説明

ポリオレフィン系樹脂積層発泡シートの押出成形による製法

【課題】ポリオレフィン系発泡樹脂層と、充填材を含有した非発泡ポリオレフィン系樹脂層を積層する押出積層発泡成形において、冷却工程を改良して、シート外観が優れシートの表面が平滑な、ポリオレフィン系樹脂積層発泡シートを製造する。
【解決手段】発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3の冷却ロールをベルト駆動により駆動させることを特徴とする積層発泡シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂積層発泡シートの押出成形による製法に関し、詳しくは、剛性や耐衝撃性及び容器成型性や軽量性などに優れたポリオレフィン系多層発泡シートを製造するに当たり、多層シートの押出し後の冷却方法を特定することにより、シート外観とシート表面性に優れたポリオレフィン系多層発泡シートを製造する方法、及びその製法により得られる、シートの外観と表面性が良好で連続気泡率の低い多層発泡シートに係るものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂発泡資材は、従前からポリスチレン系発泡材料やポリウレタン系発泡材料において汎用されているが、近年ではポリオレフィン系樹脂発泡材料が、その経済性や環境問題適応性などから重用されるようになっている。
そのうちの、ポリオレフィン系樹脂発泡シートは、最近においては、包装材料や生活用品など各種の用途に広く利用され、また、各種の容器やトレーなどを製造するための成型材料として好適に使用されている。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂に代表されるポリオレフィン系樹脂発泡シートを製造する方法としては、ポリオレフィン系樹脂を押出成形機内で発泡剤と溶融混練し、この発泡性の溶融混練物を押出成形機の先端のダイスより押出して発泡性溶融混練物を発泡させる押出発泡法がよく知られている。
特に最近では、更なる容器成型性の向上や、剛性と耐熱性などの改良のために、発泡シートを多層化して高機能化する手法が用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
かかる押出発泡シート成形において、微細な独立発泡気泡を形成し、表面特性を良好にするには、押出発泡後の冷却工程も重要な要因のひとつとして係わっている。
そして、押出発泡成形による発泡シートの成形には、サーキュラーダイスやTダイなどを用いてシート成形されるが、例えば、Tダイにより作成される発泡シートにおいては、生成した気泡の成長を微細な状態で冷却して停止させ、更にコルゲーションといわれる、波打ち現象を解消するために、特殊な冷却設備や冷却手法が必要であるとされて、代表例として、ダイ出口に近接して引取ロールを設置し、その後に冷却ロールを設ける方法(特許文献2)、ダイ出口に近接して、多段の小径冷却ロールを設けた装置(特許文献3)、ダイス出口後に予備冷却ロールを設けて冷却媒体を吹き付ける方法(特許文献4)、などが提示されている。
【0005】
押出多層発泡シートの製造における冷却手法の改良としては、発泡性ガスを含有し発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂と、充填材を含有し非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物の一面を冷却ロールで冷却し、他面に冷却媒体を吹き付ける積層発泡シートの製造方法が、僅かに提案されており(特許文献5)、表面が平滑で美麗な積層発泡シートを製造し得るが、冷却媒体によりダイスの温度が低下してダイス出口にて溶融樹脂が固化し、冷却媒体の吹き付けにより押出された溶融シートに波打ち現象が少し残存するなどの問題を多少呈していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−252715号公報(特許請求の範囲を参照)
【特許文献2】特開平9−76331号公報(要約を参照)
【特許文献3】特開2000−154267号公報(要約を参照)
【特許文献4】特開2001−347560号公報(要約を参照)
【特許文献5】特開平9−85807号公報(要約を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術において前述したように、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを押出成形により製造する際に、微細な独立発泡気泡を形成し、表面特性を良好にするには、押出発泡後の冷却工程も重要な要因のひとつとして係わっている。
そして、押出発泡成形による単層の発泡シートの成形においては、段落0004に記載したように、このような観点から、冷却ロールなどの冷却工程における改良提案は多数なされているが、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを押出積層発泡成形により多層化する場合においては、段落0005に記載したように、微細な独立発泡気泡を形成し、表面特性を良好にする観点からの、冷却工程の検討改良は未だ殆どなされていない。
【0008】
本発明は、このような技術状況を鑑みて、ポリオレフィン系樹脂発泡シートを押出積層発泡成形により多層化するに際して、押出発泡後の冷却工程及び冷却ロールの検討改良をなして、オレフィン系樹脂積層発泡シートにおいて、微細な独立発泡気泡を形成し、表面特性を良好にする手法を開発することを、発明が解決すべき課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、かかる発明の課題を解決することを目指して、冷媒吹き付け手法や冷却ロールの配置態様或は冷却ロールの多段化作用や引取りロールによるテンション条件など多観点から、種々に考察し、実験的な実証を踏まえ、その過程において、冷却ロールのベルトやチェーンなどの駆動手段が発泡シートの表面性状や気泡状態に微妙な影響をもたらし、また、各ロールの駆動関係もそれらに関係することが認識でき、冷却ロールの駆動に特定の駆動伝達具を使用し、各冷却ロールを特定の連動状態に置くことにより、前記の発明の課題が解決されることを知見するに至り本発明の実現となった。
