説明

ポリマー被覆粒子の水性分散物、関連するコーティング組成物、およびコーティングされた支持体

本発明により、ナノ粒子などのポリマー被覆粒子の水性分散物が開示される。さらに、ポリマー被覆粒子の水性分散物を製造する方法と、このような水性分散物を製造する方法に有用な重合性ポリマーと、このような水性分散物から形成される粉末コーティング組成物と、少なくとも一部がこのような組成物でコーティングされた支持体と、このような組成物から堆積された非隠蔽性コーティング層を含む反射面とを製造する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許出願番号10/876,031(発明の名称「Aqueous Dispersions of Microparticles Having a Nanoparticulate Phase and Coating Compositions Containing The Same」)の一部継続出願であり、米国特許出願番号10/876,031は、米国仮特許出願番号60/482,167(2003年6月24日出願)の利益を主張する。これらの両方は、本明細書中に参考として援用される。本願はまた、米国特許出願番号10/809,764(2004年3月25日出願、発明の名称「Process For Manufacturing Powder Coating Compositions Introducing Hard to Incorporate Additives and/or Providing Dynamic Color Control」);米国特許出願番号10/809,595(2004年3月25日出願、発明の名称「Focused Heat Extrusion Process For Manufacturing Powder Coating Compositions」);および米国特許出願番号10/809,639(2004年3月25日出願、発明の名称「Apparatus For Manufacturing Thermosetting Powder Coating Compositions With Dynamic Control Including Low Pressure Injection Systems」)の一部継続出願である。これらの各々は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、とりわけ、ナノ粒子などのポリマー被覆粒子の水性分散物と、このような水性分散物を製造する方法と、このような方法に有用な重合性ポリマーと、このような水性分散物から形成される粉末コーティング組成物と、少なくとも一部がこのような組成物でコーティングされた支持体とに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景情報)
粉末コーティング組成物などのコーティング組成物は、多くの場合、得られるコーティングに対して色および/または性能特性を与える色素および/または充填剤粒子を含む。顔料粒子は、相互に親和性が高い傾向にあり、分離させない限り、ひとまとまりになり凝集体を形成する傾向がある。故に、これらの凝集体を、高剪断技法を用いて、樹脂摩砕ビヒクルおよび必要に応じて分散剤中で、粉砕または摩砕により凝集体を破壊して分散させることが多い。ナノサイズの顔料粒子を所望する際は、所望の粒径を得るために、多くの場合、さらなる粉砕が必要になる。
【0004】
顔料および充填剤は、通常、直径が約0.02〜2ミクロン(すなわち、20〜2000ナノメートル)の範囲にある固体結晶粒子からなる。特に、ナノサイズの粒子顔料および充填剤材料(カーボンブラックなど)の場合は、これらのナノ粒子の表面積が比較的大きいため、凝集は深刻な問題である。このため、こうしたナノ粒子の許容可能な分散物では、多くの場合、ナノ粒子を解凝集し、その後の再凝集を防止するため樹脂摩砕ビヒクルおよび/または分散剤がかなりの量で必要となる。
【0005】
しかしながら、最終コーティング組成物に樹脂摩砕ビヒクルおよび分散剤がそのような高レベルで存在すると、得られる被膜に有害となる恐れがある。たとえば、高レベルの分散剤は、得られる被膜の感水性の原因になることが公知である。さらに、一部の樹脂摩砕ビヒクル、たとえば、アクリル摩砕ビヒクルは、耐衝撃性および可撓性など、被膜の性能特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0006】
様々なタイプの支持体のコーティングに使用できる粉末コーティング組成物が、しきりに望まれている。このようなコーティング組成物があれば、液体コーティング組成物で使用されることが多い有機溶媒の使用が大幅に削減されるか、または不要になる可能性さえある。粉末コーティング組成物を加熱によって硬化させても、周囲の環境に放出される揮発性物質は、あったとしてもわずかである。これは、コーティング組成物を加熱によって硬化させると有機溶媒を周囲大気に揮散する液体コーティング組成物より優れた大きな利点である。
【0007】
また、粒子の再凝集を最小限にとどめて、粉末コーティング組成物の調製に用いるのに好適であり得る樹脂被覆粒子の水性分散物の提供も望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
特定の点では、本発明は、ポリマー被覆粒子を含む水性分散物であって、これらのポリマー被覆粒子が、脆いポリマーによって被覆されている粒子を含む、水性分散物に関する。本発明はまた、このようなポリマー被覆粒子を含む粉末コーティング組成物と、少なくとも一部がこのような粉末コーティング組成物でコーティングされた支持体と、少なくとも1つのコーティング層がこのような粉末コーティング組成物から作製された少なくとも一部が多層複合被膜でコーティングされた支持体にも関する。
【0009】
他の点では、本発明は、ポリマー被覆粒子の水性分散物を製造する方法に関する。この方法は、(1)水性媒体中に(a)粒子と、(b)重合性エチレン性不飽和モノマーと、(c)水分散性の重合性分散剤との混合物を提供することと、(2)エチレン性不飽和モノマーおよび重合性分散剤を重合させて、水分散性ポリマーを含むポリマー被覆粒子を形成することとを含む。
【0010】
他の点では、本発明は、ポリマー被覆粒子を製造する方法に関する。この方法は、(1)水性媒体中に(a)粒子と、(b)重合性エチレン性不飽和モノマーと、(c)水分散性の重合性分散剤との混合物を提供することと、(2)エチレン性不飽和モノマーおよび重合性分散剤を重合させて、水分散性の脆いポリマーを含むポリマー被覆粒子を含む水性分散物を形成することと、(3)水性分散物から水を除去して、ポリマー被覆粒子を含む固体材料を生成することと、(4)固体材料を微粒子化することとを含む。
【0011】
他の点では、本発明は、(1)押出機に(a)ポリマー被覆粒子の水性分散物および(b)乾燥材料を導入することと、(2)押出機内で(a)および(b)をブレンドすることと、(3)ブレンドの揮発成分を除去して押出物を生成することと、(3)押出物を冷却することと、(4)押出物を所望の粒径に粉砕することとを含む、粉末コーティング組成物の製造方法に関する。
【0012】
なお他の点では、本発明は、粉末コーティング組成物の色度を高める方法に関する。これらの方法は、最大ヘイズが10%である複数のポリマー被覆ナノ粒子を粉末コーティング組成物に含ませることを含むものである。
【0013】
さらに他の点では、本発明は、液体コーティング組成物から作製される、予め選択された保護被膜と装飾被膜との色をマッチングさせる方法に関する。これらの方法は:(a)予め選択された被膜の吸光度または反射率を測定することで、予め選択された被膜の可視色を決定することと、(b)最大ヘイズが10%の複数のポリマー被覆ナノ粒子を含む粉末コーティング組成物を製造することとを含み、粉末コーティング組成物から堆積される被膜が、予め選択された被膜の可視色とマッチングする。
【0014】
さらに、本発明は、末端エチレン性不飽和基を含む水分散性の重合ポリエステルポリウレタンにも関する。このポリウレタンは、(a)ポリイソシアナートと、(b)ポリエステルポリオールと、(c)ポリアミンと、(d)エチレン性不飽和基および活性水素基を持つ材料と、(e)酸官能基または酸無水物および活性水素基を含む材料とを含む、反応物質から調製される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明において、本発明は、明示的に異なる記載がある場合を除いて、様々な別の変形とステップの順序とを想定し得ることを理解されるべきである。さらに、任意の作用実施例以外、あるいは、他に記載がある場合でも、本明細書および請求の範囲で使用する成分の量などを表すすべての数字は、すべての場合、「約」という語によって修飾されると理解されるべきである。したがって、異なる記載がない限り、以下の本明細書および添付の特許請求の範囲に記載する数値パラメータは、本発明により得られるべき所望の特性に応じて異なってもよい近似値である。少なくとも特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメータは、少なくとも報告された有効桁数に照らして、通常の丸めの技法を適用して解釈すべきものである。
【0016】
本発明の一般的範囲を示す数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施例に記載する各数値に関しては、できる限り正確なものとして報告してある。しかしながら、いずれの数値も、試験測定値それぞれに見られる、標準偏差に必然的に起因する特定の誤差を本質的に含むものである。
【0017】
また、当然のことながら、本明細書に記載する任意の数値範囲は、そこに組み込まれたすべての下位の範囲を含むことを意図していることが理解されるべきである。たとえば、「1〜10」という範囲は、記載した最小値1から記載した最大値10(1と10を含む)の範囲、すなわち、最小値が1と等しいかそれより大きい、あるいは、最大値が10と等しいかそれより小さい下位の範囲をすべて含むことを意図するものである。
【0018】
本出願では、特に他に記載がない限り、単数を使用する場合は、複数を含み、複数は、単数を包含するものである。さらに、本出願では、場合によって、「および/または」を明示的に使用することもあるが、特に他に記載がない限り、「または(or)」を使用する場合は、「および/または」を意味する。
【0019】
既に述べたように、本発明の特定の実施形態は、ポリマー被覆粒子の水性分散物を対象とする。本明細書で使用する場合、「分散物」という語は、1つの相が、連続相であるもう1つの相全体に分布した細粒を含む2相系をいう。本発明の分散物は、多くの場合、水中油型エマルジョンであり、ポリマー被覆粒子を有機相として懸濁させる分散物の連続相を、水性媒体が与える。
【0020】
本明細書で使用する場合、「水性(aqueous)」、「水相」、「水性媒体」などの語は、もっぱら水からなる媒体、あるいは、大部分が水であるが別の物質、たとえば、不活性な有機溶媒なども一緒に含む媒体をいう。特定の実施形態では、本発明の水性分散物に存在する有機溶媒の量は、分散物の総重量に対する重量パーセントで20重量パーセント未満(例えば、10重量パーセント未満など、あるいは場合によっては、5重量パーセント未満、あるいは、さらに別の場合では、2重量パーセント未満)である。好適な有機溶媒の非限定的な例は、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、n−ブタノール、ベンジルアルコールおよびミネラルスピリットである。
【0021】
本明細書で使用する場合、「ポリマー被覆粒子」という語は、水性分散物内で粒子を相互に物理的に分離させ、それにより、粒子が著しく凝集するのを防止するのに十分な程度まで、ポリマーによって少なくとも一部が被覆されている、すなわち、ポリマー内に閉じ込められている粒子をいう。言うまでもなく、本発明の分散物は、ポリマー被覆粒子ではない粒子を含み得ることが理解される。
【0022】
特定の実施形態では、本発明の水性分散物中でポリマーにより被覆されている粒子は、ナノ粒子を含む。本明細書で使用する場合、「ナノ粒子」という語は、平均粒径が1ミクロン未満である粒子をいい、特定の実施形態では、本発明で用いるナノ粒子の平均粒径は、300ナノメートル以下、例えば、200ナノメートル以下、場合によっては、100ナノメートル以下である。故に、特定の実施形態では、本発明の水性分散物は、ポリマーに被覆されているナノ粒子を含むことから、あまり凝集しないものである。
【0023】
本発明においては、公知のレーザー散乱の技法に従って、平均粒径を測定することができる。たとえば、レーザー回折式粒径分布測定装置であるHoriba Model LA900を用いて、平均粒径を決定され得、この装置は、波長が633nmであるヘリウムネオンレーザーを用いて、その粒子が球状であると仮定して粒子の大きさを測定するもので、つまり、「粒径」とは、粒子を完全に囲む最小の球体をいう。さらに、粒子の代表サンプルの透過電子顕微鏡(「TEM」)画像を写した電子顕微鏡写真を視覚的に検討して、画像の粒子の直径を測定し、TEM画像の倍率に基づき、測定済み粒子の平均一次粒径を算出して平均粒径を決定され得る。当業者は、このようなTEM画像の作成法および倍率に基づく一次粒径の決定法を理解する。粒子の一次粒径は、粒子を完全に囲む球体の最小径を指す。本明細書で使用する場合、「一次粒径」という語は、個々の粒子の大きさをいう。
【0024】
粒子の形状(または形態)は、多岐にわたり得る。たとえば、ほぼ球状の形態(固体ビーズ、マイクロビーズまたは中空球など)、ならびに立方体状、板状または針状(細長いまたは繊維状)である粒子が用いられ得る。さらに、粒子は、中空、多孔性または空隙のない内部構造を有していてもよいし、中央が中空で多孔性の壁または中実の壁があるなど、上記のもののいずれかの組み合わせを有していてもよい。好適な粒子の特徴に関する詳細情報については、H.Katzら(編),Handbook of Fillers and Plastics(1987年)第9〜10頁を参照されたい。
【0025】
本発明の結果得られる分散物および/またはコーティング組成物の所望の特性および特徴(被膜の硬度、耐引掻性、安定性または色など)に応じて、平均粒径が異なる1種または複数種の粒子の混合物もまた用いられ得る。
【0026】
本発明の水性分散物に存在する、ナノ粒子などの粒子は、高分子および/または非高分子の無機材料、高分子および/または非高分子の有機材料、複合材料ならびに上記のもののいずれかの混合物から形成され得る。本明細書で使用する場合、「から形成する(formed from)」は、特許請求の範囲における用語である「含む(comprising)」などのオープンランゲージを示す。このため、記載した構成成分のリスト「から形成された」組成物または物質は、少なくともこれらの記載した構成成分を含む組成物であり得るが、組成物の生成の過程で、記載のないこれ以外の構成成分をさらに含み得ることを意図している。また、本明細書で使用する場合、「ポリマー」という語は、オリゴマーを包含することを意味し、ホモポリマーもコポリマーも含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本明細書で使用する場合、「高分子無機材料」という語は、骨格の繰り返し単位が炭素以外の元素(単数または複数)に基づく高分子材料をいう。また、本明細書で使用する場合、「高分子有機材料」という語は、合成高分子材料、半合成高分子材料および天然高分子材料をいい、これらはすべて、骨格の繰り返し単位が炭素に基づくものである。
【0028】
本明細書で使用する場合、「有機材料」という語は、炭素が通常、炭素自体および水素に結合しており、しばしば他の元素にも結合している炭素含有化合物をいうが、酸化炭素、炭化物、二硫化炭素等の二元化合物;金属シアン化物、金属カルボニル、ホスゲン、硫化カルボニル等の三元化合物;および、たとえば、炭酸カルシウムおよび炭酸ナトリウムなどの金属炭酸塩等の炭素含有イオン性化合物を除く。
【0029】
本明細書で使用する場合、「無機材料」という語は、有機材料ではない任意の材料をいう。
【0030】
本明細書で使用する場合、「複合材料」という語は、2つ以上の異なる材料を組み合わせたものをいう。複合材料から形成される粒子は、表面の硬度が表面より下にある粒子内部の硬度と異なるのが一般的である。さらに具体的に言えば、粒子の表面は、当該分野において周知の任意のやり方で修飾されて、当該分野において公知の技法を用いて化学的または物理的に表面の特徴を変更できるが、これに限定されるものではない。
【0031】
たとえば、粒子を、1種または複数種の二次材料でコーティング、クラッディングまたはカプセル化されている一次材料から形成し、表面をより柔らかくした複合粒子を形成し得る。特定の実施形態では、複合材料から形成される粒子を、別の形態の一次材料でコーティング、クラッディングまたはカプセル化されている一次材料から形成してもよい。本発明に有用な粒子に関する詳細情報については、G.Wypych,Handbook of Fillers,第2版(1999年)第15〜202頁を参照されたい。
