説明

ポリカーボネート組成物、物品及び製造方法

【課題】ウェルドライン強度に優れ、電子装置用の成形部品の製造に有用なポリカーボネート樹脂組成物の提供。
【解決手段】充填材を除外した熱可塑性組成物の総重量を各々基準にして、ポリカーボネート樹脂約10〜約84wt%、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー約0.5〜約40wt%、耐衝撃性改良剤組成物約1〜約40wt%、及びアルキル(メタ)アクリレートポリマー約1〜約50wt%を含む熱可塑性組成物。別の実施形態としては、充填材を除外した熱可塑性組成物の総重量を各々基準にして、ポリカーボネート樹脂約10〜約85wt%、耐衝撃性改良剤組成物約1〜約40wt%、及び耐衝撃性改良アルキル(メタ)アクリレートポリマー約1〜約50wt%を含む熱可塑性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート組成物、製造方法及び物品を形成するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート組成物は、自動車部品から電子装置に至る広範な用途向けの物品及び部材の製造に有用である。多くの利点にもかかわらず、若干のポリカーボネート組成物で達成するのが困難であることが判明した特性の一つはウェルドライン強度である。熱可塑性材料から部品を成形する際には、金型が充填されるのに伴って一方向から流れる溶融プラスチックが別の方向から流れる溶融プラスチックと出会うような金型設計を用いるのが普通である。二つの塊が出会うと、流れが融合して接合部に結合層を形成する。材料が接合する帯域は、工業界ではしばしばウェルドライン又はニットラインといわれる。ウェルドラインでの成形部品の強度及び衝撃強さは、通常は部品の他の部分より低い。この問題は、同一部品にいくつかのウェルドラインが生じる金型内で加工されるもののように、部品が複雑である場合に悪化する。ウェルドライン強度の低下は、部品の設計に厳しい制限を課する。多くの場合、部品全体の寸法はウェルドライン強度によって支配される。この領域での弱さを補償するために安全率を設ける必要があるので、設計者は、部品を必要以上に大きくしたり、或いは本来必要とされるものよりも高性能の(高価な)ポリマーを代わりに使用することを余儀なくされる。
【0003】
ポリカーボネート組成物、特にアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)のような耐衝撃性改良剤を含む組成物におけるウェルドライン強度を向上させようとして、様々なアプローチが使用されてきた。米国特許第3988389号(Margotteら)には、ポリカーボネート/ABSブレンドのウェルドライン強度が、狭く定義されたグラフト比、ゴム粒度、ゴム含有量などを有する特定のグラフトABS配合物の使用で向上することが開示されている。英国特許第1182807号には、熱可塑性ポリカーボネートと、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム及びグラフトポリマー(主としてゴム状アクリレートコポリマー)のような「ゴム状ポリマー材料」を少ない割合で任意に含むポリ(メチルメタクリレート)とのブレンドが記載されている。米国特許第5128409号(Gaggar)には、ポリカーボネート、高ゴムグラフトABS、及び約20wt%以下のポリ(メチルメタクリレート)の組合せを用いて向上したウェルドライン強度が達成されることが開示されている。
【0004】
これらは想定された目的に適するものの、さらに一段と向上したウェルドライン強度を有するポリカーボネート組成物、特に良好な衝撃強さ、軟化温度及び/又は良好な流動特性と共に向上したウェルドライン強度を有する組成物に対するニーズは今なお存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3988389号明細書
【特許文献2】英国特許第1182807号明細書
【特許文献3】米国特許第5128409号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
先行技術の上述その他の欠点は、充填材を除外した熱可塑性組成物の総重量を各々基準にして、ポリカーボネート樹脂約10〜約84重量%(wt%)、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー約0.5〜約40wt%、アルキル(メタ)アクリレートポリマー約1〜約50wt%、及び耐衝撃性改良剤組成物約1〜約40wt%を含んでなる熱可塑性組成物によって解消される。
【0007】
別の実施形態では、上述の成分を混合して熱可塑性組成物を形成することを含んでなる製造方法が提供される。
【0008】
さらに別の実施形態では、上述の熱可塑性組成物を含んでなる物品が提供される。
【0009】
さらに別の実施形態では、上述の熱可塑性組成物を成形、押出又は賦形して物品にすることを含んでなる物品の製造方法が提供される。
【0010】
別の実施形態では、先行技術の上述その他の欠点は、充填材を除外した熱可塑性組成物の総重量を各々基準にして、ポリカーボネート樹脂約10〜約85wt%、耐衝撃性改良剤組成物約1〜約40wt%、及び耐衝撃性改良アルキル(メタ)アクリレートポリマー約1〜約50wt%を含んでなる熱可塑性組成物によって解消される。
【0011】
別の実施形態では、上述の成分を混合して熱可塑性組成物を形成することを含んでなる製造方法が提供される。
【0012】
さらに別の実施形態では、上述の熱可塑性組成物を含んでなる物品が提供される。
さらに別の実施形態では、上述の熱可塑性組成物を成形、押出又は賦形して物品にすることを含んでなる物品の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
理論に束縛されるものではないが、本発明で得られる好ましい結果(即ち、流動特性及び熱特性の望ましいバランスと共に、実際的に向上した衝撃強さ及び強度(特に、ウェルドライン衝撃強さ及び強度)を有する熱可塑性組成物)は、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートーポリシロキサンコポリマー、耐衝撃性改良剤及びポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の組合せの使用で達成し得るものと考えられる。また、意外にも、上述の特性はポリカーボネート樹脂、耐衝撃性改良剤及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の組合せの使用で達成し得ることも見出された。ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネートーポリシロキサンコポリマー、耐衝撃性改良剤及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の組合せは非常に良好な結果を与える。
【0014】
本明細書で用いる「ポリカーボネート」及び「ポリカーボネート樹脂」という用語は、以下の式(1)の繰返しカーボネート構造単位を有する組成物を意味する。
【0015】
【化1】

【0016】
式中、R基の総数の約60%以上は芳香族有機基であり、その残部は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。一実施形態では、各Rは芳香族有機基、例えば以下の式(2)の基である。
【0017】
【化2】

【0018】
式中、A及びAの各々は単環式二価アリール基であり、YはAとAの間に1又は2原子が介在する橋かけ基である。例示的な実施形態では、AとAの間に1原子が介在する。この種の基の非限定的な具体例は、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−C(O)−、メチレン、シクロヘキシルメチレン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンである。橋かけ基Yは、炭化水素基、或いはメチレン、シクロヘキシリデン又はイソプロピリデンのような飽和炭化水素基でもよい。
【0019】
ポリカーボネートは、式HO−R−OHを有するジヒドロキシ化合物の界面反応で製造でき、かかるジヒドロキシ化合物には以下の式(3)のジヒドロキシ化合物が包含される。
【0020】
【化3】

【0021】
式中、Y、A及びAは上述の通りである。また、次の一般式(4)のビスフェノール化合物も包含される。
【0022】
【化4】

【0023】
式中、R及びRは各々ハロゲン原子又は一価炭化水素基を表し、同一でも異なるものでもよく、p及びqは各々独立に0〜4の整数であり、Xは以下の式(5)の基のいずれかを表す。
【0024】
【化5】

【0025】
式中、R及びRは各々独立に水素原子又は一価線状若しくは環状炭化水素基を表し、Rは二価炭化水素基である。
【0026】
好適なジヒドロキシ化合物の若干の非限定的な具体例には、以下のものがある。即ち、レゾルシノール、4−ブロモレゾルシノール、ヒドロキノン、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、1,1−ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)イソブテン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、トランス−2,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)アダマンチン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トルエン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−n−プロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジブロモ−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチレン、1,1−ジクロロ−2,2−ビス(5−フェノキシ−4−ヒドロキシフェニル)エチレン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブタノン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,7−ジヒドロキシピレン、6,6′−ジヒドロキシ−3,3,3′,3′−テトラメチルスピロ(ビス)インダン(「スピロビインダンビスフェノール」)、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタリド、2,6−ジヒドロキシジベンゾ−p−ジオキシン、2,6−ジヒドロキシチアントレン、2,7−ジヒドロキシフェノキサチン、2,7−ジヒドロキシ−9,10−ジメチルフェナジン、3,6−ジヒドロキシジベンゾフラン、3,6−ジヒドロキシジベンゾチオフェン、2,7−ジヒドロキシカルバゾールなど、並びに上述のジヒドロキシ化合物の1種以上を含む組合せである。
【0027】
式(3)で表すことができる種類のビスフェノール化合物の具体例には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以後は「ビスフェノールA」又は「BPA」)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン及び1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパンがある。上述のジヒドロキシ化合物の1種以上を含む組合せも使用できる。
【0028】
枝分れポリカーボネート及び線状ポリカーボネートと枝分れポリカーボネートのブレンドも有用である。枝分れポリカーボネートは、重合時に枝分れ剤を添加することで製造できる。これらの枝分れ剤には、ヒドロキシル、カルボキシル、カルボン酸無水物、ハロホルミル、及び上述の官能基の混合物からなる群から選択される3以上の官能基を含む多官能性有機化合物がある。その具体例には、トリメリト酸、トリメリト酸無水物、トリメリト酸三塩化物、トリス−p−ヒドロキシフェニルエタン、イサチン−ビス−フェノール、トリス−フェノールTC(1,3,5−トリス((p−ヒドロキシフェニル)イソプロピル)ベンゼン)、トリス−フェノールPA(4(4(1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エチル)−α,α−ジメチルベンジル)フェノール)、4−クロロホルミルフタル酸無水物、トリメシン酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸がある。枝分れ剤は、約0.05〜2.0wt%のレベルで添加できる。熱可塑性組成物の所望特性に顕著な影響を及ぼさない限り、あらゆる種類のポリカーボネート末端基がポリカーボネート組成物中で有用であると想定されている。
【0029】
本明細書中で使用される「ポリカーボネート」及び「ポリカーボネート樹脂」は、さらに、ポリカーボネートと、カーボネート連鎖単位を含む他のコポリマーとのブレンドも包含する。特定の好適なコポリマーは、コポリエステル−ポリカーボネートとしても知られるポリエステルカーボネートである。かかるコポリマーはさらに、式(1)の繰返しカーボネート連鎖単位に加えて、以下の式(6)の繰返し単位を含む。
【0030】
【化6】

