説明

ポンプ装置

【課題】ポンプの軸長を短縮することができるポンプ装置を提供すること。
【解決手段】ハウジング31に形成された収容部に収容され、内部に定圧部および高圧部がけいせいされるポンプユニットPと、ハウジング31に形成され前記ポンプユニットPの前記低圧部に作動液を供給する為の吸入通路と、前記吸入通路と前記低圧部に連通する低圧室40と、前記ポンプユニットPにより加圧された作動液を吐出する吐出通路43とを備えたポンプ装置33において、吐出通路43を、低圧室40内を通り、ハウジング31と高圧部を連通する連通管44で形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術としては、下記の特許文献1に記載の技術が開示されている。この公報では、ポンプ本体がハウジングに収容され、ポンプ本体とハウジングとの間に液室が設けられている。この液室は、ポンプ本体の軸方向に低圧室、高圧室、高圧室、低圧室の順に配置され、各液室はOリングによって区画されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001―80498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、各液室が軸方向に配列されているため、ポンプ装置の軸長が長くなり装置の大型化につながるおそれがあった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、小型化を図ったポンプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明においては、吐出通路を、低圧室内を通り、ハウジングと高圧部を連通する連通管で形成した。
【発明の効果】
【0006】
そのため、ポンプ装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のブレーキ液圧制御装置の液圧回路図である。
【図2】実施例1の液圧制御ユニットのハウジングのスケルトン図である。
【図3】実施例1の液圧制御ユニットのハウジングのスケルトン図である。
【図4】実施例1のハウジングの斜視図である。
【図5】実施例1のハウジングの斜視図である。
【図6】実施例1のハウジングの斜視図である。
【図7】実施例1のポンプユニットおよび吐出部の斜視図である。
【図8】実施例1のポンプユニットおよび吐出部をハウジングに収容した状態の部分断面図である。
【図9】実施例1の図8におけるA-A断面図である。
【図10】実施例1のポンプ装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
[ブレーキ液圧回路の構成]
図1は、ブレーキ液圧制御装置32の液圧回路図である。液圧回路は、マスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cとの間に設けられた液圧制御ユニット30内に形成されている。図2、図3は液圧制御ユニット30のハウジング31のスケルトン図である。図2、図3では図を分かりやすくするために、各バルブやコントロールユニット、モータMを取り外した状態の図を示す。
このブレーキ液圧制御装置32は、コントローラからのVehicle Dynamics Control(以下VDC)、Anti-lock Brake System(以下ABS)の要求液圧に応じて液圧制御を行う。ブレーキ液圧制御装置32においては、P系統のブレーキ液圧回路21PとS系統のブレーキ液圧回路21Sの2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造となっている。P系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)が接続されており、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)が接続されている。ブレーキ液圧制御装置32と各ホイルシリンダW/Cとは、後述するハウジング31の上面31cに穿設されたホイルシリンダポート19(19RL,19FR,19FL,19RR)に接続されている。また、ポンプユニットPはP系統、S系統それぞれに、ギヤポンプPPとギヤポンプPSとが設けられたタンデムギヤポンプである。
