説明

ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むポリエステル組成物

本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)と、少なくとも1つの添加剤とを含み、環状ダイマー含有量がPBTの重量に対して0.35重量%未満であるポリエステル組成物に関する。本発明はまた、このようなポリエステル組成物から調製される成形部品、および、これらの成形部品を含む、自動車輌用ヘッドライトまたは庭用リフレクターライトなどのミラー光学系に関する。本発明はさらに、0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を有するPBT、このようなPBTを調製するための方法、および、本発明によるポリエステル組成物を調製するためのそのようなPBTの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)と、少なくとも1つの添加剤とを含むポリエステル組成物に関し、より具体的には、自動車輌用ヘッドライト、およびエネルギー節約ランプを構成するリフレクターランプなどのミラー光学系において使用することができる成形部品を調製するために好適なポリエステル組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【0002】
熱可塑性ポリエステルに基づくポリエステル組成物が、様々な成形品を調製するために広く使用されている。異なる性質の他の熱可塑性材料に基づくポリマー組成物が、自動車のヘッドライトにおいてしばしば使用されて金属部品に取って代わり、初期には、外被などのそれほど重要でない部品においてのみであったが、高耐熱性材料の使用を要求する、ベゼルおよびリフレクターなどのより重要な部品においてもまた、ますます使用されている。これらの適用のために、PBTを含む組成物は選択肢の1つであり得る。しかしながら、PBTに関する問題は、自動車用ヘッドライトにおいて使用される多くの他のプラスチックと同様に、PBTがフォギングを生じさせることである。フォギングは、本出願との関連では、可塑性組成物から生じ、稼動条件下でのランプの加熱により気化する揮発性化合物の、ヘッドライトのレンズなどの冷たい場所における析出であると理解される。フォギングを低下させるために適用される対策には、例えば、組成物における溶媒の排除;成形部品についてのより薄くした設計、したがって、フォギングの一因となっている物質の量を減らすこと;および被覆を施すことにより部品を隔離することが含まれる。別の解決法は、成形部品の特別な設計、または全体としてのミラー光学系の特別な設計に関し、その結果として、内部での空気の流れが、車両が動いているときに引き起こされ、フォギングの一因となっている物質が重要な部品から除かれ、したがって、そのような部品におけるフォギングの一因となっている物質の析出が低下するという結果になる。フォギングは、レンズの透過性を低下させ、ヘッドライドの光の歩留まりを低下させるので望ましくない。そのうえ、フォギングは、自動車に組み込まれる先進技術を反映するリフレクターの感じの良い輝いた外観における自動車のパサント(passant)の明瞭な眺めを奪うので、審美的に美しくない。
【0003】
本発明の目的は、ミラー光学系における部品で使用されたとき、低下したフォギングを本来的に生じさせるポリブチレンテレフタレート組成物を提供することである。
【0004】
この目的は、環状ダイマー含有量がPBTの重量に対して0.35重量%未満である、本発明によるポリエステル組成物を用いて達成されている。
【0005】
本発明による組成物の効果は、本発明による組成物が、自動車のヘッドライトのためのベゼルなどの、ミラー光学系のための成形部品の製造に使用されたとき、標準的なPBTを含む組成物から作製された比較可能な部品よりも少ないフォギングを生じさせることである。
【0006】
自動車用の光学的リフレクターを作製するために使用される、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むポリエステル組成物が特開平11−101905号公報(JP−A−11101905)から知られている。この知られている組成物は、限定量のカルボン酸末端基を有するPBT、ならびに無機フィラー、および、PBTは別にして、一定量のポリカーボネートを含む。特開平11−101905号公報において検討されている問題は、光学的リフレクターを製造するための連続成形プロセスにおける揮発性成分の放出の問題であり、そのような揮発性成分の放出は、長期にわたる製造時間で製造されたような光学的リフレクターの曇りおよび低下した明るさの原因となる鋳型沈着物を生じさせる。この問題は、限定量のカルボン酸末端基およびポリカーボネートの存在によって解決されると述べられている。特開平11−101905号公報は、自動車の耐用期間中の自動車用ヘッドライトにおけるフォギングの問題には関連していない。特開平11−101905号公報は、本発明による対策、すなわち、PBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を教示しておらず、また、本発明によるようなフォギングが低下するという効果も教示していない。