【0031】
式中、Dはジヒドロキシ化合物から誘導される二価基であり、例えば、C2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20芳香族基、又はアルキレン基が2〜約6の炭素原子(特に、2、3又は4の炭素原子)を含むポリオキシアルキレン基がある。Tはジカルボン酸から誘導される二価基であり、例えば、C2−10アルキレン基、C6−20脂環式基、C6−20アルキル芳香族基又はC6−20芳香族基がある。
【0032】
一実施形態では、DはC2−6アルキレン基である。別の実施形態では、Dは以下の式(7)の芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される。
【0033】
【化7】

【0034】
式中、Rは各々独立にハロゲン原子、C1−10炭化水素基又はC1−10ハロゲン置換炭化水素基であり、nは0〜4である。ハロゲンは、通常は臭素である。式(7)で表すことができる化合物の例には、レゾルシノール、置換レゾルシノール化合物(例えば、5−メチルレゾルシノール、5−エチルレゾルシノール、5−プロピルレゾルシノール、5−ブチルレゾルシノール、5−t−ブチルレゾルシノール、5−フェニルレゾルシノール、5−クミルレゾルシノール、2,4,5,6−テトラフルオロレゾルシノール、2,4,5,6−テトラブロモレゾルシノールなど)、カテコール、ヒドロキノン、置換ヒドロキノン(例えば、2−メチルヒドロキノン、2−エチルヒドロキノン、2−プロピルヒドロキノン、2−ブチルヒドロキノン、2−t−ブチルヒドロキノン、2−フェニルヒドロキノン、2−クミルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラメチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラ−t−ブチルヒドロキノン、2,3,5,6−テトラフルオロヒドロキノン、2,3,5,6−テトラブロモヒドロキノンなど)、及び上述の化合物の1種以上を含む組合せがある。
【0035】
ポリエステルを製造するために使用できる芳香族ジカルボン酸の例には、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4′−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4′−ビス安息香酸、及び上述の酸の1種以上を含む混合物がある。1,4−、1,5−又は2,6−ナフタレンジカルボン酸のような、縮合環を含む酸も存在し得る。特定のジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸又はこれらの混合物である。特定のジカルボン酸は、テレフタル酸とイソフタル酸の重量比が約10:1〜約0.2:9.8であるイソフタル酸とテレフタル酸の混合物からなる。別の特定の実施形態では、DはC2−6アルキレン基であり、Tはp−フェニレン、m−フェニレン、ナフタレン、二価脂環式基又はこれらの混合物である。この部類のポリエステルには、ポリ(アルキレンテレフタレート)が含まれる。
【0036】
特定の一実施形態では、ポリカーボネートはビスフェノールAから誘導される線状ホモポリマーである。この場合、A及びAの各々はp−フェニレンであり、Yはイソプロピリデンである。かかるポリカーボネートは、25℃のクロロホルム中で測定して約0.3〜約1.5デシリットル/グラム(dl/gm)、特に約0.45〜約1.0dl/gmの固有粘度を有し得る。かかるポリカーボネートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して約10000〜約200000、特に約20000〜約100000の重量平均分子量(MW)を有し得る。
【0037】
一実施形態では、ポリカーボネートは薄い物品の製造に適した流動特性を有する。メルトボリュームフローレート(しばしばMVRと略される)は、規定の温度及び荷重におけるオリフィスを通しての熱可塑性樹脂の押出速度の尺度である。薄い物品の形成に適したポリカーボネートは、300℃/1.2kgで測定して約4〜約28グラム/立方センチメートル(g/cm)、特に約18〜約26g/cmのMVRを有し得る。流動性の異なるポリカーボネートの混合物を用いて、全体として望しい流動特性を達成することもできる。
【0038】
好適なポリカーボネートは、界面重合及び溶融重合のような方法で製造できる。界面重合の反応条件は様々に変化し得るが、例示的方法は一般に、苛性ソーダ又は苛性カリ水溶液中に二価フェノール反応体を溶解又は分散し、得られた混合物を適当な水不混和性溶媒に添加し、制御されたpH条件(例えば、約8〜約10)下において、適当な触媒(例えば、トリエチルアミン又は相間移動触媒)の存在下で反応体をカーボネート前駆体に接触させることを含んでいる。最も普通に使用される水不混和性溶媒には、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどがある。好適なカーボネート前駆体には、例えば、臭化カルボニルや塩化カルボニルのようなハロゲン化カルボニル、或いは二価フェノールのビスハロギ酸エステル(例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノンなどのビスクロロギ酸エステル)又はグリコールのビスハロギ酸エステル(例えば、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのビスハロギ酸エステル)のようなハロギ酸エステルがある。上述の種類のカーボネート前駆体の1種以上を含む組合せも使用できる。
【0039】
使用できる相間移動触媒の中には、式(R)X(式中、各Rは同一又は異なるC1−10アルキル基であり、Qは窒素又はリン原子であり、Xはハロゲン原子又はC1−8アルコキシ基又はC6−188アリールオキシ基である。)の触媒がある。好適な相間移動触媒には、例えば、[CH(CH)]NX、[CH(CH)]PX、[CH(CH)]NX、[CH(CH)]NX、[CH(CH)]NX、CH[CH(CH)]NX及びCH[CH(CH)]NX(式中、XはCl、Br、C1−8アルコキシ基又はC6−188アリールオキシ基である。)がある。相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量を基準にして約0.1〜約10wt%である。別の実施形態では、相間移動触媒の有効量は、ホスゲン化混合物中のビスフェノールの重量を基準にして約0.5〜約2wt%である。
【0040】
別法として、ポリカーボネートを製造するために溶融法も使用できる。一般に、溶融重合法でポリカーボネートを製造するためには、バンバリーミキサー、二軸押出機などを用いてエステル交換反応触媒の存在下でジヒドロキシ反応体及びジアリールカーボネートエステル(例えば、ジフェニルカーボネート)を溶融状態で共反応させることで均一な分散液を形成すればよい。揮発性一価フェノールは蒸留によって溶融反応体から除去され、ポリマーは溶融残留物として単離される。
【0041】
コポリエステル−ポリカーボネート樹脂も界面重合で製造できる。ジカルボン酸自体を使用しないで、該酸の反応性誘導体(例えば、対応する酸ハロゲン化物、特に酸二塩化物及び酸二臭化物)を使用することも可能であり、時には好ましくさえある。即ち、例えばイソフタル酸、テレフタル酸又はこれらの混合物を使用する代わりに、二塩化イソフタロイル、二塩化テレフタロイル及びこれらの混合物を使用することが可能である。
【0042】
上述のポリカーボネートに加えて、ポリカーボネートと他の熱可塑性ポリマーとの組合せ、例えばポリカーボネート及び/又はポリカーボネートコポリマーとポリエステルとの組合せを使用することも可能である。本明細書で用いる「組合せ」は、あらゆる混合物、ブレンド、アロイなどを包含する。好適なポリエステルは式(6)の繰返し単位を含んでおり、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、液晶性ポリエステル及びポリエステルコポリマーがある。枝分れ剤(例えば、3以上のヒドロキシル基を有するグリコール或いは三官能性又は多官能性カルボン酸)を組み込んだ枝分れポリエステルを使用することも可能である。さらに、組成物の最終用途に応じ、ポリエステル上に様々な濃度の酸末端基及びヒドロキシル末端基を有することも時には望ましい。
【0043】
一実施形態では、ポリ(アルキレンテレフタレート)が使用される。好適なポリ(アルキレンテレフタレート)の具体例は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4−ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレンナフタノエート)(PEN)、ポリ(ブチレンナフタノエート)(PBN)、ポリ(プロピレンテレフタレート)(PPT)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)(PCT)、及び上述のポリエステルの1種以上を含む組合せである。また、上述のポリエステルに脂肪族二酸及び/又は脂肪族ポリオールから誘導される単位を少量(例えば、約0.5〜約10重量%)含めて得られるコポリエステルも想定されている。
【0044】
ポリカーボネートとポリエステルのブレンドは、約1〜約99wt%のポリカーボネート及びそれに対応して約99〜約1wt%のポリエステル(特に、ポリ(アルキレンテレフタレート))を含有し得る。一実施形態では、ブレンドは約30〜約70wt%のポリカーボネート及びそれに対応して約70〜約30wt%のポリエステルを含んでいる。上述の量は、ポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂の全重量を基準にしている。
【0045】
本熱可塑性組成物はさらに、ポリカーボネートブロック及びポリジオルガノシロキサンブロックを含むポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーを含有し得る。この成分はポリカーボネートブロックを含むが、上述のポリカーボネート樹脂成分の一部と見なすべきではなく、むしろ別個の追加成分と見なすべきである。
【0046】
ポリカーボネートブロックは上述の式(1)の繰返し構造単位を含み、好ましくは式中のRは上述の式(2)を有する。これらの単位は、上述の式(3)のジヒドロキシ化合物の反応で導くことができる。一実施形態では、ジヒドロキシ化合物はビスフェノールAであり、この場合にはA及びAが各々p−フェニレンであり、Yがイソプロピリデンである。
【0047】
ポリジオルガノシロキサンブロックは、以下の式(8)の繰返し構造単位を含む。
【0048】
【化8】

【0049】
式中、各Rは同一又は異なるC1−13一価有機基である。例えば、RはC〜C13アルキル基、C〜C13アルコキシ基、C〜C13アルケニル基、C〜C13アルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル基、C〜Cシクロアルコキシ基、C〜C10アリール基、C〜C10アリールオキシ基、C〜C13アラルキル基、C〜C13アラルコキシ基、C〜C13アルカリール基又はC〜C13アルカリールオキシ基がある。上述のR基の組合せを同一コポリマー中に使用できる。
【0050】
式(8)中のDは、熱可塑性組成物に所望の特性を付与するように選択される。したがって、Dの値は、ポリカーボネート、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)、耐衝撃性改良剤及び他の添加剤の種類及び量をはじめとする、熱可塑性組成物中の各成分の種類及び相対量に応じて変化する。好適なDの値は、当業者であれば、過当な実験を行わなくても本明細書中に教示された指針を用いて決定できる。一般に、Dは2〜約1000、具体的には約10〜約100、さらに具体的には約25〜約80、さらに一段と具体的には約40〜約70の平均値を有する。一実施形態では、Dは約30〜約60の平均値を有し、さらに別の実施形態では、Dは約50の平均値を有する。Dが低い値(例えば、約40未満の値)を有する場合には、比較的多量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを使用する必要が生じることがある。逆に、Dが高い値(例えば、約40を超える値)を有する場合には、比較的少量のポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーを使用する必要が生じることがある。
【0051】
一実施形態では、ポリジオルガノシロキサンブロックは以下の式(9)の繰返し構造単位を含んでいる。
【0052】
【化9】

