説明

ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物およびその製造方法

【課題】誘電率が低く、成形加工性、耐熱性、耐衝撃性、延性に優れ、かつ安価な樹脂組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】(A)ポリフェニレンエーテル、(B)ポリフェニレンスルフィド、および(C)ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体またはエポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体を含み、前記成分(A)が連続相、前記成分(B)および成分(C)が分散相である樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテルを含む樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル(PPE)は安価であり、低誘電率で耐熱性に優れるが、成形加工性が悪く、単独ではほとんど成形加工できないという問題があった。一方、ポリフェニレンスルフィド(PPS)は耐熱性、剛性、難燃性、耐薬品性などに優れているが、延性、耐衝撃性が低い、誘電率が高い、高価であるなどの問題があった。
【0003】
このため、従来、PPEとPPSとを組み合わせて樹脂の特性を改良する試みがなされてきた。例えば、特開昭50−156561号公報(特許文献1)には、ポリフェニレンスルフィドとポリフェニレンエーテルとからなる樹脂組成物が記載されている。特開平03−20356号公報(特許文献2)、特開平10−95926号公報(特許文献3)、および特開2007−23078号公報(特許文献4)には、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、およびグリシジルメタクリレートとスチレンとの共重合体を含む樹脂組成物が記載されている。国際公開第2009/088092号(特許文献5)にはポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、およびエチレンとグリシジルメタクリレートとの共重合体からなる組成物が記載されている。
【0004】
これらの特許文献1〜5に記載の樹脂組成物は、ポリフェニレンスルフィドが連続相であるために誘電率が高く、耐衝撃性および延性が不十分であり、かつ高価であった。また特許文献4の比較例にはポリフェニレンエーテルが連続相と思われる樹脂組成物が開示されているが、成形性に著しく劣るため実用的でなかった。
【0005】
この他に、ポリフェニレンスルフィドが連続相、ポリフェニレンエーテルが分散相である樹脂組成物として、第三成分として、無水マレイン酸などで変性したブロック共重合体を含む樹脂組成物(特開昭58−40350公報:特許文献6)、変性ポリオレフィンおよび熱可塑性エラストマーを含む樹脂組成物(特開平1−213361号公報:特許文献7)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体を含む樹脂組成物(特開平2−86652号公報:特許文献8)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体およびスチレン−ブタジエン−スチレン系ブロック共重合体を含む樹脂組成物(特開平4−318067号公報:特許文献9)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ブロック共重合体またはオキサゾリン含有スチレン系共重合体を含む樹脂組成物(特開平09−161737号公報:特許文献10、特開平10−53706号公報:特許文献11)が提案されている。
【0006】
しかしながら、特許文献5〜11に記載の樹脂組成物は、誘電率、成形加工性、耐熱性、耐衝撃性、延性、コストの面において満足できるレベルにはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭50−156561号公報
【特許文献2】特開平03−20356号公報
【特許文献3】特開平10−95926号公報
【特許文献4】特開2007−23078号公報
【特許文献5】国際公開第2009/088092号
【特許文献6】特開昭58−40350公報
【特許文献7】特開平1−213361号公報
【特許文献8】特開平2−86652号公報
【特許文献9】特開平4−318067号公報
【特許文献10】特開平09−161737号公報
【特許文献11】特開平10−53706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情を鑑み、本発明は、誘電率が低く、成形加工性、耐熱性、耐衝撃性、延性に優れ、かつ安価な樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、グラフトしたエポキシ基含有エチレン系共重合体またはエポキシ基含有スチレン系ブロック共重合体を第三成分として用いることで、前記課題を解決した。すなわち、前記課題は以下の本発明:
