説明

ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法

【課題】成形性(結晶化速度、感温性及び耐熱性)及び難燃性に優れるポリ乳酸樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤、及びリン化合物を含有するポリ乳酸樹脂組成物原料を該ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)以上で溶融混合する工程(工程A)、ならびに前記工程Aで得られた溶融混合物を、該溶融混合物のガラス転移点(Tgm)(℃)以上Tmr(℃)未満の温度(℃)で熱処理する工程(工程B)を含んでなるポリ乳酸樹脂組成物の製造方法であって、前記結晶核剤が、分子中にエステル基、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を2つ以上有する脂肪族化合物を90重量%以上含有してなる、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等として好適に使用し得るポリ乳酸樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどの石油を原料とする汎用樹脂は、軽量であることや良好な加工性、物性、及び耐久性等の性質から、日用雑貨、家電製品、自動車部品、建築材料あるいは食品包装などの様々な分野に使用されている。しかしながらこれらの樹脂製品は、役目を終えて廃棄する段階で良好な耐久性が欠点となり、自然界における分解性に劣るため、生態系に影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
このような問題を解決するために、熱可塑性樹脂で生分解性を有するポリマーとして、ポリ乳酸、乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸から誘導される脂肪族ポリエステル及びそれらのユニットを含むコポリマー等の生分解性ポリエステル樹脂が開発されている。
【0004】
これらの生分解性ポリマーは、土壌、海水中、あるいは動物の体内などに置かれた場合、自然に生息する微生物の産出する酵素の働きによって、数週間で分解が始まり、約1年から数年の間に消滅する。さらに分解物は、人体に無害な乳酸、二酸化炭素、水などになる。脂肪族ポリエステルの中でもポリ乳酸系樹脂は、トウモロコシ、芋などからとれる糖分から、発酵法によりL−乳酸が大量に作られ安価であること、原料が自然農作物なので総酸化炭素排出量が極めて少ないこと、また得られたポリマーの性能として剛性が強く透明性が良いこと等の特徴があるので、現在その利用が期待され、フラットヤーン、ネット、園芸資材、育苗用ポット等の農業土木資材分野、窓付き封筒、買い物袋、コンポストバッグ、文具、雑貨等に使用されている。しかしポリ乳酸の場合、脆く、硬いことから、可撓性に欠けるという特性も有するために用途は硬質成形品分野に限られ、その成形品は、柔軟性が不足したり、折り曲げたとき白化したりするなどの問題があり、軟質又は半硬質分野に使用されていないのが現状である。軟質、半硬質分野に応用する技術として可塑剤を添加する方法が種々提案されている。例えばアセチルクエン酸トリブチル、ジグリセリンテトラアセテート等の可塑剤を添加する技術が開示されている。これら可塑剤をポリ乳酸に添加し、成形した場合、良好な柔軟性が得られるが、結晶化速度が不十分で成形性が悪く、そのポリマーが非晶状態であるためにガラス転移点付近の温度変化による柔軟性の変化が著しく(感温性が小さく)、また高温時の耐熱性が不足しているため、季節によって物性が著しく変化し、高温環境下での使用が不可能となる問題があった。この問題を解決するためにタルク等の結晶核剤を添加することによって、ポリ乳酸を結晶化させ、耐熱性等を改善する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、特許文献2には、融点が40〜300℃の脂肪族カルボン酸アミドなどの結晶核剤を含有する脂肪族ポリエステル組成物を成形し、成形時又は成形後に熱処理することを特徴とする、結晶性を有する脂肪族ポリエステル成形体の製造方法が開示されている。更に、特許文献3には、特定の構造を有するアミド系化合物、可塑剤、乳酸系ポリマーを含有する乳酸系ポリマー組成物及びその成形体の製造方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3410075号公報
【特許文献2】特許第3411168号公報
【特許文献3】国際公開第2003/042302号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法により得られる成形体は、成形後の熱処理による結晶化速度が不足し、成形性を低下させる問題があった。特許文献2に記載の方法によっては、柔軟性を有し、結晶化速度が良好な脂肪族ポリエステル成形体は得られていない。また、特許文献3に記載の方法により得られる成形体は、乳酸系ポリマー組成物の結晶化速度が十分なものではない。
【0007】
本発明の課題は、成形性(結晶化速度、感温性及び耐熱性)及び難燃性に優れるポリ乳酸樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決する為に検討を重ねた結果、ポリ乳酸樹脂組成物に特定の結晶核剤を配合し、該結晶核剤を含有する原料を特定の温度で溶融混合し、さらに、熱処理を行うことによって、得られる樹脂組成物に十分な成形性が付与され、また、組成物にリン化合物を配合することで、難燃性に優れた樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤、及びリン化合物を含有するポリ乳酸樹脂組成物原料を該ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)以上で溶融混合する工程(工程A)、ならびに前記工程Aで得られた溶融混合物を、該溶融混合物のガラス転移点(Tgm)(℃)以上Tmr(℃)未満の温度(℃)で熱処理する工程(工程B)を含んでなるポリ乳酸樹脂組成物の製造方法であって、前記結晶核剤が、分子中にエステル基、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を2つ以上有する脂肪族化合物を90重量%以上含有してなる、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、ポリ乳酸樹脂組成物の結晶化速度、感温性及び耐熱性に加えて、難燃性も向上するポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤及びリン化合物を含有するポリ乳酸樹脂組成物原料を溶融混合する工程(工程A)、及び、前記工程Aで得られた溶融混合物を熱処理する工程(工程B)を含むものであるが、工程Aにおける溶融混合温度がポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)以上の温度であり、かつ、工程Bにおける熱処理温度が該溶融混合物のガラス転移点(Tgm)(℃)以上、ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)未満の温度であるという各工程における処理温度が特定温度であること、ならびに前記結晶核剤が特定の化合物を90重量%以上含有することに大きな特徴を有する。本発明において、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性と難燃性が向上するその詳細な理由は不明なるも、特定の温度下でポリ乳酸樹脂と特定の結晶核剤を含有する樹脂組成物原料を溶融混合して熱処理することにより、両成分が相互作用を及ぼすためと考えられる。
【0012】
本発明の製造方法の工程Aにおいては、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤、及びリン化合物を含有するポリ乳酸樹脂組成物原料を該ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)以上で溶融混合する。
