説明

ポリマーフィルム

【課題】良好な耐候性、透明性、柔軟性、機械的強度および強靱性を有するポリマーフィルムの提供。
【解決手段】2つのポリマー成分を含む溶融加工フィルムであって、第一成分が60〜120℃のTgを有するC1〜C6アルキルアクリレート(コ)ポリマーを含み、および第二成分が10℃より低いTgを有するC1〜C12(アルキル)アクリレート(コ)ポリマーを含み、2つの成分のグラム重量比が0.85未満であり、フィルムの膨潤比が少なくとも15であり、およびポリマー成分のうちの1つが他の成分の存在下で重合される溶融加工フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な耐候性、透明性、柔軟性、機械的強度および強靱性を有する溶融加工されたアクリルフィルムである。
【背景技術】
【0002】
例えば、温室および窓を覆うためなどの屋外用途のために商業的に使用される様々なPVCおよびポリエチレンフィルムがある。これらのフィルムは樹脂から溶融加工(例えば、インフレーションまたはキャスト)され、従って、製造するのに経済的である。しかしながら、かかるフィルムは通常このような用途に使用されるので、時間が経つと劣化する傾向にあり、強度を失い、最終的には役に立たなくなる。従って、それらは、かなり頻繁に取り替えなければならない。
【0003】
アクリルポリマーは、PVCまたはポリエチレンよりも耐候性が優れていることが知られ、その結果、アクリルポリマーは外装ビニルサイディング、窓枠などの上のキャップストックとして用いられてきた。
【特許文献1】米国特許第4,141,935号明細書
【特許文献2】米国特許第3,562,235号明細書
【特許文献3】米国特許第3,843,753号明細書
【特許文献4】米国特許第3,812,205号明細書
【特許文献5】特開平11−077939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらのアクリルフィルムは、基体(例えば、サイディング)により支持され、この基体上に重ねられる。このような基体により支持されていなければ、従来のアクリルフィルムは、PVCおよびポリエチレンフィルムよりも引き裂き強度が悪いこと、また柔軟性が低いことといった望ましくないことに悩まされることとなる。当該分野におけるアクリルフィルムは、米国特許第4,141,935号、第3,562,235号、第3,843,753号、および第3,812,205号におけるものを包含する。しかしながら、かかるフィルムは典型的には、高レベルの架橋剤を含有し、高度に架橋したポリマーは通常、かなりの量のゲル含有量(不溶性ポリマー%)をもたらし、以下に記載される試験法のもとで小さい膨潤比を有する。高いパーセンテージの不溶性ポリマーを含有し、膨潤比の小さい樹脂から形成されるアクリルフィルムは引き裂き強度が低い傾向があり、かかるフィルムが単独で、支持基体上に積層されずに使用されるならば、これらはPVCまたはポリエチレンフィルムと同様に屋外用途の応力に耐えることができない。応力には、風の応力ならびに収縮および膨張力がある。
【0005】
特開平11−077939号は、メチルメチルアクリレートで作られたアクリル(コ)ポリマーを含有する水性コーティング組成物で各面上をコーティングされた熱可塑性ポリウレタンで作られた温室用フィルムを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2つのポリマー成分を含む溶融加工フィルムであって、第一成分が60〜120℃のTgを有するC〜Cアルキルアクリレート(コ)ポリマーを含み、第二成分が10℃より低いTgを有するC〜C12(アルキル)アクリレート(コ)ポリマーを含み、および2つの成分のグラム重量比が0.85未満であり、フィルムの膨潤比が少なくとも15であり、およびポリマー成分の1つが他の成分の存在下で重合される溶融加工フィルムである。
【0007】
本発明のもう一つ別の態様において、フィルムは、60〜120℃のTgを有するC〜C12アルキルアクリレート(コ)ポリマーを含む第三成分をさらに含み、第一および第三成分の合計重量の、第二成分の重量に対するグラム重量比は0.85未満であり、成分の2つは成分の1つの存在下で重合される。
【0008】
あるいは、第三の成分は、第一から第四段ポリマー複合体を含むことができ、ここにおいて、第一エラストマーの比較的柔軟な第一段ポリマーは、約75〜99.8重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレートおよび約0.1〜5重量パーセントの少なくとも1種の架橋性ポリエチレン性不飽和モノマーを含有する水性乳化モノマー系から重合され、第一段モノマー系の合計を100重量パーセントにする残りは1種以上の共重合性モノエチレン性不飽和モノマーを含み、前記モノマー系は、最大ガラス転移温度が−20℃を超えないように選択され;
第二段ポリマーは、第一段重合から得られた水性系の存在下で、約10〜90重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレート、および9〜89.9重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;
ここで、第三段ポリマーは、第二段重合から得られた水性系の存在下で、約5〜40重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルアクリレート、および95〜60重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;
第四段ポリマーは、第三段重合から得られた水性系の存在下で、約80〜100重量パーセントの少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレート、および合計100重量パーセントにする第四段モノマー系の残余の少なくとも1種のC〜Cアルキルメタクリレートを含有する水性乳化モノマー系から重合され;第一段モノマー系の重量はポリマー組成物の合計重量の約10〜75%であり、続く段の重量は、ポリマー組成物の合計重量の約90〜25%であり、ここで、約0.1〜1重量パーセントの少なくとも1種のグラフト結合性モノマーが第一および第二段モノマー系のそれぞれに組み入れられ、ここで、グラフト結合性モノマーは少なくとも2つの付加重合性不飽和官能基を含有する共重合性モノマーであり、そのそれぞれは互いに実質的に異なる速度で重合する。この第四段ポリマー複合体は、米国特許第4,141,935号に開示され、この特許は本発明の一部として参照される。
【0009】
本発明において、第一成分は、好ましくは1,000,000未満の重量平均分子量を有し、第二成分は3,000,000より高い重量平均分子量を有し、第三成分は1,000,000未満の重量平均分子量を有する。好ましくは、第三成分は300,000未満の重量平均分子量を有する。
【0010】
好ましくは、本発明のフィルムは前記ポリマー成分から作られ、これらの成分は、乳化重合を用いて形成され、溶融加工前に500マイクロメートル未満のラテックス粒子サイズが作り出される。これらの成分は、個々に1より多い成分を含有する粒子を形成する。
【0011】
本発明はまた、前記2成分アクリル組成物から形成された(任意に、前記の3成分アクリル組成物から形成してもよい)外層を有し、及び熱可塑性ポリウレタンおよびポリビニルブチラールまたは2つの組み合わせから選択されるポリマー組成物を含むコア層を前記外層間に有する多層フィルムである。
【0012】
本発明はまた、本発明のフィルムで覆われた温室または農業用トンネルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
「フィルム」により、本発明者らは約0.5mm未満であるポリマーシートを意味する。フィルムが前記の多層フィルムである場合、外層のそれぞれが厚さ約20〜約100マイクロメートルであり、コア層が厚さ約20〜約200マイクロメートルであるのが好ましい。
【0014】
「(コ)ポリマー」により、本発明者らはホモポリマーまたはコポリマーのいずれかまたは両方をさす。
【0015】
「ガラス転移温度」またはTは、下記式のようにFox式[Bulletin of the American Physical Society 第1巻、第3号、123ページ(1956)]を用いて計算されるコポリマーのガラス転移温度を意味する。
【0016】
【数1】