【0010】
その基本的な手法は、冷却ロールの駆動伝達具にベルトを使用し、かつ、第1及び第2冷却ロールを連動駆動させ、付加的に第3冷却ロール以降の後続の冷却ロールも連動駆動させる、新規で特異的な手段である。
かくして、基本発明は、発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3の冷却ロールをベルト駆動により駆動させる、積層発泡シートの製造方法となる。
【0011】
また、第2の基本発明としては、上記の第1の基本発明において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3以降の後続の冷却ロールもベルト駆動により連動駆動させる、積層発泡シートの製造方法となる。
【0012】
このような基本発明における、冷却ロールの駆動態様は、図1〜5に簡潔に例示されている。
そして、当基本発明により、剛性や耐衝撃性及び容器成型性や軽量性などに優れたポリオレフィン系多層発泡シートを製造するに当たり、シートの外観と表面性が良好で連続気泡率の低い多層発泡シートを製造することが可能となった。
【0013】
かかる基本発明の実施の態様としては、第1及び第2の冷却ロールの駆動速度(m/分)をW1、第3以降の後続の冷却ロールの駆動速度をW2(m/分)とした場合、それらの駆動速度がW1×1.01≧W2≧W1の条件を満たすことであり、冷却ロールが順次交互に逆方向に回転され、全ての冷却ロールの直径が50〜150mmであり、冷却ロールの温度が5〜40℃に設定され、発泡性ガスが炭酸ガスであり、炭酸ガスを含有するポリプロピレン系樹脂(A)の両外面に、充填材を含有する非発泡性ポリオレフィン系樹脂(B)を積層する、各発明の態様である。
また、基本発明の応用の態様としては、基本発明の方法を実施し得る製造装置の発明であり、更に、上記の各積層発泡シートの製造方法により製造され、全体の気泡に対して連続気泡率が20%以下である積層発泡シート、及びその積層発泡シートを成型してなる、ポリオレフィン系樹脂積層容器となる。
【0014】
なお、本発明における構成の各要件(発明の特定事項)の設定の合理性と有意性及びそれらによる発明の効果としての、シート外観などの良好性は、後述する本発明の各実施例のデータにより、更には各実施例と各比較例の対照により実証されている。
そして、本発明における新規な特定の構成の要件及びそれらによる発明の顕著な効果は、前記した各特許文献及び列記していないその他の特許文献を精査しても些かも窺えないものである。
【0015】
以上においては、発明の課題を解決する手段を、本発明が創作される経緯及び本発明の基本的な構成と特徴に沿って概述したので、ここでその発明の全体を明確にするために、発明全体を俯瞰すると、本発明は、次の発明単位群から構成されるものであって、[1]〜[2]の発明を基本的な発明とし、それ以下の発明は、基本的な発明を具体化ないしは実施の態様化更には応用の態様とするものである。(なお、発明群全体をまとめて「本発明」という。)
【0016】
[1]発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3の冷却ロールをベルト駆動により駆動させることを特徴とする積層発泡シートの製造方法。
[2]発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3以降の後続の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させることを特徴とする積層発泡シートの製造方法。
【0017】
[3]第1及び第2の冷却ロールの駆動速度(m/分)をW1、第3以降の後続の冷却ロールの駆動速度をW2(m/分)とした場合、それらの駆動速度がW1×1.01≧W2≧W1の条件を満たすことを特徴とする、[1]又は[2]における積層発泡シートの製造方法。
[4]冷却ロールが順次交互に逆方向に回転されることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかにおける積層発泡シートの製造方法。
[5]全ての冷却ロールの直径が50〜150mmであることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかにおける積層発泡シートの製造方法。
[6]冷却ロールの温度が5〜40℃に設定されていることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかにおける積層発泡シートの製造方法。
[7]発泡性ガスが炭酸ガスであり、炭酸ガスを含有するポリプロピレン系樹脂(A)の両外面に、充填材を含有する非発泡性ポリオレフィン系樹脂(B)を積層することを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかにおける積層発泡シートの製造方法。
【0018】
[8]発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する装置において、ダイスを備えた押出発泡成形機、ベルト駆動により連動駆動させる第1及び第2の冷却ロール、ベルト駆動により駆動させる第3の冷却ロール又はベルト駆動により連動駆動させる第3以降の後続の冷却ロール、引取りロールが設置されていることを特徴とする積層発泡シートの製造装置。
