説明

ポリマーを有する水性化合物を用いた金属表面の被覆方法、水性化合物、及び被覆基材の使用

本発明は、水性組成物を用いた金属表面の被覆方法であって、前記組成物が、水の他に、a)ポリカーボネート、ポリウレタン、アイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンからなる群から選択されるポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーに基づく合成樹脂の形態の少なくとも1種の水溶性又は/及び水分散合成樹脂によって、有機塗膜形成剤中の含有率が70〜100質量%の合成樹脂が形成され、ポリカーボネート及びポリウレタン含有率が各々少なくとも10質量%である、主成分としての有機塗膜形成剤、b)有機塗膜形成剤用塗膜形成剤添加剤としての少なくとも1種の長鎖アルコール、c)少なくとも1種の架橋剤、d)少なくとも1種の潤滑剤、e)シラン、シリコール又は/及びシロキサンに基づく少なくとも1種の物質、又は/及び走査型電子顕微鏡で測定して平均粒径が0.005〜0.3μmの範囲である粒子形態の少なくとも1種の無機化合物、及びf)場合により、金属表面が水性組成物と接触し、0.01〜10μmの範囲内の層厚さを有するポリマー塗膜が金属表面上に形成される、少なくとも1種の有機腐食防止剤、少なくとも1種の有機溶媒又は/及び少なくとも1種の添加剤、も含むものである方法に関する。本発明は、更に、対応する水性組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー/コポリマー及び架橋剤及び無機微粒子を含有する水性組成物によって金属表面を被覆する方法に関する。また、本発明は、対応する水性組成物と、本発明による方法によって被覆される基材の使用とに関する。
【0002】
これまでに最も一般的に用いられてきた、金属、特に金属帯の塗装前の表面処理方法又は表面前処理方法は、種々の添加剤と共にクロム(III)化合物又は/及びクロム(VI)化合物を使用することに基づく。かかる方法に伴う毒物的及び生態学的なリスクの理由により、更に、クロム酸塩を含む方法の使用に関する予測可能な法的規制の理由により、金属表面処理の全ての分野において、かなりの間、これらの方法に取って代わるものが探求されてきた。
【0003】
酸洗い侵食及びその結果として樹脂層が直接金属表面により良好に接触することをも達成するために、樹脂が、この方法で順に無機酸と混合された樹脂混合物が知られている。酸洗い侵食によって、金属又は/及びそのイオンは、被処理基材の金属表面から溶解される。これらの組成物には、酸洗い侵食の理由により処理液(分散液)が基材に接触する間に汚染が発生するという短所がある。これによって、処理液中の金属の濃縮と、その結果としての処理液の化学組成の永続的変化とが生じ、その結果、防食が著しく損なわれる。
【0004】
更なる短所は、特にアルミニウム又は/及びアルミニウムを含有する合金の場合、表面が暗く変色し、状況次第で暗い灰色から無煙炭の色に変わるということにある。暗く変色する金属表面は、変色そのものが美的理由のために望ましくないことから、装飾的用途に用いることができない。暗色化は、皮膜の厚み次第で様々な強さで可視である。
【0005】
それより作製される皮膜に関して、例えばアルカリリン酸塩処理による処理、亜鉛含有又は他のリン酸塩処理による処理、パッシベーション、複合フッ化物、ホスホン酸塩又は/及びシランに基づいて、事前の処理/前処理を行うことなく或いは処理又は前処理の後に金属帯を被覆するために、例えば次の塗装前に前処理に関して使用される、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン又は/及びポリウレタンを主成分とした市販の水性組成物は、以下の短所の内の少なくとも1つを示す:
1.特に高湿度の雰囲気(例えばクロスハッチ付着性試験による試験、及びDIN EN ISO 6270−2CHによる交互の湿度及び空気温度の凝縮試験雰囲気内の保存後の円錘マンドレル上の曲げ)において付着問題が生じ得るような、例えば粉体皮膜、溶媒に基づく塗料又は水性塗料によるポリマー表面の不十分な塗装性。
2.ポリマー表面の光沢の著しい低下、黄色、茶色又は/及び無煙炭色への変化、又は/及びチョーキング効果(=皮膜が形成された又は/及び化学的に架橋されたポリマー/コポリマーが破壊され、皮膜が粒子として洗い落とされ得、且つ、粉体として除去され得る、紫外線への曝露の際のポリマー皮膜の分解)が0.5〜1.5年の屋外曝露期間の後に生じるような、屋外曝露に対する不十分な長期耐性(例えば、Frankfurt am Mainにおける直射日光への直接的な曝露による屋外における0.5〜2年間の耐久試験)。
3.特に0.5〜2μmの範囲の皮膜厚さにおける不十分な耐食性(例えばDIN EN ISO 7253に対する塩水噴霧試験による試験)。
4.結果として、多くの場合、コイル被覆ラインに応じて50〜150℃の範囲内の被覆帯の温度によって、ポリマー皮膜が、それが接触する帯の次の層に付着し得、それにより巻戻しの間にポリマー皮膜の破壊が容易に生じ得、それ故に被覆帯の耐食性の悪化が生じ得る、特に被覆鋼帯の場合におけるコイル内への金属帯の傷に対する不十分な耐ブロッキング性(Chemetallの内部のガイドラインに従う耐ブロッキング性試験であって、ここで市販の家庭のアルミニウム箔を水性組成物で処理し、塗布された未乾燥塗膜を特定の方法で乾燥し、正常状態下でのレスト時間後にその箔を約10の層に積層し、次いで2kg/cm2超の荷重下で圧縮し;この積層物を例えば60℃で2時間荷重下で保存し;次いで積層物をその個々の層に分離して、被覆箔面を評価し;箔層は、許容できる小さな模様のみを残して造作なく分離することが可能でなければならない)。
5.特に前記帯の長手方向分割中の特にコイル皮膜ラインにおける金属帯への有機皮膜の塗布の直後のポリマー皮膜の不十分な耐磨耗性であって、ここで前記帯板は、例えば単一圧延板の製造中、特に板の切断及び積層中又は/及びロール成形、深絞り又は/及びトリミングのように特別に成形された機械加工部品を作製するための成形による更なる処理中に、従来、多くの場合約400m/分の領域でのライン速度で超高圧下で押圧されて高速での前記帯の機械加工及び制御が可能になる(Chemetallの内部のガイドラインに従う耐磨耗性試験であって、それにより、水性組成物で被覆して乾燥した標本板は、200g/cm2の荷重の印加下で共に押圧され、前後に50回曲げられ;次いで機械的に荷重を加えた皮膜による塵成形が評価される)。
【0006】
独国特許出願公開第101 49 148号は、有機塗膜形成剤、無機微粒子及び潤滑剤又は/及び有機腐食防止剤に基づいた水性皮膜組成物を記載しているが、それは、クロム化合物がないにもかかわらず、なかでもGalvalume(登録商標)鋼板上の優れた耐食性、接着強度及び成形性の結果をもたらしたが、多くの場合少なくとも1つの短所を示した。この刊行物の組成物、それらの成分及び原料及び皮膜の性質は、本出願に明白に組み込まれる。
【0007】
特許出願公開第05−255587は、ポリウレタン樹脂、SiO2微粒子又は/及び粗粒子、及び少なくとも90℃融点を有するポリオレフィンワックスからなる分散液又は/及びPTFEを金属板に被覆する方法に関する。ポリウレタン樹脂は特定の弾性を有するものであって、皮膜に良好な深絞り性を付与すると考えられる。
【0008】
故に、本発明の1つ目的は、先行技術の上述の短所の内の少なくとも1つを克服することである。更なる目的は、多くの場合帯に使用されるもの等、例えば60〜160m/分の範囲の高被覆速度にも適している金属表面を被覆する方法を提案することである。更なる目的は、ほとんど又は完全にクロム(VI)化合物なしで使用され得、可能な限り無機酸及び有機酸も含まず、工業規模で使用され得、ほとんど又は完全にクロム(VI)化合物を含まない本発明により作製されるポリマー皮膜が非常に汎用的である、被覆方法を提案することである。
【0009】
0.3〜5μmの範囲の乾燥膜厚によって、ポリカーボネート含有有機塗膜形成剤及び無機架橋剤を添加することにより作製された有機ポリマー塗膜は、非常に高い柔軟性(例えば非常に高い極限伸び)、非常に高い硬度(例えばDIN EN ISO 1522に従って決定される非常に高いケーニッヒ振り子硬度)、良好な〜非常に良好な塗装性、屋外曝露に対する良好な長期耐性、優れた防食性、高い〜非常に高い耐ブロッキング性、高い又は非常に高い耐化学性又は/及び高い〜非常に高い耐磨耗性を示し得ることが現在分かっている。
【0010】
前記目的は、更なる被覆の前に金属表面を前処理するための又は金属表面を処理するための水性組成物で金属表面を被覆する方法によって達成され、ここで例えば帯又は板等の被覆体は場合により被覆後に形成され、それは、前記組成物が、水の他に、
a)有機塗膜形成剤中の含有率の70〜100質量%がポリカーボネート、ポリウレタン、アイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンからなる群から選択される合成樹脂に基づくポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の少なくとも1種の水溶性又は/及び水分散合成樹脂を含み、ポリカーボネート及びポリウレタン含有率が各々少なくとも10質量%である、主成分としての少なくとも1種の合成樹脂からなる有機塗膜形成剤、
b)有機塗膜形成剤用塗膜形成補助剤としての少なくとも1種の長鎖アルコール、
c)少なくとも1種の架橋剤、
d)少なくとも1種の潤滑剤、及び
e)A)シラン、シラノール又は/及びシロキサンに基づく少なくとも1種の物質、又は/及び、B)走査型電子顕微鏡で測定して平均粒径が0.005〜0.3μmの範囲である粒子形態の少なくとも1種の無機化合物、及び
f)場合により、少なくとも1種の有機腐食防止剤、少なくとも1種の有機溶媒又は/及び少なくとも1種の添加剤
を含有することを特徴とし、ここで金属表面は水性組成物に接触し、有機塗膜は実質的に金属表面上に形成され、次いで乾燥され、場合により硬化され、ここで乾燥及び場合により硬化もされた塗膜は、硬化塗膜の限定領域を分離してそれを秤量することによって決定される0.01〜10μmの範囲の膜厚を有する。
【0011】
本特許出願の意味の範囲内で、有機塗膜形成剤は、場合により、特に少なくとも1種の市販の塗料用樹脂が添加される場合、特に少量が含まれる場合にしばしば検出されないか若しくはほとんど検出可能でない少なくとも1種の塗料添加剤も含有し得る合成樹脂の総量を示す。表示される含有率は、従来、活性成分を含む固体に基づく。
【0012】
有機塗膜形成剤、即ち有機塗膜形成剤としての少なくとも1種の水溶性合成樹脂又は/及び水分散性合成樹脂は、2〜600g/Lの範囲、好ましくは特に10〜575g/L、30〜550g/L、50〜525g/Lの範囲、70〜500g/L、90〜475g/L、110〜450g/L、130〜425g/L、150〜400g/L、170〜375g/L又は190〜350g/Lの範囲の含有率で、好ましくは水性組成物中に、特に浴中及び浴(=浴組成物)として、しかし浴組成物を製造又は補給するための濃縮物又は/及び補給組成物としても含まれる。しかしながら、有機塗膜形成剤の含有率は、他の成分の含有量と同様に、なかでも皮膜ラインの種類、その塗布又は/及びライン速度に、及び特に被作製皮膜の所望の乾燥膜厚に実質的に依存する。高含有率の有機塗膜形成剤は、特に揮発性成分(例えば有機溶媒又は/及び残存単量体)をほとんど含まないか若しくは含まない系を徹底的に硬化させる際に生じ得る。a)塗膜を形成し、且つ、主に又は単に乾燥中又は/及び加熱中に物理的手段によって少なくともわずかに架橋され、又はb)塗膜を形成し、且つ、化学的手段又は/及び化学的/熱的手段により架橋されもする皮膜が、本発明による方法のために特に好ましい。本発明型による皮膜が主に又は単に乾燥中又は/及び加熱中に物理的手段によって塗膜を形成する場合、この点で、それは特に有利である。
【0013】
有機塗膜形成剤としての少なくとも1種の水溶性合成樹脂又は/及び水分散性合成樹脂は、水性組成物中の固体及び活性成分の主要構成要素、即ち本発明による組成物中の活性成分を含む固体の少なくとも40質量%又は少なくとも50質量%を構成する。水性組成物中の各ポリマー添加剤は、好ましくは実質的に少なくとも1種の有機ポリマー、有機コポリマー、有機ブロックコポリマー又は/及び有機グラフトコポリマー(=ポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマー)である。有機塗膜形成剤としての水溶性合成樹脂又は/及び水分散性合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による水性組成物中において活性成分を含む固体の40〜99.5質量%又は50〜99質量%の範囲であり、好ましくは特に60〜98質量%又は70〜96質量%の範囲であり、幾つかの実施態様においては75〜92質量%又は80〜86質量%の範囲である。
【0014】
特に脂肪族ポリウレタンの比率が用いられる場合、ポリカーボネート及びポリウレタンに基づく少なくとも1種の合成樹脂の実質的含有率を有する有機塗膜形成剤が、特に本発明による質の高い皮膜の特性を達成するために適切であることが見出された。要件があまりストリンジェントでない場合、芳香族ポリウレタンの使用は適切であり、且つ、より大きな比率の他のポリマー成分が許容され得る。特性の所望の範囲及び対応する経済的実行可能性に応じて、ポリエステル、ポリアクリレート等との合成樹脂又は/及び合成樹脂成分の組み合わせが、乾燥塗膜の柔軟性及び他の特性の対応する調整により可能である。有機塗膜形成剤のポリカーボネート成分は特に耐化学性及び硬度を促進するが、一方でポリウレタン成分は特に柔軟性、接着性及び成形性を促進する。有機塗膜形成剤中のポリウレタンに対するポリカーボネートの質量比は、好ましくは2:1〜1:2、特に好ましくは3:2〜2:3、4:3〜3:4、或いはほとんど又はちょうど1:1である。
【0015】
水性組成物中の有機塗膜形成剤は、好ましくはポリカーボネート又は/及びポリウレタンに基づく少なくとも1種の水溶性合成樹脂又は/及び少なくとも1種の水分散性合成樹脂を含有し、ここで合成樹脂の少なくとも50質量%は、ポリカーボネート及びポリウレタンの比率が有機塗膜形成剤の少なくとも50%を構成するようにポリカーボネート又は/及びポリウレタンに基づくものである。これらの2つの比率は、特に好ましくは少なくとも60又は少なくとも70質量%であり、少なくとも75又は少なくとも80質量%、少なくとも85又は少なくとも90質量%、少なくとも95、少なくとも98又は少なくとも99質量%、或いはほとんど又はちょうど100質量%である。これらの成分は、例えばアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレン等の少なくとも1種の更なる成分と共に、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリカーボネート−ポリウレタン又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…として存在し得る。それに応じて、それから作製された乾燥塗膜は、本段落において明示されるように、かかる含有率又は/及び最少含有率の合成樹脂から実質的になることになり、それは場合により更に共重合又は/及び架橋された。次いで、多くの場合、それらは、少なくとも1種の更なる成分と共にポリカーボネート−ポリウレタン又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…として存在することになる。
【0016】
非常に多くの可能な実施態様の一部において、本発明による組成物は、例えばある含有率のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンを有するもの等のポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーを唯一又は実質的に唯一含有する。それに応じて、それから作製された乾燥塗膜は、例えばある含有率のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンを有するもの等のポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーから実質的になることになる。しかしながら、ほとんどの実施態様においては、ポリウレタン及びポリカーボネートの他に少なくとも1種の更なる種々の合成樹脂が、水性組成物に添加され又は/及び含まれる。例えばアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレン等の少なくとも1種の更なる成分を有するポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づく合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中に活性成分を含む固体の40〜99.5質量%又は50〜99の質量%の範囲、特に好ましくは60〜98質量%又は70〜96質量%の範囲、幾つかの実施態様においては75〜92質量%又は80〜86質量%の範囲である。
【0017】
非常に多くの可能な実施態様の一部において、本発明による組成物は、例えばある含有率のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンを有するもの等のポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーを唯一又は実質的に唯一含有する。それに応じて、それから作製された乾燥塗膜は、例えばある含有率のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンを有するもの等のポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーから実質的になることになる。しかしながら、ほとんどの実施態様において、少なくとも1種の更なる種々の合成樹脂が、水性組成物に添加され又は/及び含まれる。例えばアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレン等の少なくとも1種の更なる成分を有するポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づく合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中に活性成分を含む固体の40〜99.5質量%又は50〜99の質量%の範囲、特に好ましくは60〜98質量%又は70〜96質量%の範囲、幾つかの実施態様においては75〜92質量%又は80〜86質量%の範囲である。