【0017】
コポリマーに関して、wおよびwは、反応容器に添加されたモノマーの重量に基づく2つのコモノマーの重量分率を意味し、Tg(1)およびTg(2)はケルビン度で表された2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度を意味する。3以上のモノマーを含有するポリマーに関しては、さらなる項(w/Tg(n))が追加される。本発明の目的に関するホモポリマーのガラス転移温度は、「Polymer Handbook」,J.BrandrupおよびE.H.Immergut編、Interscience Publishers、1966に記載されているものである。ただし、この出版物は特定のホモポリマーのTgを記載していない。この場合、ホモポリマーのTは示差走査熱量測定法(DSC)により測定される。ホモポリマーのガラス転移温度をDSCにより測定するために、ホモポリマーサンプルを調製し、アンモニアまたは第一アミンの非存在下で維持する。ホモポリマーサンプルを乾燥し、120℃に予熱し、−100℃に急速に冷却し、次いで150℃に20℃/分の速度で加熱し、その間データを集める。ホモポリマーのガラス転移温度は、半高(half−height)法を用いて湾曲の中点で測定される。
【0018】
重合単位として架橋モノマーを含有するコポリマーのTのFox計算は、各架橋モノマーから形成されるホモポリマーのガラス転移温度に基づき、ここで、ホモポリマーはアンモニアまたは第一アミンの存在下ではない。アニオン性モノマーから形成されるホモポリマーのガラス転移温度値は、酸形態におけるアニオン性ホモポリマーに関するものである。
【0019】
重量平均分子量(Mw)は、Polymer Laboratoriesにより供給されるEasiCal PS−2(登録商標)ポリスチレン標準を用いたサイズ排除クロマトグラフィーにより決定される。
【0020】
「粒子サイズ」について言及する場合、本発明者らは、Brookhaven BI−90 Particle Sizerを用いて測定されるエマルジョン(コ)ポリマー粒子の重量平均粒子直径を意味する。好ましくは、本発明のフィルムを形成するために使用されるエマルジョンポリマーの粒子サイズは、30〜500ナノメートル、好ましくは50〜400ナノメートル、さらに好ましくは60〜250ナノメートル、最も好ましくは70〜190ナノメートルである。典型的には、アクリレートポリマーの屈折率は、メタクリレートポリマーよりも低い。アクリレートおよびメタクリレート成分ポリマーを含有する物質において、物質の粒子サイズが150ナノメートルより低く維持されなければ、屈折率における差は物質の光学特性を低下させる。あるいは、成分ポリマーの屈折率は、比較的高いかまたは低い屈折率のモノマーとの共重合により適合させることができ、物質の粒子サイズを大きい状態に維持することができる。いくつかの用途において、透明物質の代わりに、高透過率を有し、光を拡散する物質が好ましい。異なる屈折率を有する成分材料は、高い曇り度および透過率を達成するために、光が前方に散乱し、ほとんどの光が後方散乱しないようにすることができる。別法として、有機または無機化合物のいずれかである光散乱剤も、光を拡散するために透明物質に添加することができる。
【0021】
「膨潤比」は次のようにして決定される:乾燥粉末またはエマルジョンのいずれかの形態における1部の(コ)ポリマーを50部のテトラヒドロフランと容器中で混合する。混合物を25℃で18時間よく撹拌する。30,000rpmおよび25℃で作動するBeckman Coulter Inc.の超遠心分離機を用いて、溶液中の可溶性ポリマーを膨潤ゲル中の不溶性ポリマーから分離する。可溶性フラクションをデカントすると、「湿潤膨潤不溶性ポリマー」が残る。湿潤膨潤不溶性ポリマーの重量を測定する。次いで、湿潤膨潤不溶性ポリマーを(例えば、真空下で)乾燥して、テトラヒドロフランを除去し、その乾燥重量を測定する。膨潤比はこのようにして計算される。
【0022】
【数2】

