説明

ポリメチンマーカー色素を使用したタンパク質分析方法およびキット

【課題】リポタンパク質のサブクラスパターンを分析する方法を提供すること。
【解決手段】特定構造のポリメチンを含有するマーカー色素を使用して、試料中のタンパク質を光学的に検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を光学的に検出するためのキット、タンパク質を光学的に検出する方法、タンパク質を分析する方法、及び試料中のタンパク質を光学的に検出するためのポリメチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
血漿リポタンパク質の循環レベルの測定は、脂質輸送の原発性障害及び続発性障害の診断において、またアテローム性動脈硬化症及び冠状動脈疾患に関する危険性評価において重要である。絶食状態で、3つの主要なリポタンパク質クラス:VLDL(超低密度リポタンパク質)、LDL(低密度リポタンパク質)及びHDL(高密度リポタンパク質)が確認されており、それらはそれぞれ、サイズ及び密度、並びに脂質及びアポリポタンパク質組成が異なる。
【0003】
早期冠状動脈性心臓疾患の危険性と総血漿コレステロール及び血漿LDL−コレステロール(LDL−C)との間に正の相関が見られることが十分確立されている。同様に、HDL−コレステロール(HDL−C)の減少と血漿TG(トリグリセリド)の増加との間にも相関が見られる。LDLのサイズ及び密度の不均一性は十分裏付けされており、また臨床的関連性を有することも示されている。小さくて濃密なLDL(パターンB)は、大きくて低密度のLDL(パターンA)と比較して増大された相対危険性を有する。冠状動脈疾患の危険性と関連される最も有力な脂質/リポタンパク質パターンの1つは、アテローム発生性リポタンパク質表現型(ALP)であり、これは中程度に上昇した血漿TG、低レベルのHDL−C、高い総コレステロールと高いLDL−C、及び、小さくて濃密なLDL粒子を特徴とする。HDL、LDL及びVLDLの測定方法が臨床検査室で利用可能であるが、優勢LDLサブクラスの同定方法は、技術的に困難であり、時間を浪費する。
【0004】
物理的特性の差に基づく血漿リポタンパク質レベルの分離及び分析に関する主な方法としては、超遠心分離、電気泳動及び差分沈殿が挙げられる。これらのうちで、超遠心分離は、血漿リポタンパク質の分析に関する「究極の判断基準」として従来技術では理解されており、分離されたリポタンパク質の脂質及びアポリポタンパク質組成が分析され得る場合に、最大量の情報を潜在的に提供する。
【0005】
密度勾配遠心分離に関する方法は概して、塩溶液に基づいており、血漿、及び各遠心分離工程又は不連続勾配若しくは連続勾配での遠心分離後の下澄液(infranatants)の密度の調節を伴う順次浮遊(flotation:浮選)を包含する。塩勾配の使用は、多数の不利点を有する。これらは、調製するのが技術的に困難であり、比較的不安定であり、再現性を達成するのが困難である。さらに、多くの場合、リポタンパク質を勾配へ浮遊させるためには長期にわたる遠心分離の必要があり、高い塩濃度はタンパク質構造を改質させて、リポタンパク質分画からのアポリポタンパク質の損失を招き得る。リポタンパク質分画のさらなる分析のために、例えば透析により塩を除去することが通常必要である。このことは、材料の損失及び乏しい回収率をもたらす。
【0006】
したがって、患者のアテローム発生危険性をより良好に特性化するために、及び患者を管理するためのより多くの情報を得るために、リポタンパク質を分析する改善された方法、特にリポタンパク質のサブクラスパターンを特性化する改善された方法を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、タンパク質、特にリポタンパク質を検出及び分析するための改善されたキット並びに方法を提供することである。目的は、独立請求項により解決される。好ましい実施形態は、従属請求項により示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態によれば、試料中のタンパク質、特にリポタンパク質を光学的に検出するためのキットが提供される。上記キットは、タンパク質、特にリポタンパク質の分離を実施するためのチップであって、試料を受け取るための少なくとも1つのウェル、及び少なくとも1つのウェルに連結され且つ種々の化合物を分離するように適応されている分離チャネルを含むチップを含む。
【0009】
この実施の形態によれば、上記キットは、一般式I
【化1】

