説明

ポリマー組合せ物による固体表面の変性

本発明は、
・双性イオン(ツビッターイオン)性単位を含有する第1のポリマー(PZ);及び
・荷電した基を有し、前記第1のポリマー(PZ)に結合し得る別のポリマー(P):
を含有するポリマー組合せ物を、固体材料の表面特性を変性するために使用することに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック材料をベースとする表面、ガラスをベースとする表面又は金属をベースとする表面のような固体材料の表面の特性を変更(変性)することに関する。より詳細には、本発明は、前記表面の親水性を変性し且つ/又はそれらがフィルム形成性若しくは粘着性組成物の付着物を受け取り且つ/若しくは保持する能力を変性する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固体材料のある種の表面特性を変性することが望まれ、時に必要とされる産業分野は多数ある。特に、このタイプの表面処理は、表面を、当初の未処理の材料では親和性が弱い組成物又は化合物に対して適合性にするために、特に用いられ、これは一般的に、被処理表面上への前記組成物の付着効力(付着性とも言う)及び/又は結合力(保持性とも言う)を改善する。より一般的には、表面処理は、例えば固体材料の液状媒体又は液状組成物による濡れ性を高めるため又は逆に低くするために用いることができる化合物、組成物又は媒体(例えば液状媒体)に対する材料の挙動を変性するために利用することもできる。
【0003】
この点に関しては、例えば特定材料の親水性を変性する表面処理が知られている。特に、ポリエチレンやポリプロピレンタイプのポリマーのような本来(元来)疎水性の材料の水に対する親和性を高めるための方法であって、界面活性剤又は両親媒性物質をポリマー中に組み込んだり、その表面上にかかる添加剤物質{例えば水性組成物(例えば水性塗料)の付着性を改善するために用いられるもの}を付着させたりする方法が報告されている。
【0004】
対照的に、表面疎水性化をもたらして例えば表面上に水が付着するのを防止する方法(例えば、特に水滴が表面を伝って流れても濡れることのない防水性布帛を製造するための撥水性処理)も報告されている。
【0005】
他の既知の表面変性方法は、被処理表面上へのフィルム形成性又は粘着性組成物の付着を最適化することができるものである。これに関しては特に、フィルムを付着させることが望まれる表面上又は粘着性にすべき表面上に下塗り層又は両親媒性ポリマータイプの化合物を付着させることが、報告されている。
【0006】
このタイプの効果的な表面処理を達成するためには、表面を変性するために用いられる手段の性状をケースバイケースで適応させることが必要であることは一般的に明らかである。例えば、水に対する表面の親和性を変性するための処理の一環として提案されている効果的な解決策を、別のタイプの表面処理に対して同じ有効性ですんなり移行することはできない。
【0007】
これに関しては、表面処理について頻繁に起こる問題点は、それらの経時耐久性(持続性)の問題であることに注目されたい。より一般的には、ある表面特性の持続的な変性(持続性のある変性)を保証するのに適していると思われる1つのタイプの処理が、必ずしも別のタイプの表面変性を経時的に効果的に維持するのに適したものではないということが観察された。従って、持続的な処理を達成するためには、それぞれの表面処理のために実施されるべき処理のタイプを最適化することが一般的に必要である。この最適化は、時間の浪費となるものであり、同時に複数の表面特性の持続的な変性を達成することが望まれる場合には、特に難しいものであることがわかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はの1つの目的は、上記のタイプの表面処理方法であって、特に融通性(適応性、汎用性)があるもの、即ち表面特性の広範な変性を、好ましくは経時的に持続性がある表面変性を保証することによって、達成することができるものを提供することにある。
【0009】
この点で、本発明は特に、材料の表面特性、特にその親水性を調節し、且つ/又はそのフィルム形成性及び/若しくは粘着性組成物の付着物を受け取り且つ/若しくは保持する能力を調節することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明は、固体材料の特性を変性すべき表面を処理するために、少なくとも2種の特定ポリマーの組合せ物を用いることを提案する。
【0011】
より詳細には、第1の局面において本発明は、固体材料の表面特性を変性するために、
・双性イオン(ツビッターイオン)性単位を含有する第1のポリマー(PZ);及び
・第1のポリマー(PZ)とは異なる別のポリマー(P)であって、荷電した基を有し、前記第1のポリマー(PZ)に結合し得るポリマー(P):
を含有するポリマー組合せ物を使用することに関する。
【0012】
別の局面に従えば、本発明はまた、固体材料の表面を処理する方法であって、前記のポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物を含有する組成物を前記表面上に付着させることを含む前記処理方法、並びにこの処理方法から得られる変性された表面を有する固体材料にも関する。
【0013】
前記組合せ物には、複数の異なるポリマー(P)を含有させることができることに留意されたい。
【0014】
本明細書において「固体材料」とは、単離された分子の形や複数の分子の集まりの形の物質とは対照的に、肉眼で見える固体の形で存在する材料を意味する。従って、本発明に従って達成される固体の表面特性の変性とは、活性成分のような分子(即ち、本発明の意味内での表面特性を有する固体ではないもの)の封入などとは異なるものである。
【0015】
従って、本発明に従う固体材料は大抵の場合、少なくとも約1cmの寸法を有し、少なくとも数cm2、特に少なくとも数十cm2又は数m2の処理すべき表面を有する固体の形を採る。従って、この固体材料は、少なくとも約1cm3、好ましくは少なくとも約10cm3、例えば少なくとも約100cm3の体積を有する質量固体(質量感のある固体)であることができる。この固体材料はまた、例えば織布又は不織布タイプのテキスタイル(織物原料)の形のファイバーを含む材料であることができる。別のより特定的な実施形態に従えば、表面処理される固体材料は、より一層分割された形、例えば粉体の形で存在することができるが、しかしこの粉体は粉体粒子が本発明の意味内の表面特性を有するのに充分な粒子寸法分布、即ち典型的には少なくとも1μm、有利には少なくとも10μm、より特定的には少なくとも100μmの粒子寸法分布を有するものとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従って処理される固体材料の化学的性状は、かなり広範囲まで変化し得る。例えば、処理される固体材料は一般的に有機物及び/又は無機物であることができる。より特定的には、本発明の方法は特に、ポリマー{特に可塑性又は熱可塑性ポリマー、例えばポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)又はポリ塩化ビニルから選択されるポリマー、有利にはポリエチレンやポリプロピレンのような熱可塑性ポリマー}をベースとする処理すべき表面又はガラス若しくは金属をベースとする処理すべき表面(例えばアルミニウム又はスチールから選択されるもの)を含む材料を処理するのに好適であることがわかった。
【0017】
本発明者らはここに、前記ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物が大部分の固体材料の表面特性を変性するのに特に有効であり、大抵の場合は表面特性に対する持続的な変性を達成するということを見出した。特に、本発明のポリマー組合せ物を用いることによって達成された表面処理は、一般的に水及び塩水溶液での洗浄に対して耐性があることがわかった。
【0018】
これに関しては、特定の理論に結びつけられるのは望まないが、ポリ双性イオン性単位を有するポリマーPZをポリマーPと組み合わせて使用することにより、多くの固体表面に効果的に結合することができる特定の物体が得られるように思われる。本発明者らは実際、ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物が大抵の場合に、溶剤媒体中に分散した2種のポリマーの組合せ物をベースとする粒子であって一般的に5〜1000nm、典型的には10〜100nm、例えば15〜50nmの寸法を有する前記粒子の形を一般的に採る「コアセルベート」と称される特定の物体を形成することを観察した。指標として、本明細書に後記する実施例のポリマー組合せ物を用いて得られるコアセルベートは、約20nmである。このタイプのコアセルベートの形成は一般的に、表面特性に対する特に効果的な変性をもたらす。この点において、本発明者らは、ポリマー(PZ)及びポリマー(P)をベースとするコアセルベートは添付した図1に示したように処理される固体の表面に均一に付着する傾向があることを観察した。被処理固体表面上へのこのタイプの「構造化」付着は、本発明に従って得られる特に効果的な表面変性の少なくとも一部の説明となるように思われる。
【0019】
いずれの場合にも、ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物の形がどのようなものであっても、これら2種の組合せポリマーを固体状支持体の表面に付着させた場合には、これらは材料の表面特性を効果的に変性し、しかもその変性は、ポリマー(PZ)を単独で付着させた場合やポリマー(P)を単独で付着させた場合に達成されるものとは全く異なる態様の変性であるということが見出された。一般的に、ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物の付着は、とりわけ、表面の親水性、フィルム形成性若しくは粘着性組成物に対する表面の親和性、並びに/又はポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物による処理によって付着したフィルム形成性若しくは粘着性組成物の付着物を表面が保持する能力に、影響を及ぼす。
【0020】
ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物によって達成された表面変性は、融通性(適応性、汎用性)があることも証明された。実際、ポリマー(PZ)及び(P)の性状並びにそれらの比を調節することによって、本発明のポリマー組合せ物は、望まれる通りに所定の固体表面の特性を変性することができ、一般的に効果的な変性、大抵の場合は経時的に充分に維持される変性を達成する。本発明はまた、大部分の固体材料の表面特性を変性するのにうまく適応する一般的方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明に従って用いることができるポリマーの組合せ物をより詳細に説明する。
【0022】
本明細書において「ポリマー」とは、複数のモノマー単位又はパターンの鎖を含み、一般的に少なくとも50個のモノマー単位を含有し、さらには少なくとも100個のモノマー単位を含有することさえある任意の高分子化合物を指す。さらに、本明細書において用いた場合、用語「ポリマー」には任意のタイプのポリマーが包含され、即ちホモポリマーだけではなくて、ランダム又はブロックコポリマー、特に二ブロック又はマルチブロックポリマーも包含される。加えて、本明細書の意味内のポリマーは任意のタイプの構造を有することができ、例えば直鎖状、分岐鎖状、櫛状、多分岐状又は星形の構造を有することができる。
【0023】
ポリマー(PZ)
【0024】
本発明に従って用いることができるポリマーの組合せ物中に用いられる第1のポリマー(PZ)は、特徴付けとして、双性イオン性単位を有するポリマーである。本発明において用いる場合の意味内で、用語「双性イオン性単位」とは、
(i)少なくとも表面処理条件下において(特に使用時のpHにおいて)負電荷を有する少なくとも1個の基(G-);及び
(ii)少なくとも表面処理条件下において(特に使用時のpHにおいて)正電荷を有する少なくとも1個の基(G+):
を同時に含むモノマー単位を指し、この双性イオン性単位中の正電荷の数と負電荷の数とが等しいのが好ましい。
【0025】
ポリマー(PZ)の双性イオン性単位において、負電荷を有する基(G-)は一般的にカルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート又はエテノレートのアニオンを含み、これらの基はカルボキシレート、スルホネート又はホスフェート基であるのが有利である。一般的に、これらの基は広範なpHレベルにわたって負電荷を有するのが有利であり、これは特にpHに拘らずポリマー(PZ)の使用を可能にする。従って、双性イオン性単位がサルフェート、スルホネート又はホスフェート基を含有するポリマー(PZ)を用いるのが好ましい。
【0026】
ポリマー(PZ)の双性イオン性単位の正電荷を有する基(G+)は、大抵の場合は窒素、リン又は硫黄の族からのオニウム又はイニウムカチオン、例えばアンモニウム、ピリジニウム、イミダゾリニウム、ホスホニウム又はスルホニウムカチオンを含む。これらの基は、アンモニウム又はプロトン化された形のアミン基であるのが有利である。ここでもまた、双性イオン性単位が広範なpHレベルにわたって正電荷を有するポリマー(PZ)を用いるのが好ましく、この電荷は不変であるのが好ましい。従って、双性イオン性単位が第4級アンモニウム基を含有するポリマー(PZ)を用いるのが有益である。
【0027】
正確な性状がどのようであろうと、双性イオン性単位の基(G+)及び(G-)は双性イオン性単位中の側鎖に結合したものであるのが有利であり、即ちこれらの基がポリマー鎖の構造中に含まれないのが好ましい。これに関しては、基(G+)又は(G-)の一方が側鎖の末端基となっていて、特にこの基が特にポリマー(P)及び/又は処理されるべき固体材料の表面との相互作用のために利用可能であるようにするのが有利である。
【0028】
ポリマー(PZ)はまた、基(G+)及び(G-)が随意に置換された多価炭化水素基(特に随意に1個以上のヒドロキシル基で置換されたアルキレン基)を介して互いに結合した双性イオン性単位を含むのも有利である。
【0029】
特定実施形態に従えば、ポリマー(PZ)は、少なくとも1個の一価基を側鎖として含有する双性イオン性単位を含むのが有利であり、この一価基は、以下の群から選択されるのが好ましい:
・次の一般式(GZN1)〜(GZN6)に相当する一価の窒素含有双性イオン性基:
【化1】

