説明

ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜およびその製造方法ならびに防水通気フィルタ

【課題】通気性および耐水圧が高く、かつ、膜厚の厚いポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】まず、標準比重が2.155以上のポリテトラフルオロエチレンからなるシートを一軸方向に延伸して第1多孔体を得るとともに、ポリテトラフルオロエチレンからなるシートを二軸方向に延伸して第2多孔体を得る。次いで、第1多孔体と第2多孔体との積層体をポリテトラフルオロエチレンの融点以上に加熱しながら前記一軸方向と同方向に延伸して第1多孔体と第2多孔体とを一体化することにより、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)多孔質膜およびその製造方法ならびに防水通気フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車電装部品、OA(オフィスオートメーション)機器、家電製品、医療機器などでは、電子部品や制御基板などを収容する筐体の内部と外部の圧力差を解消するために、防水通気フィルタが用いられている。この防水通気フィルタは、筐体に設けられた開口を塞ぐように筐体に取り付けられて、通気を確保しつつ防塵および防水を図るものである。このような防水通気フィルタには、通気性が良好で耐水圧が高いPTFE多孔質膜がよく用いられる。
【0003】
PTFE多孔質膜の膜厚は薄いために、防水通気フィルタとしては、通常は不織布などの支持材にPTFE多孔質膜をラミネートしたものが多い(例えば、特許文献1参照)。そして、防水通気フィルタを筐体に取り付ける際には、支持材が筐体に溶着される。
【特許文献1】特開平11−58575号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では例えば自動車の部品やセンサなどの一部では、防水通気フィルタに耐熱性が要求されることがある。しかし、不織布は耐熱性に問題があることが多いため、防水通気フィルタを耐熱性も良好なPTFE多孔質膜単体で構成して、PTFE多孔質膜を直接筐体に溶着したいという要望がある。この要望を実現するためには、PTFE多孔質膜の膜厚を厚くして強度を確保する必要がある。
【0005】
一般に、PTFEからなる厚手の未焼成のシートを一軸方向にのみ延伸して多孔質化させれば、200〜300μmの厚みのPTFE多孔質膜を得ることが可能である。ところが、このような方法でPTFE多孔質膜の膜厚を厚くしただけは、通気性が低下してしまう。そこで通気性を向上させるために、延伸倍率を上げることが考えられるが、このようにすると耐水圧が低下することになる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、通気性および耐水圧が高く、かつ、膜厚の厚いPTFE多孔質膜を製造することができる製造方法、およびこの製造方法により製造されるPTFE多孔質膜、ならびにこのPTFE多孔質膜を用いた防水通気フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は、クリーンルーム用エアフィルタなどに用いられるPTFE多孔質膜が高い通気性および耐水圧を有していることに着目した。このフィルタ用PTFE多孔質膜は、PTFEからなる未焼成のシートを二軸方向に延伸して多孔質化させたものであるが、厚みが非常に薄いために圧力差解消の用途に用いられることはなかった。そこで、発明者は、PTFEからなるシートを一軸方向に延伸して得られた多孔体とPTFEからなるシートを二軸方向に延伸して得られた多孔体を重ね合わせることによってPTFE多孔質膜を構成することを思いついた。すなわち、シートを一軸方向に延伸して得られた多孔体によって厚みを確保し、シートを二軸方向に延伸して得られた多孔体によって耐水圧を確保しようとした。
【0008】
ところが、従来から使用していたPTFEを用いて上記のような構成のPTFE多孔質膜を製造してみると、良好な通気性が得られなかった。発明者は、鋭意検討した結果、比較的低い分子量の樹脂の方が高い通気性を有する多孔体を得られることを見出した。
【0009】
本発明は、このような観点からなされたものであり、分子量の目安である標準比重が2.155以上のPTFEからなるシートを一軸方向に延伸して第1多孔体を得る工程と、PTFEからなるシートを二軸方向に延伸して第2多孔体を得る工程と、前記第1多孔体と前記第2多孔体との積層体をPTFEの融点以上に加熱しながら前記一軸方向と同方向に延伸して第1多孔体と第2多孔体とを一体化する工程と、を含むPTFE多孔質膜の製造方法を提供する。
【0010】
