説明

ポリマーキャリアフィルムを基礎とするセラミック複合材料の製造及び使用

本発明は、平面のキャリア基材(2)及び該キャリア基材(2)に施与されたセラミック粒子(3)を有する多孔質コーティング(4)を包含するセラミック複合材料に関する。本発明が基礎とする課題は、この種類のセラミック複合材料をその高い熱的及び機械的な安定性を維持しながら、より低い厚みが得られるようにさらに形成することである。この課題は、該複合材料のキャリア基材(2)がポリマーフィルム(2)であり、その際、該キャリア基材(2)には、多数の一定に配置されたホール(6)から成る空孔が備えられており、かつ、その際、該空孔は、キャリア基材(2)の少なくとも一方の側で多孔質コーティングにより覆い隠されている。本発明によりセラミック複合材料の断面図は図1に示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面のキャリア基材及び該キャリア基材に施与されたセラミック粒子を有する多孔質コーティングを包含するセラミック複合材料に関する。そのうえ本発明は、かかるセラミック複合材料の製造方法並びにかかるセラミック複合材料を包含する電気化学セルに関する。
【0002】
本出願の意味における"電気化学セル"との用語は、再充電可能であっても再充填可能でなくてもよいと解される電気エネルギー蓄積装置である。その限りでは、本出願明細書は、一方では"アキュムレーター/二次電池"と、他方では"バッテリー/一次電池"との用語の間で区別しない。本出願の意味における"電気化学セル"との用語にはコンデンサも含まれる。電気化学セルはさらに、エネルギー蓄積装置の最小機能ユニットと解される。技術的な実際の作業においては、蓄積装置の全体のエネルギー容量を高めるために、多数の電気化学セルは一列又は並列に接続されることが多い。この関連において多重セルが言及される。それゆえ、技術的に取り付けられるバッテリーは、唯一の又は多数の並列又は直列に接続された電気化学セルを有していてよい。これは本発明と直接的には関連していないことから、"バッテリー"及び"電気化学セル"との用語は、これ以降は同義的に用いられる。
【0003】
バッテリーの特性に関して、高出力バッテリーと高エネルギーバッテリーとは区別される。高出力バッテリーは、その電気エネルギーを特に短時間で送り出す蓄積装置であり、それは高い放電電流を発生させる。高エネルギーバッテリーは、その重量もしくはその体積に関して、特に大きな蓄積容量を有する。
【0004】
基本的な機能ユニットとしての電気化学セルは、2個の逆極性の電極、すなわち、負極アノード及び正極カソードを包含する。双方の電極は、該電極間に配置されたセパレーターによって短絡から互いに絶縁される。セルは、電解質−つまり、液状、ゲル様又は時に固体のイオン導電体−で充たされている。セパレーターはイオン透過性であり、かつ充電もしくは放電サイクル中にアノードとカソードとの間でイオンの交換を可能にする。
【0005】
従来、セパレーターは、高いイオン透過性、良好な機械強度と、系中で、例えば電気化学セルの電解質中で使用される化学薬品及び溶剤に対する長時間安定性を有する、薄く多孔質である電気絶縁性の材料である。セパレーターは、電気化学セル中でカソードをアノードから電気的に完全に絶縁すべきである。それ以外に、セパレーターは持続的に弾性でなければなく、また、外側の負荷によってのみならず、イオンの挿入及び脱離に際しての電極の"呼吸作用"によっても生じる系中での動きに追従しなければならない。
【0006】
セパレーターは、電気化学セルの寿命及び安全性を決定的に左右する。それゆえ、再充電可能な電気化学セル又はバッテリーの開発は、適切なセパレーター材料の開発によって決定的に影響を及ぼされる。電気セパレーター及びバッテリーに関する一般的な情報は、例えばJ.O. Besenhard著"Handbook of Battery Materials" (VCH-Verlag, Weinheim 1999)の中で供覧することができる。
【0007】
高エネルギーバッテリーは、可能な限り多量の電気エネルギーを利用できることが重要である種々の適用において使用される。高エネルギーバッテリーは、自動車(車両用蓄電池)の駆動のために、バッテリー(予備電源システム)を用いた自給式の固定された給電装置にて、中断することのない給電装置にて、持ち運び可能な電気機器、例えばラップトップ、携帯電話及びカメラ用並びに電気工具用に、一定エネルギーが供給される場合に使用される。その際、エネルギー密度は、重量に関する[Wh/kg]大きさ又は体積に関する[Wh/L]大きさで頻繁に示される。目下、高エネルギーバッテリーにおいては、350〜400Wh/L及び150〜200Wh/kgのエネルギー密度が達成されている。かかるバッテリーの場合に確かめられる出力はそれほど大きくないため、内部抵抗に関して妥協することができる。すなわち、電解質で充たされたセパレーターの伝導率は、例えば、高出力バッテリーの場合のように大きい必要はないため、それによって、他のセパレーター構想も可能となる。
【0008】
そうして、高エネルギー系の場合、0.1〜2mS/cmの、やはり相当に僅かな伝導率を有するポリマー電解質も使用することができる。かかるポリマー電解質セルは、しかしながら、高出力バッテリーとしては使用することができない。
【0009】
高出力バッテリー系で適用するためのセパレーターは、次の特性を有していなければならない:それは、僅かな比所要量を保証し、かつ内部抵抗を低く保つために、可能な限り薄くなければならない。この僅かな内部抵抗を保証するために重要なことは、セパレーターが大きな多孔率も有することであり、それというのも、大きな多孔率はイオン透過性にとって好都合だからである。そのうえ、セパレーターは、僅かな比重が達成されるように軽くなければならない。それ以外に、電解質の濡れ性は高くなければなく、なぜなら、さもなければ内部抵抗を上昇させる電解質不含のデードゾーンが形成されるからである。
【0010】
多くの、なかでも移動式の適用においては、非常に高いエネルギー量が必要とされる(例えば完全電気自動車用の車両用蓄電池において)。これらの適用におけるバッテリーは、完全に充電された状態において大きなエネルギー量を蓄積しており、これは、バッテリーが機能不全に陥った場合、例えば過充電又は短絡に陥った場合に、もしくは事故に際して制御されない形で放出されてはならない。なぜなら、これは火炎現象下で不可避的にセル及び自動車の爆発を招くと考えられるからである。それゆえ、移動適用のためのセパレーターは、事故に遭った自動車のバッテリーが爆発しないように特に安全でなければならない。
再充電可能な高出力バッテリーもしくは高エネルギーバッテリーは、今日、リチウムイオンベースで構成されている。リチウムは高反応性の金属であり、かつリチウムイオン蓄電池の成分は易燃性であるため、昨今のリチウムイオン又はリチウム金属のバッテリーもしくは蓄電池は気密封止されている。かかるバッテリーセルは機械的な障害に対して敏感であり、これは、例えば内部短絡を招きうる。内部短絡及び空気との接触によって、リチウムイオンバッテリーもしくはリチウム金属バッテリーは発火する可能性がある。比較的に僅かな所要量でもその並はずれて高い蓄積容量ゆえに、リチウムイオンベースのバッテリーセルは、電気自動車のバッテリーの製造のために特に適している。従って、自動車へのバッテリーの装着には、機械的及び熱的な障害からバッテリーセルを保護するという特別な要求が課される。
【0011】
電気自動車用に、比較的高い貯蔵容量及び比較的大きな端子電圧を有するバッテリーが提供されなければならないことは容易に想像がつく。殊に自動車産業のために、例えば完全電気自動車のために、バッテリーセルは相応して大型でなければならず、かつ電極の高い比重に基づき高い絶対重量を有していなければならない。前ですでに述べたように、例えば、リチウムイオン又はリチウム金属ベースのバッテリーセルは機械的に敏感であるため、該バッテリーセルを機械的な障害から保護するために、自動車への装着に際しては特別な措置が講じられている。昨今の乗用車の場合、通常の運転サイクルにて、重力加速度の2倍〜3倍の加速力が各空間軸において期待されている。かかる力は、加速、減速、コーナリング及び起伏のある場所を走行する場合に自動車に影響を与える。そのうえまた、自動車に装着されたバッテリーを、衝突に起因する機械的な影響と、衝突に起因する加速力とから守ることが絶対不可欠である。さらに、バッテリーひいてはバッテリーセル及びそれらの連係部は、自動車に起因する振動に晒されている。
