説明

ポリ(シリルエステル)を製造する方法およびそれらの使用

【化1】


本発明は、式(I)で表される構造単位を含んで成るポリ(シリルエステル)を製造する方法を提供し、この方法は、式(II)で表されるポリ酸と式(III)で表されるポリアシルオキシシリル誘導体を反応させながら生じた式(IV)、(V)および(VI):RZ(O)OH (IV)、RZ(O)OH (V)、RZ(O)OH (VI)で表される酸基1種または2種以上をその系から除去する段階を含んで成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なポリ(シリルエステル)製造方法に関する。本発明は更に新規なポリ(シリルエステル)にも関し、別の面において、本発明は更に加水分解性シリルエステル基の使用が有利である加水分解性ポリ(シリルエステル)の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(シリルエステル)は可変であるが予測可能な分解挙動を示し、このように、加水分解性基の存在が有利であるあらゆる分野において幅広い範囲の潜在的用途を有する。例えば、重合体が分解を起こして生物学的または環境的に再吸収可能な低分子副生成物になり得ることが非常に有益である医学、環境、生医学および農業分野で分解性重合体が一般に用いられることは公知である。重合体を含有する被膜用組成物を医学用移植デバイスで用いることが特許文献1に開示されている。本発明者らは、ポリ(シリルエステル)組成物は特許文献1に開示されている組成物の代わりになる実行可能な代替品に相当すると考えている。
【0003】
別の用途は、自己研磨型防汚塗料(self−polishing antifouling paints)用の樹脂または共樹脂(co−resin)、例えば現代の防汚被膜用の結合剤としての用途であるが、この上に示した如き加水分解性ポリ(シリルエステル)の使用は、ケイ素原子と結合している官能性の性質によって分解挙動が影響を受け得ることが肯定的な利点になる可能性のある数多くの用途を有するであろう。
【0004】
脂肪族カルボン酸のトリアルキルシリルカルボン酸エステルはエステル交換で入手可能である。トリエチルシリルアセテートおよびジエチルシリルジアセテートとハロゲン置換プロピオン酸の反応が非特許文献1に記述されており、そしてジメチルシリルジ(トリフルオロアセテート)またはジメチルシリルジプロピオネートとクロロ酢酸の反応が非特許文献2に記述されているが、それらでは、酢酸、プロピオン酸またはトリフルオロ酢酸を減圧下で留出させている。
【0005】
同様な反応が非特許文献3でも行われたが、温度はずっと高かった(190−210℃)。
【0006】
トリアルキルシリルアセテートとC6からC30カルボン酸(例えばパルミチン酸、ミリスチン酸、安息香酸など)の反応が特許文献2に開示されているが、そこでは、酢酸を減圧下またはヘキサンと一緒に共沸で留出させている。
【0007】
ポリ(シリルエステル)は、オリゴマー/重合体バックボーンの中にシリルカルボキシレート単位を2個以上含んで成ることを特徴とする。言い換えれば、ポリ(シリルエステル)は重合体バックボーンに沿って−Si−O−C(O)−結合を含有していて可変であるが予測可能な分解挙動を示す種類の分解性重合体系である。
【0008】
シリルエステル官能性の調製はいろいろな経路で行われてきており、従って、ポリ(シリルエステル)の合成は比較的簡単であろうと予想されていた可能性がある。しかしながら、塩の生成、副反応、単量体の不溶性/低純度および/または反応の不完全さなどの如き問題が存在することから、その予想される重合体合成の多くは実際のところ不適切であることを確認した。実際、アシルオキシシラン基を重合体バックボーンの中に組み込むことが実際に達成されたのはほんの最近である。
【0009】
ポリ(シリルエステル)を生じさせるに適した合成経路をWooley他が開発して開示したが、そのような経路には、AA/BB共重合用単量体のシリル交換(transsilylation)エステル化(非特許文献4、5、6、7および8を参照)、AB単量体のシリル交換エステル化(非特許文献9および8を参照)、AB単量体のヒドロシリル化(非特許文献9を参照)、およびABとAB単量体のクロスデヒドロカップリング(cross−dehydrocoupling)重合(非特許文献10およびこれの中で引用された文献を参照)が含まれる。
【0010】
例えば、TMSでブロックされている(TMS−blocked)シリルエステルとクロロシランのシリル交換エステル交換反応を触媒として例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)などを用いて100−135℃の範囲の温度で10−14日間実施しながら付随してトリメチルシリルクロライドを留出させると相当する重合体の生成がもたらされることが非特許文献7に記述されている。そのような方法は、塩基を用いる必要がなくかつ副生成物であるトリメチルシリルクロライドが揮発性であると言った利点を有する。その上、その反応は比較的低い温度で溶媒の添加無しに進行する。しかしながら、TMSでブロックされているシリルエステルは高価な反応体でありかつトリメチルシリルクロライドの放出は環境にとって有害である。
【0011】
Wooley他が記述した別の方法(非特許文献9および10)は、同じ分子(AB単量体系)または異なる分子(AA/BB単量体系)の中に存在する水素化シリル官能と炭素/炭素二重結合もしくはカルボン酸官能の間のヒドロシリル化によって重合を達成する方法である。そのような方法は、カルボン酸官能が関与する時に水素を発生させる目的で遷移金属触媒、例えば白金もしくはパラジウム誘導体[Pt(COD)Cl;Pd/C]などを用いる必要がありかつ出発材料の入手性が限られていると言った欠点を有する。
【0012】
従って、従来技術の加水分解性ポリ(シリルエステル)合成方法に関連した前記問題がないか或は少なくとも軽減されている新規なポリ(シリルエステル)製造方法を見つけだす必要性が存在するままである。
【特許文献1】WO 03/105920
【特許文献2】JP 95070152 A
【非特許文献1】H.H.Anderson他、J.Org.Chem 1716(1953)
【非特許文献2】H.H.Anderson他、J.Org.Chem 1296(1954)
【非特許文献3】ロシアの化学者[Izv.Akad.Nauk.Ussr.Ser.Khim.968(1957)]
【非特許文献4】Wooley他、Macromolecules(1995)28 8887
【非特許文献5】Wooley他、Macromolecules(1998)31 7606
【非特許文献6】Wooley他、J.Polym.Sci.、パートA:Polym.Chem.(1999)37 3606
【非特許文献7】Wooley他、Macromolecules(1998)31 15
【非特許文献8】Wooley他、J.Organomet.Chem.(1998)542 235
【非特許文献9】Wooley他、Macromolecules(2000)33 734
【非特許文献10】Wooley他、Macromolecules(2001)34 3215
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の1つの目的は、簡単かつ容易に入手可能な出発材料を用いてポリ(シリルエステル)を高い収率で容易に生じさせることを可能にする新規な方法を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、この上で考察した以前に開示された方法に比べて効率の良いポリ(シリルエステル)製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、如何なる触媒も添加して存在させなくても満足される速度で進行する新規なポリ(シリルエステル)製造方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、放出される分子が無害で容易に留出し得る分子のみである新規なポリ(シリルエステル)製造方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらなる目的は、出発材料から目的生成物への転化率の度合を通常の分析手段を用いそして/または放出されて留出してきた分子の量を測定することで監視することができる新規なポリ(シリルエステル)製造方法を提供することにある。
