ポリマー粒子ワクチンデリバリーシステム

【課題】ポリマー粒子のワクチンデリバリーシステムを提供する。
【解決手段】水不溶性タンパク質抗原、例えば脂質化HpaAタンパク質をポリマーマトリクスからなる粒子と複合させるポリマー粒子の製造方法であり、ポリマー粒子ワクチンデリバリーシステムとして使用され、ポリマー粒子デリバリーシステムを含むワクチン組成物を提供でき、ワクチンは、例えばヘリコバクター感染を治療および/またはその危険性を減少させるために用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水不溶性タンパク質抗原がポリマーマトリクスからなる粒子と複合した、ポリマー粒子ワクチンデリバリーシステムに関する。本発明はまた、そのような水不溶性タンパク質抗原をポリマーマトリクスと複合させて、ポリマー粒子ワクチンデリバリーシステムを作成する方法に関する。また、本発明は、ポリマー粒子デリバリーシステムを含むワクチン組成物を提供する。ワクチンは、例えばヘリコバクター[Helicobacter]感染を治療および/またはその危険性を減少させるために用いることができる。
【背景技術】
【0002】
種々の異なるタイプのワクチンデリバリーシステムが、文献(例えば“Vaccine Design. The subunit and adjuvant approach”[Eds: M F Powell and M J Newman], Pharmaceutical Biotechnology, vol.6, Plenum Press, NY 1995)に記載されている。ワクチンのための公知のデリバリーシステムの例には、リポソーム、コキレートおよび生体分解性または非生体分解性のポリマー粒子が包含される。抗原は、弱毒化した生菌、ウィルスもしくはファージか、または同種の殺傷したベクターである。
【0003】
ポリマー粒子は、これらが例えばワクチンの好ましい投与経路に従う範囲のサイズにて製造することができ、そして患者の内部に抗原を徐々に放出して、複合接種を必要とせずに患者に所望される免疫応答を構築しうるためにワクチンデリバリーシステムによく適する。抗原は、ポリマー粒子の表面における抗原の吸着を用いてまたはこれを用いずに、ポリマーのマトリクス内に被包することにより粒子と複合されている。
【0004】
抗原がタンパク質である場合、タンパク質の所望される免疫原性を損なう(例えば変性による)ことがないポリマー粒子の調製方法を注意して選択しなければならない。故に、後に説明するように一般的に活性薬剤または物質を用いてポリマー粒子を製造する種々の技術が知られているが、これらの全てがタンパク質抗原を用いて使用するのによく適するわけではない。
【0005】
次の一般的な技術はポリマー粒子を調製するために使用される:
1.熱溶解微小カプセル化(A.J. Schwope et al., Life Sci. 1975, 17, 1877);
2.界面重合(G. Birrenbach & P. Speiser, J. Pharma. Sci., 1976, 65, 1763, Thies, In Encyclopaedia of Chemical Technology, 4 ed, Ed. Kirk-Othmer, 1996, 16, p.632);
3.ダブルエマルジョン溶媒エバポレーション技術(“Vaccine Design. The subunit and adjuvant approach"(Eds: M F Powell and M J Newman), Pharmaceutical Biotechnology , vol 6, Plenum Press NY 1995);
4.ダブルエマルジョン溶媒抽出技術(“Vaccine Design. The subunit and adjuvant
approach"(Eds: M F Powell and M J Newman), Pharmaceutical Biotechnology , vol 6, Plenum Press NY 1995);および
5.噴霧乾燥(J. Cox, et al., WO 94/15636)。
【0006】
熱溶解微小カプセル化方法において、マトリクスポリマーは活性物質と混合されて、粒子と複合される間に加熱により溶解される。この技術は、加熱段階が活性物質を失活させる傾向があるために、タンパク質性活性物質、例えばタンパク質抗原と用いるにはあまり適さない。
【0007】
界面重合は、次の方法において実施される。コア材および活性物質を高反応性モノマー
と共に水不混和溶媒中に溶解させる。次にこの溶液を水中で乳化させ、別のモノマーを溶解させ、安定なO/Wエマルジョンを形成させる。開始剤を水相に添加して重合を起こさせて、これにより活性物質と複合したポリマー粒子を形成させる。活性物質がタンパク質性物質である場合、所望しないが水不混和性溶媒中の高反応性モノマーがコア材と同様に活性物質と反応する傾向があり、これは界面重合がタンパク質抗原のポリマー粒子との複合には適さないことを意味する。
【0008】
タンパク質性活性物質をポリマー粒子と複合させるために使用することができる、活性物質がW相に溶解している油中水(W/O)エマルジョンの形成を引き起こす技術は利用可能である。例は、ダブルエマルジョン溶媒抽出およびエバポレーション技術ならびに噴霧乾燥である。
【0009】
ダブルエマルジョン(W/O/X)溶媒エバポレーション技術を用いるタンパク質の複合化において、多重W/O/Xエマルジョンを用いる。第1段階は、タンパク質を第1の水相(W)中に溶解し、油相(O)がマトリクスポリマーおよび有機溶媒を含有する第1(W/O)エマルジョンの形成であり、W相およびO相は例えば超音波処理により乳化される。第2段階において、この最初のエマルジョンは、次に第3の相(X)中にて乳化され、X相中に分散した多重W/Oエマルジョン小滴を形成し、ここでX相は一般的には第2水相であるが、例えば代わりに油(例えばゴマ油)とすることができる。有機溶媒は、X相から蒸発させられる前に小滴からX相に拡散する。故に、有機溶媒は、W/Oエマルジョン小滴の油相からX相に次いで空気中に移動する。これはO相中の有機溶媒濃度の低下を生じさせ、ポリマーが有機溶媒と共にX相に移動しないため、逆にポリマー濃度を上昇させる。あるポリマー濃度において、ポリマーは沈殿し、これによりタンパク質と複合した(即ち、タンパク質が、粒子の外側上に表面吸着しているかまたはしていないマトリクス内に封入されている)ポリマーのマトリクスからなるポリマー粒子を形成する。
【0010】
ダブルエマルジョン(W/O/X)溶媒抽出技術は、ダブルエマルジョン溶媒エバポレーション技術と似ているが、有機溶媒はエバポレーションにより除去される代わりにW/OエマルジョンのO相から抽出される。また、第2油相をダブルエマルジョンにおけるX相として用いる。第2油相はO相から有機溶媒を抽出し、これによりO相中のマトリクスポリマーの濃度を上昇させ、そしてタンパク質が粒子と複合したポリマー粒子の形成を導く(Lewis, Drugs and the Pharmaceutical Sciences (M Chasin and R Langer, eds.). Vol. 45, Dekker, New York, 1990, pp 1-42)。
【0011】
噴霧乾燥技術において、W/Oエマルジョンは上述のように形成される。エマルジョンはノズルを通じて噴霧され、溶媒が速やかに気化し、これによりタンパク質と複合したポリマー粒子の形成を導く、エマルジョン(空気中に分散した)の小滴を生成する。1〜10μmの範囲のサイズの微粒子をこの技術を用いて(比較的低価格で)調製することができる。
【0012】
ポリマーマトリクス自体が非−免疫原性であり、抗原の封入がこれを胃腸管内における分解(例えば酸およびプロテアーゼによる)から保護するために、生体分解性ポリマー粒子はワクチンデリバリーシステムとして用いるのに特に適する。特に適するマトリクスポリマーの例は、PLG(ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)コポリマー−PLGAおよびPLAとしても知られる)である。PLG粒子は優れた組織生体適合性、生体分解性および規制当局の認可性[regulatory approval]を有する。PLG粒子は、インビボで分解されて無毒性モノマーである、乳酸およびグリコール酸を生成し、複合した活性物質の放出速度は、分子量およびコポリマーの比を変えることにより制御することができる。
【0013】
PLG粒子を用いて水溶性タンパク質またはペプチドを複合させるためのダブルエマル
ジョン技術の使用を開示する文献の例には次のものが包含される:
H Rafatiら、“経口投与のためのタンパク質負荷ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)微粒子:製剤、構造的および放出の特性"、J. Controlled Release 43 (1997),pp 89-102。この論文はウシ血清アルブミン(BSA)をPLGの粒子と複合させるためのダブルエマルジョン(W1/O/W2)溶媒エバポレーション技術を開示している。
【0014】
M J Blanco-Prietoら、“水中−油中−水エマルジョン溶媒エバポレーション法により調製されるコレシストキニン誘導体ペプチド負荷ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ミクロスフェアの特徴および形態的分析",J. Controlled Release 43 (1997), pp 81-87。この論文は小さな水溶性ペプチドのPLG粒子との複合を開示している。著者は、OVA(オボアルブミン)の使用とペプチドの封入が改善される内側と外側の水相との間のpH勾配の使用を組合わせることにより、ダブルエマルジョンの内側のエマルジョンの安定化を観察している。
【0015】
R V Diazら、“PLGAミクロスフェアからの125I−ウシカルシトニン放出における界面活性剤の効果:インビトロ−インビボにおける研究",J. Controlled Release 43 (1997), pp 59-64。この論文は、界面活性剤、Tween(R)−80およびSpan(R)−60(W1相およびO相のそれぞれに包含されている)がPLGAミクロスフェアからの125I−ウシカルシトニンのインビトロおよびインビボでの放出特性において有し得た可能な影響を研究することを目的としている。この論文は、タンパク質封入の効率は界面活性剤の存在または不存在には左右されないと結論付けている。
【0016】
従って、先行技術はW/Oエマルジョンの形成を包含する技術を用いた水溶性タンパク質およびペプチドとポリマー粒子との複合のみに関するものである。この理由は、所望のタンパク質の複合を生じさせるため、タンパク質はW水相中にて可溶性でなければならず、結果として可溶化したタンパク質を含有する水相が有機溶媒中のマトリクスポリマーを含有するO相により取り囲まれた小滴のコアを与えるW/Oエマルジョンの小滴を生成する。
【0017】
これらの技術は、これらの水不溶性タンパク質が水性W相中において好適に可溶化され得ないと考えられていたため、本発明前には水不溶性タンパク質の複合化に使用可能であるとは考えられていなかった。
【0018】
タンパク質抗原と複合したポリマー粒子を生成するためには、有機溶媒によるタンパク質の変性(例えば変性[unfolding])がマトリクスポリマーを含むO相中のタンパク質の規定を除外することに注目すべきである。
【0019】
