説明

ポンプ装置及び塗布装置

【課題】基板に塗布むらが発生するのを抑制でき、また、塗布むらの発生を抑制するための制御が簡単となる塗布装置を提供する。
【解決手段】基板12を載せるステージ14と、基板12に沿って相対的に移動すると共に当該基板12に塗布液を吐出するノズル10と、このノズル10に塗布液を送り出すポンプ装置と、このポンプ装置が駆動することで当該ポンプ1内の塗布液に生じようとする圧力変動を抑制する動作を当該ポンプ1において行うアクチュエータ7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 ポンプ装置及びこのポンプ装置を備えた塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイには、ガラス基板上にレジスト液(塗布液)が均一に塗布されたもの(以下、塗布基板という)が使用されている。この塗布基板を製造する装置として、例えば特許文献1に記載されている塗布装置が使用されている。
この塗布装置は、図8に示しているように、ガラス基板50を載せるステージ51と、このガラス基板50に沿って移動すると共に当該ガラス基板50に塗布液を吐出するスリット状のノズル52と、このノズル52に塗布液を送るポンプ53とを備えている。そして、ノズル52をガラス基板50に沿って移動させながら、当該ノズル52からレジスト液をガラス基板50に帯状に吐出する。これにより、レジスト液が膜状となってガラス基板50上に塗布される。
【0003】
このような塗布装置に用いられるポンプ53として、様々なものを採用することができるが、ピストンポンプとした場合、当該ポンプは、例えば、モータの回転運動を直線運動に変えるボールねじ機構を備えている。このボールねじ機構が回転するとボールの転動により周期的な微振動が発生し、この微振動がポンプ本体に伝わって、当該ポンプ本体から送り出されるレジスト液に脈動が生じる。また、モータのコギングが発生したり、モータを減速する歯車の噛み合い部で微振動が発生したりすると、レジスト液に脈動が重畳されることもある。
この結果、ノズル52におけるレジスト液の吐出圧力に変動が発生し、吐出されたレジスト液の膜厚がガラス基板50上で周期的に変化し、塗布むらが発生してしまう。特に、レジスト液に伝わる微振動は周期的であるため、塗布むらも周期性を有して発生する。塗布むらが周期性を有する場合、特に目に付きやすく製品の品質としては好ましいものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−212861号公報(図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、レジスト液に生じている脈動を低減し、ガラス基板50上に生じる塗布むらを抑制するために、特許文献1に記載の塗布装置は、ポンプ53から送り出されたレジスト液の圧力を検出する圧力センサ54と、検出した圧力の変化から逆位相波を生成し当該逆位相波を所定のタイミングで出力する演算器55と、この出力された逆位相波に基づく圧力を、ポンプ53から送り出されたレジスト液に印加する加圧器56とを備えている。
【0006】
しかし、ポンプ53からレジスト液が送り出された後において、レジスト液の圧力を測定し、レジスト液に対して加圧を行うように制御する場合では、圧力センサ54と加圧器56との間には、流路の弾性(チューブによる配管や図示していないがフィルター等)による遅れ要素や機械的な非線形要素が多く介在し、制御が複雑となる。また、圧力センサ54と加圧器56との間の配管の揺れ等が外乱となり、位相遅れにより発散し、制御が不安定となる。このように、特許文献1の構成の場合、制御ゲインを上げるのが難しく、実際に運用するのは困難であると考えられる。
なお、レジスト液に脈動が生じるのは、前記のようなシリンダポンプに限らず、その他の型式のポンプにおいても同様であり、ポンプが駆動することで発生する微振動が、塗布むらの発生の要因となっている。