・次の一般式(GZP1)及び(GZP2)に相当する一価のリン含有双性イオン性基:
【化2】

・次の一般式(GZS1)及び(GZS2)に相当する一価の硫黄含有双性イオン性基:
【化3】

[ここで、式(GZN1)〜(GZN6)、(GZP1)、(GZP2)、(GZS1)及び(GZS2)中の各種の基は、次の意味を持つ:
・Rは1〜15個、好ましくは2〜4個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上のヒドロキシル基で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基又はベンジレン基を表わし、
・R1、R2、R5及びR7は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して1〜7個、好ましくは1〜2個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、
・R3及びR4は窒素原子と一緒になって窒素含有ヘテロ環{随意に1個以上の他のヘテロ原子(例えば1個以上の他の窒素へテロ原子)を含むもの}を形成し、
・R6は窒素原子と一緒になって窒素含有ヘテロ環{随意に1個以上の他のヘテロ原子(特に窒素へテロ原子)を含むもの}を形成し、
・AはS(=O)(=O)、OP(=O)(O)、OP(=O)(OR')、P(=O)(OR')又はP(=O)(R')二価基を表わし、ここで、R'は1〜7個の炭素原子を有するアルキル基又はフェニル基を表わし、
・A'は二価基−O−P(=O)−O−を表わし、
・W(-)は次式:
【化4】

の内の1つに相当するエテノレート官能基を表わす]。
【0030】
特に、本発明に従って特に好適なポリマー(PZ)の例には、ポリマー(PZ)の構造を形成する炭化水素ポリマー鎖の炭素原子に{随意に二価若しくは多価炭化水素基(例えばアルキレン若しくはアリーレン)(随意に1個以上のヘテロ原子、例えば1個以上の酸素原子によって又はエステル官能基、アミド官能基若しくは原子価結合によって中断されたもの)を介して又は原子価結合によって}に結合した一価の双性イオン性側基(好ましくは前記の式に相当するもの)を含有する双性イオン性ポリマーがある。特にこれについては、ポリマー(PZ)の炭化水素ポリマー鎖(構造)は、随意に1個以上の窒素、硫黄又は酸素のようなヘテロ原子で中断された直鎖状又は分岐鎖状のポリアルキレン鎖であるのが有利である。式(GZN1)においてAがS(=O)(=O)基である双性イオン性側基を含むポリマー(PZ)は、本発明に従って特に有益であるように思われる。
【0031】
本発明の第1の変形(実施態様)に従えば、表面処理のために用いられるポリマー(PZ)は、双性イオン性単位の繰返しのみをベースとし、他のタイプの単位を持たないものであることができる。従って、厳密にポリ双性イオン性性状のホモポリマー又はコポリマーを対象とする。この実施形態に従えば、ポリマー(PZ)はポリ双性イオン(好ましくは総電荷が0のもの)である。
【0032】
第2の可能な変形に従えば、ポリマー(PZ)は、前記双性イオン性単位に加えて、下記のものから選択されるその他の単位をさらに含むランダム又はブロックコポリマーであることができる:
・中性単位:これは、
・・元来中性の(NE)単位、若しくは
・・ポリマー(PZ)が表面処理のために用いられる条件下において非イオノゲン(NI)性(特に使用時のpHにおいて非イオノゲン性)の単位{これらの非イオノゲン性単位は、例えば、それらのpKa以下で用いられる弱酸性基(例えばカルボキシル基)、若しくはそれらのpKa以上で用いられる弱塩基性基(特にアミン基)である}
である;並びに/又は
・必要な場合のイオン性単位{好ましくはポリマー(PZ)同士の自己結合が起こるのを防ぐのに充分低い濃度で}。
【0033】
この第2の変形に従えば、ポリマー(PZ)が双性イオン性単位及び中性単位(NE又はNI)だけを含むのが好ましい。より一般的には、ポリマー(PZ)が双性イオン性単位中に存在するもの以外のイオン性単位を含有しないのが好ましい。この点において、ポリマー(PZ)はその総電荷が0であるのが好ましい。
【0034】
別の有益な実施形態に従えば、ポリマー(PZ)はもっぱら双性イオン性単位から形成されたブロック及び少なくとも1つの異なる性状のブロックを含むブロックポリマーである。
【0035】
ポリマー(PZ)中に存在可能な中性単位の例には、特に次のものがある:
元来中性(NE)の単位として:次のようなエチレン性不飽和非イオン性モノマーから得られる単位:アクリルアミド及びその誘導体(例えばN,N−ジメチルアクリルアミド及びN−イソプロピルアクリルアミド)、メタクリルアミド及びその誘導体、酢酸ビニル(加水分解によってビニルアルコール単位を形成することができるもの)、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C4アルキルエステル、アクリル酸及びメタクリル酸のC1〜C4ヒドロキシアルキルエステル、特にエチレングリコールアクリレート及びメタクリレート並びにプロピレングリコールアクリレート及びメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸ポリアルコキシル化エステル、特にポリエチレングリコールエステル及びポリプロピレングリコールエステル、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム又はN−ビニルホルムアミド;
特定pH条件において元来非イオノゲン性の単位(NI)として:次のエチレン性不飽和モノマーから得られた単位:
・少なくとも1個のカルボキシル官能基を有するモノマー、例えばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸又は対応する酸無水物、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸又は酸無水物、フマル酸、イタコン酸、N−メタクロイルアラニン、N−アクリロイルグリシン及びその水溶性塩。そのポリマー上の対応する単位は、使用時のpHが当該カルボン酸のpKaより小さい場合に、非イオノゲン性である。
・重合後に加水分解によってカルボキシル官能基を生成するカルボキシレート官能基前駆体モノマー、例えばアクリル酸t−ブチル。そのポリマー上の対応する単位は、使用時のpHが生成するカルボン酸のpKaより小さい場合に、非イオノゲン性である。
・モノエチレン性不飽和カルボン酸N,N−(ジアルキルアミノωアルキル)アミド、例えばN,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノ−3−プロピルアクリルアミド又はメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチルアクリルアミド又はメタクリルアミド。そのポリマー上の対応する単位は、使用時のpHが加水分解によって生成するアミンのpKaより大きい場合に、非イオノゲン性である。
・α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、例えばメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAM)、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジ−t−ブチルアミノエチル、メタクリル酸ジペンチルアミノエチル。そのポリマー上の対応する単位は、使用時のpHが生成するアミンのpKaより大きい場合に、非イオノゲン性である。
・ビニルモノマー、例えばN−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルベンジルアミン、ビニルベンジルジメチルアミン並びに単純な酸又は塩基加水分解によって第1アミン官能基を生成するアミン官能基の前駆体モノマー、例えばN−ビニルホルムアミド又はN−ビニルアセトアミド。そのポリマー上の対応する単位は、使用時のpHが当該アミンのpKaより大きい場合に、非イオノゲン性である。
【0036】
また、それぞれが双性イオン性単位を含むホモポリマー及び/又はコポリマーの混合物をポリマー(PZ)として用いることもできる。
【0037】
一般的に、正確な構造がどのようであろうと、ポリマー(PZ)は双性イオン性単位を主要単位として含むのが好ましく、即ち、双性イオン性単位/全ポリマー単位のモル比として有利には少なくとも50%、より一層好ましくは少なくとも70%、さらにより一層好ましくは少なくとも80%、さらには少なくとも90%の割合で含むのが好ましい。
【0038】
しかしながら、特定実施形態に従えば、非双性イオン性単位を主要単位とするポリマー(PZ)、例えば非双性イオン性単位を70モル%、さらには90モル%までの割合で含むポリマー(PZ)を用いることも考えられる。この場合、特にランダムポリマーに関して、存在する非双性イオン性単位の大部分が中性単位(前記のNE又はNIタイプのもの)であるのが一般的に好ましい。
【0039】
ブロックポリマータイプのポリマー(PZ)の場合、存在する少なくとも1個のブロックが双性イオン性単位を少なくとも40モル%、好ましくは少なくとも50モル%、より一層好ましくは少なくとも70モル%、さらにより一層有利には少なくとも80モル%、例えば少なくとも90モル%含むのが望ましい。
【0040】
より一般的には、本発明に従って用いることができるポリマー(PZ)は、双性イオンタイプのポリマーのものに典型的な挙動を示すのが有利である。特に、臨界温度(即ちそれ以下ではポリマー(PZ)が水に不溶であり、それ以上ではポリマー(PZ)が水溶性になる温度Tc)を有するポリマーを用いるのが一般的に望ましい。好ましくは、本発明の組合せ物中に用いられるポリマー(PZ)は、0〜100℃、例えば10〜90℃の臨界温度Tcを有するものである。
【0041】
同時に、用いられるポリマー(PZ)は、3000〜5000000g/モル、好ましくは5000〜3000000g/モル、より一層好ましくは50000〜1000000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有するのが好ましい。
【0042】
一般的に、本発明に従って用いられるポリマー(PZ)は、任意の既知の方法によって、特に双性イオン性特徴を有するモノマーを重合させることによって又は前駆体ポリマーを化学的に変性する(官能化する)ことによって、調製することができる。
【0043】
従って、第1の実施形態に従えば、前記ポリマー(PZ)は、前記のタイプの双性イオン性基と、例えば次のような重合(例えばラジカル重合又は共重合)をもたらすことができる基:
・1個以上のモノ若しくはポリエチレン性不飽和炭化水素基(例えばビニル、アリル、スチレニル);
・1個以上のモノ若しくはポリエチレン性不飽和エステル基(特にアクリレート、メタクリレート若しくはマレエートタイプのもの);又は
・1個以上のモノ若しくはポリエチレン性不飽和酸アミド基(特にアクリルアミド若しくはメタクリルアミドタイプのもの):
との両方を有するモノマーを(他の可能なモノマーに加えて)含有するモノマーの単独重合又は共重合によって調製することができる。
【0044】
これに関しては、特に下記の双性イオン性モノマーの内の1種以上を単独で又は他の非双性イオン性モノマーとの組合せとして用いることができる:
●ジアルキルアンモニウムアルキルアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド又はメタクリルアミドのアルキル又はヒドロキシアルキルスルホネート又はホスホネート、例えば以下のもの:
・RASCHIG社よりSPEの名称で販売されているスルホプロピルジメチルアンモニウムエチルメタクリレート
【化5】