ここで、標準比重(Standard Specific Gravity)とは、SSGとも称され、JIS K 6892に規定される物理測定法により測定される比重であり、分子量と逆の関係にある(分子量と負の相関を示す)ものである。
【0011】
また、本発明は、膜厚が70〜400μmの範囲内にあり、通気量がガーレー数で表示して2〜40秒/100mLの範囲内にあり、耐水圧が40〜300kPaの範囲内にある、積層構造を有するPTFE多孔質膜を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、通気を確保しつつ水の浸入を防止するための多孔性の基材を備えた防水通気フィルタであって、前記基材が上記のようなPTFE多孔質膜からなる防水通気フィルタを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1多孔体によって厚みを確保することができるとともに、第2多孔体によって耐水圧を確保することができる。しかも、第1多孔体は、標準比重が2.155以上のPTFEからなるシートを一軸方向に延伸して得られたものであるので、この第1多孔体を第2多孔体と重ね合わせても、良好な通気性のPTFE多孔質膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のPTFE多孔質膜の製造方法について説明する。この製造方法は、図1(a)〜図1(c)に示すような第1多孔体1と第2多孔体2で構成される積層構造を有するPTFE多孔質膜を得るためのものであり、第1工程から第3工程までの3つの工程からなる。
【0015】
第1工程では、未焼成のテープ状の第1シートを適宜加熱しながら長手方向の一軸方向にのみ延伸して、50μm以上200μm以下の厚みの第1多孔体を得る。
【0016】
第1シートは、標準比重が2.155以上のPTFEからなるものである。このようなPTFEとしては、各メーカー製の以下のものが挙げられる。
<旭硝子社製>
品名 標準比重 メーカー報告の数平均分子量
フルオンCD−014 2.20 200万
フルオンCD−1 2.20 200万
フルオンCD−145 2.19 800万
フルオンCD−123 2.155 1200万
<ダイキン工業社製>
品名 標準比重 メーカー報告の数平均分子量
ポリフロンF104 2.17 600万
ポリフロンF106 2.16 報告無し
<三井・デュポンフロロケミカル社製>
品名 標準比重 メーカー報告の数平均分子量
テフロン6−J 2.21 報告無し
テフロン65−N 2.16 報告無し
【0017】
延伸倍率は、延伸により多孔質化する常識的な倍率として、2倍以上15倍以下が好ましい。15倍以上の倍率では、厚い第1多孔体を得ることが困難なためである。
【0018】
また、延伸時の温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましいが、PTFEの融点未満の温度であることが好ましい。これは、PTFEの融点以上の温度で延伸すると、第1多孔体の表面が焼成されて、後述する第2多孔体との一体化に影響が出るからである。
【0019】
第2工程では、未焼成のテープ状の第2シートを適宜加熱しながら長手方向および幅方向の二軸方向に延伸して、10μm以上100μm以下の厚みの第2多孔体を得る。
【0020】
第2シートは、PTFEからなるものである。このPTFEは、特に制限されるものではなく、種々の市販のものを使用できる。例えば、ダイキン工業社製のF101HE(標準比重:2.143)のように標準比重が2.155未満のPTFEを用いてもよい。なお、メーカーからの報告では、F101HEの数平均分子量は約1000万である。
【0021】
第2シートは、まず長手方向に延伸され、その後に幅方向に延伸される。長手方向への延伸倍率は、4倍以上20倍以下が好ましく、幅方向への延伸倍率は、5倍以上50倍以下が好ましい。
【0022】
また、長手方向への延伸時の温度は、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。幅方向への延伸時の温度は、50℃以上、好ましくは100℃以上で十分である。さらに、本工程では、延伸時の温度はPTFEの融点を超える温度であってもよい。ただし、PTFEの融点を超える温度では、幅方向に10倍以上の高い倍率に延伸することは難しい。また、PTFEの融点を超える温度では、第2多孔体の表面が焼成されることで耐水圧の低下を招くこともあるため、延伸時の温度は要求されるPTFE多孔質膜の特性に応じて適宜設定するとよい。
【0023】
第3工程では、まず、第1工程で得られた第1多孔体と第2工程で得られた第2多孔体を圧着して積層体を得る。具体的には、第2多孔体の片面もしくは両面に第1多孔体を両多孔体の長手方向が同方向となるように重ねた状態で、これらをメタルロールとゴムロールで構成されるロール対で圧着する。圧着時の圧力としては、ロールを押すシリンダーの空気圧で1kg/cm2程度であり、ロールとしては、例えば直径20cmのものを用いることができる。