これらの周囲条件により、セパレーターには高い要求が課され、該セパレーターは、一方では大きなイオン透過性並びに僅かな重量と、他方では高い機械的/熱的な安定性との目標の対立を解かなければならない。
【0012】
その素材に関して、目下のところ使用されるセパレーターは3つのグループに区分されうる:完全に有機のセパレーター、完全にセラミックのセパレーターと有機/無機複合体−セパレーターである。その構成に関して、2つの異なるセパレーターのタイプが存在している:テキスタイルセパレーターと膜セパレーター。テキスタイル構造は、一般に不織布である。不織布(英語:"non-wovens")は、テキスタイル平面構築物のグループに属しており、そしてISO9092:1988によれば、ランダム又は規則的に配置された、摩擦又は凝集又は接着によって結束される繊維から成る、平らな材料、網状物又は敷物と定義されている。テキスタイルセパレーターは、フェルトに似たものと想像してよい。その繊維間の空間部によって、セパレーターはその多孔性を得る。膜セパレーターは、シート又はフィルムの形態を有し、かつ均一に構成されている。該膜セパレーターは、その多孔性を、不規則に材料全体に分布している多数の孔又は空隙によって、スポンジと似たように得ている。
【0013】
セラミック素材の僅かな弾性にも関わらず比較的柔軟性のセパレーターを得るために、完全にセラミックのセパレーターは、一般にテキスタイルで構成される。該セパレーターは、無機不織布材料、例えばガラス又はセラミック材料かあるいはセラミックペーパーからの不織布から成る。これらは様々の企業により製造されている。重要な製造元は、ここでは:Binzer、Mitsubishi、Daramic等である。
【0014】
無機不織布材料からの又はセラミックペーパーからのセパレーターは機械的に非常に不安定であり、かつ短絡を生じ易いため、長い可使時間を得ることができない。
完全に有機のセパレーターは、テキスタイルでも、膜構造でも使用される。有機ベースの典型的なテキスタイルセパレーターは、例えばポリプロピレン繊維から成る。Celgard社、Tonen社、Uebe社及びAsahi社は、完全に有機のセパレーターを製造している。例として、完全に有機の膜セパレーター挙げられ、Celgard社により、LLCがCelgard(R)2320の名称で売り出されている。これは、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリプロピレンよりなる3層のミクロ孔の膜である。ミクロ孔との用語は、材料の細孔径の分類に由来しており、IUPACに従って行われる。これは細孔径を次の3つの群に区分する:そうして、ミクロ孔材料は2nmより小さい大きさを含む。2〜50nmの大きさを有する孔は、メソ孔材料に見出される。50nmより大きい孔を有する材料はマクロ孔と定義されている。
【0015】
有機ポリオレフィンセパレーターの大きな欠点は、170℃を下回るその僅かな高温耐性である。これらのポリマーの融点に少しの間持続的に達しただけですら、セパレーターの広範囲に及ぶ溶融が生じ、かつ、かかるセパレーターが使用されている電気化学セル中での短絡が生じる。それゆえ、かかるセパレーターは概ね安全とは言えない。それというのも、より高い温度、殊に150℃又はそれどころか180℃を超える温度に達した場合、これらのセパレーターは破壊されてしまうからである。
それゆえ、完全に有機のセパレーターは、高エネルギーもしくは高出力バッテリーにおける使用には適していない。この代わりに、完全にセラミックのもしくは有機/無機複合体−セパレーターが必要とされる。それらの機械特性に関して、有機/無機複合体−セパレーターは、完全にセラミックのセパレーターを凌駕しており、それゆえ、殊に移動式の適用において使用される。
【0016】
有機/無機複合体−セパレーターは、例えば、DE10208277、DE10347569、DE10347566又はDE10347567に記載されている。これらのセパレーターの製造のために、無機材料の懸濁液が、PET不織布の形態の有機キャリア基材に塗布される。従って、この基材は、その多孔性をそのテキスタイル構造によって得る。基材中の孔分布は、テキスタイル製造プロセスによって決められ、かつ不規則である。無機バインダーの橋かけによって、セラミックは不織布に固定される。かかるセパレーターは、Evonik Degussa GmbHよりSEPARION(R)の製品名で販売されている。
【0017】
有機/無機複合体−セパレーターの他の製造法は、文献W02/15299及びWO02/071509に記載されている。その際、無機材料の懸濁液がポリマー材料に施与される。該懸濁液は、この場合、有機溶剤をベースとしており、有機バインダー、殊にフッ素含有ポリマー、例えばポリビニリデンフルオリド(PVdF)又はフッ素含有コポリマー、例えばポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマー(PVdF−co−HFP)が使用される。セパレーター中にセラミック構成要素が存在することによって、該セパレーターの安全性が高められるが、なぜなら、セパレーターの完全な破壊が該セラミックによって200℃を超える温度でも防止されるからである。得られたセパレーターの細孔径は、ポリマーキャリア材料のコーティングに続けて行われる付加的な延伸工程によって本質的に影響を受ける。この場合、無圧状態での延伸では、再び塞ぐことのできない大きな孔又は亀裂が形成するという危険性がある。圧力及び高い温度の下での延伸の場合、極めて小さい孔ですらポリマーで充たされることによって再び塞がれる可能性がある。それゆえ、一様な細孔径分布は、この方法では得ることができない。
【0018】
DE10343535B3から、一定の表面異形成形部を備えているリチウムポリマーバッテリー用のセパレーターが公知である。これは製造プロセスの過程でローラーを用いて行われる。示されたローラーは、例えばルレットもしくはネップ状の突起を有する。それにより、セパレーターに規則的な表面構造が刻まれ、その際、該表面構造は、クレーター様の凹部もしくは凸部から成る。該セパレーターは、その全体が異形成形されているため、クレーター様の凹部もしくは凸部は覆い隠されずに表面に残っている。
【0019】
EP1038329B1及びUS6432576B1からは、セパレーターに、ホールからの一定の構造が備わっているリチウムアキュムレーターが公知である。双方の電極は、相応するホールパターンを有する;膜は、位置合わせされているホールで積み重ねられている。位置合わせされているホールを貫いて、ポリマー材料のブリッジが伸びており、これは電極を外側から支えている。それゆえ、ホールを貫通するポリマー材料は、セパレーターの構成要素ではなく、むしろセルを取り囲むことを表す。
【0020】
DE19921955A1は、規則的に穿孔された鉛酸バッテリー用のセパレーターを開示している。穿孔は、セル中でのガス交換に利用される流路により形成される。そこで記載されるセパレーターは、テキスタイル材料又は微細粉末から成る;セラミックコーティングを読み取ることはできない。安全性の理由から、このように穿孔されたセパレーターは、高いエネルギー密度を有するリチウムセルのために決して使用可能ではない:というのも、セパレーター内部の開口したホールは、電極を短絡させ、かつセルを容易に破壊するデンドライトの形成を促すからである。これを防止するために、DE19921955A1は、アルカリ金属硫酸塩、例えばNa2SO4を電解質に添加することを教示しており、なぜなら、この塩は、放電の終わりに鉛イオンの濃度が過度に高くなることを妨げるものとされているからである。とはいっても、リチウムイオンバッテリーのセル化学に、この教示を当てはめることはできない。それゆえ、デンドライトが、DE19921955A1で示されたセパレーターの流路を突き破り、そして致命的な短絡をもたらすことが懸念されている。殊に自動車適用において利用されるリチウムバッテリーの明らかにより高いエネルギー密度に基づき、ここで示される、規則的に穿孔されたセパレーターは全く適していない。
