説明

ポリプロピレンの調製方法

低い多孔度の触媒系を使用するポリプロピレンの調製方法であって、該触媒系が不斉触媒を含んでおり、該触媒系が1.40ml/g未満の多孔度を有する方法

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用の周知のポリプロピレンは特に、アイソタクチックの、半結晶性の、熱可塑性のポリマー混合物である。該商用のポリプロピレンは多くの望ましいおよび有益な特性を有するけれども、いくつかの重要な欠点、たとえば低い溶融強度も持ち、これは該ポリプロピレンを多くの用途に、たとえばブローンフィルム、押出コーティング、発泡押出およびブロー成形に不適当にする。直鎖状ポリマー骨格中に分枝を導入することによって、これらの欠点は部分的に克服された。反応器後の処理、ジエンとの共重合によって、および高温度において特定の触媒を用いて重合することによって、これは達成されることができる。しかし、現在利用できる方法は依然として、伸長流れ下の押出加工法において特に重要である高い溶融安定性を有するポリプロピレンをもたらさない。
【0003】
この欠点を克服するために、および進歩したポリプロピレンの用途に適しているポリプロピレンを開発するために、高い溶融強度のような改良されたレオロジー特性を有するポリプロピレンをもたらす方法を提供しようとする願望がなお存在している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が発見したことは、不斉触媒を含んでいる、低い多孔度の触媒系を使用してポリプロピレンを調製する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従うと、低い多孔度の触媒系を使用するポリプロピレンの調製方法が提供され、該触媒系は不斉触媒を含んでおり、該触媒系は1.40ml/g未満の多孔度を有する。
【0006】
本発明に従う不斉触媒は、好ましくは少なくとも2の有機配位子を含んでいる触媒であり、該少なくとも2の有機配位子はその化学構造において異なっている。より好ましくは、本発明に従う不斉触媒は、少なくとも2の有機配位子を含んでいるメタロセン化合物であり、該少なくとも2の有機配位子はその化学構造において異なっている。さらにより好ましくは、本発明に従う不斉触媒は不斉触媒であり、なおもより好ましくは、少なくとも2の有機配位子を含んでいるメタロセン化合物であり、該少なくとも2の有機配位子はその化学構造において異なっており、かつ該メタロセン化合物はC対称性および/またはそれより高次の何らかの対称性を有していない。好ましくは該不斉触媒は、より好ましくは該不斉メタロセン化合物は、2の異なった有機配位子のみを含んでおり、さらにより好ましくは、互いに異なりかつ架橋によって連結された2の有機配位子のみを含んでいる。
【発明の効果】
【0007】
不斉触媒であることと組み合わせて非常に低い多孔度を有する触媒系を使用することによって、上記の方法は、高い溶融強度のような改良されたレオロジー特性を有するポリプロピレンをもたらす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
好ましくは、該触媒系は1.30ml/g未満、より好ましくは1.00ml/g未満の多孔度を有する。DIN 66135(N)に従って、多孔度は測定された。DIN 66135(N)に従って適用される方法を用いて測定されたときに、他の好まれる実施態様では、多孔度は検出限界未満である。
【0009】
さらにそのうえ、該触媒系は25m/g未満の表面積を有することが好まれ、20m/g未満がさらにより好まれ、15m/g未満がなおもより好まれ、10m/g未満がなおもさらにより好まれ、5m/g未満が最も好まれる。ISO 9277(N)に従って、本発明に従う表面積は測定される。
【0010】
本発明に従う触媒系は、不斉触媒、すなわち上におよび/または下に定義される触媒を含んでおり、DIN 66135に従う方法を適用したときに検出可能な多孔度を有さず、かつ5m/g未満のISO 9277に従って測定された表面積を有することが特に好まれる。
【0011】
好ましくは、用いられる不斉触媒は、周期表(IUPAC)の第3〜10族のまたはアクチニドもしくはランタニドの遷移金属の有機金属化合物を含んでいる。
【0012】
不斉触媒は、好ましくは式(I)

の遷移金属化合物であり、この式で、
Mは、周期表(IUPAC)の第3〜10族のまたはアクチニドもしくはランタニドの遷移金属であり、
各Xは、独立に一価のアニオン性配位子、たとえばσ配位子であり、
各Lは独立に、Mに配位している有機配位子であり、
Rは、2の配位子Lを連結している架橋基であり、
mは、2または3であり、
nは、0または1であり、
qは、1、2または3であり、および
m+qは、該金属の価数に等しく、
ただし、少なくとも2の配位子「L」は異なった化学構造を有する。
【0013】
当該不斉触媒は、好ましくはシングルサイト触媒(SSC)である。
【0014】
より好まれる定義では、各「L」は独立に、
a)置換または非置換のシクロアルキルジエン、すなわちシクロペンタジエン、またはシクロアルキルジエンの単、二もしくは多縮合誘導体、すなわちシクロペンタジエンであり、任意的にさらなる置換基および/または周期表(IUPAC)の第13〜16族の1以上のヘテロ環原子を有してもよいもの、または
b)周期表の第13〜16族の原子から成る、非環式の、η〜ηまたはη−配位子であり、その中で開鎖配位子が1もしくは2、好ましくは2の芳香族または非芳香族環と縮合していてもよく、および/またはさらなる置換基を有してもよいもの、または
c)芳香族環もしくは非芳香族環または部分的に飽和された環系から選択された、非置換または置換の単、二もしくは多環式環系から成り、かつ炭素環原子および任意的に周期表の第15および16族から選択された1以上のヘテロ原子を有する、環式の、σ、η〜ηまたはηの、単、二もしくは多座配位子
である。
【0015】
「σ配位子」の語は、本明細書の全体において公知の様式で理解される、すなわちシグマ結合を介して1以上の部位で金属に結合された基である。好まれる一価のアニオン性配位子はハロゲン、特に塩素(Cl)である。
【0016】
好まれる実施態様では、不斉触媒は、好ましくは式(I)

の遷移金属化合物であり、この式で、
Mは、周期表(IUPAC)の第3〜10族のまたはアクチニドもしくはランタニドの遷移金属であり、
各Xは、独立に一価のアニオン性配位子、たとえばσ配位子であり、
各Lは独立に、Mに配位している有機配位子であり、ここで該有機配位子は不飽和有機環式配位子、好ましくは置換または非置換のシクロアルキルジエン、すなわちシクロペンタジエン、またはシクロアルキルジエンの単、二もしくは多縮合誘導体、すなわちシクロペンタジエンであり、これは任意的にさらなる置換基および/または周期表(IUPAC)の第13〜16族の1以上のヘテロ環原子を有してもよく、
Rは、2の配位子Lを連結している架橋基であり、
mは、2または3であり、
nは、0または1であり、
qは、1、2または3であり、および
m+qは、該金属の価数に等しく、
ただし、少なくとも2の配位子「L」は異なった化学構造を有する。
【0017】
好まれる実施態様に従うと、当該不斉触媒化合物(I)は、メタロセンとして知られた一群の化合物である。当該メタロセンは少なくとも1、一般には1、2または3、たとえば1または2の有機配位子を有し、これは金属にη結合され、たとえばη2〜6−配位子、たとえばη−配位子である。好ましくは、メタロセンは第4〜6族遷移金属、より好ましくはジルコニウムであり、これは少なくとも1のη−配位子を有する。
【0018】
好ましくは不斉触媒化合物は式(II)