【0032】
前述のように、本発明に有用な粒子は、当該分野において公知の任意の無機材料を含み得る。好適な粒子を、セラミック材料、金属材料および上記のもののいずれかの混合物から形成することができる。このようなセラミック材料の非限定的な例として、金属酸化物、混合金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属ケイ酸塩、金属ホウ化物、金属炭酸塩および上記のもののいずれかの混合物が挙げられ得る。金属窒化物の非限定的な具体例として、窒化ホウ素があり;金属酸化物の非限定的な具体例として、酸化亜鉛があり;好適な混合金属酸化物の非限定的な例として、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムがあり;好適な金属硫化物の非限定的な例として、二硫化モリブデン、二硫化タンタル、二硫化タングステンおよび硫化亜鉛があり;金属ケイ酸塩の非限定的な例として、バーミキュライトなど、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムがある。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、粒子は、アルミニウム、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、コバルト、銅、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、窒素、酸素、リン、セレン、ケイ素、銀、硫黄、スズ、チタン、タングステン、バナジウム、イットリウム、亜鉛およびジルコニウム(これらの酸化物、これらの窒化物、これらのリン化物、これらのリン酸塩、これらのセレン化物、これらの硫化物、これらの硫酸塩およびこれらの混合物を含む)から選択される無機材料を含むものである。上記の無機粒子の非限定的な好適な例として、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、ジルコニア、酸化ビスマス、酸化マグネシウム、酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、炭化ホウ素、窒素をドープしたチタニアおよびセレン化カドミウムが挙げられる。
【0034】
粒子は、たとえば、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカまたは無定形状シリカ、アルミナまたはコロイド状アルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイド状イットリア、コロイド状または無定形状のジルコニアなどのジルコニアおよび上記のもののいずれかの混合物など、本質的に単一の無機酸化物のコア;またはあるタイプの無機酸化物に別のタイプの有機酸化物を付着させたものを含み得る。
【0035】
本発明に用いる粒子の形成に有用な非高分子の無機材料は、グラファイト、金属、酸化物、炭化物、窒化物、ホウ化物、硫化物、ケイ酸塩、炭酸塩、硫酸塩および水酸化物から選択される無機材料を含み得る。有用な無機酸化物の非限定的な例には、酸化亜鉛がある。好適な無機硫化物の非限定的な例として、二硫化モリブデン、二硫化タンタル、二硫化タングステンおよび硫化亜鉛が挙げられる。有用な無機ケイ酸塩の非限定的な例として、バーミキュライトなど、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムが挙げられる。好適な金属の非限定的な例として、モリブデン、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、銅、金、鉄、銀、合金および上記のもののいずれかの混合物が挙げられる。
【0036】
特定の実施形態では、粒子は、ヒュームドシリカ、無定形状シリカ、コロイド状シリカ、アルミナ、コロイド状アルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイド状イットリア、ジルコニア、コロイド状ジルコニアおよび上記のもののいずれかの混合物から選択され得る。特定の実施形態では、粒子は、コロイド状シリカを含むものである。上記に開示したように、これらの材料は、表面が処理されていてもよいし、処理されていなくてもよい。これ以外に有用な粒子には、本明細書に援用する米国特許第5,853,809号の第6欄51行から第8欄43行に記載されているような表面修飾シリカがある。
【0037】
別の方法として、粒子を、1種または複数種の二次材料でコーティング、クラッディングまたはカプセル化されている一次材料から形成し、表面をより硬くした複合材料を形成し得る。あるいは、粒子を、別の形態の一次材料でコーティング、クラッディングまたはカプセル化されている一次材料から形成して、表面をより硬くした複合材料を形成し得る。
【0038】
一例では、本発明を限定することなく、炭化ケイ素または窒化アルミニウムなどの無機材料から形成された無機粒子に、シリカ、炭酸塩またはナノクレイによるコーティングを施して、有用な複合粒子を形成し得る。別の非限定的な例では、アルキル側鎖を持つシランカップリング剤と、無機酸化物から形成される無機粒子の表面とを相互に作用させて、表面が「より柔らかい」有用な複合粒子を得てもよい。他の例では、非高分子または高分子の材料から形成された粒子を、異なる非高分子または高分子の材料でクラッディング、カプセル化またはコーティングする。このような複合粒子の非限定的な具体例として、DUALITETMがあり、これは合成高分子粒子を炭酸カルシウムでコーティングしたもので、ニューヨーク州BuffaloのPierce and Stevens Corporationから市販されている。
【0039】
特定の実施形態では、本発明で使用する粒子は、ラメラ構造を有するものである。ラメラ構造を持っている粒子は、六角形配列の原子のシートまたはプレートからなり、シート内の結合は強いが、シート間は、弱いファンデルワールス力で結合しており、シート間の剪断強度は低い。ラメラ構造の非限定的な例には、六方晶構造がある。ラメラフラーレン(すなわち、バッキーボール)構造を持つ無機固体粒子も、本発明に有用である。
【0040】
ラメラ構造を持つ好適な材料の非限定的な例として、窒化ホウ素、グラファイト、金属ジカルコゲニド、雲母、タルク、石膏、カオリナイト、方解石、ヨウ化カドミウム、硫化銀およびこれらの混合物が挙げられる。好適な金属ジカルコゲニドとして、二硫化モリブデン、二セレン化モリブデン、二硫化タンタル、二セレン化タンタル、二硫化タングステン、二セレン化タングステンおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
粒子を、非高分子有機材料から形成し得る。本発明に有用な非高分子有機材料の非限定的な例として、ステアリン酸塩(ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸アルミニウムなど)、ダイヤモンド、カーボンブラックおよびステアロアミドが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0042】
本発明で使用する粒子を、無機高分子材料から形成し得る。有用な無機高分子材料の非限定的な例として、ポリホスファゼン、ポリシラン、ポリシロキサン、ポリゲルマン、高分子硫黄、高分子セレン、シリコーンおよび上記のもののいずれかの混合物が挙げられる。本発明に用いるのに好適な無機高分子材料から形成される粒子の非限定的な具体例として、トスパールが挙げられ、これは、架橋シロキサンから形成される粒子であり、日本のToshiba Silicones Company,Ltd.から市販されている。
【0043】
粒子を、合成有機高分子材料から形成し得る。好適な有機高分子材料の非限定的な例として、熱硬化性材料および熱可塑性材料が挙げられるが、これに限定されるものではない。好適な熱可塑性材料の非限定的な例として、熱可塑性ポリエステル(ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートおよびポリエチレンナフタラートなど)、ポリカーボナート、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンおよびポリイソブテン)、アクリルポリマー(スチレンとアクリル酸モノマーのコポリマーおよびメタクリラートを含むポリマー)、ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ビニルポリマーおよび上記のもののいずれかの混合物が挙げられる。
【0044】
好適な熱硬化性材料の非限定的な例として、熱硬化性ポリエステル、ビニルエステル、エポキシ材料、フェノール類、アミノプラスト、熱硬化性ポリウレタンおよび上記のもののいずれかの混合物が挙げられる。エポキシ材料から形成される合成高分子粒子の非限定的な具体例には、エポキシミクロゲル粒子がある。
【0045】
さらに、粒子は、高分子および非高分子の無機材料、高分子および非高分子の有機材料、複合材料ならびに上記のもののいずれかの混合物から選択される材料から形成される中空粒子であり得る。中空粒子を形成できる好適な材料の非限定的な例については、上に記載してある。
【0046】
特定の実施形態では、本発明で使用する粒子は、有機顔料、たとえば、アゾ化合物(モノアゾ、ジアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS塩タイプのアゾ顔料レーキ、ベンゾイミダゾロン、ジアゾ縮合化合物、イソインドリノン、イソインドリン)および多環系(フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、トリアリールカルボニウム、キノフタロン)顔料および上記のもののいずれかの混合物を含むものである。特定の実施形態では、有機材料は、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン(すなわち、トリフェンジオキサジン)、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンタントロン、フラバントロン、インダントロン、ペリノン、ピラントロン、チオインジゴ、4,4’−ジアミノ−1,1’−ジアントラキノニルならびにこれらの置換誘導体およびこれらの混合物から選択される。
【0047】
本発明の実施に使用するペリレン顔料は、非置換でも、置換されていてもよい。たとえば、置換ペリレンは、イミドの窒素原子が置換されていてもよく、置換基としては、炭素原子数1〜10個のアルキル基、炭素原子数1〜10個のアルコキシ基およびハロゲン(塩素など)またはこれらの組み合わせが挙げられる。置換ペリレンは、任意の置換基を複数含み得る。ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸のジイミドおよび二無水物は、好ましいものである。粗ペリレンについては、当該分野において公知の方法で調製することができる。
【0048】
フタロシアニン顔料、特に金属フタロシアニンを用いることもできる。銅フタロシアニンは比較的入手しやすいものであるが、亜鉛、コバルト、鉄、ニッケルおよびこれ以外の金属をベースとしたものなど、他の金属含有フタロシアニン顔料を用いてもよい。また、無金属フタロシアニンも、好適なものである。フタロシアニン顔料は、非置換であってもよいし、たとえば、1個または複数個のアルキル(炭素原子数1〜10個)、アルコキシ(炭素原子数1〜10個)、塩素などのハロゲンまたはフタロシアニン顔料に典型的なこれ以外の置換基で部分的に置換されていてもよい。フタロシアニンは、当該分野において公知のいくつかの方法のいずれかによって調製され得る。無水フタル酸、フタロニトリルまたはこれらの誘導体と、金属ドナー、窒素ドナー(尿素またはフタロニトリル自体など)および任意の触媒とを、好ましくは有機溶媒中で反応させてフタロシアニンを調製するのが一般的である。
【0049】
本明細書で使用する場合、キナクリドン顔料は、非置換または(たとえば、1個または複数個のアルキル、アルコキシ、塩素などのハロゲンまたはキナクリドン顔料に典型的なこれ以外の置換基での)置換キナクリドンを含むものであり、本発明の実施に好適である。キナクリドン顔料については、当該分野において公知のいくつかの方法のいずれかによって調製することができるが、好ましくは、ポリリン酸の存在下で種々の2,5−ジアニリノテレフタル酸前駆体を熱閉環させて調製する。
【0050】
イソインドリン顔料もまた、必要に応じて対称的にあるいは非対称的に置換され得、本発明の実施に好適であり、当該分野において公知の方法により調製することができる。好適なイソインドリン顔料であるPigment Yellow 139は、イミノイソインドリン前駆体とバルビツール酸前駆体との対称的付加物である。また、ジオキサジン顔料(すなわち、トリフェンジオキサジン)も、好適な有機顔料であり、当該分野において公知の方法によって調製することができる。
【0051】
さらに、前述の無機粒子および/または有機粒子のいずれかの混合物を用い得る。
【0052】
本発明の水性分散物に有用な粒子は、色を与える粒子を含み得る。「色を与える粒子」という語は、可視光の一部の波長、すなわち、400〜700nmの範囲にある波長を、可視領域の他の波長を吸収するよりも著しく吸収する粒子をいう。
【0053】
所望であれば、上記の粒子をナノ粒子に形成し得る。特定の実施形態では、以下に詳細に記載しているように、ポリマー被覆粒子の水性分散物を形成する過程でナノ粒子をインサイチュで形成する。しかし、他の実施形態では、ナノ粒子を、水性分散物に加える前に形成する。これらの実施形態では、当該分野において多くの様々な公知の方法のいずれかによりナノ粒子を形成し得る。たとえば、乾燥粒子材料を微粉砕して分級することでナノ粒子を調製することができる。たとえば、上記で論じた無機顔料または有機顔料のいずれかのバルク顔料を、粒径が0.5ミリメートル(mm)未満または0.3mm未満または0.1mm未満の粉砕媒体で粉砕し得る。顔料粒子は、1種または複数種の溶媒(水または有機溶媒のいずれか、あるいはこの2つの混合物)において、必要に応じて高分子の摩砕ビヒクルの存在下で、高エネルギーミルでナノ粒子の大きさに粉砕するのが一般的である。必要なら、たとえば、(有機溶媒中の場合は)Lubrizol Corporationから市販されているSOLSPERSE(登録商標)32000もしくは32500あるいは(水中の場合は)同様にLubrizol Corporationから市販されているSOLSPERSE(登録商標)27000といった分散剤を加えてもよい。ナノ粒子を製造するこれ以外の好適な方法として、結晶化、沈殿、気相縮合および化学摩砕(すなわち、部分溶解)が挙げられる。
【0054】
特定の実施形態では、本発明で使用する色を与えるポリマー被覆粒子は、たとえば、アクリルポリマー、ポリウレタンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエーテルポリマー、ケイ素系ポリマー、これらのコポリマーおよびこれらの混合物から選択されるポリマーを含むものである。このようなポリマーは、本発明の属する分野の当業者に公知の任意の好適な方法によって製造され得る。好適なポリマーには、引用部分を参照によって本明細書に援用する、米国特許出願第10/876,031号の[0061]〜[0076]および引用部分を参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2005/0287348号A1の[0042]〜[0044]に記載のポリマーがある。
【0055】
前記のように、他の実施形態において、本発明の水性分散物は、脆いポリマーに被覆された粒子を含むものである。本明細書で使用する場合、「脆いポリマー」という語は、周囲条件で微粉砕されやすいポリマーをいう。すなわち、分散物から液体材料を除去すると、得られる固体材料は、壊れて小さな破片または断片になりやすいもので、粉末コーティング組成物を製造する押出機の乾燥フィード材料として好適である。他方では、膜形成ポリマーは、分散物から液体材料を除去すると、少なくとも支持体の水平面に自立連続膜を形成する。本明細書で使用する場合、「周囲条件」という語は、多くの場合、周囲が約1気圧、相対湿度50%および25℃である条件をいう。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、脆いポリマーは、(i)重合ポリエステルポリウレタンと(ii)エチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含むものである。本明細書で使用する場合、「重合ポリエステルポリウレタン」という語は、複数のエステル単位
【0057】
【化1】