【0021】
WO06/068428A1は、高いエネルギー密度を有するリチウムバッテリー用に適しているセパレーターを示している。ここでは、ポリオレフィン系のキャリア基材と、その上に施与されたセラミック粒子を有する多孔質コーティングから成る、有機/無機複合体−セパレーターが取り扱われている。キャリア基材は、繊維又はメンブレンの形態で存在していてよい。繊維の形態のキャリア基材は、テキスタイル平面構築物として、殊に不織布(non−woven)として当業者に解される。メンブレンをどう解すべきかは、該刊行物から詳しくはわからない;おそらく"メンブレン"との用語は、キャリア構造のさらに別の実施形態を意味しているのはなく、繊維から構成された同じテキスタイル構造と同義的に用いられている。これにより、公知のメンブレンフィルターが一般にテキスタイル平面構築物として取り付けられているという点が明らかになる。キャリア構造がこの教示に則って構成されているにせよ、それは多孔質であり、かつ一様な、しかし不規則な孔分布を有している。示されたセパレーターは、非常に薄くなりえ、それは1〜30μmの有利な厚さを有し、その際、基材の最小厚さは1μmであり、より適切には5μmとされる。該刊行物は、これらの僅かな材料厚さの場合には、高い多孔率を達成できないことを示唆しており、なぜなら、さもなければセパレーターの機械安定性が損なわれるからである。制限された多孔率により、セパレーターのイオン透過率、ひいては最終的に該セパレーターとともに構成されたセルの出力も制限されることになる。これが、WO06/068428A1に示された有機/無機複合体−セパレーターの欠点である。
【0022】
WO06/004366A1は、同様に、有機キャリア基材と、その上に施与された無機コーティングを有する複合体−セパレーターも開示している。キャリア基材は、コーティングと同じように不規則な孔を有する;該コーティングは、該キャリア基材に留められている。その他の点では、このセパレーターには前述の事項が当てはめられる。
【0023】
WO06/025662A1は、実施例において、多孔質の有機/無機複合体−セパレーターを示しており、該セパレーターは、キャリア基材を使用することなく均一に構成されている。セラミック粒子が、このためにポリマーバインダーと結合される。このような均一なセパレーターは、非常に僅かな厚さを達成することができるが、しかしながら、その機械安定性には改善の余地がある。さらに別の実施例は、WO06/004366A1もしくはWO06/068428A1の対象に類似している。
【0024】
WO08/097013A1も、同様に、ポリオレフィン系の多孔質キャリア基材と、その上に少なくとも片面だけ施与されたセラミック粒子を有するコーティングを有するセパレーターを示している。該キャリア基材はメンブレンであってよい。孔は不規則にキャリア基材に分布している。
【0025】
実際に作製されたセパレーターは、今日、最小の場合であっても約20μmの厚さを有する。原則として、可能な限り薄いセパレーターを得ることが追求するに値する。それによって、一方では、その活性には寄与しないバッテリーの構成要素の割合を低下させることができる。他方では、厚さの低下は同時にイオン透過率の改善につながる。しかしながら、僅かな肉厚は、機械安定性と、ひいては安全性を下げる。
【0026】
これまで、高エネルギーバッテリー/高出力バッテリーの分野おけるこの目標の対立の最良の解決手段は、平面のテキスタイル−有機キャリア基材と、その上に施与された多孔質−セラミックコーティングを有する、有機/無機複合体−セパレーターに見られていた。これに関する例は、上で述べたSEPARION(R)製品もしくはWO06/068428A1の対象である。いずれもここでは同様の技術分野に属するものと考えてよい。
【0027】
この箇所以降では、セパレーターとの用語には、セラミック複合材料との用語が用いられる。
上記の従来技術から出発して、本発明が基礎とする課題は、冒頭で述べた種類のセラミック複合材料を、その高い熱的及び機械的な安定性を維持しつつ、さらに、該複合材料がより僅かな厚さを達成するように形成することである。
【0028】
該課題は、キャリア基材としてポリマーフィルムを準備し、その際、該キャリア基材は、多数の規則的に配置されたホールから成る穿孔を備えており、かつ、その際、該穿孔は、キャリア基材の少なくとも一方の面で多孔質コーティングにより覆い隠されていることによって解決される。
【0029】
従って、本発明の対象は、平面のキャリア基材と、該キャリア基材に施与されたセラミック粒子を有する多孔質コーティングを包含するセラミック複合材料であり、該セラミック複合材料のキャリア基材は、多数の規則的に配置されたホールから成る穿孔を備えているポリマーフィルムであり、その際、該穿孔は、キャリア基材の少なくとも一方の面で多孔質コーティングにより覆い隠されている。
【0030】
本発明の基本思想は、キャリア基材としてポリマーフィルムを使用することにあり、該ポリマーフィルムのイオン透過性は、それ自体は非イオン透過性の閉じられた前駆フィルム(Urfolie)を、一定の幾何学的パターンを保ちつつ、目的に合わせて穿孔し、該穿孔がその時点で初めてフィルムをイオン透過性にすることによって得られた。それゆえ、本発明によれば、一様に穿孔されたホールフィルムが用いられ、該ホールフィルムのイオン透過性は、ホールパターンの規則性に基づき該フィルムの面全体にわたって一定不変である。
【0031】
つまり、これは、ホールによって引き起こされるフィルムの機械的な減衰がその面全体にわたって、そのイオン透過性と同じように一定不変であるという決定的な利点を有する。変化しない減衰により、フィルムの厚さを、同様にポリマーフィルムの不可欠な支持性に必要とされる程度にまで最小化することが可能になる:多孔性の統計分布がない場合は、同様に支持性の統計分布も欠けているので、フィルム厚さの寸法決定に際して、安全性のために大きく上乗せすることはもはや必要ではなくなる。
【0032】
事実、本発明による、キャリア基材として規則的に穿孔されたポリマーフィルムを基礎とするセラミック複合材料は、同じ熱的及び機械的な安定性の下で、従来のテキスタイルキャリア基材上に構成される有機/無機複合体−セパレーターより明らかに少ない全体の厚さを達成することを示す。
【0033】
フィルムの延伸によって得られるセパレーターに比べて、本発明によるセラミック複合材料は、延伸の処理工程を省くことができるという利点を有する。さらなる利点は、延伸によって製造されたセラミック複合材料の場合、細孔径は延伸プロセスに左右されるのに対して、使用される粒度によりセラミック複合材料の細孔径を比較的正確に調整することができる点にある。そのうえ好ましくは、セミラック複合材料の多孔性は、ただコーティング材料によってのみならず、ホールフィルムの穿孔によっても変えられることができる:穿孔密度及び穿孔サイズは、正確に予め規定することができる。キャリア基材として穿孔フィルムが使用される場合、フィルムの厚みを非常に可変に調整することができるというさらなる利点がある。好ましくは、少なくとも1μmの厚さを有するフィルムが用いられる。ポリオレフィンフィルムとは異なり、本発明によるセラミック複合材料は、さらにまた好ましくは、バッテリー電解質による表面の良好な濡れ性を持つ。サポート材料としてフィルム並びにコーティング材料としてセラミックが使用されることによって、セラミック(高い多孔性、理想的な孔幅、僅かな厚み、僅かな秤量、非常に良好な濡れ挙動、高い安全性)の利点、それにポリマーセパレーター(僅かな坪量、僅かな厚み、高い屈曲−可撓性)の利点が互いに一つにまとめられる。
【0034】
好ましくは、ホールは本質的に丸く仕上げられており、かつ2つの隣接するホールの中心距離は、それが穿孔内で一定不変であるように選択される。これらの幾何学的な規定を保つことで、特に規則的に穿孔されたセラミック複合材料がもたらされ、これはイオン透過性の持続性に関して極めて高い期待を叶える。丸いとは、この文脈において円形又は楕円形又は長円形であることを意味する。とはいっても、円形のホール断面が有利であり、なぜなら、円形のホールは、その理想的な対称性のおかげで高い規則性をつくり出し、また技術的に容易に製造されるからである。しかし、同様に、より僅かな対称度を達成する穿孔断面、例えば長円形もしくは楕円形のホール又は、その断面が規則的な四角形を描くホールを選択することも考えられる。