【0018】
幾つかの実施態様において、少なくとも1種の合成樹脂は、3種、4種、5種又は更にそれ以上の有機成分を有するコポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマー、例えばある含有率のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンを有するもの等のある含有率の少なくとも1種の更なる成分をも場合により含み得る例えばポリウレタン−ポリカーボネート−ポリエステル、ポリウレタン−ポリカーボネート−ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン−ポリカーボネートポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン−ポリカーボネート−ポリエステル−ポリ(メタ)アクリレート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−ポリエステル−ポリエーテルに基づく合成樹脂であり、ここで表示された成分の順序は、それらの相対的含有率について何も意味することを意図しない。
【0019】
有機塗膜形成剤は、有機塗膜形成剤の全含有率の10〜70質量%の範囲、特に好ましくは18〜62、26〜54又は34〜46質量%の範囲のポリカーボネートに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態で、好ましくはある含有率の合成樹脂を含む。
【0020】
有機塗膜形成剤は、有機塗膜形成剤の全含有率の10〜70質量%の範囲、特に好ましくは18〜62、26〜54又は34〜46質量%の範囲のポリウレタンに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態で、好ましくはある含有率の合成樹脂を含む。
【0021】
有機塗膜形成剤は、好ましくは、有機塗膜形成剤の全含有率の5〜70質量%の範囲、特に好ましくは10〜66、18〜62、26〜54、30〜50又は34〜46質量%の範囲の少なくとも1種の脂肪族ポリウレタンに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の含有率の合成樹脂を含む。ポリウレタンの主要な比率が、或いはポリウレタンの添加比率の少なくとも70質量%又は少なくとも85質量%でさえ、好ましくは少なくとも1種の脂肪族ポリウレタンである。
【0022】
幾つかの実施態様において、有機塗膜形成剤は、好ましくは、有機塗膜形成剤の全含有率の1〜40質量%の範囲、特に好ましくは8〜34、12〜28又は16〜22質量%の範囲のポリエステルに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の含有率の合成樹脂を含む。
【0023】
幾つかの実施態様において、有機塗膜形成剤は、好ましくは、有機塗膜形成剤の全含有率の1〜40質量%の範囲、特に好ましくは8〜34、12〜28又は16〜22質量%の範囲のポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリスチレン又は/及びポリビニルに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの各場合における形態の含有率の合成樹脂を含む。多くの実施態様において、かかる合成樹脂の含有率は、活性成分を含む固体に基づいて、有機塗膜形成剤の0〜40質量%、好ましくは1〜30、3〜25、5〜20又は8〜15質量%の範囲である。ポリ(メタ)アクリレートに関しては、ポリマー形態のポリアクリル酸又は/及びポリメタクリル酸が水性組成物に添加されることが特に好ましい。アクリル酸スチレン又は/及びアクリル酸スチレン−…に基づくコポリマーもまた特に好ましい。有機塗膜形成剤は、好ましくは、ある含有率のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェノール、ポリスチレン又は/及びポリビニルを有する、特に各々少なくとも10質量%の有機塗膜形成剤におけるある含有率のポリカーボネート及びポリウレタンを有する、及びいずれの場合においても活性成分を含む固体に基づいて有機塗膜形成剤の0〜40質量%の範囲、好ましくは1〜30、3〜25、5〜20又は8〜15質量%の範囲の含有率のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリフェノール、ポリスチレン又は/及びポリビニルを有するポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づく合成樹脂から実質的又は完全になり、ここで有機塗膜形成剤の好ましくは60〜100質量%、特に70〜98又は80〜95質量%は、2、3、4又は/及び5種の異なる成分(本出願の意味の範囲内の各成分は少なくとも1質量%の比率の有機塗膜形成剤を示し、例えばアクリレート、メタクリレート、ポリエステル、スチレン等は個々の成分である)を有するコポリマーに基づく合成樹脂である。
【0024】
合成樹脂の少なくとも90質量%(活性成分を含む固体に対して)は、好ましくはポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーに基づくものである。このことは、幾つかの場合において、場合により0.01〜10質量%、0.05〜5質量%又は0.1〜2質量%の合成樹脂が、次いで架橋の開始時に水性組成物の成分である有機モノマー又は/及び有機オリゴマーの形態、特にほとんど又は唯一有機オリゴマーの形態でることを意味する。有機モノマー又は/及び有機オリゴマーは、好ましくは故意に添加されないが、不完全な化学反応の結果として、少なくとも1種の合成樹脂中、場合により市販の合成樹脂製品中に含まれる。
【0025】
有機塗膜形成剤又は水性組成物に添加される合成樹脂の少なくとも60質量%、少なくとも75質量%、少なくとも90質量%又は95〜99.5質量%は、好ましくはコポリマーの形態(活性成分を含む固体に対して)である。
【0026】
合成樹脂(活性成分を含む固体に対して)の少なくとも20質量%は、好ましくはポリカーボネート−ポリウレタン又は/及び対応するポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーに基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーの形態であり、それから、場合により、例えばアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレン等の少なくとも1種の更なる成分を有するポリカーボネート−ポリウレタン又は/及びポリカーボネート−ポリウレタン−…に基づく少なくとも1種のコポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーが被覆中、加熱中又は/及び乾燥中に形成され得るか、若しくは形成され;それらは、特に好ましくは合成樹脂の20〜100質量%、30〜95質量%、40〜90質量%、50〜85質量%、60〜80質量%又は65〜75質量%の範囲である。これら及び更なる実施態様において、例えばアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレン等の少なくとも1種の更なる成分を有するポリウレタン−ポリカーボネート又は/及びポリウレタン−ポリカーボネート−…に基づく合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による水性組成物中の活性成分を含む固体の20〜99質量%の範囲、特に好ましくは30〜98質量%、40〜96質量%、50〜92質量%、60〜88質量%又は70〜84質量%の範囲である。ポリカーボネート−ポリウレタン−ポリエステル又は/及びポリカーボネート−ポリウレタン−ポリエステル−…が特に好ましいが、それにもかかわらず、その中で例えばカーボネート、エステル又はウレタン等の成分が広く用いられる。
【0027】
幾つかの実施態様において、本発明による組成物は、例えばアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテル又は/及びポリスチレン又は/及び対応するポリマー等の少なくとも1種の更なる成分を有するポリエステルウレタン又は/及びポリエステルウレタン−…に基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーの形態である含有率の少なくとも1種の合成樹脂を有することが好ましく、それから、例えばアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテル又は/及びポリスチレン等の少なくとも1種の更なる成分を有するポリエステル−ポリウレタン又は/及びポリエステル−ポリウレタン−…に基づくコポリマーが、被覆中、加熱中又は/及び乾燥中に形成され得:この含有率は、特に好ましくは10〜100質量%、20〜95質量%、30〜90質量%、40〜85質量%、50〜80質量%又は60〜70質量%の範囲である(活性成分を含む固体に対して)。かかる合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中に活性成分を含む固体の5〜99質量%の範囲であり、特に好ましくは10〜96質量%、20〜92質量%、30〜88質量%、40〜84質量%、50〜80質量%又は60〜76質量%の範囲である。
【0028】
幾つかの実施態様において、本発明による組成物は、ポリカーボネート−ポリウレタン−ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル−ポリウレタン−ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル−ポリウレタン−ポリカーボネート、ポリエステル−ポリカーボネート−ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート又は/及び対応するポリマーに基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーの形態のある含有率の少なくとも1種の合成樹脂を有することが好ましく、それから対応するコポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーの内のどの少なくとも1種が被覆中、加熱中又は/及び乾燥中に形成され得;この含有量は、特に好ましくは合成樹脂(活性成分を含む固体に対して)の10〜100質量%、20〜95質量%、30〜90質量%、40〜85質量%、50〜80質量%又は60〜70質量%の範囲である。かかる合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物の活性成分を含む固体の5〜99質量%の範囲、特に好ましくは10〜94質量%、20〜88質量%、30〜82質量%、40〜76質量%又は50〜70質量%の範囲である。
【0029】
幾つかの実施態様において、本発明による組成物は、ある比率のポリカーボネート、ポリエステル又は/及び脂肪族ポリウレタンを含有するポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーの形態のある含有率の少なくとも1種の合成樹脂を有することが好ましい。この比率は、特に好ましくは、合成樹脂(活性成分を含む固体に対して)の10〜100質量%、20〜95質量%、30〜90質量%、40〜85質量%、50〜80質量%又は60〜70質量%である。かかる合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中で活性成分を含む固体の10〜99質量%の範囲であり、特に好ましくは20〜98質量%、30〜96質量%、40〜92質量%、50〜88質量%、60〜84質量%又は70〜80質量%の範囲である。
【0030】
幾つかの実施態様において、本発明による組成物は、陰イオン的又は/及び非イオン的に安定しているポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーの形態で、ある含有率の少なくとも1種の合成樹脂を有することが好ましい。この比率は、特に好ましくは、合成樹脂(活性成分を含む固体に対して)10〜100質量%、20〜95質量%、30〜90質量%、40〜85質量%、50〜80質量%又は60〜70質量%である。かかる合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中で活性成分を含む固体の10〜99質量%の範囲、特に好ましくは20〜98質量%、30〜96質量%、40〜92質量%、50〜88質量%、60〜84質量%又は70〜80質量%の範囲である。
【0031】
更に、幾つかの実施態様において、本発明による組成物は、例えばポリエチレンアクリレート等のアイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート又は/及びポリスチレンに基づくポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーの形態で、ある含有率の少なくとも1種の合成樹脂を有することが好ましい可能性があるが、ここでポリカーボネート、ポリエステル又は/及びポリウレタンを有する任意の含有率のポリ(メタ)アクリレートは考慮されない。かかる合成樹脂の含有率は、特に好ましくは合成樹脂(活性成分を含む固体に対して)の3〜30質量%、5〜25質量%、8〜22質量%、10〜20質量%又は12〜18質量%である。かかる合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中で活性成分を含む固体の1〜30質量%の範囲であり、特に好ましくは2〜25質量%、3〜20質量%、4〜20質量%、5〜18質量%、8〜16質量%又は10〜14質量%の範囲である。
【0032】
更に、幾つかの実施態様において、前述していない異なるポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーは、好ましくは活性成分を含む固体に基づいて含有率が0.1〜20質量%、1〜16質量%、3〜12質量%又は5〜9質量%の範囲の合成樹脂と共に含まれ得る。かかる合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中で活性成分を含む固体の0.5〜20質量%の範囲、特に好ましくは1〜15、2〜13、3〜11、4〜9又は5〜8質量%の範囲である。
【0033】
更に、幾つかの実施態様において、本発明による組成物はまた、特に好ましくは活性成分を含む固体に基づいて含有率が10〜100質量%、20〜95質量%、30〜90質量%、40〜85質量%、50〜80質量%又は60〜70質量%の合成樹脂と共に、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレート、又は/及びポリ(メタ)アクリレートを含有する少なくとも1種のコポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーを含有することができる。かかる合成樹脂の含有率は、好ましくは本発明による組成物中で活性成分を含む固体の5〜99質量%の範囲であり、特に好ましくは10〜95質量%、20〜90質量%、30〜80質量%、40〜70質量%又は50〜60質量%の範囲である。
【0034】
60〜95℃の範囲の融点を有するポリ(メタ)アクリレート又は/及びエチレン・アクリル酸(アイオノマー)に基づくある含有率の少なくとも1種の合成樹脂、又は/及び20〜160℃の範囲、特に60〜120℃の範囲の融点を有する少なくとも1種の合成樹脂が最も特に好ましい。
【0035】
アイオノマーは、従来、少なくとも部分的に対イオンと反応した、又は/及び例えば乾燥塗膜において部分的に架橋中に、及び場合によりおそらく乾燥塗膜においてその後であっても反応したイオン部位を有する有機高分子物質又はその混合物である。適切なイオンとしては、特に、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛又は/及びジルコニウムのイオンが挙げられる。原料として、アイオノマーは、架橋有機非イオン性単位、及び多くの場合、大部分が低含有率のイオン含有単位(繰り返し単位)を示し得る。これらのイオン基は、多くの場合、アイオノマーの30質量%未満を、又は15質量%未満でさえ構成する。アイオノマーのポリマー物質は、顕著にワックスと異なる。
【0036】
アイオノマーは、主に、エチレン又は/及びプロピレンに基づく成分を有する(メタ)アクリル酸コポリマー、無水マレイン酸コポリマー又は/及びナフタレン酸コポリマー、又は/及び対応するポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーを含有するポリマー材料及びその混合物から、特に選択され得る。また、これらとしては、スチレン、ブタジエン、ウレタン、フマル酸又は/及びスルホン酸に基づくある含有率のポリマー物質を挙げることができる。場合によっては、それらはまた、小さい比率のアクリレート、ブチル、イソブチル、エチル、メチル、プロピル又は/及びビニルの基、低含有率のモノマー又は/及びオリゴマー、アミンに基づく低含有率の少なくとも1種の化合物、又は/及びコポリマー有機化合物の内の少なくとも1種の低含有率のエステル又は/及び塩を含有することができる。それらは、好ましくは6.5〜10.5の範囲のpH値で水中に存在することができる。
【0037】