【0013】
ポリ乳酸樹脂は、原料モノマーとして乳酸成分のみを縮重合させて得られるポリ乳酸、及び/又は、原料モノマーとして乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを用い、それらを縮重合させて得られるポリ乳酸を含有する。
【0014】
乳酸には、L−乳酸(L体)、D−乳酸(D体)の光学異性体が存在する。本発明では、乳酸成分として、いずれかの光学異性体のみ、又は双方を含有してもよいが、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性、難燃性及び生産性の観点から、いずれかの光学異性体を主成分とする光学純度が高い乳酸を用いることが好ましい。なお、本明細書において「主成分」とは、乳酸成分中の含有量が80モル%以上である成分のことをいう。
【0015】
乳酸成分のみを縮重合させる場合の乳酸成分におけるL体又はD体の含有量、即ち、前記異性体のうちいずれか多い方の含有量は、80〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。なお、乳酸成分におけるL体及びD体の総含有量は、実質的に100モル%であることから、前記異性体のうちいずれか少ない方の含有量は、乳酸成分中、0〜20モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましい。
【0016】
乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させる場合の乳酸成分におけるL体又はD体の含有量、即ち、前記異性体のうちいずれか多い方の含有量は、85〜100モル%が好ましく、90〜100モル%がより好ましい。なお、乳酸成分におけるL体及びD体の総含有量は、実質的に100モル%であることから、前記異性体のうちいずれか少ない方の含有量は、乳酸成分中、0〜15モル%が好ましく、0〜10モル%がより好ましい。
【0017】
一方、ヒドロキシカルボン酸成分としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等のヒドロキシカルボン酸化合物が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて利用することができる。これらのなかでも、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。
【0018】
また、本発明においては、上記乳酸及びヒドロキシカルボン酸化合物の2量体が、それぞれの成分に含有されてもよい。乳酸の2量体としては、乳酸の環状二量体であるラクチドが例示され、ヒドロキシカルボン酸化合物の2量体としては、グリコール酸の環状二量体であるグリコリドが例示される。なお、ラクチドにはL−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド、及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがあり、本発明ではいずれのラクチドも用いることができるが、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性、難燃性及び生産性の観点から、D−ラクチド及びL−ラクチドが好ましい。なお、乳酸の2量体は、乳酸成分のみを縮重合させる場合、及び乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分とを縮重合させる場合、いずれの乳酸成分に含有されていてもよい。
【0019】
乳酸成分のみの縮重合反応、及び、乳酸成分とヒドロキシカルボン酸成分との縮重合反応は、特に限定はなく、公知の方法を用いて行うことができる。
【0020】
かくして、原料モノマーを選択することにより、例えば、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの成分85モル%以上100モル%未満とヒドロキシカルボン酸成分0モル%超15モル%以下からなるポリ乳酸が得られるが、なかでも、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド及びカプロラクトンを原料モノマーとして用いて得られるポリ乳酸が好ましい。
【0021】
また、本発明において、ポリ乳酸として、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性、難燃性及び生産性の観点から、異なる異性体を主成分とする乳酸成分を用いて得られた2種類のポリ乳酸からなるステレオコンプレックスポリ乳酸を用いてもよい。
【0022】
ステレオコンプレックスポリ乳酸を構成する一方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(A)と記載する〕は、L体90〜100モル%、D体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。他方のポリ乳酸〔以降、ポリ乳酸(B)と記載する〕は、D体90〜100モル%、L体を含むその他の成分0〜10モル%を含有する。なお、L体及びD体以外のその他の成分としては、2個以上のエステル結合を形成可能な官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられ、また、未反応の前記官能基を分子内に2つ以上有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート等であってもよい。
【0023】
ステレオコンプレックスポリ乳酸における、ポリ乳酸(A)とポリ乳酸(B)の重量比〔ポリ乳酸(A)/ポリ乳酸(B)〕は、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜80/20がより好ましい。
【0024】
ポリ乳酸樹脂における、ポリ乳酸の含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは実質的に100重量%であることが望ましい。
【0025】
なお、ポリ乳酸は、上記方法により合成することができるが、市販の製品としては、例えば、レイシアH−100、H−280、H−400、H−440等の「レイシアシリーズ」(三井化学社製)、3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032D等の「Nature Works」(ネイチャーワークス社製)、エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17等の「エコプラスチックU'zシリーズ」(トヨタ自動車社製)が挙げられる。これらのなかでも、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性の観点から、レイシアH−100、H−280、H−400、H−440(三井化学社製)、3001D、3051D、4032D、4042D、6201D、6251D、7000D、7032D(ネイチャーワークス社製)、エコプラスチックU'z S−09、S−12、S−17(トヨタ自動車社製)が好ましい。
【0026】
ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)は、結晶核剤、可塑剤、リン化合物の分散性の観点、及びポリ乳酸樹脂組成物の劣化、生産性の観点から、好ましくは140〜250℃、より好ましくは150〜240℃、さらに好ましくは160〜230℃である。なお、本明細書において、ポリ乳酸樹脂が2種以上のポリ乳酸からなる場合も、融点が上記範囲内となることが好ましく、その場合の融点とは加重平均融点のことをいい、各融点は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる値である。
【0027】
