説明

ポリマーベンジルカルボネート誘導体

本発明は、アミノ含有薬物と結合させてそのインビボ特性を向上させることができるポリマー誘導体に関する。ポリマー誘導体は、後で放出されて本来の形の薬物を生じさせることができる。これらのポリマー誘導体および薬物結合体を調製する方法および、用いる方法が記載される。また別の様相において、本発明は、本明細書に開示される薬物結合体と薬学的に許容される賦形剤との薬学的製剤を提供する。いくつかの実施態様において、製剤は、微粒子中にカプセル化された薬物結合体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2008年8月22日に出願された米国仮特許出願第61/189,751号の利益を主張し、この出願はその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、アミノ含有薬物と結合して薬物のインビボ特性を向上させることができるポリマー誘導体を提供する。本ポリマー誘導体は、後で放出されて本来の形の薬物を生じさせることができる。これらのポリマー誘導体および薬物結合体を調製する方法および用いる方法が記載される。
【背景技術】
【0003】
(背景)
ポリ(エチレングリコール)による薬物の修飾は、薬物の薬理学的特性および生物学的特性を向上させる定評あるプロセスである。
【0004】
タンパク質およびペプチド薬物はインビボで多くの場合に循環半減期が短く、免疫原性が高いことがあり、タンパク質分解されることがあり、溶解度が低いことがある。また、循環系内における治療活性薬物の持続する維持は、明らかに臨床上重要な望ましい特徴である。
【0005】
タンパク質薬物またはペプチド薬物の臨床上の特性を改善するための魅力ある戦略が、親水性ポリマー例えばポリアルキレンオキシド(非特許文献1)、あるいはポリシアル酸(非特許文献2)、デキストランまたはヒドロキシアルキルデンプンのような多糖による薬物の修飾である。タンパク質薬物およびペプチド薬物をポリ(エチレングリコール)(PEG)によって修飾すると、タンパク質またはペプチドの安定性および溶解性が向上するが、多くの場合に活性の低下につながる。しかし、PEG化したタンパク質またはペプチドからPEG部分が後でインビボ放出されるとタンパク質またはペプチドの活性が元に戻る。従って、放出可能なPEGによってタンパク質およびペプチドを誘導体化すると、タンパク質は向上した循環寿命を有する徐放性プロドラッグに変換され得る。例えばインターフェロンα−2(非特許文献3)、エキセンジン−4(非特許文献4)およびインターフェロン−β−1b(非特許文献5)の場合に、これらの向上した生物的特性が示されている。
【0006】
タンパク質およびペプチド以外の薬物分子も、PEG化すると有利である。薬物分子をPEG化すると分子の見かけのサイズが増加し、従って腎臓ろ過が減り、体内分布が変化する。さらに、疎水性リガンドをPEG化するとインビボでのリガンドの溶解性が増加する。最後に、タンパク質およびペプチド以外の薬物分子を放出可能なPEGで誘導体化すると薬物を徐放性プロドラッグに変換する方法が得られる。
【0007】
PEG部分を含んでいるいくつかの放出可能なリンカーが提案されている。特許文献1は、弱い、加水分解に対して不安定な、タンパク質またはペプチドとの結合を有するPEGおよび関連ポリマー誘導体を記載している。しかし、タンパク質またはペプチドからPEGを放出する不安定な結合の加水分解は、本来の形のタンパク質またはペプチドを提供することができない。代わりに、タンパク質またはペプチドは余分な短い分子断片またはタグを含む。
【0008】
特許文献2は、タンパク質またはペプチドのアルコール基またはチオール基と結合して加水分解の反応性が減少したエステルまたはチオエステル結合を生じる立体障害となる結合を有するPEG誘導体を記載している。この減少した加水分解活性は、エステルまたはチオエステル結合のカルボニル炭素の隣の炭素とのアルキルまたはアリール基の結合の結果である。この特許は、PEGの末端の酸素と、結合したカルボン酸またはカルボン酸誘導体のカルボニル基との間のスペーサ中にある結合メチレン基の数を制御することによって、PEGエステルからの薬物の加水分解による送達を制御することができることも開示している。この特許のPEGリンカーは、アミノ含有タンパク質の場合には、得られるアミドが加水分解に対してより安定であり、タンパク質からPEGを放出する能力が低いので、最適ではない。
【0009】
特許文献3および特許文献4は、加水分解により分解可能なポリ(エチレングリコール)のカルバメート誘導体を記載している。PEG部分は、カルバメートを介してタンパク質と結合しているアリール基に取り付けられた加水分解可能でないリンカーを介してタンパク質と結合している。
【0010】
特許文献5および特許文献6は、加水分解可能なフルオレンベースのPEG構築物を記載している。
【0011】
非特許文献6は、アミノ含有化合物のPEGプロドラッグを合成するための一般的な方法論の概要を示している。最初にPEGの酵素的分離、続いて急速な1,4−または1,6−ベンジル脱離反応に依拠し、カルバメートの形で結合した結合アミノ含有薬物を放出する、二重プロドラッグ戦略に従うPEG結合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,515,100号明細書
【特許文献2】米国特許第7,205,380号明細書
【特許文献3】米国特許第6,413,507号明細書
【特許文献4】米国特許第6,899,867号明細書
【特許文献5】国際公開第04/089280号
【特許文献6】国際公開第06/138572号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Roberts et al., Adv. Drug Rev. 54, 459−476 (2002)
【非特許文献2】Fernandes et al., Biochim. Biophys. Acta, 1341, 26−34 (1997)
【非特許文献3】Peleg−Shulman et al., J Med Chem. 47, 4897−4904 (2004)
【非特許文献4】Tsubery et al., J Biol Chem. 37, 38118−38124 (2004)
【非特許文献5】Zhao et al., Bio−conjugate Chem. 17, 341−351 (2006)
【非特許文献6】Greenwaldら(J Med Chem. 42, 3657−3667 (1999))
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(要旨)
本発明は、薬物と結合して薬物のインビボ特性、例えば半減期、溶解性および/または循環、を向上させることができるポリマー誘導体を提供する。ポリマー誘導体は、後で放出されて本来の形の薬物を生じさせることができる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、薬物からのポリマー誘導体の放出は、多段階放出機構に従う。
【0015】
一様相において、本発明は、一般式I
【0016】
【化1】

式中、
Yは、薬物のアミノ基によって容易に置換されてカルバメート結合を形成することができる活性化基であり、
nは、≧1であり、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選ばれ、ここでRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から選ばれ、
POLYMERは、水溶性の非ペプチドポリマーであり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれる
のポリマー誘導体を提供する。
【0017】
別の様相において、本発明は、式II
【0018】
【化2】

式中、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選ばれ、nは、≧1であり、POLYMERは、水溶性の非ペプチドポリマーであり、RおよびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、Rは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から選ばれ、DRUGは、アミノ含有分子、ペプチドまたはタンパク質である
の薬物結合体、あるいは薬物結合体の塩、エステルまたは溶媒和物を提供する。薬物は、血漿タンパク質または血液凝固因子であってよい。特定の実施態様において、薬物は、エリスロポイエチン、H因子、第VIII因子、フォン・ヴィレブランド(von Willebrand)因子、第VIIa因子または第IX因子であってよい。
【0019】
また別の様相において、本発明は、本明細書に開示される薬物結合体と薬学的に許容される賦形剤との薬学的製剤を提供する。いくつかの実施態様において、製剤は、微粒子中にカプセル化された薬物結合体を含む。
【0020】
さらに別の様相において、本発明は、患者における疾患を治療する方法を提供し、この方法は、本明細書に開示されている薬学的製剤を患者に投与することを含む。いくつかの場合に、疾患は血液凝固病であり、薬物結合体の薬物は血漿タンパク質または血液凝固因子である。
【0021】
別の様相において、本発明は、構造式A
【0022】
【化3】

式中、
nは、1、2、3または4であり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、
Halogenは、Br、ClまたはIである
の化合物であって、前提条件として、RおよびRの少なくとも1つは水素と異なる、化合物を提供する。
【0023】
特定の実施態様において、構造式Aの化合物は、
【0024】
【化4】

からなる群から選ばれる。
【0025】
別の態様において、本発明は、構造式B
【0026】
【化5】

式中、
nは、1、2、3または4であり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれる
の化合物であって、前提条件として、RおよびRの少なくとも1つは水素と異なる、化合物を提供する。
【0027】
特定の実施態様において、構造式Bの化合物は、
【0028】
【化6】

からなる群から選ばれる。
【0029】
別の態様において、本発明は、構造式C
【0030】
【化7】

式中、
nは、1、2、3または4であり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、
m−PEG−は、約200から約500,000の分子量を有するモノメトキシポリ(エチレングリコール)である
の化合物であって、前提条件として、RおよびRの少なくとも1つは水素と異なる、化合物を提供する。
【0031】
特定の実施態様において、構造式Cの化合物は、
【0032】
【化8】

からなる群から選ばれる。
【0033】
別の様相において、本発明は、式Fの化合物を調製する方法を提供する。この方法は、下記に示されるように、式Aの化合物、ジエチレングリコールおよび塩基を混合して式Bの化合物を形成させ、次に式Bの化合物を塩基およびモノメトキシポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステル、例えばmPEGメシレート(mPEG−OMs)またはフルオロフェニルスルホネート(mPEG−OTs(F))と反応させて式F
【0034】
【化9】

式中、
nは、1、2、3または4であり、RおよびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、Rは、(C〜C)−アルキルである
の化合物を形成することを含む。
【0035】
別の様相において、本発明は、一般式II
【0036】
【化10】

式中、
POLYMER、X、R、Rおよびnは、式Iにおけるように定義される
を有する薬物結合体をさらに提供する。DRUGは、生物学的応答を誘発することができるアミノ含有分子、ペプチドまたはタンパク質であるか、あるいはアミノ基を含むように修飾される、生物学的応答を誘発することができる分子、ペプチドまたはタンパク質である。
【0037】
別の様相において、本発明は、薬物からのポリマー誘導体の放出の速度を調節する方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
(詳細な説明)
本発明は、アミノ含有薬物と結合して薬物のインビボ特性、例えば半減期、溶解性および/またはインビボ循環、を向上させることができるポリマー誘導体を提供する。ポリマー誘導体は、後で薬物からインビボ放出されて本来の形の薬物を生じさせることができる。薬物からのポリマー誘導体の放出は、多段階放出機構に従うと理論付けられている。
【0039】
本発明は、薬物のアミノ基への放出可能なポリマー誘導体の、カルバメート結合を形成する結合を記載する。本発明のポリマー誘導体が薬物と結合すると、薬物の水溶性が増加し、例えば腎臓クリアランスの低下および分解酵素に対する保護を通じて血漿半減期を長くし、凝集、免疫原性および抗原性を妨げるかまたは低下させる。ポリマー誘導体は、インビボで放出されて本来の形の薬物を発生させ、薬物の効力を維持することができると有利である。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、本開示のポリマー誘導体の放出機構が多段階プロセスによって起こり、カルバメート結合の加水分解がこのプロセスの律速段階でない場合も有利である。代わって、反応の律速段階はエステル部分の加水分解であり、エステルのカルボニル炭素の近くの立体障害効果および/または電子効果を操作することによって速くなるかまたは遅くなる加水分解を実現するように調整することができる。従って、薬物の放出の速度は、特定の治療設計に合わせて調整することができる。
【0040】
本明細書において開示されるのは、一般式I
【0041】
【化11】

