説明

ポリプロピレン樹脂部の補修方法

【課題】ポリプロピレン樹脂から成る樹脂製バンパーにおいて、亀裂等が発生した損傷部についても強度を確保して補修可能なバンパーの補修方法を得る。
【解決手段】衝撃によりポリプロピレン樹脂から成る樹脂バンパーに割れが生じた損傷部を修復するバンパーの補修方法であって、前記損傷部の内側面から接着剤を介してポリプロピレン樹脂片を貼着するポリプロピレン樹脂片貼着工程と、前記損傷部の表面に接着剤を介してポリプロピレン樹脂製のネットを被覆するポリプロピレン樹脂ネット被覆工程と、前記ネット上にパテを塗布するパテ塗布工程とを具備することで、ポリプロピレン樹脂ネットの格子を介してネットの表側及び裏側に接着剤を存在させて固定でき、バンパー表面側に厚さを有することなく強固な固定を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂部の補修方法、例えば自動車の前後に装着されている樹脂製バンパーの補修方法に関し、ポリプロピレン樹脂から成る樹脂製バンパーに亀裂や割れが生じた損傷部に対して、これを元通りに修復するポリプロピレン樹脂部(バンパー)の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前後に装着される樹脂バンパーは、デザインの自由度や衝撃吸収構造とする構成からポリプロピレン樹脂製のものが広く使用されている。この樹脂製バンパーは、ポリプロピレン樹脂で一体成型されるものである。
この樹脂製バンパーの表面に衝突等による損傷が生じた場合、パテ塗布、研磨、塗装を施すことにより補修することが行われている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−67895
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述の損傷が傷程度であれば、上記した特許文献1の方法で修復可能であるが、バンパーに亀裂や割れが生じたような損傷については、パテ塗布、研磨、塗装だけでは亀裂等を修復できないので、補修後のバンパーに当初有していた十分な強度を確保することができずバンバーとして機能しないため、上記補修方法では対処することができなかった。
したがって、亀裂等が発生している樹脂製パンパーは新たな部品に取り替えを余儀なくされていた。
【0004】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、ポリプロピレン樹脂から成る樹脂部例えばポリプロピレン樹脂製バンパーにおいて、亀裂等が発生した損傷部についても強度を確保して補修可能なポリプロピレン樹脂部の補修方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため本発明は、衝撃によりポリプロピレン樹脂から成る樹脂バンパー(ポリピロピレン樹脂部)1に割れが生じた損傷部2を修復するポリピロピレン樹脂部の補修方法であって、次の各工程を具備することを特徴としている。
ポリプロピレン樹脂片貼着工程。この工程は、前記損傷部2の内側面から接着剤21を介してポリプロピレン樹脂片20を貼着するものである。ポリプロピレン樹脂片20は、ポリプロピレン合成樹脂から成り、損傷部を内側面から覆う大きさの面積を有するパッチ状片で形成されている。
ポリプロピレン樹脂ネット被覆工程。この工程は、前記損傷部2の表面に接着剤31を介してポリプロピレン樹脂ネット30を被覆するものである。ポリプロピレン樹脂ネット30は、ポリプロピレン合成樹脂から成る格子状のネットであり、損傷部を表面から覆う大きさの面積を有している。
パテ塗布工程。この工程は、前記ポリプロピレン樹脂ネット30上にパテ40を塗布するものである。
【0006】
ポリプロピレン樹脂ネット被覆工程は、損傷部2を被覆するようにポリプロピレン樹脂ネット30を配置した後、その上方から接着剤31を塗布することが好適である。
既にポリプロピレン樹脂ネット30が配置されているため、ネット面積に応じた接着剤31の塗布面積を容易に把握できるからである。
【0007】
また、ポリプロピレン樹脂ネット被覆工程の後に、表面から硬化剤を噴霧して接着剤を乾燥させる接着剤乾燥工程を有することが好適である。