【0023】
本発明者らは、以下に記載される試験に関してポリマー不溶性物質(%)を測定した。この測定のために、本発明者らは乾燥ポリマー(「乾燥出発ポリマー」)を前記膨潤比試験のためにTHF中に溶解させる前に秤量し、膨潤比試験のために乾燥不溶性ポリマーを秤量した後に、次式に従って不溶性ポリマー(重量パーセント)を計算する。
【0024】
【数3】

【0025】
〜Cアルキルアクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、i−プロピルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、およびフェニルメタクリレートが挙げられる。
【0026】
〜C12アルキルアクリレートとしては、C〜Cアルキルアクリレートならびにヘプチル2−ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびドデシルアクリレートが挙げられる。
【0027】
前記の第一、第二および/または第三成分は前記の1以上のアルキルアクリレートから重合することができ、または少量の非アルキルアクリレートコモノマーも含有し得る。好適な非アルキルアクリレートコモノマーとしては、スチレン、アルキルスチレン(例えば、メチルスチレンおよびエチルスチレン)、他の置換ビニルベンゼン(置換基は重合を妨害しない)、ビニル多環式芳香族モノマー、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルカプロレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどをはじめとするエチレン性不飽和芳香族モノマーが挙げられる。
【0028】
第一および第二成分について言及する場合、かかる成分の合成が起こす順序は限定されない。第二成分は最初に時間内に調製されるか、またはその逆である。第三成分についても同様である。本発明者らは、これらの成分を簡便のために単に第一、第二または第三と記載しているのであって、それらがある特定の順序で合成される要件として記載はしてない。
【0029】
乳化重合の実践は、D.C.Blackley、Emulsion Polymerization(Wiley、1975)において詳細に議論され、H.Warson、The Applications of Synthetic Resin Emulsions、第2章(Ernest Benn Ltd.、ロンドン 1972年)にも記載されている。
【0030】
エチレン性不飽和モノマーの重合により本発明のフィルムにおいて有用な(コ)ポリマーを形成する場合、通常のフリーラジカル開始剤、例えば、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド;アンモニウムおよび/またはアルカリ金属過硫酸塩、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸およびその塩、過マンガン酸カリウム、およびペルオキシ二硫酸のアンモニウムまたはアルカリ金属塩を、典型的には全モノマーの重量基準で0.01重量%〜3.0重量%の量で用いることができる。好適な還元剤、例えば、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、硫黄含有酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩、例えばナトリウムの亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロ亜硫酸塩、硫化物、ヒドロ硫化物または亜ジチオン酸塩、ホルマジンスルフィン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、ナトリウム2−ヒドロキシ−2−スルフィナト酢酸、アセトンビサルファイト、アミン、例えば、エタノールアミン、グリコール酸、グリオキシル酸水和物、乳酸、グリセリン酸、リンゴ酸、酒石酸、および前記酸の塩;と結合した同じ開始剤(あるいは、本明細書においては酸化剤と称する)を用いたレドックス系を用いることができる。鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、またはコバルトのレドックス反応を触媒する金属塩を用いることができる。
【0031】
エチレン性不飽和モノマーの重合により形成されるポリマーの分子量を制御するため、および/または任意のフリーラジカル生成開始剤を用いて他の方法で得られるものと異なる分子量分布を提供するために、連鎖移動剤、例えば、テトラブロモメタンなどのハロゲン化合物;アリル化合物;アルコール;またはメルカプタン、例えば、アルキルチオグリコレート、アルキルメルカプトアルカノエート、およびC〜C22直鎖または分岐鎖アルキルメルカプタンを使用することができる。具体例としては、アルキルメルカプタン、例えば、n−およびt−ドデシルメルカプタンおよびヘキサンチオール;アルコール、例えば、イソプロパノール、イソブタノール、ラウリルアルコール、およびt−オクチルアルコール;ならびにハロゲン化合物、例えば、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、およびトリクロロブロモエタンが挙げられる。
【0032】
レドックス反応触媒金属塩が用いられる場合、かくして生成したポリマー成分は末端不飽和を含有し得るので、後のポリマー成分がかかる末端不飽和の存在下で重合する場合に、後のポリマー成分は前記不飽和と共重合し、その結果、2成分が共有結合する。非金属連鎖移動剤に関しては、成分はこのような方法で共有結合しない。
【0033】
本発明の1つの実施形態において、C〜C12アルキルアクリレートモノマーをフリーラジカル開始剤および触媒遷移金属キレート剤の存在下で重合させることにより前記の第一成分を調製することができる。好ましいのは、WO02/22734において開示されている遷移金属キレート錯体であり、最も好ましくは遷移金属キレート錯体はコバルト(II)または(III)キレート錯体、例えば、コバルト(II)のジオキシム錯体またはその組み合わせである。これらの錯体は、任意に架橋基、例えば、BF2を含有してもよく、任意にリガンド、例えば、水、アルコールなどと配位してもよい。さらなる好適な遷移金属錯体は、例えば、米国特許第4,694,054号、第5,770,665号、第5,962,609号、および第5,602,220号に開示されている。本発明において有用な、好ましいコバルトキレート錯体は、Co II92,3−ジオキシイミノブタン−BF2)2、前記化合物のCo III類似体、またはその組み合わせである。かかる錯体の空間的配置は、例えば、EP−A−199436および米国特許第5,756,605号に開示されている。第一成分がコバルト触媒を用いて調製される場合、第二成分は第一成分の存在下で、第一成分に続いて重合されるのが好ましい。
