ポリマー粒子を薬物で負荷する方法
本発明は、ポリマー粒子の微小球を結晶性の薬物で負荷するために、結晶化抑制剤の存在下で負荷を行い、それによって薬物の結晶化を抑制する方法に関する。本発明はとりわけ、ポリマーのビーズをパクリタキセル、イブプロフェンおよび/またはデキサメタゾンで負荷するのに有用である。ポリマーは陰イオン性ポリビニルアルコールポリマーであってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達の媒体として用いるためのポリマーのビーズを、薬物で負荷する方法に関する。本方法は、結晶化しやすい薬物をそのような媒体中へ負荷することができるので、バースト効果を最小限にする。好ましい態様においては、ビーズは放射線不透過性である。
【背景技術】
【0002】
塞栓形成治療では、特定の脈管の意図的な閉塞を引き起こすために、脈管構造へ薬剤を導入する。この種の治療は、特に、動脈と静脈との間の異常な連結(例えば動静脈吻合異常、AVM)を阻止するために有用であり、またある種の血管過多の腫瘍に血液を供給する血管を閉鎖し、異常組織を餓死させて壊死と縮小を引き起こすためにも有用である。
【0003】
塞栓形成の方法は、塞栓形成の程度に応じて、腫瘍の虚血または壊死を引き起こしてもよい。低酸素環境に対する腫瘍細胞の応答は、引き続いて血管形成をもたらすこともあり、その場合、塞栓形成によって減少した腫瘍への血流が補償される。従って、塞栓形成は、続く血管形成性の応答を阻止できる薬剤の投与と組み合わせることが望ましいであろう。さらにこの効果は、塞栓形成によって死滅しなかった細胞において細胞死を引き起こすために、細胞毒性のある薬剤、または他の抗腫瘍性の薬剤の放出と組み合わせることが望ましいかも知れない。固体腫瘍を治療するための、治療剤で負荷されたポリマービーズの塞栓形成剤が多数開示されており、例えば、国際公開公報WO2004/000548、WO2005/087193、PCT/GB2004/003347、およびPCT/GB2005/003431等の文献が挙げられる。
【0004】
医薬の調剤や調合の技術では油が広く用いられている。FDA不活性成分指針(静脈注射、経口カプセル、非経口調合)においては、ダイズ油が広く用いられている。
【0005】
リピオドール(Lipiodol)は、油性のヨード化されたX線造影剤であり、ケシ油を重量比で40%程度までヨード化したものである。リピオドールは、ある種の放射学的研究において、放射線不透過性の物質を直接注入された粘性構造またはその他の構造の輪郭を描くことが求められる場合に用いることができる。 リピオドールはまた、狭い通路内に導入するのに適しており、従って塞栓形成法に用いることもできる。さらに、子宮卵管造影法(HSG)にも広く用いられている。HSGは、子宮と輸卵管の放射線(またはX線)造影法で、婦人科における問題点、とくに女性の生殖能力に影響を及ぼす問題点を検出するために行われる。
【0006】
リピオドールはまた、リンパ管造影法にも用いられるが、これは、リンパ節とリンパ管を調べるもので、特に白血病、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫の予後診断のために行われる。リピオドールは、唾液腺や唾液管の疾患を検出するためにも用いられる。
【0007】
リピオドールは、化学療法との組み合わせにおいても、標識されることなしに広く用いられる。この場合、リピオドールと薬物の乳剤が、細胞毒性剤や他の抗腫瘍剤と共に動脈に注射され、肝細胞癌の高度に選択的な治療に用いられる。
【0008】
イブプロフェン(IBU)は、疎水性の薬物で、多種類の結晶を形成することが知られている。IBUの結晶の性質は、製剤処理に影響を及ぼすことが知られている(Romero, A Jら、1991 Pharma Acta Helv 66(2) 34-43)。IBUの結晶の形状は溶媒に依存し、適切な溶媒を選択することによって改善することができる(Garekam HAら、「IBLIの晶癖の改変と、その物理機械的特性」、Drug Dev Ind Pharm 27(8):803-9, 2001)。
【0009】
われわれは国際公開公報WO2004/000698において、IBUを含有する微小球を子宮類線維腫の治療に用いる方法を記載した。
【0010】
他のグループもまた、薬物を封入するための微小球の使用法について記載している。Boudy Vらは、J. Pharm Clin 18(1) (1999) において、インドメタシンで負荷した微小球を予備形成してから、エチルセルロースとポリイソブチレンのコアセルベート混合物を封入した。
【0011】
Song C. X.らは、Journal of Controlled Release 43(1997) 197-212において、各種の薬物を負荷した、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)のナノ粒子を、乳化/溶媒蒸発法を用いて調製している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これまでのところ、封入を行う際の薬物の結晶化の問題は解決されていない。
塞栓性の微小球(MS)上における結晶の形成は、製品の製造の際に種々の問題を引き起こす。薬物はほとんどがMSの内部に取り込まれるものの、薬物の一部は表面に残る。これらが表面上で結晶になると、バースト効果の増大が引き起こされ、高用量の薬物が急激に放出されてしまう。結晶はまた、疎水性相互作用によって、ビーズを互いに凝集させて集塊を形成させ、注射器のハブに固着させてしまうので、ビーズの投与を困難にし、さらにビーズを破壊されやすくして、送達の際にカテーテルの目詰まりを起こしやすくしてしまう。
【0013】
IBU−ビーズを滅菌するため120℃にて15分間オートクレーブする間に、結晶はビーズ表面上で融解すると見られ、IBUの融点(78℃)以上での加熱によって油滴を生じる。これらの油滴が核形成の原因となり、バイアルが開封されて製品が外気に曝された時に再結晶化を引き起こす。この結晶は前述のような問題を生じ、使用時のカテーテルとハブの目詰まりや薬物のバースト効果の増大を引き起こす。
【0014】
IBUの結晶の特性は、結晶化が起きる際の条件に依存することが示されており、結晶の形成過程を制御して、望ましい特性を有するような希釈剤と共にIBUの組成物を作成する努力が続けられている。IBUの結晶は、Eudragit R S100 ポリマーの存在下では変化することが見いだされている(Kachrimanisら、1998、「溶媒交換法によって調製したIBU−Eudragit S100 球状結晶凝集塊の結晶化条件と物理機械的特性」、Int J Pharm 173,61-74)。Rasenackらは、IBU結晶を改変する試みとして水溶性の添加物を使用した(「最適化した特性を有するIBU結晶」、 Int J Pharm 245 (1-2):9-24, 2002)。彼らは、添加物は、IBUの結晶化の際に形成される水素結合と相互作用できるので、得られる結晶の特性を変化させられるとしている。Francescoらは、IBUの結晶化を抑制するために低分子量の希釈剤を用いて、経皮システムにおけるパッチの効果と品質を維持し、製品の保存期間を延ばすことを検討している(「IBU含有単層経皮パッチにおける結晶化改変剤としてのポリメタクリレート」、 E.J.P.B., 60:61-66, 2005)。彼らは、プロピレングリコールを添加すると、IBUの結晶化が最大50日間抑制され、Eudragit E (EUE)およびEudragit RL(EURL)によって、結晶化が12ヶ月以上防止できたことを報告している。Campbellらにより、乾燥条件または最後の加熱硬化は、結晶化を防止することが報告された。米国特許第4,832,953号において、非水系基質中の懸濁液における、結晶性水和物の生成を防止する方法が記載されている。
【0015】
IBUの物理化学的性質に影響を与えるには、適切な多形型を選んだり、適切な晶癖を選んだり、特別な結晶化法を用いたり、結晶形成を改変して核形成過程を遅らせるための希釈剤を含んだ適切な調合を用いたりすればよい。脂質の代謝経路の生化学を利用して、標的化された送達と腫瘍形成性の低減とを可能にするために、IBUの担体として、脂質が用いられてきた(Lambert DM, 2000, Eur J Pharm Sci 11 Suppl 2: Sl5-27)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズを、ビーズに浸透可能な有機溶媒の中で、結晶性の薬物の溶液と接触させることにより、薬物をビーズ中に吸収させる方法であって、溶液は、薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤をさらに含むことを特徴とする方法が提供される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズと、結晶性の薬物と、薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤とを含む組成物であって、薬物と結晶改質剤はビーズ中に吸収され、ポリマーは架橋されたポリビニルアルコールであることを特徴とする組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において使用される薬物は、一般に結晶化しやすいものであって、例えば、溶媒を(通常は蒸発によって)除去した直後に、あるいは滅菌の工程の後に、吸収された薬物が融点以上の温度へ移行すると液滴を形成し、準安定相となって、遅れて結晶化を起こしやすくなるような薬物である。
【0019】
結晶性を有する薬物が当業者の間で知られている。本発明が特に有用である薬物群の1つは、例えばイブプロフェンのような、COX(1または2)阻害剤である。そのような結晶形成性の薬物の他の分類としては、例えばパクリタキセルのような、抗腫瘍剤が挙げられる。もう一つの薬物の分類として、例えば抗炎症特性を有するようなコルチコステロイドがあり、一例としてデキサメタゾンが挙げられる。
【0020】
本発明においてビーズを形成するポリマーは、非水溶性であって、非油溶性でなければならない。ポリマーは、生体分解性であってもよく、その場合、浸食によりポリマー基質の分解が起こって表面から薬物が実質的に放出されてもよいが、好ましくは、ポリマーは実質的に生体安定性(すなわち非生物分解性)である。ポリマーは水によって膨潤可能である。本発明において有用である水膨潤性のポリマーは、室温にてリン酸緩衝液中で膨潤すると、好ましくは平衡量の水を含有し、重量分析によれば、40〜99重量%の、好ましくは75〜95重量%の範囲の水を含有する。そのような水溶性特性は、一般に、架橋されたポリマーの使用により実現され、この場合、架橋は、例えばファンデルワールス力によって形成されるが、より好ましくは、静電的相互作用(陰イオンと陽イオンの間の引力)によって形成され、もっとも好ましくは、共有結合によって形成される。架橋の密度は、膨潤の工程の際にポリマー分子が相対的に移動できる程度のものでなくてはならない。従ってビーズは、膨潤可能であると定義されてもよく、本特許を請求する方法の開始時点において、膨潤溶媒と接触すると、少なくともある程度まで膨潤可能でなくてはならない。ビーズは、薬物/溶媒液との接触に先立って、あらかじめ部分的に膨潤されていてもよいが、好ましくは、本方法の最初の時点においては実質的には膨潤されていない。
【0021】
ビーズは、薬物送達への適用に有用なサイズを有している。例えば、5mm以上の直径を有するような非常に大きなビーズを使用してもよいが、ビーズの直径は、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1500μm以下である。本方法は、非常に小さなビーズを、例えば、直径が10μm未満のビーズや、直径が1μmしかないビーズを負荷するためにも有用かもしれないが、そのようなビーズは、乾燥状態において、例えば膨潤可能であるような状態においては、取り扱いが難しい。さらに、本発明は、塞栓の形成においてビーズを負荷するために最も有益である。従って、ビーズの直径は、25〜1500μmの範囲であって、好ましくは、50〜1200μmの範囲であり、例えば100〜1200μmの範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明においては、ビーズという語は、あらゆる形状の粒子を含むことが意図されており、例えば、ロッド状、立方体、不規則形、および不均一形の粒子を含む。しかし本発明は、ビーズが球形、回転楕円形、ペレット形、またはディスク形であるときに最も有益である。粒子がペレット形、回転楕円形やディスク形のような非球形の場合は、粒子の最大寸法は、最小直径の3倍以下であり、好ましくは、最小直径の2倍未満であって、例えば約1.5倍以下であることが好ましい。上述したサイズの限定は、膨潤性のビーズのサンプルを、リン酸緩衝液中で室温にて平衡に達するまでビーズを膨潤させる条件で試験し、サイズを光学顕微鏡下で測定することによって決定される。
【0023】
本材料は塞栓形成に用いるための組成物を形成するのに特に有用である。本組成物は、好ましくは、直径の分布を定義する、特定の粒子サイズの規格を有している。ビーズは、好ましくは、精密に塞栓形成を行えるよう、検量されたサイズの範囲に類別される。粒子のサイズは、室温にてリン酸緩衝液中で平衡化されると、好ましくは100〜1500μmの範囲にあり、より好ましくは100〜1200μmの範囲にある。検量された範囲には、約100〜300μmの帯域幅の直径を有するビーズが含まれてもよい。サイズの範囲は、例えば、100〜300μm、300〜500μm、500〜700μm、700〜900μm、および900〜1200μmであってもよい。
【0024】
本発明の第1の態様による方法の一実施態様においては、天然の原料に由来するポリマーが用いられ、原料の例としては、アルブミン、アルギン酸塩、ゼラチン、デンプン、キトサン、あるいはコラーゲン等、いずれも塞栓剤として用いられてきたものが挙げられる。好ましい実施態様においては、本ポリマーは、天然に存在するポリマーまたはその誘導体を実質的に含まない。本ポリマーは、好ましくは、2価以上の架橋性モノマーの存在下で、エチレン系不飽和モノマーを重合させることによって形成される。エチレン系不飽和モノマーは、イオン性モノマー(双性イオン性モノマーを含む)を含んでもよい。
【0025】
ヒドロキシエチルメタクリレートと、アクリル酸と、例えばエチレングリコールジメタクリレートやメチレンビスアクリルアミドなどの、エタフィルコンA系のコンタクトレンズに用いられるような、架橋性モノマーとのコポリマーを用いてもよい。N-アクリロイル-2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-l,3-ジオールとN,N-ビスアクリルアミドとのコポリマーもまた用いることができる。
【0026】
他のポリマーとしては、例えばイオン置換基を有する、分離媒体またはイオン交換媒体として用いられる種類の、架橋性スチレン系ポリマーがある。
【0027】
水膨潤性で非水溶性の基質を形成するために使用できるもう一つの種類のポリマーは、例えばグルタールアルデヒドのようなアルデヒド型架橋剤を用いて架橋した、ポリビニルアルコールである。そのような製品のために、ポリビニルアルコール(PVA)は、官能性イオン基を有する化合物を水酸基と反応させてイオン性ペンダント基を供給することによって、イオン性となるようにしてもよい。水酸基と反応させるのに適した官能基の例としては、カルボン酸もしくはその誘導体、またはエステルを形成できるその他の酸性基のような、アシル化剤が挙げられる。
【0028】
本発明の第2の態様による組成物は、非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズを含み、ポリマーはポリビニルアルコールであることを特徴とする。
【0029】
本発明が特に価値をもつのは、1分子当たり1つ以上のエチレン系不飽和ペンダント基を有するポリビニルアルコールのマクロマーから、エチレン基をラジカル重合させることによってポリマー基質を形成する場合である。PVAのマクロマーは、好ましくは、例えば非イオン性モノマー、および/または陰イオン性モノマーを含むイオン性モノマーなどの、エチレン系不飽和モノマーと共重合させられる。
【0030】
PVAのマクロマーは、例えば、適切な分子量のPVAポリマー、例えば分子量が1000〜500,000 Dの範囲、好ましくは10,000〜100,000 Dの範囲のポリマーに、ビニル系またはアクリル系ペンダント基を供給することによって生成してもよい。アクリル系ペンダント基は、例えばアクリル酸またはメタクリル酸をPVAと反応させて、水酸基の一部を介してエステル結合を形成させることによって供給してもよい。重合可能なビニル基をポリビニルアルコール上に結合させるための、その他の方法としては、例えば米国特許第4,978,713号に記載された方法があり、好ましくは、米国特許第5,508,317号および米国特許第5,583,163号に記載された方法がある。従って、好適なマクロマーは、ポリビニルアルコール骨格を含み、環状アセタール結合を介して(アルク)アクリルアミノアルキル部分が骨格に結合される。実施例1は、そのようなマクロマーの一例である、ネルフィルコンBという承認名で知られるマクロマーの合成について記載している。PVAのマクロマーは、好ましくは1分子当たり約2〜20個、例えば5〜10個のエチレン系ペンダント基を有する。