を含む非対称ポリメチンを含有するマーカー色素を含む。
【0010】
式中、Zは、一般式IIa
【化2】

または一般式IIb
【化3】

または一般式IIc
【化4】

を有するベンゾオキサゾール、ベンゾジアゾール、2,3,3−トリメチルインドリニン、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドリニン、3−ピコリン及び4−ピコリン、リピジン、キナジン並びに9−メチルアクリジンの誘導体の置換誘導体であり、Xは、O、S、Si、N−アルキル及びC(アルキル)から成る群から選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
〜R14は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、直鎖アルケニル又は分岐アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アルキル置換アミン及び環状アミンから成る群から選択され、並びに/或いは互いにオルト位における2つ以上のフラグメント、例えばR10とR11又はRとRとRは、別のシクロアルキル環若しくはシクロアルキル環構造、複素環若しくは複素環構造、ヘテロアリール環構造又は芳香族環若しくは芳香族環構造を一緒に形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
特に、上記で定義されるようなマーカー色素が、他の型のタンパク質若しくは核酸に対してあまり染色活性を有しないか、又は全く染色活性を有さずに、リポタンパク質粒子の疎水性内部区画に対して高い親和性を有するという点で、上記キットはリポタンパク質の分析に好適である。例えばヒト血清試料をこの色素と混合すること、及び続く微小流体チップにおける電気泳動的分析により、リポタンパク質の高密度リポタンパク質(HDL)亜分画は、低密度リポタンパク質(LDL)亜分画と基線分離(baseline separated)され得る。
【0012】
さらに、HDL亜分画は、定量的に分析することができる少なくとも4つ〜5つの個々の亜集団へ分離され得る。
【0013】
このキットにより、リポタンパク質クラス分布、即ちHDL対LDLの割合に関して、並びにHDLサブパターン及びLDLサブパターンに関して、例えば患者の血清試料に対する迅速且つ再現性のある分析が可能となる。
【0014】
本発明のさらなる実施形態によれば、試料中のタンパク質、特にリポタンパク質の分析方法が提供される。当該方法は、タンパク質、特にリポタンパク質が少なくとも一次元で分離される工程を含む。当該方法は、タンパク質、特にリポタンパク質が、上記で定義されるような一般式Iを有するポリメチンを含有するマーカー色素で標識される工程をさらに含む。当該方法は、分離され且つ標識されたタンパク質、特に標識されたリポタンパク質を光学的に検出する工程をさらに含む。
【0015】
本発明の実施形態はさらに、試料中のリポタンパク質を光学的に検出する方法に関し、ここで当該方法は、上記で定義されるような一般式(I)を有するポリメチンを含有するマーカー色素でリポタンパク質を標識する工程を含む。
【0016】
最終的に、本発明の実施形態は、一般式Iを有するポリメチンでタンパク質を標識することにより、リポタンパク質を光学的に検出するための、並びに/或いはリポタンパク質クラス分布の分析のための、並びに/或いは試料中のHDLサブクラスパターン及び/又はLDLサブクラスパターンの分析のための上記で定義されるような一般式Iを有するポリメチンの使用に関する。
【0017】
本発明の実施形態は、任意の種類のデータ記憶媒体上に保存させることができるか、或いはそうでなければ任意の種類のデータ記憶媒体により提供することができ、且つ任意の適切なデータ処理装置において又は任意の適切なデータ処理装置により実行され得る1つ又は複数の適切なソフトウェアプログラムにより部分的に若しくは完全に具現化又は支持され得る。ソフトウェアプログラム又はルーチンは好ましくは、例えば標識されたリポタンパク質を検出する工程において、又は得られた信号を較正するか若しくは得られた信号をゲル様画像へ変換する工程において、タンパク質を分析する方法に適用させることができる。例えば、本発明の実施形態による較正工程は、コンピュータプログラムにより、即ちソフトウェアにより、又は1つ又は複数の特殊電子最適化回路を使用することにより、即ちハードウェアにおいて、又はハイブリッド形態で、即ちソフトウェア構成要素及びハードウェア構成要素を用いて実現され得る。
【0018】
キットのさらなる例示的な実施形態は以下に記載される。しかしながら、これらの実施形態もまた、リポタンパク質を分析する方法、リポタンパク質を光学的に検出する方法、並びにリポタンパク質を光学的に検出するための、並びに/或いはリポタンパク質クラス分布の分析のための、並びに/或いはHDLサブクラスパターン及び/又はLDLサブクラスパターンの分析のための一般式Iのポリメチンの使用に適用される。
【0019】
キットの好ましい実施形態によれば、分離チャネルは、電気泳動的に、クロマトグラフィ的に又は電気クロマトグラフィ的に種々の化合物を分離するように適応されている。
【0020】
キットのさらに好ましい実施形態によれば、分離チャネルは、SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)、キャピラリー電気泳動及びマイクロチャネル/微小流体チャネル電気泳動から成る群から選択される電気泳動により電気泳動的に種々の化合物を分離するように適応されている。
【0021】
キットのさらに好ましい実施形態によれば、チップは、分離チャネルにわたって電界を印加するための素子をさらに含む。
【0022】
キットのさらに好ましい実施形態によれば、チップは、ガラス、石英、シリカ、シリコン及びポリマーから成る群から選択される材料を含む。
【0023】
さらに好ましい実施形態によれば、キットは、分離ゲルをさらに含む。
【0024】
キットのさらに好ましい実施形態によれば、分離ゲルは、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレンオキシド及びポリビニルピロリドンから成る群から選択され、好ましくはポリジメチルアクリルアミドである。
【0025】
さらに好ましい実施形態によれば、キットは、較正試料をさらに含む。
【0026】
キットのさらに好ましい実施形態によれば、較正試料は「ラダー」である。
【0027】
置換基R〜R14の少なくとも1つはまた、これらの色素の親水特性を確定するシクロデキストリン、糖、SO、PO2−、COO又はNRのような可溶化置換基又はイオン性置換基又はイオン化置換基であり得る。かかる置換基は、スペーサー基を用いてマーカー色素に結合されてもよい。例えば、当該可溶化基又はイオン性基は、脂肪族基又はヘテロ脂肪族基を介して結合される。
【0028】
さらに、置換基R〜R14の少なくとも1つは、タンパク質又はリポタンパク質と反応して、共有結合又は非共有結合を形成することが可能である反応性基であることが好ましい。かかる置換基もまた、スペーサー基を用いて色素に結合され得る。かかる反応性基の例は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル基、マレイミド基及びホスホアミダイト基から成る群から選択される。
【0029】
さらに好ましい実施形態によれば、R〜R14は独立して、水素、塩素、臭素及び脂肪族基又は単核芳香族基(それぞれ、炭素及び水素の他に置換基として、最大4つの酸素原子及び0個、1個若しくは2個の窒素原子又は硫黄原子又は硫黄及び窒素原子を含有してもよく、或いは水素又は最大8個の炭素原子を有する少なくとも1つの置換基(当該置換基は、炭素、水素及び最大2個のスルホン酸基から成る群から選択される)が結合されている窒素原子を有するアミノ官能性を表し得る多くても12個の炭素原子を有する)から成る群から選択される。
【0030】
さらに好ましい実施形態によれば、基R〜R14のいずれかは脂肪族であり、1個〜6個の炭素原子を含有する。
【0031】
さらに、Rは、ピラン環に対してα位に第四級C原子を有する置換基であることが好ましい。かかる置換基の例はt−ブチル(−C(CH)、フェニル及びアダマンチル(−C1015/トリクロロ[3.3.1.13,7]デシル)である。R1=−(CHであることが特に好ましい。
【0032】
さらに好ましい実施形態によれば、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及び/又はR13は水素である。
【0033】
さらに好ましい実施形態によれば、Rは、アミン又はアルキル置換アミンである。R=−N(CHCHであることが特に好ましい。
【0034】
代替的な実施形態によれば、R及びRは、飽和、部分的飽和若しくは不飽和の置換又は無置換の複素環、好ましくは、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは1つ又は複数の窒素原子、より好ましくは1つの窒素原子を含有する6員複素環を形成する。最も好ましくは、複素環の窒素原子はRに相当し、且つ/又は例えばエチル基により置換される。複素環が1つの二重結合を含有することはさらに好ましい。
【0035】
さらなる代替的な実施形態によれば、R、R及びRは、飽和、部分的飽和若しくは不飽和の置換又は無置換の二環式構造、好ましくは、1つ又は複数のヘテロ原子、好ましくは1つ又は複数の窒素原子、より好ましくは1つの窒素原子を含有する10員二環を形成する。最も好ましくは、複素環の窒素はRに相当する。二環式構造は飽和されており、且つ/又は無置換であることがさらに好ましい。
【0036】
さらに好ましい実施形態によれば、R14は、ヒドロキシル及び/又はカルボキシルで置換された或いは無置換のアルキルである。かかる置換基の例は、−(CH−OH、−(CH−COOH及び−CHである。
【0037】
さらに好ましい実施形態によれば、Xは炭素原子である。炭素原子は、好ましくは例えば1つ又は2つのアルキル基(例えば、メチル又はエチル)により置換される。最も好ましくは、Xは−C(CHである。
【0038】
さらに好ましい実施形態によれば、Zは一般式IIaを有する。
【0039】
さらに好ましい実施形態によれば、nは1である。
【0040】
さらに好ましい実施形態によれば、Rは−C(CHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−N(CHCHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−(CH−OHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である。
【0041】
さらに好ましい実施形態によれば、Rは−C(CHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−NHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−(CH−OHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である。
【0042】
さらに好ましい実施形態によれば、Rは−C(CHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−N(CHCHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−CHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である。
【0043】
さらに好ましい実施形態によれば、Rは−Cであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−N(CHCHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−(CH−OHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である。
【0044】
さらに好ましい実施形態によれば、一般式Iを有するポリメチンは、以下の化合物III〜化合物IXのうちの1つから選択される。一般式Iを有する化合物、特に化合物III〜化合物IXに対する好ましい対イオンは、F、Cl、Br、I、ClO又はBFである。
【0045】
化合物III
【化5】