そこで、本発明は、送り出す塗布液に脈動が生じるのを防ぐことができるポンプ装置、及び、基板に塗布むらが発生するのを抑制することができ、また、塗布むらの発生を抑制するための制御が簡単となる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、塗布液をノズルから吐出させて塗布膜を形成する塗布装置の当該ノズルに塗布液を送り出すためのポンプ装置であって、前記塗布液を溜める塗布液室と当該塗布液室の塗布液を排出する排出ポートとを有しているポンプ本体と、前記塗布液を前記排出ポートから排出するために駆動する駆動部と、前記駆動部が駆動することで前記塗布液室の塗布液に生じようとする圧力変動を抑制する動作を前記ポンプ本体において行うアクチュエータとを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、駆動部が駆動することでポンプ本体の塗布液室にある塗布液に圧力変動が生じようとしても、アクチュエータはこの圧力変動を抑制する動作をポンプ本体において行うので、ノズルに送り出される塗布液に脈動が生じるのを防ぐことができる。そして、アクチュエータは、前記圧力変動を抑制する動作を、当該圧力変動の発生部(発生源)となるポンプ本体において行うので、アクチュエータの制御を簡単とすることが可能となる。
【0009】
また、本発明のポンプ装置の前記ポンプ本体が、前記駆動部が駆動すると前記塗布液室の容積が縮小する構成である場合、前記アクチュエータは、前記塗布液室に設置されて当該塗布液室内の前記塗布液に前記圧力変動を打ち消す振動を与える振動発生部を有している構成とすることができる。
この場合、駆動部が駆動することで塗布液室内の塗布液に圧力変動が生じても、アクチュエータの振動発生部が、前記圧力変動を抑制する動作として、塗布液室内の塗布液に前記圧力変動を打ち消す振動を与えるので、ノズルに送り出される塗布液に脈動が生じるのを防ぐことができる。
【0010】
また、この構成において、前記ポンプ装置は、前記塗布液室内の前記塗布液の圧力を検知するセンサと、前記センサによって検知した圧力の変動と逆位相となる振動を前記塗布液に与える動作を前記振動発生部に実行させるための信号を生成する位相反転部とを更に備えているのが好ましい。
この場合、センサが塗布液室内にある塗布液の圧力の変動を検知すると、位相反転部が、この圧力の変動と逆位相となる振動を塗布液に与える動作を振動発生部に実行させるための信号を生成するので、この信号に基づいて振動発生部が動作すると、塗布液室内で塗布液に生じる圧力変動を当該塗布液室内で打ち消すことができる。
【0011】
また、本発明のポンプ装置の前記ポンプ本体が、柔軟性のある隔壁膜によって前記塗布液を溜める塗布液室と間接液を溜める間接液室とに区画されているポンプケースを有し、前記駆動部が駆動すると、前記間接液を加圧することで前記隔壁膜を変形させ前記塗布液室の容積が縮小する構成である場合、前記アクチュエータは、前記圧力変動を抑制する動作として前記間接液に振動を与える振動発生部を有している構成とすることができる。
この構成の場合、駆動部が駆動することによって、間接液を加圧することで隔壁膜を変形させ塗布液室の容積を縮小させて当該塗布液室内の塗布液をノズルに送り出すことができる。この際、駆動部が駆動することによって間接液に圧力変動が生じ、この圧力変動が隔壁膜を通じて塗布液に伝達され塗布液に圧力変動が生じようとする。しかし、アクチュエータの振動発生部が、前記圧力変動を抑制する動作として、間接液の圧力変動を打ち消すために当該間接液に振動を与えるので、塗布液に圧力変動が伝達するのを防止することができ、ノズルに送られる塗布液に脈動が生じるのを防ぐことができる。
【0012】
また、この構成において、前記ポンプ装置は、前記間接液の圧力を検知するセンサと、前記センサによって検知した圧力の変動と逆位相となる振動を前記間接液に与える動作を前記振動発生部に実行させるための信号を生成する位相反転部とを更に備えているのが好ましい。
この場合、センサが間接液の圧力の変動を検知すると、位相反転部が、この圧力の変動と逆位相となる振動を間接液に与える動作を振動発生部に実行させる信号を生成するので、この信号に基づいて振動発生部が動作すると、間接液に生じる圧力変動を打ち消すことができる。
【0013】
また、本発明の塗布装置は、基板を載せるステージと、前記基板に沿って相対的に移動すると共に当該基板に塗布液を吐出するノズルと、前記ノズルに塗布液を送り出す前記ポンプ装置とを備えていることを特徴とする。
