説明

ポリプロピレン系樹脂組成物、それからなる成形体

【課題】 剛性、衝撃強度、流動性に優れ、かつ、成形体にした場合に成形体に色むらがなく、外観が良好なポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる射出成形体を提供する。
【解決手段】 ポリプロピレン系樹脂(A)61〜97重量部と、
エラストマー(B)1〜9重量部と、
無機充填剤(C)2〜30重量部とを含有し(但し、前記(A)と前記(B)と前記(C)のそれぞれの重量の合計を100重量部とする)、
前記(A)と前記(B)と前記(C)の合計100重量に対して、
pHが3以下であるカーボンブラック(D)0.0001〜1重量部と、
ステアリン酸亜鉛(E)0.2〜1重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる射出成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる成形体に関するものである。さらに詳しくは、剛性、衝撃強度、流動性に優れ、かつ、成形体にした場合に成形体に色むらがなく、外観が良好なポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる射出成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、剛性、衝撃強度等が優れていることから、家電部品や自動車用部品等の製品に使用されている。そして、それらの製品の多くには、高級感や高意匠性等の要求を満たすために、着色が施される。
【0003】
例えば、特開平2−43249号公報には、射出成形に際して筋状の色むらの形成を防止することを目的として、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体樹脂に、分子構造中に酸基を有する変性ポリオレフィンを含有する射出成形用ポリオレフィン組成物が記載されている。
【0004】
また、特開平5−39380号公報には、剛性と耐衝撃性のバランスの改善と、かつ金型汚染の抑制を目的として、結晶性プロピレン重合体、特定のタルクと、(RCOO)nM(ここで、Rは分子量が250〜500のヒドロキシ基を含んでいてもよい1価の炭化水素基、nは金属Mの原子価、Mはリチウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウム)で示される化合物からなるタルク含有プロピレン重合体組成物が記載されている。
【0005】
そして、特開平10−60182号公報には、色分かれが発生せず、外観が均一で、良好な成形品を得ることを目的として、ポリオレフィン、フィラー、顔料およびオレフィン系重合体ワックスを含む組成物であって、オレフィン系重合体ワックスが、酸価10〜60のオレフィン系重合体ワックスおよび/または水酸基価10〜60のオレフィン系重合体ワックスであるポリオレフィン組成物が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平2−43249号公報
【特許文献2】特開平5−39380号公報
【特許文献3】特開平10−60182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の公報等に記載されているポリオレフィン組成物においても、剛性、衝撃強度、流動性に加えて、成形体の外観については、さらなる改良が必要なことがあり、剛性、衝撃強度、流動性に加えて、成形体の色むらの発生を抑え、成形体の外観を改良することが求められていた。
【0008】
かかる状況の下、本発明の目的は、剛性、衝撃強度、流動性に優れ、かつ、成形体にした場合に成形体に色むらがなく、外観が良好なポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる射出成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、かかる実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
ポリプロピレン系樹脂(A)61〜97重量部と、
エラストマー(B)1〜9重量部と、
無機充填剤(C)2〜30重量部とを含有し(但し、前記(A)と前記(B)と前記(C)のそれぞれの重量の合計を100重量部とする)、
前記(A)と前記(B)と前記(C)の合計100重量に対して、
pHが3以下であるカーボンブラック(D)0.0001〜1重量部と、
ステアリン酸亜鉛(E)0.2〜1重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる射出成形体に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剛性、衝撃強度、流動性に優れ、かつ、成形体にした場合に成形体に色むらがなく、外観が良好なポリプロピレン系樹脂組成物、および、それからなる射出成形体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)とは、通常、結晶性を有するポリプロピレン系樹脂であり、例えば、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性エチレン−プロピレン共重合体、結晶性プロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、少なくとも2種類を併用しても良い。
【0012】
結晶性プロピレン−α−オレフィン共重合体に用いられるα−オレフィンとしては、炭素数が4以上のα−オレフィンであり、好ましくは炭素数が4〜20のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素数が4〜12のα−オレフィンである。例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられる。結晶性プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、結晶性プロピレン−ブテン−1共重合体、結晶性プロピレン−ヘキセン−1共重合体等が挙げられる。