(A)後述する化学式(1)で示される繰り返し単位を90モル%以上含む、ポリフェニレンエーテル、(B)後述する化学式(2)で示される繰り返し単位を70モル%以上含むポリフェニレンスルフィド、および(C)ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体またはエポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体を含み、前記成分(A)が連続相、前記成分(B)および成分(C)が分散相である樹脂組成物により解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、誘電率が低く、成形加工性、耐熱性、耐衝撃性、延性に優れ、かつ安価な樹脂組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例3で得た樹脂組成物の透過型電子顕微鏡写真
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳細に説明する。本明細書において「〜」はその両端の値を含む。
【0013】
1.本発明の樹脂組成物
(1)ポリフェニレンエーテル(成分A)
本発明で用いる成分(A)のポリフェニレンエーテルは、下記化学式(1)で示される単位を90モル%以上含み、好ましくは95モル%以上含む。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、R1,R2,R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜7の第一級もしくは第二級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、および、ハロゲン原子と酸素原子が少なくとも2個の炭素原子を介して結合されているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される。
【0016】
ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基の炭素数は、好ましくは1〜7である。ハロ炭化水素オキシ基の炭素数は、好ましくは2〜7である。
【0017】
R1およびR2は、それぞれ独立して炭素数1〜3の第一級アルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。またR3およびR4は、水素であることが好ましい。
【0018】
上記化学式(1)で示される単位以外の単位としては、ビニル芳香族化合物が挙げられる。例えば、上記化学式(1)で示される単位からなる重合体に、ビニル芳香族化合物をグラフト重合したポリフェニレンエーテルを用いることができる。
【0019】
ポリフェニレンエーテルの具体例には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリエチルフェノール共重合体、2,6−ジエチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体、および2,6−ジプロピルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体が含まれる。
【0020】
また、ポリフェニレンエーテルとして、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)にスチレンをグラフト重合した共重合体、2,6−ジメチルフェノール/2,3,6−トリメチルフェノール共重合体にスチレンをグラフト重合した共重合体を用いてもよい。
【0021】
中でも、ポリフェニレンエーテルとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が好ましい。
【0022】
ポリフェニレンエーテルの末端基が後述する成分(C)中のエポキシ基と反応できると、ポリフェニレンエーテルと成分(C)の相溶性が向上するので好ましい。このような末端基の例には、フェノール基およびフェノラート基が含まれる。
【0023】
ポリフェニレンエーテルは、好ましくは、クロロホルム中、30℃の固有粘度が、0.2〜0.8dl/g程度、さらに好ましくは0.3〜0.6dl/g程度となるような分子量を有する。
【0024】
また、ポリフェニレンエーテルは、無水マレイン酸、グリシジルメタクリレート、スチレン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−[4−2,3−エポキシプロポキシ)−2,5−ジメチルフェニルメチル]アクリルアミド、トリメトキシビニルシラン等で変性されていてもよい。
【0025】
ポリフェニレンエーテルは、通常、構成単位(モノマー)の酸化カップリングにより製造される。ポリフェニレンエーテルの酸化カップリング重合に関しては、数多くの触媒が知られている。触媒の選択に関しては特に制限はなく、公知の触媒のいずれも用いることができる。すなわち、例えば銅、マンガン、コバルト等の重金属化合物の少なくとも一種を用いて重合されたポリフェニレンエーテルを用いてよい。この触媒の残渣が後述する成分(C)中のエポキシ基と反応するとポリフェニレンエーテルと成分(C)の相溶性が向上するので好ましい。このような触媒としては第3級アミンと第一銅塩などが挙げられ、ポリフェニレンエーテルは触媒残渣として、アミンを50ppm以上含んでいてもよい。
【0026】
(2)ポリフェニレンスルフィド(成分B)
本発明で用いる成分(B)は、下記の化学式(2)で示される繰り返し単位を70モル%以上含むポリフェニレンスルフィドである。
【0027】
【化2】

【0028】
耐熱性を向上させる観点から、前記の化学式(2)で示される単位の含有量は、80モル%以上が好ましい。
【0029】
また、ポリフェニレンスルフィドは、下記の化学式で示される単位を30モル%未満含んでいてもよい。
【0030】
【化3】

【0031】
ポリフェニレンスルフィドは、定法、例えば特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される方法により合成できる。また、市販されているポリフェニレンスルフィドを用いてもよい。
