説明

ポリオレフィン系樹脂発泡粒子

【課題】表面が美麗で、均一な融着性を示し、更に変形やヒケの無いポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子の提供。
【解決手段】0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形装置に備えてなる固定型と移動型から構成される成形空間に、該成形空間容積の80%充填し、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程をそれぞれ3秒以上、且つ一方加熱工程時の前記成形空間内圧力が0.01MPa(G)以上となるように行った後、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を取り出し、乾燥後得られる該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の真空嵩密度と、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度で表される一方加熱終了後の前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力が1.00より大きく1.25より小さいポリオレフィン系樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の型内発泡成形法において、変形が少なく、表面が美麗で、均一な融着性を示すポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体が得られるポリオレフィン系樹脂発泡粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の型内発泡成形は、(1)充填工程、(2)加熱工程、(3)冷却工程、(4)離型工程、といった一連の工程を1サイクルとして連続的に行われている。前記(2)加熱工程には、蒸気チャンバー内の空気を除去すると共に中型を加熱する予備加熱工程、発泡粒子間の空気を除去すると共に発泡粒子を加熱する一方加熱・逆一方加熱工程、発泡粒子を溶融させて発泡粒子同士を融着させる両面加熱工程がある。
【0003】
一般的な発泡粒子の型内発泡成形では予備加熱工程中から発泡粒子の二次発泡が始まり、一方加熱や逆一方加熱工程中には二次発泡した発泡粒子が成形空間内の空隙を占拠していくため、両面加熱時に水蒸気の侵入が困難な場所が発生し、融着が不均一となることが多い。
【0004】
両面加熱時の水蒸気の閉塞を防止する方法として、発泡粒子が先ず相互に融着し得る状態となり、続いて二次発泡し得る状態となる融着先行型発泡粒子なるものを用いるという思想の元に、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定によって得られる1回目のDSC曲線において、吸熱ピークの頂点温度が100℃から140℃の主吸熱ピークと、該主吸熱ピークの高温側に2以上の吸熱ピークとが現れる結晶構造を有するポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いることが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開2009/001626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように加熱工程中の蒸気の閉塞が無くなると、発泡粒子同士の融着は改善する傾向にあるものの、蒸気が過剰に流入するため、発泡粒子の内圧が過剰に低下し、得られた型内発泡成形体に変形やヒケが発生するという問題を見出した。本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、表面が美麗で、均一な融着性を示し、更に変形やヒケの無いポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得ることができるポリオレフィン系樹脂発泡粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、良好なポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得る発泡粒子について鋭意検討をした結果、型内発泡成形において、0.18乃至0.22MPaの内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を充填率80%となるように型内発泡成形金型に充填し、いわゆる一方加熱工程、及び逆一方加熱工程の際のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力がある範囲内にあるポリオレフィン系樹脂発泡粒子を用いれば、前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が一方加熱工程、逆一方加熱工程で適度に二次発泡するため、内圧が大きく低下すること無く発泡粒子を均一に加熱でき、表面が美麗で、均一な融着性を示し、更に変形やヒケの無い型内発泡成形体が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成よりなる。
【0009】
〔1〕 0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形装置に備えてなる固定型と移動型から構成される成形空間に、該成形空間容積の80%充填し、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程をそれぞれ3秒以上、且つ一方加熱工程時の前記成形空間内圧力が0.01MPa(G)以上となるように行った後、金型を冷却してポリオレフィン系樹脂発泡粒子を取り出し、乾燥後得られる該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の真空嵩密度(D1’)と、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度(D2)で表される一方加熱終了後の前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力((D2)/(D1’))が1.00<(D2)/(D1’)<1.25であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【0010】
