説明

ポリオレフィン系樹脂押出発泡体

【課題】帯電防止性能に優れた、吸水率の低いポリオレフィン系樹脂押出発泡体の提供。
【解決手段】脂肪酸と多価アルコールのエステル、脂肪酸アミド、アルキル脂肪酸アミド、アルキルスルホン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種以上の帯電防止剤を含むポリオレフィン系樹脂押出発泡体であって前記帯電防止剤の表面濃度が、0.1〜3.0μg/cmであるポリオレフィン系樹脂押出発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性能に優れた吸水性の低いポリオレフィン系樹脂押出発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からポリオレフィン系樹脂発泡体は、低い吸水性を特徴として、水分を嫌う電子部品の包装材や、結露が発生しやすい個所であっても防水シートの施工が不要の断熱材として使用されている。中でもポリオレフィン系樹脂押出発泡体は、ポリオレフィン系樹脂ビーズ成形発泡体に比べてビーズ間の空隙がないため吸水しにくく高級な包装材、断熱材として使用されている。
又ポリオレフィン系樹脂は電気絶縁体であるので、ポリオレフィン系樹脂発泡体生産時に帯電した発泡体から、人体に対して放電ショックを与える場合や、可燃性ガスを用いている場合には、放電による発火の危険性があり、生産時の安全確保のために発泡体が帯電しないことが求められる。更には、電子部品の包装材として用いる場合には、静電気障害防止のため、発泡体が帯電しないことが求められる。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂発泡体に帯電防止性を付与する方法としては、分子内に親水基と親油基をもつ帯電防止剤を、発泡成形時に混練するあるいは、得られた発泡体表面に塗布する方法が広く一般に行われている。しかしながら前記の帯電防止剤は、親水基を含むため添加量が多くなるほど吸水性が高くなる傾向があるので、優れた帯電防止性能と低い吸水性を満足することは非常に困難である。帯電防止性能を発現するために必要な添加量は、発泡体の密度が小さくなるほど多く必要となるため、発泡体密度が0.1g/cm以下で吸水率が増加する問題が顕著となる。更に発泡体密度が0.02g/cm以下では、生産時の安全確保や、電子部品の静電気障害を防止する包装材として十分な帯電防止性能を持つポリオレフィン系樹脂押出発泡体はこれまで得られていない。この理由としては、0.02g/cm以下の密度の発泡体に帯電防止性能を付与するのに、帯電防止剤の添加が多量に必要であることが考えられる。ポリオレフィン系樹脂押出発泡体の生産時に、帯電防止剤を多量に添加した場合には、押出機内で樹脂がスリップし生産が安定しない問題もある。発泡体密度が0.1〜0.03g/cm程度のポリオレフィン系樹脂発泡体について帯電防止性を付与する方法が特許文献1に記載されている。特許文献1では、アルケニルスルホン酸金属塩を帯電防止剤として添加した、帯電防止性能に優れたポリオレフィン系樹脂発泡体が開示されている。しかし、帯電防止性能には優れるものの、吸水性が高い問題が依然として残されている。
【特許文献1】特開平8-283444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた帯電防止性能と低い吸水性の両方を満足するポリオレフィン系樹脂押出発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、ポリオレフィン系樹脂押出発泡体の気泡膜表面に特定の帯電防止剤を表面濃度、0.1〜3.0μg/cmで存在させることで上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
(1)脂肪酸と多価アルコールのエステル、脂肪酸アミド、アルキル脂肪酸アミド、アルキルスルホン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種以上の帯電防止剤を含むポリオレフィン系樹脂押出発泡体であって前記帯電防止剤の表面濃度が、0.1〜3.0μg/cmであることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
(2)帯電防止剤の表面濃度が0.1〜2.0μg/cmであり、ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度が0.007〜0.100g/cmであることを特徴とする(1)に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
(3)ポリオレフィン系樹脂発泡体の平均セルサイズが0.01cm〜0.30cmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
