説明

ポンピングされた流体中の汚染物の検出

本発明の真空ポンプは、流体が入る入口と、ポンピングされた流体を排出する出口と、前記入口と出口との中間点の位置と連通するポンピング手段と、前記ポンピング手段により受け入れられる流体の少なくとも一部を受け入れ、その中の汚染物の存在を検出するセンサーとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、特に分子真空ポンプによりポンピングされた流体中の汚染物の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの製造プロセスおよび実験は、汚染に対して極めて敏感であり、この為、真空環境あるいは部分真空環境内で行われる。半導体装置のある種の製造プロセス、例えばエッチング、堆積、イオン注入等は、プロセスの化学的純粋性を確保するため、反応性プラズマを生成するあるいは均一のプロセスを提供するため、及び適正な物理的状態(分子平均自由行程等)を確保するために、真空状態を必要としている。近年、極紫外線(Extreme Ultra Violet (EUV))投影リソグラフ・プロセスが利用されているが、このプロセスにおいては、光学構成要素の反射表面は、水あるいは炭化水素の汚染物の存在による損傷に対し、極めて敏感である。
【0003】
このような敏感な真空プロセス用の環境条件を確保するために、汚染ガスの種と真空チェンバ内に意図的に導入された他のガスとを区別できる分圧検出装置が望まれている。これらの他のガスは、反応性ガスあるいは不活性ガスで、必要とされる圧力および流通状態を作り出すのに必要とされる。
【0004】
従来、種選択性のガス圧を測定するいくつかの方法が存在する。
【0005】
(1).残留ガスアナライザ(Residual Gas Analyser (RGA))
従来技術においては、分圧アナライザを用いて真空チェンバ内のガスの成分を測定している。このようなRGAは通常、四極子形質量分析計(Quadrupole Mass Spectrimeters (GMS))であり、高価で一般的に全圧の低いレベルのみが測定できるだけである。この方法においては、存在するイオンの分圧に対応するスペクトラムが、質量対電荷比(mass-to-charge ratio (m/z))の関数として生成される。一般的に、システム内に存在するガス分子は、イオンソース内で細かく砕かれて、より小さなイオンを生成し、これが、一般的に低いm/zの値でスペクトラム中に表れる。
【0006】
(2).サンプリング残留ガスアナライザ(Sampling Residual Gas Analyser)
図1は、全圧が圧力検出装置が可能なレベルを超えている装置を示す。チェンバ1は、ポンプ2と補助ポンプ(backing pump)3によりポンピングされる。ポンプ2は、通常、ターボ分子ポンプ(turbo-molecular pump)であり、補助ポンプ3は、通常、正容積型(容積移送式)ポンプ(positive displacement pump)である。RGA4は、補助チェンバ6に接続され、この補助チェンバ6がチェンバ1に流量制限装置5を介して接続される。補助チェンバ6は、更に分子ポンプ7と正容積型ポンプ8とを有する。これにより、RGA4が全圧の許容可能なレベルで動作可能となる。このようなシステムにより、チェンバ1内に最も多く存在するガス種の測定が可能となるが、非常に低い分圧のガス種は測定不可能である。その測定値は通常、50ppbのオーダーの相対的レベルに制限される。分子ポンプ7と正容積型ポンプ8からなる追加的なポンプ構成により、極めて低コストのシステムが実現可能となる。
【0007】
(3).遷移型残留ガス分析計(Transient Residual Gas Analyser)
ポンプ装置からのオイルの逆流を測定するために、RGAをポンプ装置の上流側の真空チェンバに接続することは公知である。このシステムが最終的な圧力に到達すると、RGAはスイッチが切られ、チェンバの近傍の表面は冷却されて、チェンバ内にあるオイル蒸気を吸着する。RGAに再びスイッチが入ると、それに伴った温度の上昇により蒸気の急速な脱離が起こり、これをRGAが検出する。これは、検出された蒸気の極めて増幅された「スパイク(spike)」となり、これは、熱平衡が再度確立されるにつれて、減衰する。この増幅された応答を用いて測定システムの感度を向上させることができる。
【0008】
(4).逆流残留ガス分析計(Contraflow Residual Gas Analyser)