【0013】
結晶性を有するポリプロピレン系樹脂として、剛性や耐衝撃性等の機械物性の観点から、好ましくは結晶性プロピレン単独重合体、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体、または、それらの混合物であり、より好ましくは、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体、または、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体と結晶性プロピレン単独重合体の混合物である。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂(A)として用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体とは、プロピレン単独重合体部分(これを第1セグメントという)と、エチレン−プロピレンランダム共重合体部分(これを第2セグメントという)とからなる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体である。
【0015】
第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるQ値(Mw/Mn)としては、剛性や耐衝撃性等の機械物性および成形性の観点から、好ましくは3〜5であり、より好ましくは3.5〜4.5である。
【0016】
また、第1セグメントの13C−NMRを用いて測定されるアイソタクチックペンタッド分率としては、剛性の観点から、好ましくは0.98以上であり、より好ましくは0.99以上である。
【0017】
そして、第1セグメントの135℃テトラリン溶液の固有粘度([η]P)としては、成形性の観点から、好ましくは0.7〜1.2dl/gであり、より好ましくは0.8〜1.1dl/gである。
【0018】
第2セグメントであるエチレン−プロピレンランダム共重合体部分の135℃テトラリン溶液の固有粘度([η]EP)としては、成形性や外観の観点から、好ましくは1以上8dl/g未満であり、より好ましくは1.5〜7.5dl/gである。
【0019】
また、第2セグメントのエチレン含量[(C2’)EP]としては、耐衝撃性等の機械物性の観点から、好ましくは25〜55重量%であり、より好ましくは35〜45重量%である(但し、、第2セグメントの全重量を100重量%とする)。
【0020】
また、エチレン−プロピレンランダム共重合体部分(第2セグメント)の重量と、プロピレン単独重合体部分(第1セグメント)の重量との比(第2セグメント/第1セグメント)としては、成形性の観点から、好ましくは8/92〜35/65である。
【0021】
上記の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体と結晶性プロピレン単独重合体との混合物に用いられる結晶性プロピレン単独重合体とは、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分と同じ様な物性を有するものであって、そのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比であるQ値(Mw/Mn)としては、剛性や耐衝撃性等の機械物性および成形性の観点から、好ましくは3〜5であり、より好ましくは3.5〜4.5である。
【0022】
また、上記の混合物に用いられる結晶性プロピレン単独重合体の13C−NMRによって測定されるアイソタクチックペンタッド分率としては、剛性の観点から、好ましくは0.98以上であり、より好ましくは0.99以上である。
【0023】
そして、上記の混合物に用いられる結晶性プロピレン単独重合体の135℃テトラリン溶液の固有粘度([η]P)としては、成形性の観点から、好ましくは0.7〜1.2dl/gであり、より好ましくは0.8〜1.1dl/gである。
【0024】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の製造方法としては、公知の立体規則性オレフィン重合触媒を用いて公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。公知の触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒系、メタロセン触媒系、それらを組合わせた触媒系等が挙げられ、公知の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法、または、これらの重合法を任意に組み合わせた重合方法等が挙げられ、好ましくは、連続式の気相重合法である。
【0025】
特に、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体の製造方法として、好ましくは、立体規則性オレフィン重合触媒の存在下にプロピレンを単独重合して、第1セグメントである結晶性プロピレン単独重合体部分を得る第1工程と、続いて、エチレンとプロピレンを共重合して、第2セグメントであるエチレン−プロピレンランダム共重合体部分を得る第2工程とからなる製造方法である。
【0026】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の含有量は、61〜97重量部であり、好ましくは65〜85重量部であり、さらに好ましくは、65〜75重量部である(但し、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、無機充填剤(C)のそれぞれの重量の合計を100重量部とする)。
【0027】
本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が、61重量部未満である場合、剛性が低下することがあり、97重量部を超えると、衝撃強度が低下することがある。
【0028】