〔2〕 0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形装置に備えてなる固定型と移動型から構成される成形空間に、該成形空間容積の80%充填し、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程をそれぞれ3秒以上、且つ一方加熱工程時の成形空間内圧力が0.01MPa(G)以上、逆一方加熱工程時の成形空間内圧力が0.02MPa(G)以上となるように行った後、金型を冷却してポリオレフィン系樹脂発泡粒子を取り出し、乾燥後得られる該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の真空嵩密度(D1)と、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度(D2)で表される逆一方加熱終了後の前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力((D2)/(D1))が1.00<(D2)/(D1)<1.25であることを特徴とする〔1〕記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【0011】
〔3〕 前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、発泡剤を含んでなる分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度まで加熱し、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られた一次発泡粒子に、発泡能を付与して一段発泡粒子の樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られる多段発泡粒子であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、従来の方法で型内発泡成形することによって、表面が美麗で、均一な融着性を示し、且つ変形やヒケの無い型内発泡成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】型内発泡成形装置の一例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形装置に備えてなる固定型と移動型から構成される成形空間に、0.18MPa以上0.22MPa以下(絶対圧)の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、該成形空間容積の80%充填し、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程をそれぞれ3秒以上、且つ、一方加熱工程時の前記成形空間内圧力が0.01MPa(G)(ゲージ圧)以上となるように行った後、金型を冷却してポリオレフィン系樹脂粒子を取り出し、乾燥後得られる該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の真空嵩密度(D1’)と、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度(D2)で表される一方加熱終了後の前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力(D2)/(D1’)が1.00<(D2)/(D1’)<1.25であり、好ましくは、1.00 <(D2)/(D1’)<1.10である。
【0015】
内圧が0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、1.00<(D2)/(D1’)<1.25を満足する性質を有しているということは、このようなポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形のために成形空間内に充填し水蒸気を供給しても、蒸気孔を閉塞させないという性質と、得られる型内発泡成形体が、自身の形状を維持するのに十分な内圧をポリオレフィン系樹脂発泡粒子が保持している性質を併せ持つことを示している。従って、このようなポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形することにより、各々の発泡粒子が過剰な内圧低下を起こすこと無く、均等に加熱され、均一な融着性を示し、且つ、変形やヒケの無いポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体が得られる。
【0016】
即ち、(D2)/(D1’)<1.25であれば、一方加熱時に金型内のある箇所に存在する発泡粒子が、過剰な二次発泡により、水蒸気の進入を妨げることがなく、得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の融着は均一となる。また上記式において、1.00<(D2)/(D1’)であれば、多量の水蒸気に曝されることなく、内圧が過剰に低下することがないため、得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体に変形やヒケが発生しない。
【0017】
また、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形装置に備えてなる固定型と移動型から構成される成形空間に、0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、該成形空間容積の80%充填し、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程をこの順にそれぞれ3秒以上、且つ一方加熱工程時の成形空間内圧力が0.01MPa(G)(ゲージ圧)以上、逆一方加熱工程時の成形空間内圧力が0.02MPa(G)(ゲージ圧)以上となるように行った後、金型を冷却してポリオレフィン系樹脂発泡粒子を取り出し、乾燥後得られる該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の真空嵩密度(D1)と該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度(D2)で表される逆一方加熱終了後の前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力(D2)/(D1)が1.00<(D2)/(D1)<1.25の関係を満たすことが好ましく、より好ましくは1.00<(D2)/(D1)<1.10である。
【0018】
内圧が0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、1.00<(D2)/(D1)<1.25を満足する性質を有していると、このようなポリオレフィン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形することにより、各々の発泡粒子が過剰な内圧低下を起こすこと無く、均等に加熱され、均一な融着性を示し、且つ、変形やヒケの無いポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体が得られるという傾向が顕著である。