WO 95/11009、WO 95/11010、WO 96/36317、US−A−5075109、US−A−4919929およびUS−A−5529777は、水溶性抗原と複合した微粒子の形成を開示している。これらの文献の何れもポリマー粒子中における水不溶性タンパク質抗原の複合を開示していない。WO 95/11009およびWO 95/11010は、PLGA中へのMN rpgl20またはQS21の微封入を開示している。WO 96/36317は、ポリマーマトリクス(例えばPLG)と生物学的作用物質を含む微粒子の形成、さらに場合により別の薬剤が包含されて、生物学的作用物質の微粒子からの放出の持続時間における生物学的作用物質の有効性を維持し、そして微粒子からの生物作用物質の放出速度を修正することを開示している。US−A−5075109は抗原としてトリニトロフェニル・キーホールリンペットヘモシアニンまたはスタフィロコッカス・エンテロトキシンBを複合する微粒子の形成を開示している。US−A−5529777は、水溶性抗原を水溶性ポリマーまたはヒドロゲルと混合することにより微粒子を形成させることを開示している。US−A−5622649はW/Oエマ
ルジョンおよびW/O/Wエマルジョンを開示しているが、ポリマー粒子の形成を開示するものではない。US−A−5622649に開示される発明では、内側のW相中には疎水性界面活性剤が存在しないことが必須である。US−A−5622649は、内側のW相中の水不溶性タンパク質抗原を開示していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明者らは、W/Oエマルジョンの形成を包含する技術の使用を可能にし、水不溶性タンパク質抗原が粒子と複合しているポリマー粒子ワクチンデリバリーシステムを製造する方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0021】
従って、本発明は、方法が
(a) 水相(W)を、Wとは不混和性である有機相(O)と混合し、W/Oエマルジョンを生成させ、ここで水不溶性タンパク質は可溶化剤を用いてW相中に可溶化されており、O相は有機溶媒中のマトリクスポリマーを含む;
(b) 流体媒体中にエマルジョンを分散させることにより、前記W/Oエマルジョンの小滴を形成させ、W/Oエマルジョン小滴のO相から前記溶媒を除去し、これにより水不溶性タンパク質抗原を複合しているポリマー粒子を形成させる;
ことからなり、そして段階(a)において安定剤がW/Oエマルジョンに包含され、段階(b)において前記可溶化剤の存在下においてW/Oエマルジョンを安定化することにより水不溶性タンパク質のポリマー粒子との複合を促進させることを特徴とする、水不溶性タンパク質抗原がマトリクスポリマーを含むポリマー粒子と複合したワクチンデリバリーシステムとして使用されるポリマー粒子の製造方法を提供する。
【0022】
また、本発明によれば、水不溶性タンパク質抗原がポリマーマトリクスを含む粒子と複合したポリマー粒子ワクチンデリバリーシステムを本発明者らが初めて提供する。
さらに本発明は、そのようなデリバリーシステムを含むワクチン組成物を提供する。
【0023】
本発明の別の態様は、哺乳類宿主、例えばヒトにおけるヘリコバクター感染の治療のためのワクチン組成物の製造におけるデリバリーシステムの使用である。
本発明はまた、哺乳類宿主におけるヘリコバクター感染の危険性を防止または減少させるためのワクチン組成物の製造におけるデリバリーシステムの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に従ってHpaAと複合したPLGA粒子のSEM像である。粒子は10μmの平均直径を有する。
【図2】本発明により製造されるPLGA粒子の粒度のグラフである。粒子はHpaAと複合しており、10μmの平均直径を有する。
【図3】本発明に従ってHpaAと複合したPLGA粒子のSEM像である。粒子は300nmの平均直径を有する。
【図4】本発明により製造されるPLGA粒子の粒度のグラフである。粒子はHpaAと複合しており、300nmの平均直径を有する。
【図5】(i)コレラトキシン(CT)と同時投与されるHpaA;または(ii)本発明に従ってPLG粒子と複合したHpaAを用いた十二指腸内接種後の血清IgG2aの結果を示す。バーは6動物群の中央値を表す。単位/ml=100μgのHpaAおよび25μgのコレラトキシンで週3回の腹腔内投与により免疫化されたラットの血清IgG2aレベルの平均は任意に50単位/mlに設定された;HpaA+CT=100μgのHpaAとこれと混合された25μgのコレラトキシン(n=4)、HpaA/PLG=100μgのHpaA(n=6)を含有するPLG製剤。
【図6】(i)コレラトキシン(CT)と同時投与されるHpaA;または(ii)本発明に従ってPLG粒子と複合したHpaAを用いた十二指腸内接種後の粘膜IgAの結果を示す。バーは6動物群の中央値を表す。「OD405」は、抗−HpaA ELISAの読み出し至適密度である。OD405=抗−HpaA ELISAの読み出し至適密度;HpaA+CT=25μgコレラトキシンと混合された100μg HpaA(n=4)、HpaA/L121=100μgのHpaA(n=6)を含有するPLG製剤。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述のように本発明は、水不溶性タンパク質がマトリクスポリマーからなる粒子と複合した、ポリマー粒子ワクチンデリバリーシステムおよびその製造方法を提供する。ポリマー粒子はミクロスフェアのような微粒子の形態とすることができる。
【0026】
用語「水不溶性タンパク質」における「タンパク質」は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと定義される。本発明は、1つまたはそれ以上のタンパク質の使用を考慮するものであり、故にある態様において製造されるワクチンキャリヤーシステムはポリマーマトリクスと複合した1つ以上のタンパク質を含む。この場合、少なくとも1つのタンパク質は水不溶性タンパク質抗原であり;何れの他のタンパク質も水溶性または水不溶性とすることができ、そして抗原性であってもなくてもよい(例えば補助剤として作用して、水不溶性タンパク質の抗原性を促進する)。
【0027】
水不溶性タンパク質は、非イオン性界面活性剤と結合してミセルを形成するその能力により水溶性タンパク質と区別されるが、水溶性タンパク質はそのような界面活性剤と結合してミセルを形成しない(A Practical Guide to Enzymology, C H Suelter, John Wiley
& Sons Publishers, ISBN 0-471-86431-5, pp 71-72)。水不溶性タンパク質/非イオン
性界面活性剤のミセルは、タンパク質がミセルと複合した場合にそのタンパク質の電気泳動度が、非イオン性界面活性剤の不存在下におけるタンパク質の電気泳動度と異なるために、容易に検出することができる。水溶性タンパク質が非イオン性界面活性剤と結合しないため、非イオン性界面活性剤の存在下または不存在下であってもこれらのタンパク質の電気泳動度は変化しない。第1段階は、試験すべきタンパク質を非イオン性界面活性剤、次にイオン性界面活性剤と混合することである。もしミセルが形成されたら(即ちタンパク質が水不溶性である)、次いで添加されたイオン性界面活性剤はミセル中に組み入れられ、故にタンパク質の電気泳動度が変化する。
【0028】
水不溶性タンパク質に対する他の試験は次のものである(A Practical Guide to Enzymology, C H Suelter, John Wiley & Sons Publishers, ISBN 0-471-86431-5, pp 71-72)。タンパク質は、0℃にてトリトン(R) X−114中に分散される。この界面活性剤の温度を約20℃、その曇点より高く上昇させた場合、2相;水相と界面活性剤の相への分離が生じる。水溶性タンパク質は水相から回収されるが、水不溶性タンパク質は界面活性剤の相中に見出される。
【0029】
本発明の方法において、水不溶性タンパク質が可溶化剤によって水性W相中において可溶化され、そしてマトリクスポリマーが有機溶媒と共にO相中に溶解しているW/Oエマルジョンが形成される。W/Oエマルジョンの形成は、例えば可溶化されたタンパク質を含有するW相と溶解したマトリクスポリマーを含有するO相との混合によって達成され得る。次いで混合物を、たとえば超音波処理、攪拌、押し出し、高剪断混合または高圧ホモゲナイズにより乳化させ、1つ以上の適する安定剤を混合物に包含させる。この態様において、(i)1つ以上の安定剤は混合する前にO相でなくW相中に包含させることができる;または(ii)1つ以上の安定剤は混合する前にW相およびO相のいずれにも存在させることができる;または(iii)1つ以上の安定剤は混合する前にW相でなくO相中に包含させることができる。W/Oエマルジョンを形成させるために、W相は、O相と1以下、好ましくは1:10000〜1:1、より好ましくは1:100〜1:1の体積比で混合される。特に良好なタンパク質抗原の複合のために、最も好ましい範囲は1:4〜1:1.5である。
【0030】
第2段階において、安定化したW/Oエマルジョンは流体媒体(即ち、液体媒体または空気などの気体媒体)中に分散され、有機溶媒を除去する。これは、O相中のマトリクスポリマーの濃度を上昇させ、故に小滴が“固化”し、これにより水不溶性タンパク質を複合したポリマー粒子が形成される。
【0031】
第2段階は種々の様式で実施することができる。1つの態様において、本発明の方法はダブルエマルジョン(W/O/X)溶媒エバポレーション技術の一部を形成し、第2段階において、安定化したW/OエマルジョンがさらにO相とは不混和性の液相(X)中に分散され、溶媒が気化され、これにより水不溶性タンパク質抗原と複合するポリマー粒子を生成する、安定化W/O小滴を含むW/O/Xダブルエマルジョンを形成する。X相中の安定化W/Oエマルジョンの分散は、例えば超音波処理によって実施することができる。X相はO相と不混和性であるか、またはO相とは低い(限定された)混和性しか有さないものである。X相の適する例には、水相、トリグリセリド(例えばゴマ油)およびシリコーンオイルが包含される。
【0032】
他の態様において、本発明の方法は、第2段階においてW/O小滴を含むW/O/Xダブルエマルジョンがダブルエマルジョン溶媒エバポレーション技術と類似の方法で製造される、ダブルエマルジョン(W/O/X)溶媒抽出技術である。しかし、溶媒抽出の態様において、X相は小滴のO相から溶媒を抽出し、これにより水不溶性タンパク質抗原と複合したポリマー粒子を製造する。溶媒エバポレーション技術と同様に、抽出技術に適した
X相は、O相と混和性を有さないか、または低い(限定された)混和性しか有さないものであり、例には水相、トリグリセリド(例えばゴマ油)およびシリコーンオイルが包含される。しかし、溶媒抽出技術において、X相とO相との体積比は、エバポレーション技術で用いるものよりも顕著に大きい。
【0033】
これらのダブルエマルジョン技術を所望する場合、1つ以上の安定剤をX相に包含させることができる。第1(W/O)エマルジョンを安定化するために使用される安定剤は、この目的のために使用することができる。場合により、ダブルエマルジョンを攪拌するおよび/またはダブルエマルジョンを加温する(タンパク質抗原の変性温度までではない)および/またはダブルエマルジョンを含有する容器内を減圧することにより溶媒の除去を促進させることができる。
【0034】