【0034】
1以上の本発明の(コ)ポリマー成分は任意に1以上の架橋モノマーを含有してもよい。好適な架橋モノマーは、多エチレン性不飽和モノマーであって、各架橋剤上のエチレン性不飽和基がほぼ等しい反応性を有するもの;異なる反応性の2以上の非共役二重結合を有する多エチレン性不飽和モノマー;およびその組み合わせから選択されるものを包含する。これらの実施形態のいくつかの態様において、多エチレン性不飽和モノマーであって、エチレン性不飽和基がほぼ等しい反応性を有するものは、ジビニルベンゼン;グリコールジ−およびトリメタクリレートおよびアクリレート:ならびにトリオールトリアクリレートおよびメタクリレートから選択される。これらの実施形態のいくつかの態様において、架橋モノマーは、ブチレングリコールジアクリレートから選択される。これらの実施形態のいくつかの態様において、異なる反応性の2以上の非共役二重結合を有する多エチレン性不飽和モノマーはアリルメタクリレート;ジアリルマレエートおよびアリルアクリルオキシプロピオネートから選択される。
【0035】
本発明の1つの実施形態において、多成分(コ)ポリマーは乳化重合により調製され、これは粉末、または他の固体粒子として、これを含有する分散液(例えば、水性エマルジョン)から当該分野において周知の方法により単離することができる。これらの方法は、例えば、噴霧乾燥、凝集およびオーブン乾燥、凍結乾燥、および液化押出を包含する。
【0036】
本発明のフィルムは、多成分(コ)ポリマーの形成および溶融加工により調製することができる。そのまま、または以下に記載される添加剤と組み合わせて溶融加工することができる。添加剤が含められる場合、これらは、アクリルポリマーと当業者に周知の本郷方法により組み合わせることができる。例えば、Henschel Blender(Henschel Mixers Americas(テキサス州ヒューストン)から入手可能)を用いてアクリルポリマーを添加剤と混合することができる。手作業での混合(例えば、アクリルポリマーの成分を袋中で振ることによる)も、前押出してペレットを形成する場合の前に用いることができる。
【0037】
通常の添加剤を溶融加工前にアクリルポリマー中に組み入れることができる。添加剤は、例えば、潤滑剤、安定剤、および加工助剤を包含する。安定剤は、熱によるアクリルポリマーの分解、紫外線に刺激された酸化的分解、機械的分解、および変色を予防する働きをする。他の添加剤としては、例えば、着色剤、無機顔料、ポリマーまたは無機フィラーおよび粒状エキステンダーが包含され得る。さらに、農業用目的に関して、添加剤は、例えば、たれ落ち防止(anti−dripping)剤、かぶり防止(anti−fogging)剤、抗真菌剤、紫外線遮断剤、任意に光拡散剤または修飾剤を包含する。
【0038】
フィルムが多層である場合、本発明の多層フィルムのフィルムの外層において使用するのに好適な可塑剤はモノマーおよびポリマーの両方であってよく、これに限定されないが、フタレート系、例えば、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート(DEHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ビス(n−ブチル)フタレート(DNBP)、ブチルベンジルフタレート(BBzP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジ−n−オクチルフタレート(DOP)、ジエチルフタレート(DEP)、ブチルオクチルフタレート(BOP)、ベンゾエート、例えば、プロピレングリコールジベンゾエート(PGDB)、ジプロピレングリコールジベンゾエート(DPGDB)、ジエチレングリコールジベンゾエート/ジプロピレングリコールジベンゾエート、脂肪族二塩基性酸エステル、例えば、ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DEHA)、ジメチルアジペート(DMAD)、ジイソオクチルアジペート(DIOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、モノメチルアジペート(MMAD)、マレエート系、例えば、ジブチルマレエート(DBM)、ジイソブチルマレエート(DIBM)、トリメリテート、例えば、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソオクチルトリメリテート(TIOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)、エポキシ化植物性油、グリコール、およびポリマー可塑剤、例えば、アクリルオリゴマーなどが挙げられる。
【0039】
本発明の多層フィルムはいくつかの方法で調製することができる。1つの方法は、インフレーションフィルム法であり、この方法において、層は管状形態に同時押出され、管を次に膨らませて、フィルム厚の大きな気泡を形成することができる。この管の吹込成形は、多層管が押出ダイを出るときに行うことができ、この場合において、膨れた管状フィルムは、管状物質がダイを出る時の速さよりも速い速度で回転するニップロールを通して供給され、従って、管が空気圧下で横方向に膨張する際に、管は機械方向に延伸される。典型的には、ダイ環とフィルムの膨れた管の直径間の膨張比はダイ直径の1.5〜4倍である。溶融壁厚および冷却フィルム厚間のドローダウンは半径方向および縦方向の両方で起こり、気泡内部の空気の体積/圧力を変えること、および引き取り速度を変更することにより容易に制御される。これにより、膨れたフィルムに、押出方向に沿ってのみ引き取られる伝統的なキャストまたは押出フィルムよりも優れた性質のバランスが付与される。インフレーションフィルム法のもう一つ別の利点は、農業用トンネル用途に必要とされる幅の広い(幅30フィート以上)フィルムを製造できることである。