式中、
Yは、薬物のアミノ基によって容易に置換されてカルバメート結合を形成することができる活性化基であり、
nは、≧1であり、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選ばれ、ここでRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から選ばれ、
POLYMERは、水溶性の非ペプチドポリマーであり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれる
のポリマー誘導体である。
【0042】
ポリマー誘導体を用いて一般式II
【0043】
【化12】

式中、
POLYMER、X、R、Rおよびnは、式Iにおけるように定義される
の薬物結合体を調製することができる。DRUGは、生物学的応答を誘発することができるアミノ含有分子、ペプチドまたはタンパク質、あるいはアミノ基を含むように修飾される、生物学的応答を誘発することができる分子、ペプチドまたはタンパク質である。DRUGは、反応のための1つ以上のアミノ基を含み、従って1つ以上の基がポリマー誘導体と反応することができる。
【0044】
「薬物」は、生物学的応答を誘発するアミノ含有分子、ペプチドまたはタンパク質、あるいは生物学的応答を誘発し、アミノ基を含むように修飾される分子、ペプチドまたはタンパク質を指す。
【0045】
「(C〜C)−アルキル」は、1から6の炭素原子を有する1価アルキル基を指す。この用語の例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシルおよび類似物などの基によって示される。直鎖アルキルおよび分岐アルキルが含まれる。アルキル基は、任意選択として例えば、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリールおよびアミノで置換することができる。
【0046】
本明細書で用いるとき、用語「アルキレン」は、置換基を有するアルキル基を指す。例えば、用語「アルキレンアリール」は、アリール基で置換されたアルキル基を指す。
【0047】
本明細書中で用いるとき、用語「アリール」は、単環または多環の芳香族基、好ましくは単環または2環の芳香族基、例えばフェニルまたはナフチルを指す。特に明記しない限り、アリール基は、置換されていなくてもよく、あるいは、例えばハロ、アルキル、アルケニル、OCF、NO、CN、NC、OH、アルコキシ、アミノ、COH、COアルキル、アリールおよびヘテロアリールから独立に選ばれた1つ以上の基、特に1から4の基で置換されていてもよい。例となるアリール基は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4−メトキシクロロフェニルおよび類似物を含むがそれらに限定されない。
【0048】
「活性化基」(Y)は、アシル置換反応の結果としてカルボニルから置換される部分を指す。例えば、薬物のアミノ基は、下図
【0049】
【化13】

に示されるように、カルボニルに結合していた活性化基を置換してカルバメート結合を形成することができる。
【0050】
意図される特定の活性化基は、ハロゲン化物、−N、−CN、RO−、NHO−、NHRO−、NRO−、RCO−、ROCO−、RNCO−、RS−、RC(S)O−、RCS−、RSC(O)S−、RSCS−、RSCO−、ROC(S)O−、ROCS−、RSO−、RSO−、ROSO−、ROSO−、RPO−、ROPO−、イミダゾリル、N−トリアゾリル、N−ベンゾトリアゾリル、ベンゾトリアゾリルオキシ、イミダゾリルオキシ、N−イミダゾリノン、N−イミダゾロン、N−イミダゾリンチオン、N−スクシンイミジル、N−フタルイミジル、N−スクシンイミジルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルオキシ)、2−チオキソチアゾリジン−3−イル、−ON=C(CN)R、2−ピリジルオキシ、フェノキシ、または置換フェノキシ(例えばp−クロロフェノキシ、p−ニトロフェノキシ、トリクロロフェノキシ、ペンタクロロフェノキシ)を含むがそれらに限定されない。Rは、アルキル基(非置換もしくは置換)またはアリール基(非置換もしくは置換)、または当業者に自明の他の適当な活性化基である。好ましい実施態様において、活性化基は、N−スクシンイミジルオキシ、1−ベンゾトリアゾリルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルオキシ)、p−ニトロフェノキシ、2−チオキソチアゾリジン−3−イルおよびイミダゾリルからなる群から選ばれる。
【0051】
「水溶性ポリマー」は、親水性の非ペプチドホモポリマーまたはコポリマーを指す。用語「水溶性ポリマー」は、直鎖または枝分かれのポリマー、例えばポリ(アルキレングリコール)、水溶性ポリホスファゼンまたは炭水化物系ポリマー、例えば多糖、を含む。水溶性ポリマーは、末端をキャップされていてもよい。意図される水溶性ポリマーの非限定的な例は、ポリエチレングリコール(PEG)、枝分かれPEG、ポリシアル酸(PSA)、多糖、プルラン、キトサン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デンプン、デキストラン、カルボキシメチル−デキストラン、ポリアルキレンオキシド(PAO)、ポリアルキレンオキシドのコポリマー、ポリオキサマー(例えばPLURONIC(登録商標))、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキサゾリン、ポリアクリロイルモルホリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリカルボキシレート、ポリビニルピロリドン、ポリホスファゼン、ポリエチレン−co−無水マレイン酸、ポリスチレン−co−無水マレイン酸、ポリ(1−ヒドロキシメチルエチレンヒドロキシメチルホルマール)(PHF)および2−メタクリロイルオキシ−2’−エチルトリメチルアンモニウムホスフェート(MPC)を含む。水溶性ポリマーは、約200から約500,000の分子量を有してよい。いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーは、約1,000から約25,000、または約40,000から約60,000の分子量を有する。特定の実施態様において、水溶性ポリマーは、約2,000から約10,000の分子量を有する。
【0052】
いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーはPEGであり、PEGは直鎖であっても枝分かれしていてもよい。PEGは、約200から約500,000、例えば約1000から約25,000、約2000から約10,000、または約40,000から約60,000の分子量を有してよい。特定の実施態様において、PEGは約2000の分子量を有してよい。意図される特定のPEGポリマーは、PEG200、PEG300、PEG2000、PEG3350、PEG8000、PEG10,000およびPEG20,000を含む。
【0053】
いくつかの実施態様において、水溶性ポリマーは、PEGと他のポリ(アルキレングリコール)とのブロックポリマー、例えばPLURONIC(登録商標)F127またはPLURONIC(登録商標)F68である。
【0054】
さまざまな実施態様において、水溶性ポリマーは、多糖、例えばPSA誘導体である。多糖は、2から200の間の単糖単位、例えば10から100単糖単位、および/または少なくとも3つの単糖単位を含んでよい。
「放出可能な」ポリマー誘導体は、アミノ含有薬物と結合して結合体を形成するポリマー誘導体を指す。ポリマー誘導体は、インビボで放出され、本来の形の薬物を生じさせる。放出可能の同義語は、「分解可能」または「加水分解可能」である。
【0055】
変数nは、≧1である。一実施態様において、nは、1から10の間およびそのすべての部分範囲の間の整数である。特定の実施態様において、nは、1、2、3、4および5からなる群から選ばれる。
【0056】
変数Xは、O、SおよびNRからなる群から選ばれる。ここで、Rは、水素または(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールである。一実施態様において、XはOである。別の実施態様において、XはNHである。
【0057】
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれる。RおよびRは、独立に、水素または(C〜C)−アルキルのどちらかであってよい。詳しくは、意図されるRおよびRは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルを含む。特定の実施態様において、Rは水素であり、Rは(C〜C)−アルキルである。例えば、Rは水素であり、Rはメチルである。
【0058】
意図されるDRUGの例は、天然酵素、天然源から誘導されるタンパク質、組換えタンパク質、天然ペプチド、合成ペプチド、環状ペプチド、抗体、受容体作動薬、細胞毒性薬、免疫グロビン、ベータ−アドレナリン遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、冠状血管拡張薬、強心配糖体、不整脈治療薬、心臓交感神経作動薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、強心薬、コレステロールおよびトリグリセリド低下薬、胆汁酸排出促進薬(bile acid sequestrant)、フィブラート、3−ヒドロキシ−3−メチルグルテリル(HMG)−CoAレダクターゼ阻害薬、ナイアシン誘導体、抗アドレナリン作動薬、アルファ−アドレナリン遮断薬、中枢作用抗アドレナリン作動薬、血管拡張薬、カリウム保持性利尿薬、チアジドおよび関連の剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、末梢血管拡張薬、抗男性ホルモン薬、エストロゲン、抗生物質、レチノイド、インスリンおよび類縁体、アルファ−グルコシダーゼ阻害薬、ビグアニド、メグリチニド、スルホニルウレア、チザオリジンジオン、アンドロゲン、プロゲストゲン、骨代謝調節薬、下垂体前葉ホルモン、視床下部ホルモン、下垂体後葉ホルモン、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬、排卵刺激薬、選択的エストロゲン受容体調節薬、抗甲状腺薬、甲状腺ホルモン、膨張性薬剤、緩下剤、逆蠕動薬、菌叢調節薬、腸内吸着剤、腸内抗感染薬、坑食欲減退薬、坑悪液質薬、坑過食症薬、食欲抑制薬、坑肥満薬、制酸薬、上部消化管薬、抗コリン作用薬、アミノサリチル酸誘導体、生物反応修飾薬、副腎皮質ステロイド、鎮痙薬、5−HT部分的作動薬、抗ヒスタミン薬、カンナビノイド、ドーパミン拮抗薬、セロトニン拮抗薬、細胞保護薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、粘膜保護薬、プロトンポンプ阻害薬、ピロリ菌根絶治療薬、赤血球生成促進薬、造血薬、貧血症薬、ヘパリン、抗線維素溶解薬、止血薬、血液凝固因子、アデノシン二リン酸阻害薬、糖タンパク質受容体阻害薬、フィブリノーゲン−血小板結合阻害薬、トロンボキサンA阻害薬、プラスミノーゲン活性化因子、抗血栓薬、グルココルチコイド、鉱質コルチコイド、副腎皮質ステロイド、選択的免疫抑制薬、抗真菌薬、予防的治療に関与する薬物、エイズ関連感染症、サイトメガロウイルス、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、ヌクレオシド類縁体逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、貧血症、カポジ肉腫、アミノグリコシド、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リンコサミド、マクロライド、オキサゾリジノン、ペニシリン、ストレプトグラミン、スルホンアミド、トリメトプリムおよび誘導体、テトラサイクリン、駆虫薬、坑アメーバ薬、ビグアニド、キナアルカロイド、葉酸拮抗薬、キノリン誘導体、カリニ肺炎治療薬、ヒドラジド、イミダゾール、トリアゾール、ニトロイミダゾール、環状アミン、ノイラミニダーゼ阻害薬、ヌクレオシド、リン酸吸着薬、コリンエステラーゼ阻害薬、補助治療薬、バルビツール酸および誘導体、ベンゾジアゼピン、ガンマアミノ酪酸誘導体、ヒダントイン誘導体、イミノスチルベン誘導体、スクシンイミド誘導体、抗けいれん薬、麦角アルカロイド、片頭痛治療製剤、生物反応修飾薬、カルバミン酸エステル、三環系誘導体、脱分極薬、非脱分極薬、神経筋麻痺薬、CNS刺激薬、ドーパミン作動薬、モノアミンオキシダーゼ阻害薬、COMT阻害薬、アルキルスルホネート、エチレンイミン、イミダゾテトラジン、ナイトロジェンマスタード類縁体、ニトロソウレア、白金含有化合物、抗代謝薬、プリン類縁体、ピリミジン類縁体、尿素誘導体、アントラサイクリン、アクチノマイシンド、カンプトテシン誘導体、エピポドフィロトキシン、タキサン、ビンカアルカロイドおよび類縁体、抗アンドロゲン薬、抗エストロゲン薬、非ステロイドアロマターゼ阻害薬、プロテインキナーゼ阻害薬、抗新生物薬、アザスピロデカンジオン誘導体、坑不安薬、興奮薬、モノアミンド再摂取阻害薬、選択的セロトニン再摂取阻害薬、抗うつ薬、ベンゾイソオキサゾール誘導体、ブチロフェノン誘導体、ジベンゾジアゼピン誘導体、ジベンゾチアゼピン誘導体、ジフェニルブチルピペリジン誘導体、フェノチアジン、チエノベンゾジアゼピン誘導体、チオキサンテン誘導体、アレルギー誘発性抽出物、非ステロイド薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬、キサンチン、エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタグランジン、肺界面活性剤、粘液溶解薬、坑有糸分裂薬、尿酸排泄薬、キサンチンオキシダーゼ阻害薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、メテアミン塩、ニトロフラン誘導体、キノロン、平滑筋弛緩薬、副交感神経作動薬、ハロゲン化炭化水素、アミノ安息香酸のエステル、アミド(例えばリドカイン、塩酸アルチカイン、塩酸ブピバカイン)、解熱薬、睡眠薬および鎮静薬、シクロピロロン、ピラゾロピリミジン、非ステロイド系抗炎症薬、オピオイド、パラ−アミノフェノール誘導体、アルコールデヒドロゲナーゼ阻害薬、ヘパリン拮抗薬、吸着剤、催吐薬、オピオイド拮抗薬、コリンエステラーゼ再活性化因子、ニコチン代替治療薬、ビタミンA類縁体および拮抗薬、ビタミンB類縁体および拮抗薬、ビタミンC類縁体および拮抗薬、ビタミンD類縁体および拮抗薬、ビタミンE類縁体および拮抗薬、ビタミンK類縁体および拮抗薬を含むがそれらに限定されない。
【0059】
いくつかの実施態様において、DRUGは、タンパク質、抗体または分子である。いくつかの特定の実施態様において、DRUGは、ネオカルジノスタチン、ジノスタチン、アデノシンデアミナーゼ、アスパラギナーゼ、インターフェロンα2b、インターフェロンα2a、成長ホルモンレセプター作動薬、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、坑血管内皮成長因子(VEGF)アプタマー、坑腫瘍壊死因子(TNF)Fab、ジFab抗体、ドキソルビシン、ドキソルビシン−ガラクトサミン、カンプトセシン、パクリタキセル、白金酸塩、エリスロポイエチン、H因子、第VIII因子(FVIII)、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)、第VIIa因子(FVIIa)または第IX因子(FIX)である(例えば、参照によって本明細書に全体が組み込まれるPasut et al., Progr. In Polymer Science 2007, 32, 933−961参照)。特定の実施態様において、DRUGは、例えばエリスロポイエチン、H因子、第VIII因子(FVIII)、フォン・ヴィレブランド因子(vWF)、第VIIa因子(FVIIa)、第IX因子(FIX)および類似物などの血漿タンパク質または血液凝固因子である。
【0060】
一般式IAのポリマー誘導体は、表1に列挙されているものであってよい。
【0061】
【表1】