【0009】
マスタシリンダM/Cと液圧制御ユニット30とは、後述するハウジング31のポート接続面31a1に穿設されたマスタシリンダポート20P,20Sを介して液路18P,18Sにおいて接続されている。この液路18とポンプユニットPの吸入側とは、液路10P,10Sによって接続されている。液路18P上であって、マスタシリンダポート20Pと、液路10Pとの接続部との間にはマスタシリンダ圧センサ22が設けられている。
ポンプユニットPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、液路11P,11Sによって接続されている。この各液路11上には、各ホイルシリンダW/Cに対応する常開型のソレノイドバルブである増圧バルブ3FL,3RR,3FR,3RLが設けられている。また各液路11上であって、各増圧バルブ3とポンプユニットPとの間にはチェックバルブ6P,6Sが設けられている。各チェックバルブ6は、ポンプユニットPから増圧バルブ3へ向かう方向へのブレーキ液圧の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。また各液路11上であって、各増圧バルブ3とポンプユニットPとの間には吐出圧センサ23P,23Sが設けられている。
【0010】
更に各液路11には、各増圧バルブ3を迂回する液路16FL,16RR,16FR,16RLが設けられており、液路16には、チェックバルブ9FL,9RR,9FR,9RLが設けられている。この各チェックバルブ9は、ホイルシリンダW/CからポンプユニットPへ向かう方向へのブレーキ液圧の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
マスタシリンダM/Cと液路11とは液路12P,12Sによって接続されており、液路11と液路12とはポンプユニットPと増圧バルブ3との間において合流している。この各液路12上には、常開型のソレノイドバルブであるゲートアウトバルブ2P,2Sが設けられている。また各液路12には、各ゲートアウトバルブ2を迂回する液路17P,17Sが設けられており、この液路17には、チェックバルブ8P,8Sが設けられている。この各チェックバルブ8は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向へのブレーキ液圧の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
ポンプユニットPの吸入側にはリザーバ15P,15Sが設けられており、このリザーバ15とポンプユニットPとは液路14P,14Sによって接続されている。リザーバ15とポンプユニットPとの間にはチェックバルブ7P,7Sが設けられている。
ホイルシリンダW/Cと液路14とは液路13P,13Sによって接続されており、液路13と液路14とはチェックバルブ7とリザーバ15との間において合流している。この各液路13にそれぞれ、常閉型のソレノイドバルブである減圧バルブ4FL,4RR,4FR,4RLが設けられている。
【0011】
[ハウジングの構成]
以下の説明では、図2、図3においてマスタシリンダポート20が開口している面を前面31a、前面31aの背面を後面31b、ホイルシリンダポート19が開口している面を上面31c、上面31cの背面を下面31d、前面31aに対して左側の側面を左側面31e、前面31aに対して右側の側面を右側面31fと記載する。図2(a)はハウジング31を前面31aから見た図、図2(b)はハウジング31を上面31cから見た図、図2(c)はハウジング31を下面31dから見た図である。図3(a)はハウジング31を後面31bから見た図、図3(b)はハウジング31を右側面31fから見た図、
図3(c)はハウジング31を左側面31eから見た図である。
また図4、図5、図6はハウジング31の斜視図である。図4は後面31b、上面31c、左側面31e側から見た図、図5は前面31a、上面31c、左側面31eから見た図、図6はユニットケース34、モータMを取付けた状態の図である。
【0012】