【0007】
本発明に関連して、「環状ダイマー」は、2つのブタンジオールユニットと、2つのテレフタル酸ユニットとの環状エステル生成物であることが理解される。PBT含有組成物のフォギングの問題がPBTにおける環状ダイマー含有量によって大きく影響されることが本発明者らによって見出されている。
【0008】
本発明による組成物において、環状ダイマー含有量は、PBTの重量に対して、好ましくは0.30重量%未満であり、より好ましくは0.25重量%未満であり、最も好ましくは0.20重量%未満である。環状ダイマー含有量がより低いことの利点は、そのような組成物から作製された部品のフォギングがさらに一層低下することである。
【0009】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(本明細書中では以降PBTとして示される)は、直接的なエステル化によって得ることができる、ブタンジオールとテレフタル酸との縮合生成物、または、エステル交換によって得ることができ、したがって、ブタンジオールおよびテレフタル酸のエステル化残基を含む、ブタンジオールとテレフタル酸のジメチルエステルとの縮合生成物であることが本発明に関連して理解される。PBTは場合により、ブタンジオールおよびテレフタル酸のエステル化残基は別にして、他の成分、例えば、他のジオールおよびジカルボン酸のエステル化残基、ならびに少量の多官能性アルコールまたは多官能性カルボン酸などを含むコポリマーであってよい。本発明による組成物におけるPBTは典型的には、PBTの重量に対して少なくとも70重量%の、ブタンジオールおよびテレフタル酸のエステル化残基を含有する。
【0010】
PBTに含まれ得る好適なジオールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、2,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコールおよびシクロヘキサンジメタノールである。
【0011】
好適なジカルボン酸は、例えば、オルト−フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびコハク酸である。
【0012】
本発明で使用することができる好適な多官能性カルボン酸は、例えば、三官能性カルボン酸(例えば、トリメシン酸およびトリメリット酸など)および四官能性カルボン酸(例えば、ピロメリット酸など)である。
【0013】
好適な多官能性アルコールは、例えば、トリオール(例えば、グリセロール、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパンなど)、およびテトロール(例えば、ペンタエリトリトールなど)である。
【0014】
一般に、これらの多官能性化合物は、存在する場合、少しの分岐度をPBTに与えるために、非常に少ない量で使用される。
【0015】
一般に、PBTは、他の成分を、PBTの重量に対して5重量%未満の量、好ましくは1重量%未満の量、より好ましくは0.5重量%未満の量で含み、最も好ましくは、他の成分を全く含まない。他の成分の量がより少ないことが、PBTの速い結晶化速度および/または高い熱寸法安定性の性質をより良く維持するために好ましい。
【0016】
本発明による組成物において使用することができるPBTは、PBTがPBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を有するか、または、PBTを含む組成物が、そのような低い環状ダイマー含有量を有する組成物に変換され得るならば、任意のPBTであってよい。本発明者らが見出しているように、環状ダイマー含有量がPBTの重量に対して0.35重量%未満であるPBTを、例えば、溶融重合プロセス、その後の熱処理ステップによって調製することができる。
【0017】
