説明

ポンプ用モータ

【目的】軸受摩耗を抑制すると共に磁気エネルギーロスを低減し、高効率で長期にわたる軸受寿命を有するポンプ用モータとすること。
【構成】軟磁性材からなりステータコア本体1の内周側にティース板片22を有するティース部2が等間隔に形成され且つティース板片22には軸方向後端から直径中心に向って突出する突出条23が形成されたステータコアAと、周方向に等分された領域で直径方向の外周側と内周側とを異なる磁極とした円筒部31と、軸方向の前後方向両側を異なる磁極とした磁極部を有する円盤部32と、管状部41の外周から放射状の突出板片42が形成され且つ円筒部31の磁極部同士が突出板片42にて区切るように円筒部31に埋め込まれたロータコア4とからなること。円筒部31は、周方向をティース板片22に包囲されると共に突出条23は円筒部31の軸方向後部端面31aの外側箇所に近接してなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受摩耗を抑制すると共に磁気エネルギーロスを低減し、高効率で長期にわたる軸受寿命を有するポンプ用モータに関する。
【背景技術】
【0002】
モータのインナーロータにインペラーが一体となって構成され、自動車等に使用される電動ポンプが存在する。このようにモータとポンプが一体となった構成として、特許文献1に開示されている。なお、以下の特許文献1に関する説明では、特許文献1にて使用されているものをそのまま使用する。特許文献1の図1(A)の右側のステータコア1を見ると、ステータコア1の下部ステータコア本体11aの内周側のステータポール11bはS極となっている。
【0003】
上部ステータコア本体12aの頂部突起12bはN極となっている。これに対応するように、インナーロータマグネット2の下部ロータマグネット本体21の右側はN極、上部ロータマグネット本体22の右側はS極となっている。このように、ステータコア1とインナーロータマグネット2とは、径方向同士、軸方向同士で磁力の吸引・反発力を利用してインナーロータマグネット2を回転駆動させる方式となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−133241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、インペラ軸受の摩耗速度を低減することができることにより、インペラ3の軸受の寿命を長期化し、また、ステータコア1の形状自由度を高めることなど種々の優れた特徴を有している。しかしながら下記に示す点について、さらなる改善の余地が残されている。
【0006】
まず、インナーロータマグネット2はプラスチックマグネットで形成されているため、樹脂を含有する分、磁石の割合が少なくなるため、通常の焼成マグネットと比較して磁力が小さい。また、下部ロータマグネット本体21〜ステータポール11b〜下部ステータコア本体11a〜上部ステータコア本体12a〜頂部突起12b〜上部ロータマグネット
本体22〜下部ロータマグネット本体21と遠回りをする磁気回路であり、そのため磁力の損失が発生し易い。
【0007】
さらに、インナーロータマグネット2の下部ロータマグネット本体21の下側から放出された磁力線は有効活用されていない。以上の点により、インペラー軸受の摩耗速度を低減する余地は、残されている。 そこで、本発明が目的(解決しようとする技術的課題)は、磁力の低下を抑えると共に磁力の損失を少なくし、さらにインペラー軸受の摩耗を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、軟磁性材からなりステータコア本体の内周側にティース板片を有するティース部が等間隔に形成され且つ前記ティース板片には軸方向後端から直径中心に向って突出する突出条が形成されたステータコアと、周方向に等分された領域で直径方向の外周側と内周側とを異なる磁極とした円筒部と、軸方向の前後方向両側を異なる磁極とした磁極部を有する円盤部と、管状部の外周から放射状の突出板片が形成され且つ前記円筒部の磁極部同士が前記突出板片にて区切るように円筒部に埋め込まれたロータコアとからなり、前記円筒部は周方向を前記ティース板片に包囲されると共に前記突出条は前記円筒部の軸方向後部端面の外側箇所に近接してなるポンプ用モータとしたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、請求項1において、前記ステータコアのコア本体の軸方向前方側