【0019】
本発明における、型内発泡成形方法は、充填工程、加熱工程、冷却工程、離型工程からなり、更に加熱工程は、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程、(4)両面加熱工程からなる。
【0020】
(1)予備加熱工程は、図1において、固定型蒸気調整弁22、移動型蒸気調整弁32、固定型蒸気室ドレン弁23、移動型蒸気室ドレン弁33を開けて固定型蒸気室21と移動型蒸気室31に蒸気を通す工程である。(2)一方加熱工程は、移動型蒸気室ドレン弁33と固定型蒸気調整弁22を閉じ、移動型蒸気調整弁32と固定型蒸気室ドレン弁23を開けて蒸気を通す工程である。
【0021】
(3)逆一方加熱工程は、固定型蒸気室ドレン弁23と移動型蒸気調整弁32を閉じ、固定型蒸気調整弁22と移動型蒸気室ドレン弁33を開けて蒸気を通す工程であり、(4)両面加熱工程は、固定型蒸気調整弁22と移動型蒸気調整弁32を開け、固定型蒸気室ドレン弁23と移動型蒸気室ドレン弁33を閉じて蒸気を通す工程である。
【0022】
本発明の、1.00<(D2)/(D1’)<1.25を満足する、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、たとえば、(A)発泡粒子の基材樹脂の弾性率を高くし、二次発泡しがたくする、(B)低発泡倍率の発泡粒子から、より高発泡倍率の発泡粒子に発泡させる、いわゆる二段発泡法を行い、発泡粒子を構成する樹脂膜に延伸歪を残留させる、などの方法で得られる傾向がある。
【0023】
中でも、(B)低発泡倍率の発泡粒子から、より高発泡倍率の発泡粒子に発泡させる、いわゆる二段発泡法を行い、発泡粒子を構成する樹脂膜に延伸歪を残留させる方法は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を構成する樹脂膜に残留歪を付与して発泡能を抑制することが可能であるため、好ましい方法である。方法(B)の詳細については後述する。
【0024】
以下の方法にて本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を製造することができる。
【0025】
本発明のポリオレフィン系樹脂とは、モノマーとしてオレフィンを主体とした樹脂であり、例えば、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂が挙げられる。中でも、ポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。本発明で使用するポリプロピレン系樹脂とは、モノマーとしてプロピレンを主体とした樹脂であり、共重合成分としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素数2または4〜12のα−オレフィンなどの環状オレフィンなどのビニル単量体などが挙げられる。これらのうち、エチレン、1−ブテンを使用することが耐寒脆性向上、安価等という点で好ましい。
【0026】
また、ポリプロピレン系樹脂は融点が130℃以上165℃以下であることが好ましく、更には135℃以上155℃以下のものが好ましい。ここで言う融点とは以下の測定により求めた。示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事により樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで降温することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度を融点とした。融点が130℃未満の場合、耐熱性、機械的強度が十分でない傾向がある。また、融点が165℃を超える場合、型内発泡成形時の融着を確保することが難しくなる傾向がある。
【0027】
また、前記ポリプロピレン系樹脂は数平均分子量Mnと重量平均分子量MwからMw/Mnで表される分子量分布が8.0以下であることが好ましく、更には5.4未満のものが好ましい。当該範囲であれば、発泡粒子に応力が残留しやすくなるため、二次発泡しがたい二段発泡粒子が得られる傾向がある。なお、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwは、サイズ排除クロマトグラフィーを用い、以下の条件において測定される。
測定機器 :Waters社製Alliance GPC 2000型 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
カラム :TSKgel GMH6−HT 2本、
TSKgel GMH6−HTL 2本(それぞれ、内径7.5mm×長さ300mm、東ソー社製)
移動相 :o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
カラム温度:140℃
流速 :1.0mL/min
試料濃度 :0.15%(W/V)−o−ジクロロベンゼン
注入量 :500μL
分子量較正:ポリスチレン換算(標準ポリスチレンによる較正)
【0028】
さらに、前記ポリプロピレン系樹脂は230℃におけるメルトフローレート(MFR)が0.5g/10分以上30g/10分以下であることが好ましく、更には2g/10分以上20g/10分以下のものが好ましい。MI値が0.5g/10分未満の場合、高発泡倍率のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が得られにくい場合があり、30g/10分を超える場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が破泡し易く、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連泡率が高くなる傾向にある。ここで言うMFRの測定は、JIS−K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、230±0.2℃の条件下で測定したときの値である。
【0029】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいようにあらかじめ一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状で、その粒子の平均粒重量が好ましくは0.5〜3.0mg、より好ましくは0.5〜2.0mg、更に好ましくは0.5〜1.5mgになるように成形加工される。また、必要に応じて、発泡核剤、発泡助剤、界面活性剤型もしくは高分子型の帯電防止剤、顔料、難燃性改良材、導電性改良材等を、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