(4)帯電防止剤が脂肪酸と多価アルコールのエステルとアルキルスルホン酸金属塩の混合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、優れた帯電防止性能と低い吸水性の両方を満足するポリオレフィン系樹脂押出発泡体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について、特にその好ましい実施態様を中心に、以下具体的に説明する。
本発明のポリオレフィン系樹脂押出発泡体は、好ましくは押出機内で樹脂と発泡剤及び帯電防止剤、必要に応じて気泡核形成剤等の添加剤を加圧下で溶融混練した後、適正な発泡温度まで冷却して得られた発泡性溶融混合物を押出機先端に取り付けたダイスを通して大気圧下に押出して発泡させることにより得られる。
オレフィン系樹脂とは、一般公知のオレフィン系樹脂と呼ばれるものならいずれを用いてもよい。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−ブテン−プロピレンランダム共重合体等が挙げられ、少なくとも1種類を樹脂中に含むものである。発泡性に優れ、大きな断面の発泡体が得られるという点で低密度ポリエチレンが、もっとも好ましい。オレフィン系樹脂に、他種類樹脂を配合しても支障はないが、その場合オレフィン系樹脂は全樹脂量の50質量%以上が好ましい。オレフィン系樹脂と配合する他種類樹脂はオレフィン系樹脂と配合できるものならどんな樹脂でも支障はない。それらの配合量は樹脂全体の50質量%未満が好ましく、スチレン系樹脂などは40質量%以下がより好ましい。スチレン系樹脂には、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン等が用いられるが、樹脂に制限はない。また更にスチレン系樹脂を混合する場合には相溶性を上げるために水素添化されたスチレン−ブタジエンブロック共重合体を樹脂全体の20質量%以下混合するのが好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0008】
ポリオレフィン系樹脂押出発泡体の製造に用いられる発泡剤は、公知の発泡剤を用いることができ、例えばプロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の環式脂肪族炭化水素、クロロジフルオロエタン、ジフルオロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド等のハロゲン化炭化水素、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、テトラフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、炭酸ガス、窒素、ヘリウム、アルゴン等の無機ガス等が挙げられる。これらの発泡剤は、単体で用いても良く、2種以上の発泡剤を混合して用いても良い。発泡剤としては、ブタンを使用するのが大断面の発泡体を得る事ができるので好ましい。ブタンを使用する場合、ブタンに占めるノルマルブタンの比率は65〜100質量%が好ましく、より好ましくは70〜100質量%である。ノルマルブタンの比率が65〜100質量%であると、発泡体からの発泡剤の逸散が速く、早期に燃焼範囲下限濃度(1.8vol%)未満にまでガス濃度が低下し、発泡体が着火・燃焼する可能性を低減できる。本発明の発泡剤の添加量は、得ようとするポリオレフィン系押出発泡体の密度に応じて適宜調節すればよいがポリオレフィン系樹脂100質量部に対して1〜30質量部が好ましい。
【0009】
帯電防止剤としては、脂肪酸と多価アルコールのエステル、脂肪酸アミド、アルキル脂肪酸アミド、アルキルスルホン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種以上が用いられる。脂肪酸は、例えば、パルミチン酸、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ベヘン酸等が挙げられる。多価アルコールは、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、キシリット、マンニット、ソルビット、ソルビタン等が挙げられる。脂肪酸アミドは、例えばオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、ラウリン酸アミド等が挙げられる。アルキル脂肪酸アミドは、R1−CONH−R2で表される化合物(ただしR1、R2は炭素数11から18のアルキル基)等が挙げられる。アルキルスルホン酸金属塩は、例えば炭素数10〜26のアルキルスルホン酸とナトリウム、カリウム、リチウム等の金属塩が挙げられる。中でも脂肪酸と多価アルコールのエステルとアルキルスルホン酸金属塩の混合物を用いると相乗効果により少量の添加量で優れた帯電防止性能と低い吸水性の効果が得られるので好ましい。帯電防止剤の添加量はポリオレフィン系樹脂100質量部に対して0.3〜2質量部用いるのが好ましい。更に好ましくは0.5〜1質量部である。0.3質量部以上であれば帯電防止性能は十分になり、2質量部以下であれば低吸水性の効果が十分になる。