化合物IV
【化6】

化合物V
【化7】

化合物VI
【化8】

化合物VII
【化9】

化合物VIII
【化10】

化合物IX
【化11】

【0046】
本明細書中で使用する場合、「アルキル」という用語は、単一の基及び1個〜10個の炭素原子を有する直鎖飽和脂肪族炭化水素基又は分岐飽和脂肪族炭化水素基を意味する。アルキル基の例としては、メチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル及びペンチルが挙げられる。分岐アルキルは、メチル、エチル又はプロピルのような1つ又は複数のアルキル基が、直鎖アルキル鎖の−CH基における一方又は両方の水素と置き換わることを意味する。「低級アルキル」という用語は、1個〜3個の炭素原子のアルキルである。
【0047】
「アルコキシ」という用語は、酸素基に結合された上記で定義されるような「アルキル」を意味する。
【0048】
「シクロアルキル」という用語は、単一の基及び3個〜12個の炭素原子を有する非芳香族の単環式炭化水素環構造又は多環式炭化水素構造を意味する。例示的な単環式シクロアルキル環としては、シクロプロピル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。例示的な多環式シクロアルキル環としては、アダマンチル及びノルボルニルが挙げられる。
【0049】
「アルケニル」という用語は、単一の基及び2個〜10個の炭素原子を有する炭素間二重結合を含有する直鎖脂肪族炭化水素基又は分岐脂肪族炭化水素基を意味する。
【0050】
「分岐」アルケニルは、メチル、エチル又はプロピルのような1つ又は複数のアルキル基が、−CH又は−CH=直鎖状アルケニル鎖における一方又は両方の水素と置き換わることを意味する。例示的なアルケニル基としては、エテニル、1−プロペニル及び2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル及び3−ブテニル、3−メチルブタ−2−エニル、2−プロペニル、ヘプテニル、オクテニル並びにデセニルが挙げられる。
【0051】
「シクロアルケニル」という用語は、単一の基及び3個〜12個の炭素原子を有する炭素間二重結合を含有する非芳香族の単環式炭化水素環構造又は多環式炭化水素環構造を意味する。例示的な単環式シクロアルケニル環としては、シクロプロペニル、シクロペンテニル又はシクロヘプテニルが挙げられる。例示的な多環式シクロアルケニル環はノルボルネニルである。
【0052】
「アリール」という用語は、吊り下がった様式で一緒に結合され得るか若しくは融合され得る1つ、2つ又は3つの環を含有し、且つ単一の基を含有する炭素環式芳香族環構造を意味する。例示的なアリール基としては、フェニル、ナフチル及びアセナフチルが挙げられる。
【0053】
「複素環式」又は「複素環」という用語は、環中に1つ又は複数のヘテロ原子(炭素以外の原子)を有し、且つ単一の基を有する環式化合物を意味する。環は、飽和、部分的飽和、又は不飽和であってもよく、ヘテロ原子は、窒素、硫黄及び酸素から成る群から選択され得る。飽和複素環式基の例としては、1個〜4個の窒素原子を含有する飽和3員〜6員複素単環式基(例えばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル)、1個〜2個の酸素原子及び1個〜3個の窒素原子を含有する飽和3員〜6員複素単環式基(例えば、モルホリニル)、1個〜2個の硫黄原子及び1個〜3個の窒素原子を含有する飽和3員〜6員複素単環式基(例えば、チアゾリジニル)が挙げられる。部分的飽和複素環式基の例としては、ジヒドロチオフェン、ジヒドロピラン及びジヒドロフランが挙げられる。他の複素環式基は、オキソカニル及びチオカニルのようなヘテロ原子で置換された7〜10炭素環であり有る。ヘテロ原子が硫黄である場合、硫黄は、チオカニルジオキシドのような二酸化硫黄であり得る。
【0054】
「ヘテロアリール」という用語は、不飽和複素環式基を意味し、ここで「複素環式」は上述する通りである。例示的なヘテロアリール基としては、1個〜4個の窒素原子を含有する不飽和3員〜6員複素単環式基(例えば、ピロリル、ピリジル、ピリミジル及びピラジニル)、1個〜5個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環式基(例えば、インドリル、キノリル及びイソキノリル)、酸素原子を含有する不飽和3員〜6員複素単環式基(例えば、フリル)、硫黄原子を含有する不飽和3員〜6員複素単環式基(例えば、チエニル)、1個〜2個の酸素原子及び1個〜3個の窒素原子を含有する不飽和3員〜6員複素単環式基(例えば、オキシゾリル)、1個〜2個の酸素原子及び1個〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環式基(例えば、ベンゾオキサゾリル)、1個〜2個の硫黄原子及び1個〜3個の窒素原子を含有する不飽和3員〜6員複素単環式基(例えば、チアゾリル)、並びに1個〜2個の硫黄原子及び1個〜3個の窒素原子を含有する不飽和縮合複素環式基(例えば、ベンゾチアゾリル)が挙げられる。「ヘテロアリール」という用語はまた、複素環式基がアリール基(ここでアリールは上述する通りである)と融合される不飽和複素環式も包含し、ここで「複素環式」は上述する通りである。例示的な融合基としては、ベンゾフラン、ベンズジオキソール及びベンゾチオフェンが挙げられる。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「複素環式C1〜4アルキル」、「ヘテロ芳香族C1〜4アルキル」等の用語は、C1〜4アルキル基に結合された環構造を指す。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「環」又は「環構造」という用語は、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール又は複素環を包含する。
【0057】
本明細書中に開示する環式構造は全て、当業者により理解されるように結合が可能な任意の点で結合させることができる。
【0058】
本明細書中では、「ハロゲン」という用語は、フッ化物、臭化物、塩化物又はヨウ化物を包含する。
【0059】
本発明の他の目的及び本発明の実施形態の付随する利点の多くは、添付の図面に関連して以下の実施形態のより詳細な説明を参照することにより容易に理解され、またより良好に理解されるようになる。
【0060】
図面中の図解は概略である。
【0061】
本発明によるキットの構成要素の1つは、一般式Iを有するポリメチンを含有するマーカー色素である。一般式Iを有するインドール、ヘテロインドール、ピリジン、キノリン又はアクリジンの置換誘導体は、タンパク質の、特にリポタンパク質の光学マーキング又は標識用の色素として使用することができる。
【0062】
タンパク質の標識は、一般式Iを有するマーカーと標識されるべきタンパク質との間でのイオン相互作用又は非イオン相互作用の形成により成され得る。或いは、求核試薬に関して活性化されるこれらのマーカーの官能基は、OH、NH又はSH官能基と共有結合することができ、したがってこれらは、タンパク質の、特にリポタンパク質の定性的測定及び定量的測定のための系を創出する。
【0063】
連結反応又は結合反応は、水溶液又はほぼ水の溶液中で、且つ好ましくは室温で行うことができる。この反応中に、リポタンパク質と、蛍光特性を有するマーカー色素との結合が創出される。
【0064】
一方ではピリジン誘導体、キノリン誘導体、インドール誘導体、ヘテロインドール誘導体又はアクリジン誘導体の型の容易に誘導体化可能な複素環を有し、他方で6員環複素環を有する上述の非対称ポリメチンでリポタンパク質を標識することにより、特に以下の利点が達成される:
【0065】
検出されるべきタンパク質との結合体の形成とは無関係に蛍光を発し、したがって分析されるべき試料と検出工程前に分離されなくてはならない蛍光色素とは対照的に、本発明によるマーカー色素は、非結合状態では本質的に蛍光特性を有しない。さらに、本発明のマーカー色素は、リポタンパク質凝集体の内側にある疎水性残基及び外側上の親水性残基を特徴とするリポタンパク質の特有のミセル様構造と選択的に結合する。リポタンパク質と、一般式Iを有するポリメチンを含有するマーカー色素との間のかかる結合体の蛍光特性に起因して、リポタンパク質の選択的標識を達成することができる。
【0066】
本発明のキットを使用することにより、リポタンパク質を選択的に検出することができるだけでなく、リポタンパク質のHDLサブクラスパターン及びLDLサブクラスパターンも分析し得る。
【0067】
当業者に明らかであるように、この利点は、リポタンパク質にだけでなく、十分量のSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)中に可溶化されて、その結果ミセルが形成されるタンパク質のようなあらゆる種類のミセル様構造にも当てはまる。
【0068】
さらに、一般式Iに従うポリメチンは、650nmより大きいスペクトル範囲ですでに吸収し、当該技術分野で既知の他のポリメチンと比較した場合に有意に改善された光化学的安定性及び熱安定性を有する。
【0069】
分子工学を用いて、吸収最大及び放出最大の位置並びに強度を随意に制御すること、及び種々の励起レーザ、特に近赤外(NIR)レーザダイオードの放出波長にそれらを適応させることが可能である。
【0070】
マーカー色素は、比較的簡素な2工程合成により生産することができ、それにより、例えば色素の総電荷及び固定化に使用される活性化された基の数、特異性及び反応性に関して異なる官能性を有する様々な色素が、それぞれの用途に特異的である様式で提供され得る。一般式Iを有するポリメチンは、米国特許第6,750,346号明細書(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0071】
一般式Iを有する化合物、並びにそれらに由来する系、即ちリポタンパク質のようなタンパク質及び一般式Iを有するポリメチンの結合体は、電気泳動、クロマトグラフィ及び電気クロマトグラフィに関する光学的な(特に蛍光光学的な)定性的測定方法及び定量的測定方法に使用することができる。
【0072】
好ましい実施形態によれば、分離チャネルは、種々の化合物を電気泳動的に、クロマトグラフィ的に又は電気クロマトグラフィ的に分離するように適応される。例えば、電気泳動的分離を実施するためのチップは、主表面を含むベース基板を含み、ここでチャネルは、少なくとも1つの方向で当該ベース基板の当該主表面で形成される。
【0073】