・RASCHIG社よりSPPの名称で販売されているスルホプロピルジメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミド
【化6】

・スルホエチルジメチルアンモニウムエチルメタクリレート
【化7】

又はスルホブチルジメチルアンモニウムエチルメタクリレート
【化8】

{その合成は、例えばJournal of Polymer Science 40, 511-523 (2002)に記載されている}
・スルホヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムエチルメタクリレート
【化9】

・スルホプロピルジメチルアンモニウムプロピルアクリルアミド
【化10】

{その合成は、Wen-Fu Lee及びChan-Chang TsaiによりPolymer, 35 (10), 2210-2217 (1994)に記載されていた}
・スルホヒドロキシプロピルジメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミド
【化11】

・スルホプロピルジエチルアンモニウムエチルメタクリレート
【化12】

{その合成は、V. M. Monroy Soto及びJ. C. GalinによりPolymer, 1984, Vol 25, 121-128に記載されていた};
●ヘテロ環式ベタインモノマー、例えば以下のもの:
・ピペラジンから誘導されるスルホベタイン、特に次のモノマー:
【化13】

{その合成は、P. Koberle及びA. LaschewskyによりMacromolecules 27, 2165-2173 (1994)に記載されていた}
・2−ビニルピリジン又は4−ビニルピリジンから誘導されるスルホベタイン、例えば次のもの:
・・RASCHIG社よりSPVの名称で販売されている2−ビニル−(3−スルホプロピル)ピリジニウムベタイン(2SPV)
【化14】

又は
・・4−ビニル−(3−スルホプロピル)ピリジニウムベタイン(4SPV)
【化15】

{その合成は、V. M. Castano及びA. E. Gonzalez、J. Cardoso, O. Manero及びV. M. MonroyによりJ. Mater. Res., 5 (3), 654-657 (1990)に記載されていた};
・1−ビニル−3−(3−スルホプロピル)イミダゾリウムベタイン
【化16】

{その合成は、J. C. Salamone, W. Volkson, A. P. Oison, S. C. IsraelによりPolymer, 19, 1157-1162 (1978)に記載されていた}
●アルキルアリルジアルキルアンモニウムのアルキル又はヒドロキシアルキルスルホネート又はホスホネート、例えばスルホプロピルメチルジアリルアンモニウムベタイン
【化17】

{その合成は、Philippe Favresse及びAndre LaschewskyによってMacromolecular Chemistry and Physics, 200(4), 887-895 (1999)に記載されていた}
●アルキルスチレンジアルキルアンモニウムのアルキル又はヒドロキシアルキルスルホネート又はホスホネート、例えば
【化18】

{その合成は、P. Koberle及びA. LaschewskyによってMacromolecules 27, 2165-2173 (1994)に記載されている}
●エチレン性不飽和ジエン及び酸無水物から得られるベタイン、例えば
【化19】

{その合成は、P. Koberle及びA. LaschewskyによってMacromolecules 27, 2165-2173 (1994)に記載されている}
●ホスホベタイン、例えば
【化20】

(それらの合成は、ヨーロッパ特許公開第810239号公報に記載されていた)
●環状アセタールから得られるベタイン、例えば((ジシアノエタノレート)エトキシジメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミド
【化21】

{その合成は、M-L. Pujol-FortinらによってMacromolecules 24, 4523-4530 (1991)に記載されていた}。
【0045】
別の可能な調製方法に従えば、本発明に従って用いることができるポリマー(PZ)は、前駆体ポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)を化学的に変性することによって得ることができる。
【0046】
これに関しては、本発明に従って用いることができるポリマー(PZ)は、例えばアミン官能基(好ましくは第3アミン)を側基とする(コ)ポリマーを特にスルトン(例えばプロパンスルトン、ブタンスルトン)との反応によって、ハロゲノアルキルスルホネートによって、又は任意の他のスルホネート化親電子化合物によって、化学的に変性させることによって、調製することができる。前駆体ポリマーをスルトン及びハロゲノアルキルスルホネートによって化学的に変性することによってポリスルホベタインを得るための方法に関するさらなる詳細については、特にPolymer 41, 831-837 (2000);Polymer 38 (4), 971-979 (1997);Journal of Applied Polymer Science 80, 1619-1626 (2001)、Chem. Commun., 1555-1556 (1996)、Macromolecules 32, 2141-2146 (1999)、又は1999年12月21日付け特開平11−349826号公報を参照することができる。また、化学的変性によるポリホスホナトベタイン及びホスフィナトベタインの調製は、Macromolecular Chemistry 187, 1097-1107 (1986)に報告されている。
【0047】
本発明の範囲内で特に有益なポリマー(PZ)の例としては、特にジアルキルアンモニウムアルキルメタクリレート又はメタクリルアミドのアルキルスルホネート又はヒドロキシアルキルスルホネート及びビニルピリジンから誘導されるスルホベタインを挙げることができる。特に有益な実施形態に従えば、ポリマー(PZ)は、ジアルキルアンモニウムメタクリレート及びメタクリルアミドのアルキルスルホネート又はヒドロキシアルキルスルホネートタイプのポリマーである。
【0048】
特に有益な実施形態に従えば、ポリマー(PZ)は、次のポリマー又はそれらの混合物から選択されるポリ双性イオン性ポリマーである:
・上記の式(GZN1)においてAがS(=O)(=O)基を表わすものをベースとする側基を含むベタイン単位の鎖によって形成されたホモポリマー(随意に部分加水分解されたもの)又はコポリマー。このベタイン単位は、次式(−SPE−)及び/又は(−SPP−)をベースとするのが好ましい。
【化22】

・2−ビニルピリジンから誘導された次式のスルホベタインのホモポリマー
【化23】

【0049】
より一般的には、上記の式(−SPE−)、(−SPP−)、(−SHPE−)及び(−SHPP−)を有するものから選択される単位を含むポリマーが大抵の場合本発明に従うポリマー(PZ)としてよく適しているように思われる。このタイプのホモポリマー又はコポリマーであって5000〜3000000g/モル、例えば50000〜1000000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有するものが特に有利である。
【0050】
以下のものが本発明に従って特に有利であることがわかった。
・上記の(−SPE−)単位の鎖から成るポリ(SPE)と称されるポリ(スルホプロピルジメチルアンモニウムメタクリレート)ホモポリマー、並びに(−SPE−)単位及び−[CH2C(−CH3)(−COOH)]−(AMA−)メタクリル酸単位の鎖をベースとするコポリマー。これらのコポリマーは、ポリ(SPE)(AMA)と称され、一般的にランダムポリマーであり、好ましくは20モル%未満、有利には10モル%未満の(−AMA−)単位を含有する。これらのコポリマーは、SPEモノマー及びAMAモノマーの直接共重合によって、又はポリ(SPE)ホモポリマーのSPE単位の部分加水分解(好ましくは20モル%未満、有利には10モル%未満のSPE単位を加水分解する)によって、得ることができる。並びに
・上記の(−SPP−)単位の鎖から成るポリ(SPP)と称されるポリ(スルホプロピルジメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミド)ホモポリマー、並びに(−SPP−)単位及び(−AMA−)メタクリル酸単位の鎖をベースとするコポリマー。これらのコポリマーは、ポリ(SPP)(AMA)と称され、一般的にランダムであり、好ましくは20モル%未満、有利には10モル%未満の(−AMA−)単位を含有する。これらのコポリマーは、SPPモノマー及びAMAモノマーの直接共重合によって、又はポリ(SPP)ホモポリマーのSPP単位の部分加水分解(好ましくは20モル%未満、有利には10モル%未満の(−SPP−)単位を加水分解する)によって、得ることができる。
【0051】
ポリマー(P)
【0052】
本発明に従って用いることができるポリマー組合せ物の第2の成分は、荷電した基を有し、ポリマー(PZ)に結合し得るポリマー(P)である。
【0053】
この第2のポリマー(P)はポリマー(PZ)とは異なるものであり、一般的にイオン性の特徴を有するポリマー、即ち大抵の場合次のものである:
・カチオン性ポリマー(P+):これは、複数のカチオン性電荷を有し且つ一般的に正の総電荷を有するポリカチオンであるのが好ましい;又は
・アニオン性ポリマー(P-):これは、複数のアニオン性基を有し且つ一般的に負の総電荷を有するポリアニオンであるのが好ましい。
【0054】
前記組合せ物は、カチオン性ポリマー(P+)及びアニオン性ポリマー(P-)を含有することができる。ポリマー(P+)及びポリマー(P-)を同時に用いることにより、特に親水性化作用を改善することができ且つ/又は表面処理の均一性を改善することができる。
【0055】
前記ポリマー(P)は、特定的にはポリマー(PZ)と結合することができるポリマーである。従って、ポリマー(PZ)の双性イオン性単位上に存在する最もアクセスしやすい荷電した基の電荷とは逆の電荷を有するポリマーをポリマー(P)として用いるのが一般的に有利である。
【0056】
従って、第1の有益な実施形態に従えば、次のポリマーが本発明のポリマー組合せ物中に用いられる:
ポリマー(PZ)として:双性イオン性単位がカチオン性基よりアクセスしやすいアニオン性基を有するポリマー(PZ(+)-);及び
ポリマー(P)として:カチオン性基を有し且つ一般的に正の総電荷を有するカチオン性ポリマー(P+)。
【0057】
この本発明の第1の実施形態に従えば、ポリマー(PZ(+)-)の双性イオン性単位は、末端アニオン性基(ポリマーの「周縁部において」アクセス可能)及び非末端カチオン性基(従ってポリマーの構造の近くであり、結果としてアクセスしにくい)を有する側基であるのが有利である。この点において、ポリマー(PZ(+)-)はその双性イオン性単位において前記の式(GZN1)、(GZN2)、(GZN3)、(GZN4)、(GZN5)、(GZP1)及び/又は(GZS1)に相当する双性イオン性基を含むのが有利である。特に有利には、ポリマー(PZ)は、この場合、ポリカルボキシベタイン又はより一層好ましくはポリスルホベタイン(有利には式(GZN1)においてAが−S(=O)(=O)基である双性イオン性基を有するもの)である。
【0058】
この第1の実施形態に従えば、ポリマー(PZ(+)-)は、双性イオン性単位に加えて、ポリマー(P+)とポリマー(PZ(+)-)との間の求められる結合を強化するようにポリマー(P+)のカチオン性基と相互作用することができるアニオン性基を有する基を随意に含むことができる。
【0059】
(PZ(+)-)+(P+)のタイプのポリマーの組合せ物中に用いられるカチオン性ポリマー(P+)は、任意のカチオン性ポリマーから選択することができる。このタイプのポリマーは、当業者に知られている。これらは、例えば天然起源のカチオン性ポリマー又は変性(第4級化)カチオン性ポリマー、例えばカチオン性多糖類であることができる。例えば、カチオン性グアール、カチオン性セルロース及びカチオン性澱粉を挙げることができる。これらはまた、合成カチオン性ポリマー、例えば使用条件下においてカチオン性である基(これらの基は常にカチオン性基であるのが好ましい)を有する単位を含むホモポリマー又はコポリマーであることもできる。前記のカチオン性ポリマーは、前記の(PZ(+)-)+(P+)のタイプのポリマーの組合せ中に用いることもでき、本発明に従う他のポリマー組合せ物中に用いることもできる。
【0060】
ポリマー(P+)上に存在させることができるカチオン性単位(又は使用条件下において正電荷をもたらす潜在的にカチオン性の単位)の例としては、次のものを挙げることができる:
●他のエチレン性不飽和モノマーから誘導されるタイプの常にカチオン性の単位、例えば
・アミノアクリロイル又はアクリロイルオキシモノマー、例えばトリメチルアミノプロピルメタクリレートクロリド、トリメチルアミノエチルアクリルアミドクロリド若しくはブロミド又はトリメチルアミノエチルメタクリルアミドクロリド若しくはブロミド、トリメチルアミノブチルアクリルアミドメチルサルフェート若しくはトリメチルアミノブチルメタクリルアミドメチルサルフェート、トリメチルアミノプロピル−メタクリルアミドメチルサルフェート(MES)、(3−メタクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド若しくはメチルサルフェート、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド;
・1−エチル−2−ビニルピリジニウムブロミド、クロリド又はメチルサルフェート;
・N,N−ジアルキルジアリルアミンアリルモノマー、例えばN,N−ジメチルジアリルアンモニウムクロリド(DADMAC);
・ビニルモノマー、例えばビニルベンジルジメチルアンモニウムクロリド又はブロミド(VBTMAC);
・ポリ第4級モノマー、例えばジメチルアミノプロピルメタクリルアミドN−(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド(DIQUAT)又はその高級同族体(TRIQUAT):
【化24】