ポリ乳酸樹脂組成物には、前記ポリ乳酸樹脂以外に、他の樹脂が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。他の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、スチレン、ポリカーボネート、ABS等が挙げられるが、前記ポリ乳酸樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリ乳酸樹脂組成物中、50重量%以上が好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
【0028】
本発明に用いられる可塑剤は特に限定されず、一般のポリ乳酸樹脂組成物に用いられる可塑剤の他、以下の(1)〜(12)に示すものが挙げられる。
【0029】
(1)下記(a)成分と(b)成分とのエステル
(a)一般式(I):
【0030】
【化1】

【0031】
(式中、X1は水素原子、水酸基、炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基又は炭素数2〜22のアルケニル基、あるいはハロゲン原子を示し、d及びeはそれぞれ1以上の整数で、d+e=5である。fは0〜3の整数を示す。d個のX1は同一でも異なっていてもよい。)
で表されるヒドロキシ芳香族カルボン酸、1分子中に1個以上の水酸基及びカルボキシル基を有するヒドロキシ縮合多環式芳香族カルボン酸、ヒドロキシ脂環族カルボン酸ならびにこれらカルボン酸の無水物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種
(b)脂肪族アルコール、脂環族アルコール、芳香族アルコール、フェノール及びアルキルフェノールを含むヒドロキシ化合物、及びこれらヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜4、アルキレンオキサイド平均付加モル数0より大きく30以下)からなる群より選ばれる少なくとも1種
【0032】
(2)下記(c)成分と(d)成分とのエステル
(c)一般式(II):
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、X2は水素原子、メチル基又はハロゲン原子を示し、g及びhはそれぞれ1以上の整数で、g+h=6である。g個のX2は同一でも異なっていてもよい。)
で表される芳香族カルボン酸、1分子中に1個以上のカルボキシル基を有する縮合多環式芳香族カルボン酸、脂環族カルボン酸ならびにこれらカルボン酸の無水物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種
(d)脂肪族モノアルコール、脂環族モノアルコール、芳香族モノアルコール、フェノール、アルキルフェノールを含むモノヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜4、アルキレンオキサイド平均付加モル数1〜30)からなる群より選ばれる少なくとも1種
【0035】
(3)芳香族スルホンアミドのN−アルキル化物(アルキル基の炭素数1〜22)
【0036】
(4)下記(e)成分と(f)成分とのエステル
(e)一般式(III):
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、X3は水素原子、炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基又は炭素数2〜22のアルケニル基、あるいはハロゲン原子、iは1〜5の整数を示し、i個のX3は同一でも異なっていてもよい。)
で表される芳香族モノカルボン酸、炭素数1〜22の直鎖又は分岐鎖脂肪族モノカルボン酸、縮合多環式芳香族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸及びこれらモノカルボン酸の低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜3)からなる群より選ばれる少なくとも1種
(f)一般式(IV):
【0039】
【化4】

【0040】
(式中、Y及びZは炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数2〜8のアルケニル基を示し、同一でも異なっていてもよい。)
で表される脂肪族2価アルコール、1分子中に3個以上の水酸基を有する炭素数3〜30の多価アルコール、1分子中に2個の水酸基あるいはメチロール基を有する脂環族ジオールを含むヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜4、水酸基1個当たりのアルキレンオキサイド平均付加モル数0より大きく10以下)からなる群より選ばれる少なくとも1種
【0041】
(5)脂肪族ジカルボン酸ポリオキシアルキレンアルキルエーテルエステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、又は脂肪族多価アルコールと安息香酸とのエステル
【0042】
(6)下記(g)成分と(h)成分とのエステル
(g)一般式(V):
【0043】
【化5】

【0044】
(式中、jは2〜6の整数を示す。)
で表される繰り返し構造単位(以下構造単位(V)という)を含み、両末端が水酸基であるポリカーボネートジオール。
(h)一般式(VI):
【0045】
【化6】

【0046】
(式中、X4は水素原子、水酸基、炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基、アルコキシ基又は炭素数2〜22のアルケニル基、あるいはハロゲン原子を示し、kは1〜5の整数を示し、k個のX4は同一でも異なっていてもよい。)
で表される芳香族モノカルボン酸、縮合多環式芳香族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、1分子中に1個以上の水酸基を有するヒドロキシ縮合多環式芳香族モノカルボン酸、ヒドロキシ脂環族モノカルボン酸ならびにこれらカルボン酸の無水物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種
【0047】
(7)下記(i)成分と(j)成分とのエステル
(i)シアノ基を少なくとも1個有するカルボン酸ならびにこれらカルボン酸の無水物及び炭素数1〜3の低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種
(j)脂肪族アルコール、脂環族アルコール、芳香族アルコール、フェノール及びアルキルフェノールを含むヒドロキシ化合物、及びこれらヒドロキシ化合物のアルキレンオキサイド付加物(アルキレン基の炭素数2〜4、アルキレンオキサイドの平均付加モル数0より大きく30以下)からなる群より選ばれる少なくとも1種
【0048】
(8)下記(k)成分と(l)成分とのエステル
(k)1分子中に3つ以上の水酸基を有する炭素数3以上の多価アルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種
(l)炭素数2〜12の直鎖又は分岐鎖脂肪酸及びその炭素数1〜3の低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種
【0049】
(9)下記(m)成分と(n)成分とを、アセタール化反応又はトランスアセタール化反応させて得られる環状アセタール、及び(n)成分と炭素数1〜6の低級アルコールとから得られるアセタールからなる群から選ばれる少なくとも1種
(m)3価以上の多価アルコールの少なくとも1種
(n)一般式(VII):
【0050】
【化7】

【0051】
(式中、R1及びR2は同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜21の直鎖、分岐鎖もしくは環状アルキル基を示し、R1とR2は一緒になって炭素数2〜24のアルキレン基を形成してもよい。)
で表されるカルボニル化合物
【0052】
(10)一般式(VIII):
11O(AO)nR12 (VIII)