【0024】
第2多孔体の片面または両面に重ねられる第1多孔体の枚数は、1枚であっても2枚以上であってもよく、要求されるPTFE多孔質膜の膜厚に応じて適宜決定すればよい。
【0025】
なお、積層体は、必ずしも第1多孔体と第2多孔体とが圧着されたものである必要はなく、第1多孔体と第2多孔体とを重ね合わせたままの状態で次の工程で延伸してもよい。
【0026】
ついで、得られた積層体をPTFEの融点以上に加熱しながら第1工程で延伸した方向と同方向である長手方向に少なくとも1回以上延伸して、第1多孔体と第2多孔体とを、第1多孔体を片側に複数枚重ねる場合は第1多孔体同士をも合わせて、一体化する。これにより、通気性および耐水圧が高く、かつ、膜厚の厚い積層構造を有するPTFE多孔質膜、すなわち、膜厚が70〜400μmの範囲内にあり、通気量がガーレー数で表示して2〜40秒/100mLの範囲内にあり、耐水圧が40〜300kPaの範囲内にあるPTFE多孔質膜を得ることができる。そして、得られたPTFE多孔質膜においては、第1多孔体が一軸方向にのみ延伸された構造を有し、前記第2多孔体が二軸方向に延伸された構造を有している。
【0027】
延伸倍率は、目的とする通気性を得るために適宜選定可能であるが、1.1倍以上5倍以下が好ましい。
【0028】
また、積層体の加熱温度、すなわち延伸時の温度は、PTFEの融点以上であれば特に制限されないが、360℃以上400℃以下が好ましい。
【0029】
なお、1回の延伸で積層された層間の接着強度が不十分である場合は、2回以上延伸を行うことが好ましい。この場合の層間の接着強度は、各層(第1多孔体または第2多孔体)を手で剥がそうとした場合に層間の境界で剥離するようであれば不十分である。そこで、剥離せずに接着強度が十分になるように延伸の条件(回数など)を決定するとよい。
【0030】
また、本工程での延伸回数は、回数が増えると通気性が増加する一方で耐水圧が低下するため、要求されるPTFE多孔質膜の特性に応じて適宜決定する必要がある。
【0031】
上記のようにして得られたPTFE多孔質膜は、例えば円盤状に切断されて、図2(a)および図2(b)に示すような筐体4の内部と外部の圧力差を解消するための防水通気フィルタとなり、筐体4の開口4aを塞ぐように筐体4に溶着される。あるいは、PTFE多孔質膜の周縁部上に例えば両面テープなどの接着層3を形成し、この接着層3によってPTFE多孔質膜を開口4aの周縁部に接着するようにしてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に何ら制限されるものではない。
【0033】
なお、本実施例中でいう通気量は、JIS P 8117(ガーレー法)によるものである。これは、一定圧力下で100mLの空気が流れるのに要する時間を示したものであり、値が小さいほど通気性が高いことを示す。また、耐水圧は、JIS L 1092−B(高水圧法)によるものである。
【0034】
(実施例1)
旭硝子社製のPTFE樹脂であるCD−145(標準比重:2.19)を用いて、厚み0.3mmのテープ状の未焼成シートを常法により作製した。これを長手方向の一軸にのみ280℃で4倍に延伸して第1多孔体を得た。得られた第1多孔体の厚みは170μm、通気量は18秒/100mL、耐水圧は70kPaであった。
【0035】
次に、ダイキン工業社製のPTFE樹脂であるF101HEを用いて、厚み0.2mmのテープ状の未焼成シートを作製した。これを、まず長手方向に280℃で4倍に延伸した後、幅方向に130℃で25倍に延伸して、第2多孔体を得た。得られた第2多孔体の厚みは15μm、通気量は2秒/100mL、耐水圧は420kPaであった。
【0036】
第2多孔体の両面に第1多孔体を1枚ずつ重ねた状態で(図1(b)参照)、これらをロール対で圧着して積層体を得た。このとき、第1多孔体と第2多孔体は見かけ上一体化されているが、手で剥がそうとすると剥がれるような状態である。
【0037】
次に、得られた積層体を、380℃の炉の中に1分間以上滞留するような速度で、長手方向に2倍に延伸して第1多孔体と第2多孔体とを一体化してPTFE多孔質膜を得た。得られたPTFE多孔質膜の膜厚は300μm、通気量は15秒/100mL、耐水圧は350kPaであった。
【0038】
(実施例2)
実施例1で得られたPTFE多孔質膜を、380℃の炉の中に1分間以上滞留するような速度で、さらに1.2倍に延伸した。最終的なPTFE多孔質膜の膜厚は300μm、通気量は10秒/100mL、耐水圧は250kPaであった。
【0039】
(実施例3)