【0010】
本発明においては、必要に応じて気泡核形成剤を用いてもよい。気泡核形成剤としては、例えば、タルクのような無機物質、ステアリン酸亜鉛のような脂肪酸の金属塩、ポリテトラフルオロエチレンの微粉末、あるいは押出機の温度で分解して分解ガスを発生するような化学発泡剤、またはその温度で反応して炭酸ガスを発生する酸とアルカリの混合物のようなもの等を使用できる。これらの気泡核形成剤を使用する場合は、添加量を0〜10質量部の範囲で調節するのが好ましい。使用する気泡核形成剤の種類により得られるセルサイズが異なるが、気泡核形成剤の添加量を増加するとセルサイズを小さくすることができる。
【0011】
さらに、発泡剤の逸散速度を調節するガス透過調整剤(収縮防止剤とも呼ばれる)を添加しても良い。帯電防止剤の中には、脂肪酸と多価アルコールのエステルの様に、帯電防止機能と発泡剤の逸散速度を調節する機能を併せ持つ物もあるので、必要に応じてガス透過調整剤(収縮防止剤)の機能を付加することが出来る。一般に使用されているガス透過調整剤(収縮防止剤)も分子内に親水基と親油基を持つため、添加量が多いと吸水率が増加する傾向にあるので、ガス透過調整剤(収縮防止剤)を使用する場合は、帯電防止剤及びガス透過調整剤(収縮防止剤)を合わせた表面濃度が0.1〜3.0μg/cmの範囲にあることが好ましい。ガス透過調整剤(収縮防止剤)の添加量は、0〜2.0質量部が好ましい。さらに、必要に応じて、オレフィン系樹脂に対し酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を添加することもできる。
【0012】
発泡体の厚みは、20mm以上80mm以下が好ましく、その厚み構成は単層または熱融着等による積層のいずれでも構わない。
発泡体の独立気泡率は、好ましくは80〜100%、より好ましくは90〜100%である。独立気泡率が80%以上であると、緩衝包装材として充分な緩衝性能を発揮することができるとともに、発泡体内へ水が浸入しにくいため吸水率を低くすることができる。
発泡体の密度は、0.007〜0.100g/mであれば優れた帯電防止性能と低い吸水性を両立しやすいため好ましく、より好ましくは、0.007〜0.030g/cmさらに好ましくは0.007〜0.020g/cmである。密度が0.007〜0.100g/cmであると、断熱材、浮き材、緩衝包装材用途として優れている。密度は小さいほど使用樹脂量が少ないため省資源の観点から好ましい。また、セルサイズは、好ましくは0.01〜0.30cm、より好ましくは0.01〜0.12cm、さらに好ましくは0.01〜0.05cmである。断熱材用途においては、セルサイズが小さいほど断熱性能がよいので好ましい。
【0013】
帯電防止剤の表面濃度は、0.1〜3.0μg/cmに限定される。ポリオレフィン系樹脂押出発泡体の帯電防止剤は、ほぼ気泡膜表面にブリードアウトすることから、帯電防止剤の表面濃度は、帯電防止剤添加量、発泡体密度、発泡体のセルサイズより以下の近似式で計算される。したがって下記近似式より算出した帯電防止剤の表面濃度が0.1〜3.0μg/cmを満たす範囲内で、帯電防止剤添加量、発泡体密度、発泡体のセルサイズがそれぞれの好ましい範囲から選択される。帯電防止剤の表面濃度が0.1〜2.0μg/cmであると吸水率が低くなるので好ましい。帯電防止剤の表面濃度が0.1〜1.0μg/cmであると吸水率が更に低くなるのでより好ましい。
帯電防止剤表面濃度(μg/cm
=((樹脂100質量部に対する帯電防止剤添加量(質量部)/100)/気泡膜表面積)×1000000
気泡膜表面積(cm/g発泡体)
=3.29×(1−発泡体密度/樹脂密度)/(セルサイズ/2×樹脂密度)
ここで、各物性値の単位は、
発泡体密度:g/cm 樹脂密度:g/cm セルサイズ:cm
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。実施例に示された値は次の方法により測定したものである。
(1)発泡体密度(JIS K 6767準拠法)
発泡体の幅方向に5等分した各位置から全厚み方向に切り出した物(サンプルサイズ20mm×20mm×厚み25mm)について質量及び体積を測定し、次式により密度を測定して、5点の密度の平均値を発泡体密度とする。
発泡体密度(g/cm)=発泡体質量(g)/発泡体体積(cm
(2)発泡体のセルサイズ
発泡体の中央部から試験片をカットし、カット面に発泡体の押出方向、幅方向、厚み方向に沿ってL(cm)の直線を引き、これらの直線に接触している気泡の数を数え、次式により押出方向、幅方向、厚み方向のセルサイズを算出し、更に3方向の平均値をセルサイズとした(グリッドライン法)。