さらに好ましい実施形態によれば、キットは、分離ゲルをさらに含む。このゲルに含まれるのに適切な材料の例は、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレンオキシド及び/又はポリビニルピロリドンを含む。好ましいゲルは、ポリジメチルアクリルアミド(PDMA)ゲルである。
【0074】
任意に、媒質は、N−メチル尿素のような変性剤を含んでもよい。
【0075】
チップは、分離チャネル又は媒質にわたって電界を印加するための素子をさらに含んでもよい。電界は、電圧をかけることにより上記分離チャネルにわたって印加される。当該分離メカニズムに基づいて、試料中の化合物の分離が実施される。
【0076】
特に、本発明によるキットは、様々な電気泳動的技法で用いられ得る。電気泳動的技法の非限定的な例としては、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、キャピラリー電気泳動及びマイクロチャネル/微小流体チャネル電気泳動が挙げられる。
【0077】
キットを用いるための電気泳動の好ましい型は、微小流体チャネル電気泳動である。
【0078】
本発明による方法で同様に使用され得る本発明によるキットの別の構成要素は、タンパク質、特にリポタンパク質のような高分子種の分離を実施するためのチップである。
【0079】
キットが微小流体チャネル電気泳動に使用される場合、キットは好ましくは、流体試料容量の移動用の経路として役立つマイクロチャネルのネットワークを有するマイクロチャネルチップを包含する。単一の試料容量又は多くの試料容量は、同じマイクロチャネルチップ上で同時に実行させてもよい。マイクロチャネルチップは、分子アッセイ用のバイオアナライザー(例えば、米国アジレント・テクノロジー社の2100バイオアナライザー)のようなデバイスへ搭載され、これがチップウェル上への微小電極のネットワークを提供し、したがって試料容量構成成分の分離に必要な電圧及び電流を供給する。マイクロチャネルチップ電気泳動は概して、伝統的なキャピラリー電気泳動よりも、より高い分解能、より小さな試料容量サイズ、より短い分析時間及び低減された試料の取扱いを提供する。この型の電気泳動の例は、米国特許第6,042,710号明細書に記載されている。
【0080】
微小流体チャネル電気泳動に使用される場合、チップは、電極及び被覆素子(同様に、通常構造が平面である)で覆われると溝が加工されて、キャピラリーチャネルを規定する平面物体構造を含む基板(サブストレート)を有し得る。例示的な基板材料としては、例えばガラス、石英、シリカ、シリコン、ポリマー(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(登録商標))及び当該技術分野で既知である様々な他のプラスチックのようなプラスチック)が挙げられる。基板は、管状基板(例えば、ポリマーキャピラリー又は溶融石英キャピラリー)等を含む様々な形状又は形態を取ってもよい。しかしながら、好ましい態様では、基板は、被覆素子(同様に、通常構造が平面である)で覆われると溝が加工されて、キャピラリーチャネルを規定する平面物体構造を含む。かかる平面キャピラリーシステムの例は、米国特許第5,976,336号明細書に記載されている。媒質が基板において形成されるマイクロチャネルで用いられ、その結果電極により媒質にわたって誘導される電界の影響下でマイクロチャネルを通過する試料構成成分の分離をもたらす。
【0081】
キャピラリーチャネルはまた、管状チャネル、長方形チャネル、ひし形チャネル、半球形チャネル等、又はあまり正確でない加工技法(例えば、レーザアブレーション)に起因し得るようなより一層随意な形状を含む横断面が多種多様な形状であり得る。通常、キャピラリーチャネルの形状は、使用する基板型及び伝播方法に応じて多様である。例えば、その典型的な溶融石英キャピラリーでは、キャピラリーチャネルは管状である。平面基板を用いるシステムでは、チャネルは通常、基板材料及びチャネルの加工方法に応じて、ひし形、長方形又は半球形の横断面形状のいずれかを含む。
【0082】
微細加工チャネルシステムを生産するための様々な製造技法が当該技術分野で既知である。例えば、かかるデバイスが半導体産業で一般的に見られる基板を利用する場合、それらの産業で正規に用いられる製造方法、例えばフォトリソグラフィ、湿式化学エッチング、化学蒸着、スパッタリング、電鋳法等が容易に適用可能である。同様に、射出成型、エンボス加工、レーザアブレーション、LIGA技法等を含む高分子基板でかかるデバイスを加工する方法も容易に適用可能である。他の有用な加工技法としては、中間マイクロスケール構造を提供して、特定のマイクロスケールデバイスの素子を規定するのに使用されるラミネーション技法又はレイヤリング技法が挙げられる。
【0083】
通常、キャピラリーチャネルは、約1μm〜約500μmの内部横断面寸法、例えば幅、深さ又は直径を有し、ほとんどのかかるチャネルが、約10μm〜約200μmの範囲の横断面寸法を有する。
【0084】
特に好ましい態様では、多重統合マイクロスケールキャピラリーチャネルを用いた平面微細加工デバイスが使用される。簡潔に述べると、これらの平面マイクロスケールデバイスは、平面基板の表面へ加工された統合チャネルネットワークを用いる。第2の基板は、第1の基板の表面上でかぶせられて、チャネルを覆って密封し、それによりキャピラリーチャネルを規定する。
【0085】
好ましくは、本発明によるキットのチップは、1つ又は複数の分析チャネル又は分離チャネル又は分離流路が提供され、分析チャネルを多数の異なる試料リザーバへ接続するさらなるチャネルを含む。これらのリザーバは概して、第2のオーバレイ用基板に配置され、且つデバイスのチャネルと液体連通するように位置付けられる開口部により規定される。様々な特異的なチャネルの形状が、材料輸送時間、チャネル長及び基板の使用に関してチャネルレイアウトを最適化するのに用いられる。かかるマイクロスケールチャネルネットワークシステムの例は、国際公開第98/49548号、米国特許第6,235,175号明細書、米国特許第6,153,073号明細書、米国特許第6,068,752号明細書、米国特許第5,976,336号明細書及び米国特許出願公開第60/060,902号明細書に詳述されている。
【0086】
キャピラリーチャネル又はマイクロチャネルへの分離ゲル又は媒質の導入は、チャネルの一端を媒質と接触させて配置させること及び媒質をチャネルへ芯から通す(wick)ことのように簡素であり得る。或いは、真空又は圧力を使用して、媒質溶液をキャピラリーチャネルへ推進してもよい。チップ電気泳動で使用されるもののような統合チャネルシステムでは、媒質は通常、一般的なマイクロチャネルの終端、例えば分離チャネルの末端に配置されるリザーバと接触して配置され、わずかな圧力が印加されて、統合チャネル全てへポリマーを押し込める。
【0087】
本発明による好ましい方法は、特に分離が電気泳動的に実施される場合、以下の工程を含む:
チップへ試料を注入することであって、当該チップが試料を受け取るための少なくとも1つのウェル、及び当該少なくとも1つのウェルに連結され且つ種々の化合物を分離するように適応されている分離チャネルを含む、チップへ試料を注入すること、及び
上記チャネルにわたって電界を印加することであって、それにより当該チャネルを通って上記試料を移動させる、印加すること。
【0088】
分離が望ましいタンパク質又はリポタンパク質を含有する試料は好ましくは、分離チャネルの一端に配置され、電圧勾配は、チャネルの長さに沿って印加される。試料構成成分が、チャネルの長さの下方へ且つその中に配置される媒質を通って動電的に輸送される場合、それらの構成要素は分離される。次に、分離された構成要素は、チャネルの長さに沿った点で、通常試料が導入される点に対して遠位にある分離チャネルの終端付近で検出される。
【0089】
本発明による方法における分離は好ましくは、約7〜約8の範囲のpHで、より好ましくは約7.3〜約7.7の範囲のpHで、最も好ましくは約7.5のpHで実施される。
【0090】
さらに、分離が望ましいタンパク質又はリポタンパク質を含有する試料は、好ましくは約0.10mM〜約0.20mMの量で、より好ましくは約0.125mM〜約0.175mMの量で、最も好ましくは約0.15mMの量でドデシル硫酸ナトリウムを含むことが好ましい。
【0091】
一般式Iに従うマーカー色素は、分析されるべき試料と一緒に、又は試料が注入される前若しくは試料が注入された後に、チップへ注入され得る。或いは又はさらに、一般式Iに従うマーカー色素は、分離ゲル中に含有されてもよい。一般式Iに従うマーカー色素が分離ゲル中に存在する場合、マーカー色素は、検出デバイスの焦点を合わせるのに役立ち得る。
【0092】
分離された種の検出は通常、当該技術分野で既知である蛍光検出システムを使用して実施される。通常、かかる検出システムは、上述するような一般式Iを有するポリメチンを含有するマーカー色素の蛍光を検出することにより作動する。通常、かかるシステムは、分離された種が通り過ぎて輸送される際に、分離チャネルで光エネルギーを誘導することが可能な光源を利用する。光源は通常、標識基を活性化するのに適切な波長の光を生じる。次に、標識基からの蛍光は、キャピラリーチャネルの上に、キャピラリーチャネルの下に又はキャピラリーチャネルに隣接して位置付けられる適切な光学素子、例えば対物レンズにより収集され、収集された光は、フォトダイオード又は光電子倍増管のような測光検出器で誘導される。検出器は通常、コンピュータに連結され、コンピュータは、検出器からデータを受信して、続く保存及び分析用にそのデータを記録する。
【0093】