[9][1]〜[7]のいずれかにおける積層発泡シートの製造方法により製造され、全体の気泡に対して連続気泡率が20%以下であることを特徴とする積層発泡シート、及びその積層発泡シートを成型してなる、ポリオレフィン系樹脂積層容器。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、中心層に発泡樹脂層を、その両外側に特に剪断発熱の大きい充填材を含有した非発泡樹脂層を配した場合などの押出発泡成形の多層化において、剛性や耐衝撃性及び容器成型性や軽量性などに優れたポリオレフィン系多層発泡シートを製造するに当たり、シートの両表面(発泡層と非発泡層の両面)の外観と表面性が良好で連続気泡率の低い多層発泡シートを製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における、ダイスから押出され発泡された、ポリオレフィン系樹脂多層発泡シートを冷却工程において、冷却ロールにて冷却する状態を例示する模式図である。
【図2】本発明における、ポリオレフィン系樹脂多層発泡シートを冷却ロールにて冷却する状態を例示する模式図である。
【図3】本発明における、ポリオレフィン系樹脂多層発泡シートを冷却ロールにて冷却する状態を例示する模式図である。
【図4】本発明における、ポリオレフィン系樹脂多層発泡シートを冷却ロールにて冷却する状態を例示する模式図である。
【図5】本発明における、ポリオレフィン系樹脂多層発泡シートを冷却ロールにて冷却する状態を例示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明については、課題を解決するための手段として、本発明の基本的な構成と特徴に沿って前述したが、以下においては、前述した本発明群の発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に詳しく説明する。
【0022】
1.発泡性ガスを含有する溶融ポリオレフィン系樹脂(A)
本発明に用いられる溶融ポリオレフィン系樹脂(A)は、代表的にポリプロピレン系樹脂が使用されるが、他のポリオレフィン系樹脂の使用も好適である。
ポリプロピレン系樹脂としては、任意の公知のポリプロピレン系樹脂が用いられる。具体的には、ポリプロピレン単独の樹脂或はエチレンなどの他のα−オレフィンとの共重合体である。
【0023】
なお、発泡による気泡形状の維持の観点から溶融張力Yが、Y >7.4446 (MFR)−0.7419を満たすポリプロピレンが好ましい。ここで、7.4446(MFR)−0.7419の数式は、一般的な分子量分布を有するポリプロピレンのMFRと溶融張力の依存性を示した式であり、一般に発泡用ポリプロピレンとは本数式よりも高い溶融張力を示す。それを得る方法として、ポリプロピレンを電子線照射し、長鎖分岐を付与したり、パーオキサイドと架橋モノマーの存在下に押出機内で変性するにことによって長鎖分岐を付与したり、多段重合により高分子量の成分を付与して溶融張力を向上させるといった方法が挙げられる。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂(A)は、上記の高溶融張力ポリプロピレン単体のみならず、一般的なポリプロピレンも使用され、発泡性を損なわない範囲において、ポリエチレン、ポリスチレン、エラストマーなどその他のポリマー成分を含んでもよく、それ以外にもタルク、炭酸カルシウム、シリカなどの充填材、必要に応じて一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、例えば、酸化防止剤、中和剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、着色剤、難燃剤などを配合することができる。
【0025】
2.発泡性ガス及び発泡作用
本発明に使用される発泡性ガスは、揮発性炭化水素やエーテルなどの通常の発泡性ガスが使用されるが、特に炭酸ガスが好ましく使用される。
炭酸ガスを含有させるための方法としては、大別して押出機内に直接炭酸ガスを注入する方法と、化学的に熱分解し炭酸ガスが発生する化学発泡剤を予め添加して、押出機内で混錬する方法が挙げられる。
【0026】
押出機内に直接炭酸ガスを注入する方法は、押出機シリンダーにガス供給口が設けられており、ポリプロピレン系樹脂を可塑化した段階で、所定の圧力にてダイヤフラム式定量ポンプなどで炭酸ガスを圧縮注入し、その後の押出機スクリューにて混錬し、ガスを拡散する方法である。この場合において、発泡核剤として、タルク、炭酸カルシウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム及びこれらの混合物を加えることが好ましい。
また、化学的に熱分解し炭酸ガスが発生する化学発泡剤を予め添加して、押出機内で混錬する方法は、押出機にポリプロピレン系樹脂を供給する段階において、マスターバッチの形態で化学発泡剤をドライブレンドなどの方法で添加しておき、押出機内で可塑化混錬しつつ、化学発泡剤を分解し、溶融ポリプロピレンに炭酸ガスを含有せしめる方法である。
【0027】
化学発泡剤の種類としては、分解して炭酸ガスなどのガスを発生する、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル、P,P´−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、クエン酸、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。これらの中で、特に炭酸ガスを充分に発生させ、押出機内での残渣が少ないため、クエン酸か重炭酸ナトリウム、若しくはそれらの混合物が好まく使用される。これらはそのままポリプロピレン系樹脂に添加してもよいし、分解温度より低い融点を持つ樹脂、例えば低密度ポリエチレンなどに予め所定濃度で混錬しておき、マスターバッチとしたものを加えておくことが好ましい。