【0032】
上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィドは、種々の処理が施されていてもよい。この処理の例には、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で行われる熱処理または熱水などによる洗浄、および酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物等の官能基含有化合物による活性化処理が含まれる。
【0033】
ポリフェニレンスルフィドは、後述する成分(C)中のエポキシ基と反応しうる官能基を有することが好ましい。かかる官能基を有するポリフェニレンスルフィドは、成分(C)と反応してポリフェニレンスルフィドと成分(C)の相溶性を向上させ、樹脂組成物の耐衝撃性や加工性等を向上させる。エポキシ基と反応しうる官能基としては、スルファニル基(メルカプト基)、エポキシ基、カルボキシル基などが挙げられるが、中でも反応性に優れるスルファニル基が好ましい。
【0034】
ポリフェニレンスルフィドのASTM D648に基づく熱変形温度(1.82MPa荷重)は、90〜130℃であることが好ましい。また、ポリフェニレンスルフィドの比重は、1.2〜1.4が好ましい。ポリフェニレンスルフィドの示差走査熱量測定による融点は、好ましくは265〜295℃、さらに好ましくは270〜290℃である。このようなポリフェニレンスルフィドは、特に耐熱性に優れた樹脂組成物を与える。
【0035】
ポリフェニレンスルフィドの分子量は特に制限されないが、重量平均分子量で好ましくは10,000以上、さらに好ましくは15,000以上、より好ましくは18,000以上である。分子量がこのような範囲にあるポリフェニレンスルフィドを用いると、組成物としての成形性、物性などが良好となる上に、末端に存在する官能基の量が適量となる。
【0036】
(3)ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体、エポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体(成分C)
本発明では、成分(C)として前記のエポキシ基を含有する共重合体を用いる。これらは単独で使用してもよいし、併用してもよい。以下、各共重合体を説明する。
【0037】
(3−1)ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体
当該共重合体は、エチレン系二元共重合体またはエチレン系三元共重合体の幹にポリスチレン鎖がグラフトしている共重合体である。幹であるエチレン系二元共重合体は、(a)エチレン単位と、(b)エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位とからなる共重合体である。幹であるエチレン系三元共重合体は、(a)エチレン単位と、(b)エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位と、(c)酢酸ビニル単位またはアクリル酸メチル単位とからなる共重合体である。エチレン単位とは、共重合体中のエチレンに由来する部分をいい、具体的には−(CH−CH)−で表される単位をいう。エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位等も同様に定義される。
【0038】
エチレン系二元共重合体の組成は、(a)単位:(b)単位の比が95〜40質量%:5〜60質量%であることが好ましく、90〜50質量%:10〜50質量%であることが好ましい。エチレン系三元共重合体の組成は、(a)単位:(b)単位:(c)単位の比が40〜94質量%:1〜20質量%:5〜40質量%であることが好ましく、50〜90質量%:2〜15質量%:8〜35質量%であることが好ましい。(b)エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位を与える化合物は、それぞれ下記化学式(b1)、(b2)で表される。
【0039】
【化4】

【0040】
化学式(b1)において、Rは、一つのエチレン結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基である。Rの炭素数は、好ましくは2〜10である。
【0041】
化学式(b1)で表されるエチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位としては、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸ジグリシジル等のα,β−不飽和カルボン酸グリシジルが挙げられる。
【0042】
【化5】

【0043】
化学式(b2)において、Rは、一つのエチレン結合を有する炭素数2〜13の炭化水素基である。また、Xは、−CH−O−または下記化学式(b2−1)で表される基である。Rの炭素数は、好ましくは2〜10である。
【0044】
【化6】

【0045】
幹中のエポキシ基は、成分(B)のポリフェニレンスルフィドの末端基と反応し、かつ成分(A)のポリフェニレンエーテルの末端基または触媒残渣とも反応しうる。
【0046】
一方、グラフト鎖であるポリスチレン鎖はスチレンを繰り返し単位とする鎖であり、成分(A)のポリフェニレンエーテルと相溶する。従って、成分(C)のグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体は、成分(A)と(B)とに対する相溶化剤として機能する。