接着剤乾燥工程を有することで、ポリプロピレン樹脂ネットを固定するための接着剤の硬化を速めて作業性を良好とするためである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリピロピレン樹脂部の補修方法によれば、樹脂バンパー1における損傷部2をポリプロピレン樹脂片20により内側面から、ポリプロピレン樹脂ネット30により表面からそれぞれ被覆して接着剤21,31を介して固定するので、亀裂や割れが生じた損傷部2を補修する場合においても、強度を十分確保して補修することができる。
【0009】
その際、ポリプロピレン樹脂ネット30を使用することで、表面側に厚さを有することなく固定できる。
また、ポリプロピレン樹脂ネット30の格子を介して接着剤31が進入することでネットの表側及び裏側に接着剤31を存在させ、ポリプロピレン樹脂ネット30を接着剤31で被覆することで強固な固定を確保できる。
【0010】
したがって、新しい部品に交換を余儀なくされていた亀裂や割れが発生した樹脂バンパーについても補修することにより再利用することができ、既存部品の有効活用及び省エネ効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリピロピレン樹脂部の補修方法の実施の形態の一例について、図面を参照しながら説明する。ポリピロピレン樹脂部は、自動車においては樹脂バンパーの他にボンネットやドアなどにも使用可能であるが、ポリピロピレン樹脂で製作された樹脂バンパーを例にその補修方法について説明する。
図1は本発明方法により補修対象となる樹脂バンパーの斜視説明図、図2(a)は本発明方法で使用するポリプロピレン樹脂片、図2(b)は本発明方法で使用するポリプロピレン樹脂ネットの斜視説明図、図3は本発明方法の樹脂バンパー表面側における作業工程説明図である。
【0012】
先ず、衝突等により亀裂や割れが生じた損傷部2を有するポリプロピレン樹脂から成る樹脂バンパー1を車体(図示せず)から外す。
次に、樹脂バンパー1の損傷部2が存在する樹脂バンパー表面部10に対して、表面からバンパー素材の研磨を行い、後述するポリプロピレン樹脂ネット装着及びパテ塗布のためのテ―パ面11を樹脂バンパー側の損傷部2の亀裂箇所に形成する。
【0013】
続いて、前記損傷部2の内側面から接着剤21を介してポリプロピレン樹脂片20を貼着する(ポリプロピレン樹脂片貼着工程)。ポリプロピレン樹脂片20は、図2(a)に示すように、ポリプロピレン合成樹脂から成り、損傷部2を内側面から覆う大きさの面積を有するパッチ状片で形成されている。図2(a)では長方形状となっているが、損傷部2の大きさに応じて適宜な形状を使用する。
【0014】
ポリプロピレン樹脂片20は、樹脂バンパーの接地面側全体に接着剤21を塗布して、損傷部2の亀裂部がポリプロピレン樹脂片20の略中央位置になるようにを貼着する。
接着剤21は、ポリロピレン樹脂片20と樹脂バンパー表面部10の内側とを固定するためのもので、ポリプロピレン樹脂を溶かすことなく接着効果を発揮できる速乾性タイプが好ましい。速乾性タイプの接着剤を使用した場合、2分程度で硬化するので良好な作業性を確保することができる。
【0015】
次に、損傷部2の表面(テーパ面11)をポリプロピレン樹脂製のポリプロピレン樹脂ネット30で被覆し、その上から接着剤31を充填するようにネット面積に応じて塗布する(ポリプロピレン樹脂ネット被覆工程)。ポリプロピレン樹脂ネット30は、図2(b)に示すように、ポリプロピレン合成樹脂から成る格子状のネットであり、格子間隔が20〜50メッシュ程度を使用し、損傷部2に応じた形状を有するとともに、損傷部2を表面から覆う大きさの面積を有している。格子間隔が10〜50メッシュのものを使用したのは、格子を介して接着剤31が進入することでネットの表側及び裏側に接着剤31を存在させるためであり、適当な大きさの格子(メッシュ穴)を必要とするためである。また、損傷部2の亀裂がポリプロピレン樹脂ネット30の略中央位置になるようにネットを装着する。
【0016】
接着剤31は、ポリプロピレン樹脂ネット30上から覆うように塗布することで樹脂バンパー面に対してはポリプロピレン樹脂ネット30の格子から進入することでポリプロピレン樹脂ネット30と樹脂バンパー表面部10とが固定される。ポリプロピレン樹脂ネット30及び接着剤31を使用することにより、樹脂バンパー表面側に厚さを有することなく、損傷部2を被覆することができる。
【0017】
接着剤31はポリプロピレン樹脂ネット30上から塗布されるので、ポリプロピレン樹脂ネット30の格子を介してテ―パ面11側に接着剤31が進入することで樹脂バンパー側へ固定されるが、接着剤31がポリプロピレン樹脂ネット30上にも残存するためポリプロピレン樹脂ネット30を被覆することができ、強固な固定を確保できる。