【0053】
式中、R及びDは上記に定義した通りである。式(9)中のRは、二価C〜C脂肪族基である。式(9)中の各Mは同一でも異なるものでもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜C12アラルキル、C〜C12アラルコキシ、C〜C12アルカリール又はC〜C12アルカリールオキシてあり、nは各々独立に0、1、2、3又は4である。
【0054】
一実施形態では、Mはブロモ又はクロロ、メチルやエチルやプロピルのようなアルキル基、メトキシやエトキシやプロポキシのようなアルコキシ基、或いはフェニルやクロロフェニルやトリルのようなアリール基であり、Rはジメチレン基、トリメチレン基又はテトラメチレン基であり、RはC1−8アルキル、トリフルオロプロピルのようなハロアルキル、シアノアルキル、又はフェニルやクロロフェニルやトリルのようなアリール基である。別の実施形態では、Rはメチル、又はメチルとトリフルオロプロピルの混合物、又はメチルとフェニルの混合物である。さらに別の実施形態では、Mはメトキシであり、nは1であり、Rは二価C〜C脂肪族基であり、Rはメチルである。
【0055】
これらの単位は、次の対応ジヒドロキシポリジオルガノシロキサン(10)から導くことができる。
【0056】
【化10】

【0057】
式中、R、D、M、R及びnは上述の通りである。
【0058】
かかるジヒドロキシポリシロキサンは、以下の式(11)のシロキサンヒドリドと脂肪族不飽和一価フェノールとの間の白金触媒付加を行うことで製造できる。
【0059】
【化11】

【0060】
式中R及びDは前記に定義した通りである。好適な脂肪族不飽和一価フェノールには、例えば、オイゲノール、2−アルキルフェノール、4−アリル−2−メチルフェノール、4−アリル−2−フェニルフェノール、4−アリル−2−ブロモフェノール、4−アリル−2−t−ブトキシフェノール、4−フェニル−2−フェニルフェノール、2−メチル−4−プロピルフェノール、2−アリル−4,6−ジメチルフェノール、2−アリル−4−ブロモ−6−メチルフェノール、2−アリル−6−メトキシ−4−メチルフェノール及び2−アリル−4,6−ジメチルフェノールがある。上述のものの1種以上を含む混合物も使用できる。
【0061】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、任意には上述のような相間移動触媒の存在下で、ジヒドロキシポリシロキサン(10)をカーボネート源及び式(3)のジヒドロキシ芳香族化合物と反応させることで製造できる。好適な条件は、ポリカーボネートを生成する際に有用なものと同様である。好ましくは、コポリマーは0℃未満から約100℃までの温度、好ましくは約25〜約50℃の温度でのホスゲン化で製造される。反応は発熱性であるので、ホスゲン添加速度を使用して反応温度を調節することができる。ホスゲンの所要量は、一般に二価反応体の量に依存する。別法として、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、上述のようなエステル交換反応触媒の存在下でジヒドロキシモノマー及びジアリールカーボネート(例えば、ジフェニルカーボネート)を溶融状態で共反応させることで製造できる。
【0062】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの製造に際しては、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、コポリマーに、したがって組成物に所望の特性を付与するように選択される。したがって、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、難燃性の所望レベル、Dの値、並びにポリカーボネートの種類及び量、耐衝撃性改良剤の種類及び量、ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーの種類及び量、、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の種類及び量をはじめとする、熱可塑性組成物中の各成分の種類及び相対量に応じて変化する。好適なジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、当業者であれば、過当な実験を行わなくても本明細書中に教示された指針を用いて決定できる。通例、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、約8〜約40wt%のポリジメチルシロキサン又は同等なモル量の他のポリジオルガノシロキサンを含むコポリマーを製造するように選択される。ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量はさらに、約15〜約30wt%、特に約15〜約25wt%のポリジメチルシロキサン又は同等なモル量の他のポリジオルガノシロキサンを含むコポリマーを製造するように選択できる。ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマー中のジメチルシロキサン単位の量は、当業者であれば、公知の方法を用いて決定できる。例えば、式(10)の化合物中のジメチルシロキサン単位の重量パーセントは、(テトラメチルシランを含まない)CDClに溶解した均質試料のH NMRスペクトル中において、芳香族プロトンの積分強度をシロキサン鎖上のプロトンと比較することで測定できる。
【0063】
一実施形態では、ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンの量は、ポリカーボネートブロックのモル数に対して約0.1〜約30モル%、さらに具体的には約0.5〜約20モル%、さらに一段と具体的には約0.5〜約12モル%のポリジオルガノシロキサンブロックを含むコポリマーを生成するように選択される。かかるポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは不透明でも、透明でもよい。好適なポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、GE Plastics社から市販されている。
【0064】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーは、(例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、超遠心又は光散乱で測定して)約10000〜約200000、好ましくは約20000〜約100000の重量平均分子量を有し得る。
【0065】
本熱可塑性組成物はさらに、耐衝撃性改良剤組成物を含んでいる。好適な耐衝撃性改良剤には、(i)約10℃未満、さらに具体的には約−10℃未満、さらに具体的には約−40〜約−80℃のTgを有するエラストマー性(即ち、ゴム状)ポリマー基質、及び(ii)エラストマー性ポリマー基質にグラフトされた硬質ポリマー上層を含むエラストマー変性グラフトコポリマーがある。公知の通り、エラストマー変性グラフトコポリマーは、まずエラストマー性ポリマーを用意し、次いでエラストマーの存在下で硬質相の構成モノマーを重合させてグラフトコポリマーを得ることで製造できる。グラフトは、グラフト枝として結合していてもよいし、エラストマーコアにシェルとして結合していてもよい。シェルはコアを単に物理的に封入するだけでもよいし、コアに対して部分的又はほぼ完全にグラフトされていてもよい。
【0066】
エラストマー相として使用するのに適した材料には、例えば、共役ジエンゴム、共役ジエンと約50wt%未満の共重合性モノマーとのコポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)又はエチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM)のようなオレフィンゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、シリコーンゴム、エラストマー性C1−8アルキル(メタ)アクリレート、C1−8アルキル(メタ)アクリレートとブタジエン及び/又はスチレンとのエラストマー性コポリマー、或いは上述のエラストマーの1種以上を含む組合せがある。
【0067】
好ましくは、エラストマー相を製造するためには共役ジエンモノマーが使用され、これらは以下の式(12)を有する。
【0068】
【化12】

【0069】
式中、Xは各々独立に水素、C〜Cアルキルなどである。使用できる共役ジエンモノマーの例は、ブタジエン、イソプレン、1,3−ヘプタジエン、メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ペンタジエン、1,3−及び2,4−ヘキサジエンなど、並びに上述の共役ジエンモノマーの1種以上を含む混合物である。特定の共役ジエンホモポリマーには、ポリブタジエン及びポリイソプレンがある。
【0070】
共役ジエンゴムのコポリマー、例えば、共役ジエン及びそれと共重合し得る1種以上のモノマーの水性ラジカル乳化重合で製造されるものも使用できる。共役ジエンとの共重合に適したモノマーには、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの縮合芳香環構造を含むモノビニル芳香族モノマー、又は以下の式(13)のモノマーがある。
【0071】
【化13】

【0072】
式中、Xは各々独立に水素、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであり、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ又はクロロである。使用できる好適なモノビニル芳香族モノマーの例には、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラクロロスチレンなど、及び上述の化合物の1種以上を含む組合せがある。共役ジエンモノマーと共重合し得るモノマーとしては、スチレン及び/又はα−メチルスチレンが使用できる。
【0073】
共役ジエンと共重合し得る他のモノマーは、イタコン酸やアクリルアミドやN−置換アクリルアミドやメタクリルアミドのようなモノビニルモノマー、無水マレイン酸、マレイミド、N−アルキル置換、アリール置換又はハロアリール置換マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、及び次の一般式(14)のモノマーである。
【0074】
【化14】