複数の未知の種を含む試料を分析する前に、測定の設定は通常較正される。したがって、キットは、較正試料をさらに含むことが好ましい。較正試料は、SRM 1951b、即ち凍結ヒト血清中の脂質、レベル1(NIST, Gaithersburg, MD, USA)、Ultra HDL較正物質バイアル、1ml(Genzyme Diagnostics, West Malling Kent, ME, UK)、ヒトHDL、10mg;ヒトLDL、5mg;ヒトOx.LDL、2mg;ヒトLp(a)、0.1mg(全て、BTI, Biomedical Technologies, Inc., MA, USAで入手可能)、AutoHDL/LDL較正物質、3ml;HDL標準物質、15ml(ともに、Eco-Scientific, Rope Walk, Thrupp, Stroud, UKで入手可能)、脂質対照レベル1、2及び3(全て、Polymedco, Inc., Cortland Manor, NY, USAで入手可能)、低総コレステロール、TCh@50mg/dL、LRCレベル1;正常総コレステロール、TCh@165〜180mg/dL、TG<100mg/dL、LRCレベル2;高総コレステロール、TCh@265、TG@230;LRCレベル3;高密度リポタンパク質、HDL@50、LRCレベル4(全て、Solomon Park Research Laboratories, Kirkland, WA, USAで入手可能)及びHDL参照プールID 204(TV(SD)60.1(0.7)mg/dL)、HDL参照プールID 205(TV(SD)30.5(0.8)mg/dL)、HDL参照プールID 301(TV(SD)49.5(1.2)mg/dL)、HDL参照プールID 303(TV(SD)50.6(1.4)mg/dL)、HDL参照プールID 305(TV(SD)30.8(0.8)mg/dL)、HDL参照プールID 307(TV(SD)40.5(0.9)mg/dL)(全て、Centers for Disease Control and Prevention Atlanta, GA 3034, USAで入手可能、注記:プールは、Lipid Standardization Program(LSP)に従って調製され得る)のような種々のサイズの既知の化合物の組を含む多種多様な較正試料から選択され得る。
【0094】
いわゆるラダーが較正試料として使用されることが特に好ましい。ラダーは、複数の既知の構成成分を含む較正試料であり、それにより「ラダー」という名称は、較正ピークパターンが様々な構成成分に関連したピークのはしごのように見えるという事実に起因する。較正ピークの組がはしごのように見えるため、較正試料は多くの場合、「ラダー」と称される。DNA分析及びタンパク質分析の分野における多数の製造業者は、電気泳動系、クロマトグラフィ系又は電気クロマトグラフィ系用の較正試料即ち「ラダー」を生産する。例えば、タンパク質分析では、種々のタンパク質の組を含む較正試料が使用される。
【0095】
蛍光検出が種々の種を検出するのに使用される場合、蛍光タグで標識されたフラグメントを含むラダーが用いられ得る。較正試料の種が入射光で刺激されると、種に結合されたタグは蛍光を放つ。第1の波長で蛍光を発するマーカー、及び第2の波長で蛍光を放つ標識フラグメントの組を含む較正試料又は「ラダー」もまた用いられ得る。
【0096】
較正試料の蛍光ピークパターンが獲得された後、所定の試料は分析される。較正ピークパターンとの整列を可能にするために、ある特定の濃度のマーカー及びある特定の濃度の最大標識ラダーフラグメントを所定の試料に添加してもよい。次に、所定の試料の化合物が分離されて、分離カラムの出口で得られる試料バンドが分析される。
【0097】
別の好ましい実施形態によれば、式Iに従うマーカー色素は、第1の波長の蛍光を放つのに対して、較正試料の標識フラグメントは、第1の波長と異なる第2の波長の蛍光を放つ。利用可能なラダーの幾つかは、2つ以上の異なる波長の蛍光を放つように適応された2つ以上の異なる蛍光色素を含む。対応して、2つ以上の波長で蛍光強度を同時に追跡するように適応された蛍光検出ユニットが存在する。
【0098】
ピークパターン較正に関する好ましい方法は、欧州特許出願公開第1600771号明細書(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)に開示されている。
【0099】
以下では、本発明によるタンパク質を分析する方法の好ましい実施形態が記載されている(in described)。
【0100】
最初に、材料の流れの領域では、おそらく一般式Iを有するマーカー色素のような相当する試験に要される試薬に加えて、検査されるべき材料がマイクロチップへ供給される。その後、マイクロチップ上のこれらの材料は、例えば電気力、圧力源、熱源等を用いて移動又は輸送される。材料の供給及び/又は移動は、適切な電子制御を用いて引き起こされ得る。
【0101】
この例では、材料は、それ自体が試験を受ける前に予備処理に付される。この予備処理は、例えば所要の熱試験条件を満たすために、例えば加熱システムを用いた予熱又は適切な冷却システムを用いた予冷から構成され得る。既知であるように、化学試験の実行に関する温度条件は通常、試験動力学のサイクルに対してかなりの影響を及ぼす。かかる予備処理はまた、多重配列で行うことができ、その状況では、前処理サイクル及びさらなる輸送サイクルが不要とされる。特に、上述の前処理はこの場合では、相当する試験用の初期材料のある特定の構成成分のみへ接近するような材料の分離の機能を満たす。本質的に、材料の量(量)及び材料の速度(品質)はともに、記載されるような輸送を用いて確定させることができる。特に、材料の量の正確な調節は、個々の材料及び材料構成成分の正確な計量を可能にする。さらに、好適には、後者のプロセスは、電子制御を用いて制御され得る。
【0102】
1つ又は複数の任意の前処理後に、実際の実験/検査が行われ、その状況では、試験結果は、チップ又はマイクロチップの適切な検出点で検出され得る。好適には、検出は、光学検出を用いて、例えば接続され得る光電池と連結したレーザダイオード若しくは質量分析計により、又は電気検出を用いて行われる。次に、得られた光測定信号は信号処理システムへ、その後測定結果の解釈のための分析ユニット(例えば、適切なマイクロプロセッサ)へ供給される。
【0103】
本明細書中に記載する本発明によるキットに含有されるチップで通常使用される操作上の構成要素は、図1に図式的に示される。これらは主に、材料の輸送又は流れ1に関連する構成要素、及び試験の実行に際して生じる情報の流れ2を表す構成要素へ再分割される。材料の流れ1は通常、サンプリング操作3及びチップ上で材料を輸送するための操作4、並びに検査されるべき材料の処理又は前処理のための任意の操作5を包含する。さらに、センサシステム6は通常、試験の結果を検出するのに、及び任意に材料の流れの操作をモニタリングするのに用いられ、その結果、制御システムを使用して材料の流れを制御する際に調節を行うことができる。制御メカニズムの一例は、制御電子回路7として示される。検出操作6及び検出操作6’で得られたデータは、信号処理操作8へ通常転送されて、その結果検出された測定結果が分析され得る。かかるマイクロチップシステムの設計における優先目標は、上述の機能に相当する機能ユニット/モジュールの供給及び個々のモジュール間での適切なインターフェースの確立である、これらのインターフェースの適切な規定によって、各種マイクロチップ又は実験装置へ上記システムを適応させるのに高度の柔軟性を達成することが可能である。さらに、厳密にモジュール式のシステム構造に基づいて、各種マイクロチップ及び/又はマイクロチップシステム間の最も広範囲なレベルの互換性を達成することが可能である。
【0104】
最初に、材料の流れの領域では、検査されるべき材料(おそらく、相当する試験に要される試薬に加えて)がマイクロチップ3に供給される。その後、マイクロチップ上のこれらの材料は、例えば電気力4を用いて移動又は輸送される。材料の供給及び移動は共に、点線によって示されるように適切な電子制御7を用いて引き起こされる。この例では、材料は、それ自体が試験を受ける前に予備処理5に付される。この予備処理は、例えば所要の熱試験条件を満たすために、例えば加熱システムを用いた予熱又は適切な冷却システムを用いた予冷から構成され得る。既知であるように、化学試験の実行に関する温度条件は通常、試験動力学のサイクルに対してかなりの影響を及ぼす。矢印で示されるように、この予備処理はまた、多重配列で行うことができ、その状況では、前処理サイクル5及びさらなる輸送サイクル4’が不要とされる。特に、上述の前処理はこの場合では、相当する試験用の初期材料のある特定の構成成分のみへ接近するような材料の分離の機能を満たし得る。本質的に、材料の量(量)及び材料の速度(品質)はともに、記載されるような輸送を用いて確定させることができる。特に、材料の量の正確な調節は、個々の材料及び材料構成成分の正確な計量を可能にする。さらに、好適には、後者のプロセスは、電子制御7を用いて制御され得る。
【0105】
1つ又は複数の前処理後に、実際の実験/検査が行われ、その状況では、試験結果は、マイクロチップの適切な検出点6で検出され得る。好適には、検出は、光学検出、例えば接続され得る光電池と連結したレーザダイオード、質量分析計を用いて、又は電気検出を用いて行われる。次に、得られた光測定信号は信号処理システム8へ、その後測定結果の解釈のための分析ユニット9(例えば、適切なマイクロプロセッサ)へ供給される。
【0106】
上述の検出6に続いて、点線で示されるように、一連のさらなる試験若しくは分析又は材料の分離の実行の選択肢、例えば全体的により複雑な化学的試験サイクルの様々な試験段階に関連した実行の選択肢が存在する。この目的で、材料は、第1の検出点6後にマイクロチップ上で先へ進んで、さらなる検出点6’へ輸送される。そこで、段階4’及び段階6に従って理論上規定される手順が実施される。最終的に、材料は、全ての反応/試験の終結後、最終輸送サイクル又は収集サイクル4’’’を用いて材料排出管(図中では示されていない)へ供給される。
【0107】
化学分析の分野での小型化に対するさらなる誘因は、材料が輸送される距離及び時間を最小限に抑える能力並びに望ましさを包含する。特に、材料のサンプリングと行われた任意の化学反応のそれぞれの検出点との間で材料を輸送するのに要される時間及び距離の量は最低限に抑えられるべきである。さらに、従来のシステムで可能であったよりも、材料の分離をより迅速に達成することができ、また個々の構成要素をより高度な分解能で分離することができることが、液体クロマトグラフィ及び電気泳動の分野から既知である。さらに、超小型化研究室システムにより、材料、特に試薬の消費のかなりの低減された消費、及び材料の構成成分の遥かに効率的な混合が可能となる。微小流体デバイス、即ち化学処理又は分析のためのマイクロチップ研究室システムの操作のための好ましい装置は、国際公開第00/78454号(これは、参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0108】
図2は、本発明によるキット又は方法での利用に適切である例示的な研究室マイクロチップ又はチップを示す。基板20の上側上に、微小流体構造が供給され、それを通って材料は輸送される。基板20は、例えばガラス又はシリコンで構成されてもよく、その状況では、構造は、化学エッチングプロセス又はレーザエッチングプロセスを用いて生産され得る。或いは、かかる基板は高分子材料を包含してもよく、射出成型、エンボス加工及びレーザアブレーション技法のような既知のプロセスを使用して加工され得る。通常、かかる基板には、密閉チャネル又は導管として導管を密閉するために、さらなる基板がかぶせられる。