溶融重合プロセスにおいて、ブタンジオールおよびテレフタル酸、または、ブタンジオールおよびテレフタル酸のジメチルエステル、ならびに場合に応じて使用される他のジオールおよび/または二酸、ならびに場合に応じて使用される多官能性アルコールまたは多官能性カルボン酸が、PBTの溶融温度よりも高い温度で共縮合される。溶融重合によるPBTの調製は不連続(バッチ)プロセスおよび連続プロセスの両方で行うことができ、一般には2つの段階、大気圧下での第1の段階、それに続く減圧下での第2の段階を含む。そのような重合プロセスは当業者には広く知られており、例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering(第12巻、43頁〜45頁、Wiley Interscience、New York、1988;ISBN 0−471−80994−6)およびKunststoff Handbuch 3/1、Technishe Thermoplaste,Polycarbonate,Polyacetale,Polyester and Celluloseester(22頁〜23頁、Hanser Verlag、Munchen、1992;ISBN 3−446−16368−9)に記載される。
【0018】
溶融重合によって調製されるそのようなPBTは一般に、本発明に到達するための実験研究のときに観測されているように、PBTの重量に対して約0.45重量%の環状ダイマーを含む。PBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を達成するために、溶融重合によって得られたPBTは、例えば、熱処理に供することができ、そのような熱処理において、PBTは、不活性気体雰囲気中において固体形態で150℃と前記溶融温度との間の温度に加熱され、かつ、示された低いレベルの環状ダイマー含有量を得るために十分に長い時間にわたって150℃および前記溶融温度の範囲内の温度で維持される。
【0019】
本発明に関連して、不活性気体雰囲気は、PBTに加えられる温度条件のもとでPBTの分解を生じさせないか、または著しい程度で生じさせない非常に少ない量の酸素を含む雰囲気であることが理解される。一般に、そのような不活性気体雰囲気は、気体雰囲気の重量に対して0.1重量%未満の酸素、好ましくは0.02重量%未満の酸素、より好ましくは0.01重量%未満の酸素を含む。最も好ましくは、不活性気体雰囲気は酸素を含まない。
【0020】
好ましくは、本発明による組成物におけるPBTは、酸価として表される残存カルボン酸含有量がPBTの重量に対して最大50meq/kg、より好ましくは最大40meq/kg、さらにより好ましくは最大30meq/kgである。残存カルボン酸含有量がより低いPBTを含むポリエステル組成物の利点は、そのような組成物から作製される成形部品はさらに少ないフォギングをもたらすことである。
【0021】
本発明による組成物において使用することができるPBTは、相対粘度が広い範囲にわたって変化し得る。一般に、PBTは、0.5重量%メタクレゾール溶液で25℃にて測定したとき、1.7〜2.3(2.3を含む)の相対粘度(これは本明細書中では以降ηrelとして示される)を有する。しかし、それよりも低いηrelを有するPBT、ならびに、それよりも高いηrelを有するPBTも同様に使用することができる。好ましくは、PBTのηrelは少なくとも1.7であり、より好ましくは少なくとも1.8であり、さらにより好ましくは少なくとも1.9である。ηrelがより高いことの利点は、このような組成物から調製される成形部品はより高い靭性を有することである。このことは、組成物が補強剤(reinforcing agent)を含まないときに特に強調される。同様に好ましくは、PBTのηrelは最大2.3であり、より好ましくは最大2.2であり、さらにより好ましくは最大2.1である。ηrelがより低いことの利点は、組成物がより良好な加工特性を有することである。
【0022】
本発明による組成物は、PBTは別にして、少なくとも1つの添加剤を含む。そのような少なくとも1つの添加剤は、成形部品を調製するための組成物において一般に使用されている任意の添加剤(1つまたは複数)であってよい。本発明による組成物において使用することができる好適な添加剤は、例えば、フィラー、補強剤、顔料または顔料高濃度物(pigment concentrates)、難燃剤、安定化剤、加工助剤、耐衝撃性改良剤、および、PBTと混合することができるPBTとは異なるポリマーである。典型的には、添加剤は溶媒を含まず、通常の熱条件のもとでの部品の温度で分解せず、また、それ自身が揮発性低分子量物質ではない。添加剤の1つまたは複数の添加剤の選択は、成形部品の意図された適用、および、その部品に要求される特定の性質に依存し、成形部品を作製するための組成物を調製する技術分野の当業者によって容易に選ぶことができる。
【0023】
無機フィラーは、ポリエステル配合物を作製する技術分野の当業者に知られている任意のフィラーであり得る。好適な無機フィラーは、例えば、滑石粉(talcum)および炭酸カルシウムのような鉱物フィラーである。
【0024】