有機塗膜形成剤は、好ましくは、例えばアクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレン又は/及びポリスチレン等のポリ(メタ)アクリレートに基づくある含有率の特に少なくとも1種の合成樹脂を含むポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーであり、それらから、水及び場合により他の揮発成分の除去中又は/及び除去後に有機膜が形成され得る。この方法で形成される有機塗膜はまた、ポリカーボネートに基づく少なくとも1種の合成樹脂の他に、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン又は/及びポリウレタンに基づく少なくとも1種の合成樹脂を特に含有することもできる。有機塗膜形成剤は、好ましくは、(メタ)アクリレート、エチレン(メタ)アクリレート又は/及びスチレン(メタ)アクリレートに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態のある含有率の合成樹脂を含む。
【0038】
合成樹脂のバルク又は有機塗膜形成剤中に含まれる全ての合成樹脂でさえ、好ましくはカルボキシル基を示す。カルボキシル基は、場合により、なかでもアンモニア、アミン(特にアルカノールアミン)又は/及びアルカリ金属化合物により中和し、反応して、この反応より前では通常の条件下で場合により水溶性でない容易に水に希釈可能な合成樹脂により水溶液を形成することができる。COOH基の中和は、陰イオン的に安定である。更に、また、少なくとも1種の乳化剤又は/及び少なくとも1種の保護コロイド(本出願の意味の範囲内の添加剤として)は、合成樹脂、有機塗膜形成剤又は/及び水性組成物の分散を安定させるために添加することが必要となる可能性もある。
【0039】
合成樹脂の酸性基は、アンモニア、例えばモルホリン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン又はトリエタノールアミン等のアミン(特にアルカノールアミン)、又は/及び例えば水酸化ナトリウム等のアルカリ金属化合物により中和され得る又は/及びされ得た。
【0040】
本発明による皮膜の所望の塗膜特性に依存して、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレート又は/及びポリウレタンの組み合わせは、有機塗膜形成剤において選択することが可能であり、その組み合わせによって、乾燥塗膜が適切な基材の接着性、柔軟性及び成形性を示すことが可能になる。
【0041】
本発明による方法において、有機塗膜形成剤は、溶液、分散液、エマルション、マイクロエマルション又は/及び懸濁液の形態であることができる。ここでの分散液という用語はまた、エマルション、マイクロエマルション及び懸濁液という補助的用語も包含する。有機塗膜形成剤は、好ましくは合成樹脂混合物である、又は/及び、好ましくは、(メタ)アクリレート、エポキシド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、(メタ)アクリレート、フェノール、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニル又は/及びポリビニルフェノールに基づくある含有率の合成樹脂を含む少なくとも1種の混合ポリマー(=コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマー)を含有する。それは、陽イオン的、陰イオン的又は/及び立体的に安定な合成樹脂又は/及びその溶液/分散液であり得る。
【0042】
有機塗膜形成剤は、好ましくは、合成樹脂混合物、又は/及びアクリレート、エポキシド、エチレン、尿素ホルムアルデヒド、フェノール、ポリエステル、ポリウレタン又は/及びスチレンに基づくある含有率の合成樹脂を含む混合ポリマー(=大部分、ほとんど又は完全にコポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーに基づくポリマー)であり、それから、水及び他の揮発成分の発散中又は/及び発散後に有機塗膜が形成される。有機塗膜形成剤は、特に少なくとも部分的にコポリマーの形態でエポキシド、フェノール、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、ポリウレタン、ポリビニルフェノール又は/及びそれらの誘導体に基づく合成樹脂を含有することができる。
【0043】
有機塗膜形成剤は、最も特に好ましくは、アクリレートに基づく又は60〜95℃の範囲の融点を有するエチレン・アクリル酸に基づく少なくとも1種の合成樹脂、又は/及び20〜160℃の範囲、特に60〜120℃の範囲の融点を有する少なくとも1種の合成樹脂を含有する。
【0044】
合成樹脂/合成樹脂混合物の酸価は、好ましくは8〜140の範囲、特に好ましくは10〜100の範囲、最も特に好ましくは12〜80の範囲であり得る。高酸価範囲において、陽イオン的、陰イオン的又は/及び立体的に塗膜形成剤を安定させることは、一般に必要ではない。しかしながら、低酸価について、かかる安定化は通常必要である。そのような場合、予め安定させた合成樹脂又は/及び混合物を使用することは好都合である。
【0045】
合成樹脂の分子量は、少なくとも1000uの範囲、好ましくは5000〜250,000uの範囲、特に好ましくは20,000〜200,000uの範囲であり得る。
【0046】
本発明による方法において、有機塗膜形成剤の水性組成物のpHは、更なる化合物を添加することなく、好ましくは6.5〜11の範囲、特に好ましくは7〜10.5、7.5〜10又は8〜9.5の範囲である。この点に関しては、多くの場合、合成樹脂は、合成樹脂製造業者によって例えば重合中に既に中和されたものであることに注意するべきである。更なる化合物を添加することなく水性調製物中の有機塗膜形成剤のpHは、好ましくは1〜12の範囲である。水性組成物の製造中に有機塗膜形成剤又は/及び水性組成物のpHが6.5〜11の範囲の外側の値に移動する場合、望ましくない塩の形成が酸又は/及び酸性物質の添加によって生じる可能性があることから、適切な添加により、しかし好ましくは少なくとも1種の塩基性物質の添加のみにより、それを6.5〜11のpH範囲に戻すことが推奨されるか、若しくはこの範囲内の更により狭い測定範囲に戻すことも推奨される。合成樹脂又は/及び混合物の保存の結果としてpHが低下した場合、例えば、水酸化ナトリウム溶液の添加により、特に一方ですぐに使用可能な水性組成物のpHをよりアルカリ性の範囲内に戻すことは、有益であり得る。
【0047】
有機塗膜形成剤は、好ましくはカルボキシル基を有する合成樹脂のみを含有する。カルボキシル基は、なかでもアンモニア、アミン(特にアルカノールアミン)又は/及びアルカリ金属化合物により中和し、反応して、この反応より前では通常の条件下で水溶性でない容易に水に希釈可能な合成樹脂により水溶液を形成することができる。カルボキシル基含有合成樹脂の架橋のためには、好都合には、化学架橋のための少なくとも1種の架橋剤が添加される。
【0048】
有機塗膜形成剤は、好ましくは、例えば塩素又は/及びフッ素等のハロゲンを含まないか、若しくは実質的に含まない合成樹脂のみを含有する。有機塗膜形成剤は、PTFEを含有しない。これは、その目的が不十分な塗装性(上塗り適合性)を回避することにあるからである。ある含有率の塩素又は/及びフッ素が水性組成物に導入されることになっている場合、比較的低含有率のみが好ましい、又は/及び、少なくとも1種の対応するシラン又は/及び少なくとも1種の対応するシラノール/シロキサン/ポリシロキサンの添加のみにより、又は実質的に添加のみにより、それを達成することが好ましい。
【0049】
それらの物性の理由により、多くの合成樹脂は、エラストマー又は/及び熱可塑性材料として分類することが可能である。技術的な理由のために多くの場合最小限の乾燥段階の間(多くの場合40〜120℃PMTの範囲及び多くの場合1〜10秒の範囲の時間の間)、塗布された未乾燥塗膜が構造的変化によって熱硬化性材料に実質的に変化しない場合、及びこの理由のために乾燥保護膜が実質的にエラストマー又は/及び熱可塑性材料の性質を保持する場合、この保護塗膜は、幾つかの状況において目的とされた塗布に不適切である可能性がある。特に乾燥皮膜の高品質特性がポリマー皮膜により達成される可能性が高く、乾燥中及び乾燥後、そのプロセスの間に架橋が架橋剤により生じ、場合により硬化後にも合成樹脂が大部分又は実質的に熱硬化性材料として機能することが確かめられた。
【0050】
水性組成物において、それらの塗布の前、及び、熱的乾燥又は/及び化学的/熱的乾燥の前では、多くの合成樹脂系は、一般にエラストマー又は/及び熱可塑性材料の形態をとる。一般に100℃PMTの最低温度を必要とする熱乾燥の間及び相対的に長い滞留時間の間、適切な架橋剤による架橋は、分子の構造的変化のため、架橋の完了時に例えば熱硬化性材料に変化すべきエラストマー又は熱可塑性材料を生じさせる。完全な架橋のための滞留時間が長くなれば、温度は低くなる可能性がある。
【0051】
熱可塑特性又は/及びエラストマー特性を有する調合成分を、熱硬化特性を有する保護塗膜に変えるために、対応する架橋剤との構造変化化学反応に有利な又は必要なもの等の適切な乾燥温度又は/及び乾燥機滞留時間は、多くの場合利用可能ではないという事実により、それは、塗布及び乾燥の前において液体形態の既に熱硬化特性又は大部分が熱硬化特性を有する成分を含有する調製物の使用に特に好都合であることが証明された。このように、比較的低乾燥温度でさえ(達成され得る乾燥条件から相対的に独立して)、概して、優れた耐食性(種々の気候においてテストされる)の他に、多数の多様な塗装系との良好な上塗り適合性、50℃超の、コイルにおけるもの等の被覆された及び隣接する基材表面の温度での優れた耐ブロッキング性、酸及びアルカリ液に対する良好な耐性、高温での良好な耐黄変性、例えば成形、ロール成形、深絞り及びトリミング等、被覆基材表面の更なる処理中の機械的荷重に対する優れた耐性、及び種々の気候における屋外曝露に対する優れた耐性を示すポリマー皮膜が作製される。
【0052】
有機塗膜形成剤は、好ましくは、例えば純粋ポリウレタン、ポリエステルウレタン、ポリカーボネート−ポリウレタン又は/及びポリカーボネート−ポリウレタン−…等の特にポリマーとして又は/及びコポリマーとして存在し得る少なくとも1種のイオン的に安定した又は/及び非イオン的に安定した熱硬化性材料を含有する。これらの熱硬化性材料は、有機塗膜形成剤の10〜100質量%、好ましくは50〜98質量%又は70〜90質量%を特に形成することができる。有機塗膜形成要はまた、その上、特に有機塗膜形成剤中の熱可塑性材料の比率が1〜50質量%の範囲、好ましくは有機塗膜形成剤中の熱可塑性材料の比率が5〜35質量%の範囲の1種以上のイオン的に又は/及び非イオン的に安定な熱可塑性材料を含有することもできる。有機塗膜形成剤はまた、更に、特に1〜50質量%の範囲の比率、好ましくは5〜35質量%の範囲の比率の少なくとも1種の熱可塑性材料及び少なくとも1種の熱硬化性材料を含む1種以上の混合ポリマー、特にコポリマーを含有することもできる。
【0053】
少なくとも1種の長鎖アルコールの形態で添加される又は/及び添加された少なくとも1種の塗膜形成助剤は、特に乾燥中の塗膜形成を改善する役目を果たす。ほとんど又は全く均質の有機膜は、特に水及び他の揮発成分の除去中又は/及び除去後に有機塗膜形成剤及び少なくとも1種の長鎖アルコールからの塗膜形成により形成される。乾燥中の水性組成物のポリマー粒子による塗膜形成の改善に鑑みて、特にトリエチレングリコール又はトリプロピレングリコールに基づく少なくとも1種の長鎖アルコール、好ましくはブタンジオールは、特にポリマー粒子の一時可塑剤として添加することが可能である。
【0054】
水性組成物中(特に浴中)の少なくとも1種の塗膜形成助剤の含有率は、好ましくは活性成分を含む固体に基づいて0.01〜50g/L、特に好ましくは0.08〜35g/L、最も特に好ましくは0.2〜25g/L、0.3〜20g/L又は0.5〜16g/L、特に1〜12g/L、2〜10g/L、3〜8g/L又は4〜6g/Lである。水性組成物中(特に浴中)の塗膜形成助剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化することが可能であり;特にそれは(100:0.1)以下であり得る。この比は、好ましくは100:10〜100:0.2、100:5〜100:0.4又は100:2.5〜100:0.6の範囲であり、特に好ましくは100:2〜100:0.75、100:1.6〜100:0.9又は100:1.4〜100:1の範囲である。
【0055】
塗膜形成という用語は、好ましくは室温又はわずかに高い温度で、主にポリマー粒子が均一な塗膜に変わる方法でポリマー分散液等の高有機含有率を有する材料からの塗膜の形成であると理解される。この点については、比較的大きなポリマー粒子の溶融が多くの場合言及される。この場合、塗膜形成は、乾燥中の及び場合により残りの塗膜形成助剤によるポリマー粒子の可塑化による水性媒質から起こる。
【0056】
塗膜形成は、軟質合成樹脂(DIN EN ISO 1522に従う室温でのケーニヒ振り子硬度が30s未満と測定された)を使用することにより又は/及び一時可塑剤(=塗膜形成助剤)としての役割を果たす物質の添加により生じさせる又は/及び改善することができる。塗膜形成助剤は、ポリマー粒子の表面を軟化し、従って相互の有機粒子の溶融によるそれらの幾何学的変化を可能にするが、特に消失するものではなく、特に水の蒸発の後ほとんど蒸発し、好ましくは永久に塗膜中に残留するものではない特定の溶媒としての役割を果たす。作製される塗膜は、多くの場合細孔を含まず、又は実質的に細孔を含まず、例えば無機粒子等の未溶解粒子又は/及び溶解できない粒子を含むことができる。この点に関してそれは、これらの可塑剤がポリマー粒子に多少の時間作用し、次いで蒸発して塗膜から消失するのに十分長く水性組成物中に残存する場合に好都合である。適切な塗膜形成方法では、塗膜形成方法が妨げられた徴候である乳白色塗膜でも粉末状塗膜でもなく、透明塗膜を作製する。できるだけ完全な塗膜形成のために、表面に塗布される未乾燥塗膜の温度は、最低塗膜形成温度(MFFT)を越えていなければならない。次いで、合体するのに十分柔らかいポリマー粒子であるだけである。この点で、一時可塑剤としての塗膜形成助剤は、水性組成物のpHを変化させないか若しくはほとんど変化させないことが特に好都合である。
【0057】
適切な塗膜形成助剤の選択は容易でないため、少なくとも2種の塗膜形成助剤の混合物が多くの場合必要である。塗膜形成助剤は、140〜400℃の範囲、特に150〜340℃、160〜310℃又は170〜280℃の範囲で、又は/及びエーテル=1で100〜5000の範囲、特に120〜4000、135〜2800又は150〜1600の範囲の相対蒸発率で、760mmHgで好ましくは沸点を有する。いわゆる長鎖アルコールは、塗膜形成助剤、好ましくは4〜16C原子、特に好ましくは6〜12C原子を有するものとして特に好都合である。これらとしては、好ましくは、少なくとも1種のブタンジオール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、エチレングリコールエーテル(例えばエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルグリコールプロピルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル)又は/及び少なくとも1種のポリプロピレングリコールエーテル(例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル又は/及びプロピレングリコールフェニルエーテル)等の例がある。
【0058】
例えば約5℃からの範囲の温度等の比較的に低温で起こる塗膜形成とは対照的に、化学的に又は化学的/熱的に架橋する有機皮膜については、少なくとも50℃の温度が架橋に必要である。好ましくは120℃超、特に好ましくは100℃超、80℃超又は60℃超、特に40℃超、20℃超、10℃超又は5℃超の温度で組成物が塗膜を形成するような量の塗膜形成助剤が、好ましくは選択され、且つ、添加される。従って、塗膜形成助剤を含む合成樹脂の最低塗膜形成温度は、120℃超、特に好ましくは100℃超、80℃超又は60℃超、特に40℃超、20℃超、10℃超又は5℃超であることが好ましい。その後の乾燥は、塗膜形成助剤を含む合成樹脂の最低塗膜形成温度よりわずかにより高い(少なくとも10、15又は20℃)又は顕著により高い(少なくとも30、50、70、90又は110℃)温度で好ましくは起こる。水及び場合により含まれる有機溶媒は、乾燥中に消失する。次いで塗膜形成が開始し、そのプロセスの間、場合により粒子形態の有機物質は、共に近づくことが可能であり、より高い温度により軟化し、閉鎖塗膜を形成することができる。塗膜形成は、ちょうど室温で実質的な程度に生じることが特に好ましい。
【0059】
好ましくは以下のものが少なくとも1種の架橋剤として使用され得る:無機架橋剤(例えばアンモニウム−ジルコニウムカーボネート等)、有機金属架橋剤(例えば有機チタン酸に基づくもの、有機ジルコン酸に基づくもの等)、有機架橋剤(例えばアジピン酸ジヒドラジド、アジリジンに基づくもの(例えば多官能性ポリアジリジン等)、アゾ化合物に基づくもの、ジアミンに基づくもの、ジイミドに基づくもの(例えば多官能性ポリカルボジイミド等)、ホルムアルデヒドに基づくもの(例えば尿素ホルムアルデヒド又は/及びメラミンホルムアルデヒド等)、イミダゾールに基づくもの(例えば2−エチル−4−メチルイミダゾール等)、イソシアネートに基づくもの、イソシアヌレートに基づくもの、メラミンに基づくもの(例えばメトキシメチルメチロールメラミン又は/及びヘキサメトキシメチルメラミン等)、過酸化物に基づくもの、トリアジンに基づくもの(例えばトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン等)又は/及びトリアゾールに基づくもの等)。
【0060】
メラミンホルムアルデヒドに基づく有機架橋剤は、従来、約130〜約210℃の温度範囲、好ましくは約140〜約200℃の範囲で使用され得るが、一方で他の有機的架橋剤は、約50〜約120℃の温度範囲、好ましくは約60〜約110℃又は約100℃の範囲で主に又は従来使用される。これらの最後の架橋剤は、本明細書において有機低温架橋剤と呼ばれる。
