説明

ポンプユニット

【課題】本発明は液体から分離された気体富化液を気体分離室に排出するための逃し弁を確実に開閉動作させることを課題とする。
【解決手段】逃し弁38は、サイクロン32の上部に気体富化液が溜まると、圧力室114に圧力が気泡によって減圧されて弁体100がコイルバネ102のバネ力によりXb方向に摺動する。そして、弁体100が開弁位置に復帰すると、円筒弁部100aが流入口110及び流出口120を通過して弁体100の溝100dが流入口110及び流出口120に対向して連通する。そのため、流入口110に溜まった気体富化液は、サイクロン32からの液圧に押し上げられて弁体100の溝100dから流出口120、バイパス通路122、貫通孔61及び管部材62を介して気体分離室60へ排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプユニットに係り、特に流体を供給する系路で流体中に含まれる液体と気体とを分離する気液分離装置を備えたポンプユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば給油所で用いられる給油装置は、スペース上の制約からできるだけ小型であることが要求され、これに伴ってポンプユニットとしても小型のものが要求される。一方、給油所で取扱うガソリン等には気体が混入することが多く、ポンプユニットとしては気液分離手段を備えたものが必要となる。
【0003】
そこで従来、上気した要求に応えるべく、流入口および流出口を有するケーシングを備え、このケーシング内に、前記流入口から流体を吸込むポンプと、該ポンプから吐出された流体を旋回させて液体と気体富化液とに分離する気液分離装置と、該気液分離装置で分離された気体富化液から気体を分離する気体分離室とを設け、前記気液分離装置で分離された液体をフィルタ室および逆止弁を介して前記流出口に導くと共に前記気体分離室で分離された液体を前記ポンプの吸込口側に戻し、分離された気体をケーシング外に排出するようにしたポンプユニットが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このポンプユニットによれば、1つのケーシング内に構成要素を配置して小型化を図ることができることはもちろん、気液分離装置と気体分離室とによる二重の気液分離により気体混入の極めて少ない液を供給できるようになる。
【0005】
ところで、このようなポンプユニットによれば、気液分離装置から気体分離室に気体富化液を送る流路は、気液分離装置からの分離液体の流入を制限するべく部分的に絞られており、このため、例えばケーシングの流入口に接続された液タンク側のトラブル、例えば液タンクと流入口との間の配管に亀裂が生じることにより多量の空気がケーシング内に吸込まれた場合、該流路を通じての空気の逃がしが不十分となってケーシング内に空気が充満し、この結果、空気が流出口へ漏れ出てしまい、流出口に接続された流量計が空気を計量することとなり、給油量の計測に誤差が生じる。
【0006】
そこで、例えば上記公報に開示のものでは、気液分離装置から気体分離室に気体富化液を送る流路内に流量制限弁を配設し、この流量制限弁を構成する弁体に流量を絞る小さな開口を設けると共に、該弁体をばねにより常時は開弁方向へ付勢し、空気を多量に吸い込んだ時の流量制御弁の前後の圧力差により該弁体を開いて空気を逃すようにしている。
【0007】
しかしながら、上記公報に記載の空気逃し対策によれば、流量制御弁を設ける部位が気体富化液を送る狭い流路内となっているため、弁体を開いた時の開口面積の大きさにも一定の限界があり、ほぼ100%に近い多量の空気を吸込んだ場合に、依然として空気の逃がしが不十分となり、流出口へ空気が漏れ出てしまうおそれがあった。
【0008】
このような問題を解消する手段として、気液分離装置から気体分離室へ気体富化液を送る流路の途中に絞り部を形成し、その絞り部をバイパスさせてバイパス流路を並設し、バイパス流路に、気液分離装置からの気体富化液の圧力低下に応じてバイパス流路を開く逃し弁を設けた構成のポンプユニットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭60−81481号公報
【特許文献2】特開平8−4660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記逃し弁を設けた構成では、フロートからなる弁体が液圧により閉弁状態に保持されており、空気が溜まると液圧が無くなって弁体が開弁するように動作するため、例えば、気液分離装置内に気泡が殆どない状態(液体のみとなっている状態)から気液分離装置内が気体で充満した状態に変化した場合には、フロート自体が軽ければフロート自体が液体の密着性によりバイパス通路の弁座に張り付いてしまうおそれがある。その場合、気液分離装置内の空気を迅速に排出することができなくなり、その結果、気液分離装置において、気液分離が行なえなくなってしまうという問題が生じる。