●エチレン性不飽和モノマーから誘導された常にカチオン性ではない単位、例えば
・α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸のN,N−(ジアルキルアミノωアルキル)アミド、例えばN,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド又はメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノ−3−プロピルアクリルアミド又はメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチルアクリルアミド又はメタクリルアミド
・α,β−モノエチレン性不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル、例えばメタクリル酸ジメチルアミノエチル(DMAM)、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸ジ−t−ブチルアミノエチル、メタクリル酸ジペンチルアミノエチル
・ビニルモノマー、例えばN−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、ビニルベンジルアミン、ビニルベンジルジメチルアミン
・単純な酸又は塩基加水分解によって第1アミン官能基を生成するアミン官能基の前駆体モノマー、例えばN−ビニルホルムアミド又はN−ビニルアセトアミド。
【0061】
これらのカチオン性単位に加えて、ポリマー(P+)は随意に他の単位、例えば以下のものを含むことができる:
・中性単位(即ち元来中性の単位(NE)又は使用条件下で非イオノゲン性(NI)の単位);
・随意としてのアニオン性単位(この場合、好ましくは、アニオン性単位/カチオン性単位のモル比が50%未満、好ましくは40%未満、例えば30%未満であるせいで、ポリマー(P+)が正の総電荷を有するのが有利である)。
【0062】
さらに、一般的にアニオン性種(特にアニオン性ポリマー又は他のアニオン性化合物)を(PZ(+)-)+(P+)タイプのポリマーをベースとする組合せ物中に導入することができるということに留意されたい。しかしながら、これに関しては必要ならば最初にポリマー(PZ(+)-)及び(P+)を混合し、この混合物に第2工程においてアニオン性種を導入することによってこれら3種の化合物を組み合わせるのが好ましい。他方、最初にアニオン性種を導入すると一般的にポリマー(PZ(+)-)とポリマー(P+)との間の結合の形成が妨げられる。
【0063】
本発明のこの変形の範囲内で用いることができる特定の(PZ(+)-)+(P+)組合せ物は、本発明者らが知る限り過去に報告されたことがない独創的なポリマーの組合せである。これらは、
・少なくとも1種のスルホベタイン又はカルボキシベタイン双性イオン性単位をベースとする双性イオン性ポリマー(PZ)(このポリマー(PZ)の総電荷は0又は0以外である);及び
・少なくとも1種のカチオン性ポリマー:
を含む組合せである。
【0064】
別の局面において、本発明はまた、特定ポリマーのこれらの組合せ物にも関する。
【0065】
別の実施形態に従えば、本発明のポリマー組合せ物は、次のポリマーを利用する:
ポリマー(PZ)として:双性イオン性単位がアニオン性基よりアクセスしやすいカチオン性基を有するポリマー(PZ(-)+);及び
ポリマー(P)として:アニオン性基を有し且つ一般的に負の総電荷を有するアニオン性ポリマー(P-)。
【0066】
本発明のこの第2の実施形態に従えば、ポリマー(PZ(-)+)の双性イオン性単位は、末端(アクセス可能な)カチオン性基及び非末端(アクセスしにくい)アニオン性基を有する側基であるのが有利である。従って、ポリマー(PZ(-)+)はそれらの双性イオン性単位において前記の式(GZN6)、(GZP2)及び/又は(GZS2)に相当する双性イオン性基を含むのが有利である。この場合、ポリマー(PZ)はポリホスホベタインであるのが特に有利である。
【0067】
この実施形態においては、ポリマー(PZ(-)+)は、双性イオン性単位に加えて、ポリマー(P-)とポリマー(PZ(-)+)との間の望まれる結合を強化するためにポリマー(P-)のアニオン性基と相互作用することができるカチオン性基を有する基を随意に含むことができる。
【0068】
(PZ(-)+)+(P-)のタイプのポリマーの組合せ物中に用いられるアニオン性ポリマー(P-)は、使用条件下においてアニオン性である基(これらの基は常にアニオン性基であるのが好ましい)を有する単位を含むホモポリマー又はコポリマーである。このタイプのアニオン性ポリマーは、前記の(PZ(-)+)+(P-)のタイプのポリマーの組合せ物中に用いることもでき、本発明に従う他のポリマー組合せ物中に用いることもできる。
【0069】
ポリマー(P-)上に存在させることができるアニオン性単位の例としては、以下のようなエチレン性不飽和モノマーから誘導されるタイプの単位を挙げることができる:
・使用時のpHが当該カルボン酸のpKaより大きい場合の、上に挙げた少なくとも1個のカルボキシル官能基を有するモノマー
・使用時のpHが当該カルボン酸のpKaより大きい場合の、上に挙げたカルボキシレート官能基前駆体モノマー
・少なくとも1個のスルホネート又はサルフェート官能基を有するモノマー、例えばスチレンスルホン酸(東ソー株式会社より販売されているSpinomar NaSS)、(メタ)アリルスルホン酸(Rhodiaより販売されているGeropon MLS/A)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(Lubrizol社より販売されているAMPS)、スルホプロピル(メタ)アクリレート(Raschig社より販売されているSPA及びSPM)又はスルホエチル(メタ)アクリレート(Laporte社より販売されているSEM)並びにそれらの水溶性塩
・少なくとも1個のホスホネート又はホスフェート官能基を有するモノマー、例えばビニルホスホン酸(Rhodia社より販売)、エチレン性不飽和ホスフェートエステル、例えばヒドロキシエチルメタクリレートから誘導されたホスフェート及びポリオキシアルキレンメタクリレートから誘導されたホスフェート並びにそれらの水溶性塩(使用時のpHが当該ホスホネート及びホスフェート官能基のpKaより大きい場合)。
【0070】
これらのアニオン性単位に加えて、ポリマー(P-)は随意に他の単位、例えば以下のものを含むことができる:
・中性単位(即ち元来中性の単位(NE)又は使用条件下で非イオノゲン性(NI)の単位);
・随意としてのカチオン性単位(この場合、好ましくは、アニオン性単位/カチオン性単位のモル比が50%未満、好ましくは40%未満、例えば30%未満であるせいで、ポリマー(P-)が負の総電荷を有するのが有利である)。
【0071】
カチオン性種(特にカチオン性ポリマー又は他のカチオン性化合物)を(PZ(-)+)+(P-)タイプのポリマーをベースとする組合せ物中に導入することができる。しかしながら、これを行うためには、最初にポリマー(PZ(-)+)及び(P-)を混合し、この混合物に第2工程においてカチオン性種を導入することによってこれら3種の化合物を組み合わせるのが好ましい。他方、最初にアニオン性種を導入すると一般的にポリマー(PZ(-)+)とポリマー(P-)との間の結合の生成が妨げられる。
【0072】
本発明のこの第2の変形の範囲内で用いることができる特定の(PZ(-)+)+(P-)組合せ物は、本発明者らが知る限り過去に報告されたことがない独創的なポリマーの組合せである。これらは、
・少なくとも1種のホスホベタイン双性イオン性単位をベースとする双性イオン性ポリマー(PZ)(このポリマーの総電荷は0である);及び
・少なくとも1種のアニオン性ポリマー(P-):
を含む組合せである。
【0073】
これらの特定ポリマーの組合せ物もまた、別の局面に従えば、本発明の特定的な主題を構成する。
【0074】
その正確な性状がどのようであろうと、用いられるポリマー(P)は一般的に3000〜5000000g/モル、好ましくは5000〜3000000g/モル、より一層好ましくは40000〜1000000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。
【0075】
さらに、一般的に用いられるポリマー(PZ)及び(P)がどのようなものであろうと、ポリマー(P)が有する荷電した単位の量対ポリマー(PZ)が有する双性イオン性単位の量の比が0.1〜10、好ましくは少なくとも0.5であって一般的に8未満、例えば1〜5となるような量でこれらのポリマーを用いるのが好ましい。この範囲は一般的に、特に効果的な表面処理をもたらす最適な組合せを得ることを可能にする。
【0076】
第3の特定実施形態に従えば、本発明のポリマー組合せ物は、少なくとも次のポリマーを含有する組合せ物を利用する:
・前記ポリマー(PZ)、
・カチオン性基を(有利には末端基として)有するカチオン性ポリマー(P+)、及び
・アニオン性基を(有利には末端基として)有するアニオン性ポリマー(P-)。
【0077】
この特定実施形態において、ポリマー(PZ)は特に前記の(PZ(+)-)又は(PZ(-)+)タイプのものであることができる。
【0078】
ポリマー(PZ)、(PZ(+)-)、(PZ(-)+)、(P+)及び/又は(P-)に関して上記したことはすべて、この第3の特定実施形態にも当てはまる。特に、ポリマー(P-)は、前記ポリマー(PZ(-)+)及び随意としての(P+)のポリマーが例えば(メタ)アクリル酸又はこの酸の塩の単位を含むポリマーの存在下に置かれる配合物中の成分から由来するものであることができ、そして食器洗い配合物中に存在させることができるということに留意されたい。
【0079】
前記の通りの本発明の第3の特定実施形態の範囲内で用いることができるいくつかの組合せ物は、本発明者らが知る限り従来報告されていなかった独創的なポリマーの組合せ物である。これらは、
・少なくとも1種のホスホベタイン双性イオン性単位をベースとする双性イオン性ポリマー(PZ)(このポリマーの総電荷は0である);及び
・少なくとも1種のカチオン性ポリマー(P+);及び
・少なくとも1種のアニオン性ポリマー(P-):
を含む組合せ物である。
【0080】
本明細書において前記したように、本発明のポリマー組合せ物は、様々な表面の変性処理を実施して、持続性があり且つ特に水及び塩水溶液による洗浄に対して耐性がある表面処理を達成するために、用いることができる。従って、ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物を含有する組成物は、一般的には溶剤媒体(典型的には水又は随意に塩を含有する水溶液又は有機溶剤)中に一般的に1〜100000ppm(10%){一般的に10000ppm(1%)未満、特に1000ppm(0.1%)未満、例えば10〜100ppm}の前記ポリマー組合せ物の重量含有率で含有させた形で、処理すべき表面上に付着させるのが一般的である。この表面処理は、この一般的な場合において、被処理固体の表面特性を有意に変性する特に効果的な表面処理をもたらす。
【0081】
特に、本発明のポリマー組合せ物は、固体材料の親水性表面特性を変性するのに特に好適であることがわかった。固体材料の表面の親水性を調節するためのこの範囲内での本発明のポリマー組合せ物の使用は、本発明の特定的な主題を構成する。
【0082】
固体材料の表面の親水性(これは水による該表面の濡れ性と言い換えられる)は、蒸留水滴と前記表面との間の接触角を測定することによって定量化する(即ち数値で表わす)ことができる。この接触角は、一般的にアルファ角と称され、表面/水/空気の界面における表面と水滴に対する接線との間に存在する角度に相当し、特に接触角を測定するための慣用の装置、例えば静電気態様で用いられるIT Concept社より販売されているSDT-200を用いて、又は濡れ角を測定するためのゴニオメーター、例えばTantecの商品名で販売されている装置を用いて、測定することができる。この範囲内で測定される接触角は、0°〜180°である:
・この角度が0であれば、濡れが完全である。液体は表面全体に完全に広がり、従って支持体と液体との間の強い相互作用がある。
・この角度が180°であれば、濡れ性は0である。液体は球を形成する。液体と支持体との間の接触点は1点しかなく、親和性はない。
【0083】
特定実施形態に従えば、本発明のポリマー組合せ物は、本来疎水性の表面をもっと親水性にするため、即ち本来疎水性の表面の水による濡れ性を高めるために、用いることができる。この点において、本発明のポリマー組合せは特に、50°より大きい接触角を有する表面の濡れ性を高め、達成される親水性の増大は、最初に70°より大きい接触角を有する表面を処理する場合に特に効果的であり、この角度が90°より大きい場合にさらにより一層効果的である。この範囲内で、本発明の処理は、接触角を小さくすること、即ち濡れ性を高めることが可能である。
【0084】
本発明のポリマー組合せ物によるこの表面親水性化は、様々な態様で用いることができる。
【0085】
本発明の親水性化方法は特に、本来は高疎水性であるプラスチック材料の表面{例えばポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン−テレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)又はポリ塩化ビニルのような可塑性又は熱可塑性ポリマーから選択されるポリマーをベースとする表面}に水に対する親和性を付与するために、用いることができる。本発明のポリマー組合せ物を付着させた結果としてのこの水に対する親和性の改善は、前記ポリマー組合せ物を付着させる前及び後にその表面上で水滴が示す接触角を同じ温度及び相対湿度条件下において測定することによって、明らかにすることができる。
【0086】
前記のタイプのポリマーをベースとする表面、特にポリエチレン又はポリプロピレンをベースとする表面は、本来疎水性挙動を示すものであり、水による濡れ性が殆ど又は全くなく、即ち水による接触角が一般的に70°より大きく、大抵の場合90°より大きい(純粋なポリプロピレン表面については約105°)。本発明に従うポリマー組合せ物でこのタイプの表面を処理することにより、これらの接触角を有意に小さくすることができ、水による表面の濡れを可能にする。
【0087】
この点において、本発明の処理は例えば、疎水性プラスチックのファイバーをベースとする材料、特にボイル又はフィルムタイプの不織材料(多孔質又は不連続であることができ、例えば赤ん坊向けおむつ又は類似の製品、例えば女性向け衛生用製品若しくは成人向け失禁用製品の表面材料として用いられるもの)の水に対する親和性を改善するために、用いることができる。
【0088】
この点において、ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物は、不織テキスタイルタイプの材料の濡れ性を高めるために通常用いられている界面活性化合物よりも大いに有益であることがわかった。特に、本発明のポリマー組合せ物は、界面活性剤を用いた場合に遭遇する処理の開始時の問題を回避することによって、より一層安定で且つ持続性がある表面処理を保証する。特に、本発明に従って達成される表面処理は、塩水溶液による洗浄に対して耐性がある。
【0089】
本発明の親水性化処理の別の用途は、自動車産業用の部品(特に車体又は内装の部品)のような疎水性ポリマーをベースとする固体物品の表面の濡れ性を改善することに関する。これに関して、達成される濡れ性の向上は、被処理プラスチック材料部品上へのその後の水性組成物の付着を可能にし又は促進し、これによって特に、こうして処理された部品を、特に(未処理表面を塗装するために必要とされる溶剤塗料よりも環境にいい)非溶剤水性塗料を用いてコーティングすることによって、塗装することが可能になる。
【0090】
本発明の親水性化処理の別の用途は、自動車産業用の部品(特に車体又は内装の部品)、或は家具調度品類、特に市街地施設若しくは庭園施設又はキッチン若しくはバスルームの家具調度品類若しくは構造物のような、疎水性ポリマーをベースとする固体物品の表面の濡れ性を改善することに関する。ポリプロピレン(PP)をベースとするポリマー又はポリエチレン(PE)をベースとするポリマーが特に重要である。これに関しては、達成される濡れ性の増大は特に、水性媒体から生じることがある汚れの形成や発現を抑制するため、洗浄を促進するため、乾燥を促進するため及び/又は汚点を散らしてその視覚的影響を抑えるために、用いることができる。
【0091】
本発明の親水性化処理はまた、水で洗浄されるプラスチック材料製部品、例えば自動食器洗い機で洗浄されるポリオレフィン(PE、PP)製の食品用物品又は容器の乾燥を促進するために用いることもできる。実際、ガラスやセラミックの家庭(台所)用品を食器洗い機で洗浄する場合とは対照的に、ポリオレフィン性の家庭用品は濡れたままである。これは、水滴がそれらの高度に疎水性の表面上に広がらないという事実によって説明される。本発明の処理は、濡れ性を向上させることによって、食器洗い機内においてポリオレフィンタイプのポリマーをベースとする材料にガラスやセラミック製のものと同様の挙動を示させることができ、従って洗浄後に乾燥した表面を得ることを可能にする。水及び塩水溶液による洗浄に対する本発明の表面処理の耐性は、この点において、特に、表面でこのタイプの洗浄、特に洗浄及びすすぎの際に塩水溶液による洗浄が行われる食器洗い機を用いた洗浄の分野において、特に有益である。
【0092】
本発明の親水性化方法はまた、被処理表面に疎油(撥油)性を付与し、これは特に表面に脂汚れが付着するのを防止するために用いることができ、例えばポリマーをベースとする包装やフィルムを処理するために用いることができる。この点において、その親水性化処理はまた、大抵の場合、静電気の電荷の流れの改善ももたらし、これは特に被処理フィルム又は包装上への塵や埃の付着を防止することを可能にする。
【0093】
本来疎水性の表面に対する水性組成物の付着を可能にし又はその付着効率を改善して、本来疎水性の表面を水で洗浄したものの乾燥を促進し、本来疎水性の表面の汚染を防止するためのポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物のこれらの様々な用途は、この点において得られた変性された表面を有する材料と同様に、本発明の別の主題を構成する。
【0094】
別の実施形態に従えば、本発明のポリマー組合せ物は、逆に、本来親水性の表面の濡れ特性を低下させるため(即ちその元来の親水性を低下させるため)に用いることができる。この点において、被処理固体はその初期接触角が40°未満、好ましくは20°未満、より一層好ましくは10°未満のものであるのが有利であり、本発明の疎水性化処理は、本来水に非常に濡れやすい表面を用いる時に、特に有意義である。
【0095】
この表面疎水性化処理は特に、ガラス表面、又は金属表面、例えばアルミニウム若しくはスチール表面を疎水性にするために、用いることができる。
【0096】
さらに別の局面に従えば、本発明のポリマー組合せ物は、固体材料の表面がフィルム形成性(例えば塗料)組成物又は接着剤(糊)組成物を受け取り且つ/又は保持する能力を変性するために用いることができる。この本発明のポリマー組合せ物の特定用途は、本発明のさらに別の主題を構成する。
【0097】
付着したフィルムの保持性は、例えばAdamel-Lhomagry DY-30ダイナモメーターを用いて所定の剥離速度で90°の角度で付着フィルムの剥離強度を測定することによって、定量化することができ、この剥離強度が大きいほど表面上に付着したコーティングの安定性がより一層高いということになる。
【0098】
この点において、選択したポリマー(PZ)及び(P)並びにそれらのそれぞれの割合に応じて、本発明のポリマー組合せ物は、フィルム形成性若しくは粘着性組成物の塗布性を改善するため及び/又は被処理表面上に付着したフィルムのその後の保持性を改善するため、或は逆に、フィルム形成性若しくは粘着性組成物の塗布効力を下げるため及び/又は前記表面上にこうして得られる組成物の付着濃度を下げるために、用いることができる。
【0099】
付着物の塗布効力及びその後のその保持性の調節は、特に、ポリマーのような疎水性表面、特にポリプロピレン又はポリエチレン表面上への水性組成物(例えば非溶剤系塗料)の付着を促進するために、用いることができる。
【0100】
逆に、本発明のポリマー組合せ物は、被処理表面上へのその後の塗料の付着を防止するため、又は少なくとも前記表面上に付着した塗料の保持性を低下させるために、用いることができる。この処理は、例えば落書きの付着から壁を保護することを可能にする。
【0101】
この点において、本発明者らは、前記のタイプの2種のポリマー(PZ)及び(P)が、これら2種のポリマーの間の比及びそれらのそれぞれの分子量を適切に調節することを条件として、所定の表面について、フィルム形成性及び/又は粘着性組成物の付着効率を変性し、達成された付着の保持性を変性するために組合せ状で用いることができることを見出した。
【0102】
より正確には、本発明者らは、所定の比で用いた前記のタイプの2種の所定のポリマー(PZ)及び(P)について、添付した図2に示したタイプの図を定めることができることを見出した。この図は、境界の面の両側の2つの領域、即ち付着及びその後の接着の効力が促進される第1の領域、並びに付着及びその後の接着の効力が逆に低減する領域を、体系的に示している。図2に示したものと同様の図が、上記のタイプのすべてのポリマー(PZ)及び(P)について観察される。所定の固体材料の表面特性を変性することを研究している専門家にとっては、このタイプの図を定めて、付着及び接着特性の向上を達成しようとしているのか低減を達成しようとしているのかに応じて、所定の比について用いられるべきポリマー(PZ)及び(P)の分子量を決定することができる。
【0103】
さらに、本発明の組合せ物は、活性成分を被処理表面上に固定するのに有利に用いることができる。この場合、用いられるポリマー組合せ物に、前記活性成分を含有させる。この活性成分は、例えば、ポリマー(P)又は(PZ)の一方であって、必要ならば前記の基に加えて特定の活性(例えば抗UV効果、又は着色剤、又は殺生物活性)を与える官能基を含むものであることができる。別法として、ポリマー(P)又は(PZ)の組合せ物に追加成分として活性成分を含有させることもでき、この追加の化合物はポリマー(PZ)及び(P)の一方及び/又は他方と相互作用を発揮することができる化合物であるのが好ましい。従って、これは例えば、ポリマー(PZ)及び(P)上に存在するイオン性基の全部又は一部と錯化することができるイオン性化合物であることができる。(PZ(-)+)+(P-)タイプの組合せ物において、この追加の化合物はカチオン性化合物であるのが有利である。逆に(PZ(+)-)+(P+)タイプの組合せ物の場合、この追加の化合物はアニオン性化合物であるのが有利である。
【0104】
一般的に、本発明は任意のタイプの表面に対して利用でき、表面の親和性の違いにほとんど影響されない。この万能性が多くの用途を可能にし、有為の有益性を示す(それぞれの表面について異なる処理を検討して施す必要がない)。
【0105】
本発明のさらなる局面及び利点は、以下に与えた例示的実施例及び添付した図面からより一層明らかになるであろう。添付図面において、
・図1は、例2のポリマー組合せ物によって変性されたシリカ表面の、原子間力顕微鏡で示された写真である。この写真は、5μm×5μmの寸法の材料の正方形の面に、離散したコアセルベートの形のポリマー組合せ物をベースとする構造化付着物が見出されることを示している。
・図2は、ポリ(SPP)タイプのポリマー+ポリ(DADMAC)タイプのポリマーのSPP/DADMACのモル比が5である組合せ物について明らかにされたポリエチレンに対する接着性のグラフを示す。
【実施例】
【0106】
以下の実施例で用いた略号は、次の通りである。
【0107】
・SEP:プロピルスルホネートジメチルアンモニウムエチルメタクリレート
・ポリ(SEP): ポリ(プロピルスルホネートジメチルアンモニウムエチルメタクリレート)ポリマー(これは、特にヨーロッパ特許公開第1594945号公報に記載された方法に従って調製することができる。)
・SPP:スルホプロピルジメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミド
・ポリ(SPP):ポリ(スルホプロピルジメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミド)ポリマー(これは、特にヨーロッパ特許公開第1594945号公報に記載された方法に従って調製することができる。)
・DADMAC:ジアリルジメチルアンモニウムクロリド
・ポリ(DADMAC):ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)ポリマー
・DP:ポリマーの平均重合度
・MW:ポリマーの分子量
【0108】
例1
【0109】
プラスチック材料表面の水による濡れ性の、ポリ(SPP)及びポリ(DADMAC)をベースとする組成物C1による促進
自動食器洗い機中での乾燥
【0110】
・組成物C1の調製
【0111】
1リットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水627g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで、透析して乾燥させたDP=3425及びMW=1000kg/モルを有するポリ(SPP)1.88gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて120分間電磁式で撹拌した。
【0112】
次いで、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)15.6gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて15分間撹拌した。
【0113】
こうして、コアセルベートの形にあり、DADMAC/SPPモル比(添加したDADMACモノマー単位の数対添加したSPP単位の数の比)が3であるポリマーの組合せ物を含む組成物が得られた。
【0114】
・対照用組成物T1−1及びT1−2の調製
【0115】
比較のために、次の対照例を調製した:
【0116】
対照用組成物T1−1:ポリ(DADMAC)なしのポリ(SPP)
【0117】
1リットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水100g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで組成物C1において用いた透析して乾燥させたポリ(SPP)5gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて120分間電磁式で撹拌した。
【0118】
対照用組成物T1−2:ポリ(SPP)なしのポリ(DADMAC)
【0119】
1リットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水75g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで組成物C1の調製において用いた20%ポリ(DADMAC)水溶液25gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて15分間撹拌した。
【0120】
プラスチック材料表面の濡れ性の変性及び食器洗い機中での乾燥
【0121】
次の3種のプラスチック材料表面S1−1、S1−2及びS1−3を試験した(家庭内用途において通常見出される表面):
S1−1:メラミン板
S1−2:スチレン−アクリロニトリルボックス
S1−3:タッパーウェア
【0122】
これらの表面を自動食器洗い機中で様々な処理に付した。これらの処理はそれぞれの場合において次の2つの工程(i)及び(ii)を含む:
(i)未処理の試験表面を最初に食器洗い機中で次の手順を含む洗浄サイクルで予備洗浄した:
・トリポリリン酸ナトリウム(STPP)を63.8重量%;Simet AGを35重量%;antarox B79Rを0.6重量%;そしてantarox B12DFを0.6重量%含む高pH洗浄用溶液によって50℃において洗浄し;次いで
・クエン酸及び純水ですすぎ;次いで
・「Somat 3in1」の名称で販売されている洗剤で洗浄する;
次いで
(ii)こうして予備洗浄した表面を第2の完全洗浄サイクルに付し、その際に、50℃における洗浄工程の開始時に下記の表1に挙げた組成物の内の1つを添加した(Somat 3in1のタブレット及び/又は組成物C1、T1−1若しくはT1−2)。
【0123】
各処理の完了時に表面を検査した。表面が乾燥しているように見えるかどうかを評価し、従って得られた表面に対して水がどのように作用するかを次の−2〜+2の評価尺度に従って評価した:
(−2):表面が非常に疎水性であり、水滴が表面上を流れた
(−1):表面が疎水性であり、水滴が表面に付着した
(0):表面が中性であり、水の形跡が存在し、素早く引いた
(+1):表面が親水性であり、水の薄膜が形成して素早く引いた
(+2):表面が非常に親水性であり、水が引くことなく全体的に水の薄膜が形成した。
【0124】
観察結果を、下記の表1に報告する。
【0125】
【表1】