【0061】
被覆目的の本発明の水性組成物は、特に塩基性化合物に基づく少なくとも1種の架橋剤を含有して、化学物質や天候の影響等の攻撃的な媒体及び機械的荷重に対する耐性を生じ、特に高大気湿度の条件又は/及び湿潤地域の条件でのアルミニウム及びアルミニウム含有表面の場合に色安定性を確保し、暗色化を防止することができる。特に、これらは、塩基性媒体、とりわけチタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムに基づくもの又は/及びカーボネート又は炭酸アンモニウムに基づくものに使用され得るかかる無機架橋剤である。チタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムに基づく架橋剤、又は/及びカーボネートまたは炭酸アンモニウムに基づくもの、とりわけチタン又は/及びジルコニウムに基づくものがとりわけ好都合であり;それらは、好ましくは、活性成分を含む固体に基づいて0.1〜30g/Lの範囲の含有率、特に好ましくは1〜10g/Lの範囲の含有率、又は好ましくは100質量部の水に基づいて0.01〜3質量部の範囲、特に好ましくは0.1〜1質量部の範囲、最も特に好ましくは0.2〜0.6質量部の範囲の含有率で、水性組成物中に含まれる。水性組成物は、ホウ素含有化合物又は塩基性化合物に基づいて少なくとも1種の無機架橋剤を、好ましくはチタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムに基づいて又は/及びカーボネート又は炭酸アンモニウムに基づいて少なくとも1種の無機架橋剤を好ましくは含有する。
【0062】
水性組成物中の少なくとも1種の無機架橋剤は、アルミニウム、ハフニウム、チタン、バナジウム、亜鉛又は/及びジルコニウムに基づく少なくとも1種の化合物から好ましくは選択され得る。それは、皮膜組成物に含有される合成樹脂の内の1種を少なくとも部分的に架橋させるのに、又は/及び、その中に含有される合成樹脂の内の少なくとも1種と化学的に反応するのに、特に適切であり得る。化学反応を含む架橋プロセスは、特に化学的手段又は/及び化学的/熱的手段によって起こすことができる。しかしながら、キレートは、本出願の意味の範囲内の架橋剤ではない。本発明による組成物は、好ましくはキレートを含まない。無機架橋剤は、特に無機架橋剤のOH基等の基と合成樹脂のCOOH基等の基との間の架橋効果を有する。また、少なくとも1種の無機架橋剤は、多くの場合、反応触媒としての、又は/及び、部分的に腐食防止剤としての役割を果たすこともできる。それは、化学物質や天候の影響等の攻撃的な媒体及び機械的荷重に対する耐性を向上させ、特に高大気湿度の条件又は/及び湿潤地域の条件でのアルミニウム及びアルミニウム含有表面の場合に色安定性を向上させ又は確保し、透明皮膜の暗色化を防止する又は顕著に抑制することに役立つ可能性がある。幾つかの実施態様において、それは、その中に永久に均一に分布及び分散したままとするために、又は/及び、合成樹脂との所望の反応を可能にするためにほとんど反応性でないか、又は非反応性のままにして、しかるに例えば約40又は45℃未満、若しくは例えば約45又は50℃超の温度での保存の際に安定的なままとするために、保存寿命が長い安定形態で実質的に中性又は/及びアルカリ性の水性組成物中に存在するのに適切であり得る。
【0063】
無機有機架橋剤を含むかかる無機架橋剤は、例えば、アセテート、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、カルボン酸アンモニウム、カルボン酸、カルボン酸誘導体、ハロゲン化物、ヒドロキシハロゲン化物、オルトサルフェート、オキシハロゲン化物又は/及びプロピオネート、特にそのアンモニウム塩、カリウム塩及びナトリウム塩、特に好ましくは炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウム、乳酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、リン酸ジルコニウム、アルカリ炭酸ジルコニウム(例えば炭酸ジルコニウムカリウム)、フッ化ジルコニウムアンモニウム、グルコン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酒石酸ジルコニウム、又は/及びアルミニウム、ハフニウム、チタン、バナジウム、亜鉛又は本明細書で列挙される複数のもの又は/及び本明細書で列挙されない更なるカチオンを有するものの対応する化合物(例えば炭酸亜鉛アンモニウム、シュウ酸チタンアンモニウム又は/及び炭酸チタンアンモニウム等)に基づくものであり得る。しかしながら、キレートは、無機架橋剤に含まれない。少なくとも1種の無機架橋剤は、対応する濃度で、水において5〜10の範囲のpHを有する。場合により無機−有機架橋剤を含む少なくとも1種の無機架橋剤は、−好ましくは0.01〜100g/Lの範囲、特に好ましくは0.1〜80g/L、0.15〜60g/L、0.2〜45g/L、0.25〜35g/L、0.3〜30g/L、0.35〜25g/L又は0.4〜20g/Lの範囲、最も特に好ましくは0.5〜18g/L、0.6〜16g/L、0.7〜14g/L、0.8〜12g/L、0.9〜10g/L、1〜8g/L、1.5〜6g/L又は2〜4g/Lの範囲の含有率で、水性組成物中、−特に浴中に含まれる。場合により無機−有機架橋剤を含む無機架橋剤の含有率は、好ましくは、本発明による組成物において活性成分を含む固体の0.01〜20質量%の範囲、特に好ましくは0.1〜18、0.5〜16、1〜14、1.5〜12、2〜10、3〜8又は4〜6質量%の範囲である。しかしながら、水性組成物における少なくとも1種の無機の架橋剤の含有率は、実質的に、なかでも、皮膜ラインの種類、その速度、及び特に製造する皮膜の所望の乾燥膜厚に依存している。少なくとも2種の無機架橋剤の組み合わせは、特に皮膜の性質が選択的に調整される場合、又は、含有率が容易に分析され得る、より大量で、容易に分析可能な第2のカチオンを導入して、それにより膜厚の測定を可能にするために、実施態様における目的であり得る。
【0064】
水性の組成物中の(特に浴中の)、場合により無機−有機架橋剤を含む無機架橋剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化することが可能であり;特にそれは(100:0.3)以下であり得る。この比は、好ましくは100:10〜100:0.4、100:5〜100:0.5又は100:2.5〜100:0.6の範囲、特に好ましくは100:2〜100:0.75、100:1.6〜100:0.9又は100:1.4〜100:1の範囲である。
【0065】
特定の無機又は/及び有機架橋剤は、乾燥温度又は/及び架橋温度に応じて選択され得る。用いられる乾燥温度又は/及び架橋温度に応じて、例えば、少なくとも1種の多官能性アジリジン(例えば40〜250℃の範囲で活性)、例えば少なくとも1種のポリカルボジイミド等の少なくとも1種のカルボジイミド(例えば80〜250℃の範囲)、少なくとも1種の好ましくはブロックイソシアネート(例えば80〜250℃の範囲)、少なくとも1種のメラミンホルムアルデヒド(例えば120〜250℃の範囲)、少なくとも1種のトリアジン(例えば100〜250℃の範囲)又は/及び少なくとも1種ジアミン(例えば60〜250℃の範囲)が使用され得る。しかしながら、それにより反応が極めて遅く進行する場合、ブロックイソシアネートは不都合である可能性があり、この理由のために、それは、帯板処理の低温乾燥に不適当である。メラミンに基づく架橋剤と比較して、トリアジンに基づく架橋剤には、ホルムアルデヒドが熱反応(乾燥、架橋)中に放出されないという効果がある。
【0066】
無機架橋剤の添加は、特に亜鉛含有金属表面のために、とりわけEZ(電気亜鉛メッキ)及びHDG(溶融亜鉛メッキ)表面が良好な耐腐食性を必要とする場合に推奨される。一方で、少なくとも1種のホウ素含有無機化合物(例えば少なくとも1種の四ホウ酸塩又は/及びホウ砂に基づくもの等)を添加することは、特に鉄鋼面(例えば冷間圧延鋼板(CRS)面等)の保護に好都合である可能性がある。いずれの場合においても、これは、少なくとも1種のかかる無機化合物を添加することによって達成することができる。
【0067】
水性組成物中(特に浴中)の少なくとも1種のかかる無機化合物の含有率は、好ましくは活性成分を含む固体に基づいて0.01〜50g/L、特に好ましくは0.08〜35g/L、最も特に好ましくは0.2〜25g/L、0.3〜20g/L又は0.5〜16g/L、特に1〜12g/L、2〜10g/L、3〜8g/L又は4〜6g/Lであり得る。水性組成物中(特に浴中)におけるかかる無機化合物の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化する可能性があり;特にそれは、1200:1以下であり得る。この比は、好ましくは20:1〜800:1、30:1〜600:1又は40:1〜400:1の範囲、特に好ましくは50:1〜200:1、60:1〜160:1又は70:1〜120:1の範囲である。
【0068】
架橋剤は、架橋剤に応じた特定の温度範囲において、本発明による皮膜における化学反応又は/及び架橋反応を起こすために使用することが可能である。
【0069】
少なくとも1種の架橋剤の含有率は、その種類、含まれる合成樹脂又は/及び所望の被覆性又は/及び更に水性組成物における異なる架橋剤の組み合わせに応じて広く変化し得る。少なくとも1種の架橋剤は、好ましくは、皮膜が塗布される前に水性組成物中で架橋反応が開始しない又は実質的に開始しないように選択される。場合により、皮膜の塗布前の水性組成物における架橋反応の抑制に役立つ少なくとも1種の反応遮断剤又は/及び少なくとも1種の安定剤の添加は、好都合である。
【0070】
水性組成物中の少なくとも1種の架橋剤の含有率は、好ましくは活性成分を含む固体に対して0.2〜80g/L又は0.5〜50g/Lの範囲、特に好ましくは1.5〜35g/L、3〜20g/L又は6〜10g/Lの範囲である。
【0071】
水性組成物における架橋剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の比は、広く変化する可能性があり;特にそれは(100:0.1)以下であり得る。この比は、好ましくは100:0.2〜100:20、100:0.5〜100:16又は100:1〜100:14の範囲、特に好ましくは100:1.5〜100:12、100:2〜100:10又は100:3〜100:8の範囲である。
【0072】
水性組成物は、好ましくは少なくとも1種の架橋剤を含み、その各々は、性質として無機又は/及び有機であり得る。この点で、水性組成物への、又は/及び、その中への、少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンの添加又は/及び含有は、場合によってはある程度の架橋効果もある可能性があるが、本特許出願の意味の範囲内では「架橋剤」であると考えられない。
【0073】
本発明による方法において、少なくとも1種のワックスは、パラフィン、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択することが可能であり、水性組成物に潤滑剤として添加され、それはまた、場合によっては起泡剤として、特に少なくとも1種の酸化ワックス又は/及び少なくとも1種の微結晶ワックスとして役立つ可能性がある。潤滑剤は、好ましくは、例えばフッ素等のハロゲンを完全に又は実質的に含まない。水性又は/及び陽イオン的、陰イオン的又は/及び立体配置的に安定した分散液としてワックスを使用することは、それが次いで水性組成物中に均質分布で容易に維持され得るので、特に好都合である。潤滑剤として使用されるワックスの融点は、好ましくは40〜165℃の範囲、特に好ましくは50〜160℃の範囲、特に100〜165℃の範囲又は120〜150℃の範囲である。
【0074】
更に、総固体含量の、即ち活性成分(例えば少なくとも1種のポリエチレンワックス及び少なくとも1種のパラフィン)を含む固体に対して、特に2〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の量で、100〜165℃の範囲の融点を有する潤滑剤、45〜95℃の範囲の融点を有する潤滑剤に添加することは、特に好都合である。また、後者は、好都合には唯一の潤滑剤として単独で使用され得る。より低い融点を有する潤滑剤に対するより高い融点を有する潤滑剤の質量比は、好ましくは2:1〜1:2、特に好ましくは3:2〜2:3、4:3〜3:4或いはほとんど又はちょうど1:1である。
【0075】
場合によっては起泡剤でもあり得る少なくとも1種の潤滑剤は、活性成分を含む固体に対して0.1〜35g/Lの範囲の含有率、及び特に好ましくは2〜30g/L又は10〜25g/Lの範囲の含有率で、水性組成物中に好ましくは含有される。しかしながら、幾つかの実施態様において、本発明による皮膜が上塗りされることが意図されない処理皮膜である場合、それが塗装される際に前処理皮膜におけるワックス含有率は不都合であり得ることから、ワックス含有率は好都合であるのみである。潤滑剤又は/及び起泡剤は、特に成形中、皮膜の摩擦係数を低下させるために添加され得る。この目的のために、なかでもパラフィン、ポリエチレン又は/及び酸化ポリエチレンが推奨される。
【0076】
水性組成物中(特に浴中)における少なくとも1種の潤滑剤の含有率は、好ましくは0.01〜50g/L、特に好ましくは0.08〜35g/L、最も特に好ましくは0.2〜25g/L、0.3〜20g/L又は0.5〜16g/L、特に1〜12g/L、2〜10g/L、3〜8g/L又は4〜6g/Lである。水性組成物中(特に浴中)における潤滑剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、(100:0.1)以下であり得る。この比は、好ましくは、100:5〜100:0.12、100:3.5〜100:0.16又は100:2.5〜100:0.25の範囲、特に好ましくは100:2〜100:0.4、100:1.6〜100:0.6又は100:1.3〜100:0.8の範囲である。
【0077】
少なくとも1種の潤滑剤は、0.1〜25g/Lの範囲の含有率、及び特に好ましくは1〜15g/Lの範囲の含有率で、水性組成物中に好ましくは含有される。本発明による皮膜が上塗りされることが意図されない処理皮膜である場合、幾つかの実施態様においてそれが塗装される際に前処理皮膜におけるワックス含有率は不都合であり得ることから、ワックス含有率は特に好都合である。また、潤滑剤は、特に成形中、皮膜の摩擦係数を低下させるために添加され得る。この目的のために、なかでもパラフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、酸化ポリエチレン又は/及び酸化ポリプロピレンが推奨される。意外にも、本発明による組成物によって作製された皮膜は、予想外に多くの実施態様においてそれらが容易に塗料可能であることから、次いで塗装される前処理物及び他の種類の皮膜の両方に非常に適切であることが分かった。
【0078】
特に0.02:1〜2:1、特に好ましくは0.05:1〜1:1、最も特に好ましくは0.1:1〜0.5:1の、ポリマー混合物又は/及びエチレン又は/及びプロピレン及びアクリル酸を含有するコポリマーに対するワックスの比で、ポリマー混合物又は/及びエチレン又は/及びプロピレン及び(メタ)アクリル酸を含有するコポリマー(例えばエチレン(メタ)アクリル酸コポリマー等)と共に少なくとも1種のワックスは、潤滑剤(場合により添加される少なくとも1種の更なる合成樹脂)として好ましくは使用される。
【0079】
水性組成物は、好ましくは何種類かの潤滑剤、特に2種又は3種の潤滑剤を含有し、その内の少なくとも2種の潤滑剤は、互いに顕著に異なる性質を有する。少なくとも1種の潤滑剤、特に少なくとも1種のワックス、又は顕著に異なる融点又は溶融範囲を有する少なくとも2種の潤滑剤(特にその内の少なくとも1種はワックスである)の組み合わせは、調製物で被覆した基材を成形するために好都合である。2種の潤滑剤の融点又は溶融範囲は、少なくとも15℃異なることができる。簡潔に説明するために、融点のみを以下で参照する。皮膜の摩擦係数は、総形工具における被覆基材の最適な摺動が確保されるように、この方法で調整することが可能である。このことは、処理基材表面が、工具の最適ホールドダウン圧により被作製成形品の最適な仕上げが達成され得るような良好な表面滑りを有することを意味する。被覆基材で表面が適切な表面滑りを有さない場合、成形中の成形領域における基材の望ましくないテーパリングのリスクがあり、それには通常肉厚の実質的な減少は伴わないが、その減少の結果としては、基材寸法が形状として意図せずに減少し、その減少は、最悪のシナリオとして基材の破壊を引き起こす。被覆基材表面の表面滑りがあまりに大きい場合、本発明によって被覆された帯板を十分に安定的なコイルに巻くことができないというリスクがある可能性がある。更に、一枚板の製造においては、特に小型部品の打抜きの間、又は/及び、ロール成形の間、又は/及び、成形品のトリミングの間、帯板を正確に供給することができず、その結果、被作製成形品の寸法安定性が不十分になるというリスクがある。少なくとも2種の異なるワックスの組み合わせは、好ましくは、その後塗布される粉体皮膜又は湿性有機溶媒系塗料又は/及び水性塗料の層への本発明による皮膜の充分な塗料の付着が確保され得るようにこの点で選択することが可能である。
【0080】