別の態様において、本発明の方法は、第2段階において、安定化したW/Oエマルジョンを気体媒体(例えば空気)中に分散させて、溶媒が気化した安定化W/Oエマルジョン小滴の噴霧を形成させ、これにより水不溶性タンパク質抗原と複合したポリマー粒子を生成する、噴霧乾燥技術に関する。W/Oエマルジョンは、通常微細な開口部を有するノズルを通じてポンピングすることによって分散される。加温した室(即ち、タンパク質の変性温度までではない)中への噴霧を実施して、溶媒の気化を促進することができる。
【0035】
他の態様は、ポリマー粒子を形成するための第2段階における流体気体技術の使用を包含する。これらの技術は、超臨界流体技術を包含する。超臨界流体は、同時にその臨界圧力および臨界温度にあるかまたはそれ以上にある流体である。本態様において適する流体気体技術の例は、気体反溶媒沈殿[Gas Anti-Solvent Precipitation](GAS)である。慣用されるGAS技術において、目的の物質は溶媒中に溶解しており、超臨界流体(例えば二酸化炭素)が溶液中に導入され(混合され)、溶液の体積の急激な膨張が導かれる。結果として、溶媒の溶媒和能力が短期間に劇的に低下し、これにより粒子の沈殿を引き起こす(J W Tom and P G Debendetti, J Aerosol. Sci, 22 (1991), 555-584; P G Debendetti et al, J Controlled Release, 24 (1993), 238-257; EP 437451およびEP 322687を参照)。本発明に適用した場合、安定化W/Oエマルジョンは溶液の代わりに用いられ、流体気体が溶液と共に導入されて、安定化W/Oエマルジョンの急激な膨張を導き、水不溶性タンパク質抗原と複合したポリマー粒子が形成される。
【0036】
GAS技術の改良がSEDS(Solution Enhanced Dispersion By Supercritical Fluid:超臨界流体による溶液促進分散)技術(WO 95/01221およびWO 96/00610)であり、これはポリマー粒子を形成させるための本発明の方法の第2段階において用いることができる。ここでは、超臨界もしくは超臨界に近い状態における物質または“流体気体”として圧縮気体を使用することができる。超臨界流体は、例えば二酸化炭素、二酸化窒素、六フッ化硫黄、キセノン、エチレン、クロロトリフルオロメタン、エタンおよびトリフルオロメタンから選択することができる。
【0037】
他の適する技術(改良した反溶媒(GAS)技術)には、圧縮反溶媒(PCA)法を用いた沈殿法(Dixonら, AIChE Journal. 1993, 39, 127-139)および超臨界反溶媒(SAS)法(Yeoら,Biotech. Bioeng., 1993, 41, 341-346)またはASES(DE744329)である。
【0038】
流体気体技術を先行技術に用いた場合、タンパク質は、ポリマーと共沈殿させるために例えばエタノール(EP−0542314;Tom etら, In Supercritical Fluid Engineering Science. ACS Symposium Series, 1993, 514, 238-257を参照)またはDMSO(WO 96/29998を参照)を含有する有機相に直接包含される。欠点は、有機相および超臨界流体/改良した超臨界流れ中におけるタンパク質の低溶解度(Stahlら, “Dense
Gas Results", Fluid Phase Equilibria, 1983, 10,269)、並びに有機溶媒によるタンパク質の変性(例えば変性[unfolding])(Dill, K.A and Shortle, D. Ann. Rev. Biochem. 1991, 60, 795-825)である。
【0039】
本発明の好適実施態様のように、W/OエマルジョンをGAS、SEDS、ASES、SASおよびPCAのような反溶媒流体気体技術と共に使用することを開示する先行技術はない。これは、タンパク質が直接有機相に包含される先行技術の欠点を回避し、ワクチンデリバリーシステムとして使用される、水不溶性タンパク質と複合したポリマー粒子の効率的製造方法を提供する。
【0040】
本発明の一般的な方法において、水不溶性タンパク質はW相中で可溶化されなくてはならず、このため親水性界面活性剤またはカオトロピック[chaotropic]剤などの可溶化剤を用いることができる。場合により1つ以上の可溶化剤、即ち1つ以上の親水性界面活性剤、または1つ以上のカオトロピック剤、または1つ以上の親水性界面活性剤を1つ以上のカオトロピック剤と一緒に用いてもよい。可溶化剤は親水性であり、用語「親水性界面活性剤」は、水不溶性タンパク質抗原を可溶化し、それ自体が水(即ちW相)中において可溶性である界面活性剤、W相ではなくO相中において可溶性であるが、用語「疎水性界面活性剤」に包含されない界面活性剤を意味する。親水性界面活性剤は、10以上の親水性・親油性平衡(HLB)を有するのが好ましく、13以上であるのが最も好ましい。どのようにHLB値を測定するかは当業者であれば容易に明らかである。また、HLB値の測定に関する次の刊行物を引用する:Griffin, W. C.,J. Soc. Cosmet. Chem. 1949, 1, 311; Griffin, W. C., J. Soc. Cosmet. Chem. 1954, 5, 249; Davies, J. T., Proc. 2nd Int. Cong. Surf. Acitivity; London, 1957, p. 417; Davies, J. T.; Rideal, E. K., Interfacial Phenomena; Academic: New York-San Fransisco-London, 1963. p 129; Davies, J. T., Progress in Surface Science; Danielli, J. F., Parkhurst, K. G. A.,
Riddford, A. C., Eds.; Academic: New York, 1964; Vol. 2, p 129。
【0041】
W/Oエマルジョンを形成させるのに適する温度は、0℃からO相の沸点までであるが、エマルジョン中においてタンパク質を変性させる温度は除外される。室温はしばしば適する作業温度であるが、より低い温度でエマルジョンの動態を低下させるのが好ましいことを述べておく。
【0042】
適する親水性界面活性剤には、非イオン性、アニオン性、カチオン性および両イオン性界面活性剤から選択される界面活性剤の1つまたは混合物が包含される。
【0043】
適する非イオン性界面活性剤は、アルキル−グルコピラノシド(例えばデシル−、ドデシル−、またはオクチル−グルコピラノシド)、アルキル−チオグルコピラノシド(例えばオクチル−チオグルコピラノシド)、アルキル−マルトシド(例えばドデシル−またはラウリル−マルトシド)、アルコイル−メチルグルカミド(例えばヘプタノイル−、オクタノイル−、ノナノイル−、またはデカノイル−N−メチルグルカミド)、ポリオキシエチレンアルコール(例えばC118、LuBrol PXまたはBrijシリーズ)、ポリオキシエチレンアルキルフェノール(例えば、Nonidet P-40、Triton X-100などのポリオキシエチレンオクチルフェノール)、エムルホゲン[emulphogen]、ポリオキシエチレンソルビトールエステル(例えばTweenシリーズ)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、親水性ポリオキシエチレンアルキルエステルおよびジギトニンから選択することができる。
【0044】
適するアニオン性界面活性剤は、コール酸塩(例えばグリコ−またはタウロコール酸のナトリウム塩)、アルキルスルホン酸塩(例えばペンチル−、オクチル−、デシル−、ドデシル−またはミリスチルスルホン酸のナトリウム塩)、デオキシコール酸塩(例えばデオキシコール酸ナトリウム)、アルキル硫酸塩(例えばオクチル−、デシル−、ドデシル
−またはミリスチル硫酸のナトリウム塩)、オリゴオキシエチレンドデシルエチル硫酸塩およびドデシルサルコシン酸ナトリウムから選択することができる。
【0045】
適するカチオン性界面活性剤は、アルキルピリジニウム塩(例えばセチル−、ミリスチル−、ドデシル−またはデシルピリジニウムの臭化物または塩化物)およびアルキルトリメチルアンモニウム塩(例えばセチル−、ミリスチル−、ドデシル−、デシル−トリメチルアンモニウムブロミドまたはクロリド)から選択することができる。
【0046】
適する両性イオン性界面活性剤は、CHAPS(3−[(3−コールアミドプロピルジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート)、CHAPSO(3−[(3−コールアミドプロピルジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート)、BIGCHAP(N,N−ビス[3−D−グルコンアミドプロピル]コールアミド)、デオキシBIGCHAP(N,N−ビス[3−D−グルコンアミドプロピル]−デオキシコールアミド)、リソホスファチジルコリン(例えばC16リソPC)、N−テトラデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニア−1−プロパンスルホネート、アルキルベタイン(例えばドデシルベタイン)およびスルホベタインから選択することができる。
【0047】
親水性界面活性剤を可溶化剤として用いる場合、界面活性剤の適する範囲は、W相(この場合、溶液は可溶化すべきタンパク質を除くW相の全ての成分を包含することを意味する)中の界面活性剤について、界面活性剤の臨界ミセル濃度(CMC)の0.1〜100倍、好ましくは0.1〜10倍、さらに好ましくは0.1〜5倍である。故に、界面活性剤は例えばそのCMCにおいて用いることができる。親水性界面活性剤の混合物を可溶化に用いる場合、これらの範囲は混合物のCMCに関連する。
【0048】
適するカオトロピック剤は、1つ以上のペルクロレート、チオシアネート、グアニジン、クロレート、ヨウ化物、臭化物、ニトレートおよび尿素を包含する。
親水性可溶化剤は、水相(W)中において水不溶性タンパク質の可溶化を達成するために必要であるが、要求される親水特性は、O/Wエマルジョンへの相転換を支持する(即ち水相が外側の連続相になる)ことにより、形成されるいずれのW/Oエマルジョン小滴を不安定化するという所望されない作用を有する。本発明によれば、W/Oエマルジョン中において安定剤を包含させて、可溶化剤の所望されない作用に対抗し(剤の安定化能力は保持する)、好都合な主要な効果を発揮させ、従ってW/O小滴の形成およびポリマー粒子の形成の間においてW/Oエマルジョンを安定化する。このように、安定剤は水不溶性タンパク質のポリマー粒子との複合を引き起こす(促進する)。
【0049】
全ての安定剤の共通の特徴は、これらがエマルジョンのW/Oの界面に吸着され、O相中に乳化しているW小滴の融合を防止または減少させることである。安定剤は、W相および/またはO相において可溶性であってよい。場合により1つ以上の安定剤をW/Oエマルジョン中に包含させてもよい。
【0050】
O相中において可溶性である適する安定剤は、例えばW/OエマルジョンのO相の粘度を増加させるおよび/または主に疎水性を有する界面活性剤(疎水性界面活性剤)である。用語「疎水性界面活性剤」は、全体的に主に疎水性であり、W相ではなくO相に可溶性である、安定化界面活性剤を意味する。
【0051】
安定剤をW/Oエマルジョンの0.01〜99重量%の割合で使用するのが好ましく、さらに好ましくはW/Oエマルジョンの0.02〜50または25重量%であり、最も好ましくはW/Oエマルジョンの0.05〜5重量%である。特に好ましい態様は、W/Oエマルジョンの0.3重量%での使用である。
