説明

ポルフィロモナス・ジンジバリス感染の予防、治療及び診断

本発明はポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態及び疾患の予防及び治療のための細胞性応答及び体液性応答の発生及び使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はペプチド及びキメラタンパク質又は融合タンパク質、並びにポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)関連の状態及び疾患の予防及び治療のために細胞性応答及び体液性応答を誘起するためのこれらのタンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性歯周炎は、歯槽骨の吸収及び最終的な歯の脱落をもたらす歯の支持組織の炎症性疾患である。該疾患は社会全体における公衆衛生上の大きな問題であり、成人集団の最大15%が罹患し、5〜6%が重度な形で罹患していると推測される。
【0003】
慢性歯周炎の発症及び進行は歯肉縁下の歯垢中の特定のグラム陰性細菌に関連付けられてきた。歯肉縁下の歯垢中のポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)の存在は疾患に強く関連している。
【0004】
治療(歯石除去及びルートプレーニング)後に歯周炎患者由来の歯肉縁下の歯垢中にポルフィロモナス・ジンジバリスが残っていることが進行的な歯槽骨の喪失に大きく関連すると報告されている。さらに歯肉縁下の歯垢中でのポルフィロモナス・ジンジバリス細胞数の増加は歯周付着喪失、歯周ポケットの深さ及びプロービング時の出血(bleeding on probing)により測定される疾患重症度と相関関係があることが分かっている。
【0005】
ポルフィロモナス・ジンジバリスによる口腔感染がマウス、ラット及び非ヒト霊長類において歯周骨喪失を誘導することが分かっている。さらに、歯周病、及びポルフィロモナス・ジンジバリス感染と心血管疾患及び或る特定の癌との関連性が増している。
【0006】
ポルフィロモナス・ジンジバリスの病原性に寄与する毒性因子が数多く報告されており、これにはLPS、フィムブリエ(fimbriae)、血球凝集素、溶血素及び「ポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素」としても既知の細胞外加水分解酵素(特にArg−X及びLys−X特異的プロテイナーゼ)が含まれる。
【0007】
公衆衛生上の問題の大きさから、抗血清、特にポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対する強い防御応答を与える特異的な抗体及びこれを提供する手段が必要とされている。
【0008】
1つの問題は、選択される毒性因子が多すぎるので、ポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対する強い防御応答をどのようにして得るかがはっきりしていないことである。
【0009】
毒性因子の中でのエピトープの相対的免疫原性は十分には理解されておらず、特にさらなるエピトープが依然として同定されていないかどうかはっきりしていない場合には所与の因子に対するエピトープの相対的免疫原性は理解されていない。
【0010】
1つの特定の問題は多くの毒性因子が複合ドメインから構成され、ポルフィロモナス・ジンジバリスで見られた配座に近い配座を提示するように発現させるのが困難であることであった。さらには、これらのドメインを不連続単位として、すなわち他の毒性因子ドメインを単離して発現する場合、これらのドメインはポルフィロモナス・ジンジバリスで見られた配座とは区別される配座に折り畳まれる傾向がある。
【0011】
さらには、毒性因子の免疫原性を変更するための多くの様々な選択肢の中でどれが最も防御免疫応答を与えやすいかは明らかになっていない。
【0012】
本発明に至る研究において、本発明者らはポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素の領域(該領域はLys又はArgを含有するペプチドにおいてC末端に位置するペプチド結合を切断しLys又はArgとするための該酵素における部位を規定している)を形成するアミノ酸配列と同じであるか又は相同性を共有するアミノ酸配列を有するペプチドを同定しており、このようなペプチドを、ワクチンとして使用する場合に天然のポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素又は破壊された全細胞から形成された精製プロテイナーゼ−付着因子(adhesin)複合体よりも歯周組織の破壊に対する良好な防御を提供するキメラタンパク質又は融合タンパク質に組み込んだ。
【発明の概要】
【0013】
一態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質が直接又はリンカーを介して第2のペプチドと連結する第1のペプチドを含み、
(A)前記第1のペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含み、
(B)前記第2のペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質を提供する。
【0014】
別の態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質が直接又はリンカーを介してポリペプチドと連結するペプチドを含み、
(A)前記ペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含み、
(B)前記ポリペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質を提供する。
【0015】
別の態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するペプチドであって、
(i)配列番号64〜配列番号66のうちの1つで示される配列と同じであるか又は相同的であり、かつ
(ii)配列番号67又は配列番号68で示される配列と同じであるか又は相同的である配列を有する、ペプチドを提供する。
【0016】
一態様において、配列番号64〜配列番号68のうちの1つで示される配列と同じであるか又は相同的である配列を有するペプチドをキメラタンパク質又は融合タンパク質の形態で与えることができ、該ペプチドが直接又はリンカーを介して第2のペプチドと連結し、該第2のペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む。
【0017】
さらに別の態様において本発明は、任意でアジュバントと併せて上記で広く記載されたキメラタンパク質又は融合タンパク質又はペプチドを含む、抗原性組成物、特にワクチン組成物等の組成物を提供する。
【0018】
この態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の罹患率又は重症度を抑える又は低減する方法であって、上記のようなキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は上記のような組成物を該被験体に投与することを含む、方法も提供する。
【0019】
この態様において本発明はさらに、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態若しくは疾患の罹患率若しくは重症度を抑える若しくは低減する際の、又は被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態若しくは疾患の罹患率若しくは重症度を抑える若しくは低減する薬剤の製造における上記のようなキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は上記のような組成物の使用を提供する。
【0020】
別の態様において本発明は、上記で広く記載されたキメラタンパク質若しくは融合タンパク質又はペプチドに対して産生される抗体、特にモノクローナル抗体を提供する。
【0021】
この態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患又は状態の重症度を抑える又は低減する方法であって、上記のような抗体を該被験体に投与することを含む、方法も提供する。
【0022】
この態様において本発明はさらに、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態若しくは疾患の罹患率若しくは重症度を抑える若しくは低減する際の、又は被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態若しくは疾患の罹患率若しくは重症度を抑える若しくは低減する薬剤の製造における上記のような抗体の使用を提供する。
【0023】
さらに別の態様において本発明は、任意で少なくとも1つの調節要素と操作可能に結び付いた、上記で広く記載されたキメラタンパク質又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子も提供する。
【0024】
この態様において本発明はさらに、このような核酸分子を含むベクター、及びこのような核酸分子を含む原核細胞又は真核細胞を提供する。
【0025】
この態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の罹患率又は重症度を抑える又は低減する方法であって、上記のような核酸分子、上記のようなベクター、又は上記のような原核細胞若しくは真核細胞を該被験体に投与することを含む、方法も提供する。
【0026】
この態様において本発明はさらに、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患若しくは状態の重症度を抑える若しくは低減する際の、又は被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患若しくは状態の重症度を抑える若しくは低減する薬剤の製造における上記のような核酸分子、上記のようなベクター、又は上記のような原核細胞若しくは真核細胞の使用を提供する。
【0027】
さらなる態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患を診断又はモニタリングする方法であって、前記被験体由来の生体試料において抗ポルフィロモナス・ジンジバリス抗体を検出するための上記のようなキメラタンパク質又は融合タンパク質の使用を含む、方法を提供する。
【0028】
この態様において本発明は、被験体由来の生体試料において抗ポルフィロモナス・ジンジバリス抗体を検出するための上記のようなキメラタンパク質又は融合タンパク質の使用も提供する。
【0029】
さらに別の態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患を診断又はモニタリングする方法であって、前記被験体由来の生体試料においてポルフィロモナス・ジンジバリスの存在を検出するための上記のような抗体の使用を含む、方法を提供する。
【0030】
この態様において本発明は、被験体由来の生体試料においてポルフィロモナス・ジンジバリスの存在を検出するための上記のような抗体の使用も提供する。
【0031】
別の態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質の製造のためのポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X若しくはArg−Xプロテイナーゼの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを有するペプチド、又は該ペプチドをコードする核酸の使用を提供する。この態様では、前記ペプチドは配列番号17、配列番号18、配列番号25又は配列番号26のうちの1つで示される配列を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】組換えKgpタンパク質のSDS−PAGEゲルのクマシーブルー染色を示す図である。レーン1=KAS2−KLA1、レーン2=KLA1、レーン3=KsA1、レーン4=KAS1−KsA1。分子量マーカーはkDaで示す。
【図2】KAS2ペプチド及びホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞の抗体認識を示す図である。(A)ELISAにおいてホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞(FK−W50)、組換えタンパク質KAS1−KsA1、KAS2−KLA1及び合成KAS2−DTコンジュゲート及びPBSに対して産生される抗血清を用いてKAS2ペプチドをプロービングした。(B)ELISAにおいてホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞(FK−W50)、組換えタンパク質KAS1−KsA1、KAS2−KLA1、KLA1及びPBSに対して産生される抗血清を用いてホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞をプロービングした。抗体応答はバックグラウンドレベルで得られるOD415の2倍の逆数(minus double)をELISA力価として表し、それぞれの力価は3つの値の平均±標準偏差を表す。
【図3】組換えタンパク質及び組換えキメラタンパク質、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス、並びにアジュバント単独(PBS、IFA)によって免疫付与されたマウス、又は非経口感染した(非チャレンジ)マウスの上顎臼歯のポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の水平な骨喪失を示す図である。この図は、KAS2−KLA1をAS2−LA1として示し、KLA1をLA1として示し、KAS1−KsA1をAS1−sA1として示し、KsA1をsA1として示す。骨喪失の測定値は左側及び右側の上顎両方の上顎臼歯それぞれの頬側のセメント−エナメル境(CEJ)から歯槽骨頂(ABC)までの平方ミリメートル(mm)で測定される面積の平均である。データをルビーン検定の等分散性により測定されるように正規分布させ、mm単位で平均(n=12)で表し、一元配置分散分析及びダネットT3検定を用いて分析した。は対照(感染)群よりも有意に(P<0.001)小さい骨喪失を有する群を示し、†はAS2−LA1群よりも有意に(P<0.001)大きい骨喪失を有する群を示す。
【図4】歯周炎モデルにおける免疫付与マウスの血清抗体サブクラスの応答を示す図である。組換えタンパク質KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1、並びにホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50によって免疫付与したマウス(A(経口接種前)及びB(経口接種後))由来の血清を、吸着抗原としてホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50を用いるELISAに使用した。抗体応答IgG(黒色のバー)、IgG1(灰色のバー)、IgG2a(白色のバー)、IgG2b(横縞のバー)、IgG3(斜め縞のバー)をバックグラウンドレベルを引いて得られたELISA力価(log2)で表し、それぞれの力価は3つの値の平均±標準偏差を表す。
【図5】KAS2ペプチド配列433〜468を表す重複ペプチドに対するペプチド特異的な抗体反応性のPEPSCAN分析を示す。(A)KAS1−KsA1(白色のバー)、KAS2−KLA1(黒色のバー)の抗血清を用いてプロービングしたKAS2重複ペプチド(オフセット1、オーバーラップ7)。(B)KAS2−DTコンジュゲート抗血清を用いてプロービングしたKAS2重複ペプチド(オフセット、オーバーラップ7)。それぞれのバーは抗体反応性を示している(415nmでの光学密度[OD])。
【図6】キメラAS2−LA1がポルフィロモナス・ジンジバリス全細胞及びRgpA−Kgp複合体を認識する非近交系マウスにおいて抗体応答を誘導することを示す図である。CD1非近交系マウスをキメラAS2−LA1(50mg/マウス)で免疫付与し、吸収抗原(absorbed antigens)としてAS2−LA1(A)、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50(B)及びRgpA−Kgp複合体(C)を用いるELISAにおいて回収した血清を使用した。この図では、KAS2−KLA1をAS2−LA1として示す。それぞれの抗原に対するそれぞれの免疫グロブリン(immunoglogulin)アイソタイプに関する力価を求め、データをバックグラウンドレベルで得られるOD415の2倍の逆数をELISA力価(’000)として表し、それぞれの力価は3つの値の平均±標準偏差を表す。
【図7】Kgpプロテイナーゼ、KAS2[Asn433〜Lys468](A)、KAS4[Asp388〜Val395](B)、KAS5[Asn510〜Asp516](C)、及びKAS6[Ile570〜Tyr580](D)のタンパク質モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本明細書で開示及び規定される本発明は、明細書若しくは図面で言及される又は明細書若しくは図面から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての代替的な組合せにまで及ぶことが理解される。これらの様々な組合せは全て本発明の様々な代替的な態様を構成する。
【0034】
本発明者らによって、ペプチド結合の切断のための触媒部位若しくは活性部位の側面に位置する、又は他の形で触媒部位若しくは活性部位を規定するポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素の領域は高度に免疫原性であり、実際ポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対する体液性応答を与えるのに十分であることが分かっている。特に、これらの領域を1つ又は複数含むキメラタンパク質又は融合タンパク質は全細胞に対して産生される抗血清及び他の免疫原で見られるよりも大きい、歯槽骨の喪失に対する防御を与えることが分かっている。これまでにポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素の触媒ドメインの免疫原性が比較的弱いことが分かっているので、この所見は特に驚くべきものである。
【0035】
一態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質が直接又はリンカーを介して第2のペプチドと連結する第1のペプチドを含み、
(A)前記第1のペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含み、
(B)前記第2のペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質を提供する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は最大約40アミノ酸残基、好ましくは5〜40のアミノ酸残基のアミノ酸配列を表すのに使用される。
【0037】
一実施形態において、ポリペプチドは「第2のペプチド」に置き換わって、すなわち言い換えれば「第2のペプチド」の代わりに使用される。「ポリペプチド」という用語は少なくとも約40アミノ酸残基のアミノ酸配列を表すのに使用される。
【0038】
そのため別の態様では、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質が直接又はリンカーを介してポリペプチドと連結するペプチドを含み、
(A)前記ペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含み、
(B)前記ポリペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質が提供される。
【0039】
別の態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するペプチドであって、
(i)配列番号64〜配列番号66のうちの1つで示される配列と同じであるか又は相同的である配列、及び
(ii)配列番号67又は配列番号68で示される配列と同じであるか又は相同的である配列からなる群から選択される、ペプチドを提供する。
【0040】
本発明の一態様において、前記ペプチドが配列番号64〜配列番号68の配列を有する場合、該ペプチドが直接又はリンカーを介して第2のペプチドと連結するキメラタンパク質又は融合タンパク質の形態で与えられ得る。一実施形態では、キメラタンパク質又は融合タンパク質の第2のペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む。
【0041】
上記の実施形態において、ポリペプチドが第2のペプチドに置き換わって、すなわち言い換えれば第2のペプチドの代わりに使用される。そのため別の態様では、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質が直接又はリンカーを介してポリペプチドと連結するペプチドを含み、
(A)前記ペプチドが
(i)配列番号64〜配列番号66のうちの1つで示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列、又は
(ii)配列番号67若しくは配列番号68で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列を含み、
(B)前記ポリペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質が提供される。
【0042】
本明細書で使用される場合、ペプチド又はポリペプチドの「ホモログ」に対する言及は、初めに言及されたペプチド若しくはポリペプチドのアミノ酸配列に対する相同性を共有するか、又は初めに言及されたペプチド若しくはポリペプチドのアミノ酸配列に対して相同的であるか、又は初めに言及されたペプチド若しくはポリペプチドのアミノ酸配列との同一性、好ましくは比較をBLASTアルゴリズム(アルゴリズムのパラメータが各々の参照配列の全長にわたって各々の配列間に最大の適合を与えるように選択される)により行う場合、少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%及びさらにより好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するペプチド又はポリペプチドに対する言及である。配列同一性は比較対象の2つの配列のアミノ酸間の正確な適合を表す。このようなホモログはポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼ又はArg−X−プロテイナーゼの自然発生的な変異体又は単離体から得ることができる。代替的に、このようなホモログがポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼ又はArg−X−プロテイナーゼ由来のペプチド又はポリペプチドの「保存的置換」変異体であってもよく、ここではペプチド又はポリペプチドの全体の配座及び機能を変えることなく1つ又は複数のアミノ酸残基が変化しており、これにはアミノ酸の同様の特性を有するものへの置き換えが含まれるが、決してこれに限定されない。同様の特性を有するアミノ酸は当該技術分野で既知である。例えば、相互に交換可能であり得る極性/親水性アミノ酸には、アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、スレオニン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、相互に交換可能であり得る非極性/疎水性アミノ酸には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン及びメチオニンが含まれ、相互に交換可能であり得る酸性アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれ、相互に交換可能であり得る塩基性アミノ酸には、ヒスチジン、リシン及びアルギニンが含まれる。好ましくはこのような保存的置換変異体は20未満、より好ましくは15未満、より好ましくは10未満、及び最も好ましくは5未満のアミノ酸変化を有する。
【0043】
ペプチド結合の切断に関する酵素における部位を規定する、ポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素、特にLys−X−プロテイナーゼ(Kgp)又はArg−X−プロテイナーゼ(RgpA)の領域は、特にLys−X−プロテイナーゼに関してポルフィロモナス・ジンジバリスに現れるような触媒部位の三次元配座を予測する方法を例示している図7及び実施例9に関する本明細書の教示に従って決定することができる。実施例10はArg−X−プロテイナーゼの三次元配座のモデリングに関する方法論を与える。
【0044】
或る特定の実施形態において、キメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又はその第1若しくは第2のペプチド成分をペプチド模倣薬から形成してもよい。ペプチド模倣薬は所与のペプチドの1つ又は複数の特質、例えば配座を模倣する、及びアミノ酸残基(その幾つかは自然発生的でなくてもよい)からなる分子である。
【0045】
触媒部位の免疫原性領域を同定した後、本発明者らは体液性応答を誘発する可能性がある様々なペプチド免疫原の配列を決定している。特に、触媒部位の側面に位置する、又は他の形で触媒部位を規定する「6つの」領域を以下のように規定している:KAS1/RAS1、KAS2/RAS2、KAS3/RAS3、KAS4/RAS4、KAS5/RAS5及びKAS6(表1を参照されたい)。この情報を用いて、本発明者らはタンパク質配列データベースに問い合わせ、触媒部位の側面に位置し、そのためポルフィロモナス・ジンジバリスで見られる免疫原性エピトープを表す領域を形成するアミノ酸配列と相同性を共有するペプチドを決定することができた。これらのペプチドの配列を以下の構造式により同定する:
【0046】
【表1】