各方向のセルサイズ(cm)=1.626×L/気泡数
【0015】
(3)帯電圧
発泡体を10枚重ねた状態で周囲に金属が存在しない床上に30分静置し、一番上の発泡体について、静電気測定器(シムコジャパン製FMX-002(商品名))を用いて発泡体表面の帯電電位を5点測定し、5点の平均を発泡体の帯電圧とした。測定時の雰囲気は、温度20℃±3℃、湿度55%±5%とした。帯電圧測定結果により、以下の基準で評価した。
◎:帯電圧 5kV未満
○:帯電圧 5kV以上〜10kV未満
×:帯電圧 10kV以上
【0016】
(4)吸水率 (NDS Z 0503準拠法)
全表面が切断面からなる様に100mm×100mm、厚さ25mmの大きさに発泡体を切り出し、NDS Z 0503によって測定した結果によって、以下の基準で評価した。
◎:吸水率 0.1%未満
○:吸水率 0.1%以上〜1%未満
×:吸水率 1%以上
(5)発泡体の独立気泡率
ASTM−D2856に記載されているエアーピクノメーター法(東京サイエンス(株)製、空気比較式比重計1000型(商品名)使用)により測定し、n=5の平均で算出した。
【0017】
[実施例1]
150mmのバレル内径を有するスクリュー型押出機の供給領域に600kg/時間の速度で、高密度ポリエチレン(密度0.96g/cm MI=0.03g/10分)を、樹脂100質量部に対し、気泡核形成剤としてタルク1.8質量部及び帯電防止剤としてパルミチン酸モノグリセライド60質量%とアルキル基の炭素数が10から20(炭素数の平均値=15)であるアルキルスルホン酸ナトリウム40質量%の混合物1.0質量部とともに供給した。押出機のバレル温度を190℃〜210℃に調整し、押出機の先端に取り付けた発泡剤注入口から発泡剤としてノルマルブタンをこの樹脂100質量部に対し26質量部を圧入し、当該溶融樹脂組成物と混合して発泡性溶融混合物とした。この発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で135℃まで冷却した後、約2.2mmの平均厚みと約160mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートより、常温、大気圧下の雰囲気中に連続的に押出して発泡させ、樹脂発泡体の引き取り速度を調整しながら成形して、厚み30mm、幅600mm、長さ2000mm、セルサイズ0.05cm、密度0.012g/cm、独立気泡率95%、帯電防止剤の表面濃度約0.9μg/cmの板状樹脂発泡体を得た。得られた発泡体について発泡後30分に帯電圧の測定を行い、この発泡体を発泡1時間後から40℃で10日間その後室温で3日間保存した後、吸水率の評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0018】
[実施例2]
150mmのバレル内径を有するスクリュー型押出機の供給領域に900kg/時間の速度で、低密度ポリエチレン(密度0.921g/cm、MI=2.9g/10分)を、樹脂100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク1.5質量部と帯電防止剤としてパルミチン酸モノグリセライド60質量%とアルキル基が10から20(炭素数の平均値=15)であるアルキルスルホン酸ナトリウム40質量%の混合物0.5質量部ともに供給した。押出機のバレル温度を190℃〜210℃に調整し、押出機の先端に取り付けた発泡剤注入口から発泡剤としてノルマルブタン(燃焼範囲下限値:1.8vol%)をこの樹脂100質量部に対し13質量部を圧入し、当該溶融樹脂組成物と混合して発泡性溶融混合物とした。この発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で108℃まで冷却した後、約3.4mmの平均厚みと約215mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートより、常温、大気圧下の雰囲気中に連続的に押し出して発泡させ、樹脂発泡体の引き取り速度を調整しながら成形して、厚み62mm、幅600mm、長さ1000mm、セルサイズ0.08cm、密度0.022g/cm、独立気泡率95%、帯電防止剤の表面濃度約1.6μg/cmの板状樹脂発泡体を得た。得られた発泡体について発泡後30分に帯電圧の測定を行い、この発泡体を発泡1時間後から40℃で10日間その後室温で3日間保存した後、吸水率の評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0019】
[比較例1]