【0040】
この方法のもう一つ別の種類は、管を形成し、これを冷却し、次いで内部気圧下でこれを再加熱して、2対のニップロール間で気泡をトラップすることであり、ここにおいて、1対は、他の対が2対のニップロール間に管を供給する速度よりも速い速度で管を引き取る。気圧が管を横方向に膨張させる際に、この引き取りにより管は機械方向に延伸される。言い換えると、フィルムは、管がダイから押し出される際に一段階において膨らませることができるか、または数段階において行うことができ、管は管状フィルムが製造されるまで数段階において膨張される。
【0041】
第二の方法は、管が完全に同時押出されない以外は第一の方法と類似している。その代わりに、1以上の層が管状形態に押し出され、1以上の層が次いで管上に押出コーティングされて、多層管を形成し、これは膨らまされて、フィルム厚の大きな気泡を形成する。この吹込成形は、管状フィルムが製造されるまで数段階において行うことができる。
【0042】
本発明の単層フィルムも、これらのインフレーションフィルム法に従って調製することができる。
【0043】
インフレーションフィルム法により製造されたレイフラット管状フィルムは形成されたら次にそのままの状態で保持されるか、またはレイフラットの端部を切り、リールに巻き付けられる。
【0044】
フィルムを調製するための溶融加工の別の形態は、キャストフィルム法であり、これはスロットまたはフラットダイから溶融したポリマーを押し出して、薄い溶融シートまたはフィルムを形成することを含む。このフィルムは、冷却ロール(典型的には、水冷され、クロムメッキされている)の表面上に、エアナイフまたは真空ボックスからの空気の送風により「固定」される。フィルムを直ちに急冷し、次いでその端部を切り取った後、巻き付ける。
【0045】
本発明の1つの実施形態において、単層アクリルフィルムは本発明の組成物、または本発明の組成物と、逐次重合法から調製された他のアクリル組成物(例えば、米国特許第4,141,935号、第3,562,235号、第3,843,753号および第3,812,205号に開示されている組成物)との混合から調製することができる。本発明の組成物と、逐次重合法から調製された他のアクリル組成物との混合の重量比は、98:2〜10:90、好ましくは90:10〜50:50である。
【0046】
本発明のもう一つ別の実施形態において、多層フィルムは、本発明のアクリル組成物、または本発明の組成物と、逐次重合法から調製された他のアクリル組成物およびアクリル組成物以外の物質との混合から調製することができる。好適な物質としては、これに限定されないが、熱可塑性ウレタン(「TPU」)またはポリビニルブチラール(「PVB」)が挙げられる。アクリル層のそれぞれが約20〜約100マイクロメートルの厚さであり、非アクリル層が約20〜約200マイクロメートルの厚さであるのが好ましい。
【0047】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、ジイソシアネート成分、ポリオール成分、およびポリマー分子の主鎖中にウレタン結合を有する、公知方法により製造される鎖延長剤を有するポリマーである。ジイソシアネートは脂肪族タイプのジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、および芳香族タイプのジイソシアネートであり得る。ポリオールは活性末端水素原子を含有し、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリル、スチレン、ビニル付加および/または分散ポリオールであり得る。鎖延長剤は、低分子量ジオール、例えば、脂肪族グリコール、芳香族グリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびビス(ヒドロキシエチル)ヒドロキノンである。
【0048】
ポリビニルブチラール(PVB)は任意に透明なポリマーであってよい。これは、ポリビニルアルコール(PVOH)をブチルアルデヒドと、通常、水性媒体中、酸性条件下で反応させることにより製造される。反応混合物を中和し、PVBポリマーを単離し、安定化させ、乾燥する。ポリマーは典型的には12〜25重量%のヒドロキシル(OH)基(ポリビニルアルコール(PVOH)として計算)、好ましくは15〜20重量%のOH基(PVOHとして)を含む。加えて、ポリマーは任意に0.1〜10重量%の残存エステル(COOR)基(例えばアセテートなどのポリビニルエステルとして計算);好ましくは0.1〜3重量%COOR(Rは低級アルキル基である)を含む。ポリマーの残りはアセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが、任意に少量の他のアセタール基、例えば、2−エチルヘキサナール基を含んでもよい。
【0049】
典型的には、PVBポリマーは70,000より高い重量平均分子量を有する。他の硬質プラスチックの柔軟性を改善するために通常使用される好適な可塑剤もPVBポリマー中に組み入れることができる。
【0050】
本発明のフィルムは、様々な異なる目的、特に屋外用に使用できる。1つの使用は、農業または建築(例えば、温室または類似の構造物)において通常使用されるPVBまたはポリエチレンフィルムと置換することである。他の可能性のある使用は、本発明のフィルムが(例えば、同時押出または押出コーティングにより)別の柔軟性物質、例えば、EPDM柔軟性屋根葺き材に積層される場合であり、この場合、本発明のアクリルフィルムは屋根葺き膜に対して改善された耐候性および/または機械的特性を提供することができる。本発明の溶融加工フィルムの他の用途としては、包装、装飾および保護キャッピング、印刷およびグラフィック、ラッピングなどが挙げられる。次の実施例は、本発明において有用な(コ)ポリマーならびに本発明のフィルムの代表例を包含する。
【実施例】
【0051】
〔実施例1〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルプレポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0052】
【表1】