ハウジング31は略直方体であり、前面31a側にモータMが取り付けられ、後面31b側にゲートアウトバルブ2、増圧バルブ3、減圧バルブ4の各ソレノイドバルブ群、及びこれらソレノイドバルブ群を駆動する電気ユニットが取り付けられる。電気ユニットとは、車両に取り付けられた車輪速センサ等の入力信号に応じて所定の演算を行う基板を備えたものであり、ソレノイドバルブに取り付けられたソレノイドや、モータMに所定の電気信号を出力する。この電気ユニットはユニットケース34内に収容されている。ハウジング31には、前面31aと後面31bとを貫通する電源孔24が形成されており、この電源孔24にモータMの電極を差し込むことで、電気ユニットとモータMとを接続している。
ハウジング31には、各ソレノイドバルブ群が圧入もしくはカシメにより取り付けられるバルブ取り付け用の孔と、各ポートや各ソレノイドバルブ群との間を接続する複数の液路と、各シリンダ(ホイルシリンダW/C、マスタシリンダM/C)と接続するポート(ホイルシリンダポート19、マスタシリンダポート20)とリザーバ15を配置する空孔等が形成されている。これら各孔、液路孔等はハウジング31の外側から各面に対してドリル等により穿設される。
前面31aの上面31c側には、モータM側に面法線を有し、前面31aと略平行のポート接続面31a1が形成されている。ポート接続面31a1は、前面31aに対して前方(モータ駆動軸方向モータ側)に突出して形成されており、この部分にマスタシリンダポート20が形成されている。
ポンプユニットPは、ハウジング31の前面31aから後面31bにかけて貫通する、略円柱状の収容部41に収容されている。この収容部41は後面31b側の開口部をポンプカバー35によって封鎖されている。またハウジング31の左側面31eから右側面31fにかけて収容部41と略直交するように吐出部収容孔47が形成され、この吐出部収容孔47にポンプユニットPの吐出側に接続する吐出部48が収容されている。
【0013】
[ポンプユニットの構成]
図7はポンプユニットPおよび吐出部48の斜視図である。また図8はポンプユニットPおよび吐出部48をハウジング31に収容した状態の部分断面図、図9は図8におけるA-A断面図である。
ポンプユニットPは、ポンプハウジング36、センタープレート49およびポンプカバー35を有している。ポンプハウジング36、センタープレート49およびポンプカバー35はいずれも外形は略円柱状に形成されている。ポンプハウジング36、センタープレート49およびポンプカバー35は順に軸方向に組み合わされている。ポンプハウジング36の有底状の中空部が形成されており、この中空部とセンタープレート49との間の空間内にギヤポンプPPを収容している。ポンプカバー35も有底状の中空部が形成されており、この中空部とセンタープレート49との間の空間内にギヤポンプPSを収容している。ポンプハウジング36の外周にはOリング溝55a、Oリング溝55bが形成され、ポンプカバー35の外周にはリング溝55cが形成されている。各Oリング溝55は、ポンプユニットPの軸方向に対して隔離して形成されており、Oリング45a,45b,45cが取付けられている。
ポンプハウジング36のOリング45aとOリング45bとの間には、円周上に低圧室溝56Pが形成されている。またポンプユニットPをハウジング31の収容部41に収装した際に、収容部41内周であって低圧室溝56Pに対面する位置に低圧室溝57Pが形成されている。ポンプハウジング36の低圧室溝56P、収容部41の定圧室溝57P、Oリング45a、Oリング45bによって隔離される空間が低圧室40Pとして形成されている。
【0014】
センタープレート49の外周には円周上に低圧室溝56Sが形成されている。またポンプユニットPをハウジング31の収容部41に収装した際に、収容部41内周であって低圧室溝56Sに対面する位置に低圧室溝57Sが形成されている。センタープレート49の低圧室溝56S、収容部41の低圧室溝57S、Oリング45b、Oリング45cによって隔離される空間が低圧室40Sとして形成されている。
ギヤポンプPP,PSは第1ギヤプレート38P,38Sと、第2ギヤプレート39P,39Sと、外接している駆動、従動一対のギヤ46P,46Sを有している。第1ギヤプレート38P,38Sと、第2ギヤプレート39P,39Sとの間に吸入部58P、58Sが形成されている。ギヤポンプPPの吸入部58P開口部側、すなわちギヤポンプPPとポンプハウジング36が当接する側の外周にOリング37Pが設けられている。また、ギヤポンプPSの吸入部58S開口部側、すなわちギヤポンプPSとセンタープレート49が当接する側の外周にOリング37sが設けられている。