を有し、この式で、
Mは、Zr、HfまたはTi、好ましくはZrであり、
各Xは、独立に一価のアニオン性配位子、たとえばσ配位子であり、
各Cpは独立に、Mに配位している不飽和有機環式配位子であり、
Rは、2の配位子Lを連結している架橋基であり、
nは、0または1、より好ましくは1であり、
qは、1、2または3、より好ましくは2であり、
m+qは、該金属の価数に等しく、および
少なくとも1のCp配位子、好ましくは双方のCp配位子は、非置換シクロペンタジエニル、非置換インデニル、非置換テトラヒドロインデニル、非置換フルオレニル、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択され、
ただし、双方のCp配位子が上述の群から選択されるならば、該双方のCp配位子は互いに化学的に異なっていなければならない。
【0019】
好ましくは、不斉触媒は上記の式(II)を有し、
この式で、
MはZrであり、
各XはClであり、
nは1であり、および
qは2である。
【0020】
好ましくは、双方のCp配位子は異なった残基を有して、不斉構造をとる。
【0021】
好ましくは、双方のCp配位子は、置換シクロペンタジエニル環、置換インデニル環、置換テトラヒドロインデニル環、および置換フルオレニル環から成る群から選択され、かつ該Cp配位子は該環に結合された置換基において異なっている。
【0022】
シクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、またはフルオレニルに結合された1以上の任意的な置換基は、ハロゲン、ヒドロカルビル(たとえば、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C12シクロアルキル、C〜C20アリールまたはC〜C20アリールアルキル)、環部分中に1、2、3または4ヘテロ原子を有するC〜C12シクロアルキル、C〜C20ヘテロアリール、C〜C20ハロアルキル、−SiR''、−OSiR''、−SR''、−PR''および−NR''を含む群から独立に選択されることができ、ここで各R''は独立に水素またはヒドロカルビル、たとえばC〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C12シクロアルキルもしくはC〜C20アリールである。
【0023】
より好ましくは、双方のCp配位子はインデニル部分であり、各インデニル部分が上記の1以上の置換基を有するものである。より好ましくは、各Cp配位子は上記の2の置換基を有するインデニル部分であり、ただし該置換基は、双方のCp配位子が異なった化学構造を有するような、すなわち双方のCp配位子が該インデニル部分に結合された少なくとも1の配位子において異なっているような、特に該インデニル部分の5員環に結合された置換基において異なっているような様式で選択される。
【0024】
さらにより好ましくは、双方のCpはインデニル部分であり、該インデニル部分は、該インデニル部分の少なくとも5員環において、より好ましくは2の位置において、アルキル、たとえばC〜Cアルキル、たとえばメチル、エチル、イソプロピル、およびトリアルキルオキシシロキシであって各アルキルがC〜Cアルキル、たとえばメチルまたはエチルから独立に選択されたものから成る群から選択された置換基を含んでおり、ただし双方のCpのインデニル部分は互いに化学的に異なっていなければならない、すなわち双方のCpのインデニル部分は異なった置換基を含んでいる。
【0025】
さらにより好まれるのは、双方のCpはインデニル部分であり、該インデニル部分は、該インデニル部分の少なくとも6員環において、より好ましくは4の位置において、C〜C20芳香族環部分、たとえばフェニルまたはナフチル、好ましくは1以上の置換基、たとえばC〜Cアルキルで任意的に置換されていてもよいフェニル、および芳香族複素環部分から成る群から選択された置換基を含んでおり、ただし双方のCpのインデニル部分は互いに化学的に異なっていなければならない、すなわち双方のCpのインデニル部分は異なった置換基を含んでいることである。
【0026】
なおもより好ましくは、双方のCpはインデニル部分であり、該インデニル部分は、該インデニル部分の5員環において、より好ましくは2の位置において置換基を含んでおり、かつ該インデニル部分の6員環において、より好ましくは4の位置においてさらなる置換基を含んでおり、該5員環の置換基が、アルキル、たとえばC〜Cアルキル、たとえばメチル、エチル、イソプロピル、およびトリアルキルオキシシロキシであって各アルキルがC〜Cアルキル、たとえばメチルまたはエチルから独立に選択されたものから成る群から選択され、かつ該6員環のさらなる置換基が、C〜C20芳香族環部分、たとえばフェニルまたはナフチル、好ましくは1以上の置換基、たとえばC〜Cアルキルで任意的に置換されていてもよいフェニル、および芳香族複素環部分から成る群から選択され、ただし双方のCpのインデニル部分は互いに化学的に異なっていなければならない、すなわち双方のCpのインデニル部分は異なった置換基を含んでいる。双方のCpが、それぞれ2の置換基を含んでいるインデニル環であり、かつ該インデニル環の5員環に結合された置換基において異なっていることが特に好まれる。
【0027】
部分「R」に関しては、「R」が式(III)

を有することが好まれ、この式で、
Yは、C、SiまたはGeであり、および
R'は、C〜C20アルキル、C〜C12アリール、C〜C12アリールアルキルまたはトリメチルシリルである。
【0028】
上記の不斉触媒の双方のCp配位子が、特に2のインデニル部分が、架橋構成員Rで連結されている場合には、該架橋構成員Rは典型的には1の位置に置かれる。架橋構成員Rは、たとえば、C、Siおよび/またはGeから、好ましくはCおよび/またはSiから選択された1以上の架橋原子を有することができる。1の好ましい架橋Rは−Si(R')−であり、R'は、たとえば、C〜C10アルキル、C〜C20アルキル、たとえばC〜C12アリール、またはC〜C40、たとえばC〜C12アリールアルキルの1以上から独立に選択され、ここでアルキルそれ自体またはアリールアルキルの一部としてのアルキルは、好ましくはC〜Cアルキル、たとえばエチルまたはメチル、好ましくはメチルであり、アリールは好ましくはフェニルである。架橋−Si(R')−は好ましくは、たとえば−Si(C〜Cアルキル)−、−Si(フェニル)−または−Si(C〜Cアルキル)(フェニル)−、たとえば−Si(Me)−である。
【0029】
好まれる実施態様では、不斉触媒は式(IV)

によって定義され、この式で、
各Xは、独立に一価のアニオン性配位子、たとえばσ配位子、特にハロゲン、たとえば塩素であり、
双方のCpは、Mに配位し、かつ非置換シクロペンタジエニル、非置換インデニル、非置換テトラヒドロインデニル、非置換フルオレニル、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択され、
ただし双方のCp配位子は互いに化学的に異なっていなければならず、および
Rは、2の配位子Lを連結する架橋基であり、
ここで、Rは、式(III)