1つ以上の安定剤を使用するのが好ましく、各安定剤はポリマー、極性脂質および疎水
性界面活性剤から選択される。
【0052】
安定剤は、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、多糖類、ポリエチレンオキシドおよび水溶性タンパク質(例えばゼラチン;ウシ血清アルブミン)から選択されるのが好ましい。
極性脂質は、コレステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセリン、糖脂質およびホスファチジル酸から選択されるのが好ましい。
【0053】
非イオン性であり、ソルビタン脂肪酸エステル(SPANTMシリーズ)、疎水性ポリオキシエチレンアルキルエーテル、スクロースエステル、アルキル−グルコピラノシド、ポリグリセロールポリリシノレートおよびポリプロピレンオキシドおよび/または乳酸とエチレンオキシドのブロックコポリマーから選択される疎水性界面活性剤である安定剤を使用することができる。
【0054】
アニオン性であり、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩および脂肪酸塩から選択される疎水性界面活性剤である安定剤を使用することができる。特に好ましい例には、1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジオレイン酸カルシウムおよびステアリン酸アルミニウムまたはステアリン酸亜鉛が包含される。
【0055】
カチオン性であり、アルキルトリメチルアンモニウム塩およびジアルキルジメチルアンモニウム塩(例えばジステアリルジメチルアンモニウムブロミド)から選択される疎水性界面活性剤である安定剤を使用することができる。
【0056】
好ましい態様において、適する安定剤組成物はソルビタン脂肪酸エステルと混合したポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。別の好ましい態様において、ポリ(ビニルピロリドン)および1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを安定剤として一緒に使用する。
【0057】
本発明の態様において、マトリクスポリマーは、O相の粘度を増加させることにより安定剤として使用することができる。この場合、マトリクスポリマーは、別の安定剤を使用するかまたは使用せずに、マトリクスポリマーの飽和点までO相に添加することができる。
【0058】
適するマトリクスポリマーは、ポリエステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリアクリレート、生体分解性ポリウレタン、非腐食性ポリウレタン、エチレン−ビニルアセテートのポリマー、アシル置換セルロースアセテート、多糖類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホン酸化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルおよびポリオキサレートから選択されるホモ−またはコ−ポリマーとすることができる。場合により、これらのポリマーの2つ以上の混合物をO相中にてマトリクスポリマーとして使用することができる。
【0059】
1つの態様において、ポリマーはポリ(エステルアミド)である。
好ましいマトリクスポリマーは、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチラート、ポリ(αヒドロキシ酸)およびポリカプロラクタンなどのポリエステルホモポリマーである。
【0060】
他の好ましいマトリクスポリマーは、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸
−コ−グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシブチラート−ヒドロキシバレレート)およびポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)などのポリエステルコポリマーである。
特に好ましいマトリクスポリマーはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。
【0061】
マトリクスポリマーをO相中に溶解させるために、1つ以上の有機溶媒を用いてもよい。本発明の方法においてO相から有機溶媒を除去することに触れるが、これは1つ以上の有機溶媒を用いた場合に、有機溶媒の混合物を除去するものとして解釈される。適する有機溶媒は、特に使用されるマトリクスポリマーにより決まるが、当業者であればマトリクスポリマーを溶解するために使用する溶媒を容易に決定することができる。適する溶媒の注目される例には、塩化メチレン、クロロホルムおよびエチルアセテートが包含される。
【0062】
本発明の方法は、体積寸法分布に従って0.01〜1000μmの範囲の平均直径を有するポリマー粒子を製造するために使用することができる。皮下移植されるワクチンデリバリーシステムのためには、体積寸法分布に従って0.1〜100μmの平均直径が好ましい。
【0063】
インビボ粘膜デリバリーのためには、体積寸法分布に従って0.05〜20μmの平均直径が好ましく、体積寸法分布に従って0.1〜10μmの範囲が最も適する。哺乳類の適する粘膜の例には、口腔、鼻腔、扁桃、胃、腸(小腸および/または大腸)、直腸および膣の粘膜が包含される。これらのワクチンの適当な投与経路には、経口、経鼻、直腸内および膣内投与が包含されるが、経口、経鼻およぼ直腸経路が最も好ましい。
【0064】
本発明の方法を使用してどの様に所望の寸法範囲の粒子を製造するかは、当業者であれば容易に明らかである。当業者であれば、例えばW相およびO相の相対的体積比を変更するおよび/またはエマルジョン均質化の完全度を変更すること(例えばエマルジョン攪拌の速度および/または継続時間を変更することによって)は通常可能である。
【0065】
本発明のデリバリーシステムがワクチン組成物の一部として提供された場合、場合により適当な補助剤と組合わせて提供することができる。適する補助剤は、コレラトキシン(CT)、E. coli熱不安定性トキシン、サイトカインおよびケモカインである。ワクチン組成物を用いて、哺乳類患者に組成物の免疫学的な有効量を投与することにより、患者における疾患状態または感染を治療および/または予防する(デリバリーシステムの抗原に依存する)ことができる。用語「免疫学的な有効量」は、デリバリーシステムにより運ばれた抗原に対する患者による免疫応答を誘導する量を意味する。「免疫応答」は、患者において感染または疾病の危険性を撲滅、抑制、防止および/または減少させる応答である。典型的には、投与当たりの各抗原の適当な投与量は、経口投与では約10μg〜10mgであり、好ましくは約50μg〜5mgである。適当な投与形態には、凍結分散物、凍結乾燥粒子または液体分散物が包含される。
【実施例】
【0066】
本発明は、哺乳類宿主におけるヘリコバクター(特にヘリコバクター・ピロリ)の感染を治療および/または予防するためのワクチン組成物中に包含され得るポリマー粒子デリバリーシステムを提供するために用いることができる。従って、そのようなワクチンは、患者に、例えば経口的に投与され、治療および/または予防を達成することができる。“治療”とは、宿主において存在するヘリコバクター感染の撲滅または抑制を意味する(これについて、WO 96/40893を全般的な参考文献とする)。“予防”とは、ワクチンを投与した後に哺乳類がヘリコバクターに感染する危険性を防止または低下させることを意味する。
【0067】
グラム陰性細菌のヘリコバクター・ピロリは、幾つかの胃十二指腸疾患に関与する重大なヒト病原菌である。細菌による胃の上皮におけるコロニー形成は、消化性潰瘍疾患への進行の危険性を非常に高めながら活性的炎症および進行性慢性胃炎をもたらす。
【0068】
胃粘膜でコロニー形成するために、H. pyloriは多くの毒性因子を用いる。そのような毒性因子には、細菌が粘膜と接合および/または上皮細胞に結合するために用いられる幾つかの付着因子;酸環境を中和する助けとなるウレアーゼ;および粘液をより流動的にするタンパク質分解性酵素が含まれる。
【0069】
局所的(粘膜)と同様に全身性の抗体の産生を伴う、宿主のH. pyloriに対する強烈な免疫応答にもかかわらず、通常宿主の生存の間は、病原体は粘膜で生存し続ける。この理由は、おそらく自己誘発の免疫応答が不十分であるかまたはこれが抗原の誤ったエピトープに対するものだからである。
【0070】
H. pylori感染の病原性および免疫学を理解するために、この細菌の抗原性構造を特定することが非常に重要である。特に、表面に露出した(付着因子など)および多くの細菌性病原体において主要な毒性因子を構成することが示されている分泌性タンパク質の特徴付けが必要であり、これらはH. pyloriの診断およびワクチン組成物の製造において有用である。H. pyloriの膜調製物に対するモノクローナル抗体(MAbs)は、Boelinら,(1995) J. Clin. Microbiol. 33, 381-384に開示されている。これらのMAbsの1つは、HP30−1:1:6と命名され、生菌の表面に露出し、付着因子のような特性を有することが示された30kDaタンパク質と反応する。
【0071】
ヘリコバクター感染の治療および/または予防のためのワクチンの製造において本発明の方法を使用する場合、水不溶性タンパク質抗原はヘリコバクターのタンパク質またはその抗原性断片である。タンパク質抗原はヘリコバクター・ピロリのタンパク質またはその抗原性断片(例えば膜会合または膜結合抗原)であるのが好ましい。ヘリコバクターのタンパク質は、ヘリコバクターの外側表面に発現するタンパク質であり、ワクチンデリバリーシステムのポリマーマトリクスとの複合において特に良好な抗原を提供する。
【0072】
ストレスを受けたり危険にさらされると、H. pylori細胞は杆菌型から球菌型に変化する。球菌型において、H. pylori細胞は抗生物質および他の抗菌剤に対して非常に感受性でなくなる。付随的証拠は、H. pyloriはこの形態において、恐らく水または直接的接触を介して患者間で感染するであろうことを示唆している。故に、効果的なワクチン組成物は、H. pyloriの球菌型および杆菌型の両方に対して免疫反応を誘発するものである。従って、ワクチンデリバリーシステムのために好ましい水不溶性ヘリコバクタータンパク質は、ヘリコバクターの分裂(杆菌型)および休眠(球菌型)の両方の型において表面に露出しているようなタンパク質である。
【0073】
全身免疫が粘膜のヘリコバクター感染に対する防御においておそらく限定的な役割しか果たさないため、ワクチン組成物が胃における保護免疫機構を局所的に増強することも重要である。
【0074】
付着因子であると仮定され、且つヘリコバクター・ピロリの分裂(杆菌型)および休眠(球菌型)の両方の型において表面に露出する抗原を開示する参考資料がWO 96/38475である。WO 96/38475の開示を本明細書にて引用することにより組み入れるが、特にこれに開示される発現法は引用することにより組み入れられることは明白であり、当業者はさらなる説明のためにこれらの特定な開示に注目する。本発明者らは、この抗原としてHpaAタンパク質を言及する。H. pyloriのN−アセチルノイラミニルラクトース−結合繊維性血球凝集素(NLBH)の20kDa受容体結合サブユニットをコ
ードすることが報告されている、HpaAの配列のクローニングは、Evansら,(1993) J.