表2に、本明細書および請求項において用いられる略号が定義されている。本明細書全体にわたってその他の略号が見いだされる。
【0062】
【表2】

別の態様において、本発明は、式Iのポリマー誘導体の調製に関する。スキーム1に、これらの誘導体の調製のための合成プロトコルが示される。「Halogen」は、I、BrおよびClからなる群から選ばれ、変数n、R、RおよびPOLYMER−XHは、本明細書に記載されている通りである。
【0063】
【化14】

合成の第1ステップにおいて、塩基の存在下で化合物1をPOLYMER−XHと反応させて化合物2を形成させる。適当な塩基は、無機塩基(例えば炭酸セシウムおよび類似物)、アルカリ金属水素化物(例えば水素化ナトリウムおよび類似物)、アルコキシド(例えばカリウムtert−ブトキシド)および類似物を含む。
【0064】
合成の第2ステップにおいて、酸の存在下で化合物2を脱保護して化合物3を形成させる。適当な酸は、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸(HCl)および類似物を含む。合成の第3ステップにおいて、カルボン酸化合物3を、活性化基(Y)を有する化合物と反応させて化合物4を形成させる。活性化基を有する適当な化合物は、チオキソチアゾリジンおよびスクシンイミジルエステル、ならびに下記に定義される「活性化基」を有するその他の化合物を含む。合成の第4ステップにおいてY活性化基を4−ヒドロキシベンジルアルコールで置換して化合物5を形成させる。合成の最終ステップにおいて、化合物5を塩基性条件下で二重活性化カルボニル化合物とのカップリング反応に付してポリマー誘導体Iを生じさせる。
【0065】
二重活性化カルボニル化合物の活性化基Y、ZおよびYは、ハロゲン化物、−N、−CN、RO−、NHO−、NHRO−、NRO−、RCO−、ROCO−、RNCO−、RS−、RC(S)O、−RCS−、RSC(O)S−、RSCS−、RSCO−、ROC(S)O−、ROCS−、RSO−、RSO−、ROSO−、ROSO−、RPO−、ROPO−、イミダゾリル、N−トリアゾリル、N−ベンゾトリアゾリル、ベンゾトリアゾリルオキシ、イミダゾリルオキシ、N−イミダゾリノン、N−イミダゾロン、N−イミダゾリンチオン、N−スクシンイミジル、N−フタルイミジル、N−スクシンイミジルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルオキシ)、2−チオキソチアゾリジン−3−イル、−ON=C(CN)R、2−ピリジルオキシ、フェノキシまたは置換フェノキシ(例えばp−クロロフェノキシ、p−ニトロフェノキシ、トリクロロフェノキシ、ペンタクロロフェノキシ)からなる群から独立に選ばれた活性化基、または当業者に自明の他の適当な活性基であり、Rは、アルキル基(非置換もしくは置換)またはアリール基(非置換または置換)である。
【0066】
合成の最終ステップにおける塩基は、反応を触媒することができる任意の塩基である。好ましくは、塩基は有機塩基である。有機塩基の非限定的な例は、例えばトリアルキルアミンおよび選ばれた窒素複素環化合物を含む。意図される特定の有機塩基は、トリエチルアミン(TEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)である。
【0067】
いくつかの実施態様において、ZおよびYは表3に記載されている通りである。
【0068】
【表3】

いくつかの実施態様において、スキーム2に従って式Iのポリマー誘導体を調製することができる。「Halogen」は、I、BrおよびClからなる群から選ばれ、変数n、R、R、YおよびZは、本明細書に定義されている通りである。
【0069】
【化15】

合成の第1ステップにおいて、塩基の存在下で化合物1をジエチレングリコールと反応させて化合物6を形成させる。適当な塩基は、アルカリ金属水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カリウムおよび類似物)、かさ高いアミド(例えばリチウムジイソプロピルアミド(LDA)および類似物)、トリアルキルアミン(例えばDIPEA、TEAおよび類似物)、アルコキシド(例えばカリウムtert−ブトキシドおよび類似物)ならびに無機塩基(例えば水酸化セシウム、炭酸セシウムおよび類似物)を含む。
【0070】
合成の第2ステップにおいて、化合物6のジエチレングリコール部分をスルホン酸エステル活性化モノメトキシポリ(エチレングリコール)との求核置換反応によって延長して化合物7を形成させる(例えば国際公開第2006/099794号参照)。適当なスルホン酸エステル活性化基は、例えばメチルスルホネート(mPEG−OMs)、フルオロフェニルスルホネート(mPEG−OTs)、トリフレート、トシレートおよび類似物である。合成の第3ステップにおいて、酸の存在下で化合物7を脱保護してカルボン酸化合物8を形成させる。適当な酸は、トリフルオロ酢酸(TFA)、塩酸(HCl)および類似物を含む。合成の第4ステップにおいて、化合物8を、活性化基(Y)を有する化合物と反応させて化合物9を形成させる。適当な化合物は、本明細書に記載されている活性化基を有するもの、例えば、N−スクシンイミジルオキシ、1−ベンゾトリアゾリルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルオキシ)、p−ニトロフェノキシ、2−チオキソチアゾリジン−3−イルおよびイミダゾリル)である。合成の第5ステップにおいて、化合物9の活性化基Yを4−ヒドロキシベンジルアルコールで置換して化合物10を形成させる。合成の最終ステップにおいて、化合物10を二重活性化カルボニル、例えば本明細書に記載されているかまたは表3に列挙されている任意の二重活性化カルボニル化合物(例えば炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)、表3の化合物b、cおよびd)および塩基とのカップリング反応に付してポリマー誘導体IAを生じさせる。適当な塩基は、この反応を触媒することができる任意の塩基、例えばトリアルキルアミンおよび選ばれた窒素複素環化合物(例えばトリエチルアミン(TEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)および類似物を含む。
【0071】
表4に、スキーム2の化合物1およびIAの例を示す。
【0072】
【表4】