【0035】
本発明によるセラミック複合材料は、コーティングを、ポリマー基材の一方の面にだけ又はポリマー基材の両面に並びに穿孔内に有していてよい。好ましくは、本発明によるセラミック複合材料は、コーティングを、ポリマー基材の両面及び穿孔内に有する。従って、コーティングはキャリア基材の両面に施与されるので、該コーティングは穿孔を貫通する。これはセラミック複合材料の支持性を高め、かつ該複合材料の均質性を改善する。この実施形態はまた、セラミック複合材料が使用される場合に、アノードとカソードを分離するためにそのつど該コーティングがカソード材料もしくはアノード材料と接触するという利点も有する。
【0036】
コーティングのセラミック粒子は、好ましくは無機バインダーにより互いに接合される。該バインダーは、コーティングの結束力、ひいては機械強度を高める。無機バインダーの使用は、セラミック複合材料の温度強度に良い影響を及ぼす。
【0037】
無機バインダーとして、シラン、つまり、ケイ素と水素から合成されている化合物が適している。
【0038】
代替的に、コーティングのセラミック粒子を互いに結合するために有機バインダーを使用してもよい。有機バインダーの使用は、セラミック複合材料の柔軟性に良い作用を及ぼす:例えば、有機的に結合された粒子を有するセラミック複合材料は、セラミック粒子が無機バインダーにより結合されている、かかるセパレーターと比べて、改善された可撓性と、より高い屈曲許容範囲によって際立っている。この場合、好ましいのは、セラミック粒子の橋かけが他のセラミックにより行われず、むしろポリマー有機バインダーがこの役割を担うことである。ポリマーは、セラミックと比較して幅広い温度範囲にわたり、ずっと柔軟性である。有機的に結合されたセラミック複合材料のさらなる利点は、従来のセラミックセパレーターを切断した場合に発生するセラミック粉塵より、切断した場合の粉塵が明らかに少ないことである。
【0039】
有機バインダーのさらなる利点は、それがセラミック粒子を互いに結合するだけでなく、セラミック粒子をポリマーフィルムと結合させることができることである。それによって、キャリア基材へのコーティングの付着力が上昇するので、完成したセラミック複合材料をセルに組み込む際にコーティングが損傷されない。それゆえ、有機バインダーが、コーティングのセラミック粒子の少なくとも一部をポリマーフィルムと結合させる実施形態が有利である。
【0040】
有機バインダーとして、例えば、ポリマー又はコポリマー、好ましくはフッ素含有のポリマー又はコポリマーが本発明によるセラミック複合材料中に存在していてよい。好ましくは、本発明によるセラミック複合材料は、フッ素を含有する有機バインダーとして、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマー又はポリビニリデンフルオリド−クロロトリフルオロエチレン−コポリマーから選択される少なくとも1種の化合物を有する。特に有利には、本発明によるセラミック複合材料中には、フッ素含有ポリマーとしてポリビニリデンフルオリド又はコポリマーとしてポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマーが含まれている。有機バインダーとして、Kynar Flex(R)2801の名称でArkema社より入手可能なポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマーが適している。
【0041】
ポリマー基材として、殊に、好ましくは、100℃より高い融点、殊に130℃より高い融点、かつ特に有利には150℃より高い融点を有する、かかるポリマー又はコポリマーのフィルムが存在していてよい。好ましくは、20〜95%の結晶度、有利には40〜80%の結晶度を有する、セラミック複合材料中のポリマー基材としてのかかるポリマーのフィルムが存在している。特に有利には、キャリア基材として次のプラスチックの少なくとも1種からのフィルムが使用される:
a)ポリエチレンテレフタレート、
b)ポリアクリロニトリル、
c)ポリエステル、
d)ポリアミド、
e)芳香族ポリアミド(アラミド)、
f)ポリオレフィン、
g)ポリテトラフルオロエチレン、
h)ポリスチレン、
i)ポリカーボネート、
k)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、
l)セルロース水和物
【0042】
穿孔されていない適した前駆フィルムは、例えばDTF(デュポン帝人フィルム)より購入することができる。
【0043】
このようなプラスチックフィルムは、自体公知の方法で平面押出成形あるいはチューブ押出成形によって又は溶液からの鋳込み成形によって製造される。この方法で、穿孔することが必要である閉じられた前駆フィルムが得られる。閉じられたポリマーフィルムを穿孔するための適したレーザーアシスト法は、US7083837に記載されている。GR Advanced Materials Limited社より"Microperforated Film"との表題で英国特許庁に本出願と同時に委託されていた方法も適している。これらの刊行物の教示内容も、その点では引用される。
【0044】
ポリマーフィルムが25μmより小さい厚さ、好ましくは15μmより小さい厚さ、かつ特に有利には1〜15μmの厚さを有する場合に好ましくありうる。キャリア基材の非常に僅かな厚さによって、セラミック複合材料全体が25μmより小さい厚さを有することを達成することができる。有利な本発明によるセラミック複合材料は、25μmより小さい厚さ、殊に4〜20μmの厚さを有する。セラミック複合材料の厚さは、その特性に大きな影響を及ぼし、それというのも、一方では柔軟性が、他方ではまた電解質で浸されたセラミック複合材料の面積抵抗も、セラミック複合材料の厚さに依存するからである。僅かな厚さによって、電解質との適用においてセラミック複合材料の特に低い電気抵抗が達成される。セラミック複合材料自体は、当然のことながら非常に高い電気抵抗を有しており、それというのも、該セラミック複合材料自体は、絶縁特性を有していなければならないからである。加えて、より薄いセラミック複合材料は、バッテリースタック中での高められた充填密度を可能にするので、同じ体積でより大きなエネルギー量を蓄えることができる。
【0045】
穿孔されたフィルムであるキャリア基材は、好ましくは、500μmより小さい直径を有するホール、有利には300μmより小さい、かつ特に有利には40〜150μmの直径を有するホールを有する。穿孔の断面形状が、有利な円形形状とは異なる場合、前述の直径とは、そのつど穿孔の最大延長部、つまり、外接円の直径と解される。
【0046】
穿孔されたフィルムは、好ましくは、ポリマーフィルムの総面積のホールの割合が10〜90%となる程度の量のホールと大きさのホールを有する。それにより、ポリマー基材は10〜90%の有孔面積を有しており、すなわち、個々のホールの断面積の合計は、キャリア基材の外側の輪郭内の総面積の10〜90%である。好ましくは、ポリマー基材は、10〜80%、特に有利には20〜75%の有孔面積を有する。
【0047】
フィルム内での統一された直径を有する円形のホールの均一かつ規則的な分布の場合、ホール密度はppi(1インチ当たりの孔数)で示されることができる。穿孔直径と個々のホール間の間隔の選択により、ホール密度が決められる。これに関する詳細な内容は、実施例に記載される。
【0048】
ポリマー基材が、30ppiより大きい密度、好ましくは40ppiより大きい密度、かつ極めて有利には50〜700ppiの密度を有するホールを有する場合に好ましくありうる。面積単位毎の十分に多数のホールによって、基材の十分に大きな多孔性が達成されるので、基材自体はイオン伝導性に対して可能な限り低い抵抗を有する。
【0049】