【0010】
また、このような問題を防止するためにフロートを大型化することによりフロート自体の重量を増大させて弁座への貼り付きを防止できる反面、フロートの大型化に伴ってフロートが収納される空間を大きくすることになり、ポンプユニットのケーシングが大型化して給油装置内に収納するためのスペースを確保することが難しくなる。
【0011】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、課題を解決したポンプユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
【0013】
請求項1記載の発明は、流入口および流出口を有するケーシング内に、前記流入口から流体を吸込むポンプと、該ポンプから吐出された流体を液体と気体富化液とに分離する気液分離装置と、該気液分離装置で分離された気体富化液から気体を分離する気体分離室と、
前記気液分離装置から前記気体分離室へ気体富化液を送る流路と、気液分離装置からの気体富化液の圧力低下に応じて前記流路を開く逃し弁と、を有し、前記気液分離装置で分離された液体を前記流出口へ導くと共に、前記気体分離室で分離された気体を前記逃し弁の開弁により前記ケーシング外へ排出するポンプユニットにおいて、前記逃し弁は、前記流路に供給される圧力を受けて前記流路内を摺動して閉弁位置に移動することで前記流路と前記気液分離装置とを連通する弁体と、前記弁体を開弁位置に復帰させる付勢部材と、を有することを特徴とする。
【0014】
請求項2記載の発明は、前記弁体は、外周に前記バイパス流路と前記気液分離装置とを連通する溝が形成されたスプールであることを特徴とする。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記弁体は、前記気液分離装置から前記気体分離室へ気体富化液を供給する貫通孔を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、逃し弁が流路に供給される圧力を受けて流路内を摺動して開弁位置に移動することで流路と気液分離装置とを連通する弁体と、弁体を閉弁位置に復帰させる付勢部材と、を有するため、フロートを用いた弁のように弁体が弁座に張り付いて開弁できなくなるといった問題を解消できると共に、気液分離装置の液圧変化に応じて弁体を確実に開閉動作させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明によるポンプユニットの一実施例を示す縦断面図である。図2は本ポンプユニットの構造を示したもので、図4のII−II矢視線に沿う断面図である。図3は図1のIII−III矢視線に沿う断面図である。図4は図1のIV−IV矢視線に沿う断面図である。図5は図1のV−V矢視線に沿う断面図である。図6は本ポンプユニットを一部断面として示す側面図である。
【0019】
図1乃至図6に示されるように、ポンプユニットのケーシング10は、下部に流入口11を有し、上部に流出口12をそれぞれ有し、アルミニウム合金により一体に鋳造されている。ケーシング10内の下部側には、流入口11に臨んで吸込室13が形成され、この吸込室13にはストレーナ14と吸込側逆止弁15とから成る弁組立体16が配設されている。一方、ケーシング10内の上部側には、吸込室13と流路17(図4参照)を介して連通するポンプ室18が形成されており、このポンプ室18にはベーン形ポンプ(回転式ポンプ)19が配設されている。ポンプ19は、ポンプ室18に嵌装された有底筒状の本体20を備えており、この本体20には流路17に接続する吸込口21と後述する他の流路30に接続する吐出口22とが設けられている。
【0020】
ポンプ19の本体20内にはロータ23が配設されており、ロータ23は本体20の偏心位置を延ばされた回転軸24に固定的に取付けられている。回転軸24は、ケーシング10の内部に一体形成した軸受部25とケーシング10の外壁に被蓋した蓋体26に一体形成した軸受部26aとに回動自在に支持されている。ポンプ室18と本体20とは、蓋体26によりケーシング10の開口10aを閉じることにより密閉室として区画されている。ロータ23には、半径方向へ摺動自在に複数のベーン27が放射状に装着されており、各ベーン27は、ロータ23の両側面に設けた凹部23a内に配置したリング28によりそれぞれの基端が支承されている。また、ケーシング10外に延ばした回転軸24の一端部にはモータ(図示略)により回転駆動されるプーリ29が装着されている。
