂(C)を主体とする内部層(Z)を含有し、縦横それぞれ3倍以上に延伸した、少なくとも4層以上からなるポリオレフィン系多層多層シュリンクフィルムであって、前記内部層(Y)及び/又は前記内部層(Z)に、プロピレン/3-メチルブテン−1共重合体(D)が0.5〜10重量%添加されたものである、ポリオレフィン系多層シュリンクフィルム、
(2)内部層(Y)の厚みが全体の10%以上45%以下であり、両表面層の厚みが各々1μm以上である、上記(1)記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム、
(3)ポリプロピレン系樹脂(A)が、結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重
合体である、上記(1)乃至(2)のいずれか一に記載のポリオレフィン系多層シュリン
クフィルム、
(4)ポリエチレン系樹脂(C)が、直鎖状低密度ポリエチレンである、上記(1)乃至
(3)のいずれか一に記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム、
(5)ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tma)とメタロセンPP(B)
の融解ピーク温度(Tmb)との差(Tma−Tmb)が10℃以上である、上記(1)
乃至(4)のいずれか一に記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム、
(6)ポリオレフィン系多層シュリンクフィルムが、下記特性(1)、(2)を同時に満
足するものである、上記(1)乃至(5)のいずれか一に記載のポリオレフィン系多層シ
ュリンクフィルム、
特性(1):MD、TD引張弾性率がそれぞれ0.80GPa以上。
特性(2):100℃におけるMD、TD熱収縮率の平均値が25%以上、
(7)前記延伸において、縦と横の延伸倍率の値の差が0.2以下で、縦横の延伸倍率が各4.3倍以上である上記(1)乃至(6)のいずれか一に記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポリオレフィン系多層シュリンクフィルムは、両表面層に腰強度と耐熱性に優
れた特定のポリプロピレン系樹脂からなる層を、内部層に腰強度と低温収縮性に優れた特
定のメタロセンPPを主体とする層と低温収縮性と耐引裂性に優れた特定のポリエチレン
系樹脂を主体とする層を設けるとともに、内部層に、プロピレン/3-メチルブテン−1
共重合体を添加する事で、腰強度と低温収縮性が共に優れ、自動包装機における高速包装
機適性と収縮包装仕上がり性とを両立するとともに、L型シール式半折包装機を用いて包
装しても、溶断シール時のシール線も良好で、収縮包装後にもクラウドを発生しない包装体の見栄えが良い、という効果を奏する

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、両表面層(X)に用いられるポリプロピレン系樹脂(A)は、DSC
によって測定される融解ピーク温度が135〜165℃、MFRが1.0〜10.0g/
10分の範囲のもので、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンの共重
合体、例えばプロピレン−エチレン、プロピレン−ブテン共重合体等、及びプロピレン−
エチレン−ブテン3元共重合体の中から選ばれる少なくとも1種以上からなり、主に耐熱
性、腰強度を付与する作用を成す。これらの内、耐熱性、腰強度と熱収縮特性のバランス
を考慮して、結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が好適に用いられる。
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度が135℃未満では耐熱性が低いため好
ましくなく、165℃を超えると低温収縮性が低下するため好ましくない。また、MFR
が1.0g/10分未満では、溶融押出時のモーター負荷が高くなる等の問題点があり、
10.0g/10分を超えると溶断シール性が低下するため好ましくない。
【0008】
両表面層(X)の厚みは、各々1μm以上が好ましく、1μm未満では、溶断シール性
、耐熱性、腰強度が低下する恐れがある。
【0009】
表面層(X)には、希望により、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、酸
化防止剤等の添加剤がそれぞれの有効な作用を具備させる目的で適宜使用することができ
る。
【0010】
本発明の内部層(Y)の主体であるメタロセンPP(B)は、メタロセン触媒によって
重合された結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、コモノマーが主
鎖に導入されたものである。この触媒で重合したポリマーは、狭い分子量分布、狭い結晶
性分布、均一なコモノマー組成分布を有している。このようなメタロセンPPは、例えば
特開2001−240711号公報、特開2002−60566号公報等に記載の方法に
より製造することができる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンとしては、エチレ
ン、または炭素数4〜20のα−オレフィン或いはこれらの混合物が挙げられるが、好ま
しくはエチレンとの共重合体が用いられる。
メタロセンPP(B)は、融解ピーク温度が110〜135℃の範囲のものであり、1
10℃未満では多層フィルム全体としての耐熱性が低くなるため好ましくなく、135℃