本発明によれば、ポンプ装置が動作することでポンプ本体内の塗布液に圧力変動が生じようとしても、ポンプ装置が備えているアクチュエータはこの圧力変動を抑制する動作を行うので、ノズルに送り出される塗布液に脈動が生じるのを防ぐことができ、塗布液が塗布された基板に塗布むらが発生するのを抑制することができる。そして、前記アクチュエータは、前記圧力変動を抑制する動作を、当該圧力変動の発生部(発生源)となるポンプ本体において行うので、アクチュエータの制御を簡単とすることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のポンプ装置によれば、塗布液に生じようとする圧力変動を抑制する動作を、アクチュエータが行うので、ノズルに送られる塗布液に脈動が生じるのを防ぐことができる。そして、本発明の塗布装置によれば、前記ポンプ装置を備えているので、塗布液が塗布された基板に塗布むらが発生するのを抑制することができる。この結果、基板に塗布液を塗布して作製する塗布基板の品質を向上させることが可能となる。また、アクチュエータは、圧力変動を抑制する動作を、当該圧力変動の発生部となるポンプ本体において行うので、アクチュエータの制御を簡単とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の塗布装置の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】塗布装置の概略構成図である。
【図3】ポンプ装置の概略構成を説明する断面図である。
【図4】ポンプ装置の概略構成を説明する断面図である。
【図5】ポンプ本体の一部の概略構成を説明する断面図である。
【図6】塗布装置の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図7】塗布装置の更に他の実施形態を示す概略構成図である。
【図8】従来の塗布装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の塗布装置の実施の一形態を示す斜視図である。この塗布装置は、薄板状の基板12に薬液やレジスト等の液状物(以下、塗布液ともいう)を塗布するものである。塗布装置は、基台13と、基板12を載せるステージ(保持台)14と、このステージ14に対し特定方向に移動可能な塗布ユニット15とを備えている。なお、以下の説明では、塗布ユニット15が移動する方向をX軸方向、これと水平面上で直交する方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向の双方に直交する上下方向をZ軸方向とする。
【0017】
基台13上にステージ14が設置され、このステージ14のY軸方向の両側にレール17が設けられている。このレール17に塗布ユニット15が載置されていて、塗布ユニット15はレール17に沿ってX軸方向に移動する。
ステージ14は、搬入された基板12をその上面に載置することができると共に、当該基板12を図示しないポンプによって吸引することで保持することができる。
塗布ユニット15は、ステージ14に載置された基板12に塗布液を塗布するためのものであり、Y軸方向に沿って延び塗布液を流出する口金部(塗布部)22と、この口金部22の両端部分に設けられたユニット支持部23とを有している。
【0018】
ユニット支持部23は、口金部22をZ軸方向に昇降させる昇降機構24と、口金部22をX軸方向に走行させる走行機構25とを有している。昇降機構24および走行機構25は、塗布装置が備えている制御装置26(図2参照)によって動作制御される。なお、制御装置26は、CPUからなる演算手段、プログラムやデータを記憶するROM、RAM、HDD等の記憶手段、外部との間で信号を入出力するための入出力インターフェース等を含むコンピュータからなる。記憶手段に記憶された各種プログラムを演算手段が実行することで、各機能部を備えることができるように構成されている。
【0019】
〔第一実施形態〕
図2は、図1の塗布装置の概略構成図である。口金部22には、ステージ14と対向する面に、塗布液を吐出するノズル10が形成されている。ノズル10は、Y軸方向(紙面直交方向)に延びるスリット形状であり、口金部22に供給された塗布液をノズル10を通じて、基板12の表面に吐出することができる。塗布ユニット15がX軸方向に移動することで、ノズル10はステージ14上の基板12に沿って同方向へ移動する。
【0020】