Bacteriol. 175, 674-683に開示されている。HpaAタンパク質に関する、P W Tooleら, Bacteriology Vol. 177, No. 21, Nov. 1995;並びにJones, A.C., Logan. R.P., Foynes. S., Cockayne, A., Wren.B.W.およびPenn.C.W., J. Bacteriol. 179 (17), 5643-5647 (1997)を引用する。
【0075】
HpaAタンパク質は、試験したH. pylori株により発現され、このタンパク質に対して作成された抗体は、一般的な他の種の内在性ヒト細菌または胃の粘膜を含む選択されたヒト組織とは交差反応しない。故に、免疫原性を有する、よく保存された推定の付着因子であるHpaAタンパク質は、H. pyloriの感染の検出と同様にワクチン組成物の製造に有用である。表1は、H. pyloriの4つの異なる株由来のHpaAのアミノ酸配列の比較を示している。表から異なる株の間で配列が高度に保存されていることがわかる。
【0076】
【表1】

【0077】
(注)
“*”はその位置において、全ての配列において一致しているアミノ酸を示す。
“.”はその位置において、保存されたアミノ酸(例えば、ある位置においてリジンまたはアルギニンなどの同じタイプの電荷のアミノ酸)を示す。
Penn(11637) GenbankにおいてAccession No. X92502で登録されたDNA配列
Trust(17874) GenbankにおいてAccession No. U35455で登録されたDNA配列
Evans(8826) GenbankにおいてAccession No. X61574で登録されたDNA配列
TIGR (26695) Accession No. AE000591で登録されたDNA配列
GTC (J99) 研究所内で得られたDNA配列
株名は括弧内に示しており、株8826はSWISS-PROT accession Q48264から得られたものである。
【0078】
添付した配列表は、hpaA遺伝子を含む核酸配列(SEQ ID NO.1)、およびシグナル配列を包含し、且つhpaA遺伝子によりコードされ、29kDaであると予測されるHpaAタンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO.2)を示す。SEQ ID NO.1およびSEQ ID NO.2において、アミノ酸222位はセリンであり、この位置はまたアルギニンであり得る(SEQ ID NO.3およびSEQ ID NO.4を参照)。
【0079】
下記の式を引用すると、予測される29kDaタンパク質は、式Iとして示される。本発明者らは、これはさらにヘリコバクター内で次のようにプロセッシングされると考えている。タンパク質Iが酵素、プロリポタンパク質グリセリルトランスフェラーゼによって処理されて生成物IIを生じ、次に2つの脂質鎖の付加によって生成物IIIを与える。後の段階は、少なくとも1つのトランスアシラーゼにより触媒される。脂質化した生成物IIIのシグナル配列は、プロリポタンパク質シグナルペプチダーゼによって開裂し、生成物IVが得られる(シグナル配列はSEQ ID NO.2およびSEQ ID NO.4の1〜27位に相当すると考えられる)。次に3番目の脂質鎖がリン脂質ジグリセリドリポタンパク質トランスアシラーゼによってこのタンパク質に付加され、“完全脂質化”タンパク質生成物(V)が与えられる。本発明の方法において。HpaAの脂質化型を水不溶性タンパク質として用いることができる。完全脂質化型のHpaA(即ち、タンパク質V中において少なくとも3つの脂質鎖、例えば3つのC16鎖を有するもの)を使用するのが最も好ましい。従って、生成物Vのタンパク質部分(本明細書では“コア・タンパク質”と称する)は、シグナル配列を差し引いたタンパク質Iの全長に相当する。コア・タンパク質(またはその抗原性断片)をインビトロで合成し、脂質化し(生成物Vと同じパターンである必要はない)、そしてこの脂質化HpaAタンパク質を、本発明において水不溶性タンパク質抗原として用いることができる。
【0080】
【化1】

【0081】
式中(脂質鎖a)は次のものを示す:
【化2】

(脂質鎖b)は次のものを示す:
【化3】

(脂質鎖c)は次のものを示す:
【化4】

【0082】
本発明において脂質化HpaAタンパク質抗原を水不溶性タンパク質として使用する場合、抗原のタンパク質部分は、SEQ ID NO.2またはSEQ ID NO.4に示されるアミノ酸配列の28〜260位と同一であるかまたは実質的に類似するアミノ酸配列を有するのが好ましく、当然、哺乳類宿主におけるヘリコバクター感染を予防および/または治療するためのワクチンに使用されるために適する抗原活性を保持する(哺乳類宿主においてヘリコバクターに対して粘膜と同様に全身の免疫応答を誘起する抗原の能力を包含する)ものである。“実質的に類似する”とは、つぎのもの1つ以上を意味する:タンパク質部分が、SEQ ID NO.2またはSEQ ID NO.4に示されるアミノ酸配列の28〜260位と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%または99%の相同性のアミノ酸配列を包含するもの;タンパク質部分が、SEQ ID NO.2またはSEQ ID NO.4に示されるアミノ酸配列の28〜260位の少なくとも5、10、20、50、100、150または200の連続するアミノ酸残基を包含するが、哺乳類宿主においてヘリコバクター感染の予防および/または治療のためのワクチンに使用するのに適する抗原活性(即ち、不活であるかまたは免疫学的に活性なキャリヤーポリペプチドと融合したかまたはしていない、少なくとも1つの免疫原性エピトープ)を保持するもの;抗原のタンパク質部分がSEQ ID NO.2またはSEQ ID NO.4に示されるアミノ酸配列の28〜260位とはアミノ酸配列において1、2、3、5または10残基により異なるアミノ酸配列を有するが、哺乳類宿主においてヘリコバクター感染の予防および/または治療のためのワクチンに使用するのに適する抗原活性を有するものである。
【0083】
HpaAタンパク質のエピトープをどのように特定および分析するかを記載するWO 96/38475の欄に具体的に述べられている。
本発明において使用されるタンパク質抗原は、ヘリコバクター細胞から調製するおよび/または組換え技術により製造することができる。
【0084】
上記の式において3つの脂質鎖の各々が16個の炭素を有する完全脂質化HpaAタンパク質が示されているが、各脂質鎖はC12〜C20脂質鎖とすることができる。C16およびC18の脂質鎖が好ましく、HpaA抗原が少なくとも1つのC16鎖と少なくとも1つのC18鎖を有するものが最も好ましい。脂質修飾が細菌のリポタンパク質の免疫学的特性を決定しうることは公知である(Weis, J Jら,(1994) Infection and Immunity, vol. 62, 4632-4636を参照)。タンパク質が3つのC16脂質鎖を有する(上記タンパク質V)場合、タンパク質は27kDaの分子量を有すると予測される。しかし、HpaAタンパク質の分子量はタンパク質の脂質化パターン次第で変りうる。
【0085】
HpaAと複合したポリマー粒子の調製
下記の実施例は、PLGA粒子またはPHB(ポリ(3−ヒドロキシブチラート))粒子のいずれかとHpaAの複合を説明するものである。
エマルジョンの分析
ダブルエマルジョンの外観を、光学顕微鏡(ライカ顕微鏡,DMRBE, Leica Mikroskopie
und Systeme GmbH, Germany)で調査した。
【0086】
粒子の分析
粒度、型および形態を走査型電子顕微鏡で調査した。凝集の程度および粒度分布は、噴霧器(Aerosizer(R), Amherst Process Instruments, Hadley, MA, USA)を用いて分析し
た。この測定技術は、粒子の空力的飛行時間型の測定に基づく。粒子の密度は、ポリマーの密度、PHBでは1.25g/cm3に等しいと想定された。
粒度はまた、Coulter LS1 30(Coulter Corp, Hialeah, Florida, USA)を使用するレーザー回折によって測定した。
【0087】
HpaA負荷の測定
PHB粒子
a)全タンパク質含量:
粒子(3〜10mg)を300μlのクロロホルムに溶解した。次にSDS−laemmli(400μl)を添加して、タンパク質を有機相から水相に抽出した。試料を60℃で30分間震盪した。水相を95℃で15分間加熱し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によってタンパク質含量を分析した。タンパク質分析において用いたSDS−laemmli試薬溶液は、1.25ml TRIS−HC1、2M(pH6.8)緩衝溶液、5.05g グリセロール(99%)、0.8gドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1ml 2−メルカプトエタノール、1μl ブロモフェノールブルーおよび10ml水からなる。
【0088】
PLGA粒子
a)全タンパク質含量:
粒子(3〜10mg)を1mlのアセトンに溶解した。17530×gにて15分間遠心分離してタンパク質を沈殿させ、上澄の約2/3をハミルトンシリンジを用いて除去した。純粋なアセトンを添加して、試料を2回洗浄した。残留するアセトンを真空遠心分離により気化させた。SDS−laemmli(200μl)を添加して、試料を95℃で15分間加熱した。タンパク質含量の分析はSDS−PAGEにより実施した。
【0089】
b)界面結合タンパク量の分析
界面に結合したタンパク量の分析をRafatiら(Journal of Controlled Release 1997 43, 89-102)に従って実施した。5〜6mgの粒子に水中の2%(w/v)SDSの2mlを添加した。試料を4時間震盪した。次いで試料を2700×gにて3分間遠心分離し、水相を新しい試験管に移した。真空遠心分離により水を気化させ、1mlのLaemmli(SDSなし)を添加した。水相を95℃で15分間加熱し、タンパク質含量をSDS−PAGEにより分析した。
【0090】
A:ダブルエマルジョン技術
下記の実施例において、HpaA(即ち上述のタンパク質V)の27kDa脂質化型を用いた。HpaAポリペプチド抗原は自ら得たものである。
実施例1
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約10μmの平均直径となるように製造した。
【0091】
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン)、Mw 10000、Aldrich)、アセトン、NOG(n−オクチル−グルコピラノシド、SIGMA)、TRIS緩衝塩およびLaemmli試料用緩衝液は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0092】
方法:抗原を含む950μlの2%(w/w)NOG溶液(10mM、pH8、TRIS緩衝液)を1050μlの2%(w/w)PVP(aq)と混合した。20000rpmで3分間ホモジナイズすることにより、溶液を3900μlの3%(w/w)PLGA(DC
M)中に分散させた。形成したW1/Oエマルジョンをさらに5000rpmで5分間ホモジナイズすることにより140gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを一晩攪拌して、DCMを気化させた。粒子を遠心分離によって収集し、次いで水で洗浄してPVAを除去した。
【0093】
粒子の体積平均直径はレーザー回折測定法により9.4μmと測定された。PLGA粒子とのタンパク質抗原の複合程度は、SDS−PAGEにより測定され、最初に添加したタンパク質の49%であった。タンパク質含量の分析後、懸濁液中の抗原濃度を0.33g/lに調整した。
結果:図1は、実施例1の粒子のSEM画像を示す。図2は、実施例1の粒子の粒度分布を示す。
【0094】
実施例2
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約300nmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン)、Mw 10000、Aldrich)、AOT(1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、SIGMA)、アセトン、NOG(n−オクチル−グルコピラノシド、SIGMA)、TRIS緩衝塩およびLaemmli試料用緩衝液は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0095】