さらには、本発明で用いられるポリプロピレン系樹脂組成物(A)としては、成形体にぶつを発生させることがなく、フローマーク外観を良好にし、機械物性や流動性を良好にするという観点から、好ましくは、ポリプロピレン系樹脂(A)が、下記のポリプロピレン系樹脂(A−1)と下記のポリプロピレン系樹脂(A−2)とを含有する樹脂である。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂(A−1)は、ポリプロピレン系樹脂(A−2)を除く樹脂であり、ポリプロピレン系樹脂(A−2)は、プロピレン単独重合体またはエチレン−プロピレンランダム共重合体であり、135℃テトラリン溶液の固有粘度が5dl/g以上である第1セグメント60〜80重量%と、プロピレン単独重合体またはエチレン−プロピレンランダム共重合体であり、135℃テトラリン溶液の固有粘度が0.8〜1.2dl/gである第2セグメント20〜40重量%とを含有する樹脂である(但し、前記(A−2)の全量を100重量%とする)。
【0030】
ポリプロピレン系樹脂(A)が、ポリプロピレン系樹脂(A−1)とポリプロピレン系樹脂(A−2)とを含有する樹脂である場合、樹脂(A−1)および樹脂(A−2)のそれぞれの含有量は、成形体のフローマーク外観や流動性を良好にするという観点から、好ましくは、樹脂(A−1)の含有量が56〜96.9重量部であり、樹脂(A−2)の含有量が0.1〜5重量部である。より好ましくは、樹脂(A−2)の含有量が0.5〜4.5重量部であり、さらに好ましくは樹脂(A−2)の含有量が1.0〜4.5重量部である。(但し、樹脂(A−1)と樹脂(A−2)とを含有するポリプロピレン系樹脂(A)の全量を61〜97重量部とする。)
ポリプロピレン系樹脂(A−2)の第1セグメントおよび第2セグメントの製造方法としては、公知の立体規則性オレフィン重合触媒系を用いて公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。公知の触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒系、メタロセン触媒系、または、これらの触媒系を組合わせた触媒系等が挙げられる。公知の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法または気相重合法、または、これらの重合法を任意に組み合わせた重合方法が挙げられ、好ましくは、連続式の気相重合法である。
【0031】
そして、ポリプロピレン系樹脂(A−2)の製造方法としては、例えば、
(1)プロピレンを重合して、または、プロピレンとエチレンとを重合して、個別に第1セグメントと第2セグメントのそれぞれを製造し、その後、第1セグメントと第2セグメントを混合や溶融混練して、樹脂(A−2)を製造する方法、
(2)プロピレンを重合して、または、プロピレンとエチレンとを重合して、第1セグメントを製造する工程と、プロピレンを重合して、または、プロピレンとエチレンとを重合して、第2セグメントを製造する工程とを、任意の順序で連続に実施し、樹脂(A−2)を製造する方法
等が挙げられる。
【0032】
好ましくは、上記(2)のプロピレンを重合して、または、プロピレンとエチレンとを重合して、第1セグメントを製造する工程と、プロピレンを重合して、または、プロピレンとエチレンとを重合して、第2セグメントを製造する工程とを、任意の順序で連続に実施し、樹脂(A−2)を製造する方法である。
【0033】
本発明で用いられるエラストマー(B)とは、ゴム成分を含有するエラストマーである。例えば、ビニル芳香族化合物含有ゴムを含有するエラストマー、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを含有するエラストマー、および、それらのゴム成分の混合物を含有するエラストマー等が挙げられる。
【0034】
エラストマー(B)がビニル芳香族化合物含有ゴムを含有するエラストマーである場合、ビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、前記ブロック共重合体に含有される共役ジエン部分が水素添加されているブロック共重合体等が挙げられる。
【0035】
共役ジエン部分が水素添加されているブロック共重合体に含有される水素添加されている二重結合の割合として、好ましくは、耐候性の観点から、80重量%以上であり、より好ましくは85重量%以上である(但し、共役ジエン部分の二重結合の全重量を100重量%とする)。
【0036】
また、ビニル芳香族化合物含有ゴムのGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法によって測定される分子量分布(Q値)として、好ましくは、機械物性の観点から、2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
【0037】
また、ビニル芳香族化合物含有ゴムに含有されるビニル芳香族化合物の平均含有量として、好ましくは、剛性や耐衝撃性等の機械物性の観点から、10〜20重量%であり、より好ましくは12〜19重量%である(但し、ビニル芳香族化合物含有ゴムの全重量を100重量%とする)。
【0038】
また、ビニル芳香族化合物含有ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、230℃)として、好ましくは、成形性の観点から、1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
【0039】
そして、ビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体、および、これらのゴム成分を水添したブロック共重合体等が挙げられる。
【0040】
また、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)等のオレフィン系共重合体ゴムとスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させて得られるゴムも好適に使用することができる。また、少なくとも2種のビニル芳香族化合物含有ゴムを併用しても良い。