スキーム3に、特定の実施態様における表4からのポリマー誘導体IAviiの形成のための合成プロトコルを示す。
【0073】
【化16】

合成の第1ステップにおいて、メトキシPEGをメタンスルホニルクロリドで活性化してモノメトキシポリ(エチレングリコール)メタンスルホネート(mPEG−OMs)を形成させる。合成の第2ステップにおいて、mPEG−OMsをジエチルブチルマロネートおよび塩基で処理する。化合物11を形成する適当な塩基は、アルカリ金属水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カリウムおよび類似物)、かさ高いアミド(例えばリチウムジイソプロピルアミド(LDA)および類似物)、トリアルキルアミン(例えばDIPEA、TEAおよび類似物)、アルコキシド(例えばカリウムtert−ブトキシドおよび類似物)、ならびに無機塩基(例えば水酸化セシウム、炭酸セシウムおよび類似物)を含む。ステップ3において、アルカリ金属水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)などの塩基の存在下で化合物11を加水分解して化合物12を形成させる。ステップ4において還流条件下で化合物12を脱炭酸して化合物8viiを形成させる。ステップ5において、化合物8viiを2−チオキソチアゾリジン−3−イル部分で活性化して9viiを形成させる。合成の第6ステップにおいて、9viiのチアゾリジン部分を4−ヒドロキシベンジルアルコールで置換して化合物10viiを形成させる。合成の最終ステップにおいて、化合物10viiを二重活性化カルボニル、例えば炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)、または表3に挙げられている化合物(例えばb、cおよびd)との塩基存在下のカップリング反応に付してポリマー誘導体IAviiを提供する。適当な塩基は、この反応を触媒することができる任意の塩基、例えばトリアルキルアミンおよび選ばれた窒素複素環化合物(例えばトリエチルアミン(TEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ピリジン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)および1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)および類似物)、例えばトリアルキルアミン(例えばDIPEA、TEAまたは類似物を含む。
【0074】
スキ−ム4に、別の特定の実施態様における表4からのポリマー誘導体IAiの調製のための合成プロトコルを示す。
【0075】
【化17】

スキーム4において、mはモノマー単位の数として定義され、分子量分布と整合する範囲の値(例えば4から11,000、または20から500の整数)を有する。
【0076】
1つのポリマー誘導体(IAi)は、約40のmを有し、スキーム4に従って以下のように合成される。塩基性条件下でN−スクシンイミジルエステル(13)が4−ヒドロキシベンジルアルコールでエステル交換されて4−ヒドロキシメチルフェニルエステル10iを生じさせる。Ghoshら(Tetrahedron Lett. 33, 2781−2784 (1992))の方法に従って塩基性条件下で化合物10iを炭酸N,N−ジスクシンイミジル(DSC)で処理する。重炭酸塩水溶液で後処理し、続いてクロロホルム/エーテルから2回再結晶し、IAiを白色の固体として得る。実施例5において、化合物の合成手順の詳細およびキャラクタリゼーションをさらに記載する。
【0077】
本発明の別の様相において、式IIの化合物の調製のための方法が開示される。式Iの化合物を薬物と反応させることによって式IIの化合物を調製することができる。
【0078】
式IIに示される、ポリマー誘導体と結合した薬物は、顕著に増加した半減期、向上した溶解性、減少したタンパク質分解酵素による分解を有する。後で薬物結合体からポリマー誘導体を放出させれば、本来の形の薬物を生じさせ、薬物の活性を回復させることが可能である。薬物結合体からのポリマー誘導体の放出は、スキーム5に示される多段階放出機構に従うと理論付けられる。式中、変数R、R、POLYMER、XおよびDRUGは、式IIにおいて定義されている通りである。
【0079】
【化18】

スキーム5の最初の加水分解ステップが反応の律速段階である。従って、薬物結合体からのポリマー誘導体の開裂の速度は、エステルの求電子炭素の近くの電子効果および立体障害を操作することによって調整することができる。
【0080】
誘導効果を通してエステルのカルボニル炭素の電子密度を減少させることによって、薬物結合体からのポリマー誘導体の開裂速度を増加させることができる。エステルのカルボニル炭素に近い方に電気陰性原子Xを配置することによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度を減少させることができる。例えば、n=2のときよりn=1のときの方が速い加水分解反応が起こる。原子Xの電気陰性度を増加させることによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに減少させることができる。例えば、Xが窒素のときよりXが酸素のときの方が速い加水分解反応が起こる。
【0081】
および/またはRの電気陰性度を増加させることによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに減少させることができる。例えば、RがアルキルのときよりRがアリールのときの方が速い加水分解反応が起こる。Rおよび/またはRを1つ以上の電子吸引部分で置換すると、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに減少させることができる。例えば、Rが−CHのときよりRが−CHFのときの方が速い加水分解反応が起こる。加水分解速度を増加させることができるRおよび/またはR上の置換基のいくつかの例は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、アルケニル、アルキニル、ニトロ、シアノ、カルボニルおよびアリールを含む。Rおよび/またはR上の電子吸引置換基の数を増加させることによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに減少させることができる。例えば、Rが−CHFのときよりRが−CFのときの方が速い加水分解反応が起こる。Rおよび/またはR上の電子吸引部分をエステルのカルボニル炭素に近い方へ動かすことによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらにまたは代わりに、減少させることができる。例えば、Rが2−フルオロエチルのときよりRが1−フルオロエチルのときの方が速い加水分解反応が起こる。
【0082】
誘導効果を通じてエステルのカルボニル炭素の電子密度を増加させることによって、薬物結合体からのポリマー誘導体の開裂速度を減少させることができる。電気陰性原子Xをエステルのカルボニル炭素から遠い方へ配置することによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度を減少させることができる。例えば、n=1のときよりn=2のときの方が遅い加水分解反応が起こる。原子Xの電気陰性度を減少させることによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに増加させることができる。例えば、Xが酸素のときよりXが窒素のときの方が遅い加水分解反応が起こる。
【0083】
および/またはRの電子供与能力を増加させることによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに増加させることができる。例えば、Rが−HのときよりRが−CHのときの方が遅い加水分解反応が起こる。Rおよび/またはRを1つ以上の電子供与性部分で置換すると、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに増加させることができる。例えば、Rが−CFより−CHで置換されているとき、Rが−Hより−CHで置換されているときの方が遅い加水分解反応が起こる。アルキル基(例えばエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチルおよびt−ブチル)は、水素と比較して加水分解速度を減少させることができるRおよび/またはR上の置換基の種類の1つの例である。Rおよび/またはR上の電子供与置換基の数を増加させると、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに増加させることができる。例えば、Rが1つのメチル基で置換されているときよりRが2つのメチル基で置換されているときの方が遅い加水分解反応が起こる。Rおよび/またはR上の電子吸引性部分をエステルのカルボニル炭素から遠い方へ動かすことによって、エステルのカルボニル炭素の電子密度をさらに、または代わりに増加させることができる。例えば、Rが1−フルオロエチルのときよりRが2−フルオロエチルのときの方が遅い加水分解反応が起こる。
【0084】
エステルに対してアルファの炭素上のRおよび/またはRのかさ高さを増加させることを通じてエステルのカルボニル炭素における立体障害を増加させることによって、薬物結合体からのポリマー誘導体の開裂の速度を減少させることができる。例えば、R=R=HのときよりRが−CH、RがHのときの方が遅い加水分解反応が起こる。同様に、Rがn−プロピル、RがHのときよりRがn−ブチル、RがHのときの方が遅い加水分解が起こる。エステルに対してアルファの炭素上の置換基の数を増加させることによって、エステルのカルボニル炭素における立体障害をさらに、または代わりに増加させることができる。例えば、エステルに対してアルファの炭素が1つのメチル基(R=CH、R=H)より2つのメチル基(例えばR=R=CH)で置換されているときの方が遅い加水分解反応が起こる。
【0085】
エステルに対してアルファの炭素上のRおよび/またはRのかさ高さを減少させることを通じてエステルのカルボニル炭素における立体障害を減少させることによって、薬物結合体からのポリマー誘導体の開裂速度を増加させることができる。例えば、Rが−CH、RがHのときよりR=R=Hのときの方が速い加水分解反応が起こる。Rがn−ブチル、RがHのときより、Rがn−プロピル、RがHのときの方が速い加水分解が起こる。エステルに対してアルファの炭素上の置換基の数を減少させることによって、エステルのカルボニル炭素における立体障害をさらに、または代わりに減少させることができる。例えば、エステルに対してアルファの炭素が2つのメチル基(例えばR=R=CH)より1つのメチル基(R=CH、R=H)で置換されているときの方が速い加水分解反応が起こる。
【0086】
開裂溶液のpHを調節することによっても、薬物結合体からのポリマー誘導体の放出をさらに、または代わりに調整することができる。例えば、薬物結合体からのポリマー誘導体の加水分解の速度は、7.5のpHにおけるより8.5のpHにおける方が速い。
【0087】
本発明のさらに別の様相は、本発明の薬物結合体を薬学的に許容される賦形剤、例えば希釈剤またはキャリヤーと共に含む医薬品組成物を目的とする。本発明において用いるのに適している医薬品組成物は、意図する目的を実現するのに有効な量の薬物結合体を投与することができるものを含む。薬物結合体の投与は、任意の経路、例えば経口、注射、吸入および皮下を通してであってよい。製剤は、液体、懸濁液、錠剤、カプセル、マイクロカプセルおよび類似物であってよい。
【0088】
適当な薬学的製剤処方は、投与経路および所望の投薬量に応じて当業者によって決定されてよい。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 1435−712 (18th ed., Mack Publishing Co, Easton, Pennsylvania, 1990)参照。製剤は、投与された剤の物理状態、安定性、インビボ放出の速度およびインビボクリアランスの速度に影響を及ぼすことがある。投与の経路に応じ、体重、体表面積または器官サイズによって適当な投与量を計算してよい。適切な治療投与量を決定するのに必要なさらに精密な計算が、特に動物またはヒトの治験を通して入手可能な薬物動態学的データを考慮して不必要な実験をせずに当業者によって日常業務として行われる。
【0089】
本明細書に開示されている薬物結合体は、カプセル化してコアと、微粒子コアに結合したコーティングとを含む微粒子の形にすることができる。コアは薬物結合体で構成され、コーティングは界面活性剤、抗体および/または当業者に知られている任意の他の適当なコーティング材料で構成されている。粒子は、適当な分析法、例えば示差走査熱量測定法(DSC)またはX線回折によって測定して非晶質、半結晶、結晶、またはそれらの組み合わせであってよい。粒子は、投与前に、均質化プロセスおよび/またはマイクロ沈殿/均質化プロセスによって均質化してよい。
【0090】
コーティングした微粒子は、動的光散乱法(例えば光相関分光法、レーザー回折法、低角レーザー光散乱法(LALLS)、媒質−角度レーザー光散乱法(MALLS))、光暗黒化法(例えばCoulter法)、レオロジーまたは顕微鏡法(光または電子)によって測定して約1nmから約2μmの平均有効粒子サイズを有してよい。好ましい平均有効粒子サイズは、意図される化合物の投与経路、調合、溶解性、毒性および生物利用可能性などの要因に依存する。他の適当な粒子サイズは、約10nmから約1μm、約50nmから約500nm、および/または約100nmから約250nmを含むがそれらに限定されない。
【0091】
コーティングした微粒子は、本明細書に開示されている薬物結合体を含んでいる固体粒子または半固体粒子であってよい。一般に、コーティングした粒子は、少なくとも5%(重量/重量)の薬物結合体、例えば、少なくとも10%(重量/重量)、少なくとも25%(重量/重量)、少なくとも50%(重量/重量)および/または少なくとも75%(重量/重量)以上の薬物結合体からなる。
【0092】
本明細書に記載されている微粒子の薬物結合体コアを調製するためのプロセスは、多数の技法によって実現することができる。代表的な、しかし非包括的な、微粒子の薬物結合体コアを調製するための技法を列挙すると、エネルギー添加技法(例えばキャビテーション、剪断、衝撃力)、沈殿法(例えばマイクロ沈殿法、乳濁液沈殿法、溶媒−反溶媒沈殿法、相反転沈殿法、pHシフト沈殿法、注入沈殿法、温度シフト沈殿法、溶媒蒸発沈殿法、反応沈殿法、圧縮流体沈殿法、低温流体への噴霧法、タンパク質ナノスフェア/マイクロスフェア沈殿法)、ならびに医薬品組成物の粒子分散液を調製するための別の方法を含み、これらのすべては、2009年3月5日および2009年5月15日にそれぞれ出願の米国特許出願第12/398,894号および同第12/467,230号に記載され、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0093】
本発明のこの実施態様の微粒子にコーティングを施すためのプロセスは、当業者に知られているさまざまな技法によって実現することができる。コーティングは、共有結合および/または非共有結合(例えば共有結合、イオン相互作用、静電相互作用、双極子−双極子相互作用、水素結合、ファンデルワールス力、疎水性/疎水性分域相互作用、架橋および/または任意の他の相互作用)を含むさまざまな結合によって粒子と結合させてよい。
【0094】
コーティングは、単一の界面活性剤を含んでもよく、界面活性剤の組み合わせを含んでもよい。界面活性剤は、さまざまな既知の陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および表面活性生物改質剤から選んでよい。適当な界面活性剤は、ポロキサマー、リン脂質、ポリエチレングリコール結合リン脂質およびポリソルベートを含むがそれらに限定されない。あるいは、コーティングは、実質的に界面活性剤を含んでいなくてもよい(例えば2重量パーセント未満の界面活性剤、1重量パーセント未満の界面活性剤または0.5重量パーセント未満の界面活性剤)。
【0095】
語句「薬学的に許容される」および「薬理学的に許容される」は、動物またはヒトに投与したとき、薬害反応、アレルギー反応または他の厄介な反応を生じさせない化合物および組成物を指す。本明細書で用いるとき、「薬学的に許容されるキャリヤー」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤および類似物を含む。薬学的に活性な物質のためのそのような賦形剤の使用は、当分野で周知である。治療用組成物と相溶性でない場合を除いて、治療用組成物中における任意の従来の媒質または薬剤の使用が包含される。補助活性成分も組成物に組み込んでよい。
【0096】
本明細書において用いるとき、「薬学的に許容される塩」は、例えば塩基付加塩および酸付加塩を含む。
【0097】
薬学的に許容される塩基付加塩は、金属またはアミン、例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンによって形成してよい。化合物の薬学的に許容される塩は、薬学的に許容されるカチオンによって調製してもよい。適当な薬学的に許容されるカチオンは当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウムおよび第4級アンモニウムカチオンを含む。炭酸塩または炭酸水素塩も可能である。
【0098】
薬学的に許容される酸添加塩は、無機酸または有機酸の塩を含む。適当な酸塩の例は、塩酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、リン酸塩を含む。
【0099】
本発明は、以下の実施例によって例示されるがそれらに限定されない。
【実施例】
【0100】
一般実験手順
スキーム4の化合物13、10iおよびIAiのための展開溶媒としてクロロホルム:メタノール(7:1)を用いて2.5×7.5cm×250μm(層)のシリカゲル60F254プレート(EMD Chemicals)上で薄層クロマトグラフィー(TLC)を行った。スポットを紫外線およびヨウ素によって可視化した。陽イオンモードで動作するVoyager DESTR TOF質量分析計中で2,5−ジヒドロキシ安息香酸マトリックスを用いるMALDI TOF MSによって質量スペクトルを得た。IAiの後処理に重炭酸ナトリウム希薄水溶液(pH8.26)を用い、重炭酸ナトリウム(1.1g)を水に溶解し、250mLの最終体積に希釈することによって調製した。すべての他の化合物については個々に示すようにTLCを行った。mPEG含有化合物の質量スペクトルは、Voyager DE STR TOF質量分析計またはBruker Ultraflex III TOF/TOF質量分析計の中の2,5−ジヒドロキシ安息香酸および0.1M KClマトリックスを用いるMALDI TOF MSによって得た。1iiを除く低分子量化合物の質量スペクトルは、Waters/Micromass Q−TOFマイクロ質量分析計またはWaters/Micromass Q−TOF API US質量分析計中、0.1%ギ酸を用いるESI−MSによって得た。1iiに関する質量スペクトルは、Waters/Micromass Q−TOF API US質量分析計から、メタノール中で得た。H−NMRは、Bruker Avance I 400またはBruker Avance III 600スペクトロメータを用いて得た。すべてのppm値は、残留CHClまたはDMSOに対するものである。
【0101】
(実施例1)
化合物1i、1ii、1viiおよび1xivの合成
tert−ブチル4−ブロモ−2−メチルブタノエート(1i)の合成
【0102】
【化19】