【0047】
この相溶化効果を最適とするために、グラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体における幹とスチレン鎖との質量比は、50〜99質量:50〜1質量であることが好ましく、60〜80質量:40〜20質量であることがより好ましい。
【0048】
また、グラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体において、エポキシ基含有エチレン共重合体中のグリシジルメタクリレート含量は2〜40質量%が好ましく、4〜30質量%がより好ましく、6〜25質量%がさらに好ましい。
【0049】
また相溶化効果はポリスチレンをグラフトしたエチレン系共重合体の粘度にも影響を受ける。このためポリスチレンをグラフトしたエチレン系共重合体のMFRは、0.01〜50g/10分が好ましく、0.05〜30g/10分がより好ましく、1.0〜18.0g/10分がさらに好ましい。MFRはJIS K7210に準拠して、樹脂温度190℃、測定荷重21N(2.16kg・f)の条件で測定される。このMFRが0.01g/10分未満、または50g/10分を超えると、グラフトエチレン系共重合体とポリフェニレンスルフィド等との親和性が低下したり、得られる成形品の外観が悪化したりすることがある。
【0050】
エチレン系共重合体セグメントと、ビニル系重合体セグメントとを結合するには、公知の方法を用いてよい。例えば、特開平2007−63506号公報に記載のとおり、エチレン系三元共重合体セグメントの溶液に、過酸化物存在の下、ビニル系単量体を加えてビニル系単量体を重合して得ることができる。
【0051】
(3−2)エポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体
当該共重合体は、スチレン系ブロック共重合体にエポキシ変性を施した重合体である。スチレン系ブロック共重合体とはスチレンと共役ジエン化合物とのブロック共重合体である。共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエンなどを挙げることができ、ブタジエンまたはイソプレンが好ましい。スチレン系ブロック共重合体は水添処理されたものであってもよい。本発明においては、入手容易性等からスチレン−ブタジエン−スチレンのトリブロック共重合体が好ましい。このようなスチレン系ブロック共重合体またはその水添物は、例えば、特公昭40−23798号公報、特開昭59−133203号公報に記載の方法で調製できる。
【0052】
スチレン系ブロック共重合体をエポキシ変性するとは、スチレン系ブロック共重合体にグリシジル基を有する化合物を導入することである。グリシジル基を有する化合物としては、不飽和グリシジルエステル類、不飽和グリシジルエーテル類、エポキシアルケン類などが挙げられ、その具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、ブテンカルボン酸グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。入手容易性等からグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートが好ましい。
【0053】
グリシジル基を有する化合物をスチレン系ブロック共重合体に導入する方法は特に限定されないが、当該化合物をスチレン系ブロック共重合体にグラフト共重合すること等によって導入できる。この際、グリシジル基を有する化合物は、スチレン系ブロック共重合体のブタジエンブロックに導入されることが好ましい。前述のとおり、スチレンブロックは成分(A)のポリフェニレンエーテルとほぼ完全に相溶するので、エポキシ基の導入によりこの相溶性が低下することが回避できる。導入されたエポキシ基が自由に動けると成分(A)または(B)との反応性がより高まるので、エポキシ基はブタジエンブロック主鎖中に存在するのではなく、ブタジエンブロックから伸びるグラフト鎖中に存在していることがより好ましい。
【0054】
エポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体中のエポキシ基含量はオキシラン酸素濃度で表すことができる。オキシラン酸素濃度は、ASTM−1652に従い、ブロック共重合体に占めるエポキシ基に由来するオキシラン酸素の質量%を、臭化水素の酢酸溶液を用いて滴定して求めることができる。オキシラン酸素濃度は0.1〜8質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.4〜3質量%がさらに好ましい。オキシラン酸素濃度がこれらの範囲外であると成分(C)の反応性が不十分、または組成物の成型加工性が不十分になることがあり好ましくない。
【0055】
エポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体におけるスチレンの含有量は、2質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。また、スチレンの含有量は80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0056】
エポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体のMFRは、0.01〜50g/10分が好ましく、0.03〜35g/10分がより好ましく、1.0〜20.0g/10分がさらに好ましい。MFRはJIS K7210に準拠して、樹脂温度190℃、測定荷重21N(2.16kg・f)の条件で測定される。このMFRが0.01g/10分未満、または50g/10分を超えると、グラフトエチレン系共重合体とポリフェニレンスルフィド等との親和性が低下したり、得られる成形品の外観が悪化したりすることがある。
【0057】
(4)組成比
各成分の組成比は、成分(A)が連続相であり、成分(B)および成分(C)が分散相になるように決定される。連続相とは、樹脂組成物のマトリックスを形成する相であり、いわゆる海島構造における海を構成する相である。分散相とは系内に存在するドメイン状の相である。具体的には、前記成分(A)と(B)の質量比は、55〜95/45〜5が好ましく、57〜90/43〜10がより好ましい。質量比がこれらの範囲外であると、成分(B)が連続相を形成する場合があるので好ましくない。成分(C)の量は、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して、1〜50質量部が好ましく、2〜45質量部がより好ましく、4〜40質量部がさらに好ましい。相構造については後で詳しく述べる。
【0058】
(5)他の成分
本発明の樹脂組成物は、さらに電気伝導性付与物質を加え、電気伝導性樹脂組成物とすることができる。電気伝導性付与物質としては、カーボンブラック、カーボン繊維、グラファイト、金属ファイバー、カーボンナノチューブ、金属酸化物、帯電防止用可塑剤などが挙げられる。中でもカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ミディアムサーマルカーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられる。中でもアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物には、さらに用途、目的に応じて他の配合剤、例えばタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ワラスナイトのような無機充填剤、カップリング剤、補強剤、難燃助剤、安定剤、顔料、離型剤、またはエラストマー等の耐衝撃改良剤等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、成分(A)、(B)および(C)の合計100質量部に対して、45質量部以下、好ましくは20質量部以下である。
【0060】
特に本発明の樹脂組成物には、ガラス繊維を配合することが好ましい。ガラス繊維を配合することにより、該樹脂組成物の耐熱性、曲げ弾性率などがさらに向上する。ガラス繊維は、公知のものを使用できる。例えば、Aガラス、Cガラス、Eガラス、Sガラスなどからなるガラス繊維が使用できる。ガラス繊維は表面処理が施されていてもよい。中でも、シランで表面処理したガラス繊維が好ましい。また、ガラス繊維の数平均ガラス繊維長は、好ましくは10〜1000μmである。このようなガラス繊維としては、チョップドストランド、ミルドガラス、長繊維などが挙げられるが、径が3〜30μm、繊維長が1〜3mmのチョップドストランドのガラス繊維が好ましい。
【0061】
(6)本発明の樹脂組成物の相構造および特性
本発明の樹脂組成物は、成分(A)のポリフェニレンエーテルが連続相であり、他の成分は分散相を形成する。成分(A)が連続相となることで、高い耐熱性、低い誘電率を有し、かつ安価な樹脂組成物となる。また、成分(B)が分散相となることで、より高い耐熱性が得られる。成分(B)の分散相の数平均粒子径は0.1〜7μmが好ましく、0.1〜5μmがさらに好ましく、0.1〜3μmがさらに好ましい。
【0062】
前述のとおり、成分(C)は成分(A)および成分(B)の両者と反応しうる。モルフォロジー的には成分(C)は成分(A)の連続相中、成分(B)の分散相中、および成分(A)相と成分(B)相の境界面に存在できる。成分(C)が成分(A)相と成分(B)相の両方に微粒子として分散している相構造が好ましい。連続相中および分散相中を含む組成物全体における成分(C)の数平均粒子径は0.05〜3μmが好ましく、0.05〜2μmがより好ましい。成分(C)のために成分(A)と成分(B)の相溶性が増すと共に、組成物の耐衝撃性などが向上する。
【0063】
本発明の樹脂組成物は、このような特徴ある相構造を有するので、従来の樹脂組成物とは異なり、耐熱性、低誘電率を実現しながら、耐衝撃性や延性などにも優れると推察される。
【0064】
相構造は、透過型電子顕微鏡像で観察できる。すなわち、該組成物を酸化ルテニウムなどで染色処理したのち、ミクロトームなどを使用してその超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡で相構造を観察できる。その際、酸化ルテニウムで切片を染色すると、成分(C)は最も染色され易く黒のコントラスト、成分(B)が濃い灰色のコントラスト、成分(C)は最も弱いコントラストを示すことから、樹脂組成物中の各成分の形態を観察できる。
【0065】
図1は、後述の実施例3で得た樹脂組成物(成分(A)(PPE)/成分(B)(PPS)/成分(C−1)=60/30/10 (質量比))における透過型電子顕微鏡像である。図中、成分(A)は連続相を形成し、成分(B)は連続相中にドメインを形成している。図中、このドメインのサイズは0.2〜3μmである。一方、成分(C)は成分(A)中と成分(B)中、および成分(A)と成分(B)との境界面に分散している。組成物系内における成分(C)のサイズは0.03〜0.4μmである。このような特徴のモルフォロジーを形成することで、本発明の樹脂組成物は優れた特性を示す。