を超えると低温収縮性が低下するため好ましくない。MFR(測定温度230℃、荷重2
.16kgf)は、0.5〜10.0g/10分のものが好適に用いられる。0.5g/
10分未満では溶融押出時のモーター負荷が高くなる等の問題点があり、10.0g/1
0分を超えると多層フィルム全体としての耐熱性が低くなるため好ましくない。
本発明に用いられるメタロセンPP(B)は、高腰強度、低温収縮性等の特性を有して
おり、ポリプロピレン系樹脂を両表面層に、ポリエチレン系樹脂を内部層に用いたポリオ
レフィン系多層シュリンクフィルムの内部層に用いることで高速包装機適性、且つ、収縮
包装仕上がり性を向上させる作用を成すことができる。
【0011】
本発明の内部層(Y)には、本発明の目的に支障をきたさない範囲で、メタロセンPP
(B)の他に、ポリプロピレン系樹脂あるいはポリエチレン系樹脂を混合することができ
る。混合できるポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂は、それぞれ両表面層(X)
に用いるポリプロピレン系樹脂(A)、内部層(Z)に用いるポリエチレン系樹脂(C)
と同じであり、スクラップの再利用として用いることもできる。これら樹脂を混合する場
合、メタロセンPP(B)の混合率としては、内部層(Y)の総重量に対して40重量%
以上となることが好ましい。40重量%未満では、腰強度、低温収縮性の向上レベルが低
くなるため好ましくない。
【0012】
内部層(Y)の厚みは、全体の10%以上、45%以下が好ましく、10%未満では腰
強度と低温収縮性を両立できないため、また、45%を越えると耐引き裂き性が劣る場合
がある。
【0013】
内部層(Y)には、希望により、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、酸
化防止剤等の添加剤がそれぞれの有効な作用を具備させる目的で適宜使用することができ
る。
【0014】
内部層(Z)の主体であるポリエチレン系樹脂(C)は、23℃における密度が0.9
00〜0.940g/cmの範囲のもので、長鎖分岐を有する低密度ポリエチレン、エ
チレンとブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン
−1を含む炭素数4〜20個のα−オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチ
レン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−脂肪族不飽和カルボン酸共重合体、エ
チレン−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体、アイオノマー樹脂から選ばれる少な
くとも1種以上からなり、低温収縮性、耐引裂性、耐衝撃性を付与する作用をなす。これ
らの内、優れた低温収縮性を付与できる点から直鎖状低密度ポリエチレンが好適に用いら
れる。
ポリエチレン系樹脂(C)の密度が0.900g/cm未満では引張破断強度が低下
するため好ましくなく、0.940g/cmを超えると低温収縮性が低下するため好ま
しくない。また、MFR(測定温度190℃、荷重2.16kgf)は、0.3〜5.0
g/10分のものが好適に用いられる。0.3g/10分未満では押出時のモーター負荷
が高くなる等の問題点があり、5.0g/10分を超えると延伸安定性が低下するため好
ましくない。
【0015】
本発明の内部層(Z)には、本発明の目的に支障をきたさない範囲で、ポリエチレン系
樹脂の他に、ポリプロピレン系樹脂、及びメタロセンPPを混合することができる。混合
するポリプロピレン系樹脂、メタロセンPPは、それぞれ両表面層(X)に用いるポリプ
ロピレン系樹脂(A)、内部層(Y)に用いるメタロセンPP(B)と同じであり、スク
ラップの再利用として用いることもできる。これら樹脂を混合する場合、ポリエチレン系
樹脂(C)の混合率としては、内部層(Z)の総重量に対して40重量%以上となること
が好ましい。40重量%未満では、低温収縮性、耐引裂性、耐衝撃性が低下するため好ま
しくない。
【0016】
内部層(Z)の厚みは、全体の10%以上が好ましく、10%未満では低温収縮性、耐
引裂性が低下するため好ましくない。
【0017】
内部層(Z)には、希望により、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、酸
化防止剤等の添加剤がそれぞれの有効な作用を具備させる目的で適宜使用することができ
る。
【0018】
本発明において、内部層(Y)及び/又は内部層(Z)には、プロピレン/3-メチル
ブテン−1共重合体(D)が添加される。
共重合体(D)の添加量は、添加する層に対して0.5〜10重量%である。添加量が
0.5重量%未満では糸引きが発生し、シール線が汚くなり、包装体の見栄えが悪くなる
場合がある。一方、10重量%を超えると熱収縮性が劣り、良好な包装仕上がり性が得ら
れず包装体の見栄えが悪くなる場合がある。
共重合体(D)は、内部層に添加する事で、メタロセンPP、あるいは直鎖状低密度ポ
リエチレンの結晶化温度が上昇し、溶断シール時のフィルムとシールバーとの融着を抑制
し、溶断シール時の良好なシール線が得られるという作用をなす。
かかる共重合体(D)の具体例としては、プライムポリマー(株)F132等を例示す
ることができる。
【0019】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tma)とメタロセ
ンPP(B)の融解ピーク温度(Tmb)との差(Tma−Tmb)は、10℃以上であ
ることが好ましい。10℃未満では、熱収縮特性が低下するため、良好な収縮包装仕上が