図2に示すように、別の方法(通常、ヘリウム・リーク検出(Helium Leak Detection)に適用される)が、逆流構成でRGAに接続される。この構成においては、RGA4は、ポンプ2の入口に接続される。ポンプ2の出口は正容積型(容積移送式)ポンプである補助ポンプ3に接続され、また、チェンバ1にも接続される。分子ポンプ2は、RGA4を十分に低い全圧に保持するが、ヘリウムはポンプ2を通して逆流する。これは、この装置は、ポンプ2の圧縮比が、あるガス種特にヘリウムのような軽いガスに対しては、低いという事実によっている。
【0009】
この構成により、ヘリウムの様なガスに対してはRGAの相対的感度の改善が見られるが、他のガス例えば水蒸気あるいは炭化水素に対しては、そうではない。各ガス種に対する装置の感度は、その特定の種に対する分子ポンプの圧縮比に依存しているため、このシステムは、複数のガスの分析計としての使用には適さない。この方法は、ヘリウムに対しては有効である。その理由は、分子ポンプはヘリウムに対し圧縮比が悪いからである。一方、多くの重い炭化水素の不純物に対しては効率的ではない。その理由は、分子ポンプは、これらの重い分子に対しては高い圧縮比を示すからである。また分析計と追加するポンプ2のコストが高い点が不利である。
【0010】
(5).ポンプ補助リーク検出(Pump-assisted leak detection)
ヘリウムのリーク検出を、それ自身の真空ポンプを有する大きな真空システムで用いる時には、応答速度は、ヘリウムリーク検出器を真空チェンバに直接ではなく、真空ポンプのフォアライン(foreline)に取り付けることにより、改善できる。リーク検出の応答速度は、S/V比に関連する。ここで、Sは、リーク検出システムのポンピング速度であり、Vは、真空チェンバの容積である。多くのリーク検出器は、1秒当たり数リットルの低いポンピング速度(pomping speed)を有しており、大きな真空ポンプを具備した大きな真空チェンバに対しても同様である。リーク検出器の有効ポンピング速度は、リーク検出器をこれらの大きな真空ポンプに直列に接続することにより大幅に改善できる。この方法は、ヘリウムリーク検出に対しては極めて有効であるが、チェンバ内の炭化水素の汚染の検出には不向きである。その理由は、フォアライン内に通常存在する炭化水素の汚染物が高濃度(通常補助ポンプにより引き起こされる)だからである。
【0011】
(6).GC−MS入口濃縮器(GC-MS inlet Concentrator)
ガス・クロマトグラフィー質量分析計(Gas Chromatography Mass Spectroscopy (GC-MS))においては、解析されるべきガスは、さまざまな技術、例えば、四極子分析計(quadrupole analyser)、タイム・オブ・フライト(飛行時間Time-of-flight (TOF))型分析計、あるいは他の方法により検出される。このような方法の感度を向上させるために、入口濃縮器が用いられ、これは、「パージュ・アンド・ベント(Purge and Vent)」装置としても知られている。これらの装置は、小さなチェンバを有し、そこに、吸着性材料例えば活性木炭が充填され、その温度を変動させる。この装置は、解析すべきガスに曝されて、その後急速に過熱され、短時間に累積した全てのガスを放出させる。このようにして増加した濃度により検出装置の感度が向上する。
【0012】
(7).温度プログラムされた脱離スペクトロスコピー(Temperature Programmed Desorption Spectroscopy (TPDS))
この解析方法においては、ガスを低温に保たれた吸着層上に吸着させ、その後、温度を一定の制御レート(通常、数K/s)で上昇させる。かくして、放出されたガスを適宜の検出器、例えば四極子形質量分析計(Quadrupole Mass Spectrometer (QMS))を用いて検出される。また、タイム・オブ・フライト(Time of Flight (TOM))型分析も使用できる。この方法により、ガス圧のスペクトラムを温度の関数として提供できる。これは、表面への結合エネルギーが異なるガスの相対量を表すと解釈できる。その結果、ガス成分に対する有効な情報を提供できる。例えば、図3にはQMS出力が原子質量値m/z=2と44に対する、銅製の基板上への吸着された蟻酸(formic acid)を示す。これは、約280Kで脱離された極めて弱く吸着された水素(m/z=2)のみと、約470Kで脱離された水素と二酸化カーボン(m/z=44)の両方を示す。
【0013】
(8).ガス選択容量性測定装置(Gas selective capacitative measuring device)
