説明

ポリメチン色素の製造方法

【課題】入手しにくい合成原料を安価な原料の組み合わせで代替し、かつ製造工程を短縮し、低コストでポリメチン色素を製造する方法を提供する。
【解決手段】(A)N,N−二置換ホルムアミド及びオキシ塩化リンの反応により得られる活性イミニウム化合物、(B)2−置換マロン酸、並びに(C)例えば化合物(b)を反応させる、一般式(1a)で表されるポリメチン色素の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリメチン色素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリメチン色素の製造方法としては種々の方法が知られている。例えば、非特許文献1には、シアニン色素の一般的な合成法が紹介されており、その中にジカルボシアニンの合成経路と原料が記載されている。非特許文献2には、ヨウ化1,2,3,3−テトラメチルインドレニウムと1,5−ジフェニル−1,5−ジアザ−1,3−ペンタジエンの反応により対応するジカルボシアニンを得たという記載がある。非特許文献3には、ヨウ化3−エチル−2−メチルナフト[2,1−d]チアゾリウムと3−アニリノ−2−メチルアクリルアルデヒドフェニルイミンとの反応により対応するチアジカルボシアニンが得られるという記載がある。非特許文献4には、アルキルマロン酸のホルミル化による1,3−ジアルデヒドの合成法が記載されている。
【0003】
また、非特許文献5には、アルデヒドまたはそのアセタールをVilsmeier試薬と反応させて得られる反応混合物(1,1−ジメチル−3−アルキル−4−エトキシ−1−アゾニア−1,3−ブタジエンのジクロロリン酸塩を含有すると考えられている)に、ヨウ化2−エチル−2,3,3−トリメチル−4,5−ベンゾインドレニウム等のヘテロ環四級塩を加えることにより、対応するジカルボシアニン色素が得られることが記載されている。
【0004】
しかしながら、従来法では、置換ポリメチン色素の合成は困難で低収率であり、また、原料も入手困難であるため、コストが高いという問題があった。
【0005】
【非特許文献1】「改訂 写真光学の基礎」日本写真学会編、コロナ社
【非特許文献2】Ogata,Chem.Zentralbl.,105,11,2227(1934).
【非特許文献3】Hamer,Rathbone,J.Chem.Soc.,1945,595-599.
【非特許文献4】J.Kucera and Z.Arnord,Collection Czechoslov.Chem.Commun.,32,3792(1967).
【非特許文献5】S.M.Makin and A.I.Pomogaev,Zh.Org.Khim.,17,2263(1981).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、入手しにくい合成原料を安価な原料の組み合わせで代替し、かつ製造工程を短縮し、低コストでポリメチン色素を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
<1>下記一般式(1a)又は(1b)で表されるポリメチン色素の製造方法であって、(A)N,N−二置換ホルムアミド及びオキシ塩化リン、(B)2−置換マロン酸、並びに(C)下記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物を反応させることを特徴とする、ポリメチン色素の製造方法。
【0008】
【化1】

【0009】
[前記一般式(1a)中、Gは置換基を表す。Yは5員または6員の複素環を形成するために必要な原子群を表す。Tは−O−、−S−、−N(R1)−を表し、T+は=O+−、=S+−、=N+(R1)−を表し、R1はアルキル基を表す。qは0又は1を表す。M1は電荷中和対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な正の数を表す。
前記一般式(1b)中、Gは置換基を表す。Y1は炭素環又は複素環を形成するために必要な原子団を表す。Eは共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、xは0又は1を表す。X1は=O、=S、=NR2又は=C(CN)2を表し、X2は−O−、−S−、−NR2−又は−C(CN)2−を表し、R2は置換基を表す。]
【0010】
【化2】

【0011】
[前記一般式(2)及び(3)中、Yは5員または6員の複素環を形成するために必要な原子群を表す。Tは−O−、−S−、−N(R1)−を表し、T+は=O+−、=S+−、=N+(R1)−を表し、R1はアルキル基を表す。qは0又は1を表す。M1は電荷中和対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。]
【0012】
【化3】