本発明によるセラミック複合材料のコーティング中に含有されるセラミック粒子は、好ましくは、0.01〜10μm、好ましくは0.1〜8μm、かつ特に有利には0.1〜5μmの平均粒度d50を有する。セラミック粒子の平均粒度は、セラミック複合材料の製造に際してレーザー小角散乱を用いて測定されることができるか、又はセラミック複合材料のポリマー構成要素の分離によって、例えばセラミック粒子からポリマーを溶解することによって測定されることができる。
【0050】
セラミック粒子が、10μmの最大粒度、好ましくは10μmより小さい最大粒度、かつ特に有利には7.5μmより小さい最大粒度を有する場合に好ましくありうる。最大粒度を制限することによって、セラミック複合材料が特定の厚みを超過しないことを保証することができる。最大粒度並びに粒度分布は、例えばレーザー回折によって又は相応する試験用篩のフィルター残留物として測定されることができる。
セラミック粒子として、原則的に、電気伝導性ではない全てのセラミック粒子がセラミック複合材料中に存在していてよい。好ましくは、セラミック複合材料中には、マグネシウム、ケイ素、ホウ素、アルミニウム及びジルコニウム又はそれらの混合物から選択されたセラミック粒子が存在している。有利には、セラミック粒子は、マグネシウム、バリウム、ホウ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、亜鉛、ケイ素の酸化物粒子、又はこれらの金属の混合酸化物、殊にB23、Al23、ZrO2、BaTiO3、ZnO、MgO、TiO2及びSiO2である。
【0051】
本発明によるセラミック複合材料は、損傷なしに、好ましくは、100mの各半径まで、好ましくは100mm〜50mmの半径まで、かつ極めて有利には50mm〜0.5mmの半径まで曲げられる。屈曲にも本発明によるセラミック複合材料は損害を被らずに持ちこたえる。それ以外に、本発明によるセラミック複合材料は、好ましくは、少なくとも1N/cm、有利には少なくとも3N/cm、かつ極めて有利には5N/cmより大きい引裂強さ(Zwick社の引張測定装置を用いて測定:ASTM D882の方法に従う)を有することを特徴とする。本発明によるセラミック複合材料の高い引裂強さ及び良好な可撓性は、バッテリーの充電及び放電に際して生じる電極の形状の変化が、セラミック複合材料によって、これが損傷することなく一緒に引き受けられるという利点を有する。そのうえ可撓性は、このセラミック複合材料を用いて市販の規格化された巻き上げセルを製造できるという利点を有する。これらのセルの場合、電極/セラミック複合材料の層は規格化されたサイズで、相互に渦巻状に巻き取られ、かつ接続される。
【0052】
好ましくは、本発明によるセラミック複合材料は、30〜60%、有利には40〜50%の多孔率を有する。該多孔率は、その際、到達可能な細孔、つまり連続細孔に関する。その際、多孔率は、水銀多孔度測定法の公知の方法(DIN66133に依拠)によって測定されることができる。
【0053】
本発明によるセラミック複合材料は、様々の方法で製造されることができる。好ましくは、本発明によるセラミック複合材料は、後記の本発明による方法によって得られるか、もしくは次の工程を包含する方法によって得られる:
a)閉じられたポリマーフィルムを準備する工程、
b)該ポリマーフィルムに、該ポリマーフィルムが、多数の規則的に配置されたホールから成る穿孔を得るように穴をあける工程、
c)セラミック粒子を有する多孔質コーティングを、穿孔されたポリマーフィルムの少なくとも一方の面に施与する工程
【0054】
それゆえ本発明の対象はまた、今ちょうど記載した工程を有するセラミック複合材料の製造法でもある。
【0055】
好ましくは、穿孔されたポリマーフィルムへのコーティングの施与は、穿孔されたポリマーフィルムに分散液を施与し、かつ硬化させることによって行われ、その際、該分散液は、セラミック粒子を溶液中に分散し、かつ、その際、該溶液は、好ましくは、有機溶剤中に溶解されたフッ素含有の有機バインダーを含有する。そのうえ該分散液は、好ましくは、酸、例えばHNO3を含有する。本発明の意味における分散液はスラリーでもある。
【0056】
好ましくは、分散液全体において10〜60質量%、有利には15〜40質量%、かつ特に有利には20〜30質量%の割合のセラミック粒子を有する分散液が使用される。
【0057】
好ましくは、バインダーに関して、0.5〜20質量%、有利には1〜10質量%、かつ特に有利には1〜5質量%の割合の好ましくはフッ素含有の有機バイダーを有する分散液が使用される。
【0058】
特に有利には、分散液の製造のために、酸化物粒子として、有利には、0.1〜10μm、好ましくは0.1〜5μmの平均粒度を有する酸化アルミニウム粒子が使用される。そのうえまた、セラミック分散液中には、リチウム含有化合物、殊にLi2CO3、LiCl、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiTf(リチウムトリフルオロメチルスルホネート)、LiTFSi(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド))が導入され、それとともにキャリア基材に施与してよい。有利な粒度の範囲内の酸化アルミニウム粒子は、例えばMartinswerke社よりMZS 3、MZS 1、MDS 6及びDN 206の名称で及びAlCoA社よりCT3000 SG、CL3000 SG、CL4400 FG、CT1200 SG、CT800 SG及びHVA SGの名称で売りに出されている。
【0059】
溶液の製造のために、有機バインダー、好ましくはフッ素含有の有機バインダーが溶剤中に溶解される。溶解されるバインダーの量は、完成した分散液中でのバインダーの上記の割合に従って決められる。溶剤として、有機バインダーを溶解することができる全ての化合物を使用してよい。溶剤として、例えば、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトン、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、n−ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルカーボネート、エチルアセテート、クロロホルム又はジクロロメタンから選択される有機化合物又はこれらの化合物の混合物を使用してよい。特に有利には、溶剤として、アセトン、イソプロパノール及び/又はエタノールが使用される。溶液の製造が、軽く加熱しながら、好ましくは30〜55℃で行われる場合に好ましくありうる。溶剤の加熱によって、バインダーの溶解を速めることができる。
【0060】
分散液の硬化は、好ましくは溶剤の除去によって行われる。溶剤の除去は、好ましくは溶剤の気化もしくは蒸発によって行われる。溶剤の除去は、室温で又は高められた温度で行ってよい。高められた温度での溶剤の除去は、該溶剤が素早く除去されるべき場合に有利でありうる。環境保護的及び/又は経済的な理由から、気化によって除去された溶剤を捕集し、凝縮し、かつ新たに溶剤として本発明による方法において使用することが好ましくありうる。
【0061】
本発明による方法において、分散液はポリマーフィルムの両面に又は片面にのみ施与され、そこで硬化される。ポリマーフィルムの両面でコーティングを得るために分散液がポリマーフィルムの両面に施与され、そこで硬化される場合、これは1つの作業工程で行ってよい。しかし、分散液がまずフィルムの一方の面に施与され、かつ硬化され、引き続き、分散液がフィルムの他方の面に施与され、かつ硬化される場合も好ましくありうる。
【0062】
本発明による方法において、ポリマーフィルム上への懸濁液の施与は、例えば、印刷、圧着、圧入、ローラー塗布、ブレード塗布、刷毛塗り、浸し塗り、吹き付け塗布又は流し塗りによって行ってよい。特に有利には、殊にポリマーフィルムの両面がコーティングされるべき場合、分散液の施与は、分散液中にポリマーフィルムを浸漬させることによって行われる。
【0063】