好適な補強剤は、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスパールおよびナノフィラーである。
【0025】
無機フィラーおよび/または補強剤は、高温での改善された寸法安定性および/または改善された機械的特性を有する成形部品を調製するために本発明による組成物において都合よく使用される。
【0026】
好適な顔料は、例えば、二酸化チタンおよびカーボンブラックである。
【0027】
好適な難燃剤は、例えば、ハロゲン化樹脂およびメラミンポリホスファートである。
【0028】
好適な安定化剤は、例えば、オリゴマー状の酸化防止剤およびUV吸収剤である。
【0029】
好適な加工助剤は、例えば、滑剤、これはまた離型剤として知られており、例えば、ポリエチレンワックス、エステル型ワックス(モンタン酸系ワックスおよびステアリン酸系ワックス(例えば、ペンタエリトリトールテトラステアラート)など)、およびカルナウバワックスなどである。
【0030】
好適な耐衝撃性改良剤は、例えば、官能基化されたポリエチレンゴムおよびエラストマー、例えば、コポリエーテルエステルなどである。
【0031】
PBTと混合することができる好適なポリマーは、例えば、ポリエチレングリコールテレフタレート(PET)およびポリカーボネート(PC)である。
【0032】
本発明による組成物は一般に、組成物の重量に対して少なくとも50重量%のPBTを含む。好ましくは、組成物におけるPBTの量は、組成物の重量に対して少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも99重量%のPBTである。組成物におけるPBT含有量がより高いことの利点は、フォギングの低下の効果がさらに高まることである。さらに、PBT含有量がより高い組成物は、より高い光沢を有する部品を作製するために使用することができる。
【0033】
添加剤は一般に、組成物の重量に対して少なくとも0.01重量%の量で存在する。
【0034】
好ましくは、組成物における添加剤は、離散粒子(descrete particles)の形態で組成物に存在するとき、粒子サイズが10μm未満、より好ましくは2μm未満、さらにより好ましくは1μm未満、最も好ましくは0.5μm未満である。粒子サイズは、ナノフィラーの場合には当てはまり得るように、10Åほどの小ささであってもよく、またはさらに一層小さくてもよい。粒子サイズがより小さい添加剤を含む本発明による組成物の利点は、より高い表面光沢を有する成形部品を調製するために使用することができることである。
【0035】
非常に高い光沢性の表面を必要とする適用の場合、組成物は好ましくは、組成物中に離散粒子の形態で存在する添加剤(1つまたは複数)を、存在する場合には、非常に少ない量で含む。
【0036】
一般に、組成物は、少なくとも1つの添加剤として、加工助剤、より具体的には滑剤を含む。本発明による組成物における滑剤の量は一般に、組成物の重量に対して最大0.5重量%である。好ましくは、本発明による組成物は、組成物の重量に対して最大0.30重量%、より好ましくは最大0.20重量%の滑剤を含む。より低い重量%の滑剤を含む組成物の利点は、フォギング性能がさらに一層良好になることである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、組成物は、滑剤の重量に対して最大1重量%、より好ましくは最大0.5重量%、さらにより好ましくは最大0.2重量%の重量減少係数(weight loss factor)を有する滑剤を含む。重量減少係数は、160℃における窒素下での4時間にわたる等温熱重量測定分析(TGA)によって測定される、初期重量に対する重量減少として定義される。低い量の滑剤が組成物において一般に使用されるにもかかわらず、重量減少係数が低い滑剤が配合物のフォギング性能のために前々から重要であり得ること、および、フォギング性能が、重量減少係数が低い滑剤を使用することによってさらに改善され得ることが見出されている。
【0038】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、組成物は、PBT、滑剤および顔料高濃度物からなる。
【0039】