および複数のウレタン単位
【0058】
【化2】

を含み、重合してより大きなポリマーを形成できる官能基を持つポリマーをいい、式中、Rは、アルキル部分、シクロアルキル部分またはオキシアルキル部分であり、Rは、アルキル部分またはシクロアルキル部分であり、Rは、アルキル部分、シクロアルキル部分、アラキル部分または芳香族部分である。特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンは、末端エチレン性不飽和を持つポリエステルポリウレタンを含むものである。本明細書で使用する場合、「末端エチレン性不飽和」という語句は、ポリエステルポリウレタンの末端の少なくとも一部が、エチレン性不飽和を含む官能基を含むことをいう。また、このようなポリエステルポリウレタンは、内部エチレン性不飽和を含み得るが、必ずしも含む必要はない。このため、特定の実施形態では、本発明の水性分散物は、(a)ポリイソシアナートと、(b)ポリエステルポリオールと、(c)エチレン性不飽和基および活性水素基を含む材料とを含む反応物質から調製される、末端エチレン性不飽和を持つ重合ポリエステルポリウレタンを含むものである。特定の実施形態では、本発明の水性分散物に用いる重合ポリエステルポリウレタンを、(d)ポリアミンおよび/または(e)酸官能基または酸無水物と、イソシアナート基またはヒドロキシル基と反応する官能基とを含む材料をさらに含む、反応物質から生成する。本明細書で使用する場合、「活性水素基」という語は、JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,第49巻,第3181頁(1927年)に記載されているようなZerewitnoff試験で決定する場合に、イソシアナートと反応する官能基をいう。
【0059】
重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いるのに好適なポリイソシアナートには、脂肪族(aliphatical)イソシアナート、脂環式(cycloaliphatical)イソシアナート、芳香族脂肪族(araliphatical)イソシアナートおよび/または芳香族イソシアナートならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0060】
有用な脂肪族ポリイソシアナートおよび脂環式ポリイソシアナートの例として、4,4−メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアナート(水素化MDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアナート(TMXDI)およびシクロヘキシレンジイソシアナート(水素化XDI)が挙げられる。これ以外の脂肪族ポリイソシアナートには、IPDIおよびHDIのイソシアヌラートがある。
【0061】
好適な芳香族ポリイソシアナートの例として、トリレンジイソシアナート(TDI)(すなわち、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナートまたはこれらの混合物)、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアナート(MDI)、ナフタレン−1,5−ジイソシアナート(NDI)、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアナート(TODI)、粗TDI(すなわち、TDIとそのオリゴマーとの混合物)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアナート、粗MDI(すなわち、MDIとそのオリゴマーとの混合物)、キシリレンジイソシアナート(XDI)およびフェニレンジイソシアナートが挙げられる。
【0062】
ヘキサメチレンジイソシアナート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(「IPDI」)(そのイソシアヌラートを含む)および/または4,4’−ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンから調製されるポリイソシアナート誘導体は、好適なものである。
【0063】
特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いるポリイソシアナートの量は、重合ポリエステルポリウレタンの調製に使用する樹脂固形物の総重量に対する重量パーセントで、20〜70重量パーセントにわたり、例えば、30〜60重量パーセント、あるいは場合によっては、40〜50重量パーセントなどである。
【0064】
重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いるのに好適なポリエステルポリオールは、飽和ジカルボン酸またはその無水物(または、酸と無水物の組み合わせ)および多価アルコールを用いるなど任意の好適な方法、あるいは、ε−カプロラクトンなどのカプロラクトンの開環により調製され得る。このようなポリエステルポリオールは、様々な分子量で市販されている。ポリエステルの調製に好適な脂肪族ジカルボン酸としては、炭素原子数4〜14個(両方の数字を含む)(炭素原子数6〜10個など)を含むものが挙げられる。このようなジカルボン酸の例として:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸が挙げられる。対応する無水物を用いることもできる。アジピン酸およびアゼライン酸を用いるのが一般的である。
【0065】
本発明の特定の実施形態で利用する重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いるのに好適なポリエステルポリオールを調製する際に用いる多価アルコールとして、炭素原子数2〜15個(両方の数字を含む)(炭素原子数4〜8個など)を含む直鎖グリコールといった少なくとも2個のヒドロキシ基を含む脂肪族アルコールが挙げられるが、これに限定されるものではない。特定の実施形態では、グリコールは、末端位にヒドロキシル基を含むものである。このような多価アルコールの非限定的な例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチルプロパンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオールおよびこれらの多価アルコールの混合物が挙げられる。
【0066】
特定の実施形態では、有機スズ触媒などのエステル化触媒の存在下で、ジカルボン酸(またはその無水物)と多価アルコールとを反応させてポリエステルポリオールを調製する。使用する酸およびアルコールの量は、所望のポリエステルの分子量に応じて様々になる。ヒドロキシ末端ポリエステルは、過剰のアルコールを利用して、それにより、末端ヒドロキシル基を多く含む線状鎖を得ることで得られる。ポリエステルの例として:ポリ(1,4−ブチレンアジパート)、ポリ(1,4−ブチレンスクシナート)、ポリ(1,4−ブチレングルタラート)、ポリ(1,4−ブチレンピメラート)、ポリ(1,4−ブチレンスベラート)、ポリ(1,4−ブチレンアゼラート)、ポリ(1,4−ブチレンセバカート)およびポリ(ε−カプロラクトン)が挙げられる。特定の実施形態では、本発明の水性分散物に利用する脆い重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いるポリエステルポリオールは、重量平均分子量が、500〜3000(500〜2500、あるいは場合によっては、900〜約1300など)である。
【0067】
特定の実施形態では、本発明の特定の実施形態に含ませる重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いるポリエステルポリオールの量は、重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いる樹脂固形物の総重量に対する重量パーセントで、10〜60重量パーセント(20〜50重量パーセント、あるいは場合によっては、30〜40重量パーセントなど)にわたる。
【0068】
前記のように、本発明の水性分散物の特定の実施形態に存在する重合ポリエステルポリウレタンは、エチレン性不飽和基および活性水素基を含む材料から生成される。好適なエチレン性不飽和基としては、たとえば、アクリラート、メタクリラート、カルバミン酸アリルおよび炭酸アリルが挙げられる。アクリラート官能基およびメタクリラート官能基は、式CH=C(R)−C(O)O−で表すことができ、式中、Rは、水素またはメチルである。カルバミン酸アリルおよび炭酸アリルは、それぞれ式CH=CH−CH−NH−C(O)O−およびCH=CH−CH−O−(O)O−で表すことができる。
【0069】
特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンの調製に利用するエチレン性不飽和基および活性水素基を含む材料としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートが挙げられる。好適なヒドロキシアルキル(メタ)アクリラートには、置換されているあるいは非置換のアルキル基が1〜18個の炭素原子を持つものがある。このような材料の非限定的な具体例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリラート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラート、ヘキサン−1,6−ジオールモノ(メタ)アクリラート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリラートおよびこれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリラート」という語は、アクリラートとメタクリラートとの両方を含むことを意味する。
【0070】
特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンの調製に使用するエチレン性不飽和基および活性水素基を含む材料の量は、重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いる樹脂固形物の総重量に対する重量パーセントで、1〜12重量パーセント(2〜8重量パーセント、あるいは場合によっては、4〜6重量パーセントなど)にわたる。
【0071】
前述のように、特定の実施形態では、本発明の水性分散物の特定の実施形態に存在する重合ポリエステルポリウレタンをポリアミンから生成する。有用なポリアミンとしては、窒素原子に結合した基が飽和していても不飽和でもよい1級もしくは2級ジアミンまたは1級もしくは2級ポリアミン、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香族置換脂肪族ポリアミン、脂肪族置換芳香族ポリアミンおよび複素環式ポリアミンが挙げられるが、これに限定されるものではない。好適な脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンの例として、1,2−エチレンジアミン、1,2−ポルフィレンジアミン、1,8−オクタンジアミン、イソホロンジアミン、プロパン−2,2−シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。好適な芳香族ジアミンの例として、フェニレンジアミンおよびトルエンジアミン、たとえば、o−フェニレンジアミンおよびp−トリレンジアミンが挙げられる。これらおよびこれ以外の好適なポリアミンについては、引用部分を参照によって本明細書に援用する米国特許第4,046,729号の第6欄61行から第7欄26行に詳細に記載されている。
【0072】
特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンの調製に使用するポリアミンの量は、重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いる樹脂固形物の総重量に対する重量パーセントで、0.5〜5重量パーセント(1〜4重量パーセント、あるいは場合によっては、2〜3重量パーセントなど)にわたる。
【0073】
前述のように、特定の実施形態では、本発明の水性分散物の特定の実施形態に存在する重合ポリエステルポリウレタンを、酸官能基または酸無水物と、ポリウレタン材料を生成するこれ以外の構成成分のイソシアナート基またはヒドロキシル基と反応する官能基と、を含む材料から生成する。有用な酸官能性材料は、構造:
X−Y−Z
を持つ化合物が挙げられ、式中、Xは、OH、SH、NHまたはNHRであり、Rは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、置換アルキル基、置換アリール基および置換シクロアルキル基ならびにこれらの混合物を含み;Yは、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、置換アルキル基、置換アリール基および置換シクロアルキル基ならびにこれらの混合物を含み;Zは、OSOH、COOH、OPO2、SOOH、POOHおよびPOならびにこれらの混合物を含む。
【0074】
好適な酸官能性材料の例として、ヒドロキシピバル酸、3−ヒドロキシ酪酸、D,L−トロパ酸、D,L−ヒドロキシマロン酸、D,L−リンゴ酸、クエン酸、チオグリコール酸、グリコール酸、アミノ酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ジメチロールプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸、メルカプト酪酸、メルカプト−コハク酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
有用な無水物には、脂肪族無水物、脂環式無水物、オレフィン無水物、シクロオレフィン無水物および芳香族無水物がある。また、置換基が、無水物の反応性にも得られるポリウレタンの特性にも悪影響を与えないならば、置換脂肪族無水物および置換芳香族無水物も有用である。置換基の例として、クロロ、アルキルおよびアルコキシが挙げられる。無水物の例として、無水コハク酸、メチルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物などのアルキルヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、トリメリト酸無水物、クロレンド酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸およびこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
特定の実施形態では、酸官能性材料または酸無水物は、イオン化してポリマーを水に可溶化させることができる陰イオン性イオン化可能基を重合ポリエステルポリウレタンに与える。この結果、特定の実施形態では、本発明の水性分散物の特定の実施形態に存在する重合ポリエステルポリウレタンは、水分散性である。本明細書で使用する場合、「水分散性」という語は、界面活性剤の補助も使用もなしで材料が水に分散し得ることをいう。本明細書で使用する場合、「イオン化可能(ionizable)」という語は、イオンになることができる、すなわち、イオンに解離する能力あるいは荷電する能力がある基をいう。酸を塩基で中和してカルボン酸塩基を生成させ得る。陰イオン性基の例として、−OSO、−COO、−OPO、−SOO、−POOおよびPOが挙げられる。