によって定義され、この式で、
Yは、C、SiまたはGeであり、および
R'は、C〜C20アルキル、C〜C12アリール、C〜C12アリールアルキルまたはトリメチルシリルである。
【0030】
より好ましくは、不斉触媒は式(IV)によって定義され、この式で双方のCpは、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択される。
【0031】
さらにより好ましくは、不斉触媒は式(IV)によって定義され、この式で双方のCpは、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択され、
ただし双方のCp配位子は置換基、すなわちシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、またはフルオレニルに結合された上記の置換基において異なっている。
【0032】
なおもより好ましくは、不斉触媒は式(IV)によって定義され、この式で双方のCpはインデニルであり、双方のインデニルは1の置換基において、すなわちインデニルの5員環に結合された上記の1の置換基において異なっている。
【0033】
特に、不斉触媒は、非シリカ物質で担持された上記の触媒、特に上記のメタロセン触媒であることが好まれる。
【0034】
好まれる実施態様では、不斉触媒はジメチルシランジイル[(2−メチル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロライドである。より好まれるのは、当該不斉触媒がシリカで担持されていないことである。
【0035】
特に、国際公開第03/051934号に記載されたエマルション固体化技術によって不斉触媒系が得られることができることが好まれる。この文献は引用によって全体的に本明細書に含まれる。したがって、不斉触媒は好ましくは固体触媒粒子の形態をしており、
a)1以上の不斉触媒成分の溶液を調製する段階、
b)当該溶液をこれと非混和性の溶媒中に分散させて、エマルションを生成し、その中に当該1以上の触媒成分が分散相の液滴で存在する段階、および
c)当該分散相を固体化して当該液滴を固形粒子に転換し、そして任意的に当該粒子を回収して当該触媒を得る段階
を含む方法によって得られることができる。
【0036】
好ましくは、溶媒、より好ましくは有機溶媒が当該溶液を形成するために使用される。さらにより好ましくは、有機溶媒は直鎖状アルカン、環式アルカン、直鎖状アルケン、環式アルケン、芳香族炭化水素およびハロゲン含有炭化水素から成る群から選択される。
【0037】
そのうえ、連続相を形成する非混和性溶媒は不活性溶媒であり、より好ましくは非混和性溶媒はフッ素化有機溶媒および/またはその官能化された誘導体を含んでおり、さらにより好ましくは非混和性溶媒は半、高度または完全(パー)フッ素化炭化水素および/またはその官能化された誘導体を含んでいる。当該非混和性溶媒は、特にパーフルオロ炭化水素またはその官能化された誘導体、好ましくはC〜C30のパーフルオロアルカン、パーフルオロアルケンまたはパーフルオロシクロアルカンを含んでいることが好まれ、C〜C10のパーフルオロアルカン、パーフルオロアルケンまたはパーフルオロシクロアルカンがより好まれ、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタンもしくはパーフルオロ(メチルシクロヘキサン)またはこれらの混合物が特に好まれる。
【0038】
さらにそのうえ、当該連続相および当該分散相を含んでいるエマルションは従来技術で知られた2相系または多相系であることが好まれる。該エマルションを生成するために乳化剤が使用されることができる。エマルション系の生成後、当該溶液中の触媒成分から現場で(in situ)、当該触媒が生成される。
【0039】
原則として、乳化剤は、エマルションの生成および/または安定化に寄与しかつ触媒の触媒活性に何らかの有害な影響を与えない任意の適当な剤であることができる。乳化剤は、たとえば1または複数のヘテロ原子で任意的に割り込まれた炭化水素、好ましくは、官能基を任意的に有するハロゲン化炭化水素、好ましくは従来技術で知られた半、高度または完全フッ素化炭化水素に基づいた界面活性剤であることができる。あるいは、乳化剤は、エマルションの調製の際に、たとえば界面活性剤前駆体を触媒溶液の化合物と反応させることによって調製されてもよい。当該界面活性剤前駆体は、少なくとも1の官能基を有するハロゲン化炭化水素、たとえば高度にフッ素化されたC〜C30アルコールであることができ、これは、たとえば助触媒成分、たとえばアルミノキサンと反応する。
【0040】
原則として、分散された液滴から固形粒子を形成するために、任意の固体化方法が使用されることができる。1の好ましい実施態様に従うと、温度変化処理によって固体化は実施される。したがって、10℃/分まで、好ましくは0.5〜6℃/分、より好ましくは1〜5℃/分の緩やかな温度変化にエマルションは付される。さらにより好まれるのは、10秒間未満以内に、好ましくは6秒間未満以内に40℃超、好ましくは50℃超の温度変化に、エマルションが付されることである。
【0041】
回収された粒子は好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μmの平均サイズ範囲を有する。
【0042】
そのうえ、固体化された粒子の形態は、好ましくは球形、所定の粒子サイズ分布、および好ましくは25m/g未満、さらにより好ましくは20m/g未満、なおもより好ましくは15m/g未満、なおもさらにより好ましくは10m/g未満、最も好ましくは5m/g未満の上述の表面積を有し、当該粒子は上記の方法によって得られる。
【0043】
連続および分散相系、エマルション生成方法、乳化剤ならびに固体化方法のさらなる詳細、実施態様および実施例については、たとえば上に引用された国際公開第03/051934号が参照される。
【0044】
触媒系は、国際公開第03/051934号に記載されたように助触媒として活性化剤をさらに含んでいることができ、この文献は関連して本明細書によって取り込まれる。
【0045】
メタロセンおよび非メタロセンのための助触媒として好まれるのは、所望であれば、アルミノキサン、特にC〜C10アルキルアルミノキサン、最も特にメチルアルミノキサン(MAO)である。このようなアルミノキサンは、唯一の助触媒としてまたは他の1または複数の助触媒と一緒に使用されることができる。したがって、アルミノキサンの他にまたはそれに追加して、他のカチオン錯体生成性の触媒活性化剤が使用されることができる。当該活性化剤は、商業的に入手可能でありまたは従来技術の文献に従って調製されることができる。
【0046】
さらなるアルミノキサン助触媒は、とりわけ国際公開第94/28034号に記載され、これは引用によって本明細書に取り込まれる。これらは、40まで、好ましくは3〜20の−(Al(R''')O)−繰返し単位(この式で、R'''は水素、C〜C10アルキル(好ましくは、メチル)もしくはC〜C18アリールまたはこれらの混合である。)を有する直鎖状または環式オリゴマーである。
【0047】
このような活性化剤の使用方法および量は、当業者の技術の範囲内である。例として、ホウ素活性化剤では、5:1〜1:5、好ましくは2:1〜1:2、たとえば1:1の遷移金属とホウ素活性化剤との比が使用されることができる。好まれるアルミノキサン、たとえばメチルアルミナムオキサン(MAO)の場合には、アルミノキサンによって提供されるAlの量は、たとえば1〜10,000、好適には5〜8000、好ましくは10〜7000、たとえば100〜4000、たとえば1000〜3000の範囲内のAl:遷移金属のモル比をもたらすように選択されることができる。典型的には、固体(不均一)触媒の場合には、該比は好ましくは500未満である。
【0048】
本発明の触媒に用いられるべき助触媒の量は、したがって可変であり、当業者に周知の様式で選択された条件および特定の遷移金属化合物に依存する。
【0049】
有機遷移化合物を含んでいる溶液中に含有されるべき任意の追加の成分が、分散段階の前にあるいはその後に当該溶液に添加されてもよい。
【0050】
好ましくは、本発明の方法はマルチモーダルポリプロピレンを得るための多段階方法である。
【0051】
多段階方法は、マルチモーダルポリプロピレンを製造するための多帯域(multizone)気相反応器として知られるバルク/気相反応器も包含する。
【0052】
好まれる多段階方法は、「ループ−気相」方法、たとえば欧州特許第0887379号または国際公開第92/12182号に記載された(BORSTAR(商標)技術として知られた)デンマーク国、Borealis社によって開発されたようなものである。
【0053】
たとえば、国際公開第92/12182号、欧州特許第0887379号および国際公開第97/22633号に記載されたいくつかの手順に従って、マルチモーダルポリマーは製造されることができる。
【0054】
本発明に従うマルチモーダルポリプロピレンは、好ましくは国際公開第92/12182号に記載された多段階方法で一連の多段階反応において製造される。この文献の内容は引用によって本明細書に含まれる。
【0055】
直列に接続された2以上の反応器中で、すなわち別個の段階(a)および(b)中でマルチモーダル、特にバイモーダルのポリプロピレンを製造することは従来から知られている。