り性が得られるトンネル温度範囲が狭くなり、好ましくない。
【0020】
本発明のポリオレフィン系多層シュリンクフィルムは、下記特性(1)、(2)を同時
に満足するものであることが好ましい。
特性(1):MD、TD引張弾性率がそれぞれ0.80GPa以上。
特性(2):100℃におけるMD、TD熱収縮率の平均値が25%以上。
特性(1)、(2)を同時に満足しないものは、高速包装機適性、収縮包装仕上がり性
の両立レベルが低いため、好ましくない。
【0021】
本発明において、内部層は必ずしも2層である必要はなく、必要に応じて2層以上にす
ることができ、全体として4層以上の層構成を採用することができる。例えばX/Y/Z
/Xの4層構成、X/Y/Z/Y/X、X/Z/Y/Z/Xの5層構成、X/Y/Z/Y
/Z/Xの6層構成等の層構成が挙げられるが、フィルムのカール現象を防止する観点か
らは対称構成であることが好ましい。
【0022】
次に、本発明のフィルムの製造方法を示す。前記の樹脂を用いて本発明の延伸フィルム
を製造する方法は、公知の方法で行うことができるが、以下、5層積層環状製膜延伸の場
合を例に挙げ、具体的に説明する。
まず、ポリプロピレン系樹脂(A)を両表面層、メタロセンPP(B)を主体とする樹
脂組成物を中間層、ポリエチレン系樹脂(C)を主体とする樹脂組成物を芯層(中間層及
び/又は芯層は共重合体(D)が添加される)となるように、5台の押出機により溶融混
練し、5層環状ダイより環状に共押出し、延伸することなく一旦急冷固化してチューブ状
未延伸フィルムを作製する。
得られたチューブ状未延伸フィルムを、チューブラー延伸装置に供給し、高度の配向可
能な温度範囲、例えば芯層樹脂の融点以下10℃よりも低い温度で、好ましくは融点以下
15℃よりも低い温度でチューブ内部にガス圧を適用して膨張延伸により同時二軸配向を
起こさせる。延伸倍率は、優れた強度、収縮率等の物性を得るためには縦横何れの方向にも3倍以上に延伸するのが好ましい。さらに、縦横の延伸倍率を各4.3以上とし、縦と横の延伸倍率の値の差を0.2以下にすると、収縮包装後のクラウドを抑えることができるため、
特に外観の美麗性を要求される用途や、黒っぽい被包装物を包装するようなクラウドが目立ちやすい用途に、好適に用いることが出来る。
延伸装置から取り出したフィルムは、希望によりアニーリングすることができ、このア
ニーリングにより保存中の自然収縮を抑制することができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。
なお、本実施例の中で示した各物性測定は以下の方法によった。
1.フィルム厚み:JIS−Z1709に準じて測定した。
2.厚み比:フィルムの断面を顕微鏡で観察することにより測定した。
3.引張弾性率:JIS−Z7127に準じて測定した。
4.100℃熱収縮率:縦横それぞれ100mmの正方形に切り取ったフィルムを100
℃のグリセリン浴中に10秒間浸漬した後、水中で急冷し、縦横それぞれの長さを測定し
、数1によりMD、TDの熱収縮率を算出した。
【0024】
【数1】

【0025】
5.糸引き評価:協和電機(株)製のL型シール式半折自動包装機(型式:AT-500
)を用いて、溶断シール温度:200℃、溶断シール時間:2秒の条件にて市販のビデオ
テープを30個連続して包装した。その後、包装サンプルの溶断シール部を観察し、以下
の判定基準にて、糸引き性を評価した。
<判定基準>
○:30個中に糸引きが1本も発生しない。
△:糸引きが平均して1包装中に5本以内である。
×:糸引きが平均して1包装中に6本以上である。
6.高速包装機適性:トキワ工業(株)製自動包装機(型式:NEO型、ピロー包装機)
にて、市販のカップラーメンを150個/分のスピードで包装し、フィルムの走行状態を
観察した。
7.収縮包装仕上がり性:トキワ工業(株)製自動包装機(型式:NEO型、ピロー包装
機)にて、市販のカップラーメンを150個/分のスピードで包装し、フィルムヤケド2
〜20℃手前の温度に設定した収縮トンネル内を3秒間滞留させ、トンネル通過後の包装
サンプルの中から無作為に5つを選び、収縮包装仕上がり性を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○:包装サンプルの平均角高さが10mm以下となるトンネル温度範囲が10℃を超
える。
△:包装サンプルの平均角高さが7mm以下となるトンネル温度範囲が4〜10℃。
×:包装サンプルの平均角高さが7mm以下となるトンネル温度範囲が4℃未満。
(注:角高さとは、適度に余裕率を持たせた包装予備体を収縮トンネルで熱収縮させた
後、包装体の側面にできる角状突起物の突起高さを意味する。)
8.クラウド評価:協和電機(株)製のL型シール式半折自動包装機(型式:AT-500)を用いて、市販の黒い箱を包装し、フィルムヤケド10℃手前の温度に設定した協和電機製のシュリンクトンネル(L−1500FC)を5秒間滞留させ、トンネル通過後の包装サンプルのフィルム表面を観察し、以下の判定基準にて、クラウド評価した。
<判定基準>
◎:全くクラウドが見られない。
○:わずかにクラウドが見られる。
△:クラウドがやや目立つ。
×:クラウドがかなり目立つ。
【0026】
実施例1
表1に示すように、融解ピーク温度が145℃、MFRが2.3g/10分の特性を有
するプロピレン−エチレンランダム共重合体を両表面層(X)とし、融解ピーク温度が1
25℃、MFRが4.0g/10分の特性を有するメタロセンPPに共重合体(D)を6
重量%添加したものを内部層(Y)とし、密度が0.920g/cm、MIが1.0g
/10分の特性を有する直鎖状低密度ポリエチレンを内部層(Z)として、5台の押出機