ノズル10の上流側には、塗布液を貯留するタンク2とポンプ装置とが設けられている。ポンプ装置は、ポンプ本体1と、駆動部(後述するプランジャ駆動部33)とを備えている。タンク2とポンプ本体1、及び、ポンプ本体1と口金部22はそれぞれ塗布液が流れる配管(チューブ)で連結されている。前記駆動部が駆動することで、タンク2の塗布液はポンプ本体1に供給され、ポンプ本体1内の塗布液は口金部22へと圧送され、口金部22に供給された塗布液は、ノズル10を通じて基板12に吐出される。
【0021】
図2の実施形態のポンプ装置はシリンジポンプであり、図3と図4とに示すように、シリンダ31及びプランジャ32を有するポンプ本体1と、プランジャ駆動部33とを有している。プランジャ32は、ヘッド32aと軸部32bとを有し、シリンダ31の内部にプランジャ32が収容されている。プランジャ駆動部33がプランジャ32を移動させることで塗布液の吸入及び送り出しができる。また、シリンダ31には、その内部を軸方向に塗布液室aと空間室bとに区画する膜状封止部材34が設けられている。プランジャ32が移動することにより、塗布液が塗布液室aに吸入され、さらにこの塗布液室aから送り出されるようになっている。
【0022】
シリンダ31は、一軸方向に延びる筒形状を有していて、上側ハウジング31aと下側ハウジング31bとがフランジ部31cで連結されている。上側ハウジング31aには、吸入ポート31dと排出ポート31eとが形成されている。吸入ポート31d及び排出ポート31eを通じて塗布液をシリンダ31の内部に吸入及び送り出しができる。すなわち、図3に示すように、プランジャ32がシリンダ31の基部側(図3では下側)に移動することで、図2のタンク2から塗布液を吸入ポート31dを通じて塗布液室aに取り入れることができる。一方、図4に示すように、プランジャ32がシリンダ31の先部側(図4では上側)に移動することで、塗布液室aの塗布液を排出ポート31eを通じて口金部22(ノズル10)へ送り出すことができる。
また、下側ハウジング31bには吸引ポート31fが形成されており、この吸引ポート31fには図示しない吸引ポンプが接続されている。この吸引ポンプを作動させて空間室bの圧力を負圧にすると、膜状封止部材34が空間室b側に吸引され、膜状封止部材34をヘッド32aに密着させることができる。
【0023】
膜状封止部材34は可撓性材料で形成されていて、例えばポリエステル布の上にゴムを被覆したものであり、ほぼ均一厚さの膜状に形成されている。この膜状封止部材34は、上側ハウジング31a及び下側ハウジング31bのフランジ部31cに全周で挟持される被挟持部34aと、ヘッド32aの先端面に密着して取り付けられる取付部34bと、被挟持部34a及び取付部34bを連結している連結部34cとを有している。連結部34cは、余長部分に相当する部分であり、シリンダ31の内壁面とヘッド32aの外周面との間には所定寸法の隙間が設けられていて、連結部34cはこの隙間に湾曲した状態で収容されている。連結部34cは、被挟持部34aから下向きに所定寸法延びた位置で折り返されて上向きに湾曲し、上向きに所定寸法延びて取付部34bに連続している。この連結部34cにより、シリンダ31の軸方向にヘッド32aが動作しても、膜状封止部材34はヘッド82aの動きに追従することができ、また、当該膜状封止部材34によって、塗布液室aと空間室bとが区画され、塗布液室a内の塗布液は密封される。
【0024】
プランジャ駆動部33は、プランジャ32をシリンダ31の軸方向に一定の速度で移動させる。これにより、ポンプ本体1からの塗布液の送り出し量は一定となり、ノズル10からの塗布液の吐出量も一定となり、塗布液の膜厚を均一に保つ。この実施形態では、プランジャ駆動部33は、サーボモータ33aとこのモータ33aによって回転するボールねじ機構(図示せず)とを備えていて、サーボモータ33aが制御装置26によって制御され、プランジャ32の進退動作が制御される。
【0025】
ポンプ装置についてさらに説明する。プランジャ駆動部33は、前記のとおり、プランジャ32を移動させることで塗布液を溜める塗布液室aの容積を縮小させて当該塗布液室a内の塗布液をノズル10へと送り出す。このプランジャ駆動部33が駆動すると、前記ボールねじ部分において周期的な微振動が発生し、この微振動がヘッド32aやシリンダ31を通じて塗布液室a内の塗布液に伝わる。