【0031】
PVAのマクロマーが、イオン性モノマーを含むエチレン系不飽和モノマーと共重合させられる場合、このイオン性モノマーは、好ましくは下記の一般式Iで表される。
Y1BQ1 I
上式中、Y1は下式のうちから選択される:
CH2=C(R10)-CH2-O-、CH2=C(R10)-CH2 OC(O)-、CH2=C(R10)OC(O)-、CH2-C(R10)-O-、CH2=C(R10)CH2OC(O)N(R11)-、R12OOCCR10=CR10C(O)-O-、R10CH=CHC(O)O-、R10CH=C(COOR12)CH2-C(O)-O-、
(上式中、
R10は、水素またはC1-C4アルキル基であり、
R11は、水素またはC1-C4アルキル基であり、
R12は、水素またはC1-4アルキル基、あるいはBQ1であって、ここにBおよびQ1は以下に定義され、
A1は、-O-または-NR11-であり、
K1は、-(CH2)rOC(O)-、-(CH2)rC(O)O-、-(CH2)rOC(O)O-、-(CH2)rNR13-、-(CH2)rNR13C(O)-、-(CH2)rC(O)NR13-、-(CH2)rNR13C(O)O-、-(CH2)rOC(O)NR13-、-(CH2)rNR13C(O)NR13-(ここに、複数の基R13は互いに同じまたは異なる)、-(CH2)rO-、-(CH2)rSO3-のいずれかの基、または、任意に原子価結合Bとの組み合わせであり、rは1〜12であり、R13は水素またはC1-C4アルキル基であり、
Bは、直鎖状のまたは分枝した、アルカンジイル鎖、オキサアルキレン鎖、アルカンジイルオキサアルカンジイル鎖、もしくはアルカンジイルオリゴ(オキサアルカンジイル)鎖であって、任意に1つ以上で全置換に至るまでのフッ素で置換されてもよく、または、Bは、Q1またはY1がBと結合された末端炭素原子を含んでいる場合は、原子価結合であり、
Q1は、イオン基である)。
【0032】
好ましくは、Q1が陰イオン基である化合物も含まれる。
【0033】
Q1が陰イオン基である場合、Q1は例えば、カルボキシル基、炭酸基、スルホン酸基、硫酸基、硝酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基であってもよい。モノマーは、遊離酸として重合してもよく、あるいは塩として重合してもよい。共役酸のpKaは、好ましくは5未満である。
【0034】
Q1が陽イオン基である場合に適している基としては、N+R143、P+R153、またはS+R152があり、ここに、複数の基R14は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ、水素、C1-4アルキル、もしくはアリール(好ましくはフェニル)であり、または、複数の基R14のうちの2つは、それらが結合するヘテロ原子と共に、5〜7個の原子を有する飽和または不飽和複素環を形成し、複数の環R15は、それぞれOR14またはR14である。陽イオン基は、好ましくは、持続的に陽イオン性である、すなわち、R14のそれぞれは水素以外である。陽イオン基Q1は、好ましくはN+R143であり、ここにR14のそれぞれはC1-4アルキルであり、好ましくはメチルである。
【0035】
Q1が両性イオン基である場合、Q1は総電荷を有してもよく、例えば、2価の陰イオン電荷中心と1価の陽イオン電荷中心を有するか、もしくはその逆であってもよく、または、2価の陽イオン電荷中心と1価の陰イオン電荷中心を有するか、もしくはその逆であってもよい。しかしながら、両性イオンは、好ましくは、総電荷を有さず、最も好ましくは、1価の陽イオン電荷中心と1価の陰イオン電荷中心を有する。
【0036】
本発明におけるQ1として用いうる両性イオン基の例は、国際公開公報WO-A-0029481に記載されている。
【0037】
エチレン系不飽和モノマーが、例えば両性イオンモノマーを含む場合、それによって粒子の親水性、潤滑性、生体適合性および/または血液適合性が向上することがある。適切な両性イオンモノマーは、我々の以前の国際公開公報WO-A-9207885、WO-A-9416748、WO-A-9416749、およびWO-A-9520407に記載されている。両性イオンモノマーは、好ましくは、2-メタクリロイルオキシ-2'-トリメチルアンモニウムエチルリン酸の分子内錯塩(MPC)である。
【0038】
一般式Iのモノマーにおいて、Y1は、好ましくは基CH2=CR10COA1-であり、ここに、R10は、Hまたはメチルであって、好ましくはメチルであり、A1は、好ましくはNHである。Bは、好ましくは、炭素原子が1〜12個、好ましくは2〜6個のアルカンジイル基である。そのようなモノマーとしてはアクリル酸モノマーがある。
【0039】
エチレン系不飽和モノマー中には、希釈剤モノマー、例えば非イオン性モノマーが含まれていてもよい。そのようなモノマーは、酸性基のpKaを調節したり、製品の親水性や疎水性を調節したり、ポリマー中に疎水性領域をもたらしたり、あるいは単に不活性の希釈剤として機能するのに役立つことがある。非イオン性の希釈剤モノマーの例としては、例えば、アルキル(アルク)アクリル酸や(アルク)アクリルアミドがあり、特に、炭素原子数が1〜12のアルキル基を有する化合物、ヒドロキシ置換またはジヒドロキシ置換された、アルキル(アルク)アクリル酸および(アルク)アクリルアミド、ビニルラクタム、スチレン、およびその他の芳香族モノマー、が挙げられる。
【0040】
ポリマー基質中では、陰イオンの量は、好ましくは0.1〜10 meq g-1の範囲であり、好ましくは1.0 meq g-1以上である。好適な陰イオンは、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、およびカルボン酸塩などの強酸に由来する陰イオンである。
【0041】
PVAのマクロマーが、他のエチレン系不飽和モノマーと共重合される場合、PVAのマクロマーと他のモノマーとの重量比は、好ましくは50:1〜1:5の範囲であり、より好ましくは20:1〜1:2の範囲である。エチレン系不飽和モノマー中には、陰イオンモノマーが、好ましくは10〜100モル%の範囲で存在し、より好ましくは25モル%以上存在する。
【0042】
架橋されたモノマーは、例えば、連続的な不混和性担体中の分散層の中で、モノマーの液滴として重合させることによって、粒子状となるように形成されてもよい。膨潤させたときに望みのサイズとなるような粒子を形成するのに適した油中水型の重合化法の例が知られている。例えば、米国特許第4,224,427号は、懸濁剤の存在下で水溶性モノマーを連続的な溶媒相中へ分散させることによって、直径が5 mm以下の均一な球状ビーズ(微小球)を形成する方法を記載している。分散相の粒子のサイズを調節するための安定化剤および界面活性剤が存在してもよい。架橋された微小球は、重合化の後に、既知の方法で回収され、洗浄されて、要すれば任意に滅菌される。この粒子(たとえば微小球)は、好ましくは、水系液体中で膨潤され、サイズに従って類別される。
【0043】
本発明の第1の態様による方法においては、有機溶媒は、薬物を溶解させ、ビーズ中へ浸透することができる。そのような好適な実施態様においては、薬物を溶解可能であるような有機溶媒が選択される。溶媒を、それ自身が結晶改質剤として働くようにさせ、従って負荷した製品中に残留させることもでき、その場合、有機溶媒は、浸透させるためまたは平衡に達するまで負荷させるために必要な量よりは少ない量で使用してもよい。しかし、取り扱いを容易にするために、溶媒は過剰量で用いることが好ましい。薬物の負荷を行う際には、接触の期間の後に、過剰な溶媒を、負荷されなかった薬物と過剰な結晶化抑制剤とともに、ビーズ(膨潤していてもよい)から互いに分離させてもよい。適切な分離法には、通常、遠心および/または濾過のような固体−液体分離法が含まれる。通常は、それに続いて、例えばビーズを加熱するおよび/または減圧することによって、溶媒をさらに蒸発させる。そのような蒸発法が用いられる場合には、結晶改質剤は、必要以上に失われてしまうことのない程度に不揮発性であることが必要である。
【0044】
好ましい方法においては、過剰な有機溶媒の除去に続いて、乾燥した負荷されたビーズは水系の保存液と接触させられ、保存液は、好ましくはビ−ズに浸透するよう過剰量であって、好ましくは平衡に達するまでビーズを膨潤させることができ、ビーズの外には、そこへビーズを懸濁することのできる液体、あるいは実際にビーズの懸濁した液体が存在してもよい。ビーズは、好ましくは、そのような水系保存液に懸濁された状態で、懸濁液を入れた容器を加熱することによって滅菌され、例えば、90℃以上にて、より好ましくは、100℃以上にて加熱されてもよく、好ましくは、5秒以上の時間にわたって、より好ましくは15分以上の時間にわたって121℃にて加熱されてもよい。
【0045】
結晶改質剤として、有機溶媒とは不混和性である材料を用いることもできるが、この場合、負荷を行う段階で、結晶改質剤の溶媒中での分散液が用いられる。そのような分散液は、液中液分散液でもよく、通常はエマルジョン(すなわち比較的安定な二相性液体)であるか、あるいはそれほど安定ではないが撹拌などの物理的手段によって液中液懸濁液として維持されるような懸濁液であってもよい。結晶改質剤は、好ましくは液体であり、実質的に有機溶媒と混和性である。過剰な溶媒は蒸発を含む手段によって除去されることが好ましいので、結晶改質剤は、好ましくは溶媒除去の条件下において実質的に不揮発性である。結晶改質剤は、好ましくは81℃を越える沸点を有し、より好ましくは90℃を越える沸点を有している。好ましい実施態様の場合のように、本方法に滅菌工程が含まれるときは、結晶改質剤の材料はその滅菌の条件下においても安定でなくてはならない。この材料は、保存用および/または送達用媒体に対して等浮揚性となるよう、密度を考慮して選択してもよく、それによって、保存液の中で懸濁液となってもよく、および/または、患者への送達の直前に調製される造影剤との混合物の中で懸濁液となってもよい。一実施態様において、結晶改質剤の密度は、水の密度より僅かに高く、たとえば1 .01〜1.30 g/mlの範囲である。これは例えばリピオドールが結晶改質剤として用いられる場合に当てはまる。あるいは、異なる実施態様においては、結晶改質剤は水よりも密度が低くてもよい。2種以上の成分を結晶改質剤として用いてもよい。
【0046】
不揮発性の混和性材料の例としては、油やグリコールやグリコールエーテルがある。グリコールの一例はグリセロールである。油の例としては、ダイズ油(密度0.91〜0.92 g/ml)、綿実油、アーモンド油、ヒマワリ油(密度0.92 g/ml)、ケシの実油、およびミネラルオイル(密度0.84〜0.87 g/ml)が挙げられる。
【0047】
特に好適な実施例においては、結晶改質剤は、造影剤として有用な性質を有し、例えば放射線不透過性の材料であり、そのため、患者への組成物の送達に続いて放射線造影法を行うことができる。本発明の極めて好適な実施例においては、結晶改質剤は、放射線不透過性の油系材料であり、例えば、ヨード化脂肪酸の低級アルキルエステルのようなヨード化油やその混合物でもよく、それらの例として、リピオドールやエチオドール(Ethiodol)が挙げられる。リピオドールは、ヨード化されたケシの実油と、少しの非ヨード化油性安定剤とからなっている。リピオドールは約38〜42重量%のヨウ素を含み、それらの一部はジヨード化誘導体となり、一部はモノヨード化誘導体となっている。
【0048】
本発明の方法においては、有機溶媒は、好ましくは1価のC1−12脂肪族アルコールから選択され、好ましくはエタノールとプロパノールから選択される。溶媒は、好ましくは結晶改質剤と比べてより揮発性でなくてはならない。穏和な条件下での有機溶媒の除去、たとえば、低温下、好ましくは低圧化での蒸発を含む方法での除去が可能となるように、有機溶媒は、90℃未満の沸点を有することが好ましく、80℃未満の沸点を有することがより好ましい。
【0049】
本方法は、多様な薬物とともに用いるのに適している。薬物の負荷量は、所望の用量に依存し、薬物の活性、ビーズからの放出の特性、および治療すべき適応症に関する知見に基づき、当業者が適宜選択してもよい。同様に、負荷混合物中の薬物の濃度も、所望の薬物負荷に従って選択される。負荷溶液中の薬物の濃度は、好ましくは1〜1000 mg/mlの範囲であり、好ましくは10〜500 mg/mlの範囲である。負荷溶液には、最終産物において結晶形成を適度に調節するのに充分なだけ残存できるような量の、結晶改質剤が含まれていなければならない。この量は当業者が決定することができ、そのためには、異なる量の薬物と結晶改質剤とを特定の種類のポリマー中に負荷し、薬剤組成物を処理するのと同じ方法で処理して、薬物の結晶化に所望の効果を及ぼす、すなわち結晶化の発生を防止するのに最低限必要な改質剤の量を決定する、という一連の試験を行ってもよい。適切な結晶改質剤(すなわち結晶化防止剤)の量は、ビーズ中の薬物の合計量に基づき、1〜99重量%の範囲であり、好ましくは5〜50%の範囲である。
【0050】
適切な薬物対ポリマーの比率は、ビーズ中の乾物(すなわちポリマー)に基づき、10:1〜1:10の範囲であり、好ましくは2:1〜1:2の範囲である。
【0051】
本発明の方法は、とりわけ、パクリタキセル(PTX)、イブプロフェン、およびデキサメタゾン(DEX)で負荷したビーズを生産するのに適していることが分かっている。薬物と油で負荷したビーズは、ビーズ表面上での結晶の形成が抑制されるという利点を有している。また、ビーズの内部での結晶の形成も抑制されていると考えられ、そのため、ビーズ中での薬物のより均等な分布がもたらされる。PTX負荷ビーズは抗腫瘍性塞栓剤として作用してもよく、他方、IBUおよびDex負荷ビーズは、抗炎症性作用を有するとともに、COX阻害における作用様式を介した抗腫瘍性作用も有していてもよい。結晶形成を減少させることの利点としては、例えば、ビーズ表面の結晶に起因するバースト効果の低減、注射器に用いられるプラスチック等の包装へのビーズの付着性の低減、包装中およびカテーテル中での自己凝集性の低減、それによる負荷の均質性や送達可能性の向上、などが挙げられる。加えて、改質剤が存在することによって安定性が向上し、従って製品の保存期間が延びる可能性もある。油系造影剤(リピオドールのようなヨード化油)を結晶改質剤として使用することは、送達の際にビーズを可視化することを可能にし、塞栓形成後にはビーズの追跡を可能にするという利点ももたらすことができる。ヨード化油は、水よりも高い密度を有し、結晶改質剤として用いると薬物で負荷した微小球の総密度も増加させるので、送達のために通常用いられる生理的食塩水と造影剤との混合物中にビーズを加えたときの懸濁性を調節することができる。リピオドールは15℃にて1.280 g/mlの密度を有している。
【0052】
本発明においては、FDAによって不活性成分として承認された油を使用することが好ましく、それらの油は、イブプロフェン、パクリタキセル、およびデキサメタゾンの結晶生成を変化させることが見いだされている。本発明の利点の一例として、ビーズの凝集と、取り扱いおよび送達の際に用いられるプラスチックへの付着とを低減させる効果が挙げられる。さらに、リピオドールが結晶改質剤である場合、放射線造影法によってビーズを可視化できることが示されており、有用な複数の特性の有意義な組合せがもたらされる。結晶改質剤として高密度油を用いると、負荷ビーズの密度を、水系の保存媒体の密度に近くなるまで調節できるので、送達に先立って負荷ビーズを生理的食塩水および/または造影剤と混合しても直ぐに沈降してしまうことがない、というさらなる利点も得られる。従って、本発明においては、製品ビーズは、塞栓形成に一般的に用いられる方法を用いて投与することができ、任意に、放射線造影法によってさらに可視化を行うために追加の造影剤に懸濁してもよい。
【実施例】
【0053】
本発明について以下の実施例によって説明する。
【0054】
〔比較例:IBU負荷Bead Block(IBU−BB)の調製〕