セラミック複合材料を製造するための本発明による方法は、例えば、ポリマーフィルムを、1m/h〜2m/sの速度で、有利には0.5m/min〜20m/minの速度で、ロールから巻き戻し、懸濁液をフィルムの一方の面又は2つの面に施与及び/又はフィルム中に導入する少なくとも1つの装置、例えばローラー、及び該懸濁液の硬化を可能にする少なくとも1つのさらなる装置、例えば場合によりヒーター付きのブロワーに通過させ、かつ、このようにして製造されたセラミック複合材料を第二のロールに巻き取ることにより実施することができる。このようにして、セラミック複合材料を連続法で製造することが可能である。場合により必要とされる前処理工程、例えばフィルムの穿孔も、上述のパラメータを維持しながら連続法で実施することができる。
【0064】
本発明によるセラミック複合材料もしくは本発明により製造されたセラミック複合材料は、バッテリー中のセラミック複合材料として、殊にリチウムバッテリー(リチウムイオンバッテリー)、好ましくはリチウム高出力バッテリー及び高エネルギーバッテリー中のセラミック複合材料として使用することができる。それらは、次いで電気化学セル内でカソードに対してアノードを絶縁するために用いられる。
【0065】
それゆえ本発明の対象はまた、本発明による方法に従って製造されたセラミック複合材料、並びに電気化学セル内でカソードに向かい合うアノードを絶縁するための本発明によるセラミック複合材料の使用でもある。
【0066】
そのうえ本発明の対象はまた、アノード、カソード、電解質及びアノードとカソードの間に配置された本発明によるセラミック複合材料を包含する電気化学セルでもある。
【0067】
電気化学セルは、有利にはリチウムイオン二次電池である。
【0068】
本発明によるセラミック複合材料の使用は、電極間での簡単な統合によって行うことができるが、アノード−セラミック複合材料−カソードから成るスタックの積層によっても行うことができる。かかるリチウムバッテリーは、電解質として、例えば大きなアニオンを有するリチウム塩を、溶剤としてのカーボネート中に有することができる。適したリチウム塩は、例えばLiClO4、LiBF4、LiAsF6又はLiPF6であり、このうちLiPF6が特に有利である。溶剤として適した有機カーボネートは、例えばエチレンカーボナート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネート又はこれらの混合物である。
【0069】
本発明によるセラミック複合材料を有するリチウムバッテリーは、殊に完全電気駆動又はハイブリッド駆動技術による自動車、例えば完全電気自動車、ハイブリッド自動車又は電気二輪車においてか、あるいはまた持ち運び可能な電気機器、例えばラップトップ、カメラ、携帯電話、並びに持ち運び可能な電気工具においても使用されることができる。
【0070】
同様に、本発明によるセラミック複合材料を有するリチウムバッテリーは、固定された適用において、例えばバッテリー(予備電源システム)を用いた自給式の固定された給電装置にて、中断することのない給電装置にて、及び一定エネルギーが供給される場合に使用されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】横断面における本発明によるセラミック複合材料を示す図
【図2】ずらされたホールを有するホールパターンを示す図
【図3】位置合わせされているホールを有するホールパターンを示す図
【図4】ガーレー装置を示す図
【図5】充電挙動のグラフを示す図
【0072】
実施例
今から本発明を、後続の実施例を基にして、添付の図面を利用しながら詳細に説明するが、本発明は記載される実施例に制限されるものではない。
【0073】
図1は、本発明によるセラミック複合材料1の横断面による概略図を示す。セラミック複合材料1は、ポリマーフィルム2の形態における平らなキャリア基材及び該キャリア基材(ポリマーフィルム2)に施与されたセラミック粒子3を有する多孔質コーティング4を包含する。セラミック粒子3は、バインダーにより互いに結合されており、該バインダー5は粒子3間でブリッジを形成している。ポリマーフィルム2は、多数の規則的に配置されたホール6から成る穿孔を備えている。ホール6は貫通ホールである。コーティング4は、キャリア基材の両面に配置されているので、ポリマーフィルム2の穿孔は両面で覆い隠されている。バインダーブリッジ5により互いに結合されている粒子3のいくつかはホール6に存在していることから、コーティング4は、穿孔を形成するホール6を貫通している。有機バインダーは、そのブリッジ5によりセラミック粒子3を互いに結合するだけでなく、粒子3の一部を有機の穿孔フィルム2と結合する。
【0074】
図1の概略図において、ホールの直径dは5μmである。平均粒度d50は1μmである。フィルムの厚さfは5μmである。キャリア基材は両面が約5つの粒子層でコーティングされているので、セラミック複合材料の全体の厚さSは15μmに過ぎない。
【0075】
図2は、本発明の意味におけるホールパターンの第1の実施形態を説明するために平面図での穿孔されたポリマーフィルム2を示す。ポリマーフィルム2は、多数の円形のホール6を有しており、該ホール6は全体として穿孔を形成している。ホール6のいずれも、均一な直径dを有する。ホールパターンは正三角形に起因するものとみなされ、その頂点にはホールが配置されている。ホールの中心間で測定された2つの隣接するホール6の間隔Dは、穿孔の範囲内で一定不変である。ホール6は、互いにずらして配置されている。
【0076】
図3は、本発明の意味におけるホールパターンの第2の実施形態を説明するために平面図での穿孔されたポリマーフィルム2を示す。ポリマーフィルム2は、多数の円形のホール6を有しており、該ホール6は全体として穿孔を形成している。ホール6のいずれも、均一な直径dを有する。ホールパターンは方形に起因するものとみなされ、その頂点にはホールが配置されている。ホールの中心間で測定された2つの隣接するホール6の間隔Dは、穿孔の範囲内で一定不変である。ホールは、同一平面内で整合して配置されている。この方形の実施形態では、5μmのホール直径の場合、50%の有孔面積を得るために6.26μmのホール間隔Dが選択される。
【0077】
本発明によるセラミック複合材料は、以下の通り製造することができる:
まず未穿孔のPETポリマーフィルムを準備し、かつ該ポリマーフィルムが図2又は3で示されるような穿孔を得るよう穴をあける。閉じられたポリマーフィルムを穿孔するための適したレーザーアシスト法は、US7083837に記載されている。GR Advanced Materials Limited社より"Microperforated Film"との表題で英国特許庁に本出願と同時に委託された方法も適している。これらの刊行物の開示内容も引用される。例えば、デュポン帝人フィルム(DTF)社のPETフィルムを使用してよく、該フィルムは、1.7μmの厚さfを有し、かつ約70μmの直径を有するホールで穿孔されている。
【0078】
それに続けてスラリーを製造する。そのために、まず9対1のモルモノマー比を有するポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレン−コポリマー(PVdF−co−HFP)の10質量%の溶液(Arkema社、製品名Kynar Flex 2801)をアセトン中で製造する。この溶液4500mLに、Alcoa社の製品名CT3000の酸化アルミニウム、及びアセトン及び硝酸4gからの55質量%の混合物3153gを攪拌しながら混ぜる。攪拌機としてプロペラ式攪拌機を使用する。混合のために300rpmで1時間攪拌する。凝集物をさらに粉砕するために、このようにして得られた混合物を超音波処理(約2時間)に供する。このために、Hielscher社の装置UP400 Sを使用してよい。処理は、スラリー中に>10μmの粒度を有する粒子が存在しなくなるまでのあいだ実施する。これは10μmのメッシュサイズを有する濾布に通すことによる濾過によって並びに溶剤の気化によって引き続き目視検査することにより保証することができる。
【0079】
市販の酸化物粒子の使用は、場合により不十分な結果をもたらすことが判明し、それというのも、非常に幅広い又はポリモーダルな粒径分布が頻繁に存在するためである。従って、有利には、慣用の方法、例えば空気分級及び湿式分級により分級された金属酸化物粒子が使用される。有利には、酸化物粒子として、全量の10%までを占める粗大粒子成分を湿式篩別によって分離したフラクションが使用される。懸濁液の製造に際して典型的な方法、例えば粉砕(ボールミル、アトライターミル、モルタルミル)、分散(Ultra−Turrax、超音波)、磨砕又は細砕によっても粉砕できないか又は粉砕できても非常に困難であるこの妨げとなる粗大粒子成分は、例えば凝集物、硬質の凝塊物、ミルボール磨り減りによる屑片から成りうる。前述の措置によって、コーティングが非常に一様な細孔径分布を有することが達成される。