【0028】
炭酸ガスなどの発泡性ガス含有溶融ポリプロピレン系樹脂(A)の発泡倍率(X)は1.5〜6倍であり、好ましくは1.5倍〜4倍である。1.5倍未満では発泡シートとしての軽量性が損なわれ軽量化のメリットが得られない。6倍を超えると微細な気泡の状態が維持できず、連続した気泡が形成され、その後の容器成形で不具合が生じる。発泡倍率は、希望の発泡倍率になるよう、炭酸ガスなどの供給量、若しくは化学発泡剤の量を調整する。
【0029】
3.充填材を含有する溶融ポリオレフィン系樹脂(B)
充填材を含有する樹脂複合材料に使用されるポリオレフィン系樹脂は、通常のポリオレフィン系樹脂であり、代表例として、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、エチレン又は炭素数4以上のα−オレフィン・プロピレンランダムコポリマー、エチレン又は炭素数4以上のα−オレフィン・プロピレンブロックコポリマー、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどが挙げられる。これらの内で、共押出特性から、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ホモポリプロピレン、プロピレンエチレンブロックコポリマー、プロピレンエチレンランダムコポリマー、及びこれらの混合物が好ましく、更に好ましくは、押出し時の発熱を抑える意味からホモポリプロピレン、プロピレンエチレンブロックコポリマー、プロピレンエチレンランダムコポリマー、及びこれらの混合物が使用される。
【0030】
この樹脂複合材料に使用される充填材はポリオレフィン系樹脂の耐衝撃強度や耐熱性などの各種の物性を高めるために使用されるが、かかる充填材としては、無機系と有機系の充填材があり、無機系の充填材としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、ガラスビーズ、ベントナイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、カーボンファイバー、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ハイドロタルサイト、炭素繊維、軽石粉、雲母、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどが挙げられ、有機系の充填材としてはPMMAビーズ、セルロース繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、籾殻、木粉、おから、タピオカ粉末、米粉、ケナフ繊維などが挙げられる。
これらでは、無機系の充填材が物性向上、ハンドリング、臭気、価格の面から好ましく、タルク、炭酸カルシウムが物性向上、価格、臭気の面から更に好ましい。
【0031】
このような充填材は、自動車部品などの産業用部品材料としての用途のみならず、食品容器などの生活用途品においても、曲げ強度、耐衝撃強度、耐熱性、寸法変化率などの物性を高次元で発揮させるために有効である。
また、該樹脂複合材料には、必要に応じて一般的にポリオレフィンに用いられる補助添加成分、例えば、酸化防止剤、中和剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、抗菌剤、着色剤、難燃剤などを配合することができる。
また、50重量%を上限として、本発明の積層発泡シートを得る際に発生する耳ロスやスケルトンなどの粉砕物、若しくは改質材として必要に応じてスチレン系などのエラストマー、石油樹脂やシクロオレフィン系樹脂など、ポリエチレンワックスや石油ワックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABSなどの各種の樹脂材料を、本発明の作用効果を阻害しない範囲で配合することもできる。
【0032】
4.発泡性ガスを含有する溶融ポリオレフィン系樹脂(A)の押出方法
発泡性ガスを含有する溶融ポリオレフィン系樹脂(A)を押し出す押出機としては、任意のシングルタイプの単軸押出機、二軸押出機、ダンデム方式の押出機などが使用できるが、剪断履歴による分子切断を避ける意味からいずれの方式でも単軸押出機が好ましい。 また、それぞれの押出機には温度調整を正確に反映できる点から、水冷やオイル冷却式のシリンダー温調を有する押出機が好ましい。
口径に関しては、得られるシートの発泡層と非発泡層の厚み比率に応じて選ばれるが、小径で高回転により吐出量を上げた場合、剪断発熱による樹脂温度の調整が困難になるために、大きい口径にて低回転で押出すことが好ましい。
設定温度はスクリュー先端樹脂温度が到達できる温度設定が選ばれるが、一般的に、物理発泡剤使用の場合ガス注入口、若しくは化学発泡剤使用の場合にはスクリューの供給部までの設定は150〜250℃程度と高めに設定される。それ以降は、名部温度は徐々に低下され最終的なスクリュー先端部では150〜200℃程度に設定される。スクリュー先端には押出量の安定性の確保、樹脂圧力の調整の観点からギヤポンプなどの定量供給装置を備え付けてもよい。
また、異物や化学発泡剤残渣を取り除くためのスクリーンメッシュを設置してもよい。更には、圧力の調整ために、任意の方法による圧力調整機構、例えばスクリュー先端以降に設置されるねじ式圧力弁などを設置してもよい。
【0033】
5.充填材を含有する溶融ポリオレフィン系樹脂(B)の押出方法
充填材を含有するポリオレフィン系樹脂(B)の樹脂温度は、160〜230℃、好ましくは160℃〜200℃である。これは、押出後ダイス出口からキャストした以降でのシート全体の冷却速度を速めると同時に、発泡層への熱の持込を抑制するためであり、この条件より高いと最終的に得られる発泡積層シートの気泡はやはり粗大化し、連続した気泡が得られ、シートの概観が悪くなる、その後の容器成形性が不良になるなどの弊害がある。また、この温度より低いと、樹脂の流路内での固化が始まってしまい、押し出せなくなってしまう。この温度はスクリューシリンダ設定温度、及びシリンダ冷却条件にて調整される。