150mmのバレル内径を有するスクリュー型押出機の供給領域に600kg/時間の速度で、高密度ポリエチレン(密度0.96g/cm MI=0.03g/10分)を、樹脂100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク2.5質量部と帯電防止剤としてパルミチン酸モノグリセライド60質量%とアルキル基が10から20(炭素数の平均値=15)であるアルキルスルホン酸ナトリウム40質量%の混合物0.3質量部ともに供給した。押出機のバレル温度を190℃〜210℃に調整し、押出機の先端に取り付けた発泡剤注入口から発泡剤としてノルマルブタンをこの樹脂100質量部に対し28質量部を圧入し、当該溶融樹脂組成物と混合して発泡性溶融混合物とした。この発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で135℃まで冷却した後、約2.2mmの平均厚みと約160mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートより、常温、大気圧下の雰囲気中に連続的に押出して発泡させ、樹脂発泡体の引き取り速度を調整しながら成形して、厚み30mm、幅600mm、長さ2000mm、セルサイズ0.02cm、密度0.010g/cm、独立気泡率95%、帯電防止剤の表面濃度約0.09μg/cmの板状樹脂発泡体を得た。得られた発泡体について発泡後30分に帯電圧の測定を行い、この発泡体を発泡1時間後から40℃で10日間その後室温で3日間保存した後、吸水率の評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0020】
[比較例2]
150mmのバレル内径を有するスクリュー型押出機の供給領域に900kg/時間の速度で、低密度ポリエチレン(密度0.921g/cm、MI=2.9g/10分)を、樹脂100質量部に対し、気泡調整剤としてタルク2.0質量部と帯電防止剤としてパルミチン酸モノグリセライド60質量%とアルキル基が10から20(炭素数の平均値=15)であるアルキルスルホン酸ナトリウム40質量%の混合物3.0質量部ともに供給した。押出機のバレル温度を190℃〜210℃に調整し、押出機の先端に取り付けた発泡剤注入口から発泡剤としてノルマルブタン(燃焼範囲下限値:1.8vol%)をこの樹脂100質量部に対し6.8質量部を圧入し、当該溶融樹脂組成物と混合して発泡性溶融混合物とした。この発泡性溶融混合物を押出機の出口に取り付けた冷却装置で108℃まで冷却した後、約3.4mmの平均厚みと約215mm幅の開口部形状を有するオリフィスプレートより、常温、大気圧下の雰囲気中に連続的に押し出して発泡させ、樹脂発泡体の引き取り速度を調整しながら成形して、厚み62mm、幅600mm、長さ1000mm、セルサイズ0.08cm、密度0.033g/cm、独立気泡率95%、帯電防止剤の表面濃度約12.5μg/cmの板状樹脂発泡体を得た。得られた発泡体について発泡後30分に帯電圧の測定を行い、この発泡体を発泡1時間後から40℃で10日間その後室温で3日間保存した後、吸水率の評価を行なった。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、製造時に帯電した発泡体からの放電により着火する危険性を低減することが出来、又吸水率が低いので、水分を嫌う電子部品の包装材や結露の発生しやすい個所に使用する断熱材等に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸と多価アルコールのエステル、脂肪酸アミド、アルキル脂肪酸アミド、アルキルスルホン酸金属塩から選ばれる少なくとも1種以上の帯電防止剤を含むポリオレフィン系樹脂押出発泡体であって、前記帯電防止剤の表面濃度が、0.1〜3.0μg/cmであることを特徴とするポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
【請求項2】
帯電防止剤の表面濃度が0.1〜2.0μg/cmであり、ポリオレフィン系樹脂発泡体の密度が0.007〜0.100g/cmであることを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂押出発泡体の平均セルサイズが0.01cm〜0.30cmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。
【請求項4】
帯電防止剤が脂肪酸と多価アルコールのエステルとアルキルスルホン酸金属塩の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂押出発泡体。

【公開番号】特開2006−96914(P2006−96914A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286311(P2004−286311)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(303046266)旭化成ライフ&リビング株式会社 (64)
【Fターム(参考)】