でそれぞれ130〜240℃にて溶融混練し、厚み比がX/Y/Z/Y/X=1/1/4
/1/1になるように各押出機の押出量を設定し、240℃に保った5層環状ダイスによ
り下向きに共押出した。形成された5層構成チューブを、内側は冷却水が循環している円
筒状冷却マンドレルの外表面を摺動させながら、外側は水槽を通すことにより冷却して引
き取り、直径75mm、厚さ210μmの未延伸フィルムを得た。
このチューブ状未延伸フィルムをチューブラー二軸延伸装置に導き、90〜110℃で
縦横それぞれ4倍に延伸し、積層二軸延伸フィルムを得た。
次にこの延伸フィルムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%
弛緩させた後、室温に冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。
最終のフィルム厚みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの
不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表1に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率も共に優
れていた。半折包装機での溶断シール時に糸引きも発生せず、良好なシール線であった。
ピロー包装機での包装評価では、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮包
装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるトン
ネル温度範囲が広く、良好なものであった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0027】
実施例2
実施例1において、共重合体(D)を内部層(Y)にかえて内部層(Z)に6重量%添
加した以外は実施例1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フィル
ムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室温に
冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚みは
15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの
不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表1に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率も共に優
れていた。半折包装機での溶断シール時に糸引きも発生せず、良好なシール線であった。
ピロー包装機での包装評価では、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮包
装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるトン
ネル温度範囲が広く、良好なものであった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0028】
実施例3
実施例1において、共重合体(D)を内部層(Z)にも2重量%添加した以外は実施例
1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フィルムをチューブアニー
リング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室温に冷却し、フィルム両
端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの
不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表1に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率も共に優
れていた。半折包装機での溶断シール時に糸引きも発生せず、良好なシール線であった。
ピロー包装機での包装評価では、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮包
装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるトン
ネル温度範囲が広く、良好なものであった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0029】
実施例4
実施例1において、縦横それぞれ4.5倍で延伸した以外は実施例1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フィルムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室温に冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表1に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率も共に優れていた。半折包装機での溶断シール時に糸引きも発生せず、良好なシール線であった。ピロー包装機での包装評価では、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮包装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるトンネル温度範囲が広く、良好なものであった。収縮包装後のクラウドも観察されず良好であった。