【0047】
本発明者らにより、これらのペプチドを含むキメラタンパク質には多くの有用性があることが分かった。例えば本明細書で記載のように、幾つかのペプチドは慢性歯周炎(periodonitis)で観察されるような骨喪失の治療又は予防に関して高度に防御的である体液性応答をもたらす。上記ペプチドを、該ペプチドが或る個体の血清における特異性を検出又はモニタリングすることができる診断アッセイに使用してもよく、それによりその個体が感染しているか否か、及び感染している場合治療が必要であるか否か、又は治療が与えられた場合に該ペプチドが有効であったか否かが示される。
【0048】
ポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素の領域(該領域はC末端に位置するペプチド結合を切断しLys又はArgとするための該酵素における部位を規定している)がLys−X−プロテイナーゼ又はArg−X−プロテイナーゼの完全配列を含まないことが理解される。
【0049】
本明細書で使用する場合、「異種タンパク質」又は「キメラタンパク質若しくは融合タンパク質」という用語は、異なる供給源又は同じ供給源から得られるアミノ酸の機能的な単位、ドメイン、配列又は領域からなり、かつ該単位、ドメイン、配列又は領域が得られるか又は関連する分子で観察されるものとは区別される構成を有するように会合したタンパク質を表すように使用される。本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質の共通特徴は、ペプチド結合の切断に関する触媒部位を規定するポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素の配列と同じであるか又は相同性を共有するアミノ酸配列を有するペプチドを少なくとも1つ含有することである。
【0050】
好ましい実施形態において、第1のペプチドがKgp[432〜468]領域由来のペプチドを含む場合、第1のペプチドは、(i)VSFANYT及びVGFANYTから選択される配列、より好ましくはGVSFANYT、GVGFANYT、VSFANYTA及びVGFANYTAから選択される配列を含むペプチド、又は(ii)ETAWAD、ETSWAD、TAWADP及びTSWADPから選択される配列、好ましくはSETAWAD、SETSWAD、ETAWADP、ETSWADP、TAWADPL及びTSWADPLから選択される配列、より好ましくはGSETAWAD、GSETSWAD、SETAWADP、SETSWADP、ETAWADPL、ETSWADPL、TAWADPLL及びTSWADPLLから選択される配列を含むペプチドであるのが好ましい。より好ましくは、このペプチドは表1に示されるKAS1[432〜454]、KAS2[433〜468]及びKAS3[436〜455]ペプチドから選択される。代替的に、第1のペプチドは、国際出願第PCT/AU98/00311号(国際公開第98/049192号)で開示されたPAS1(K48)としても知られるPAS1K[432〜453]ペプチドであり得る。これらのペプチドに対応する配列識別子を表3に示す。
【0051】
同様に別の好ましい実施形態において、第1のペプチドがRgpA[426〜462]領域由来のペプチドを含む場合、このペプチドは表1に示されるRAS1[426〜448]、RAS2[427〜462]及びRAS3[430〜449]ペプチドから選択されるのが好ましい。代替的に、第1のペプチドは、国際出願第PCT/AU98/00311号(国際公開第98/049192号)で開示されたPAS1(R45)としても知られるPAS1R[426〜446]ペプチドであり得る。
【0052】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質において、第2のペプチドはポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素、例えばLys−X−プロテイナーゼ(Kgp)又はArg−X−プロテイナーゼ(RgpA)又はHagAの付着因子ドメイン由来のペプチドであり得る(表2を参照されたい)。これらのドメインは時には血球凝集素としても知られている。Lys−X−プロテイナーゼにおいて、好ましいドメインは表2で特定されるようなKA1、KA2、KA3、KA4、KA5である。Arg−X−プロテイナーゼでは、好ましいドメインは表2で特定されるようなRA1、RA2、RA3及びRA4である。HagAでは、好ましいドメインはHagA1、HagA1及びHagA1**である。
【0053】
【表2】