少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンの添加により、顕著に、防食性、次の皮膜への塗料付着性、又は/及び耐化学性が向上することが分かった。被覆、加熱、乾燥又は/及び架橋の間、シラン、シラノール又は/及びシロキサンの含有物は、シラノール/シロキサン/ポリシロキサン又は/及びシリル化有機ポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーに変化する可能性がある。シラン、シラノール又は/及びシロキサンに基づく少なくとも2種又は少なくとも3種の化合物の組み合わせは、特に、性質の特定の組み合わせが確立される実施態様、又は/及び、対応する溶液/分散液の加水分解条件又は/及び安定性条件が最適化される実施態様において、重要である可能性がある。特に、少なくとも1種の二官能性又は/及び多官能性シラン、シラノール又は/及びシロキサンとの少なくとも1種の有機官能性シラン、シラノール又は/及びシロキサンの組み合わせは、この点で特に重要である可能性がある。少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンは、事前に加水分解されていない状態、部分的に加水分解された状態、ほとんど加水分解された状態、又は/及び完全に加水分解された状態で好ましくは添加される。少なくとも1種のシラン、シロキサン又は/及びシラノールは、合成樹脂及び他の成分のほとんど又は全てを既に含有する水性組成物の最後の成分の内の1つとして、又は、最後の成分として、好ましくは添加され、その結果、合成樹脂及びシラン、シラノール又は/及びシロキサンの間の反応は、あまり強くなく又は/及びただ緩やかに進行する。
【0081】
水性組成物は、好ましくは、シラン、シラノール又は/及びシロキサンに基づく少なくとも1種の物質を含有する。例えばGalvalume(登録商標)等の幾つかの金属表面については、水性組成物に少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンを添加することが好都合であることが判明した。
【0082】
好ましくは、少なくとも1種の非加水分解シラン、部分的に加水分解されたシラン又は/及び完全に加水分解されたシラン、又は/及び少なくとも1種の対応するシラノール又は/及びシロキサンが水性組成物に添加される。水性組成物は、好ましくは、少なくとも1種の部分的に加水分解されたシラン又は/及び完全に加水分解されたシラン又は/及び少なくとも1種の対応するシラノール又は/及びシロキサンを含有する。多くの実施態様において、シラン系化合物が添加される場合、それを添加する前にシランを少なくとも部分的に加水分解すること、及び水性組成物にこの事前の加水分解物を添加することが好都合であることが判明した。活性成分を含む固体に対して0.03〜50g/Lの範囲のシランとして算出される含有率の少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンは、好ましくは水性組成物に、特に好ましくは0.3〜30g/L、0.4〜15g/L、0.5〜8g/L、0.6〜4g/L又は0.7〜2g/Lの範囲で、添加される。シランとして算出される少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンの水性組成物中の含有率は、好ましくは0.1〜50g/L、特に好ましくは0.2〜35g/L、最も特に好ましくは0.3〜20g/L、特に0.5〜10g/L又は0.7〜2g/Lである。
【0083】
水性組成物中のシランとして算出される少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンの含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、(100:0.05)以下であり得る。この比は、好ましくは100:10〜100:0.1、100:8〜100:0.15又は100:6〜100:0.25の範囲、特に好ましくは100:4〜100:0.35、100:2.5〜100:0.45又は100:1.2〜100:0.55の範囲である。
【0084】
本発明による方法において、水性組成物は、少なくとも1種の部分的に加水分解された又は完全に加水分解されたシラン又は/及び少なくとも1種のシロキサンを含有することが好ましい可能性がある。次いで、これにより、基材と乾燥保護膜及び任意の後に塗布される塗料層又は/及びプラスチック塗料の間に付着性ブリッジが形成するという利点がもたらされ、その結果、塗料付着性の向上が達成される。更なる利点は、適切なシラン/シラノール/シロキサンが、実質的に皮膜複合物の強度又は/及び柔軟性及び基材への付着性を向上させる乾燥保護膜の中で付着性ブリッジ様架橋を生じることであり、その結果、多くの塗装系において付着性の向上が達成される。添加されたシランの加水分解が低いほど、その反応性はより大きくなる可能性がある。しかるに、幾つかの実施態様において、溶媒がないか、若しくは無水有機溶媒に含有されるかのいずれかである非加水分解のシラン又は事実上非加水分解のシランを使用することは、好都合である可能性がある。
【0085】
シランは、アシルオキシシラン、アルキルシラン、アルキルトリアルコキシシラン、アミノシラン、アミノアルキルシラン、アミノプロピルトリアルコキシシラン、ビス−シリルシラン、エポキシシラン、フルオロアルキルシラン、グリシドキシシラン(例えばグリシドキシアルキルトリアルコキシシラン等)、イソシアナートシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリラトシラン、モノシリルシラン、ポリシリルシラン、ビス(トリアルコキシシリルプロピル)アミン、ビス−(トリアルコキシシリル)エタン、含硫黄シラン、ビス−(トリアルコキシシリル)プロピルテトラスルファン、ウレイドシラン(例えば(ウレイドプロピルトリアルコキシ)シラン等)、ビニルシラン、特にビニルトリアルコキシシラン又は/及びビニルトリアセトキシシラン、又は/及び少なくとも1種の対応するシラノール又は/及びシロキサンであり得る。それは、例えば、特に、少なくとも1種のアルコキシシラン(例えばトリアルコキシシリルプロピルテトラスルファン又はビニルシラン等)及びビス−シリルアミノシラン又はビス−シリルポリサルファシラン及び/又はビス−シリルアミノシラン又はアミノシラン及びポリシリル官能性シランとの少なくとも1種のアミノシラン(例えばビス−アミノシラン等)の混合物における、シラン含有率に基づいて最高8質量%、好ましくは最高5質量%、特に好ましくは最高1質量%、最も特に好ましくは最高0.5質量%の含有率の少なくとも1種のアルコール(例えばエタノール、メタノール又は/及びプロパノール)と、場合により含有率の無機粒子と混合した少なくとも1種のシランであり得る。更に、水性組成物は、上記のシランに対応する少なくとも1種のシラノール又は/及びシロキサンを代替的に又は付加的に含有することもできる。炭素数2〜5の範囲の鎖長及びポリマーとの反応に適切な官能基を有するかかるシラン/シラノール/シロキサンが好ましい。少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンの添加は、付着性ブリッジを形成するのに、又は/及び、個々の合成樹脂又は/及び合成樹脂の混合物の架橋を促進するのに好都合である可能性がある。
【0086】
幾つかの実施態様においては、少なくとも1種の、少なくともほとんど又は/及び完全に加水分解された、又は/及び、少なくともほとんど又は/及び完全に縮合されたシラン/シラノール/シロキサンを水性組成物に添加することができる。多くの実施態様において、非加水分解シランは、少なくとも部分的に加水分解されたシラン/シラノールよりも不十分に金属表面に結合する。多くの実施態様において、ほとんど加水分解され及び非縮合の、又はわずかに縮合されただけのシラン/シラノール/シロキサンは、少なくとも部分的に加水分解され及びほとんど縮合されたシラン/シラノール/シロキサンよりも顕著に良好に金属表面に結合する。多くの実施態様において、完全に加水分解され及びほとんど縮合されたシラノール/シロキサンは、金属表面に化学結合する傾向がごくわずかであることを示す。
【0087】
粒子形態の少なくとも1種の無機化合物は、好ましくは0.1〜400g/Lの含有率、特に好ましくは3〜200g/L、最も特に好ましくは10〜100g/L又は20〜60g/Lの範囲で水性組成物中に含有される。
【0088】
水性組成物における粒子形態の少なくとも1種の無機化合物の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、(100:0.1)以下であり得る。この比は、好ましくは100:25〜100:0.5、100:20〜100:1又は100:15〜100:2の範囲、特に好ましくは100:12〜100:3、100:10〜100:4又は100:8〜100:5の範囲である。
【0089】
できる限り小さな変化で可視の金属表面の視覚的性質を維持するために、粒子形態の無機化合物の中で、本発明による皮膜の透明度を支持するもの、換言すれば無色、白色又は/及び非常にかすかな色のもの(例えば、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、シリケート、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウム等)が特に好ましい。この理由のため、ほとんどの場合、無色、白色又は/及び非常にかすかな色のもの等の粒子のみが、水性組成物に添加される。特に、これらの粒子は、粒子の製造業者により事前被覆することが可能であった。
【0090】
本発明による方法において、微粉又は分散液は、特にコロイド粒子又は/及び非晶粒子において粒子形態の無機化合物(例えばカーボネート、酸化物、シリケート又はサルフェート等)として添加される。アルミニウム、バリウム、セリウム、カルシウム、ランタン、ケイ素、チタン、イットリウム、亜鉛又は/及びジルコニウムの内の少なくとも1種の化合物に基づく粒子、特に、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、二酸化セリウム、二酸化ケイ素、シリケート、酸化チタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウムに基づく粒子は、特に粒子形態の無機化合物として好ましい。6nm〜200nmの範囲、特に好ましくは7〜150nmの範囲、最も特に好ましくは8〜90nmの範囲、更により好ましくは8〜60nmの範囲、全ての中で最も好ましくは10〜25nmの範囲の平均粒径を有する粒子は、粒子形態の無機化合物として好ましくは使用される。これらの粒子はまた、ゲル又はゾルの形態をとることもできる。粒子は、例えばより良好な分散を達成するためにアルカリ安定化される。粒子形態の無機化合物の分散液へのホウ素の添加は、必要なものではなかったし、実施例においても用いられなかった。より大きい粒子がプレートレット状又は長方形の粒形を有することは、好ましい。防食のために、ナノ粒子サイズのコロイドSiO2の添加は、特に適切であり、ここで粒子は表面被覆又は/及び修飾され得る。意図された塗布に応じて、親水性又は/及び疎水性を有する粒子形態の少なくとも1種の無機化合物が、好都合には水性組成物に添加される。
【0091】
本発明による水性組成物は、少なくとも1種の有機腐食防止剤、特に少なくともアミンに基づくもの、好ましくは少なくとも1種のアルカノールアミン、特に好ましくは少なくとも1種の長鎖アルカノールアミン、少なくとも1種のTPA−アミン複合体(例えば酸性付加物−4−オキソ−4−p−トリルブチラート−4−エチルモルホリニウム等)、脂肪酸を有する少なくとも1種のポリマーアンモニウム塩、トルエンプロピオン酸の少なくとも1種のアミノ複合体、少なくとも1種のコハク酸誘導体(例えば2−メルカプト−ベンゾチアゾリルコハク酸又は/及びそれらのアミノ塩類の内の少なくとも1種等)、少なくとも1種のチタン含有有機化合物又はジルコニウム含有有機化合物、少なくとも1種の導電性ポリマー又は/及び少なくとも1種のチオールを含有することができる。少なくとも1種の有機腐食防止剤は、好ましくは、室温であまり揮発性でない。それが、特に20g/L超又は1.5質量%未満で水に可溶である場合、又は/及び、水に容易に分散可能である場合、それはまた好都合であり得る。また、なかでも、ジメチルアミノエタノール等のアルキルアミノエタノール又は/及びTPAアミンに基づく複合体が特に好ましい。これらの最後に言及された腐食防止剤は、特に、より大きな防食をもたらすために、又は、更にそれを強化するために添加することが可能である。少なくとも1種の有機腐食防止剤は、特に7〜11又は8〜10の範囲のpHで、特に好ましくはアルカリ性である。アンモニウム又は例えばアンモニア等に基づくアルカリ性添加剤もまた、場合により添加され得る。少なくとも1種の有機腐食防止剤の添加は、腐食から保護することが困難な金属表面の場合、例えば未塗装の鉄鋼表面の場合、特に冷間圧延鋼(CRS)の表面の場合に特に好都合である。それは、フラッシュ発錆(乾燥中の急激な発錆)の抑制に役立つ可能性がある。
【0092】
水性組成物中(特に浴中)における少なくとも1種の有機腐食防止剤の含有率は、好ましくは0.01〜50g/L、特に好ましくは0.08〜35g/L、最も特に好ましくは0.2〜25g/L、0.3〜20g/L又は0.5〜16g/L、特に1〜12g/L、2〜10g/L、3〜8g/L又は4〜6g/Lであり得る。水性組成物中(特に浴中)における有機腐食防止剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、(100:0.08)以下であり得る。この比は、好ましくは100:10〜100:0.1、100:5〜100:0.2又は100:2.5〜100:0.3の範囲、特に好ましくは100:2〜100:0.4、100:1.6〜100:0.6又は100:1.2〜100:0.8の範囲である。
【0093】
水性組成物中における少なくとも1種の腐食防止剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、(100:0.05)以下であり得る。この比は、好ましくは100:20〜100:0.1、100:15〜100:0.3又は100:10〜100:0.5の範囲、特に好ましくは100:8〜100:0.6、100:6〜100:0.8又は100:4〜100:1の範囲である。
【0094】
本発明による方法においては、少なくとも1種の有機溶媒を添加することもできる。少なくとも1種の水混和性アルコール又は/及び水溶性アルコール、エステルアルコール、グリコールエーテル又は/及びN−メチルピロリドンは、例えば有機ポリマー用有機溶媒として使用され得る。しかしながら、多くの場合、有機溶媒のない水のみが好ましくは添加される。有機溶媒の含有率は、好ましくは0.01〜100g/L、特に0.1〜20g/L又は0.2〜5g/Lである。帯板製造のために、水のみを使用し、おそらく少量のアルコールを除いて有機溶媒を使用しないことは好ましい。水性組成物中(特に浴中)における有機溶媒の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化する可能性があり;特にそれは、(100:0.001)以下であり得る。この比は、好ましくは100:125〜100:0.05、100:80〜100:0.2又は100:60〜100:0.5の範囲、特に好ましくは100:40〜100:1、100:20〜100:1.5又は100:10〜100:2の範囲である。
【0095】
水性組成物は、好ましくは無機酸又は/及び有機酸を含まない。本発明による水性組成物は、好ましくは、遊離フッ化物、複合フッ化物(例えばチタンフッ化水素酸又はフッ化ジルコン水素酸等)又は/及びいずれの他の方法でも結合したフッ化物の添加物を含まない。
【0096】
水性組成物は、好ましくはほとんど又は全くクロム(VI)化合物を含まず、特に好ましくはほとんど又は全くクロム(III)及びクロム(VI)化合物を含まない。個別の実施態様において、好ましくはほとんどクロム(VI)化合物を含まない水性組成物は、クロム不含金属表面上で最高で0.5g/Lのみ、及びクロム含有金属表面上で最高2g/Lのクロム含有率を示す。一方で、特定の稀な実施態様において、本発明によるポリマー皮膜の下でクロム酸塩含有塗膜を形成することは、望ましい可能性がある。クロム(III)化合物の含有率が望まれる場合、水性組成物中のクロム(III)化合物の含有率は、好ましくは、Cr3+として算出される0.01〜100g/L、特に好ましくは1〜60g/L又は5〜30g/Lである。水性組成物中(特に浴中)におけるクロム(III)化合物の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、Cr3+として算出される(100:0.005)以下であり得る。この比は、好ましくは100:120〜100:0.1、100:100〜100:0.5又は100:80〜100:1の範囲、特に好ましくは100:60〜100:4、100:40〜100:8又は100:25〜100:12の範囲である。
【0097】
ほとんどの実施態様において、クロムは、意図的に水性組成物に添加されないことが好ましい。浴中で生じるクロム含量は、次いで酸洗い侵食によって金属表面から溶解し、微量の不純物の含量から導かれ、又は/及び上流側浴槽から又は/及び容器及び管から混入する可能性がある。カドミウム、ニッケル、コバルト又は/及び銅の含有率も、好ましくは極めて低く維持され、且つ、添加されない。しかしながら、一般に、本発明による組成物に対する化学的侵食は、例えばクロム又はニッケル等の鋼精製エレメントが鋼表面から溶解され得ないほど低い。本発明による水性組成物は、場合によりクロム酸塩、特にCr3+に基づくCrを除き、好ましくは周期表の第1族、第2及び第5〜第8のサブグループからの金属の添加物を含まない。
【0098】
特に本発明による好都合な水性組成物は、なかでも、1.)ポリカーボネート−ポリウレタンに基づく少なくとも1種の合成樹脂、及び場合により少なくとも1種の更なる合成樹脂又は/及び少なくとも1種の更なる合成樹脂成分(例えば、塗膜形成剤としてのポリエステル等)、2.)少なくとも1種の塗膜形成補助剤、3.)少なくとも1種の架橋剤、4.)少なくとも1種の潤滑剤、及び5.)a)少なくとも1種のシラン/シラノール/シロキサン又は/及びb)特に酸化アルミニウム、シリケート、二酸化ケイ素、コロイド状二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛又は/及び酸化ジルコニウムに基づく粒子形態の少なくとも1種の無機化合物、及び場合により6.)少なくとも1種の有機腐食防止剤、及び場合により7.)少なくとも1種の更なる添加剤を含有する。水性組成物は、好ましくは、実質的に成分1.)〜7.)からなる。
【0099】