【0013】
[前記一般式(4)中、Y1は炭素環又は複素環を形成するために必要な原子団を表す。Eは共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、xは0又は1を表す。X1は=O、=NR2又は=C(CN)2を表し、R2は置換基を表す。]
<2>前記N,N−二置換ホルムアミドと前記オキシ塩化リンとを混合した後に、前記2−置換マロン酸を加え、更にその後に前記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物を加える、<1>項に記載のポリメチン色素の製造方法。
<3>前記N,N−二置換ホルムアミドが、N,N−ジメチルホルムアミド又はN−フェニル−N−メチルホルムアミドである、<1>又は<2>項に記載のポリメチン色素の製造方法。
<4>前記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物の添加と同時に又はその後に塩基を添加する、<1>〜<3>のいずれか1項に記載のポリメチン色素の製造方法。
<5>アシル化剤の存在下に行う、<1>〜<4>のいずれか1項に記載のポリメチン色素の製造方法。
<6>前記アシル化剤が酸無水物である、<5>項に記載のポリメチン色素の製造方法。
<7>前記2−置換マロン酸が、G−CH(COOH)2(ここでGはアルキル基、アリール基または複素環基を表す)である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載のポリメチン色素の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の方法によれば、ワンポットで反応を行うことができ、製造工程を短縮し、低コストでポリメチン色素を製造することができる。また、従来は合成が困難であった置換ポリメチン色素を収率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の方法で製造される下記一般式(1a)又は(1b)で表されるポリメチン色素について説明する。
【0016】
【化4】