【0030】
発泡核剤は、発泡の時に気泡核の形成を促す物質をいい、例えば、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、硫酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ゼオライト等の無機物質、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウムなどの脂肪酸金属塩、メラミン、メラミンシアヌレート等の高融点でかつ水に完全溶解しない有機物質、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸金属塩などが挙げられる。これらの発泡核剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、タルク、炭酸カルシウムが好ましく、特に発泡助剤としてポリエチレングリコールを使用する場合にはタルクを使用することで、ポリエチレングリコールの熱可塑性樹脂中への分散性が向上し、均一な気泡を有する発泡体を得易くなるため好適である。
【0031】
発泡核剤は、使用するものによっても異なるが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上2重量部以下であることが好ましく、0.01重量部以上1重量部以下であることがより好ましい。発泡核剤の添加量が0.005重量部より少ない場合は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の発泡倍率を大きくすることができなかったり、気泡の均一性が低下してしまう場合がある。発泡核剤の添加量が2重量部より多い場合はポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径が小さくなり過ぎ、型内発泡成形性が不良となる傾向にある。
【0032】
発泡助剤は、発泡する際に気泡の大きさを調整する働きをするものであり、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、D−マンニトール、エリスリトール、ヘキサントリオール、キシリトール、D−キシロース、イノシトール、フルクトース、ガラクトース、グルコース、マンノース等の炭素数3以上6以下でかつ水酸基を3個以上有する多価アルコール、トリアジン骨格を有する化合物やポリエチレングリコール等が挙げられ、これらのうち1種以上の化合物を添加することが好ましい。
【0033】
トリアジン骨格を有する化合物とは、単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下のものが好ましい。ここで、トリアジン骨格あたりの分子量とは、1分子中に含まれるトリアジン骨格数で分子量を除した値である。単位トリアジン骨格あたりの分子量が300を超えると発泡倍率ばらつき、セル径ばらつきが目立つ場合がある。単位トリアジン骨格あたりの分子量が300以下の化合物としては、例えば、メラミン(化学名1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン)、アンメリン(同1,3,5−トリアジン−2−ヒドロキシ−4,6−ジアミン)、アンメリド(同1,3,5−トリアジン−2,4−ヒドロキシ−6−アミン)、シアヌル酸(同1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオール)、トリス(メチル)シアヌレート、トリス(エチル)シアヌレート、トリス(ブチル)シアヌレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)シアヌレート、メラミン・イソシアヌル酸縮合物などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用しても良い。これらの内、高発泡倍率の難燃性ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を発泡倍率ばらつき、セル径ばらつきが少なく得るためには、メラミン、イソシアヌル酸、メラミン・イソシアヌル酸縮合物を使用することが好ましい。
【0034】
ポリエチレングリコールは、エチレングリコールが重合した構造を有する非イオン性の水溶性ポリマーであり、分子量は概ね5万以下のものである。前記ポリエチレングリコールは、平均分子量が200以上9000以下であることが好ましく、より好ましくは200以上600以下である。平均分子量が9000を超えると、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が悪化し、押出機での溶融混練が困難となる傾向がある。
【0035】
発泡助剤は、使用するものによっても異なるが、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.05重量部以上3重量部以下添加することが好ましい。発泡助剤の添加量が0.05重量部より少ない場合は、発泡助剤の効果が十分に発揮されない傾向にある。発泡助剤の添加量が3重量部よりも多い場合は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が破泡し易く、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の連泡率が高くなる場合がある。
【0036】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤を含んでなる分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度、好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−25℃以上融点+25℃以下、更に好ましくはポリオレフィン系樹脂粒子の融点−10℃以上融点+10℃以下の温度まで加熱し、発泡剤を含浸させ、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得ることが好ましい。
【0037】
耐圧容器には特に制限はなく、発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよいが、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0038】