【0018】
従って、本発明の目的は、全体として、本明細書の上に開示した欠点に対する改良をいくらか与える新規なポリ(シリルエステル)製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、ポリ酸(「ポリ酸」は、酸基を少なくとも2個含んで成る有機部分、例えばカルボン酸、硫酸、燐酸などの酸基を少なくとも2個含んで成る有機部分を意味し、好適にはポリカルボン酸を意味する)とポリアシルオキシシリル誘導体をシリルエステルのエステル交換反応で反応させてポリ(シリルエステル)を合成することが基になっている。そのようなポリ(シリルエステル)合成でポリ酸およびエステル交換技術を用いることは今まで予想されなかったことであり、エステル交換技術が用いられたのはオルガノシリル化カルボキシレート単量体を合成する時のみであり、かつ以前に開示されたポリ(シリルエステル)合成方法は重合体生成の点で有効でないか或は使用された反応体が高価でありそして/または生じる副生成物が有害でありそして/または触媒を添加する必要がありそして/または通常の分析手段を用いたのでは容易に追跡することができないことを確認した。
【0020】
本発明者らは、驚くべきことに、ポリ酸とポリアシルオキシシリル誘導体を反応させることでポリ(シリルエステル)を合成することができることを見いだした。
【0021】
本発明は、1番目の面に従い、式(I)
【0022】
【化1】

【0023】
[式中、
各RおよびRは、ヒドロキシルであってもよいか、或は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、−L’−SiR−、−L’−SiR10、−L’−(SiRL’)−SiR−、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基(これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノ(好適には第三級アミノ)またはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい)から選択されてもよいか、或は各RまたはRは、独立して、−O−Z(O)−L−基であってもよく、ここで、R10は以下に示すRと同様に定義され、
各RおよびRは、独立して、水素、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、−L’−SiR10、アリール、アリールオキシル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基(これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ(好適には第三級アミノ)またはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい)を表してもよいか、或はRまたはRは、独立して、−O−Z(O)−L−基であってもよく、
Lは、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基(ここで、前記置換ヒドロカルビルはアルキル、シクロアルキル、カルボキシル、置換カルボキシル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されている)、またはペンダント型酸基を有する重合体を表し、
L’は、O、S、NR、L−(NR−L)(ここで、p=1から10であり、Rは以下に示すRと同様に定義される)またはLを表し、
各nは、独立して、0から1000の−Si(R)(R)−L’−基数を表し、そして
yは、2から100000、より好適には2から10000、最も好適には2から1000のシリルエステル繰り返し単位数を表す]
で表される構造単位を含んで成るポリ(シリルエステル)を製造する新規な方法に関し、この方法は、式(II)
【0024】
【化2】

【0025】
[式中、Z(O)OHは、Lと結合している酸部分を表し、mは2から100000の整数、好適には2であり、そしてLはこの上で定義した通りである]
で表されるポリ酸と式(III)
【0026】
【化3】

【0027】
[式中、R、R、R、R、L’およびnは、この上で定義した通りであるが、但し(I)中の相当する基が−O−Z(O)−L−の時には(III)中のR、R、RおよびRが−O−Z(O)−R(ここで、Rは以下に示すRと同様に定義される)であり、そしてRは、水素原子、アラルキル、アリール、アルケニル、アルキニルまたはアルキル基(場合により、この上でR、R、RおよびRに関して定義した置換基と同等な置換基から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい)であり、そして
は、基−O−Z(O)−R(ここで、Rは、この上に示したRと同様に定義される)である]
で表されるポリアシルオキシシリル誘導体を反応させながら生じた式(IV)、(V)および(VI):
Z(O)OH (IV)、
Z(O)OH (V)、
Z(O)OH (VI)、
で表される酸基1種または2種以上をその系から除去する段階を含んで成る。
【0028】
本質的に、前記ポリアシルオキシシリル誘導体は1個もしくは数個のケイ素原子と結合しているアシルオキシ基が2個以上存在するような誘導体である必要がある。その上、n=0の時にケイ素原子と結合しているアシルオキシ基の最大数は4であり、そしてn>0の時に末端ケイ素原子が有するアシルオキシ基の最大数は3でありそして末端に位置しないケイ素原子が有するアシルオキシ基の最大数は2である。
【0029】
適切には、式(I)で表される構造単位を含んで成るポリ(シリルエステル)は基−S
iRおよび−O−Z(O)−Rで終結しているであろう。
【0030】
mが3以上の場合、即ちポリ酸が(Z(O)OH)基を3個以上含有する場合、式(I)中のLはこれと結合している(Z(O)OH)基、即ちペンダント型酸基を3個以上有し、従って、そのようなポリアシルオキシシリル誘導体を用いた重合は更にそのような追加的(Z(O)OH)部位の所でも起こり得る。
【0031】
式(III)中のR、R、RおよびRがアルコキシル、アリールオキシル、アルカリールオキシルまたはヒドロキシルである場合、好適には、それらは式(I)中の−O−Z(O)−L−に相当し得る。
【0032】
好適には、RおよびRは、各々独立して、アルキル、アルコキシル、アリール、ヒドロキシル基または−L’−(SiRL’)−SiR−基(ここで、L’、R、R、RおよびRは、この上で定義した通りである)を表し、そして好適にはn=0−100、より好適にはn=0−10、最も好適にはn=0であるが、また可能ならば1、2、3、4または5であり、好適には1である。
【0033】
より好適には、式(III)中のRおよびRを、各々独立して、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基または−L’−(SiRL’)−SiR−基(ここで、L’、R、R、RおよびRは、この上で定義した通りである)を包含する群から選択する。最も好適には、R、R、RおよびRは各々独立してアルキル基を表す。前記アルキル基は分枝もしくは直鎖であってもよい。
【0034】
好適には、L’はOを表す。
【0035】