【0109】
検査されるべき材料(これ以降、「試料材料」と呼ぶ)のマイクロチップ上へのサンプリングのために、1つ又は幾つかの凹部21がマイクロチップ上に提供されて、試料材料用のリザーバとして機能する。特に例示的な分析又は試験を実施する際、試料材料はまず、マイクロチップ上の輸送管路又はチャネル25に沿って輸送される。この例では、輸送チャネル25は、説明の便宜上、V形状の溝として示される。しかしながら、微小流体基板は通常、密閉された長方形(若しくは実質的に長方形)又は円形断面の導管或いはチャネルを含む。
【0110】
試験サイクルに要される試薬は通常、試薬リザーバ及び/又は試料材料リザーバの機能も満たす凹部22に収容される。この例では、2つの異なる材料を容易に操作することができる。相当する輸送導管26を用いて、これらはまず、接合点27に供給されて、ここでそれらは混合し、任意の化学分析又は合成が完了した後、いつでも使用できる生成物を構成する。さらなる接合部28では、この試薬は、検査されるべき材料試料と遭遇して、そこで2つの材料は同様に混合する。
【0111】
次に、形成された材料は、材料検体と試薬との間の反応に利用可能な距離の人工的な広がりを達成するよう機能する蛇行した形状を有し得る導管セクション29を通過する。材料リザーバとして設計されるさらなる凹部23では、この例では、さらなる接合点31ですでに利用可能な材料ミックスへ供給されるさらなる試薬が含有される。
【0112】
所定の反応は、上述の接合点31後に行われて、次にこの反応は、検出器を用いて輸送管路の領域32(又は測定帯域)内で、理想的には非接触手段で、例えば光学的に検出され得る。この状況では、相当する検出器は、領域32の上又は下に位置付けられ得る。材料が上述の領域32を通過した後、材料は、全体的に反応の過程で生産された廃棄物材料用の廃棄物リザーバ又は材料排出管を表すさらなる凹部24へ供給される。
【0113】
最終的に、マイクロチップ上で、電極の適用のための非接触表面として作用し、順にチップの操作用にマイクロチップへの接続に要される電圧、及びさらには高電圧を可能にする凹部33が提供される。或いは、チップに関する接触はまた、材料リザーバとして供給される凹部21、凹部22、凹部23及び凹部24へ直接、相当する電極の挿入によって行われ得る。続いて、輸送導管25、輸送導管26、輸送導管29及び輸送導管30に沿った電極33の適切な配列並びに印加される電界の相当する時間的調和又は強度関連的調和によって、基本的な反応プロセスに関する動力学の非常に正確な考察及びそれに対する順守を達成することが可能であるように、個々の材料の輸送が正確に決められた時間/量プロファイルに従って行われる状況を達成することが可能である。
【0114】
微小流体構造内での材料の圧力駆動型輸送では、加圧媒質(例えば、不活性ガス中で)を輸送管路へ導入することを可能とさせるように又は適切な陰圧を印加することを可能とさせるように、相当する圧力供給導管が凹部33を密接に且つ密封可能に嵌め込むように凹部33を作製することが通常必要である。
【0115】
図3は、複数の異なる試料化合物を含む流体試料を分離及び分析するためのさらなる例示的な測定の設定を示す。試料化合物はそれぞれ、分離流路1を通って進むのに要される個々の移動時間を特徴とする。分離流路1は、例えば電気泳動流路、クロマトグラフィ流路又は電気クロマトグラフィ流路であり得る。分離流路の出口では、検出セルが位置付けられる。検出セルは、例えば光源3及び蛍光検出ユニット4を含む蛍光検出セル2として実行され得る。蛍光検出セル2は、時間の関数として蛍光標識された種の試料バンドを検出するよう適応される。
【0116】
図4は、本発明によるキットにおけるチップのチャネルの形状のさらなる具体例を示す。操作中、試料材料は、試料リザーバ116〜試料リザーバ138の1つ又は複数へ配置される。次に、例えばリザーバ116に配置された第1の試料材料は、チャネル140及びチャネル112を通って、また分離チャネル104との交差部を横切って、チャネル184を通ってロード/廃棄物リザーバ186に向かって、試料材料を動電的に輸送することにより負荷される。続いて、試料は、交差部でローディングチャネル112:114で試料を引き戻しながら、緩衝液リザーバ106から分析チャネル104を通って廃棄物リザーバ108へ動電的な流れを誘導することにより注入される。第1の試料は分析チャネル104で分離されるのに対して、例えばリザーバ118に配置された第2の試料は、チャネル142及びチャネル112へと、またチャネル182を通ってロード廃棄物リザーバ184に向かって、試料を動電的に輸送することにより予め負荷される。次に、第1の試料の分離後に、第2の試料は、チャネル184を通ってロード/廃棄物リザーバ186に向かって試料を輸送することにより、分析チャネル104との交差部を横切って負荷される。
【0117】
タンパク質のような高分子種を電気泳動的に分離するさらなる方法、並びにかかる方法を実施するのに有用な組成物、システム、デバイス又はチップは、米国特許第6,042,710号明細書(これは、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0118】
化学的処理、物理的処理及び/又は生物学的処理のための微小流体構造を有するマイクロチップを操作するための他の好ましいデバイスは、欧州特許出願公開第1360992号明細書及び国際公開第00/78454号(これらはともに、その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0119】
刊行物及び特許出願は全て、個々の刊行物又は特許出願がその全体が参照により本明細書に援用されると明確に且つ個別に示されたのと同じ程度に参照により本明細書に援用される。本発明は、明瞭性及び理解の目的で説明及び例として幾らか詳細に記載してきたが、ある特定の変更及び変形が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかである。
【0120】
「を含む」という用語は、他の要素又は特徴を排除するものではなく、また単数は、複数を排除するものではないことに留意すべきである。また、種々の実施形態に関連して記載される要素は組み合わせてもよい。特許請求の範囲における参照符号は特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではないことにも留意すべきである。
【0121】
続いて、本発明は、実施形態の実施例を用いてより詳細に説明される。
【実施例】
【0122】
以下では、リポタンパク質の分離のための本発明によるキットの典型的な用途が示される。
【0123】
試料緩衝液は以下の試薬を含有する。
−200mM TAPS(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸)、pH7.5(Sigma, Deisenhofen, Germany)
−染色マーカー色素としての6μM 色素V02−04064(Dyomics, Jena, Deutschland)
−較正用の下端マーカーとしての1μM Alexa 700(Invitrogen-Molecular Probes, USA)
−較正用の上端マーカーとしての1μM 色素676(Dyomics)
−0.15mM SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)(Sigma)
【0124】
分離ゲル又はゲルマトリックスは以下の試薬を含有する:
−2%PDMA 12164(Polysciences; USA;ロット番号:537426)
−200mM TAPS(N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル−3−アミノプロパンスルホン酸、pH7.5(Sigma)
−0.15mM SDS(Sigma)
−検出器の焦点を合わせるための色素としての0.15μM 色素V02−04064(Dyomics)
【0125】
以下のアッセイプロトコルを使用した:
・12個の異なるヒト血清試料1μLを採取して、色素を含有する試料緩衝液それぞれ49μLと混合する。
・血清標準物質1μLを採取して、色素を含有する試料緩衝液それぞれ49μLと混合する。
・プライマーステーション上にチップを配置する。
・各チップを標識する。
・2%ゲルマトリックス10μLをゲルウェルへ添加する。
・ウェルを1分間加圧する。
・他の2つのゲルウェルにゲルマトリックス10μLを充填する。
・試料緩衝液中の希釈血清標準物質10μLを標準物質ウェルへ添加する。
・試料緩衝液中の各希釈試料7μLを12個の試料ウェルそれぞれへ添加する。
・チップを機器へ配置して、実行を開始する。
【0126】
アッセイを実施するために、Agilent(商標)2100バイオアナライザー(Agilent Technologies, USA)を使用した。
【0127】
バイオアナライザーを用いて微小流体チップ上で分析された血清試料の典型的な電気泳動図は図5に示される。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】本発明によるキットにおける利用のためにチップに要される機能的構成要素を図式的に示すブロック図である。
【図2】本発明によるキットにおける利用のための例示的なチップを図式的に示す図である。
【図3】本発明によるキットにおける利用のためのさらなる例示的なチップを図式的に示す図である。
【図4】本発明における使用のためのリポタンパク質のようなタンパク質の電気泳動的分離における使用のための別の例示的なマイクロスケール電気泳動デバイス又はチップを図式的に示す図である。
【図5】実施例1に従うバイオアナライザーを用いて微小流体チップ上で分析された血清試料の電気泳動示す図であって、チップ全体にわたって実施された同じ試料の幾つかの電気泳動図の重ね合わせ図である。
【図6】本発明によるキットにおける使用に適している例示的なマーカー色素の化学式を示す図である。
【図7】脂質粒子の直径と密度との間の相関を示す図である。
【図8】種々のリポタンパク質と心臓の危険性との相関を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のタンパク質、特にリポタンパク質を光学的に検出するためのキットであって、
該タンパク質、特に該リポタンパク質の分離を実施するためのチップであって、該試料を受け取るための少なくとも1つのウェル、及び該少なくとも1つのウェルに連結され且つ種々の化合物を分離するように適応されている分離チャネルを含むチップ、並びに
一般式I
【化1】