発泡剤としては、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等の脂肪族炭化水素およびそれらの混合物;空気、窒素、二酸化炭素等の無機ガス;水等が例示できる。
【0039】
本発明において使用できる分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミノ珪酸塩、カオリン等の無機系分散剤が挙げられる。また必要に応じて、分散助剤を併用することが好ましく、分散助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウム、n−パラフィンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0040】
これらの中でも、分散剤として第三リン酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸ジナトリウムを併用することが好ましい。分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリオレフィン系樹脂の種類と使用量によって異なるが、通常、水100重量部に対して分散剤0.2重量部以上3重量部以下を配合することが好ましく、分散助剤0.001重量部以上0.1重量部以下を配合することが好ましい。また、水中での分散性を良好なものにするために、ポリオレフィン系樹脂粒子は、通常、水100重量部に対して20重量部以上100重量部以下使用するのが好ましい。
【0041】
また、以上のようにして得られたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、いわゆる二段発泡法を利用して、さらに発泡させて発泡倍率のより高いポリオレフィン系樹脂発泡粒子としてもよい。ポリオレフィン系樹脂発泡粒子に二段発泡法を施すことで、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の構成する樹脂膜を残留歪で発泡能を抑制することが出来るため好適である。
【0042】
即ち、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、発泡剤を含んでなる分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度まで加熱し、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られた一段発泡粒子に、発泡能を付与して一段発泡粒子の樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られる多段発泡粒子を好適に使用することができる。
【0043】
ここで、二段発泡法を行うに際し、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、発泡剤を含んでなる分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度まで加熱し、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られた発泡粒子を「一段発泡粒子」、一段発泡粒子に発泡能を付与して一段発泡粒子の樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られる発泡粒子を「多段発泡粒子」と呼ぶ場合がある。
【0044】
具体的に一段発泡粒子に発泡能を付与するには、密閉耐圧容器内に入れて、窒素、空気などの無機ガスを含浸させる事で行うことができる。
【0045】
二段発泡を行う際の一段発泡粒子の発泡倍率は5倍以上20倍以下、且つ、付与される発泡能は0.25MPa(絶対圧)以上0.40MPa(絶対圧)以下であることが好ましく、更に好ましくは発泡倍率が10倍以上18倍以下、かつ付与される発泡能が0.30MPa(絶対圧)以上0.38MPa(絶対圧)以下である。
【0046】
また、二段発泡法においては、一段発泡粒子の加熱を、樹脂融点以下の温度に加熱することが好ましく、より好ましくは、絶対圧が0.16MPa以上0.22MPa以下の加圧水蒸気を用いる。一段発泡粒子の発泡倍率が5倍を下回る、あるいは該一段発泡粒子の内圧が0.40MPa(絶対圧)を超える、あるいは二段発泡に使用する加圧水蒸気の絶対圧が0.16MPaを下回ると、二段発泡粒子を構成する樹脂膜に大きな延伸がかかり、予備加熱工程でポリオレフィン系樹脂発泡粒子は著しく収縮する傾向があるため、該ポリオレフィン系樹脂余技発泡粒子から得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体は変形しやすい傾向がある。一方、一段発泡粒子の発泡倍率が20倍を超える、あるいは該発泡粒子の内圧が0.25MPa(絶対圧)を下回ると、二段発泡粒子を構成する樹脂膜にかかる延伸が小さいため、逆一方加熱工程で発泡粒子が過剰に二次発泡して、前記(D2)/(D1’)或いは(D2)/(D1)が1.25を超える恐れがあり、型内発泡成形において両面加熱時に、過剰に二次発泡した二段発泡粒子が加熱水蒸気の進入を妨げる傾向にある。また、二段発泡法に用いる加圧蒸気の絶対圧力が0.22MPaを上回ると、二段発泡中に一段発泡粒子同士が融着してブロッキングする傾向にある。
【0047】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は50μm以上800μm以下であることが好ましく、より好ましくは100μm以上600μm以下、さらに好ましくは200μm以上500μm以下である。平均気泡径が50μm未満の場合、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子から得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の形状が歪む、表面にしわが発生するなどの問題が生じる場合がある。平均気泡径が800μmを越える場合、予備加熱工程で発泡粒子は二次発泡して、1.00<(D2)/(D1’)<1.25或いは1.00<(D2)/(D1)<1.25を満足しない傾向があり、金型スリットの閉塞、発泡粒子同士の融着による加熱水蒸気の進入を妨げ、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子から得られるポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の緩衝特性が低下する場合がある。
【0048】
なお、平均気泡径は、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の切断面について、表層部を除く部分に長さ2mmに相当する線分を引き、該線分が通る気泡数を測定し、以後はASTM D3576に準拠して測定する。