【0077】
特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いる酸官能基または酸無水物と、イソシアナート基またはヒドロキシル基と反応する官能基とを含む材料の量は、重合ポリエステルポリウレタンの調製に用いる樹脂固形物の総重量に対する重量パーセントで、5〜20重量パーセント(7〜15重量パーセント、あるいは場合によっては、8〜12重量パーセントなど)にわたる。
【0078】
前記のように、特定の実施形態では、酸基を塩で中和する。中和は、理論上の中和等量全体の約0.6〜約1.1の幅があり得る(0.4〜0.9、あるいは場合によっては、0.8〜1.0など)。好適な中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アミン、少なくとも1個の1級アミノ基、2級アミノ基または3級アミノ基および少なくとも1個のヒドロキシル基を持つアルコールアミンなど、無機塩基および有機塩基が挙げられる。好適なアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミンが挙げられる。
【0079】
任意の好適な構成で上記の構成成分を化合して、本発明の水性分散物の特定の実施形態に利用する重合ポリエステルポリウレタンを生成することができる。たとえば、本発明の属する分野の当業者に理解される溶液重合技法によって、重合ポリエステルポリウレタンを調製し得る。
【0080】
上記の説明から明らかなように、本発明の特定の実施形態に存在する重合ポリエステルポリウレタンは、非イオン性であっても、陰イオン性であっても、陽イオン性であってもよい。特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンは、重量平均分子量が、1モル当たり150,000グラム未満(1モル当たり10,000〜100,000グラム、あるいは場合によっては、1モル当たり40,000〜80,000グラムなど)である。本発明を実施する際に用いるポリウレタンおよびこれ以外の高分子材料の分子量は、ポリスチレン標準物質を用いたゲル浸透クロマトグラフィーによって決定される。
【0081】
また、上記の説明から明らかなように、本発明は、末端エチレン性不飽和基を含み、(a)ポリイソシアナートと、(b)ポリエステルポリオールと、(c)ポリアミンと、(d)エチレン性不飽和基および活性水素基を持つ材料と、(e)酸官能基または酸無水物および活性水素基を持つ材料とを含む構成成分から生成される、水分散性の重合ポリエステルポリウレタンにも関する。特定の実施形態では、本発明は、(a)20〜70重量パーセントの範囲の量で存在するポリイソシアナートと、(b)10〜60重量パーセントの範囲の量で存在するポリエステルポリオールと、(c)0.5〜5重量パーセントの範囲の量で存在するポリアミンと、(d)1〜12重量パーセントの範囲の量で存在するエチレン性不飽和基および活性水素基を持つ材料と、(e)5〜20重量パーセントの範囲の量で存在する酸官能基または酸無水物および活性水素基を持つ材料とを含む構成成分から生成される、末端エチレン性不飽和基を含む、水分散性の重合ポリエステルポリウレタンに関する。
【0082】
前述のように、本発明の水性分散物の特定の実施形態では、(i)前述のような重合ポリエステルポリウレタンと、(ii)エチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む脆いポリマーが存在する。好適なエチレン性不飽和モノマーとしては、当該分野において公知のビニルモノマーなど、重合性エチレン性不飽和モノマーのいずれかが挙げられる。有用なエチレン性不飽和カルボン酸官能基含有モノマーの非限定的な例として、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリラート、アクリルオキシプロピオン酸、クロトン酸、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル、イタコン酸、イタコン酸のモノアルキルエステルおよびこれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用する場合、「(メタ)アクリル酸(acrylic)」およびそこから派生する用語は、アクリル酸とメタクリル酸との両方を含むことを意図している。
【0083】
カルボン酸官能基を含まないこれ以外の有用なエチレン性不飽和モノマーの非限定的な例として、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリルおよびジ(メタ)アクリル酸エチレングリコールなどの、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;スチレンおよびビニルトルエンなどのビニル芳香族化合物;N−ブトキシメチルアクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド;アクリロニトリル;マレイン酸およびフマル酸のジアルキルエステル;ハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデン;酢酸ビニル;ビニルエーテル;アリルエーテル;アリルアルコール;これらの誘導体およびこれらの混合物が挙げられる。
【0084】
さらに、エチレン性不飽和モノマーとしては、たとえば、アクリル酸といったモノカルボン酸などのエチレン性不飽和酸官能性モノマーと、この不飽和酸モノマーのフリーラジカル開始重合に参加しないエポキシ化合物との反応から得られるモノマーなど、エチレン性不飽和β−ヒドロキシエステル官能性モノマーが挙げられ得る。このようなエポキシ化合物の例として、グリシジルエーテルおよびグリシジルエステルがある。好適なグリシジルエーテルには、ブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなど、アルコールおよびフェノール類のグリシジルエーテルがある。
【0085】
特定の実施形態では、重合ポリエステルポリウレタンおよびエチレン性不飽和モノマーは、重量比95:5〜30:70(90:10〜40:60、あるいは場合によっては、80:20〜60:40など)で本発明の水性分散物に存在する。
【0086】
本発明のポリマー被覆粒子を含む水性分散物に関しては、脆いポリマーを含むか否かを問わず、様々な方法のいずれかで調製することができる。たとえば、特定の実施形態では、本発明の水性分散物を(A)水性媒体において(i)粒子、(ii)1種または複数種の重合性エチレン性不飽和モノマーおよび/または(iii)1種または複数種の重合性不飽和モノマーと1種または複数種のポリマーとの混合物および/または(iv)1種または複数種のポリマーの混合物を提供することと、次いでこの混合物を水性媒体の存在下で高応力剪断条件に付すこととを含む方法で調製する。
【0087】
このような方法は、参照によって本明細書に援用する、米国特許出願第10/876,031号の[0054]〜[0090]および引用部分を参照によって本明細書に援用する、米国特許出願公開第2005/0287348号の[0036]〜[0050]に詳述されている。
【0088】
しかし、他の実施形態では、本発明の水性分散物を(1)水性媒体において(i)粒子と、(ii)重合性エチレン性不飽和モノマーと、(iii)水分散性の重合性分散剤との混合物を提供することと、(2)エチレン性不飽和モノマーおよび重合性分散剤を重合させて、水分散性ポリマーを含むポリマー被覆粒子を形成することとを含む方法で製造する。これらの実施形態における重合性分散剤は、エチレン性不飽和モノマーと重合すると、水分散性ポリマー、場合によっては、水分散性の脆いポリマーを含むポリマー被覆粒子を形成する水分散性の任意の重合性材料を含み得る。特定の実施形態では、重合性分散剤は、末端エチレン性不飽和を持つ前述の水分散性の重合ポリエステルポリウレタンを含むものである。
【0089】
これらの実施形態では、水分散性の重合性分散剤は、界面活性剤および/または高剪断条件を必要とせずに、水性媒体中で重合性分散剤自体およびエチレン性不飽和モノマーを含めた他の材料を分散させることができる。この結果、ポリマー被覆粒子の水性分散物を製造する上記の方法は、米国特許出願第10/876,031号の[0081]〜[0084]および米国特許出願公開第2005/0287348号の[0046]に記載された高応力剪断条件を用いることが望ましくないかあるいは現実的でない状況において特に好適なものである。故に、特定の実施形態では、粒子と重合性エチレン性不飽和モノマーと水分散性の重合性分散剤との混合物を高応力剪断条件に付すステップを含まない方法で本発明の水性分散物を調製する。
【0090】
さらに、本発明の上記の方法により、ナノ粒子のインサイチュでの形成が可能になり、水性分散物の調製の前にナノ粒子を形成する必要がなくなる。これらの方法では、水性媒体において、平均粒径が1ミクロン以上の粒子をエチレン性不飽和モノマーおよび水分散性の重合性分散剤と混合した後、ナノ粒子に形成することが可能である(すなわち、ナノ粒子をインサイチュで形成する)。特定の実施形態では、水性媒体を微粉砕条件に付してナノ粒子を形成する。たとえば、粒径が0.5ミリメートル未満または0.3ミリメートル未満、あるいは場合によっては、0.1ミリメートル未満の粉砕媒体で粒子を粉砕し得る。これらの実施形態では、水性媒体と、重合性エチレン性不飽和モノマーと、水分散性の重合性分散剤との存在下、粒子を高エネルギーミルでナノ粒子の大きさに粉砕することもできる。所望であれば、Avecia,Inc.から市販されているSOLSPERSE 27000など、別の分散剤も用られ得る。
【0091】
前記のように、本発明の水性分散物を製造する上記の方法は、エチレン性不飽和モノマーおよび重合性分散剤のフリーラジカル重合を行い、水分散性ポリマーを含むポリマー被覆粒子を形成するステップを含むものである。特定の実施形態では、それが妥当な場合、少なくとも重合の一部は、ナノ粒子の形成過程で起こる。また、フリーラジカル開始剤を用い得る。水溶性開始剤と油溶性開始剤のどちらを使用してもよい。
【0092】
好適な水溶性開始剤の非限定的な例として、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸カリウムおよび過酸化水素が挙げられる。油溶性開始剤の非限定的な例として、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジラウリルペルオキシドおよび2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられる。多くの場合、この反応を、20℃〜80℃の範囲の温度で行う。バッチプロセスまたは連続プロセスのどちらで重合を行ってもよい。重合を行うのに必要な時間は、たとえば、10分から6時間までの範囲であり得るが、1種または複数種のエチレン性不飽和モノマーからポリマーをインサイチュで形成するのに十分な時間であることが条件となる。
【0093】
重合プロセスが終了すると、得られる生成物は、有機溶媒をいくらか含んでもよい水性媒体中の、ポリマー被覆粒子の安定した分散物である。有機溶媒は、たとえば、40℃未満の温度で減圧蒸留により、その一部または全部が除去され得る。本明細書で使用する場合、「安定した分散物」または「安定に分散した」という語は、静置したときに、ポリマー被覆粒子が水性媒体から沈降も凝固も凝集もしないことをいう。
【0094】
特定の実施形態では、ポリマー被覆粒子は、分散物中にある全固形物の重量に対する重量パーセントで、少なくとも10重量パーセントの量または10〜80重量パーセントの量または25〜50重量パーセントの量または25〜40重量パーセントの量で本発明の水性分散物に存在する。
【0095】
特定の実施形態では、分散したポリマー被覆粒子のヘイズは、最大で10%、あるいは場合によっては、最大で5%、あるいはなお別の場合には、最大で1%、あるいは他の実施形態では、最大で0.5%である。本明細書で使用する場合、「ヘイズ」を、ASTM D 1003によって決定する。
【0096】
本明細書に記載するポリマー被覆粒子のヘイズ値については、まず、ナノ粒子などの粒子を液体(水、本明細書に記載する有機溶媒および/または分散剤など)に分散させ、次いで溶媒(たとえば、酢酸ブチル)に希釈させたこれらの分散物を、光路長が500ミクロンのByk−Gardner TCS(The Color Sphere)機器を用いて測定して決定する。液体サンプルのヘイズ(%)は、濃度依存性であるので、本明細書で使用する場合は、極大吸光度を示す波長の透過率が約15%〜約20%のヘイズ(%)を報告する。比較的大きい粒子の場合は、粒子と周囲媒体との屈折率の差が小さいとき、許容されるヘイズを得ることができる。逆に、小さい粒子の場合は、粒子と周囲媒体との屈折率の差が大きくなると、許容されるヘイズが得られ得る。
【0097】
本発明の上記の方法では、エチレン性不飽和モノマーと重合性分散剤との反応が起きると、ポリマー被覆粒子が形成されるが、前述のように、本発明者らは、これにより水性分散物内で粒子(特にナノ粒子)が再凝集するのを物理的に防ぐ相バリヤーが得られると考える。結果的に、本発明の上記の方法により、ナノ粒子の再凝集を最小限にとどめる、あるいは、完全に抑える、ナノ粒子などの粒子の水性分散物が得られる。
【0098】
特定の実施形態では、本発明は、ポリマー被覆粒子を製造する方法に関する。これらの方法は、前述のようなポリマー被覆粒子の水性分散物を製造する方法であって、ポリマー被覆粒子が脆いポリマーを含み、(1)水性分散物から水を除去してポリマー被覆粒子を含む固体材料を生成することと、(2)固体材料を微粒子化することをさらに含む、方法を含むものである。これらの実施形態では、ドラム乾燥機、ローラドライヤー、噴霧乾燥機または同種のものを用いるなど、任意の好適な乾燥法で水性分散物から水を除去することができる。さらに、固体材料はまた、ハンマーミルなどを用いるなど、任意の好適な手法で微粒子化され得る。微粒子化の後に得られた顆粒を、パッケージングの前に分級機でスクリーニングするなど、さらに処理してもよい。
【0099】
本発明はまた、ポリマー被覆粒子の水性分散物から生成される粉末コーティング組成物にも関する。本明細書で使用する場合、「粉末コーティング組成物」という語は、液体形態ではなく固体粒子形態で実施される、被膜を製造するのに好適な組成物をいう。本発明の粉末コーティング組成物の特定の実施形態では、ポリマー被覆粒子は、ナノ粒子を含むものである。
【0100】
本発明の粉末コーティング組成物は、ポリマー被覆粒子以外にも、粒状の膜形成樹脂を含んでもよい。好適な膜形成樹脂は、たとえば、エポキシ基含有アクリルポリマーまたは多価アルコールのポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂と、多官能性カルボン酸基含有材料またはジシアナミドなどのエポキシ樹脂に好適な硬化剤とを含むものである。粒状の硬化性樹脂材料の例については、参照によって本明細書に援用する米国再発行特許第32,261号および米国特許第4,804,581号に記載されている。これ以外の好適な粒状膜形成樹脂の例として、カルボン酸官能性のポリエステルおよびアクリルポリマーなどのカルボン酸官能性樹脂と、たとえば、参照によって本明細書に援用する米国特許第4,801,680号および米国特許第4,988,767号に記載されているようなトリグリシジルイソシアヌラート硬化剤およびβ−ヒドロキシアルキルアミド硬化剤などのこのような材料に好適な硬化剤とがある。
