説明

ポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部

【課題】支持碍子および中間金具の省略を図る。
【解決手段】本発明のポリマー套管Pは、下端部に導体挿入孔1aを有する導体引出棒1と、導体引出棒1の外周に設けられた固体絶縁体2と、固体絶縁体2の外周に設けられたポリマー被覆体3と、ポリマー被覆体3の外周に長手方向に離間して設けられた多数個の笠状の襞部4とを備えている。
大径固体絶縁体2aと小径固体絶縁体2bの連設部分には環状の取付金具5が埋設・固定され、小径固体絶縁体2bの取付金具5の近傍の外周には電界緩和用の埋込金具6が埋設されている。また、大径固体絶縁体2aの下端部近傍の外周には、銀ペイントの塗布層などから成る導電層10が設けられ、この導電層10の外周にはシリコーンゴムなどから成る絶縁層11が設けられている。これにより、固体絶縁体2の下端部に縁切り部Zが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部に係わり、特に、支持碍子を使用せずにケーブル終端接続部を組み立てることができるポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、軽量、コンパクトで、かつ構造の簡素化を図り得るものとして、図3に示すような構成のポリマー套管が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
同図において、このポリマー套管50は、中心に導体引出棒51を有し、下端部にケーブル端末52の受容口53を有する固体絶縁体54と、固体絶縁体54の外周に一体的に設けられたポリマー被覆体55と、ポリマー被覆体55の外周に長手方向に離間して形成された多数個の笠状の襞部56とを備えている。
【0004】
このような構成のポリマー套管50によれば、固体絶縁体54の外周にポリマー被覆体55が一体的に設けられていることから、従来の磁器碍管よりも、軽量で、破損しにくく、また、取扱いが容易で、作業性を大幅に向上させることができる。
【0005】
ところで、このような構成のポリマー套管50にケーブル端末52を装着させるケーブル終端接続部においては、ケーブルシース(遮蔽層)57と、ケーブル終端接続部を支持する支持架台58との間を電気的に縁切りするために、ケーブル終端接続部を磁器製やエポキシ製の支持碍子59を介して支持する必要がある。
【0006】
このため、このような構成のケーブル終端接続部においては、ケーブル終端接続部の他に複数個(例えば4個)の支持碍子59が必要となり、また、これらの複数個の支持碍子59を梱包しなければならないため、支持碍子59の梱包費や運送費が必要以上に嵩むという難点があった。さらに、固体絶縁体54の下端部の外周部に円筒状の中間金具60を配設しなければならないため、部品点数が多くなり、また、全体的に重量も重くなり、コスト的にも割高になるという難点があった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−304632号公報(段落「0017」〜「0022」、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、ポリマー套管側に縁切り部を設けて、ケーブルと終端接続部間を電気的に絶縁することで、支持碍子を使用せずにケーブル終端接続部を組み立てることができ、また、ポリマー套管を構成する固体絶縁体の構成を変えることで、従来の中間金具を省略することができるポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様であるポリマー套管は、中心に導体引出棒を有し、下端部にケーブル端末の受容口を有する固体絶縁体と、固体絶縁体の下端部の外周部に設けられた縁切り部と、固体絶縁体の縁切り部よりも上方の外周に設けられたポリマー被覆体と、ポリマー被覆体の外周に長手方向に離間して設けられた多数個の笠状の襞部とを備えるものである。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様であるポリマー套管において、固体絶縁体の縁切り部とポリマー被覆体間の外周に取付金具が設けられ、固体絶縁体の取付金具と縁切り部間の外周に導電層が設けられているものである。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様であるポリマー套管において、導電層の外周に絶縁層が設けられているものである。
【0012】
本発明の第4の態様は、第2の態様または第3の態様であるポリマー套管において、固体絶縁体には取付金具の近傍に、電界緩和用の埋込金具が導体引出棒と同心状に埋設されているものである。
【0013】
本発明の第5の態様は、第4の態様であるポリマー套管において、取付金具と埋込金具は一体に形成されているものである。
【0014】