【0021】
ポンプ19においては、図示を略すモータの作動でプーリ29を回転させると、その回転が回転軸24を介してロータ23に伝えられ、各ベーン27はその先端を本体20の内周面に摺接させながら回転する。この時、ロータ23が本体20に対する偏心位置を中心に回転するので、ベーン27で仕切られた各室の容積が拡大、縮小を繰返し、これにより本体20内吸込側に負圧が発生する。したがって、流入口11をタンクに接続しておけば、ロータ23の回転によりタンク内の流体が流入口11からストレーナ14、吸込側逆止弁15、流路17および吸込口21を経てポンプ19内に吸込まれ、その吐出口22から流路30へと吐出されるようになる。
【0022】
また、ケーシング10の上部側でかつポンプ19と反対側に位置する部分には気液分離装置31が配設されている(図1参照)。この気液分離装置31は下端を開放した縦形のサイクロン32から成り、このサイクロン32は、上部側の円筒状の導入部32aと、この導入部32aから下方へ延ばされかつ下端開口に向かって次第に絞られた裁頭円錐状の胴部32bと導入部32aの上側を覆う円錐状の天井部32cとを備えている。サイクロン32の胴部32bは、その下側のほぼ半分長に相当する部分が、後述するフィルタ室40内に突出するように形成され、この突出部分34aの周壁には縦方向に延びるスリット33が形成されている。
【0023】
サイクロン32の上部には、流路30の一端を構成する開口30aが形成されている。この開口30aは、ポンプ19からの流体をサイクロン32の接線方向に流出させるように形成されると共に、導入部32aと天井部32cとを跨いで縦長に設けられている。サイクロン32の天井部32cの中央には貫通孔34aを有する栓部材34が嵌着されている。この栓部材34の貫通孔34aはケーシング10に取付けた蓋体35内の排出流路36を介して後述する気体分離室60に連通している。
【0024】
気液分離装置31においては、ポンプ19から流路30を通じて圧送されてきた、気体が混入した液体は、開口30aからサイクロン32内へ流入して旋回運動を起こし、液体と気体とで作用する遠心力が異なることにより液体が半径外方に集まると共に気体が半径内方に集まる。そして、この分離された液体は胴部32bの下端開口からフィルタ室40に流下し、一方、気体を含む気体富化液は、天井部32cの栓部材34の貫通孔34aから蓋体35内の排出流路36を通過して気体分離室60へと排出される。
【0025】
図5に示されるように、フィルタ室40内にはフィルタ41が配設されている。このフィルタ41は、その先端部がフィルタ室40を区画するケーシング10内の垂直隔壁42に設けた孔42aに嵌合されている。フィルタ41の後方にはケーシング10に被蓋した蓋体43に一端を当接させた圧縮ばね44が配設されており、フィルタ41はこの圧縮ばね44により垂直隔壁42に押圧されている。蓋体43により閉じられたケーシング10の開口10bはフィルタ41を出し入れできる十分なる大きさを有しており、これにより、フィルタ41は蓋体43を取外すことにより、適宜その交換を行うことができるようになる。
【0026】
図4及び図6に示されるように、上記フィルタ41の前方には、ケーシング10の上部側に設けた出口側逆止弁45に通じる流路46の一端部と吸込側逆止弁15の2次側の流路17に通じる流路47の一端部とが垂直隔壁48を挟んで配設されている。出口側逆止弁45は、ケーシング10の水平隔壁49に形成した貫通孔50に嵌着された弁座51と、弁座51に離着座する軸付の弁体52とケーシング10の蓋体53に一端を当接させて弁体52を常時は閉じ方向に付勢する弁ばね54とを備えており、弁ばね54のばね力は流路抵抗を少なくするため、弱いばね力に設定され、ポンプ19が停止しているときの弁体52が閉弁するようになっている。
【0027】
この出口側逆止弁45の2次側は流路55を介して流出口12に接続されている。したがって、気液分離装置31で分離されフィルタ室40に流下した液は、フィルタ41から流路46を通って出口側逆止弁45を開き、さらに流路55から流出口12を通って外部の機器(例えば流量計)へと圧送され、流出口12へ導く方向への油液の流れのみを許すようになっている。
【0028】
しかして、垂直隔壁48には、ケーシング10の側壁にボルト止めした、リリーフ弁56(図5参照)が嵌合されており、いま、ポンプ19を駆動したまま外部の機器を閉じたり、あるいは絞ったりした場合は、このリリーフ弁56が開き、液が流路47および流路17からポンプ19の吸込口21へ戻されるようになる。また、上記フィルタ室40と流路46とにより流体流路が形成されている。
【0029】