本発明によるポリエステル組成物は、例えば、PBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を有するPBTと、少なくとも1つの添加剤とを混合することによって調製することができる。この方法で組成物を調製するために、成形用組成物を調製するための任意の通常的な様式を使用することができ、例えば、様々な成分を好適な混合装置において混合することなどによる様式を使用することができる。好適な装置は、例えば、押し出し機、好ましくは、二軸押し出し機である。本発明による組成物を調製するための、PBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を有するPBTと、少なくとも1つの添加剤との混合は、本明細書中では、以降、経験的(a−posteriori)混合として示される。そのような経験的混合ステップは典型的には溶融混合ステップを伴う。そのような溶融混合ステップのための成分およびプロセス条件は典型的には、環状ダイマー含有量の増大が制限され、かつ、最終的な環状ダイマー含有量が依然としてPBTに対して0.35重量%未満であるような方法で選ばれる。この目的のための好適な処理条件は試行錯誤によって当業者により容易に選択することができる。好適な処理条件は、例えば、環状ダイマー含有量が最大0.32重量%であるPBTを用いて出発するとき、最大250℃の温度での最大15分間の溶融混合である。
【0040】
本発明によるポリエステル組成物はまた、溶融重合によって得られるPBTと、少なくとも1つの添加剤とを混合して、PBT含有組成物を得て、その後、このPBT含有組成物を不活性気体雰囲気中において固体形態で150℃とPBTとの溶融温度の間の温度に供し、次いで、組成物を、PBTの重量に対して0.35重量%の環状ダイマー含有量を得るために十分に長い時間にわたって150℃と前記溶融温度との間の温度で維持することによって調製することができる。
【0041】
好ましくは、本発明の方法は、溶融重合によって得られるPBTの溶融物を少なくとも1つの添加剤と直接溶融混合することを含む。少なくとも1つの添加剤が、溶融重合後に得られるポリマー溶融物に直接混合されるこの方法は、経験的混合ステップを含むプロセスでは必要とされるような冷却ステップおよび第2の溶融ステップが省略され得るという利点を有する。さらなる利点は、そのような経験的混合ステップの期間中における環状ダイマーの再形成の危険性、それにより、環状ダイマー含有量が再び増大することが除かれることである。
【0042】
本発明はまた、PBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を有するPBTに関連する。この樹脂は、溶融重合によって得られる標準的なPBTと比較して、低下したフォギングの効果を有する本発明による組成物において都合よく使用することができる。好ましくは、本発明のPBTは、環状ダイマー含有量がPBTの重量に対して0.30重量%未満であり、より好ましくは0.25重量%未満であり、最も好ましくは0.20重量%未満である。
【0043】
本発明によるPBTは、好ましくは、ηrelが1.7〜2.3であり、より好ましくは1.8〜2.2であり、さらにより好ましくは1.9〜2.1である。本発明によるPBTはまた、好ましくは、酸価として表される残留カルボン酸含有量が、PBTの重量に対して最大50meq/kgであり、より好ましくは最大40meq/kgであり、さらにより好ましくは最大で30meq/kgである。
【0044】
本発明はまた、本発明によるPBTを調製するための方法に関連する。この方法では、溶融温度を有し、かつ、前記溶融温度よりも高い温度での溶融重合によって得られるPBTが、固体形態で不活性気体雰囲気中において150℃と前記溶融温度との間の温度に加熱され、次いで、PBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を得るために十分に長い時間にわたって150℃と前記溶融温度との間の温度で維持される。
【0045】
好ましくは、PBTは160℃〜210℃、より好ましくは170℃〜200℃の温度に加熱され、この温度で維持される。下限温度がより高いことの利点は、要求される環状ダイマー含有量を得るために必要とされる時間が短くなることである。上限温度がより低いことの利点は、PBTの固体粒子が粘着する危険性が小さくなることである。
【0046】
同様に好ましくは、PBTは、PBTの重量に対して0.30重量%未満、より好ましくは0.25重量%未満、最も好ましくは0.20重量%未満の環状ダイマー含有量を得るために十分に長い時間にわたって、示された温度で維持される。このことは、上記のように、フォギング性能のために好都合である。
【0047】
本発明による方法のいくつかの他の好ましい実施形態は、上記の本発明によるPBTの好ましい実施形態のいずれかの特徴を有する、前記方法を用いて得られるPBTに関連する。
【0048】
本発明による方法の別の好ましい実施形態において、不活性気体雰囲気は10kPa未満(より好ましくは1kPa未満、さらにより好ましくは500Pa未満)の圧力を有する。より低い圧力は、要求される環状ダイマー含有量がより短い時間で得られるという利点を有する。このことは、製造設備を拡張することなく、収率がより高い、より効率的な製造プロセスを可能にする。
【0049】