【0053】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気にされたリアクターに混合物Aを入れ、80℃に加熱した。温度が80℃に達したら、混合物Bをリアクター中に入れた。攪拌されたリアクター内容物に混合物Cを添加し、20分間加熱した。混合物DをCyclone I.Q.ホモジナイザーで均質化した後、リアクター中に20分で徐々に添加した。混合物Eを次にCyclone I.Q.ホモジナイザーで均質化した後、リアクター中に120分で徐々に添加した。加熱および攪拌を60分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると157nmであった。
【0054】
〔実施例2〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0055】
【表2】

【0056】
スターラーおよび凝縮器を備えたリアクターに混合物Aを入れ、40℃に加熱した。攪拌しながら、リアクター中の空気を窒素と置換した。混合物BおよびCをリアクター中に入れ、リアクター中の酸素含量をさらに4ppm以下に減じた。混合物D、E、およびFを次にリアクター中に入れ、よく混合した後、混合物Gをリアクター中に40℃で入れた。発熱重合が起こり、リアクターを最高温度で15分間保持した後、70℃に冷却した。混合物Hの半分をリアクター中に添加し、加熱および攪拌を30分間続けた。混合物Hの残りの半分および混合物Iの全部をリアクター中に添加し、その間、リアクターを周囲温度に徐々に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると236nmであった。
【0057】
〔実施例3〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0058】
【表3】

【0059】
スターラーおよび凝縮器を備えたリアクターに混合物Aを入れ、40℃に加熱した。攪拌しながら、リアクター中の空気を窒素と置換した。混合物BおよびCをリアクター中に入れ、リアクター中の酸素含量をさらに4ppm以下に減じた。混合物D、E、およびFを次にリアクター中に入れ、よく混合した後、混合物Gをリアクター中に40℃で入れた。発熱重合が起こり、リアクターを最高温度で15分間保持した後、70℃に冷却した。混合物Hの半分をリアクター中に添加し、加熱および攪拌を30分間続けた。混合物Hの残りの半分および混合物Iの全部をリアクター中に添加し、その間、リアクターを周囲温度に徐々に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると236nmであった。
【0060】
〔実施例4〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0061】
【表4】

【0062】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れ、80℃に加熱した。混合物BおよびCをリアクター中に120分で徐々に添加した。添加完了後、加熱および攪拌を30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると232nmであった。
【0063】
〔実施例5〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルプレポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0064】
【表5】

【0065】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。81℃に加熱された攪拌リアクター中に、15%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を81℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCを次にリアクター中に60分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを81℃で30分間保持した後、周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると183nmであった。
【0066】
〔実施例6〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0067】
【表6】

【0068】
スターラーおよび凝縮器を備えたリアクターに混合物Aを入れ、40℃に加熱した。攪拌しながら、リアクター中の空気を窒素と置換した。混合物BおよびCをリアクター中に入れ、リアクター中の酸素含量をさらに4ppm以下に減じた。混合物D、E、およびFを次にリアクター中に入れ、よく混合した後、混合物Gをリアクター中に40℃で入れた。発熱重合が起こり、リアクターを最高温度で15分間保持した後、70℃に冷却した。混合物Hの半分をリアクター中に添加し、加熱および攪拌を30分間続けた。混合物Hの残りの半分および混合物Iの全部をリアクター中に添加し、その間、リアクターを周囲温度に徐々に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると271nmであった。
【0069】
〔実施例7〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルプレポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0070】
【表7】

【0071】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。81℃に加熱された攪拌リアクター中に、15%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を81℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCを次にリアクター中に60分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを81℃で30分間保持した後、周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると197nmであった。
【0072】
〔実施例8〕
この実施例は、水性エマルジョン中でのアクリルプレポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0073】
【表8】

【0074】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れ、80℃に加熱した。混合物BおよびCをリアクター中に120分で徐々に添加した。添加完了後、加熱および攪拌を30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると251nmであった。
【0075】
〔実施例9〕
この実施例は、水性エマルジョン中での二段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0076】
【表9】