ギヤ46P,46Sの駆動側は、シャフト63が連結されている。このシャフト63は、第1ギヤプレート38P,38S、第2ギヤプレート39P,39S、センタープレート49、ポンプハウジング36を貫通し、モータMの回転軸に接続されている。
ポンプハウジング36、センタープレート49、第1ギヤプレート38P、第2ギヤプレート39Pとで形成される空間よって高圧室48Pが形成されている。また、ポンプカバー35、センタープレート49、第1ギヤプレート38S、第2ギヤプレート39Sとで形成される空間よって高圧室48Sが形成されている。
ポンプハウジング36には、ギヤポンプPPの吸入部58Pと低圧室40Pとを連通する吸入通路42Pが形成されている。またセンタープレート49には、ギヤポンプPSの吸入部58Sと低圧室40Sとを連通する吸入通路42Sが形成されている。
吐出部48P,48Sは、吐出通路43P,43Sと一方弁6P,6Sとが組み込まれている。この吐出部48P,48Sは、前述の通りハウジング31の左側面31eから右側面31fにかけて収容部41と略直交するように形成された吐出部収容孔47P,47Sに収容されている。この吐出部48P,48Sは、言い換えると低圧室40P,40Sの半径方向に沿って線対称に形成された吐出部収容孔47P,47Sに収容されていることとなる。
【0015】
吐出通路43P,43Sは、軸方向に貫通孔を有する連通部材44P,44Sによって形成されている。連通部材44P,44Sの一端は、センタープレート49の側面に形成された挿入孔64P,64SにOリング59P,59Sとともに挿入されている。このとき連通部材44P,44Sは低圧室40Sを貫通することとなる。センタープレート49には、連通部材44P,44Sの一端の開口部と高圧室48P,48Sとをそれぞれ連通する連通通路56P,56Sが形成されている。連通部材44P,44Sの他端の開口部にはフィルタ50P,50Sが設けられている。
一方弁6P,6Sは、シート部材51P,51Sと、ボール53P,53Sと、スプリング54P,54Sと、係止部材52Sによって形成されている。シート部材51P,51Sは、有底状の中空部を有し、この中空部に連通部材44P,44Sとフィルタ50P,50Sを収容している。シート部材51P,51S底部には中空部と外部との間を貫通する貫通孔60P,60Sが形成されている。係止部材51P,51Sは、ボール53P,53Sより大径のスプリング孔61P,61Sが形成されている。このスプリング孔61P,61Sにスプリング54P,54Sとボール53P,53Sを挿入した状態で、ボール53P,53Sをシート部材51P,51Sの貫通孔60P,60Sに座らせるように吐出部収容孔47P,47Sに挿入され、吐出部収容孔47P,47の開口部をかしめて、かしめ部62P,62Sによって係止されている。
【0016】
[作用]
従来のポンプ装置では低圧室と高圧室とを軸方向に並べていたため、ポンプ装置の軸方向長さが長くなり大型化する問題があった。また高圧室からリークした作動液がポンプ装置の外に漏れないように高圧室を低圧室で挟み込む必要があった。
そこで実施例1のポンプ装置33では、吐出通路43を低圧室40に臨み、ポンプユニットPとハウジング31を連通する連通部材44で形成した。
図10はポンプ装置33の模式図である。図10においてドットの濃い部分が高圧部を示し、ドットの薄い部分が低圧室を示す。図10に示すように、吐出通路43を低圧室40に臨むように形成したため、低圧部(低圧室40)を高圧部(高圧室48)の外周側に形成することができ、ポンプユニットPの軸方向に対してオーバラップさせて設けることが可能となる。したがって、ポンプユニットPの軸方向長さを短縮することができ、ポンプ装置33の小型化を図ることができる。
また、ポンプユニットPとハウジング31との間には低圧部(低圧室40)が形成されることとなる。言い換えると、ポンプユニットPとハウジング31との間には、高圧部は形成されない構成とすることが可能となる。低圧部を仕切るシール部材は、高圧部を仕切るシール部材に比べてシール性の確保が容易であるためシール部材の締め代を大きく設ける必要がなく、ポンプユニットPをハウジングに挿入する際に力を低減でき、組付け性を向上させることができる。
【0017】