【0126】
この表1において、与えられた評点が対照例のものと比較して高い場合に、表面が効果的に親水性化されたと解釈される。
【0127】
かくして、この表1は、組成物C1(単独で又はSomat 3in1との組合せとして)の存在下で実施された洗浄が疎水性表面の親水性を改善することを示している。
【0128】
この表1はまた、組成物C1中のポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)の組合せ物によって達成されるこの効果がポリ(SEP)又はポリ(DADMAC)ポリマーのいずれか単独では得られず、これら単独では疎水性表面の親水性を改善しないということもはっきり示している。
【0129】
例2
【0130】
ガラス表面の水による濡れ性の、ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)をベースとする組成物による制御
【0131】
モル比が異なるポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)の組合せ物をベースとする次の3つの組成物を調製した:
【0132】
・組成物C2−1
【0133】
250ミリリットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水100g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで、透析して乾燥させたDP=1611及びMW=470kg/モルを有するポリ(SEP)0.3gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて120分間電磁式で撹拌した。
【0134】
次いで、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる10重量%溶液)0.34gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて15分間撹拌した。
【0135】
こうして、コアセルベートの形にあり、DADMAC/SEPモル比(添加したDADMACモノマー単位の数対添加したSEP単位の数の比)が0.2であるポリマーの組合せ物を含む組成物が得られた。
【0136】
・組成物C2−2
【0137】
250ミリリットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水100g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで、透析して乾燥させたDP=1611及びMW=470kg/モルを有するポリ(SEP)0.3gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて120分間電磁式で撹拌した。
【0138】
次いで、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる10重量%溶液)0.85gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて15分間撹拌した。
【0139】
こうして、コアセルベートの形にあり、DADMAC/SEPモル比が0.5であるポリマーの組合せ物を含む組成物が得られた。
【0140】
・組成物C2−3
【0141】
250ミリリットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水100g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで、透析して乾燥させたDP=1611及びMW=470kg/モルを有するポリ(SEP)0.3gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて120分間電磁式で撹拌した。
【0142】
次いで、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる10重量%溶液)5.1gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて15分間撹拌した。
【0143】
こうして、コアセルベートの形にあり、DADMAC/SEPモル比が3であるポリマーの組合せ物を含む組成物が得られた。
【0144】
・組成物C2−4
【0145】
250ミリリットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水100g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで、透析して乾燥させたDP=1611及びMW=470kg/モルを有するポリ(SEP)0.3gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて120分間電磁式で撹拌した。
【0146】
次いで、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる10重量%溶液)16.95gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて15分間撹拌した。
【0147】
こうして、コアセルベートの形にあり、DADMAC/SEPモル比が10であるポリマーの組合せ物を含む組成物が得られた。
【0148】
比較のために、次の対照例を調製した:
【0149】
対照用組成物T2:ポリ(DADMAC)なしのポリ(SEP)
【0150】
1リットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水100g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで組成物C2−1〜C2−3において用いた透析して乾燥させたポリ(SPP)0.3gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて120分間電磁式で撹拌した。
【0151】
上で調製した組成物C2−1、C2−2、C2−3、C2−5及びT2を、ガラス表面を構成する酸化されたシリコンウエハーの表面を変性するために用いた。
【0152】
この目的で、各組成物を最終ポリマー濃度が25ppmになるまで水で希釈し、次いでこの組成物を酸化されたシリコンウエハーの表面に反射率計セル中で制御された態様で30分間接触させた。こうして処理されたウエハーを乾燥させた後に、脱イオン水の液滴をその表面に付着させ、接触角を測定した。
【0153】
次いで被処理ウエハーの表面を0.1重量%濃度のNaCl水溶液で洗浄し、その後にその表面上の水の接触角を再び測定した。
【0154】
得られた結果を下記の表2に報告する。この表2は、製造された付着物が水との接触角(最初の未処理表面については3°未満)を増大させる(これは水による表面の濡れ性が低下することを意味する)ことを示し、しかもこれがDADMAC/SEPモル比と共に増大することを示しており、従ってガラスタイプの表面の親水性が本発明に従うポリマー組合せ物によって制御できることを示している。
【0155】
この表2はまた、ポリ(DADMAC)+ポリ(SEP)組合せ物(組成物C2−1〜C2−3)を用いて達成された表面処理が塩水による洗浄後にさえも安定であり続けることを示している。これに対して、ポリ(SEP)単独による処理は一応は表面の疎水性の増大をもたらすが、しかしこの効果は、表面を塩水で洗浄した後には維持されない(洗浄後の濡れ角は最初のむき出しの表面のものと同じだった)。
【0156】
【表2】