旭硝子社製のPTFE樹脂であるCD1(標準比重:2.20)を用いて、厚み0.3mmのテープ状の未焼成シートを常法により作製した。これを長手方向の一軸にのみ280℃で4倍に延伸して第1多孔体を得た。得られた第1多孔体の厚みは170μm、通気量は10秒/100mL、耐水圧は40kPaであった。
【0040】
次に、ダイキン工業社製のPTFE樹脂であるF101HEを用いて、厚み0.2mmのテープ状の未焼成シートを作製した。これを、まず長手方向に280℃で4倍に延伸した後、幅方向に130℃で25倍に延伸して、第2多孔体を得た。得られた第2多孔体の厚みは15μm、通気量は2秒/100mL、耐水圧は420kPaであった。
【0041】
第2多孔体の両面に第1多孔体を1枚ずつ重ねた状態で(図1(b)参照)、これらをロール対で圧着して積層体を得た。このとき、第1多孔体と第2多孔体は見かけ上一体化されているが、手で剥がそうとすると剥がれるような状態である。
【0042】
次に、得られた積層体を、380℃の炉の中に1分間以上滞留するような速度で、長手方向に2倍に延伸して第1多孔体と第2多孔体とを一体化してPTFE多孔質膜を得た。得られたPTFE多孔質膜の膜厚は300μm、通気量は10秒/100mL、耐水圧は350kPaであった。
【0043】
(実施例4)
実施例3で得られたPTFE多孔質膜を、380℃の炉の中に1分間以上滞留するような速度で、さらに1.2倍に延伸した。最終的なPTFE多孔質膜の膜厚は300μm、通気量は5秒/100mL、耐水圧は250kPaであった。
【0044】
(実施例5)
実施例3と同様にして得た第1多孔体および第2多孔体を用い、第1多孔体を2枚、第2多孔体を1枚、第1多孔体1枚をこの順で重ねた状態で(図1(c)参照)、実施例3と同様にそれらを一体化してPTFE多孔質膜を得、このPTFE多孔質膜に対してさらに実施例4と同様に2回目の延伸を行った。最終的なPTFE多孔質膜の膜厚は410μm、通気量は7秒/100mL、耐水圧は250kPaであった。
【0045】
(比較例1)
ダイキン工業社製のPTFE樹脂であるF101HE(標準比重:2.143)を用いて、厚み0.3mmのテープ状の未焼成シートを常法により作製した。これを長手方向の一軸にのみ280℃で4倍に延伸して第1多孔体を得た。得られた第1多孔体の厚みは138μm、通気量は120秒/100mL、耐水圧は300kPaであった。
【0046】
次に、同じ樹脂であるF101HEを用いて、厚み0.2mmのテープ状の未焼成シートを作製した。これを、まず長手方向に280℃で4倍に延伸した後、幅方向に130℃で25倍に延伸して、第2多孔体を得た。得られた第2多孔体の厚みは15μm、通気量は2秒/100mL、耐水圧は420kPaであった。
【0047】
第2多孔体の両面に第1多孔体を1枚ずつ重ねた状態で、これらをロール対で圧着して積層体を得た。このとき、第1多孔体と第2多孔体は見かけ上一体化されているが、手で剥がそうとすると剥がれるような状態である。
【0048】
次に、得られた積層体を、380℃の炉の中に1分間以上滞留するような速度で、長手方向に2倍に延伸して第1多孔体と第2多孔体とを一体化してPTFE多孔質膜を得た。得られたPTFE多孔質膜の厚みは243μm、通気量は220秒/100mL、耐水圧は400kPaであった。
【0049】
得られたPTFE多孔質膜を、380℃の炉の中に1分間以上滞留するような速度で、さらに1.2倍に延伸した。最終的なPTFE多孔質膜の膜厚は240μm、通気量は211秒/100mL、耐水圧は310kPaであった。
【0050】
(比較例2)
第1多孔体を得る際の延伸倍率を10倍にした以外は比較例1と同様にしてPTFE多孔質膜を得た。得られたPTFE多孔質膜の膜厚は95μm、通気量は100秒/100mL、耐水圧は310kPaであった。
【0051】
(比較例3)
一体化する際の温度を330℃にした以外は実施例1と同様にしてPTFE多孔質膜を製造したが、得られたPTFE多孔質膜の第1多孔体を手で剥がそうとすると、第1多孔体が第2多孔体との境界で剥離した。
【0052】
(比較)
実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例3の特性値を表1にまとめる。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例1〜実施例5と比較例1を比較すると、分子量が高い樹脂を用いて第1多孔体を作製した比較例1に対して、分子量が低い樹脂を用いて第1多孔体を作製した実施例1〜実施例5では、通気性が格段に高くなっていることが分かる。また、実施例1〜実施例5では、耐水圧が250kPaまたは350kPaと比較的に高く保たれており、耐水圧も高いことがわかる。
【0055】