また、高圧部から作動液がリークしたときにも、高圧部の外周にある低圧部(低圧室40に)に作動液が流れるだけであって、作動液を液圧回路内にとどめることができる。
また、高圧部がハウジング31と接しないために、ハウジング31に対するポンプユニットPのガタつきを抑制することが可能となる。したがって、ポンプユニットPをハウジングに固定するために締結力を小さくすることができる。
さらに実施例1のポンプ装置33では、ポンプユニットPを2連のタンデムギヤポンプとした。よって、一つのポンプユニットPにおいて二つのポンプを設けることが可能となり、ポンプユニットPの小型化を図ることができる。
さらに実施例1のポンプ装置33では、低圧室40は、Oリング45によって各ギヤポンプPS,PPに対応する第1低圧室40Pと第2低圧室40Sに区画され、連通部材44は第1低圧室40Pまたは第2低圧室40Sの一方に設けた。よって、連通部材44を一方の低圧室40側にまとめて配置することが可能となり、構成を簡略化することができる。
【0018】
また実施例1のポンプ装置33では、収容部41は環状凹部であるとともに、各ギヤポンプPP,PSの間に設けられたセンタープレート49と、センタープレート49を介してハウジング31側と連通する連通部材44と、ポンプユニットP0と環状凹部の周壁との間に形成された低圧室40と、を備え、連通部材44は低圧室40の半径方向に沿って線対称に設けた。
よって、プランジャポンプのピストンを収容していた位置に連通部材44を設けることが可能となり、ハウジング31の形成コストを抑制することができる。
また実施例1のポンプ装置33では、連通部材44にポンプユニットPにより加圧された作動液が吐出する方向のみの流れを許容する一方弁6が組み込まれている。
よって、別途一方弁6を組み込むスペースを設ける必要がなく、ポンプ装置33の小型化を図ることができる。
【0019】
[効果]
以下に実施例1の効果を列記する。
(1)ハウジング31と、ハウジング31に形成された低圧室40を構成する収容部41に収容された略円柱部材を成すポンプユニットPと、ポンプユニットPの外周に開口しポンプユニットP内に作動液を供給するための吸入通路42と、ポンプユニットPにより加圧された作動液をハウジング31外部へ吐出するための吐出通路43と、を備え、吐出通路43を低圧室40に臨み、ポンプユニットPとハウジング31を連通する連通部材44で形成した。
よって、吐出通路43を低圧室40に臨むように形成したため、低圧部(低圧室40)を高圧部(高圧室48)の外周側に形成することができ、ポンプユニットPの軸方向に対してオーバラップさせて設けることが可能となる。したがって、ポンプユニットPの軸方向長さを短縮することができ、ポンプ装置33の小型化を図ることができる。
また、ポンプユニットPとハウジング31との間には低圧部(低圧室40)が形成されることとなる。言い換えると、ポンプユニットPとハウジング31との間には、高圧部は形成されない構成とすることが可能となる。低圧部を仕切るシール部材は、高圧部を仕切るシール部材に比べてシール性の確保が容易であるためシール部材の締め代を大きく設ける必要がなく、ポンプユニットPをハウジングに挿入する際に力を低減でき、組付け性を向上させることができる。
また、高圧部(吐出通路43)を低圧室40に臨むように形成したため、高圧部から作動液がリークしたときにも作動液を液圧回路内にとどめることができる。
また、高圧部がハウジング31と接しないために、ハウジング31に対するポンプユニットPのガタつきを抑制することが可能となる。したがって、ポンプユニットPをハウジングに固定するために締結力を小さくすることができる。
【0020】
(2)ポンプユニットPを2連のタンデムギヤポンプとした。
よって、一つのポンプユニットPにおいて二つのポンプを設けることが可能となり、ポンプユニットPの小型化を図ることができる。
(3)低圧室40は、Oリング45によって各ギヤポンプPS,PPに対応する第1低圧室40Pと第2低圧室40Sに区画され、連通部材44は、第1低圧室40Pまたは第2低圧室40Sの一方に設けた。
よって、連通部材44を一方の低圧室40側にまとめて配置することが可能となり、構成を簡略化することができる。
【0021】