スクリュー先端には押出量の安定性の確保と樹脂圧力の調整の観点からギヤポンプなどの定量供給装置を備え付けてもよい。また、異物や化学発泡剤残渣を取り除くためのスクリーンメッシュを設置してもよい。更には、圧力の調整ために、任意の方法による圧力調整機構、例えばスクリュー先端以降に設置されるねじ式圧力弁などを設置してもよい。
【0034】
6.各層の合流
かくして上記の条件で押出された樹脂は、合流部分を通して積層される。これらの層を合流させる方法は、溶融状態で積層する方法であればいずれの手法を用いてもよい。例えば、押出機で溶融混練された後、ダイス内で積層するマルチマニホールド方式や、ダイスに流入させる直前に積層するフィードブロック方式(コンバイニングアダプター方式)などを挙げることができが、好ましくは、フィードブロック方式である。なぜなら、マルチマニフォールド式はダイス出口直前に樹脂が滞留し、ダイ幅全体へ広げる圧損部分が存在し、この部分で樹脂に溶解したガスが気泡を生成し、その結果、発泡シートの気泡は粗大になりやすいためである。
【0035】
合流積層された溶融樹脂は、ダイスへと供給され、ダイス出口より吐出させることにより積層発泡シートが製造される。ダイスの形状は、T型ダイス、コートハンガー型、マルチマニフォールド型のいずれをも使用できるが、樹脂圧力をダイス先端まで維持できる構造上、T型ダイスとコートハンガー型が好ましい。
ダイスの温度調節は一般的に用いられている電気ヒーターで調整されるが、樹脂の温度を一定に保ち、圧力上昇による温度上昇を低下させるために、熱媒循環によって冷却制御されることが好ましい。
【0036】
7.冷却工程
冷却工程は、本発明の主要な構成の要件を成す過程であり、冷却ロール郡の特異な設定に特徴を有している。
ダイスより押出された積層発泡シートは、特定の3段又はそれ以上の冷却ロールによって冷却される。
図1に本発明の基本的な概念図を示す。ダイスの出口に近いところから冷却ロールA,B,Cが3本配置されている。冷却ロールは3本に限らずそれ以上の本数を選択できる。
【0037】
冷却ロールの口径(直径)は任意の口径が選択できるが、1本単位のロールの接触時間を短くするため、50〜150mmが好ましい。50mmより小さい場合、シートを生産している間に、ロールの強度によっては、ロールが撓むなどの弊害が生じる。
冷却ロールは、例えば内部をジャケット式として冷媒を通し、ロール表面の温度を調節して冷却できるようにする必要がある。冷媒としては水や工業用油などが使用できる。
【0038】
冷却温度は任意の温度が選択できるが、5〜40℃が好ましい。5℃未満では結露して、シート表面に跡が残ってしまい、また片面のみが充分に冷却されて、シートの反りの原因となり、更には、シート表面が瞬間的に冷却されてしまい、シート内部の冷却が不足し冷却が不均一となる弊害も生じる。また、40℃を超えると、冷却速度が低下してしまい、気泡が粗大化し連続気泡率が上昇するなどの原因となる。
【0039】
なお、1本目を残りのロール径より小さくすることも可能である。ダイス出口と冷却ロールAのクリアランスは、好ましくは、0.5〜50mmの間で、シートの厚みに応じて選択される。シートの波打ち、いわゆるカーテンウォールの抑制や、冷却速度の確保の観点からして、シートの外観に影響が出ない範囲でクリアランスをより小さくすることが好ましい。
ダイス出口と冷却ロールAの平行位置関係は、ダイス出口の平行線上にロールが来る位置で任意の場所を設定できるが、ダイス出口と冷却ロールとが接触するまでの時間を最短にするために、ダイス出口の線上に冷却ロールAの中心があることが好ましい。
【0040】
冷却ロールB,C及びそれ以降の冷却ロールを配置する場合の位置関係は任意の位置を選択できるが、一例として、図2〜5などが、好ましく例示できる。
【0041】
ポリオレフィン系多層発泡シートを製造するに当たり、本発明の特徴である成形外観のよいポリオレフィン系多層発泡シートを得るためには、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3の冷却ロールをベルト駆動により駆動させる、又は第3の冷却ロールとそれ以降の後続の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させることが必要である。
【0042】
図1においては、第1の冷却ロールAと第2の冷却ロールBはモータ1にベルトを介して連動されており、同速度で逆回転方向に駆動させる。ギヤーやチェーンを介して連動させる方法も考えられるが、ギヤーやチェーンの噛み合い時に発生する微弱な振動がシートの外観にマークとして残ってしまい好ましくなく、スリットの入ったベルトやVベルトなど、ロールに振動を与えない方式のベルと駆動で連動させることが必要である。図1で逆方向に回転させるには、ロール軸に対してギヤを一段設置する、若しくは誘導プーリーを2本のロールとは別個に設置する方法があるが、ギヤの設置はギヤマークがシートに残る可能性があるために、誘導プーリーの設置が好ましい。
また、第1冷却ロールと第2冷却ロールの径が異なる場合、ロールに設置するプーリーの径で、第1冷却ロールと第2冷却ロールの周速度が一定になるよう調整する必要がある。
【0043】
なお、第1,2ロールにてシートの両面を順次冷却する際に、1,2段目のロールを別個に駆動させれば、完全に回転速度が揃わない限り、ロールへの密着を維持しすると(冷却効率を維持する)、ロール間での溶融樹脂にテンションが掛かり、発泡シートがロールに強く押圧されて、発泡セルが潰れてしまうが、この現象を避得る程の精度の回転速度の同一調整は困難である。
【0044】