方法:抗原を含む950μlの2%(w/w)NOG溶液(10mM、pH8、TRIS緩衝液)を1050μlの2%(w/w)PVP(aq)と混合した。溶液を3%(w/w)PLGAおよび0.4%(w/w)AOTを含有する3900μlのDCM溶液中に20000rpmで3分間ホモジナイズすることにより分散させた。形成したW1/Oエマルジョンをさらに5000rpmで5分間ホモジナイズすることにより140gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを一晩攪拌して、DCMを気化させた。粒子を遠心分離によって収集し、次いで水で洗浄してPVAを除去し、凍結乾燥した。
【0096】
粒子の体積平均直径はレーザー回折測定法により0.35μm/1.7μm(二頂分布)と測定された。HpaA含量(乾燥粒子の%)は、0.3%(w/w)と算出された。
結果:図3は、実施例2の粒子のSEM画像を示す。図4は、実施例2の粒子の粒度分布を示す。
【0097】
実施例3
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約300nmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン)、Mw 10000、Aldrich)およびAOT(1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、SIGMA)は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0098】
方法:抗原を含む500μlの2%(w/w)NOG溶液(10mM、pH8、TRIS緩衝液)を500μlの2%(w/w)PVP(aq)と混合した。溶液を3%(w/w)PLGAおよび0.4%(w/w)AOTを含有する1950μlのDCM溶液中に、20000rpmで3分間ホモジナイズすることにより分散させた。形成したW1/Oエマルジョンをさらに5000rpmで5分間ホモジナイズすることにより70gの10%(w/w)PVA(aq)または70gの2%(w/w)PVA中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを一晩攪拌して、DCMを気化させた。粒子をクロスフロー濾過法により水で洗浄した。
【0099】
粒子の体積平均寸法はレーザー回折測定法により0.35μm/1.7μm(二頂分布、10%(w/w)PVA)および0.29μm(2%(w/w)PVA)と測定された。
【0100】
実施例4
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約6μmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン)、Mw 10000、Aldrich)。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0101】
方法:抗原を含む500μlの2%(w/w)NOG溶液(10mM、pH8、TRIS緩衝液)を100μlの10%(w/w)PVP(aq)と混合した。溶液を1950μlの3%(w/w)PLGA(DCM)中に、20000rpmで3分間ホモジナイズすることにより分散させた。形成したW1/Oエマルジョンをさらに5000rpmで5分間ホモジナイズすることにより70gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを一晩攪拌して、DCMを気化させた。
粒子の体積平均寸法はレーザー回折測定法により6μmと測定された。
【0102】
実施例5
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約6μmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン)、Mw 10000、Aldrich)およびAOT(1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、SIGMA)は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0103】
方法:抗原を含む500μlの2%(w/w)NOG溶液(10mM、pH8、TRIS緩衝液)を100μlの10%(w/w)PVP(aq)と混合した。溶液を3%(w/w)PLGAおよび0.26%(w/w)AOTを含有する1900μlのDCM溶液中に、20000rpmで3分間ホモジナイズすることにより分散させた。形成したW1/Oエマルジョンをさらに5000rpmで5分間ホモジナイズすることにより70gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡に
よって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを一晩攪拌して、DCMを気化させた。
粒子の体積平均寸法はレーザー回折測定法により5.8μmと測定された。
【0104】
実施例6
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って4μmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、Span 85(ICI)およびトウィーン 80(Merck-Schuchardt)は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0105】
方法:抗原を含む400μlの2%(w/w)NOG溶液(10mM、pH8、TRIS緩衝液)を、3%(w/w)PLGAおよび0.4%(w/w)SpanTM 85/トウィーンTM
80(重量比:80/20)を含有する1500μlのDCM溶液中に、出力65Wで5分間プローブ超音波処理[probe sonication]することにより分散させた。形成したW1/Oエマルジョンをさらに5000rpmで5分間ホモジナイズすることにより56gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを一晩攪拌して、DCMを気化させた。
粒子の体積平均寸法はレーザー回折測定法により4μmと測定された。
【0106】
実施例7
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約150nmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−ラクチド−コ−グリコリド、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、TweenTM 80(Merck)、SpanTM 85(Speciality Chemicals)およびLaemmli試料用緩衝液は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0107】
方法:抗原を含む200μlの2%(w/w)NOG溶液(10mM、pH8、TRIS緩衝液)を、3%(w/w)PLGAおよび0.4%(w/w)SpanTM 85/トウィーンTM
80(重量比:80/20)を含有する800μlのDCM溶液中に、出力65Wで10分間プローブ超音波処理することにより分散させた。形成したW1/Oエマルジョンをさらに65Wで10分間超音波処理することにより10mlの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを一晩攪拌して、DCMを気化させた。粒子を遠心分離により収集し、水で洗浄してPVAを除去した。
粒子の体積平均寸法はレーザー回折測定法により130nm/480nmと測定された。タンパク質抗原のPLGA粒子との複合の程度は、SDS−PAGEにより測定され、最初に添加したタンパク質の44%であった。
【0108】
実施例8
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約13μmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−乳酸−コ−グリコール酸、50:50、Mw 14400、RESOMERTM 502、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PGPR(ポリグリセロールポリリシノール酸エステル、Danisco)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、NOG(n−オクチル−グルコピラノシド、SIGMA)、TRIS緩衝塩およびLaemmli試料用緩衝液は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0109】
方法:抗原を含む2%(w/w)NOGを含有する950μlの水溶液(10mM、TRIS緩衝液 pH8)を、20000rpmで3分間高剪断混合することにより1.8%(w/w)PGPRおよび10%PLGA(w/w)を含有する1.5gのDCM溶液中に分散させた。そのように得られたW1/Oエマルジョンをさらに6000rpmで5分間高剪断混合することにより、50gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを開口ビーカー中で一晩攪拌して、DCMを気化させた。粒子を遠心分離により収集し、水で洗浄してPVAを除去した。
【0110】
粒子の平均直径はレーザー回折測定法により12.6μmと測定された。乾燥PLGA粒子中のタンパク質抗原の含量は、SDS−PAGEにより0.2%(w/w)と測定され、これは最初に添加したタンパク質の44%の封入の度合いに相当する。
【0111】
実施例9
HpaAタンパク質と複合したPLGA粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って約9μmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PL(D,L)GA(ポリD,L−乳酸−コ−グリコール酸、50:50、Mw 6000、RESOMERTM 502H、Boehringer Ingelheim)、DCM(ジクロロメタン)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン)、Mw 10000、Aldrich)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、NOG(n−オクチル−グルコピラノシド、SIGMA)、TRIS緩衝塩およびLaemmli試料用緩衝液は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0112】
方法:2%(w/w)NOGおよび抗原を含有する700μlの水溶液(10mM、TRIS緩衝液 pH8)を1200μlの2%(w/w)PVP(aq)と混合した。この溶液を、20000rpmで3分間高剪断混合することにより3%(w/w)PLGAを含有する3900μlのDCM溶液中に分散させた。そのように得られたW1/Oエマルジョンをさらに5000rpmで6分間高剪断混合することにより、141gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを開口ビーカー中で一晩攪拌して、DCMを気化させた。粒子を遠心分離により収集し、水で洗浄してPVAを除去した。
【0113】
粒子の体積平均直径はレーザー回折測定法により9.3μmと測定された。乾燥PLGA粒子中のタンパク質抗原の含量は、SDS−PAGEにより0.4%(w/w)と測定され、これは最初に添加したタンパク質の93%の封入の度合いに相当する。
【0114】
実施例10
HpaAタンパク質と複合したPHB粒子を、胃粘膜へのデリバリーに適するように、体積寸法分布に従って3μmの平均直径となるように製造した。
材料および方法
材料:PHB(ポリ(3−ヒドロキシブチラート)、Mw 63500、Astra Tech)、DCM(ジクロロメタン)、PVP(ポリ(ビニルピロリドン)、Mw 10000、Aldri
ch)、PVA(ポリ(ビニルアルコール)、Mw 13〜23000、Aldrich)、NOG(n−オクチル−グルコピラノシド、SIGMA)、TRIS緩衝塩およびLaemmli試料用緩衝液は市販品されているものを用いた。水はELGA等級(18.2MΩ)のものである。
【0115】