そこで、ポンプ装置は、このプランジャ駆動部33が駆動することで塗布液室aの塗布液に生じようとする圧力変動を抑制する動作として、当該塗布液の圧力変動を打ち消す動作を、ポンプ本体1において行うアクチュエータ7を更に備えている。
【0026】
アクチュエータ7は振動発生器17を有している。振動発生器17は、塗布液室aの塗布液に直接的に振動を与えることができるように、塗布液室aに設置されている。上側ハウジング31a内に凹部31gが形成されていて、この凹部31gに振動発生器17は設置されている。凹部31gの開口側に、振動発生器17が有する振動板17aが配置されている。そして、膜部材18が、この振動板17aに密着していると共に凹部31gを塞ぐようにして設けられている。なお、膜部材18は、ゴム製のような柔軟な部材よりも剛性を有する部材が、振動伝達の面で好ましい。振動発生器17としては、ボイスコイル型リニアモータやピエゾ振動子を採用することができる。
そして、振動発生器17が振動板17aを加振することで、膜部材18を介して塗布液室aの塗布液に振動(圧力)を直接的に与えることができる。振動発生器17は、前記のとおりプランジャ駆動部33の駆動により塗布液室aの塗布液に生じようとする圧力変動を、打ち消す振動を当該塗布液に与える。
【0027】
また、この振動発生器17の動作を制御するために、塗布液室aの塗布液の圧力を検知する圧力センサ19と、振動発生器17に所定の動作を実行させるための信号を生成する位相反転部20(図2参照)とを更に備えている。圧力センサ19はその検出面が塗布液室aに露出している。位相反転部20は、例えば位相反転回路により構成され、圧力センサ19によって検知した圧力の変動と逆位相となる圧力変動を塗布液に与える動作を、振動発生器17に実行させるための信号を生成するように構成されている。位相反転部20で生成された信号は、アンプ21で増幅され、振動発生器17に送信される。
【0028】
以上の構成によれば、プランジャ駆動部33の駆動によって塗布液室a内の塗布液に圧力変動が生じる。そこで、圧力センサ19がこの圧力変動を検知すると、位相反転部20が、この圧力変動と逆位相となる圧力変動を塗布液に与える動作を、振動発生器17に実行させるための信号を生成する。そして、この信号に基づいて振動発生器17が動作すると、塗布液室a内の塗布液に生じる圧力変動を、当該塗布液室a内で打ち消すことができる。したがって、ポンプ本体1から送り出される塗布液には、プランジャ駆動部33の駆動による脈動が生じていない。つまり、ポンプ本体1において発生する塗布液の圧力変動を打ち消す動作が、当該塗布液がポンプ本体1から送り出される前に行われている。この結果、この塗布液がノズル10から基板12に吐出されると、塗布液の膜厚は均一となり、塗布液が塗布された基板12に塗布むらが発生するのを抑制することができる。
【0029】
また、この実施形態の振動発生器17の振動板17aは、プランジャ32のヘッド32aの先端面と対向するようにして配置されていて、振動板17aの振動方向(振幅方向)は、当該先端面と対向する方向である。プランジャ駆動部33のボールねじ機構が駆動すると、その微振動は主にプランジャ32のヘッド32aの先端面側から塗布液へと伝わる。そこで、振動発生器17は、このヘッド32aに向かう方向を振動方向として塗布液に振動を与えるので、ボールねじ機構による前記微振動を効率よく相殺することができる。
また、振動発生器17は、固定状態にあるシリンダ31に取り付けられているので、振動発生器17へ信号を送信するためのケーブルの設置が容易である。
【0030】
〔第二実施形態〕
図3では、ポンプ本体1のシリンダ31に振動発生器17が設けられた場合を説明したが、図5に示しているように、振動発生器17はプランジャ32に設置されていてもよい。この場合、ヘッド32aの先端側に凹部32cが形成され、この凹部32cに振動発生器17が設置されている。凹部32cの開口側に、振動発生器17が有する振動板17aが配置されている。ゴム製等からなる柔軟な膜部材18が、この振動板17aに密着していると共に凹部32cを塞ぐようにして設けられている。または、図5の二点鎖線で示しているように、前記膜部材18を省略して前記膜状封止部材33を用いてもよい。