【0041】
ビニル芳香族化合物含有ゴムの製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体ゴムもしくは共役ジエンゴムに、ビニル芳香族化合物を、重合や反応によって結合させる製造方法等が挙げられる。
【0042】
エラストマー(B)がエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを含有するエラストマーである場合、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムとは、エチレンとα−オレフィンからなるランダム共重合体ゴムである。α−オレフィンは炭素原子数3以上のα−オレフィンであり、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン等が挙げられ、好ましくは、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1である。α−オレフィンは単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
【0043】
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムである。また、少なくとも2種のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
【0044】
エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムのGPC法によって測定される分子量分布(Q値)として、好ましくは、機械物性の観点から、2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
【0045】
また、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムに含有されるオクテン−1の含有量として、好ましくは、耐衝撃性の観点から、15〜45重量%であり、より好ましくは18〜42重量%である(但し、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムの全重量を100重量%とする)。
【0046】
また、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは、成形性や耐衝撃性の観点から、0.5〜15g/10分であり、より好ましくは1〜13g/10分である。
【0047】
エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムのGPC法によって測定される分子量分布(Q値)として、好ましくは、機械物性の観点から、2.7以下であり、より好ましくは2.5以下である。
【0048】
また、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムに含有されるブテン−1の含有量として、好ましくは、耐衝撃性の観点から、15〜35重量%であり、より好ましくは17〜33重量%である(但し、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムの全重量を100重量%とする)。
【0049】
また、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは、耐衝撃性や成形性の観点から、0.5〜15g/10分であり、より好ましくは1〜13g/10分である。
【0050】
エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムのGPC法によって測定される分子量分布(Q値)として、好ましくは、機械物性の観点から、2.7以下であり、より好ましくは2.5以下である。
【0051】
また、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムに含有されるプロピレンの含有量として、好ましくは、耐衝撃性の観点から、20〜30重量%であり、より好ましくは22〜28重量%である(但し、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムの全重量を100重量%とする)。
【0052】
また、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは、耐衝撃性や成形性の観点から、0.1〜15g/10分であり、より好ましくは1〜13g/10分である。
【0053】
そして、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムの製造方法としては、公知の触媒を用いて、公知の重合方法によって、エチレンと少なくとも1種のα−オレフィンを共重合させる方法が挙げられる。公知の触媒としては、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒系、チーグラー・ナッタ触媒系、メタロセン触媒系等が挙げられ、公知の重合方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられる。
【0054】
本発明で用いられるエラストマー(B)の含有量は、1〜9重量部であり、剛性および耐衝撃性のバランスの観点から、好ましくは3〜8重量部である。(但し、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、無機充填剤(C)のそれぞれの重量の合計を100重量部とする)。
【0055】
本発明で用いられる無機充填剤(C)とは、剛性を向上させることができるものであればよく、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、結晶性ケイ酸カルシウム、タルク、硫酸マグネシウム繊維、および、これらの混合物等が挙げられる。好ましくは、タルク、硫酸マグネシウム繊維、または、それらの混合物である。
【0056】