【0075】
式中、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ又はクロロであり、Xはシアノ、C〜C12アルコキシカルボニル、C〜C12アリールオキシカルボニル、ヒドロキシカルボニルなどである。式(10)のモノマーの例には、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリル、アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど、及び上述のモノマーの1種以上を含む組合せがある。共役ジエンモノマーと共重合し得るモノマーとしては、n−ブチルアクリレート、エチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートのようなモノマーが通常使用される。しかし、の量はであるのが好ましい。上述のモノビニルモノマー及びモノビニル芳香族モノマーの混合物も使用できる。
【0076】
エラストマー相として使用するのに適した好適な(メタ)アクリレートモノマーは、C1−9アルキル(メタ)アクリレート、特にC4−6アルキルアクリレート(例えば、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなど、及び上述のモノマーの1種以上を含む組合せ)の架橋粒状乳化ホモポリマー又はコポリマーがある。C1−9アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、任意には式(12)、(13)又は(14)のコモノマー15wt%以下と混合して重合させることができる。例示的なコモノマーには、特に限定されないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェネチルメタクリレート、N−シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテル、アクリロニトリル、及び上述のコモノマーの1種以上を含む混合物がある。任意には、5wt%以下の多官能性架橋用コモノマーが存在し得る。かかる架橋用コモノマーには、例えば、ジビニルベンゼン、グリコールビスアクリレートのようなアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、アルキレントリオールトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスアクリルアミド、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、ジアリルアジペート、クエン酸のトリアリルエステル、リン酸のトリアリルエステルなど、並びに上述の架橋剤の1種以上を含む組合せがある。
【0077】
エラストマー相は、連続操作、半バッチ操作又はバッチ操作を用いて、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法又は組合せ重合法(例えば、塊状−懸濁、乳化−塊状、塊状−溶液又はその他の技術)で重合させることができる。エラストマー基質の粒度は重要でない。例えば、乳化重合ゴムラテックスに関しては、約0.001〜約25マイクロメートル、具体的には約0.01〜約15マイクロメートル、さらに一段と具体的には約0.1〜約8マイクロメートルの平均粒度が使用できる。塊状重合ゴム基質に関しては、約0.5〜約10マイクロメートル、具体的には約0.6〜約1.5マイクロメートルの粒度が使用できる。粒度は、簡単な光透過法又はキャピラリーハイドロダイナミッククロマトグラフィー(CHDF)で測定できる。エラストマー相は、粒子状の適度に架橋した共役ブタジエン又はC4−6アルキルアクリレートゴムでもよく、好ましくは70%を超えるゲル含有量を有する。また、ブタジエンとスチレン及び/又はC4−6アルキルアクリレートゴムとの混合物も好適である。
【0078】
エラストマー相は、エラストマー変性グラフトコポリマー全体の約30〜約95wt%、さらに具体的には約40〜約90wt%、さらに一段と具体的には約50〜約85wt%を占め、残部は硬質グラフト相である。
【0079】
エラストマー変性グラフトコポリマーの硬質相は、1種以上のエラストマー性ポリマー基質の存在下で、モノビニル芳香族モノマー及び任意には1種以上のコモノマーからなる混合物をグラフト重合させることで生成できる。硬質グラフト相中には、上述の式(13)のモノビニル芳香族モノマーを使用できる。かかるモノビニル芳香族モノマーには、スチレン、α−メチルスチレン、ジブロモスチレンのようなハロスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ブチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、メトキシスチレンなど、又は上述のモノビニル芳香族モノマーの1種以上を含む組合せがある。
【0080】
好適なコモノマーには、例えば、上述のモノビニルモノマー及び/又は式(10)のモノマーも包含される。一実施形態では、Rは水素又はC〜Cアルキルであり、Xはシアノ又はC〜C12アルコキシカルボニルである。硬質相中で使用するのに適したコモノマーの具体例には、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレートなど、及び上述のコモノマーの1種以上を含む組合せがある。一実施形態では、コモノマーとしてアクリロニトリルが使用される。別の実施形態では、硬質相はメチルメタクリレートを実質的に含まない(即ち、硬質グラフト相を生成するために使用されるモノマーは約5重量%未満のメチルメタクリレートを含む)。
【0081】
硬質グラフト相中でのモノビニル芳香族モノマーとコモノマーとの相対比は、エラストマー基質の種類、モノビニル芳香族モノマーの種類、コモノマーの種類、及び耐衝撃性改良剤の所望特性に応じて広範囲に変化し得る。硬質相は、一般に、90wt%以下、具体的には約10〜約80wt%、さらに具体的には約20〜約70wt%のモノビニル芳香族モノマーを含み、残部はコモノマーである。
【0082】
存在するエラストマー変性ポリマーの量に応じ、エラストマー変性グラフトコポリマーと共に非グラフト硬質ポリマー又はコポリマーの独立した母材相又は連続相が同時に得られることがある。通例、かかる耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤の全重量を基準にして約40〜約95wt%のエラストマー変性グラフトコポリマー及び約5〜約65wt%のグラフト(コ)ポリマーを含んでいる。別の実施形態では、かかる耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤の全重量を基準にして約50〜約85wt%、さらに具体的には約75〜約85wt%のゴム変性グラフトコポリマーを約15〜約50wt%、さらに具体的には約15〜約25wt%のグラフト(コ)ポリマーと共に含んでいる。
【0083】
別の特定の種類のエラストマー変性耐衝撃性改良剤組成物は、1種以上のシリコーンゴムモノマー、式HC=C(R)C(O)OCHCH(式中、Rは水素又はC〜C線状若しくは枝分れヒドロカルビル基であり、Rは枝分れC〜C16ヒドロカルビル基である。)を有する枝分れアクリレートゴムモノマー、第一のグラフトリンクモノマー、重合性アルケニル含有有機物質及び第二のグラフトリンクモノマーから誘導される構造単位を含んでいる。シリコーンゴムモノマーは、例えば、環状シロキサン、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン又はアリルアルコキシシランからなるものでもよく、これらは単独で使用してもよいし、組合せて使用してもよい。かかるシリコーンゴムモノマーには、例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン及び/又はテトラエトキシシランがある。
【0084】
例示的な枝分れアクリレートゴムモノマーには、イソオクチルアクリレート、6−メチルオクチルアクリレート、7−メチルオクチルアクリレート、6−メチルヘプチルアクリレートなどがあり、これらは単独又は組合せて使用される。重合性アルケニル含有有機物質は、例えば、式(9)又は(10)のモノマーがある。かかるモノマーには、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又はメチルメタクリレートや2−エチルヘキシルメタクリレートやメチルアクリレートやエチルアクリレートやn−プロピルアクリレートなどの枝なし(メタ)アクリレートがあり、これらは単独又は組合せて使用される。
【0085】
1種以上の第一のグラフトリンクモノマーは、単独又は組合せて使用される(アクリルオキシ)アルコキシシラン、(メルカプトアルキル)アルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン又はアリルアルコキシシランであり、例えば(γ−メタクリルオキシプロピル)(ジメトキシ)メチルシラン及び/又は(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランである。1種以上の第二のグラフトリンクモノマーは、単独又は組合せて使用されるアリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート又はトリアリルイソシアヌレートのような、1以上のアリル基を有するポリエチレン性不飽和化合物である。
【0086】
シリコーン−アクリレート耐衝撃性改良剤組成物は、乳化重合で製造できる。その場合には、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸のような界面活性剤の存在下で、1種以上のシリコーンゴムモノマーを1種以上の第一のグラフトリンクモノマーと約30〜約110℃の温度で反応させてシリコーンゴムラテックスを生成する。別法として、シクロオクタメチルテトラシロキサンのような環状シロキサン及びテトラエトキシオルトシリケートを、(γ−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシランのような第一のグラフトリンクモノマーと反応させることで、約100ナノメートルないし約2ミクロンの平均粒度を有するシリコーンゴムを得ることができる。次いで、過酸化ベンゾイルのような遊離基生成重合触媒の存在下で、また任意にはアリルメタクリレートのような架橋用モノマーの存在下で、1種以上の枝分れアクリレートゴムモノマーをシリコーンゴム粒子と共に重合させる。次いで、このラテックスを重合性アルケニル含有有機物質及び第二のグラフトリンクモノマーと反応させる。グラフトシリコーン−アクリレートゴム混成物のラテックス粒子を(凝固剤処理による)凝固で水性相から分離し、乾燥して微細粉末にすることで、シリコーン−アクリレートゴム耐衝撃性改良剤組成物を製造できる。この方法は、一般に、約100ナノメートルないし約2マイクロメートルの粒度を有するシリコーン−アクリレート耐衝撃性改良剤を製造するために使用できる。
【0087】
本熱可塑性組成物は、さらにポリ(アルキル(メタ)アクリレート)を含んでいる。ここで、アルキル基は直鎖又は枝分れのものであり、1又は2の炭素原子を有している。一実施形態では、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)はポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)である。PMMAはメチルメタクリレートモノマーの重合で製造でき、このモノマーは(1)アセトンシアノヒドリン、メタノール及び硫酸を反応させること、或いは(2)tert−ブチルアルコールを酸化してメタクロレインに、次いでメタクリル酸にし、続いてメタノールとのエステル化反応を行わせることで誘導される。公知の通り、PMMAホモポリマーは得るのが困難であるので、本発明ではホモポリマー及びメチルメタクリレートとC〜Cアルキルアクリレート(例えば、エチルアクリレート)との各種コポリマーの混合物として商業的に入手して使用する。したがって、本明細書中で使用される「PMMA」はかかる混合物を包含している。かかる混合物は、例えば、V825、V826、V920、V045及びVMの商品名でAtofina社から、またCLG340、CLG356、CLG960、CLG902及びCMG302の商品名でLucite社から市販されている。
【0088】
一実施形態では、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)は耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)、例えば耐衝撃性改良ポリ(メチルメタクリレート)である。耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)は、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)に比べて向上した衝撃強さを有している。好適な耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)は、向上した衝撃強さを有している。例えば、耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)は、ASTM D−256に準拠して室温で測定して約20J/m超、具体的には約25J/m超、さらに具体的には約30J/m超、さらに一段と具体的には約38J/m超のノッチ付アイゾット値を有している。
【0089】
ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の衝撃強さを高めるためには、各種の方法が使用できる。一つの有用な方法は、有効量の共重合性非アルキル(メタ)アクリレート成分を組み込むことである。好適な非アルキル(メタ)アクリレート成分には、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどの縮合芳香環構造を含むモノビニル芳香族モノマー、又は上記の式(13)のモノマー、並びにイタコン酸やアクリルアミドやN−置換アクリルアミドやメタクリルアミドのようなモノビニルモノマー、無水マレイン酸、マレイミド、N−アルキル置換、アリール置換又はハロアリール置換マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、及び上記の一般式(14)の非アルキル(メタ)アクリレートモノマーがある。式(13)の特定の好適なモノマーには、スチレン、3−メチルスチレン、3,5−ジエチルスチレン、4−n−プロピルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチルビニルトルエン、α−クロロスチレン、α−ブロモスチレン、ジクロロスチレン、ジブロモスチレン、テトラクロロスチレンなどがあり、一般式(14)の特定の非アルキル(メタ)アクリレートモノマーには、アクリロニトリル、エタクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、β−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなど、及び上述の化合物の1種以上を含む組合せがある。スチレン及び/又はα−メチルスチレンが使用できる。