以上より、振動板17aを振動させると膜部材18(膜状封止部材33)を介して塗布液室a内の塗布液に直接的に振動を与えることができる。なお、図2の第一実施形態と比較すると、ポンプ本体1における振動発生器17の設置構造が異なるが、その他の構成については同じである。
【0031】
〔第三実施形態〕
図6は、塗布装置の他の実施形態を示す概略構成図である。図2の第一実施形態と比較すると、ポンプ本体1における塗布液の止水構造が異なるが、その他の構成は同じである。つまり、図2の実施形態では膜状封止部材34により塗布液を密封していたが、図6の実施形態では、膜状封止部材34の代わりにOリング36が用いられている。つまり、シリンダ31とプランジャ32のヘッド32aとの間にOリング36が設けられている。
【0032】
この第三実施形態の場合、プランジャ駆動部33の駆動によってヘッド32aが移動すると、Oリング36の摺動部で滑りが生じ、この滑りが間欠的に発生すると、塗布液室a内の塗布液に脈動が発生する場合がある。この場合であっても、第一実施形態と同様に、圧力センサ19が塗布液の脈動(圧力変動)を検出し、アクチュエータ7によってその脈動を打ち消すことができる。なお、第一実施形態のように、密封部材として膜状封止部材34を採用した場合には、Oリング36による前記脈動は発生しない。このため、基板12の塗布むらを抑制するという観点においては、密封部材として膜状封止部材34を採用するのがより好ましい。
【0033】
〔第四実施形態〕
図7は、塗布装置の更に他の実施形態を示す概略構成図である。図2の第一実施形態と比較すると、ポンプ装置の形態が異なるが、その他の構成については同じである。図7の実施形態におけるポンプ装置のポンプ本体41は、ポンプケース42を有し、このポンプケース42は、柔軟性のある隔壁膜44によって、塗布液を溜める塗布液室aと非圧縮性流体である間接液を溜める間接液室cとに区画されている。隔壁膜44は、ポンプケース42内に設けられた例えば樹脂製のチューブ状部材であり、その内側の領域が塗布液室aであり、外側の領域が間接液室cとなる。塗布液室aの一端にはノズル10へと繋がる排出ポート45aが設けられていて、他端にはタンク2へと繋がる吸入ポート45bが設けられている。
【0034】
ポンプ本体41は、シリンダ46及びプランジャ47を更に有している。シリンダ46はポンプケース42に接続されていて、このシリンダ46内でプランジャ47が移動可能となっている。シリンダ46内の先部側(右側)の領域は、ポンプケース42の外側の領域と連続していて、シリンダ46の先部側の領域とポンプケース42の外側の領域とによって、間接液室cが構成されている。
プランジャ駆動部48は、サーボモータ48aとボールねじ機構(図示せず)とを備えていて、サーボモータ48aが制御装置26によって制御されることで、プランジャ47の動作が制御される。
プランジャ駆動部48が駆動すると、プランジャ47をポンプケース42側へ移動させることで、間接液室c内の間接液を加圧することができる。間接液が加圧されると、隔壁膜44を変形させ(図7の二点鎖線)塗布液室aの容積を縮小させる。このように塗布液室aの容積を縮小させることで、当該塗布液室a内の塗布液をノズル10へと送り出すことができる。
また、図7に示しているプランジャ47及びシリンダ46は、図3に示したポンプ本体1と同様に、間接液室cの間接液が空間室(負圧室)dに漏れるのを防止する密封構造として、膜状封止部材49を備えている。
【0035】
以上の構成によれば、プランジャ駆動部48が駆動すると、例えば前記ボールねじ部分において周期的な微振動が発生し、この微振動が、プランジャ47やシリンダ46を通じて間接液室c内の間接液に伝わる。この微振動は間接液に圧力変動となって現れ、隔壁膜44を介して、塗布液室a内の塗布液に伝達し塗布液に圧力変動が生じようとする。
そこで、ポンプ装置は、アクチュエータ40を備えていて、このアクチュエータ40は、プランジャ駆動部48が駆動することで、間接液室cの間接液及び隔壁膜44を伝って、塗布液室a内の塗布液に生じようとする圧力変動を抑制する動作として、間接液における圧力変動を打ち消す動作を、当該ポンプ本体41において行うことができる。なお、第四実施形態では、膜状封止部材49を用いる例について説明したが、膜状封止部材49に代えて接触シール、例えばOリング等を用いるものであってもよい。
【0036】