他の解決方法は、ガス選択制測定装置を用いることである。例えば、これは容量性センサであり、このセンサでは、誘電体材料例えば薄いポリマー性フィルムが水蒸気の存在に応答して、その特性を変化させる。このような装置は、特定のガス種(この実施例では水蒸気)に対してのみ感受性があり、同時に絶対感度が低い点で不都合である。これらはまた、ドリフトの影響を受けやすい。しかし、特定のガス種のみに感受性があるために、この装置は測定対象の種が他の存在するガスの一部であるような比較的低い相対分圧で測定することができる。これらの装置は、残留ガスアナライザよりも低コストである利点がある。
【0014】
(9).水晶結晶板微量天秤(Quartz Crystal Microbalance (QCM))
この装置は、装置の表面上に吸着された(濃縮された)汚染物の質量の測定に依存している。この装置は、水晶の結晶板を有し、それが高周波電圧により励起され、その固有周波数が吸着された材料に起因する増加した質量により影響を受けることを利用している。この装置は種依存性がある。その理由は、この装置は表面上に濃縮したガスにのみ応答し、ガスのを識別する能力は、適宜の材料でその表面をコーティングすることにより、あるいは異なる温度(極低温を含む)で装置を動作させることにより、変更できる。
【0015】
(10).弾性表面波センサ(Surface Acoustic Wave (SAW) sensors)
この装置は、QCMに類似するが、装置の容積を介して伝搬する波ではなく、装置の表面上を伝搬する波を利用する。これは、その表面に吸着された少量の材料に対する感度を大幅に向上させる。
【0016】
(11).金属酸化物コンダクタンス・センサ(Metal-oxide conductance sensors)
この装置は、吸着材料に感受性がある導電性を有する検出層を生成するために、化学蒸着(Chemical Vapour Deposition (CVD))により堆積された金属酸化物の薄い層を用いる。特別な製造技術により、この薄いフィルム(層)の装置の列が単一の基板上に堆積され、それが特定の材料群に対し、感受性がある。この装置は、酸化に依存しているために、これらは、酸素の低減した真空環境中でのドリフトの影響を受けやすい。
【0017】
(12).固体電気化学セル(Solid State Electrochemical Cell)
これらのセンサは、2つの電極の間にある固体電解質を含み、酸素アニオンにより搬送される電流、あるいは生成された電圧を検出することに依存している。これらは、炭化水素の汚染物を測定するのに適したものであるが、多くのアプリケーションで必要とされるよりも高い検出限界を有する。これらは、アニオン・コンダクタンスを促進するために高温で動作させなければならない。ある周囲条件においては、電解質により酸素は大気中から真空システム内に拡散して、これがプロセスの汚染の原因となる。上記したこれらの従来方法(1)−(12)は、さまざまな不利な点があり、プロセスのアプリケーションでの分圧の量的測定方法と用いるのには適当ではない。
【0018】
(A).コスト
従来方法(1)−(7)は、四極子形質量分析計あるいは類似の高価な検出装置を用いる。多くの場合それらは、固有の真空ポンプ装置を具備する補助真空チェンバを必要とする。このシステムのコストは高すぎ、多くのプロセスで幅広く用いるのには適していない。
【0019】
(B).評価(Interpretation)
四極子形質量分析計(QMS)データは評価するのが複雑である。その理由は、大きな炭化水素分子がイオン・ソース内で分割される。その結果、評価は、より軽いフラグメント(小片)の分割パターンから親化学物質を決定できる熟練したオペレータが必要である。このため、自動的なプロセス制御ソフトウェアは不適切なものとなる。
【0020】
(C).感度
RGAは、他の良性ガスの背景に対し小さな分圧を解析するのが困難である。特に、大きなアルゴンの背景に対し水を検出するのが困難である。その理由は、二重イオン化アルゴン(double-ionised argon)が20amuで表れ、18amuで水が表れるからである。同時に、分割された炭化水素は、フラグメントC34+(40amu)と40amuに近い質量のフラグメントを生成する。これらは、アルゴンの存在下では分解するのが困難である。アルゴンは、半導体製造プロセスとEUVリソグラフ・ツールの両方でしばしば用いられる。さらに低コストのセンサ(8)−(11)は、他のガスの影響を受ける同じような不利な点はないが、感度が悪い。
【0021】
(D).応答速度
従来方法(2)のサンプリング残留ガス分析計の応答速度は悪いが、その理由は、図1を参照すると、流量制限装置5が汚染物が補助チェンバ6に入る流量を制限しているからである。
【0022】
(E).真空システムへの影響
