説明

ポリチオエーテルアミン樹脂および上記ポリチオエーテルアミン樹脂を含む組成物

ポリチオエーテルアミン樹脂化合物およびポリチオエーテルアミン樹脂化合物を含む組成物が開示される。本発明は、a)5パーセント〜90パーセントのポリチオエーテルエポキシ樹脂、およびb)10パーセント〜95パーセントのエポキシ樹脂を含むポリチオエーテルアミン樹脂化合物に関しており、ここで、上記エポキシ基の10当量パーセント〜40当量パーセントが四級化され、ここで、非四級化エポキシ基の10当量パーセント〜90当量パーセントがアミンと反応する。本発明は、このポリチオエーテルアミン樹脂化合物および硬化剤を含む組成物にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリチオエーテルアミン樹脂および上記ポリチオエーテルアミン樹脂を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの産業において、耐食性プライマーを金属へ塗布することが所望される。歴史的には、これらのプライマーの多くはクロメート(chromate)を含んできた。このことは、例えば、航空宇宙産業および自動車産業においてとりわけ真実である。環境への関心に起因して、クロメートの量の最小化および/または除去が所望される。溶媒性(solvent−borne)ではなく、水性調合物の使用もまた所望される。後のコーティング層に対する良好な接着性、耐薬品性、柔軟性、および/または耐溶剤性を有するプライマーを有することがさらに好ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は:
a)5パーセント〜90パーセントのポリチオエーテルエポキシ樹脂;および
b)10パーセント〜95パーセントのエポキシ樹脂;
を含むポリチオエーテルアミン樹脂化合物に関しており、ここで、上記エポキシ基の10当量パーセント〜40当量パーセントが四級化され、ここで、非四級化エポキシ基の10当量パーセント〜90当量パーセントがアミンと反応する。本発明は、このポリチオエーテルアミン樹脂化合物および硬化剤を含む組成物にさらに関する。
【発明を実施するための形態】
【0004】
(発明の詳細な説明)
本発明は、a)5%〜90%のポリチオエーテルエポキシ樹脂、およびb)10%〜95%のエポキシ樹脂を含むポリチオエーテルアミン樹脂化合物に関する。代表的には、上記エポキシ基の10当量パーセント〜40当量パーセントは四級化され、非四級化エポキシ基の10当量パーセント〜90当量パーセントがアミンと反応する。特定の実施形態において、上記エポキシ樹脂はヒドロキシ官能基を有し、このヒドロキシ官能基はさらにイソシアネートとさらに反応し、ウレタン結合を形成する。
【0005】
上で言及されたように、ポリチオエーテルアミン樹脂化合物の5パーセント〜90パーセントは、ポリチオエーテルエポキシ樹脂を含む;「ポリチオエーテル」は「C−S−C」結合を有する化合物を意味する。そのような化合物は、上記ポリチオエーテルアミン樹脂がコーティングに使用される場合、柔軟性および/または改良された接着性を与えることが確認されている。加えて、驚くことに、ポリチオエーテルエポキシの使用は、ポリチオエーテルエポキシがコーティングに使用される場合、上記化合物に対して耐作動液性(hydraulic fluid resistance)を与え得ることが発見された。適したポリチオエーテルエポキシは米国特許出願公開第2005/0010003に記載されており、この特許出願公開は本明細書中で参考として援用される。そして、適したポリチオエーテルエポキシはPRC DeSotoからPERMAPOL−5534として市販される。PERMAPOL−5534は、500〜690のエポキシド当量(EEW)、200〜1000センチポアズの粘度、1.13の比重、および99重量%〜100重量%の固形分を有するエポキシ末端二官能性ポリチオエーテルポリマーである。
【0006】
上記の性能の利点に加えて、上記ポリチオエーテルエポキシ樹脂は、そのような樹脂が低粘度(すなわち、1000cps未満)を有する場合、反応性希釈剤として使用され得る。このことは、溶媒の使用が合成過程から除去されない場合、溶媒の使用が最小化されることを可能にする一方で、操作に対して合理的な粘度を維持する。このことはゼロVOC調合物の形成を可能にし得る。「ゼロVOC」は、上記調合物が20パーセント未満(例えば10パーセント未満、5パーセント未満、または2パーセント未満)の揮発性有機性内容物または溶媒を有することを意味する。また、フィルム形成温度は本ポリチオエーテルエポキシ樹脂の使用により著しく低下し得る。
【0007】
ポリチオエーテルアミン樹脂の合成において、エポキシ樹脂がさらに含まれる。適したエポキシ樹脂は、例えば、エポキシ官能性化合物とフェノール官能性化合物との反応生成物であり得る。特定の例としては、エピクロロヒドリンとビスフェノール(例えば、ビスフェノールA)との反応生成物、または、例えば、米国特許第5,204,385号に記載される任意の生成物が挙げられる。この特許文献は本明細書中で参考として援用される。適したエピクロロヒドリン製品としては、例えば、Hexion Specialty ChemicalsからのEPON Resin 825、826、828、829、830、および836、ならびにDow Chemical CompanyからのDER330、331、332、354が挙げられる。いくつかの実施形態において、上記エポキシ樹脂は300〜2000の範囲のEEWを有する固体エポキシ樹脂を含み得る。適した製品としては、例えば、Hexion Specialty ChemicalsからのEPON Resin 1001F、1002F、1004F、および1007F、ならびにDow Chemical CompanyからのDER661、662E、663U、および664Uが挙げられる。本発明における使用に適した他のエポキシ樹脂の例としては、モノエポキシ、2つのヒドロキシ基を含む化合物のジグリシジルエーテル、エポキシノボラックおよび脂環式エポキシ、ならびに他の改質されたエポキシ樹脂が挙げられる。適した製品としては、例えば、Hexion Specialty ChemicalsからのHELOXY モディファイアー8、64、67、68、84、505、CADURA E−10pグリシジルエーテル、EPON resin SU−3、SU−8、およびDow Chemical CompanyからのDER732、736、DEN431、438、439が挙げられる。