(4)収容部41は環状凹部であるとともに、各ギヤポンプPP,PSの間に設けられたセンタープレート49と、センタープレート49を介してハウジング31側と連通する連通部材44と、ポンプユニットP0と環状凹部の周壁との間に形成された低圧室40と、を備え、連通部材44は低圧室40の半径方向に沿って線対称に設けた。
よって、プランジャポンプのピストンを収容していた位置に連通部材44を設けることが可能となり、ハウジング31の形成コストを抑制することができる。
(5)連通部材44にポンプユニットPにより加圧された作動液が吐出する方向のみの流れを許容する一方弁6が組み込んだ。
よって、別途一方弁6を組み込むスペースを設ける必要がなく、ポンプ装置33の小型化を図ることができる。
【0022】
[他の実施例]
以上、本願発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば実施例1では、低圧部と高圧部とを遮断するためにOリングを用いているが、圧入やかしめによって遮断するようにしても良い。
また実施例1では、2連式のギヤポンプであるタンデムギヤポンプを用いているが、1連式のギヤポンプであっても良い。
また実施例1では、外接式のギヤ46P,46Sを用いたギヤポンプPP,PSを用いているが、内接式のギヤを用いたトロコイドポンプであっても良い。
また実施例1では、連通部材44P,44Sは一方の低圧室40Sを貫通しているが、連通部材44Pは低圧室40P、連通部材44Sは低圧室40Sといったようにそれぞれを貫通するようにしても良い。
【0023】
更に、上記実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
(イ)ハウジングと、
前記ハウジングに形成された収容部に収容され、内部に低圧部および高圧部が形成されるポンプユニットと、
前記ハウジングに形成され、前記ポンプユニットの前記低圧部に作動液を供給するための吸入通路と、
前記吸入通路と前記低圧部に連通する低圧室と、
前記ポンプユニットにより加圧された作動液を吐出する吐出通路と、
を備えたポンプ装置において、
前記低圧室は、前記ポンプユニットが前記収容部に収容されたときに前記ポンプユニットと前記収容部を形成する壁部との間に形成され、
前記吐出通路は、前記低圧室内を通り、前記ハウジングと前記高圧部を連通する連通管で形成したことを特徴とするポンプ装置。
よって、低圧部(低圧室)を高圧部の外周側に形成することができ、ポンプユニットの軸方向に対してオーバラップさせて設けることが可能となる。したがって、ポンプユニットの軸方向長さを短縮することができ、ポンプ装置の小型化を図ることができる。
また、ポンプユニットとハウジングとの間には低圧部(低圧室)が形成されることとなる。言い換えると、ポンプユニットとハウジングとの間には、高圧部は形成されない構成とすることが可能となる。低圧部を仕切るシール部材は、高圧部を仕切るシール部材に比べてシール性の確保が容易であるためシール部材の締め代を大きく設ける必要がなく、ポンプユニットをハウジングに挿入する際に力を低減でき、組付け性を向上させることができる。
また、高圧部から作動液がリークしたときにも作動液を液圧回路内にとどめることができる。
また、高圧部がハウジングと接しないために、ハウジングに対するポンプユニットのガタつきを抑制することが可能となる。したがって、ポンプユニットをハウジングに固定するために締結力を小さくすることができる。
【0024】
ロ)上記(イ)に記載のポンプ装置において、
前記ポンプユニットは略筒状に形成され、
前記低圧室は、前記ポンプユニットの外周壁と前記壁部との間に形成された環状の隙間であって、
前記連通管は、前記隙間の半径方向に沿って設けられていることを特徴とするポンプ装置。
よって、プランジャポンプのピストンを収容していた位置に連通管を設けることが可能となり、ハウジングの形成コストを抑制することができる。
(ハ)上記(イ)に記載のポンプ装置において、
前記吐出通路には、ポンプユニットにより加圧された作動液が吐出する方向のみの流れを許容する一方弁が組み込まれていることを特徴とするポンプ装置。
よって、別途一方弁を組み込むスペースを設ける必要がなく、ポンプ装置の小型化を図ることができる。
【0025】
(ニ)上記(イ)に記載のポンプ装置において、
前記ポンプユニットはタンデムギヤポンプであって、
前記各ギヤポンプの駆動ギヤを駆動するための駆動軸を有し、