サイズが500〜700μmで、滅菌注射器にて2 mlのビーズとして供給される市販製品のビーズである「Bead Block(商標)」を用いて、IBUで負荷されたビーズを製造した。そのようなビーズの製造については、国際公開公報WO2004/000548の実施例1において「低AMPS」製品として記載されている。簡潔に述べると、アセタール結合したエチレン系不飽和基と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とを重量比約12:1で含むポリビニルアルコールマクロマーの水系混合液を、セルロースアセテート酪酸塩安定化剤を含有する酢酸ブチルの連続相中で撹拌器を用いて懸濁し、レドックス開始を用いたラジカル重合を行ってビーズを形成させ、得られたビーズを洗浄し、染色して、サイズ分画に従ってふるい分けした。そのうち500〜700μm分画と700〜900μm分画を以下の実施例で使用した。Bead Blockを、1瓶当たり2 mlの分量でガラスバイアルへ移した。次に、余剰の生理的食塩水を除去し、ビーズを凍結乾燥させた。IBU/エタノール溶液を、所要の最終濃度となるよう調製した。この溶液1 mlを凍結乾燥したビーズに加えて1時間かけて(静置して)負荷した。その後、余剰の負荷溶液を除去し、ビーズ試料を45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。乾燥試料に2 mlの水を加えてビーズを水和させ(図1A)、121℃で15分間オートクレーブして滅菌した(図1C)。図1Cには、比較例を用いた負荷を行った後のビーズ(注:1Dに比べてビーズの不透明度にばらつきがある)によるイブプロフェンの不均一な取り込みと、溶液中に生じた薬物の結晶が示されている。
【0055】
〔実施例1:IBU−リピオドール負荷微小球(IBU−LBB)の調製〕
ビーズを、次の2つの点を除いて比較例と同じ方法で負荷した。負荷溶液はリピオドール(L)の33%IBU/エタノール中溶液からなることと、150 rpmに設定した振盪器上で1時間かけてビーズ試料を振盪したことである。余剰の負荷溶液を除去し、試料を50℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。その後、負荷ビーズを2 mlの水で水和させ、比較例と同様にして蒸気滅菌した。
この方法で製造された最初の微小球(IBU−LBB)は、スラリー状であって、肉眼では青/白のビーズであった。それらの微小球はガラスバイアルに付着せず、ビーズ表面での白色の結晶の生成は認められなかった。
【0056】
<サイズと画像分析> 光学顕微鏡を用いてビーズのサイズを測定し、Colour View IIIビデオカメラを用いてビーズを可視化した。ビーズは、凍結乾燥の前に球状の形態を回復し、不透明に見え(肉眼では白/青)、均一な外観を有していた(図1Bおよび1D)。これらの微小球のサイズの分布を最初のビーズと比較した(図2)。
【0057】
<溶出> 水和水を取り出し、HPLCバイアル中に入れて、製造途中での薬物の損失を求めた(希釈なし)。各バイアル(2 mlのビーズ)を200 mlのPBS中へ24時間かけて溶出させた。所定の時点(10、20、40、60分後、および、2、4、24時間後)において、溶液の1 mlを取り出してHPLCバイアルに入れ、薬物の溶出、分解および純度を求めた。ビーズ中へ負荷された薬物の量は、リピオドールの添加をしない場合の量と同様であった。IBUの純度は99%を越えており、IBUによる干渉はなかったことを示している。溶出後のビーズの画像は、IBU負荷ビーズ(図1D)の外観と同様な不透明なビーズを示していた。このことは、リピオドールのビーズによる取り込みが、不透明色に寄与しており、PBS中へは溶出しないことを示している。
【0058】
<送達可能性試験> ビーズの送達可能性の試験を、臨床環境における実施可能性試験と同様にして行った。50:50の割合のVisipaque 320と水から10 mlの造影剤を調製した。混合液の9 mlをバイアルに加えた。試料の3 mlずつを用いて、2.7Fr Progreat(登録商標)カテーテルを使用して3回の注射を行った。
IBU−LBBビーズは、バイアルを開封したときに凝集せず、生理的食塩水中で自由に分散した。700〜900μmのビーズは、送達可能性試験により、2.7Fr Progreatマイクロカテーテルから問題なく送達できることが示された。
【0059】
〔実施例2:IBUと濃度5%および30%のリピオドールとで負荷されたビーズを使用したときの水和媒体とその種類および液量の効果〕
本実施例は、ビーズによる水の取り込みの程度と、用いる水和媒体の効果を調べるために行われた。サイズが700〜900μmのBead Blockを、5%または30%のリピオドールを含有するIBUエタノール溶液を用いて、実施例1と同じ一般的な方法によって1時間かけて負荷した。余剰の負荷溶液を除去し、50℃に設定した真空オーブン中で試料を一晩乾燥させた。2 mlの水、3 mlの水、または2 mlの生理的食塩水のいずれかを用いて試料を水和させ、続いて121℃で15分間かけて蒸気滅菌した。
実施例1に記載した方法でサイズを測定した。サイズ分布のヒストグラムが図3A〜Eに示されている。各グループは、対照のビーズ(凍結乾燥と負荷の前)と比較して統計学的に有意な差(p < 0.0001)を有していた。5%リピオドールを含む2 mlの水を使用した場合と、30%リピオドールを含む2 mlの生理的食塩水を用いた場合との間に有意差はなかった(p = 0.5158)。両方の場合において、サイズの範囲は、許容されるサイズ分布の指針の範囲内に収まっており、全体的にはより高いビーズのサイズの方へシフトしていた(図2)。
【0060】
<500〜700μmビーズおよび700〜900μmビーズ上のIBU−5%LBBおよびIBU−30%LBBからの溶出>
実施例2に従い、水和水を取り出し、HPLCバイアル中に入れて、製造途中での薬物の損失を求めた(希釈なし)。各バイアル(2 mlのビーズ)を200 mlのPBS中へ24時間かけて溶出させた。所定の時点(10、20、40、60分後ならびに2、4、24時間後)において、溶液の1 mlを取り出してHPLCバイアルに入れ、薬物の溶出、分解および純度を求めた。その結果、サイズが700〜900μmのビーズについては、5%リピオドールを用いたビーズと30%リピオドールを用いたビーズとの間で溶出速度に違いはなかったことが示された。図4Aは、両方のリピオドール濃度について、最初の2時間のうちに、全IBU用量の99%を越える量が、サイズが700〜900μmのビーズから溶出したことを示している。500〜700μmの範囲についても同様に、最初の2時間で99%を越える量が溶出したが、30%リピオドールを用いた場合の方が、より早い溶出の方へ少しシフトしていた(図4B)。
【0061】
〔実施例3:種々の濃度のリピオドールを含有するIBUビーズの圧縮試験〕
サイズが700〜900μmのBead Blockを、5%、30%、50%、70%、80%、90%のリピオドールを含むIBUエタノール溶液で1時間かけて負荷した。余剰の負荷溶液を除去し、試料を50℃に設定した真空オーブン中で一晩乾燥させた。試料を2 mlの水で水和させ、続いて121℃で15分間かけて蒸気滅菌した。
5%、30%、70%リピオドールを用いたIBU−ビーズの圧縮試験が図5に表されており、各リピオドール濃度のIBU−LBBは、リピオドールなしの比較製品と同様であって、いずれも、水で水和すると、Bead Blockに比べて圧縮性が高かったことが示されている。30%リピオドールIBU−LBBの水和に生理的食塩水を用いた場合は、負荷を行わなかった対照よりも圧縮性が高かった。
【0062】
〔実施例4:ヒマワリ油で負荷した微小球の調製〕
リピオドールの代わりに33%のヒマワリ油/エタノール溶液を用いて、実施例1に記載した方法でBead Blockを負荷した。ビーズは実際に油を取り込み、色を白/青に変化させた。この濃度では、水相の中に油滴が認められた。顕微鏡で観察すると、IBU負荷ビーズ(図1D)と同様の外観であった。
【0063】
〔実施例5:X線透視検査のための、薬物なしでの各種濃度のリピオドールによる負荷〕
前述のIBU/リピオドール溶液の場合(実施例3)と同様の方法において、IBU/リピオドール溶液を30%、50%、70%、80%、90%の各濃度のリピオドール/エタノール溶液に置き換えて、700〜900μmビーズを用いて試料を調製した。100%リピオドール試料は、ビーズにリピオドールを直接加えて1時間かけて調製した。続いて余剰液を除去してから、エタノールで軽く一度洗浄した。IBU/リピオドールビーズについて記載したのと同様にして、余剰のエタノールを除去し、乾燥させ、水和させて、蒸気滅菌した。試料をX線透視法で観察した。ビーズはX線で観察可能であって、異なるビーズの間で明白な違いは見られなかった。
【0064】
〔実施例6:種々の油性希釈剤を使用したIBUの負荷〕
リピオドール、ダイズ油、綿実油、ミネラルオイル、アーモンド油のいずれかを5%含有するIBUエタノール溶液を用いて、サイズが500〜700μmのBead Blockを1時間かけて負荷した。余剰の負荷溶液を除去し、試料を50℃に設定した真空オーブン中で2時間かけて乾燥させた。全ての試料を水で水和させ、続いて121℃で15分間かけて蒸気滅菌した。
全てのバイアルは、油の種類に関わらず肉眼でも画像解析でも同様に見えた。5種類の油の全てについて、実施例2に記載したのと同様にして溶出試験を行った。24時間で溶出した総用量は25 mg/mlビーズ±5 mgであった(図6A)。その結果、綿実油を除く全ての油は同様の溶出プロフィールを示したが、綿実油は溶出速度を遅くしてしまうようであった。綿実油を除く全ての油が最初の1時間のうちに85%溶出し、綿実油は72%だけ溶出した。全ての試料で4時間以内に99%を超える量が溶出した(図6B)。
ビーズのサイズは、それぞれの油の間で互いに、またリピオドールに対して、統計学的に有意な差がなかった(図7)。
【0065】
〔実施例7:市販の他の塞栓形成性ビーズの負荷〕
市販の塞栓形成性ビーズである、Embosphere(直径が700〜900μmでコラーゲンにより被覆されたトリスアクリル/ゼラチン微小球の製品)、Embogold(直径300〜500μmの製品)、Contour SE(直径500〜700μmの非イオン性架橋ポリビニルアルコールの製品)といった微小球を、同一のIBU/エタノール/5%リピオドール負荷溶液(125 mg/mL)を用いてIBUで負荷した。負荷の手順は実施例2に記載したものと同様である。
外見的には、Bead Blockの場合を除いてビーズの色は変わらなかったが、Bead Blockは典型的な青/白の色に変化した。Embosphereは非常にガラスバイアルに付着しやすい傾向を示した一方、Contour SEは相当な凝集を示した。付着性と凝集の両方とも、ビーズ表面のIBUの結晶と関連していた。溶出後の画像から、Embosphereは僅かに不透明であって(図9B)、Embogoldは(非常に不透明なBead Block(図9A)に比べて)透明な赤色であったことが示されており、これらのことは、リピオドールの取り込みが少なく、結晶形成の抑制が低いことを示している。Contour SEは不透明であったが、ほとんどのビーズは凝集して油の被膜に封入さていた(図9C)。このことはビーズの不透明色はIBUの取り込みのためであったことを示唆している。凝集は、凍結乾燥段階の後でのビーズ表面のIBUによって引き起こされたのかもしれない。リピオドールによるContour SEの封入は、IBUの溶出が遅いことに現れていた(図8)一方、その他の種類のビーズは、いずれも最初の2時間で98%を超える量が溶出していた。
【0066】
〔実施例8:リピオドールBead Blockへのパクリタキセル(PTX)の負荷〕
PTX負荷ビーズを実施例2に記載したのと同じ方法で調製した。Bead Block(500〜700μmと700〜900μm)をまず2 mlガラスバイアル中へ取り分けた。次に余剰の生理的食塩水を除去し、ビーズを凍結乾燥させた。PTX−リピオドール−エタノール溶液を所要の最終濃度となるよう調製し、続いて凍結乾燥したビーズに加えて、プレート振盪器上で150 rpmにて1時間かけて負荷させた。そして余剰の負荷溶液を除去し、ビーズ試料を真空オーブン中で45℃にて一晩乾燥させた。乾燥した試料に2 mlの水を加えてビーズを水和させ、続いて121℃で15分間オートクレーブして蒸気滅菌した。
負荷されたPTXを超音波処理下でDMSOを用いて抽出して、PTXの負荷量を決定した。抽出液をHPLCで分析した結果が、以下の表1に示されている。
【0067】
===表1:リピオドールBead BlockにおけるPTXの負荷効率*===
*リピオドールは負荷溶液中では23%(v/v)である。
【0068】
〔実施例9:リピオドールBead BlockからのPTXの溶出〕
実施例8の試料3および4をPTXの溶出試験に用いた。1.2 mlの各試料を200 mlのPBS緩衝液と回転混合器上で室温にて混合した。所定の時間間隔で50または100 mlの溶液を除去して、50または100 mlの新しいPBSを添加した。HPLC処理後の溶出プロフィールが図13に示されている。
【0069】
〔実施例10:リピオドールを使用したデキサメタゾン(Dex)の負荷と溶出〕
Dex負荷溶液(5 mg/ml)をエタノール中で調製した。この溶液を用いて実施例1に記載した方法でビーズを負荷した。対照として、リピオドールを使用せずにDexエタノール溶液で別のビーズを負荷した。
リピオドールを使用しないで負荷したビーズはDexを取り込まなかったことが、画像によって示された。ビーズの表面にはDexの結晶が存在していた(図11A)。IBU−リピオドールを用いて負荷したビーズは不透明であって、ビーズ表面に結晶は認められなかった(図11B)。
【0070】
〔実施例11:異なるビーズを用いた負荷と溶出〕
2種類のイオン交換樹脂(Amberlyst(SIGMA社、スルフォン酸系、交換容量1.9 mg/ml)および Amberlite(Sigma、IRA700(クロライド)四級アンモニウム基含有スチレン−DVB樹脂、総交換容量1.4 mg/ml、密度 0.7 g/ml))をIBU−リピオドールで負荷した。負荷と溶出の手順は実施例1と同様に行い、100 mg/mLのIBUを含有する溶液を使用した。
AmberliteによるIBUの取り込みは、ビーズ当たり1 mg/mL未満であった(図12B)。Amberlystは、約15 mg/mLのIBUで負荷された(図12A)。
【0071】
〔実施例12:ヒツジ子宮動脈の塞栓形成炎症モデルにおける、イブプロフェンと結晶化抑制剤としてダイズ油とを含有する塞栓形成性ビーズの使用〕
ヒツジの子宮動脈において、塞栓形成後の12週間にわたってイブプロフェン負荷ビーズの効果を評価した。血管の塞栓形成は、疼痛や炎症などを含む種々の副作用を引き起こすことがある。本実施例の目的は、ヒツジ子宮動脈モデルにおいて、結晶化抑制剤としてダイズ油を含有するイブプロフェン負荷ビーズからのイブプロフェンの放出と、異物炎症反応に及ぼす効果とを評価することであった。以下の事項が評価された。
・血管網内におけるビーズの特性と分布。
・塞栓形成性ビーズに対する異物炎症反応に及ぼすイブプロフェン/ダイズ油の放出の効果。
・ビーズ中に存在するイブプロフェンの量の時間経過。
【0072】
<方法>
本実施例で試験したのは、実施例6で記載したものと同じく、結晶化抑制剤としてダイズ油を含有する、イブプロフェンで負荷したビーズ(イブプロフェンビーズ)である。イブプロフェンビーズと同様の方法で処理した製造対照である未負荷のBead Blockの微小球と比較して、試料の試験を行った。2 mlのビーズを比較例1に記載したのと同様に凍結乾燥させ、10容量%のダイズ油と400 mgのイブプロフェンとを含有するエタノール1 ml中に入れた。実施例6と同様の処理を行ってから、抽出とHPLC分析を行った結果、最終製品は、水和したビーズ1 ml当たり125 mgのイブプロフェンと約10 mgのダイズ油を含んでいた。
【0073】
妊娠しておらずホルモン的に妊娠可能な状態にある24頭の成体のPre-Alpesヒツジを、未負荷のBead Blockの群(対照群、BB;500-700μm)と、イブプロフェン負荷ビーズの群(試験群、イブプロフェンビーズ;500-700μm)の2つに分けた。各群を4つの時点(24時間、1週、3週、12週)に分割し、各時点で3頭ずつとなるようにした。
【0074】
臨床で用いられるのと同じシ−ス、カテーテル、ガイドワイヤを使用して、塞栓形成を実施した。標準的なセルディンガー法により無菌的条件下で4-Fr血管シースを大腿動脈内に挿入した。4-Frのピッグテールカテーテル(Optitorque Radifocus、Terumo社)を腸骨動脈分枝の位置に留置し、デジタル減算大動脈造影法を行って、卵巣および子宮の動脈を同定した。4-Frのコブラ型カテーテル(Radiofocus血管造影カテーテル、Terumo社)を使用して、対側内腸骨動脈への選択的カテーテル挿入と子宮動脈への超選択的カテーテル挿入を実施した。次に放射線科医により、塞栓形成剤(イブプロフェンビーズまたはBead Block)のうちからランダム化序列に従い選んたものを用いて塞栓形成を行った。
【0075】
0.5 mL容量のビーズ(Vispaque 270と生理的食塩水との等量混合液中に1/10希釈で懸濁したもの)をX線透視下でゆっくりと注入した。0.5 mLのビーズが各々の子宮動脈に送達された時点で塞栓形成が完了したものとした。