タルクとして、好ましくは、剛性や耐熱性の観点から、含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。その分子の結晶構造はパイロフィライト型三層構造であり、タルクはこの構造が積み重なったものであり、特に結晶を単位層程度にまで微粉砕した平板状のものが好ましい。
【0057】
タルクの平均粒子径として、好ましくは、剛性や耐衝撃性等の機械物性の観点から、3μm以下である。ここでタルクの平均粒子径とは、心沈降式粒度分布測定装置を用いて水またはアルコールの分散媒中に懸濁させて、篩下法によって測定される積分分布曲線から求められる50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0058】
タルクは無処理のまま使用しても良く、または、ポリプロピレン系樹脂(A)との界面接着性を向上させたり、分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で表面を処理したものを使用しても良い。
【0059】
硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長として、好ましくは、剛性や耐衝撃性等の機械物性の観点から、5〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。
【0060】
また、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径として、好ましくは、剛性や耐衝撃性等の機械物性の観点から、0.3〜2μmであり、より好ましくは0.5〜1μmである。
【0061】
本発明で用いられる無機充填剤(C)の含有量は、2〜30重量部であり、好ましくは5〜30重量部であり、より好ましくは10〜30重量部である(但し、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、無機充填剤(C)のそれぞれの重量の合計を100重量部とする)。無機充填剤(C)の含有量が、2重量部未満である場合、剛性が低下することがあり、30重量部を超えた場合、衝撃強度が不充分なことがあり、また、外観も悪化することがある。
【0062】
本発明で用いられるカーボンブラック(D)は、pHが3以下のカーボンブラックであり、色むらの観点から、好ましくは2.5以下である。カーボンブラックのpHの測定方法は、JIS K6221−1982に記載の方法に従って行う方法である。
【0063】
カーボンブラック(D)の平均粒径として、好ましくは、分散性の問題から、50nm以下であり、より好ましくは、30nm以下である。
【0064】
本発明で用いられるカーボンブラック(D)の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、無機充填剤(C)のそれぞれの重量の合計100重量部に対して、0.0001〜1重量部であり、好ましくは、0.0005〜0.5重量部であり、より好ましくは、0.005〜0.3重量部である。0.0001重量部未満の場合、色むらの改良効果が得られないことがあり、また、1重量部を超えた場合、流動性が不充分であったり、過剰で不経済になることがある。
【0065】
本発明で用いられるステアリン酸亜鉛(E)として、好ましくは、粉末状のステアリン酸亜鉛である。
【0066】
本発明で用いられるステアリン酸亜鉛(E)の含有量は、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、無機充填剤(C)のそれぞれの重量の合計100重量部に対して、0.2〜1重量部であり、好ましくは0.3〜0.8重量部であり、より好ましくは、0.4〜0.7重量部である。0.2重量部未満の場合、色むらの改良効果が得られないことがあり、また、1重量部を超えた場合、過剰で不経済になったり、射出成形時に金型が汚染されることがある。
【0067】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、ポリプロピレン系樹脂(A)と、エラストマー(B)と、無機充填剤(C)と、カーボンブラック(D)と、ステアリン酸亜鉛(E)とを、混練機を用いて混練する方法等が挙げられる。混練機としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等が挙げられる。そして、上記の成分(A)〜(E)のそれぞれを、混練機へ同時に添加し、混練しても良く、分割して添加し、混練しても良い。
【0068】
混練温度は、通常、170〜250℃であり、好ましくは190〜230℃である。混練時間は、通常、1〜20分であり、好ましくは3〜15分である。
【0069】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、上記の成分(A)〜(E)の他に、必要に応じて、添加剤を配合しても良く、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。
【0070】
本発明の射出成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体であり、射出成形方法としては、一般に公知の射出成形方法が挙げられる。
【0071】
本発明の射出成形体として、好ましくは、自動車用射出成形体であり、例えば、ドアトリム、バックドアトリム、ピラー、グローボックス、コラムカバー、バンパー、サイドモール、インストルメンタルパネル、コンソール等が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例によって、本発明を説明する。実施例および比較例で用いた各成分を、以下に示した。
(1)ポリプロピレン系樹脂(A)
(樹脂A−1)エチレン−プロピレンブロック共重合体
COSMOPLENE AZ864(The Polyolefin Company製)
【0073】
(樹脂A−2)ポリプロピレン系樹脂
〔製造方法〕
(1−1)固体触媒成分(I)