【0090】
ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の衝撃強さを高めるために有用な別の方法は、有効量の共重合性C〜Cアルキル(メタ)アクリレート(即ち、アルキル基が3〜約8の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレート)を組み込むことである。例示的なC〜Cアルキル(メタ)アクリレートには、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなど、及び上述のモノマーの1種以上を含む組合せがある。n−ブチルアクリレート及び2−エチルヘキシルアクリレートのようなモノマーが有用である。上述の共重合性モノビニル芳香族モノマー、モノビニルモノマー及びC〜Cアルキル(メタ)アクリレートの混合物も使用できる。
【0091】
共重合性モノビニル芳香族モノマー、モノビニルモノマー及び/又はC〜Cアルキル(メタ)アクリレートの有効量は一般に少なく、例えば、全耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)組成物の約0.1〜約5モル%、具体的には約0.5〜約2モル%である。モノビニル芳香族モノマー、モノビニルモノマー及び/又はC〜Cアルキル(メタ)アクリレートは、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)を生成させるために使用するC〜Cアルキル(メタ)アクリレートモノマーと共に重合させてもよく、或いは別途に重合させてからポリ(アルキル(メタ)アクリレート)と混合してもよい。塊状共重合又は乳化共重合が使用できる。
【0092】
ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の衝撃強さを高めるために有用な別の方法は、上述のような耐衝撃性改良剤成分(即ち、エラストマー成分及び硬質相からなる成分)の有効量を組み込むことである。耐衝撃性改良剤成分は、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)に共有結合(例えば、グラフト)してもよいし、或いは他のやり方でポリ(アルキル(メタ)アクリレート)と混合、ブレンド又はアロイ化してもよい。別法として、別の実施形態では、耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)は、約10℃未満、さらに具体的には約−10℃未満、さらに具体的には約−40〜−80℃のTgを有するエラストマー成分の少量に共有結合(例えば、グラフト)し、或いはそれと混合、ブレンド又はアロイ化したポリ(アルキル(メタ)アクリレート)成分からなっていてもよい。好適なエラストマー成分は上述の通りである。
【0093】
いずれの場合にも、好適なエラストマー成分は、式(14)のモノマー、特に(メタ)アクリレートモノマーから生成できる。エラストマー成分は、C1−9アルキル(メタ)アクリレート、特にC4−6アルキルアクリレート(例えば、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなど、及び上述のモノマーの1種以上を含む組合せ)の架橋粒状乳化ホモポリマー又はコポリマーである。C1−9アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、任意には式(12)、(13)又は(14)のコモノマー15wt%以下と混合して重合させることができる。例示的なコモノマーには、特に限定されないが、ブタジエン、イソプレン、スチレン、メチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、フェネチルメタクリレート、N−シクロヘキシルアクリルアミド、ビニルメチルエーテル、アクリロニトリル、及び上述のコモノマーの1種以上を含む混合物がある。特定のコモノマーはスチレンである。
【0094】
好適な耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)は商業的に入手でき、例えば、HFI−10やHFI−7やHFI7G−100、V052iやVMi、DR及びMI−7の商品名でAtofina社から入手できるもの、並びにST15G6、ST25G6、ST35G6、ST45G6、ST25G7の商品名でLucite社から入手できるものがある。
【0095】
本組成物の有利な特性は、少なくとも一部では、本明細書中に示す指針を用いて各成分の相対量を適切に選択することに由来している。
【0096】
一実施形態では、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーの使用は向上したウェルドライン強度を与え得ることが判明した。これらの組成物は、一般的には、ポリカーボネート約10〜約84wt%、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー約0.5〜約40wt%、耐衝撃性改良剤約1〜約40wt%、及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)とし得るポリ(アルキル(メタ)アクリレート)約1〜約50wt%を含有し得る。
【0097】
別の実施形態では、本組成物は、ポリカーボネート約30〜約80wt%、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー約2〜約35wt%、耐衝撃性改良剤約2.5〜約35wt%、及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)とし得るポリ(アルキル(メタ)アクリレート)約5〜約35wt%を含有し得る。
【0098】
さらに別の実施形態では、本組成物は、ポリカーボネート約45〜約75wt%、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー約2.5〜約30wt%(さらに具体的には約1〜約25wt%)、耐衝撃性改良剤約5〜約35wt%(さらに具体的には約5〜約15wt%)、及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)とし得るポリ(アルキル(メタ)アクリレート)約10〜約35wt%(さらに具体的には約15〜約30wt%)を含む。
【0099】
また、耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)の使用は向上したウェルドライン強度を与え得ることも判明した。これらの組成物は、一般的には、ポリカーボネート約10〜約85wt%、耐衝撃性改良剤約1〜約40wt%、及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)約1〜約50wt%を含有し得る。
【0100】
別の実施形態では、これらの組成物は一般的に、ポリカーボネート約20〜約80wt%、耐衝撃性改良剤約2.5〜約35wt%、及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)約5〜約35wt%を含有し得る。
【0101】
別法として、これらの組成物は一般的に、ポリカーボネート約30〜約75wt%、耐衝撃性改良剤約5〜約35wt%、及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)約10〜約35wt%を含有し得る。さらに一段と具体的には、これらの組成物はポリカーボネート約45〜約75wt%、耐衝撃性改良剤約5〜約15wt%、及び耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)約15〜約30wt%を含有し得る。
【0102】
本熱可塑性組成物はさらに、好ましくは熱可塑性組成物の所望特性に顕著な悪影響を及ぼさないように添加剤を選択することを条件にして、この種の樹脂組成物中に通常混入される各種の添加剤を含有し得る。一実施形態では、添加剤は劣化活性を防止又は実質的に低下させるように処理できる。かかる処理は、シリコーン、アクリル樹脂又はエポキシ樹脂のような実質的に不活性な物質による被覆を含有し得る。処理は、触媒部位を除去、阻止又は中和するための化学的不動態化も含み得る。充填材、補強材及び顔料のような添加剤を処理できる。添加剤の混合物も使用できる。かかる添加剤は、組成物を形成するための成分の混合中の適当な時点で混合できる。
【0103】
好適な充填材又は補強材には、例えば、ケイ酸アルミニウム(ムライト)、合成ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ黒鉛、天然けい砂などのケイ酸塩及びシリカ粉末、窒化ホウ素粉末、ケイ酸ホウ素粉末などのホウ素粉末、TiO、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムなどの酸化物、(無水塩、二水塩又は三水塩としての)硫酸カルシウム、チョーク、石灰石、大理石、合成沈降炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、繊維状タルク、モジュラータルク、針状タルク、層状タルクなどを含めたタルク、ウォラストナイト、表面処理ウォラストナイト、中空及び中実ガラス球、ケイ酸塩球、セノスフィア、アルミノケイ酸塩(アルモスフィア)などのガラス球、硬質カオリン、軟質カオリン、焼成カオリン、ポリマー母材樹脂との適合性を高めるために当技術分野で公知の各種被膜を含むカオリンなどを含めたカオリン、炭化ケイ素、アルミナ、炭化ホウ素、鉄、ニッケル、銅などの単結晶繊維又は「ホイスカー」、石綿、炭素繊維、ガラス繊維(E、A、C、ECR、R、S、D又はNEガラス)などの繊維(連続繊維及び細断繊維を含む)、硫化モリブデン、硫化亜鉛などの硫化物、チタン酸バリウム、亜鉄酸バリウム、硫酸バリウム、重晶石などのバリウム化合物、粒子状又は繊維状アルミニウム、青銅、亜鉛、銅及びニッケルなどの金属及び金属酸化物、ガラスフレーク、フレーク状炭化ケイ素、二ホウ化アルミニウム、アルミニウムフレーク、鋼フレークなどのフレーク状充填材、繊維状充填材(例えば、ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム及び硫酸カルシウム半水塩などの1種以上を含むブレンドから誘導されるもののような無機短繊維)、木材を微粉砕して得られる木粉、セルロースや木綿やシサル麻やジュートのような繊維製品、デンプン、コルク粉、リグニン、粉砕堅果殻、コーン、もみ殻などの天然充填材及び補強材、ポリテトラフルオロエチレンのような有機充填材、ポリ(エーテルケトン)、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリエステル、ポリエチレン、芳香族ポリアミド、芳香族ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリ(ビニルアルコール)などの、繊維を形成し得る有機ポリマーから形成された補強用有機繊維充填材、並びに雲母、粘土、長石、煙塵、フィライト、石英、けい石、パーライト、トリポリ、ケイソウ土、カーボンブラックなどの追加の充填材及び補強材、或いは上述の充填材又は補強材の1種以上を含む組合せがある。
【0104】
充填材及び補強材は、導電性を高めるために金属材料層で被覆したり、或いはポリマー母材樹脂との密着及び分散を向上させるためにシランで表面処理することができる。加えて、補強充填材はモノフィラメント又はマルチフィラメント繊維の形態で供給でき、単独で使用してもよいし、或いは例えば交織又はコア/シース構造、サイド・バイ・サイド構造、オレンジ型構造若しくはマトリックス・アンド・フィブリル構造により、又は繊維製造分野の当業者に公知の他の方法で他の種類の繊維と併用してもよい。好適な交織構造物には、例えば、ガラス繊維−炭素繊維、炭素繊維−芳香族ポリイミド(アラミド)繊維、及び芳香族ポリイミド繊維−ガラス繊維などがある。繊維充填材は、例えば、ロービング、(0〜90度織物などの)繊維織物補強材、連続ストランドマットやチョップトストランドマットやティッシューや紙やフェルトなどの不織繊維補強材、又は編組のような三次元補強材の形態で供給できる。充填材は、一般に、熱可塑性組成物100重量部を基準にして0〜約50重量部の量で使用される。
【0105】
好適な酸化防止剤には、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスフィットやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィットやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリトリトールジホスフィットやジステアリルペンタエリトリトールジホスフィットなどの有機亜リン酸エステル、アルキル化モノフェノール又はポリフェノール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート]メタンなどの、ポリフェノールとジエンとのアルキル化反応生成物、p−クレゾール又はジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、アルキル化ヒドロキノン、ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、アルキリデン−ビスフェノール、ベンジル化合物、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸と一価又は多価アルコールとのエステル、ジステアリルチオプロピオネートやジラウリルチオプロピオネートやジトリデシルチオジプロピオネートやオクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートやペンタエリトリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのチオアルキル又はアリール化合物のエステル、或いは上述の酸化防止剤の1種以上を含む組合せがある。酸化防止剤は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.01〜約1重量部、特に約0.1〜約0.5重量部の量で使用される。