【0056】
好ましくは、上に定義されおよびさらに下に定義される方法はスラリー重合であり、バルク重合がさらにより好まれる。
【0057】
本発明に従うと、好ましくはスラリー重合/気相重合の組み合わせとして主重合段階は実施され、好ましくはバルク重合/気相重合の組み合わせとして主重合段階が実施されることがより好まれる。
【0058】
バルク重合は、好ましくはいわゆるループ反応器中で実施される。
【0059】
本明細書で使用される「スラリー重合」の語は、少なくとも2の相が関与する重合方法、たとえば、その中で粒状の(たとえば、顆粒状の)固形ポリマーが液体または重合媒体中で、または液体/蒸気重合媒体中で生成される重合方法を意味する。本明細書に記載された方法の特定の実施態様は、スラリー重合、たとえばその中で重合の生成物が固形である方法である。これらの方法における重合生成物(たとえば、ポリプロピレン)は、好ましくは重合中の溶融を回避するのに十分なほど高い融点を有し、その結果、重合生成物は多くの場合顆粒状ポリマーとして回収されることができる。スラリー重合は、溶媒(すなわち、希釈剤とも呼ばれるもの)を含むことができ、または以下に検討されるバルク方法であることができる。
【0060】
本明細書で使用される「バルク方法」の語は、重合方法において重合媒体がモノマーおよび行われた重合の何らかの生成物、たとえばマクロマーおよびポリマーから完全に成るかまたは本質的に成るが、溶媒を含まない(すなわち、これは希釈剤が存在しないことも意味する。)か、または50体積パーセント未満と定義される少量の溶媒、好ましくはこれよりはるかに少ない量の溶媒を含む重合方法を意味する。
【0061】
本発明に従うマルチモーダルポリプロピレンを製造するためには、順応性のある様式が好まれる。この理由から、ループ反応器/気相反応器を組み合わせた2の主要重合段階において、該組成物が製造されることが好まれる。
【0062】
任意的におよび好ましくは、本方法は当業界において公知の様式で予備重合段階も含んでいることができ、これは重合段階(a)に先行することができる。
【0063】
所望であれば、さらなるエラストマー性コモノマー成分、本発明におけるいわゆるエチレン−プロピレンゴム(EPR)成分が、得られたプロピレンポリマー中へと取り込まれて、上記のプロピレンコポリマーを生成することができる。エチレン−プロピレンゴム(EPR)成分は、好ましくは気相重合段階(b)の後で後続の第二のまたはさらなる気相重合において1以上の気相反応器を使用して製造されることができる。
【0064】
本方法は好ましくは連続方法である。
【0065】
好ましくは、上記のプロピレンポリマーを製造する方法では、段階(a)のバルク反応器の条件は以下の通りであることができる。
− 温度は40℃〜110℃、好ましくは60℃〜100℃、70〜90℃の範囲内である。
− 圧力は20バール〜80バール、好ましくは30バール〜60バールの範囲内である。
− 水素が、モル質量を調節するために、それ自体公知の様式で添加されることができる。
【0066】
その後、バルク反応器(段階a)からの反応混合物が気相反応器へ、すなわち段階(b)へ移送され、そうすることによって段階(b)における条件は好ましくは以下の通りである。
− 温度は50℃〜130℃、好ましくは60℃〜100℃の範囲内である。
− 圧力は5バール〜50バール、好ましくは15バール〜35バールの範囲内である。
− 水素が、モル質量を調節するために、それ自体公知の様式で添加されることができる。
【0067】
滞留時間は、双方の反応器帯域中で変えられることができる。プロピレンポリマーを製造するための本方法の1の実施態様では、バルク反応器、たとえばループ中の滞留時間は0.5〜5時間、たとえば0.5〜2時間の範囲内であり、気相反応器中の滞留時間は一般に1〜8時間である。
【0068】
所望であれば、バルク、好ましくはループ反応器中で超臨界条件下に、および/または気相反応器中でコンデンスモード(condensed mode)として、公知の様式で重合は実施されることができる。
【0069】
本発明の方法または上記のその任意の実施態様は、本発明の範囲内のプロピレンポリマー組成物を製造しかつさらに目的に合うようにするための極めて実現可能な手段を可能にし、たとえば該ポリマー組成物の特性が公知の様式で、たとえば以下のプロセスパラメータの1以上、すなわち温度、水素供給量、コモノマー供給量、たとえば気相反応器中へのプロピレン供給量、触媒、(使用されるならば)外部ドナーのタイプおよび量、成分間の割合を用いて調整されまたは制御されることができる。
【0070】
反応器で造られる下記のプロピレンポリマーを得るための非常に実現可能な手段を、上記の方法は可能にする。
【0071】
上記の方法を用いて、改良されたレオロジー特性、たとえば高溶融強度を有するポリプロピレンを得ることが可能である。特に、多分枝状ポリプロピレン、すなわちポリプロピレン骨格が多数の側鎖を付与されている(分枝状ポリプロピレン)のみならず、側鎖の一部がさらなる側鎖もまた付与されているものを提供することが可能である。したがって、本発明の方法は、以下に詳細に定義されるポリプロピレンを製造するのに特に適している。
【0072】
したがって、本発明は、第一の実施態様では、
a. 1.00未満の分枝指数g'および/または
b. 180℃の温度において1.00秒−1の変形速度dε/dtによって測定された、少なくとも0.30のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)であって、該ひずみ硬化指数(SHI)が、1〜3のヘンキーひずみの範囲内のヘンキーひずみの10を底とする対数(lg(ε))の関数としての引張応力成長関数の10を底とする対数(lg(η))の傾きと定義されるひずみ硬化指数(SHI@1秒−1
を有するポリプロピレンにも関する。
【0073】
驚いたことに、このような特性を有するポリプロピレンは、従来技術で知られたポリプロピレンと比較して優れた性質を有することが発見された。とりわけ、押出加工法における該ポリプロピレンの溶融物は高い安定性を有する。
【0074】
特に伸長溶融流れ特性によって、該新規なポリプロピレンは特性付けられる。伸長流れ、または粘性物質の延伸が関与する変形は、典型的なポリマー加工操作において行われる集束流れおよび絞り流れにおける変形の支配的なタイプである。伸長溶融流れの測定は、特にポリマーの特性付けに有用である。何故ならば、これは、試験されるポリマー系の分子構造に非常に敏感だからである。伸長の真のひずみ速度はヘンキーひずみ速度とも呼ばれ、これが一定であるときは、単純な伸長は、単純なせん断における流れよりもはるかに高い程度の分子配向および延伸を生じさせることができるという意味で「強い流れ」であると言われる。この結果、伸長流れは、結晶化度およびマクロ構造の効果、たとえば長鎖分枝に非常に敏感であり、かつそれ自体ポリマーの特性付けに関して、せん断流れに適用される他のタイプのバルクレオロジー測定よりもはるかに記述的であることができる。
【0075】
本発明のポリプロピレンの第一の特性は、分枝指数g'が1.00未満、より好ましくは0.90未満、さらにより好ましくは0.80未満でなければならないことである。好まれる実施態様では、分枝指数g'は0.75未満でなければならない。分枝指数g'は、分枝の程度を規定しポリマーの分枝の量と相関する。分枝指数g'はg'=[IV]br/[IV]linと定義され、この式で、g'は分枝指数であり、[IV]brは分枝状ポリプロピレンの固有粘度であり、[IV]linは分枝状ポリプロピレンと(±10%の範囲内で)同じ重量平均分子量を有する直鎖状ポリプロピレンの固有粘度である。そうであることによって、低いg'値は高度に分枝状のポリマーを表す指標である。言い換えれば、g'値が減少すれば、ポリプロピレンの分枝は増加する。この文脈においては、B.H.ZimmおよびW.H.Stockmeyer、J.Chem.Phys.、1949年、第17巻、1301ページが参照される。この文献は引用によって本明細書に含まれる。
【0076】
分枝指数g'を決定するために必要とされる固有粘度は、DIN ISO 1628/1、1999年10月版に従って(デカリン中135℃において)測定される。
【0077】
さらなる要件および/または他の特性はひずみ硬化指数(@1秒−1)が少なくとも0.30でなければならないことであり、少なくとも0.40がより好まれ、少なくとも0.50がさらにより好まれる。好まれる実施態様では、ひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)は少なくとも0.55である。
【0078】
ひずみ硬化指数は、該ポリプロピレン溶融物のひずみ硬化挙動を表す尺度である。本発明においては、ひずみ硬化挙動を測定するために、ひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)は180℃の温度において1.00秒−1の変形速度dε/dtによって測定され、ここでひずみ硬化指数(SHI)は、1.00〜3.00の間のヘンキーひずみεの対数尺度に基づいた関数としての引張応力成長関数ηの傾きと定義される(図1参照)。これによって、ヘンキーひずみεは式