攪拌機付きの200LSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モル、およびテトラエトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを、反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後5℃で1時間、室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.2Kg/Lになるようにトルエン量を調整した後、105℃で1時間攪拌した。その後、95℃まで冷却し、フタル酸ジイソブチル47.6モル加え、95℃で30分間反応を行った。反応後固液分離し、トルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、フタル酸ジイソブチル3.1モル、n−ジブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン274モルを加え、105℃で3時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン90Lで2回洗浄を行った。スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、n−ジブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、さらにヘキサン70Lで3回洗浄した後減圧乾燥して固体触媒成分11.4Kgを得た。固体触媒成分はチタン原子1.83重量%、フタル酸エステル8.4重量%、エトキシ基0.30重量%、ブトキシ基0.20重量%を含有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(I)と呼ぶ。
【0074】
(1−2)予備重合
SUS製3L攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水、脱気したヘキサンにトリエチルアルミニウム(以下TEAと略す)25mmol/L、電子供与体成分としてt−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン(以下tBunPrDMSと略す)をtBunPrDMS/TEA=0.1(mol/mol)および固体触媒成分(I)を15g/Lを添加し、15℃以下の温度を保持しながらプロピレンを固体触媒当たり1g/gに達するまで連続的に供給し予備重合を実施した。得られた予備重合体スラリーは120LSUS製攪拌機付きの希釈槽へ移送し充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し10℃以下の温度で保存した。
【0075】
(1−3)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持するように液化プロピレンを35Kg/h供給し、さらに気相部のエチレン濃度を2.8vol%を保持するようにエチレン供給し、TEAを51mmol/h、tBunPrDMSを5mmol/hおよび上記(1−2)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.0g/h供給し、実質的に水素の不存在下でプロピレン−エチレンの連続共重合を行い、6.1Kg/hの重合体を得た。得られた重合体は失活することなく第2槽目に連続的に移送した。第2槽目は内容積1m3のSUS製攪拌機付き流動床気相反応器において、重合温度70℃、重合圧力1.8MPaおよび気相部のエチレン濃度を1.9vol%を保持するように、プロピレンとエチレンを連続的に供給し、水素の実質的に不存在下で第1槽目より移送された固体触媒成分含有重合体で連続気相重合を継続し、15.7Kg/hの重合体を得た。第1槽目と第2槽目で重合されたポリマー成分が、第1セグメントに相当し、その極限粘度[η]は8.7dl/gであり、エチレン含量は3.5重量%、融解温度ピークは144.8℃であった。次いで、得られた重合体は失活することなく第3槽目に連続的に移送した。第3槽目は内容積1m3のSUS製攪拌機付き気相流動床反応器において、重合温度85℃、重合圧力1.4MPaおよび気相部の水素濃度を11.7vol%に保持するようにプロピレンおよび水素を連続的に供給し、第2槽目より供給された固体触媒成分を含有する重合体でプロピレンを連続気相重合を継続する事により25.6Kg/hの重合体を得た。第3槽目で重合されたポリマー成分が、第2セグメントに相当し、第1槽目から第3槽目を通して得られた重合体が、第1セグメントと第2セグメントからなるポリプロピレン系樹脂(樹脂A−2)であり、その極限粘度[η]は5.7dl/gであった。以上の結果から、第1槽目+第2槽目の重合量と第3槽目の重合体比は61:39であり、第3槽目で重合された重合体の極限粘度[η]は0.9dl/gと求められた。
【0076】
(2)エラストマー(B)
(B−1)デュポンダウエラストマー製、Engage EG8200
(B−2)三井化学製、タフマー A4050
【0077】
(3)無機充填剤(C)
タルク、林化成製、MW HS−T
【0078】
(4)カーボンブラック(D)
(D−1)pH=2.5、粒径13nm
(D−2)pH=7.5、粒径16nm
(D−3)pH=3.5、粒径24nm
(D−4)pH=9.5、粒径16nm
【0079】
(5)ステアリン酸亜鉛(E)
日本油脂製 ステアリン酸亜鉛
【0080】
実施例および比較例で用いた樹脂成分及び組成物の物性の測定法を以下に示した。
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定した。
【0081】
(2)曲げ弾性率(FM、単位:MPa)
JIS−K−7203に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが6.4mmであり、スパン長さが100mmである試験片を用いて、荷重速度は2.0mm/分で、測定温度は23℃で測定した。
【0082】
(3)アイゾット衝撃強度(Izod、単位:KJ/m2