続いて、第3冷却ロール以降、図1においては第3冷却ロールCのみは、冷却ロールAとBとは別個に駆動させる必要がある。これは、後述するように溶融したシートをロールA,Bに圧着させるテンションを制御するためと、表面が固化されたシートは固化による収縮を開始しており、その速度差を冷却ロールCで緩和するために必要な要件である。即ち、3段目以降の駆動を別個にする理由としては、第1,2の冷却ロールと第3の冷却ロールとの間の収縮率差を吸収するため、回転数の差を設ける必要があるからである。
他の図に記載のように、3段以降に多段の冷却ロールを設置する場合、3段目以降の全てのロールを第3冷却ロールと同周速度で駆動させてもかまわないし、例えば完全に固化が終了した以降のロールはフリーで駆動させてもかまわない。
【0045】
このとき、第1及び第2の冷却ロールの駆動速度(m/分)をW1、第3番目以降の冷却ロールの駆動速度をW2(m/分)とした場合、それらの駆動速度がW1×1.01≧W2≧W1の条件を満たすことが好ましい。この速度の範囲内では、発泡性ガスを含有し押出成形時に発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)の多層シートを生産する場合に、第1,2の冷却ロールと第3の冷却ロールとの間の収縮率差を吸収でき、第1,2冷却ロールへのテンションも外観に影響を与えない程度に最適に掛けることが可能になる。
【0046】
第3段以降の駆動方式は第1,2のロールと同様、モータ2にベルトを介して駆動される。ギヤーやチェーンを介して駆動させると、ギヤーやチェーンの噛み合い時に発生する微弱な振動がシートの外観にマークとして残ってしまい好ましくなく、スリットの入ったベルトやVベルトなど、ロールに振動を与えない方式のベルと駆動で連動させることが必要である。
また、図2〜5に例示のように、第3以降の冷却ロールを、例えば2個ないし3個のロール毎に、各々連動駆動することが好ましい。各ロールの位置関係は、図示のとおり、水平又は斜め或は垂直など適宜に設定される。
【0047】
以上のロールのクリアランスは、最終シートの厚みにより適宜に設定することができる。またロール表面は、フッ素樹脂塗装、ゴムライニング、セラミック塗装などを施すことが可能であるが、ロールの表面を転写して、積層シートの表面を良好な外観にするため硬質クロムメッキが好ましい。
【0048】
以上のように、第1,2の冷ロールをベルトにて連動駆動させ第3以降の冷却ロールをベルトにて駆動させ、その工程が終了する段階では、溶融シートの収縮はまだ完全に開始していないため、同速度での引取りが可能である。
また、この段階でロールAとBの間でテンションを掛けてしまった場合、即ち、後段の引取ロールで引っ張ることによって冷却ロールに圧着させた場合、従前の冷却法では、未だ溶融段階の発泡積層シートのロール間で過大なテンションがかかってしまい、固化していない発泡シート押しつぶすことによって、内部の気泡が潰されてしまう、ないしは気泡を形成した内部のエアーが押しやられてシートが部分的に膨らんでしまうなどの弊害があるが、本発明の上記の方法によると、充填材を含有したポリオレフィン系樹脂を表層に配するポリオレフィン系積層発泡シートはその外観を損なうことなく生産することが可能となる。
【0049】
上述のとおり、本発明の特定の冷却ロール群による冷却工程は、本発明の充填材を含有したポリオレフィン系樹脂を表層に配するポリオレフィン系積層発泡シートの冷却に適し、多層シート表面(両面)のシート外観を良好に成し、緻密な発泡気泡を保持し得るものである。
【0050】
8.冷却後の処理
冷却固化され、その後巻き取り機にて巻き取られる、若しくは裁断機にて所定の寸法にカットされる。
冷却固化後の後処理に関しては、特に制限は無く、例えばコロナ処理、火炎処理、フレーム処理、プラズマ処理などの極性基付与処理工程、コーターロールによる防曇剤や帯電防止剤などのコーティング処理工程、フィルム貼合や印刷及び塗装などの二次加工工程などが使用可能である。
特に、フィルム貼合は、二次成型時前に貼合する熱成形前ラミ法、積層発泡シート成形時の冷却時に貼合する熱ラミ法、一旦積層発泡シートを冷却した後、再度加熱ロールなどで加温して貼合する方法などがあるが、いずれの公知の方法により貼合することが可能である。
貼り合わせるフィルムの種類も、CPPフィルム及びその印刷フィルム、EVOHなどを積層したフィルムなど、特に限定はないが、ポリオレフィン系と接着し易い、貼合面にポリオレフィン系樹脂を配したフィルム、又は塩素化ポリプロピレンや低分子量のポリオレフィンを混合したインクや接着剤などを塗布したフィルムを用いることが好ましい。
【0051】
9.連続気泡と独立気泡
かくして最終的に得られた積層発泡シートは微細な気泡を有して、連続気泡率の低減された良好な積層発泡シートとなり、良好な容器成形などの二次成型性を有する。
ここで連続気泡率と独立気泡率とは、気泡構造において隣接する気泡とどの程度連続、即ち気泡壁が破れて連通しているか、又は、独立しているかを示す指標であり、一般的には実施例で示すような空気比重計を用いて測定される。連続気泡率と独立気泡率の値は、その後の容器成形などの二次加工性に影響を及ぼす。また、形成されたシートの外観にも影響を及ぼす。
好ましい連続気泡率は20%以下であり、更に好ましくは15%以下である。20%を超えると、気泡が連続している部分が窪んだりしてシートの外観が悪化すると共に、二次加工の際の再加熱によって熱膨張が優先的に起こり破膜したりする不具合が生じる。
【0052】
10.積層発泡シートの利用
本発明の積層発泡シートは、容器などの成形品に二次成型するのに極めて好適である。二次成型に用いられる成形法には、任意の公知の方法である真空圧空成形法、真空成形法、プラグ成形法、プレス成形法、両面真空成形法などがある。