【0008】
上記ポリチオエーテルアミン樹脂、特に上記エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂が、エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの反応生成物をさらに追加のビスフェノールAと反応させたものを含む場合、ヒドロキシ官能基を有し得ることが理解される。特定の実施形態において、上記ポリチオエーテルアミン樹脂はヒドロキシ官能基を含み、次いで、これらのヒドロキシ官能基の10パーセント〜40パーセント(例えば、20パーセント〜30パーセント)は、イソシアネートとさらに反応する。これはウレタン結合を生じさせ、このウレタン結合はエポキシ樹脂の官能性を増加させる。上記反応は、例えば、米国特許第5,369,152号に記載される。この特許文献は本明細書中で参考として援用される。「イソシアネート」は、イソシアネートならびにその二量体および三量体(例えば、イソシアヌレート)を含む。適したイソシアネートとしては、例えば、芳香族ジイソシアネート(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネート);脂環式ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−ジイソシアネートジシクロヘキサン);脂肪族ジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびテトラメチレンジイソシアネート)などが挙げられる。他の適したイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニルイソシアネート、および水素化メチレンジフェニルイソシアネートが挙げられる。上記イソシアネートは少なくとも2つの反応性イソシアネート基を有し得る。したがって、第一のイソシアネート官能基は、ポリチオエーテルアミン樹脂の一分子上の1つのヒドロキシ官能基と反応し、第二のイソシアネート官能基は別の分子上のヒドロキシ官能基と反応する。この様式において、2つのそのような分子は架橋される。
【0009】
上記ポリチオエーテルアミン樹脂を水分散性にするために、上記エポキシ基の約10当量パーセント〜40当量パーセント(例えば、20当量パーセント〜30当量パーセント)が四級化される。四級化は当該技術において公知の手段、例えば、米国特許第4,001,156号(この特許文献は本明細書中で参考として援用される)に記載される手段を用いて実行され得る。上記四級化の割合は、使用者の必要性に応じて変わり得、より高い四級化は、より高い感水性を有するより小さい粒子サイズをもたらす。適した四級化剤としては、代表的には、三級アミンと低分子量のモノカルボン酸との塩が挙げられる。また、適した四級化剤は米国特許第4,001,156号中に列挙され、この特許文献は本明細書中で参考として援用される。特に適した酸は、ギ酸、乳酸、および/または酢酸であり、特に適した三級アミンは、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルモルホリン、および/またはN−メチルモルホリンである。少量の水の存在下で反応させた、乳酸および/または酢酸とトリエタノールアミンおよび/またはN−メチルモルホリンとの反応生成物は、特に適する。
【0010】
上記エポキシド化合物と四級アンモニウム塩との間の反応は、一般的に50℃〜100℃(例えば、60℃〜80℃)の温度で実施される。上記反応は一般的に60分〜90分で完結する。上記反応は溶媒の存在下、または溶媒無しで実施され得る。上記反応に適した溶媒としては、グリコールエーテル(例えば、エチレングリコールエーテルおよびプロピレングリコールエーテル)が挙げられる。
【0011】
非四級化エポキシ基の約10パーセント〜90パーセント(例えば、70パーセント〜90パーセント)は、アミンを用いて鎖が延長される。特定の実施形態において、少し化学量論的に過剰なアミン(例えば、ポリアミン)が使用される;上記エポキシ末端はこれによりアミン末端へ変換される。適したアミンとしては、二級アミンおよび三級アミン、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミドおよびアミノシランが挙げられる。市販される製品としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N−アミノエチルピペラジン、Huntsman International LLCからのJEFFAMINE D−230、D−400、およびD−2000、Mitsubishi Gas Chemical America,Inc.からのビスアミノメチルシクロヘキサン(1,3−BAC)およびメタキシレンジアミン(MXDA)、イソホロンジアミン、例えばDegussaからのVESTAMIN IPDおよびTMD、CognisからのVERSAMID 115、125、140、および150、ならびにGE SiliconeからのSILQUEST 1100、1120、および1130が挙げられる。特定の実施形態において、上記アミンとエポキシは、3.0:1.0の当量比(例えば、2.0:1.0)で反応する。
【0012】
本発明のポリチオエーテルアミン樹脂化合物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて100℃のジメチルスルホキシド(DMSO)の移動相中で測定される場合、10,000〜50,000の重量平均分子量(Mw)(例えば、20,000〜30,000)を有し得る。