前記各ギヤポンプは前記駆動軸の軸方向に沿って配置されていることを特徴とするポンプ装置。
よって、一つのポンプユニットにおいて二つのポンプを設けることが可能となり、ポンプユニットの小型化を図ることができる。
(ホ)上記(ニ)に記載のポンプ装置において、
前記タンデムギヤポンプは2連ポンプであって、
前記低圧室はOリングによって各ギヤポンプに対応する第1低圧室と第2低圧室に区画され、
前記連通管は、前記低圧室にそれぞれ設けられていることを特徴とするポンプ装置。
よって、第1低圧室と第2低圧室の容積を略均等に形成することが可能となり、各ギヤポンプの吸入能力を揃えることができる。
【0026】
(へ)上記(ホ)に記載のポンプ装置において、
前記ポンプユニットは略筒状に形成され、
前記低圧室は、前記ポンプユニットの外周壁と前記壁部との間に形成された環状の隙間であって、
前記連通管は、前記隙間の半径方向に沿って設けられていることを特徴とするポンプ装置。
また、ポンプユニットとハウジングとの間には低圧部(低圧室)が形成されることとなるため、シール部材の締め代を大きく設ける必要がなく、ポンプユニットをハウジングに挿入する際に力を低減でき、組付け性を向上させることができる。
また、低圧室内を貫通する連通管の体積を小さくすることができるため、低圧室の四席を確保することが可能となり、ギヤポンプの吸入能力を高めることができる。
(ト)上記(ニ)に記載のポンプ装置において、
前記各ギヤポンプの間にセンタープレートを備え、
前記各連通管は、前記センタープレートを介して前記ハウジング側と連通していることを特徴とするポンプ装置。
連通管をセンタープレートに接続することができるため、連通管の固定やシール性の確保が容易となる。
また、センタープレート内に液路を形成することで、連通管とギヤポンプの吐出側とのアクセス経路を容易に形成することができる。
【0027】
(チ)上記(ト)に記載のポンプ装置において、
前記連通管は前記隙間の半径方向に沿って線対称に設けられていることを特徴とするポンプ装置。
よって、プランジャポンプのピストンを収容していた位置に連通管を設けることが可能となり、ハウジングの形成コストを抑制することができる。
(リ)上記(チ)に記載のポンプ装置において、
前記低圧室は、Oリングによって前記各ギヤポンプに対応する第1低圧室と第2低圧室に区画され、
前記各ギヤポンプに対応する前記連通管は前記第1低圧室または前記第2低圧室に一方に設けられていることを特徴とするポンプ装置。
よって、連通部材を一方の低圧室側にまとめて配置することが可能となり、構成を簡略化することができる。
【0028】
(ヌ)上記(リ)に記載のポンプ装置において、
前記ギヤポンプのうち一方の前記ギヤポンプは車両の第1のブレーキ配管系統に属するホイルシリンダ圧を昇圧し、他方の前記ギヤポンプは前記第1のブレーキ配管系統とは独立した第2のブレーキ配管系統に属するホイルシリンダ圧を昇圧するブレーキ制御装置に用いられることを特徴とするポンプ装置。
よって、一方のブレーキ配管系統に亀裂などの異常が生じた場合でも、他方のブレーキ配管系統によりホイルシリンダ圧を昇圧することが可能となり、制動力を確保することができる。
(ル)上記(リ)に記載のポンプ装置において、
前記連通管には前記ポンプユニットにより加圧された作動液が吐出する方向のみの流れを許容する一方弁が組み込まれていることを特徴とするポンプ装置。
よって、別途一方弁を組み込むスペースを設ける必要がなく、ポンプ装置の小型化を図ることができる。
【0029】
(ヲ)上記(ニ)に記載のポンプ装置において、
前記低圧室は、Oリングによって前記各ギヤポンプに対応する第1低圧室と第2低圧室に区画され、
前記各ポンプに対応する前記連通管は、前記第1低圧室または前記第2低圧室に一方に設けられていることを特徴とするポンプ装置。
よって、連通部材を一方の低圧室側にまとめて配置することが可能となり、構成を簡略化することができる。
(ワ)請求項1に記載のポンプ装置において、
前記低圧室は、前記ポンプユニットの外周壁と前記壁部との間に形成された環状の隙間であって、
前記連通部材は、前記隙間の半径方向に沿って設けられていることを特徴とするポンプ装置。
よって、プランジャポンプのピストンを収容していた位置に連通部材を設けることが可能となり、ハウジングの形成コストを抑制することができる。
【0030】