【0077】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。77℃に加熱された攪拌リアクター中に、7.5%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に85分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると169nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に85分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると190nmであった。
【0078】
〔実施例10〕
この実施例は、水性エマルジョン中での二段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0079】
【表10】

【0080】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、7.5%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に90分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると174nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に85分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると192nmであった。
【0081】
〔実施例11〕
この実施例は、水性エマルジョン中での二段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0082】
【表11】

【0083】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、7.5%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に90分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると174nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に85分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると192nmであった。
【0084】
〔実施例12〕
この実施例は、水性エマルジョン中での三段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0085】
【表12】

【0086】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、15%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に60分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると183nmであった。混合物DおよびEを徐々にリアクター中に100分で添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると242nmであった。混合物GおよびHをリアクター中に100分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Iをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃でに攪拌および加熱をさらに30分続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると247nmであった。
【0087】
〔実施例13〕
この実施例は、水性エマルジョン中での二段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0088】
【表13】

【0089】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、15%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に60分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると175nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に100分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると241nmであった。
【0090】
〔実施例14〕
この実施例は、水性エマルジョン中での二段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0091】
【表14】

【0092】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、15%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に60分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると172nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に100分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると233nmであった。
【0093】
〔実施例15〕
この実施例は、水性エマルジョン中での二段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0094】
【表15】

【0095】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、15%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に60分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると173nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に100分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると240nmであった。
【0096】
〔実施例16〕
この実施例は、水性エマルジョン中での二段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0097】
【表16】

【0098】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、15%の混合物Bおよび20%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に60分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると175nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に100分で添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると240nmであった。
【0099】
〔実施例17〕
この実施例は、水性エマルジョン中での三段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0100】
【表17】

【0101】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、35%の混合物Bおよび50%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCを徐々にリアクター中に20分で添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると137nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に90分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると227nmであった。混合物GおよびHをリアクター中に30分で徐々に添加した。添加が完了した後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Iをリアクターに30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃でに攪拌および加熱をさらに30分続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると242nmであった。
【0102】
〔実施例18〕
この実施例は、水性エマルジョン中での三段アクリルポリマーの調製を説明する。脱イオン水を用いて次の混合物を調製した。
【0103】
【表18】

【0104】
スターラーおよび凝縮器を備え、窒素雰囲気のリアクターに混合物Aを入れた。80℃に加熱された攪拌リアクター中に、24%の混合物Bおよび50%の混合物Cを添加した。発熱重合が起こり、リアクターが最高温度に達した後、加熱および攪拌を80℃で10分間続けた。残りの混合物BおよびCをリアクター中に25分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを80℃で30分間保持した。エマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると81nmであった。混合物DおよびEをリアクター中に90分で徐々に添加した。添加完了後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Fをリアクター中に30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃での攪拌および加熱をさらに30分間続けた。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると110nmであった。混合物GおよびHをリアクター中に30分で徐々に添加した。添加が完了した後、リアクターを85℃に上昇させた。混合物Iをリアクターに30分で徐々に添加した後、リアクター温度を80℃に下げた。80℃でに攪拌および加熱をさらに30分続けた後、リアクターを周囲温度に冷却した。得られたエマルジョンの粒子サイズはBrookhaven Instruments粒子サイズ分析器BI−90により測定すると111nmであった。
【0105】
〔実施例19〜21〕
実施例2、3、および18のエマルジョンを凍結乾燥した。乾燥ポリマーをまず、コリンミル(Collin Mill)(W.H.Collin GmbH Maschienefabrik、Aichach、Germany)を用いて175℃で3分間圧延した。圧延が完了した後、溶融ポリマーを金属ロールから剥がし、金属型中に入れ、プレスして、150μm〜300μmの範囲の厚さの薄膜シートにした。カーバープレス(CARVER press)(Carver Press Inc.,Menomonee Falls、Wisconsin)を操作温度185℃、プレス条件2.268トンで3分間、続いて9.07トンで2分間、9.07トンで5分の冷却期間(室温))で使用した。引き裂き伝播抵抗、引っ張り強度、伸びおよび弾性率を測定し、表2に記載する。
【0106】
〔実施例22〜24〕
実施例4、6、および8のエマルジョンを凍結乾燥した。乾燥ポリマーを金属型中に入れ、プレスして、150μm〜300μmの範囲の厚さの薄膜シートにした。カーバープレス(Carver Press Inc.,Menomonee Falls、Wisconsin)を操作温度185℃、プレス条件2.268トンで3分間、続いて9.07トンで2分間、9.07トンで5分の冷却期間(室温))で使用した。フィルムを金属型から剥がし、折りたたみ、型中に入れ、前記条件下で第二の時間プレスした後、機械的特性を測定した。引き裂き伝播抵抗、引っ張り強度、伸びおよび弾性率を測定し、表2に記載する。
【0107】
〔実施例25〜28〕
実施例9、10、11、12のエマルジョンを凍結乾燥した。乾燥ポリマーを、3mmストランドダイを有する実験台規模の一軸スクリュー押出機(RANDCASTLE Extrusion Systems,Inc.,Cedar Grove、New Jersey)で加工した。押出機の温度設定は、第1ゾーンについては120℃であり、第2および第3ゾーンについては185℃であり、ダイ温度も185℃に設定した。RPMは20〜40の範囲に設定した。ポリマーストランドを集め、次に金属型中に入れ、150μm〜300μmの範囲の厚さの薄膜シートにした。プレス条件は実施例14〜16と同じであった。引き裂き伝播抵抗、引っ張り強度、伸びおよび弾性率を測定し、表2に記載する。
【0108】
【表19】