好適には、ZはC、POH、PまたはS=O、より好適にはCを表す。例えば、式(II)または(III)中の各Zは、好適には、独立して、C、POH、PまたはS=O、より好適にはCを表し得る。如何なる疑問も回避する目的で、ZがCではない時の用語「ポリアシルオキシシリル」は、それに応じて解釈/修正されるべきである。
【0036】
本発明の1つの態様に従い、R、R、R、RおよびRを、各々独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、フェニルおよびビニルを包含する群から選択する。好適には、R、R、RおよびRをメチル、エチル、イソプロピル、フェニルおよびビニルから成る群から選択する。より好適には、R、R、R、RおよびRはメチルである。
【0037】
好適には、基RとRは同じである。等しく好適には、基RとRは同じであり、より好適にはアルキル基、最も好適にはメチルである。
【0038】
好適には、RおよびRは各々アルキル基、より好適にはメチルを表す。
【0039】
好適には、Rはアルキル、最も好適にはメチルである。
【0040】
およびRがアルコキシルの場合、それらは好適にはC−Cオキシル基(分枝または直鎖であってもよい)、より好適にはC−Cオキシル基、最も好適にはメトキシル基である。
【0041】
またはRが−L’−(SiRL’)−SiR−として選択される場合、好適には、その選択した基の中のケイ素基と結合しているRおよびR基はこれら自身−L’−(SiRL’)−SiR−ではない。
【0042】
本明細書で用いる如きnは、好適には、各々独立して、0から500、より好適には0から100、最も好適には0から10を表す。nの特に好適な値を0、1、2、3、4または5、最も特別には0および1から選択する。
【0043】
本発明の方法では、ポリ酸、好適にはポリカルボン酸とポリアシルオキシシリル誘導体を反応させることでポリ(シリルエステル)を得ることができる。
【0044】
本発明は、式(III)で表されるポリアシルオキシシリル誘導体と式(II)で表されるポリ酸、好適にはポリカルボン酸(酸基を少なくとも2個、好適にはカルボン酸基を2個含んで成る)を反応させることで式(I)で表される構造単位を含んで成るポリ(シリルエステル)を生じさせる一般的スキームに従う新規なポリ(シリルエステル)合成方法に関する。
【0045】
前記反応体を溶媒の有り無しのいずれかで一緒に混合する。反応を好適には適切な溶媒中で実施する。本発明の方法で用いることができる適切な溶媒には、不活性な非極性溶媒、環状および非環状脂肪族炭化水素、環状および非環状エーテル、エステルなどが含まれる。本発明に従う方法で用いることができる適切な溶媒の例には、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、デカン、デカヒドロナフタレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどおよびこれらの混合物が含まれる。
【0046】
好適な溶媒は、反応体のいずれも留出させない溶媒、特に生成物の中の1種を優先的に留出させる溶媒である。このように、より特に好適な溶媒は、本発明の方法で留出させる酸生成物と一緒に低沸点の共沸混合物を形成する溶媒である。更により特に好適な溶媒は、その留出する酸生成物と一緒に低沸点の不均一な共沸混合物を形成する溶媒である。
【0047】
より好適には、そのような溶媒をペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエンおよびキシレンから独立して選択する。
【0048】
この反応の温度は、好適には、留出させるべき酸もしくはこれの共沸混合物の沸点、反応槽の形状および蒸留塔の高さに依存する。
【0049】
この反応を典型的には0℃−200℃、より好適には60−190℃、最も好適には110−180℃の範囲で実施する。
【0050】
前記ポリアシルオキシシリル誘導体に存在する反応性基とポリ酸のモル比を好適には1:100から100:1の範囲、より好適には10:1から1:10の範囲、最も好適には2:1から1:2の範囲にする。好適には、アシルオキシ基:酸基のモル比をほぼ1:1にする。
【0051】
溶媒を存在させる場合、それを反応出発時の反応混合物総量の好適には少なくとも10重量%、より好適には少なくとも20重量%、最も好適には少なくとも30重量%にする。この反応は大気圧下で実施可能であるが、またより高い圧力およびより低い圧力を用いることも可能である。
【0052】
この反応はまた無溶媒でも実施可能であり、従って、溶媒の適切な範囲は反応混合物総量の0−99重量%、より好適には20−50重量%、最も好適には30−40重量%である。
【0053】
好適な態様において、Lはアルキル、アリール、アルケニル、アルキニルまたはアラルキル基を表すか或はそれに由来するか、或は重合体、好適には炭素原子を1から10000、より好適には炭素原子を1から1000、最も好適には炭素原子を1から100個含有する重合体を表してもよい。
【0054】
好適なさらなる態様において、Lは−(CH−(ここで、nは1から10の範囲、好適には2から8の範囲、より好適には4から6の範囲、最も好適には4の整数である)を表すか、或はさらなる態様において、Lは乳酸またはロジンの残基、例えばカルボン酸ではない部分、即ちポリ乳酸もしくは置換ポリ乳酸、例えばジ乳酸、ロジンおよび/またはロジン誘導体、例えばDYMEREX(商標)(ロジン二量体)などからそれに存在する2個のカルボン酸基を取り除いた部分を表す。
【0055】
反応の進行は適切な分析方法のいずれかに加えて留出する酸の量を測定することで監視可能である。
【0056】
本発明に従う方法では、式(II)で表されるジカルボン酸、より一般的にはポリカルボン酸、即ちポリ酸のいずれも使用可能であるが、ジカルボン酸が好適であり、ジカルボン酸の好適な例はアジピン酸、しゅう酸、こはく酸、グルタル酸、フタル酸、即ちイソフタル酸もしくはテレフタル酸など、ポリ乳酸、例えばジ乳酸など、およびロジン性ジカルボン酸、例えばDYMEREX(商標)(ロジン二量体)またはこれの重合体である。その上、式(II)はポリ酸重合体を表してもよい。
【0057】
本発明に従う方法で使用可能なポリアシルオキシシリル誘導体は、好適には、エステル交換反応後に生成物の除去を容易に行うことができるように、沸点が最大で162℃、好適には最大で140℃、より好適には最大で120℃のカルボン酸から誘導されたそれらである。適切なカルボン酸の例は、蟻酸、酢酸、プロピオン酸および酪酸である。沸点がそれぞれ100℃および118℃の蟻酸および酢酸が好適であり、特に酢酸が好適である。
【0058】
本発明の別の態様では、ある程度または完全にハロゲン置換されている酸、好適にはフッ素置換または塩素置換されている酸、より好適には沸点が70℃のトリフルオロ酢酸を用いてポリアシルオキシシリル誘導体を生じさせる。
【0059】
本発明の方法で用いるに適したポリアシルオキシシリル誘導体は公知(以下の表を参照)または公知方法を用いて入手可能である。非限定的例を以下の表にいくつか示す:
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
適切には、最終生成物に持たせる分子量には制限はない。しかしながら、その分子量を好適には1000から1000000kD、より好適には1000から100000kD、最も好適には1000から10000kDの範囲内にする。
【0063】
本発明の方法で得た樹脂のドローダウン(drawdowns)を0−150℃、好適には18−100℃、より好適には19−35℃の範囲の温度で乾燥させてもよい。
【0064】
本明細書で用いる如き用語「重合体」は重合反応の生成物を指し、それにはホモ重合体、共重合体、例えばポリシラノール、ポリオール、ポリアミンなど(これらはポリ酸および/またはポリアシルオキシシランと反応し/それによるエステル化を受け得、ポリシラノールの場合、非加水分解性Si−O結合が重合体の一部になるであろう)、三元重合体などが含まれる。
【0065】