によって定義され、この式で、
ヘンキーひずみ速度εドットは式

によって定義され、この式で、
「L」は、延伸される試験サンプルの固定の、支持されていない長さであり、主ドラムと副ドラムとの間の中心線距離に等しく、
「R」は、等寸法巻き取りドラムの半径であり、および
「Ω」は一定の駆動軸回転速度である。
【0079】
次に、引張応力成長関数ηは式

によって定義され、この式で、


であり、これらの式でヘンキーひずみ速度εドットはヘンキーひずみεに関して定義され、
「F」は、接線方向延伸力であり、
「R」は、等寸法巻き取りドラムの半径であり、
「T」は、測定されたトルクシグナルであり、接線方向延伸力「F」に関係し、
「A」は、延伸される溶融試料の瞬間断面積であり、
「A」は、固体状態にある(すなわち、溶融する前の)試料の断面積であり、
「d」は、固体状態の密度であり、および
「d」は、ポリマーの溶融物密度である。
【0080】
さらに、該ポリプロピレンがひずみ速度増粘性を示すことが好まれ、これはひずみ硬化が伸長速度とともに増加することを意味する。SHI@1秒−1の測定と同様に、ひずみ硬化指数(SHI)は、様々なひずみ速度において測定されることができる。ひずみ硬化指数(SHI)は、180℃の温度においてヘンキーひずみ1.00〜3.00の間のヘンキーひずみεの10を底とする対数、lg(ε)の関数としての、引張応力成長関数ηの10を底とする対数、lg(η)の傾きと定義され、ここでSHI@0.1秒−1は0.10秒−1の変形速度εドットで測定され、SHI@0.3秒−1は0.30秒−1の変形速度εドットで測定され、SHI@3秒−1は3.00秒−1の変形速度εドットで測定され、SHI@10秒−1は10.0秒−1の変形速度εドットで測定される。これらの0.10、0.30、1.00、3.00および10.00秒−1の五つのひずみ速度εドットにおいてひずみ硬化指数(SHI)を比較した際の、εドットの10を底とする対数(lg(εドット))の関数としてのひずみ硬化指数(SHI)の傾きは、多分枝の特性的な尺度である。したがって、多分枝指数(MBI)は、lg(εドット)の関数としてのSHIの傾き、すなわち最小二乗法を適用したひずみ硬化指数(SHI)対lg(εドット)の直線フィッティング曲線(linear fitting curve)の傾きと定義され、好ましくは、ひずみ硬化指数(SHI)は0.05秒−1〜20.00秒−1間、より好ましくは0.10秒−1〜10.00秒−1間の変形速度εドットにおいて、さらにより好ましくは0.10、0.30、1.00、3.00および10.0秒−1の変形速度において定義される。なおもより好ましくは、多分枝指数(MBI)を確定するときに、0.10、0.30、1.00、3.00および10.0秒−1の変形速度によって測定されたSHI値が最小二乗法に従う直線フィッティングに使用される。
【0081】
したがって、本発明のさらに好まれる要件は、少なくとも0.15、より好ましくは少なくとも0.20、さらにより好ましくは少なくとも0.25の多分枝指数(MBI)である。さらにより好まれる実施態様では、多分枝指数(MBI)は少なくとも0.28である。
【0082】
本発明に従うポリプロピレンは特に、1.00未満の分枝指数g'、少なくとも0.30のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.15の多分枝指数(MBI)を有することが好まれる。さらにより好まれるのは、本発明に従うポリプロピレンが0.80未満の分枝指数g'、少なくとも0.40のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.15の多分枝指数(MBI)を有することである。他の好まれる実施態様では、本発明に従うポリプロピレンは1.00未満の分枝指数g'、少なくとも0.30のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.20の多分枝指数(MBI)を有する。さらに他の好まれる実施態様では、本発明に従うポリプロピレンは1.00未満の分枝指数g'、少なくとも0.40のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.20の多分枝指数(MBI)を有する。なおもさらに他の好まれる実施態様では、本発明に従うポリプロピレンは0.80未満の分枝指数g'、少なくとも0.50のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.30の多分枝指数(MBI)を有する。
【0083】
したがって、本発明のポリプロピレン、すなわち多分枝状ポリプロピレンは、そのひずみ硬化指数(SHI)が変形速度εドットとともに増加するという事実、すなわち他のポリプロピレンでは観察されない現象によって特性付けられる。単純な分枝状ポリマーのタイプ(単純な長い側鎖を持つ骨格および「Y」に似ている構造を有する、いわゆるYポリマー)またはH分枝状ポリマーのタイプ(架橋基で、および「H」に似ている構造をもって結合された2のポリマー鎖)ならびに直鎖状または単鎖分枝状ポリマーは、このような関係を示さない、すなわちひずみ硬化指数(SHI)は変形速度によって影響を受けない(図2および3参照)。したがって、公知のポリマー、特に公知のポリプロピレンおよびポリエチレンのひずみ硬化指数(SHI)は、変形速度(dε/dt)の増加とともに増加しないかまたは無視できる程度にのみ増加する。伸張流れを含意する工業的加工方法は、非常に速い伸長速度において操業される。したがって、高いひずみ速度においてより顕著な(ひずみ硬化指数SHIによって測定された)ひずみ硬化を示す物質の利点が明白になる。該物質はより急速に延伸されればされるほど、ひずみ硬化指数(SHI)はそれだけ高くなり、したがって該物質は加工においてそれだけ安定になる。とりわけ、急速な押出加工法において、多分枝状ポリプロピレンの溶融物は高い安定性を有する。
【0084】
分枝指数g'、引張応力成長関数η、ヘンキーひずみ速度εドット、ヘンキーひずみεおよび多分枝指数(MBI)に関連するデータを得るために適用される測定方法に関するさらなる情報については、実施例の部が参照される。
【0085】
第二の実施態様では、本発明はひずみ速度増粘性を示すポリプロピレンに関し、これはひずみ硬化が伸長速度とともに増加することを意味する。ひずみ硬化指数(SHI)は、様々なひずみ速度において測定されることができる。ひずみ硬化指数(SHI)は、180℃の温度において1.00〜3.00の間のヘンキーひずみεの対数尺度に基づいた関数としての引張応力成長関数ηの傾きと定義され、ここでSHI@0.1秒−1は0.10秒−1の変形速度εドットで測定され、SHI@0.3秒−1は0.30秒−1の変形速度εドットで測定され、SHI@3秒−1は3.00秒−1の変形速度εドットで測定され、SHI@10秒−1は10.0秒−1の変形速度εドットで測定される。これらの0.10、0.30、1.0、3.0および10秒−1の五つのひずみ速度εドットにおいてひずみ硬化指数を比較した際の、εドットの10を底とする対数、lg(εドット)の関数としてのひずみ硬化指数(SHI)の傾きは、多分枝の特性的な尺度である。したがって、多分枝指数(MBI)は、lg(εドット)の関数としてのSHIの傾き、すなわち最小二乗法を適用したひずみ硬化指数(SHI)対lg(εドット)の直線フィッティング曲線の傾きと定義され、好ましくは、ひずみ硬化指数(SHI)は0.05秒−1〜20.0秒−1間、より好ましくは0.10秒−1〜10.0秒−1間の変形速度εドットにおいて、さらにより好ましくは0.10、0.30、1.00、3.00および10.0秒−1の変形速度において定義される。なおもより好ましくは、多分枝指数(MBI)を確定するときに、0.10、0.30、1.00、3.00および10.0秒−1の変形速度によって測定されたSHI値が最小二乗法に従う直線フィッティングに使用される。
【0086】
したがって、第二の実施態様では、ポリプロピレンは少なくとも0.15の多分枝指数(MBI)を有する。
【0087】
驚いたことに、このような特性を有するポリプロピレンは、従来技術で知られたポリプロピレンと比較して優れた性質を有することが発見された。とりわけ、押出加工法における該ポリプロピレンの溶融物は高い安定性を有する。
【0088】
特に伸長溶融流れ特性によって、該新規なポリプロピレンは特性付けられる。伸長流れ、または粘性物質の延伸が関与する変形は、典型的なポリマー加工操作において行われる集束流れおよび絞り流れにおける変形の支配的なタイプである。伸長溶融流れの測定は、特にポリマーの特性付けに有用である。何故ならば、これは、試験されるポリマー系の分子構造に非常に敏感だからである。伸長の真のひずみ速度はヘンキーひずみ速度とも呼ばれ、これが一定であるときは、単純な伸長は、単純なせん断における流れよりもはるかに高い程度の分子配向および延伸を生じさせることができるという意味で「強い流れ」であると言われる。この結果、伸長流れは、結晶化度およびマクロ構造の効果、たとえば長鎖分枝に非常に敏感であり、かつそれ自体ポリマーの特性付けに関して、せん断流れに適用される他のタイプのバルクレオロジー測定よりもはるかに記述的であることができる。
【0089】
本発明に従う第一の要件は、ポリプロピレンが少なくとも0.15、より好ましくは少なくとも0.20、さらにより好ましくは少なくとも0.30の多分枝指数(MBI)を有することである。
【0090】
上記のように、多分枝指数(MBI)は、lg(dε/dt)の関数としてのひずみ硬化指数(SHI)の傾き[dSHI/dlg(dε/dt)]と定義される。
【0091】
したがって、本発明のポリプロピレン、すなわち多分枝状ポリプロピレンは、そのひずみ硬化指数(SHI)が変形速度εドットとともに増加するという事実、すなわち他のポリプロピレンでは観察されない現象によって特性付けられる。単純な分枝状ポリマーのタイプ(単純な長い側鎖を持つ骨格および「Y」に似ている構造を有する、いわゆるYポリマー)またはH分枝状ポリマーのタイプ(架橋基で、および「H」に似ている構造をもって結合された2のポリマー鎖)ならびに直鎖状または単鎖分枝状ポリマーは、このような関係を示さない、すなわちひずみ硬化指数(SHI)は変形速度によって影響を受けない(図2および3参照)。したがって、公知のポリマー、特に公知のポリプロピレンのひずみ硬化指数(SHI)は、変形速度(dε/dt)の増加とともに増加しないかまたは無視できる程度にのみ増加する。伸張流れを含意する工業的加工方法は、非常に速い伸長速度において操業される。したがって、高いひずみ速度においてより顕著な(ひずみ硬化指数(SHI)によって測定された)ひずみ硬化を示す物質の利点が明白になる。該物質はより急速に延伸されればされるほど、ひずみ硬化指数)はそれだけ高くなり、したがって該物質は加工においてそれだけ安定になる。とりわけ、急速な押出加工法において、多分枝状ポリプロピレンの溶融物は高い安定性を有する。
【0092】
さらなる要件は、ひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)が少なくとも0.30でなければならないことであり、少なくとも0.40がより好まれ、少なくとも0.50がさらにより好まれる。
【0093】
ひずみ硬化指数(SHI)は、ポリプロピレン溶融物のひずみ硬化挙動を表す尺度である。本発明においては、ひずみ硬化挙動を測定するために、ひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)は180℃の温度において1.00秒−1の変形速度(dε/dt)によって測定され、ここでひずみ硬化指数(SHI)は、1.00〜3.00の間のヘンキーひずみεの対数尺度に基づいた関数としての引張応力成長関数ηの傾きと定義される(図1参照)。これによって、ヘンキーひずみεは式