【0054】
キメラタンパク質又は融合タンパク質にKAS1、KAS2、KAS3、KAS4、KAS5及びKAS6、又はRAS1、RAS2及びRAS3、RAS4及びRAS5等の本発明のペプチドが含まれている場合、このようなペプチドに対する体液性応答が改善することに加えて、付着因子ドメインは免疫原性エピトープも含有し、それにより複合特異性が生じ、防御免疫原性応答を誘起する。付着因子ドメインの免疫原性エピトープが、キメラタンパク質又は融合タンパク質において与えられている場合、ポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素に近づく形態で保持されるという所見は予期せぬものである。
【0055】
本発明のこれらの実施形態において、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、ポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素の付着因子ドメインのうちのいずれか1つ又は複数、特にLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメイン(KA1、KA2、KA3、KA4及びKA5)又はArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメイン(RA1、RA2、RA3及びRA4)又はHagAドメイン(HagA1、HagA1及びHagA1**)のうちのいずれか1つ又は複数と共にKAS1/RAS1、KAS2/RAS2、KAS3/RAS3、KAS4/RAS4、KAS5/RAS5及びKAS6/RAS6から選択されるペプチドをいずれか1つ又は複数含有してもよいことが理解される。
【0056】
付着因子ドメインがポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素で観察されるような完全ドメインである必要がないことも理解される。例えば付着因子ドメインはこのようなドメインの断片であってもよく、特に好ましい断片はLys−X−プロテイナーゼA1ドメインのKsA1ドメイン断片及びKLA1ドメイン断片である(表2を参照されたい)。ドメインが付着因子ドメインの断片である場合、該ドメインは一般的に付着因子ドメイン特異的エピトープを1つ又は複数含有する。
【0057】
付着因子関連ペプチドに対応する配列識別子を表3に示す。
【0058】
一実施形態において、第2のペプチド又はポリペプチドは配列番号69〜配列番号79のうちの1つ若しくは複数、又は配列番号83〜配列番号85のうちの1つ若しくは複数で示される配列を含む。
【0059】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は、Lys−X−プロテイナーゼのKgp[432〜468]領域から選択される1つ又は複数のさらなるペプチド、及び/又はArg−X−プロテイナーゼのRgpA[426〜462]領域から選択される1つ又は複数のさらなるペプチドを含んでいてもよい。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、KsA1又はKLA1と共にKAS1、KAS2、KAS3、KAS4、KAS5及びKAS6のうちの1つ若しくは複数、又はRAS1、RAS2、RAS3、RAS4及びRAS5のうちの1つ若しくは複数を含む。
【0061】
このため或る特定の実施形態において、キメラタンパク質又は融合タンパク質はさらなるペプチドを少なくとも1つ含んでいてもよく、該さらなるペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iv)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(v)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む。
【0062】
本明細書に記載のようなキメラタンパク質又は融合タンパク質に含まれ得るドメイン、単位、配列又は領域の他の例としては、Fc結合領域若しくはFc受容体等の受容体若しくはリガンドと結合するドメイン、アルブミン等の半減期を改善するドメイン、又はキメラタンパク質若しくは融合タンパク質の発現若しくは精製を促進するドメインが挙げられる。
【0063】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質において、第1のペプチドのC末端残基が付着因子ドメインポリペプチドのN末端残基と共有結合することができるか、又は第1のペプチドのN末端残基が付着因子ドメインポリペプチドのC末端残基と共有結合することができる。この配置において、第1のペプチドと付着因子ドメインポリペプチドとが「直接結び付いている」又は「近接している」といわれる。
【0064】
他の実施形態において、キメラタンパク質又は融合タンパク質は第1のペプチドと付着因子ドメインポリペプチドとを結び付けるリンカーを含む。リンカーはアミノ酸及び非アミノ酸のリンカーの両方を含む、ペプチドとポリペプチドとを連結させることが可能な任意のリンカーであり得る。好ましくはリンカーは非免疫原性である。好適なリンカーは最大15アミノ酸長であり得るが、5アミノ酸未満が好ましい。リンカーは第1のペプチド及び付着因子ドメインポリペプチドを、ポルフィロモナス・ジンジバリスのトリプシン様酵素で通常観察されるよりも密接な空間的配置にするように機能し得る。代替的に、第1のペプチドと付着因子ドメインポリペプチドとの間隔が空いていてもよい。
【0065】
本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質は組換え発現系(例えば組換えDNA技術)又は化学合成(例えば固相ペプチド合成)により産生することができる。これらの技法は当該技術分野で既知である。
【0066】
異種タンパク質又はキメラタンパク質は、キメラタンパク質又は融合タンパク質の第1又は第2のペプチド成分を単独で使用して得られる体液性応答に対して、得られる体液性応答が改善するため特に有益である。
【0067】
本発明者らにより、これらのペプチドを含むキメラタンパク質には多くの有用性があることが分かった。例えば本明細書で記載のように、幾つかのペプチドは慢性歯周炎で観察されるような骨喪失の治療又は予防に関して高度に防御的である体液性応答をもたらす。上記ペプチドを、該ペプチドが或る個体の血清における特異性を検出又はモニタリングすることができる診断アッセイに使用してもよく、それによりその個体が感染しているか否か、及び感染している場合治療が必要であるか否か、又は治療が与えられた場合に該ペプチドが有効であったか否かが示される。
【0068】
一実施形態において、キメラタンパク質又は融合タンパク質は、防御免疫応答、典型的にはポルフィロモナス・ジンジバリス感染に関連する結合組織損傷を少なくとも最小にする又はそうでなければ制限する応答を誘導する。一実施形態では、防御応答がポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の骨喪失を少なくとも最小にする又は制限する。ポルフィロモナス・ジンジバリス感染によって媒介される骨喪失を測定するモデルシステムが本明細書で論じられている。典型的には防御免疫応答は主に体液性応答である。或る特定の実施形態では、防御免疫応答には細胞性応答も含まれる。
【0069】
本発明は上記で広く記載されたキメラタンパク質又は融合タンパク質を含む組成物も提供する。典型的には組成物は抗原性又は免疫原性を有する。より具体的には本発明は、任意でアジュバントと併せてキメラタンパク質又は融合タンパク質を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対して防御免疫応答又は治療免疫応答を誘起するのに好適な組成物を提供する。このような組成物は免疫応答を調整する又は高める別の成分を含んでいてもよい。一実施形態では、組成物はワクチンの形態をとる。
【0070】
様々なアジュバントをワクチン組成物と併用することが知られている。アジュバントは、免疫応答を調整することにより、ワクチン抗原を単独で投与する場合より少量のワクチン抗原又はより小さい用量を用いてより長期的かつより高レベルの免疫を達成するのを助ける。アジュバントの例としては、不完全フロイントアジュバント(IFA)、アジュバント65(落花生油、モノオレイン酸マンニド(mannide monooleate)及びモノステアリン酸アルミニウムを含有する)、油型エマルション、Ribiアジュバント、プルロニックポリオール、ポリアミン、アブリジン、Quil A、サポニン、MPL、QS−21、アルミニウム塩及びカルシウム塩等のミネラルゲル、ヒドロキシアパタイト、リン酸カルシウム、アルミニウム塩等のナノ粒子、マンナン、キトサン等の糖オリゴマー及びポリマーが挙げられる。他の例としてはSAF−1、SAF−0、MF59、Seppic製のISA720等の水中油型エマルション、並びにISCOM(商標)及びISCOMマトリクス(商標)等の他の粒子状アジュバントが挙げられる。アジュバントの他の例の広範囲に及ぶが限定的ではないリストが、Cox and Coulter 1992 [In: Wong WK (ed.) Animals parasite control utilising technology. Bocca Raton; CRC press, 1992; 49-112]に列挙されている。アジュバントの他に、ワクチン組成物は必要に応じて従来の薬学的に許容される担体、賦形剤、充填剤、緩衝剤又は希釈剤を含んでいてもよい。アジュバントを含有する1つ又は複数の用量のワクチン組成物を、歯周炎を予防するために予防的に、又は既に存在している歯周炎を治療するために治療的に投与してもよい。
【0071】
好ましい組成物において、キメラタンパク質又は融合タンパク質を粘膜アジュバントと組合せて、経口、頬側又は鼻の経路を介して投与する。粘膜アジュバントの例はナノ粒子、コレラ毒素及び易熱性の大腸菌毒素、これらの毒素の非毒性Bサブユニット、毒性が低減したこれらの毒素の遺伝的突然変異体である。抗原性タンパク質を経口的に/頬側から/鼻から送達するのに利用することができる他の方法には、胃腸管又は他の粘膜表面からのミクロスフェアの取り込みを助ける及びタンパク質の分解を防ぐマイクロカプセル化による、生分解性ポリマーの粒子(例えばアクリレート又はポリエステル)又はナノ粒子(例えばヒドロキシアパタイト)中への又はこれらの上へのタンパク質の取り込み又は吸収が含まれる。リポソーム、ISCOM(商標)、ヒドロゲルは、抗原性タンパク質の粘膜免疫系への送達のためにLTB、CTB又はレクチン等の標的分子の取り込みによりさらに強化することができる他の有望な方法の例である。抗原性タンパク質及び粘膜アジュバント又は送達系の他に、ワクチン組成物は必要に応じて、従来の薬学的に許容される担体、賦形剤、充填剤、コーティング、分散媒、抗細菌剤又は抗真菌剤、及び緩衝剤又は希釈剤を含んでいてもよい。
【0072】
この態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の罹患率又は重症度を抑える又は低減する方法であって、上記のようなキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は上記のような組成物を該被験体に投与することを含む、方法も提供する。
【0073】
被験体はヒト又は他の動物被験体であってもよく、好ましくはヒトである。
【0074】
典型的には、ポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患は慢性歯周炎であるが、骨喪失、特に歯槽骨の喪失、又は冠動脈疾患でもあり得る。
【0075】
ワクチン組成物のヒト又は動物被験体への投与に関して多くの方法が知られており、これには皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、舌下、頬側及び経口の投与が含まれるがこれらに限定されない。これらの投与経路はワクチン接種に特に有用である。
【0076】
別の態様において本発明は、上記で広く記載されたキメラタンパク質又は融合タンパク質に対して産生される抗体、好ましくはモノクローナル抗体を提供する。
【0077】
これらの抗体は標準的技法により産生することができ、被験体の受動免疫付与に使用することができる。したがってこの態様では本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の重症度を抑える又は低減する方法であって、上記のような抗体を該被験体に投与することを含む、方法も提供する。
【0078】
さらなる態様において本発明は、任意で少なくとも1つの調節要素と操作可能に結び付いた、上記で広く記載されたキメラタンパク質又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。一実施形態では、核酸は単離形態又は実質的な精製形態で提供される。
【0079】
核酸分子は例えば、発現ベクターの原核宿主細胞又は真核宿主細胞への挿入により、組換えタンパク質としてのキメラタンパク質の産生に好適な発現ベクターに挿入することができる。組換えタンパク質の発現の成功には、発現ベクターが発現に使用される特定の宿主細胞系に適合し、かつこの特定の宿主細胞系によって認識される、転写及び翻訳に必要な調節要素を含有することが要求される。様々な宿主細胞系を組換えタンパク質を発現させるのに利用してもよく、これにはバクテリオファージベクター、プラスミドベクター又はコスミドDNAを用いて形質転換した細菌;酵母ベクターを含有する酵母;真菌ベクターを含有する真菌;ウイルス(例えばバキュロウイルス)を用いて感染させた昆虫細胞株;及びプラスミド若しくはウイルス発現ベクターを用いてトランスフェクトした、又は組換えウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス等)を用いて感染させた哺乳動物細胞株が含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
分子生物学の分野で既知の方法を用いて、アミノ酸配列の発現の増大が用いられる特定の宿主細胞系に適合していれば(例えば用いられる特定の宿主細胞系に対して非毒性であれば)、様々なプロモーター及びエンハンサーを発現ベクターに組み込み、組換えタンパク質の発現を増大させることができる。
【0081】
プロモーターの選択は用いられる発現系に依存する。プロモーターによって、強度、すなわち転写促進能が異なる。一般的に、コーディングヌクレオチド配列の高レベルの転写及び組換えタンパク質への高レベルの発現を得るために強いプロモーターを使用することが望まれる。例えば、高レベルの転写が大腸菌を含む宿主細胞系で観察された、当該技術分野で既知の細菌プロモーター、ファージプロモーター、又はプラスミドプロモーターには、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、P及びPプロモーター、lacUV5、ompF、bla、lpp等が含まれ、これらはアミノ酸配列をコードする挿入されたヌクレオチド配列の転写を与えるために使用することができる。
【0082】
効率的な転写又は翻訳のための他の制御要素にはエンハンサー及び調節シグナルが含まれる。エンハンサー配列は、隣接したコーディングヌクレオチド配列に関するそれらの位置及び配向とは比較的非依存的に転写効率を増大させると考えられるDNA要素である。このため、用いられる宿主細胞の発現ベクター系に応じて、エンハンサーは挿入されるコーディング配列の上流又は下流のいずれかに配置され、転写効率を増大させ得る。他の調節部位、例えば転写開始シグナル又は翻訳開始シグナルを、コーディング配列の発現を調節するのに使用することができる。
【0083】
別の実施形態において、ベクターはウイルス又は細菌のワクチンベクターであってもよく、組換えウイルスワクチン、組換え細菌ワクチン、組換え弱毒化細菌ワクチン、又は不活性化組換えウイルスワクチンを提供するために使用することができる。ワクシニアウイルスは、当該技術分野における他の生物に由来するワクチン抗原を発現するように改変された感染性ウイルスの最も知られる例である。それ自体が疾患を引き起こさないように弱毒化又はそうでなければ処理した組換え生ワクシニアウイルスは宿主に免疫付与するのに使用される。宿主内での組換えウイルスのその後の複製がワクチン抗原による免疫系の連続刺激をもたらし、それにより長期にわたる免疫がもたらされる。
【0084】
他の生ワクチンベクターには、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、及び好ましくはワクシニア等のポックスウイルス[Paoletti and Panicali、米国特許第4,603,112号]、及び弱毒化サルモネラ株[Stocker et al.、米国特許第5,210,035号、同第4,837,151号及び同第4,735,801号、並びにCurtiss et al., 1988, Vaccine 6:155-160]が含まれる。生ワクチンは、該生ワクチンが免疫系を連続的に刺激し、かなりの長期にわたる免疫をもたらすことができるため特に有益である。免疫応答がその後のポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対して防御的である場合、生ワクチン自体をポルフィロモナス・ジンジバリスに対する予防ワクチンに使用することができる。特に、生ワクチンは口腔の共生菌(commensal inhabitant)である細菌を基とすることができる。この細菌を組換えキメラタンパク質を保有するベクターを用いて形質転換し、それから口腔、特に口腔粘膜に定着させるのに使用することができる。口腔粘膜に定着すると、組換えタンパク質の発現が粘膜関連リンパ系組織を刺激し、中和抗体が産生される。この実施形態をさらに説明するために、当該技術分野で既知の分子生物学的技法を用いて、本発明のキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を、エピトープを発現させるが、ワクシニアウイルスベクターの成長又は複製に悪影響を与えない部位でワクシニアウイルスのゲノムDNAに挿入することができる。得られた組換えウイルスをワクチン製剤における免疫原として使用することができる。例えば免疫原として使用する前に当該技術分野で既知の化学的手段により、発現される免疫原の免疫原性に実質的に影響することなく組換えウイルスを不活性化すること以外は同じ方法を、不活性化組換えウイルスワクチン製剤を構築するのに用いることができる。不活性化組換えワクチンはワクチン抗原に対する免疫学的応答を高めるために好適なアジュバントと共に配合することができる。
【0085】
本発明は、ワクチン製剤としての直接的な本発明のキメラタンパク質又は融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子の使用も提供する。1つ又は複数の調節要素と操作可能に結び付いたキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を直接導入し、ポルフィロモナス・ジンジバリスの病原性株に対して個体にワクチン接種することができる(「遺伝子直接導入(direct gene transfer)」)。血管内皮細胞のようなワクチン接種個体の細胞及び主要器官の組織による遺伝物質の発現をもたらすワクチン接種個体への遺伝子直接導入が、発現プラスミド:カチオン性リポソーム複合体の静脈注射のような当該技術分野における技法により実証された[Zhu et al., 1993, Science 261 :209-211]。ベクターDNAを標的細胞へと送達する他の効果的な方法が当該技術分野で既知である。一例として、ウイルス遺伝子を含有する精製組換えプラスミドDNAは、防御免疫応答を誘導するワクチンを(非経口で、粘膜から、又は遺伝子銃免疫付与により)接種するのに使用されている[Fynan et al. 1993, Proc Natl Acad Sci USA 90:11478-11482]。別の例として、個体から取り出された細胞は、当該技術分野で既知の標準的な手法により、トランスフェクト又は電気穿孔することができ、これにより標的細胞内に組換えベクターDNAが導入される。そのため、組換えベクターDNAを含有する細胞はベクターで発現した選択マーカーの使用のような当該技術分野で既知の方法を用いるために選択することができ、それから組換えタンパク質を発現させるために選択された細胞を個体に再導入してもよい。
【0086】
この態様において本発明はさらに、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の罹患率又は重症度を抑える又は低減する方法であって、上記のような核酸分子、上記のようなベクター、又は上記のような原核細胞若しくは真核細胞を該被験体に投与することを含む、方法を提供する。
【0087】
他の実施形態において、上記のようなキメラタンパク質若しくは融合タンパク質又は抗体を含む医薬組成物が提供される。該組成物はポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の治療のために希釈剤、賦形剤、又は担体又は化学療法剤をさらに含んでいてもよく、経口投与に適合させることができる。本発明の組成物を、例えば温かいガム基剤中に撹拌することにより、又はガム基剤(その例はジェルトン、ゴムラテックス、ビニライト樹脂等である)の外表面を望ましくは従来の可塑剤若しくは軟化剤、グルコース、ソルビトール等の糖若しくは他の甘味料でコーティングすることにより、ロゼンジ又はチューイングガム又は他の製品に組み込むことができる。
【0088】
上述の医薬組成物を含有する本発明の経口組成物を、歯磨きペースト、歯磨き粉及び歯磨き液を含む歯磨き剤、洗口液、トローチ、チューイングガム、歯科用ペースト、歯肉マッサージクリーム、うがい錠剤、乳製品及び他の食品等の口に適用可能な様々な形態で調製及び使用することができる。本発明による経口組成物は特定の経口組成物の種類及び形態に応じてさらなる既知の成分をさらに含んでいてもよい。
【0089】
本発明の或る特定の好ましい形態において、経口組成物は実質的に性質として液体のもの、例えば洗口液又はリンスであり得る。このような調製物において、ビヒクルは典型的に望ましくは以下に記載のような保湿剤を含む水−アルコール混合物である。一般的に、アルコールに対する水の重量比は約1:1〜約20:1の範囲である。この種の調製物における水−アルコール混合物の総量は典型的に調製物の約70重量%〜約99.9重量%の範囲である。アルコールは典型的にはエタノール又はイソプロパノールである。エタノールが好ましい。
【0090】
本発明のこのような液体及び他の調製物のpHは概して約5〜約9、典型的には約5.0〜7.0の範囲である。pHを酸(例えばクエン酸又は安息香酸)若しくは塩基(例えば水酸化ナトリウム)で制御することができるか、又は(例えばクエン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等を用いて)緩衝させることができる。
【0091】
本発明の他の望ましい形態において、医薬組成物は実質的に性質として固体又はペースト状のもの、例えば歯磨き粉、歯垢検出剤(dental tablet)又は歯磨きペースト(歯科用クリーム)又はジェル歯磨き剤であり得る。このような固体又はペースト状の経口調製物のビヒクルは一般的に歯科的に許容される研磨材料を含有する。
【0092】
歯磨きペーストにおいて、液体ビヒクルは典型的に調製物の約10重量%〜約80重量%の範囲の量で水及び保湿剤を含み得る。好適な保湿剤/担体としてグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール及びポリプロピレングリコールが例示される。水、グリセリン及びソルビトールの液体混合物も有益である。屈折率が考慮すべき重要なものである透明なジェルにおいて、約2.5%〜30%(w/w)の水、0%〜約70%(w/w)のグリセリン、及び約20%〜80%(w/w)のソルビトールを用いるのが好ましい。
【0093】
歯磨きペースト、クリーム及びジェルは典型的に、約0.1%〜約10%(w/w)、好ましくは約0.5%〜約5%(w/w)の割合で天然又は合成の増粘剤又はゲル化剤を含有する。好適な増粘剤は合成ヘクトライト、例えばLaporte Industries Limitedから市販されているLaponite(例えばCP、SP 2002、D)として利用可能な合成コロイドマグネシウムアルカリ金属シリケート複合体粘土である。Laponite Dはおよそ58.00重量% SiO、25.40重量% MgO、3.05重量% NaO、0.98重量% LiO、並びに幾らかの水及び微量金属である。その真の比重は2.53であり、湿度8%で1.0g/mlの見掛けのかさ密度を有する。
【0094】
他の好適な増粘剤には、アイリッシュモス、イオタカラギーナン、トラガカントゴム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(例えばNatrosolとして利用可能)、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び微砕Syloid(例えば244)等のコロイドシリカが含まれる。可溶化剤には、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びヘキシレングリコール等の湿潤ポリオール、メチルセロソルブ及びエチルセロソルブ等のセロソルブ、オリーブ油、ヒマシ油及びワセリン等の直鎖に少なくとも約12個の炭素を含有する植物油及びワックス、並びに酢酸アミル、酢酸エチル及び安息香酸ベンジル等のエステルも含まれ得る。
【0095】
従来通り経口調製物は通常、好適なラベル付きパッケージで販売又はそうでなければ流通していると理解される。このため、マウスリンスのボトルはそれを実質的にマウスリンス又は洗口液として記載し、その使用に関して説明しているラベルを有しており、歯磨きペースト、クリーム又はジェルは通常、それを実質的に歯磨きペースト、ジェル又は歯科クリームとして記載しているラベルを有する、押し出しチューブ(典型的にはアルミニウム、裏打ちされた鉛、若しくはプラスチック製の)、又は内容物を秤量する他の搾り出し式ディスペンサー、ポンプ式ディスペンサー若しくは加圧式ディスペンサー中にある。
【0096】
予防作用の増大を達成するために、口腔全体への活性剤の徹底的かつ完全な分散を達成するのを助けるために、及び本組成物をより化粧品として許容可能にするために有機界面活性剤を本発明の組成物に使用してもよい。有機界面活性材料は自然状態でアニオン性、非イオン性又は両性であるのが好ましく、活性剤と相互作用しないのが好ましい。組成物に洗浄性及び発泡性を与える洗浄材料を界面活性剤として利用するのが好ましい。アニオン性界面活性剤の好適な例は高級脂肪酸モノ硫酸モノグリセリドの水溶性塩、例えば硬化ヤシ油脂肪酸のモノ硫酸モノグリセリドのナトリウム塩、高級アルキル硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウム、アルキルアリールスルホン酸塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、高級アルキルスルホ酢酸塩、スルホン酸1,2−ジヒドロキシプロパンの高級脂肪酸エステル、及び低級脂肪族アミノカルボン酸化合物の実質的に飽和した高級脂肪族アシルアミド、例えば脂肪酸、アルキル又はアシルラジカルに12個〜16個の炭素を有するもの等である。最後に言及されたアミドの例は、N−ラウロイルサルコシン、並びにセッケン又は同様の高級脂肪酸材料を実質的に含まないN−ラウロイルサルコシン、N−ミリストイルサルコシン又はN−パルミトイルサルコシンのナトリウム塩、カリウム塩及びエタノールアミン塩である。使用に好適な水溶性の非イオン性界面活性剤の例は、エチレンオキシドと疎水性の長鎖(例えば約12個〜20個の炭素原子の脂肪族鎖)を有しそれと反応性を有する様々な反応性水素含有化合物との縮合生成物であり、該縮合生成物(「エトキサマー(ethoxamers)」)は親水性ポリオキシエチレン部分を含有し、例えばポリ(エチレンオキシド)と脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミド、多価アルコール(例えばモノステアリン酸ソルビタン)及びポリプロピレンオキシド(例えばプルロニック材料)との縮合生成物等である。
【0097】
界面活性剤は典型的に約0.1重量%〜5重量%の量で存在する。界面活性剤が本発明の活性剤の溶解を助け、それにより必要となる可溶化保湿剤の量を減らすことができることは注目に値する。
【0098】
増白剤、保存料、シリコーン、クロロフィル化合物及び/又は尿素、リン酸二アンモニウム等のアンモニア化材料、並びにそれらの混合物等の様々な他の材料を本発明の経口調製物に組み込んでもよい。これらのアジュバントは存在する場合、所望の特性及び特質に実質的に悪影響を及ぼすことのない量で調製物に組み込まれる。
【0099】
任意の好適な芳香材料又は甘味材料を利用してもよい。好適な芳香成分の例は芳香油、例えばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、サッサフラス、チョウジ、セージ、ユーカリ、マジョラム、シナモン、レモン及びオレンジの油、並びにサリチル酸メチルである。好適な甘味剤には、スクロース、ラクトース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、ペリラルチン、AMP(アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル)、サッカリン等が含まれる。好適には芳香剤及び甘味剤はそれぞれ又は共に、調製物の約0.1%〜5%以上(more)含み得る。
【0100】
経口使用を目的とする組成物を医薬組成物の製造に関して当該技術分野で既知の任意の方法に従って調製することができ、このような組成物は薬学的に有効な(elegant)口当たりのよい調製物を提供するために、甘味剤、芳香剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される作用物質を1つ又は複数含有してもよい。錠剤は錠剤の製造に好適な非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は例えば不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えばコーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン又はアカシア、並びに平滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤はコーティングされていなくてもよく、又は錠剤を胃腸管又は歯周ポケットでの崩壊及び吸収を遅らせ、それによりより長期にわたり作用が持続するように既知の技法でコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の遅延材料を利用してもよい。
【0101】
経口使用のための製剤を硬ゼラチンカプセルとして(その中で活性成分は不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリンと混合される)、又は軟ゼラチンカプセルとして(その中で活性成分は水又は油媒体、例えば落花生油、液体パラフィン若しくはオリーブ油と混合される)提示してもよい。
【0102】
水性懸濁液は水性懸濁液の製造に好適な賦形剤と混合された活性材料を含有する。このような賦形剤は懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムである。分散剤又は湿潤剤は天然のホスファチド、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。
【0103】
水性懸濁液は1つ又は複数の保存料又は抗菌剤、例えばベンゾエート、例えばエチルベンゾエート又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエート(別の例はグルコン酸クロルヘキシジンである)、1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の芳香剤、及び1つ又は複数の甘味剤、例えばスクロース又はサッカリンを含有していてもよい。
【0104】
油性懸濁液を、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油、又は液体パラフィン等の鉱油中に活性成分を懸濁することにより配合してもよい。油性懸濁液は増粘剤、例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコールを含有していてもよい。上記で記載されるような甘味剤、及び芳香剤を口当たりのよい経口調製物を提供するために添加してもよい。これらの組成物をアスコルビン酸等の抗酸化剤の添加により保存してもよい。
【0105】
さらなる態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患を診断又はモニタリングする方法であって、前記被験体由来の生体試料において抗ポルフィロモナス・ジンジバリス抗体を検出するための上記のようなキメラタンパク質又は融合タンパク質の使用を含む、方法を提供する。
【0106】
さらなる別の態様において本発明は、被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患を診断又はモニタリングする方法であって、前記被験体由来の生体試料においてポルフィロモナス・ジンジバリスの存在を検出するための上記のような抗体の使用を含む、方法を提供する。
【0107】
さらに別の態様において本発明は、配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するペプチドを提供する。一実施形態では、ペプチドは配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つと相同的である配列を有する。ペプチドは5〜40のアミノ酸長を有し得る。
【0108】
さらに別の態様において本発明は、配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチドをコードする核酸を提供する。
【0109】
さらに別の態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質の製造のための配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチド、又は配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチドをコードする核酸の使用を提供する。
【0110】
さらに別の態様において本発明は、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するための配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチド、又は配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を有するペプチドをコードする核酸の使用を提供する。一実施形態では、前記ペプチドを
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む第2のペプチドと同時に又は連続して投与する。
【0111】
【表3−1】