【0157】
C2−3組成物によって変性された表面を、NaCl溶液ですすぐ前に原子間力顕微鏡によって観察した。添付した図1は、得られた表面の5μm×5μmのサンプルを示す写真である(位相差観察)。この写真は、本発明に従う表面処理によって得られた構造化表面のタイプをはっきり示しており、これは、平均直径約20nmの物体(ポリ(DADMAC)+ポリ(SEP)の組合せ物をベースとするコアセルベート)を有する。
【0158】
例3
【0159】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)をベースとする組成物による、ポリエチレン表面に対する接着性の促進
【0160】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)の組合せ物をベースとし、用いたポリマーについてのモル比及びDP値(及び従ってMW値)が異なる次の4つの組成物を調製した:
【0161】
・組成物C3−1
【0162】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液1.44g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=285;MW=47kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)8.3g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液390.3g。
【0163】
こうして、DADMAC/SEPモル比が4.9であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物0.56重量%を含む組成物が得られた。
【0164】
・組成物C3−2
【0165】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=3860及びMW=1000kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度28.5重量%の水溶液11.6g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=1658;MW=275kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)23.0g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液365.4g。
【0166】
こうして、DADMAC/SEPモル比が2.5であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物2.0重量%を含む組成物が得られた。
【0167】
・組成物C3−3
【0168】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液9.6g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=285;MW=47kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)55.35g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液335.05g。
【0169】
こうして、DADMAC/SEPモル比が4.9であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.8重量%を含む組成物が得られた。
【0170】
・組成物C3−4
【0171】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液28.8g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)1.66g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液369.5g。
【0172】
こうして、DADMAC/SEPモル比が0.05であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.1重量%を含む組成物が得られた。
【0173】
次いで、組成物C3−1〜C3−4のそれぞれを用いて、100mm×50mm2のポリエチレンサンプルを前記組成物400ミリリットル中に65℃において45分間浸漬し、次いでこのサンプルを水400ミリリットルで10回すすぎ、次いで制御された湿度(相対湿度50%)下で23℃においてそれらを乾燥させることによって、このサンプルの表面を変性した。
【0174】
前記の表面に対する組成物の接着性を定量化するために、剥離試験を実施した。この目的で、imeMed Labeling Systems社から入手した粘着テープのストリップを被検ポリエチレンサンプルの全長(100mm)にわたって敷き、E.T.S. Holland社から入手した2kgの金属ローラーを前記粘着テープ上に転がした(20秒間ずつ5回)。このテープに対して、100 Nセンサーを備えたADAMEL Lhomargy社製DY30装置を用いて90°の角度において調節された速度vで剥離試験を行った。vに依存する剥離力F(ltape,v)を、剥離したテープの長さltapeの関数として、テープを剥離するのに必要な力に相当する横這い値Fplateau(v)に達するまで、測定した。それぞれ20、50及び100mm/分の速度vにおいてFplateau(v)を測定し、値v=0について外挿法でFplateau0と称される力Fplateau(v=0)を求めた。これは、熱力学的条件において速度0でテープを剥離するのに必要な理論上の力を表わす。
【0175】
比較のために、同様のポリエチレンであってしかし未処理のものに対しても実験を実施し、次の比に相当する接着力の相対的超過Eを計算した:
【数1】