【0076】
組織中でのビーズの分布を評価し、臓器の肉眼観察を実施した。各種炎症細胞に対するCD抗体による免疫組織染色の後にビデオ解析を行うことにより、準定量的なリンパ球の類別を行って、炎症を組織学的に評価した。
【0077】
<結果>
[塞栓形成法]
ビーズの送達は各動物において優秀であった。全ての動物で塞栓形成が成功した。各動物には両方の子宮動脈に0.5 mLずつ(合計1 mL)のビーズが注入された。
【0078】
[ビーズの性能]
2つのビーズ製品の間で、子宮の異なるゾーンにおける閉塞血管の分布に統計学的な差(p<0.0001、Χ2)があった。すなわち、イブプロフェンビーズは、Bead Blockよりも若干多くの近位の血管を閉塞させた(図14)。図14中においては、EMは子宮内膜を、MMは子宮筋層を、PXは近位をそれぞれ表している。血管の直径はイブプロフェンビーズの場合の方が増大していたが(498μm対436μm、P=0.0001)、閉塞した血管中に見いだされたビーズの平均数には差異がなかった。
塞栓形成後24時間と1週間の時点で、イブプロフェンビーズの場合のほうがBead Blockよりも多くの血管の壊死が認められたが(それぞれ、25.8%対4.9%、32.8%対4.3%)、3週間後と3ヶ月後にはどちらの群においても壊死は見いだされなかった。
【0079】
[炎症反応]
特定の時点において、Bead Blockとイブプロフェンビーズとの間で好中球および好酸球の数にわずかな違いが見られた。1週間の時点で、巨細胞は、イブプロフェンビーズの場合の方がBead Blockよりも統計学的により少数であった(p=0.01)。24時間の時点では、両群ともほとんどリンパ球が認められず、両者の数の間に有意な差はなかった。1週間後には、イブプロフェンビーズの周囲では、Bead Blockと比べて有意にリンパ球の数が少なかった(図15)。3週間後と3ヶ月後では、リンパ球の数は、イブプロフェンビーズの場合に顕著に増大し、Bead Blockとの間には有意な差がなかった。
組織スライドの幾つかにおいては、BBとイブプロフェンビーズの両製品の再吸収の兆候として、明らかな食作用、巨細胞の数の増加、およびCD4とCD8の持続的な存在が認められた。このことは、以前のPVA塞栓形成剤を用いた長期的な観察結果からすると予測できたことであった。
【0080】
[CDマーカー]
1週間目の時点で、イブプロフェンビーズ群においてCD172a陽性細胞の数が低下していたことから、炎症反応が低減したことが確認された。さらに、結晶化抑制剤を添加してもCD8陽性T細胞やCD21B細胞の浸潤は生じなかったことから、最適化されたイブプロフェンビーズの処方には副作用がないことが分かった。その他のCDマーカーは両群の間で差異がなかったが、3ヶ月後の時点で、CD172,CD3,MHC−IIはいずれも低いままであって、「リバウンド作用」はなかったこと、そしてCD21陽性細胞も好酸球も存在せず、過敏性の兆候もなかったことが、本研究により確認できた。
【0081】
[イブプロフェンの量]
抗イブプロフェン抗体により特異的に染色された部位が、「レチクル」パターンを有する部位として同定された。高濃度の染色が塞栓形成後24時間の時点で観察された。1週間後もなおイブプロフェンは検出可能であったが、ずっと低い濃度であった。塞栓形成後3週間後と3ヶ月後になると、ビーズ中にイブプロフェンは検出されなかった。
【0082】
<結論>
本実施例から、イブプロフェンビーズを用いた塞栓形成は、塞栓形成性ビーズに対する異物炎症反応を低減できることが確認される。イブプロフェンは、塞栓形成後1週間までビーズ中で検出できるが、3週間後以降は検出されなくなる。さらに、塞栓形成後1週間の時点での炎症反応の低減は、3週間および3ヶ月の時点で炎症反応に対する有害なリバウンド作用をもたらさない。ダイズ油結晶化抑制剤を含有させたことによる明らかな生体内作用は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1AおよびCは、比較例1を使用した場合の、ビーズ表面のイブプロフェンの結晶を示している。図1BおよびDは、油(リピオドール)−実施例1を用いた負荷の後のイブプロフェンビーズを示している。
【図2】図2は、実施例2に記載したように、異なる濃度のリピオドールで負荷した後のイブプロフェンビーズのサイズの分布を、未負荷の対照と比較して示している。
【図3】図3A〜3Eは、異なる量の水または生理的食塩水2 mLを用いて水和した後のイブプロフェン負荷ビーズのサイズ分布のヒストグラムを、0.9%生理的食塩水中の対照と比較したものである(W=水、PBS=リン酸緩衝液)。実施例2を参照のこと。
【図4A】図4Aは、実施例2において、700〜900μmビーズの負荷に5%と30%のリピオドールを用いたときの溶出プロフィールを示している。
【図4B】図4Bは、実施例2において、500〜700μmビーズの負荷に5%と30%のリピオドールを用いたときの溶出プロフィールを示している。
【図5】図5は、5%,30%,70%のリピオドールを使用したときのイブプロフェン負荷ビーズの圧縮を、未負荷の対照および油なしで負荷したビーズと比較して示している(実施例3)。
【図6A】図6Aは、異なる油を用いて負荷した後に溶出したイブプロフェンのPBS中の濃度を示している(実施例6)。
【図6B】図6Bは、異なる油を用いて負荷したビーズから溶出したイブプロフェンの%を示している(実施例6)。
【図7】図7は、異なる油を用いてイブプロフェンで負荷した後の500〜700μmビーズのサイズ分布を示している(実施例6)。
【図8】図8は、イブプロフェン−5%リピオドールで負荷した各種ビーズから溶出したイブプロフェンの%を示している(実施例7)。
【図9】図9は、24時間の溶出後の各種ビーズを示している。図9A:IBU−5%リピオドール負荷Bead Block、図9B:IBU−5%リピオドール負荷Embosphere、図9C:IBU−5%リピオドール負荷Contour SE(実施例7)。
【図10】図10は、リピオドールと共にパクリタキセルで負荷したBead Blockを示している。(A)試料1、(B)試料2(実施例8)。
【図11】図11は、リピオドールなしで(A)、または10%リピオドールを用いて(B)、デキサメタゾンで負荷したBead Blockを示している(実施例10)。
【図12】図12Aは、イブプロフェン−リピオドールで負荷したAmberlystを示している(実施例11)。図12Bは、イブプロフェン−リピオドールで負荷したAmberliteを示している(実施例11)。
【図13】図13は、リピオドール−パクリタキセルで負荷したBead Blockからの、パクリタキセルの放出プロフィールを示している(実施例9)。
【図14】図14は、塞栓形成後の子宮内での、イブプロフェンビーズ(IBU−BB)とBead Block(BB)の分布を示している(実施例12)。
【図15】図15は、1週間の時点でイブプロフェンビーズ(IBU−BB)とBead Block(BB)の周囲に観察されたリンパ球の数を示している(実施例12)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物送達の媒体として用いるためのポリマーのビーズを、薬物で負荷する方法に関する。本方法は、結晶化しやすい薬物をそのような媒体中へ負荷することができるので、バースト効果を最小限にする。好ましい態様においては、ビーズは放射線不透過性である。
【背景技術】
【0002】
塞栓形成治療では、特定の脈管の意図的な閉塞を引き起こすために、脈管構造へ薬剤を導入する。この種の治療は、特に、動脈と静脈との間の異常な連結(例えば動静脈吻合異常、AVM)を阻止するために有用であり、またある種の血管過多の腫瘍に血液を供給する血管を閉鎖し、異常組織を餓死させて壊死と縮小を引き起こすためにも有用である。
【0003】
塞栓形成の方法は、塞栓形成の程度に応じて、腫瘍の虚血または壊死を引き起こしてもよい。低酸素環境に対する腫瘍細胞の応答は、引き続いて血管形成をもたらすこともあり、その場合、塞栓形成によって減少した腫瘍への血流が補償される。従って、塞栓形成は、続く血管形成性の応答を阻止できる薬剤の投与と組み合わせることが望ましいであろう。さらにこの効果は、塞栓形成によって死滅しなかった細胞において細胞死を引き起こすために、細胞毒性のある薬剤、または他の抗腫瘍性の薬剤の放出と組み合わせることが望ましいかも知れない。固体腫瘍を治療するための、治療剤で負荷されたポリマービーズの塞栓形成剤が多数開示されており、例えば、国際公開公報WO2004/000548、WO2005/087193、PCT/GB2004/003347、およびPCT/GB2005/003431等の文献が挙げられる。
【0004】
医薬の調剤や調合の技術では油が広く用いられている。FDA不活性成分指針(静脈注射、経口カプセル、非経口調合)においては、ダイズ油が広く用いられている。
【0005】
リピオドール(Lipiodol)は、油性のヨード化されたX線造影剤であり、ケシ油を重量比で40%程度までヨード化したものである。リピオドールは、ある種の放射学的研究において、放射線不透過性の物質を直接注入された粘性構造またはその他の構造の輪郭を描くことが求められる場合に用いることができる。 リピオドールはまた、狭い通路内に導入するのに適しており、従って塞栓形成法に用いることもできる。さらに、子宮卵管造影法(HSG)にも広く用いられている。HSGは、子宮と輸卵管の放射線(またはX線)造影法で、婦人科における問題点、とくに女性の生殖能力に影響を及ぼす問題点を検出するために行われる。
【0006】
リピオドールはまた、リンパ管造影法にも用いられるが、これは、リンパ節とリンパ管を調べるもので、特に白血病、ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫の予後診断のために行われる。リピオドールは、唾液腺や唾液管の疾患を検出するためにも用いられる。
【0007】
リピオドールは、化学療法との組み合わせにおいても、標識されることなしに広く用いられる。この場合、リピオドールと薬物の乳剤が、細胞毒性剤や他の抗腫瘍剤と共に動脈に注射され、肝細胞癌の高度に選択的な治療に用いられる。
【0008】
イブプロフェン(IBU)は、疎水性の薬物で、多種類の結晶を形成することが知られている。IBUの結晶の性質は、製剤処理に影響を及ぼすことが知られている(Romero, A Jら、1991 Pharma Acta Helv 66(2) 34-43)。IBUの結晶の形状は溶媒に依存し、適切な溶媒を選択することによって改善することができる(Garekam HAら、「IBLIの晶癖の改変と、その物理機械的特性」、Drug Dev Ind Pharm 27(8):803-9, 2001)。
【0009】
われわれは国際公開公報WO2004/000698において、IBUを含有する微小球を子宮類線維腫の治療に用いる方法を記載した。
【0010】
他のグループもまた、薬物を封入するための微小球の使用法について記載している。Boudy Vらは、J. Pharm Clin 18(1) (1999) において、インドメタシンで負荷した微小球を予備形成してから、エチルセルロースとポリイソブチレンのコアセルベート混合物を封入した。
【0011】
Song C. X.らは、Journal of Controlled Release 43(1997) 197-212において、各種の薬物を負荷した、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)のナノ粒子を、乳化/溶媒蒸発法を用いて調製している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、これまでのところ、封入を行う際の薬物の結晶化の問題は解決されていない。
塞栓性の微小球(MS)上における結晶の形成は、製品の製造の際に種々の問題を引き起こす。薬物はほとんどがMSの内部に取り込まれるものの、薬物の一部は表面に残る。これらが表面上で結晶になると、バースト効果の増大が引き起こされ、高用量の薬物が急激に放出されてしまう。結晶はまた、疎水性相互作用によって、ビーズを互いに凝集させて集塊を形成させ、注射器のハブに固着させてしまうので、ビーズの投与を困難にし、さらにビーズを破壊されやすくして、送達の際にカテーテルの目詰まりを起こしやすくしてしまう。
【0013】
IBU−ビーズを滅菌するため120℃にて15分間オートクレーブする間に、結晶はビーズ表面上で融解すると見られ、IBUの融点(78℃)以上での加熱によって油滴を生じる。これらの油滴が核形成の原因となり、バイアルが開封されて製品が外気に曝された時に再結晶化を引き起こす。この結晶は前述のような問題を生じ、使用時のカテーテルとハブの目詰まりや薬物のバースト効果の増大を引き起こす。
【0014】
IBUの結晶の特性は、結晶化が起きる際の条件に依存することが示されており、結晶の形成過程を制御して、望ましい特性を有するような希釈剤と共にIBUの組成物を作成する努力が続けられている。IBUの結晶は、Eudragit R S100 ポリマーの存在下では変化することが見いだされている(Kachrimanisら、1998、「溶媒交換法によって調製したIBU−Eudragit S100 球状結晶凝集塊の結晶化条件と物理機械的特性」、Int J Pharm 173,61-74)。Rasenackらは、IBU結晶を改変する試みとして水溶性の添加物を使用した(「最適化した特性を有するIBU結晶」、 Int J Pharm 245 (1-2):9-24, 2002)。彼らは、添加物は、IBUの結晶化の際に形成される水素結合と相互作用できるので、得られる結晶の特性を変化させられるとしている。Francescoらは、IBUの結晶化を抑制するために低分子量の希釈剤を用いて、経皮システムにおけるパッチの効果と品質を維持し、製品の保存期間を延ばすことを検討している(「IBU含有単層経皮パッチにおける結晶化改変剤としてのポリメタクリレート」、 E.J.P.B., 60:61-66, 2005)。彼らは、プロピレングリコールを添加すると、IBUの結晶化が最大50日間抑制され、Eudragit E (EUE)およびEudragit RL(EURL)によって、結晶化が12ヶ月以上防止できたことを報告している。Campbellらにより、乾燥条件または最後の加熱硬化は、結晶化を防止することが報告された。米国特許第4,832,953号において、非水系基質中の懸濁液における、結晶性水和物の生成を防止する方法が記載されている。
【0015】
IBUの物理化学的性質に影響を与えるには、適切な多形型を選んだり、適切な晶癖を選んだり、特別な結晶化法を用いたり、結晶形成を改変して核形成過程を遅らせるための希釈剤を含んだ適切な調合を用いたりすればよい。脂質の代謝経路の生化学を利用して、標的化された送達と腫瘍形成性の低減とを可能にするために、IBUの担体として、脂質が用いられてきた(Lambert DM, 2000, Eur J Pharm Sci 11 Suppl 2: Sl5-27)。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズを、ビーズに浸透可能な有機溶媒の中で、結晶性の薬物の溶液と接触させることにより、薬物をビーズ中に吸収させる方法であって、溶液は、薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤をさらに含むことを特徴とする方法が提供される。
【0017】
本発明の第2の態様によれば、非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズと、結晶性の薬物と、薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤とを含む組成物であって、薬物と結晶改質剤はビーズ中に吸収され、ポリマーは架橋されたポリビニルアルコールであることを特徴とする組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において使用される薬物は、一般に結晶化しやすいものであって、例えば、溶媒を(通常は蒸発によって)除去した直後に、あるいは滅菌の工程の後に、吸収された薬物が融点以上の温度へ移行すると液滴を形成し、準安定相となって、遅れて結晶化を起こしやすくなるような薬物である。
【0019】
結晶性を有する薬物が当業者の間で知られている。本発明が特に有用である薬物群の1つは、例えばイブプロフェンのような、COX(1または2)阻害剤である。そのような結晶形成性の薬物の他の分類としては、例えばパクリタキセルのような、抗腫瘍剤が挙げられる。もう一つの薬物の分類として、例えば抗炎症特性を有するようなコルチコステロイドがあり、一例としてデキサメタゾンが挙げられる。
【0020】