図7は逃し弁38の取付構造を示す縦断面図である。図7に示すように、気体分離室60を形成するケーシング10の上壁には、気液分離装置31からの流路36内に臨んで貫通孔61が穿設されており、この貫通孔61には、気液分離装置31で分離された気体富化液を気体分離室60に供給するための管部材62が圧入されている。この管部材62の下端は、気体分離室60内の最低液位付近に設けられた小容積の液溜り64内まで延ばされている。液溜り64はケーシング10の垂直隔壁63と、この隔壁の段部63aと隔壁63に平行な縦壁64aとからU字溝状に形成され、その一端は、図3に示すように開放されている。これにより管部材62を通じて気体分離室60内に供給された気体富化液は、一旦液溜り64に溜った後、その一端から気体分離室60の底部側に流動して溜るようになる。そしてこの間、気体富化液から気体が分離され、この気体はケーシング10の上壁に設けた排気口130から外部へと排出される。
【0030】
上記蓋体35内には、排出流路36を開閉する逃し弁38が設けられている。逃し弁38は、排出流路36に供給される圧力を受けて排出流路36内を摺動して開弁位置に移動することで排出流路36と気液分離装置31とを連通する弁体100と、弁体100を閉弁位置に復帰させるコイルバネ(付勢部材)102とを有する。
【0031】
図8は逃し弁38の弁体を示す斜視図である。図8に示されるように、弁体100は、円筒状に形成された排出流路36内に軸方向に摺動可能に挿入されたスプール弁であり、貫通孔34aに連通する流入口110を開閉する円筒弁部100aと、排出流路36内の摺動をガイドするガイド部100bと、円筒弁部100aとガイド部100bとの間の軸心を連結する軸部100cと、軸部100cの外周に形成された溝100dと、軸心の中心を軸方向に貫通する貫通孔100eとを有する。また、ガイド部100bの端面に形成された凹部100fには、コイルバネ102が嵌合して弁体100を開弁方向(図7中、Xb方向)に付勢している。
【0032】
図9は逃し弁38の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。図9に示されるように、蓋体35は、貫通孔34aに連通する流入口110と、流入口110より分岐してXb方向に延在形成された通路112と、通路112に連通された圧力室114と、圧力室114を閉塞する側蓋116とを有する。圧力室114は、排出流路36と一体に形成されており、弁体100の円筒弁部100aが摺動可能に嵌合している。また、圧力室114の内壁には、弁体100に対するXb方向のストッパとしての止め輪117が係止されている。
【0033】
また、蓋体35には排出流路36のX方向中間位置で内周に連通する流出口120と、バイパス通路122の他端及び排出流路36の軸心に連通する排出口124とが設けられている。また、蓋体35の上部に固定された上蓋118には、一端が流出口120に連通され、他端がXa方向に延在して排出流路36と平行に形成されたバイパス通路122が設けられている。さらに、蓋体35には、バイパス通路122及び排出口124と連通され、上下方向に延在形成された貫通孔61が設けられており、貫通孔61の下端が管部材62の上端に連通されている。そして、バイパス通路122及び排出口124は、貫通孔61及び管部材62を通過して気体分離室60内に連通される。
【0034】
ここで、弁体100の開閉動作について説明する。弁体100は、圧力室114の液圧とコイルバネ102の付勢力とが釣り合う位置に移動することで開弁位置または閉弁位置に動作するように排出流路36内に嵌合されている。
【0035】
すなわち、圧力室114において、弁体100の円筒弁部100aの端面には、力F1が作用し、弁体100の凹部100fには、バネ力F2が作用している。
F1=(P1−P2)×S ・・・(1)
上式(1)において、P1は圧力室114の圧力、P2は凹部100fの圧力、Sは弁体100の断面積(排出流路36の流路断面積)である。
F2=K・Δx ・・・(2)
上式(2)において、Kはコイルバネ102のバネ定数、Δxはコイルバネ102の変位量である。従って、圧力室114の圧力P1がサイクロン32の上部からの液圧に上昇すると、F1>F2となって弁体100がXa方向に移動して閉弁状態となる。また、サイクロン32の上部から圧力室114に気体富化液が供給されると、圧力P1が減圧されるため、F1<F2となって弁体100がXb方向に移動して開弁状態となる。
【0036】