このような成形法により得られた成形品としては、文房具ファイル、食品容器、飲料カップ、ディスプレイ筺体、工業産業用部品、トレーなどあらゆる分野に適用可能である。
【実施例】
【0053】
以下においては、実施例によって、比較例を対照しながら、本発明をより詳細に具体的に示して、本発明の構成をより明らかにし、本発明の構成の各要件の合理性と有意性及び本発明の従来技術に対する卓越性を実証する。
【0054】
[実施例1]
(積層発泡体成形方法)
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ニューフォーマー・FB5100 MFR1=0.9g/10分 結晶化温度120.1℃)100重量部に対し、発泡剤としてクラリアント社製発泡剤CF40E(重曹・クエン酸系化学発泡剤)を発泡倍率(X)が3倍になるように添加量を調整してドライブレンドで混ぜ、発泡層の樹脂材料とし、押出温度はスクリュー先端温度で180℃とした。
非発泡層の原料としてポリオレフィン系タルクマスターバッチ(日本ポリプロ社製 ノバテックPP・TX1447MB タルク含有量60重量%)を50重量%、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ノバテックPP・BC3 MFR10g/10分)50重量%をドライブレンドしたもの(MFR2=24g/10分)を用い、スクリュー先端での押出温度は185℃とした。
発泡層を成形する押出機として115φmm、非発泡層を成形する押出機として90φmmの押出機を用いた。層構成が、非発泡層/発泡層/非発泡層、厚み比率が100μm/800μm/100μmになるよう各押出機吐出量を調整し、セレクター(設定温度180℃)にて流路分配を行い、フィードブロックにて各層合流させた。
【0055】
合流された樹脂は、1,300mm幅のTダイ(設定温度180℃)を用いてスリット上に押出した。その後、図1の冷却ロールで冷却固化を行い、巻き取ることによって発泡多層シートの成形を行った。冷却ロールは第1,2ロールは硬質クロームメッキ製で、直径120φ・幅1,400mm、ロール温度15℃、引取速度は10.15m/分であり、第1,2ロールを連動でベルトにより駆動させた。第3ロールは硬質クロームメッキ製で、直径120φ・幅1,400mm、ロール温度15℃、引取速度は10.20m/分であり、ベルトにより駆動させた。ロール速度は各々のロール速度を回転計測計を用いて測定した。結果を表1に示す。外観は非常に平滑なシートだった。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、発泡層を成形する押出機として65φmm、非発泡層を成形する押出機として90φmmの押出機を用い、図2の冷却ロールで冷却固化を行い、巻き取ることによって発泡多層シートの成形を行った。冷却ロールは第1,2ロールは硬質クロームメッキ製で、直径60φ・幅820mm、ロール温度10℃、引取速度は4.51m/分であり、第1,2ロールを連動でベルトにより駆動させた。第3,4ロールは硬質クロームメッキ製で、直径60φ・幅820mm、ロール温度10℃、引取速度は4,54m/分であり、ベルトにより駆動させた。結果を表1に示す。外観は非常に平滑なシートだった。
【0057】
[実施例3]
実施例1において、発泡層を成形する押出機として90φmm、非発泡層を成形する押出機として115φmmの押出機を用い、図3の冷却ロールで冷却固化を行い、巻き取ることによって発泡多層シートの成形を行った。冷却ロールは第1,2ロールは硬質クロームメッキ製で、第1ロールは直径90φmm、第2ロールは直径120φmm、共に幅1,400mm、ロール温度15℃、引取速度は10.52m/分であり、第1,2ロールを連動でベルトにより駆動させた。第3,4ロールは硬質クロームメッキ製で、直径12φ・幅1400mm、ロール温度18℃、引取速度は10.58m/分であり、ベルトにより駆動させた。結果を表1に示す。外観は非常に平滑なシートだった。
【0058】
[比較例1]
実施例1において、第1,2冷却ロールの速度を10.15m/分、第3冷却ロールの速度を10.10m/分とした以外同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
第3ロールの速度が遅いため、第2ロール以降でシートの弛みが生じ、シート幅方向に大きなうねり模様が残存し、外観の悪いシートとなった。
【0059】
[比較例2]
実施例1において、第1,2ロール冷却ロールの速度を10.15m/分、第3冷却ロールの速度を10.27m/分とした以外同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
第3ロールの速度が速いため、、第2ロールと第3ロールの間でテンションが大きくなり、第3ロール近傍で、発泡ガスが寄せ集められて堆積したと思われる大きな膨れが生じ、シートの幅方向に大きな模様が残存し、外観の悪いシートとなった。
【0060】
[比較例3]
実施例1において、第1,2ロール、及び第3冷却ロールの駆動方式をギヤ方式とした以外同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
駆動ロール自体がギヤの影響で振動し、その振動が各ロール部分でシート幅方向へのスジ模様を形成してしまい、外観の悪いシートとなった。
【0061】
[比較例4]
実施例1において、第3冷却ロールの駆動方式のみギヤ方式とした以外同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
比較例3よりは低減したものの、やはり駆動ロール全体がギヤの影響で振動し、その振動が各ロール部分でシート幅方向へのスジ模様を形成してしまい、外観の悪いシートとなった。
【0062】
[実施例4]
実施例1において、第1,2ロール、及び第3冷却ロールのロール温度を40℃とした以外同様の方法で実施した。結果を表1に示す。外観は平滑なシートだった。