従来方法(6)−(7)は、温度変化に関連し、異なる種の相対濃度を決定するためだけの解析的目的に通常使用される。それらは、プロセスのアプリケーションにおける分圧の量的測定に対して適切とは思われていない。その理由は、温度変動により汚染物濃度が増加し、プロセスに悪影響を及ぼすからである。一般的に、このような温度変動による感度の増加は、「マーク・スペース比(mark-space ratio)」により支配される。この比率は、表面が過熱されている時間と表面が冷却されている時間との比率である。
【0023】
(F).熱放射と伝導
RGAと固体電気化学セルは、高温で動作させなければならず、熱を伝導と輻射で、真空システム内に伝えなければならない。これは、温度変動に敏感なリソグラフ・システムあるいは計測システムにとっては大きな欠点である。
【0024】
(G).電化粒子
RGAは通常、エネルギーがチャージされた粒子(イオンまたは電子)を生成する。これはプロセスにとって有害である。
【0025】
(H).汚染の生成
あるセンサは汚染を生成する。固体電気化学セルの場合には、雰囲気からの酸素の拡散がプロセスを汚染することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
総じて、汚染は極高価な構成要素に損傷を与えることがあるので、検知装置は、低レベルの汚染に対し非常に感度が高く且つ応答時間が速いことが重要であり、その結果、十分な保護がプロセス制御ソフトウェアに与えられる。
【課題を解決するための手段】
【0027】
第1態様においては、本発明の装置は、流体が入る入口と、ポンピングされた流体を排出する出口とを有するポンピング手段と、前記入口と出口との中間のロケーションと連通し、前記ポンピング手段により受け入れられる流体の少なくとも一部を受け入れ、その中の汚染物の存在を検出するセンサとを有する。
【0028】
かくして、1つあるいは複数の汚染の存在を検出するセンサが、ポンプ入口とポンプ出口の間に具備される。従って、センサにより検出される各汚染の分圧は、ポンプ入口が受ける流体の流れにより支配される。その結果、ポンプ出口に接続された補助ポンプからの逆流は、汚染の分圧に最小の影響しか与えない。
【0029】
好ましくは、ポンプは少なくとも第1と第2のポンピング段とを有し、前記のロケーションは、第1段と第2段との間である。センサの感度は、受け入れた流体内の汚染物が第1ポンピング段により高い分圧まで圧縮される場所でセンサを動作させることにより向上する。例えば、第1段のポンプ速度がSaで、第2段のそれがSbとすると、センサにおける汚染物の分圧psは、チェンバ内の分圧pcに関係し、以下で表される。
s=pc x Sa/Sb
さらにまた、第2段のポンプにより、センサはフォアラインに存在する汚染物による影響を受けない。
【0030】
好ましくは、前記ポンピング段の1つは、分子段を含む。例えば、前記ポンピング段の1つはターボ分子段を含むか、前記段の1つは分子ドラグ段を含んでもよい。
【0031】
センサは、好ましくはポンプの外部に接続される。この場合、ポンプは前記ロケーションにポート(出入り口)を有し、本発明の装置は前記ポートからセンサに向けて流体を搬送する手段を有する。本発明の装置は、好ましくはポンプとセンサの両方を収納するハウジングを有する。制御手段は、ポンプとセンサの両方を制御するよう配置され、この制御手段も共通ハウジングに収納される。
【0032】
好ましくは、センサの使用中においては、本発明のセンサは、流体内の非汚染物の圧力とは無関係に、流体内の汚染物(例えば水蒸気あるいは炭化水素)に対し感受性がある。センサは、好ましくは1つあるいは複数の選択された汚染物にのみ感受性があり、これにより、センサからの出力された信号は解釈し易く、プロセスが自動プロセス制御ソフトウェアを用いることができる。好ましくはセンサは出力を具備し、この出力が流体中の汚染物の分圧を示す。
【0033】
センサは、水晶結晶板微量天秤センサ、弾性表面波センサ、容量性センサでもよい。
【0034】
一実施例においては、センサは、入口濃縮器と組み合わせて、その感度を向上させるかあるいは異なるガス種を識別する機能を改善する。入口濃縮器の温度変化は、階段状に行われ、これにより、表面が低温でも汚染物の蓄積が可能となる。これらの蓄積した汚染物は、温度が急速に上昇すると急速に脱離し、かくして汚染物の大きな遷移濃度を作り出し、これは容易に検出できる。
【0035】
別の構成において、温度変化は鋸歯の形態で行われる。これにより、汚染物は低温で蓄積し、温度が累進的に上昇するにつれてよりゆっくり脱離する。その結果、結合エネルギーの低い汚染物は、低温で脱離し、結合エネルギーの高い汚染物は、高温で脱離する。かくして、異なる結合エネルギーを有する汚染物間を識別することができる。他の実施例においては、温度変化は、ランプ・パルス(ramped-pulsed)の形態で行われる。
【0036】