図9に示されるように、圧力室114に液圧が作用しているときは、弁体100がXa方向に摺動して閉弁位置に押圧されており、円筒弁部100aが流入口110及び流出口120を遮断している。このとき、圧力室114に供給された流体が弁体100の貫通孔100eを通過して排出口124より貫通孔61へ排出される。そのため、貫通孔100eが絞りとして機能しており、圧力室114の流体(液体及び気泡)が少量ずつ貫通孔61及び管部材62を通過して気体分離室60へ排出される。
【0037】
図10は逃し弁38の閉弁状態を示す縦断面図である。図11は逃し弁38の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。図10及び図11に示されるように、サイクロン32の上部に気体富化液が溜まると、圧力室114に圧力が気泡によって減圧されて弁体100がコイルバネ102のバネ力によりXb方向に摺動する。そして、弁体100が開弁位置に復帰すると、円筒弁部100aが流入口110及び流出口120を通過して弁体100の溝100dが流入口110及び流出口120に対向して連通する。そのため、流入口110に溜まった気体富化液は、サイクロン32からの液圧に押し上げられて弁体100の溝100dから流出口120、バイパス通路122、貫通孔61及び管部材62を通過して気体分離室60へ排出される。
【0038】
また、圧力室114に供給された気体富化液は、サイクロン32からの液圧により弁体100の貫通孔100eを通過して排出口124より貫通孔61へ排出される。そして、サイクロン32の上部に溜まった気体富化液が気体分離室60へ排出されると、再び、圧力室114の圧力が上昇してサイクロン32からの液圧が作用するため、弁体100がXa方向に摺動して閉弁位置に至り、円筒弁部100aが流入口110及び流出口120を遮断する。このように、弁体100は、圧力室114に供給される圧力(液圧または気泡の圧力)によって開弁位置または閉弁位置に移動して確実に流入口110と流出口120との間を連通または遮断することができ、サイクロン32の上部に溜まった気体富化液を適宜気体分離室60へ排出することが可能になる。そして、気体分離室60内で液体と分離された気体は、ケーシング10の上部に設けられた排気口130より外部に排気される。
【0039】
よって、本実施例のポンプユニットでは、逃し弁38が圧力室114に供給される圧力によって開閉動作することができるので、従来のようにフロート弁が弁座に貼り付いたり、あるいは貼り付きを防止するためにフロートを大型化するといった問題を解消することが可能である。
【0040】
ここで、気体分離室60に溜まった液体をポンプ19の吸込口21に戻す構成について説明する。図2及び図3に示されるように、気体分離室60の底部側にはフロート67が配設されている。フロート67は、その一面から延ばした軸部67aの先端部をケーシング10にボルト止めした蓋体68に軸着させることにより上下方向に回動自在となっている。蓋体68には、その表・裏面に突出して第1のボス部69が設けられており、この第1のボス部69には軸穴70が形成されている。
【0041】
また、気体分離室60内に位置する前記ボス部69の先端部にはその軸穴70を気体分離室60内に連通させる開口71が形成されている。この開口71の周りは戻し弁72の弁座として構成されており、この開口71には、フロート67の軸部67aに軸着された弁体(ポペット弁)74が嵌合されている。この戻し弁72は、フロート67の上昇に応じて弁体74を上動させ、開口71を開く。
【0042】
なお、フロート67および弁体74は、蓋体68に対して予め一体化されており、該蓋体68により閉じられたケーシング10の開口10cを通じて気体分離室60内に出し入れできるようになっている。また、蓋体68の外側において前記第1のボス部69の一端部にはその軸穴70を閉じるプラグ75が螺合されている。
【0043】
一方、ケーシング10内の下部には、図4,図5に示されるように、ケーシング10の側面からリリーフ弁56の2次側の流路47に連通する戻し流路76が形成されている。この戻し流路76と前記第1のボス部69内の軸穴70とはケーシング10に設けた第2のボス部77内の連通孔(図示略)により接続されており、その接続部には第1のボス部69内の軸穴70への液の逆流を規制する逆止弁(フラッパ弁)78が設けられている。これにより、気体分離室60内に液が溜ってフロート67が上昇すると、戻し弁72が開いて気体分離室60内の液が第1のボス部69内の軸穴70、第2のボス部77内の連通孔、戻し流路76、リリーフ弁56の2次側の流路47、吸込側逆止弁15の2次側の流路17を経由してポンプ19の吸込口21に戻されるようになる。
【0044】
弁組立体16は、ポンプ19内の負圧発生により弁体が開弁動作して、ストレーナ14から流入した流体がポンプ19の吸込口21に通じる流路17に流れ込む。
【0045】