本発明においてビーズを形成するポリマーは、非水溶性であって、非油溶性でなければならない。ポリマーは、生体分解性であってもよく、その場合、浸食によりポリマー基質の分解が起こって表面から薬物が実質的に放出されてもよいが、好ましくは、ポリマーは実質的に生体安定性(すなわち非生物分解性)である。ポリマーは水によって膨潤可能である。本発明において有用である水膨潤性のポリマーは、室温にてリン酸緩衝液中で膨潤すると、好ましくは平衡量の水を含有し、重量分析によれば、40〜99重量%の、好ましくは75〜95重量%の範囲の水を含有する。そのような水溶性特性は、一般に、架橋されたポリマーの使用により実現され、この場合、架橋は、例えばファンデルワールス力によって形成されるが、より好ましくは、静電的相互作用(陰イオンと陽イオンの間の引力)によって形成され、もっとも好ましくは、共有結合によって形成される。架橋の密度は、膨潤の工程の際にポリマー分子が相対的に移動できる程度のものでなくてはならない。従ってビーズは、膨潤可能であると定義されてもよく、本特許を請求する方法の開始時点において、膨潤溶媒と接触すると、少なくともある程度まで膨潤可能でなくてはならない。ビーズは、薬物/溶媒液との接触に先立って、あらかじめ部分的に膨潤されていてもよいが、好ましくは、本方法の最初の時点においては実質的には膨潤されていない。
【0021】
ビーズは、薬物送達への適用に有用なサイズを有している。例えば、5mm以上の直径を有するような非常に大きなビーズを使用してもよいが、ビーズの直径は、好ましくは2mm以下であり、より好ましくは1500μm以下である。本方法は、非常に小さなビーズを、例えば、直径が10μm未満のビーズや、直径が1μmしかないビーズを負荷するためにも有用かもしれないが、そのようなビーズは、乾燥状態において、例えば膨潤可能であるような状態においては、取り扱いが難しい。さらに、本発明は、塞栓の形成においてビーズを負荷するために最も有益である。従って、ビーズの直径は、25〜1500μmの範囲であって、好ましくは、50〜1200μmの範囲であり、例えば100〜1200μmの範囲であることが好ましい。
【0022】
本発明においては、ビーズという語は、あらゆる形状の粒子を含むことが意図されており、例えば、ロッド状、立方体、不規則形、および不均一形の粒子を含む。しかし本発明は、ビーズが球形、回転楕円形、ペレット形、またはディスク形であるときに最も有益である。粒子がペレット形、回転楕円形やディスク形のような非球形の場合は、粒子の最大寸法は、最小直径の3倍以下であり、好ましくは、最小直径の2倍未満であって、例えば約1.5倍以下であることが好ましい。上述したサイズの限定は、膨潤性のビーズのサンプルを、リン酸緩衝液中で室温にて平衡に達するまでビーズを膨潤させる条件で試験し、サイズを光学顕微鏡下で測定することによって決定される。
【0023】
本材料は塞栓形成に用いるための組成物を形成するのに特に有用である。本組成物は、好ましくは、直径の分布を定義する、特定の粒子サイズの規格を有している。ビーズは、好ましくは、精密に塞栓形成を行えるよう、検量されたサイズの範囲に類別される。粒子のサイズは、室温にてリン酸緩衝液中で平衡化されると、好ましくは100〜1500μmの範囲にあり、より好ましくは100〜1200μmの範囲にある。検量された範囲には、約100〜300μmの帯域幅の直径を有するビーズが含まれてもよい。サイズの範囲は、例えば、100〜300μm、300〜500μm、500〜700μm、700〜900μm、および900〜1200μmであってもよい。
【0024】
本発明の第1の態様による方法の一実施態様においては、天然の原料に由来するポリマーが用いられ、原料の例としては、アルブミン、アルギン酸塩、ゼラチン、デンプン、キトサン、あるいはコラーゲン等、いずれも塞栓剤として用いられてきたものが挙げられる。好ましい実施態様においては、本ポリマーは、天然に存在するポリマーまたはその誘導体を実質的に含まない。本ポリマーは、好ましくは、2価以上の架橋性モノマーの存在下で、エチレン系不飽和モノマーを重合させることによって形成される。エチレン系不飽和モノマーは、イオン性モノマー(双性イオン性モノマーを含む)を含んでもよい。
【0025】
ヒドロキシエチルメタクリレートと、アクリル酸と、例えばエチレングリコールジメタクリレートやメチレンビスアクリルアミドなどの、エタフィルコンA系のコンタクトレンズに用いられるような、架橋性モノマーとのコポリマーを用いてもよい。N-アクリロイル-2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-プロパン-l,3-ジオールとN,N-ビスアクリルアミドとのコポリマーもまた用いることができる。
【0026】
他のポリマーとしては、例えばイオン置換基を有する、分離媒体またはイオン交換媒体として用いられる種類の、架橋性スチレン系ポリマーがある。
【0027】
水膨潤性で非水溶性の基質を形成するために使用できるもう一つの種類のポリマーは、例えばグルタールアルデヒドのようなアルデヒド型架橋剤を用いて架橋した、ポリビニルアルコールである。そのような製品のために、ポリビニルアルコール(PVA)は、官能性イオン基を有する化合物を水酸基と反応させてイオン性ペンダント基を供給することによって、イオン性となるようにしてもよい。水酸基と反応させるのに適した官能基の例としては、カルボン酸もしくはその誘導体、またはエステルを形成できるその他の酸性基のような、アシル化剤が挙げられる。
【0028】
本発明の第2の態様による組成物は、非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズを含み、ポリマーはポリビニルアルコールであることを特徴とする。
【0029】
本発明が特に価値をもつのは、1分子当たり1つ以上のエチレン系不飽和ペンダント基を有するポリビニルアルコールのマクロマーから、エチレン基をラジカル重合させることによってポリマー基質を形成する場合である。PVAのマクロマーは、好ましくは、例えば非イオン性モノマー、および/または陰イオン性モノマーを含むイオン性モノマーなどの、エチレン系不飽和モノマーと共重合させられる。
【0030】
PVAのマクロマーは、例えば、適切な分子量のPVAポリマー、例えば分子量が1000〜500,000 Dの範囲、好ましくは10,000〜100,000 Dの範囲のポリマーに、ビニル系またはアクリル系ペンダント基を供給することによって生成してもよい。アクリル系ペンダント基は、例えばアクリル酸またはメタクリル酸をPVAと反応させて、水酸基の一部を介してエステル結合を形成させることによって供給してもよい。重合可能なビニル基をポリビニルアルコール上に結合させるための、その他の方法としては、例えば米国特許第4,978,713号に記載された方法があり、好ましくは、米国特許第5,508,317号および米国特許第5,583,163号に記載された方法がある。従って、好適なマクロマーは、ポリビニルアルコール骨格を含み、環状アセタール結合を介して(アルク)アクリルアミノアルキル部分が骨格に結合される。実施例1は、そのようなマクロマーの一例である、ネルフィルコンBという承認名で知られるマクロマーの合成について記載している。PVAのマクロマーは、好ましくは1分子当たり約2〜20個、例えば5〜10個のエチレン系ペンダント基を有する。
【0031】
PVAのマクロマーが、イオン性モノマーを含むエチレン系不飽和モノマーと共重合させられる場合、このイオン性モノマーは、好ましくは下記の一般式Iで表される。
Y1BQ1 I
上式中、Y1は下式のうちから選択される:
CH2=C(R10)-CH2-O-、CH2=C(R10)-CH2 OC(O)-、CH2=C(R10)OC(O)-、CH2-C(R10)-O-、CH2=C(R10)CH2OC(O)N(R11)-、R12OOCCR10=CR10C(O)-O-、R10CH=CHC(O)O-、R10CH=C(COOR12)CH2-C(O)-O-、
(上式中、
R10は、水素またはC1-C4アルキル基であり、
R11は、水素またはC1-C4アルキル基であり、
R12は、水素またはC1-4アルキル基、あるいはBQ1であって、ここにBおよびQ1は以下に定義され、
A1は、-O-または-NR11-であり、
K1は、-(CH2)rOC(O)-、-(CH2)rC(O)O-、-(CH2)rOC(O)O-、-(CH2)rNR13-、-(CH2)rNR13C(O)-、-(CH2)rC(O)NR13-、-(CH2)rNR13C(O)O-、-(CH2)rOC(O)NR13-、-(CH2)rNR13C(O)NR13-(ここに、複数の基R13は互いに同じまたは異なる)、-(CH2)rO-、-(CH2)rSO3-のいずれかの基、または、任意に原子価結合Bとの組み合わせであり、rは1〜12であり、R13は水素またはC1-C4アルキル基であり、
Bは、直鎖状のまたは分枝した、アルカンジイル鎖、オキサアルキレン鎖、アルカンジイルオキサアルカンジイル鎖、もしくはアルカンジイルオリゴ(オキサアルカンジイル)鎖であって、任意に1つ以上で全置換に至るまでのフッ素で置換されてもよく、または、Bは、Q1またはY1がBと結合された末端炭素原子を含んでいる場合は、原子価結合であり、
Q1は、イオン基である)。
【0032】
好ましくは、Q1が陰イオン基である化合物も含まれる。
【0033】
Q1が陰イオン基である場合、Q1は例えば、カルボキシル基、炭酸基、スルホン酸基、硫酸基、硝酸基、ホスホン酸基、またはリン酸基であってもよい。モノマーは、遊離酸として重合してもよく、あるいは塩として重合してもよい。共役酸のpKaは、好ましくは5未満である。
【0034】
Q1が陽イオン基である場合に適している基としては、N+R143、P+R153、またはS+R152があり、ここに、複数の基R14は、互いに同じでも異なってもよく、それぞれ、水素、C1-4アルキル、もしくはアリール(好ましくはフェニル)であり、または、複数の基R14のうちの2つは、それらが結合するヘテロ原子と共に、5〜7個の原子を有する飽和または不飽和複素環を形成し、複数の環R15は、それぞれOR14またはR14である。陽イオン基は、好ましくは、持続的に陽イオン性である、すなわち、R14のそれぞれは水素以外である。陽イオン基Q1は、好ましくはN+R143であり、ここにR14のそれぞれはC1-4アルキルであり、好ましくはメチルである。
【0035】
Q1が両性イオン基である場合、Q1は総電荷を有してもよく、例えば、2価の陰イオン電荷中心と1価の陽イオン電荷中心を有するか、もしくはその逆であってもよく、または、2価の陽イオン電荷中心と1価の陰イオン電荷中心を有するか、もしくはその逆であってもよい。しかしながら、両性イオンは、好ましくは、総電荷を有さず、最も好ましくは、1価の陽イオン電荷中心と1価の陰イオン電荷中心を有する。
【0036】
本発明におけるQ1として用いうる両性イオン基の例は、国際公開公報WO-A-0029481に記載されている。
【0037】
エチレン系不飽和モノマーが、例えば両性イオンモノマーを含む場合、それによって粒子の親水性、潤滑性、生体適合性および/または血液適合性が向上することがある。適切な両性イオンモノマーは、我々の以前の国際公開公報WO-A-9207885、WO-A-9416748、WO-A-9416749、およびWO-A-9520407に記載されている。両性イオンモノマーは、好ましくは、2-メタクリロイルオキシ-2'-トリメチルアンモニウムエチルリン酸の分子内錯塩(MPC)である。
【0038】
一般式Iのモノマーにおいて、Y1は、好ましくは基CH2=CR10COA1-であり、ここに、R10は、Hまたはメチルであって、好ましくはメチルであり、A1は、好ましくはNHである。Bは、好ましくは、炭素原子が1〜12個、好ましくは2〜6個のアルカンジイル基である。そのようなモノマーとしてはアクリル酸モノマーがある。
【0039】
エチレン系不飽和モノマー中には、希釈剤モノマー、例えば非イオン性モノマーが含まれていてもよい。そのようなモノマーは、酸性基のpKaを調節したり、製品の親水性や疎水性を調節したり、ポリマー中に疎水性領域をもたらしたり、あるいは単に不活性の希釈剤として機能するのに役立つことがある。非イオン性の希釈剤モノマーの例としては、例えば、アルキル(アルク)アクリル酸や(アルク)アクリルアミドがあり、特に、炭素原子数が1〜12のアルキル基を有する化合物、ヒドロキシ置換またはジヒドロキシ置換された、アルキル(アルク)アクリル酸および(アルク)アクリルアミド、ビニルラクタム、スチレン、およびその他の芳香族モノマー、が挙げられる。
【0040】
ポリマー基質中では、陰イオンの量は、好ましくは0.1〜10 meq g-1の範囲であり、好ましくは1.0 meq g-1以上である。好適な陰イオンは、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、およびカルボン酸塩などの強酸に由来する陰イオンである。
【0041】
PVAのマクロマーが、他のエチレン系不飽和モノマーと共重合される場合、PVAのマクロマーと他のモノマーとの重量比は、好ましくは50:1〜1:5の範囲であり、より好ましくは20:1〜1:2の範囲である。エチレン系不飽和モノマー中には、陰イオンモノマーが、好ましくは10〜100モル%の範囲で存在し、より好ましくは25モル%以上存在する。
【0042】
架橋されたモノマーは、例えば、連続的な不混和性担体中の分散層の中で、モノマーの液滴として重合させることによって、粒子状となるように形成されてもよい。膨潤させたときに望みのサイズとなるような粒子を形成するのに適した油中水型の重合化法の例が知られている。例えば、米国特許第4,224,427号は、懸濁剤の存在下で水溶性モノマーを連続的な溶媒相中へ分散させることによって、直径が5 mm以下の均一な球状ビーズ(微小球)を形成する方法を記載している。分散相の粒子のサイズを調節するための安定化剤および界面活性剤が存在してもよい。架橋された微小球は、重合化の後に、既知の方法で回収され、洗浄されて、要すれば任意に滅菌される。この粒子(たとえば微小球)は、好ましくは、水系液体中で膨潤され、サイズに従って類別される。
【0043】
本発明の第1の態様による方法においては、有機溶媒は、薬物を溶解させ、ビーズ中へ浸透することができる。そのような好適な実施態様においては、薬物を溶解可能であるような有機溶媒が選択される。溶媒を、それ自身が結晶改質剤として働くようにさせ、従って負荷した製品中に残留させることもでき、その場合、有機溶媒は、浸透させるためまたは平衡に達するまで負荷させるために必要な量よりは少ない量で使用してもよい。しかし、取り扱いを容易にするために、溶媒は過剰量で用いることが好ましい。薬物の負荷を行う際には、接触の期間の後に、過剰な溶媒を、負荷されなかった薬物と過剰な結晶化抑制剤とともに、ビーズ(膨潤していてもよい)から互いに分離させてもよい。適切な分離法には、通常、遠心および/または濾過のような固体−液体分離法が含まれる。通常は、それに続いて、例えばビーズを加熱するおよび/または減圧することによって、溶媒をさらに蒸発させる。そのような蒸発法が用いられる場合には、結晶改質剤は、必要以上に失われてしまうことのない程度に不揮発性であることが必要である。
【0044】
好ましい方法においては、過剰な有機溶媒の除去に続いて、乾燥した負荷されたビーズは水系の保存液と接触させられ、保存液は、好ましくはビ−ズに浸透するよう過剰量であって、好ましくは平衡に達するまでビーズを膨潤させることができ、ビーズの外には、そこへビーズを懸濁することのできる液体、あるいは実際にビーズの懸濁した液体が存在してもよい。ビーズは、好ましくは、そのような水系保存液に懸濁された状態で、懸濁液を入れた容器を加熱することによって滅菌され、例えば、90℃以上にて、より好ましくは、100℃以上にて加熱されてもよく、好ましくは、5秒以上の時間にわたって、より好ましくは15分以上の時間にわたって121℃にて加熱されてもよい。
【0045】
結晶改質剤として、有機溶媒とは不混和性である材料を用いることもできるが、この場合、負荷を行う段階で、結晶改質剤の溶媒中での分散液が用いられる。そのような分散液は、液中液分散液でもよく、通常はエマルジョン(すなわち比較的安定な二相性液体)であるか、あるいはそれほど安定ではないが撹拌などの物理的手段によって液中液懸濁液として維持されるような懸濁液であってもよい。結晶改質剤は、好ましくは液体であり、実質的に有機溶媒と混和性である。過剰な溶媒は蒸発を含む手段によって除去されることが好ましいので、結晶改質剤は、好ましくは溶媒除去の条件下において実質的に不揮発性である。結晶改質剤は、好ましくは81℃を越える沸点を有し、より好ましくは90℃を越える沸点を有している。好ましい実施態様の場合のように、本方法に滅菌工程が含まれるときは、結晶改質剤の材料はその滅菌の条件下においても安定でなくてはならない。この材料は、保存用および/または送達用媒体に対して等浮揚性となるよう、密度を考慮して選択してもよく、それによって、保存液の中で懸濁液となってもよく、および/または、患者への送達の直前に調製される造影剤との混合物の中で懸濁液となってもよい。一実施態様において、結晶改質剤の密度は、水の密度より僅かに高く、たとえば1 .01〜1.30 g/mlの範囲である。これは例えばリピオドールが結晶改質剤として用いられる場合に当てはまる。あるいは、異なる実施態様においては、結晶改質剤は水よりも密度が低くてもよい。2種以上の成分を結晶改質剤として用いてもよい。