(式中、R11は炭素数1〜15の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数2〜15の直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基、又は炭素数7〜18のアルキルフェニル基、R12は炭素数2〜15のアシル基、アルキル基もしくはアルケニル基であり、かつR11とR12の合計炭素数は4〜18である。Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す1〜20の数であり、n個のAは同一でも異なっていてもよい。)
で表される化合物
【0053】
(11)3価以上の脂肪族多価カルボン酸、3価以上の芳香族多価カルボン酸、縮合多環式芳香族カルボン酸、及び脂環族カルボン酸、ならびにそれらの無水物及びそれらの炭素数1〜3の低級アルキルエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の酸成分と、1価及び2価のアルコールのアルキレンオキサイド付加物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルコール成分とのエステル
【0054】
(12)一般式(IX):
B−[O(EO)−R132 (IX)
(式中、Bは炭素数2〜8の直鎖又は分岐鎖の2価アルコールから2個の水酸基を除いた残基、R13は炭素数2〜6の直鎖又は分岐鎖のアシル基を示し、2個のR13は同一でも異なっていても良い。EOはオキシエチレン基、sはエチレンオキサイドの平均付加モル数を示し、3≦2s≦20の数である。)
で表される化合物
【0055】
このような本発明に用いられる上記(1)〜(12)で表される化合物の具体例としては、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル等のヒドロキシ安息香酸エステル、グリセリンのエチレンオキサイド付加物の酢酸エステル等の多価アルコールエステル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル等のフタル酸エステル、アジピン酸ジオクチル等のアジピン酸エステル、マレイン酸ジ−n−ブチル等のマレイン酸エステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、トリメリット酸トリオクチル等のトリカルボン酸エステル、1,3,6−ヘキサトリカルボン酸とブチルジグリコールとのエステル等の多価カルボン酸のアルキルエーテルエステル、アセチル化ポリオキシエチレンヘキシルエーテル等のアセチル化ポリオキシエチレンアルキル(アルキル基の炭素数2〜15)エーテル、エチレンオキサイドの付加モル数が3〜20のポリエチレングリコールジアセテート、ポリオキシエチレン1,4−ブタンジオールエーテルジアセテート等が挙げられる。ポリ乳酸樹脂の柔軟性、透明性に優れる観点から、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシル等のヒドロキシ安息香酸エステル、グリセリンのエチレンオキサイド付加物の酢酸エステル、エチレンオキサイドの付加モル数が3〜20のポリエチレングリコールジアセテート等の多価アルコールエステル、フタル酸ジエチル等のフタル酸エステル、アセチル化モノグリセライド、ジグリセリンテトラアセテート等の(ポリ)グリセリンエステル、アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサトリカルボン酸とブチルジグリコールとのエステル等の多価カルボン酸のアルキルエーテルエステルが好ましい。ポリ乳酸樹脂の柔軟性、透明性、結晶化速度に優れる観点から、グリセリンのエチレンオキサイド付加物の酢酸エステル等の多価アルコールエステル、エチレンオキサイドの付加モル数が3〜10のポリエチレングリコールジアセテート、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサトリカルボン酸とブチルジグリコールとのエステル等の多価カルボン酸のアルキルエーテルエステルがより好ましい。ポリ乳酸樹脂の柔軟性、透明性、結晶化速度及び可塑剤の耐ブリード性に優れる観点から、グリセリンのエチレンオキサイド3〜6モル付加物の酢酸エステル、エチレンオキサイドの付加モル数が5〜10のポリエチレングリコールジアセテート、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレンリコールモノメチルエーテルとのエステルがさらに好ましい。ポリ乳酸樹脂の柔軟性、透明性、結晶化速度、可塑剤の耐ブリード性、優れた生分解性及び耐刺激臭の観点から、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルがさらに好ましい。
【0056】
上記(1)〜(12)で表される化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。上記(1)〜(12)で表される化合物の総含有量は、特に限定されないが、可塑剤中、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%がさらにより好ましい。
【0057】
可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、7〜70重量部が好ましく、10〜70重量部がより好ましく、10〜50重量部がさらに好ましく、15〜45重量部がさらに好ましい。
【0058】
また、本発明において、結晶核剤は、結晶化速度とポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性、感温性、さらには透明性の観点から、結晶核剤分子中にエステル基、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を2つ以上有する脂肪族化合物を90重量%以上含有する。
【0059】
上記脂肪族化合物としては、水酸基を1つ以上有し、エステル基又はアミド基を1つ以上有する脂肪族化合物が好ましく、水酸基を2つ以上有し、エステル基又はアミド基を1つ以上有する脂肪族化合物がより好ましく、水酸基を2つ以上有し、エステル基又はアミド基を2つ以上有する脂肪族化合物がさらに好ましい。本発明の効果が向上する理由は定かではないが、上記の官能基を2つ以上有すると、ポリ乳酸樹脂との相互作用が良好となり、相溶性が向上する結果、樹脂中で結晶核剤が微分散することによるものと考えられる。また、水酸基を1つ以上、好ましくは2つ以上有することによりポリ乳酸樹脂への分散性が良好となり、エステル基又はアミド基を1つ以上、好ましくは2つ以上有することによりポリ乳酸樹脂への相溶性が良好となるものと考えられる。また、上記好ましい結晶核剤は、樹脂溶融状態から冷却過程で速やかに微細な結晶を多数析出することによって、透明性、結晶化速度向上の観点でも好ましい。
【0060】
上記構造を有する化合物としては、脂肪族エステル、脂肪族アミド、脂肪酸金属塩等が挙げられ、脂肪族エステルとしては、ステアリン酸モノグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド等の脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド等のヒドロキシ脂肪酸エステル;脂肪族アミドとしては12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド等の脂肪族ビスアミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド;脂肪酸金属塩としては、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等のヒドロキシ脂肪酸金属塩等が挙げられる。結晶化速度と耐熱性、感温性、さらには透明性の観点から、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、ベヘニン酸モノグリセライド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミドが好ましく、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、エチレビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミドがより好ましく、ポリ乳酸樹脂組成物の耐熱性、感温性、さらには透明性の観点から、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドがさらに好ましく、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドがさらに好ましい。