均一の吸着率及び膜厚で、且つ、更に不浸透性で、欠陥なしで未乾燥塗膜を塗布することができるために、少なくとも1種の湿潤剤を添加することも好都合である。水性組成物の表面張力を低下させる多くの湿潤剤、好ましくはアクリレート類、シラン類、ポリシロキサン類又は/及びアルコール類は、概ねこの目的のために適切である。多くの場合、消泡剤の添加が必要となる。この点で添加され得る有用な添加剤は、塗料のために多くの場合使用される塗料添加剤を含んでおり、当業者に概ね知られている。
【0100】
水性組成物は、殺生物剤、消泡剤、湿潤剤、pH調整剤又は/及び少なくとも1種の更なる添加剤(例えば、塗料又は塗料様組成物に典型的なもの等)の内の少なくとも1種の各々を場合により含有することができる。少なくとも1種の添加剤(例えば良好な濡れ性及び塗布された処理塗膜の流れに寄与する少なくとも1種のポリシロキサン等)又は/及び少なくとも1種の消泡剤(例えば塗布中に水性組成物の機械的荷重の下での発泡を低減させるための少なくとも1種の鉱油消泡剤等)の添加は、特に好都合である。更に、少なくとも1種の塗料添加剤(例えば多くの場合塗料又は下塗剤に添加されるもの等)もまた添加され得る。水性組成物中におけるかかる添加剤の含有率は、好ましくは0.05〜50g/Lの範囲、特に好ましくは0.2〜40g/L、0.5〜30g/L、1〜20g/L又は2〜10g/Lの範囲である。水性組成物中(特に浴中)における添加剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、(100:0.001)以下であり得る。この比は、好ましくは100:25〜100:0.05、100:20〜100:0.2又は100:15〜100:0.4の範囲、特に好ましくは100:10〜100:0.6、100:8〜100:0.8又は100:5〜100:1の範囲である。
【0101】
主に水で希釈することにより浴組成物を製造するための濃縮物について、又は/及び、浴の相対的に長い操作の経過で浴組成物を調整するための補給溶液について、使用は、好ましくは浴槽組成物の成分のほとんど、ほとんど全て又は全てを含有する水性組成物により構成される。また、反応促進剤及び乾燥促進剤(例えばパラ―トルエンスルホン酸のモルホリン塩等)の別個の添加は、特にメラミン樹脂架橋剤を含有する水性組成物の場合の硬化の目的で好都合であり得る。濃縮物又は/及び補給溶液は、好ましくは浴組成物よりも個々の成分に関して3〜10倍濃縮した濃度を有することができる。しかしながら、幾つかの場合、それは、場合により特に例えば5〜30%で水により希釈した後、それ以外では特に30〜1000%で水により希釈した後、浴組成物として直接「濃縮物」と働くことも可能である。
【0102】
浴中の浴濃度に対する希釈のための濃縮物の場合、以下で列挙された成分/化合物の含有率は、好ましくは所定の範囲内にある。
【0103】
有機塗膜形成剤:100〜700g/L、15〜600g/L、200〜500g/L。
【0104】
塗膜形成補助剤:0.5〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0105】
無機架橋剤、有機架橋剤又は/及び光重合開始剤:それぞれ、0.5〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0106】
潤滑剤:0.5〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0107】
シランとして算出されるシラン/シラノール/シロキサン:0.5〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0108】
対応する微粉度の粒子形態の無機化合物:0.5〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0109】
有機腐食防止剤:0.1〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0110】
クロム(III)化合物:0、0.5〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0111】
有機溶媒:0.1〜100g/L、1〜80g/L、1.5〜60g/L。
【0112】
添加剤:0.1〜100g/L、0.5〜80g/L、1〜60g/L。
【0113】
水性組成物について事前に得られた濃度及び相対質量含有率もまた、本発明による濃縮物と、本発明による補給組成物とに当てはまる。
【0114】
しかしながら、濃縮物が、特に水で希釈することにより、及び場合により少なくとも1種の更なる物質を添加することにより対応する浴組成物を作製するために使用される場合、シラン/シラノール/シロキサンの含有率を有する濃縮物Aを、全て又はほとんど全ての他の成分の含有率を有する濃縮物Bとは別に維持すること、及び浴中においてのみこれらの成分をまとめることが推奨される。この点で、少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンは、場合により部分的に又は完全に固体状態で存在することも可能であり、固体状態において添加することも可能であり、又は/及び分散液又は溶液として添加することも可能である。対応するシラノールに基づいて算出される濃縮物Aにおけるシラン/シラノール/シロキサンの含有率は、好ましくは0.01〜1000g/Lの範囲である。それは、特に好ましくは0.02〜200g/Lの範囲、最も特に好ましくは0.05〜120g/Lの範囲、特に0.1〜60g/Lの範囲である。しかしながら、濃縮物A又は/及び浴槽の濃度範囲はまた、塗布に応じて種々の含有率にとって有利になる可能性がある。
【0115】
本発明による方法によって、水性組成物は、ローラー塗り、流し塗り、ブレード塗り、スパッタリング、吹付け塗り、刷毛塗り又は浸し塗り、更に、水性組成物の高温での浸漬、場合により例えばローラーによる次のスクィージングにより塗布され得る。
【0116】
水性組成物は、6.5〜11の範囲、好ましくは7〜10.5、7.5〜10又は8〜9.5の範囲のpHを有することができる。水性組成物の製造中に6.5〜11の範囲外の値にpHが移動する場合、適切な添加によって6.5〜11のpH範囲又は更にこの範囲内のより一層狭い測定範囲に戻すことが推奨される。
【0117】
水性組成物は、特に5〜50℃の範囲、好ましくは10〜40℃の範囲、特に好ましくは18〜25℃の範囲又は/及び更にめったにないが50〜95℃の範囲の温度で金属表面に塗布することが可能である。
【0118】
幾つかの実施態様において、かかる塗膜の場合の最終乾燥は多くの日数の間続く可能性があるが、実質的な乾燥はちょうど数秒で完了し得る。幾つかの状況において、硬化は、最終的乾燥の状態まで数週間持続する可能性があり、及び硬化は、塗膜形成又は/及び架橋が生じるように成し遂げられる。状況によっては、硬化状態は、照射、例えばUV放射によって架橋を促進することによって、又は/及び加熱によって、又は/及び更に例えば遊離NCO基を含有する化合物の添加及びカルボキシル基を含有するポリマーのヒドロキシル基とのその反応によって、更に促進又は/及び強化され得る。
【0119】
金属表面上の水性組成物の液膜の乾燥のための乾燥温度は、好ましくは10〜400℃のPMT(ピーク金属温度)の範囲、特に好ましくは20〜200℃、60〜150℃又は70〜120℃の範囲である。乾燥時間は、好ましくは0.5秒間〜120分間、特に好ましくは0.1秒間〜30分間、0.3秒間〜60秒間又は0.5秒間〜20秒間である。
【0120】
被覆金属表面は、有機塗膜形成剤の化学組成に応じて、20〜400℃の範囲の温度、好ましくは40〜120℃の範囲、又は140〜350℃の範囲、最も特に好ましくは60〜100℃又は160〜300℃のPMT(ピーク金属温度)で乾燥することも可能である。乾燥のための必要滞留時間は、乾燥温度に実質的に反比例する。例えば、帯板形態の材料については、合成樹脂の化学組成に応じて、1〜20秒間で100℃、又は1〜3秒間で250℃、又は20℃で30分間であるが、メラミンホルムアルデヒド樹脂と組み合わせた遊離カルボキシル基を有するポリエステル樹脂は、120℃未満の温度で典型的には乾燥することができない。一方では、被覆成形品は、なかでも肉厚に応じて、著しく、より長く乾燥されなければならない。乾燥のための適切な乾燥装置は、循環空気、誘導、赤外線、近赤外線又は/及びマイクロ波に基づくものである。
【0121】
特に透明で且つ色のない0.01〜10μmの範囲の乾燥膜厚を有する皮膜を作製するために、特に本発明による組成物又は/及び本発明による方法を使用することが好ましい。概ね、例えば染料で、有色顔料又は/及び吸光顔料で、又は/及び有色粒子又は/及び吸光粒子で、皮膜を色づけることが可能である。本発明による皮膜の膜厚は、好ましくは0.1〜6μmの範囲、特に好ましくは0.2〜5μmの範囲、最も特に好ましくは0.4〜4μmの範囲、特に0.7〜2μmの範囲である。
【0122】
乾燥された及び場合により更に硬化された塗膜は、DIN EN ISO 1522に準じたケーニッヒ振り子硬度試験器によって測定されるケーニッヒ振り子硬度が30〜220s、好ましくは60〜210s、90〜200s又は120〜190sであることが好ましい。本発明によって作製された皮膜は、厚さが10μmまでの薄い皮膜ではなく、化学的に同一であるが適切に濃厚な皮膜を有する試料でテストされるのみでなければならない。
【0123】
乾燥された及び場合により更に硬化された塗膜は、直径3.2mm〜38mmのマンドレルについてDIN ISO 6860に準じたマンドレル曲げ試験における円錐マンドレルにより非常に大きく曲げられた場合(しかし試験表面の表面亀裂を起こさずに)、硫酸銅による次の浸潤中に、亀裂した金属表面上の銅の付着のため色の変化によって可視になる2mmより長い亀裂は形成されないように、柔軟性を備えることが好ましい。マンドレル曲げ試験を用いた、傷を検出するために硫酸銅溶液においてこの方法で成形される領域の次の浸漬による柔軟性の証明は、再現可能な試験成績を確実し、幾つかの場合において、化学組成及び金属表面の粗度に応じて、故に互いに限定された程度に比較され得る様々な結果につながる可能性のある時間のかかる腐食試験(例えば240時間継続する)をそれが必要としないという効果がある。この試験について、アルミニウム合金等のより卑な金属表面の場合、酸化物層の内の可能な限り多くを除去するために、被覆前の酸洗いによって最初に金属表面を洗浄することが必要である。
【0124】
例えばコイル被覆塗料で被覆されたシート等の成形品上でのT−曲げ試験における分離した表面の領域の割合は、通常小亀裂だけが更に起こるように、好ましくは最高8%、特に好ましくは最高5%、最も特に好ましくは最高2%、しかしながら最良の値は約0%である。この目的のために、シリコーンポリエステルに基づくコイル被覆塗料は、特に被覆コイルについて典型的な解析における比較試験のために好ましくは使用され得る。しかしながら、亀裂がないこと又は/及び亀裂のサイズは、用いられる塗料の性質に実質的に依存している。
【0125】
帯板の被覆において、被覆帯板は、場合により40〜70℃の範囲の温度に冷却した後、コイルに巻かれ得る。
【0126】
塗料、ポリマー、ラッカー、機能性プラスチック皮膜、接着剤又は/及び接着性担体からなる少なくとも1種の(更なる)皮膜(例えば粘着フィルム等)は、部分的に又は完全に乾燥された、又は乾燥及び硬化された塗膜、特に湿性塗料、粉体塗膜、プラスチック塗料、なかでも塗膜被覆のための接着剤に塗布され得る。
【0127】
更に、本発明による方法は、例えば水又は/及び水性の、例えばアルカリ性の水洗溶液による水洗等の次の後処理なしで、従来の方式で洗浄される金属表面の処理のために使用することが可能である。
【0128】
水性組成物を用いて本発明によって被覆される金属部品、特に帯板又は帯板部は、成形され、塗装され、ポリマー(例えばPVC)により被覆され、プリントされ、接着され、熱はんだ付けされ、溶接され又は/及び曲げ固定又は他の結合方法により相互に結合され得る。設計的な塗布のための金属帯板の被覆のためのこれらの方法は、概ね知られている。金属は、一般に最初に塗装されるか、さもなければ被覆され、次いで成形される。本発明による皮膜が塗装される又はプラスチックで被覆される場合、はんだ付けされた又は/及び溶接された継手は、少なくとも局所的に皮膜を除去することなく作製することはできない。
【0129】
水性組成物が本発明によって被覆された金属表面を有する部品は、ワイヤー、鋼帯、金属板、クラッディング、スクリーニング、車体又は車体部品、車、トレーラ、キャラバン又は飛行体の部品、カバー、ハウジング、ランプ、ライト、交通信号エレメント、家具の要素又は家具エレメント、家庭電化製品のエレメント、フレーム、異形材、複雑な形状を有する成形品、クラッシュバリヤエレメント、ラジエータエレメント又は柵エレメント、バンパー、少なくとも1種の管又は/及び異形材からなる、又は、を有する部品、窓、ドア又は自転車フレーム、ワイヤー巻き線、ワイヤーメッシュ又は小型部品であり得る。
【0130】
目的は、少なくとも1つの金属表面を有する被覆基材によって更に達成され、前記基材は、本発明による方法に従って本発明による皮膜が作製される少なくとも1つの金属表面を有する。
【0131】
目的は、更なる被覆前に金属表面を前処理するための、又は、金属表面を処理するための水性組成物により最終的に達成され、それは、前記組成物が、水の他に、
a)主成分として、少なくとも1種の合成樹脂、即ち、ポリカーボネート及びポリウレタンの含有率がそれぞれ少なくとも10質量%であるポリカーボネート、ポリウレタン、アイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンからなる群から選択される合成樹脂に基づくポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の少なくとも1種の水溶性合成樹脂又は/及び水分散性合成樹脂を含む有機塗膜形成剤において70〜100質量%の含有率の合成樹脂からなる有機塗膜形成剤、
b)有機塗膜形成剤のための塗膜形成補助剤としての少なくとも1種の長鎖アルコール、
c)少なくとも1種の架橋剤、
d)少なくとも1種の潤滑剤、及び
e)A)シラン、シラノール又は/及びシロキサンに基づく少なくとも1種の物質又は/及びB)走査型電子顕微鏡で測定される平均粒径が0.005〜0.3μmの範囲である粒子形態の少なくとも1種の無機化合物、及び
f)場合により少なくとも1種の有機腐食防止剤、少なくとも1種の有機溶媒又は/及び少なくとも1種の添加剤、を含有することを特徴とする。
【0132】
本発明による方法は、特に塗装前の金属帯板の表面前処理の領域において、列挙されたクロム酸塩リッチ又は/及び酸含有方法の代替を示すものである。それとの比較において、それは、防食及び塗料付着に関して同様に良好な結果をもたらす。本発明による皮膜は、クロム(VI)化合物を、ほとんど又は完全に含まない。しかしながら、多くの実施態様において、それらはまた、クロム(III)化合物をほとんど又は完全に含まないが、それによって、質のいかなる実質的な低下を受けることがなく、又は、質の低下を全く受けることがない。
【0133】
しかしながら、稀な実施態様において、本発明による方法はまた、防食が広い程度に且つ高レベルの信頼性で維持される場合、特に保護皮膜に対する損傷がある場合であって、その損傷が、本発明による液体皮膜を有する基材表面上で処理される基材の輸送、保存及び組立の間の機械的荷重に起因する可能性がある場合、Cr3+に基づく含有率の少なくとも1種のクロム酸塩含有化合物により有利には用いることが可能である。
【0134】
更に、本発明による方法は、例えば水又は水性水洗溶液による水洗等の次の後処理なしで、従来方式で洗浄される金属表面の処理のために用いることが可能である。
【0135】
本発明による方法は、スキーズローラ又は/及びロールコータによる水性組成物の塗布に特に適しており、ここで水性組成物は、更なる中間体方法ステップ(ドライインプレイス技術)なしの塗布の直後に乾燥することが可能である。これによって、従来の吹付け塗り方法又は/及び浸漬方法、例えば、特に次の水洗ステップを有するもの(例えばクロメート処理又は亜鉛リン酸塩処理等)と比較して方法はかなり単純化され、また、水洗方法が塗布後に必要ではないので、極めて小さな量の、プラントの洗浄目的の水洗水のみが、操作終了時に蓄積し;これはまた、水洗溶液による吹き付け方法を用いた確立されたクロム不含方法を越える利点を示す。この水洗水は、浴組成物の新しいバッチに再利用することが可能である。
【0136】
本発明により被覆される金属表面は、好ましくは清浄な金属表面である。この文脈において、「清浄な金属表面」という用語は、洗浄が必要ない非洗浄金属表面(例えば亜鉛メッキされたばかりの表面)又は洗浄されたばかりの表面を意味する。
【0137】
金属表面として、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム、ニッケル、チタン、スズ、亜鉛からなる、又は/及び、アルミニウム又は/及び鉄、銅、マグネシウム、ニッケル、チタン、スズ又は/及び亜鉛を含有する合金からなるものが、本発明による水性組成物で好ましくは塗装される。電気亜鉛メッキ表面、合金電気亜鉛メッキ表面、溶融亜鉛メッキ表面又は/及び合金溶融亜鉛メッキ表面の本発明の皮膜は、特に好ましい。金属皮膜又はAl含有皮膜及びZn含有皮膜としてのAlSi合金、ZnAl合金(例えば、Galfan(登録商標))、AlZn合金(例えばGalvalume(登録商標))、ZnFe合金、ZnNi合金(例えばGalvanneal(登録商標))、ZnTi合金及び他のZn合金の本発明の皮膜は、特に好ましい。
【0138】
金属皮膜又はAl含有皮膜又はZn含有皮膜として、特にAlSi合金に、ZnAl合金(例えばGalfan(登録商標))、AlZn合金(例えばGalvalume(登録商標))、ZnFe合金、ZnNi合金(例えばGalvanneal(登録商標))、ZnTi合金及び他のZn合金における金属表面の優れた耐久保護が可能である通りの、更なる前処理皮膜の事前の塗布なしのポリマーの、場合によりクロム酸塩不含の本発明による皮膜を使用することは、この点に関しては完全に可能であり、その保護は、ポリマー皮膜の塗布によって達成され得る。本発明による皮膜は、その上、鉄及び鋼の合金からなるもの等、よりひどく腐食を起こしやすい金属表面の場合、特に冷間圧延鋼の場合、それ自体を立証したが、水性組成物に少なくとも1種の腐食防止剤を添加することは更に好都合である。冷間圧延鋼(CRS)上の処理液体の乾燥中のフラッシュ発錆は、この方法で抑制され得る。