【0066】
本発明の樹脂組成物の誘電率は、周波数1kHzで測定した場合に2.3〜2.8であることが好ましく、2.5〜2.7であることがより好ましい。
【0067】
2.本発明の樹脂組成物の製造方法
樹脂組成物は、成分(A)と(B)と(C)とを溶融混練して製造できる。溶融混練には、バッチ式二軸混練機、一軸押し出し機、あるいは二軸押し出し機などの混練機を用いることができるが、工業的には、強混練が可能で連続して溶融混練が可能な二軸押し出し機を用いることが好ましい。溶融混練温度は、260〜330℃が好ましく、280〜320℃がさらに好ましい。
【0068】
本発明の樹脂組成物において、前記成分を溶融混練する工程は、混練機を用い、かつ以下のように定義される混練機のせん断速度の最大値が600sec−1以上となるように混練されることが好ましい。
【0069】
混練機のせん断速度Sは、以下の式(i)で定義される。
【0070】
S=π・Dm・N/h (i)
Sはせん断速度、Nはスクリュー毎秒回転数、hはクリアランスである。混練機が一軸または二軸の押出し機である場合は、Dmはスクリュー溝の平均径である。スクリュー溝の平均径とは、スクリューの各溝部分(凹部)におけるスクリュー径の平均値である。
【0071】
また、混練機がラボプラストミルのようなディスクを使用したバッチ式の混練機の場合には、Dmは、シリンダー内径とディスク長軸直径の差で定義される。
【0072】
クリアランスとは、スクリューまたはディスクと混練機壁面との間の距離であり、チップクリアランスともいう。スクリューは、一部にニーディング部分を含む場合等があり、そのクリアランスはスクリューの長手方向で異なる場合がある。このような場合、本発明においては、クリアランスはスクリュー全体の平均値とするか、またはニーディング部分以外のクリアランスの平均値として計算することもできる。
【0073】
せん断速度の最大値とは、溶融混練工程において発生する最大のせん断速度を意味する。通常の溶融混練工程においては、Dmとhは変更されないため、Nの回転数によって、せん断速度Sは調整される。溶融混練工程とは、ポリフェニレンスルフィドが溶融する温度である、混練機の設置温度を280〜320℃とした場合を意味する。
【0074】
混練機のせん断速度が大きくなるほど、混練の度合いを強めることができる。よって、本発明においては、混練機のせん断速度の最大値は600sec−1以上が好ましく、800sec−1以上がより好ましく、900sec−1以上がさらに好ましい。1200sec−1以上が特に好ましい。
【0075】
本発明においては、成分(A)〜(C)を一括して溶融混練してよい。また、成分(A)と(C)とをあらかじめ溶融混練した後に成分(B)を加えて溶融混練する方法、成分(B)と(C)とをあらかじめ溶融混練した後に成分(A)を加えて溶融混練する方法を用いてもよい。さらには、成分(A)と(C)とを押出し機の上流側から押出し機に供給し、成分(B)を押出し機の下流側から押出し機に供給して溶融混練する方法、または、成分(B)と(C)とを押出し機の上流側から押出し機に供給し、成分(A)を押出し機の下流側から押出し機に供給して溶融混練する方法を用いてもよい。
【0076】
3.本発明の樹脂組成物の加工方法および用途等
本発明の樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂成形品に用いられている加工方法により容易に成形品に加工される。加工方法の例には、射出成形や押出成形、フィルム・シート成形、繊維成形、真空成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、発泡成形等が含まれる。本発明における樹脂組成物は、耐熱性、耐衝撃性、延性、成形加工性などに優れ、低誘電率であり、しかも安価であることから、上記の成形加工法を本発明の樹脂組成物へ適用することにより、電気・電子部品、通信部品、包装用などのフィルム・シート、繊維、自動車部品などへ幅広く適用できる。中でも、本発明の樹脂組成物の誘電率は低いので高速通信分野への適用が期待される。
【0077】
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物からなる基板、およびこの基板の上に金属層を含む積層体として用いられる。基板とは、積層体のベースとなる板状またはフィルム状部材であり、公知の方法で得てよい。例えば、基板は、フィルム、シート、押し出し成形品、あるいは射出成形により得ることができる。
【0078】
金属層は、基板の表面にメッキ処理や金属箔の貼り合わせ処理を施して形成できる。かかるメッキ処理には、電解メッキ、気相メッキ、化学メッキ、溶融メッキなど、既存の方法を適用できるが、電解メッキ、化学メッキが好ましい。電解メッキは、電解液中に基板を浸漬したのち電気を通し、液中の金属イオンを基板の表面に析出させる方法である。電解液中のメッキ金属としては、銅、ニッケル、金、銀、錫、アルミ、亜鉛、クロムなどを挙げることができるが銅が好ましい。
【0079】
金属箔の貼り合わせ処理は樹脂組成物のフィルム・シートに対して熱圧着法、あるいは接着層を両者間に介在させる方法などの周知の方法を適用して行なうことができる。金属箔は、特に限定されないが、その例には、金箔、銀箔、ステンレス箔、電解銅箔、圧延銅箔、銅合金箔、チタン箔、アルミ箔、ニッケル箔、銅−ニッケル箔、ニッケル−銅箔が含まれる。中でも電解銅箔、圧延銅箔、銅−ニッケル箔が好ましい。
【0080】
金属層の厚みは1〜500μmであることが好ましく、2〜300μmの厚みがさらに好ましい。