端部には、前方側に突出する凸状部が複数形成され、該凸状部の先端は前記円盤部の軸方向後面側で且つ外周寄りの箇所に近接されてなるポンプ用モータとしたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記ステータコア及び前記ロータコアは軟磁性圧粉により形成されてなるポンプ用モータとしたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記円盤部の磁極部は直径方向の外周側と内周側にそれぞれ異なる2つの磁極が設けられてなるポンプ用モータとしたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記円盤部の磁極部は直径方向に1つのみの磁極が設けられてなるポンプ用モータとしたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、インナーロータマグネットの円筒部には、軟磁性材のロータコアが埋め込まれており、そのためにインナーロータマグネットと軟磁性材のステータコアとの磁石同士のマグネットトルクだけでなく、軟磁性材のステータコアの電磁石と軟磁性材のロータコアのとの間でリラクタンストルク(鉄と磁石が引き合う力)も発生する。よってロータコアが存在しないインナーロータマグネットのみの構成と比較して、マグネット体積を小さくすることが出来る。これにより、高出力モータでは、高磁力、高コストのネオジウムマグネットの使用量を削減し、低コスト化が達成できる。
【0012】
また、軟磁性材からなるステータコアの電磁石と、同様に軟磁性材からなるロータコアは、径方向において対向して配置されているので、軸方向の位置ズレを少なくするような磁力による吸引力が発生する。そのために、たとえ、シャフトに軸力が生じ(インペラーの浮力等)、シャフトが軸方向に位置ズレようとしても、前述した元の適正な位置に戻ろうとする磁力による吸引力が発生するため、この吸引力がシャフトの軸力を相殺する。これによりポンプ部分のシャフトの軸力を受け止める軸受け部分の摩耗を抑制することができ、軸受寿命を延ばすことができる。
【0013】
インナーロータマグネットの円盤部の内周部,円盤部の外周部,軟磁性圧粉製のステータコアのステータコア本体の外周側,前記ステータコアのティース部の内周側,インナーロータマグネットの円盤部の内周部の順路で確実なアキシャル磁気回路が形成されており、この回路は最短となり、したがって磁力の損失を少くすることができる。これにより磁力の効率を向上させることができる。
【0014】
さらに、ティース部のティース板片には軸方向後端から直径中心に向って突出する突出条が形成されており、該突出条は円筒部の軸方向後部端面の外周箇所に近接する構成としているので、インナーロータマグネットの円筒部の軸方向後端付近の磁力線は、前記突出条と円筒部の軸方向における後端部との間を略最短の距離で折り返すようにして磁気回路を形成できる。そのためインナーローターマグネットの円筒部の軸方向後端より漏れる磁束が減少し、磁気損失を最小限に抑えることができる。磁力が有効に利用され、これにより効率が向上する。
【0015】
請求項2の発明では、ステータコアのコア本体の軸方向前方側端部には、前方側に突出する凸状部が複数形成され、該凸状部の先端は前記円盤部の軸方向後面側で且つ外周寄りの箇所に近接された構成により、インナーロータマグネットの円盤部とステータコアの軸方向前方側に構成される磁気回路も最短距離の磁気回路を構成でき、磁気損失を最小限に抑えることができる。
【0016】
請求項3の発明では、ステータコア及びインナーロータのロータコアは軟磁性圧粉により形成されたことにより、成形金型による成形となり、正確な形状のインナーロータマグネットの近接面の形成ができる。請求項4の発明では、円盤部の磁極部は直径方向の外周側と内周側にそれぞれ異なる2つの磁極が設けられたことにより円盤部側の磁気回路をより一層強力なものにすることができる。請求項5の発明では、円盤部の磁極部は1つのみの磁極が設けられた構成としたことにより、円盤部の直径を小さくすることができ、よって、構成が簡単になり、装置全体を小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(A)は本発明の第1実施形態の縦断側面図、(B)は(A)のモータケースを除くY1−Y1矢視図、(C)は(A)のモータケースを除くY2−Y2矢視断面図、(D)は(A)の(ア)部拡大図、(E)は(D)のY3−Y3矢視図、(F)は(A)の(イ)部拡大図、(G)は(F)のX1−X1矢視断面図である。