【0112】
【表3−2】

【0113】
【表3−3】

【0114】
【表3−4】

【0115】
【表4−1】

【0116】
【表4−2】

【0117】
【表5−1】

【0118】
【表5−2】

【0119】
【表5−3】

【0120】
【表5−4】

【0121】
【表5−5】

【0122】
【表6−1】

【0123】
【表6−2】

【0124】
【表6−3】

【0125】
本発明はさらに以下の実施例により説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく例示として記載される。
【実施例】
【0126】
実施例1
方法及び材料
細菌株及び成長条件
ポルフィロモナス・ジンジバリスW50の凍結乾燥培養物を5μg/mlのへミン、0.5μg/mlのシステインを添加した溶解ウマ血液寒天プレート(HB寒天、10回未満の継代)上で37℃で嫌気的に成長させた。3〜4日後、コロニーを用いて、5μg/mlのへミン、0.5μg/mlのシステインを含有するブレインハートインフュージョン培地に接種した(1)。バッチ培養物をMK3嫌気性ワークステーション(Don Whitley Scientific Ltd., Adelaide, Australia)において嫌気的に成長させた。細胞を遠心分離(7500g、30分、4℃)により指数成長期中に回収し、嫌気性ワークステーションにおいてPG緩衝液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM CaCl及び5mM システイン−HCl、pH8.0)を用いて2回洗浄した。バッチ培養物の成長を分光光度計(モデル295E、Perkin-Elmer)を使用して650nmでモニタリングした。培養物の純度をグラム染色、顕微鏡検査により、及びSlots(2)による様々な生化学試験を使用することにより定期的に確認した。
付着因子配列及びKgpプロテイナーゼ配列をN末端に付加した付着因子配列を含有するpET28構築物の構築
活性部位(AS)のペプチド及びキメラペプチドを表すKgp残基、並びにKgpA1付着因子(A1)ドメインを、pET発現ベクター(Novagen)を使用してhexa−Hisタグを有する組換え(r)タンパク質として大腸菌で過剰発現させた。発現したrタンパク質はrKAS2及びrKLA1であり、rキメラタンパク質はrKAS2−KLA1、rKAS1−KsA1及びrKAS4−KAS3−KAS5−KAS6−KLA1(マルチKAS−KLA1とも称される)であった。様々なA1ドメイン及びASドメインを表すアミノ酸配列を表1及び表2に記載する。
【0127】
kgp遺伝子の様々なKASドメイン及びKA1ドメインを、表4に列挙されるプライマー、Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen)及びPC−960サーマルサイクラー(Corbett Research Technologies)を使用して、それぞれpNS1(pUC18における3.5kbのBamHI lys断片)又はポルフィロモナス・ジンジバリスのゲノムDNAから増幅した。KAS2−FORとKAS2−REVとのプライマー対及びKLA1−FORとKLA1−REVとのプライマー対を使用し、以下の反応条件を用いてそれぞれKAS2をコードするPCR断片及びKLA1をコードするPCR断片を生成した:94℃、3分、その後94℃、45秒(変性)、62℃、40秒(アニーリング)及び72℃、20秒(伸長)を28サイクル、その後最終サイクルとして72℃、5分。
【0128】
KAS2−KLA1キメラPCR産物を、以下の通りに重複伸長(overlap extension)による遺伝子スプライシング(SOEing)により産生した:PCR産物を上記の条件を用いてKAS2−FORとKAS2−KLA1−キメラ−REVとのプライマー対及びKAS2−KLA1−キメラ−FORとKLA1−REVとのプライマー対を使用して産生した。それからPCR産物をアニーリングし、最終PCRをプライマーKAS2−FOR及びKLA1−REVを用いて行った(94℃、2分、その後94℃、30秒、50℃、30秒及び72℃、40秒を28サイクル、その後最終サイクルとして72℃、5分)。
【0129】
KAS1−KsA1 PCR産物の調製のために、2回の連続したPCRを、連続してそれぞれKAS1−KsA1−FOR1プライマー及びKAS1−KsA1−FOR2プライマーと共にKAS1−KsA1−REVプライマーを使用して行い(反応条件 94℃で2分、その後94℃、15秒、63℃、30秒及び72℃、2分を35サイクル)、KAS1−KsA1 PCR産物を産生した。KAS1−KsA1−FOR1プライマー及びKAS1−KsA1−FOR2プライマーはこれまでのPCR産物の5’側に重複する3’側の伸長を含有している。
【0130】
マルチKAS−KLA1 PCR断片の調製のために、4回の連続したPCRを、連続してそれぞれマルチFOR1プライマー、マルチFOR2プライマー、マルチFOR3プライマー及びマルチFOR4プライマーと共にマルチREVプライマーを使用して行い(反応条件は95℃、2分、その後95℃、20秒、68℃、1.5分を35サイクルであった)、マルチKAS−KLA1 PCR産物を産生した。それぞれのマルチFORプライマーはこれまでのPCR産物の5’側に重複する3’側の伸長を含有している。
【0131】
KAS2、KLA1、KAS2−KLA1、KAS1−KsA1及びマルチKAS−KLA1をコードするPCR断片は全てPCR精製カラム(Qiagen)を使用して精製し、TAクローニングベクター、pGem−T Easy(Promega)にライゲートして、製造業者のプロトコルに従って大腸菌JM109へと形質転換した。精製組換えpGemT−Easy構築物をNcoI及びXhoIを用いて消化し、NcoI/XhoI消化したpET28b(Novagen)に一方向にクローニングして、非発現宿主、大腸菌JM109[DH5α]へと形質転換した。組換えpET28構築物を精製し、大腸菌発現宿主、BL21(DE3)[HMS174(DE3)](Novagen)へと形質転換して、製造業者の取扱説明書に従い50μgのカナマイシンを含有するLB上で選択した。それぞれの挿入物の完全性をDNA配列分析により確認した。
【0132】
オリゴヌクレオチドプライマー(表4)は必要に応じて制限酵素部位、終止コドン及びhexa−Hisタグを組み込むように設計した。rKAS2、rKLA1及びrKAS2−KLA1に使用するプライマーはrタンパク質において外部の(extraneous)コーディング配列がわずか3つのアミノ酸及びhexa−hisタグに包含されるのを制限するように設計した。rKAS1及びrKLA1はN末端及びC末端の両方にhexa−hisタグを有するrKAS2−KLA1と直接比較できるようにそれぞれN末端及びC末端にhexa−Hisタグを含有するように設計した。rKAS1−KsA1及びマルチKAS−KLA1では、HisタグはC末端に見られる。
【0133】
【表7−1】