【0080】
第1表は、様々な酸化アルミニウムの選択がそのつどの多孔質コーティングの多孔率及び結果生じる孔径に如何なる影響を及ぼすのかを概括する。これらのデータの測定のために、相応するスラリー(懸濁液又は分散液)を製造し、そして純粋な成形体として200℃で乾燥させ、かつ硬化させた。
【0081】
【表1】

【0082】
平均孔径及び多孔率とは、水銀多孔度測定法の公知の方法に従って、Carlo Erba InstrumentsのPorosimeter 400を用いて測定することができる平均孔径及び多孔率であると解されるべきである。水銀多孔度測定法は、Washburnの式に基づく(E. W. Washburn著、"Note on a Method of Determining the Distribution of Pore Sizes in a Porous Material", Proc. Natl. Acad. Sci., 7, 115" 16(1921))。
【0083】
セラミック分散液の製造に際して、場合によっては不十分な結果が得られることもある。この場合、調製物に分散助剤(例えばZschimmer & SchwarzのDolapix CE64)及び/又は脱気剤及び/又は脱泡剤及び/又は湿潤剤(後者の3つは、例えば、有機変性シリコーン、フッ素系界面活性剤又はポリエーテルであってよく、これらは、例えばEvonik Degussa GmbH又はTEGOにて入手可能である)及び/又はシランを添加し、それによって改善された加工性及び生成物中でセラミックの橋かけを達成することが好ましくありうる。これらのシランは、一般式
x−Si(OR)4-x
[式中、x=1又は2及びR=有機基、場合によりフッ素含有の有機基]を有し、その際、R基は、同じ又は異なっていてよく、それらの反応性ヒドロキシアルキル基は、共有結合を形成しながら反応することができる。有利なシランは、例えばアミン基(3−アミノプロピルトリエトキシシラン;AMEO)、グリシジル基(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン;GLYMO)又は不飽和基(メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;MEMO)をアルキル基上に持つ。該シランの十分な効果を得るために、それらは分散液に0.1〜20%、有利には0.5〜5%の割合で添加してよい。
【0084】
完成した分散液をポリマーフィルムに施与する前に処理することが好ましくありうる。そのため殊に、場合によっては形成される凝集物を粉砕し、そうして懸濁液中には、所望の最大粒度を有する粒子のみが存在することを保証するために、分散液を超音波で処理することが好ましくありうる。全ての場合において、セラミック粒子の沈殿もしくは再凝集を連続的な攪拌によって防止する必要がある。
【0085】
次いでスラリーを、すでに穿孔された、キャリア基材として用いられるPETフィルム上に施与する。スラリーのフィルム上への施与は、スラリー中にフィルムを手動で浸すことによって行われる。フィルムをスラリーから抜き出した後、垂直に保って滴を落とす。過剰のスラリーの滴を切った後、スラリーでコーティングされたフィルムを空気中で室温にて12時間のあいだ乾燥させる。
【0086】
このようにして製造されたセラミック複合材料を分析した:
【0087】
ガーレー値の測定:ガーレー値は、多孔質材料のガス透過性の基準である。それは、空気100cm3が試験体の1平方インチを12.2インチもしくは30.988cmの水柱の圧力で拡散するのに必要な時間と定義されている。ガーレー装置の概略図は、図4に描写されている。
【0088】
ダイス(15mm DIN 7200に従う)を用いて、まず試験片をセラミック複合材料から切り取り、かつガーレー装置に装着した。装置には、NS29 ソケット(Schliffhuelse)がある。試験体の装着のために、ソケット一式を装置から取り出す。第1の試験片を、ガスケットとネジの間に挿入する。ソケットクランプを用いて、ソケット一式をガラス装置にしっかり留める。それから装置の三方コックを正しい位置に置く。ゴム球を用いて、エチレングリコールのメニスカスを下方の標線に大まかに調節する。三方コックを正しい位置に置き、かつベントバルブを用いて標線に正確に調節する。
【0089】
測定の実施:今となってソケットの二方コックを開く。エチレングリコールのメニスカスが第2の標線を通過したら即座にストップウォッチを開始し、第3の標線で停止する。二方コックは再び閉じられなければならない。測定を繰り返し行う。
【0090】
算出:ポリエチレングリコール400の密度は1.113g/cm3である。密度補正の係数は、それゆえ0.885である。測定に際してのメンブレンの直径は1cmである。そこから0.785cm2の面積が導き出される。ガーレー値は1平方インチのセラミック複合材料の面積に関するものなので、時間は面積で割られる。さらに、100cm3の代わりに10cm3のみを測定体積として用いる。従って、ガーレー値の方程式は次のとおりである:

【0091】
第1の試験体の場合、スラリーによるコーティング後に、8μmの厚さ S、31g/cm2の秤量及び73秒のガーレー値を有する材料が得られた。
【0092】
第2の試験体においては、フィルムを付加的にキャリア不織布に積層した。スラリーによるコーティング後に、20μmの厚さ S、52g/cm2の秤量及び89秒のガーレー値を有する材料が得られた。
【0093】
記載したように製造されたセラミック複合材料の適用性の試験は、リチウムイオン平型電池の形態で電気化学セルを組み立てることによって行った。該バッテリーは、正極材料(LiCoO2)、負極材料(グラファイト)及びエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(質量比1:1)中の1mol/LのLiPF6からの電解質から成っていた。電極の製造のために、正極材料(カーボンブラック(Timcal社、Super P)3%、PVdF(Arkema社、Kynar 761)3%、N−メチルピロリドン50%)もしくは負極材料(カーボンブラック(Timcal社、Super P)1%、PVdF(Arkema社、Kynar 761)4%、メチルピロリドン50%)を100μmの層厚でアルミニウムフィルム(Tokai社、20μm)もしくは銅フィルム(Microhard社、15μm)にナイフ塗布し、恒量になるまで110℃で乾燥させる。2つの上述の試験体を、バッテリーの電極間のセラミック複合材料として使用した。バッテリーは、それぞれ100サイクルを上回って安定に作動した。充電挙動のグラフ(容量vs充填/放電サイクル)を図5に描写されている。
【符号の説明】
【0094】
1 セラミック複合材料、 2 キャリア基材としてのポリマーフィルム、 3 粒子、 4 コーティング、 5 バインダーのブリッジ、 6 穿孔を形成しているホール、 d ホールの直径、 D 2つの隣接するホールの間隔、 d50 平均粒度、 f フィルムの厚さ、 S セラミック複合材料の厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面のキャリア基材(2)及び該キャリア基材(2)に施与されたセラミック粒子(3)を有する多孔質コーティング(4)を包含するセラミック複合材料(1)において、該キャリア基材(2)がポリマーフィルム(2)であり、該キャリア基材(2)は、多数の規則的に配置されたホール(6)から成る穿孔を備えており、かつ、該穿孔は、該キャリア基材(2)の少なくとも一方の面で多孔質コーティング(4)により覆い隠されていることを特徴とする、セラミック複合材料(1)。
【請求項2】
前記ホール(6)が本質的に円形であり、かつ2つの隣接するホール(6)の中心の間隔が穿孔の範囲内で一定不変であることを特徴とする、請求項1記載のセラミック複合材料。