センサは、1つあるいは複数の汚染物を吸着する材料でコーティングされた表面を有する。センサを周囲温度以下に冷却する手段を具備し、これにより、特定の汚染物を吸着するセンサの機能を改善する。
【0037】
本発明の装置は、ポンプ出口に接続された補助ポンプを有し、真空ポンプからの流体の排出をポンピングする。入口は、そこからの流体を収納するために、真空チェンバと連通している。
【0038】
本発明の装置においては、汚染物は水あるいは炭化水素の少なくとも一方を含む。
【0039】
本発明の装置は、流体を受け入れる入口とポンピングされた流体を排出する出口とを有する真空ポンプと、前記入口と出口との間のロケーションと連通し、前記ポンプにより受け入れられる流体の少なくとも一部を受け入れ、その中の不純物の存在を検出するセンサとの組み合わせを提供する。
【0040】
本発明のポンピングされた流体内の汚染物の存在を検出する方法は、真空ポンプの入口点で流体を受け入れるステップと、真空ポンプの前記入口と出口との中間点のロケーションから、前記ポンプが受け入れる流体の少なくとも一部を、流体中の汚染物の存在を検出するセンサに搬送するステップとを有する。
【0041】
本発明の装置に関連する特徴は、本発明の方法にも等しく適用可能であり、またその逆でもある。
【実施例】
【0042】
図4を参照すると、ポンプ(例えばターボ分子ポンプ、分子ドラグ・ポンプあるいは混成ターボ分子/分子ドラグ・ポンプ)12は、真空チェンバ11に、接続された入口(パイプあるいはダクトによる)15と、第2真空ポンプ(例えばドライ・補助ポンプ)13に続された出口(パイプあるいはダクト)17とを有する。ポンプ12は、第1ポンプ部分12aと第2ポンプ部分12bとを有する。第1ポンプ部分12aは、少なくとも1個のポンピング段、例えば少なくとも1個のターボ分子段を有する。第2ポンプ部分12bは、少なくとも1個のポンピング段、例えば少なくとも1個の分子ドラグ段を有する。
【0043】
分圧センサすなわち測定装置14は、ポンプの入口15とポンプの出口17との間に配置された分子ポンプの一部に、接続パイプすなわちダクト16により接続されている。分圧測定手段である分圧測定装置14は、QCM(Quartz Crystal Microbalance)、SAW(Surface Acoustic Wave)、あるいは容量型(あるいは類似のガス特定センサ)であり、感度を向上させるために、あるいは異なるガス種を区別する機能を向上させるために、温度変動を利用する。図4に示すように、コントローラ18は、ポンプ12と分圧測定装置14の両方を制御するよう具備される。ポンプ12と分圧測定装置14とコントローラ18は、好ましくは共通の共通ハウジング19内に配置されている。
【0044】
温度変動は、図5(a)に示すようなステップ(階段、パルス)状、あるいは図5(b)に示すような鋸歯状、あるいは図5(c)に示すような傾斜パルス形状である。ステップ状の変動の効果は、表面を低温に保ちながら汚染物の蓄積が可能であり、温度が急上昇した時には、この蓄積した汚染物を急速に脱離し、かくして、汚染物の大きな遷移濃度が形成でき、これは容易に検出できる。鋸歯状の変動の効果は、低温で汚染物を蓄積し、その後、温度が累進的に上昇するにつれて、より緩慢に汚染物を脱離し、その結果、結合エネルギーの低い汚染物は低温で脱離し、結合エネルギーの高い汚染物は高温で脱離し、かくして異なる結合エネルギーの汚染物の識別が可能となる。
【0045】
次に動作について説明すると、真空チェンバ11内に存在する汚染ガスは、ポンプ入口近くの第1ポンプ部分12aによりポンピングされ、第1ポンプ部分12aにより高圧に圧縮される。これにより、汚染ガスの圧力が上昇して、汚染物が分圧測定装置14により、より簡単に検出可能となる。
【0046】
汚染ガスは、ポンプ12の出口17の近傍に存在する可能性が高いが、それは、軸受けシステム、潤滑システムあるいはモータ駆動システム内に存在する汚染物の結果、あるいは第2の真空ポンプ内に存在する汚染物の結果である。通常それらの汚染物は、プロセス・チェンバである真空チェンバ11には影響を与えない。その理由は、第1ポンプ部分12aと第2ポンプ部分12bは、これらの汚染物に対し、有効なバリアを提供するからである。しかし重要なことは、分圧測定装置14は出口ダクト内の汚染物の増加には応答しないことである。これは、出口17に隣接するポンピング効果により保証される。
【0047】
かくして、上記した従来方法(1)−(12)に対し、本発明のいくつかの利点がある。
【0048】
(A).コスト
本発明は、残留ガス分析計のコスト的に不利な点を、低コストのガス選択性測定装置を用いて解決できる。さらなるポンピング手段は必要とせずに、本発明は既に分子ポンプを使用している真空システムにも適応できる。ガス選択性測定装置の絶対感度は、全圧が高いシステム内のある点に、装置を接続することにより改善される。