【0013】
四級化アミンへ延長された(quarternized amine−extended)本化合物は、以下の実施例に記載されるように調製され得る。一般的に、水性乳濁液は、1つ以上のエポキシ官能性化合物(例えば、PERMAPOL 5534およびEPON 1001F エポキシ樹脂)を用いて作られ得る。
【0014】
本発明はさらに、適した硬化剤と一緒に上記のポリチオエーテルアミン樹脂化合物を含む組成物に関する。特に適するのは、エポキシシラン硬化剤である。適したエポキシシランは、例えば、米国特許第6,586,502号に記載され、この特許文献は、本明細書中で参考として援用される。適した市販のエポキシシランとしては、例えば、GE SiliconesからのSILQUEST A−187、A−186、およびWETLINK 78、Shin−Etsu Silicones of AmericaからのKBM−303および403が挙げられる。上記組成物は、例えば、コーティング組成物であり得る。「コーティング組成物」は、乾燥し硬化したときに、例えば基材上にフィルムを形成するものとして理解される。ここで、上記硬化剤(例えば、エポキシアミン硬化剤)は、上記ポリチオエーテルアミン樹脂と反応するか、または上記ポリチオエーテルアミン樹脂を硬化させ、フィルムを形成する。
【0015】
特定の実施形態において、エポキシシランがポリチオエーテルアミン樹脂に対する唯一の硬化剤ではない場合、エポキシシランは主要な硬化剤として利用される。主要な硬化剤は、硬化剤の少なくとも50重量%(例えば、70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、または99重量%)が、エポキシシランからなることを意味する。添加剤としてのエポキシシランの使用(例えば、調合物の1重量%〜2重量%の量での使用)では、コーティングの性能を高めることが報告され得るが、ポリチオエーテルアミンに対する架橋剤としてのそれらの使用では報告されない。よって、特定の実施形態において、上記組成物の全固体重量に基づいて10重量%以上(例えば、10重量%〜20重量%)のエポキシシランが使用される。上記ポリチオエーテルアミン樹脂は、例えば、全固体重量に基づいて20重量%〜40重量%の量で使用され得る。上記エポキシシラン架橋剤と上記ポリチオエーテルアミン樹脂との組み合わせは、本組成物の耐作動液性に寄与する。さらには、有機−無機を組み合わせた架橋網目構造(crosslinked organic−inorganic combined network)もまた、接着性、耐薬品性、耐水性、および/または耐食性における改良に寄与すると考えられる。加えて、上記エポキシシランと上記ポリチオエーテルアミンとの反応を通して生じるヒドロキシル基は、前または後のコーティング層と反応することによって、被膜間密着に寄与し得る。
【0016】
上記硬化剤は、塗布の直前まで上記ポリチオエーテルアミン樹脂化合物とは別々に維持され得る(すなわち、2つの成分、すなわち「2K」組成物)。上記コーティング組成物において、上記ポリチオエーテルアミン樹脂化合物は50重量%〜90重量%(例えば、60重量%〜80重量%)を構成し得、上記硬化剤は10重量%〜50重量%(例えば、20重量%〜40重量%)を構成し得、ここで、重量%は樹脂バインダー組成物の全固体重量に基づく。
【0017】
特定の実施形態において、上記コーティング組成物は水性である。本明細書中で使用される場合、用語「水性」は、溶媒が50パーセント以上の量で水を含む組成物を指す。したがって、本発明に従う水性溶液は50パーセント未満の有機溶媒(例えば、アルコール、アセテート、エステル、ケトン、芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素、ならびにグリコールエーテル)をさらに含み得る。特定の実施形態において、上記組成物は水以外の溶媒を20パーセント以下(例えば、10パーセント以下または5パーセント以下)含む。水性組成物が形成され得、それにより組成物中の揮発性物質の量を制限することが本発明の利点である。
【0018】
本発明のコーティング組成物は、コーティングの分野において標準的に使用される任意の添加剤(例えば、反応性希釈剤、流動添加剤(flow−additive)、沈降防止剤、顔料、充填剤、レオロジー改質剤(rheology modifier)、溶媒、紫外光吸収剤、触媒など)を含み得る。そのような添加剤は、上記コーティング組成物の全固体重量に基づいて、コーティングの40重量%〜70重量%を構成し得る。
【0019】
導電性および/または電磁干渉/無線周波干渉(EMI/RFI)に対する遮蔽効果を与えるために使用される充填剤は、当該分野において周知である。適した充填剤の例としては、限定はされないが、導電性貴金属ベースの充填剤(例えば、純粋な銀);貴金属でめっきされた貴金属(例えば、銀めっきされた金);貴金属でめっきされた非貴金属(例えば、銀めっきされた銅、ニッケル、またはアルミニウム、例えば、銀めっきされたアルミニウムコア粒子、または白金めっきされた銅粒子);貴金属でめっきされたガラス、プラスチック、またはセラミック(例えば、銀めっきされたガラスマイクロスフィア、貴金属でめっきされたアルミニウム、または貴金属でめっきされたプラスチックマイクロスフィア);貴金属でめっきされた雲母;ならびに他のそのような貴金属導電性充填剤が挙げられる。非貴金属を基にした材料もまた適し得、例えば、非貴金属でめっきされた非貴金属(例えば、銅コーティングされた鉄粒子またはニッケルめっきされた銅);非貴金属(例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト);非貴金属でめっきされた非金属(例えば、ニッケルめっきされたグラファイト)、ならびに非金属材料(例えば、カーボンブラックおよびグラファイト)が挙げられる。
【0020】