本発明の積層体は、回路を形成することにより、フレキシブルプリント基板、多層プリント基板などとして利用できる。
【0081】
本発明の樹脂組成物は、当該樹脂組成物からなる基板、およびこの基板の上に無機物層を含む積層体として用いてもよい。無機物層を形成する無機物の例には、炭素、酸化ケイ素、酸化アルミ、酸化マグネシウム、窒化チタン、酸化インジウム、シリコンなどが含まれる。無機物層を形成する方法の例には、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法などが含まれる。真空蒸着法においては、イオンビームを同時に照射するイオンビームアシスト法を用いてもよい。
【0082】
これらの積層体を製造するにあたり、基板に表面処理を施してもよい。表面処理法には、周知の方法を適用することができる。その例には、研磨処理、酸処理、アルカリ処理、UV照射処理、アルゴンまたは酸素雰囲気下での高周波放電によるプラズマ処理、イオンビーム処理が含まれる。本発明の積層体は、基板と、金属層もしくは無機層からなる二層構造でもよく、金属層と基板と金属層、または無機層と基板と無機層等からなる三層以上の積層体であってもよい。このような積層体はプリント配線基板、電気・電子部品、自動車構造材などへ適用可能である。
【実施例】
【0083】
以下に本発明を実施例により説明するが本発明はこれらに限定されない。
【0084】
(1)物性試験
・引張試験:株式会社東洋精機製作所製、ストログラフ VES 50型を使用し、ロードセル1kN、チャック間距離40mm、延伸速度10mm/minで引張試験を行なった。
・引張衝撃試験:株式会社東洋精機製作所製、DG digital impact testerを使用し、ハンマーの質量による負荷 4J、ハンマーの回転軸中心から重心までの距離 0.23mm、ハンマー持ち上げ角度 150°、周期 0.962sec、温度 20℃で、JIS7160に準拠して測定を行った。
・誘電率試験:90×90×0.5mmのフィルムを20℃、湿度60%の雰囲気で7日間放置した後、アジレントテクノロジー株式会社製、LCRメーター 4284Aを使用して、周波数1kHzで測定を行った。
・成形加工性:原料樹脂あるいは混練物を、310℃で予熱3分、圧力20MPaで5分間プレスし、その後20℃に急冷して、厚さ約0.5mmのシート成形を行い、以下の基準に基づいて評価した。
【0085】
○:上記の条件で容易にシート成形が可能であった。
×:上記の条件でのシート成形が不可であった。
【0086】
(2)樹脂組成物の成分
<成分(A)>
ポリフェニレンエーテル(PPE):三菱エンプラ株式会社製 ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル) ユーピレックス PX−100Fを使用した。この樹脂のクロロホルム中、30℃の固有粘度は0.4dl/gであった。
【0087】
<成分(B)>
ポリフェニレンスルフィド(PPS):東レ株式会社製 トレリナ A900を使用した。この樹脂の物性は以下のとおりであった。
【0088】
・熱変形温度(ASTM D648、1.82MPa荷重)105℃
・比重 1.34
・融点(DSC) 278℃
・ガラス転移温度 85℃
【0089】
<成分(C)>
スチレングラフトEGMA(C−1):日油株式会社製 モディパー A4100を使用した。この樹脂の組成、物性は以下のとおりであった。
・エチレン単位/エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル(EGMA)単位からなるセグメントに、スチレンセグメントがグラフトしているグラフト共重合体(セグメント比は70/30(質量比))、EGMA中のグリシジルメタクリレート含量は15質量%、
・融点 95℃
・ガラス転移温度 −28℃
【0090】
エポキシ化スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(C−2):ダイセル化学株式会社製 エポフレンド HT302 を使用した。この樹脂の組成、物性は以下のとおりであった。
・スチレン/ブタジエン=40/60(質量比)、エポキシ基導入位置はブタジエンブロック部分
・MFR(JIS K7210、190℃、21N(=2.16kg)荷重) 7g/分
・比重 0.918(g/cm
・オキシラン酸素濃度 1.5質量%
【0091】
<その他成分>
低密度ポリエチレン(E−1):プライムポリマー株式会社製 ウルトゼックス 20100Jを使用した。この樹脂の物性は以下のとおりであった。
・MFR(JIS K7210、190℃、21N(=2.16kg)荷重)=8.5g/10分
・融点 124℃
・ガラス転移温度 −29℃
・比重 0.92(g/cm
【0092】
[実施例1〜5および比較例1〜4]
表1に示す配合で、各成分をよく混ぜ合わせた後、混練機として、株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミル4M150型を使用し、混練温度300℃、スクリュー回転数100rpm、混練時間10分として、各成分の溶融混練を行った。
【0093】
混練機の混練部は、内容積が約70mL、シリンダー内径が47.7mm、ディスク長軸外径が46.9mm、ディスク単軸外径が29.3mm、ディスクと混練機壁面のクリアランスが0.4mm、軸間距離が38.5mm、噛み合い比(ディスク長径/ディスク短径)が1.6であった。前述の式(i)におけるDmは0.8mmであり、hは0.4mmである。よって、せん断速度Sは、1.2×10(sec−1)と算出された。
【0094】