【0139】
より費用効果がよく、より環境にやさしい防食は、更に費用のかかるラジカル架橋を必要とせず、その代わりに、乾燥及び成膜によって、又は/及び、「熱的架橋」として多くの場合知られている「従来の化学的」硬化によって、簡単に適切に硬化することが可能であり、しかるに達成することが可能である。
【0140】
しかしながら、幾つかの場合、急速に特定の方法ステップで相当に固い皮膜を得ることは有益であり得る。そのような場合、少なくとも1種の光重合開始剤を添加すること、及び化学線、特にUV放射に基づく部分的架橋を達成するために少なくとも1種のラジカル架橋ポリマー成分、特にUV架橋ポリマー成分を選択することは、好都合であり得る。そのような場合、合成樹脂の内の少なくとも1種が成膜又は/及び化学的架橋又は/及び化学的/熱的架橋及びラジカル架橋の両方によって架橋することが可能ならば、少なくとも1種の特別なラジカル架橋合成樹脂を更に添加することは、必ずしも必要ではない。本発明による皮膜は、部分的に化学線(例えば電子ビーム又は/及びUV放射等)によって、及び部分的に乾燥及び成膜又は/及び熱的架橋によって、更に硬化することが可能である。架橋剤及び光重合開始剤は、一般的に知られている。そのような場合、a)化学的架橋の後に化学的/熱的架橋が起こる可能性があり、b)化学的架橋の後にラジカル架橋が起こる可能性があり、c)化学的/熱的架橋の後にラジカル架橋が起こる可能性があり、d)化学的架橋の後に化学的/熱的架橋が起こる可能性があり、最終的にラジカル架橋が起こる可能性がある。逆に、相対的に低い温度でも可能な乾燥後又はほぼ完全な乾燥後、e)例えば少なくとも電子ビーム又は/及びUV放射によって開始され、その後化学的架橋又は/及び化学的/熱的架橋が起こるラジカル架橋が可能である。後者は、例えばラインにおける加熱のため又は/及び更なる加熱により、照射方法中に開始され得る。特に高架橋度は、少なくとも二重架橋により可能である。一方で、例えば、成形前に第1の架橋を行い、この成形後に第2の架橋を行うことは、しかるに可能である。この方法で、ポリマー皮膜の弾性、成形性、延性及び硬度は、特定の処理ステップに従って、要求及び場合により調整することが可能である。しかしながら、乾燥及び成膜は、好ましくはラジカル硬化の前に行う。これは、特に高速のベルトライン上又は/及び第1の架橋(=硬化)のための塗布の場合に重要である可能性がある。ラジカル架橋の比率は、全体の可能な硬化の0〜50%(好ましくは5〜35%)を構成することができる。
【0141】
水性組成物中(特に浴中)における少なくとも1種の架橋剤又は/及び少なくとも1種の光重合開始剤の含有率は、好ましくは0.01〜50g/L、特に好ましくは0.08〜35g/L、最も特に好ましくは0.2〜25g/L、0.3〜20g/L又は0.5〜16g/L、特に1〜12g/L、2〜10g/L、3〜8g/L又は4〜6g/Lであり得る。水性組成物中−特に浴中−における架橋剤又は/及び光重合開始剤の含有率に対する有機塗膜形成剤の含有率の質量比は、広く変化することが可能であり;特にそれは、300:1以下であり得る。この比は、好ましくは10:1〜250:1、20:1〜200:1又は40:1〜160:1の範囲、特に好ましくは50:1〜130:1、60:1〜110:1又は70:1〜100:1の範囲である。
【0142】
ポリマーの及びほとんど又は完全にクロム酸塩を含まない皮膜は(特に膜厚が0.1〜5μm、0.3〜3μm又は0.8〜2.2μmの範囲の場合)、例えば亜鉛メッキ表面又はGalvalume(登録商標)表面の金属性及び典型的構造が、例えば、皮膜により更に識別され得、正確に不変であるか若しくは事実上不変であるように、それは透明及び淡色である点で、更に好都合である。かかる薄い皮膜はまた、造作なく溶接され得る。
【0143】
更に、本発明によるポリマー皮膜は、被覆、乾燥、及び場合により更なる硬化の後、及び場合により長期的にも、それが、硬く、脆性があるというよりはむしろ相対的にプラスチック状態のままであるような方法でそれが調整され得ることから、非常に延性がある。
【0144】
ほとんどの実施態様において、本発明によるポリマー皮膜は、下塗剤、塗料又は類似の有機組成物(塗装性)により容易に上塗りされ得る。本発明によるポリマー皮膜は、例えばPVC等のプラスチックで再塗装又は被覆され得る。本発明によるポリマー皮膜のこの被覆は、例えば粉体塗膜、湿性塗装、流し塗り、ローラー塗り、刷毛塗り又は浸漬等の塗布方法によって実施され得る。この方法で作製される硬化皮膜は、本発明によるポリマー皮膜に塗布されるが、2種、3種又は4種の塗料又はプラスチック皮膜が多くの場合塗布され得、通常5〜1500μmの範囲の全皮膜の厚さを示す。
【0145】
また、本発明によるポリマー皮膜は、(例えば、特に二重壁サンドイッチエレメントの作製のために)ポリウレタンを断熱発泡により造作なく裏貼り発泡され得、又は例えば特に車構造において使用されるもの等の従来の工学的接着剤によって容易に接着され得る。
【0146】
本発明による皮膜は、とりわけ下塗皮膜として使用され得る。それらは、少なくとも1種の事前に塗布された前処理皮膜の有無に関わらず、この目的に非常に適切である。この前処理皮膜は、更に、なかでも、リン酸塩、特にZnMnNiリン酸塩に基づく皮膜、或いはホスホン酸塩、シラン又は/及びフッ化物錯体、腐食防止剤、リン酸塩、ポリマー又は/及び微粒子に基づく混合物に基づく皮膜であり得る。しかしながら、それらはまた、次の被覆前の前処理皮膜として、又は次の被覆なしのパッシベーション皮膜として、極めて効果的に使用され得る。
【0147】
前処理皮膜又は下塗皮膜は、その後塗布される塗料と共に、非常に良好なクロム含有塗装系と同等な塗装系を形成する本発明による皮膜によって得られる。
【0148】
本発明による皮膜は、安価で、環境にやさしく、容易に工業規模で生産することが可能であり、及び容易に産業界において使用することが可能である。
【0149】
意外にも、特に脂肪族ポリカーボネートポリウレタンに基づくポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーに実質的に基づく場合により例えばコポリマーの形態の、実質的な含有率のポリカーボネート及びポリウレタンを有し、及びある含有率の場合により少なくとも1種の他の合成樹脂又は/及び合成樹脂成分を有する有機塗膜形成剤は、特に非常に適切である。
【0150】
本発明による合成樹脂塗料によって、約0.5〜2.5μmだけの膜厚にもかかわらず、基体表面を変色させず、例外的に良好な防食を提供する例外的に高品質のクロム酸塩不含塗膜を作製することが可能であったことは、非常に驚くべきことだった。少なくとも1種のシラン/シラノール/シロキサンの添加と共に行った少なくとも1種の架橋剤の添加によって、耐食性の著しい改善がもたらされたことも、驚くべきことだった。驚いたことに、その上、少なくとも1種の有機腐食防止剤の添加によって、また、防食性が顕著に向上した。最終的に、おそらく皮膜内に残存する孔隙が高温での乾燥中に結果として閉鎖されたため、例えば100〜160℃の範囲の融点Tmを有する少なくとも1種の高融点の潤滑剤と共に例えば40〜90℃の範囲の融点Tmを有する少なくとも1種の低融点の潤滑剤の添加によって、本発明に従って作製された皮膜の耐化学性の相当な改善が得られたことは、驚くべきことだった。被覆方法の間の皮膜の温度経過は、低融点潤滑剤が融解するが高融点潤滑剤は融解しないように好ましくは選択される。この方法で、細孔及び他の空洞は、低融点潤滑剤によって充填され得る。
【0151】
多くの実施態様において、約1〜1.5μmの間の範囲の乾燥膜厚において、実質的な含有率のポリカーボネート及びポリウレタンを有する有機塗膜形成剤を有するクロム不含水性組成物により、クロム含有組成物と比較してかかる優れた防食性が得られたことは、驚くべきことだった。150℃未満では、本発明によるポリマー皮膜は軟化しなかったが、それは換言すれば、約150℃までの例外的に低い熱可塑性、及び最高約180℃の長期の温度曝露における高い耐黄変性が認められた。
【0152】
多くの実施態様において、ある含有率のシラン/シラノール/シロキサンと共に実質的な含有率のポリカーボネート及びポリウレタンを有する有機塗膜形成剤を有し、及び特に無機架橋剤を有する水性組成物は、塩水噴霧試験でテストした場合、例えばGalvalume(登録商標)等のAl含有皮膜において、耐暗変性が予期しない、例外的に高いものになったことは、驚くべきことであった。
【0153】
本発明によるポリマー皮膜によって、わずか約0.8〜1.6μmの膜厚にもかかわらず、基材表面を変色させず、例外的に良好な防食性をもたらす例外的に高品質のクロム酸塩不含塗膜を作製することができたことは、驚くべきことだった。その上、微粒子状無機粒子の添加によっても耐食性が更に著しく向上したことは、驚くべきだった。
【0154】
幾つかのクロム酸塩不含組成物において、本発明による水性組成物は、乾燥膜厚が約1〜1.5μmの間の範囲であるGalvalume(登録商標)表面に直接塗布される際、Galvalume(登録商標)で非常に発生しやすい、黒く着色する早期の徴候も生じないほど高い防食性を示したことは、更に驚くべきことだった。
【0155】
本発明による方法は、アルミニウムリッチ表面上又はアルミニウム含有合金が被覆された表面上(特に鋼基材上)で、それは、基材表面の暗色化も、基材表面上いかなる乳白色の被りも引き起こさず、故に、更なる色付与塗装なしで建物の装飾的デザイン又は/及びビルディングエレメントに用いることができるという、既に述べた又は/及び行われた方法を越える利点を提供するものである。金属表面の美的性質は、見た目には事実上変化がないままである。
【0156】
実施例及び比較例:
以下に記載する実施例及び比較例は、更に詳細に本発明の内容を例示することを意図したものである。所定の濃度及び組成物は、研究機関において使用される通りの浴組成物自体に関するものであって、場合により使用されるより高く濃縮されたバッチ溶液に関するものではない。市販の帯板加工ライン上で、対応する水性組成物の濃度は、塗布及びラインに応じて、従来、大部分が研究機関の2〜4倍高い。全ての所定の濃度は、活性成分を含む固体含有率であると理解されるべきであり、換言すれば、濃度は、使用する原料が例えば水性溶液又は/及び分散液として希釈された形態にあったかどうかに関係なく、活性成分の比率に関する。例えば、添加剤の総量を増加させるか、又は例えば消泡剤又は/及び流れ調整剤(例えばポリシロキサン等)の量を増加させるかのいずれかのために、以下に記載される組成物の他に、他の添加剤を添加すること又は/及び従って量を調整することは、商業活動において必要又は所望であり得る。
【0157】
合成樹脂Aは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約100sの、ポリアクリレート及びポリスチレンに基づく熱可塑性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Bは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約140sの、ポリアクリレート及びポリスチレンに基づく熱可塑性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Cは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約120sの、ポリアクリレート及びポリスチレンに基づく熱可塑性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Dは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約30sの、アクリル酸n−ブチル及びポリスチレンに基づく熱可塑性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Eは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約200sの、脂肪族ポリウレタン及びポリカーボネートに基づく熱硬化性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Fは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約175sの、脂肪族ポリウレタン及びポリカーボネートに基づく熱硬化性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Gは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約100sの、脂肪族ポリエステルウレタン及びポリアクリレートに基づく熱硬化性/熱可塑性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Hは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約105sの、脂肪族ポリカーボネート−ポリウレタン及びポリアクリレートに基づく熱硬化性/熱可塑性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Kは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約40sのポリエチレン及びポリアクリレートに基づく熱可塑性の陰イオン的に安定したコポリマーである。合成樹脂Lは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約80sのポリエーテルに基づく熱硬化性の陰イオン的に安定したポリマーである。合成樹脂Mは、DIN EN ISO 1522によるケーニッヒ振り子硬度が約70sの、メタアクリル酸に基づく熱可塑性の陰イオン的に安定したポリマーである。
【0158】
コロイド状二酸化ケイ素は、実質的に5〜50nmの範囲の粒径及び実質的に10〜20nmの範囲の平均粒径を示す。
【0159】
ワックス1は、融点が約130℃の、陽イオン的に安定した酸化ポリエチレンワックス(HDPE)である。ワックス2は、融点が56〜80℃の範囲の、陰イオン的に安定したパラフィンワックスである。ワックス3は、融点が約95℃の、陰イオン的に安定したパラフィンワックスである。それらを、潤滑剤及び起泡剤として使用した。
【0160】
消泡剤は、炭化水素、疎水性シリカ、シュウ酸化合物及び非イオノゲン乳化剤の混合物である。ポリシロキサンは、ポリエーテル修飾ジメチルポリシロキサンであり、それを、塗布中の未乾燥塗膜のための湿潤剤及び流れ調整剤として使用した。
【0161】
塗膜形成補助剤は、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルであり、それを長鎖アルコールとして成膜のために使用した。
【0162】
シラン1は、非安定のエポキシ官能性アルコキシシランであり、それを、非加水分解状態で添加した。シラン2は、安定したエポキシ官能性アルコキシシランであり、それを、非加水分解状態で添加した。シラン3は、非安定のエポキシ官能性アルコキシシランであり、それを、非加水分解状態で添加した。それらの架橋は、約45℃で開始し、好ましくは60〜150℃の範囲で進行する。シランは、腐食を抑制する架橋に寄与する。
【0163】
有機架橋剤1は、ポリカルボジイミンに基づく架橋剤である。その架橋は、約80℃で開始し、好ましくは100〜130℃の範囲で進行する。有機架橋剤2は、三官能性ポリアジリジンに基づく架橋剤である。その架橋は、約50℃で開始し、好ましくは60〜120℃の範囲で進行する。有機架橋剤3は、トリアジンに基づく架橋剤である。その架橋は、約100℃で開始し、好ましくは120〜200℃の範囲で進行する。有機架橋剤4は、アルコキシアルキルメラミンに基づく架橋剤である。その架橋は、約130℃で開始し、好ましくは150〜200℃の範囲で進行する。無機架橋剤5は、炭酸ジルコニウムに基づく架橋剤である。その架橋は、約40℃で開始し、好ましくは60〜150℃の範囲で進行する。無機架橋剤6は、同様に炭酸ジルコニウムに基づく架橋剤である。その架橋は、約40℃で開始し、好ましくは60〜150℃の範囲で進行する。
【0164】
有機腐食防止剤は、チタン含有化合物である。
【0165】
A)Galvalume(登録商標)鋼板の被覆:
本発明による実施例B1〜B31及び比較例VB1〜VB12:
例えば55%AlZn(Galvalume(登録商標))を有する、商業的な、冷間圧延され、その後合金亜鉛メッキされた鋼帯から得られ、保護のために保存中に注油された鋼板を、まずアルカリスプレークリーナにおいて脱脂し、水で水洗し、高温で乾燥した。成分を共に混合し、次いでアンモニア溶液を用いて水性分散液のpHを8.2に調整した。浴組成物は、第1表に記載の水性組成物からなった。次いで、約10mL/m2の未乾燥塗膜厚が達成されるような方法でロールコータを使用して定義量の水性組成物を塗布した。次いで未乾燥塗膜を約70℃、約100℃又は約150℃PMTの温度で乾燥し、塗膜に作製し、いくぶん硬化した。乾燥中のみ、加熱を行った。しかるに架橋は実質的に乾燥中にのみ生じ、その後の架橋後として生じた。次いで、この方法で処理された鋼板を、その防食性、その機械的性質及びその他の性能についてテストした。24時間の保存時間後、全ての試験を実施した。
【0166】
ポリマー皮膜上で決定される性質を、1〜5の点数で、試験成績の下で表中に等級付けし、ここで1は非常に良好であり、5は不十分である。Galvalume(登録商標)の場合、防食性の点数は、恒湿及び空気温度による凝縮気候試験、交互の湿度及び空気温度による凝縮気候試験、塩水噴霧試験及び湿布試験(種々の気候ゾーンを通過する際の凝縮形成)からの結果の平均である。
【0167】
第1表:Galvalume(登録商標)に塗布された水性組成物の組成及びそれにより作製された皮膜の性質
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
【表3】