α−メチルブチロ−γ−ラクトン(86.5g、0.864モル)と三臭化リン(PBr)(86mL、0.912モル)との混合物をアルゴン下150℃から160℃で3時間撹拌した。混合物を周囲温度に冷却し、無水ベンゼン(400mL)を加えた。得られた混合物を加熱して5分間還流させ、周囲温度に冷却した。追加の無水ベンゼン(40mL)の助けを借りて混合物の上澄みを乾いた滴下ロートへ注意深く移した。tert−ブタノール(t−BuOH)(320g、4.32モル)を急速に撹拌しながら滴下ロートの溶液を素早く加え、室温の水浴を用いて内温を15℃から30℃に保った。溶液をt−BuOHにすべて加えた後、得られた混合物を周囲温度で30分間撹拌してから、水、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)および氷の混合物に注いだ。有機層を分離し、氷冷水で洗浄してから、飽和重炭酸ナトリウム水溶液で、水層のpHが8から9になるまで複数回洗浄した。次に、有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。残留物をシリカゲルカラムにかけ、ヘキサン中の酢酸エチル(0から5%)で溶離した。適切な画分を合わせ、濃縮して1iを透明な油(58g、28%収率)として得た。
【0103】
【化20】

MS (TOF) ESI+: [M+Na], 259.01, 261.02 Da。
【0104】
tert−ブチル4−ブロモ−2,2−ジメチルブタノエート(1ii)の合成
【0105】
【化21】

−78℃のα,α−ジメチルブチロ−γ−ラクトン(50.67g、0.444モル)を入れたフラスコにHBr(38g、0.469モル)を加えて撹拌した。HBrを加えた後、反応混合物を周囲温度に戻した。反応溶液は紫色の固体に変化し、ジクロロメタンに溶解させた。得られた溶液を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固して粗製14を若干黒っぽい固体(90.8g)として得た。化合物14を、それ以上精製しないで反応の次のステップに用いた。
【0106】
ステンレス鋼圧力容器の中に置いた凍結乾燥用容器中で、14(50.8g、0.260モル)と95%硫酸(5.0g、0.05モル)との混合物を撹拌した。凍結乾燥用容器は、ガラスライナーの役を務めた。この仕掛けを約−50℃に保持した。イソブテン(50g、0.893モル)を加え、圧力容器を密閉し、周囲温度に戻した。周囲温度で3日間撹拌を続けた。その後、注意深く圧力を放出させ、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)で残留物を希釈した。有機層を分離し、氷冷した重炭酸ナトリウム水溶液で、水層のpHが8から9になるまで複数回洗浄した。次に、有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。残留物をシリカゲルカラムにかけ、ヘキサン中のジクロロメタン(0から25%)で溶離した。適切な画分を合わせ、濃縮して1iiを透明な油(29.5g、2つのステップで45%の総合収率)として得た。このプロセスにおいて、17gの出発原料α,α−ジメチルブチロ−γ−ラクトンも回収した。1iiのスペクトルデータを下記に挙げる。質量スペクトルは、作りたてのメタノール溶液から得た。
【0107】
【化22】

MS (TOF) ESI+:[M+Na],273.04, 275.03 Da。
【0108】
tert−ブチル2−(2−ブロモエチル)ヘキサノエート(1vii)の合成
【0109】
【化23】

アルゴン下、室温で撹拌しながら、t−ブタノール(626g、8.44モル)にヘキサノイルクロリド(160mL、1.16モル)を速やかに加えた。反応温度は、最初は低下したが、ヘキサノイルクロリドの添加が進むにつれて上昇し始めた。次に、反応容器を室温の水浴上に置いて温度を約25から35℃に維持した。添加が完了したら、水浴を取り外し、反応混合物を周囲温度でさらに2時間撹拌した。次に、反応混合物をヘキサンと氷水との混合物に注いだ。有機層を分離し、10%NaCOおよび10%NaOH(1:1)を含む水溶液で洗浄し、塩水で2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。乾燥した有機層を濃縮乾固して15を透明な油(173g、86.5%収率)として得た。これを精製しないでそのまま用いた。
【0110】
−78℃、アルゴン下でTHF(0.8L)中のジイソプロピルアミン(37mL、264ミリモル)の溶液にn−ブチルリチウム(ヘキサン中2.5M、106mL、265ミリモル)を30分間かけて滴下して加えた。混合物を−78℃でさらに20分間撹拌し、化合物15(39g、226ミリモル)を加えた。30分間かけて混合物を−20℃に温まらせ、混合物に1,2−ジブロモエタン(47mL、545ミリモル)を1度に加えた。1,2−ジブロモエタンを加えた後、1.5時間かけて反応混合物を0℃に温まらせ、次にtert−ブチルメチルエーテル(2L)と氷冷NaHSO(1M、400mL)水溶液との混合物に注いだ。有機層を分離し、NaHSO水溶液(1M、100mL)および水(300mL)で洗浄し、次に飽和NaHCO水溶液で、水層のpHが8から9になるまで複数回洗浄した。次に、有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固して粗製の1viiを得た。粗生成物を高真空(1mmHg)下で蒸留し、約88℃から105℃の画分を集めた。生成物(13.5g)をジクロロメタン/ヘキサン1:1を溶離液として用いるフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)によってさらに精製した。適切な画分を合わせ、濃縮して純化合物1viiを透明な油(8.2g、13%収率)として得た。
【0111】
【化24】

MS (TOF) ESI+:[M+Na],301.12, 303.12 Da。
【0112】
tert−ブチル2−(ブロモメチル)ヘキサノエート(1xiv)の合成
【0113】
【化25】