本明細書で用いる如き用語「独立して選択」または「独立して表す」は、そのように記述した各基、例えばRなどが同一もしくは異なってもよいことを示す。
【0066】
本明細書で用いる如き用語「アルキル」は、特に明記しない限り、炭素原子を1から20個、好適には炭素原子を1から10個、より好適には炭素原子を1から8個、更により好適には炭素原子を1から6個、更により好適には炭素原子を1から4個含有していて直鎖、分枝、環状もしくは多環状部分もしくはこれらの組み合わせを有する飽和炭化水素基に関する。前記基は置換されていてもよい、即ち場合によりアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシまたはアミノ基から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。そのような基の例にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、2−メチルブチル、2,3−ジメチルブチル、ラウリル、ペンチル、イソ−アミル、n−アミル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、n−オクチル、t−オクチル、n−ドデシルなどが含まれ、それらは独立して選択され得る。
【0067】
本明細書で用いる如き用語「アルキニル」は、特に明記しない限り、炭素原子を2から18個、好適には炭素原子を2から10個、より好適には炭素原子を2から8個、更により好適には炭素原子を2から6個、更により好適には炭素原子を2から4個有しかつ直鎖、分枝、多環状もしくは環状部分もしくはこれらの組み合わせを有していて三重結合を1から数個有する炭化水素基に関する。アルキニル基の例にはエチニル、プロピニル、(プロパルギル)、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニルなどが含まれる。
【0068】
本明細書で用いる如き用語「アリール」は、特に明記しない限り、芳香族炭化水素から水素が1個取り除かれることで生じた有機基に関し、それらには、各環中の員数が7以下の一環状、二環状または多環状炭素環のいずれも含まれるが、少なくとも1個の環は芳香環である。前記基は場合によりアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシまたはアミノ基から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。アリールの例にはフェニル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−(t−ブトキシ)フェニル、3−メチル−4−メトキシフェニル、4−(t−ブトキシ)フェニル、3−メチル−4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−ニトロフェニル、3−アミノフェニル、3−アセトアミドフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アミノフェニル、3−メチル−4−アミノフェニル、2−アミノ−3−メチルフェニル、2,4−ジメチル−3−アミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、3−アミノ−1−ナフチル、2−メチル−3−アミノ−1−ナフチル、6−アミノ−2−ナフチル、4,6−ジメトキシ−2−ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリルまたはアセナフチルなどが含まれる。
【0069】
本明細書で用いる如き用語「アルケニル」は、特に明記しない限り、炭素原子を2から18個、好適には炭素原子を2から10個、より好適には炭素原子を2から8個、更により好適には炭素原子を2から6個、更により好適には炭素原子を2から4個含有しかつ直鎖、分枝、環状もしくは多環状部分もしくはこれらの組み合わせを有していて二重結合を1から数個有する炭化水素基に関する。前記基は置換されていてもよい、即ち場合によりアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシまたはアミノ基から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。アルケニル基の例にはビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、イソペニル(isopenyl)、ファルネシル、ゲラニル、ゲラニルゲラニルなどが含まれる。
【0070】
本明細書で用いる如き用語「アラルキル」は、特に明記しない限り、式アルキル−アリール(式中、アルキルおよびアリールは、この上で定義した意味と同じ意味を有する)で表される基に関する。前記基は置換されていてもよい、即ち場合によりアルキル、アルコ
キシ、ハロゲン、ヒドロキシまたはアミノ基から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい。アラルキル基の例にはベンジル、フェネチル、ジベンジルメチル、メチルフェニルメチル、3−(2−ナフチル)−ブチルなどが含まれる。
【0071】
式(III)のカルボキシル基部分、即ちRC(O)、RC(O)およびRC(O)の各々の例には、これらに限定するものでないが、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、オキザロイル、マロニル、スクシニル、グルタリル、アジポイル、ベンゾイル、フタロイル、イソブチロイル、sec−ブチロイル、オクタノイル、イソオクタノイル、ノナノイル、イソノナノイル、アビエチル、デヒドロアビエチル、ジヒドロアビエチル、ナフテニル、アントラセニル、アビエチル二量体[DYMEREX(商標)]、ジヒドロアビエチル[FORAL(商標)]など、およびこれらの重合体または共重合体が含まれ得る。好適な態様における前記カルボキシル基部分はホルミル、アセチル、プロピオニルまたはブチリルである。最も好適には、前記カルボキシル基部分はアセチルである。
【0072】
本発明の方法の利点は、本方法で用いる反応体の取り扱いが容易であり、比較的安価でありかつ結果として如何なる有害な生成物も留出によって放出されない点にある。実際、放出されるのは、無害で容易に留出し得る酸、例えばカルボン酸などのみであり、従って、出発材料から目標生成物への転化度は通常の分析手段を用いそして/または放出されて留出して来るカルボン酸の量を測定することで監視可能である。さらなる利点は、その生じた酸1種または2種以上、例えばカルボン酸などを好適には蒸留、好ましくは共沸蒸留で除去することができる点にある。さらなる利点は、溶媒の存在有り無しのいずれでも反応が進行する点にある。その上、本方法は如何なる触媒も添加する必要なく満足される速度で進行する。全体として、本発明の方法は簡潔であり工程が短かく、処理手順が容易でありかつ収率が高いことから、現存方法に対する有意かつ実質的な向上であると見なすことができる。加うるに、請求する合成経路は高温で実施可能であり、従って迅速かつ効率が高い。
【0073】
この上に述べたように、本発明の方法で生じさせた重合体は、加水分解性ポリ(シリルエステル)基が必要とされている幅広い範囲の用途で使用可能である。そのようにして生じさせた重合体が示す分解挙動は可変であるが予測可能であり、このように、それらは数多くの潜在的用途を有する。そのような用途には防汚(antifouling)被膜用途が含まれる。さらなる用途は、物質、例えば揮発性化合物、例えば香水、香料または殺虫剤などを制御放出させる用途である。本発明に従って生じさせた樹脂を用いてそれを達成することができ、それに揮発性化合物を混合またはグラフトさせてもよい。医学および環境分野では、最初に所定の機能を果たした後に分解を起こして生物医学的もしくは環境的に再吸収可能な低分子副生成物になると言った要求される物理的および機械的特性を有する分解性重合体を合成することができることを考慮して、以前にはそのような重合体が用いられていた。医学分野では、分解性重合体が有する側基の性質を用いて、特定部位と結合する能力を有する機能的材料などを作り出すことができる。