【0017】
[前記一般式(1a)中、Gは置換基を表す。Yは5員または6員の複素環を形成するために必要な原子群を表す。Tは−O−、−S−、−N(R1)−を表し、T+は=O+−、=S+−、=N+(R1)−を表し、R1はアルキル基を表す。qは0又は1を表す。M1は電荷中和対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。
前記一般式(1b)中、Gは置換基を表す。Y1は炭素環又は複素環を形成するために必要な原子団を表す。Eは共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、xは0又は1を表す。X1は=O、=S、=NR2又は=C(CN)2を表し、X2は−O−、−S−、−NR2−又は−C(CN)2−を表し、R2は置換基を表す。]
【0018】
前記一般式(1a)及び(1b)中、Gは置換基を表し、好ましくは、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12)のアルキル基、炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜12)のアリール基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数2〜12)の5〜6員の複素環基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12)のアルコキシ基、炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜12)のアリールオキシ基、ハロゲン原子(例えばF,Cl,Br,I)、炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜12)のアシルアミノ基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12)のスルホニルアミノ基、炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜12)のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12)のスルファモイル基、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12)のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18(好ましくは炭素数6〜12)のアリールスルホニル基であり、特に好ましくは炭素数1〜12の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基である。
【0019】
Gで表されるアルキル基の例としては、メチル、エチル、ブチル、2−メチルプロピル、2−エチルヘキシル、ドデシル、オクタデシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、3−メトキシプロピル、3−フェノキシブチル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルなどが挙げられる。
また、Gで表されるアリール基の例としては、フェニル、トリル、メトキシフェニル、クロロフェニル、メタンスルホニルフェニル、アセチルフェニル、ビフェニリル、ナフチル等が挙げられる。Gで表される複素環基の例としては、2−ベンゾオキサゾリル、2−ベンゾイミダゾリル等が挙げられる。Gで表されるアルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、ベンジルオキシ、2−メチルプロポキシ、ドデシルオキシ、ネフトキシエトキシ等が挙げられる。Gで表されるアリールオキシ基の例としては、フェノキシ、ナフトキシ、4−メチルフェノキシ、3,5−ジクロロフェノキシ、4−メタンスルホニルフェノキシ、4−ドデシルフェノキシ等が挙げられる。Gで表されるアシルアミノ基の例としては、アセトアミド、ベンズアミド、ラウロイルアミノ等が挙げられる。Gで表されるスルホニルアミノ基の例としては、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ、パラトルエンスルホニルアミノ等が挙げられる。Gで表されるアルコキシカルボニル基の例としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2−メチルプロポキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニル等が挙げられる。Gで表されるスルファモイル基の例としては、N−ブチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、モルホリノスルホニル、ピロリジノスルホニル等が挙げられる。Gで表されるアルキルスルホニル基の例としては、メタンスルホニル、ブタンスルホニル、オクタンスルホニル、ドデカンスルホニル、等が挙げられる。Gで表されるアリールスルホニル基の例としては、ベンゼンスルホニル、パラトルエンスルホニル、パラクロロスルホニル等が挙げられる。
【0020】
前記一般式(1a)中、Yは、5員または6員の複素環を形成するために必要な原子群を表す。本発明における5員または6員の複素環とは、5員または6員の単環式複素環に限定されず、5員または6員の単環式複素環に環が縮合した多環式複素環を含む。Yによって形成される核としては、3,3−ジアルキルインドレニン核、3,3−ジアルキルベンゾインドレニン核、チアゾール核、ベンゾチアゾール核、ナフトチアゾール核、チアゾリン核、オキサゾール核、ベンゾオキサゾール核、ナフトオキサゾール核、オキサゾリン核、セレナゾール核、ベンゾセレナゾール核、ナフトセレナゾール核、セレナゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、ナフトテルラゾール核、テルラゾリン核、イミダゾール核、ベンゾイミダゾール核、ナフトイミダゾール核、ピリジン核、キノリン核、イソキノリン核、イミダゾ〔4,5−b〕キノキザリン核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核などを挙げることができる。ここで挙げられた5員または6員の複素環は、可能な場合は、置換基Wを有していてもよい。
【0021】
ここで置換基Wとしては、ハロゲン原子、または炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が組み合わされてなる置換基であり、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基、スルホンアミド基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシスルホニルアミノ基、ウレイド基、チオウレイド基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルフィニル基、スルファモイル基、カルボキシル基(塩を含む)、スルホ基(塩を含む)を挙げることができる。これらは、更に、これらの置換基で置換されていてもよい。
【0022】
上記置換基Wの例を更に詳しく説明する。アルキル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の直鎖、分岐鎖または環状の置換基を有していてもよいアルキル基であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、2−ヒドロキシエチル、4−カルボキシブチル、ヘキシル、オクチル、ベンジル及びフェネチルを挙げることができる。アルケニル基は、炭素数2〜18(好ましくは炭素数2〜8)の直鎖、分岐鎖または環状のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−ペンテニル、1,3−ブタジエニル、及び2−オクテニルを挙げることができる。
【0023】
アラルキル基は、炭素数7〜10のアラルキル基であり、例えば、ベンジルを挙げることができる。アリール基は、炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリール基であり、例えば、フェニル、ナフチル、4−カルボキシフェニル、3−カルボキシフェニル、3,5−ジカルボキシフェニル、4−メタンスルホンアミドフェニル、及び4−ブタンスルホンアミドフェニルを挙げることができる。ヘテロ環基は、炭素原子、窒素原子、酸素原子、あるいは硫黄原子から構成される5〜6員環の飽和または不飽和のヘテロ環基であり、環を構成するヘテロ原子の数及び元素の種類は1つでも複数であってもよく、例えば、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、5−カルボキシベンゾオキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、スルホラン環、フラン環、チオフェン環、ピラゾール環、ピロール環、クロマン環及びクマリン環を挙げることができる。
【0024】