方法:2%(w/w)NOGおよび抗原を含有する950μlの水溶液(10mM、TRIS緩衝液 pH8)を1050μlの2%(w/w)PVP(aq)と混合した。この溶液を、20000rpmで3分間高剪断混合することにより3%(w/w)PHBを含有する3900μlのDCM溶液中に分散させた。そのように得られたW1/Oエマルジョンをさらに6000rpmで3分間高剪断混合することにより、141gの10%(w/w)PVA(aq)中に分散させた。ダブルエマルジョン小滴の形成は、光学顕微鏡によって確認した。(W1/O)/W2ダブルエマルジョンを開口ビーカー中で一晩攪拌して、DCMを気化させた。粒子を遠心分離により収集し、水で洗浄してPVAを除去した。
粒子の体積平均直径はレーザー回折測定法により3.2μmと測定された。PHB粒子懸濁液中のタンパク質抗原の含量をSDS−PAGEにより測定した。全タンパク質の収率は34%と測定された。
【0116】
B:流体気体技術
実施例11
HpaAタンパク質と複合したポリ(3−ヒドロキシブチラート)(PHB)粒子を製造した。
一般的技術
水不溶性タンパク質抗原を含有する安定化W/OエマルジョンからSEDS装置(Bradford Particle Design, Bradford, UK)中にて粒子を調製した。
【0117】
エマルジョンおよび反溶媒(CO2)を、オーブン内にある加圧容器の内側に位置する同軸ノズルに導入した。制御圧力および温度条件下において、反溶媒は形成したエマルジョン小滴のO相から有機溶媒を抽出する。これにより小滴内のマトリクスポリマーの濃度は上昇して、急速な粒子形成を導く。粒子は容器中にて収集されるが、反溶媒および抽出された有機溶媒はバック プレッシャー調節弁を通じて放出した。
【0118】
使用したノズルは、直径0.2mmの開口部を有するサンドイッチモードまたは2−溶液モードのいずれかにおいて接続される3部構成ノズルである。サンドイッチモードにおいて、超臨界流体は最も内側および最も外側の経路を通過するが、エマルジョンは中間の経路を通過する。2溶液モードにおいては、エマルジョンおよび改質剤、例えばエタノールを流体気体と接触させる直前に混合する。(改質剤は流体気体中の水の溶解度を上昇させて、水抽出を促進する。)流体気体は、外側の経路を通過し、改質剤は中間の経路を通過し、そしてエマルジョンは内側の経路を通過する。
【0119】
材料および方法
材料:ポリ(3−ヒドロキシブチラート)(PHB;Astra Tech,Sweden,分子量(MW)
63500g/モル)、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド(NOG)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP、Aldrich, Germany, MW 10000g/モル)、AOT(1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、SIGMA)。塩化メチレン(99.5%)を有機溶媒として、二酸化炭素を超臨界流体として用いた。エタノール(99.5%)を超臨界処理中の改質剤として用いた。
【0120】
方法:PHBを2バール、90℃において塩化メチレン中に溶解した。同量の2%(w/w)PVP(aq)およびHpaAストック溶液[TRIS−HC1緩衝溶液(10mM、pH8)中の1.11mg/mlのHpaAおよび2%(w/w)NOG]と混合した。25m
lのKinematica分散容器中においてこの混合物(3.8ml)を(20000rpmにてホモジナイズしながら)、1%(w/w)PHBおよび0.4%(w/w)AOTを含有する15.2mlの塩化メチレンに注入した。全均質化時間は3分間である。使用したホモジナイザーはPolytron PT3100、Rotor PT−DA 3012/2(Kinematica AG,Switzerland)である。全ての手順は周囲条件下で実施した。
【0121】
2つの実験は、この安定化W/Oエマルジョンを用いてSEDS装置において異なる実験条件にて行った。実験MPP63は、改質剤としてエタノールを用いる(流速0.5ml/分)2つの溶液モードにて、3部構成ノズルを使用することにより行った。MPP64において、サンドイッチモードを使用した(表2)。
【表2】

SEMグラフによれば、粒径は両方の試験(MPP63およびMPP64)において1〜3μmであった。
【0122】
粒子の理論組成は、55.8%(w/w)PHB、43.5%(w/w)界面活性剤および0.6%(w/w)HpaAである。HpaA量の分析では、MPP63とMPP64共に、粒子の総重量の0.4%のHpaAという結果が与えられた。
【0123】
本発明のワクチンデリバリーシステムのインビボ試験
本発明の好ましい態様に従う、十二指腸に投与された抗原デリバリーシステムに応答した抗体レベルのスクリーニングに、インビボラットモデルを用いた。このモデルは、デリバリーシステムを投与するための長期的十二指腸導管を備えたSpraque-Dawleyラットを使用することに基づく。IgG2aおよびIgAレベルを、血液および粘膜の試料それぞれについて調査した。
【0124】
材料および方法
A.ラットの手術:長期的十二指腸導管の挿入
プレキシグラス製の導管を十二指腸に挿入して、十二指腸内部への薬剤の投与を可能にした。
麻酔:ケタミン(Ketalar(R)、50mg/ml)+キシラジン(Rompun(R)、20mg/ml)を8+1で混合。0.2ml/kg体重ipが与えられた。
【0125】
手法:腹部の毛を剃り、消毒する。2〜3cmの長さで中線切開(midline incision)する。十二指腸中において非吸収性材料(例えばTicron 5−0または4−0)で幽門から約0.5〜1cm嚢縫合する。十二指腸中に18Gxl″カニューレを用いて孔を開け、小さなピンセットでこれを拡げる。孔中にカニューレを挿入し、縫合をきつく締めて、導管の細い部分を用いてこれを適合させた。導管に生理食塩水を流して、漏れのないことを確認して、導管から血液を除去する。最後の肋骨の約1.5cm後方側の右側において、中線から2cm側腹部を切開する。切開は、皮膚および腹膜を通り越す。切開部の周りの皮膚を取り去る。導管を切開部を通じて挿入し、非吸収性材(例えばTicron 5−0または4−0)を用いて導管から腹膜までの“翼[wings]”を縫合する。吸収性材料(例えばDexon
4−0)で中線を、非吸収性材料(例えばDermalon 4−0)で皮膚を縫合する。導管に蓋をする。約10mlの液体(例えば25mg/mlのグルコースを含むRehydrex)を皮下に供
給する。
【0126】
B.デリバリーシステムの投与
デリバリーシステムの投与において、ラットをBollman−ケージ(手術後1週間および投与前の間、ラットを飼育するための手段)に入れる。導管の蓋を開け、カテーテルと取り替える。デリバリーシステムは、注射器およびカテーテルに丁度適合するブラントカニューレを用いて投与される。ピンセットでカテーテルを閉ざして、最初の注射器を回収し、生理食塩水を有する新しい注射器をカテーテルに取り付け、ピンセットを開いて薬剤の残りの成分を十二指腸に流す。再度、ピンセットでカテーテルを閉ざして、注射器を回収する。カテーテルを取り除く前約5分間カテーテルを閉ざしたままにして、導管の蓋をする。
【0127】
C.血液および粘膜のサンプリング
抗原、抗原を包含するデリバリーシステム、抗原+補助剤またはデリバリーシステム(抗原を包含)+補助剤を十二指腸に投与した後に抗体産生を測定した。ラットは1週間に1回投与され、最後の免疫の後10週で終了する。終了した時点で、試料を採取し、そして評価する。最後の免疫の後、2週間毎に血液試料を集め、評価する。
【0128】
D.抗体の分析
抗原に特異的な抗体を次のようにELISAによって測定する:
マイクロタータープレートを4℃にて一晩抗原(PBS中2μg/ml)でコートする。PBS−0.5% TweenTM20で3回洗浄した後、ウェルを室温で1時間PBS中の2.5%脱脂粉乳でブロックした。3部[Triplicate]のウェルを1時間室温で連続試料希釈液とインキュベートする。IgG2aの定量のために、標準血清を連続希釈物において各プレートに添加する。洗浄後、ウェルをそれぞれ1:1000に希釈したビオチン化マウス−抗ラットIgG2a(血清)またはIgA(粘膜)と室温で1時間インキュベートする。次いで、1時間室温で1:500に希釈したアビジン−アルカリホスファターゼとインキュベートする。プレートをアルカリホスファターゼの基質(pNPP)を用いて現像し、20分後に着色を405nmにおいて記録する。
【0129】
インビボ試験および結果
ラットの試料をインビボ試験に用いて、実施例1のポリマー粒子について粘膜のワクチンデリバリーシステムとして作用する能力を測定した。ラットを(i)100μg HpaA+25μg コレラトキシン(CT)(試料サイズ:4ラット);または(ii)100μgのHpaAを含有する実施例1のポリマー粒子デリバリーシステム(HpaA/PLG)(試料サイズ:6ラット)のいずれかで免疫した。各ラットについて3回の免疫を実施し(1週間に1回)、3回目の免疫の後7週間で試料採取を行った。陰性対照は、HpaA+コレラトキシンのグループの最初の免疫の前に試料採取することにより得られた。
タンパク質(HpaA)+粘膜の補助剤CTの組合わせを陽性対照として用いた。
【0130】
結果を図5および6に示す。図6の結果から、本発明のポリマー粒子(図中のHpaA+PLG)が、動物中において抗−HpaA粘膜免疫応答を刺激するように、抗原をデリバリーすることは明らかである。これは、ワクチン用、本実験においてはヘリコバクター感染の治療および/または防止のためのワクチン用のデリバリーシステムとしての本発明のポリマー粒子の有用性を説明している。特に、図6において本発明のポリマー粒子を用いた結果がHpaA+CTの陽性対照を用いて得られた結果に匹敵することは注目に値する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 水相(W)をWとは不混和性の有機相(O)と混合してW/Oエマルジョンを形成させ、ここで水不溶性タンパク質が可溶化剤を用いてW相中にて可溶化され、O相が有機溶媒中のマトリクスポリマーからなるものとし、
(b) 前記エマルジョンを液体媒体中に分散させることにより、W/Oエマルジョンの小滴を形成させ、前記溶媒をW/Oエマルジョン小滴のO相から除去し、これにより水不溶性タンパク質抗原が複合されているポリマー粒子を形成させる
ことからなり、
段階(a)において安定剤がW/Oエマルジョン中に包含されて、前記可溶化剤の存在下にW/Oエマルジョンを安定化することにより、段階(b)において水不溶性タンパク質のポリマー粒子との複合を促進させる、水不溶性タンパク質抗原がポリマーマトリクスからなる粒子と複合されている、ワクチンデリバリーシステムとして使用されるポリマー粒子の製造方法。
【請求項2】
1つ以上の安定剤がW/Oエマルジョン中に包含される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
安定剤がポリマー、極性脂質および疎水性界面活性剤から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、多糖類、ポリエチレンオキシドおよび水溶性タンパク質から選択されるポリマーである安定剤を使用する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
コレステロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、糖脂質およびホスファチジン酸から選択される極性脂質である安定剤を使用する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ソルビタン脂肪酸エステル、疎水性ポリオキシエチレンアルキルエーテル、スクロースエステル、アルキル−グルコピラノシド、ポリグリセロールポリリシノールエステル並びにエチレンオキシドとプロピレンオキシドおよび/または乳酸とのブロックコポリマーから選択される非イオン性疎水性界面活性剤である安定剤を使用する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
アルキル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩および脂肪酸塩から選択されるアニオン性疎水性界面活性剤である安定剤を使用する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