【図2】(A)はステータコアの一部切除した斜視図、(B)はインナーロータマグネットの斜視図、(C)はローターコアの斜視図である。
【図3】(A)はシャフトにインナーロータマグネットが組み付けられた縦断側面図、(B)は(A)のY4−Y4矢視図、(C)は(A)のY5−Y5矢視断面図、(D)は(A)のY6−Y6矢視断面図である。
【図4】(A)は本発明においてラジアル磁気回路が構成された状態の一部断面にした要部拡大図、(B)は本発明においてアキシャル磁気回路が構成された状態の要部拡大断面図である。
【図5】(A)は第2実施形態におけるシャフトにインナーロータマグネットが組み付けられた一部断面にした側面図、(B)は第2実施形態においてアキシャル磁気回路が構成された状態の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。本発明の構成は、図1(A)に示すように、主に、ステータコアA,インナーロータマグネットB、シャフト5及びモータケース6,ケースカバー7である。本発明では、方向を示す基準として軸方向が存在するが、この軸方向は、前記構成部材が適正に組み合せられたときのシャフト5の長手方向のことである〔図1(A),図3(A)参照〕。そして、本発明のポンプ用モータは、基本的には図1(A)に示すように、水平状態で配置されるが、設置条件においてこれに限定されることはない。
【0019】
さらに、軸方向で前方側と後方側とが存在し、シャフト5がモータケース6から突出する側を前方側とし、軸方向においてその反対側を後方側とする〔図1(A)参照〕。ただし、軸方向の前方側及び後方側は、説明の便宜上のものであり、本発明のポンプ用モータが自動車に装着される状態で、前方側及び後方側は適宜変化する。
【0020】
ステータコアAは、軟磁性材から形成されている。軟磁性材は、外部から磁界をかけると磁化されるが、外部からの磁界を除くと磁化が消える材料である。軟磁性材は、具体的には軟磁性圧粉より形成されるものであって、軟磁性の鉄粉を圧縮成形して所望の形状としたものである。
【0021】
ステータコアAは、ステータコア本体1と複数のティース部2,2,…とからなる〔図1(A),(B)及び図2(A)参照〕。前記ステータコア本体1は、略中空円筒形状又は環状に形成されており、前記ティース部2は、ポール部21とティース板片22とからなる。そして、ステータコア本体1の内周側で周方向に等間隔で且つその直径中心に向かってポール部21が突出形成され、該ポール部21の内端にティース板片22が形成される。
【0022】
ポール部21は、突出する方向に直交する断面形状が方形状に形成され、ティース板片22の軸方向に直交する断面形状は円弧状に形成される〔図1(C)参照〕。該ティース板片22の軸方向の一端(後端)側で且つ周方向に沿って突出条23が形成されている〔図1(A),(B),(D),(E)及び図2(A)参照〕。ティース部2は、ステータコア本体1に対して、4以上の偶数個が等間隔となるようにステータコア本体1に形成される。本発明の実施形態では、ティース部2は、全部で6個形成されている〔図1(B),(C)参照〕。
【0023】
そして、6個のティース部2は、ステータコア本体11の直径中心に対して60度の間隔をもって配置され、6個の磁極を有するようにして構成されている。6個のティース部2,2,…のティース板片22,22,…は、等間隔に隙間を有する略円周壁面体を構成し、複数の突出条23,23,…は、円周状の段状部を構成する。さらに、具体的には、ティース板片22に対して直角(略直角も含む)となるように屈曲形成されたものである〔図1(D)参照〕。各ポール部21には、銅線であるコイル24が巻着される。コイル24の先の部分は、配線や制御基板が接続されている。
【0024】
また、ステータコア本体1の軸方向前端縁側には、複数の凸状部11,11,…が周方向に等間隔で且つ軸方向前方に突出するように形成されている。該凸状部11は、前記ティース部2に対応して等しい数で、且つステータコア本体1の周方向において前記ティース部2に対応して同一の位置となるようにして形成されている。
【0025】
また、前記凸状部11について、隣接する凸状部11,11間は、凹(へこみ)状部とし、複数の凹状部が形成されることによって、複数の凸状部11,11,…が形成されるものと見ることができる。前記ステータコアAの電気制御は一般的な3相制御である。たとえば、ティース部2の内周側(ティース板片22の位置)がS極であるならば、ステータコア本体1の外周側はN極となる。