【0106】
好適な熱及び色安定剤には、例えば、トリフェニルホスフィットやトリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィットやトリス(混合モノ−及びジ−ノニルフェニル)ホスフィットなどの有機亜リン酸エステル、トリメチルホスフェートなどのリン酸エステル、或いは上述の熱安定剤の1種以上を含む組合せがある。熱及び色安定剤は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.01〜約5重量部、特に約0.05〜約0.3重量部の量で使用される。
【0107】
好適な二次熱安定剤には、例えば、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(ドデシルチオ)プロピオネート)やペンタエリトリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]やジラウリルチオジプロピオネートやジステアリルチオジプロピオネートやジミリスチルチオジプロピオネートやジトリデシルチオジプロピオネートやペンタエリトリトールオクチルチオプロピオネートやジオクタデシルジスルフィドなどのチオエーテル及びチオエステル、並びに上述の熱安定剤の1種以上を含む組合せがある。二次熱安定剤は、一般に、ポリカーボネート成分及び耐衝撃性改良剤組成物の合計100重量部を基準にして約0.01〜約5重量部、特に約0.03〜約0.3重量部の量で使用される。
【0108】
光安定剤及び/又は紫外線(UV)吸収剤も使用できる。好適な光安定剤には、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールや2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールのようなベンゾトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなど、或いは上述の光安定剤の1種以上を含む組合せがある。光安定剤は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.01〜約10重量部、特に約0.1〜約1重量部の量で使用される。
【0109】
好適なUV吸収剤には、例えば、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアジン、シアノアクリレート、オキサニリド、ベンゾオキサジノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(CYASORB 5411)、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン(CYASORB 531)、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール(CYASORB 1164)、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)(CYASORB UV−3638)、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン(UVINUL 3030)、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3−ビス[(2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]−2,2−ビス[[2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル]プロパン、いずれもが約100ナノメートル未満の粒度を有する酸化チタンや酸化セリウムや酸化亜鉛のようなナノサイズの無機材料など、或いは上述のUV吸収剤の1種以上を含む組合せがある。UV吸収剤は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.1〜約5.0重量部の量で使用される。
【0110】
可塑剤、潤滑剤及び/又は離型剤も使用できる。これらの種類の材料にはかなりの重複が存在しており、例えば、ジオクチル−4,5−エポキシ−ヘキサヒドロフタレートのようなフタル酸エステル、トリス(オクトキシカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリステアリン、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)やヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェートやビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスフェートのような二官能性又は多官能性芳香族リン酸エステル、ポリ−α−オレフィン、エポキシ化大豆油、シリコーン油をはじめとするシリコーン、エステル(例えば、アルキルステアリルエステル(例えば、メチルステアレート、ステアリルステアレート、ペンタエリトリトールテトラステアレートなど)のような脂肪酸エステル)、メチルステアレートと、ポリエチレングリコールポリマー、ポリプロピレングリコールポリマー及びこれらのコポリマーからなる親水性及び疎水性非イオン界面活性剤との混合物(例えば、適当な溶媒中でのメチルステアレートとポリエチレン−ポリプロピレングリコールコポリマーとの混合物)並びにみつろうやモンタンワックスやパラフィンワックスなどのワックスがある。かかる材料は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.1〜約20重量部、特に約1〜約10重量部の量で使用される。
【0111】
「帯電防止剤」という用語は、ポリマー樹脂に加工し、及び/又は材料若しくは物品上に吹き付けることで導電性及び総合物理的性能を向上させ得るモノマー、オリゴマー又はポリマー材料をいう。モノマー帯電防止剤の例には、グリセロールモノステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールトリステアレート、エトキシル化アミン、第一、第二及び第三アミン、エトキシル化アルコール、アルキルスルフェート、アルキルアリールスルフェート、アルキルホスフェート、アルキルアミンスルフェート、ステアリルスルホン酸ナトリウムやドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩、第四アンモニウム塩、第四アンモニウム樹脂、イミダゾリン誘導体、ソルビタンエステル、エタノールアミド、ベタインなど、或いは上述のモノマー帯電防止剤の1種以上を含む組合せがある。
【0112】
例示的なポリマー帯電防止剤には、各々ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコール部分又はポリアルキレンオキシド単位を含む特定のポリエステルアミド、ポリエーテル−ポリアミド(ポリエーテルアミド)ブロックコポリマー、ポリエーテルエステルアミドブロックコポリマー、ポリエーテルエステル又はポリウレタンがある。かかるポリマー帯電防止剤は、例えば、Pelestat 6321(三洋化成工業(株))、Pebax MH1657(Atofina社)、Irgastat P18及びP22(Ciba−Geigy社)のように市販されている。帯電防止剤として使用できる他のポリマー材料は、ポリアニリン(Panipol社からPANIPOL(登録商標)EBとして市販)、ポリピロール及びポリチオフェン(Bayer社から市販)のような本質的に導電性のポリマーであり、これらは高温での溶融加工後にも固有導電性の一部を保持する。一実施形態では、組成物を静電消散性にするため、化学的帯電防止剤を含むポリマー樹脂中に炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、又は上述のものの任意の組合せを使用することもできる。帯電防止剤は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.1〜約10重量部の量で使用される。
【0113】
顔料及び/又は染料添加剤のような着色剤も存在し得る。好適な顔料には、例えば、酸化亜鉛や二酸化チタンや酸化鉄などの金属酸化物及び混合金属酸化物、硫化亜鉛などの硫化物、アルミン酸塩、スルホケイ酸ナトリウムや硫酸ナトリウムやクロム酸ナトリウムなど、カーボンブラック、亜鉄酸亜鉛、群青、ピグメント・ブラウン24、ピグメント・レッド101、ピグメント・イェロー119のような無機顔料、アゾ顔料やジアゾ顔料やキナクリドン顔料やペリレン顔料やナフタレンテトラカルボン酸顔料やフラバントロン顔料やイソインドリノン顔料やテトラクロロイソインドリノン顔料やアントラキノン顔料やアンタントロン顔料やジオキサジン顔料やフタロシアニン顔料やアゾレーキ、ピグメント・ブルー60、ピグメント・レッド149、ピグメント・レッド177、ピグメント・レッド179、ピグメント・レッド202、ピグメント・バイオレット29、ピグメント・ブルー15、ピグメント・グリーン7、ピグメント・イェロー147及びピグメント・イェロー150のような有機顔料、又は上述の顔料の1種以上を含む組合せがある。顔料は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.01〜約10重量部の量で使用される。
【0114】
好適な染料は一般に有機物質であり、例えば、クマリン460(青)やクマリン6(緑)やナイルレッドなどのクマリン染料、ランタニド錯体、炭化水素染料及び置換炭化水素染料、多環式芳香族炭化水素染料、オキサゾール染料やオキサジアゾール染料のようなシンチレーション染料、アリール置換又はヘテロアリール置換ポリ(C2−8)オレフィン染料、カルボシアニン染料、インダントロン染料、フタロシアニン染料、オキサジン染料、カルボスチリル染料、ナフタレンテトラカルボン酸染料、ポルフィリン染料、ビス(スチリル)ビフェニル染料、アクリジン染料、アントラキノン染料、シアニン染料、メチン染料、アリールメタン染料、アゾ染料、インジゴイド染料、チオインジゴイド染料、ジアゾニウム染料、ニトロ染料、キノンイミン染料、アミノケトン染料、テトラゾリウム染料、チアゾール染料、ペリレン染料、ペリノン染料、ビス−ベンゾオキサゾリルチオフェン(BBOT)、トリアリールメタン染料、キサンテン染料、チオキサンテン染料、ナフタルイミド染料、ラクトン染料、近赤外波長の光を吸収して可視波長の光を放出する反ストークスシフト染料などの発蛍光団、7−アミノ−4−メチルクマリンや3−(2′−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリンや2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールや2,5−ビス(4−ビフェニリル)オキサゾールや2,2′−ジメチル−p−クアテルフェニルや2,2−ジメチル−p−テルフェニルや3,5,3″″,5″″−テトラ−t−ブチル−p−キンキフェニル、2,5−ジフェニルフランや2,5−ジフェニルオキサゾール、4,4′−ジフェニルスチルベンや4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)−4H−ピランや1,1′−ジエチル−2,2′−カルボシアニンヨージドや3,3′−ジエチル−4,4′,5,5′−ジベンゾチアトリカルボシアニンヨージドや7−ジメチルアミノ−1−メチル−4−メトキシ−8−アザキノロン−2や7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2や2−(4−(4−ジメチルアミノフェニル)−1,3−ブタジエニル)−3−エチルベンゾチアゾリウムペルクロレートや3−ジエチルアミノ−7−ジエチルイミノフェノキサゾニウムペルクロレートや2−(1−ナフチル)−5−フェニルオキサゾールや2,2′−p−フェニレン−ビス(5−フェニルオキサゾール)やローダミン700やローダミン800やピレンやクリセンやルブレンやコロネンなどの発光染料、又は上述の染料の1種以上を含む組合せがある。染料は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.01〜約10重量部の量で使用される。
【0115】
フォームが所望される場合、好適な発泡剤には、例えば、低沸点ハロ炭化水素や二酸化炭素を発生するもの、室温で固体であるが、その分解温度より高い温度に加熱されると窒素や二酸化炭素やアンモニアガスのようなガスを発生する発泡剤(例えば、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボンアミドの金属塩、4,4′−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなど)、又は上述の発泡剤の1種以上を含む組合せがある。発泡剤は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.5〜約20重量部の量で使用される。
【0116】
添加できる好適な難燃剤には、リン、臭素及び/又は塩素を含む有機化合物がある。特定の用途では、規制上の理由から、非臭素化及び非塩素化のリン含有難燃剤(例えば、有機リン酸エステル及びリン−窒素結合を含む有機化合物)が好ましい。
【0117】
例示的な有機リン酸エステルの1種は、式(GO)P=O(式中、1以上のGは芳香族基であることを条件にして、Gは各々独立にアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリール基又はアラルキル基である。)の芳香族リン酸エステルである。2つのG基が互いに結合して環状基(例えば、ジフェニルペンタエリトリトールジホスフェート)を形成してもよく、この化合物は米国特許第4154775号(Axelrod)に記載されている。他の好適な芳香族リン酸エステルは、例えば、フェニルビス(ドデシル)ホスフェート、フェニルビス(ネオペンチル)ホスフェート、フェニルビス(3,5,5′−トリメチルヘキシル)ホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、ビス(ドデシル)p−トリルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5′−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどである。特定の芳香族リン酸エステルは、各Gが芳香族であるもの(例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェートなど)である。
【0118】
二官能性又は多官能性芳香族リン含有化合物(例えば、以下の式の化合物)も有用である。
【0119】
【化15】