【0074】
外来物、例えば金属またはプラスチック製器具などを人間または動物の体、特に人体の中に治療の一部として移植する用途は数多く存在する。例えば、折れた骨をピンで留めることができ、或は擦り減った関節を人工関節に置き換えることができる。
【0075】
金属もしくはプラスチック製器具を体の中に移植しようとする時には、そのようなデバイスに感染の可能性も他の合併症の可能性も低下させる手段を与えておくのが望ましい。移植片の使用に伴う合併症には、外来物が反応を開始する結果としてもたらされる炎症および線維封入(fibrous encapsulation)そして創傷治癒反応が開始する結果としてもたらされる過形成および再狭窄ばかりでなく勿論感染の危険が増大す
ることが含まれる。移植片を体の中に導入しようとする時にはそのような合併症を解決する努力を行うべきである。
【0076】
例えば、移植器具にこれを移植した後にそれの近隣に生物活性化合物を放出する手段を与えることができれば、これは望ましいことである。そのような器具はいくつか知られており、感染の可能性が最小限になるように、例えば抗生物質を放出するようにすることができる。別法または追加的に、過形成を抑制する抗増殖性薬剤を放出するようにすることも可能である。
【0077】
生物活性薬剤と重合体を含んで成る被膜用組成物を移植器具に付着させておくことでそれに生物活性化合物放出手段を与えることができる。移植器具と一緒に用いるに適するように改良を受けさせた代替被膜用組成物が継続して求められている。
【0078】
従って、本発明の2番目の面に従い、本明細書の上で定義した方法で調製した如きか或は入手可能なポリ(シリルエステル)を含んで成る被膜もしくは膜用組成物を提供する。
【0079】
そのような被膜もしくは膜用組成物が適切には防汚被膜用組成物を構成するようにする。
【0080】
そのような被膜もしくは膜用組成物が医学および/または獣医学用途で用いるに適した被膜用組成物を構成するようにしてもよい。そのような被膜用組成物が医学および/または獣医学用移植可能デバイス用の被膜用組成物を構成するようにしてもよい。そのような被膜用組成物を活性薬剤、好適には生物活性薬剤が水系、例えば人体または動物の体の中に制御されて放出されるように配置させてもよい。
【0081】
本被膜用組成物に活性薬剤を含めてもよい。そのような活性薬剤に生物活性薬剤を含めてもよい。そのような生物活性薬剤に抗生物質および/または抗増殖性物質を含めてもよい。
【0082】
本発明で用いるに有用な生物活性(例えば薬学的)薬剤には、移植部位に投与するに望ましい治療特徴を有する本質的に如何なる治療用物質も含まれる。そのような薬剤には、トロンビン阻害剤、抗血栓薬、血栓溶解薬、線維素溶解薬、血管けいれん抑制薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬、抗高血圧薬、抗菌薬、カルシウムチャネル遮断薬、血管拡張薬、抗高血圧薬、抗菌薬、抗生物質、表面糖蛋白質受容体の阻害薬、抗血小板薬、抗有糸分裂薬、微小管阻害薬、抗分泌薬、アクチン阻害薬、リモデリング(remodelling)抑制薬、アンチセンスヌクレオチド、抗代謝薬、抗増殖薬(抗脈管形成薬を包含)、抗癌化学療法薬、抗炎症性ステロイドまたは非ステロイド系抗炎症薬、免疫抑制薬、成長ホルモン拮抗薬、成長因子、ドーパミン作動薬、放射線療法薬、ペプチド、蛋白質、酵素、細胞外マトリックス成分、ACE阻害薬、フリーラジカル捕捉剤、キレーター、抗酸化剤、アンチポリメラーゼ、抗ウイルス薬、光力学療法薬および遺伝子療法薬が含まれる。
【0083】
本発明の3番目の面に従い、本明細書の上に定義した方法で生じさせた如きか或は入手可能なポリ(シリルエステル)を含んで成る膜または被膜を提供する。
【0084】
その上、本発明の4番目の面に従い、本明細書の上に定義した方法で生じさせた如きポリ(シリルエステル)を提供する。
【0085】
本発明の5番目の面に従い、本明細書の上に記述した方法で生じさせた如きポリ(シリルエステル)を含んで成る被膜もしくは膜用組成物を含んで成る被膜を有する移植可能な
医学および/または獣医学的器具を提供する。
【0086】
適切には、活性薬剤、好適には生物活性薬剤が水系の中に制御されて放出されるように前記被膜を配置する。
【0087】
適切には、前記器具は移植可能な医学用器具を含んでなる。
【0088】
最後に、本明細書の上に開示した特定のポリ(シリルエステル)はこれら自身が新規であり、本発明のさらなる面を構成する。
【0089】
従って、本発明の6番目の面に従い、本明細書の上に定義した一般式(I)で表される繰り返し基(前記式中のLはポリ乳酸もしくは置換ポリ乳酸の残基またはポリカルボン酸のロジンもしくは置換ロジン残基である)を含んで成るポリ(シリルエステル)化合物を提供する。
【0090】
本発明の7番目の面に従い、本明細書の上に定義した一般式(I)で表される繰り返し基(前記式中のLはポリ乳酸もしくは置換ポリ乳酸の残基またはポリカルボン酸のロジンもしくは置換ロジン残基である)を含んで成るポリ(シリルエステル)化合物を含んで成る被膜もしくは膜用組成物を提供する。
【0091】
本発明の8番目の面に従い、本明細書の上に定義した一般式(I)で表される繰り返し基(前記式中のLはポリ乳酸もしくは置換ポリ乳酸の残基またはポリカルボン酸のロジンもしくは置換ロジン残基である)を含んで成るポリ(シリルエステル)化合物を含んで成る膜もしくは被膜を提供する。
【0092】
本発明の9番目の面に従い、前記7番目の面に従う被膜もしくは膜用組成物を含んで成る被膜を有する移植可能な医学および/または獣医用器具を提供する。
【0093】
本発明の2番目、3番目、4番目、5番目および6番目の面には本発明の1番目の面の好適な特徴の中のいずれか1つ以上が組み込まれている可能性がある(そのような特徴が互いに排他的である場合を除いて)。
【0094】
本発明の7番目の面には本発明の2番目の面の好適な特徴の中のいずれか1つ以上が組み込まれている可能性がある(そのような特徴が互いに排他的である場合を除いて)。本発明の8番目の面には本発明の3番目の面の好適な特徴の中のいずれか1つ以上が組み込まれている可能性がある(そのような特徴が互いに排他的である場合を除いて)。本発明の9番目の面には本発明の5番目の面の好適な特徴の中のいずれか1つ以上が組み込まれている可能性がある(そのような特徴が互いに排他的である場合を除いて)。
【0095】
ここに、非限定的添付実施例および添付図を参照して本発明を単なる具体例として説明する。
実施例
実施例および比較実施例
製造実施例1
Volkova他が開示した方法(Bull.Acad.Sci.USSR Div.Chem.Sci.(1963)1829を参照)に類似した様式で1,3−ジアセトキシテトライソプロピルジシロキサンの調製を行った。具体的には、250gの1,3−ジクロロテトライソプロピルジシロキサン(CAS No.69304−37−6)と282.9gの無水酢酸を約138−146℃に加熱しながら塩化アセチルを穏やかに留出させた。真空蒸留で未反応の無水酢酸および266.2gの1,3−ジアセトキシテトライ
ソプロピルジシロキサン(106℃、0.6ミリバール、73%)を無色液体として得た。
IR(膜):2951、2873、1731、1466、1371、1261、1244、1099、1018、937、886、747、695cm−1
【0096】
NMRデータをCDCl中で測定して、TMSに対するデルタとして表す。
13C NMR:170.3、22.2、16.8、13.0;29Si NMR:−11.8。
【実施例1】
【0097】
40gの1,3−ジアセトキシテトライソプロピルジシロキサン(この上に示した製造実施例に記述した如く調製)と16.06gのアジピン酸を約145−180℃に加熱しながら酢酸を反応槽から6時間かけて留出させた。固体含有量が96.1%で分子量が4000D(4kD)で粘度が80dPa.sの重合体を得た。添付図の図1に示すように、THF溶液の分子量低下をGPCで監視した。