【0026】
次に、インナーロータマグネットBについて説明する。本発明では、インナーロータマグネットBの形状で第1実施形態と第2実施形態とが存在する。第1実施形態のインナーロータマグネットBは、図1(A),(C),図2(B),図3等に示すように、ロータ部3とロータコア4とから構成される。前記ロータ部3は、円筒部31と円盤部32とから構成され、円筒部31は円盤部32よりも直径寸法が小さく〔図2(B),図3(A)参照〕、且つ軸方向寸法は大きく形成され、軸方向の前方から円盤部32,円筒部31が組み合わされて、一体形状となっている。つまり、ロータ部3の軸方向に沿う断面形状は略凸形状である。ロータコア4は、ロータ部3の円筒部31に埋め込まれて内蔵される。
【0027】
インナーロータマグネットBは、後述するシャフト5に固着され、前記ステータコアAと共にモータケース6の大径室61内に配置される。そして、インナーロータマグネットBは、シャフト5と共に一体となって回転する。インナーロータマグネットBのロータ部3は、主にプラスチックマグネットより形成される。
【0028】
プラスチックマグネットとは、樹脂と磁石が混在した材質である。円筒部31及び円盤部32には、磁極が備わっている。この磁極の配列については、後述する。ロータ部3の円筒部31及び円盤部32には、その直径中心で且つ軸方向にシャフト5が挿入する貫通孔33が形成されている。
【0029】
ロータコア4は、ステータコアAと同様に軟磁性材から形成されるものである。具体的には、軟磁性材は、軟磁性圧粉により形成されるものであって、ステータコアAと同様に粉末を圧縮成形することによって形成される。ロータコア4は、円筒形状の管状部41の外周側面より複数の突出板片42が放射状に形成されたものである〔図2(C)参照〕。管状部41は、中空円筒状に形成され、前記突出板片42は、方形状で且つ平薄板状に形成されている。本発明の実施形態では、突出板片42の数は4である。
【0030】
ロータコア4は、ロータ部3の円筒部31に埋め込まれる〔図2(B),図3(D),図4(A)等参照〕。具体的には、ロータ部3を樹脂成形し、ロータコア4が圧入等により内蔵され、円筒部31とロータコア4とが一体化される。ロータコア4の放射状に配置された複数の突出板片42,42,…のそれぞれの外端同士を結ぶ円の直径は、ロータ部3の円筒部31の外径に等しい(略等しいも含む)〔図2(B),図3(D),図4(A)等参照〕。
【0031】
また、管状部41は、円筒部31の貫通孔33と直径中心が一致しており、該貫通孔33の位置に管状部41が配置されることになる〔図2(B)、図3(A),(B)参照〕。さらに、管状部41は、前記円筒部31よりも軸方向寸法が僅かに短く形成される。そして、管状部41の軸方向の後端と、円筒部31の軸方向の後部端面31aとの位置が一致するように構成される〔図2(B)、図3(A)参照〕。前記シャフト5は、ロータ部3の円筒部31及び円盤部32の直径中心に軸方向に挿入され、且つロータコア4の管状部41に挿入される。この挿入は、圧入である。
【0032】
インナーロータマグネットBの第1実施形態における、円筒部31及び円盤部32の磁極(S極及びN極)の配列について図3に基づいて説明する。前記円筒部31は、周方向に等分された領域の磁極部Ma,Ma,…が複数設けられている。該磁極部Maは、円筒部31の軸方向に直交する断面において扇形状の領域となる。そして、磁極部Maは、円筒部31の周方向に沿って複数設けられ、全体として放射状の配置となる。また、磁極部Maの個数は、偶数であり、本発明の実施形態では4個としている〔図3(B)参照〕。
【0033】
磁極部Maは、さらに、円筒部31の直径方向において外周領域と内周領域に区分けされそれぞれは異なる磁極を有している。具体的には外周領域がS極であれば、内周領域はN極となる〔図3(A)参照〕。また、周方向に隣接する磁極部Ma,Ma同士で、一方の磁極部Maの外周領域がS極であれば、他方の磁極部Maの外周領域はN極となる〔図3(B),(D)参照〕。同様に隣接する磁極部Ma,Ma同士の内周領域においても、一方がS極であれば他方はN極となる。つまり、S極とN極とは、円筒部31の直径方向及び周方向のいずれにも交互に連続する。
【0034】