得られた混練物を310℃で予熱3分、圧力20MPaで5分間プレスし、その後20℃に急冷して、厚さ約0.5mmのシートを得た。ただし、比較例1については、混練することなく、ペレットを、比較例2についてはパウダーをそのまま用いてプレス成形した。
【0095】
引張試験用には、プレスシートを、平行部直線部の長さ16mmのミニダンベル形状に打ち抜いたものを使用した。引張り衝撃試験用には、プレスシートをダンベル形状で、全長80mm、厚さ0.5mm、平行部の幅10mm、平行部の長さ10mm、つかみ部の幅15mmに打ち抜いたものを使用した。
【0096】
誘電率測定用には90×90×0.5mmのプレスシートを使用した。
【0097】
【表1】

【0098】
実施例と比較例2との比較から、本発明の樹脂組成物は加工性に優れることが明らかである。実施例と比較例3との比較から、本発明の樹脂組成物はポリフェニレンスルフィドを連続相とする樹脂組成物と同等の衝撃強度を有しながらも低い誘電率を有することが明らかである。
【符号の説明】
【0099】
A 成分A相
B 成分B相
C 成分C相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記化学式(1):
【化1】


(式中、R1,R2,R3およびR4は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜7の第一級もしくは第二級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基、および、ハロゲン原子と酸素原子が少なくとも2個の炭素原子を介して結合されているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される基である)
で示される繰り返し単位を90モル%以上含む、ポリフェニレンエーテル、
(B)下記化学式(2):
【化2】


で示される繰り返し単位を70モル%以上含むポリフェニレンスルフィド、および
(C)ポリスチレンをグラフトしたエポキシ基含有エチレン共重合体またはエポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体を配合してなる樹脂組成物であり、
前記成分(A)が連続相、前記成分(B)および成分(C)が分散相である樹脂組成物。
【請求項2】
前記成分(A)と成分(B)との質量比が55〜95/45〜5であり、成分(A)と成分(B)の合計量100質量部に対して、前記成分(C)を1〜50質量部含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記成分(C)におけるエポキシ基含有エチレン共重合体が、エチレン単位と、エチレン系不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位またはエチレン系不飽和炭化水素基グリシジルエーテル単位とを含有する、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記成分(C)のエポキシ基を含有するスチレン系ブロック共重合体におけるスチレンブロックセグメントの量が10〜80質量%である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記成分(A)が、クロロホルム中、30℃における0.2〜0.8dl/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)である、請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記成分(B)の示差走査熱量測定による融点が265℃〜295℃であり、比重が1.2〜1.4である、請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記成分(B)が、前記成分(C)中のエポキシ基と反応しうる官能基を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記成分(A)、(B)および(C)を、混練機を用いて以下の式(i):
S=π・Dm・N/h (i)
(式(i)中、Sはせん断速度、Dmはスクリュー溝の平均径、またはシリンダー内径とディスク長軸直径の差、Nはスクリュー毎秒回転数、hはクリアランスを表す)で定義される混練機のせん断速度の最大値が600sec−1以上となるように混練する工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなる射出成形体、押出し成形体、チューブ状の成形体、シート・フィルム成形体、押出し成形体、または繊維。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなる基板、および前記基板の上に設けられた金属層または無機物からなる層を含む積層体。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなる基板、および前記基板の上に設けられた金属めっき層を含む積層体。
【請求項12】
請求項9に記載の成形体を用いた電気・電子部品、通信機器部品、または自動車部品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−224754(P2012−224754A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93849(P2011−93849)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(300071579)学校法人立教学院 (42)
【Fターム(参考)】