【0098】
NMRデータをCDCl中で測定して、TMSに対するデルタとして表す。
13C NMR:172.8、35.6、24.7、17.0、13.1;29Si NMR:−11.38。
比較実施例1(Wooley他のMacromolecules(1998)31 15に従う)
1.1325gのビス(トリメチルシリル)アジペートと1.0318gの1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサンを135℃で14日間反応させることで分子量が2700のポリ(テトライソプロピルジシリルオキシルアジペート)を生じさせた。
【実施例2】
【0099】
1.2リットルのフラスコに機械的撹拌機、温度制御装置および冷却器と受け槽が備わっている小型カラムを取り付けて、それにFORAL(商標)AX−E(ジヒドロアビエチン酸)を263gおよびDYMEREX(商標)(ロジン二量体)を308g入れた。この混合物を220℃にまで加熱して溶融させた。次に、エチルシリルトリアセテートを120g加えそして酢酸の留出が155℃で始まって175℃で終了した。蒸留を150ミリバールの減圧下で1時間継続した。酢酸が92g留出したが、これは生じ得る酸の100%に相当していた。残存する樹脂を400gのキシレンに溶解させた後、周囲温度になるまで冷却した。この生成物の固体含有量は60%であった。
【0100】
固体含有量が60%の時の前記結合剤(binder)溶液の粘度は1dPa.sであった。その樹脂溶液をガラス板の上にドローダウンすると、それは次の日に乾燥した/透明な膜になることが分かった。その結合剤膜を水に24時間浸漬すると軽い曇りが生じたが、それ以外は経時的に有意な変化は全く見られなかった。次に、その膜をNaOHが入っているアルカリ性溶液(pH値が12.3)に接触させると、その表面で加水分解と侵食が起こり、それは1時間以内に完全に溶解することが分かった。
製造実施例2
1019.3gのアジピン酸と581.6gのネオペンチルグリコールと0.56gのブチルスズ酸を150−230℃に加熱しながら反応槽から水を留出させた。次に、キシレンを加えそして共沸蒸留で最後の痕跡量の水を除去した。それによって固体量が76.5%で酸価が91.9mg KOH/gのポリエステル樹脂を得た。
【実施例3】
【0101】
423.5gのポリエステル(製造実施例2と同様にして調製)と42.3gの安息香酸と81.2gのエチルトリアセトキシシランを155−175℃に加熱しながら酢酸を
4時間かけて反応槽から留出させた。キシレンを用いた最終的希釈を行うことで固体量が84%の重合体を得た。その樹脂溶液をガラス板の上にドローダウンすると、それは次の日に乾燥した/透明な膜になることが分かった。その膜をNaOHが入っているアルカリ性溶液(pH値が12.3)に接触させると、それはゆっくり溶解した。
製造実施例3
34.2gのL−ラクチド(L−乳酸の二量体)と1.14gのグリコール酸を110℃で溶融させた。次に、121mgのジオクタン酸錫を1mlのトルエンに入れることで生じさせた溶液を加えた。次に、重合を110℃の温度で3時間実施した。次に、その重合体に無水こはく酸を1.5g加えた。110℃で1時間後に揮発物を反応槽から真空下で留出させた。それによって酸価が1.18mg KOH/gの重合体を得た。
【実施例4】
【0102】
36.8gの重合体(製造実施例3と同様にして調製)を100℃に加熱した。次に、7.61gの1,3−ジアセトキシテトライソプロピルジシロキサン(この上に示した製造実施例1に記述した如く調製)を加えながら酢酸を約5トールの圧力下で反応槽から2時間かけて留出させた。分子量が6000Dの重合体を得た。THF溶液の分子量(MW)低下をGPCで監視した。室温で96時間後のMWは4000Dであった。その樹脂をガラス板の上にドローダウンすると、それは次の日に乾燥した/透明な膜になることが分かった。その膜をNaOHが入っているアルカリ性溶液(pH値が12.3)に接触させると、それはゆっくり溶解した。
【0103】
読者の注意は本出願に関連して本明細書と同時または本明細書以前に提出されかつ本明細書と一緒に公衆の閲覧に供されたあらゆる論文および資料に向けられ、そのような論文および資料全部の内容は引用することによって本明細書に包含される。
【0104】
本明細書(添付請求の範囲、要約および図の全てを包含)に開示した特徴の全部および/またはそのように開示した方法または工程全ての段階の全部は如何なる組み合わせで組み合わされてもよいが、そのような特徴および/または段階の少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせは除く。
【0105】
本明細書(添付請求の範囲、要約および図の全てを包含)に開示した各特徴は、特に明記しない限り、同じ、均等または同様な目的を果たす代替特徴と交換可能である。従って、特に明記しない限り、開示した特徴は各々が一般的シリーズの均等または同様な特徴の単なる一例である。
【0106】
本発明をこの上に示した態様1つまたは2つ以上の詳細に限定するものでない。本発明の範囲は本明細書(添付請求の範囲、要約および図の全てを包含)に開示した特徴の中の新規ないずれか1つまたは新規な任意組み合わせまたはそのように開示した方法または工程全ての段階の中の新規ないずれか1つまたは新規な任意組み合わせに及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】実施例1のTHF溶液の分子量低下をGPCで監視した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
各RおよびRは、ヒドロキシルであってもよいか、或は独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、−L’−SiR−、−L’−SiR10、−L’−(SiRL’)−SiR−、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基から選択されてもよく、ここで、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノ(好適には第三級アミノ)またはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、或は各Rおよび/またはRは、独立して、−O−Z(O)−L−基であってもよく、ここで、R10は以下に示すRと同様に定義され、
各RおよびRは、独立して、水素、ヒドロキシル、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、−L’−SiR10、アリール、アリールオキシル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基を表してもよく、ここで、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ(好適には第三級アミノ)またはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、或は各Rおよび/またはRは、独立して、−O−Z(O)−L−基であってもよく、
Lは、ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基(ここで、前記置換ヒドロカルビルはアルキル、シクロアルキル、カルボキシル、置換カルボキシル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されている)または重合体を表し、
L’は、O、S、NR、L−(NR−L)(ここで、p=1から10であり、Rは以下に示すRと同様に定義される)またはLを表し、