一方、フィルタ41の前方に配置したリリーフ弁56は、流路46内の液圧が必要以上に高まった場合には、弁体が開き、流路46内の液が流路47および流路17からポンプ19の吸込口21へ戻される。
【0046】
以下、上記のように構成したポンプユニットの作用を説明する。ポンプ19のロータ23をモータ(図示せず)により回転駆動させると、吸込側逆止弁15が開き、流入口11からストレーナ14、吸込側逆止弁15および流路17を経てタンク内の流体がポンプ19内に吸込まれ、かつその吐出口22から流路30へと吐出される。そして、ポンプ19から吐出された流体は気液分離装置31側へ流動し、流路30の開口30aからサイクロン32内に流入して旋回運動を起こし、遠心力の差により液体が半径外方に集まると共に気体が半径内方に集まる。
【0047】
本実施例においては、特に気液分離装置31として縦形サイクロン32を用いているので、比重差により液体と気体とが上下方向にも分離し、遠心分離と相まって気液分離能力が向上する。また、サイクロン32の胴部32bを下端開口に向かって次第に絞っているので、上記旋回流の流速が下方に向かうに従って大きくなり、気液分離能力がより一層向上する。また、サイクロン32の天井部32cを円錐状に形成しているので、下向きの旋回流をつくりやすくなるばかりか、サイクロン32内に流体が流入する初期段階でも旋回流の流速が高まり、気液分離能力がさらに向上する。
【0048】
このようにして分離された液体は胴部32bの下端開口からフィルタ室40に流下し、一方、気体を含む気体富化液は、天井部32cの栓部材34の貫通孔34aから蓋体35内の流入口110及び圧力室114に供給される。
【0049】
この時、サイクロン32の天井部32cが円錐形状となっていることより気体富化液の排出が容易となる。そして、圧力室114内に供給された気体富化液は、逃し弁38の弁体100を閉弁方向に押圧している液圧を減圧することより、弁体100がコイルバネ102のバネ力より開弁位置に摺動する。その結果、弁体100の溝100dが流入口110と流出口120との間を連通するため、流入口110に溜まった気体富化液は、サイクロン32からの液圧に押し上げられて弁体100の溝100dから流出口120、バイパス通路122、貫通孔61及び管部材62を通過して気体分離室60へ排出される。
【0050】
フィルタ室40に流下した液体は、フィルタ41を通って流路46内に押し出され、液体の圧力により出口側逆止弁45を開いて流路55から流出口12へと圧送される。ここで、気液分離装置31で分離された液体中に気体がわずか残存している場合は、気体はフィルタ室40の上部に溜るようになる。この溜った気体は、ポンプ19の作動中は液の流れがあるため、フィルタ室40の上部に溜ったままとなるが、ポンプ19が停止されると、胴部32bのスリット33からサイクロン32内に戻り、ポンプ19の再作動に応じて天井部32cから排出される。したがって、流出口12へ気体を含む液体が供給されることはない。なお、流出口12からの液体の流出が止められ、あるいは絞られた場合にリリーフ弁56が開いて液がポンプ19の吸込口21へ戻されることは前記したとおりである。
【0051】
一方、蓋体35内の逃し弁38の開弁動作によりサイクロン32から排出された気体富化液は、管部材62を通じて気体分離室60内に供給される。この時、気体富化液が気体分離室60内に急速自由落下すると、気体分離室60内の液が大きく攪拌されて泡立ちが発生し、フロート67すなわち戻し弁72が誤作動し、戻し流路76に気体を含む液が流入するようになる。しかし、本実施例では、管部材62の先端を液溜り64内の液中に位置決めされているので、気体分離室60内の貯留液体が気体富化液により大きく攪拌されることはなくなり、したがって液の泡立ちおよびその拡散は抑制される。そして、気体分離室60内で気体の分離が進行し、分離された気体はケーシング10のエアベント65から外部へと排出される。このようにして、気体分離室60内には気体を分離した液が溜り、次第にその液位を上昇させる。すると、フロート67が上昇して戻し弁72の弁体74が開き、気体分離室60内の液が戻し流路76へ流れ、さらにリリーフ弁56の2次側の流路47、吸込側逆止弁15の2次側の流路17を経由してポンプ19の吸込口21に戻される。
【0052】
しかして、例えばタンク側の問題によりケーシング10内に多量の空気(液体を含む)が吸込まれると、圧力室114内が液圧より減圧されて逃し弁38の開弁動作するため、気体分離室60へ速やかに排出され、したがって流出口12へ空気が漏れ出ることはない。
【実施例2】
【0053】