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが6.4mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きの試験片を用いて、測定温度は23℃で測定した。
【0083】
(4)加熱変形温度(HDT、単位:℃)
射出成形により成形された試験片を用いて、JIS−K−7207に規定された方法に従って、測定した。ファイバーストレスは1.82MPaで測定した。
【0084】
(5)ロックウェル硬度(HR)
JIS−K−7202に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが3.0mmである試験片を用いて測定した。測定値はRスケールで表示した。
【0085】
(6)固有粘度(単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。固有粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。
結晶性ポリプロピレンについては、テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。
【0086】
(6−1)結晶性エチレン−プロピレンブロックコポリマーの極限粘度
(6−1a)プロピレン単独重合体部分(第1セグメント)の極限粘度:[η]P
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の極限粘度:[η]Pはその製造時に、第1工程であるプロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]Pを測定して求めた。
【0087】
(6−1b)エチレン−プロピレンランダム共重合体部分(第2セグメント)の極限粘度:[η]EP
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体の第2セグメントであるエチレン−プロピレンランダム共重合体部分の極限粘度:[η]EPは、プロピレン単独重合体部分の極限粘度:[η]Pとエチレン−プロピレンブロック共重合体全体の極限粘度:[η]Tをそれぞれ測定し、エチレン−プロピレンランダム共重合体部分の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η]T:ブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
【0088】
(6−1c)エチレン−プロピレンランダム共重合体部分の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率:X
エチレン−プロピレンランダム共重合体部分の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xはプロピレン単独重合体部分(第1セグメント)と結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示唆走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHfT/(ΔHfP
(ΔHfT:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHfP:プロピレン単独重合体部分の融解熱量(cal/g)
【0089】
(7)結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体中のエチレン−プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量:(C2')EP
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体のエチレン−プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量:(C2')EPは、赤外線吸収スペクトル法により結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体のエチレン含量(C2')T(重量%)を測定し、次式を用いて計算により求めた。
(C2')EP=(C2')T/X
(C2')T:ブロック共重合体全体のエチレン含量(重量%)
(C2')EP:エチレン−プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量(重量%)
X:エチレン−プロピレンランダム共重合体部分の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率
【0090】
(8)アイソタクチック・ペンタッド分率
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,第6巻,第925頁(1973年)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules,第8巻,第687頁(1975年)に基づいて行った。
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。
この方法により英国NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0091】
(9)分子量分布(Q値)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を、以下に示す条件で測定した。
【0092】
GPC:Waters社製 150C型
カラム:昭和電工社製 Shodex 80 MA 2本
サンプル量:300μl(ポリマー濃度0.2wt%)
流 量:1ml/分
温 度:135℃
溶 媒:o−ジクロルベンゼン
東洋スチレン社製の標準ポリスチレンを用いて溶出体積と分子量の検量線を作成した。検量線を用いて検体のポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量を求め、分子量分布の尺度であるQ値を、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)から算出して求めた。