アルキルトリメチルアンモニウム塩およびジアルキルジメチルアンモニウム塩から選択されるカチオン性疎水性界面活性剤である安定剤を使用する請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ソルビタン脂肪酸エステルを安定剤として用いる請求項2に記載の方法。
【請求項10】
ポリ(ビニルピロリドン)および1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムを安定剤として用いる請求項2に記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の可溶化剤を用いる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
親水性界面活性剤を可溶化剤として用いる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
親水性界面活性剤が、アルキル−グルコピラノシド、アルキル−チオグルコピラノシド、アルキル−マルトシド、アルコイル−メチルグルカミド、ポリオキシエチレンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノール、エムルホゲン、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、親水性ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびジギトニンから選択される非イオン性界面活性剤である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
親水性界面活性剤が、コレート、アルキルスルホネート、デオキシコレート、アルキルサルフェート、オリゴオキシエチレンドデシルエーテルサルフェートおよびナトリウムドデシルサルコシネートから選択されるアニオン性界面活性剤である請求項12に記載の方法。
【請求項15】
親水性界面活性剤が、アルキルピリジニウム塩およびアルキルトリメチルアンモニウム塩から選択されるカチオン性界面活性剤である請求項12に記載の方法。
【請求項16】
親水性界面活性剤が、CHAPS、CHAPSO、BIGCHAP、デオキシBIGCHAP、リソホスファチジルコリン、アルキルベタインおよびスルホベタインから選択される両イオン性界面活性剤である請求項12記載の方法。
【請求項17】
カオトロピック剤を可溶化剤として用いる請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
カオトロピック剤が、ペルクロレート、チオシアネート、グアニジン、クロレート、ヨウ化物、臭化物、ニトレートおよび尿素から選択される請求項17記載の方法。
【請求項19】
方法が、段階(b)において安定化したW/Oエマルジョンを、O相とは不混和性である液相(X)中に分散させ、溶媒が気化したW/O小滴を含むW/O/Xダブルエマルジョンを形成させ、これにより水不溶性タンパク質抗原を複合した前記ポリマー粒子を形成させる、ワクチンデリバリーシステムとして使用されるポリマー粒子を製造するためのダブルエマルジョン(W/O/X)溶媒エバポレーション技術である請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
方法が、段階(b)において安定化したW/Oエマルジョンを、O相とは不混和性である液相(X)中に分散させ、W/O小滴を含むW/O/Xダブルエマルジョンを形成させ、X相が小滴のO相から前記溶媒を抽出し、これにより水不溶性タンパク質抗原を複合した前記ポリマー粒子を形成させる、ワクチンデリバリーシステムとして使用されるポリマー粒子を製造するためのダブルエマルジョン(W/O/X)溶媒抽出技術である請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
安定剤がX相に包含される、請求項19または20に記載の技術。
【請求項22】
請求項3〜8のいずれかに定義される安定剤をX相において用いる請求項21に記載の技術。
【請求項23】
方法が、段階(b)において安定化したW/Oエマルジョンを気体媒体中に分散させて、溶媒が蒸発したW/Oエマルジョンの小滴の噴霧を形成させ、これにより水不溶性タンパク質抗原を複合した前記ポリマー粒子を形成させる、ワクチンデリバリーシステムとして使用されるポリマー粒子を製造するための噴霧乾燥技術である請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
段階(b)において流体気体技術を用いてポリマー粒子を形成させる請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
流体気体技術がGAS、SEDS、PCA、SASおよびASESから選択される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗原タンパク質がヘリコバクターのタンパク質またはその断片である請求項1〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
抗原タンパク質がヘリコバクター・ピロリのタンパク質またはその断片である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
ヘリコバクターのタンパク質が、ヘリコバクターの表面上に発現するタンパク質である請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
ヘリコバクターのタンパク質がHpaAの脂質化型である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
タンパク質がHpaAの完全脂質化型である請求項29に記載の方法。
【請求項31】
脂質化HpaAタンパク質のタンパク質部分が、SEQ ID NO.2またはSEQ ID NO.4の28〜260位と同一または実質的類似するアミノ酸配列を有する請求項28に記載の方法。
【請求項32】
マトリクスポリマーが、1つ以上のポリエステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリアクリレート、生体分解性ポリウレタン、非浸食性ポリウレタン、エチレン−ビニルアセテートのポリマー、アシル置換セルロースアセテート、多糖類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネート化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルおよびポリオキサレートから選択されるホモ−またはコ−ポリマーである請求項1〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチラート、ポリ(アルファヒドロキシ酸)およびポリカプロラクトンから選択されるポリエステルホモポリマーである請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ポリマーが、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシブチラート−ヒドロキシ吉草酸エステル)およびポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)から選択されるポリエステルコポリマーである請求項32に記載の方法。
【請求項35】
マトリクスポリマーがポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である請求項34に記載の方法。
【請求項36】
段階(a)においてW相を1:100〜1:1の体積比においてO相と混合する請求項1〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
請求項1〜36のいずれかに記載の方法により得られるポリマー粒子ワクチンデリバリーシステム。
【請求項38】
水不溶性タンパク質抗原をポリマーマトリクスからなる粒子と複合させたポリマー粒子ワクチンデリバリーシステム。
【請求項39】
タンパク質抗原がヘリコバクターのタンパク質またはその断片である請求項38に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項40】
タンパク質抗原がヘリコバクター・ピロリのタンパク質またはその断片である請求項39に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項41】
ヘリコバクターのタンパク質が、ヘリコバクターの表面に発現するタンパク質である請求項39または40に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項42】
ヘリコバクターのタンパク質がHpaAの脂質化型である請求項41に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項43】
タンパク質がHpaAの完全脂質化型である請求項42に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項44】
脂質化HpaAタンパク質のタンパク質部分が、SEQ ID NO.2または4の28〜260位と同一または実質的類似するアミノ酸配列を有する請求項42に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項45】
マトリクスポリマーが、1つ以上のポリエステル、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリアセタール、ポリシアノアクリレート、ポリアクリレート、生体分解性ポリウレタン、非浸食性ポリウレタン、エチレン−ビニルアセテートのポリマー、アシル置換セルロースアセテート、多糖類、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネート化ポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、ポリエーテルおよびポリオキサレートから選択されるホモ−またはコ−ポリマーである請求項38〜44のいずれかに記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項46】
ポリマーが、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチラート、ポリ(アルファヒドロキシ酸)およびポリカプロラクトンから選択されるポリエステルホモポリマーである請求項45に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項47】
マトリクスポリマーが、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリ(ヒドロキシブチラート−ヒドロキシ吉草酸エステル)および(ラクチド−コ−カプロラクトン)から選択されるポリエステルコポリマーである請求項45に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項48】
マトリクスポリマーがポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である請求項47に記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項49】
ポリマー粒子が体積寸法分布に従って0.05〜20μmの平均粒径を有する請求項37〜48のいずれかに記載のワクチンデリバリーシステム。
【請求項50】
請求項37〜49のいずれかに記載のワクチンデリバリーシステムを含むワクチン組成物。
【請求項51】
哺乳類宿主のヘリコバクター感染の治療ためのワクチン組成物の製造における請求項37〜49のいずれかに記載のデリバリーシステムの使用。
【請求項52】
哺乳類宿主のヘリコバクター感染の危険性を防止または減少させるためのワクチン組成
物の製造における請求項37〜49のいずれかに記載のデリバリーシステムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−140491(P2011−140491A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1576(P2011−1576)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2000−543160(P2000−543160)の分割
【原出願日】平成11年4月9日(1999.4.9)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】