【0101】
特定の実施形態では、本発明の粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総重量に対して、粒状の膜形成樹脂を50〜90重量パーセント(60〜80重量パーセントなど)で含むものである。特定の実施形態では、本発明の粉末コーティング組成物は、粉末コーティング組成物の総重量に対して、ポリマー被覆粒子を0.1〜50重量パーセント(1〜20重量パーセントなど)で含むものである。
【0102】
本発明の粉末コーティング組成物は必要に応じて、他の顔料、充填剤、光安定剤、流動性改質剤、ワキ防止剤(anti−popping ageng)および酸化防止剤など、他の材料を含み得る。好適な顔料としては、たとえば、二酸化チタン、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、カーボンブラック、グラファイトフィブリル、黒色酸化鉄、クロムグリーンオキシド、フェリドイエローおよびキンドレッドが挙げられる。
【0103】
ワキ防止剤を組成物に加えて、ベーキングの過程で任意の揮発性物質を膜から漏出させることができる。ベンゾインが、一般に好ましいワキ防止剤であり、使用する際は通常、粉末コーティング組成物の総重量に対して、0.5〜3.0重量パーセントの量で存在する。
【0104】
特定の実施形態では、本発明の粉末コーティング組成物は、貯蔵の過程でこの粉末のケーキングを抑制するヒュームドシリカなどを含むものである。ヒュームドシリカの例は、Cabot CorporationによりCAB−O−SILという商標で販売されている。ヒュームドシリカは、粉末コーティング配合物の総重量に対して0.1〜1重量パーセントの範囲の量で存在する。
【0105】
さらに、本発明は、粉末コーティング組成物を製造する方法にも関する。ポリマー被覆粒子が脆いポリマーを含む特定の実施形態では、ポリマー被覆粒子および他のコーティング構成成分をすべて乾燥粒子として実施し、一緒にブレンドしてから、押出機で溶融混合する。しかし、脆いポリマーを含まないポリマー被覆粒子の水性分散物を用いる場合など、他の実施形態では、(1)押出機に(a)ポリマー被覆粒子の水性分散物と、(b)乾燥材料とを含む粉末コーティング組成物の構成成分を導入することと、(2)押出機で(a)および(b)をブレンドすることと、(3)このブレンドの揮発成分を除去して押出物を生成することと、(4)この押出物を冷却することと、(5)この押出物を所望の粒径に粉砕することとを含む方法で本発明の粉末コーティング組成物を製造する。本明細書で使用する場合、「揮発成分を除去する(devolatize)」という語は、水および有機溶媒などの揮発性物質を除去することをいう。特定の実施形態では、関連する開示内容を本明細書に援用する米国特許出願公開第2005/0212159号;同第2005/0213423号;および/または同第2005/0212171号に記載の方法および/または器具でこのような粉末コーティング組成物を製造する。
【0106】
本発明のこれらの方法では、乾燥材料は、前述の粒状の膜形成樹脂、および他の任意の組成物添加剤を含み得る。乾燥材料は最初に、遊星形混合機などの高剪断ミキサーでブレンドされ得る。特定の実施形態では、その後、この乾燥材料および本発明の水性分散物を80℃〜150℃の範囲の温度で押出機にてブレンドする。次いで、押出物を冷却してから粒状のブレンドに微粉砕する。
【0107】
本発明の粉末コーティング組成物を金属性支持体、たとえば、アルミニウム支持体および鋼支持体など、様々な支持体に塗布することができる。多くの場合、粉末コーティング組成物をスプレーで塗布するが、金属支持体の場合は、静電スプレーで、あるいは、流動床を使用して塗布する。単掃引または複数のパスで、本発明の粉末コーティング組成物を塗布し得、硬化後の膜厚は、約1〜10ミル(25〜250マイクロメートル)であり、通常、約2〜4ミル(50〜100マイクロメートル)である。粉末コーティング組成物を塗布した後、このコーティングした支持体を、多くの場合、1〜60分かけて250°F〜500°F(121.1℃〜260.0℃)の範囲の温度(15〜30分かけて300°F〜400°F(148.9℃〜204.4℃)など)で、被膜を硬化させるのに十分な温度まで加熱する場合が多い。
【0108】
このため、本発明はさらに、本発明の粉末コーティング組成物から堆積される被膜で少なくとも一部がコーティングされている金属支持体などの支持体にも関する。
【0109】
本発明の粉末コーティング組成物を用いて、たとえば、モノコートといった単一コーティング、2層系のクリアトップコーティングもしくはベースコートまたはその両方を形成してもよいし、あるいは、クリアトップコーティング組成物、着色層組成物および/またはベースコーティング組成物を含む多層系の1種または複数種の層および/または、たとえば、電着プライマーおよび/またはプライマーサーフェイサー層などのプライマー層を形成してもよい。
【0110】
本発明はまた、少なくとも1つのコーティング層がこのようなコーティング組成物から堆積されている多層複合被膜で少なくとも一部がコーティングされた支持体にも関する。特定の実施形態では、たとえば、本発明の粉末コーティング組成物は、ベースコートおよびトップコートを含む多層複合被膜のベースコート層を構成する。このため、これらの実施形態では、本発明の粉末コーティング組成物の塗布および硬化の後に、少なくとも1つのトップコート層をベースコート層に塗布し得る。たとえば、当該分野において周知のように、トップコートについては、粉末コーティング組成物、有機溶媒ベースのコーティング組成物または水性コーティング組成物から堆積することができる。トップコートの膜形成組成物は、たとえば、アクリルポリマーと、アルキドが挙げられるポリエステルと、ポリウレタンとから選択される樹脂バインダーを含む膜形成組成物など、被膜の塗布に有用な組成物のいずれであってもよい。トップコート組成物に関しては、ブラッシング、吹き付け、浸漬またはフローイングなど、従来の任意のコーティング手法で塗布され得る、吹き付けで塗布することが最も多い。エアスプレー、エアレススプレーおよび静電スプレーの一般的な吹き付け技法および吹き付け設備については、手動方法あるいは自動方法のどちらを用いてもよい。
【0111】
特定の実施形態では、本発明は、ヘイズが最大で10%である複数のポリマー被覆ナノ粒子を含む粉末コーティング組成物から堆積された、色を与える非隠蔽性コーティング層で少なくとも一部がコーティングされた反射面に関する。特定の実施形態では、色を与える非隠蔽性コーティング層の少なくとも一部にクリアコート層を堆積し得る。
【0112】
本明細書で使用する場合、「反射面」という語は、全反射率が少なくとも30%(少なくとも40%など)である反射材料を含む表面をいう。本明細書において、「全反射率」とは、すべての視角に関して積分された、可視スペクトルにおける物体の反射光とこの物体に入射する入射光との比率をいう。本明細書において、「可視スペクトル」とは、波長が400〜700ナノメートルの電磁スペクトルの部分をいう。本明細書において、「視角」とは、入射点の表面に対する視線光線と法線との間の角度をいう。本明細書に記載する反射率の値は、たとえば、製造者が提供する指示に従ってMinolta Spectrophotometer CM−3600dを用いて決定され得る。
【0113】
特定の実施形態では、反射面は特に、たとえば、研磨アルミニウム、冷延鋼板、クロムめっき金属またはプラスチック上に真空蒸着された金属などの支持体材料を含むものである。他の実施形態では、反射面は、たとえば、特に銀金属ベースコート層、着色金属ベースコート層、雲母含有ベースコート層または白色ベースコート層など、コーティング組成物から堆積された反射コーティング層を含んでもよい、予めコーティングされた表面を含み得る。
【0114】
このような反射コーティング層を、たとえば、保護コーティング組成物に使用するのが一般的である膜形成樹脂のいずれかを含み得る膜形成組成物から堆積され得る。たとえば、反射コーティングの膜形成組成物は、樹脂バインダーおよび色素として働く1種または複数種の顔料を含み得る。有用な樹脂バインダーとしては、アクリルポリマー、アルキドを含むポリエステルおよびポリウレタンが挙げられるが、これに限定されるものではない。反射コーティング組成物の樹脂バインダーは、たとえば、粉末コーティング組成物、有機溶媒ベースのコーティング組成物または水性コーティング組成物として実施され得る。
【0115】
上述のとおり、反射コーティング組成物は、色素などの顔料を含み得る。反射コーティング組成物に好適な顔料として、たとえば、アルミニウムフレーク、銅またはブロンズのフレークおよび金属酸化物コーティング雲母が挙げられる金属顔料;二酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、クロム酸鉛およびカーボンブラックなどの非金属着色顔料;ならびに、たとえば、フタロシアニンブルーおよびフタロシアニングリーンなどの有機顔料が挙げられる。
【0116】
反射コーティング組成物を、任意の従来のコーティング手法、特にブラッシング、吹き付け、浸漬またはフローイングなどで支持体に塗布することができる。エアスプレー、エアレススプレーおよび静電スプレーの一般的な吹き付け技法および吹き付け設備については、手動方法あるいは自動方法のどちらで用いてもよい。ベースコートを支持体に塗布する過程で、支持体上に形成されるベースコートの膜厚は、多くの場合、0.1〜5ミル(2.5〜127マイクロメートル)または0.1〜2ミル(2.5〜50.8マイクロメートル)である。
【0117】
支持体上に反射コーティングの膜を形成した後、次のコーティング組成物を塗布する前に、反射コーティングを硬化させてもよいし、あるいは、加熱または風乾してベースコート膜から溶媒を除去する乾燥ステップに付してもよい。好適な乾燥条件は、個々のベースコート組成物によって異なるものであり、組成物が水性である場合は、周囲湿度であるが、多くの場合、乾燥時間は1〜15分で、温度は75°F〜200°F(21℃〜93℃)が適切である。
【0118】
本発明の反射面は、本発明の粉末コーティング組成物から堆積された、色を与える非隠蔽性コーティング層で少なくとも一部がコーティングされたものである。本明細書で使用する場合、「非隠蔽性コーティング層」という語は、表面に堆積されている場合に、コーティング層の下の表面が目に見えるコーティング層をいう。本発明の特定の実施形態では、非隠蔽性層を乾燥膜厚さ0.5〜5.0ミル(12.7〜127ミクロン)に塗布した場合、非隠蔽性コーティング層の下の表面が目に見える。非隠蔽性の評価法の1つは、不透明度を測定することである。本明細書で使用する場合、「不透明度」とは、材料が支持体を見えにくくする度合いをいう。
【0119】
本明細書において、「不透明度パーセント」とは、同等に塗布および乾燥が行われた、反射率が5%未満の黒い支持体を覆う乾燥コーティング膜の反射率と、反射率が85%の支持体を覆う同じコーティング膜の反射率との比をいう。乾燥コーティング膜の不透明度パーセントは、被膜の乾燥膜の厚さおよび色を与える粒子の濃度によって異なる。本発明の特定の実施形態では、色を与える非隠蔽性コーティング層は、乾燥膜の厚さが1ミル(約25ミクロン)で不透明度パーセントが、90パーセント以下(50パーセント以下など)である。
【0120】
本発明の反射面の特定の実施形態では、クリアコート層を、色を与える非隠蔽性コーティング層の少なくとも一部に堆積させる。クリアコート層は、一般的な任意の膜形成樹脂を含む組成物から堆積され得、色を与える非隠蔽性層に塗布して、表面下部に対するさらなる深さおよび/または保護特性を与え得る。クリアコートの樹脂バインダーは、粉末コーティング組成物、有機溶媒ベースのコーティング組成物または水性コーティング組成物として実施され得る。クリアコート組成物に加えるのに好適な任意の成分として、前述の材料など、表面コーティングを配合する当該分野において周知の成分が挙げられる。クリアコート組成物を、任意の従来のコーティング手法、とりわけブラッシング、吹き付け、浸漬またはフローイングなどにより支持体に塗布し得る。
【0121】
特定の実施形態では、本発明の粉末コーティング組成物から堆積された被膜は、上述のような最大ヘイズが10%の複数のポリマー被覆ナノ粒子を含まない類似の粉末コーティング組成物と比べると、「より濃い」色を示す。このため、本発明は、粉末コーティング組成物から堆積された被膜の色の濃度を高める方法に関する。これらの方法は、最大ヘイズが10%である複数のポリマー被覆ナノ粒子を粉末コーティング組成物に含ませることを含むものである。本明細書で使用する場合、「色の濃度」という語は、引用部分を本明細書に援用する米国特許第5,792,559号の第1欄34〜64行に記載されているようなCIELAB表色系のL値をいい、L値が低下すると、色の濃度レベルは高くなる。本発明においては、種々の角度での色の測定を、X−Rite Instruments,Inc.から市販されているMA68I Multi−angle分光光度計など、X−RITE社の分光光度計を用いて行うことができる。
【0122】
本発明はまた、液体コーティング組成物から堆積された、予め選択された保護被膜および装飾被膜の色をマッチングさせる方法にも関する。本発明者らは、本発明の粉末コーティング組成物には、従来技術による粉末コーティング組成物と異なり、液体コーティング組成物から堆積された被膜と類似した色特性を示す被膜を製造する能力があることを発見した。このため、本発明の粉末コーティング組成物を、液体コーティング組成物から堆積された被膜のカラーマッチングに用いることができる。これらの方法は:(a)予め選択された被膜の吸光度または反射率を測定して、予め選択された被膜の可視色を決定することと、(b)最大ヘイズが10%である複数のポリマー被覆ナノ粒子を含む粉末コーティング組成物を製造することとを含み、粉末コーティング組成物から作製された被膜が、予め選択された被膜の可視色とマッチングする。これらの方法では、(上記のような)分光光度計を用いて予め選択された被膜の吸光度または反射率を決定し、可視スペクトルの波長範囲全体にわたる吸光度または反射率の曲線を作成する。この曲線を可視吸光度スペクトルまたは可視反射率スペクトルという。粉末コーティング組成物から堆積された被膜の可視吸光度スペクトルまたは可視反射率スペクトルが予め選択された被膜の可視吸光度スペクトルまたは可視反射率スペクトルと厳密に一致するように、最大ヘイズが10%である複数のポリマー被覆ナノ粒子を含む粉末コーティング組成物を製造する。
【0123】
以下の実施例は、本発明を説明するものであるが、実施例を、本発明を実施例の細部に限定するものとみなすべきではない。実施例において、および本明細書を通じて、部および百分率はすべて、他に指定がない限り重量による。
【実施例】
【0124】
(実施例1)
(ポリウレタン分散物)
この実施例では、後に実施例2〜4のポリウレタン/ナノ顔料分散物の生成に使用したポリウレタン分散物の調製について説明する。以下に示した成分比率の混合物からポリウレタン分散物を調製した:
【0125】
【表1】