各nは、独立して、0から1000の−Si(R)(R)−L’−基数を表し、そして
yは、2から100000のシリルエステル繰り返し単位数を表す]
で表される構造単位を含んで成るポリ(シリルエステル)を製造する方法であって、式(II)
【化2】

[式中、Z(O)OHは、Lと結合している酸部分を表し、mは2から100000の整数であり、そしてLはこの上で定義した通りである]
で表されるポリ酸と式(III)
【化3】

[式中、R、R、R、R、L’およびnは、この上で定義した通りであるが、但し(I)中の相当する基が−O−Z(O)−L−の時には(III)中のR、R、RおよびRが−O−Z(O)−R(ここで、Rは以下に示すRと同様に定義される)であり、そしてRは、水素原子、アラルキル、アリール、アルケニル、アルキニルまたはアルキル基であるが、これは、場合により、この上でR、R、RおよびRに関して定義した置換基と同等な置換基から選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、そして
は、基−O−Z(O)−R(ここで、Rは、この上に示したRと同様に定義される)である]
で表されるポリアシルオキシシリル誘導体を反応させながら生じた式(IV)、(V)および(VI):
Z(O)OH (IV)、
Z(O)OH (V)、
Z(O)OH (VI)、
で表される酸基1種または2種以上をその系から除去する段階を含んで成る方法。
【請求項2】
yが2から1000である請求項1記載の方法。
【請求項3】
およびRが各々独立してアルキル、アルコキシル、アリール、ヒドロキシル基または−L’−(SiRL’)−SiR−基(ここで、L’、R、R、RおよびRは、請求項1で定義した通りである)を表す請求項1および2のいずれか記載の方法。
【請求項4】
n=0−100である請求項3記載の方法。
【請求項5】
n=0−10である請求項3記載の方法。
【請求項6】
nが0または1である請求項3記載の方法。
【請求項7】
式(III)中のRおよびRを各々独立してアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基または−L’−(SiRL’)−SiR−基(ここで、L’、R、R、RおよびRは、請求項1で定義した通りである)を包含する群から選択する請求項1から6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
、R、RおよびRが各々独立して分枝もしくは直鎖アルキル基を表す請求項7記載の方法。
【請求項9】
L’がOを表す請求項1から8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
ZがC、POH、PまたはS=O、より好適にはCを表す請求項1から9のいずれか記載の方法。
【請求項11】
、R、R、RおよびRを各々独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、フェニルおよびビニルを包含する群から選択する請求項1記載の方法。
【請求項12】
、R、RおよびRをメチル、エチル、イソプロピル、フェニルおよびビニルから成る群から選択する請求項11記載の方法。
【請求項13】
、R、R、RおよびRがメチルである請求項11記載の方法。
【請求項14】
がメチルである請求項1から13のいずれか記載の方法。
【請求項15】
基RとRが同じである請求項1から14のいずれか記載の方法。
【請求項16】
基RとRが同じである請求項1から15のいずれか記載の方法。
【請求項17】
およびRがアルキルである請求項16記載の方法。
【請求項18】
およびRがメチルである請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記式(II)で表されるポリ酸がポリカルボン酸である請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記ポリカルボン酸がジカルボン酸である請求項19記載の方法。
【請求項21】
Lがアルキル、アリール、アルケニル、アルキニルまたはアラルキル基、または重合体、好適には炭素原子を1から10000個含有する重合体を表す請求項1から20のいずれか記載の方法。
【請求項22】
Lが−(CH−を表しそしてnが1から10の範囲、好適には2から8の範囲、より好適には4から6の範囲、最も好適には4の整数である請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記ジカルボン酸をアジピン酸、しゅう酸、こはく酸、グルタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ジ乳酸およびロジン性ジカルボン酸から選択する請求項20記載の方法。
【請求項24】
前記式(III)で表されるポリアシルオキシシリル誘導体をテトライソプロピル−1
,3−ジアセトキシジシロキサン、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジシロキサン、ジメチルジアセトキシシラン、ジエチルジアセトキシシラン、ジフェニルジアセトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、エチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、テトラアセトキシシラン、(酪酸の1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリプロピル−1,5−トリシロキサンジイルエステル)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリプロピル−,ジプロパノエート)、(2−シラナフタレン−2−オール,1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(7−ヒドロキシ−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチルテトラシロキサノキシ)−,ジアセテート)、(2−シラナフタレン−2−オール,1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(5−ヒドロキシ−1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサノキシ)−,ジアセテート)、(2−シラナフタレン−2−オール,1,2,3,4−テトラヒドロ−2−(3−ヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサノキシ)−,ジアセテート)、(1,9−ペンタシロキサンジオール,1,3,5,7,9−ペンタメチル−1,3,5,7,9−ペンタビニル−,ジアセテート)、(1,7−テトラシロキサンジオール,1,3,5,7−テトラエテニル−1,3,5,7−テトラメチル−,ジアセテート)、(1,7−テトラシロキサンジオール,1,1,3,3,5,5,7,7−オクタエチル−,ジアセテート)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,3,5−トリエテニル−1,3,5−トリメチル−,ジアセテート)、(ヘプタシロキサン,1,1,1,13−テトラアセトキシ−3,3,5,5,7,7,9,9,11,11,13,13−ドデカメチル)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリメチル−,ジアセテート)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−,ジ酪酸エステル)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−,ジプロピオネート)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリプロピル−,ジアセテート)