【0061】
また、本発明における結晶核剤は、透明性の高いポリ乳酸樹脂と混合しても優れた透明性を維持することができる。これは、本発明における結晶核剤が、成形後の非晶状態(すなわち広角X線回折法で測定される結晶化度が1%以下になる条件)から熱処理による結晶化に至るまでに多くの微小結晶核と結晶成長界面(表面積)を形成する能力を有すると考えられるため、非晶状態から昇温した場合、微小結晶核生成数が増加するほど測定される冷結晶化エンタルピーが減少すると考えられる。その結果、結晶融解エンタルピーと冷結晶化エンタルピーの絶対値との差が大きくなると考えられる。8℃/分で室温からTm+20℃までDSCで昇温測定した際の結晶融解エンタルピーΔHmと冷結晶化エンタルピーΔHccの絶対値の差(|ΔHm|−|ΔHcc|)が、25J/g以上が好ましく、28J/g以上がより好ましい。
【0062】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物には、上記特定の脂肪族化合物以外に、他の結晶核剤が本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有されていてもよい。上記特定の脂肪族化合物の含有量は、特に限定されないが、結晶核剤中、90重量%以上であるが、95重量%以上が好ましく、98重量%以上がより好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0063】
結晶核剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜5重量部がより好ましく、0.5〜3重量部がさらに好ましい。
【0064】
また、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸樹脂組成物における、可塑剤、及び結晶核剤の好ましい組合せとしては、結晶化速度、感温性、耐熱性、透明性を向上する観点から、可塑剤としては、ポリオキシエチレンメチルエーテルコハク酸ジエステル(より好ましくは、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化物)、ポリオキシエチレンメチルエーテルアジピン酸ジエステル(アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化物)、グリセリンのエチレンオキサイド付加物の酢酸エステル(より好ましくは、POE(6)グリセリントリアセテート)、及びエチレンオキサイド付加モル数が3〜10のポリエチレングリコールジアセテート(より好ましくはエチレンオキサイド付加モル数が5〜10のポリエチレングリコールジアセテート)からなる群より選ばれる少なくとも1種と、結晶核剤としては、水酸基を2つ以上有し、エステル基又はアミド基を2つ以上有する脂肪族化合物(より好ましくは、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド及びヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドから選ばれる少なくとも1種)との組み合わせが好ましく、可塑剤がコハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化物、結晶核剤がエチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド及びヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドから選ばれる少なくとも1種である組み合わせがより好ましい。
【0065】
ポリ乳酸樹脂に上記可塑剤、及び結晶核剤を単独で添加しても、本発明の効果が得られず、課題を解決できない。ポリマーの結晶化はポリマー結晶核の生成、ポリマーセグメントの拡散による2段階で進行する。結晶化速度向上の観点から、上記の結晶核剤は樹脂溶融状態では溶解し分散性を高め、冷却時には瞬時に多数の微細な結晶核剤の結晶を生成し、その結果ポリマー結晶核生成を促し、かつ結晶核数を増やす効果が著しい。しかしポリマーの結晶核が生成しても、ポリマーセグメントの拡散速度が遅いとトータルの結晶化速度は満足のいくレベルではない。このポリマーの拡散速度を向上させるためには温度を上げれば良いが、逆にポリマーの結晶核が不安定になるため好ましくない。そこで上記可塑剤はポリマーの結晶成長速度を向上させる効果が著しく高いため、30〜110℃の低温でも十分な結晶化速度が得られる。この効果は上記結晶核剤と可塑剤を組み合わせて初めて実現できる。このように十分な結晶化速度とポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性を得るために、結晶核剤の含有量が上記範囲内である場合、可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、7重量部以上が好ましく、ポリ乳酸樹脂組成物の耐衝撃性の観点からも7重量部以上が好ましい。
【0066】
なお、本発明により得られるポリ乳酸樹脂組成物を射出成形品、あるいはポリプロピレン並みの柔軟性を有するシートやフィルムとして使用する場合には、可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、7〜30重量部が好ましく、10〜25重量部がより好ましく、10〜20重量部がさらに好ましい。
【0067】
また、上記2例の用途において、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸樹脂組成物が本発明の効果を顕著に発揮する観点から、ポリ乳酸樹脂としては、結晶化速度、物性の観点からL−乳酸高純度品である結晶グレードのもの、例えば、三井化学社製、LACEA H−400、LACEA H−100、LACEA H−440が好ましく、L−乳酸純度95%以上のポリ乳酸樹脂、例えば、三井化学社製、LACEA H−400、LACEA H−100がより好ましい。
【0068】
またさらに、本発明により得られるポリ乳酸樹脂組成物をポリエチレンや軟質ポリ塩化ビニル(例えば、樹脂100重量部に対し可塑剤としてジオクチルフタレート40〜70重量部を含有)並みの柔軟性を有するシートやフィルムとして使用する場合には、可塑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、15〜50重量部が好ましく、20〜40重量部がより好ましく、20〜30重量部がさらに好ましい。
【0069】
本発明に用いられるリン化合物としては、ポリ乳酸樹脂組成物の難燃性を向上させる観点から、リン酸エステル、フェニルホスホン酸金属塩、縮合リン酸エステル、リン酸塩、及び縮合リン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。本発明のポリ乳酸樹脂組成物の製造方法は、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤及びリン化合物を含有するポリ乳酸樹脂組成物原料を特定の条件で溶融混合して、熱処理する製造方法であるために、成形性(結晶化速度、感温性及び耐熱性)及び難燃性に優れたポリ乳酸樹脂組成物を提供できる。