さらなる好ましい実施形態において、ガス流が加えられる。同様に、この好ましい実施形態を用いて、要求される環状ダイマー含有量がより短い時間で得られる。
【0050】
別の好ましい実施形態において、出発物質として使用されるPBTは最大2.0、好ましくは最大1.9、より好ましくは最大1.85のηrelを有する。より低いηrelを有するPBT出発物質の使用は、得られるPBTのηrelを同じレベルで維持しながら、より低い環状ダイマー含有量を有するPBTを得ることができるという利点を有する。
【0051】
一般に、出発物質として使用されるPBTは少なくとも1.5のηrelを有する。しかし、それよりも低いηrelを有するPBTも同様に使用することができる。好ましくは、初期ηrelは少なくとも1.65であり、より好ましくは少なくとも1.75である。これは、最終的に要求されるηrelを得るために要求される時間がこれにより短縮されるからである。
【0052】
本発明に従ってPBTを調製する方法は、その目的のために好適な任意の装置において任意の様式で行うことができる。本発明による方法は、例えば、バッチプロセスとして(例えば、タンブルドライヤーにおいて)、または連続プロセスとして(例えば、移動床反応装置において)行うことができる。
【0053】
本発明による方法の好ましい実施形態において、熱処理に供されるPBTは、少なくとも1つの添加剤を含めて、目指されるポリエステル組成物に含まれるすべての他の成分を既に含んでいる。その利点は、これにより、本発明によるポリエステル組成物が直接に得られ、かつ、経験的配合ステップが加えられ得ることである。
【0054】
少なくとも1つの添加剤は、上記の通常的な添加剤のいずれかであり得る。好ましくは、少なくとも1つの添加剤は滑剤である。
【0055】
本発明はまた、本発明による組成物を調製するための、本発明による方法によって得ることができるPBTの使用に関連する。
【0056】
本発明はまた、成形部品を調製するための、本発明によるポリエステル組成物の使用、および、本発明によるポリエステル組成物から調製される成形部品に関連する。そのような成形部品の利点は、標準的なPBT含有組成物から作製される成形部品と比較して、部品が通常的な使用条件のもとでの加熱にさらされる適用において使用されるとき、より少ないフォギングをもたらすことである。
【0057】
特別な実施形態において、成形部品は、自動車輌用のヘッドライトのための部品、例えば、ベゼルまたはリフレクターなど、またはエネルギー節約ランプ用のランプ基部である。
【0058】
本発明はさらに、ミラー光学系を組み立てることにおける本発明による成形部品の使用、および、本発明による成形部品を含むミラー光学系に関連する。本発明の特定の実施形態において、ミラー光学系は自動車輌用のヘッドライトまたは庭用のリフレクターランプである。
【0059】
本発明はまた、本発明によるヘッドライトを含む自動車輌(特に、トラック、乗用車またはオートバイ)に関連する。本発明によるヘッドライトを含む自動車輌の利点は、自動車輌の耐用期間中において、ヘッドライトのフォギングの発生が少なく、その結果として、標準的なPBT含有組成物から作製されたヘッドライトを含む自動車輌と比較して、光の歩留まりが良好に保持され、道路使用者の安全が良好に確保されることである。
【実施例】
【0060】
本発明は下記の実施例および比較実験によってさらに例示される。
【0061】
<分析方法>
環状ダイマー含有量:200mg〜300mgの量のPBTまたはPBT含有組成物を室温で10mlのヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した。この溶液を高速液体クロマトグラフィーによって分析した。使用したカラムはZORBAC SB C18(2503mm)であった。40℃および0.5ml/分の流速での10mM HPOおよびアセトニトリルによるグラジエントを適用した:アセトニトリルを溶出時に40%から100%に変化させた。検出を、238nmで設定されたダイオードアレイ検出器を用いて行った。
相対粘度(ηrel:ISO3007(第3版、1994−09−01)に基づく方法;測定を、ウベローデ管におけるPBTのメタクレゾール溶液(0.5重量%)の流動時間を25℃で測定し、得られた時間を純メタクレゾールについて測定した時間で割ることによって行った。
カルボン酸価:ブロモクレゾールグリーンを指示薬として使用して、エタノールにおける0.05KOHを用いた、オルトクレゾール/クロロホルム混合物(70:30の重量比)におけるPBT溶液の光度滴定によって求めた。
重量減少係数:約10mgの滑剤のサンプルを重量測定し、熱重量測定分析装置(TGA)(PERKIN ELMER TGA7)に載せた。TGA測定を、4時間にわたる160℃の温度におけるヘリウム雰囲気中での等温様式で行った。その期間が終了したとき、重量減少を初期重量に対する重量%で測定し、重量減少係数として報告した。