(カ)ハウジングと、
前記ハウジングに形成された低圧室を構成する収容部に収容され、内部に高圧部を有するポンプユニットと、
前記低圧室を横断し、前記ポンプユニットの高圧部とハウジングとを連通する吐出通路部材と、
を備えたことを特徴とするポンプ装置。
よって、低圧部(低圧室)を高圧部の外周側に形成することができ、ポンプユニットの軸方向に対してオーバラップさせて設けることが可能となる。したがって、ポンプユニットの軸方向長さを短縮することができ、ポンプ装置の小型化を図ることができる。
また、ポンプユニットとハウジングとの間には低圧部(低圧室)が形成されることとなる。言い換えると、ポンプユニットとハウジングとの間には、高圧部は形成されない構成とすることが可能となる。低圧部を仕切るシール部材は、高圧部を仕切るシール部材に比べてシール性の確保が容易であるためシール部材の締め代を大きく設ける必要がなく、ポンプユニットをハウジングに挿入する際に力を低減でき、組付け性を向上させることができる。
また、高圧部から作動液がリークしたときにも作動液を液圧回路内にとどめることができる。
また、高圧部がハウジングと接しないために、ハウジングに対するポンプユニットのガタつきを抑制することが可能となる。したがって、ポンプユニットをハウジングに固定するために締結力を小さくすることができる。
【0031】
(ヨ)上記(カ)に記載のポンプ装置において、
前記収容部は環状凹部であるとともに、
前記ポンプユニットは、略円柱状を成しており、内部に2連のポンプ構造を有するタンデムギヤポンプであって、
前記ギヤポンプの間に設けたセンタープレートと、
前記センタープレートを介して前記ハウジング側と連通する連通部材と、
前記ポンプユニットと前記環状凹部の周壁との間に形成された前記低圧室と、
を備え、
前記吐出通路部材は、前記低圧室の半径方向に沿って線対称に設けられているとともに、
前記低圧室は、Oリングによって前記各ギヤポンプに対応する第1低圧室と第2低圧室に区画され、
前記連通部材は、前記第1低圧室または前記第2低圧室の一方に設けられる構造であって、
前記各ギヤポンプのうち一方のポンプは車両の第1のブレーキ配管系統に属するホイルシリンダ圧を昇圧し、他方のポンプは前記第1のブレーキ配管系統とは独立した第2のブレーキ配管系統に属するホイルシリンダ圧を昇圧するブレーキ制御装置に用いられることを特徴とするポンプ装置。
よって、連通部材を一方の低圧室側にまとめて配置することが可能となり、構成を簡略化することができる。
また、一方のブレーキ配管系統に亀裂などの異常が生じた場合でも、他方のブレーキ配管系統によりホイルシリンダ圧を昇圧することが可能となり、制動力を確保することができる。
【符号の説明】
【0032】
31 ハウジング
33 ポンプ装置
40 低圧室
41 収容部
43 吐出通路
44 連通部材(連通管)
45 Oリング(シール部材)
48 高圧室
P ポンプユニット
PP,PS ギヤポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに形成された収容部に収容され、内部に低圧部および高圧部が形成されるポンプユニットと、
前記ハウジングに形成され、前記ポンプユニットの前記低圧部に作動液を供給するための吸入通路と、
前記吸入通路と前記低圧部に連通する低圧室と、
前記ポンプユニットにより加圧された作動液を吐出する吐出通路と、
を備えたポンプ装置において、
前記低圧室は、前記ポンプユニットが前記収容部に収容されたときに前記ポンプユニットと前記収容部を形成する壁部との間に形成され、
前記吐出通路は、前記低圧室内を通り、前記ハウジングと前記高圧部を連通する連通管で形成したことを特徴とするポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−127353(P2012−127353A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−15923(P2012−15923)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2009−215912(P2009−215912)の分割
【原出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】