顔料もまた、当該分野において周知である。特定の実施形態において、上記顔料は、防食顔料(例えば、クロメート腐食防止剤または非クロメート腐食防止剤)である。本ポリエーテルアミン樹脂はそのような添加剤と相溶性であることが本発明のさらに別の特徴である。「クロメート」および類似の用語は、クロムまたはその誘導体を含む任意の化合物を指す。例えば、本組成物は、水性クロメート系(例えば、プライマーとして様々な産業において使用されるもの)であり得る。適したクロメート腐食防止剤の例としては、ストロンチウムクロメート、バリウムクロメート、亜鉛クロメート、およびカルシウムクロメートが挙げられる。
【0021】
他の実施形態において、本組成物は実質的にクロメートフリーであり、また、防食調合物(例えば、水性クロメートフリー系(例えば、プライマーとしてさまざまな産業において使用されるもの))において使用され得る。「実質的にクロメートフリー」および類似の用語は、上記組成物中に実質的にクロメートが存在しないことを意味する;すなわち、上記組成物の1重量%未満はクロメートからなる。非クロメート腐食防止剤の例としては、例えば、Aldrichからのリン酸亜鉛およびモリブデン酸亜鉛、HaloxからのHALOX SZP391、SW111、300、570、630、および650が挙げられる。
【0022】
本明細書中で使用される場合、「防食顔料」は、基材上に堆積されるコーティング組成物中に含まれる場合に、例えば、化学的酸化プロセスまたは電気化学的酸化プロセスによる基材の変質または劣化(鉄を含む基材における錆およびアルミニウム基材における劣化させる酸化物(degradative oxide)を含む)を最小化するコーティング、または、いくつかの場合においては防止さえもするコーティングを提供するために作用する粒子を指す。
【0023】
特定の実施形態において、上記耐食性粒子は無機酸化物を含み、いくつかの実施形態においては、多数の無機酸化物を含む。適した無機酸化物としては、例えば、特に酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化セリウム(CeO)、酸化モリブデン(MoO)、および/または二酸化ケイ素(SiO)が挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「多数」は2以上を意味する。したがって、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、2つ、3つ、4つ、または4つより多くの無機酸化物を含む耐食性粒子を含む。特定の実施形態において、これらの無機酸化物は、そのような粒子中に、例えば、多数の酸化物の均質な混合物または固体状態の溶体の形態で存在する。
【0024】
特定の実施形態において、上記無機酸化物を含む耐食性粒子、または、特定の実施形態において、多数のそれらは亜鉛、セリウム、イットリウム、マンガン、マグネシウム、モリブデン、リチウム、アルミニウム、マグネシウム、スズ、および/またはカルシウムの酸化物を含む。特定の実施形態において、上記粒子はまた、ホウ素、リン、ケイ素、ジルコニウム、鉄、および/またはチタンの酸化物を含む。特定の実施形態において、上記粒子は二酸化ケイ素を含む。
【0025】
特定の実施形態において、上記耐食性粒子は以下から選択される多数の無機酸化物を含む:
(i)セリウム、亜鉛、およびケイ素の酸化物を含む粒子;
(ii)カルシウム、亜鉛、およびケイ素の酸化物を含む粒子;
(iii)リン、亜鉛、およびケイ素の酸化物を含む粒子;
(iv)イットリウム、亜鉛、およびケイ素の酸化物を含む粒子;
(v)モリブデン、亜鉛、およびケイ素の酸化物を含む粒子;
(vi)ホウ素、亜鉛、およびケイ素の酸化物を含む粒子;
(vii)セリウム、アルミニウム、およびケイ素の酸化物を含む粒子;
(viii)マグネシウムまたはスズ、およびケイ素の酸化物を含む粒子;ならびに
(ix)セリウム、ホウ素、およびケイ素の酸化物を含む粒子、
または粒子(i)〜粒子(ix)の2つ以上の混合物。
【0026】
特定の実施形態において、上記防食顔料は200ナノメートル以下(例えば、100ナノメートル以下)の計算される相当球径(calculated equivalent spherical diameter)、または、特定の実施形態において、5〜50ナノメートルの計算される相当球径を有する。当業者によって理解されるように、計算される相当球径は以下の方程式にしたがって、B.E.T.比表面積から決定され得る。
【0027】
直径(ナノメートル)=6000/[BET(m/g)×ρ(グラム/cm)]
本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、透過電子顕微鏡(「TEM」)画像の顕微鏡写真を目視検査し、画像中の粒子の直径を測定し、TEM画像の倍率に基づいて測定された粒子の平均一次粒子サイズを計算することによって決定する場合、100ナノメートル以下(例えば、50ナノメートル以下)の平均一次粒子サイズを有する防食顔料を含み、または、特定の実施形態においては20ナノメートル以下の平均一次粒子サイズを有する防食顔料を含む。当業者は、そのようなTEM画像を用意し、一次粒子サイズを決定する方法を理解する。粒子の一次粒子サイズは、その粒子を完全に包む最小の直径を有する球体を参照する。本明細書中で使用される場合、用語「一次粒子サイズ」は、2つ以上の個々の粒子の集塊とは対照的に、個々の粒子のサイズを指す。
【0028】
特定の実施形態において、上記防食顔料は、100ナノメートル以下の平均一次粒子サイズを有する酸化マグネシウム粒子を含む;そのような粒子は、Nanostructured&Amorphous Materials,Inc.(Houston,Texas)から市販される。
【0029】
上に記載された種類の適した防食顔料、およびそれらの生産に適した方法は、米国特許出願公開第11/384,970号の[0020]〜[0070]に記載される。この特許出願公開の引用部分は本明細書中で参考として援用される。
【0030】