一方、比較例1に対して比較例2では、第1多孔体を得る際の延伸倍率が4倍から10倍に増大させられていて、通気性が改善されているが、膜厚が薄くなっている。これに対し、実施例1〜5では、膜厚が厚く、かつ、通気性が高くなっている。これは、第1多孔体を得る際の延伸倍率を増大させるだけでは、膜圧の確保が難しい上に十分な通気性が得られないが、第1多孔体を得る際に分子量が低い樹脂を用いれば、膜厚を確保することができるとともに通気性を効果的に高めることができることを意味している。
【0056】
以上の結果から、本発明の製造方法によれば、分子量の低い樹脂、換言すれば標準比重が2.155以上の樹脂を用いて第1多孔体を作製すれば、通気性および耐水圧が高く、かつ、膜厚の厚いPTFE多孔質膜を得ることができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係るPTFE多孔質膜の断面図である。
【図2】(a)は、図1(b)のPTFE多孔質膜上に接着層を形成した防水通気フィルタの平面図、(b)は、同防水通気フィルタの断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 第1多孔体
2 第2多孔体
3 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準比重が2.155以上のポリテトラフルオロエチレンからなるシートを一軸方向に延伸して第1多孔体を得る工程と、
ポリテトラフルオロエチレンからなるシートを二軸方向に延伸して第2多孔体を得る工程と、
前記第1多孔体と前記第2多孔体との積層体をポリテトラフルオロエチレンの融点以上に加熱しながら前記一軸方向と同方向に延伸して第1多孔体と第2多孔体とを一体化する工程と、
を含むポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
【請求項2】
前記第1多孔体を得る工程では、前記シートをポリテトラフルオロエチレンの融点未満の温度で2倍以上の倍率に延伸する請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
【請求項3】
前記第1多孔体を得る工程では、50μm以上200μm以下の厚みの第1多孔体を得る請求項1または2に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
【請求項4】
前記第2多孔体を得る工程では、10μm以上100μm以下の厚みの第2多孔体を得る請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
【請求項5】
膜厚が70〜400μmの範囲内にあり、通気量がガーレー数で表示して2〜40秒/100mLの範囲内にあり、耐水圧が40〜300kPaの範囲内にある、積層構造を有するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
【請求項6】
前記積層構造として、第1多孔体と第2多孔体とが積層された構造を有し、
前記第1多孔体は、一軸方向にのみ延伸された構造を有するものであり、前記第2多孔体は、二軸方向に延伸された構造を有するものである、請求項5に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
【請求項7】
前記第1多孔体は、ポリテトラフルオロエチレンからなるシートが一軸方向にのみ延伸されることにより構成されたものであって、さらに前記一軸方向にのみ延伸されたものであり、
前記第2多孔体は、ポリテトラフルオロエチレンからなるシートが二軸方向に延伸されることにより構成されたものであって、さらに前記二軸方向のうちの一方の一軸方向に延伸されたものである、請求項6に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
【請求項8】
通気を確保しつつ水の浸入を防止するための多孔性の基材を備えた防水通気フィルタであって、
前記基材が請求項5〜7のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜からなる防水通気フィルタ。
【請求項9】
前記ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜上に形成された接着層をさらに備えた請求項8に記載の防水通気フィルタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−137181(P2009−137181A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316715(P2007−316715)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】