【0030】
実施例5
実施例1において、縦横それぞれ5.0倍で延伸した以外は実施例1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フィルムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室温に冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表1に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率も共に優れていた。半折包装機での溶断シール時に糸引きも発生せず、良好なシール線であった。ピロー包装機での包装評価では、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮包装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるトンネル温度範囲が広く、良好なものであった。収縮包装後のクラウドも観察されず良好であった。
【0031】
実施例6
実施例1において、縦5.0倍、横4.3倍で延伸した以外は実施例1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フィルムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室温に冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表1に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率も共に優れていた。半折包装機での溶断シール時に糸引きも発生せず、良好なシール線であった。ピロー包装機での包装評価では、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮包装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるトンネル温度範囲が広く、良好なものであった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0032】
比較例1
実施例1において、内部層(Y)に共重合体(D)を添加しなかった以外は実施例1と
同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フィルムをチューブアニーリン
グ装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室温に冷却し、フィルム両端を
トリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの
不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表2に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率は十分で
、ピロー包装機での包装評価でも、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮
包装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるト
ンネル温度範囲が広く、良好なものであった。しかしながら、半折包装機では、溶断シー
ル時の糸引きが発生し、シール線は汚くなった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0033】
比較例2
実施例1において、内部層(Y)に添加する共重合体(D)を6重量%から0.1重量
%にかえた以外は実施例1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フ
ィルムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室
温に冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚
みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの
不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表2に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率は十分で
、ピロー包装機での包装評価でも、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮
包装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるト
ンネル温度範囲が広く、良好なものであった。しかしながら、半折包装機では、溶断シー
ル時の糸引きが発生し、シール線は汚くなった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0034】
比較例3
実施例1において、内部層(Y)に添加する共重合体(D)を6重量%から20重量%
にかえた以外は実施例1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。次にこの延伸フィ
ルムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛緩させた後、室温
に冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最終のフィルム厚み