ハロゲン原子としては例えば、フッ素原子、塩素原子、及び臭素原子を挙げることができる。アルコキシ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びブトキシを挙げることができる。アリールオキシ基は、炭素数6〜10の置換基を有していてもよいアリールオキシ基であり、例えば、フェノキシ、及びp−メトキシフェノキシを挙げることができる。アルキルチオ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルチオ基であり、例えば、メチルチオ及びエチルチオを挙げることができる。アリールチオ基は、炭素数6〜10のアリールチオ基であり、例えば、フェニルチオを挙げることができる。アシルオキシ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ、プロパノイルオキシ、ペンタノイルオキシ、オクタノイルオキシを挙げることができる。
【0025】
アルキルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルアミノ基であり、例えば、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ及びオクチルアミノを挙げることができる。アミド基は、炭素数1〜18(好ましくは、炭素数1〜8)のアミド基であり、例えば、アセトアミド、プロパノイルアミノ、ペンタノイルアミノ、オクタノイルアミノ、オクタノイルメチルアミノ、及びベンズアミドを挙げることができる。スルホンアミド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のスルホンアミド基であり、例えば、メタンスルホンアミド、エタンスルホンアミド、プロピルスルホンアミド、ブタンスルホンアミド、およびベンゼンスルホンアミドを挙げることができる。アルコキシカルボニルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ及びエトキシカルボニルアミノを挙げることができる。アルコキシスルホニルアミノ基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシスルホニルアミノ基であり、例えば、メトキシスルホニルアミノ及びエトキシスルホニルアミノを挙げることができる。
【0026】
スルファモイルアミノ基は、炭素数0〜18(好ましくは炭素数0〜8)の置換基を有していてもよいスルファモイルアミノ基で例えば、メチルスルファモイルアミノ、ジメチルスルファモイルアミノ、エチルスルファモイルアミノ、プロピルスルファモイルアミノ、オクチルスルファモイルアミノを挙げることができる。ウレイド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換基を有していてもよいウレイド基であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、オクチルウレイドを挙げることができる。チオウレイド基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換基を有していてもよいチオウレイド基であり、例えば、チオウレイド、メチルチオウレイド、N,N−ジメチルチオウレイド、オクチルチオウレイドを挙げることができる。アシル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアシル基であり、例えばアセチル、ベンゾイル、及びプロパノイルを挙げることができる。アルコキシカルボニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、及びオクチルオキシカルボニルを挙げることができる。
【0027】
カルバモイル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換基を有していてもよいカルバモイル基であり、例えば、カルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、及びN−エチルカルバモイルを挙げることができる。スルホニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキル又はアリールスルホニル基で例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル、及びベンゼンスルホニルを挙げることができる。スルフィニル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)のアルキルスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル、エタンスルフィニル、及びオクタンスルフィニルを挙げることができる。スルファモイル基は、炭素数0〜18(好ましくは炭素数0〜8)の置換基を有していていも良いスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル、ジメチルスルファモイル、エチルスルファモイル、ブチルスルファモイル、オクチルスルファモイル、及びフェニルスルファモイルを挙げることができる。
【0028】
Yは、置換または無置換の3,3−ジアルキルインドレニン核、3,3−ジアルキルベンゾインドレニン核であることが好ましい。
【0029】
前記一般式(1a)中、Tは−O−、−S−、−N(R1)−を表し、T+は=O+−、=S+−、=N+(R1)−を表し、R1は、アルキル基を表す。T又はT+は、−N(R1)−又は=N+(R1)−が好ましい。R1で表されるアルキル基は、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜8)の置換または無置換の直鎖、分岐鎖または環状のアルキル基であり、その置換基としては、好ましくは、無置換のアルキル基、あるいはアリール基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基又はスルホ基で置換されたアルキル基である。
1で表されるアルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、2−エチルヘキシル、オクチル、ベンジル、2−フェニルエチル、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−カルボキシエチル、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、カルボキシメチル、2−メトキシエチル、2−(2−メトキシエトキシ)エチル、2−スルホエチル、3−スルホプロピル、3−スルホブチル、4−スルホブチル、2−(3−スルホプロポキシ)エチル、2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル、3−スルホプロポキシエトキシエチル、2−アセトキシエチル、カルボメトキシメチル、及び2−メタンスルホニルアミノエチルを挙げることができる。
【0030】
前記一般式(1a)中、M1は、電荷中和対イオン(電荷均衡対イオン)を表す。無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、M1で表される陰イオンの具体例としては、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなど)、スルホネートイオン(例えば、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン、1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオンなど)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロほう酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、及びリン酸イオン(例えば、ヘキサフルオロリン酸イオンなど)などを挙げることができる。
【0031】
前記一般式(1b)中、Y1は炭素環又は複素環を形成するために必要な原子団を表し、Eは共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、xは0又は1を表す。Y1及びEを含んで形成される炭素環又は複素環としては、好ましくは5〜6員環である。ここで、本発明における5〜6員環とは、5〜6員の単環に限定されず、5〜6員の単環に環が縮合した縮合多環を含む。Y1及びEを含んで形成される炭素環又は複素環としては、具体的にはピラゾロン環、インダンジオン環、バルビツール酸、メルドラム酸、チオバルビツール酸などを挙げることができる。
【0032】
前記一般式(1b)中、X1は=O、=S、=NR2又は=C(CN)2を表し、X2は−O−、−S−、−NR2−又は−C(CN)2−を表し、R2は置換基を表す。X1又はX2としては、=O又は−O−が特に好ましい。置換基R2としては、アルキル基またはアリール基などが好ましい。置換基R2の具体例としては、メチル、エチル、フェニル、ベンジル、シクロヘキシルなどを挙げることができる。
【0033】
以下に、前記一般式(1a)又は(1b)で表されるポリメチン色素の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0034】
【化5】