【0109】
〔実施例29〜33〕
実施例1、11、13〜17のエマルジョンを凍結乾燥した。ポリマー不溶物分率および膨潤比を、前記方法を用いて決定し、結果を表3に記載した。フィルム引き裂き強度も、カーバープレスおよび前記条件を用いて調製されたフィルムサンプルに関して集めた。結果を表3に記載する。
【0110】
【表20】

【0111】
〔実施例34〕
米国特許第4,141,935号の実施例に従って調製されたアクリルエマルジョンコポリマーを調製した。エマルジョンを次に、実験室用噴霧乾燥機(NIRO Inc.,Soeborg、デンマーク)を用いて噴霧乾燥した。得られた粉末を30mm二軸スクリュー押出機および4mm2−ストランドダイ(Werner & Phleiderer,Ramsey、New Jersey)でペレット化した。ペレット化条件は:温度は200℃、フィード速度は20lbs/時、RPMは150であった。ペレットを、143000の重量平均分子量および31000の数平均分子量および1.50の屈折率を有する熱可塑性ウレタン(TPU)とともに、30mmダイを有する同時押出インフレーションフィルムライン(Dr.Collin GmbH、Ebersberg,ドイツ)を用いて同時押出して、3層フィルムを作成した。厚さ90μm、かつアクリレート(30μm)/TPU(30μm)/アクリレート(30μm)の構造を有する多層フィルムは次の特性を示した:光透過率:92%より大、引き裂き伝播抵抗(ASTM D1938):8.08kg/cm、引っ張り強度(ASTM D882):4339psiおよび伸び:128%。
【0112】
〔実施例35〕
実施例11から得られたアクリルエマルジョンを、実験室用噴霧乾燥機(NIRO Inc.,Soeborg、デンマーク)を用いて分離した。得られた粉末を実施例34から得られた粉末と70:30の重量比でブレンドし、30mm二軸スクリュー押出機および4mm2−ストランドダイ(Werner & Phleiderer,Ramsey、New Jersey)でペレット化した。ペレット化条件は:温度は200℃、フィード速度は20lbs/時、RPMは150であった。ペレットを、143000の重量平均分子量および31000の数平均分子量および1.50の屈折率を有するTPUとともに、30mmダイを有する同時押出インフレーションフィルムライン(Dr.Collin GmbH、Ebersberg,ドイツ)を用いて同時押出して、アクリレート/TPU/アクリレートの構造を有し、アクリレート:TPUの重量比が40:60である3層フィルムを得た。厚さ125マイクロメートルのフィルムは:光透過率:92%より大、引き裂き伝播抵抗(ASTM D1938):28.5kg/cm、引っ張り強度(ASTM D882):5077psiおよび伸び:419%を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのポリマー成分を含む溶融加工フィルムであって、第一成分が60〜120℃のTgを有するC〜Cアルキルアクリレート(コ)ポリマーを含み、および第二成分が10℃より低いTgを有するC〜C12(アルキル)アクリレート(コ)ポリマーを含み、2つの成分のグラム重量比が0.85未満であり、フィルムの膨潤比が少なくとも15であり、およびポリマー成分のうちの1つが他の成分の存在下で重合される溶融加工フィルム。
【請求項2】
60〜120℃のTgを有するC〜C12アルキルアクリレート(コ)ポリマーを含む第三成分をさらに含み、および第一および第三成分の合計重量の、第二成分の重量に対するグラム重量比が0.85未満であり、および成分のうちの2つが成分の1つの存在下で重合される請求項1記載のフィルム。
【請求項3】
第一成分が1,000,000未満の重量平均分子量を有する請求項1記載のフィルム。
【請求項4】
第二成分が3,000,000より多い重量平均分子量を有する請求項3記載のフィルム。
【請求項5】
第三成分が1,000,000未満の重量平均分子量を有する請求項2記載のフィルム。
【請求項6】
コバルト触媒を用いて第一成分を重合させ、第二成分を続いて第一成分の存在下で重合させる請求項1記載のフィルム。
【請求項7】
ポリマー成分が乳化重合を用いて形成されて、溶融加工の前に500マイクロメートル未満のラテックス粒子サイズが作り出される請求項1記載のフィルム。
【請求項8】
第三成分が300,000未満の重量平均分子量を有する請求項5記載のフィルム組成。
【請求項9】
コア層のいずれかの面上に外層を含み、前記外層が前記の2つのポリマー成分を含み、およびコア層が、熱可塑性ポリウレタン、ポリビニルブチラールまたはその組み合わせから選択されるポリマーを含む、請求項1記載のフィルム。

【公開番号】特開2009−40993(P2009−40993A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−151368(P2008−151368)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】