【0070】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリナフチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、ジフェニル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ(イソプロピルフェニル)フェニルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、メラミンホスフェート、ジメラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レジルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、ホスファフェナンスレン等が挙げられ、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性(結晶化速度、感温性、耐熱性)及び難燃性の両立の観点から、トリフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェートが好ましい。
【0071】
フェニルホスホン酸金属塩は、置換基を有しても良いフェニル基とホスホン基(−PO(OH)2)を有するフェニルホスホン酸の金属塩であり、フェニル基の置換基としては、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシ基の炭素数が1〜10のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。フェニルホスホン酸の具体例としては、無置換のフェニルホスホン酸、メチルフェニルホスホン酸、エチルフェニルホスホン酸、プロピルフェニルホスホン酸、ブチルフェニルホスホン酸、ジメトキシカルボニルフェニルホスホン酸、ジエトキシカルボニルフェニルホスホン酸等が挙げられ、無置換のフェニルホスホン酸が好ましい。
【0072】
フェニルホスホン酸の金属塩としては、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、バリウム、銅、亜鉛、鉄、コバルト、ニッケル等の塩が挙げられ、亜鉛塩が好ましい。
【0073】
縮合リン酸エステルとしては、トリアルキルポリホスフェート、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートならびにこれらの縮合物等の縮合リン酸エステルを挙げることができ、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性(結晶化速度、感温性、耐熱性)及び難燃性の両立の観点から、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェートが好ましい。市販の縮合リン酸エステルとしては、例えば大八化学工業製PX−200(レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート)、PX−201(芳香族縮合リン酸エステル)、PX−202(芳香族縮合リン酸エステル)、CR−733S(レゾルシノールポリフェニルホスフェート)、CR−741(ビスフェノールAポリクレジルホスフェート)、CR747(芳香族縮合リン酸エステル)、ADEKA製アデカスタブPFR(レゾルシノールポリフェニルホスフェート)、FP−500(レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート)、FP−600(ビスフェノールAポリクレジルホスフェート)、FP−700(ビスフェノールAポリクレジルホスフェート)等を挙げることができ、PX−200、PX−201、PX−202が好ましい。
【0074】
リン酸塩、縮合リン酸塩としては、例えば、リン酸及び/又はポリリン酸と、周期律表IA族〜IVB族の金属、アンモニア、脂肪族アミン、芳香族アミンから選ばれる少なくとも一種の金属又は化合物との塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩を挙げることができる。周期律表IA族〜IVB族の金属としてリチウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、鉄(II)、鉄(III)、アルミニウム等が挙げられ、脂肪族アミンとしてメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、ピペラジン等が挙げられ、芳香族アミンとしてはピリジン、トリアジン、メラミン、アンモニウム等が挙げられる。これらの中では、難燃性向上の観点から、リン酸及び/又はポリリン酸と、周期律表IA族〜IVB族の金属及び/又はピペラジンとの塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩、リン酸及び/又はポリリン酸と、周期律表IA族〜IVB族の金属及び/又はピペラジンとの塩からなるリン酸塩、ポリリン酸塩との混合物(リン酸塩複合体)が好ましい。市販のリン酸塩、ポリリン酸塩としては、太平化学産業製タイエンN(リン酸アンモニウム)、タイエンL(ポリリン酸アンモニウム)、タイエンE(リン酸アルミニウム)、タイエンS(ポリリン酸アンモニウムアミド)、タイエンH(リン酸アルミニウム)、クラリアント製ClariantAP475(ポリリン酸アンモニウム複合体)、ClariantAP750(ポリリン酸アンモニウム複合体)、Clariant1312(ポリリン酸アンモニウム複合体)、Clariant1250(リン酸金属塩)、ADEKA製FP−2100(リン酸塩複合体)、FP−2100J(リン酸塩複合体)、FP−2200(リン酸塩複合体)、鈴裕化学製FCP730(ポリリン酸アンモニウム複合体)、Budenheimu製BUDIT3167(ポリリン酸アンモニウム複合体)、日本化学工業製N−6ME(ニトロトリス(メチレン)ホスホン酸6メラミン塩)、日産化学工業製PHOSMEL−200(ポリリン酸メラミン)等が挙げられ、ADEKA製FP−2100、FP−2100J、FP−2200、日産化学工業製PHOSMEL−200が好ましい。
【0075】
これらのリン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0076】
リン化合物の含有量は、ポリ乳酸樹脂組成物の成形性(結晶化速度、感温性、耐熱性)及び難燃性の両立の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して5〜40重量部が好ましく、7〜35重量部がより好ましく、8〜30重量部がさらに好ましい。
【0077】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸樹脂組成物には、上記のポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤、及びリン化合物以外に、加水分解抑制剤、酸化防止剤、又は滑剤等の他の成分を原料として含有させることができる。
【0078】
加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられ、ジシクロヘキシルカルボジイミド又はジイソプロピルカルボジイミド等のモノカルボジイミドと有機ジイソシアネートとの反応により得られたポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。加水分解抑制剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.05〜10重量部が好ましく、0.10〜5重量部がより好ましい。
【0079】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール又はフォスファイト系の酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい。
【0080】
滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス等の炭化水素系ワックス類、ステアリン酸等の脂肪酸類、グリセロールエステル等の脂肪酸エステル類、ステアリン酸カルシウム等の金属石鹸類、モンタン酸ワックス等のエステルワックス類、アルキルベンゼンスルホン酸塩等の芳香環を有するアニオン型界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等のアルキレンオキサイド付加部分を有するアニオン型界面活性剤等が挙げられる。これら滑剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましく、0.10〜2重量部がより好ましい。