【請求項3】
前記コーティング(4)が前記キャリア基材(2)の両面に施与されており、かつ前記コーティング(4)が前記ホール(6)を貫通することを特徴とする、請求項1又は2記載のセラミック複合材料。
【請求項4】
前記コーティング(4)の前記セラミック粒子(3)がバインダー(5)により互いに結合されており、その際、該バインダー(5)が無機化合物であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項5】
前記バインダー(5)がシランを含有することを特徴とする、請求項4記載のセラミック複合材料。
【請求項6】
前記コーティング(4)の前記セラミック粒子(3)がバインダー(5)により互いに結合されており、その際、該バインダー(5)は有機バインダーであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項7】
前記コーティング(4)の前記セラミック粒子(3)の少なくとも一部が、前記有機バインダー(5)により前記ポリマーフィルムと結合されていることを特徴とする、請求項6記載のセラミック複合材料。
【請求項8】
前記バインダー(5)がフッ素含有ポリマーであることを特徴とする、請求項6又は7記載のセラミック複合材料。
【請求項9】
前記フッ素含有ポリマーがポリビニリデンフルオリドであることを特徴とする、請求項8記載のセラミック複合材料。
【請求項10】
前記バインダー(5)がフッ素含有コポリマーであることを特徴とする、請求項6又は7記載のセラミック複合材料。
【請求項11】
前記フッ素含有コポリマーがポリビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンであることを特徴とする、請求項10記載のセラミック複合材料。
【請求項12】
前記ポリマーフィルム(2)が、以下プラスチック:
a)ポリエチレンテレフタレート、
b)ポリアクリロニトリル、
c)ポリエステル、
d)ポリアミド、
e)芳香族ポリアミド(アラミド)、
f)ポリオレフィン、
g)ポリテトラフルオロエチレン、
h)ポリスチレン、
i)ポリカーボネート、
k)アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、
l)セルロース水和物
の少なくとも1種を含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項13】
前記ポリマーフィルムの厚さが25μmより小さいことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項14】
前記穿孔の各ホール(6)の直径(d)が500μmより小さいことを特徴とする、請求項2から13までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項15】
前記ポリマーフィルムの総面積における前記ホールの割合が10〜90%であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項16】
前記セラミックポリマー粒子(3)が、0.01〜10μmの平均粒度d50を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項17】
前記セラミックポリマー粒子(3)が、10μmの最大粒度を有することを特徴とする、請求項16記載のセラミック複合材料。
【請求項18】
前記コーティングが、以下の元素:リチウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、バリウム、ハフニウムの少なくとも1種の酸化物もしくは混合酸化物であるセラミック粒子を包含することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項記載のセラミック複合材料。
【請求項19】
以下の工程:
a)閉じられたポリマーフィルムを準備する工程、
b)該ポリマーフィルムに、該ポリマーフィルムが、多数の規則的に配置されたホールから成る穿孔を得るように穴をあける工程、
c)セラミック粒子を有する多孔質コーティングを、該穿孔されたポリマーフィルムの少なくとも一方の面に施与する工程、
を包含することを特徴とする、セラミック複合材料、殊に請求項1から18までのいずれか1項記載のセラミック複合材料の製造法。
【請求項20】
前記ポリマーフィルムのへの前記コーティングの施与を、前記穿孔されたポリマーフィルムに分散液を施与し、かつ硬化することによって行い、その際、該分散液は、セラミック粒子を溶液中に分散し、かつ、その際、該溶液は、有機溶剤中に溶解された有機バインダーを含有する、請求項6から18までのいずれか1項記載のセラミック複合材料を製造するための請求項19記載の方法
【請求項21】
分散液全体におけるセラミック粒子の割合10〜60質量%を有する分散液を使用することを特徴とする、請求項20記載の方法。
【請求項22】
有機バインダーの割合0.5〜20質量%を有する分散液を使用することを特徴とする、請求項20又は21記載の方法。
【請求項23】
溶剤として、1−メチル−2−ピロリドン(NMP)、アセトン、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコール、n−ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジメチルカーボネート、エチルアセテート、クロロホルム又はジクロロメタンから選択される有機化合物又はこれらの化合物の混合物を使用することを特徴とする、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記分散液の硬化を溶剤の除去によって行うことを特徴とする、請求項20から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記分散液を前記ポリマーフィルムの両面に施与し、並びに前記ポリマーフィルムのホールに導入し、かつ硬化することを特徴とする、請求項20から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記分散液をまず前記ポリマーフィルムの一方の面に施与し、並びに前記ポリマーフィルムのホールに導入し、かつ硬化し、引き続き前記フィルムの他方の面に施与し、かつ硬化することを特徴とする、請求項25記載の方法。
【請求項27】
請求項19から26までのいずれか1項記載の方法に従って製造されたセラミック複合材料(1)。
【請求項28】
電気化学セル内でカソードと向かい合うアノードを絶縁するための、請求項1から18までのいずれか1項又は請求項27記載のセラミック複合材料(1)の使用。
【請求項29】
カソードを有し、アノードを有し、電解質を有し、かつアノードとカソードの間に配置されたセラミック複合材料を有する電気化学セルにおいて、該セラミック複合材料が、請求項1から18までのいずれか1項記載の又は請求項27記載のセラミック複合材料であることを特徴とする、電気化学セル。
【請求項30】
前記電気化学セルがリチウム二次電池であることを特徴とする、請求項29記載の電気化学セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−525452(P2012−525452A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507651(P2012−507651)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052553
【国際公開番号】WO2010/124892
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(511250437)エボニック リタリオン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Litarion GmbH
【住所又は居所原語表記】Am Wiesengrund 7, D−01917 Kamenz, Germany
【Fターム(参考)】