【0120】
式中、Gは各々独立に炭素原子数1〜約30の炭化水素であり、Gは各々独立に炭素原子数1〜約30の炭化水素又は炭化水素オキシであり、Xは各々独立に臭素又は塩素であり、mは0〜4であり、nは1〜約30である。好適な二官能性又は多官能性芳香族リン含有化合物の例には、レゾルシノールテトラフェニルジホスフェート(RDP)、ヒドロキノンのビス(ジフェニル)ホスフェート、ビスフェノールAのビス(ジフェニル)ホスフェート、これらのオリゴマー及びポリマー対応物、などがある。
【0121】
リン−窒素結合を含む好適な難燃性化合物の例には、窒化塩化リン、亜リン酸アミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド及びトリス(アジリジニル)ホスフィンオキシドがある。存在する場合、リン含有難燃剤は、一般に、ポリカーボネート樹脂及び耐衝撃性改良剤の合計100重量部を基準にして約1〜約20重量部の量で存在する。
【0122】
ハロゲン化物質(例えば、以下の式(15)のハロゲン化化合物及び樹脂)も難燃剤として使用できる。
【0123】
【化16】

【0124】
式中、Rはアルキレン結合、アルキリデン結合又は脂環式結合(例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、イソプロピレン、イソプロピリデン、ブチレン、イソブチレン、アミレン、シクロヘキシレン、シクロペンチリデンなど)、或いは酸素エーテル結合、カルボニル結合、アミン結合又は含硫黄結合(例えば、スルフィド、スルホキシド、スルホンなど)である。Rは、芳香族基、アミノ、エーテル、カルボニル、スルフィド、スルホキシド、スルホンなどの基で連結された2以上のアルキレン又はアルキリデン結合からもなり得る。
【0125】
式(15)中のAr及びAr′は、各々独立にフェニレン、ビフェニレン、テルフェニレン、ナフチレンなどの単炭素環式又は多炭素環式芳香族基である。
【0126】
Yは有機基、無機基又は有機金属基であり、例えば、(1)ハロゲン(例えば、塩素、臭素、ヨウ素又はフッ素)、(2)一般式OE(式中、EはXと同様な一価炭化水素基である。)のエーテル基、(3)Rで表される種類の一価炭化水素基、或いは(4)他の置換基(例えば、ニトロ、シアノなど)である。前記置換基は、アリール核当たり1以上(好ましくは2)のハロゲン原子が存在することを条件にして、本質的に不活性である。
【0127】
存在する場合、Xは各々独立に一価炭化水素基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、デシルなどのアルキル基、フェニル、ナフチル、ビフェニル、キシリル、トリルなどのアリール基、ベンジル、エチルフェニルなどのアラルキル基、又はシクロペンチル、シクロヘキシルなどの脂環式基である。一価炭化水素基自体が不活性置換基を含んでいてもよい。
【0128】
dは各々独立に1から、Ar又はAr′からなる芳香族環上の置換可能な水素の数に相当する最大値までの数である。eは各々独立に0から、R上の置換可能な水素の数に相当する最大値までの数である。a、b及びcは各々独立に0を含む整数である。bが0でない場合、aもcも0でなくてよい。そうでない場合には、a又はcが0であってよいが、両方とも0ではない。bが0である場合、芳香族基は直接炭素−炭素結合で結合される。
【0129】
芳香族基Ar及びAr′上のヒドロキシル基及びY置換基の位置は、芳香環上のオルト位、メタ位及びパラ位に変化し得る。また、これらの基は互いに任意の可能な幾何学的関係を取り得る。
【0130】
上記の式の範囲内にはビスフェノールが含まれるが、その代表例は、2,2−ビス(3,5−ジクロロフェニル)プロパン、ビス(2−クロロフェニル)メタン、ビス(2,6−ジクロロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヨードフェニル)エタン、1,2−ビス(2,6−ジクロロフェニル)エタン、1,1−ビス(2−クロロ−4−ヨードフェニル)エタン、1,1−ビス(2−クロロ−4−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジクロロフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ブロモフェニル)エタン、2,6−ビス(4,6−ジクロロナフチル)プロパン、2,2−ビス(2,6−ジクロロフェニル)ペンタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモフェニル)ヘキサン、ビス(4−クロロフェニル)フェニルメタン、ビス(3,5−ジクロロフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(3−ニトロ−4−ブロモフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジクロロ−3−メトキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン及び2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンである。また、上記の構造式の範囲内には、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,3−ジクロロ−4−ヒドロキシベンゼン、ビフェニル(例えば、2,2′−ジクロロビフェニル、ポリ臭素化1,4−ジフェノキシベンゼン、2,4′−ジブロモビフェニル及び2,4′−ジクロロビフェニル)並びにデカブロモジフェニルオキシドなども含まれる。
【0131】
また、ビスフェノールAとテトラブロモビスフェノールAとカーボネート前駆体(例えば、ホスゲン)のコポリカーボネートのようなオリゴマー及びポリマーハロゲン化芳香族化合物も有用である。金属相乗剤(例えば、酸化アンチモン)も難燃剤と併用し得る。存在する場合、ハロゲン含有難燃剤は一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約1〜約50重量部の量で存在する。
【0132】
無機難燃剤、例えば、C2−16アルキルスルホン酸塩(例えば、ペルフルオロブタンスルホン酸カリウム(Rimar塩)、ペルフルオロオクタンスルホン酸カリウム、ペルフルオロヘキサンスルホン酸テトラエチルアンモニウム及びジフェニルスルホンスルホン酸カリウムなど)、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属を反応させて生成される塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩及びバリウム塩)、及び無機酸の複塩(例えば、NaCO、KCO、MgCO、CaCO、BaCO、LiAlF、BaSiF、KBF、KAlF、KAlF、KSiF及び/又はNaAlFなどのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩)も使用できる。
【0133】
滴下防止剤(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフィブリル形成又は非フィブリル形成フルオロポリマー)も使用できる。滴下防止剤は、上述のような硬質コポリマー(例えば、SAN)中に封入することができる。SAN中に封入されたPTFEは、TSANとして知られている。封入フルオロポリマーは、フルオロポリマー(例えば、水分散液)の存在下で封入用ポリマーを重合させることで製造できる。TSANは組成物中に一層容易に分散し得るので、PTFEに比べて顕著な利点を与え得る。好適なTSANは、例えば、封入フルオロポリマーの全重量を基準にして約50wt%のPTFE及び約50wt%のSANからなり得る。SANは、例えば、コポリマーの全重量を基準にして約75wt%のスチレン及び約25wt%のアクリロニトリルからなり得る。別法として、何らかの方法でフルオロポリマーを第二のポリマー(例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂又はSAN)とプレブレンドすることで、滴下防止剤として使用するための凝集材料を形成できる。滴下防止剤は、一般に、充填材を除外した熱可塑性組成物100重量部を基準にして約0.1〜約10重量部の量で使用される。
【0134】
本熱可塑性組成物は、当技術分野で一般に利用できる方法で製造できる。例えば、一実施形態では、Henschel高速ミキサーを用いて、粉末化したポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー、耐衝撃性改良剤、ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)及び/又は他の任意成分を任意にはチョップトガラスストランド又は他の充填材とまずブレンドする。このブレンディングは、他の低剪断方法(例えば、特に限定されないが、手混合)でも達成できる。次いで、ホッパーを介してブレンドを二軸押出機のスロートに供給する。別法として、サイドスタッファーを通して押出機のスロート及び/又は下流側に直接供給することで、1種以上の成分を組成物中に混入できる。かかる添加剤は、所望のポリマー樹脂を用いてマスターバッチ中に配合してから押出機に供給することもできる。押出機は、一般に、組成物を流れさせるために必要な温度より高い温度で運転される。押出物は直ちに水浴中で急冷されてペレット化される。こうして製造されるペレットは、押出物を切断する場合、所望に応じて1/4インチ以下の長さを有し得る。かかるペレットは、以後の成形、賦形又は形成のために使用できる。
【0135】
本熱可塑性組成物は優れた物理的性質を有する。特に、本熱可塑性組成物は向上したウェルドライン強度を有する。ウェルドライン強度は、例えば、二重ゲート金型内で成形され(したがってウェルドラインを生じ)、170ミリメートル(mm)(±10%)の長さ、10mm(±10%)の幅、及び表記のように2又は4mm(±10%)の厚さを有する試験片を用いて測定できる。
【0136】
向上したニットライン強度は、例えば、ウェルドラインを有する試料の向上した引張シャルピー値で表すことができる。本熱可塑性組成物は、二重ゲート金型内で成形された厚さ2mm(±10%)の試験片についてDIN 53448−Bに準拠して室温で測定して約100kJ/m超、具体的には約105kJ/m超、さらに具体的には約110kJ/m超、さらに一段と具体的には約115kJ/m超、さらに一段と具体的には約115kJ/m超の引張シャルピー値を有し得る。
【0137】
特に意外な特徴として、本組成物の使用は、ウェルドラインをもたない試料に対するウェルドラインを有する試料の引張応力の変化(Δ値)を減少させる。即ち、本熱可塑性組成物を二重ゲート金型内で成形した厚さ2mm(±10%)の試験片と、同組成物を単一ゲート金型内で成形した厚さ2mm(±10%)の試験片とは、ISO 527に準拠して室温で測定して、約6MPa未満、具体的には約5.5MPa未満のΔ降伏点引張応力を有し得る。また、本熱可塑性組成物は、二重ゲート金型内で成形した厚さ4mm(±10%)の試験片と単一ゲート金型内で成形したものとでは、ISO 527に準拠して室温で測定して約6MPa未満、具体的には約4MPa未満のΔ降伏点引張応力を有し得る。
【0138】
また、本熱可塑性組成物は、二重ゲート金型内で成形した厚さ4mm(±10%)の試験片をISO 527に準拠して室温で測定して約3.5%超、具体的には約5.0%超の破断点曲げ歪を有し得る。
【0139】
また、本熱可塑性組成物は、二重ゲート金型内で成形した厚さ4mm(±10%)の試験片をISO 527に準拠して室温で測定して約3.8%超、具体的には約2.8%超の破断点引張伸びを有し得る。また、本熱可塑性組成物は、二重ゲート金型内で成形した厚さ2mm(±10%)の試験片をISO 527に準拠して室温で測定して約2.5%超、具体的には約3.0%超、さらに具体的には約3.5%超の破断点引張伸びを有し得る。
【0140】
また、本熱可塑性組成物は、二重ゲート金型内で成形した厚さ4mm(±10%)の試験片をISO 180/1Aに準拠して室温で測定して約7kJ/m超、具体的には約8.5kJ/m超、さらに具体的には約9.5kJ/m超のノッチなしアイゾット衝撃値を有し得る。
【0141】
本熱可塑性組成物の衝撃強さは、低温でも良好である。本熱可塑性組成物は、ウェルドラインをもたないように成形された厚さ4mm(±10%)の試験片をISO 180/1Aに準拠して室温で測定して約30kJ/m超、具体的には約33kJ/m超、さらに具体的には約40kJ/m超のノッチ付アイゾット衝撃値を有し得る。本熱可塑性組成物は、ウェルドラインをもたないように成形された厚さ4mm(±10%)の試験片をISO 180/1Aに準拠して0℃で測定して約20kJ/m超、具体的には約25kJ/m超、さらに具体的には約28kJ/m超のノッチ付アイゾット衝撃値を有し得る。本熱可塑性組成物は、ウェルドラインをもたないように成形された厚さ4mm(±10%)の試験片をISO 180/1Aに準拠して−30℃で測定して約15kJ/m超、具体的には約17kJ/m超のノッチ付アイゾット衝撃値を有し得る。
【0142】
加えて、本熱可塑性組成物は優れた粘度特性を有している。例えば、本熱可塑性組成物はISO 1133に準拠して260℃/5kgで測定して約10〜約35cm/10分、さらに具体的には約15〜約30cm/10分のメルトボリュームレート(MVR)を有している。
【0143】
本熱可塑性ポリカーボネート組成物は、さらに、ISO 306に準拠して120℃/5kgで測定して約100〜約140℃、さらに具体的には約110〜約138℃のビカーB/120値を有し得る。
【0144】
本ポリカーボネート組成物を含んでなる賦形品、形成物品又は成形品も提供される。本ポリカーボネート組成物は、射出成形、押出、回転成形、ブロー成形及び熱成形のような各種の手段で有用な賦形品に成形できる。こうして形成される物品には、例えば、モニター用ハウジングのようなコンピューター用及び事務器用ハウジング、携帯電話用ハウジングのようなハンドヘルド電子装置ハウジング、電気コネクター、及び照明器具や装飾品や家庭用具や屋根や温室やサンルームや水泳プールの囲いなどの部材がある。
【0145】
有利な特徴としては、本熱可塑性組成物は向上したウェルドライン強度を有する物品を提供し得る。
【実施例】
【0146】
以下の非限定的実施例によって本ポリカーボネート組成物をさらに例示する。これらの実施例は以下の成分に基づいている。
【0147】
【表1】