特定の実施形態において、上記防食顔料は、1つ以上の無機物質を含む無機酸化物ネットワークを含む。本明細書中で使用される場合、用語「1つ以上の無機物質を含む無機酸化物ネットワーク」は、1つ以上の酸素原子を通して互いに化学的に結合された、1つ、またはいくつかの場合には、2つ以上の異なる無機物質を含む分枝鎖を指す。そのようなネットワークは、金属塩の加水分解から形成され得る。金属塩の例としては、限定はされないが、Ce3+、Ce4+、Zn2+、Mg2+、Y3+、Ca2+、Mn7+、およびMo6+が挙げられる。特定の実施形態において、上記無機酸化物ネットワークは、亜鉛、セリウム、イットリウム、マンガン、マグネシウム、またはカルシウムを含む。また、特定の実施形態において、上記無機酸化物ネットワークは、ケイ素、リン、および/またはホウ素を含む。特定の実施形態において、上記無機酸化物ネットワークは、セリウム、亜鉛、ジルコニウム、および/またはマンガン、およびケイ素を含む。特定の実施形態において、上記無機酸化物ネットワークは、0.5重量パーセント〜30重量パーセントのセリウムおよび0.5重量パーセント〜20重量パーセントの亜鉛を含み、ここで重量パーセントは上記物質の全重量に基づく。
【0031】
特定の実施形態において、上記無機酸化物ネットワークは、オルガノシラン(例えば、2つ、3つ、4つ、またはそれより多くのアルコキシ基を含むシラン)の加水分解の結果生じるケイ素を含む。特定の実施形態において、上記無機酸化物ネットワークは、シリケート(例えば、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、および/またはケイ酸アンモニウム)に由来するケイ素を含む。
【0032】
特定の実施形態において、上記のような無機酸化物ネットワークを含む防食顔料は、超微粒子である。
【0033】
無機酸化物ネットワークを含む防食顔料は、本発明における使用に適しており、米国特許出願公開第11/384,970号の[0071]〜[0073]および/または米国特許出願公開第11/610034号の[0039]〜[0044]に記載される通りに調製され得る。これらの各特許出願公開の引用部分は、本明細書中で参考として援用される。
【0034】
特定の実施形態において、上記防食顔料は粘土を含む。特定の実施形態において、そのような粘土は、ランタニドの塩および/または遷移金属の塩を用いて処理される。適した粘土としては、例えば、層状構造のLAPONITE(Southern Clay Products,Inc.から市販されるピロリン酸四ナトリウムで改質された水和ケイ酸ナトリウムリチウムマグネシウム)、およびベントナイト(大部分がモンモリロナイト((Na,Ca)0.33(Al,Mg)Si10(OH)・nHO)からなるフィロケイ酸アルミニウムの粘土であり、一般的に不純な粘土)が挙げられる。そのような耐食性粒子は、米国特許出願公開第11/384,970号の[0076]に記載される通りに調製され得る。この特許出願公開の引用部分は、本明細書中で参考として援用される。
【0035】
特定の実施形態において、上記防食顔料は、pH緩衝剤と組み合わせて無機酸化物(例えば、ボレート)を含む。本明細書中で使用される場合、用語「pH緩衝剤」は、この物質が存在しない条件でのpHより高いレベルに無機酸化物のpHを調節する物質を指す。特定の実施形態において、そのような耐食性粒子は、ボレート(B)、および亜鉛、バリウム、セリウム、イットリウム、マグネシウム、モリブデン、リチウム、アルミニウム、またはカルシウムの酸化物のうちの1つ以上を含む混合金属酸化物を含む。特定の実施形態において、そのような混合酸化物は、担体上および/または担体の内部に堆積される。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語「担体」は、ある物質であって、その上または中で別の物質が運ばれる物質を指す。特定の実施形態において、上記耐食性粒子は無機酸化物、ボレート、およびシリカ担体(例えば、ヒュームドシリカ(Degussaから商標名AEROSILの下市販される)または沈降シリカ(例えば、PPG Industries(Pittsburgh,Pennsylvania)からのHI−SIL T600))を含む。特定の実施形態において、上記担体は、20ナノメートル以下の平均一次粒子サイズを有する。
【0037】
ボレートを含有する混合金属酸化物を含む、適した防食顔料の具体的な非限定的例としては、CaO・B、BaO・B、ZnO・B、および/またはMgO・Bが挙げられる。そのような防食顔料、およびそれらの生産のための方法は、米国特許出願公開第11/384,970号の[0079]および米国特許出願公開第11/567947号の[0047]〜[0053]に記載される。これらの各特許出願公開の引用部分は、本明細書中で参考として援用される。
【0038】
特定の実施形態において、上記防食顔料は、米国特許出願公開第11/384,970の[0082]〜[0083]に記載されるように、500ナノメートル以下の平均一次粒子サイズ、いくつかの場合においては200ナノメートル以下の平均一次粒子サイズ、さらに他の場合においては100ナノメートル以下の平均一次粒子サイズを有する化学修飾された粒子を含む。上記特許出願公開の引用部分は、本明細書中で参考として援用される。
【0039】
本発明はさらに、上記のコーティングのいずれかを用いるための方法に関する。上記コーティングは基材の少なくとも一部に塗布され得る。アルミニウム合金(例えば、2024および7075)(一般的に航空宇宙産業において使用される)およびチタンを含む任意の適した基材は本発明に従ってコーティングされ得る。表面は、例えばSCOTCH−BRITE Padを用いて研磨され得、化学変換コーティングを用いて処理され得、陽極処理され得る(例えばBAC5719の手順に適合するALODINE 600、1000、1200を用いて陽極処理がなされ得、BAC5019の手順に適合するクロム酸陽極処理(CAA)、リン酸陽極処理(PAA)、またはホウ酸陽極処理(BAA)がなされ得る)。本組成物はまた、複合材、木材、鋼、他の金属および/または他の固体基材上で使用され得る。本組成物は、多くの基材に対して良好な接着性を示す。特定の実施形態において、上記基材は航空宇宙用乗物または航空用乗物の一部を形成する。