【0046】
不揮発性の混和性材料の例としては、油やグリコールやグリコールエーテルがある。グリコールの一例はグリセロールである。油の例としては、ダイズ油(密度0.91〜0.92 g/ml)、綿実油、アーモンド油、ヒマワリ油(密度0.92 g/ml)、ケシの実油、およびミネラルオイル(密度0.84〜0.87 g/ml)が挙げられる。
【0047】
特に好適な実施例においては、結晶改質剤は、造影剤として有用な性質を有し、例えば放射線不透過性の材料であり、そのため、患者への組成物の送達に続いて放射線造影法を行うことができる。本発明の極めて好適な実施例においては、結晶改質剤は、放射線不透過性の油系材料であり、例えば、ヨード化脂肪酸の低級アルキルエステルのようなヨード化油やその混合物でもよく、それらの例として、リピオドールやエチオドール(Ethiodol)が挙げられる。リピオドールは、ヨード化されたケシの実油と、少しの非ヨード化油性安定剤とからなっている。リピオドールは約38〜42重量%のヨウ素を含み、それらの一部はジヨード化誘導体となり、一部はモノヨード化誘導体となっている。
【0048】
本発明の方法においては、有機溶媒は、好ましくは1価のC1−12脂肪族アルコールから選択され、好ましくはエタノールとプロパノールから選択される。溶媒は、好ましくは結晶改質剤と比べてより揮発性でなくてはならない。穏和な条件下での有機溶媒の除去、たとえば、低温下、好ましくは低圧化での蒸発を含む方法での除去が可能となるように、有機溶媒は、90℃未満の沸点を有することが好ましく、80℃未満の沸点を有することがより好ましい。
【0049】
本方法は、多様な薬物とともに用いるのに適している。薬物の負荷量は、所望の用量に依存し、薬物の活性、ビーズからの放出の特性、および治療すべき適応症に関する知見に基づき、当業者が適宜選択してもよい。同様に、負荷混合物中の薬物の濃度も、所望の薬物負荷に従って選択される。負荷溶液中の薬物の濃度は、好ましくは1〜1000 mg/mlの範囲であり、好ましくは10〜500 mg/mlの範囲である。負荷溶液には、最終産物において結晶形成を適度に調節するのに充分なだけ残存できるような量の、結晶改質剤が含まれていなければならない。この量は当業者が決定することができ、そのためには、異なる量の薬物と結晶改質剤とを特定の種類のポリマー中に負荷し、薬剤組成物を処理するのと同じ方法で処理して、薬物の結晶化に所望の効果を及ぼす、すなわち結晶化の発生を防止するのに最低限必要な改質剤の量を決定する、という一連の試験を行ってもよい。適切な結晶改質剤(すなわち結晶化防止剤)の量は、ビーズ中の薬物の合計量に基づき、1〜99重量%の範囲であり、好ましくは5〜50%の範囲である。
【0050】
適切な薬物対ポリマーの比率は、ビーズ中の乾物(すなわちポリマー)に基づき、10:1〜1:10の範囲であり、好ましくは2:1〜1:2の範囲である。
【0051】
本発明の方法は、とりわけ、パクリタキセル(PTX)、イブプロフェン、およびデキサメタゾン(DEX)で負荷したビーズを生産するのに適していることが分かっている。薬物と油で負荷したビーズは、ビーズ表面上での結晶の形成が抑制されるという利点を有している。また、ビーズの内部での結晶の形成も抑制されていると考えられ、そのため、ビーズ中での薬物のより均等な分布がもたらされる。PTX負荷ビーズは抗腫瘍性塞栓剤として作用してもよく、他方、IBUおよびDex負荷ビーズは、抗炎症性作用を有するとともに、COX阻害における作用様式を介した抗腫瘍性作用も有していてもよい。結晶形成を減少させることの利点としては、例えば、ビーズ表面の結晶に起因するバースト効果の低減、注射器に用いられるプラスチック等の包装へのビーズの付着性の低減、包装中およびカテーテル中での自己凝集性の低減、それによる負荷の均質性や送達可能性の向上、などが挙げられる。加えて、改質剤が存在することによって安定性が向上し、従って製品の保存期間が延びる可能性もある。油系造影剤(リピオドールのようなヨード化油)を結晶改質剤として使用することは、送達の際にビーズを可視化することを可能にし、塞栓形成後にはビーズの追跡を可能にするという利点ももたらすことができる。ヨード化油は、水よりも高い密度を有し、結晶改質剤として用いると薬物で負荷した微小球の総密度も増加させるので、送達のために通常用いられる生理的食塩水と造影剤との混合物中にビーズを加えたときの懸濁性を調節することができる。リピオドールは15℃にて1.280 g/mlの密度を有している。
【0052】
本発明においては、FDAによって不活性成分として承認された油を使用することが好ましく、それらの油は、イブプロフェン、パクリタキセル、およびデキサメタゾンの結晶生成を変化させることが見いだされている。本発明の利点の一例として、ビーズの凝集と、取り扱いおよび送達の際に用いられるプラスチックへの付着とを低減させる効果が挙げられる。さらに、リピオドールが結晶改質剤である場合、放射線造影法によってビーズを可視化できることが示されており、有用な複数の特性の有意義な組合せがもたらされる。結晶改質剤として高密度油を用いると、負荷ビーズの密度を、水系の保存媒体の密度に近くなるまで調節できるので、送達に先立って負荷ビーズを生理的食塩水および/または造影剤と混合しても直ぐに沈降してしまうことがない、というさらなる利点も得られる。従って、本発明においては、製品ビーズは、塞栓形成に一般的に用いられる方法を用いて投与することができ、任意に、放射線造影法によってさらに可視化を行うために追加の造影剤に懸濁してもよい。
【実施例】
【0053】
本発明について以下の実施例によって説明する。
【0054】
〔比較例:IBU負荷Bead Block(IBU−BB)の調製〕
サイズが500〜700μmで、滅菌注射器にて2 mlのビーズとして供給される市販製品のビーズである「Bead Block(商標)」を用いて、IBUで負荷されたビーズを製造した。そのようなビーズの製造については、国際公開公報WO2004/000548の実施例1において「低AMPS」製品として記載されている。簡潔に述べると、アセタール結合したエチレン系不飽和基と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸とを重量比約12:1で含むポリビニルアルコールマクロマーの水系混合液を、セルロースアセテート酪酸塩安定化剤を含有する酢酸ブチルの連続相中で撹拌器を用いて懸濁し、レドックス開始を用いたラジカル重合を行ってビーズを形成させ、得られたビーズを洗浄し、染色して、サイズ分画に従ってふるい分けした。そのうち500〜700μm分画と700〜900μm分画を以下の実施例で使用した。Bead Blockを、1瓶当たり2 mlの分量でガラスバイアルへ移した。次に、余剰の生理的食塩水を除去し、ビーズを凍結乾燥させた。IBU/エタノール溶液を、所要の最終濃度となるよう調製した。この溶液1 mlを凍結乾燥したビーズに加えて1時間かけて(静置して)負荷した。その後、余剰の負荷溶液を除去し、ビーズ試料を45℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。乾燥試料に2 mlの水を加えてビーズを水和させ(図1A)、121℃で15分間オートクレーブして滅菌した(図1C)。図1Cには、比較例を用いた負荷を行った後のビーズ(注:1Dに比べてビーズの不透明度にばらつきがある)によるイブプロフェンの不均一な取り込みと、溶液中に生じた薬物の結晶が示されている。
【0055】
〔実施例1:IBU−リピオドール負荷微小球(IBU−LBB)の調製〕
ビーズを、次の2つの点を除いて比較例と同じ方法で負荷した。負荷溶液はリピオドール(L)の33%IBU/エタノール中溶液からなることと、150 rpmに設定した振盪器上で1時間かけてビーズ試料を振盪したことである。余剰の負荷溶液を除去し、試料を50℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。その後、負荷ビーズを2 mlの水で水和させ、比較例と同様にして蒸気滅菌した。
この方法で製造された最初の微小球(IBU−LBB)は、スラリー状であって、肉眼では青/白のビーズであった。それらの微小球はガラスバイアルに付着せず、ビーズ表面での白色の結晶の生成は認められなかった。
【0056】
<サイズと画像分析> 光学顕微鏡を用いてビーズのサイズを測定し、Colour View IIIビデオカメラを用いてビーズを可視化した。ビーズは、凍結乾燥の前に球状の形態を回復し、不透明に見え(肉眼では白/青)、均一な外観を有していた(図1Bおよび1D)。これらの微小球のサイズの分布を最初のビーズと比較した(図2)。
【0057】
<溶出> 水和水を取り出し、HPLCバイアル中に入れて、製造途中での薬物の損失を求めた(希釈なし)。各バイアル(2 mlのビーズ)を200 mlのPBS中へ24時間かけて溶出させた。所定の時点(10、20、40、60分後、および、2、4、24時間後)において、溶液の1 mlを取り出してHPLCバイアルに入れ、薬物の溶出、分解および純度を求めた。ビーズ中へ負荷された薬物の量は、リピオドールの添加をしない場合の量と同様であった。IBUの純度は99%を越えており、IBUによる干渉はなかったことを示している。溶出後のビーズの画像は、IBU負荷ビーズ(図1D)の外観と同様な不透明なビーズを示していた。このことは、リピオドールのビーズによる取り込みが、不透明色に寄与しており、PBS中へは溶出しないことを示している。
【0058】
<送達可能性試験> ビーズの送達可能性の試験を、臨床環境における実施可能性試験と同様にして行った。50:50の割合のVisipaque 320と水から10 mlの造影剤を調製した。混合液の9 mlをバイアルに加えた。試料の3 mlずつを用いて、2.7Fr Progreat(登録商標)カテーテルを使用して3回の注射を行った。
IBU−LBBビーズは、バイアルを開封したときに凝集せず、生理的食塩水中で自由に分散した。700〜900μmのビーズは、送達可能性試験により、2.7Fr Progreatマイクロカテーテルから問題なく送達できることが示された。
【0059】
〔実施例2:IBUと濃度5%および30%のリピオドールとで負荷されたビーズを使用したときの水和媒体とその種類および液量の効果〕
本実施例は、ビーズによる水の取り込みの程度と、用いる水和媒体の効果を調べるために行われた。サイズが700〜900μmのBead Blockを、5%または30%のリピオドールを含有するIBUエタノール溶液を用いて、実施例1と同じ一般的な方法によって1時間かけて負荷した。余剰の負荷溶液を除去し、50℃に設定した真空オーブン中で試料を一晩乾燥させた。2 mlの水、3 mlの水、または2 mlの生理的食塩水のいずれかを用いて試料を水和させ、続いて121℃で15分間かけて蒸気滅菌した。
実施例1に記載した方法でサイズを測定した。サイズ分布のヒストグラムが図3A〜Eに示されている。各グループは、対照のビーズ(凍結乾燥と負荷の前)と比較して統計学的に有意な差(p < 0.0001)を有していた。5%リピオドールを含む2 mlの水を使用した場合と、30%リピオドールを含む2 mlの生理的食塩水を用いた場合との間に有意差はなかった(p = 0.5158)。両方の場合において、サイズの範囲は、許容されるサイズ分布の指針の範囲内に収まっており、全体的にはより高いビーズのサイズの方へシフトしていた(図2)。
【0060】
<500〜700μmビーズおよび700〜900μmビーズ上のIBU−5%LBBおよびIBU−30%LBBからの溶出>
実施例2に従い、水和水を取り出し、HPLCバイアル中に入れて、製造途中での薬物の損失を求めた(希釈なし)。各バイアル(2 mlのビーズ)を200 mlのPBS中へ24時間かけて溶出させた。所定の時点(10、20、40、60分後ならびに2、4、24時間後)において、溶液の1 mlを取り出してHPLCバイアルに入れ、薬物の溶出、分解および純度を求めた。その結果、サイズが700〜900μmのビーズについては、5%リピオドールを用いたビーズと30%リピオドールを用いたビーズとの間で溶出速度に違いはなかったことが示された。図4Aは、両方のリピオドール濃度について、最初の2時間のうちに、全IBU用量の99%を越える量が、サイズが700〜900μmのビーズから溶出したことを示している。500〜700μmの範囲についても同様に、最初の2時間で99%を越える量が溶出したが、30%リピオドールを用いた場合の方が、より早い溶出の方へ少しシフトしていた(図4B)。
【0061】
〔実施例3:種々の濃度のリピオドールを含有するIBUビーズの圧縮試験〕
サイズが700〜900μmのBead Blockを、5%、30%、50%、70%、80%、90%のリピオドールを含むIBUエタノール溶液で1時間かけて負荷した。余剰の負荷溶液を除去し、試料を50℃に設定した真空オーブン中で一晩乾燥させた。試料を2 mlの水で水和させ、続いて121℃で15分間かけて蒸気滅菌した。
5%、30%、70%リピオドールを用いたIBU−ビーズの圧縮試験が図5に表されており、各リピオドール濃度のIBU−LBBは、リピオドールなしの比較製品と同様であって、いずれも、水で水和すると、Bead Blockに比べて圧縮性が高かったことが示されている。30%リピオドールIBU−LBBの水和に生理的食塩水を用いた場合は、負荷を行わなかった対照よりも圧縮性が高かった。
【0062】
〔実施例4:ヒマワリ油で負荷した微小球の調製〕
リピオドールの代わりに33%のヒマワリ油/エタノール溶液を用いて、実施例1に記載した方法でBead Blockを負荷した。ビーズは実際に油を取り込み、色を白/青に変化させた。この濃度では、水相の中に油滴が認められた。顕微鏡で観察すると、IBU負荷ビーズ(図1D)と同様の外観であった。
【0063】
〔実施例5:X線透視検査のための、薬物なしでの各種濃度のリピオドールによる負荷〕
前述のIBU/リピオドール溶液の場合(実施例3)と同様の方法において、IBU/リピオドール溶液を30%、50%、70%、80%、90%の各濃度のリピオドール/エタノール溶液に置き換えて、700〜900μmビーズを用いて試料を調製した。100%リピオドール試料は、ビーズにリピオドールを直接加えて1時間かけて調製した。続いて余剰液を除去してから、エタノールで軽く一度洗浄した。IBU/リピオドールビーズについて記載したのと同様にして、余剰のエタノールを除去し、乾燥させ、水和させて、蒸気滅菌した。試料をX線透視法で観察した。ビーズはX線で観察可能であって、異なるビーズの間で明白な違いは見られなかった。
【0064】
〔実施例6:種々の油性希釈剤を使用したIBUの負荷〕
リピオドール、ダイズ油、綿実油、ミネラルオイル、アーモンド油のいずれかを5%含有するIBUエタノール溶液を用いて、サイズが500〜700μmのBead Blockを1時間かけて負荷した。余剰の負荷溶液を除去し、試料を50℃に設定した真空オーブン中で2時間かけて乾燥させた。全ての試料を水で水和させ、続いて121℃で15分間かけて蒸気滅菌した。
全てのバイアルは、油の種類に関わらず肉眼でも画像解析でも同様に見えた。5種類の油の全てについて、実施例2に記載したのと同様にして溶出試験を行った。24時間で溶出した総用量は25 mg/mlビーズ±5 mgであった(図6A)。その結果、綿実油を除く全ての油は同様の溶出プロフィールを示したが、綿実油は溶出速度を遅くしてしまうようであった。綿実油を除く全ての油が最初の1時間のうちに85%溶出し、綿実油は72%だけ溶出した。全ての試料で4時間以内に99%を超える量が溶出した(図6B)。
ビーズのサイズは、それぞれの油の間で互いに、またリピオドールに対して、統計学的に有意な差がなかった(図7)。
【0065】
〔実施例7:市販の他の塞栓形成性ビーズの負荷〕
市販の塞栓形成性ビーズである、Embosphere(直径が700〜900μmでコラーゲンにより被覆されたトリスアクリル/ゼラチン微小球の製品)、Embogold(直径300〜500μmの製品)、Contour SE(直径500〜700μmの非イオン性架橋ポリビニルアルコールの製品)といった微小球を、同一のIBU/エタノール/5%リピオドール負荷溶液(125 mg/mL)を用いてIBUで負荷した。負荷の手順は実施例2に記載したものと同様である。