【0062】
<材料>
滑剤A:LICOWAX OP(以前のClariant、ドイツ);モンタン酸エステル型ワックス(重量減少係数、1.14重量%)
滑剤B:RADIA7176(以前のOLEON、ベルギー)ペンタエリトリトールテトラステアラート(重量減少係数、0.58重量%)
滑剤C:PARACERA C40(以前のParamelt B.V.、オランダ)カルナウバワックス(重量減少係数、0.30重量%)
顔料高濃度物:PBTにおけるカーボンブラック高濃度物
1,4−ブタンジオール:重合用規格
テレフタル酸ジメチル: 重合用規格
【0063】
<操作>
溶融重合によるPBTの調製
攪拌機および冷却器を備える20L反応容器に、7060gのテレフタル酸ジメチル、4100gの1,4−ブタンジオール、および、85.0gの1,4−ブタンジオールでのチタンテトラn−ブトキシド触媒溶液(1グラムの溶液あたり40mgの触媒)を仕込んだ。反応容器を窒素で3回フラッシングした後、反応容器の内容物を撹拌下および大気圧のもとで1時間以内に150℃の温度に徐々に加熱し、この温度で30分間保ち、続いて2時間以内に235℃の温度にさらに加熱した。その後、このようにして得られたエステル交換反応生成物を、20RPMの撹拌速度において減圧(50Pa〜100Pa)下で120分間、240℃でさらに重合した。重合生成物を窒素加圧下のもとでストランドの形態で反応容器から押し出し、水で冷却し、ペレタイザーでペレット化した。ポリマーのηrelおよび酸価がそれぞれ1.85および18meq/gであることが明らかにされた。ポリマーは環状ダイマー含有量が0.45重量%であった。
【0064】
配合によるPBT組成物の調製
溶融重合により得られたPBTと、顔料高濃度物と、滑剤A、滑剤Bおよび滑剤Cの1つとを含む種々の組成物をZSK30/34二軸押し出し機(Werner & Pfleiderer社製)で調製した。胴温度を260℃で設定し、スクリュー速度は325RPMであり、収量は10kg/時間であった。成分を予備混合物としてホッパーに入れた。押し出されたストランドを水で冷却し、顆粒化した。これらの組成を表1にまとめて示す。
【0065】
PBT組成物の熱処理
PBT組成物の熱処理をBuchi社のRotavapor R151で行った。10Lガラスフラスコに2kgのPBT顆粒を仕込み、純粋な乾燥窒素を通気した。その後、圧力を100Paに減圧し、回転するフラスコを油浴で加熱した。顆粒の温度を185℃に上げた。実験のいくつかでは、顆粒がこの温度で5時間保たれ、他の実験では、この温度が9時間保たれた。このことは表Iに示される。この期間の後、油浴を取り去り、顆粒を室温に冷却した。その後、環状ダイマー含有量およびηrelを測定した。結果を表Iにまとめて示す。
【0066】
射出成形による試験プレートの調製
試験試料を、230℃〜245℃の温度設定および90℃の鋳型温度を用いてEngel80装置で、予備乾燥(窒素流を伴う真空下での115℃で10時間)した顆粒から射出成形した。30mmのスクリューを126RPMで使用し、射出圧力は2.6MPaであり、プレートサイクル時間は28秒であった。鋳型は片側研磨鋳型であり、80mm×80mmで、厚さが2mmのプレートをもたらした。
【0067】
<試験および評価>
フォギング試験
フォギング試験を、大きなアルミニウムハウジング(5)に組み込まれた内部チャンバー加熱システム(4)およびカバー加熱システム(7)を備えるガス放出オーブン構成(図1参照)において行った。カバー加熱システム(7)は内部チャンバー加熱システム(4)から熱的に隔離されていた(6)。内部チャンバー加熱システム(4)において、ガス放出させられるポリマープレート(1)が内部チャンバー加熱システム(4)の底部から7mmの高さで4つのセラミック製のサンプル支持部の上に置かれた。ポリマープレートは厚さが2mmであった。カバー加熱システムは熱的に隔離されており(6)、上部(8)に冷却システムを有した。カバー加熱システムは底部(2)においてガラスプレートと一致する。ポリマープレートの上部表面からガラスプレートまでの高さは70mmであった。
【0068】
ガス放出試験を行うために、ポリマープレート(1)をサンプル支持部(3)に載せ、160℃に加熱し、ガラスプレートの温度を70℃に設定した。20時間後、ガラスプレートをカバー加熱システムから取り出し、フォギングを、1〜10のスケールでの定性的な様式で肉眼によりガラスプレートの曇り度を評価することによって判断した。この場合、1は非常にひどいフォギングを表し、10は、フォギングおよび曇りが全くないことを表す。
【表1】



【図面の簡単な説明】
【0069】