【0035】
【化6】

【0036】
【化7】

【0037】
【化8】

【0038】
次に、本発明の前記一般式(1a)又は(1b)で表されるポリメチン色素の製造方法について説明する。本発明の前記一般式(1a)又は(1b)で表されるポリメチン色素の製造方法は、(A)N,N−ジアルキルホルムアミド及びオキシ塩化リン、(B)2−置換マロン酸、並びに(C)下記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物を反応させることを特徴とする。
【0039】
【化9】

【0040】
[前記一般式(2)及び(3)中、Yは5員または6員の複素環を形成するために必要な原子群を表す。Tは−O−、−S−、−N(R1)−を表し、T+は=O+−、=S+−、=N+(R1)−を表し、R1はアルキル基を表す。qは0又は1を表す。M1は電荷中和対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。]
【0041】
【化10】

【0042】
[前記一般式(4)中、Y1は炭素環又は複素環を形成するために必要な原子団を表す。Eは共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、xは0又は1を表す。X1は=O、=NR2又は=C(CN)2を表し、R2は置換基を表す。]
【0043】
本発明に用いられるN,N−二置換ホルムアミドにおける置換基は、炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜4)の置換もしくは無置換の直鎖もしくは分岐のアルキル基、または炭素数6〜12の置換もしくは無置換のフェニル基である。2つの置換基は同一であっても異なってもよい。N,N−二置換ホルムアミドの特に好ましい具体例は、N,N−ジメチルホルムアミド又はN−フェニル−N−メチルホルムアミドである。
【0044】
N,N−二置換ホルムアミド及びオキシ塩化リンは反応してVilsmeier試薬と呼ばれる活性イミニウム化合物(N−クロロメチレン−N,N−二置換アンモニウムクロリド)を形成する。本発明では、原料として、N,N−ジアルキルホルムアミド及びオキシ塩化リンを用いてもよく、これらの反応により得られるVilsmeier試薬を用いてもよい。
【0045】
本発明に用いられる2−置換マロン酸は、G−CH(COOH)2で表すことができ、ここで置換基Gは、前記一般式(1a)又は(1b)におけるGと同義であり、好ましい範囲も同様である。また、本発明に用いられる2−置換マロン酸における置換基としては、アルキル基、アリール基または複素環基が挙げられ、特に好ましくは、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜12)の置換または無置換の直鎖、分岐、または環状のアルキル基である。2−置換マロン酸の好ましい例としては、2−メチルマロン酸、2−エチルマロン酸、2−ブチルマロン酸、2−ベンジルマロン酸、2−(2−エチルヘキシル)マロン酸、2−シクロヘキシルマロン酸、2−オクチルマロン酸、2−ドデシルマロン酸が挙げられる。
【0046】
前記一般式(2)又は(3)で表される化合物について説明する。
前記一般式(2)及び(3)中、Y、T、T+、R1、q、M1及びm1は、それぞれ前記一般式(1a)におけるY、T、T+、R1、q、M1及びm1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0047】
以下に、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
前記一般式(4)で表される化合物について説明する。
前記一般式(4)中、Y1、E、x、X1及びR2は、それぞれ前記一般式(1b)におけるY1、E、x、X1及びR2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0051】
以下に、前記一般式(4)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
【化13】

【0053】
本発明の前記一般式(1a)又は(1b)で表されるポリメチン色素の製造方法は、(A)N,N−二置換ホルムアミド及びオキシ塩化リン、(B)2−置換マロン酸、並びに(C)下記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物を反応させる。まずN,N−ジアルキルホルムアミドとオキシ塩化リンとを混合した後に、これに2−置換マロン酸を加え、更にその後に前記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物を加えることが好ましい。
また、前記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物の添加と同時に又はその後に塩基を添加することが好ましい。本発明に用いることができる塩基の具体例としては、ナトリウムエトキシドなどのアルコキシド、トリエチルアミンなどの三級アミン、ジアザビシクロウンデセン(DBU)などの環状アミン、炭酸カリウムなどの炭酸塩、水酸化ナトリウムなどの水酸化物、酢酸カリウムなどのカルボン酸塩などを挙げることができる。
【0054】
また、本発明の方法は、アシル化剤の存在下で行うことが好ましい。アシル化剤としては、酸無水物、カルボン酸エステル、カルボン酸ハライドなどが挙げられ、特に酸無水物が好ましい。本発明に用いることができるアシル化剤の具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水安息香酸などを挙げることができる。
【0055】
本発明の製造方法は、以下のスキームに従って行われる。
【0056】
【化14】