【0148】
Werner & Pfleiderer共回転二軸押出機(25mmスクリュー)を用いて、表2に示した成分(wt%)並びに離型剤0.1〜0.5wt%及び酸化防止剤と光安定剤の組合せ0.1〜0.5wt%を約250〜約300℃の溶融温度範囲で混合し、次いでEngel 100トン射出成形機を用いて約250〜約300℃の溶融温度範囲で衝撃試験用、熱変形温度試験用及び二重ゲート特性試験用に成形した。上述した方法を用いた試験の結果も表2に示してある。
【0149】
【表2】

【0150】
【表3】

【0151】
【表4】

【0152】
上記のデータから分かる通り、二重ゲート試験片の特性で表されるウェルドライン強度は、SANをPMMAで置換した場合に向上する(試料1と試料2、試料4と試料5、試料7と試料8を比較されたい)。意外にも、PMMAを耐衝撃性改良PMMAで置換すると、二重ゲート試験片に関する引張シャルピー値、アイゾット値(ノッチなし)及びΔ引張応力値がさらに向上することが判明した(試料2と試料3、試料5と試料6を比較されたい)。
【0153】
ポリカーボネート樹脂の一部をポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーで置換した場合には別の改良が認められた(例えば、試料2と試料5、試料3と試料6、試料8と試料9を比較されたい)。ドイツ特許第0206006号には、ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーの使用が衝撃強さ及びニットライン衝撃強さの低下をもたらすことが開示されていることを考えると、この改良は特に予想外であった。耐衝撃性改良PMMAとポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーの組合せを使用すると優れた最良の結果が得られる。
【0154】
ポリカーボネートの一部をポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマーで置換した場合、特に良好なINI値(ノッチ付アイゾット衝撃値)が得られる。
【0155】
本明細書で用いる「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートを包含する。単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。化合物は標準的な命名法を用いて記載される。例えば、表示された基で置換されていない位置は、表示された結合又は水素原子で満たされた原子価を有するものと理解される。2つの文字又は記号の間に位置しないダッシュ(「−」)は、置換基の結合点を表すために使用される。例えば、−CHOはカルボニル基の炭素を介して結合される。特記しない限り、本明細書中で使用される技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。同じ特定又は量に関するすべての範囲の上限・下限は、独立に結合可能であり、上限・下限も含む。数量に関連して使用される「約」という修飾語は、記載された値を含み、前後関係(例えば、特定の数量の測定に伴う誤差の程度)て決まる意味を有する。測定値の後に「(±10%)」という表示が続く場合、測定値は正又は負に表記の百分率の反応性で変動し得る。このような変動は、(例えば、記載された値の表記百分率の範囲内にある一様な幅を有する試料のように)試料全体について表示されることもあれば、(例えば、可変の幅を有する試料であって、かかる変動のすべてが記載された値の表記百分率の範囲内にある試料のように)試料中での変動として表示されることもある。すべての引用文献は、援用によって本明細書中に組み込まれる。
【0156】
以上、例示を目的として典型的な実施形態を説明してきたが、上記の説明は本発明の技術的範囲を限定するものと見なすべきでない。したがって、当業者には、本発明の技術的思想及び技術的範囲から逸脱せずに様々な修正例、適応例及び代替例が想起されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性組成物の製造方法であって、
充填材を除外した熱可塑性組成物の総重量を各々基準にして、
ポリカーボネート樹脂10〜84wt%、
ポリカーボネート−ポリシロキサンコポリマー0.5〜40wt%、
耐衝撃性改良剤組成物1〜40wt%、及びアルキル(メタ)アクリレートポリマー1〜50wt%を混合して熱可塑性組成物を形成することを含んでなる、方法
【請求項2】
押出機内で250〜300℃の溶融温度範囲で混合し、次いで二重ゲート金型内で250〜300℃の溶融温度範囲で成形した厚さ2mm(±10%)の熱可塑性組成物の試験片が、DIN 53448−Bに準拠して測定して100kJ/mを超える引張シャルピー値を有する熱可塑性組成物を形成する、請求項1記載の方法
【請求項3】
押出機内で250〜300℃の溶融温度範囲で混合し、次いで二重ゲート金型内で250〜300℃の溶融温度範囲で成形した厚さ2mm(±10%)の熱可塑性組成物の試験片と単一ゲート金型内で成形した厚さ2mm(±10%)の同一組成物の試験片とのISO 527に準拠して測定したΔ降伏点引張応力が6MPa未満である熱可塑性組成物を形成する、請求項1記載の方法
【請求項4】
押出機内で250〜300℃の溶融温度範囲で混合し、次いで単一ゲート金型内で250〜300℃の溶融温度範囲で成形した厚さ4mm(±10%)の熱可塑性組成物の試験片が、ISO 180/1Aに準拠して−30℃で測定して15kJ/mを超えるノッチ付アイゾット衝撃値を有する熱可塑性組成物を形成する、請求項1記載の方法
【請求項5】
ポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーが、以下の式(1)の芳香族カーボネート単位と、以下の式(7)のポリジオルガノシロキサン単位とを含む、請求項1記載の方法
【化1】

(式中、R基の総数の60%以上は芳香族有機基であり、残部は脂肪族基、脂環式基又は芳香族基である。)
【化2】

(式中、Rは各々独立にC1−13一価有機基であり、Dは2〜1000の平均値を有し、Rは各々独立に二価C〜C脂肪族基であり、Mは各々独立にハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルケニル、C〜Cアルケニルオキシ基、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルコキシ、C〜C10アリール、C〜C10アリールオキシ、C〜C12アラルキル、C〜C12アラルキルオキシ、C〜C12アルカリール又はC〜C12アルカリールオキシであり、
nは各々独立に0、1、2、3又は4である。)
【請求項6】
耐衝撃性改良剤が、アクリル系耐衝撃性改良剤、ASA耐衝撃性改良剤、ジエン耐衝撃性改良剤、オルガノシロキサン耐衝撃性改良剤、オルガノシロキサン枝分れアクリレート耐衝撃性改良剤、EPDM耐衝撃性改良剤、スチレン−ブタジエン−スチレン耐衝撃性改良剤、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン耐衝撃性改良剤、ABS耐衝撃性改良剤、MBS耐衝撃性改良剤、グリシジルエステル耐衝撃性改良剤、又は上述の耐衝撃性改良剤の1種以上を含む組合せからなるか、あるいは、耐衝撃性改良剤が、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、シリコーンゴム、C4−9アルキル(メタ)アクリレートから誘導されるエラストマーゴム、C1−9アルキル(メタ)アクリレートとブタジエン及び/又はスチレンとのエラストマー性コポリマー、或いは上述のエラストマーの1種以上を含む組合せからなるエラストマー相を、以下の式(13)のモノマーと以下の一般式(14)のモノマーとの共重合から誘導される硬質コポリマー相と共に含む、請求項1記載の方法
【化3】

(式中、Xは各々独立に水素、C〜C12アルキル、C〜C12シクロアルキル、C〜C12アリール、C〜C12アラルキル、C〜C12アルカリール、C〜C12アルコキシ、C〜C12シクロアルコキシ、C〜C12アリールオキシ、クロロ、ブロモ又はヒドロキシであり、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ又はクロロである。)
【化4】

(式中、Rは水素、C〜Cアルキル、ブロモ又はクロロであり、Xはシアノ、C〜C12アルコキシカルボニル、C〜C12アリールオキシカルボニル又はヒドロキシカルボニルである。)
【請求項7】
アルキル(メタ)アクリレートポリマーが耐衝撃性改良ポリ(アルキル(メタ)アクリレート)からなる、請求項1記載の方法
【請求項8】
さらに、充填材、補強材、顔料、又はこれらの添加剤の1種以上を含む組合せを混合して熱可塑性組成物を形成する、請求項1記載の方法
【請求項9】
請求項1〜8記載の方法によって得られた組成物を成形、押出又は賦形して物品を形成することを含んでなる、物品の形成方法。

【公開番号】特開2012−111961(P2012−111961A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39889(P2012−39889)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【分割の表示】特願2005−235111(P2005−235111)の分割
【原出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(508171804)サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップ (86)
【Fターム(参考)】