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−,ジアセテート)、(1,1,1,7−テトラシロキサンテトロール,3,3,5,5,7,7−ヘキサメチル−,トリアセテート)、(1,5−トリシロキサンジオール,1,1,3,5,5−ペンタメチル−3−ビニル−,ジアセテート)、(1−テトラシロキサノール,7−アセチル−1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−,アセテート)、(1−ペンタシロキサノール,9−アセチル−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−,アセテート;ペンタシロキサノール,9−アセチル−1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−,アセテート)、(1,9−ペンタシロキサンジオール,デカメチル−,ジアセテート)、(1,5−トリシロキサンジオール,ヘキサメチル−,ジアセテート)、(1,17−ノナシロキサンジオール,オクタデカメチル−,ジアセテート)、(1,15−オクタシロキサンジオール,ヘキサデカメチル−,ジアセテート)、(1,7,13−ヘプタシロキサントリオール,トリデカメチル−,トリアセテート)、(1,1,7−テトラシロキサントリオール,1,3,3,5,5,7,7−ヘプタメチル−,トリアセテート)、(1,13−ヘプタシロキサンジオール,テトラデカメチル−,ジアセテート)、(1,7−テトラシロキサンジオール,1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−,ジアセテート)、ジt−ブチルジアセトキシシランおよびジt−ブトキシジアセトキシシランから選択する請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記反応を適切な溶媒中で実施する請求項1から24のいずれか記載の方法。
【請求項26】
前記溶媒をペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン、ベンゼン、メシチレン、エチルベンゼン、オクタン、デカン、デカヒドロナフタレン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドおよびこれらの混合物から選択する請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記溶媒が留出する酸生成物と一緒に低沸点の不均一共沸混合物を形成する請求項25および26のいずれか記載の方法。
【請求項28】
前記ポリアシルオキシシリル誘導体に存在する反応性基:酸のモル比を1:100から100:1の範囲にする請求項1から27のいずれか記載の方法。
【請求項29】
前記溶媒を存在させる場合にはそれを反応出発時の反応混合物総量の少なくとも10重量%にする請求項1から28のいずれか記載の方法。
【請求項30】
前記分子量を1000から1000000kDの範囲内にする請求項1から29のいずれか記載の方法。
【請求項31】
前記分子量を1000から100000kDの範囲内にする請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記分子量を1000から10000kDの範囲内にする請求項30記載の方法。
【請求項33】
mが2である請求項1から32のいずれか記載の方法。
【請求項34】
各RおよびRがヒドロキシルであってもよいか或は独立してアルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシル、−L’−SiR−、−L’−(SiRL’)−SiR−、アルケニル、アルキニル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基[ここで、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、ヒドロキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、アミノ(好適には第三級アミノ)またはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい]から選択されてもよいか、或はRまたはRが独立して−O−C(O)−L−基であってもよく、
各RおよびRが独立して水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、アリール、アリールオキシル、アラルキルまたはアラルキルオキシル基[ここで、これらは場合によりアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ(好適には第三級アミノ)またはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよい]を表してもよいか、或はRまたはRが独立して−O−C(O)−L−基であってもよく、
Lがヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基(ここで、前記置換ヒドロカルビルはアルキル、アルコキシル、アラルキル、アラルキルオキシル、アリール、アリールオキシル、ヒドロキシル、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されている)、またはペンダント型酸基を有する重合体を表し、そして
L’がO、SまたはNR(ここで、RはRと同様に定義される)またはLを表す、請求項1から33のいずれか記載の方法。
【請求項35】
前記重合体を膜もしくは被膜用組成物の中に混合する追加的段階を包含する請求項1から34のいずれか1項記載の方法。
【請求項36】
本明細書に記述する如きポリ(シリルエステル)を製造する方法であって、本実施例および図に示すようにして製造する方法。
【請求項37】
請求項1から34のいずれか記載の方法で調製した如きか或は入手可能な重合体を含んで成る膜または被膜。
【請求項38】
請求項1から34のいずれか1項記載の方法で調製したか或は入手可能なポリ(シリルエステル)。
【請求項39】
請求項1から34のいずれか記載の方法で調製した如きか或は入手可能なポリ(シリルエステル)を含んで成る被膜もしくは膜用組成物。
【請求項40】
L基がポリ乳酸もしくは置換ポリ乳酸の残基またはポリカルボン酸のロジンもしくは置換ロジン残基である請求項1から34記載の繰り返し基(I)を含んで成るポリ(シリルエステル)。
【請求項41】
請求項40記載のポリ(シリルエステル)を含んで成る被膜もしくは膜用組成物。
【請求項42】
該組成物が防汚被膜もしくは膜用組成物である請求項39または41記載の被膜もしくは膜用組成物。
【請求項43】
該組成物が医学および/または獣医学用途で生物活性物質を制御放出させる目的で用いるに適する請求項39または41記載の被膜もしくは膜用組成物。
【請求項44】
請求項40記載のポリ(シリルエステル)を含んで成る膜もしくは被膜。
【請求項45】
請求項39、41または43記載の被膜もしくは膜用組成物を含んで成る被膜を有する医学および/または獣医学用移植可能デバイス。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−521438(P2006−521438A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504882(P2006−504882)
【出願日】平成16年3月26日(2004.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003258
【国際公開番号】WO2004/085560
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(505258612)
【Fターム(参考)】