ポリ(ネオペンチルグリコールアジパート)の数平均分子量は1000である。
【0126】
電子温度プローブ、メカニカルスターラー、冷却器および加熱マントルを備えた4口丸底フラスコでポリウレタン分散物を調製した。フラスコ内で仕込みIを温度90℃で5分撹拌した。仕込みIIを加えて、この混合物を60℃まで冷却した。10分間にわたり仕込みIIIを加えた。仕込みIVを加えて、得られた混合物を45分にわたり90℃まで徐々に加熱し、次いで90℃で3時間保持した。別のフラスコ内で仕込みVを撹拌し、80℃まで加熱した。仕込みI、II、IIIおよびIVの反応生成物3000.0gを30分にわたり仕込みVに加えた。仕込みVIを加え、得られた混合物を室温まで冷却した。最終生成物は、半透明のエマルジョンであり、酸価が12.1、ブルックフィールド粘度が872センチポアズ(スピンドル番号3を30rpmとした)、pHが7.75、110℃で1時間測定したときの不揮発分が29.4%であった。
【0127】
(実施例2)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散物)
この実施例では、ナノサイズのPB15:3のフタロシアニンブルー顔料分散物の調製について説明する。この分散物を以下に示した成分比率の混合物から調製した:
【0128】
【表2】