外見的には、Bead Blockの場合を除いてビーズの色は変わらなかったが、Bead Blockは典型的な青/白の色に変化した。Embosphereは非常にガラスバイアルに付着しやすい傾向を示した一方、Contour SEは相当な凝集を示した。付着性と凝集の両方とも、ビーズ表面のIBUの結晶と関連していた。溶出後の画像から、Embosphereは僅かに不透明であって(図9B)、Embogoldは(非常に不透明なBead Block(図9A)に比べて)透明な赤色であったことが示されており、これらのことは、リピオドールの取り込みが少なく、結晶形成の抑制が低いことを示している。Contour SEは不透明であったが、ほとんどのビーズは凝集して油の被膜に封入さていた(図9C)。このことはビーズの不透明色はIBUの取り込みのためであったことを示唆している。凝集は、凍結乾燥段階の後でのビーズ表面のIBUによって引き起こされたのかもしれない。リピオドールによるContour SEの封入は、IBUの溶出が遅いことに現れていた(図8)一方、その他の種類のビーズは、いずれも最初の2時間で98%を超える量が溶出していた。
【0066】
〔実施例8:リピオドールBead Blockへのパクリタキセル(PTX)の負荷〕
PTX負荷ビーズを実施例2に記載したのと同じ方法で調製した。Bead Block(500〜700μmと700〜900μm)をまず2 mlガラスバイアル中へ取り分けた。次に余剰の生理的食塩水を除去し、ビーズを凍結乾燥させた。PTX−リピオドール−エタノール溶液を所要の最終濃度となるよう調製し、続いて凍結乾燥したビーズに加えて、プレート振盪器上で150 rpmにて1時間かけて負荷させた。そして余剰の負荷溶液を除去し、ビーズ試料を真空オーブン中で45℃にて一晩乾燥させた。乾燥した試料に2 mlの水を加えてビーズを水和させ、続いて121℃で15分間オートクレーブして蒸気滅菌した。
負荷されたPTXを超音波処理下でDMSOを用いて抽出して、PTXの負荷量を決定した。抽出液をHPLCで分析した結果が、以下の表1に示されている。
【0067】
===表1:リピオドールBead BlockにおけるPTXの負荷効率*===
*リピオドールは負荷溶液中では23%(v/v)である。
【0068】
〔実施例9:リピオドールBead BlockからのPTXの溶出〕
実施例8の試料3および4をPTXの溶出試験に用いた。1.2 mlの各試料を200 mlのPBS緩衝液と回転混合器上で室温にて混合した。所定の時間間隔で50または100 mlの溶液を除去して、50または100 mlの新しいPBSを添加した。HPLC処理後の溶出プロフィールが図13に示されている。
【0069】
〔実施例10:リピオドールを使用したデキサメタゾン(Dex)の負荷と溶出〕
Dex負荷溶液(5 mg/ml)をエタノール中で調製した。この溶液を用いて実施例1に記載した方法でビーズを負荷した。対照として、リピオドールを使用せずにDexエタノール溶液で別のビーズを負荷した。
リピオドールを使用しないで負荷したビーズはDexを取り込まなかったことが、画像によって示された。ビーズの表面にはDexの結晶が存在していた(図11A)。IBU−リピオドールを用いて負荷したビーズは不透明であって、ビーズ表面に結晶は認められなかった(図11B)。
【0070】
〔実施例11:異なるビーズを用いた負荷と溶出〕
2種類のイオン交換樹脂(Amberlyst(SIGMA社、スルフォン酸系、交換容量1.9 mg/ml)および Amberlite(Sigma、IRA700(クロライド)四級アンモニウム基含有スチレン−DVB樹脂、総交換容量1.4 mg/ml、密度 0.7 g/ml))をIBU−リピオドールで負荷した。負荷と溶出の手順は実施例1と同様に行い、100 mg/mLのIBUを含有する溶液を使用した。
AmberliteによるIBUの取り込みは、ビーズ当たり1 mg/mL未満であった(図12B)。Amberlystは、約15 mg/mLのIBUで負荷された(図12A)。
【0071】
〔実施例12:ヒツジ子宮動脈の塞栓形成炎症モデルにおける、イブプロフェンと結晶化抑制剤としてダイズ油とを含有する塞栓形成性ビーズの使用〕
ヒツジの子宮動脈において、塞栓形成後の12週間にわたってイブプロフェン負荷ビーズの効果を評価した。血管の塞栓形成は、疼痛や炎症などを含む種々の副作用を引き起こすことがある。本実施例の目的は、ヒツジ子宮動脈モデルにおいて、結晶化抑制剤としてダイズ油を含有するイブプロフェン負荷ビーズからのイブプロフェンの放出と、異物炎症反応に及ぼす効果とを評価することであった。以下の事項が評価された。
・血管網内におけるビーズの特性と分布。
・塞栓形成性ビーズに対する異物炎症反応に及ぼすイブプロフェン/ダイズ油の放出の効果。
・ビーズ中に存在するイブプロフェンの量の時間経過。
【0072】
<方法>
本実施例で試験したのは、実施例6で記載したものと同じく、結晶化抑制剤としてダイズ油を含有する、イブプロフェンで負荷したビーズ(イブプロフェンビーズ)である。イブプロフェンビーズと同様の方法で処理した製造対照である未負荷のBead Blockの微小球と比較して、試料の試験を行った。2 mlのビーズを比較例1に記載したのと同様に凍結乾燥させ、10容量%のダイズ油と400 mgのイブプロフェンとを含有するエタノール1 ml中に入れた。実施例6と同様の処理を行ってから、抽出とHPLC分析を行った結果、最終製品は、水和したビーズ1 ml当たり125 mgのイブプロフェンと約10 mgのダイズ油を含んでいた。
【0073】
妊娠しておらずホルモン的に妊娠可能な状態にある24頭の成体のPre-Alpesヒツジを、未負荷のBead Blockの群(対照群、BB;500-700μm)と、イブプロフェン負荷ビーズの群(試験群、イブプロフェンビーズ;500-700μm)の2つに分けた。各群を4つの時点(24時間、1週、3週、12週)に分割し、各時点で3頭ずつとなるようにした。
【0074】
臨床で用いられるのと同じシ−ス、カテーテル、ガイドワイヤを使用して、塞栓形成を実施した。標準的なセルディンガー法により無菌的条件下で4-Fr血管シースを大腿動脈内に挿入した。4-Frのピッグテールカテーテル(Optitorque Radifocus、Terumo社)を腸骨動脈分枝の位置に留置し、デジタル減算大動脈造影法を行って、卵巣および子宮の動脈を同定した。4-Frのコブラ型カテーテル(Radiofocus血管造影カテーテル、Terumo社)を使用して、対側内腸骨動脈への選択的カテーテル挿入と子宮動脈への超選択的カテーテル挿入を実施した。次に放射線科医により、塞栓形成剤(イブプロフェンビーズまたはBead Block)のうちからランダム化序列に従い選んたものを用いて塞栓形成を行った。
【0075】
0.5 mL容量のビーズ(Vispaque 270と生理的食塩水との等量混合液中に1/10希釈で懸濁したもの)をX線透視下でゆっくりと注入した。0.5 mLのビーズが各々の子宮動脈に送達された時点で塞栓形成が完了したものとした。
【0076】
組織中でのビーズの分布を評価し、臓器の肉眼観察を実施した。各種炎症細胞に対するCD抗体による免疫組織染色の後にビデオ解析を行うことにより、準定量的なリンパ球の類別を行って、炎症を組織学的に評価した。
【0077】
<結果>
[塞栓形成法]
ビーズの送達は各動物において優秀であった。全ての動物で塞栓形成が成功した。各動物には両方の子宮動脈に0.5 mLずつ(合計1 mL)のビーズが注入された。
【0078】
[ビーズの性能]
2つのビーズ製品の間で、子宮の異なるゾーンにおける閉塞血管の分布に統計学的な差(p<0.0001、Χ2)があった。すなわち、イブプロフェンビーズは、Bead Blockよりも若干多くの近位の血管を閉塞させた(図14)。図14中においては、EMは子宮内膜を、MMは子宮筋層を、PXは近位をそれぞれ表している。血管の直径はイブプロフェンビーズの場合の方が増大していたが(498μm対436μm、P=0.0001)、閉塞した血管中に見いだされたビーズの平均数には差異がなかった。
塞栓形成後24時間と1週間の時点で、イブプロフェンビーズの場合のほうがBead Blockよりも多くの血管の壊死が認められたが(それぞれ、25.8%対4.9%、32.8%対4.3%)、3週間後と3ヶ月後にはどちらの群においても壊死は見いだされなかった。
【0079】
[炎症反応]
特定の時点において、Bead Blockとイブプロフェンビーズとの間で好中球および好酸球の数にわずかな違いが見られた。1週間の時点で、巨細胞は、イブプロフェンビーズの場合の方がBead Blockよりも統計学的により少数であった(p=0.01)。24時間の時点では、両群ともほとんどリンパ球が認められず、両者の数の間に有意な差はなかった。1週間後には、イブプロフェンビーズの周囲では、Bead Blockと比べて有意にリンパ球の数が少なかった(図15)。3週間後と3ヶ月後では、リンパ球の数は、イブプロフェンビーズの場合に顕著に増大し、Bead Blockとの間には有意な差がなかった。
組織スライドの幾つかにおいては、BBとイブプロフェンビーズの両製品の再吸収の兆候として、明らかな食作用、巨細胞の数の増加、およびCD4とCD8の持続的な存在が認められた。このことは、以前のPVA塞栓形成剤を用いた長期的な観察結果からすると予測できたことであった。
【0080】
[CDマーカー]
1週間目の時点で、イブプロフェンビーズ群においてCD172a陽性細胞の数が低下していたことから、炎症反応が低減したことが確認された。さらに、結晶化抑制剤を添加してもCD8陽性T細胞やCD21B細胞の浸潤は生じなかったことから、最適化されたイブプロフェンビーズの処方には副作用がないことが分かった。その他のCDマーカーは両群の間で差異がなかったが、3ヶ月後の時点で、CD172,CD3,MHC−IIはいずれも低いままであって、「リバウンド作用」はなかったこと、そしてCD21陽性細胞も好酸球も存在せず、過敏性の兆候もなかったことが、本研究により確認できた。
【0081】
[イブプロフェンの量]
抗イブプロフェン抗体により特異的に染色された部位が、「レチクル」パターンを有する部位として同定された。高濃度の染色が塞栓形成後24時間の時点で観察された。1週間後もなおイブプロフェンは検出可能であったが、ずっと低い濃度であった。塞栓形成後3週間後と3ヶ月後になると、ビーズ中にイブプロフェンは検出されなかった。
【0082】
<結論>
本実施例から、イブプロフェンビーズを用いた塞栓形成は、塞栓形成性ビーズに対する異物炎症反応を低減できることが確認される。イブプロフェンは、塞栓形成後1週間までビーズ中で検出できるが、3週間後以降は検出されなくなる。さらに、塞栓形成後1週間の時点での炎症反応の低減は、3週間および3ヶ月の時点で炎症反応に対する有害なリバウンド作用をもたらさない。ダイズ油結晶化抑制剤を含有させたことによる明らかな生体内作用は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1AおよびCは、比較例1を使用した場合の、ビーズ表面のイブプロフェンの結晶を示している。図1BおよびDは、油(リピオドール)−実施例1を用いた負荷の後のイブプロフェンビーズを示している。
【図2】図2は、実施例2に記載したように、異なる濃度のリピオドールで負荷した後のイブプロフェンビーズのサイズの分布を、未負荷の対照と比較して示している。
【図3】図3A〜3Eは、異なる量の水または生理的食塩水2 mLを用いて水和した後のイブプロフェン負荷ビーズのサイズ分布のヒストグラムを、0.9%生理的食塩水中の対照と比較したものである(W=水、PBS=リン酸緩衝液)。実施例2を参照のこと。
【図4A】図4Aは、実施例2において、700〜900μmビーズの負荷に5%と30%のリピオドールを用いたときの溶出プロフィールを示している。
【図4B】図4Bは、実施例2において、500〜700μmビーズの負荷に5%と30%のリピオドールを用いたときの溶出プロフィールを示している。
【図5】図5は、5%,30%,70%のリピオドールを使用したときのイブプロフェン負荷ビーズの圧縮を、未負荷の対照および油なしで負荷したビーズと比較して示している(実施例3)。
【図6A】図6Aは、異なる油を用いて負荷した後に溶出したイブプロフェンのPBS中の濃度を示している(実施例6)。
【図6B】図6Bは、異なる油を用いて負荷したビーズから溶出したイブプロフェンの%を示している(実施例6)。
【図7】図7は、異なる油を用いてイブプロフェンで負荷した後の500〜700μmビーズのサイズ分布を示している(実施例6)。
【図8】図8は、イブプロフェン−5%リピオドールで負荷した各種ビーズから溶出したイブプロフェンの%を示している(実施例7)。
【図9】図9は、24時間の溶出後の各種ビーズを示している。図9A:IBU−5%リピオドール負荷Bead Block、図9B:IBU−5%リピオドール負荷Embosphere、図9C:IBU−5%リピオドール負荷Contour SE(実施例7)。
【図10】図10は、リピオドールと共にパクリタキセルで負荷したBead Blockを示している。(A)試料1、(B)試料2(実施例8)。
【図11】図11は、リピオドールなしで(A)、または10%リピオドールを用いて(B)、デキサメタゾンで負荷したBead Blockを示している(実施例10)。
【図12】図12Aは、イブプロフェン−リピオドールで負荷したAmberlystを示している(実施例11)。図12Bは、イブプロフェン−リピオドールで負荷したAmberliteを示している(実施例11)。
【図13】図13は、リピオドール−パクリタキセルで負荷したBead Blockからの、パクリタキセルの放出プロフィールを示している(実施例9)。
【図14】図14は、塞栓形成後の子宮内での、イブプロフェンビーズ(IBU−BB)とBead Block(BB)の分布を示している(実施例12)。
【図15】図15は、1週間の時点でイブプロフェンビーズ(IBU−BB)とBead Block(BB)の周囲に観察されたリンパ球の数を示している(実施例12)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズを、ビーズに浸透可能な有機溶媒の中で、結晶性の薬物の溶液と接触させることにより、薬物をビーズ中に吸収させる方法であって、前記溶液はさらに、前記薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ビーズから過剰な溶媒を除去することによって、乾燥した負荷されたビーズが生産され、前記除去は、好ましくは、ビーズ/液体の分離を行う工程と、前記溶媒の蒸発または昇華を行う工程を含む工程によって行われ、より好ましくは、昇温下でおよび/または減圧下で、蒸発を行う工程によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥した負荷されたビーズが、過剰な水系保存液と接触させられることによって、平衡に達するまで膨潤し、続いて、加熱されることによって滅菌され、前記加熱は、好ましくは90℃以上の温度で5秒間以上行われ、より好ましくはオートクレーブ中で121℃の温度で15分間以上行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶改質剤が、81℃を越える沸点を有し、好ましくは90℃を越える沸点を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記結晶改質剤が、前記有機溶媒と混和性であり、好ましくは油またはグリコールであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記油が、ダイズ油、ケシの実油、ヒマワリ油、およびミネラルオイルから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記油がヨード化されていることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が、揮発性溶媒であり、好ましくは90℃未満の沸点を有し、より好ましくは80℃未満の沸点を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が、1価のC1−12脂肪族アルコールから選択され、好ましくはエタノールまたはプロパノールであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液中の薬物の濃度が、1〜1000 mg/mlの範囲であり、好ましくは10〜500 mg/mlの範囲であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記溶液中の結晶改質剤の濃度が、前記薬物に基づき、1〜99重量%の範囲であり、好ましくは5〜50重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