メタノール(150mL)中のジエチルブチルマロネートの溶液を撹拌しながら、メタノール(150mL)中の水酸化バリウム(32.8g、191ミリモル)を加えた。10分後、反応混合物は高粘度の懸濁液となり、撹拌は停止した。反応混合物を室温で3時間放置し、次に、減圧下で濃縮して小さな体積にした。得られた残留物をtert−ブチルメチルエーテル中に懸濁させ、ろ過によって固体を集めた。集めた固形をtert−ブチルメチルエーテル(400mL)と1M HCl(400mL)との混合物に懸濁させ、3時間撹拌した。有機層を分離し、水層をtert−ブチルメチルエーテルで抽出した。tert−ブチルメチルエーテル層を集め、合わせた層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固して16を白色固体(18g、78%収率)として得た。これを精製しないでそのまま用いた。
【0114】
16(155g、0.969モル)、37%ホルムアルデヒド(300mL、4.03モル)およびジエチルアミン(190mL、1.83モル)の混合物を周囲温度で約10分間撹拌し、2時間還流させ、次に周囲温度に冷却した。減圧下で反応混合物を小さな体積に濃縮した。残留物をtert−ブチルメチルエーテルと1M HClとの間で分配した。有機層を分離し、塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固して17を透明な油(103.4g、83%収率)として得た。
【0115】
17(103.4g、0.815モル)とHBr(酢酸中31%、0.4L、2.14モル)との混合物を周囲温度で一夜撹拌した。反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルと氷水との混合物に注いだ。有機層を分離し、1M HClで洗浄し、塩水で洗浄してから硫酸ナトリウム上で乾燥した。乾燥した有機層を濃縮乾固して化合物18を黄色の油(157g、92%収率)として得た。
【0116】
ステンレス鋼圧力容器の中に置いた凍結乾燥用容器の中で18(27g、0.129モル)と95%硫酸(3.2g、0.031モル)との混合物を撹拌した。凍結乾燥用容器は、ガラスライナーとしての役を務めた。仕掛けを約−50℃に維持した。イソブテン(45g、0.804モル)を加え、圧力容器を密閉し、周囲温度に温まらせた。撹拌を周囲温度で2日間続けた。その後、圧力を注意深く放出させ、反応混合物をtert−ブチルメチルエーテルで希釈した。有機層を分離し、氷冷重炭酸ナトリウム水溶液で、水層のpHが8から9になるまで複数回洗浄した。次に、有機層を塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固した。得られた残留物をシリカゲルカラムにかけ、ヘキサン中のジクロロメタン(0から25%)で溶離した。適切な画分を合わせ、濃縮して純化合物1xivを透明な油(18g、52%収率)として得た。
【0117】
【化26】

MS (TOF) ESI+:[M+Na],287.08, 289.09 Da。
【0118】
(実施例2)
スキーム2の中間体の合成
tert−ブチル4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ)−2,2−ジメチルブタノエート(6ii)の合成
【0119】
【化27】

以下の手順をアルゴン下で実行した。Dean−Starkコンデンサーを用いる共沸蒸留によって、ジエチレングリコール(18mL、0.19モル)とトルエン(50mL)との混合物を乾燥した。残留物を室温に冷却し、無水DMF(40mL)を加えた。次に、氷浴を用いて溶液を0℃に冷却し、NaH(鉱油中60%分散物、823mg、21ミリモル)を加えた。5分後、氷浴を取り外し、混合物を室温に温まらせた。1時間50分後、t−ブチル4−ブロモ−2,2−ジメチルブチレート(3.046g、12.1ミリモル)1iiをDMF(2mL)とともに混合物に加えた。反応混合物を室温で一夜撹拌した。次に、反応混合物を水に加え、ジクロロメタンで抽出した。合わせた有機抽出液を水で洗浄し、塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、ろ過し、真空中で濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン1:4から4:1)によって6iiを透明な油(240mg、7.2%収率)として得た。この油は、TLCによって純粋であった。追加の142mgの物質(透明な油)を得たが、この物質は、TLCによって高い方のRのスポットとして可視化することができる不純物を含んでいた。
【0120】
【化28】

ESI(+)MS:[M+Na] = 299.16; [M+K] = 315.17ダルトン。
【0121】
2−(2−メトキシポリエトキシ)エチル)ヘキサン酸(8vii)の合成
【0122】
【化29】

Dean−Starkコンデンサーを用いる共沸蒸留によってジエチレングリコール(33g、0.32モル)とトルエン(120mL)との混合物を乾燥し、得られた残留物を室温に冷却した。残留物に無水ジメチルホルムアミド(DMF、50mL)を加え、混合物を0℃に冷却した。次に、水素化ナトリウム(NaH、1080mg、鉱油中60%、27ミリモル)を加え、混合物を1時間撹拌した。化合物1vii(5.0g、18ミリモル)を加え、混合物を室温で一夜撹拌した。次に、反応混合物を水に注ぎ、ジクロロメタンで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、NaSO上で乾燥し、濃縮乾固した。得られた残留物をフラッシュクロマトグラフィーカラム(シリカゲル)にかけ、ジクロロメタン中のメタノール(5%から10%)で溶離した。適切な画分を集め、濃縮して化合物6viiを透明な油(3.0g、55%収率)として得た。
【0123】
【化30】

MS (TOF) ESI+:[M+Na],327.19 Da。
【0124】
Dean−Starkトラップを用いる共沸蒸留によってトルエン(110mL)中のmPEG−OMs(約5000Da、4.1g、0.82ミリモル)の溶液を乾燥し、70mL分のトルエンを取り除いた。別のフラスコ中で化合物6vii(2.5g、8.23ミリモル)をトルエン(100mL)に溶解し、共沸蒸留によって混合物を乾燥し、60mL分のトルエンを取り除いた。得られた残留物を0℃に冷却し、NaH(500mg、12.4ミリモル)を加えて混合物を形成させた。この混合物を0℃で0.5時間撹拌した。乾燥したmPEG−OMsの溶液を室温でこの混合物に加え、混合物を一夜還流させた。次に、反応物を室温に冷却し、濃縮して残留物とし、最小限の量のジクロロメタン(DCM)中に再溶解した。この溶液にTBMEを加え、得られた沈殿物をろ過によって集めた。沈殿物をジクロロメタン(200mL)に溶解し、水、次いで塩水で洗浄した。溶液をNaSO上で乾燥し、濃縮した。残留物にTBMEを加えて生成物7viiを淡黄色の固体(3.6g、約82%収率、例えば国際公開第2006/099794号参照)として得た。TLC(MeOH/CHCl/NHOH10/90/1)は、少量の不純物とともに、7viiの存在を示した。化合物7viiは、さらには精製しないでそのまま次のステップに用いた。
【0125】
化合物7vii(3.6g)をDCM/トリフルオロ酢酸(20mL、1:1)に溶解し、溶液を室温で一夜撹拌した。反応混合物を濃縮し、得られた残留物をDCMに再溶解し、水で洗浄し、次に塩水で洗浄した。溶液を硫酸ナトリウム上で乾燥し、小さな体積に濃縮し、TBMEで希釈した。沈殿物をろ過によって集め、1から2%のNHOHを含むDCM中のメタノール(7%から10%)で溶離するフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)によって精製した。適切な画分を集め、濃縮して純粋な8vii(1.6g、最後の2つのステップについて31%収率を得た。
【0126】
(実施例3)
4−(ヒドロキシメチル)フェニル2−(2−メトキシポリエトキシ)エチル)ヘキサノエート(10vii)の合成
【0127】
【化31】

ステップ1: mPEG (5000)メタンスルホネート(mPEG−OMs)の調製
参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2004/063250号に記載されているようにモノメトキシポリ(エチレングリコール)メタンスルホネート(約5000Da)を調製した。詳しくは、mPEG−OH(約5000ダルトン、30グラム)をジクロロメタン/トルエン中でメタンスルホニルクロリド(MsCl、4.3当量)およびトリエチルアミン(TEA、4.8当量)と反応させて30グラムのmPEG−OMsを得た。
【0128】
ステップ2: mPEG(5000)−CHCHC(n−C)(COEt)(11)の調製
反応を強制的に完結させるべくマロネートおよびNaHの過剰量をさらに多くなるように変更した、国際公開第2004/063250号に記載されている方法に従って、化合物mPEG−OMsをトルエン/1,4−ジオキサン(1:1、800mL)中、ジエチルブチルマロネート(40当量)およびNaH(40当量)で処理した。反応混合物を一夜還流させてから濃縮して小さな体積にした。反応混合物にジクロロメタンおよび氷水を加えて二相系を生じさせた。濃HClで水層をpH1.0に調整し、両層を振盪し、有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して小さな体積にした。有機層にt−ブチルメチルエーテルを加え、得られた沈殿物をろ過によって集めてmPEG(5000)−CHCHC(n−C)(COEt)(11、40g)を得た。
【0129】
ステップ3: mPEG(5000)−CHCHC(n−C)(COH)(12)の調製
化合物11を水(100mL)の中のNaOH(8.1g)およびNaCl(1.3g)の水溶液と合わせ、80℃で一夜加熱した。次に、溶液を周囲温度に冷却し、ジクロロメタンを加えて二相系を形成させ、水層を濃HClでpH1.8から2.0に調整した。二相系の両層を振盪し、有機層を分離した。水層をジクロロメタンで逆抽出し、有機層を集め、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して小さな体積にした。この小さな体積の有機層にt−ブチルメチルエーテルを加え、得られた沈殿物をろ過によって集めて12(29g)を白色の固体として得た。
【0130】
ステップ4: mPEG(5000)−CHCHC(n−C)(COH)(8vii)の調製
国際公開第2004/063250号に記載されているようにジオキサン(150mL)中の化合物12(29g)を処理した。反応混合物を一夜還流させ、室温に冷却し、濃縮乾固した。得られた残留物を少量のジクロロメタンに溶解し、t−ブチルメチルエーテルを加え、得られた沈殿物をろ過によって集めて8vii(27.4g)を白色の固体として得た。CHCl:MeOH:NHOH(90:10:1)を展開溶媒として用いて活性化シリカゲルプレート上でTLC分析を行った。化合物8viiは、基本的に純粋な化合物(R約0.45)のようであり、mPEG−OHと同時溶離する高めのR(約0.50)の成分によってごくわずかに汚染していた。
【0131】
ステップ5: mPEG(5000)−CHCHC(n−C)(C(=O)tz)(9vii)(tz=チアゾリジン−2−チオン−3−イル)の調製
化合物8vii(2.0g 0.4ミリモル)、ジメチルアミノピリジン(DMAP、98mg、0.8ミリモル)および2−メルカプトチアゾリン(95mg、0.8ミリモル)を無水ジクロロメタン(5mL)に溶解し、溶液を0℃に冷却した。15分間撹拌した後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC−HCl、153mg、0.8ミリモル)を加えた。0℃から室温へ撹拌を一夜続けた。TLC(90:10:1 CHCl:MeOH:NHOH)は、ステップ4からのmPEG(5000)−CHCHC(n−C)(COH)が完全に消費されたことを示した。粗生成物にt−ブチルメチルエーテルを加え、得られた沈殿物をろ過によって集め、乾燥して9viiを黄色の固体(2g)として得た。
【0132】
ステップ6: 4−(ヒドロキシメチル)フェニル2−(2−(2−メトキシポリエトキシ)エチル)ヘキサノエート(10vii)の調製
化合物9vii(1.0g、0.2ミリモル)、4−ヒドロキシベンジルアルコール(98mg、0.8ミリモル)およびDMAP(98mg、0.8ミリモル)を無水ジクロロメタン(10mL)に溶解し、24時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、それにt−ブチルメチルエーテルを加え、得られた沈殿物をろ過によって集めた。沈殿物をジクロロメタンに溶解し、溶液を0.5N HCl、次に塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮乾固して白色の固体を得た。フラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)によって固体をさらに精製し、CHCl:MeOH:NHOH(95:5:0.5から90:10:1)で溶離した。適切な画分を集め、濃縮して10vii(600mg)を白色の固体として得た。H NMRスペクトルに痕跡量のDMAPが見られた。
【0133】
【化32】