【0049】
(B).評価
特定の汚染物にのみ感受性があるセンサからの出力は、本質的に評価/解釈が容易で、自動プロセス制御ソフトウェアを用いて処理できる。
【0050】
(C).感度
本発明のセンサの感度は、真空チェンバ内に存在する汚染物がより高い分圧に圧縮される領域でセンサを操作することにより、向上する。ポンプ12の第1ポンプ部分12aのポンピング速度をSa、ポンプ12の第2ポンプ部分12bのポンピング速度をSbとすると、センサにおける汚染物の分圧psは、チェンバの分圧pcに次式で関連付けられる。ps=pc x Sa/Sb。さらに、ポンプ12の第1ポンプ部分12aのポンピングの影響により、センサは、フォアライン内にある汚染物による影響を受けない。
【0051】
(D).応答速度
応答速度は、汚染物をセンサ内にポンピングするポンプ12の第1ポンプ部分12aのポンピング速度を用いて改善される。
【0052】
(E).真空システムへの影響
ポンプ12の第1ポンプ部分12aのポンピング効果により、真空チェンバ11は、温度変動に起因する汚染物圧力の変動による悪影響から切り離される。同時にプロセスチェンバをセンサそのものにより生成される汚染物からも切り離す。
【0053】
(F).熱効果
センサは、プロセス・チェンバから離れた位置に配置されるために、センサそのものからのあるいは入口濃縮器内の温度変動からの熱放射あるいは熱伝導から発生する熱の影響が大幅に縮小される。
【0054】
総じて、真空ポンプは、流体を受け入れる入口とポンピングされた流体を排出する出口との間のロケーションと導通し、少なくとも一部を受け入れ、且つその中に含まれる汚染物の存在を検出するセンサを有する。
【0055】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】サンプリング残留ガス分析計の配置を示す図である。
【図2】逆流残留ガス分析計の配置を示す図である。
【図3】吸着蟻酸の脱離スペクトラムを表すグラフである。
【図4】本発明の一実施例を表す図である。
【図5】図4のセンサに加えられる温度変化の状態を表す図である。
【符号の説明】
【0057】
1 チェンバ
2 ポンプ
3 補助ポンプ
4 RGA
5 流量制限装置
6 補助チェンバ
7 分子ポンプ
8 正容積型ポンプ
11 真空チェンバ
12 ポンプ
12a 第1ポンプ部分
12b 第2ポンプ部分
13 第2真空ポンプ
14 分圧測定装置
15 入口
16 ダクト
17 出口
18 コントローラ
19 共通ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が入る入口と、ポンピングされた流体を排出する出口とを有するポンピング手段と、前記入口と出口との中間のロケーションと連通し、前記ポンピング手段により受け入れられる流体の少なくとも一部を受け入れ、その中の汚染物の存在を検出するセンサとを有することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ポンピング手段は、少なくとも第1と第2のポンピング段とを有し、前記ロケーションは、前記第1と第2のポンピング段の間に配置されることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記段の1つは、分子段を含むことを特徴とする請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記段の1つは、ターボ分子段を含むことを特徴とする請求項2又は3記載の装置。
【請求項5】
前記段の1つは、分子ドラグ段を含むことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項記載の装置。
【請求項6】
前記ポンピング手段は、前記ロケーションにポートを有し、前記装置は、前記ポートからセンサへ流体を搬送する手段を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の装置。
【請求項7】
前記ポンピング手段とセンサとを収納するハウジングを有することを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の装置。
【請求項8】
前記ポンピング手段とセンサの両方を制御する手段を有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段用のハウジングを有することを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