図12は実施例2の構成を示す縦断面図である。尚、実施例2の説明において、上記実施例1と同一部分には、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図12に示されるように、上記蓋体35内には、排出流路36を開閉する逃し弁138が設けられている。逃し弁138は、排出流路36に供給される圧力を受けて排出流路36内を摺動して開弁位置に移動することで排出流路36と気液分離装置31とを連通する弁体200と、弁体200を閉弁位置に復帰させるコイルバネ(付勢部材)102とを有する。
【0055】
図13は実施例2の弁体を示す斜視図である。図13に示されるように、弁体200は、円筒状に形成された排出流路36内に軸方向に摺動可能に挿入されたスプール弁であり、貫通孔34aに連通する流入口110を開閉する円筒弁部200aと、排出流路36内の摺動をガイドするように4分割されたガイド部200bと、円筒弁部200aとガイド部200bとの間の軸心を連結する軸部200cと、軸部100cの外周に形成された溝200dと、軸心の中心を軸方向に貫通する貫通孔200eとを有する。また、ガイド部200bの端面に形成された凹部200fには、コイルバネ102が嵌合して弁体200を開弁方向(図12中、Xb方向)に付勢している。さらに、4本のガイド部200bは、周方向に90度間隔で突出形成されており、各ガイド部200b間には、溝200dと凹部200fとを連通する切欠200gが開口している。
【0056】
図14は逃し弁138の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。図14に示されるように、蓋体35には、貫通孔34aに連通する流入口110と、流入口110より分岐してXb方向に延在形成された通路112と、通路112に連通された圧力室114と、圧力室114を閉塞する側蓋116とを有する。圧力室114は、排出流路36と一体に形成されており、弁体100の円筒弁部100aが摺動可能に嵌合している。
【0057】
また、蓋体35には、実施例1のような流出口120、バイパス通路122が設けられておらず、排出流路36の軸心に連通する排出口124が貫通孔61に連通するように設けられている。そして、排出口124は、貫通孔61及び管部材62を介して気体分離室60内に連通される。
【0058】
尚、第2実施例では、排出流路36の内径が圧力室114の内径よりも小径に形成されており、排出流路36と圧力室114との境界に段部202が設けられている。この段部202は、円筒弁部200aに対するXa方向のストッパとなる。
【0059】
ここで、弁体200の開閉動作について説明する。弁体200は、圧力室114の圧力とコイルバネ102の付勢力とが釣り合う位置に移動することで開弁位置または閉弁位置に動作するように排出流路36内に嵌合されている。
【0060】
図14に示されるように、圧力室114に液圧が作用しているときは、弁体200がXa方向に摺動して閉弁位置に押圧されており、円筒弁部100aが流入口110を遮断している。このとき、圧力室114に供給された流体が弁体200の貫通孔200eを通過して排出口124より貫通孔61へ排出される。そのため、貫通孔200eが絞りとして機能しており、圧力室114の流体が少量ずつ貫通孔61及び管部材62を介して気体分離室60へ排出される。
【0061】
図15は逃し弁138の閉弁状態を示す縦断面図である。図16は逃し弁138の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。図15及び図16に示されるように、サイクロン32の上部に気体富化液が溜まると、圧力室114の圧力が気泡によって減圧されるため、弁体200がコイルバネ102のバネ力によりXb方向に摺動して開弁位置に復帰し、円筒弁部200aが流入口110を通過して弁体200の溝200dが流入口110に対向する位置に移動する。そのため、流入口110と排出口124との間が弁体200の溝200d、切欠200gによって連通される。これにより、流入口110に溜まった気体富化液は、サイクロン32からの液圧に押し上げられて弁体200の溝200d、切欠200gから流出口120、貫通孔61及び管部材62を通過して気体分離室60へ排出される。
【0062】
また、圧力室114に供給された気体富化液は、サイクロン32からの液圧により弁体200の貫通孔200eを通過して排出口124より貫通孔61へ排出される。そして、サイクロン32の上部に溜まった気体富化液が気体分離室60へ排出されると、再び、圧力室114にサイクロン32からの液圧が作用するため、弁体200がXa方向に摺動して閉弁位置に至り、円筒弁部200aが流入口110及び流出口120を遮断する。このように、弁体200は、圧力室114に供給される圧力(液圧または気体富化液の圧力)によって開弁位置または閉弁位置に移動して確実に流入口110と排出口124との間を連通または遮断することができ、サイクロン32の上部に溜まった気体富化液を適宜気体分離室60へ排出することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