このアクチュエータ40は、第一実施形態と同様に、ボイスコイル型リニアモータやピエゾ振動子等からなる振動発生器40aを有している。振動発生器40aは、間接液に振動を与えることができるように、間接液室cに設置されている。より具体的には、振動発生器40aは、ポンプケース42に取り付けられている。なお、図示しないが、振動発生器40aはシリンダ46に取り付けられていてもよい。振動発生器40aは、間接液室c内の間接液に、当該間接液に生じる圧力変動を打ち消す振動を与える。これにより、塗布液室a内の塗布液に生じようとする圧力変動(脈動)を間接的に抑制することができる。
【0037】
この振動発生器40aの動作を制御するために、間接液室c内の間接液の圧力を検知する圧力センサ37と、振動発生器40aに所定の動作を実行させるための信号を生成する位相反転部38とを更に備えている。圧力センサ37はその検出面が間接液室cに露出している。位相反転部38は、図2の実施形態と同様に位相反転回路により構成され、位相反転部38は、圧力センサ37によって検知した圧力の変動と逆位相となる圧力変動を間接液に与える動作を、振動発生器40aに実行させるための信号を生成するように構成されている。位相反転部38で生成された信号は、アンプ21で増幅され、振動発生器40aに送信される。
【0038】
以上の構成によれば、プランジャ駆動部48の駆動によって間接液室c内の間接液に圧力変動が生じる。そこで、圧力センサ37がこの間接液室cにある間接液の圧力の変動を検知すると、位相反転部38が、この圧力変動と逆位相となる圧力変動を間接液に与える動作を、振動発生器40aに実行させるための信号を生成する。そして、この信号に基づいて振動発生器40aが動作すると、間接液室c内の間接液に生じる圧力変動を、当該間接液室c内で打ち消すことができる。つまり、間接液の圧力変動が伝わって塗布液室a内の塗布液に生じようとする圧力変動を、間接液室cにおいて予め抑制しておくことができる。したがって、ポンプ本体41から送り出される塗布液には、プランジャ駆動部48の駆動による脈動が生じていない。
【0039】
以上の各実施形態によれば、ポンプ装置が動作することでポンプ本体1(41)内の塗布液に圧力変動が生じようとしても、アクチュエータ7(40)はこの圧力変動を抑制する動作を行うので、ノズル10へ送られる塗布液に脈動が生じるのを防ぐことができる。このため、ノズル10における塗布液の吐出圧力が一定となり、基板12に吐出された塗布液の膜厚は均一となり、基板12に塗布むらが発生するのを防ぐことができる。
また、図8に示したように従来では、加圧器56を塗布液の流路の途中に設置し、これに応じて配管も追加する必要があり、構成が複雑となるが、本発明の前記各実施形態によれば、このような配管は不要であり構成は簡単である。また、従来のように加圧器56等を追加することで、塗布液の滞留部が発生するが、本発明ではこれを防止することができ、例えば塗布液を入れ替える場合においてその置き換え性が良くなり、メンテナンス性能も高い。
【0040】
また、図8に示したように従来では、ポンプ53の駆動により発生する塗布液の圧力変動を解消する制御に遅れ要素や非線形要素が多く介在し、制御系が複雑となる。つまり、伝達関数が複雑となる。さらに、圧力センサ54と加圧器56との間の配管(チューブ)の揺れ等が外乱となり、制御が不安定となる。
しかし、本発明の前記各実施形態によれば、アクチュエータ7(40)は、圧力変動を打ち消す動作を、当該圧力変動の発生部(発生源)となるポンプ本体1(41)内で行うので、従来のような途中の配管が存在せず、当該配管よる外乱が存在せず、アクチュエータ7(40)の制御系は簡単となり、制御を安定させることが可能となる。さらに、この制御のゲインの調整も容易となる。この結果、基板12に塗布液を塗布して作製する塗布基板の品質を向上させることが可能となる。
【0041】
また、本発明は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、前記実施形態では、固定状態にあるステージ14に対して口金部22が移動する場合を説明したが、固定状態にある口金部22に対してステージ14が移動する構成であってもよい。