【0057】
本発明の製造方法は、まず、N,N−二置換ホルムアミド及びオキシ塩化リンの反応により得られるVilsmeier試薬と呼ばれる活性イミニウム化合物(N−クロロメチレン−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド)に2−置換マロン酸を反応させることで中間体(化合物(a))が生成すると推定される。引き続きこれに前記一般式(2)又は(3)で表される化合物(化合物(b))を反応させることで目的のポリメチン色素(前記一般式(1a)で表される化合物)を製造することができる。また、前記一般式(2)又は(3)で表される化合物(b)の代わりに前記一般式(4)で表される化合物を用いれば、前記一般式(1b)で表される化合物(ポリメチン色素)を製造することができる。
【0058】
本発明の製造方法における反応を行う際に、溶媒を用いても良い。溶媒としては、Vilsmeier試薬およびそれを合成する際に用いる試薬と反応しない、非プロトン性溶媒が好ましい。この反応に用いる溶媒およびその量は、当業者なら少数回の予備実験を行うことにより、溶質にあわせてその選択を容易に行うことができる。用いる溶媒は単独であっても混合物であっても良い。混合物の場合、各溶媒成分が均一に混和し得るものであっても、混和しないものでも良いが、均一に混和し得るものが好ましい。
好ましい溶媒としては、ジエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類;石油エーテル、リグロイン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、テトラリン、デカリン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ビフェニルなどの炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化アルキル類;酢酸エチル、乳酸エチル、炭酸プロピレンなどのエステル類が挙げられる。
【0059】
本発明の方法における反応温度は、副反応を抑制する上では低温ほど好ましく、反応時間を短縮する上では高温ほど好ましいが、氷点以上かつ溶媒の沸点以下、または氷点以上かつハロゲン化アルキルの沸点以下に設定することが好ましい。当業者であれば少数回の予備実験を行うことにより、反応温度の選択を容易に行うことができる。
【0060】
従来、メソ位置換ジカルボシアニン色素の合成原料としては、1,3−ジアルデヒドまたはそのジアセタール化合物もしくはジアニル体が使用されていたが、これらは入手困難で高価であり、また、これらの原料を用いても合成が困難であり低収率であった。
これに対し、本発明の方法では、置換マロン酸とVilsmeier試薬との反応生成物(反応中間体(a))が、従来用いられていた1,3−ジアルデヒド誘導体と同様の反応を引き起こすことができる。本発明の製造方法における原料として用いられる置換マロン酸は、安価なマロン酸から簡便に合成することができ、Vilsmeier試薬は、N,N−ジアルキルホルムアミド及びオキシ塩化リンの反応により簡便に得ることができる。また、本発明の方法は、単離することなくワンポットで行うことができ、製造工程を短縮することができる。
したがって、本発明の方法は、入手しにくい合成原料を安価な原料の組み合わせで代替し、かつ製造工程を短縮し、安価かつ簡便にポリメチン色素を製造することができる。
【0061】
本発明により得られるポリメチン色素は、色素、染料、顔料、写真、光ディスク、光学フィルタ、標識試薬、塗料などの分野に利用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施例1
<過塩素酸12−エチル−1,1’3,3,3’,3’−ヘキサメチルビス(4,5−ベンゾ)インドジカルボシアニン(例示化合物S2)の製造>
クロロホルム24mlとN,N−ジメチルホルムアミド1.6ml(20mmol)の混合物に、氷冷下撹拌しつつオキシ塩化リン2ml(20mmol)を15分間にわたり滴下した。なお、このとき発熱するので液温が10℃を超えない速度で滴下した。
次いで、エチルマロン酸1.52g(10mmol)を滴下した後、氷水浴を取り外して撹拌を続け、室温まで昇温した。更にスチームバス上で短時間還流し、エタノール40ml、パラトルエンスルホン酸1,2,3,3−テトラメチル−4,5−ベンゾインドリウム(例示化合物4)7.8g(20mmol)、トリエチルアミン5ml、無水酢酸3mlを加えて加熱撹拌した。更に、トリエチルアミン3mlと無水酢酸2mlを加え、しばらくしてトリエチルアミン2mlおよび無水酢酸1mlを加えた。その後クロロホルムを留去し、室温まで放冷した。エタノールで2倍に希釈した60%過塩素酸水溶液を加え(10mmol)、析出した結晶を濾取し、エタノールをかけて洗い、減圧下に乾燥し、目的化合物(例示化合物S2)を得た。
【0064】
【化15】