【0134】
【表7−2】

【0135】
組換えタンパク質の発現及び精製
組換えタンパク質を、イソプロピルβ−D−チオガラクトシダーゼ(IPTG)による誘導によりpET28::KLA1(KAS2、KAS2−LA1、KAS1−SA1、マルチKAS−KLA1)構築物から発現した。組換えタンパク質は全て6−Hisタグ融合タンパク質として産生し、変性条件下でNI−NTA精製システム(Invitrogen)を用いて精製した。簡潔に述べると、大腸菌(DE3)単一コロニー形質転換体を使用して、旋回振盪器上で37℃で一晩50μg/mlのカナマイシンを含有するルリア・ベルターニ(LB)ブロス20mLに接種した。それからこの接種材料を使用して、50μg/mlのカナマイシンを含有するLB 1Lに接種した。この培養物のOD600を0.5〜0.7(対数成長中期(mid-log phase))に達せしめた後、200rpmで振盪しながら37℃で2時間、0.1mMのイソプロピルIPTGを用いてタンパク質発現を誘導した。細胞を回収し(7500g)、変性結合緩衝液(8M 尿素、20mM リン酸ナトリウム(pH8.0)及び500mM NaCl)中で再懸濁して、3に設定しマイクロチップを用いてBranson Sonifer 250細胞破壊器(Branson Ultronics Corporation, Danbury, CT)を使用して、30秒間隔で3回×15秒のバーストのために氷上で超音波処理した後、4℃で30分間39000gで遠心分離した。事前に平衡化したNi−NTAアガロースカラムに充填した後、変性洗浄緩衝液(8M 尿素、20mM リン酸ナトリウム(pH6.0)及び500mM NaCl)を用いて洗浄し、それにより非結合タンパク質を溶出させることにより、組換えタンパク質を上清から精製した。その後カラムを10容量の結合緩衝液Bを用いて洗浄し、組換えタンパク質を変性溶出緩衝液(8M 尿素、20mM リン酸ナトリウム(pH6.0)、500mM NaCl及び0.5M イミダゾール)を用いて溶出させた。精製タンパク質を2M 尿素−PBSに対して透析し、−80℃で保存した。
【0136】
組換えタンパク質試料をSDS−PAGEにより分析し、それらの分子量をProtParamオンライン(http://au.expasy.org/tools/protparam.html)を用いて決定した。全ての試料のタンパク質濃度をスタンダードとしてBSAを使用してBio-Rad製のタンパク質アッセイにより決定した。
免疫付与及びマウス歯周炎モデル
マウス歯周炎実験をこれまでに記載された(3)ように行い、メルボルン大学の動物実験に関する倫理委員会(University of Melbourne Ethics Committee for Animal Experimentation)の認可を受けた。マイクロアイソレーター(microisolators)に収容した6〜8週齢のBALB/cマウス(1群当たり12匹のマウス)を組換えタンパク質又はRgpA−Kgp複合体、ポルフィロモナス・ジンジバリス株W50のホルマリンで死滅させた2×10個の細胞又はPBSのうちのいずれか1つを50μg用いて皮下で(皮下で100μL)免疫付与し、それぞれの抗原を不完全フロイントアジュバント(IFA)中で乳化した。30日後に、マウスを抗原(皮下注射、IFA中で乳化した)を用いて追加免疫した(boosted)後、12日後に球後神経叢(retrobulbar plexus)から採血した。2回目の免疫付与の4日後、マウスに1mg/mlのカナマイシン(Sigma-Aldrich, New South Wales, Australia)の脱イオン水溶液を自由に7日間与えた。抗生物質による治療の3日後(採血の2日後)、2%(wt/vol)カルボキシメチルセルロース(CMC;Sigma-Aldrich, New South Wales, Australia)を含有するPG緩衝液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、5mM CaCl、及び5mM システイン−HCl、pH8.0)中で1×1010個の生存ポルフィロモナス・ジンジバリスW50(25μl)を用いて2日に分けて4回マウスに経口接種し、対照群を2%(wt/vol)CMCだけを含有するPG緩衝液を用いて偽感染させた。接種材料を嫌気性チャンバで調製した後、すぐに上顎臼歯の歯肉縁に適用した。2週間後、マウスに2%(wt/vol)CMCを含有するPG緩衝液中で1×1010個の細胞の生存ポルフィロモナス・ジンジバリスW50(25μl)をさらに4用量(2日に分けて)摂取させた。それぞれの接種材料における生存細菌の数を血液寒天上で数える(enumeration)ことにより検証した。マウスに軟らかい粉末状の食餌(Barastock, Australia)を与え、寝床(bedding)へと近づくのを防ぐために高くした金網底を備えたケージに収容した。最後の投薬の4週間後、マウスの球後神経叢から採血し、屠殺して、上顎を取り外し半分に切断して、半分(右側)を歯槽骨喪失の測定に使用し、残りの半分(左側)をリアルタイムPCRに使用した。
【0137】
上顎の右半分を脱イオン水で煮沸し(1分)、機械的に肉を剥がし(defleshed)、2%(wt/vol)水酸化カリウム中に浸漬した(16時間、25℃)。それから上顎の半分を洗浄し(脱イオン水で2回)、3%(wt/vol)過酸化水素中に浸漬した(6時間、25℃)。上顎の半分を洗浄した(脱イオン水で2回)後、それらを0.1%(wt/vol)メチレンブルー水溶液で染色し、上顎の半分それぞれの頬側のデジタル画像をOLYSIA BioReportソフトウェアバーション3.2(Olympus Australia Pty Ltd., New South Wales, Australia)を使用して解剖顕微鏡に取り付けられたOlympus製のDP12デジタルカメラを用いて撮影し、水平な骨喪失を評価した。水平な骨喪失は歯槽骨頂(ABC)に垂直な水平板で起こる喪失であり、これにより骨頂高の低減が起こる。上顎の半分をそれぞれ、それぞれの歯画像の臼歯の頬側及び舌側の歯尖が重なるように配列させ、それぞれの画像で測定結果を標準化できるようにフレーム単位でマイクロメートル尺度で画像を撮影した。それぞれの臼歯に関してセメントーエナメル境からABCまでの面積を、OLYSIA BioReportソフトウェアバージョン3.2画像化ソフトウェアを用いて測定した。骨喪失の測定結果を、ランダム化盲検(randomized and blinded)プロトコルを用いて、1人の検査官により2回求めた。
ELISAによるサブクラス抗体の決定
マウス血清のサブクラス抗体応答を決定するために、酵素結合免疫測定吸着アッセイ(ELISA)を、0.1%(vol/vol)Tween 20を含有する、5μg/mlのホルマリン溶液で死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(0.01M NaHPO、1.5mM KHPO、0.15M NaCl)(pH7.0)(PBST)を用いて三連で行い、平底ポリビニルマイクロタイタープレート(Dynatech Laboratories, McLean, VA)のウェルをコーティングした。コーティング溶液を除去した後、2%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBSTをウェルに加え、室温で1時間コーティングしていないプラスチックをブロッキングした。ウェルをPBSTで4回洗浄した後、0.5%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBST(SK−PBST)でのマウス血清の段階希釈液をそれぞれのウェルに加え、室温で16時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、マウスIgM、IgA、IgG1、IgG2a、IgG2b又はIgG3(Sigma, New South Wales, Australia)に対する2000倍希釈のヤギIgGをSK−PBSTに添加し、室温で2時間結合させた。プレートをPBSTで6回洗浄し、SK−PBST中での5000倍希釈のホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギ免疫グロブリン(Sigma, New South Wales, Australia)をそれぞれのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、結合抗体を100μlのABTS基質[0.005%(vol/vol)過酸化水素を含有する80mMのクエン酸(pH4.0)中での0.9mMの2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズ−チアゾリン−6)スルホン酸]をそれぞれのウェルに加えることにより検出した。415nmでの光学密度をマイクロプレートリーダー(Bio-Rad製のマイクロプレートリーダー、モデル450)を使用して測定した。
SDS−PAGEゲル電気泳動法及びウェスタンブロッティング
組換えタンパク質(10μg)を、XCell surelock Mini−Cell電気泳動システムを用いて分析した。組換えタンパク質を20μlの還元試料緩衝液(10%[wt/vol]SDS、0.05%[wt/vol]ブロモフェノールブルー、25%[vol/vol]グリセロール及び0.05%[vol/vol]2−メルカプトエタノール)中に混合した。pHを1.5MのTris−HClを用いて8.0に調整した後、溶液を100℃で5分間加熱した。組換えタンパク質(10μg/レーン)をNovex 12%(wt/vol)Tris−グリシンプレキャストミニゲル上に充填し、Novex電気泳動システム(Novex, San Diego, CA)を使用して30mA〜50mAの電流、及び125Vの電位差を用いて電気泳動を行った。0.25%(w/v)クマシーブルーR250を使用してタンパク質を可視化した。
Kgpプロテイナーゼ活性部位ペプチド(KAS−2)配列のエピトープ分析
Lys特異的プロテイナーゼ活性部位ペプチドKAS2に関する抗体結合部位(433〜468、配列番号28)を、Fmocケミストリに関する標準的な固相ペプチド合成プロトコルを用いて複数ピン(multipin)ペプチド合成システム(Chiron Technologies, Melbourne, Australia)でN末端にビオチン化した重複8残基ペプチド(1残基でオフセット、7残基で重複)を合成することにより決定した。0.1M PBS(pH7.4)中のビオチン化ペプチド(5μg/mL)をストレプトアビジン(strepavidin)コーティングプレートに4℃で一晩結合させた(Nunc, NSW Australia)。PBSTエピトープでウェルを4回洗浄した後、0.1%(v/v)Tween20を含有する0.1M PBS(pH7.4)中の1000倍希釈の1%(w/v)無脂脱脂粉乳(SK−PBST)でマウス血清を使用して、Chiron Technologiesの取扱説明書通りにELISAによりプレートに結合したペプチドのマッピングを行った。PBSTでウェルを6回洗浄した後、マウスIgGに対するヤギIgG(Sigma, New South Wales, Australia)の2000倍希釈液をSK−PBST中に添加し、室温で2時間結合させた。PBSTでプレートを6回洗浄し、SK−PBST中のホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギ免疫グロブリン(Sigma, New South Wales, Australia)の5000倍希釈液をそれぞれのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。PBSTでウェルを6回洗浄した後、結合抗体を100μlのABTS基質[0.005%(vol/vol)過酸化水素を含有する80mM クエン酸(pH4.0)中での0.9mM 2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズ−チアゾリン−6)スルホン酸]をそれぞれのウェルに加えることにより検出した。415nmでの光学密度をマイクロプレートリーダー(Bio-Rad製のマイクロプレートリーダー、モデル450)を使用して測定した。
【0138】
統計分析
一元配置分散分析(ANOVA)及びダネットT3検定(ウィンドウズ(登録商標)用SPSS、バージョン12)を用いて骨喪失データを統計的に分析した。SPSSソフトウェア(ウィンドウズ(登録商標)用SPSS、バージョン12)を使用するスチューデントt検定を用いてIgA、IgM及びIgGサブクラス抗体力価を統計的に分析した。
【0139】
実施例2
組換えタンパク質(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)の特性化及び精製
Kgp付着因子A1ドメイン断片及びキメラKgpプロテイナーゼ及びKgp付着因子A1ドメイン断片のポルフィロモナス・ジンジバリス感染に対して防御する能力を特性化するために、本発明者らは組換えタンパク質:−KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1を発現及び精製した。ニッケルキレートアフィニティクロマトグラフィを用いて、組換えタンパク質(KsA1及びKLA1)及び組換えキメラタンパク質(KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)を封入体から精製し、精製タンパク質をSDS−PAGEで分析した(図1)。それぞれの精製組換えタンパク質はKAS2−KLA1、KLA1、KsA1及びKAS1−KsA1に対応する分子量が40kDa、36kDa、31kDa及び32kDaである1つの主要タンパク質バンドからなっており、これらの分子量はProtParamを用いて算出されたHis−タグ組換えタンパク質の分子量に対応していた。組換えタンパク質の免疫原性を特性化するために、KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1を使用しマウスを免疫付与して、これらの血清を使用し、KAS2ペプチドコーティングプレート及びホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞コーティングプレートをプロービングした(図2)。組換えキメラタンパク質KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1抗血清は、KAS2特異的抗血清(KAS2−ジフテリアトキソイドコンジュゲート)と同様のレベルでKAS2ペプチド(図2A)及びホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞(図2B)を認識することが分かった。しかしながら、組換えタンパク質KLA1に対する抗血清はホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞を認識するだけであった(図2B)。
【0140】
実施例3
マウス歯周炎モデルにおけるポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の歯槽骨喪失に対する組換えタンパク質(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)による免疫付与の影響
組換えタンパク質KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50及びRgpA−Kgp複合体を使用して、Baker et al(4)による報告に基づき歯周骨喪失の修正マウスモデルを用いて、ポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の歯槽骨喪失に対して誘導される防御を決定及び比較した。組換えタンパク質KsA1、KLA1、KAS1−KsA1又はKAS2−KLA1、RgpA−Kgp複合体、又はホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50(FK−W50)細胞、又はPBSアジュバント単独のいずれかでマウスを免疫付与した後(0日及び30日)、生存ポルフィロモナス・ジンジバリスW50で経口でチャレンジした。BALB/cマウスがPBS免疫付与群と比較して有意に(p<0.001)低い骨喪失を示したので、全ての組換え抗原、RgpA−Kgp複合体及びFK−W50細胞による免疫付与がポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の歯槽骨喪失に対してこれらの動物を防御した(図3)。しかしながら、KAS2−KLA1免疫付与マウスは、KLA1(p<0.01);KsA1(p<0.001)、RgpA−Kgp複合体(p<0.001)、FK−W50細胞(p<0.001)で免疫付与したマウス、及び非チャレンジマウス(p<0.001)よりも骨喪失が有意に低かった。KAS2−KLA1免疫付与マウスとKAS1−KsA1免疫付与マウスとの間の骨喪失に有意差はなかった。さらに、KAS1−KsA1免疫付与マウスは非チャレンジマウス(p<0.01)及びRgpA−Kgp複合体免疫付与マウス(p<0.05)よりも有意に低い骨喪失を示したが、KsA1、KLA1及びFK−W50免疫付与マウスとは有意に異なってはいなかった。KsA1、KLA1、RgpA−Kgp複合体及びFK−W50免疫付与マウス間の骨喪失に有意差はなかった。
【0141】
実施例4
マウス歯周炎モデルにおける組換えタンパク質(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1及びKAS2−KLA1)による免疫付与により誘導された抗体サブクラス応答
生存ポルフィロモナス・ジンジバリス細胞による経口接種チャレンジの前後で、マウスを採血し、血清を遠心分離で回収した。図4はマウス歯周炎モデルにおけるそれぞれの免疫原(KsA1、KLA1、KAS1−KsA1又はKAS2−KLA1又はホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリス株W50(FK−W50)細胞)に関するホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞に対する抗体サブクラス反応性を示す。全ての防御免疫原がFK−W50に対する高いIgG抗体力価を誘導した。さらに、それぞれの防御免疫原が誘導した主要抗体サブクラスはIgG1であり、免疫反応性IgG2a、IgG2b及びIgG3 FK−W50特異的抗体は非常に弱く誘導された(図4)。経口接種前(図4A)及び経口接種後(図4B)の両方でそれぞれ免疫原によって誘導された主要抗体サブクラスはIgG1であった。
【0142】
実施例5