また、接着剤31をポリプロピレン樹脂ネット30上から塗布することで、ポリプロピレン樹脂30のネット面積に応じた接着剤31の塗布面積を容易に把握できる。
【0018】
接着剤31は、前記したポリプロピレン樹脂片20と樹脂バンパー1とを固定する際に用いたものと同じ速乾性タイプを使用する。
そして接着剤塗布後に速乾性タイプの接着剤を反応させてその硬化を促進させる硬化促進剤を接着剤が塗布されたポリプロピレン樹脂ネット30上の全面にスプレー塗布する。この硬化促進剤を噴霧することで、接着剤31の乾燥時間を数秒程度に短縮することができ、作業性を良好にすることができる。
【0019】
上記例ではポリプロピレン樹脂ネット30を載置した後に接着剤を塗布し、硬化促進剤をスプレー塗布ようにしたが、先ず接着剤を樹脂バンパー上に塗布し、その後にポリプロピレン樹脂ネット30を載置し、その後で硬化促進剤をスプレー塗布する手順であってもよい。この場合においても、ポリプロピレン樹脂ネット30の格子を通って接着剤31がポリプロピレン樹脂ネット30上に進入することでポリプロピレン樹脂ネットの表側及び裏側に接着剤を存在させ、ポリプロピレン樹脂ネットを接着剤で被覆することで強固な固定を確保できる。
【0020】
次に、テーパ面11を覆うように配置されたポリプロピレン樹脂ネット30上にプライマー(密着剤)を塗布し、パテ40を塗布する。プライマーは、パテ40との密着性を良好にするためのものである。
パテ40の乾燥後に盛り付けられたパテを研磨して面出しを行い、樹脂バンパー表面部10に平坦な面を形成する。その後、塗料の下地としてのプライマーサフェーサーを塗布し、塗料による通常の塗装を行い作業が終了する。
【0021】
上述例では、ポリピロピレン樹脂から成る樹脂バンパーの補修方法について説明したが、ポリピロピレン樹脂を使用した部位であれば同様の作業工程で補修作業を行うことができるので、例えばポリピロピレン樹脂製のボンネット部やドア部の補修方法としても用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】衝突等により損傷部が生じた樹脂バンパーの斜視説明図である。
【図2】(a)は本発明のバンパー補修方法で使用するポリプロピレン樹脂片の斜視説明図、(b)はポリプロピレン樹脂ネットの斜視説明図である。
【図3】本発明によるバンパー補修方法の作業工程を説明するための工程図であり、(a)〜(e)は損傷部を有する樹脂製バンパー表面部における断面説明図である。
【符合の説明】
【0023】
1 樹脂製バンパー(ポリプロピレン樹脂部)
2 損傷部
10 樹脂製バンパー表面部
11 テーパ面
20 ポリプロピレン樹脂片
21 接着剤
30 ポリプロピレン樹脂ネット
31 接着剤
40 パテ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン樹脂から成る部位に対して、衝撃により割れが生じた場合に、その損傷部を修復するポリプロピレン樹脂部の補修方法であって、
前記損傷部の内側面から接着剤を介してポリプロピレン樹脂片を貼着するポリプロピレン樹脂片貼着工程と、
前記損傷部の表面に接着剤を介してポリプロピレン樹脂製のネットを被覆するポリプロピレン樹脂ネット被覆工程と、
前記ネット上にパテを塗布するパテ塗布工程と、
を具備することを特徴とするポリプロピレン樹脂部の補修方法。
【請求項2】
ポリプロピレン樹脂ネット被覆工程は、損傷部を被覆するようにネットを配置した後、その上方から接着剤を塗布することで行う請求項1に記載のポリプロピレン樹脂部の補修方法。
【請求項3】
ポリプロピレン樹脂ネット被覆工程の後に、表面から硬化剤を噴霧して接着剤を乾燥させる接着剤乾燥工程を有する請求項1に記載のポリプロピレン樹脂部の補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−103242(P2006−103242A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295404(P2004−295404)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(394012980)メグロ化学工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】