【0065】
収量2.57g(収率42%);
緑色金属光沢結晶;
mp:228.5〜230℃(dec.);
λmax(CH3OH):671nm;
1H−NMR(300MHz,CDCl3):δ1.23(t,J=7.6,3H:CH2CH3),2.07(s,J=12H,C−CH3),2.64(q,J=7.5,2H,CH2CH3),3.82(s,6H,N−CH3),6.08(d,J=14.2,2H,β=CH),7.40(d,J=8.8,2H),7.47(td,J=0.75,7.4,2H),7.62(td,J=1.2,7.7,2H),8.14ppm(d,J=14.2,2H,α=CH);
MS(m/z):+511,−99.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1a)又は(1b)で表されるポリメチン色素の製造方法であって、(A)N,N−二置換ホルムアミド及びオキシ塩化リン、(B)2−置換マロン酸、並びに(C)下記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物を反応させることを特徴とする、ポリメチン色素の製造方法。
【化1】

[前記一般式(1a)中、Gは置換基を表す。Yは5員または6員の複素環を形成するために必要な原子群を表す。Tは−O−、−S−、−N(R1)−を表し、T+は=O+−、=S+−、=N+(R1)−を表し、R1はアルキル基を表す。qは0又は1を表す。M1は電荷中和対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な正の数を表す。
前記一般式(1b)中、Gは置換基を表す。Y1は炭素環又は複素環を形成するために必要な原子団を表す。Eは共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、xは0又は1を表す。X1は=O、=S、=NR2又は=C(CN)2を表し、X2は−O−、−S−、−NR2−又は−C(CN)2−を表し、R2は置換基を表す。]
【化2】

[前記一般式(2)及び(3)中、Yは5員または6員の複素環を形成するために必要な原子群を表す。Tは−O−、−S−、−N(R1)−を表し、T+は=O+−、=S+−、=N+(R1)−を表し、R1はアルキル基を表す。qは0又は1を表す。M1は電荷中和対イオンを表し、m1は分子中の電荷を中和させるために必要な0以上の数を表す。]
【化3】

[前記一般式(4)中、Y1は炭素環又は複素環を形成するために必要な原子団を表す。Eは共役二重結合鎖を完成するために必要な原子団を表し、xは0又は1を表す。X1は=O、=NR2又は=C(CN)2を表し、R2は置換基を表す。]
【請求項2】
前記N,N−二置換ホルムアミドと前記オキシ塩化リンとを混合した後に、前記2−置換マロン酸を加え、更にその後に前記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物を加える、請求項1記載のポリメチン色素の製造方法。
【請求項3】
前記N,N−二置換ホルムアミドが、N,N−ジメチルホルムアミド又はN−フェニル−N−メチルホルムアミドである、請求項1又は2に記載のポリメチン色素の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(2)、(3)又は(4)のいずれかで表される化合物の添加と同時に又はその後に塩基を添加する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリメチン色素の製造方法。
【請求項5】
アシル化剤の存在下に行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリメチン色素の製造方法。
【請求項6】
前記アシル化剤が酸無水物である、請求項5記載のポリメチン色素の製造方法。
【請求項7】
前記2−置換マロン酸が、G−CH(COOH)2(ここでGはアルキル基、アリール基または複素環基を表す)である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリメチン色素の製造方法。

【公開番号】特開2009−138140(P2009−138140A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317445(P2007−317445)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】