【0049】
本発明において、のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の発泡倍率は、20倍以上40倍以下であることが好ましく、より好ましくは、25倍以上35倍以下である。
【0050】
なお、発泡倍率は、嵩体積約50cm3のポリオレフィン系樹脂発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm3)を求め、発泡前の樹脂粒子の密度d(g/cm3)から次式により求める。
発泡倍率=d×v/w
【0051】
以上のようにして得られた本発明のポリオレフィン系樹脂発泡粒子からポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を成形する方法としては、公知の方法を使用することが出来る。たとえば、あらかじめポリオレフィン系樹脂発泡粒子を耐圧容器内で空気加圧し、発泡粒子中に空気を圧入することにより内圧を、0.18MPa以上0.22MPa以下付与し、これを閉鎖しうるが密閉し得ない成形型内に充填し、一方加熱、逆一方加熱工程を経て、絶対圧0.2MPa以上0.4MPa以下程度の加熱水蒸気圧で3秒以上30秒以下程度の両面加熱工程を実施し、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子同士を融着させ、このあと成形金型の水冷により離型後のポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却した後、金型を開き、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得る方法、が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
〔MwとMnの測定〕
ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mwは、以下の条件で測定した。
測定機器 :Waters社製Alliance GPC 2000型 ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
カラム :TSKgel GMH6−HT 2本、
TSKgel GMH6−HTL 2本(それぞれ、内径7.5mm×長さ300mm、東ソー社製)
移動相 :o−ジクロロベンゼン(0.025%BHT含有)
カラム温度:140℃
流速 :1.0mL/min
試料濃度 :0.15%(W/V)−o−ジクロロベンゼン
注入量 :500μL
分子量較正:ポリスチレン換算(標準ポリスチレンによる較正)
【0054】
〔発泡粒子の嵩密度〕
耐圧ガラス製で密閉することが可能なメスシリンダーに発泡粒子を充填し、該メスシリンダーをシェイカーで振動させることにより発泡粒子面を均し、発泡粒子の体積V2(L)を測定した。続いて、前記メスシリンダー内の発泡粒子の重量W2(g)を測定し、次式より発泡粒子の嵩密度を算出した。
発泡粒子の嵩密度(D2)=W2/V2
【0055】
〔発泡粒子の真空嵩密度〕
型内発泡成形装置により二次発泡させた発泡粒子を前記耐圧ガラス製メスシリンダーに充填し、真空ポンプを用いてメスシリンダー内空気を除去した。該メスシリンダーをシェイカーで振動させることにより発泡粒子面を均し、発泡粒子の真空体積V1(L)を測定した。前記メスシリンダー内の発泡粒子の重量W1(g)を測定し、次式より二次発泡粒子の真空嵩密度を算出した。
二次発泡粒子の真空嵩密度(D1、及びD1’)=W1/V1
【0056】
〔逆一方加熱、および一方加熱時の二次発泡力〕
0.18MPa以上0.22MPa(絶対圧)以下の所定の内圧を付与した発泡粒子の嵩密度(D2)を二次発泡前に予め測定しておき、融着阻害剤を塗布した該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、SUS製の金網からなる容器へ充填率約80%となるように充填した。前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子入り容器を型内発泡成形装置の型内空間内にて加熱した。加熱後のポリオレフィン系樹脂発泡粒子を回収し、室温で乾燥させた後、真空嵩密度を測定した。予備加熱工程、一方加熱工程、逆一方加熱工程、両面加熱工程のうち、両面加熱工程のみを抜いた条件で加熱した前記発泡粒子の真空嵩密度(D1)と、逆一方工程、及び両面加熱工程を抜いた条件で加熱した前記発泡粒子の真密度(D1’)を測定し、次式より二次発泡力を算出した。
逆一方加熱時の二次発泡力(E1)=(D2)/(D1
一方加熱時の二次発泡力(E1’)=(D2)/(D1’)
【0057】
〔ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の製造〕
ポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、耐圧容器内にて空気加圧し、約0.20MPaの内圧を付与した。得られた該発泡粒子を発泡粒子圧縮タンクに充填し圧縮圧0.12MPaで圧縮比1.3とし、ほぼこの圧力下で400mm×300mm×40mmの寸法を有する直方体形状の金型型窩内に圧縮された二段発泡粒子を移送した。この後、系の圧力を大気圧に開放し、水蒸気による加熱により型内発泡成形した。
【0058】
加熱は予備加熱を3秒(移動型、固定型のドレン弁を開いた状態)、一方加熱を3秒、逆一方加熱を3秒、両面加熱を10秒(両面加熱時の加熱圧は0.28MPa(G))で行った。加熱工程を完了後、予冷(ドレン弁を閉じた状態で冷却)を行い、次に水冷を行った後、離型し、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得た。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を25℃で2時間静置し、次いで75℃に温調した恒温室内に15時間静置した後、取り出し、25℃で4時間以上放冷した。
【0059】
〔表面性評価〕
得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面を観察し、10cm2当たりの粒子間の1mm2以上の陥没や間隙の平均個数を求めて以下の判定とした。
○・・・・100箇所未満
×・・・・100箇所以上
【0060】
〔融着性評価〕
得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体をカッターナイフで前記ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の厚み方向に約5mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部からポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を破断し、破断面を観察して、破壊された発泡粒子の割合を求めて以下の判定とした。