薬物の負荷効率が、前記ビーズと接触した全薬物と前記ビーズ中に負荷された薬物の量に基づき、1〜100%の範囲であり、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記負荷の工程における薬物対ポリマーの重量比が、10:1〜1:10の範囲であり、好ましくは2:1〜1:2の範囲であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、陰イオンによって荷電しており、前記陰イオンは、好ましくはスルホン酸基、ホスホン酸基、およびカルボン酸基から選択され、より好ましくはスルホン酸基から選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、架橋されたポリビニルアルコールであり、好ましくは、エチレン系不飽和ポリビニルアルコールマクロマーをエチレン系不飽和コモノマーと共重合させることによって形成されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記膨潤性ビーズが実質的に球形であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ビーズが、前記方法の最初の時点において、20℃にてリン酸緩衝液中で平衡に達するまで膨潤すると、平均直径が50〜1500μmの範囲となるようなサイズを有し、好ましくは、平均直径が100〜1200μmの範囲となるようなサイズを有していることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ビーズが、20℃にてリン酸緩衝液中で平衡に達するまで膨潤すると、ビーズのうちの90重量%の直径が300μm以下の範囲内となるようなサイズを有していることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬物が、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド、および鎮痛剤から選択されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記薬物が、パクリタキセル、イブプロフェン、およびデキサメタゾンから選択されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズと、結晶性の薬物と、前記薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤とを含む組成物であって、前記薬物と前記結晶改質剤は前記ビーズ中に吸収され、前記ポリマーは架橋されたポリビニルアルコールであることを特徴とする組成物。
【請求項22】
前記結晶改質剤が、81℃を越える沸点を有し、好ましくは90℃を越える沸点を有することを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記結晶改質剤が油またはグリコールであることを特徴とする、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
前記油が、ダイズ油、ケシの実油、ヒマワリ油、およびミネラルオイルから選択されることを特徴とする、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記油がヨード化されていることを特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記架橋されたポリビニルアルコールポリマーが、エチレン系不飽和ポリビニルアルコールマクロマーをエチレン系不飽和コモノマーと共重合させることによって形成されることを特徴とする、請求項21〜25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリマーが、陰イオンによって荷電していることを特徴とする、請求項21〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリマーが、スルホン酸陰イオン基を含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリマーが、ホスホン酸陰イオン基を含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリマーが、カルボン酸陰イオン基を含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記膨潤性ビーズが実質的に球形であることを特徴とする、請求項21〜30のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
滅菌されており、且つ、過剰な水系保存液をさらに含み、前記水系保存液は前記ビーズと接触しており、前記ビーズは平衡に達するまで膨潤していることを特徴とする、請求項21〜31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
前記水系保存液がリン酸緩衝液であり、前記ビーズは、平衡に達するまで膨潤すると、平均直径が50〜1500μmの範囲となるようなサイズを有し、好ましくは、平均直径が100〜1200μmの範囲となるようなサイズを有していることを特徴とする、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記ビーズのうちの90重量%が300μm以下の範囲内であることを特徴とする、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記薬物が、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド、および鎮痛剤から選択されることを特徴とする、請求項21〜34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
前記薬物が、パクリタキセル、イブプロフェン、およびデキサメタゾンから選択されることを特徴とする、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記薬物対ポリマーの比率が、10:1〜1:10の範囲であり、好ましくは2:1〜1:2の範囲であることを特徴とする、請求項21〜36のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
前記結晶改質剤が、前記ビーズ中の薬物の合計量に基づき、1〜99重量%の範囲で含まれ、好ましくは5〜50重量%の範囲で含まれることを特徴とする、請求項21〜37のいずれかに記載の組成物。
【請求項1】
非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズを、ビーズに浸透可能な有機溶媒の中で、結晶性の薬物の溶液と接触させることにより、薬物をビーズ中に吸収させる方法であって、前記溶液はさらに、前記薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ビーズから過剰な溶媒を除去することによって、乾燥した負荷されたビーズが生産され、前記除去は、好ましくは、ビーズ/液体の分離を行う工程と、前記溶媒の蒸発または昇華を行う工程を含む工程によって行われ、より好ましくは、昇温下でおよび/または減圧下で、蒸発を行う工程によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乾燥した負荷されたビーズが、過剰な水系保存液と接触させられることによって、平衡に達するまで膨潤し、続いて、加熱されることによって滅菌され、前記加熱は、好ましくは90℃以上の温度で5秒間以上行われ、より好ましくはオートクレーブ中で121℃の温度で15分間以上行われることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記結晶改質剤が、81℃を越える沸点を有し、好ましくは90℃を越える沸点を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記結晶改質剤が、前記有機溶媒と混和性であり、好ましくは油またはグリコールであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記油が、ダイズ油、ケシの実油、ヒマワリ油、およびミネラルオイルから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記油がヨード化されていることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機溶媒が、揮発性溶媒であり、好ましくは90℃未満の沸点を有し、より好ましくは80℃未満の沸点を有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒が、1価のC1−12脂肪族アルコールから選択され、好ましくはエタノールまたはプロパノールであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶液中の薬物の濃度が、1〜1000 mg/mlの範囲であり、好ましくは10〜500 mg/mlの範囲であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記溶液中の結晶改質剤の濃度が、前記薬物に基づき、1〜99重量%の範囲であり、好ましくは5〜50重量%の範囲であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
薬物の負荷効率が、前記ビーズと接触した全薬物と前記ビーズ中に負荷された薬物の量に基づき、1〜100%の範囲であり、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記負荷の工程における薬物対ポリマーの重量比が、10:1〜1:10の範囲であり、好ましくは2:1〜1:2の範囲であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマーが、陰イオンによって荷電しており、前記陰イオンは、好ましくはスルホン酸基、ホスホン酸基、およびカルボン酸基から選択され、より好ましくはスルホン酸基から選択されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマーが、架橋されたポリビニルアルコールであり、好ましくは、エチレン系不飽和ポリビニルアルコールマクロマーをエチレン系不飽和コモノマーと共重合させることによって形成されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記膨潤性ビーズが実質的に球形であることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記ビーズが、前記方法の最初の時点において、20℃にてリン酸緩衝液中で平衡に達するまで膨潤すると、平均直径が50〜1500μmの範囲となるようなサイズを有し、好ましくは、平均直径が100〜1200μmの範囲となるようなサイズを有していることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記ビーズが、20℃にてリン酸緩衝液中で平衡に達するまで膨潤すると、ビーズのうちの90重量%の直径が300μm以下の範囲内となるようなサイズを有していることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬物が、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド、および鎮痛剤から選択されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記薬物が、パクリタキセル、イブプロフェン、およびデキサメタゾンから選択されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
非水溶性で非油溶性のポリマーの膨潤性ビーズと、結晶性の薬物と、前記薬物の結晶化を抑制する結晶改質剤とを含む組成物であって、前記薬物と前記結晶改質剤は前記ビーズ中に吸収され、前記ポリマーは架橋されたポリビニルアルコールであることを特徴とする組成物。
【請求項22】
前記結晶改質剤が、81℃を越える沸点を有し、好ましくは90℃を越える沸点を有することを特徴とする、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記結晶改質剤が油またはグリコールであることを特徴とする、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
前記油が、ダイズ油、ケシの実油、ヒマワリ油、およびミネラルオイルから選択されることを特徴とする、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記油がヨード化されていることを特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記架橋されたポリビニルアルコールポリマーが、エチレン系不飽和ポリビニルアルコールマクロマーをエチレン系不飽和コモノマーと共重合させることによって形成されることを特徴とする、請求項21〜25のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
前記ポリマーが、陰イオンによって荷電していることを特徴とする、請求項21〜26のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
前記ポリマーが、スルホン酸陰イオン基を含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記ポリマーが、ホスホン酸陰イオン基を含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリマーが、カルボン酸陰イオン基を含むことを特徴とする、請求項27に記載の組成物。
【請求項31】
前記膨潤性ビーズが実質的に球形であることを特徴とする、請求項21〜30のいずれかに記載の組成物。
【請求項32】
滅菌されており、且つ、過剰な水系保存液をさらに含み、前記水系保存液は前記ビーズと接触しており、前記ビーズは平衡に達するまで膨潤していることを特徴とする、請求項21〜31のいずれかに記載の組成物。
【請求項33】
前記水系保存液がリン酸緩衝液であり、前記ビーズは、平衡に達するまで膨潤すると、平均直径が50〜1500μmの範囲となるようなサイズを有し、好ましくは、平均直径が100〜1200μmの範囲となるようなサイズを有していることを特徴とする、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記ビーズのうちの90重量%が300μm以下の範囲内であることを特徴とする、請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
前記薬物が、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド、および鎮痛剤から選択されることを特徴とする、請求項21〜34のいずれかに記載の組成物。
【請求項36】
前記薬物が、パクリタキセル、イブプロフェン、およびデキサメタゾンから選択されることを特徴とする、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記薬物対ポリマーの比率が、10:1〜1:10の範囲であり、好ましくは2:1〜1:2の範囲であることを特徴とする、請求項21〜36のいずれかに記載の組成物。
【請求項38】
前記結晶改質剤が、前記ビーズ中の薬物の合計量に基づき、1〜99重量%の範囲で含まれ、好ましくは5〜50重量%の範囲で含まれることを特徴とする、請求項21〜37のいずれかに記載の組成物。
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図5】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−524621(P2009−524621A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551779(P2008−551779)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050690
【国際公開番号】WO2007/085615
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(303039785)バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド (23)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050690
【国際公開番号】WO2007/085615
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(303039785)バイオコンパティブルズ ユーケー リミテッド (23)
【Fターム(参考)】
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