式中、
Zは、一般式IIa
【化2】

または一般式IIb
【化3】

または一般式IIc
【化4】

を有するベンゾオキサゾール、ベンゾジアゾール、2,3,3−トリメチルインドリニン、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドリニン、3−ピコリン及び4−ピコリン、リピジン、キナジン並びに9−メチルアクリジンの誘導体の置換誘導体であり、
Xは、O、S、Si、N−アルキル及びC(アルキル)から成る群から選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
〜R14は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、直鎖アルケニル又は分岐アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アルキル置換アミン及び環状アミンから成る群から選択され、並びに/或いは互いにオルト位における2つ以上のフラグメント、例えばR10とR11又はRとRとRは、別のシクロアルキル環若しくはシクロアルキル環構造、複素環若しくは複素環構造、ヘテロアリール環構造又は芳香族環若しくは芳香族環構造を一緒に形成する。
を有するポリメチンを含有するマーカー色素
を含む、試料中のタンパク質、特にリポタンパク質を光学的に検出するためのキット。
【請求項2】
前記分離チャネルは、電気泳動的に、クロマトグラフィ的に又は電気クロマトグラフィ的に種々の化合物を分離するように適応されている、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記分離チャネルは、SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)、キャピラリー電気泳動及びマイクロチャネル/微小流体チャネル電気泳動から成る群から選択される電気泳動により電気泳動的に種々の化合物を分離するように適応されている、請求項2に記載のキット。
【請求項4】
前記チップは、前記分離チャネルにわたって電界を印加するための素子をさらに含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のキット。
【請求項5】
前記チップは、ガラス、石英、シリカ、シリコン及びポリマーから成る群から選択される材料を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のキット。
【請求項6】
分離ゲルをさらに含む、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
前記分離ゲルは、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレンオキシド及びポリビニルピロリドンから成る群から選択され、好ましくはポリジメチルアクリルアミドである、請求項6に記載のキット。
【請求項8】
較正試料をさらに含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
前記較正試料は「ラダー」である、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
は−(CHである、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のキット。
【請求項11】
、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12及び/又はR13は水素である、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のキット。
【請求項12】
は−N(CHCHである、請求項1ないし11のいずれか1項に記載のキット。
【請求項13】
14は、−(CH−OH、−(CH−COOH及び−CHから成る群から選択される、請求項1ないし12のいずれか1項に記載のキット。
【請求項14】
Xは−C(CHである、請求項1ないし13のいずれか1項に記載のキット。
【請求項15】
Zは一般式IIaを有する、請求項1ないし14のいずれか1項に記載のキット。
【請求項16】
nは1である、請求項1ないし15のいずれか1項に記載のキット。
【請求項17】
は−C(CHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−N(CHCHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−(CH−OHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である、請求項1ないし16のいずれか1項に記載のキット。
【請求項18】
は−C(CHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−NHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−(CH−OHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である、請求項1ないし17のいずれか1項に記載のキット。
【請求項19】
は−C(CHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−N(CHCHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−CHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である、請求項1ないし18のいずれか1項に記載のキット。
【請求項20】
は−Cであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは−N(CHCHであり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、Rは水素であり、R10は水素であり、R11は水素であり、R12は水素であり、R13は水素であり、R14は−(CH−OHであり、Zは一般式IIaを有し、Xは−C(CHであり、及び/又はnは1である、請求項1ないし19のいずれか1項に記載のキット。
【請求項21】
前記一般式Iを有する前記ポリメチンは、下記化合物III
【化5】