上記実施例では、給油装置に搭載されたポンプユニットを一例として挙げたが、これに限らず、気泡が液体中に混入するような液体供給系路を有する他の装置にも本発明を適用できるのは勿論である。
【0064】
また、上記実施例では、油液を供給する系路にポンプユニットを配置したが、油液以外の液体を供給する系路にポンプユニットを配置する場合にも本発明を適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明によるポンプユニットの一実施例を示す縦断面図である。
【図2】本ポンプユニットの構造を示したもので、図4のII−II矢視線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III矢視線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV矢視線に沿う断面図である。
【図5】図1のV−V矢視線に沿う断面図である。
【図6】本ポンプユニットを一部断面として示す側面図である。
【図7】逃し弁38の取付構造を示す縦断面図である。
【図8】逃し弁38の弁体を示す斜視図である。
【図9】逃し弁38の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。
【図10】逃し弁38の閉弁状態を示す縦断面図である。
【図11】逃し弁38の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。
【図12】実施例2の構成を示す縦断面図である。
【図13】実施例2の弁体を示す斜視図である。
【図14】逃し弁138の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。
【図15】逃し弁138の閉弁状態を示す縦断面図である。
【図16】逃し弁138の閉弁動作を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0066】
10 ケーシング
11 流入口
12 流出口
19 ポンプ
21 ポンプの吸込口
22 ポンプの吐出口
31 気液分離装置
32 サイクロン
35 蓋体
36 排出流路
38,138 逃し弁
40 フィルタ室
41 フィルタ
60 気体分離室
61 貫通孔
62 管部材
100,200 弁体
102 コイルバネ(付勢部材)
110 流入口
112 通路
114 圧力室
120 流出口
122 バイパス通路
124 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入口および流出口を有するケーシング内に、前記流入口から流体を吸込むポンプと、
該ポンプから吐出された流体を液体と気体富化液とに分離する気液分離装置と、
該気液分離装置で分離された気体富化液から気体を分離する気体分離室と、
前記気液分離装置から前記気体分離室へ気体富化液を送る流路と、
気液分離装置からの気体富化液の圧力低下に応じて前記流路を開く逃し弁と、を有し、
前記気液分離装置で分離された液体を前記流出口へ導くと共に、前記気体分離室で分離された気体を前記逃し弁の開弁により前記ケーシング外へ排出するポンプユニットにおいて、
前記逃し弁は、
前記流路に供給される圧力を受けて前記流路内を摺動して閉弁位置に移動することで前記流路と前記気液分離装置とを連通する弁体と、
前記弁体を開弁位置に復帰させる付勢部材と、
を有することを特徴とするポンプユニット。
【請求項2】
前記弁体は、外周に前記流路と前記気液分離装置とを連通する溝が形成されたスプールであることを特徴とする請求項1に記載のポンプユニット。
【請求項3】
前記弁体は、前記気液分離装置から前記気体分離室へ気体富化液を供給する貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載のポンプユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−239611(P2007−239611A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−63242(P2006−63242)
【出願日】平成18年3月8日(2006.3.8)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】