(実施例4)
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)−メチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート(IAi)の合成
【0134】
【化33】

ステップ1: 2,5−ジオキソピロリジン−1−イル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート(13)の合成
米国特許第6,992,168号に報告されている方法の変更形によって化合物8iおよび13を調製した。詳しくは、該特許においては結晶化だけによって化合物8iを得ているが、本発明においてはCHCl:MeOH:NHOH(95:5:0.5および90:10:1)を溶離液として用いるフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル)によってさらに精製した。適切な画分を集め、濃縮して純8iを得た。
【0135】
化合物8i(6.0g、1.2ミリモル)を60mLの塩化メチレンに溶解した。この溶液に1.6mLの塩化メチレン中のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS、180mg、1.6ミリモル)とN,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、330mg、1.60ミリモル)を加えた。混合物を一夜撹拌した後にろ過し、エチルエーテル(280mL)を加えて生成物を結晶化させた。混合物を0から5℃で2時間冷却し、沈殿物をろ過によって集め、真空下40℃で3時間乾燥して化合物13(5.58g、93%収率)を白色の粉体として得た。
【0136】
【化34】

ステップ2: 4−(ヒドロキシメチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート(10i)の合成
参照によって本明細書に全体が組み込まれるGreenwald, et al., J. Med. Chem., 1999, 42(18), 3657−3667に報告されている手順の変更形によって13から10iへの変換を行った。55mLの塩化メチレン中の13(5.5g、1.1ミリモル)の溶液に、ジメチルアミノピリジン(DMAP、550mg、4.4ミリモル)および4−ヒドロキシベンジルアルコール(550mg、4.4ミリモル)を加えた。混合物を24時間還流させ、室温に冷却し、さらに40時間撹拌し、ろ過した。ろ液を蒸発乾固し、得られた残留物を熱い2−プロパノール(100mL)に溶解した。溶液を0から5℃に3時間冷却し、沈殿物を形成させた。沈殿物をろ過によって集め、2−プロパノール(30mL)およびエチルエーテル(50mL)で洗浄し、真空下45℃で2.5時間乾燥して10i(4.93g、90%)を白色の固体として得た。13および10iの両方のMaldi TOF質量スペクトルを得た。既に記載した同じ同族体について、理論質量差と観測質量差とを比較した。こうして、同族体105について、13および10iの観測質量はそれぞれ4890.0および4899.2ダルトンであった。観測した差は9.2ダルトンである。非繰り返し単位についての理論的な差は9.03ダルトンの増加である。従って、質量スペクトルデータは、予測される反応が起こったという主張を支持する。
【0137】
【化35】

ステップ3: 4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)−メチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート(IAi、MW約5000ダルトン)の合成
Greenwaldらの方法の変更形によって化合物10iをIAiに変換した。20mLの塩化メチレン中の10i(1.25g、0.25ミリモル)の溶液に炭酸ジスクシンイミジル(DSC、128mg、0.5ミリモル)およびピリジン(79mg、1.0ミリモル)を加えた。混合物を室温で18時間撹拌して透明な溶液を形成させた。溶液を蒸発乾固し、残留物を塩化メチレン(60mL)に溶解した。塩化メチレン溶液をHCl(0.1N、20mL)、飽和NaHCO(25mL)および飽和NaCl(25mL)水溶液で順に洗浄した。有機層をNaSOで乾燥し、蒸発乾固した。残留物を塩化メチレン(10mL)に溶解し、エチルエーテル(40mL)を加えた。混合物を0℃から5℃に2時間冷却した。得られた沈殿物をろ過によって集め、エチルエーテル(40mL)で洗浄し、真空下40℃で2時間乾燥してIAi(890mg、71%)を白色の固体として得た。
【0138】
【化36】

(実施例5)
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)−メチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート(IAi、スキーム4、MW約2000ダルトン)の合成
ステップ1: 4−(ヒドロキシメチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート(10i)の合成
【0139】
【化37】

200mLナシ形フラスコ中の4−ヒドロキシベンジルアルコール(1.1235g、9.05ミリモル、12当量)に30mLのアセトニトリルを加えた。この容器に栓をし、アルコールの大部分が溶解するまで混合物を室温で激しく撹拌した。この容器にトリエチルアミン(1.270mL、9.07ミリモル、12当量)を加え、白色の沈殿物を形成させた。混合物をさらに30分間撹拌し、スキーム4からの13(1.5066g、0.7533ミリモル、1当量)を加えた。化合物13は、mPEG(MW約2000Da)の誘導体であり、mは約40である。室温で撹拌を続け、TLCによって反応を監視した。42時間後、混合物は曇った灰色/白色の懸濁液の外観を呈した。出発原料のほぼすべてが消費されていた。混合物を高真空下で濃縮して黄褐色の油とし、塩化メチレン(30mL)を加えた。得られた混合物を45分間激しく撹拌し、淡黄褐色のスラリーを形成させた。スラリーを2時間静置した後に2本のネジぶたTEFLON(登録商標)遠心分離管へ移した。6mLずつの塩化メチレンで反応容器を2回すすぎ、1回分のすすぎ液を2つの遠心分離管のそれぞれに移した。最後に、10mLずつの氷冷水で反応容器を2回すすぎ、残っている固体物質をすべて溶解させ、1回分のすすぎ液を2つの遠心管のそれぞれに移した。管を断続的に30秒間振っては圧を抜き、次に遠心分離した。それぞれの管から水層(上層)を取り除いた。この水抽出によって未反応の4−ヒドロキシベンジルアルコールおよびトリエチルアンモニウム塩を除去した。2つの管のそれぞれについて氷冷水による抽出を同じ方法でさらに5回繰り返した。
【0140】
有機層を合わせ、曇っていることを観察した。この曇っている溶液を塩化メチレンで110mLとし、焼結ガラスロート(密)を通してろ過した。まだいくらか曇っているろ液を24℃の水浴を用いて高真空下で回転式蒸発法によって濃縮して白色の半固体を得た。エチルエーテル(50mL)を加え、混合物を激しく2時間撹拌し、こうして生成物を白色粒状固体の懸濁物に変えた。中多孔度の焼結ガラスロートを通して懸濁物をろ過し、沈殿物を高真空下24℃で12時間乾燥して10iを白色の固体1.15g(約80%収率)として得た。
【0141】
【化38】

化合物13と10iとの分子量の差が予測通りであることを確認するために質量分析を用いた。これらのスペクトルは、ポリマーの同族体に起因する良好に分解されたピークの包絡線からなっていた。各同族体は、予測通り44ダルトン離れていた。所定の同族体について、どちらの分子においても繰り返しエチレンオキシド単位(−CHCHO−)の全質量は同じである。従って、質量差は、非繰り返し末端基単位の差によるものであろう。13と10iとについて繰り返し末端基単位の厳密な質量は、それぞれ229.10ダルトンおよび238.12ダルトンであり、出発原料と生成物との間の分子量の差は9.02ダルトンの増加である。13および10iの両方について42繰り返し単位による同族体を特定した。観測質量は、13および10iについてそれぞれ2101.50ダルトンおよび2110.12ダルトンであり、差は8.62ダルトンの増加であった。この値を予測された9.02ダルトンの差と比較すると良好であり、従って、質量スペクトルデータは、予測された反応が起こったという主張を支持する。観察された質量からナトリウムを含む非繰り返し単位の全質量を引き、差をエチレンオキシドの質量44.03ダルトンで除することによって、特定の同族体の中の繰り返し単位の数を求めた。整数値を得た。これらの整数を同族体の中の繰り返し単位の数とした。
【0142】
ステップ2: 4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)−メチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート(IAi)の合成
【0143】
【化39】

Ghoshらの方法(Tetrahedron Lett. 33, 2781−2784 (1992))を適応させることによって、化合物IAiを調製した。15mLのアセトニトリルに化合物10i(1.0012g、0.500ミリモル、1当量)を加え、アルゴン下で撹拌した。この溶液に炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)(0.2582g、1.01ミリモル、2当量)を加え、続いてさらに5mLのアセトニトリルを加えた。この溶液を速く撹拌してトリエチルアミン(282μL、2.02ミリモル、4当量)を加え、撹拌を4時間続けた。4時間後、混合物は、濁った灰色/白色の外観を呈し、TLC評価は10iが完全にIAiに変換されたことを示した。いくらか曇っている溶液を24℃の水浴を用いて高真空下の回転蒸発法によって濃縮乾固した。半固体の残留物(わずかに黄色)を塩化メチレン40mLに溶解し、2つのネジぶたTEFLON(登録商標)遠心分離管の間で配分した。管を強く30秒間振り、乳濁液を遠心分離し、水層を取り除くことによってそれぞれの管の中の溶液を10mLのpH8.26の重炭酸ナトリウム水溶液で抽出した。さらに3回抽出を繰り返した。得られたそれぞれの管の中の有機層を10mLの水で4回洗浄し、遠心分離を用いて乳濁を解除した。有機層を合わせ、濃縮して白色の半固体残留物とした。残留物にエチルエーテル(50mL)を加え、混合物を室温で激しく5時間撹拌して半固体を白色粒状固体に変えた。得られた懸濁物を焼結ガラスロート(中)を通してろ過し、高真空下24℃で4時間乾燥してIAiの粗製試料(0.895g、約89%収率)を得た。TLCおよびNMRによるとこの試料は少量の不純物しか含んでいなかった。化合物IAiの一部(0.3198g)を12.5mLのクロロホルムに溶解してからエチルエーテル(42mL)を加えることによって再結晶した。溶液を一夜冷蔵した。得られた白色の粒状沈殿物を焼結ガラスロート(中)を通すろ過によって集めて0.23gの再結晶生成物を得た。8mLのクロロホルムと27mLのエチルエーテルとを用いてこの生成物をもう1回再結晶した。得られた沈殿物を高真空下24℃で10時間乾燥して一定重量とし、0.16gの精製IAiを得た。
【0144】
【化40】