KAS2(433〜468)のエピトープマッピング
KAS2(433〜468)に関するビオチン化した重複8残基ペプチド(1残基でオフセット、7残基で重複)を合成し、ストレプトアビジンコーティングプレートをコーティングするのに使用した。それから、KAS1−KsA1、KAS2−KLA1及びKAS2−ジフテリアトキソイドコンジュゲートで免疫付与したマウス由来の抗血清を使用して抗体結合エピトープを同定した(図5)。バックグラウンドでの光学密度(415nm)の2倍の上昇は陽性抗体応答(閾値OD)と考えられた。該抗血清は配列番号28に由来する以下のペプチド配列を認識した。すなわちKAS1−KsA1はペプチド435〜442、436〜443、445〜452、446〜453及び447〜454を認識し(閾値OD=0.07、図5A)、KAS2−KLA1はペプチド435〜442、447〜454及び448〜455を認識した(閾値ID=0.07、図5A)。これにより、多くの最小エピトープ、すなわちペプチド436〜442(VSFANYT及びその変異型VGFANYT)、ペプチド447〜452(ETAWAD及びその変異型ETSWAD)、及びペプチド448〜453(TAWADP及びその変異型TSWADP)の認識が示唆されている。ペプチド436〜442のエピトープを含むペプチドには、GVSFANYT、GVGFANYT、VSFANYTA及びVGFANYTAが含まれる。ペプチド447〜452及び/又は448〜453のエピトープを含むペプチドにはSETAWAD、SETSWAD、ETAWADP、ETSWADP、TAWADPL及びTSWADPL、より具体的にはGSETAWAD、GSETSWAD、SETAWADP、SETSWADP、ETAWADPL、ETSWADPL、TAWADPLL及びTSWADPLLが含まれる。
【0143】
実施例6
タンパク質との結合に関するKASペプチド及びRASペプチドの合成
ペプチドを手動で又はCEM Microwaveペプチドシンセサイザーを使用して合成した。Fmocケミストリに関する標準的な固相ペプチド合成プロトコルを全体を通して使用した。Rink−リンカー由来AM−sure樹脂(AAPPTEC, KY, USA)を使用してペプチドをカルボキシアミド形態として構築した。4当量のFmoc−アミノ酸と6当量のDIPEAとを使用してHBTU/HOBt活性化によりカップリングが達成された。Fmoc基を1M HOBt/DMF中の20%ピペリジンにより取り除いた。
【0144】
KASペプチド又はRASペプチドを保有する樹脂をDMF中で膨潤させ、N末端のFmoc基を2%(v/v)ピペリジンを含有するDMF中の2%(v/v)DBUで取り除いた。それから5当量のSAMA−OPfp及び5当量のHOBtを使用してS−アセチルメルカプト酢酸(SAMA)基によりN末端アミノ基を誘導体化した。反応をトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBSA)試験によりモニタリングした。TNBSA試験が陰性に戻ったら、樹脂を洗浄した(5×DMF、3×DCM及び3×ジエチルエーテル)。それから樹脂を真空下で乾燥させた。樹脂支持体からのペプチドの切断を、ペプチドのアルギニン含有量に応じて2.5時間又は4時間、TFA:フェノール:TIPS:EDT:水(92:2:2:2:2)切断カクテルを使用して行った。切断後、樹脂を濾過により取り除き、濾液を窒素の蒸気下でおよそ1mLに濃縮した。ペプチド産物を冷エーテル中で析出させた後、遠心分離し、3回洗浄した。ペプチド析出物を0.1%(v/v)TFAを含有する水5mL〜10mLに溶解し、不溶性残基を遠心分離により取り除いた。ペプチドをRP−HPLCにより精製した。
【0145】
多くの種々の化学的部分を、タンパク質との結合に関するペプチドを誘導体化させるのに使用することができ、これらは反応基、例えばハロゲン化物(ブロモ、クロロ及びヨード)、マレイミド、スクシンイミジル、ヒドラジニル、オキシム、チオールを誘導し、その後その天然システイン残基を介して誘導体化したペプチドとKgpA1等のタンパク質とを結合させるか、又はペプチドを相補的な反応基で誘導体化させ、それにより化学的ライゲーションを進行させ、ペプチド−タンパク質コンジュゲートを形成するのに使用される。
SAMA−ペプチドとKA1との結合
10mg/mLの組換えKA1又はRgpA−Kgp複合体の他の付着因子ドメインを含有するリン酸緩衝生理食塩水溶液(0.1M リン酸ナトリウム、0.9% NaCl、pH7.4)に、0.1mLの1%(w/v)のm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のDMF溶液を添加した。30分後、反応していないMBSを取り除き、MBS修飾KA1を、結合緩衝液(0.1M リン酸ナトリウム、5mM EDTA、pH6.0)中で平衡化したPD10カラム(Pharmacia, NSW, Australia)を使用してゲル濾過により回収した。精製SAMA−ペプチド(1.3μモル)を、0.5M Tris、2mM EDTA(pH6.0)を含有する200μLの6M グアニジンHCl中に溶解し、800μL MilliQ水を用いて希釈し、MilliQ水中に溶解した2M NHOH(40等量)25μLを添加することによりin situで脱保護した。回収したMBS−KA1を脱保護したSAMA−ペプチドとすぐに反応させ、室温で1時間撹拌した。PBS(pH7.4)中で平衡化したPD10カラムを使用してゲル濾過によりペプチド−KA1コンジュゲートを反応していないペプチドから分離し凍結乾燥した。Ellmans試験を使用して反応をモニタリングした。
【0146】
実施例7
抗体の調製
タンパク質を用いて皮下で免疫付与することにより、組換えタンパク質に対するポリクローナル抗血清をマウスで産生させる。マウスを不完全フロイントアジュバント中の25μgのタンパク質を用いて0日目に、及び不完全フロイントアジュバント中の25μgのタンパク質を用いて30日目に免疫付与する。免疫付与は標準的な手法を用いて行う。タンパク質に対して高い力価を有するポリクローナル抗血清が得られる。所望に応じて標準的な手法を用いて、組換えタンパク質に特異的に指向性を有するモノクローナル抗体が得られる。
【0147】
実施例8
抗体の生成のための免疫付与
6〜8週齢のBALB/cマウス又はCD1(スイス非近交系マウス)(1群当たり10匹のマウス)を、KAS2−LA1キメラ及び不完全フロイントアジュバント(IFA)中で乳化させた抗原のいずれかを50μg用いて皮下で(皮下で100μL)免疫付与した。30日後、抗原を用いて(皮下注射、IFA中で乳化)マウスを追加免疫し、12日後、マウスを屠殺し、心臓を採血して、血清を回収した。
ELISAによるサブクラス抗体の決定
マウス血清のサブクラス抗体応答を決定するために、酵素結合免疫測定吸着アッセイ(ELISA)を、0.1%(vol/vol)Tween20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.01M NaHPO、1.5mM KHPO、0.15M NaCl)(pH7.0)(PBST)中のKAS2−LA1キメラ又はホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50又はRgpA−Kgp複合体の5μg/ml溶液を用いて三連で行い、平底ポリビニルマイクロタイタープレート(Dynatech Laboratories, McLean, VA)のウェルをコーティングした。コーティング溶液を取り除いた後、2%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBSTをウェルに加え、コーティングしていないプラスチックを室温で1時間ブロッキングした。ウェルをPBSTで4回洗浄した後、0.5%(wt/vol)脱脂粉乳を含有するPBST(SK−PBST)でのマウス血清の段階希釈液をそれぞれのウェルに加え、室温で16時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、マウスIgM、IgA、IgG1、IgG2a、IgG2b又はIgG3(Sigma, New South Wales, Australia)に対するヤギIgGの2000倍希釈液をSK−PBSTに添加し、室温で2時間結合させた。プレートをPBSTで6回洗浄し、SK−PBST中でのホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗ヤギ免疫グロブリン(Sigma, New South Wales, Australia)の5000倍希釈液をそれぞれのウェルに加え、室温で1時間インキュベートした。ウェルをPBSTで6回洗浄した後、結合抗体を100μlのABTS基質[0.005%(vol/vol)過酸化水素を含有する80mMのクエン酸(pH4.0)中での0.9mMの2,2'−アジノ−ビス(3−エチルベンズ−チアゾリン−6)スルホン酸]をそれぞれのウェルに加えることにより検出した。415nmでの光学密度をマイクロプレートリーダー(Bio-Rad製のマイクロプレートリーダー、モデル450)を使用して測定した。
非近交系(CD1、スイス)マウスにおける組換えタンパク質KAS2−KLA1による免疫付与により誘導した抗体サブクラス応答
CD1(スイス)マウスをKAS2−LA1キメラで免疫付与し、採血して、血清を遠心分離により回収した。図6はKAS2−LA1キメラ、ホルマリンで死滅させたポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞及びRgpA−Kgp複合体に対する抗体サブクラス反応性を示す。KAS2−LA1キメラは、KAS2−LA1キメラを認識し、FKポルフィロモナス・ジンジバリスW50細胞及びRgpA−Kgp複合体と強く交差反応する主要なIgG1抗体応答と共に強いIgG抗体を誘導した(図6)。さらに、KAS2−LA1キメラは免疫反応性IgG2a、IgG2b及びIgG3抗原特異的抗体の弱い誘導しかもたらさなかった(図6)。
【0148】
実施例9
Kgp構造モデルの開発、及び活性部位表面に接近可能な配列の同定
本発明者らの研究により、Kgpプロテイナーゼ活性部位ペプチドが高度に免疫原性であり、ポルフィロモナス・ジンジバリス誘導性の骨喪失に対する高レベルの防御を誘導することが示されている。ワクチン候補としてさらなるプロテイナーゼ活性部位ペプチドを同定するために、Kgpの触媒ドメインのモデルを、Sybyl7.3内のOrchestrarスイートのプログラムを用いて開発した(図7)。該モデルはポルフィロモナス・ジンジバリス由来のRgpBプロテアーゼのPDB構造1crvに基づいており、タンパク質は23.58%のペアワイズ(pairwise)同一性を有し、Zスコアは25.09である(高信頼度モデル)。Meta−PPispタンパク質相互作用サーバーがKgpに対する2つのタンパク質−タンパク質相互作用表面:基質結合表面(RgpB等の場合)、及びKgpに特有の第2の表面を予測している。RgpBモデルとKgpモデルとの主な違いは第2の相互作用表面を構成するループと、第2の相互作用表面内にあるKgpではモデリングすることができなかった19残基ギャップ(Val526〜Phe545)とである。図7はKgpのプロテイナーゼ活性部位の周りに表面に接近可能な配列を示すより肥厚なリボン構造(ribbons)を有するKgpモデルを示し、表面に接近可能な配列はAsp388〜Gln394、Leu421〜Ala423、Ala451を有するAla443〜Glu447、Asn510〜Trp513、及びTyr580を有するIle570〜Gly577であることが分かった。モデル(図6)から、KAS2(A)の他に、他の3つの配列KAS4(Asp388〜Val395)(B)、KAS5(Asn510〜Asp516)(C)及びKAS6(Ile570〜Tyr580)(D)が優勢であり、ワクチン標的となるのに十分な長さであることが明らかである。このため、配列内にこれらのペプチドをそれぞれ有する組換えキメラタンパク質を産生し、KLA1のN末端で連結し、マルチKAS−KLA1を産生することができ、この組換えキメラタンパク質を、免疫応答を誘導し、それによりポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患又は状態に対して防御するのに使用することができる。
【0149】
実施例10
触媒部位に隣接する免疫原性領域を同定するためのArg−X−プロテイナーゼをモデリングするプロセス
Arg−Xプロテイナーゼの三次元構造を、Eichinger A, Beisel HG, Jacob U, Huber R, Medrano FJ, Banbula A, Potempa J, Travis J, Bode W. Crystalstructure of gingipain R: an Arg-specific bacterial cysteine proteinasewith a caspase-like fold. EMBO J. 1999 Oct 15;18(20):5453-62の方法に従って決定した。
【0150】
実施例11
以下は抗体を含有する歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
グリセロール 20.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ナトリウムラウロイルサルコニセート(sarconisate) 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
特異的抗体を含有するヤギ血清 0.2
水 残り(balance)
【0151】
実施例12
以下は歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ナトリウムラウロイルサルコニセート 0.5
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
特異的抗体を含有するウシ血清 0.2
水 残り
【0152】
実施例13
以下は歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
リン酸二カルシウム二水和物 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 10.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0
ラウロイルジエタノールアミド 1.0
モノラウリン酸スクロース 2.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
デキストラナーゼ 0.01
特異的抗体を含有する牛乳Ig 0.1
水 残り
【0153】
実施例14
以下は歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ソルビトール 22.0
アイリッシュモス 1.0
水酸化ナトリウム(50%) 1.0
Gantrez 19.0
水(脱イオン水) 2.69
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
サッカリンナトリウム 0.3
ピロホスフェート 2.0
アルミナ水和物 48.0
香料オイル 0.95
マウスモノクローナル抗体 0.3
ラウリル硫酸ナトリウム 2.00
【0154】
実施例15
以下は液体歯磨きペースト製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ポリアクリル酸ナトリウム 50.0
ソルビトール 10.0
グリセロール 20.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
エタノール 3.0
特異的抗体を含有するウマIg 0.2
リノール酸 0.05
水 残り
【0155】
実施例16
以下は洗口液製剤の一例である。
成分 %(w/w)
エタノール 20.0
香料 1.0
サッカリンナトリウム 0.1
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.3
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.3
特異的抗体を含有するウサギIg 0.2
水 残り
【0156】
実施例17
以下は洗口液製剤の一例である。
成分 %(w/w)
Gantrez S−97 2.5
グリセリン 10.0
香料オイル 0.4
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.05
グルコン酸クロルヘキシジン 0.01
ラウロイルジエタノールアミド 0.2
マウスモノクローナル抗体 0.3
水 残り
【0157】
実施例18
以下はロゼンジ製剤の一例である。
成分 %(w/w)
糖 75〜80
トウモロコシシロップ 1〜20
香料オイル 1〜2
NaF 0.01〜0.05
マウスモノクローナル抗体 0.3
ステアリン酸Mg 1〜5
水 残り
【0158】
実施例19
以下は歯肉マッサージクリーム製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ホワイトワセリン 8.0
プロピレングリコール 4.0
ステアリルアルコール 8.0
ポリエチレングリコール4000 25.0
ポリエチレングリコール400 37.0
モノステアリン酸スクロース 0.5
グルコン酸クロルヘキシジン(Chlorohexidine gluconate)0.1
マウスモノクローナル抗体 0.3
水 残り
【0159】
実施例20
以下はチューイングガム製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ガム基剤 30.0
炭酸カルシウム 2.0
結晶性ソルビトール 53.0
グリセリン 0.5
香料オイル 0.1
マウスモノクローナル抗体 0.3
水 残り
【0160】
実施例21
以下は医薬製剤の一例である。
成分 %(w/w)
ヒト化特異的モノクローナル抗体 10
滅菌リン酸緩衝生理食塩水 90
【0161】
実施例22
以下は歯周ジェル製剤の一例である。
成分 %(w/w)
Pluronic F127 20.0
ステアリルアルコール 8.0
特異的抗体 3.0
コロイド二酸化ケイ素(Aerosil 200) 1.0
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1
水 残り
本発明は本明細書でより詳細に説明されているが、実施例は例示目的のものにすぎないことを理解されたい。分子生物学の当業者にとって明らかである本発明の実施形態の他の変更形態、歯科診断、及び関連のディシプリンが本発明の範囲内であることが意図される。
【0162】
【表8】