また、前記各実施形態では、圧力センサ17(37)が圧力の変動を検出すると、位相反転部20(38)が当該変動と逆位相となる逆位相波の信号を生成し、アンプ21を介して当該信号をアクチュエータ7(40)に入力し、当該アクチュエータ7(40)が動作する構成である。このため、圧力センサ17(37)による検知に対する、アクチュエータ7(40)の応答性は良く、圧力の変動を相殺することができるが、位相反転部20(38)とアクチュエータ7(40)との間に、図示しないがタイミング生成部を設けてもよい。タイミング生成部は、圧力センサ17(37)が検知した圧力の変動の位相を取得することができ、また、位相反転部20(38)が生成した逆位相波の信号を、塗布液(間接液)に生じている圧力の変動の位相と同期させて、アクチュエータ7(40)に出力することができるように構成されている。なお、タイミング生成部は、前記制御装置26の機能部として構成することができる。
また、前記実施形態では、カラーフィルタの製造に用いられる塗布装置について説明したが、有機ELを含むフラットパネルディスプレイや太陽電池等の製造に用いられる塗布装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0042】
1,41:ポンプ本体、 7,40:アクチュエータ、 10:ノズル、 12:基板、 14:ステージ、 17,40a:振動発生器(振動発生部)、 19,37:圧力センサ(センサ)、 20,38:位相反転部、 31e,45a:排出ポート、 33:プランジャ駆動部(駆動部)、 42:ポンプケース、 44:隔壁膜、 a:塗布液室、 c:間接液室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液をノズルから吐出させて塗布膜を形成する塗布装置の当該ノズルに塗布液を送り出すためのポンプ装置であって、
前記塗布液を溜める塗布液室と当該塗布液室の塗布液を排出する排出ポートとを有しているポンプ本体と、
前記塗布液を前記排出ポートから排出するために駆動する駆動部と、
前記駆動部が駆動することで前記塗布液室の塗布液に生じようとする圧力変動を抑制する動作を前記ポンプ本体において行うアクチュエータと、
を備えていることを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記ポンプ本体は、前記駆動部が駆動すると前記塗布液室の容積が縮小する構成であり、
前記アクチュエータは、前記塗布液室に設置されて当該塗布液室内の前記塗布液に前記圧力変動を打ち消す振動を与える振動発生部を有している請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記塗布液室内の前記塗布液の圧力を検知するセンサと、
前記センサによって検知した圧力の変動と逆位相となる振動を前記塗布液に与える動作を前記振動発生部に実行させるための信号を生成する位相反転部と、
を更に備えている請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記ポンプ本体は、柔軟性のある隔壁膜によって前記塗布液を溜める塗布液室と間接液を溜める間接液室とに区画されているポンプケースを有し、前記駆動部が駆動すると、前記間接液を加圧することで前記隔壁膜を変形させ前記塗布液室の容積が縮小する構成であり、
前記アクチュエータは、前記圧力変動を抑制する動作として前記間接液に振動を与える振動発生部を有している請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記間接液の圧力を検知するセンサと、
前記センサによって検知した圧力の変動と逆位相となる振動を前記間接液に与える動作を前記振動発生部に実行させるための信号を生成する位相反転部と、
を更に備えている請求項4に記載のポンプ装置。
【請求項6】
基板を載せるステージと、
前記基板に沿って相対的に移動すると共に当該基板に塗布液を吐出するノズルと、
前記ノズルに塗布液を送り出す請求項1〜5のいずれか一項に記載のポンプ装置と、を備えていることを特徴とする塗布装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−227785(P2010−227785A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76743(P2009−76743)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】