【図1】ガス放出オーブン構成を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)と、少なくとも1つの添加剤とを含み、環状ダイマー含有量がPBTの重量に対して0.35重量%未満であるポリエステル組成物。
【請求項2】
前記PBTがPBTの重量に対して最大50meq/kgのカルボン酸価を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記PBTが、0.5重量%メタクレゾール溶液で25℃にて測定したとき、1.7〜2.3の相対粘度(ηrel)を有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の重量に対して少なくとも50重量%のPBTを含む請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
窒素下において160℃で4時間にわたる等温TGAによって測定されたとき、滑剤の重量に対して最大1重量%の重量減少係数を有する滑剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
環状ダイマー含有量がPBTの重量に対して0.35重量%未満であることを特徴とするポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)。
【請求項7】
0.5重量%メタクレゾール溶液で25℃にて測定したとき、1.7〜2.3の相対粘度(ηrel)、および/または、PBTの重量に対して最大50meq/kgの酸価を有する請求項6に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂。
【請求項8】
溶融温度を有し、かつ、前記溶融温度よりも高い温度での重合によって得られるPBT出発物質が、不活性雰囲気中において固体形態で150℃と前記溶融温度との間の温度に加熱され、PBTの温度が、PBTの重量に対して0.35重量%未満の環状ダイマー含有量を得るために十分に長い時間にわたって150℃および前記溶融温度の範囲内の温度で維持される請求項6または7に記載のPBTを調製するための方法。
【請求項9】
前記不活性雰囲気が10kPa未満の圧力を有し、および/または、ガス流が加えられる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
加熱されるPBTが、0.5重量%メタクレゾール溶液で25℃にて測定したとき、最大2.0の相対粘度(ηrel)を有する請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
加熱されるPBTが少なくとも1つの添加剤を含み、かつ、溶融重合によって得られ、次いで前記添加剤と混合される請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の組成物を調製するための、請求項8〜10のいずれかに記載の方法によって得ることができるPBTの使用。
【請求項13】
成形部品を調製するための、請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物の使用。
【請求項14】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル組成物を含む成形部品。
【請求項15】
前記成形部品が、ヘッドライト用のベゼル、ヘッドライト用のリフレクター、またはエネルギー節約ランプ用の基部である請求項14に記載の成形部品。
【請求項16】
ミラー光学系を組み立てることにおける請求項16または17に記載の成形部品の使用。
【請求項17】
請求項14または15に記載の成形部品を含むミラー光学系。
【請求項18】
前記ミラー光学系が、自動車輌用ヘッドライトまたは庭用リフレクターランプである請求項17に記載のミラー光学系。
【請求項19】
請求項17または18に記載のミラー光学系を含む自動車輌。
【請求項20】
前記車輌が、トラック、乗用車またはオートバイである請求項19に記載の自動車輌。

【図1】
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【公表番号】特表2007−505199(P2007−505199A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532137(P2006−532137)
【出願日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000383
【国際公開番号】WO2004/106405
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】