【0040】
本発明のコーティング組成物は、プライマーとして基材表面に直接塗布され得、ここで、上記基材は多くの産業において標準である(例えば、上記のように航空宇宙産業において防食性を与える(例えば、ALODINEを用いて処理することまたは陽極処理すること)ための)前処理法および/または解決策に供してもよいし供さなくともよい。この実施形態において、上記プライマー層は硬化され得、追加の層(例えば、トップコート、クリアコートなど)がそこへ塗布され得る。
【0041】
本コーティング組成物は、当該分野において公知の任意の手段(例えば、噴霧、浸漬、ロールコーティング、はけ塗り、キャスティングなど)によって塗布され得る。上記コーティングは、0.1ミル〜5ミルの乾燥したフィルムの厚さ(例えば、0.4ミル〜1.5ミルまたは0.6ミル〜1.0ミル)を有し得る。硬化したとき、上記コーティングは良好な耐流動体性または耐溶媒性を示し得る。そのような耐性は、熱い作動液への耐性により試験され得、これは航空宇宙産業において使用される標準的な試験である。硬化したコーティングサンプルは、特定の時間、熱い作動液中に浸され、外観がいずれのコーティングの欠陥(例えば、ふくれ、ひび、または接着の失敗)についても調べられる。上記硬化したコーティングはまた、基材および後のコーティング層の両方に対して良好な接着性を有する。一般的に、プライマー塗布の2時間〜4時間後、トップコートが塗布される。横断面での接着はBSS 7225またはISO 4209に従って試験され得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、別途はっきりと特定されない場合には、全ての数字、例えば、値、範囲、量、またはパーセンテージを表す数字は、単語「約」が、たとえその用語がはっきりと現れていないとしても、前に置かれているかのように読まれ得る。本明細書中で列挙されるいずれの数値範囲も、その中に組み込まれるすべてのサブレンジを含むことが意図される。複数は単数を包含し、逆もまた同様である。例えば、特許請求の範囲を含めて本明細書中で、「1つの(a)」ポリチオエーテルアミン樹脂、「1つの」ポリチオエーテルエポキシ樹脂、「1つの(an)」エポキシ樹脂、「1つの」イソシアネート、「1つの」四級化剤、「1つの」アミン、「1つの」エポキシシラン、「1つの」防食顔料などに対して言及がなされているが、すべてのこれらのもののうちの1つ以上が使用され得る。また、特許請求の範囲を含めて本明細書中で使用される場合、用語「ポリマー」はプレポリマー、オリゴマー、ならびにホモポリマーおよびコポリマーの両方を参照することを意味する;接頭辞「ポリ」は2つ以上を指す。
【実施例】
【0043】
以下の実施例は、本発明を例示することが意図されており、本発明をいずれかの方法で制限するものとして解釈されるべきではない。
【0044】
(実施例1:ポリチオエーテル無しでのWBアミン樹脂合成(対照))
509.0グラムのEPON 1001F、56.4グラムのDEN431、および141.1グラムのEASTMAN EP溶媒(EASTMAN Chemical Company製)を機械式撹拌器、窒素ブランケット(nitrogen blanket)、熱電温度計(thermal coupler)、冷却復水器および加熱マントルを備える2リットル反応器中へ入れた。窒素雰囲気下、穏やかに撹拌しながら反応温度を約30分で100℃へ上げた。この混合物をその温度に20分間維持し、固体樹脂を完全に溶かした。反応温度を64℃に設定した。この温度で、25.6グラムのN−メチルモルホリン(NMM)、15.3グラムの酢酸、および63.6グラムの脱イオン水を別の容器で混合することにより調製された104.5グラムの四級アンモニウム塩を、10分〜15分かけて上記反応器へ供給した。上記反応混合物を、60分〜90分間63℃に維持し、上記エポキシ樹脂を塩で処理した。四級化されたエポキシ樹脂溶液のエポキシ当量(EEW)は780であった。上記EEWをASTM D1652に従って滴定した。この温度で、727.2グラムの脱イオン水を10分〜15分かけて供給し、安定なエポキシ樹脂分散液を得た。分散水を加えながら温度を50℃に下げた。27.6グラムのMXDAおよび34.4グラムのVESTAMIN IPDを10分〜15分かけて供給し、反応温度を約50℃に維持した。上記反応混合物を60分〜90分間維持し、反応を完結させた。上記反応混合物を周囲温度へ冷却し、以下の物理特性を有する安定な分散液を得た:ブルックフィールド粘度(軸#1、10rpm):90センチポアズ、固形分(110℃/1時間):42%〜43%、粒子サイズ:0.5812ミクロン。
【0045】
(実施例2:ポリチオエーテルを含むWBアミン樹脂合成)
502.5グラムのEPON 1001F、55.7グラムのPERMAPOL 5534、および125.6グラムのEASTMAN EP溶媒を、機械式撹拌器、窒素ブランケット、熱電温度計、冷却復水器および加熱マントルを備える2リットル反応器中へ入れた。窒素雰囲気下、穏やかに撹拌しながら反応温度を約30分間で100度へ上げた。この混合物をその温度に20分間維持し、固体樹脂を完全に溶かした。反応温度を64℃に設定した。この温度で、18.8グラムのNMM、11.3グラムの酢酸、および47.1グラムの脱イオン水を別の容器で混合することにより調製された77.2グラムの四級アンモニウム塩を、10分〜15分かけて上記反応器へ供給した。上記反応混合物を、60分〜90分間63℃に維持し、上記エポキシ樹脂を塩で処理した。四級化されたエポキシ樹脂溶液のEEWは765であった。その温度で、787.3グラムの脱イオン水を10分〜15分かけて供給し、安定なエポキシ樹脂分散液を得た。分散水を加えながら温度を約50℃に下げた。22.9グラムのMXDAおよび28.6グラムのVESTAMIN IPDを10分〜15分かけて供給し、反応温度を約50℃に維持した。上記反応混合物を60分〜90分間維持し、反応を完結させた。上記反応混合物を周囲温度へ冷却し、以下の物理特性を有する安定な分散液を得た:ブルックフィールド粘度(軸#1、10rpm):64センチポアズ、固形分(110℃/1時間):42%〜43%、粒子サイズ:0.2249ミクロン。