BASF Corp.社製の市販品。
【0129】
これらの成分を、エアモータに連結した4.5インチのコールズブレード(Cowles blade)を用いて混合した。次いで、この混合物を、粉砕媒体である1.2〜1.7mmのZirconox YTZ(登録商標)353mlを含むPremier Mill社のPSM−11バスケットミルにて、混合ブレード速度1000fpmおよびポンプ速度960rpmで1.25時間、予め分散させてから、1リットルの摩砕チャンバー内に摩砕媒体である0.3mmのZirconox YTZ(登録商標)500mlを含むDrais社のAdvantis V15ミルにより再循環させた。この混合物を、1400rpmでポンプ速度を19rpmに設定して合計15時間粉砕した。白黒のLeneta紙上に引き出されたサンプルの薄膜の透明度における変化を視覚的に観察して、粉砕の進行状況をモニターした。仕込みIIを加え、得られた混合物を5分撹拌した。仕込みIIIを2つのアリコートに分けて5分にわたり加えた。最終生成物は、シアン(ブルー)の液体であり、ブルックフィールド粘度が356センチポアズ(スピンドル番号3を30rpmとした)、pHが7.29および110℃で1時間測定したときの不揮発分が28.9%であった。
【0130】
(実施例3)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散物)
この実施例では、ナノサイズのPR122のキナクリドンマゼンタ顔料分散物の調製について説明する。この分散物を以下に示した成分比率の混合物から調製した:
【0131】
【表3】

Sun Chemical社製の市販品。
【0132】
これらの成分を、エアモータに連結した4.5インチのコールズブレードを用いて混合した。次いで、この混合物を、粉砕媒体である1.2〜1.7mmのZirconox YTZ(登録商標)353mlを含むPremier Mill社のPSM−11バスケットミルにて、混合ブレード速度1000fpmおよびポンプ速度960rpmで1.5時間、予め分散させてから、1リットルの摩砕チャンバー内に摩砕媒体である0.3mmのZirconox YTZ(登録商標)500mlを含むDrais社のAdvantis V15ミルにより再循環させた。この混合物を1260fpmでポンプ速度を19rpmに設定して合計15時間粉砕した。白黒のLeneta紙上に引き出されたサンプルの薄膜の透明度における変化を視覚的に観察して粉砕の進行状況をモニターした。仕込みIIを加え、得られた混合物を5分撹拌した。仕込みIIIを2つのアリコートに分けて5分にわたり加えた。最終生成物は、マゼンタの液体であり、ブルックフィールド粘度が28.1センチポアズ(スピンドル番号3を30rpmとした)、pHが7.61および110℃で1時間測定したときの不揮発分が28.2%であった。
【0133】
(実施例4)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散物)
この実施例では、ナノサイズのPY128のジアゾ黄色顔料分散物の調製について説明する。以下に示した成分比率の混合物からこの分散物を調製した:
【0134】
【表4】

CIBA社製の市販品。
【0135】
これらの成分をエアモータに連結した4.5インチのコールズブレードを用いて混合した。次いで、この混合物を、粉砕媒体である1.2〜1.7mmのZirconox YTZ(登録商標)353mlを含むPremier Mill社のPSM−11バスケットミルにて、混合ブレード速度1000fpmおよびポンプ速度960rpmで4.7時間、予め分散させてから、1リットルの摩砕チャンバー内に摩砕媒体である0.3mmのZirconox YTZ(登録商標)500mlを含むDrais社のAdvantis V15ミルにより再循環させた。この混合物を1400rpmでポンプ速度を19rpmに設定して合計18時間粉砕した。白黒のLeneta紙上に引き出されたサンプルの薄膜の透明度における変化を視覚的に観察して粉砕の進行状況をモニターした。仕込みIIを加え、得られた混合物を5分撹拌した。仕込みIIIを2つのアリコートに分けて5分にわたり加えた。最終生成物は、黄色の液体であり、ブルックフィールド粘度が48.1センチポアズ(スピンドル番号3を30rpmとした)、pHが7.40および110℃で1時間測定したときの不揮発分が29.4%であった。
【0136】
(実施例5)
(ナノ顔料分散物のドラム乾燥)
この実施例では、実施例3の液体ポリウレタン/ナノ顔料分散物を、後に粉末コーティング組成物を調製する際に使用する粉末のフィードストックへと機械的に粉砕するのに好適な乾燥材料に変換することについて説明する。上記の実施例3に記載の分散物を、ギャップが10ミルのBufolvak 6インチ×8インチのダブルドラム乾燥機セットを用いて、ドラム温度240°F、2.9rpmで回転させて乾燥させた。得られた材料は、大きな粉末に砕けやすいレース状のシートになっており、110℃で1時間測定したとき、不揮発分は、96.0%であった。
【0137】
(実施例6)
(ポリウレタン分散物)
この実施例では、その後、実施例7〜9および13のポリウレタン/ナノ顔料分散物の形成にそれぞれ用いたポリウレタン分散物の調製について説明する。このポリウレタン分散物を以下に示した成分比率の混合物から調製した:
【0138】
【表5】

ポリ(ブチレンオキシド)の数平均分子量は1000である。
【0139】
このポリウレタン分散物を、電子温度プローブ、メカニカルスターラー、冷却器および加熱マントルを備えた4口丸底フラスコで調製した。フラスコ内で仕込みIを温度125℃で5分撹拌した。仕込みIIを加えて、この混合物70℃まで冷却した。仕込みIIIを10分間にわたり加えた。仕込みIVを加え、得られた混合物を90分にわたり90℃まで徐々に加熱してから、90℃で1時間保持した。仕込みVを別のフラスコで撹拌し、60℃まで加熱した。仕込みI、II、IIIおよびIVの反応生成物1387.8gを仕込みVに10分にわたり加えた。仕込みVIを加え、得られた混合物を室温まで冷却した。最終生成物は、半透明のエマルジョンであり、酸価が12.5、ブルックフィールド粘度が3710センチポアズ(スピンドル番号5を60rpmとした)、pHが7.6および110℃で1時間測定したときの不揮発分が29.4%であった。
【0140】
(実施例7)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散物)
この実施例では、ナノサイズのPB15:3のフタロシアニンブルー顔料分散物の調製について説明する。この分散物を以下に示した成分比率の混合物から調製した:
【0141】
【表6】

これらの成分を、Ross社のローター/ステーター式ミキサー(モデル番号HSM−100L)により2.5時間混合し、次いで、1リットルの摩砕チャンバー内に摩砕媒体である0.3mmのZirconox YTZ(登録商標)500mlを含むDrais社のAdvantis V15ミルにより再循環させた。この混合物を1400rpmで合計19.0時間粉砕した。白黒のLeneta紙上に引き出されたサンプルの薄膜の透明度における変化を視覚的に観察して、粉砕の進行状況をモニターした。仕込みIIを加え、得られた混合物を11℃で5分撹拌した。仕込みIIIを2つのアリコートに分けて5分にわたり加えた。この混合物の温度を13℃まで昇温させた。最終生成物は、青色の液体であり、ブルックフィールド粘度が26センチポアズ(スピンドル番号1を60rpmとした)、pHが7.2および110℃で1時間測定したときの不揮発分が30.0%であった。
【0142】
(実施例8)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散物)
この実施例では、ナノサイズのPR122のキナクリドンマゼンタ顔料分散物の調製について説明する。この分散物を以下に示した成分比率の混合物から調製した:
【0143】
【表7】

これらの成分を、Ross社のローター/ステーター式ミキサー(モデル番号HSM−100L)を用いて4時間混合し、次いで、1リットルの摩砕チャンバー内に摩砕媒体である0.3mmのZirconox YTZ(登録商標)500mlを含むDrais社のAdvantis V15ミルにより再循環させた。この混合物を1400rpmで合計23時間粉砕した。白黒のLeneta紙上に引き出されたサンプルの薄膜の透明度における変化を視覚的に観察して、粉砕の進行状況をモニターした。仕込みIIを加え、得られた混合物を24℃で5分撹拌した。仕込みIIIを2つのアリコートに分けて5分にわたり加えた。この混合物の温度を26℃まで昇温させた。最終生成物は、マゼンタの液体であり、ブルックフィールド粘度が27センチポアズ(スピンドル番号1を60rpmとした)、pHが7.4および110℃で1時間測定したときの不揮発分が29.3%であった。
【0144】
(実施例9)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散物)
この実施例では、ナノサイズのPY128のジアゾ黄色顔料分散物の調製について説明する。この分散物を以下に示した成分比率の混合物から調製した:
【0145】
【表8】