○・・・・70%以上
×・・・・70%未満
【0061】
〔融着の均一性評価〕
得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の中でも融着不良が発生しやすい充填口付近にある発泡粒子を軽く爪で引掻き、脱離した発泡粒子の数を計測し、以下の判定とした。
○・・・・脱離した発泡粒子数が1つ以下
×・・・・脱離した発泡粒子数が2つ以上
【0062】
〔ヒケ評価〕
得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の外周部と内部の厚みをデジタルノギスで測定し、下記の式よりヒケ度(mm)を算出し、以下の判定とした。
ヒケ度=(外周部厚み)―(内部厚み)
○・・・・ヒケ度が2mm未満
×・・・・ヒケ度が2mm以上
【0063】
〔DSC比の測定〕
示差走査熱量計を用いて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温したときに得られる融解ピークのうち低温側の融解ピーク熱量Qlと、高温側の融解ピーク熱量Qhを測定し、次式よりDSC比を算出した。
DSC比=Qh/(Ql+Qh)×100
【0064】
(実施例1)
基材樹脂として融点が141℃、MIが6g/10分、Mw/Mn=4.7であるエチレン−プロピレンランダム共重合体を用いた。この樹脂100重量部に対し、発泡核剤としてタルクを0.03重量部添加してドライブレンドし、押出機内で溶融混練した後、円形ダイよりストランド状に押出し、水冷後、カッターで切断し、一粒の重量が1.2mg/粒、ほぼ円柱形状の樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子100重量部、水200重量部、塩基性第三リン酸カルシウム0.5重量部、アルキルスルフォン酸ソーダ0.01重量部を耐圧オートクレーブ中に仕込み、さらにブタン14.3重量部を仕込み、内容物を発泡温度である143.4℃まで加熱した。その後、オートクレーブ下部のバルブを開き、内容物を大気圧下に放出して嵩密度49.2g/Lの一段発泡粒子を得た。得られた一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させたのち、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を約0.38MPaにしたのち、絶対圧約0.18MPaの蒸気と接触させることで二段発泡させた。得られた二段発泡粒子の嵩密度は16.7g/L、DSC比は24.5%であった。
【0065】
二段発泡させた発泡粒子を再度、耐圧容器内にて空気で加圧し、約0.20MPaの内圧を付与した。得られた二段発泡粒子を発泡粒子圧縮タンクに充填し圧縮圧0.12MPaで圧縮比1.3とし、ほぼこの圧力下で400mm×300mm×40mmの寸法を有する直方体形状の金型型窩内に圧縮された二段発泡粒子を移送した。この後、系の圧力を大気圧に開放し、水蒸気による加熱により型内発泡成形した。
【0066】
加熱は予備加熱を3秒(移動型、固定型のドレン弁を開いた状態)、一方加熱を3秒、逆一方加熱を3秒、両面加熱を10秒(両面加熱時の加熱圧は0.28MPa(G))で行った。加熱工程を完了後、予冷(ドレン弁を閉じた状態で冷却)を行い、次に水冷を行った後、離型し、ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体を得た。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の密度は21.7g/Lであった。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価、ヒケ評価を行った。
【0067】
(実施例2)
基材樹脂として融点が137℃、MIが7g/10分、Mw/Mn=3.5であるエチレン−プロピレンランダム共重合体を用いた。この樹脂100重量部に対し、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.02重量部を順に添加してドライブレンドし、押出機内で溶融混練した後、円形ダイよりストランド状に押出し、水冷後、カッターで切断し、一粒の重量が1.2mg/粒、ほぼ円柱形状の樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子100重量部、水200重量部、塩基性第三リン酸カルシウム1.0重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.05重量部を耐圧オートクレーブ中に仕込み、さらに炭酸ガス6.3重量部を仕込み、内容物を発泡温度である142℃まで加熱した。このときの圧力は2.6MPaであった。その後炭酸ガスを圧入試、発泡圧力を3.0MPaに調整し、すぐにオートクレーブ下部のバルブを開き、内容物を大気圧下に放出して嵩密度48.3g/Lの一段発泡粒子を得た。得られた一段発泡粒子を60℃にて6時間乾燥させたのち、耐圧容器内にて、加圧空気を含浸させて、内圧を約0.38MPaにしたのち、絶対圧約0.18MPaの蒸気と接触させることで二段発泡させた。得られた二段発泡粒子の嵩密度は18.0g/L、DSC比は21.4%であった。
【0068】
得られた発泡粒子を耐圧容器内にて空気加圧し、約0.20MPaの内圧を付与した。得られた発泡粒子を実施例1と同様に型内発泡成形した。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の密度は24.1g/Lであった。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価、ヒケ評価を行った。
【0069】
【表1】

【0070】
(比較例1)
耐圧オートクレーブ中に仕込むブタン量を22.3重量部、発泡温度を138.1℃とする以外は実施例1と同様にして嵩密度17.5g/L、DSC比23.1%の一段発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を二段発泡せずに耐圧容器内にて空気で加圧し、約0.20MPaの内圧を付与した。得られた発泡粒子を実施例1と同様に型内発泡成形した。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の密度は22.8g/Lであった。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価、ヒケ評価を行った。