円盤部32は、円筒部31と同様に周方向に等分された領域の磁極部Mb,Mb,…が複数設けられている〔図3(B)参照〕。該磁極部Mbも、前記磁極部Maと同様に扇形状の領域となり、該磁極部Mbが円盤部32の周方向に沿って複数設けられ、全体として放射状の配置となる。
【0035】
また、磁極部Mbの個数は、前記磁極部Maと同等の個数である。そして、円筒部31のそれぞれの磁極部Maに対して、円盤部32の磁極部Mbは、位置が対応するように構成される〔図3(A),(B)参照〕。すなわち、円筒部31の磁極部Maの両境界線の延長線に沿って円盤部32の磁極部Mbが設定される。
【0036】
円盤部32の磁極部Mbは、さらに、直径方向において外周領域と内周領域に区分けされそれぞれは異なる2つ磁極を有している〔図3(A)乃至(C)参照〕。具体的には外周領域がS極であれば、内周領域はN極となる。また、周方向に隣接する磁極部Mb,Mb同士で、一方の磁極部Mbの外周領域がS極であれば、他方の磁極部Mbの外周領域はN極となる。
【0037】
同様に周方向に隣接する磁極部Mb,Mb同士の内周領域においても、一方がS極であれば他方はN極となる。さらに、それぞれの磁極部Mbにおいて、円盤部32の軸方向の前後両側での磁極が異なる。すなわち、磁極部Mbの軸方向後側がS極であれば、軸方向前側はN極となる〔図3(A)、図4(B)参照〕。
【0038】
インナーロータマグネットBの第2実施形態は、円盤部32の磁極部Mbは1つのみの磁極(S極又はN極)が設けられたものである〔図5(A)参照〕。具体的には、磁極部Mbは内周側及び外周側の2つの領域は存在しないもので、一つの磁極部Mbに一つの磁極が存在する。磁極部Mbにおいて、円盤部32の軸方向の前後両側では、2つの異なる磁極が存在する。第2実施形態のインナーロータマグネットBは、円盤部32の直径が、第1実施形態のものよりも小さくなり、小型化及び軽量化にすることができる。図5(B)は、第2実施形態におけるアキシャル磁気回路を示す。
【0039】
前記ロータコア4は、ロータ部3の円筒部31に埋め込まれた状態で、複数の突出板片42,42,…によって、複数の磁極部Ma,Ma,…が区分けされる構造となる〔図3(B)参照〕。このとき、ロータコア4の突出板片42の直径方向外端と軸方向後端は、円筒部31の外周側面及び軸方向の後端面と同一面(略同一面も含む)で露出した状態となる〔図2(B),図3(B)参照〕。ただし、突出板片42が円筒部31の外周側面及び軸方向の後端面から突出するものではない。
【0040】
モータケース6及びケースカバー7は、アルミ合金製であり、前記モータケース6には、大径室61と小径室62が形成されている。大径室61と小径室62とは連続形成されており、両室同士は連通している〔図1(A)参照〕。小径室62には大径室61側寄りと、モータケース6の外部側寄りの2箇所に軸受装着部61a,61aが形成され、2個の軸受8,8が装着されている〔図1(A)参照〕。シャフト5が前記軸受8,8に軸支されることにより、インナーロータマグネットBは、大径室61内で回動自在となる。
【0041】
インナーロータマグネットBは、円筒部31の外周側面がステータコアAの複数のティース板片22,22,…によって包囲される〔図1(A),(C)参照〕。そしてティース板片22,22,…の突出条23,23,…は、前記円筒部31の軸方向の後部端面31aの外側周箇所を覆うようにして、近接配置される〔図1(A),(B),(D),(E)参照〕。
【0042】
また、上記近接配置における近接とは、突出条23と円筒部31の後部端面31aとが実際には接触しないが、略接触する程度まで相互に近づく状態が含まれる。また、ステータコアAのステータコア本体1の軸方向前方側端部から、前方側に突出する複数の凸状部11,11,…は、前記円盤部32の軸方向後面側で且つ外周寄りの箇所に近接される。
【0043】
これによって、ステータコアAに電気を流すと、該ステータコアAを構成する電磁石と、インナーロータマグネットBが有する磁極部Ma及び磁極部Mbとによってマグネットトルクが発生し、インナーロータマグネットBと共にシャフト5が回転する。さらに、インナーロータマグネットBは、軟磁性のロータコア4の突出板片42,42,…と、ステータコアAに生じる電磁石との間でリラクタンストルク(鉄と磁石が引き合う力)を発生する。
【0044】