【0081】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸樹脂組成物には、上記以外の他の成分として、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、無機充填剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、リン化合物以外の難燃剤等を原料として、本発明の目的達成を妨げない範囲で含有させることができる。
【0082】
工程Aでは、上記で挙げた原料をポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)以上で溶融混合するが、可塑剤、結晶核剤の分散性の観点から、好ましくはTmr〜Tmr+100(℃)の範囲、より好ましくはTmr〜Tmr+50(℃)の範囲で溶融混合する。具体的には、好ましくは170〜240(℃)、より好ましくは170〜220(℃)である。
【0083】
混合時間は、樹脂の劣化防止の観点から、好ましくは0.1〜10分、より好ましくは0.2〜5分、さらに好ましくは0.5〜3分である。
【0084】
原料の溶融混合には特に限定はなく通常の方法によって行う事ができ、例えば、押出し機等を用いてポリ乳酸樹脂を溶融させながら、可塑剤、結晶核剤、リン化合物、及び、必要により他の原料を混合する方法等が挙げられる。
【0085】
得られた溶融混合物のガラス転移点(Tgm)(℃)は、成形性向上の観点から、好ましくは-50〜60℃、より好ましくは-40〜50℃、さらに好ましくは-30〜30℃である。なお、本明細書において、ガラス転移点は、動的粘弾性測定における損失弾性率(E'')のピーク温度より求められる値であり、その値は、実施例に記載された動的粘弾性の測定法より測定される値である。
【0086】
工程Bでは、前記工程Aで得られた溶融混合物を、該溶融混合物のガラス転移点(Tgm)(℃)以上、ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)未満の温度(℃)で熱処理する。
【0087】
熱処理の方法としては、通常の方法が挙げられ、例えば、押出し機等により押し出されたポリ乳酸樹脂組成物を熱処理する方法や射出成形機等によりポリ乳酸樹脂組成物を金型に充填し、ポリ乳酸樹脂組成物を熱処理する方法等が挙げられる。
【0088】
熱処理温度は、該溶融混合物のガラス転移点(Tgm)(℃)以上、ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)未満の温度(℃)であるが、結晶化速度向上の観点から、好ましくはTgm〜Tgm+80(℃)の範囲であり、より好ましくはTgm+10〜Tgm+70(℃)の範囲であり、さらに好ましくはTgm+20〜Tgm+60(℃)の範囲である。具体的には、30〜110(℃)が好ましく、40〜100(℃)がより好ましく、50〜90(℃)がさらに好ましい。
【0089】
熱処理時間は、結晶化による耐熱性向上の観点から、好ましくは10〜600秒、より好ましくは20〜300秒、さらに好ましくは30〜150秒間である。
【0090】
かくして、本発明の製造方法により、結晶化速度、感温性及び耐熱性に加えて、難燃性にも優れるポリ乳酸樹脂組成物を得ることができる。従って、本発明は、さらに、本発明の製造方法により得られるポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
【0091】
得られたポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移点(Tgc)(℃)は、成形性向上の観点から、好ましくは-50〜60℃、より好ましくは-40〜50℃、さらに好ましくは-30〜30℃である。
【0092】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂のガラス転移点(Tgr)と、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移点(Tgc)との差[Tgr−Tgc]が10〜80℃の範囲が好ましく、15〜70℃の範囲がより好ましく、20〜60℃の範囲がさらに好ましい。
【0093】
ポリ乳酸樹脂組成物の融点(Tmc)(℃)は、結晶核剤、可塑剤、リン化合物の分散性の観点、及びポリ乳酸樹脂組成物の劣化、生産性の観点から、好ましくは140〜250℃、より好ましくは150〜240℃、さらに好ましくは160〜230℃である。
【0094】
また、得られた本発明のポリ乳酸樹脂組成の相対結晶化度は、耐熱性向上の観点から、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。なお、相対結晶化度とは、以下の式で表される結晶化度を言う。
相対結晶化度(%)={((ΔHm−ΔHcc)/ΔHm×100)}
具体的には、相対結晶化度は、DSC装置(パーキンエルマー社製ダイアモンドDSC)を用い、1stRUNとして、昇温速度20℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度-20℃/分で200℃から20℃まで降温し、20℃で1分間保持した後、さらに2ndRUNとして、昇温速度20℃/分で20℃から200℃まで昇温し、1stRUNに観測されるポリ乳酸樹脂の冷結晶化エンタルピーの絶対値ΔHcc、2ndRUNに観測される結晶融解エンタルピーΔHmを用いて求めることができる。
【0095】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、加工性が良好で、例えば130〜200℃等の低温で加工することができるため、可塑剤の分解が起こり難い利点もあり、フィルムやシートに成形して、各種用途に用いることができる。
【実施例】
【0096】
〔ポリ乳酸樹脂、樹脂組成物の融点〕
ポリ乳酸樹脂の融点は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定DSC、パーキンエルマー社製ダイアモンドDSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる。融点の測定は、昇温速度10℃/分で20℃から250℃まで昇温して行う。
【0097】
〔ポリ乳酸樹脂、混合物(溶融混練物)、樹脂組成物のガラス転移点〕
ポリ乳酸樹脂のガラス転移点は、動的粘弾性測定(DMS、セイコーインスツル社製DMS6100)における損失弾性率(E'')のピーク温度より求められる値であり、動的粘弾性測定は、昇温速度2℃/分で-100℃から150℃まで昇温して行う。
【0098】
実施例1〜6及び比較例1〜3
[工程A]
表1に示すポリ乳酸樹脂、結晶核剤、可塑剤、及び、リン化合物を、2軸押出機(池貝鉄工社製、PCM-45)にて190℃で溶融混練し、ストランドカットを行い、実施例1〜6及び比較例1〜3のポリ乳酸樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットは、70℃減圧下で1日乾燥し、水分量を500ppm以下とした。
【0099】
[工程B]
工程Aで得られた実施例1〜6及び比較例1〜3のペレットを、シリンダー温度を200℃とした射出成形機(日本製鋼所製 J75E-D)を用いて射出成形し、金型温度80℃、成形時間60秒でテストピース〔角柱状試験片{125mm×12mm×6mm(5in×1/2in×1/16in)}〕を成形し、以下の試験例1〜2の方法に従って特性を調べた。結果を表1に示す。
【0100】
なお、表1における原料は以下の通りである。
〔ポリ乳酸樹脂〕
LACEA H−400:三井化学社製、Tmr 166℃、Tgr 62℃
〔結晶核剤〕
スリパックスH:エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成社製
スリパックスZHH:ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、日本化成社製