によって定義され、この式で、
ヘンキーひずみ速度εドットは式

によって定義され、この式で、
「L」は、延伸される試験サンプルの固定の、支持されていない長さであり、主ドラムと副ドラムとの間の中心線距離に等しく、
「R」は、等寸法巻き取りドラムの半径であり、および
「Ω」は一定の駆動軸回転速度である。
【0094】
次に、引張応力成長関数ηは式

によって定義され、この式で、


であり、これらの式でヘンキーひずみ速度εドットはヘンキーひずみεに関して定義され、
「F」は、接線方向延伸力であり、測定されたトルクシグナル「T」から計算され、
「R」は、等寸法巻き取りドラムの半径であり、
「T」は、測定されたトルクシグナルであり、接線方向延伸力「F」に関係し、
「A」は、延伸される溶融試料の瞬間断面積であり、
「A」は、固体状態にある(すなわち、溶融する前の)試料の断面積であり、
「d」は、(ISO 1183に従って測定された)固体状態の密度であり、および
「d」は、ポリマーの(ISO 1133、手順Bに従って測定された)溶融物密度である。
【0095】
さらに、分枝指数g'は1.00未満、より好ましくは0.90未満、さらにより好ましくは0.80未満であるべきことが好まれる。好まれる実施態様では、分枝指数g'は0.70未満であるべきである。分枝指数g'は、分枝の程度を規定しポリマーの分枝の量と相関する。分枝指数g'はg'=[IV]br/[IV]linと定義され、この式で、g'は分枝指数であり、[IV]brは分枝状ポリプロピレンの固有粘度であり、[IV]linは分枝状ポリプロピレンと(±10%の範囲内で)同じ重量平均分子量を有する直鎖状ポリプロピレンの固有粘度である。そうであることによって、低いg'値は高度に分枝状のポリマーを表す指標である。言い換えれば、g'値が減少すれば、ポリプロピレンの分枝は増加する。この文脈においては、B.H.ZimmおよびW.H.Stockmeyer、J.Chem.Phys.、1949年、第17巻、1301ページが参照される。この文献は引用によって本明細書に含まれる。
【0096】
分枝指数g'を決定するために必要とされる固有粘度は、DIN ISO 1628/1、1999年10月版に従って(デカリン中135℃において)測定される。
【0097】
多分枝指数(MBI)、引張応力成長関数η、ヘンキーひずみ速度εドット、ヘンキーひずみεおよび分枝指数g'に関連するデータを得るために適用される測定方法に関するさらなる情報については、実施例の部が参照される。
【0098】
本発明に従うポリプロピレンは特に、1.00未満の分枝指数g'、少なくとも0.30のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.15の多分枝指数(MBI)を有することが好まれる。さらにより好まれるのは、本発明に従うポリプロピレンが0.80未満の分枝指数g'、少なくとも0.40のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.15の多分枝指数(MBI)を有することである。他の好まれる実施態様では、本発明に従うポリプロピレンは1.00未満の分枝指数g'、少なくとも0.30のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.20の多分枝指数(MBI)を有する。さらに他の好まれる実施態様では、本発明に従うポリプロピレンは1.00未満の分枝指数g'、少なくとも0.40のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.20の多分枝指数(MBI)を有する。なおもさらに他の好まれる実施態様では、本発明に従うポリプロピレンは0.80未満の分枝指数g'、少なくとも0.50のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)および少なくとも0.30の多分枝指数(MBI)を有する。
【0099】
下記のさらなる特徴が、双方の実施態様、すなわち上記の第一および第二の実施態様に当てはまる。
【0100】
さらにそのうえ、ポリプロピレンは、特定の範囲内に示されたメルトフローレート(MFR)を有することが好まれる。メルトフローレートは主に平均分子量に依存する。これは、長い分子はその物質に短い分子よりも低い流れ性向を与える事実によるものである。分子量の増加はMFR値の減少を意味する。メルトフローレート(MFR)は、特定の温度および圧力条件下に規定のダイを通して排出されるポリマーのg/10分単位で測定され、該ポリマーの粘度の尺度であり、該粘度は次なる順番としてそれぞれのタイプのポリマーごとに主にその分子量によって影響されるのみならず、その分枝の程度によってもまた影響される。230℃において2.16kgの荷重下に測定されたメルトフローレート(ISO 1133)は、MFRと表示される。したがって、本発明においては、ポリプロピレンは0.01〜1000.00g/10分、より好ましくは0.01〜100.00g/10分の範囲内のMFRを有することが好まれ、0.05〜50g/10分がさらにより好まれる。好まれる実施態様では、MFRは1.00〜11.00g/10分の範囲内である。他の好まれる実施態様では、MFRは3.00〜11.00g/10分の範囲内である。
【0101】
数平均分子量(Mn)は、分子量に対する各分子量範囲内の分子の数のプロットの一次モーメントとして表現された、ポリマーの平均分子量である。実際には、これは全分子の分子量の合計を分子の数で割ったものである。次に、重量平均分子量(Mw)は、分子量に対する各分子量範囲内のポリマーの重量のプロットの一次モーメントである。
【0102】
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)ならびに分子量分布は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、オンライン粘度計付きのWaters Alliance GPCV 2000測定器を使用して測定される。オーブン温度は140℃である。トリクロロベンゼンが溶媒として使用される。
【0103】
ポリプロピレンは、10,000〜2,000,000g/モル、より好ましくは20,000〜1,500,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有することが好まれる。
【0104】
より好ましくは、本発明に従うポリプロピレンはかなり高い、すなわち90%超、より好ましくは92%超、最も好ましくは93%超のペンタッド濃度を有すべきである。他の好まれる実施態様では、ペンタッド濃度は95%超である。ペンタッド濃度は、ポリプロピレンの規則性分布の狭さを表す指標である。
【0105】
さらに、ポリプロピレンは125℃超の溶融温度Tmを有することが好まれる。ポリプロピレンが以下に定義されるポリプロピレンコポリマーであるならば、溶融温度が125℃超であることが特に好まれる。それに代わって、ポリプロピレンが以下に定義されるポリプロピレンホモポリマーである場合には、該ポリプロピレンは150℃超の溶融温度を有することが好まれ、155℃超がより好まれる。
【0106】
より好ましくは、本発明に従うポリプロピレンはマルチモーダル(多峰性)であり、バイモーダル(双峰性)であることがさらにより好まれる。「マルチモーダル」または「マルチモーダル分布」は、いくつかの相対的な極大値を有する頻度分布を記述する。特に、「ポリマーのモーダル性(modality)」の表現は、その分子量分布(MWD)曲線の形状、すなわちポリマー重量画分のその分子量の関数としてのグラフの外観を言う。逐次的段階方法で、すなわち直列に連結された反応器を利用しかつ各反応器中で異なった条件を使用することによって、ポリマーが製造されるならば、異なった反応器中で製造された異なったポリマー画分は、それぞれそれ自体の分子量分布を有し、これは互いにかなり異なっていることがありうる。得られた最終ポリマーの分子量分布曲線は、ポリマー画分の分子量分布曲線の重ね合わせにあると見られることができ、これはしたがって個々の画分の曲線と比較してよりはっきりと区別される極大値を示し、または少なくとも区別されるように拡げられる。
【0107】
このような分子量分布曲線を示すポリマーは、それぞれバイモーダルまたはマルチモーダルと呼ばれる。
【0108】
ポリプロピレンは好ましくはバイモーダルである。
【0109】
本発明に従うポリプロピレンはホモポリマーまたはコポリマーであることができる。したがって、コポリマーのみならずホモポリマーもまたマルチモーダルポリマー組成物であることができる。
【0110】
本明細書で使用されるホモポリマーの表現は、実質的に、すなわち少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%、最も好ましくは少なくとも99.8重量%のプロピレン単位から成るポリプロピレンに関する。
【0111】
本発明に従うポリプロピレンがプロピレンコポリマーである場合には、コモノマーはエチレンであることが好まれる。しかし、従来技術で知られた他のコモノマーも適している。好ましくは、プロピレンコポリマー中のコモノマー、より好ましくはエチレン、の全量は30重量%まで、より好ましくは25重量%までである。
【0112】
好まれる実施態様では、ポリプロピレンは、ポリプロピレンマトリクスとエチレン−プロピレンゴム(EPR)とを含んでいるプロピレンコポリマーである。
【0113】
ポリプロピレンマトリクスは、ホモポリマーまたはコポリマー、より好ましくはマルチモーダルのすなわちバイモーダルのホモポリマー、またはマルチモーダルのすなわちバイモーダルのコポリマーである。ポリプロピレンマトリクスがプロピレンコポリマーである場合には、コモノマーはエチレンまたはブテンであることが好まれる。しかし、従来技術で知られた他のコモノマーも適している。ポリプロピレンマトリクス中のコモノマー、より好ましくはエチレンの好まれる量は8.00モル%までである。プロピレンコポリマーマトリクスがコモノマー成分としてエチレンを有する場合には、マトリクス中のエチレンの量は8.00モル%まで、より好ましくは6.00モル%未満であることが特に好まれる。プロピレンコポリマーマトリクスがコモノマー成分としてブテンを有する場合には、マトリクス中のブテンの量は6.00モル%まで、より好ましくは4.00モル%未満であることが特に好まれる。
【0114】
好ましくは、全プロピレンコポリマー中のエチレン−プロピレンゴム(EPR)は80重量%までである。より好ましくは、全プロピレンコポリマー中のエチレン−プロピレンゴム(EPR)の量は、20〜80重量%の範囲内、さらにより好ましくは30〜60重量%の範囲内である。
【0115】
さらに、ポリプロピレンは、ポリプロピレンマトリクスとエチレン−プロピレンゴム(EPR)とを含んでいるコポリマーであり、50重量%までのエチレン含有量を有するエチレン−プロピレンゴム(EPR)を有することが好まれる。
【0116】
以下において、本発明は実施例を手段として記載される。
【0117】
実施例
【0118】
1.定義/測定方法
【0119】
以下の語の定義および測定方法は、本発明の上記の全般的記載ならびに以下の実施例に、他様に定義されない限り適用される。
【0120】
A.ペンタッド濃度
【0121】
メソペンタッド濃度の分析は本明細書ではペンタッド濃度の分析とも言うが、これについては、T.Hayashi、R.ChujoおよびT.Asakura、「ペンタッド濃度」、Polymer、1988年、第29巻、138〜43ページ、およびChujo R.ら、Polymer、1994年、第35巻、339ページに従って、帰属分析が行われる。
【0122】
B.多分枝指数
【0123】
1.実験データの取得
【0124】
ポリマーがT=180℃において溶融され、引き続く実験において下記のSER万能試験機(SER Universal Testing Platform)を用いて、dε/dt=0.1、0.3、1.0、3.0および10秒−1の変形速度で延伸される。生データを得る方法は、Sentmanatら、「SER万能試験機を使用するポリエチレン溶融物の非定常伸長レオロジーの測定」、J.Rheol.、2005年に記載されている。
【0125】
実験の準備
【0126】
TC30温度制御装置およびオーブンCTT600(対流および輻射加熱)および温度センサー付きのSERVP01−025伸長装置およびソフトウェアRHEO−PLUS/32 v2.66を備えたPaar Physica MCR300が使用される。
【0127】
サンプルの調製
【0128】
安定化されたペレットが、試料中の気泡を避けるのに十分な圧力において金型中で220℃において圧縮成形され(ゲル時間3分間、加圧時間3分間、合計成形時間3+3=6分間)、室温に冷却される。このように調製された0.7mm厚さの板から、10mmの幅および18mmの長さの細片が切り出される。
【0129】
SER装置の点検
【0130】
薄い厚さに延伸されたサンプルには低い力が作用する故に、該装置の何らかの本質的な摩擦は結果の精度を損なうだろうから、避けられなければならない。
【0131】
装置の摩擦が、精密かつ正確な測定のために要求される5×10−3mNm(ミリニュートンメートル)の閾値未満であることを確実にするために、各測定前に以下の点検手順が実施される。
・ 該装置は、クランプを存在させてサンプルは付けないで最低限20分間試験温度(180℃)に置かれる。
・ 装置を試験温度(180℃)にして、0.3秒−1での標準試験が実施される。
・ (mNm単位で測定された)トルクが記録され、時間に対してプロットされる。
・ 装置の摩擦が容認できるほど低い範囲内であることを確実にするために、トルクは5×10−3mNmの値を超えてはならない。
【0132】
実験の実施
【0133】
装置はクランプを付けてしかしサンプルは付けないで、20分間試験温度(SER装置に付属された熱電対を用いて測定されて180℃)まで加熱される。その後、上記のように調製されたサンプル(0.7×10×18mm)が熱い装置中へとクランプ止めされる。サンプルは2分間+/−20秒間放置溶融され、その後実験が開始される。
【0134】
一定のヘンキーひずみ速度における不活性雰囲気(窒素)下の延伸実験の間、(SER装置に付属された熱電対を用いて測定され制御される)等温条件における時間の関数として、トルクが記録される。
【0135】
延伸後、装置は開けられ、(ドラム上に巻かれている)延伸されたフィルムが検査される。均一な伸長が要求される。サンプルの延伸が均一であったか否かは、ドラム上の延伸されたフィルムの形状から目視で判断されることができる。該テープは双方のドラム上に対称的にのみならず、試料の上半分および下半分においても対称的に巻き付けられなければならない。
【0136】
対称的な延伸がこの検査によって確認されたならば、以下に概説されるように記録されたトルクから、非定常伸長粘度が計算される。
【0137】
評価
【0138】
かけられた様々なひずみ速度dε/dtのそれぞれについて、得られた引張応力成長関数η(dε/dt,t)が全ヘンキーひずみεに対してプロットされて、溶融物のひずみ硬化挙動が測定される。図1を参照せよ。
【0139】
1.0〜3.0の間のヘンキーひずみの範囲内で、引張応力成長関数ηは、関数