は15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの
不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表2に示すように、引張弾性率は十分で、ピロー包装機での
包装評価でも、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、半折包装機での溶断シール時
に糸引きも発生せず、良好なシール線であった。しかしながら、収縮率が25%以下で、
ピロー包装機での収縮包装仕上がり性も角立ちがおおきく、良好な仕上がり性が得られな
かった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0035】
比較例4
実施例1において、内部層(Y)に添加する重合体をポリプロピレン単独重合体(E)
にかえて6重量%添加した以外は実施例1と同様の方法で5層二軸延伸フィルムを得た。
次にこの延伸フィルムをチューブアニーリング装置にて75℃の熱風で縦横各々10%弛
緩させた後、室温に冷却し、フィルム両端をトリミングして、二枚別々に巻き取った。最
終のフィルム厚みは15μmであった。
延伸性は良好で、延伸点の上下動や延伸チューブの揺動もなく、またネッキングなどの
不均一延伸状態も観察されなかった。
得られた延伸フィルムは、表2に示すように、引張弾性率、100℃熱収縮率は十分で
、ピロー包装機での包装評価でも、腰が強いためにフィルムの走行性が良好で、また収縮
包装仕上がり性についても、熱収縮特性が優れているために美麗な仕上がりが得られるト
ンネル温度範囲が広く、良好なものであった。しかしながら、半折包装機では、溶断シー
ル時の糸引きが発生し、シール線は汚くなった。収縮包装後のクラウドはわずかに観察された。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のポリオレフィン系多層シュリンクフィルムは、腰強度と低温収縮性が共に優れ
、自動包装機における高速包装機適性と収縮包装仕上がり性を保持しつつ、L型シール式
半折包装機を用いる包装において溶断シール時のシール線が良好で、収縮包装後のクラウドの発生が抑えられるため、各種収縮包装に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
示差走査熱量計(以下DSCと記す)によって測定される融解ピーク温度が135〜165℃、メルトフローレート(以下MFRと記す。測定温度230℃、荷重2.16kgf)が1.0〜10.0g/10分であるポリプロピレン系樹脂(A)からなる両表面層(X)と、DSCによって測定される融解ピーク温度が110〜135℃であり、メタロセン触媒によって重合された結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(B;以下、メタロセンPPと記す)を主体とする内部層(Y)と、23℃における密度が0.900〜0.940g/cmのポリエチレン系樹脂(C)を主体とする内部層(Z)を含有し、縦横それぞれ3倍以上に延伸した、少なくとも4層以上からなるポリオレフィン系多層シュリンクフィルムであって、前記内部層(Y)及び/又は前記内部層(Z)に、プロピレン/3-メチルブテン−1共重合体(D)が0.5〜10重量%添加されたものである、ポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。
【請求項2】
内部層(Y)の厚みが全体の10%以上45%以下であり、両表面層の厚みが各々1μm以上である、請求項1記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂(A)が、結晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である、請求項1乃至2のいずれか1項記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。
【請求項4】
ポリエチレン系樹脂(C)が、直鎖状低密度ポリエチレンである、請求項1乃至3のいずれか1項記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。
【請求項5】
ポリプロピレン系樹脂(A)の融解ピーク温度(Tma)とメタロセンPP(B)の融解ピーク温度(Tmb)との差(Tma−Tmb)が10℃以上である、請求項1乃至4のいずれか1項記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。
【請求項6】
ポリオレフィン系多層シュリンクフィルムが、下記特性(1)、(2)を同時に満足するものである、請求項1乃至5のいずれか1項記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。
特性(1):MD、TD引張弾性率がそれぞれ0.80GPa以上。
特性(2):100℃におけるMD、TD熱収縮率の平均値が25%以上。
【請求項7】
前記延伸において、縦と横の延伸倍率の値の差が0.2以下で、縦横の延伸倍率が各4.3倍以上である請求項1乃至6のいずれか1項記載のポリオレフィン系多層シュリンクフィルム。

【公開番号】特開2009−101682(P2009−101682A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221985(P2008−221985)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】