【配列表フリーテキスト】
【0163】
配列番号1:XはGもしくはSになり得る
XはSもしくはAになり得る
XはSもしくはLになり得る
XはLもしくはVになり得る
XはAもしくはTになり得る
XはTもしくはSになり得る
XはVもしくはLになり得る
XはDもしくはNになり得る
配列番号2:XはVもしくはAになり得る
配列番号27:XはGもしくはSになり得る
XはSもしくはAになり得る
XはSもしくはLになり得る
配列番号28:XはGもしくはSになり得る
XはSもしくはAになり得る
XはSもしくはLになり得る
XはLもしくはVになり得る
XはAもしくはTになり得る
XはTもしくはSになり得る
XはVもしくはLになり得る
XはDもしくはNになり得る
配列番号29:XはGもしくはSになり得る
XはSもしくはAになり得る
XはSもしくはLになり得る
XはLもしくはVになり得る
配列番号31:XはVもしくはAになり得る
配列番号32:XはVもしくはAになり得る
配列番号33:XはVもしくはAになり得る
配列番号64:XはSもしくはYになり得る
XはYもしくはSになり得る
XはPもしくはSになり得る
XはKもしくはQになり得る
XはIもしくはVになり得る
配列番号66:XはVもしくはIになり得る
配列番号68:XはNもしくはDになり得る
XはSもしくはYになり得る
XはSもしくはPになり得る