によって十分にフィッティングされることができ、この式で、cおよびcはフィッティング変数である。このようにして誘導されたcは溶融物のひずみ硬化挙動を表す尺度であり、ひずみ硬化指数SHIと呼ばれる。
【0140】
ポリマーの構造に応じて、SHIは、
− ひずみ速度に依存しない(直鎖状物質、YまたはH構造)
− ひずみ速度とともに増加する(短鎖分枝状、超分枝状または多分枝状構造)
ことができる。これは図2に示される。
【0141】
ポリエチレンについては、直鎖状(HDPE)、短鎖分枝状(LLDPE)、および超分枝状(LDPE)の構造が周知であり、したがってこれらが伸長粘度に関する結果に基づいた構造分析論を例証するために使用される。これらは、ひずみ速度の関数としてのひずみ硬化挙動のこれらの変化に関して、YおよびH構造を有するポリプロピレンと対比される。図2および表1を参照せよ。
【0142】
様々なひずみ速度におけるSHIならびに多分枝指数(MBI)の測定を例証するために、公知の鎖構造の4のポリマーが上記の分析手順を用いて検討される。
【0143】
第一のポリマーは、ブタジエンの量でMFRを調整することによって、欧州特許第879830号の実施例1に従って造られたHおよびY形状のポリプロピレンホモポリマー(「A」)である。2.0g/10分のMFR230/2.16、1950MPaの引張弾性率および0.7の分枝指数g'を、これは有する。
【0144】
第二のポリマーは、従来技術で知られた高圧法で造られた商用の超分枝状LDPE、Borealis社の「B」である。4.5のMFR190/2.16および923kg/mの密度を、これは有する。
【0145】
第三のポリマーは、従来技術で知られた低圧法で造られた短鎖分枝状LLDPE、Borealis社の「C」である。1.2のMFR190/2.16および919kg/mの密度を、これは有する。
【0146】
第四のポリマーは、従来技術で知られた低圧法で造られた直鎖状HDPE、Borealis社の「D」である。4.0のMFR190/2.16および954kg/mの密度を、これは有する。
【0147】
これらの公知の鎖構造の4の物質は、180℃における0.10、0.30、1.0、3.0および10秒−1のひずみ速度における非定常伸長粘度の測定によって検討される。得られたデータ(ヘンキーひずみに対する非定常伸長粘度)は関数

を用いて上述のひずみ速度のそれぞれについてフィッティングされる。パラメータcおよびcは、ヘンキーひずみの対数に対して非定常伸長粘度の対数をプロットし、最小二乗法を適用してこのデータの直線フィッティングを行うことによって求められる。パラメータcは、

から、lg(η)対lg(ε)のデータの直線フィッティングの切片から計算され、cは、特定のひずみ速度におけるひずみ硬化指数(SHI)である。
【0148】
全ての5のひずみ速度について、この手順が行われ、したがってSHI@0.1秒−1、SHI@0.3秒−1、SHI@1.0秒−1、SHI@3.0秒−1、SHI@10秒−1が測定される。図1および表1を参照せよ。

【0149】
SHI@1秒−1の値によって測定されたひずみ硬化挙動から、2種類のポリマーがすでに明らかに区別されることができる。すなわち、直鎖状および短鎖分枝状ポリマーは0.30よりも有意に小さいSHI@1秒−1を有する。対照的に、YおよびH分枝状ならびに超分枝状物質は0.30よりも有意に大きいSHI@1秒−1を有する。
【0150】
これらの0.10、0.30、1.0、3.0および10秒−1の五つのひずみ速度εドットにおけるひずみ硬化指数を比較すると、εドットの対数、lg(εドット)の関数としてのSHIの傾きは、多分枝の特性的な尺度である。したがって、SHI対lg(εドット)の直線フィッティング曲線

の傾きから、多分枝指数(MBI)は計算される。
【0151】
ヘンキーひずみ速度の対数、lg(εドット)に対してSHIをプロットし、最小二乗法を適用してこのデータの直線フィッティングを行うことによって、パラメーラc3およびMBIは求められる。図2を参照せよ。

【0152】
多分枝指数MBIは、今、0.05より小さいMBIを示すYまたはH分枝状ポリマーと0.15より大きいMBIを示す超分枝状ポリマーとを区別することを許す。さらに、これは0.10より大きいMBIを有する短鎖分枝状ポリマーと0.10より小さいMBIを有する直鎖状物質とを区別することを許す。
【0153】
様々なポリプロピレンを比較すると、同様な結果が観察されることができる。すなわち、かなり高度に分枝状の構造を有するポリプロピレンは、これらの直鎖状の対応物と比較すると、それぞれより高いSHI値およびMBI値を有する。超分枝状ポリエチレンと同様に、新規に開発されたポリプロピレンは高い程度の分枝を示す。しかし、公知の超分枝状ポリエチレンと比較すると、本発明に従うポリプロピレンはSHI値およびMBI値において明らかに区別される。この理論に拘束されるわけではないが、異なったSHI値およびMBI値は異なった分枝構造の結果であると考えられる。この理由から、本発明に従う新規に発見された分枝状ポリプロピレンは、多分枝状と表示される。
【0154】
ひずみ硬化指数(SHI)および多分枝指数(MBI)の双方を合わせて、鎖構造は表3に示されたように評価されることができる。

【0155】
C.さらなる測定方法
【0156】
粒子サイズ分布:粒子サイズ分布は、n−ヘプタンを媒体として室温においてコールターカウンター(Coulter Counter)LS 200によって測定される。
【0157】
NMR
【0158】
NMR分光分析測定
【0159】
1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6(90/10重量比)中に溶解されたサンプルから130℃においてBruker 400MHz分光計を用いて、ポリプロピレンの13C−NMRスペクトルが記録された。ペンタッド分析については、文献(T.Hayashi、Y.Inoue、R.Chujo、およびT.Asakura、Polymer、1988年、第29巻、138〜43ページ、およびChujo R.ら、Polymer、1994年、第35巻、339ページ)に記載された方法に従って、帰属が行われる。
【0160】
NMR測定は、従来技術で周知の様式でmmmmペンタッド濃度を測定するために使用された。
【0161】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(MWD)は、オンライン粘度計付きのWaters Alliance GPCV 2000分析器を使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。オーブン温度は140℃である。トリクロロベンゼンが溶媒として使用される(ISO 16014)。
【0162】
溶融温度Tm、結晶化温度Tc、および結晶化度:5〜10mgのサンプルに基づいてMettler TA820示差走査熱量計(DSC)を用いて測定された。30℃〜225℃の間の10℃/分の冷却および加熱走査の間に、結晶化曲線および溶融曲線の双方が得られた。溶融温度および結晶化温度は吸熱曲線および発熱曲線のピークが採られた。
【0163】
ISO 11357−3に従うDSC方法によって、同様に融解および結晶化エンタルピー(HmおよびHc)も測定された。
【0164】
MFR:ISO 1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定された。
【0165】
固有粘度:DIN ISO 1628/1、1999年10月版に従って(デカリン中135℃において)測定される。
【0166】
コモノマー含有量は、13C−NMRで較正されたフーリエ変換赤外分光分析法(FTIR)を用いて測定される。ポリプロピレン中のエチレン含有量を測定するときは、サンプルの薄いフィルム(厚さ約250mm)がホットプレス法によって調製された。Perkin Elmer FTIR 1600分光計を用いて−CH−吸収ピーク(800〜650cm−1)の面積が測定された。13C−NMRによって測定されたエチレン含有量データによって、該方法は較正された。
【0167】
多孔度:DIN 66135に従って測定される。
【0168】
表面積:ISO 9277に従って測定される。
【0169】
3.実施例
【0170】
実施例1(比較)
【0171】
国際公開第01/48034号(実施例27)に従って、シリカに担持されたメタロセン触媒(I)が調製された。該担体の多孔度は1.6ml/gである。不斉メタロセン、ジメチルシリル[(2−メチル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロライドが使用された。
【0172】
5リットルのステンレス鋼反応器が、プロピレン重合に使用された。110gの液状プロピレン(Borealis社重合級)が反応器に供給された。0.2mlのトリエチルアルミニウム(100%、Crompton社から購入)が捕捉剤として、および3.7ミリモルの水素(品質6.0、Åga社供給)が連鎖移動剤として供給された。反応器温度は30℃に設定された。21mgの触媒が窒素の過剰圧力によって反応器中へと流し込まれた。反応器は約14分間で60℃まで加熱された。重合が60℃において30分間続けられ、それからプロピレンが流し出され、ポリマーが乾燥され秤量された。
【0173】
ポリマー収量は182gと秤量された。
【0174】
SHI@1秒−1は0.29である。MBIは0.04である。g'は1.00である。このことは直鎖構造を示す。MFR230/2.16は7.9g/10分である。溶融温度は155℃である。
【0175】
実施例2(比較)
【0176】
国際公開第03/051934号の実施例5に記載されたように、触媒(II)が調製された。
【0177】
5リットルのステンレス鋼反応器が、プロピレン重合に使用された。1100gの液状プロピレン(Borealis社重合級)が反応器に供給された。0.1mlのトリエチルアルミニウム(100%、Crompton社から購入)が捕捉剤として、および15ミリモルの水素(品質6.0、Åga社供給)が連鎖移動剤として供給された。反応器温度は30℃に設定された。21mgの触媒が窒素の過剰圧力によって反応器中へと流し込まれた。反応器は約14分間で70℃まで加熱された。重合が70℃において50分間続けられ、それからプロピレンが流し出され、5ミリモルの水素が供給され、そして(気体状)プロピレンを供給することによって反応器圧力が20バールまで上げられた。重合が気相で210分間続けられ、それから反応器が減圧フラッシュされ、ポリマーが乾燥され秤量された。
【0178】
ポリマー収量は790gと秤量され、これは36.9kgPP/g触媒の生産性に等しい。
【0179】
SHI@1秒−1は0.15である。MBIは0.12である。g'は0.95である。このことは短鎖分枝状構造(SCB)を示す。
【0180】
実施例3(本発明)
【0181】
国際公開第03/051934号の実施例5に記載されたように、そうであるがさらに不斉メタロセン、ジメチルシリル[(2−メチル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロライドを使用して、担体なしの触媒(III)が調製された。
【0182】
5リットルのステンレス鋼反応器が、プロピレン重合に使用された。1100gの液状プロピレン(Borealis社重合級)が反応器に供給された。0.1mlのトリエチルアルミニウム(100%、Crompton社から購入)が捕捉剤として、および3.7ミリモルの水素(品質6.0、Åga社供給)が連鎖移動剤として供給された。反応器温度は30℃に設定された。20mgの触媒が窒素の過剰圧力によって反応器中へと流し込まれた。反応器は約14分間で70℃まで加熱された。重合が70℃において30分間続けられ、それからプロピレンが流し出され、ポリマーが乾燥され秤量された。
【0183】
ポリマー収量は=390gと秤量された。
【0184】
SHI@1秒−1は0.55である。MBIは0.32である。g'は0.70である。MFRは10.7である。このことは多分枝状構造を示す。もっと多くのデータが表4および図4に示されている。
【0185】
実施例4(本発明)
【0186】
実施例3(本発明)の触媒と同じ触媒(III)が使用された。
【0187】
5リットルのステンレス鋼反応器が、プロピレン重合に使用された。1100gの液状プロピレン+50gのエチレン(Borealis社重合級)が反応器に供給された。0.1mlのトリエチルアルミニウム(100%、Crompton社から購入)が捕捉剤として、および7.5ミリモルの水素(品質6.0、Åga社供給)が連鎖移動剤として供給された。反応器温度は30℃に設定された。21mgの触媒が窒素の過剰圧力によって反応器中へと流し込まれた。反応器は約14分間で70℃まで加熱された。重合が70℃において30分間続けられ、それからプロピレンが流し出され、ポリマーが乾燥され秤量された。全エチレン含有量は4.2重量%である。融点は125.6℃である。
【0188】
ポリマー収量は258gと秤量された。
【0189】
SHI@1秒−1は0.66である。MBIは0.28である。g'は0.70である。MFRは8.6である。このことは多分枝状構造を示す。もっと多くのデータが表4および図4に示されている。