本発明の第6の態様であるケーブル終端接続部は、第1の態様乃至第5の態様の何れかの態様のポリマー套管の受容口にケーブル端末が装着されているものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の態様乃至第5の態様のポリマー套管および第6の態様のケーブル終端接続部によれば、ポリマー套管を構成する固体絶縁体の下端部の外周部に縁切り部を設けることで、電力ケーブルとケーブル終端接続部間を電気的に絶縁することができ、ひいては、従来のように支持碍子を使用しなくともケーブル終端接続部を組み立てることができ、また、固体絶縁体の下端部近傍の外周に導電層を形成することで、固体絶縁体の下端部の外周部に縁切り部を設けることができることから、縁切り部の形成が簡単であり、さらに、従来のポリマー套管のように、固体絶縁体の下端部の外周部に中間金具を配設する必要がないことから、部品点数が少なくなる上、全体的にポリマー套管の重量が軽くなり、コスト的にも割安なポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部の好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明のポリマー套管を用いた154kV級CVケーブルの気中終端接続部の一部断面図を示している。
【0018】
同図において、本発明のポリマー套管Pは、下端部に導体挿入孔1aを有する導体引出棒1と、導体引出棒1の外周に設けられた固体絶縁体2と、固体絶縁体2の外周に設けられたポリマー被覆体3と、ポリマー被覆体3の外周に長手方向に離間して設けられた多数個の笠状の襞部4とを備えている。
【0019】
固体絶縁体2は、機械的強度の高い材料、例えばエポキシ樹脂やFRPなどの硬質プラスチック樹脂で形成され、また、ポリマー被覆体3および襞部4は、電気絶縁性能及び耐候性に優れた材料、例えばシリコーンポリマーなどの高分子絶縁材料で形成されており、導体引出棒1、固体絶縁体2、ポリマー被覆体3および襞部4はモールドにより一体的に形成されている。
【0020】
固体絶縁体2は、導体引出棒1の下方部位の外周部、すなわち導体挿入孔1aと対応する部分の外周部に設けられた大径固体絶縁体2aと、大径固体絶縁体2aの上部に大径固体絶縁体2aと同心状に連設され、導体引出棒1の外周部に先端部を除いて設けられた小径固体絶縁体2bとを備えており、大径固体絶縁体2aと小径固体絶縁体2bの連設部分には環状の取付金具5が導体引出棒1と同心状に埋設・固定されている。また、小径固体絶縁体2bの取付金具5の近傍の外周には後述する電界緩和用の埋込金具6が導体引出棒1と同心状に埋設されており、さらに、大径固体絶縁体2aの下端部には後述するケーブル端末7のストレスコーン8を受容するコーン状の受容口9が設けられており、この受容口9は導体引出棒1の導体挿入孔1aと連通している。
【0021】
一方、大径固体絶縁体2aの外周には、取付金具5の下面から後述する縁切り部Zの上端部間に跨って銀ペイント等の導電性塗料の塗布層などから成る導電層10が設けられ、この導電層10の外周には耐候性を向上させるためのシリコーンゴムなどから成る絶縁層11が設けられている。
【0022】
このような構成の固体絶縁体2においては、固体絶縁体2自体が絶縁材料で形成されていることから、大径固体絶縁体2aの下端部近傍の外周には導電層10を設けないことで、固体絶縁体2の下端部の外周部に縁切り部Zが形成されることになる。ここで、縁切り部Zの軸方向の長さLは、大径固体絶縁体2aの軸方向の長さの1/3〜1/4程度の長さとされ、導電層10の上端部側は取付金具5若しくは後述する支持架台12に電気的に接続されている。
【0023】
埋込金具6は、大径固体絶縁体2aと小径固体絶縁体2bとの連設部の近傍の外周部、すなわち取付金具5のポリマー被覆体3側の近傍の外周部に導体引出棒1と同心状に埋設された筒状部6aと、筒状部6aの下端部に外向きに連設された環状のフランジ部6bとを備えており、フランジ部6bの外周縁部には前述の取付金具5が埋込金具6と同心状に連設されている。ここで、埋込金具6は、取付金具5と一体に若しくは別体で構成されている。但し、埋込金具6と取付金具5を別体で構成する場合は、両者を電気的に接続する必要がある。なお、埋込金具6は、取付金具5とともに接地され、接地側電極とされる。
【0024】
次に、本発明のポリマー套管を用いたケーブル終端接続部について説明する。
【0025】
先ず、ポリマー套管Pの取付金具5の下面を支持架台12の上面に当接し、両者を支持架台12の下面側から配設したボルト13により締結する。また、従来のケーブル端末と同様に、ケーブル端末7を段剥処理して露出させたケーブル絶縁体14の外周にストレスコーン8を装着するとともに、ケーブル導体(不図示)の先端部に導体端子15を取り付ける。ここで、ストレスコーン8は、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等のゴム状弾性を有するプレモールド絶縁体などから成り、このストレスコーン8の先端部には受容口9の内壁面に装着される先細り状のコーン状部が設けられている。
【0026】
このような構成のケーブル端末7を受容口9に装着し、予めケーブル端末7側に配設した押し金具16を受容口9側に向けて押圧する。これにより、導体端子15が導体引出棒1の導体挿入孔1aにプラグイン接続されるとともに、ストレスコーン8のコーン状部が受容口9の内壁面に押し付けられ、ひいては、受容口9の内壁面とストレスコーン8のコーン状部の外周面間の界面の絶縁性能が確保される。
【0027】
なお、図中、符号17はアダプタ、18はシール部、19はケーブル遮蔽層、20は保護金具、21はスプリング、22は接地線を示している。
【0028】
以上のように、本発明のポリマー套管を用いたケーブル終端接続部によれば、ポリマー套管P側に縁切り部Zが設けられていることから、従来のように支持碍子を使用することなくケーブル終端接続部を支持架台12に取り付けることができる。
【0029】