【0046】
(実施例3:ポリチオエーテルを含むゼロVOCのWBアミン樹脂合成)
345.3グラムのEPON 828および98.7グラムのPERMAPOL 5534を、機械式撹拌器、窒素ブランケット、熱電温度計、冷却復水器および加熱マントルを備える2リットル反応器中へ入れた。窒素雰囲気下、穏やかに撹拌しながら反応温度を約20分で90度へ上げた。この温度で、111.0グラムのビスフェノールAおよび0.2グラムの酢酸エチルトリフェニルホスホニウム(メタノール中70%)を、加熱した混合物へ加えた。反応温度を170℃〜180℃に60分で上昇させ、60分〜120分間維持した。その後、加熱を中止し、反応温度を64℃に設定した。この温度で、23.1グラムのNMM、13.9グラムの酢酸、および58.8グラムの脱イオン水を別の容器で混合することにより調製された94.8グラムの四級アンモニウム塩を、10分〜15分かけて上記反応容器へ供給した。上記反応混合物を、60分〜90分間63℃に維持し、上記エポキシ樹脂を塩で処理した。四級化されたエポキシ樹脂溶液のEEWは720であった。その温度で、900.2グラムの脱イオン水を10分〜15分かけて供給し、安定なエポキシ樹脂分散液を得た。分散水を加えながら温度を約50℃に下げた。49.8グラムのMXDAを10分〜15分かけて供給し、反応温度を約50℃に維持した。上記反応混合物を60分〜90分間維持し、反応を完結させた。上記反応混合物を周囲温度へ冷却し、以下の物理特性を有する安定な分散液を得た:ブルックフィールド粘度(軸#1、10rpm):70センチポアズ、固形分(110℃/1時間):42%〜43%、粒子サイズ:0.2014ミクロン。
【0047】
(実施例4 耐作動液性)
実施例1〜3に従って調製された水性アミン樹脂を、SILQUEST A−187(エポキシシラン、GE Siliconesから市販される)と混合し、クロム酸陽極処理(CAA)(BAC5019に適合する)されたパネル上に塗布した。このフィルムを周囲温度で1週間硬化させた。乾燥したフィルムの厚さは0.6ミル〜1.0ミルであった。その後、パネルを70℃の作動液(Solutia Inc.からのSKYDROL LD−4)に24時間および30日間それぞれ浸し、フィルムの外観について調べた。
【0048】
【表1】

この実施例中に示されるように、本発明のポリチオエーテルアミン樹脂から調製されたコーティングは、エポキシシランを用いて硬化させたとき、優れた耐作動液性を示したが、上記対照樹脂は同じ条件下での試験に合格しなかった。
【0049】
(実施例5:水性プライマー調合物)
実施例4に示されるように、上記対照(実施例1)水性アミンは、耐作動液性に合格しなかった;したがって、それを顔料とさらに調合しなかった。本発明の1つの樹脂(実施例2)を顔料とさらに調合し、以下で考察される項目に従って性能を試験した。調合物を以下の表に示す。
【0050】
【表2】

表2に示されるように、基本成分を、成分1へ穏やかに撹拌しながら成分2〜7を加えることによって調製し、次いで、5より大きいHegman磨砕度(fineness grind)になるように高速せん断混合しながら成分8〜13を加えた(ISO1524)。15および16を前もって混合したものへ、5より大きいHegman磨砕度(fineness grind)になるように高速せん断混合しながら成分17を加えることによって活性剤成分を調製した。
【0051】
プライマーを、100グラムの基本成分を14.9グラムの活性剤成分と混合することによって調製し、クロム酸陽極処理(CAA)(BAC5019に適合する)されたパネル上に噴霧した。このパネルを、試験する前に周囲温度で一週間硬化させた。乾燥したフィルムの厚さは0.6ミル〜1.0ミルであった。以下の特性を、列挙したISOの方法に従って試験した。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

上に示されるように、実施例2のポリチオエーテル水性アミン樹脂化合物と調合され、エポキシシラン SILQUEST A−187を用いて硬化させた本発明の水性プライマーは、優れた耐熱作動液性、接着性、柔軟性、耐湿性、および耐水性を示した。水性プライマーは優れた耐塩水噴霧性をさらに示した。3000時間の連続塩水噴霧試験後、プライマーパネル上にふくれは認められなかった。加えて、PRC−DeSoto International Inc.からのハイソリッド溶媒性ウレタントップコート CA 8000を、水性プライマーの表面上に噴霧した。それは、いずれの接着の失敗も示さず、優れたコーティング間の接着を示した。
【0054】
本発明の特定の実施形態は例示の目的で上に記載されてきたのに対し、本発明の膨大なバリエーションの詳細は、添付される特許請求の範囲に規定される本発明から逸脱すること無しになされ得ることは当業者にとって明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)5パーセント〜90パーセントのポリチオエーテルエポキシ樹脂;および
b)10パーセント〜95パーセントのエポキシ樹脂;
を含むポリチオエーテルアミン樹脂化合物であって、ここで、エポキシ基の10当量パーセント〜40当量パーセントが四級化され、ここで、非四級化エポキシ基の10当量パーセント〜90当量パーセントがアミンと反応する、化合物。
【請求項2】
前記エポキシ官能基の少なくともいくつかがエピクロロヒドリンから誘導される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記エポキシ官能基の少なくともいくつか前記エピクロロヒドリンとビスフェノールとの反応から誘導される、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記ビスフェノールはビスフェノールAを含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリチオエーテルエポキシ樹脂が500〜690のエポキシド当量を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