10iとIAiとの分子量差が予測通りであることを確認するために質量分析法を用いた。13と10iとの間の質量差の場合と同じく、10iとIAiとの対応同族体の間の質量差は、非繰り返し末端基単位の間の差に依存するはずである。10iおよびIAiについて非繰り返し単位の厳密な質量はそれぞれ238.12ダルトンおよび379.13のダルトンであり、中間体10iと生成物IAiとの間の分子量の差は141.01ダルトンの増加である。10iおよびIAiのどちらについても42繰り返し単位による同族体を特定した。観測質量は、10iおよびIAiについてそれぞれ2110.12ダルトンおよび2251.38ダルトンであり、差は141.26ダルトンの増加であった。この値を予測された141.01ダルトンの差と比較すると良好であり、従って、質量スペクトルデータは、予測された反応が起こったという主張を支持する。上記の10iの場合と同じ方法で特定の同族体の中の繰り返し単位の数を求めた。この計算の場合に整数を得たという事実が、仮定した非繰り返し単位の重量が正しかったという主張を支持した。
【0145】
(実施例6)
PEG化トリプトファンの調製
【0146】
【化41】

トリプトファン(1.7mg、8.3μM)を1mLのPBS緩衝液(0.10M、NaCl 0.10M、pH7.5)に溶解し、撹拌した。撹拌中の溶液に28.5mgのPEG誘導体IAi(MW約2300、約12.4μM)を加え、混合物を室温で60分間撹拌した。この反応混合物の0.7mLに追加のPEG誘導体(7.5mg)を加え、室温でさらに2時間撹拌した。反応混合物から0.10mLを採取して8μLのHCl(1.0 N)と混合し、0.01%のトリフルオロ酢酸を含む20%アセトニトリルを用いて約1mLに希釈した。得られた溶液から0.050mLを採取してHPLC分析(実施例8)に用いた。
【0147】
(実施例7)
PEG−トリプトファンからのトリプトファンの放出
実施例7からのPEG化トリプトファン反応溶液から0.10mLを採取して0.60mLのPBS緩衝液(0.10M、NaCl、0.10M、グリシン0.10M、pH7.5)で希釈し、オーブン中37℃でインキューベートした。2時間、7時間、32時間および102時間のインキュベーション間隔で0.10mLの分画を採取し、HPLC分析(0.10mL注入)のために10μlのHCl(0.01%のトリフルオロ酢酸を含む0.4mLの20%アセトニトリルで希釈して1.0Nとした)で反応停止させた。
【0148】
8.5のpHを有する開裂溶液および1時間、6時間、24時間および32時間のインキュベーション間隔を用いて上記の手順を繰り返した。
【0149】
HPLC分析
280nmにおける検出を用いるC−18逆相HPLCでPEG−トリプトファン(実施例7)と開裂試料との両方を分析した。HPLC条件は以下の通りである。C−18カラム(Waters Symmetry、4.6×250mm)、流量1.0mL/分、15分間かけて20%から80%へのアセトニトリルのグラジエント、続いてアセトニトリル80%において10分間の洗浄(すべて0.01%トリフルオロ酢酸を含む)。
【0150】
結果
pH7.5における開裂反応生成物のトリプトファンおよびPEG−トリプトファンの含有率(積分面積)をHPLCで分析し、下表に挙げた。
【0151】
【表5】

トリプトファンの増加およびPEG−トリプトファンの減少が102時間にわたって観測された。pH7.5におけるPEG−トリプトファンの半減期は約85時間である。
【0152】
pH8.5における開裂反応生成物のトリプトファンおよびPEG−トリプトファンの含有率(積分面積)をHPLCで分析し、下表に挙げた。
【0153】
【表6】

トリプトファンの増加およびPEG−トリプトファンの減少が32時間にわたって観測された。pH8.5におけるPEG−トリプトファンの半減期は約17時間である。
【0154】
pH7.5においてグリシンを加えたとき、またはpH8.5におけるPEG化トリプトファンのインキュベーションは、増加するトリプトファンとPEG化トリプトファンの減少との傾向を明白に示している。PEG化トリプトファンの半減期は、pH8.5において17時間、グリシン存在下pH7.5において85時間と定めた。トリプトファンとPEG化トリプトファンとの総和は、時間とともに減少した。これは、HPLCスペクトルにおいて生成物が示されるトリプトファンの副反応による可能性がもっとも高かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化42】

式中、
Yは、活性化基であり、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選ばれ、
nは、≧1であり、
POLYMERは、水溶性の非ペプチドポリマーであり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、
は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から選ばれる
の化合物。
【請求項2】
POLYMERは、ポリ(アルキレングリコール)、ポリビニルピロリドン、ポロキサマー、多糖、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン、イコデキストリン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、キトサン、ヒアルロン酸、デキストラン、デキストラン硫酸およびペントサンポリ硫酸からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
POLYMERは、ポリ(アルキレングリコール)を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリ(アルキレングリコール)は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記PEGは、約200から約500,000の分子量を有する、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
およびRは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルからなる群から独立に選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
は水素であり、Rはメチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Yは、ハロゲン化物、−N、−CN、RO−、NHO−、NHRO−、NRO−、RCO−、ROCO−、RNCO−、RS−、RC(S)O−、RCS−、RSC(O)S−、RSCS−、RSCO−、ROC(S)O−、ROCS−、RSO−、RSO−、ROSO−、ROSO−、RPO−、ROPO−、イミダゾリル、N−トリアゾリル、N−ベンゾトリアゾリル、ベンゾトリアゾリルオキシ、イミダゾリルオキシ、N−イミダゾリノン、N−イミダゾロン、N−イミダゾリンチオン、N−スクシンイミジル、N−フタルイミジル、N−スクシンイミジルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルオキシ)、2−チオキソチアゾリジン−3−イル、−ON=C(CN)R、2−ピリジルオキシ、フェノキシ、p−クロロフェノキシ、p−ニトロフェノキシ、トリクロロフェノキシおよびペンタクロロフェノキシからなる群から選ばれ、
Rは、アルキル基またはアリール基である
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Yは、N−スクシンイミジルオキシ、1−ベンゾトリアゾリルオキシ、N−フタルイミジルオキシ、N−(5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミジルオキシ)、p−ニトロフェノキシ、2−チオキソチアゾリジン−3−イルおよびイミダゾリルからなる群から選ばれる、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
Yは、N−スクシンイミジルオキシである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Xは、OおよびNHからなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Xは、Oである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
nは、1、2、3、4および5からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
nは、1および2からなる群から選ばれる、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物は、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2−メチルブタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル4−(2−メトキシポリエトキシ)−2,2−ジメチルブタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル5−(2−メトキシポリエトキシ)−2,2−ジメチルペンタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル6−(2−メトキシポリエトキシ)−2,2−ジメチルヘキサノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−エチル−5−(2−メトキシポリエトキシ)ペンタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル5−(2−メトキシポリエトキシ)−2−プロピルペンタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−(2−(2−メトキシエトキシ)エチル)ヘキサノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル3−(2−メトキシポリエトキシ)−2,2−ジメチルプロパノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−((2−メトキシポリエトキシ)メチル)−2−メチルブタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−エチル−2−((2−メトキシポリエトキシ)メチル)ブタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−((2−メトキシポリエトキシ)メチル)−2−メチルペンタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−((2−メトキシポリエトキシ)メチル)−2−プロピルペンタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−((2−メトキシポリエトキシ)メチル)−3−メチルブタノエート、
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル2−((2−メトキシポリエトキシ)メチル)ヘキサノエート、および
4−(((2,5−ジオキソピロリジン−1−イルオキシ)カルボニルオキシ)メチル)フェニル3−(2−メトキシエトキシ)−2−メチルプロパノエート
からなる群から選ばれる、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
式II
【化43】

式中、
Xは、O、SおよびNRからなる群から選ばれ、
nは、≧1であり、
POLYMERは、水溶性の非ペプチドポリマーであり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、
は、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から選ばれ、
DRUGは、アミノ含有分子、ペプチドまたはタンパク質、あるいはそれらの薬学的に許容される塩、エステルまたは溶媒和体である
の薬物結合体。
【請求項17】
DRUGは、血漿タンパク質または血液凝固因子である、請求項16に記載の薬物結合体。
【請求項18】
DRUGは、エリスロポイエチン、H因子、第VIII因子、フォン・ヴィレブランド因子、第VIIa因子および第IX因子からなる群から選ばれる、請求項17に記載の薬物結合体。
【請求項19】
DRUGは、第VIII因子である、請求項17に記載の薬物結合体。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか1項に記載の薬物結合体と、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的製剤。
【請求項21】
前記製剤は、微粒子中にカプセル化されている、請求項20に記載の薬学的製剤。
【請求項22】
請求項20または21に記載の薬学的製剤を患者に投与することを含む、前記患者の疾患を治療するための方法。
【請求項23】
前記疾患は血液凝固病であり、DRUGは血漿タンパク質または血液凝固因子である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
構造式A
【化44】

式中、
nは、1、2、3または4であり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、
Halogenは、Br、ClまたはIである
を有し、前提条件として、RおよびRの少なくとも1つは水素と異なる、化合物。
【請求項25】
【化45】

からなる群から選ばれる、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
構造式B
【化46】

式中、
nは、1、2、3または4であり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれる
を有し、前提条件として、RおよびRの少なくとも1つは水素と異なる、化合物。
【請求項27】
【化47】

からなる群から選ばれる、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
構造式C
【化48】

式中、
nは、1、2、3または4であり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、
m−PEG−は、約200から約500,000の分子量を有するモノメトキシポリ(エチレングリコール)である
を有し、前提条件として、RおよびRの少なくとも1つは水素と異なる、化合物。
【請求項29】
【化49】

からなる群から選ばれる、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
式F
【化50】

の化合物を合成する方法であって、
式Aの化合物、ジエチレングリコールおよび塩基を混合して式Bの化合物を形成させるステップ、ならびに
【化51】

前記式Bの化合物をモノメトキシポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステルおよび塩基と混合して前記式Fの化合物を形成させるステップ
を含み、
nは、1、2、3または4であり、
およびRは、水素、(C〜C)−アルキル、(C〜C)−アルキレンアリールおよびアリールからなる群から独立に選ばれ、
Rは、(C〜C)−アルキルであり、
前記モノメトキシポリ(エチレングリコール)は、約200から約500,000の分子量を有する
方法。
【請求項31】
前記塩基は、水素化ナトリウムである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記モノメトキシポリ(エチレングリコール)スルホン酸エステルは、モノメトキシポリ(エチレングリコール)メシレートまたはモノメトキシポリ(エチレングリコール)フルオロフェニルスルホネートである、請求項30または31に記載の方法。

【公表番号】特表2012−500804(P2012−500804A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524025(P2011−524025)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/054595
【国際公開番号】WO2010/022320
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】