したがって、軸方向の位置ズレを少なくするような磁力による吸引力が発生する。そのために、たとえシャフトに軸力が生じ(インペラ−の浮力等)、シャフト5が軸方向に位置ズレようとしても、前記リラクタンストルクによって、シャフト5を適正な位置に戻そうとする磁力が作用し、シャフト5を常時、軸方向において適正な位置に維持することができる。また、これによりポンプ部分のシャフトの軸力を受け止める軸受8の摩耗を抑制することができ、軸受8の寿命を延ばすことができる。
【0045】
本発明のポンプ用モータは、マグネットトルクとリラクタンストルクを足し合わせた回転駆動力となるため、より大きなトルクを発生させることが出来る。このときの磁気回路は、ラジアル磁気回路である〔図4(A)参照〕。
【0046】
次に、インナーロータマグネットBの円盤部32の内周部,インナーロータマグネットBの円盤部32の外周部,ステータコアAのステータコア本体1の外周側,ステータコアAのティース部2の内周側,インナーロータマグネットBの円盤部32の内周部という磁気回路が形成される。
【0047】
さらに、インナーロータマグネットBの円盤部32,ステータコアAのティース部2の内周部,ステータコアAのティース部2のティース板片22,インナーロータマグネットBの円筒部31という磁気回路も形成される。これらの磁気回路は、アキシャル磁気回路である〔図4(B)参照〕。
【0048】
本発明において第2の実施形態のインナーロータマグネットBが使用されたものでは、インナーロータマグネットBの円盤部32の磁極構成は、円盤部32,ステータコアAのティース板片22の内周部,ステータコアAの突出条23,インナーロータマグネットBの円筒部3,インナーロータマグネットBの円盤部32という磁気回路が形成される。
【0049】
この第2実施形態についても、インナーロータマグネットBの円盤部32,円筒部31の磁力を有効に利用でき、マグネットやステータコアで生じた磁気エネルギーの伝達ロスを低減することが出来るため、効率が向上する。さらに、第2実施形態ではインナーロータマグネットBの磁極部Mbの構成が簡単となり、製造が容易であり、安価にできる。
【符号の説明】
【0050】
A…ステータコア、1…ステータコア本体、11…凸状部、2…ティース部、
22…ティース板片、23…突出条、3…ロータ部、31…円筒部、32…円盤部、
Ma…磁極部、Mb…磁極部、4…ロータコア、41…管状部、42…突出板片、
5…シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性材からなりステータコア本体の内周側にティース板片を有するティース部が等間隔に形成され且つ前記ティース板片には軸方向後端から直径中心に向って突出する突出条が形成されたステータコアと、周方向に等分された領域で直径方向の外周側と内周側とを異なる磁極とした円筒部と、軸方向の前後方向両側を異なる磁極とした磁極部を有する円盤部と、管状部の外周から放射状の突出板片が形成され且つ前記円筒部の磁極部同士が前記突出板片にて区切るように円筒部に埋め込まれたロータコアとからなり、前記円筒部は周方向を前記ティース板片に包囲されると共に前記突出条は前記円筒部の軸方向後部端面の外側箇所に近接してなることを特徴とするポンプ用モータ。
【請求項2】
請求項1において、前記ステータコアのコア本体の軸方向前方側端部には、前方側に突出する凸状部が複数形成され、該凸状部の先端は前記円盤部の軸方向後面側で且つ外周寄りの箇所に近接されてなることを特徴とするポンプ用モータ。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ステータコア及び前記ロータコアは軟磁性圧粉により形成されてなることを特徴とするポンプ用モータ。
【請求項4】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記円盤部の磁極部は直径方向の外周側と内周側にそれぞれ異なる2つの磁極が設けられてなることを特徴とするポンプ用モータ。
【請求項5】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記円盤部の磁極部は直径方向に1つのみの磁極が設けられてなることを特徴とするポンプ用モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−66311(P2013−66311A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203873(P2011−203873)
【出願日】平成23年9月17日(2011.9.17)
【出願人】(000144810)株式会社山田製作所 (183)
【Fターム(参考)】