【0176】
この値が負の時は、ストリップを剥離するのに必要な力がこの処理をしていないストリップを剥離するのに必要な力より大きい、即ちこの処理が接着性を促進したことになる。逆に正の時には、この処理が接着性に対して負の影響を及ぼしたことを示す。
【0177】
例3について記載した方法は、任意の表面に対して本発明に従う任意のポリマー組合せ物についての接着性に対する効果を試験するために一般的に用いることができる。
【0178】
この例について得られた結果を下記の表3に報告する。この表3は、負の相対的超過を示し、従って接着性の促進を示した。
【0179】
【表3】

【0180】
例4
【0181】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)をベースとする組成物による、ポリエチレン表面に対する接着性の低減
【0182】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)の組合せ物をベースとし、用いたポリマーについてのモル比及びDP値(及び従ってMW値)が異なる次の4つの組成物を調製した:
【0183】
・組成物C4−1
【0184】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=1868及びMW=545kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度24.3重量%の水溶液27.2g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=1658;MW=275kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)0.915g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液371.9g。
【0185】
こうして、DADMAC/SEPモル比が0.05であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物1.70重量%を含む組成物が得られた。
【0186】
・組成物C4−2
【0187】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液28.8g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=285;MW=47kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)1.66g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液369.5g。
【0188】
こうして、DADMAC/SEPモル比が0.05であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.1重量%を含む組成物が得られた。
【0189】
・組成物C4−3
【0190】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=1868及びMW=545kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度24.3重量%の水溶液24.7g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=1658;MW=275kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)41.9g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液333.4g。
【0191】
こうして、DADMAC/SEPモル比が2.47であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.6重量%を含む組成物が得られた。
【0192】
・組成物C4−4
【0193】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=3860及びMW=1000kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度28.5重量%の水溶液2.11g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)8.3g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液389.6。
【0194】
こうして、DADMAC/SEPモル比が4.9であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物0.565重量%を含む組成物が得られた。
【0195】
例3におけるように、次いで組成物C4−1〜C4−4のそれぞれを100mm×50mm2のポリエチレンサンプルの表面を変性するために用い、接着力の相対的超過Eを測定し、これを下記の表4に報告する。この表4は、正の相対的超過Eを示し、従って接着性の低減を示している。
【0196】

【0197】
例5
【0198】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)をベースとする組成物による、ガラス表面に対する接着性の促進
【0199】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)の組合せ物をベースとし、用いたポリマーについてのモル比及びDP値(及び従ってMW値)が異なる次の4つの組成物を調製した:
【0200】
・組成物C5−1
【0201】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液5.8g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)0.33g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液393.9g。
【0202】
こうして、DADMAC/SEPモル比が0.05であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物0.6重量%を含む組成物が得られた。
【0203】
・組成物C5−2
【0204】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液2.9g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=285;MW=47kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)0.16g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液396.9g。
【0205】
こうして、DADMAC/SEPモル比が0.05であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物0.3重量%を含む組成物が得られた。
【0206】
・組成物C5−3
【0207】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液9.6g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=285;MW=47kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)55.35g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液335.05g。
【0208】
こうして、DADMAC/SEPモル比が4.9であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.8重量%を含む組成物が得られた。
【0209】
・組成物C5−4
【0210】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=3860及びMW=1000kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度28.5重量%の水溶液4.2g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)0.33g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液335.05g。
【0211】
こうして、DADMAC/SEPモル比が0.1であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物0.3重量%を含む組成物が得られた。
【0212】
例3及び4と同様の方法で、組成物C5−1〜C5−4のぞれぞれを次いで表面(今回はガラス)を変性するために用い、接着力の相対的超過Eを測定し、これを下記の表5に報告する。この表5は、負の相対的超過Eを示し、従って接着性の増大を示している。
【0213】
【表5】

【0214】
例6
【0215】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)をベースとする組成物による、ガラス表面に対する接着性の低減
【0216】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)の組合せ物をベースとし、用いたポリマーについてのモル比及びDP値(及び従ってMW値)が異なる次の4つの組成物を調製した:
【0217】
・組成物C6−1
【0218】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=1868及びMW=545kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度24.3重量%の水溶液24.7g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=1658;MW=275kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)41.9g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液333.4g。
【0219】
こうして、DADMAC/SEPモル比が2.5であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.6重量%を含む組成物が得られた。
【0220】
・組成物C6−2
【0221】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液9.6g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)41.9g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液333.4g。
【0222】
こうして、DADMAC/SEPモル比が3.7であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.8重量%を含む組成物が得られた。
【0223】
・組成物C6−3
【0224】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=154及びMW=45kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度41.6重量%の水溶液28.8g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=285;MW=47kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)1.66g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液369.5g。
【0225】
こうして、DADMAC/SEPモル比が0.05であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物3.1重量%を含む組成物が得られた。
【0226】
・組成物C6−4
【0227】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・DP=3860及びMW=1000kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度28.5重量%の水溶液2.11g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=2778;MW=450kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)8.3g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液389.6g。
【0228】
こうして、DADMAC/SEPモル比が4.9であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物0.565重量%を含む組成物が得られた。
【0229】
例5におけるように、組成物C6−1〜C6−4のぞれぞれを次いでガラス表面を変性するために用い、接着力の相対的超過Eを測定し、これを下記の表6に報告する。この表6は、正の相対的超過Eを示し、従って接着性の低減を示している。
【0230】
【表6】

【0231】
例7
【0232】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)をベースとする組成物による、アルミニウム表面の濡れ性の促進
【0233】
ポリ(SEP)及びポリ(DADMAC)の組合せをベースとする次の組成物C7を調製した。
【0234】
・組成物C7
【0235】
400ミリリットルのプラスチック材料容器に以下のものを添加した:
・Somat 3in1タブレットを溶解させた水5リットル;次いで
・DP=1868及びMW=545kg/モルを有するポリ(SEP)の濃度24.3重量%の水溶液24.7g、並びに電磁式撹拌棒;次いで
・300rpmにおいて15分間電磁式に撹拌しながら、ポリ(DADMAC)(DP=1658;MW=275kg/モル)の水溶液(Aldrich社から商品として入手できる20重量%溶液)41.9g;次いで
・Somat 3in1タブレットを水5リットル中に溶解させることによって調製された溶液333.4g。
【0236】
こうして、DADMAC/SEPモル比が3であるポリ(SEP)とポリ(DADMAC)とのポリマーの組合せ物を含む組成物が得られた。
【0237】
アルミニウム板を得られたC7組成物5リットル中に65℃において45分間浸漬し、次いでそれらを組成物から取り出して室温において乾燥させることによって、処理した。次いでこの表面に水滴を付着させ、接触角を測定した。未処理のアルミニウム表面については80°だったのに対して、処理後の接触角は14°だった。これは、処理後に水による濡れ性が全体的に改善されたことを示す。
【0238】
例8
【0239】
水によるプラスチック材料表面の濡れ性の、ポリ(SPP)、ポリ(DADMAC)及びポリ(アクリル酸ナトリウム)をベースとする組成物C8による促進
【0240】
自動食器洗い機中での乾燥
【0241】
・組成物C8の調製
【0242】
次の原料溶液を用いた:
・ポリ(SPP):DP=154、濃度2重量%、pH=2。
・ポリ(DADMAC):DP=1698(Aldrich社製、MW=275000)、濃度5重量%、pH=5。
・ポリ(アクリル酸ナトリウム):DP=22(Aldrich、MW=2100)、濃度2.5重量%、pH=8。
【0243】
0.5リットルのプラスチック材料容器中に脱イオン水96.25g及び電磁式撹拌棒を導入し、次いで前記のポリ(SPP)の原料溶液17.56gを添加した。こうして製造された混合物を300rpmにおいて5分間電磁式で撹拌した。
【0244】
次いで前記のポリ(DADMAC)の原料溶液2.72gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて5分間撹拌した。
【0245】
次いで前記のポリ(アクリル酸ナトリウム)の原料溶液0.52gを添加し、次いでこの媒体を300rpmにおいて5分間撹拌した。
【0246】
こうして、コアセルベートの形にあるポリマーの組合せ物を含む組成物が得られた。
【0247】
プラスチック材料表面の濡れ性の変性及び食器洗い機中での乾燥
【0248】
次の3種のプラスチック材料表面S8−1、S8−2及びS8−3を試験した(家庭内用途において通常見出される表面):
S8−1:ポリ(プロピレン)板
S8−2:ポリ(エチレン)板
S8−3:スチレン−アクリロニトリル(SAN)ボックス
【0249】
これらの表面をMiele Prima自動食器洗い機中で様々な処理に付した。これらの処理はそれぞれの場合において次の2つの工程(i)及び(ii)を含む:
(i)未処理の試験表面を最初に食器洗い機中で次の手順を含む洗浄サイクルで予備洗浄した:
・トリポリリン酸ナトリウム(STPP)を63.8重量%;Simet AGを35重量%;antarox B79Rを0.6重量%;そしてantarox B12DFを0.6重量%含む高pH洗浄用溶液によって50℃において洗浄し;次いで
・クエン酸及び純水ですすぎ;次いで
・「Somat 3in1」の名称で販売されている洗剤で洗浄する;
次いで
(ii)こうして予備洗浄した表面をMiele Prima食器洗い機中で第2の完全洗浄サイクル(50℃サイクル)に付し、その際に、50℃における洗浄工程の開始時に下記の表7に挙げた組成物の内の1つを添加した(Reckitt and Benckiser社よりフランスで販売されているCalgonit 5 in 1を前記の組成物C8と共に又はなしで)。
【0250】
各処理の完了時に表面を検査した。表面が乾燥しているように見えるかどうかを評価し、従って得られた表面に対して水がどのように作用するかを次の−2〜+2の評価尺度に従って評価した:
(−2):表面が非常に疎水性であり、水滴が表面上を流れた
(−1):表面が疎水性であり、水滴が表面に付着した
(0):表面が中性であり、水の形跡が存在し、素早く引いた
(+1):表面が親水性であり、水の薄膜が形成して素早く引いた
(+2):表面が非常に親水性であり、水が引くことなく全体的に水の薄膜が形成した。
【0251】
観察結果を、下記の表7に報告する。
【0252】
【表7】