【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1】0.1秒−1のひずみ速度における「A」のSHIの測定(SHI@0.1−1は2.06であると測定される。)を示すグラフである。
【図2】変形速度対ひずみ硬化を示すグラフである。
【図3】公知の鎖構造の4のポリマーについてのひずみ硬化挙動の測定を例示するグラフである。
【図4】実施例(比較)および実施例(本発明)についてのひずみ硬化挙動の測定を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低い多孔度の触媒系を使用するポリプロピレンの調製方法であって、該触媒系が不斉触媒を含んでおり、該触媒系が1.40ml/g未満の多孔度を有する、方法。
【請求項2】
触媒系が、非シリカ物質で担持された系である、請求項1に従う方法。
【請求項3】
触媒系が、DIN 66135の検出限界未満の多孔度を有する、請求項1または2に従う方法。
【請求項4】
触媒系が、ISO 9277に従って測定された25m/g未満の表面積を有する、請求項1〜3のいずれか1項に従う方法。
【請求項5】
不斉触媒が、化学的に異なった少なくとも2の有機配位子を有する、請求項1〜4のいずれか1項に従う方法。
【請求項6】
不斉触媒の2の異なった有機配位子が、架橋によって、好ましくは請求項15〜17のいずれか1項に定義された架橋によって連結されている、請求項5に従う方法。
【請求項7】
不斉触媒が、式(I)

の遷移金属化合物であり、該式で、
Mは、周期表(IUPAC)の第3〜10族のまたはアクチニドもしくはランタニドの遷移金属であり、
各Xは、独立に一価のアニオン性配位子、たとえばσ配位子であり、
各Lは独立に、Mに配位している有機配位子であり、
Rは、2の配位子Lを連結している架橋基であり、
mは、2または3であり、
nは、0または1であり、
qは、1、2または3であり、および
m+qは、該金属の価数に等しく、
ただし、少なくとも2の配位子「L」は異なった化学構造を有する、
請求項1〜6のいずれか1項に従う方法。
【請求項8】
配位子Lが、
(a) 置換または非置換のシクロアルキルジエン、または
(b) 周期表の第13〜16族の原子から成る、非環式の、η〜ηまたはη−配位子、または
(c) 芳香族環系もしくは非芳香族環系または部分的に飽和された環系から選択された、非置換または置換の単、二もしくは多環式環系から成り、かつ炭素環原子を有する、環式の、σ、η〜ηまたはηの、単、二もしくは多座配位子
である、請求項7に従う方法。
【請求項9】
不斉触媒が、式(II)

を有し、該式で、
Mは、Zr、HfまたはTi、好ましくはZrであり、
各Xは、独立に一価のアニオン性配位子、たとえばσ配位子であり、
各Cpは独立に、Mに配位している不飽和有機環式配位子であり、
Rは、2の配位子Lを連結している架橋基であり、
mは2であり、
nは、0または1、より好ましくは1であり、
qは、1、2または3であり、
m+qは、該金属の価数に等しく、および
少なくとも1のCp配位子は、非置換シクロペンタジエニル、非置換インデニル、非置換テトラヒドロインデニル、非置換フルオレニル、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択され、
ただし、双方のCp配位子が上述の群から選択される場合には、双方のCp配位子は互いに化学的に異なっていなければならない、
請求項1〜8のいずれか1項に従う方法。
【請求項10】
MがZrであり、XがClであり、nが1であり、およびqが2である、請求項9に従う方法。
【請求項11】
双方のCp配位子が、置換シクロペンタジエニル環、置換インデニル環、置換テトラヒドロインデニル環、および置換フルオレニル環から成る群から選択され、かつ該複数のCp配位子が該環に結合された置換基において異なっている、請求項10に従う方法。
【請求項12】
有機配位子が置換インデニル環である、請求項1〜11のいずれか1項に従う方法。
【請求項13】
環に結合された置換基が、C〜Cアルキル部分、芳香族環部分および芳香族複素環部分から成る群から独立に選択される、請求項8〜12のいずれか1項に従う方法。
【請求項14】
双方のCp環が2の置換基を有し、一方の置換基が置換フェニル部分でありかつ他方の置換基がC〜Cアルキル部分であり、該双方のCp環が好ましくは該C〜Cアルキル部分において異なっている、請求項9〜13のいずれか1項に従う方法。
【請求項15】
部分「R」が、式(III)

を有し、該式で、
Yは、C、SiまたはGeであり、および
R'は、C〜C20アルキル、C〜C12アリール、C〜C12アリールアルキルまたはトリメチルシリルである、
請求項1〜14のいずれか1項に従う方法。
【請求項16】
YがSiである、請求項15に従う方法。
【請求項17】
「R」が、−Si(C〜Cアルキル)−、−Si(フェニル)−、および−Si(C〜Cアルキル)(フェニル)−から成る群から選択される、請求項15または16に従う方法。
【請求項18】
不斉触媒が、ジメチルシランジイル[(2−メチル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4'−t−ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロライドである、請求項1〜17のいずれか1項に従う方法。
【請求項19】
プロセス温度が60℃超である、請求項1〜18のいずれか1項に従う方法。
【請求項20】
多段階方法である、請求項1〜19のいずれか1項に従う方法。
【請求項21】
重合が、直列構成における少なくとも2の反応器中で実施される、請求項20に従う方法。
【請求項22】
重合が、少なくとも1のバルク反応器および少なくとも1の気相反応器中で実施される、請求項20または21に従う方法。
【請求項23】
バルク反応器が、40℃〜110℃の温度および20バール〜80バールの圧力において運転される、請求項22に従う方法。
【請求項24】
気相反応器が、50℃〜130℃の温度および5バール〜50バールの圧力において運転される、請求項22または23に従う方法。
【請求項25】
ポリプロピレンが、
a. 1.00未満の分枝指数g'、および
b. 180℃の温度において1.00秒−1の変形速度dε/dtによって測定された、少なくとも0.30のひずみ硬化指数(SHI@1秒−1)、但し該ひずみ硬化指数(SHI)が、1〜3のヘンキーひずみの範囲内のヘンキーひずみの10を底とする対数(lg(ε))の関数としての引張応力成長関数の10を底とする対数(lg(η))の傾きと定義される
を有する、請求項1〜24のいずれか1項に従う方法。
【請求項26】
ポリプロピレンが、少なくとも0.15の多分枝指数(MBI)を有し、該多分枝指数(MBI)がヘンキーひずみ速度の10を底とする対数(lg(dε/dt))の関数としてのひずみ硬化指数(SHI)の傾きと定義され、
dε/dtは変形速度であり、
εはヘンキーひずみであり、および
ひずみ硬化指数(SHI)は180℃において測定され、該ひずみ硬化指数(SHI)が1〜3のヘンキーひずみの範囲内のヘンキーひずみの10を底とする対数(lg(ε))の関数としての引張応力成長関数の10を底とする対数(lg(η))の傾きと定義される、
請求項1〜25のいずれか1項に従う方法。
【請求項27】
ポリプロピレンが、プロピレンマトリクスとエチレン−プロピレンゴム(EPR)とを含んでいるプロピレンコポリマーである、請求項1〜26のいずれか1項に従う方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−533539(P2009−533539A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505760(P2009−505760)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003333
【国際公開番号】WO2007/118696
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】