四級化剤が酢酸および/または乳酸とトリエチルアミンおよび/またはN−メチルモルホリンとの反応生成物を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
前記アミンがメタキシレンジアミン、イソホロンジアミン、および/またはビスアミノメチルシクロヘキサンを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記アミン基と前記エポキシ基とが3.0:1.0の当量比で反応する、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記エポキシ基の20当量パーセント〜30当量パーセントが四級化される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
前記化合物の重量平均分子量が10,000〜50,000である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物の重量平均分子量が20,000〜30,000である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
a)請求項1に記載のポリチオエーテルアミン樹脂化合物;および
b)硬化剤
を含む組成物。
【請求項13】
前記組成物がコーティング組成物である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記硬化剤がエポキシシランを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が1つ以上の添加剤をさらに含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
請求項15に記載の組成物であって、該組成物が、20重量パーセント〜40重量パーセントのポリチオエーテルアミン樹脂、10重量パーセント〜20重量パーセントの硬化剤、および70重量パーセント〜40重量パーセントの添加剤を含み、ここで、重量パーセントは全固体重量に基づく、組成物。
【請求項17】
請求項12に記載の組成物であって、該組成物は2つの成分を有し、1つの成分中に前記ポリチオエーテルアミン樹脂を含み、もう1つの成分中に前記硬化剤を含む、組成物。
【請求項18】
前記組成物が実質的にクロメートフリーである、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記添加剤が1つ以上の顔料を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記顔料が1つ以上の非クロメート腐食防止剤を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記添加剤が、導電性および/またはEMI/RFI遮蔽を前記化合物に与える1つ以上の充填剤を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物が水性である、請求項12に記載の組成物。
【請求項23】
請求項13に記載のコーティング組成物を用いるための方法であって、基材の少なくとも一部に該組成物を塗布する工程を包含する方法。
【請求項24】
前記コーティング組成物がプライマーとして前記基材に塗布される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コーティング組成物が水性である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記コーティング組成物が実質的にクロメートフリーである、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記基材が航空宇宙用乗物または航空用乗物の一部を構成する、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
請求項1に記載の化合物であって、該化合物はヒドロキシ基をさらに含み、該ヒドロキシ基の少なくともいくつかはイソシアネートと反応する化合物。
【請求項29】
前記ヒドロキシ基の10%〜40%がイソシアネートと反応する、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
前記イソシアネートがイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジフェニルイソシアネート、および/または水素化メチレンジフェニルイソシアネートを含む、請求項28に記載の化合物。
【請求項31】
a)請求項28に記載の化合物、および
b)硬化剤
を含む組成物。
【請求項32】
前記非クロメート腐食防止剤が100ナノメートル以下の平均一次粒子サイズを有する防食顔料を含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項33】
前記防食顔料が酸化マグネシウムを含む、請求項32に記載の組成物。

【公表番号】特表2010−521553(P2010−521553A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553670(P2009−553670)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/054344
【国際公開番号】WO2008/118567
【国際公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(502328466)ピーアールシー−デソト インターナショナル,インコーポレイティド (29)
【Fターム(参考)】