【0071】
(比較例2)
基材樹脂の融点が147.7℃、Mw/Mn=5.4であることと、耐圧オートクレーブ中に仕込むブタン量を22.3重量部、発泡温度を144.9℃とする以外は実施例1と同様にして嵩密度16.8g/L、DSC比20.3%の一段発泡粒子を得た。得られた発泡粒子を二段発泡せずに耐圧容器内にて空気で加圧し、約0.20MPaの内圧を付与した。得られた発泡粒子を実施例1と同様に型内発泡成形した。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の密度は22.4g/Lであった。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価、ヒケ評価を行った。
【0072】
(比較例3)
実施例2と同様にして嵩密度48.3g/Lの一段発泡粒子を得た。得られた発泡粒子に付与する内圧を約0.42MPa、加熱する水蒸気の絶対圧を0.15MPaとする以外は実施例1と同様にして、嵩密度16.0g/L、DSC比21.0%の二段発泡粒子を得た。得られた二段発泡粒子を耐圧容器内にて空気で加圧し、約0.20MPaの内圧を付与した。得られた発泡粒子を実施例1と同様に型内発泡成形した。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の密度は24.5g/Lであった。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価、ヒケ評価を行った。
【0073】
(比較例4)
実施例2と同様にして嵩密度48.3g/Lの一段発泡粒子を得た。得られた発泡粒子に付与する内圧を約0.45MPa、加熱する水蒸気の絶対圧を0.14MPaとする以外は実施例1と同様にして、嵩密度15.3g/L、DSC比20.6%の二段発泡粒子を得た。得られた二段発泡粒子を耐圧容器内にて空気で加圧し、約0.20MPaの内圧を付与した。得られた発泡粒子を実施例1と同様に型内発泡成形した。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の密度は24.8g/Lであった。得られたポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体の表面性評価、融着性評価、融着の均一性評価、ヒケ評価を行った。
【0074】
実施例1、2では、ポリオレフィン系樹脂発泡粒子は、表面性、融着性、均一融着性に優れ、ヒケも無い良好な型内発泡成形体が得られた。しかし、比較例1、2では、融着性に優れ、ヒケも無かったものの、表面性、及び均一融着性が不十分であったため、良好な型内発泡成形体が得られた。また、比較例3、4では、表面性、融着性、均一融着性は優れていたものの、大きなヒケが発生したため、良好な型内発泡成形体が得られなかった。
【0075】
従って、1.00<(E1)<1.25、且つ1.00<(E1’)<1.25を満たす発泡粒子を型内発泡成形することにより、融着性、表面性、均一融着性に優れ、ヒケの無い良好なポリオレフィン系型内発泡成形体が得られることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0076】
1 ポリオレフィン系樹脂型内発泡成形体、
4 表面面圧計
5 変換機
6 金型
7 充填機
21 固定型蒸気室
22 固定型蒸気調圧弁
23 固定型蒸気室ドレン弁
31 移動型蒸気室
32 移動型蒸気調圧弁
33 移動型蒸気室ドレン弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形装置に備えてなる固定型と移動型から構成される成形空間に、該成形空間容積の80%充填し、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程をそれぞれ3秒以上、且つ一方加熱工程時の前記成形空間内圧力が0.01MPa(G)以上となるように行った後、金型を冷却してポリオレフィン系樹脂発泡粒子を取り出し、乾燥後得られる該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の真空嵩密度(D1’)と、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度(D2)で表される一方加熱終了後の前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力((D2)/(D1’))が1.00<(D2)/(D1’)<1.25であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
0.18MPa以上0.22MPa以下の所定の内圧が付与されたポリオレフィン系樹脂発泡粒子を、型内発泡成形装置に備えてなる固定型と移動型から構成される成形空間に、該成形空間容積の80%充填し、(1)予備加熱工程、(2)一方加熱工程、(3)逆一方加熱工程をそれぞれ3秒以上、且つ一方加熱工程時の成形空間内圧力が0.01MPa(G)以上、逆一方加熱工程時の成形空間内圧力が0.02MPa(G)以上となるように行った後、金型を冷却してポリオレフィン系樹脂発泡粒子を取り出し、乾燥後得られる該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の真空嵩密度(D1)と、該ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の嵩密度(D2)で表される逆一方加熱終了後の前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子の二次発泡力((D2)/(D1))が1.00<(D2)/(D1)<1.25であることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂発泡粒子が、ポリオレフィン系樹脂粒子、水、分散剤、発泡剤を含んでなる分散物を耐圧容器内に入れて、所定の温度まで加熱し、加圧下のもと、耐圧容器内の分散物を耐圧容器内よりも低圧雰囲気に放出して得られた一次発泡粒子に、発泡能を付与して一段発泡粒子の樹脂融点以下の温度に加熱して更に発泡させて得られる多段発泡粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡粒子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−209286(P2010−209286A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59763(P2009−59763)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】