【0170】
【表4】

【0171】
【表5】

【0172】
【表6】

【0173】
【表7】

【0174】
【表8】

【0175】
Galvalume(登録商標)板における試験の結果:
第1表の水性組成物は、ポリマー皮膜に容易に加工することが可能だった。乾燥ポリマー皮膜は、各々約1.2μm又は約1.7μmの領域の膜厚を有した。全ての皮膜は、透明で無色であり、金属表面の光学性が事実上変化なしに更に顕著となり得るほどの淡い絹の光沢を有していた。
【0176】
実施例B1〜B3及び比較例VB1〜VB6において、使用した合成樹脂は変化したが、一方で他の添加剤、乾燥温度及び乾燥膜厚は、不変のままだった。合成樹脂E及びFが非常に適切であることが判明した。実施例B4〜B7においては、他の同一条件下で合成樹脂混合物を添加した。しかしながら、これらの実施例においては、実施例B1及びB2の皮膜の結果は良いものでなかった。いずれの場合においても、更なる一連の試験において、実施例B8はB2の繰返し試験であり、B14はB1の繰返し試験である。
【0177】
実施例B9〜B13、B15及びB16において、第2の低融点潤滑剤を更に添加したが、ここで場合によっては水性組成物の固体含有率及び架橋剤の含有率も増加し、その結果として乾燥膜厚もまた増加した。この潤滑剤の添加は、ポリマー皮膜の、驚くべき、著しい改善につながった。しかしながら、アクリレート含有合成樹脂のバッチ式添加によって、いくらかあまり良くない結果が生じた。実施例B17〜B22において、合成樹脂中におけるアクリレートの比率及び架橋剤の種類は異なるものであった。実施例B23〜B31においては、合成樹脂Eを添加し;無機粒子又は/及びシランの含有率並びにシランの種類は異なるものであった。非常にかすかな黄変(点数2)が識別可能な場合であっても、200℃で60分間に亘る耐黄変性についての結果は、市場の要求に完全に十分である。実施例32において、著しく異なる組成物を有する合成樹脂の混合物を使用した。
【0178】
比較例VB7において、有機塗膜形成剤の異なる成分の混合物を使用した。比較例VB8において、クロム(VI)化合物を添加した。実施例B14の水性組成物を出発点として使用したので、比較例VB12〜VB16においては、本発明により必要とされる物質の内の1種を省いた。
【0179】
Galvalume(登録商標)表面については、ジルコニウム含有架橋剤の添加もまた、防食に好都合であることが判明した。
【0180】
第1表に記載される水性組成物及びそれにより作製されるポリマー皮膜の性質は、溶融亜鉛メッキ表面及び低アルミニウム含有率の合金溶融亜鉛メッキ表面に理想的に適切である。例えば、場合により次の装飾的な塗装による、特に白物家電業界(例えば冷蔵庫)における更なる処理のために極めて正常にそれらを使用することが可能である。
【0181】
B)HDG鋼板の被覆:
本発明による実施例B41〜B60、及び比較例VB21〜VB32:
商業的な、冷間圧延され、その後溶融亜鉛メッキされた鋼帯から得られ、保護のために保存中に注油された鋼板を、まずアルカリスプレークリーナにおいて脱脂し、水で水洗し、高温で乾燥した。水性組成物の成分を共に混合し、次いでアンモニア溶液を用いて水性分散液のpHを8.2に調整した。浴組成物は、第2表に記載の水性組成物からなった。次いで、約10mL/m2の未乾燥塗膜厚が達成されるような方法でロールコータを使用して定義量の水性組成物を塗布した。次いで未乾燥塗膜を約100℃又は約150℃PMTの温度で乾燥し、塗膜に作製し、いくぶん硬化した。乾燥中のみ、加熱を行った。しかるに架橋は実質的に乾燥中にのみ生じ、その後の架橋後として生じた。次いで、この方法で処理された鋼板を、その防食性、その機械的性質及びその他の性能についてテストした。24時間の保存時間後、全ての試験を実施した。
【0182】
ポリマー皮膜上で決定される性質を、1〜5の点数で、試験成績の下で表中に等級付けし、ここで1は非常に良好であり、5は不十分である。溶融亜鉛メッキ板の場合、防食性の点数は、恒湿及び空気温度による凝縮気候試験、交互の湿度及び空気温度による凝縮気候試験、及び湿布試験(種々の気候ゾーンを通過する際の凝縮形成)からの結果の平均である。
【0183】
第2表:HDGに塗布された水性組成物の組成及びそれにより作製された皮膜の性質
【表9】

【0184】
【表10】

【0185】
【表11】

【0186】
【表12】

【0187】
【表13】

【0188】
【表14】

【0189】
HDG板における試験の結果:
第2表の水性組成物は、ポリマー皮膜に容易に加工することが可能だった。乾燥ポリマー皮膜は、各々約1.2μmの領域の膜厚を有した。全ての皮膜は、透明で無色であり、金属表面の光学性が事実上変化なしに更に顕著となり得るほどの淡い絹の光沢を有していた。
【0190】
比較例VB21〜VB27において、架橋剤、シラン、場合によっては無機粒子を、水性組成物に添加することはなかった。有機塗膜形成剤の合成樹脂は、場合によっては異なるものであった。比較例VB21において、耐ブロッキング性、耐化学性及び耐黄変性を更に低下させる塗膜形成補助剤も省いた。アイオノマーの添加のために、有機塗膜形成剤は、塗膜形成補助剤なしでも塗膜を形成し得た、記載された又は/及びテストされた有機塗膜形成剤の内の唯一のものであった。好ましい合成樹脂Fによる比較例VB23〜VB26において、無機粒子の添加により、防食性が更にはっきりと向上した。
【0191】
比較例VB28〜VB31は、架橋剤不含水性組成物の防食性に対するクロム(VI)添加(合成樹脂に対する架橋効果を有するクロム(VI)添加)の効果を例示したものである。比較例VB32において、失われた架橋剤の効果は、耐食性及び耐化学性においてとりわけ識別可能だった。
【0192】
本発明による実施例B45〜B61を、4種の異なる架橋剤を使用して4つの系列で実施したが、ここでB45〜B48の第1の系列においては乾燥温度を100℃で一定に維持し、B49〜B52の第2の系列においては乾燥温度を150℃で一定で維持し、B53〜B56の第3の系列においては乾燥温度を個々の架橋剤に調整し、第2の低融点潤滑剤を更に添加し、B57〜B60の第4の系列においては、第3の系列から開始して耐食性を更に著しく向上させるチタン含有腐食防止剤を更に添加する。実施例B45及びB46とは対照的に、実施例B47及びB48においては、有機架橋剤3及び4にそれぞれ必要な高温を達成するために、添加された有機架橋剤にとって十分に高い温度での被覆板の乾燥及び加熱を行わなかった。ポリマー皮膜の不十分な架橋により、耐酸性及び耐アルカリ性は不十分である。実施例B45及びB46における被覆板をより高い温度にまで乾燥又は/及び加熱した場合、この欠陥は防止された。逆に、実施例B49〜B52は、場合によっては最適架橋温度を越える高乾燥温度が害を及ぼすものではないことを示す。全体的に、耐黄変性を除く皮膜の全ての性質の連続的な改善は、第1の系列から第4の系列にかけてはっきりと認められる。しかしながら、非常にかすかな黄変(点数2)が識別可能な場合であっても、200℃で60分間に亘る耐黄変性についての結果は、市場の要求に完全に十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
更なる被覆の前に金属表面を前処理するための又は金属表面を処理するための水性組成物で金属表面を被覆する方法であって、例えば帯又は板等の被覆体が場合により被覆後に成形される、被覆方法において、前記組成物が、水の他に、
a)有機塗膜形成剤中の合成樹脂の含有率の70〜100質量%がポリカーボネート、ポリウレタン、アイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンからなる群から選択される合成樹脂に基づくポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の少なくとも1種の水溶性又は/及び水分散合成樹脂を含み、ポリカーボネート及びポリウレタン含有率が各々少なくとも10質量%である、主成分としての少なくとも1種の合成樹脂からなる有機塗膜形成剤、
b)有機塗膜形成剤用塗膜形成補助剤としての少なくとも1種の長鎖アルコール、
c)少なくとも1種の架橋剤、
d)少なくとも1種の潤滑剤、及び
e)A)シラン、シラノール又は/及びシロキサンに基づく少なくとも1種の物質、又は/及び、B)走査型電子顕微鏡で測定して平均粒径が0.005〜0.3μmの範囲である粒子形態の少なくとも1種の無機化合物、及び
f)場合により、少なくとも1種の有機腐食防止剤、少なくとも1種の有機溶媒又は/及び少なくとも1種の添加剤
を含有し、ここで金属表面は水性組成物に接触し、有機塗膜は実質的に金属表面上に形成され、次いで乾燥され、場合により硬化され、ここで乾燥及び場合により硬化もされる塗膜は、硬化塗膜の限定領域を分離してそれを秤量することによって決定される0.01〜10μmの範囲の膜厚を有することを特徴とする被覆方法。
【請求項2】
有機塗膜形成剤が、合成樹脂混合物である、又は/及びエポキシド、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、(メタ)アクリレート、フェノール、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニル又は/及びポリビニルフェノールに基づく合成樹脂の含有率を含む少なくとも1種の混合ポリマーであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機塗膜形成剤が、(メタ)アクリレート、エチレン(メタ)アクリレート又は/及びスチレン(メタ)アクリレートに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の合成樹脂の含有率を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
有機塗膜形成剤が、有機塗膜形成剤の全含有率の10〜70質量%の範囲のポリカーボネートに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の合成樹脂の含有率を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
有機塗膜形成剤が、有機塗膜形成剤の全含有率の10〜70質量%の範囲のポリウレタンに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の合成樹脂の含有率を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
有機塗膜形成剤が、有機塗膜形成剤の全含有率の1〜40質量%の範囲のポリエステルに基づく少なくとも1種のポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の合成樹脂の含有率を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
更なる化合物を添加することなく水性組成物中における有機塗膜形成剤のpHが6.5〜11であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水性組成物が、活性成分を含む固体に基づいて2〜600g/Lの含有率の有機塗膜形成剤を含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
水性組成物が、活性成分を含む固体に基づいて0.01〜50g/Lの含有率で有機塗膜形成剤のための塗膜形成補助剤として少なくとも1種の長鎖アルコールを含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の長鎖アルコールが4〜16C原子を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ほとんど又は全く均質の有機膜は、水及び他の揮発成分の除去中又は/及び除去後に少なくとも1種の塗膜形成補助剤と共に有機塗膜形成剤から塗膜形成により形成されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1種の非加水分解シラン、部分的に加水分解されたシラン又は/及び完全に加水分解されたシラン、又は/及び少なくとも1種の対応するシラノール又は/及びシロキサンが水性組成物に添加されることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水性組成物が、少なくとも1種の部分的に加水分解されたシラン又は/及び完全に加水分解されたシラン、又は/及び少なくとも1種の対応するシラノール又は/及びシロキサンを含有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種のアシルオキシシラン、アルキルシラン、アミノシラン、ビス−シリルシラン、エポキシシラン、フルオロアルキルシラン、イソシアナートシラン、メルカプトシラン、(メタ)アクリラトシラン、モノシリルシラン、ポリシリルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、又は/及び少なくとも1種の対応するシラノール又は/及びシロキサンが含まれることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
活性成分を含む固体に基づいて0.1〜50g/Lの範囲でシランとして算出される少なくとも1種のシラン、シラノール又は/及びシロキサンの含有率が水性組成物に添加されることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
水性組成物が、それぞれアジリジン、アゾ化合物、ジアミン、ジイミド、ホルムアルデヒド、イミダゾール、イソシアネート、イソシアヌレート、メラミン、過酸化物、トリアジン又は/及びトリアゾールに基づく少なくとも1種の架橋剤を含有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水性組成物が、ホウ素含有化合物又は塩基性化合物に基づく少なくとも1種の無機架橋剤を、好ましくはチタン、ハフニウム又は/及びジルコニウムに基づく又は/及びカーボネート又は炭酸アンモニウムに基づく少なくとも1種の無機架橋剤を好ましくは含有することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
活性成分を含む固体に基づいて0.01〜50g/Lの範囲の少なくとも1種の架橋剤の含有率が水性の組成物に添加されることを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
パラフィン、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群から選択される少なくとも1種のワックスが、潤滑剤として、特に少なくとも1種の酸化ワックス又は/及び少なくとも1種の微結晶ワックスとして使用されることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
潤滑剤として使用されるワックスの融点が40〜160℃の範囲であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
顕著に異なる性質を有する少なくとも2種の潤滑剤が含まれることを特徴とする、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
微粉、分散液又は/及び懸濁液、例えば少なくとも1種のカーボネート、酸化物、シリケート又は/及びサルフェート等が、特にコロイド粒子又は/及び非晶粒子において粒子形態の無機化合物として水性組成物に添加されることを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
無色、白色又は/及び非常にかすかな色の粒子が粒子形態の無機化合物として使用されることを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
水性組成物が、活性成分を含む固体に基づいて粒子形態において0.1〜500g/Lの少なくとも1種の無機化合物を含有することを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
水性組成物が、アミン、アルカノールアミン、アルキルアミノエタノール、コハク酸誘導体、導電性ポリマー又は/及びチオールに基づく少なくとも1種の有機腐食防止剤を含有することを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
使用される合成樹脂の内の少なくとも1種が放射線硬化性であり、更に少なくとも1種の光重合開始剤を添加して化学線による照射による架橋を可能にすることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
皮膜が、部分的に1.乾燥及び成膜によって、及び部分的に2.化学線によって、及び場合により3.熱架橋によって硬化することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
水性組成物が、場合によりそれぞれ少なくとも1種の殺生物剤、消泡剤、湿潤剤又は/及び塗料添加剤を含有することを特徴とする、請求項1から27までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
水性組成物が、Cr3+に基づいて少なくとも1種のクロム酸塩を、好ましくはCr3+として算出される1〜30g/Lの範囲の含有率で含有することを特徴とする、請求項1から28までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
6.5〜11の範囲のpHを有する水性組成物が使用されることを特徴とする、請求項1から29までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
水性組成物が、5〜50℃の範囲の温度で金属表面に塗布されることを特徴とする、請求項1から30までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
皮膜の塗布中に金属表面が5〜120℃の範囲の温度で維持されることを特徴とする、請求項1から31までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
被覆金属表面が20〜400℃PMTの範囲の温度で乾燥されることを特徴とする、請求項1から32までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
水性組成物が、ローラー塗り、流し塗り、ブレード塗り、スパッタリング、吹付け塗り、刷毛塗り又は浸漬、場合によりローラーによる次のスクィージングにより塗布されることを特徴とする、請求項1から33までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
金属表面として、アルミニウム、鉄、銅、マグネシウム、ニッケル、チタン、スズ、亜鉛、又は/及びアルミニウム又は/及び鉄、銅、マグネシウム、ニッケル、チタン、スズ又は/及び亜鉛を含有する合金からなる表面が水性組成物で被覆されることを特徴とする、請求項1から34までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
有機ポリマーに基づくラッカー、塗料、接着剤又は/及び接着性担体からなる少なくとも1種の皮膜が、乾燥及び場合により硬化もされる塗膜に塗布されることを特徴とする、請求項1から35までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
被覆金属部品、帯板又は帯板部が、成形され、塗装され、ポリマー、例えばPVCにより被覆され、プリントされ、接着され、熱はんだ付けされ、溶接され又は/及び曲げ固定又は他の結合方法により相互に結合されることを特徴とする、請求項1から36までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1から37までのいずれか1項に記載の方法によって皮膜が少なくとも1種の金属表面上に作製されることを特徴とする、少なくとも1種の金属表面を有する被覆基材。
【請求項39】
更なる被覆の前に金属表面を前処理するための又は金属表面を処理するための水性組成物であって、該組成物が、水の他に、
a)有機塗膜形成剤中の合成樹脂の含有率の70〜100質量%がポリカーボネート、ポリウレタン、アイオノマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリエーテル又は/及びポリスチレンからなる群から選択される合成樹脂に基づくポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー又は/及びグラフトコポリマーの形態の少なくとも1種の水溶性又は/及び水分散合成樹脂を含み、ポリカーボネート及びポリウレタン含有率が各々少なくとも10質量%である、主成分としての少なくとも1種の合成樹脂からなる有機塗膜形成剤、
b)有機塗膜形成剤用塗膜形成補助剤としての少なくとも1種の長鎖アルコール、
c)少なくとも1種の架橋剤、
d)少なくとも1種の潤滑剤、及び
e)A)シラン、シラノール又は/及びシロキサンに基づく少なくとも1種の物質、又は/及び、B)走査型電子顕微鏡で測定して平均粒径が0.005〜0.3μmの範囲である粒子形態の少なくとも1種の無機化合物、及び
f)場合により、少なくとも1種の有機腐食防止剤、少なくとも1種の有機溶媒又は/及び少なくとも1種の添加剤
を含有することを特徴とする水性組成物。
【請求項40】
請求項1から37までのいずれか1項に記載の方法によって被覆された基材、例えばワイヤー、帯板又は部品等の使用であって、該被覆基材が、鋼帯、金属板、クラッディング、スクリーニング、車体又は車体部品、車、トレーラ、キャラバン又は飛行体の部品、カバー、ハウジング、ランプ、ライト、交通信号エレメント、家具の要素又は家具エレメント、家庭電化製品のエレメント、フレーム、異形材、複雑な形状を有する成形品、クラッシュバリヤエレメント、ラジエータエレメント又は柵エレメント、バンパー、少なくとも1種の管又は/及び異形材からなる又はそれを有する部品、窓、ドア又は自転車フレーム、ワイヤー巻き線、ワイヤーメッシュ又は小型部品であることを特徴とする基材の使用。

【公表番号】特表2010−520808(P2010−520808A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553105(P2009−553105)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052603
【国際公開番号】WO2008/110480
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(500399116)ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
【住所又は居所原語表記】Trakehner Str. 3, D−60487 Frankfurt am Main,Germany
【Fターム(参考)】