〔可塑剤〕
(MeEO)SA:コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル化合物
DAIFATY−101:アジピン酸と、ジエチレングリコールモノメチルエーテル/ベンジルアルコール=1/1混合ジエステル、大八化学工業社製
〔リン化合物〕
FP−2200:リン酸塩、アデカ社製
レオフォス65:リン酸エステル、味の素ファインテクノ社製
PX−200:縮合リン酸エステル、大八化学工業社製
PHOSMEL−200:縮合リン酸塩、日産化学工業社製
【0101】
[可塑剤の合成例]
1)コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステルの合成例
攪拌機、温度計、脱水管を備えた3Lフラスコに、無水コハク酸500g、トリエチレングリコールモノメチルエーテル2463g、パラトルエンスルホン酸一水和物9.5gを仕込み、空間部に窒素(500mL/分)を吹き込みながら、減圧下(4〜10.7kPa)、110℃で15時間反応させた。反応液の酸価は1.6(KOHmg/g)であった。反応液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学工業社製)27gを添加して80℃、2.7kPaで45分間攪拌してろ過した後、液温115〜200℃、圧力0.03kPaでトリエチレングリコールモノメチルエーテルを留去し、80℃に冷却後、残液を減圧ろ過して、ろ液として、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステルを得た。得られたジエステルは、酸価0.2(KOHmg/g)、鹸化価276(KOHmg/g)、水酸基価1以下(KOHmg/g)、色相APHA200であった。
【0102】
〔試験例1〕(難燃性)
角柱状試験片{125mm×12mm×6mm(5in×1/2in×1/16in)}について、Underwriters Laboratories社の安全標準UL94 垂直燃焼試験の手順に基づき、垂直に保持した試料の下端に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させ、燃焼が30秒以内に止まったならば、さらに10秒間接炎させ、n=5にて燃焼試験を実施した。UL94垂直燃焼試験(UL94V)の以下に示す判定基準に基づき、V−0、V−1、V−2、又はNotの判定を行った。
【0103】
(難燃性の判定基準)
以下の基準においては、判定項目の全てについて該当するか否かの判定を行い、全てが該当する場合に、当該基準に相当すると判断する。
<V−0>
いずれの接炎の後も、10秒以上燃焼を続ける試料がない
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が50秒を超えない
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる燃焼する粒子を落下させる試料がない
2回目の接炎の後、30秒以上赤熱を続ける試料がない
<V−1>
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない
5個の試料に対する10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒を超えない
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる燃焼する粒子を落下させる試料がない
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない
<V−2>
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける試料がない
5個の試料に対する 10回の接炎に対する総燃焼時間が250秒を超えない
固定用クランプの位置まで燃焼する試料がない
試料の下方に置かれた脱脂綿を発火させる燃焼する粒子の落下が許容される
2回目の接炎の後、60秒以上赤熱を続ける試料がない
<Not>
いずれの接炎の後も、30秒以上燃焼を続ける
【0104】
〔試験例2〕(成形性)
射出成形後のテストピース〔角柱状試験片{125mm×12mm×6mm(5in×1/2in×1/16in)}〕を粉砕し、7.5mg精秤し、アルミパンに封入後、DSC装置(パーキンエルマー社製、ダイアモンドDSC)を用い、1stRUNとして、昇温速度20℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で5分間保持した後、降温速度−20℃/分で200℃から20℃まで降温し、20℃で1分間保持した後、さらに2ndRUNとして、昇温速度20℃/分で20℃から200℃まで昇温した。1stRUNに観測されるポリ乳酸樹脂の冷結晶化エンタルピーの絶対値ΔHcc、2ndRUNに観測される結晶融解エンタルピーΔHmを求め、得られた値から、下記式により相対結晶化度(%)を求めた。なお、相対結晶化度が95%以上であれば、結晶化速度が良好で成形性に優れると判断することができる。
相対結晶化度(%)=[{(ΔHm−ΔHcc)/ΔHm×100}]
【0105】
【表1】

【0106】
表1の結果から、可塑剤、特定の結晶核剤、及びリン化合物を含有した本発明のポリ乳酸樹脂組成物(実施例1〜6)は、相対結晶化度が100%であり優れた成形性と、V−2以上の難燃性を達成することが可能であった。
【0107】
一方、可塑剤とリン化合物のみ、及び特定の結晶核剤とリン化合物のみを含有したポリ乳酸樹脂組成物(比較例1〜2)は、V−2以上の難燃性を達成することが不可能であった。
【0108】
以上の結果から、可塑剤、特定の結晶核剤、及びリン化合物を含有した本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、優れた成形性を示し、その成形品は優れた難燃性を示すものであることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の製造方法により得られるポリ乳酸樹脂組成物は、日用雑貨品、家電部品、自動車部品等の様々な工業用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤、及びリン化合物を含有するポリ乳酸樹脂組成物原料を該ポリ乳酸樹脂の融点(Tmr)(℃)以上で溶融混合する工程(工程A)、ならびに前記工程Aで得られた溶融混合物を、該溶融混合物のガラス転移点(Tgm)(℃)以上Tmr(℃)未満の温度(℃)で熱処理する工程(工程B)を含んでなるポリ乳酸樹脂組成物の製造方法であって、前記結晶核剤が、分子中にエステル基、水酸基及びアミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を2つ以上有する脂肪族化合物を90重量%以上含有してなる、ポリ乳酸樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、可塑剤の含有量が7〜70重量部である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、結晶核剤の含有量が0.1〜5重量部である、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、リン化合物の含有量が5〜40重量部である、請求項1〜3いずれか記載の製造方法。
【請求項5】
リン化合物が、リン酸エステル、フェニルホスホン酸金属塩、縮合リン酸エステル、リン酸塩、及び縮合リン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4いずれか記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−31203(P2010−31203A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197729(P2008−197729)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】