使用中にセンサは、流体中の非汚染物の圧力とは無関係に、流体中の汚染物に対する感受性を有することを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項記載の装置。
【請求項11】
前記センサは、出力を有し、前記出力は、流体に対する汚染物の分圧を示すことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項記載の装置。
【請求項12】
前記センサは、水晶結晶板微量天秤であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の装置。
【請求項13】
前記センサは、弾性表面波センサであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の装置。
【請求項14】
前記検出すべき汚染物は、炭化水素であることを特徴とする請求項13記載の装置。
【請求項15】
前記センサは、固体電気化学セルであることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の装置。
【請求項16】
前記検出すべき汚染物は、炭化水素であることを特徴とする請求項15記載の装置。
【請求項17】
前記センサは、ガス選択性容量性装置であることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項記載の装置。
【請求項18】
前記検出すべき汚染物は、水蒸気であることを特徴とする請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記センサは、温度変化機能を有することを特徴とする請求項1乃至18の何れか1項記載の装置。
【請求項20】
前記温度変化は、ステップ状で行われることを特徴とする請求項19記載の装置。
【請求項21】
前記温度変化は、鋸歯状で行われることを特徴とする請求項19記載の装置。
【請求項22】
前記温度変化は、傾斜パルス状で行われることを特徴とする請求項19記載の装置。
【請求項23】
前記センサは、汚染物を吸着する材料でコーティングされた表面を有することを特徴とする請求項1乃至22の何れか1項記載の装置。
【請求項24】
前記センサを周囲温度以下の温度の冷却する手段を有することを特徴とする請求項1乃至23の何れか1項記載の装置。
【請求項25】
流体をポンピング手段から排出するために、前記出口に接続された補助ポンプを有することを特徴とする請求項1乃至24の何れか1項記載の装置。
【請求項26】
前記入口は、流体を受け入れるための真空チェンバーと連通していることを特徴とする請求項1乃至25の何れか1項記載の装置。
【請求項27】
前記汚染物は水と炭化水素の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1乃至26の何れか1項記載の装置。
【請求項28】
流体を受け入れる入口とポンピングされた流体を排出する出口とを有する真空ポンプと、前記入口と出口との間のロケーションと連通し、前記ポンプにより受け入れられる流体の少なくとも一部を受け入れ、その中の不純物の存在を検出するセンサと、を有することを特徴とする装置。
【請求項29】
ポンピングされた流体内の汚染物の存在を検出する方法において、
(A)真空ポンプの入口点で流体を受け入れるステップと、
(B)真空ポンプの前記入口と出口との中間点のロケーションから、前記ポンプが受け入れる流体の少なくとも一部を、流体中の汚染物の存在を検出するセンサに搬送するステップと、を有することを特徴とするポンプ流体中の不純物の存在を検知する方法。
【請求項30】
ポンピングされた流体内に汚染物の存在を検出する方法において、
(A)真空ポンプの入口点で流体を受け入れるステップと、
(B)第1ポンプ段からポンピングされた流体の第1ストリームを、第2ポンプ段に搬送し、前記流体の第2ストリームを、流体中汚染物の存在を検出するセンサに搬送するステップと、を有することを特徴とするポンプ流体中の不純物の存在を検知する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−506903(P2007−506903A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−527460(P2006−527460)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/GB2004/003983
【国際公開番号】WO2005/031169
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(591004445)ザ ビーオーシー グループ ピーエルシー (59)
【Fターム(参考)】