【0253】
この表7において、与えられた評点が対照例のものと比較して高い場合に、表面が効果的に親水性化されたと解釈される。
【0254】
かくして、この表7は、組成物C8の存在下で実施された洗浄が疎水性表面S8−2及びS8−3の親水性を著しく改善し、疎水性表面S8−1の親水性の改善はそれより低いということを示している。
【図面の簡単な説明】
【0255】
【図1】例2のポリマー組合せ物によって変性されたシリカ表面の、原子間力顕微鏡で示された写真である。
【図2】ポリ(SPP)タイプのポリマー+ポリ(DADMAC)タイプのポリマーのSPP/DADMACのモル比が5である組合せ物について明らかにされた、ポリエチレンに対する接着性のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体材料の表面特性を変性するための、
・双性イオン性単位を含有する第1のポリマー(PZ);及び
・荷電した基を有し、前記第1のポリマー(PZ)に結合し得る別のポリマー(P):
を含有するポリマー組合せ物の使用。
【請求項2】
処理される表面がポリマーをベースとする表面、ガラスをベースとする表面又は金属をベースとする表面である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ポリマー(PZ)中に存在するポリ双性イオン性単位が
(i)少なくとも表面処理条件下において負電荷を有する少なくとも1個の基(G-);及び
(ii)少なくとも表面処理条件下において正電荷を有する少なくとも1個の基(G+):
を含み、前記の基(G-)及び(G+)を前記双性イオン性単位中の側鎖が有する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記ポリマー(PZ)が
・次の一般式(GZN1)〜(GZN6)に相当する一価の窒素含有双性イオン性基:
【化1】

・次の一般式(GZP1)及び(GZP2)に相当する一価のリン含有双性イオン性基:
【化2】

・次の一般式(GZS1)及び(GZS2)に相当する一価の硫黄含有双性イオン性基:
【化3】

[ここで、式(GZN1)〜(GZN6)、(GZP1)、(GZP2)、(GZS1)及び(GZS2)中の各種の基は、次の意味を持つ:
・Rは1〜15個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上のヒドロキシル基で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状アルキレン基又はベンジレン基を表わし、
・R1、R2、R5及びR7は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立して1〜7個の炭素原子を有するアルキル基を表わし、
・R3及びR4は窒素原子と一緒になって窒素含有ヘテロ環(随意に1個以上の他のヘテロ原子を含むもの)を形成し、
・R6は窒素原子と一緒になって窒素含有ヘテロ環(随意に1個以上の他のヘテロ原子を含むもの)を形成し、
・AはS(=O)(=O)、OP(=O)(O)、OP(=O)(OR')、P(=O)(OR')又はP(=O)(R')二価基を表わし、ここで、R'は1〜7個の炭素原子を有するアルキル基又はフェニル基を表わし、
・A'は二価基−O−P(=O)−O−を表わし、
・W(-)は次式:
【化4】

の内の1つに相当するエテノレート官能基を表わす]
から選択される少なくとも1個の一価基を側鎖として含有する双性イオン性単位を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の使用。
【請求項5】
前記ポリマー(PZ)が双性イオン性単位の繰返しのみをベースとし、他のタイプの単位を持たないものである、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
前記ポリマー(PZ)が双性イオン性単位に加えて、中性単位、即ち元来中性の単位若しくは表面処理条件下において非イオノゲン性の単位、及び/又はイオン性単位から選択されるその他の単位を含むものである、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
前記ポリマー(PZ)において双性イオン性単位/全ポリマー単位のモル比が少なくとも50%である、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
前記ポリマー(PZ)が、それ以下ではポリマー(PZ)が水に不溶であり、それ以上ではポリマー(PZ)が水溶性になる臨界温度Tcを有し、この臨界温度Tcが好ましくは0〜100℃の範囲である、請求項1〜7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
前記ポリマー(PZ)が3000〜5000000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
前記ポリマー(PZ)が、次のポリマー:
・前記の式(GZN1)においてAがS(=O)(=O)基を表わすものに相当する側基を含むベタイン単位の鎖によって形成されたホモポリマー若しくはコポリマー、及び/又は
・2−ビニルピリジンから誘導された次式のスルホベタインのホモポリマー
【化5】

又はそれらの混合物から選択されるポリ双性イオン性ポリマーである、請求項1〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
前記ポリマー(PZ)が次式(−SPE−)及び(−SPP−):
【化6】

に相当するベタインの鎖によって形成されるホモポリマー又はコポリマーから選択される双性イオン性ポリマーである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記ポリマー(PZ)が、その双性イオン性単位がカチオン性基よりアクセスしやすいアニオン性基を有するポリマー(PZ(+)-)であり;そしてポリマー(P)が、(有利には末端の)カチオン性基を有するカチオン性ポリマー(P+)である、請求項1〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
前記ポリマー(PZ(+)-)がその双性イオン性単位において請求項4に記載の式(GZN1)、(GZN2)、(GZN3)、(GZN4)、(GZN5)、(GZP1)及び/又は(GZS1)に相当する双性イオン性基を含む、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
前記ポリマー(PZ)が、その双性イオン性単位がアニオン性基よりアクセスしやすいカチオン性基を有するポリマー(PZ(-)+)であり;そしてポリマー(P)が、(有利には末端の)アニオン性基を有するアニオン性ポリマー(P-)である、請求項1〜11のいずれかに記載の使用。
【請求項15】
前記ポリマー(PZ(-)+)がそのポリ双性イオン性単位において請求項4に記載の式(GZN6)、(GZP2)及び/又は(GZS2)に相当する双性イオン性基を含む、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
ポリマー(P)が有する荷電した単位の量対ポリマー(PZ)が有する双性イオン性単位の量の比が0.1〜10、好ましくは少なくとも0.5である、請求項1〜15のいずれかに記載の使用。
【請求項17】
前記ポリマー組合せ物が、
・前記ポリマー(PZ)、
・カチオン性基(有利には末端のカチオン性基)を有するカチオン性ポリマー(P+)、及び
・アニオン性基(有利には末端のアニオン性基)を有するアニオン性ポリマー(P-
を含む、請求項1〜16のいずれかに記載の使用。
【請求項18】
固体材料の表面の親水性を調節するための、請求項1〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項19】
本来疎水性の表面、好ましくは水との初期接触角が少なくとも40°、好ましくは少なくとも50°である表面の、水による濡れ性を高めるための、請求項18に記載の使用。
【請求項20】
疎水性プラスチックファイバーをベースとする材料(特に、例えばおむつに用いられるタイプの不織材料)の水に対する親和性を改善するため;本来疎水性の表面への水性組成物の付着を可能にし若しくはその付着効率を高めるため;水で洗われた本来疎水性の表面の乾燥、例えば食器洗い機中で洗浄された食品用物品又は容器の乾燥を促進するため;又は本来疎水性の表面の汚染を防止するため:の請求項19に記載の使用。
【請求項21】
本来親水性の表面、好ましくは40°未満、好ましくは30°未満の濡れ角度を有する表面の、水による濡れ性を下げるための、請求項18に記載の使用。
【請求項22】
固体材料の表面がフィルム形成性又は粘着性組成物の付着物を受け取り且つ/又は保持する能力を変性するための、請求項1〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項23】
前記ポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物が活性成分を含み、この活性成分が被処理表面に固定される、請求項1〜17のいずれかに記載の使用。
【請求項24】
請求項1〜17のいずれかに記載のポリマー(PZ)及び(P)の組合せ物を含有する組成物を表面に付着させることを含む、固体材料の表面の処理方法。
【請求項25】
前記組成物が、溶剤媒体内に前記ポリマー組合せ物を1ppm〜100000ppmのポリマー組合せ物重量濃度で含有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の方法によって得られる変性された表面を有する固体材料。
【請求項27】
特に請求項24又は25に記載の方法を実施するために利用可能な、
・少なくとも1種のスルホベタイン又はカルボキシベタイン双性イオン性単位をベースとし、総電荷が0又は0以外である、双性イオン性ポリマー(PZ);及び
・少なくとも1種のカチオン性ポリマー(P+):
を含む、ポリマー組合せ物。
【請求項28】
特に請求項24又は25に記載の方法を実施するために利用可能な、
・少なくとも1種のホスホベタイン双性イオン性単位をベースとし、総電荷が0である双性イオン性ポリマー(PZ);及び
・少なくとも1種のアニオン性ポリマー(P-):
を含む、ポリマー組合せ物。
【請求項29】
特に請求項24又は25に記載の方法を実施するために利用可能な、
・少なくとも1種のホスホベタイン双性イオン性単位をベースとし、総電荷が0である双性イオン性ポリマー(PZ);及び
・少なくとも1種のカチオン性ポリマー(P+);及び
・少なくとも1種のアニオン性ポリマー(P-):
を含む、ポリマー組合せ物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−528440(P2009−528440A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557794(P2008−557794)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000385
【国際公開番号】WO2007/099239
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508076598)ロディア オペレーションズ (98)
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
【住所又は居所原語表記】40 rue de la Haie Coq F−93306 Aubervilliers FRANCE
【Fターム(参考)】