化合物IV
【化6】

化合物V
【化7】

化合物VI
【化8】

化合物VII
【化9】

化合物VIII
【化10】

化合物IX
【化11】

の1つから選択される、請求項1ないし20のいずれか1項に記載のキット。
【請求項22】
試料中のリポタンパク質を分析する方法であって、
少なくとも一次元で該リポタンパク質の分離を実施すること、
該リポタンパク質を、一般式I
【化12】

式中、
Zは、一般式IIa
【化13】

または一般式IIb
【化14】

または一般式IIc
【化15】

を有するベンゾオキサゾール、ベンゾジアゾール、2,3,3−トリメチルインドリニン、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドリニン、3−ピコリン及び4−ピコリン、リピジン、キナジン並びに9−メチルアクリジンの誘導体の置換誘導体であり、
Xは、O、S、Si、N−アルキル及びC(アルキル)から成る群から選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
〜R14は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、直鎖アルケニル又は分岐アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アルキル置換アミン及び環状アミンから成る群から選択され、並びに/或いは互いにオルト位における2つ以上のフラグメント、例えばR10とR11又はRとRとRは、別のシクロアルキル環若しくはシクロアルキル環構造、複素環若しくは複素環構造、ヘテロアリール環構造又は芳香族環若しくは芳香族環構造を一緒に形成する。
を有するポリメチンを含有するマーカー色素で標識すること、及び
該分離され且つ標識されたリポタンパク質を光学的に検出すること
を含む、試料中のリポタンパク質を分析する方法。
【請求項23】
前記分離は、電気泳動的に、クロマトグラフィ的に又は電気クロマトグラフィ的に実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記電気泳動的分離は、SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)、キャピラリー電気泳動及びマイクロチャネル/微小流体チャネル電気泳動から成る群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記電気泳動的分離を実施することは、
前記試料を受け取るための少なくとも1つのウェル、及び該少なくとも1つのウェルに連結され且つ種々の化合物を分離するように適応されている分離チャネルを含むチップへ、前記試料を注入すること、
該チャネルにわたって電界を印加することであって、それにより該チャネルを通って前記試料を移動させる、印加すること
を含む、請求項22ないし24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記分離は、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレンオキシド及びポリビニルピロリドンから成る群から選択される分離ゲル上で実施され、好ましくはポリジメチルアクリルアミドゲル上で実施される、請求項22ないし25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記チップは、ガラス、石英、シリカ、シリコン及びポリマーから成る群から選択される材料を含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記分離は、約7〜約8の範囲のpHで、好ましくは約7.3〜約7.7の範囲のpHで、より好ましくは約7.5のpHで実施される、請求項22ないし27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記試料は、好ましくは約0.10mM〜約0.20mMの量で、より好ましくは約0.125mM〜約0.175mMの量で、最も好ましくは約0.15mMの量でドデシル硫酸ナトリウムを含む、請求項22ないし28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
較正が分析前に実施される、請求項22ないし29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記較正は「ラダー」を用いて実施される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記分離され且つ標識されたリポタンパク質は、蛍光分光法により光学的に検出される、請求項22ないし30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法は、請求項1ないし21のいずれか1項に記載のキットを使用することにより実施される、請求項22ないし32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
試料中のリポタンパク質を光学的に検出する方法であって、
該リポタンパク質を、一般式I
【化16】

式中、
Zは、一般式IIa
【化17】

または一般式IIb
【化18】

または一般式IIc
【化19】

を有するベンゾオキサゾール、ベンゾジアゾール、2,3,3−トリメチルインドリニン、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドリニン、3−ピコリン及び4−ピコリン、リピジン、キナジン並びに9−メチルアクリジンの誘導体の置換誘導体であり、
Xは、O、S、Si、N−アルキル及びC(アルキル)から成る群から選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
〜R14は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、直鎖アルケニル又は分岐アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アルキル置換アミン及び環状アミンから成る群から選択され、並びに/或いは互いにオルト位における2つ以上のフラグメント、例えばR10とR11又はRとRとRは、別のシクロアルキル環若しくはシクロアルキル環構造、複素環若しくは複素環構造、ヘテロアリール環構造又は芳香族環若しくは芳香族環構造を一緒に形成する。
を有するポリメチンを含有するマーカー色素で標識すること、及び
該標識されたリポタンパク質を光学的に検出すること
を含む、試料中のリポタンパク質を光学的に検出する方法。
【請求項35】
前記方法は、請求項10ないし21のいずれか1項に記載のマーカー色素を使用することにより実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
試料中のリポタンパク質を、該リポタンパク質を、一般式I
【化20】

式中、
Zは、
一般式IIa
【化21】

または一般式IIb
【化22】

または一般式IIc
【化23】

を有するベンゾオキサゾール、ベンゾジアゾール、2,3,3−トリメチルインドリニン、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドリニン、3−ピコリン及び4−ピコリン、リピジン、キナジン並びに9−メチルアクリジンの誘導体の置換誘導体であり、
Xは、O、S、Si、N−アルキル及びC(アルキル)から成る群から選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
〜R14は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、直鎖アルケニル又は分岐アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アルキル置換アミン及び環状アミンから成る群から選択され、並びに/或いは互いにオルト位における2つ以上のフラグメント、例えばR10とR11又はRとRとRは、別のシクロアルキル環若しくはシクロアルキル環構造、複素環若しくは複素環構造、ヘテロアリール環構造又は芳香族環若しくは芳香族環構造を一緒に形成する。
を有するポリメチンで標識することにより光学的に検出するための一般式(I)を有するポリメチンの使用方法。
【請求項37】
前記マーカー色素は、請求項10ないし21のいずれか1項に記載される、請求項36に記載の使用方法。
【請求項38】
試料中のリポタンパク質クラス分布を、該リポタンパク質を、一般式I
【化24】

式中、
Zは、
一般式IIa
【化25】

または一般式IIb
【化26】

または一般式IIc
【化27】

を有するベンゾオキサゾール、ベンゾジアゾール、2,3,3−トリメチルインドリニン、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドリニン、3−ピコリン及び4−ピコリン、リピジン、キナジン並びに9−メチルアクリジンの誘導体の置換誘導体であり、
Xは、O、S、Si、N−アルキル及びC(アルキル)から成る群から選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
〜R14は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、直鎖アルケニル又は分岐アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アルキル置換アミン及び環状アミンから成る群から選択され、並びに/或いは互いにオルト位における2つ以上のフラグメント、例えばR10とR11又はRとRとRは、別のシクロアルキル環若しくはシクロアルキル環構造、複素環若しくは複素環構造、ヘテロアリール環構造又は芳香族環若しくは芳香族環構造を一緒に形成する。
を有するポリメチンで標識することにより分析するための一般式(I)を有するポリメチンの使用方法。
【請求項39】
前記マーカー色素は、請求項10ないし21のいずれか1項に記載される、請求項38に記載の使用方法。
【請求項40】
試料中のHDLサブクラスパターン及び/又はLDLサブクラスパターンを、該リポタンパク質を、一般式I
【化28】

式中、
Zは、一般式IIa
【化29】

または一般式IIb
【化30】

または一般式IIc
【化31】

を有するベンゾオキサゾール、ベンゾジアゾール、2,3,3−トリメチルインドリニン、2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾ−3H−インドリニン、3−ピコリン及び4−ピコリン、リピジン、キナジン並びに9−メチルアクリジンの誘導体の置換誘導体であり、
Xは、O、S、Si、N−アルキル及びC(アルキル)から成る群から選択され、
nは、0、1、2又は3であり、
〜R14は独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキル、直鎖アルケニル又は分岐アルケニル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環、ヒドロキシ、カルボキシ、アミン、アルキル置換アミン及び環状アミンから成る群から選択され、並びに/或いは互いにオルト位における2つ以上のフラグメント、例えばR10とR11又はRとRとRは、別のシクロアルキル環若しくはシクロアルキル環構造、複素環若しくは複素環構造、ヘテロアリール環構造又は芳香族環若しくは芳香族環構造を一緒に形成する。
を有するポリメチンで標識することにより分析するための一般式(I)を有するポリメチンの使用方法。
【請求項41】
前記マーカー色素は、請求項10ないし21のいずれか1項に記載される、請求項40に記載の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−526212(P2009−526212A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553635(P2008−553635)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/050862
【国際公開番号】WO2007/090468
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【Fターム(参考)】