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質が直接又はリンカーを介して第2のペプチドと連結する第1のペプチドを含み、
(A)前記第1のペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含み、
(B)前記第2のペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子(adhesin)ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項2】
前記第1のペプチドが配列番号3又は配列番号4で示される配列を含む、請求項1に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項3】
前記第1のペプチドが配列番号5〜配列番号8のうちの1つで示される配列を含む、請求項1又は2に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項4】
前記第1のペプチドが配列番号9〜配列番号12のうちの1つで示される配列を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項5】
前記第1のペプチドが配列番号13〜配列番号18のうちの1つで示される配列を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項6】
前記第1のペプチドが配列番号19〜配列番号26のうちの1つで示される配列を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項7】
前記第1のペプチドが配列番号27〜配列番号30のうちの1つで示される配列を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項8】
前記第1のペプチドが配列番号31〜配列番号34のうちの1つで示される配列を含む、請求項1に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項9】
前記第1のペプチドが配列番号3〜配列番号34のうちの1つと相同的である配列を含む、請求項1に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項10】
前記第2のペプチドが配列番号35で示される配列、又は配列番号36で示される配列を含むその断片を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項11】
前記第2のペプチドが配列番号36又は配列番号37で示される配列を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項12】
(a)前記第1のペプチドが配列番号27〜配列番号30のうちの1つで示される配列を含み、
(b)前記第2のペプチドが配列番号36又は配列番号37で示される配列を含む、請求項1に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項13】
前記第2のペプチドが配列番号38で示される配列、又は配列番号39で示される配列を含むその断片を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項14】
前記第2のペプチドが配列番号39で示される配列を含む、請求項13に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項15】
(a)前記第1のペプチドが配列番号31〜配列番号34のうちの1つで示される配列を含み、
(b)前記第2のペプチドが配列番号39で示される配列を含む、請求項1に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項16】
ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該タンパク質が直接又はリンカーを介してポリペプチドと連結するペプチドを含み、
(A)前記ペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含み、
(B)前記ポリペプチドが
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項17】
前記ペプチドが配列番号3又は配列番号4で示される配列を含む、請求項16に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項18】
前記ペプチドが配列番号5〜配列番号8のうちの1つで示される配列を含む、請求項16又は17に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項19】
前記ペプチドが配列番号9〜配列番号12のうちの1つで示される配列を含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項20】
前記ペプチドが配列番号13〜配列番号18のうちの1つで示される配列を含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項21】
前記ペプチドが配列番号19〜配列番号26のうちの1つで示される配列を含む、請求項16〜20のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項22】
前記ペプチドが配列番号27〜配列番号30のうちの1つで示される配列を含む、請求項16〜21のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項23】
前記ペプチドが配列番号31〜配列番号34のうちの1つで示される配列を含む、請求項16に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項24】
前記ペプチドが配列番号3〜配列番号34のうちの1つと相同的である配列を含む、請求項16に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項25】
前記ポリペプチドが配列番号35で示される配列、又は配列番号36で示される配列を含むその断片を含む、請求項16〜24のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項26】
前記ポリペプチドが配列番号36又は配列番号37で示される配列を含む、請求項16〜25のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項27】
(a)前記ペプチドが配列番号27〜配列番号30のうちの1つで示される配列を含み、
(b)前記ポリペプチドが配列番号36又は配列番号37で示される配列を含む、請求項16に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項28】
前記ポリペプチドが配列番号38で示される配列、又は配列番号39で示される配列を含むその断片を含む、請求項16〜24のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項29】
前記ポリペプチドが配列番号39で示される配列を含む、請求項28に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項30】
(a)前記ペプチドが配列番号31〜配列番号34のうちの1つで示される配列を含み、
(b)前記ポリペプチドが配列番号39で示される配列を含む、請求項16に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項31】
ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するペプチドであって、
(i)配列番号64〜配列番号66のうちの1つで示される配列と同じであるか又は相同的である配列、及び
(ii)配列番号67又は配列番号68で示される配列と同じであるか又は相同的である配列からなる群から選択される、ペプチド。
【請求項32】
直接又はリンカーを介して第2のペプチドと連結する第1のペプチドを含むキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、該第1のペプチドが請求項31に記載のペプチドである、キメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項33】
前記第2のペプチドが、
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、請求項32に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項34】
前記第2のペプチドが配列番号35で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列、又は配列番号36で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列を有する断片を有する、請求項33に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項35】
前記第2のペプチドが配列番号36又は配列番号37で示される配列と同じであるか又は相同的である配列を有する、請求項33に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項36】
前記第2のペプチドが配列番号38で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列、又は配列番号39で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列を有する断片を有する、請求項33に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項37】
前記第2のペプチドが配列番号39で示される配列と同じであるか又は相同的である配列を有する、請求項36に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項38】
前記第2のペプチドがポリペプチドの形態で与えられる、請求項32〜37のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項39】
さらなるペプチドを少なくとも1つ含む請求項1〜30又は請求項32〜38のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質であって、
(C)前記さらなるペプチドが
(i)配列番号1で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)配列番号2で示される配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iv)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(v)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む、キメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項40】
前記第1のペプチドのC末端残基が直接若しくはリンカーを介して前記第2のペプチドのN末端残基と共有結合するか、又は前記ペプチドのC末端残基が直接若しくはリンカーを介して前記ポリペプチドのN末端残基と共有結合する、請求項1〜30又は請求項32〜39のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項41】
前記第1のペプチドのN末端残基が直接若しくはリンカーを介して前記第2のペプチドのC末端残基と共有結合するか、又は前記ペプチドのN末端残基が直接若しくはリンカーを介して前記ポリペプチドのC末端残基と共有結合する、請求項1〜30又は請求項32〜39のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項42】
前記第1のペプチドが最大15アミノ酸長、好ましくは5アミノ酸長未満のリンカーを介して前記第2のペプチドと連結するか又は前記ペプチドが最大15アミノ酸長、好ましくは5アミノ酸長未満のリンカーを介して前記ポリペプチドと連結する、請求項1〜30又は請求項32〜41のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項43】
請求項1〜30又は請求項32〜42のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質を含む組成物。
【請求項44】
アジュバントをさらに含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の罹患率又は重症度を抑える又は低減する方法であって、請求項1〜30若しくは請求項32〜42のいずれか一項に記載のキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は請求項43若しくは44に記載の組成物を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項46】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態若しくは疾患の罹患率若しくは重症度を抑える若しくは低減する際の、又は被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態若しくは疾患の罹患率若しくは重症度を抑える若しくは低減する薬剤の製造における請求項1〜30若しくは請求項32〜42のいずれか一項に記載のキメラタンパク質若しくは融合タンパク質、又は請求項43若しくは44に記載の組成物の使用。
【請求項47】
請求項1〜30又は請求項32〜42のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質に対して産生される抗体。
【請求項48】
モノクローナル抗体である、請求項47に記載の抗体。
【請求項49】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患又は状態の重症度を抑える又は低減する方法であって、請求項47又は48に記載の抗体を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項50】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の罹患率又は重症度を抑える又は低減する薬剤の製造における請求項47又は48に記載の抗体の使用。
【請求項51】
請求項1〜30又は請求項32〜42のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質をコードする配列を含む核酸分子。
【請求項52】
前記配列が少なくとも1つの調節要素と操作可能に結び付いている、請求項51に記載の核酸分子。
【請求項53】
請求項51又は52に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項54】
ウイルス又は細菌のワクチンベクターである、請求項53に記載のベクター。
【請求項55】
請求項51若しくは52に記載の核酸分子又は請求項53若しくは54に記載のベクターを含む原核細胞又は真核細胞。
【請求項56】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患の罹患率又は重症度を抑える又は低減する方法であって、請求項51若しくは52に記載の核酸分子、請求項53若しくは54に記載のベクター、又は請求項55に記載の原核細胞若しくは真核細胞を該被験体に投与することを含む、方法。
【請求項57】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の疾患又は状態の重症度を抑える又は低減する薬剤の製造における請求項51若しくは52に記載の核酸分子、請求項53若しくは54に記載のベクター、又は請求項55に記載の原核細胞若しくは真核細胞の使用。
【請求項58】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患を診断又はモニタリングする方法であって、前記被験体由来の生体試料において抗ポルフィロモナス・ジンジバリス抗体を検出するための請求項1〜30又は請求項32〜42のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質の使用を含む、方法。
【請求項59】
被験体由来の生体試料において抗ポルフィロモナス・ジンジバリス抗体を検出するための請求項1〜30又は請求項32〜42のいずれか一項に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質の使用。
【請求項60】
被験体においてポルフィロモナス・ジンジバリス関連の状態又は疾患を診断又はモニタリングする方法であって、前記被験体由来の生体試料においてポルフィロモナス・ジンジバリスの存在を検出するための請求項47又は48に記載の抗体の使用を含む、方法。
【請求項61】
被験体由来の生体試料においてポルフィロモナス・ジンジバリスの存在を検出するための請求項47又は48に記載の抗体の使用。
【請求項62】
配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つで示される配列を含む、ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するペプチド。
【請求項63】
配列番号17、配列番号18、配列番号25及び配列番号26のうちの1つと相同的である配列を有する、請求項62に記載のペプチド。
【請求項64】
5〜40のアミノ酸長を有する、請求項62又は63に記載のペプチド。
【請求項65】
請求項62〜64のいずれか一項に記載のペプチドをコードする核酸。
【請求項66】
ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するキメラタンパク質又は融合タンパク質の製造のための請求項62〜64のいずれか一項に記載のペプチド又は請求項65に記載の核酸の使用。
【請求項67】
ポルフィロモナス・ジンジバリスに対する免疫応答を誘導するための請求項62〜64のいずれか一項に記載のペプチドの使用。
【請求項68】
前記ペプチドを
(i)ポルフィロモナス・ジンジバリスのLys−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(ii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのArg−X−プロテイナーゼの付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全て、又は
(iii)ポルフィロモナス・ジンジバリスのHagA付着因子ドメインの配列と同じであるか若しくは相同的である配列の一部若しくは全てを含む第2のペプチドと同時に又は連続して投与する、請求項67に記載の使用。
【請求項69】
前記第2のペプチドが配列番号69〜配列番号79のうちの1つ若しくは複数、又は配列番号83〜配列番号85のうちの1つ若しくは複数で示される配列を含むか又はそれらからなる、請求項1又は32に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。
【請求項70】
前記第1のペプチドが配列番号3〜配列番号26のうちの1つ若しくは複数、又は配列番号64〜配列番号68のうちの1つ若しくは複数で示される配列を含むか又はそれらからなる、請求項69に記載のキメラタンパク質又は融合タンパク質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−500633(P2012−500633A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524135(P2011−524135)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001112
【国際公開番号】WO2010/022463
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(510007610)オーラル ヘルス オーストラリア ピーティーワイ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】