【0093】
(10)外観
(10−1)色むら評価
射出成形によって成形された105×135×2mm平板を用いて目視によって外観を観察し、下記の基準に従って、良好(○)と不良(×)の判定を行なった。
良好:成形品にスジ状の色むらが発生しない場合、良好(○)と判断した。
不良:成形品にスジ状の色むらが発生した場合、不良(×)と判断した。
【0094】
(10−2)フローマーク外観
射出成形によって成形された100×400×3mm試験片を用いて目視により外観を観察し、下記の基準に従って、良好(○)と不良(×)の判定を行なった。
良好:成形品にシマ模様状の外観不良が一部に発生した場合、良好(○)と判断した。
不良:成形品にシマ模様状の外観不良がほぼ全面に発生した場合、不良(×)と判断した。
【0095】
〔射出成形体の製造(1)〕
上記(2)、(3)、(4)、(5)および(10−2)の物性評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って作成した。
組成物を熱風乾燥器で120℃で2時間乾燥後、東芝機械製IS150E−V型射出成形機を用いて、成形温度220℃、金型冷却温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を行い、射出成形体である試験片を得た。
【0096】
〔射出成形体の製造(2)〕
上記(10−1)の色むら評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って作成した。
組成物を熱風乾燥器で120℃で2時間乾燥後、住友重機製NEOMAT150/75A SYCAP型射出成形機を用いて、成形温度220℃、金型冷却温度55℃、射出時間10sec、冷却時間15secで射出成形を行い、射出成形体である試験片を得た。
【0097】
〔ポリプロピレン系樹脂組成物の製造〕
ポリプロピレン系脂組成物は次の方法に従って製造した。
各成分を所定量、計量し、ヘンシェルミキサーまたはタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44SS 30BW−2V型)を用いて、押出量を30〜50kg/hrで、スクリュー回転数を350rpmで、ベント吸引下で混練押出して、組成物を製造した。
【0098】
表1に実施例1〜4のポリプロピレン系樹脂組成物における各成分の含有量(重量部)を示し、表2に比較例1〜6のポリプロピレン系脂組成物における各成分の含有量(重量部)を示した。
【0099】
表3に実施例1〜4および比較例1〜3のポリプロピレン系樹脂組成物の物性及びその組成物を用いて得られた射出成形体の物性の結果を示し、表4に実施例1〜4および比較例1〜6のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて得られた射出成形体の外観の結果を示した。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
実施例1〜4は、本発明の要件を満足するポリプロピレン系樹脂組成物であり、剛性、衝撃強度、流動性に優れ、かつ、射出成形体に色むらがなく、外観が良好なものであることが分かる。
これに対して、比較例1は、本発明の要件であるステアリン酸亜鉛を用いなかったものであり、比較例2は、本発明の要件であるステアリン酸亜鉛の含有量を満足しないものであり、比較例3、5および6は、本発明の要件であるカーボンブラックのpHを満足しないものであり、比較例4は、本発明の要件であるステアリン酸亜鉛の含有量およびカーボンブラックのpHを満足しないものであり、射出成形体に色むらが発生し、外観が不良なものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂(A)61〜97重量部と、
エラストマー(B)1〜9重量部と、
無機充填剤(C)2〜30重量部とを含有し(但し、前記(A)と前記(B)と前記(C)のそれぞれの重量の合計を100重量部とする)、
前記(A)と前記(B)と前記(C)の合計100重量に対して、
pHが3以下であるカーボンブラック(D)0.0001〜1重量部と、
ステアリン酸亜鉛(E)0.2〜1重量部とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
ポリプロピレン系樹脂(A)が、下記のポリプロピレン系樹脂(A−1)と下記のポリプロピレン系樹脂(A−2)とを含有する樹脂である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
ポリプロピレン系樹脂(A−1):ポリプロピレン系樹脂(A−2)を除く樹脂。
ポリプロピレン系樹脂(A−2):
プロピレン単独重合体またはエチレン−プロピレンランダム共重合体であり、135℃テトラリン溶液の固有粘度が5dl/g以上である第1セグメント60〜80重量%と、
プロピレン単独重合体またはエチレン−プロピレンランダム共重合体であり、135℃テトラリン溶液の固有粘度が0.8〜1.2dl/gである第2セグメント20〜40重量%とを含有する樹脂(但し、前記(A−2)の全量を100重量%とする)。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂(A−1)の含有量が56〜96.9重量部であり、ポリプロピレン系樹脂(A−2)の含有量が0.1〜5重量部である請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。(但し、前記(A)と前記(B)と前記(C)のそれぞれの重量の合計を100重量部とする)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体。

【公開番号】特開2006−225418(P2006−225418A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37390(P2005−37390)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】