[実施例5]
実施例1において、第1,2ロール、及び第3冷却ロールのロール温度を50℃とした以外同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
特に第1ロール接触面が光沢のあるシートとなり、冷却速度が遅くなったため第2ロールの接触面が僅かに荒れた感じのシート外観となった。
【0063】
[比較例5]
(単層発泡体成形方法)
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製 ニューフォーマー・FB5100 MFR1=0.9g/10分 結晶化温度120.1℃)100重量部に対し、発泡剤としてクラリアント社製発泡剤CF40E(重曹・クエン酸系化学発泡剤)を発泡倍率(X)が3倍になるように添加量を調整してドライブレンドで混ぜ、発泡層の樹脂材料とした。押出温度はスクリュー先端温度で180℃とした。発泡層を成形する押出機として90φmmの単軸押出紀を用いた。厚みが1,000μmとなるよう押出機吐出量、引き取り速度を調整し、1,300mm幅のTダイ(設定温度180℃)を用いてスリット上に押出した。
その後、図1の冷却ロールで冷却固化を行い、巻き取ることによって発泡単層シートの成形を行った。冷却ロールは第1,2ロールは硬質クロームメッキ製で、直径120φ・幅1,400mm、ロール温度15℃、引取速度は8.25m/分であり、第1,2ロールを連動でベルトにより駆動させた。第3ロールは硬質クロームメッキ製で、直径120φ・幅1,400mm、ロール温度15℃、引取速度は8.31m/分であり、ベルトにより駆動させた。結果を表1に示す。
外観は平坦ではあるものの、単層発泡シートのため、気泡の影響と思われる細かい凹凸が確認できた。
【0064】
【表1】

【0065】
以上の各実施例のデータに見られるように、本発明の各実施例においては、本発明の構成の要件(請求項1〜3に規定)を満たしているので、シート外観が良好で、シート表面が平滑であった。
各比較例は、本発明の構成の要件の少なくとも一要件は満たしていないので、シート外観が悪く、うねり模様やすじ模様が生じ表面性が不良であった。
そして、各実施例のデータ及び各実施例と各比較例の対照から明らかなように、本発明の構成の要件の合理性と有意性及び従来例に対する卓越性が実証されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3の冷却ロールをベルト駆動により駆動させることを特徴とする積層発泡シートの製造方法。
【請求項2】
発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する方法において、第1の冷却ロールと第2の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させ、第3以降の後続の冷却ロールをベルト駆動により連動駆動させることを特徴とする積層発泡シートの製造方法。
【請求項3】
第1及び第2の冷却ロールの駆動速度(m/分)をW1、第3以降の後続の冷却ロールの駆動速度をW2(m/分)とした場合、それらの駆動速度がW1×1.01≧W2≧W1の条件を満たすことを特徴とする、請求項1又は2に記載された積層発泡シートの製造方法。
【請求項4】
冷却ロールが順次交互に逆方向に回転されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載された積層発泡シートの製造方法。
【請求項5】
全ての冷却ロールの直径が50〜150mmであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載された積層発泡シートの製造方法。
【請求項6】
冷却ロールの温度が5〜40℃に設定されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載された積層発泡シートの製造方法。
【請求項7】
ポリオレフィン系樹脂(A)がポリプロピレン系樹脂であり、発泡性ガスが炭酸ガスであり、炭酸ガスを含有するポリプロピレン系樹脂(A)の両外面に、充填材を含有する非発泡性ポリオレフィン系樹脂(B)を積層することを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載された積層発泡シートの製造方法。
【請求項8】
発泡性ガスを含有し押出成形により発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(A)と、充填材を含有し押出成形により非発泡層を形成するポリオレフィン系樹脂(B)を溶融混練して積層し、成形ダイス出口より押出したシート状物を冷却ロール群で冷却して積層発泡シートを製造する装置において、ダイスを備えた押出発泡成形機、ベルト駆動により連動駆動させる第1及び第2の冷却ロール、ベルト駆動により駆動させる第3の冷却ロール又はベルト駆動により連動駆動させる第3以降の後続の冷却ロール、引取りロールが設置されていることを特徴とする積層発泡シートの製造装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載された積層発泡シートの製造方法により製造され、全体の気泡に対して連続気泡率が20%以下であることを特徴とする積層発泡シート、及びその積層発泡シートを成型してなる、ポリオレフィン系樹脂積層容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−280138(P2010−280138A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135462(P2009−135462)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】