これらの成分を、Ross社のローター/ステーター式ミキサー(モデル番号HSM−100L)を用いて5.5時間混合し、次いで、1リットルの摩砕チャンバー内に摩砕媒体である0.3mmのZirconox YTZ(登録商標)500mlを含むDrais社のAdvantis V15ミルにより再循環させた。この混合物を1400rpmで合計23時間粉砕した。白黒のLeneta紙上に引き出されたサンプルの薄膜の透明度における変化を視覚的に観察して、粉砕の進行状況をモニターした。仕込みIIを加え、得られた混合物を5分撹拌した。仕込みIIIを2つのアリコートに分けて5分にわたり加えた。最終生成物は、黄色の液体であり、ブルックフィールド粘度が53センチポアズ(スピンドル番号1を60rpmとした)、pHが7.3および110℃で1時間測定したときの不揮発分が28.8%であった。
【0146】
(実施例10)
(粉末コーティング組成物中間体の調製)
この実施例では、その後の実施例の粉末コーティング組成物を製造するのに用いる乾燥材料のコア配合物の調製について説明する。コア配合物を以下に示した比率の成分から調製した:
【0147】
【表9】

DSM Resins社製の市販品
EMS社製の市販品
Estron Chemical社製の市販品
GCA Chemical社製の市販品
10Clariant社製の市販品
11CIBA社製の市販品
12Bayer Chemical社製の市販品
13Palmer Supplies社製の市販品。
【0148】
構成成分1〜9を、Henschel Blenderにて1000rpmで1分間前混合した。次いで、この混合物を、Coperion W&P社の30mm同時回転2軸スクリュー押出機によりスクリュー速度340rpmおよび平均トルク30〜40%で押し出した。押出機は、米国特許出願公開第2005/0213423号;同第2005/0212159号;および同第2005/0212171号に記載されているような低圧注入システムおよび5つの独立温度制御ゾーンを備えたものであった。5つの独立温度制御ゾーンについては、以下の温度で制御した:ゾーン1:60℃;ゾーン2:120℃;ゾーン3:130℃;ゾーン4:120℃;ゾーン5:100℃。押出物を冷却し、機械的粉砕システムで粒径約28〜30ミクロンまで摩砕した。大き過ぎる粒子を除去して、構成成分10を加えた。
【0149】
(実施例11)
(粉末コーティング組成物の調製)
種々の粉末コーティング組成物を、実施例10の粉末コーティング組成物中間体および実施例2〜4および7〜9のポリウレタン/ナノ顔料分散物に加えて、これら分散物の様々な混合物(重量比で90:10〜10:90の範囲)から調製した。粉末コーティング組成物をそれぞれ、Coperion W&P社の30mm同時回転2軸スクリュー押出機および実施例10に記載の条件により調製した。この押出機は、米国特許出願公開第2005/0213423号;同第2005/0212159号;および同第2005/0212171号に記載されているような低圧注入システムおよび5つの独立温度制御ゾーンを備えたものであった。低圧注入システムを介して、実施例10の粉末コーティング組成物中間体を押出機に1分当たり280グラムの量で入れて、顔料分散物を押出機に1分当たり105グラムの量で入れた。ゾーン4は、揮発性蒸気を除去できるように揮発分除去口を備えていた。この押出物を冷却して、機械的粉砕システムで粒径約28〜30ミクロンまで摩砕した。
【0150】
(実施例12)
(カラーマッチングの方法)
この実施例では、液体コーティング組成物から堆積された有色被膜の色をマッチングさせる、本発明の粉末コーティング組成物の能力が改善したことを示す。この実施例では、液体コーティング組成物から作製された紫/マゼンタの有色被膜を標準皮膜とした。MA68I Multi−angle分光光度計により様々な視角で測定した色データを表1に示す。粉末コーティングAは、標準顔料しか含まない粉末コーティング組成物を用いて得られた最もよいカラーマッチングを示したものである。粉末コーティングBは、実施例2〜4および7〜9のナノ顔料分散物の組み合わせを含む粉末コーティング組成物を用いて得られた最もよいカラーマッチングを示すものである。
【0151】
【表10】

この実施例では、「C」の値が正の傾向であることが観察されており、したがって、フェースアングル(15および25)で標準皮膜とのカラーマッチングが比較的良好であることを示す。フロップアングル(45,75,110)を測定すると、負の傾向は、より暗くて望ましい彩度傾向が示される。上記のサンプルの場合では、3つの角度がすべて当初の粉末に対して値が低下しており、したがって、マッチングがより標準皮膜に近いものとなった。
【0152】
(実施例13)
(ポリウレタン/ナノ顔料分散物)
この実施例では、ナノサイズのPR−179のペリレン赤顔料分散物の調製について説明する。この分散物を以下に示した成分比率の混合物から調製した:
【0153】
【表11】

14Sun Chemical社製の市販品。
【0154】
これらの成分を混合し、1リットルの摩砕チャンバー内に摩砕媒体である0.3mmのZirconox YTZ(登録商標)500mlを含むDrais社のAdvantis V15ミルにより再循環させた。この混合物を最大1350rpmで合計42.75時間粉砕した。最終生成物は、赤色の液体であり、110℃で1時間測定したとき、不揮発分は39.4%であった。
【0155】
(実施例14)
この実施例では、2種類の粉末コーティング組成物を、実施例10に記載の成分および方法により調製した。実施例14aに関しては、Sun Chemicalから市販されているPR179顔料の3重量部を実施例10の組成物に含ませた。実施例14bについては、ポリウレタン/ナノ顔料分散物の3重量部を実施例10の組成物に含ませた。実施例14aおよび14bの粉末コーティング組成物を4インチ×12インチの電着パネルに静電気的に塗布した。このパネルを適当な高温で硬化させて、周囲温度まで冷却した。MA68I Multi−angle分光光度計を用いて種々の視角で色データを測定した。その結果を表1に示し、実施例14aとを比較した実施例14bについての値の差として報告してある。
【0156】
【表12】

この実施例では、「L」の値が低下から、色の濃度および発色が示された。
【0157】
当業者ならば、上記の実施形態に対して、その広範な意図される概念から逸脱することなく変更が可能であることを理解する。したがって、本発明に関しては、開示した個々の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に規定するような本発明の主旨および範囲の範囲内にある変形が含まれることが意図されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー被覆粒子を含む水性分散物であって、前記ポリマー被覆粒子が、脆いポリマーによって被覆された粒子を含む、水性分散物。
【請求項2】
前記粒子は、ナノ粒子を含む、請求項1に記載の水性分散物。
【請求項3】
前記ナノ粒子は、無機ナノ粒子を含む、請求項2に記載の水性分散物。
【請求項4】
前記ナノ粒子は、コロイド状シリカ、ヒュームドシリカ、無定形状シリカ、アルミナ、コロイド状アルミナ、二酸化チタン、酸化鉄、酸化セシウム、酸化イットリウム、コロイド状イットリア、コロイド状ジルコニア、無定形状ジルコニアおよびこれらの混合物から選択される無機ナノ粒子を含む、請求項3に記載の水性分散物。
【請求項5】
前記無機ナノ粒子は、混合金属酸化物を含む、請求項3に記載の水性分散物。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、最大ヘイズが10%である、請求項2に記載の水性分散物。
【請求項7】
前記ナノ粒子は、有機ナノ粒子を含む、請求項2に記載の水性分散物。
【請求項8】
前記有機ナノ粒子は、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン(すなわち、トリフェンジオキサジン)、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンタントロン、フラバントロン、インダントロン、ペリノン、ピラントロン、チオインジゴ、4,4’−ジアミノ−1,1’−ジアントラキノニル、アゾ化合物、これらの置換誘導体およびこれらの混合物から選択される有機顔料を含む、請求項7に記載の水性分散物。
【請求項9】
前記脆いポリマーは、(i)重合ポリエステルポリウレタンと(ii)エチレン性不飽和モノマーとの反応生成物を含む、請求項1に記載の水性分散物。
【請求項10】
前記重合ポリエステルポリウレタンは、末端エチレン性不飽和を持つポリエステルポリウレタンを含む、請求項9に記載の水性分散物。
【請求項11】
末端エチレン性不飽和を持つ前記ポリエステルポリウレタンは、
(a)ポリイソシアナートと、
(b)ポリエステルポリオールと、
(c)エチレン性不飽和基および活性水素基を含む材料と
を含む反応物質から調製される、請求項10に記載の水性分散物。
【請求項12】
末端エチレン性不飽和を持つ前記ポリエステルポリウレタンは、
(d)ポリアミンと、
(e)酸官能基または酸無水物と、イソシアナート基またはヒドロキシル基と反応する官能基とを含む材料と
をさらに含む反応物質から調製される、請求項11に記載の水性分散物。
【請求項13】
前記重合ポリエステルポリウレタンは、水分散性である、請求項9に記載の水性分散物。
【請求項14】
前記重合ポリエステルポリウレタンは、重量平均分子量が1モル当たり40,000〜80,000グラムである、請求項9に記載の水性分散物。
【請求項15】
請求項1に記載の水性分散物から生成された、粉末コーティング組成物。
【請求項16】
少なくとも一部が、請求項15に記載の粉末コーティング組成物から堆積される被膜でコーティングされた、支持体。
【請求項17】
前記支持体は、金属支持体を含む、請求項16に記載の支持体。
【請求項18】
少なくとも1つのコーティング層は、請求項15に記載の粉末コーティング組成物から堆積される、多層複合被膜。
【請求項19】
前記粉末コーティング組成物は、
(1)押出機に
(a)請求項1に記載の水性分散物と、
(b)乾燥材料と
を含む構成成分を導入することと、
(2)前記押出機内で(a)および(b)をブレンドすることと、
(3)前記ブレンドの揮発成分を除去して押出物を生成することと、
(4)前記押出物を冷却することと、
(5)前記押出物を所望の粒径に粉砕することと
を含む方法で製造される、請求項15に記載の粉末コーティング組成物。
【請求項20】
ポリマー被覆粒子の水性分散物を製造する方法であって、
(1)水性媒体中に
(a)粒子と、
(b)エチレン性不飽和モノマーと、
(c)水分散性の重合性分散剤と
を含む混合物を提供することと、
(2)前記エチレン性不飽和モノマーおよび重合性分散剤を重合させて、水分散性ポリマーを含むポリマー被覆粒子を形成することと
を含み、
前記方法は、前記混合物を高応力剪断条件に付すステップを含まない、方法。
【請求項21】
前記粒子は、ステップ(1)の後、ナノ粒子に形成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記水分散性の重合性分散剤は、重合ポリエステルポリウレタンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記重合ポリエステルポリウレタンは、重量平均分子量が1モル当たり40,000〜80,000グラムである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項20に記載の方法で調製された水性分散物から形成される、粉末コーティング組成物。
【請求項25】
ポリマー被覆粒子を製造する方法であって、
(1)水性媒体中に:
(a)粒子と、
(b)エチレン性不飽和モノマーと、
(c)水分散性の重合性分散剤と
の混合物を提供することと、
(2)前記エチレン性不飽和モノマーおよび重合性分散剤を重合させて、脆いポリマーを含むポリマー被覆粒子を含む水性分散物を形成することと、
(3)前記水性分散物から水を除去して、前記ポリマー被覆粒子を含む固体材料を生成することと、
(4)前記固体材料を微粒子化することと
を含む、方法。
【請求項26】
最大ヘイズが10%の複数のポリマー被覆ナノ粒子を含む粉末コーティング組成物から堆積された、色を与える非隠蔽性コーティング層で少なくとも一部がコーティングされた、反射面。

【公表番号】特表2009−523887(P2009−523887A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551291(P2008−551291)
【出願日】平成19年1月10日(2007.1.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/000637
【国際公開番号】WO2008/033154
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】