図2は、本発明のポリマー套管を用いたL型気中終端接続部の一部断面図を示している。なお、同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
図2において、この実施例においては、図1に示すポリマー套管Pの下方部位が略L字状を呈するように折曲され、当該折曲によって形成された固体絶縁体2の水平部(以下「水平固体絶縁体」という。)30aの端末には図1に示す受容口と同様の受容口31が設けられている。また、当該折曲によって形成された固体絶縁体の垂直部(以下「垂直固体絶縁体」という。)30bの外周には取付金具5の下面から後述する縁切り部Zの端部(図中左側の端部)間に跨って図1に示す実施例と同様の導電層32が設けられ、この導電層32の外周には図1に示す実施例と同様の絶縁層33が設けられている。
【0031】
この実施例においても、図1に示す実施例と同様に、固体絶縁体2自体が絶縁材料で形成されていることから、水平固体絶縁体30aの端部近傍の外周に導電層32を設けないことで、水平固体絶縁体30aの端部外周部に縁切り部Zが形成されることになる。なお、図中、符号34は導体引出棒1のL字状の曲がり部35の端部に設けられた導体挿入孔を示している。
【0032】
このような構成のポリマー套管P´においては、図1に示す実施例と同様に、ケーブル端末7を受容口31に装着することで、導体端子15が導体引出棒1の導体挿入孔34にプラグイン接続され、ストレスコーン8のコーン状部が受容口31の内壁面に押し付けられることになる。
【0033】
以上のように、この実施例においても、ポリマー套管P´側に縁切り部Zが設けられていることから、従来のように支持碍子を使用することなくケーブル終端接続部を支持架台12に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、特許請求の範囲内で、次のように、変更、修正を加えることができる。
【0035】
第1に、前述の実施例においては、154kV級CVケーブルの気中終端接続部について説明しているが、系統の電圧が154kV未満のケーブル終端接続部、例えば22〜77kV級のCVケーブルの気中終端接続部に適用しても同様の効果を奏する。
【0036】
第2に、前述の実施例においては、大径固体絶縁体2aと小径固体絶縁体2bから成る固体絶縁体2について述べているが、導体挿入孔1aと対応する部分を小径固体絶縁体2bと同様に細くした、いわゆる細径化した固体絶縁体を使用してもよい。
【0037】
第3に、前述の実施例においては、受容口をポリマー被覆体よりも下方部位に配設した場合について説明しているが、受容口をポリマー被覆体の下端部内に設けてもよい。
【0038】
第4に、導体引出棒の外周に設けられる固体絶縁体は、導体引出棒と別体で設けてもよい。
【0039】
第5に、ケーブル終端接続部は、気中終端接続部に限定されず、ガス・油中終端接続部などに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例におけるケーブル終端接続部の一部断面図。
【図2】本発明の他の実施例におけるケーブル終端接続部の一部断面図。
【図3】従来のケーブル終端接続部の一部断面図。
【符号の説明】
【0041】
1・・・導体引出棒
1a・・・導体挿入孔
2・・・固体絶縁体
3・・・ポリマー被覆体
4・・・襞部
5・・・取付金具
6・・・埋込金具
7・・・ケーブル端末
9・・・受容口
10・・・導電層
11・・・絶縁層
P・・・ポリマー套管
Z・・・縁切り部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に導体引出棒を有し、下端部にケーブル端末の受容口を有する固体絶縁体と、
前記固体絶縁体の下端部の外周部に設けられた縁切り部と、
前記固体絶縁体の前記縁切り部よりも上方の外周に設けられたポリマー被覆体と、
前記ポリマー被覆体の外周に長手方向に離間して設けられた多数個の笠状の襞部とを備えることを特徴とするポリマー套管。
【請求項2】
前記固体絶縁体の前記縁切り部と前記ポリマー被覆体間の外周に取付金具が設けられ、
前記固体絶縁体の前記取付金具と前記縁切り部間の外周に導電層が設けられていることを特徴とする請求項1記載のポリマー套管。
【請求項3】
前記導電層の外周に絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項2記載のポリマー套管。
【請求項4】
前記固体絶縁体には前記取付金具の近傍に、電界緩和用の埋込金具が前記導体引出棒と同心状に埋設されていることを特徴とする請求項2または請求項3記載のポリマー套管。
【請求項5】
前記取付金具と前記埋込金具は一体に形成されていることを特徴とする請求項4記載のポリマー套管。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5何れか記載のポリマー套管の受容口にケーブル端末が装着されていることを特徴とするケーブル終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−103228(P2007−103228A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293571(P2005−293571)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(306013120)昭和電線ケーブルシステム株式会社 (218)
【Fターム(参考)】