説明

マイクロチップの製造方法、及びマイクロチップ

【課題】マイクロチップ基板の位置決めを容易にし、マイクロチップ基板同士をより強固に接合することが可能なマイクロチップの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】マイクロチップ基板1の表面には流路用溝2が形成されている。流路用溝2が形成された面には、表面に直交する方向に突設するピン3が設けられている。マイクロチップ基板4には基板の厚さ方向に貫通する貫通孔5が形成されている。貫通孔5の孔径と、ピン3の径はほぼ等しくなっている。マイクロチップ基板1については流路用溝2が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を重ねることで、ピン3は貫通孔5に挿入される。ピン3を貫通孔5に挿入した状態で、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を超音波溶着やレーザ溶着によって接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流路を有するマイクロチップを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術を利用してシリコンやガラス基板上に微細な流路や回路を形成し、微小空間上で核酸、タンパク質、血液などの液体試料の化学反応や、分離、分析などを行うマイクロ分析チップ、あるいはμTAS(Micro Total Analysis Systems)と称される装置が実用化されている。このようなマイクロチップの利点としては、サンプルや試薬の使用量又は廃液の排出量が軽減され、省スペースで持ち運び可能な安価なシステムの実現が考えられる。
【0003】
マイクロチップは、少なくとも一方の部材に微細加工が施された部材2つをはり合わせることにより製造される。従来においては、マイクロチップにはガラス基板が用いられ、様々な微細加工方法が提案されている。しかしながら、ガラス基板は大量生産には向かず、非常に高コストであるため、廉価で使い捨て可能な樹脂製マイクロチップの開発が望まれている。
【0004】
微細流路が形成されたマイクロチップは、表面に流路用溝が形成された樹脂製のマイクロチップ基板と、流路用溝のカバーとして機能する樹脂製のマイクロチップ基板とを、流路用溝が形成された面を内側にして接合することによって作製される。
【0005】
微細流路が形成されたマイクロチップにおいては、微細流路内の流体が微細流路の外部に染み出してはならず、微細流路のシール性確保が重要な接合の要件となる。すなわち、流路用溝とカバーとして機能するマイクロチップ基板との間に隙間が生じないように、マイクロチップ基板同士を接合する必要がある。また、微細な流路用溝をマイクロチップ基板に高精度に転写する必要があるため、マイクロチップ基板の平面性を同時に確保することは困難である。平面性が劣るマイクロチップ基板同士を接合する場合、接合面における密着性の確保が困難となり、接合におけるシール性や密着強度も十分ではない。
【0006】
従来においては、レーザ光に対して透過性の樹脂製部材と、レーザ光に対して非透過性の樹脂製部材とをレーザによって溶着する場合、透過性の樹脂製部材に凹部を形成し、非透過性の樹脂製部材に凸部を形成し、凹部と凸部を嵌合させ、その後、凸部にレーザ光を照射することで凸部を溶融し、そのことによって2つの樹脂製部材を溶着していた(例えば特許文献1)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−7759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1による方法では、溝状に形成した凹部に凸部を嵌合させ、その状態でレーザ溶着を行っている。しかしながら、当該文献に記載の技術は溶着による他の問題点は何ら認識されていない。従って、係る技術をマイクロチップ基板を製造するにあたって採用した場合、流路用溝を凹部として利用し、当該凹部に対して対応して形成した凸部を嵌合させてレーザ溶着を行うことが考えられるが、その場合、流路用溝の一部が溶融し、変形してしまう問題があった。
【0009】
この発明は上記の問題を解決するものであり、マイクロチップ基板同士を接合するにあたって、マイクロチップ基板の位置決めを容易にし、さらに、マイクロチップ基板同士をより強固に接合することが可能なマイクロチップの製造方法、及びマイクロチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の第1の形態は、2つの樹脂製基板の少なくとも一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、前記流路用溝が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板を接合するマイクロチップの製造方法であって、前記少なくとも一方の樹脂製基板の前記接合する面には樹脂製の突起部が形成され、他方の樹脂製基板の前記接合する面には、前記流路用溝とは異なる位置に前記突起部が挿入される被挿入部が形成され、前記突起部と前記被挿入部が形成された面を内側にし、前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記突起部を前記被挿入部に挿入し、その状態で前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とするマイクロチップの製造方法である。
また、この発明の第2の形態は、第1の形態に係るマイクロチップの製造方法であって、前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設されたピンであり、前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通し、前記ピンの径とほぼ等しい大きさの径を有する貫通孔であり、前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記ピンを前記貫通孔に挿入し、その状態で前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第3の形態は、第2の形態に係るマイクロチップの製造方法であって、前記ピンの高さは、前記他方の樹脂製基板の厚さよりも長いことを特徴とする。
また、この発明の第4の形態は、第1の形態に係るマイクロチップの製造方法であって、前記突起部は、先端に向かって幅が徐々に狭くなっており、前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の最表面における幅が前記突起部の先端の幅よりも広く、深さ方向に向かって徐々に狭くなる溝部であり、前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記突起部を前記溝部に嵌合させ、その状態で前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第5の形態は、第1の形態に係るマイクロチップの製造方法であって、前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通する貫通孔であり、前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設され、前記他方の樹脂製基板の厚さよりも長い高さを有し、幅が前記貫通孔の幅と略等しい第1突起部と、前記第1突起部の先端に設けられ、幅が前記第1突起部の先端において前記貫通孔の幅よりも広く、先端に向かって徐々に狭くなる第2突起部とを有し、前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記突起部を前記貫通孔に挿入し、前記突起部と前記貫通孔とをスナップフィット方式により嵌合させることを特徴とする。
また、この発明の第6の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板を重ねた後、その状態で前記2つの樹脂製基板を加熱することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第7の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板を重ねた後、その状態で前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第8の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対して超音波を印加することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第9の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対して超音波を印加することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対してレーザを照射することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第10の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板を重ねた後、その状態で前記2つの樹脂製基板に対してレーザを照射することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第11の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対してレーザを照射することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対してレーザを照射することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第12の形態は、第1の形態から第5の形態のいずれかに係るマイクロチップの製造方法であって、前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対してレーザを照射することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする。
また、この発明の第13の形態は、2つの樹脂製基板の少なくとも一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、前記流路用溝が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板が接合されたマイクロチップであって、前記少なくとも一方の樹脂製基板の接合する面には樹脂製の突起部が形成され、他方の樹脂製基板の前記接合する面には、前記流路用溝とは異なる位置に前記突起部が挿入された被挿入部が形成されていることを特徴とするマイクロチップである。
また、この発明の第14の形態は、第13の形態に係るマイクロチップであって、前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設されたピンであり、前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通し、前記ピンの径とほぼ等しい大きさの径を有する貫通孔であることを特徴とする。
また、この発明の第15の形態は、第13の形態に係るマイクロチップであって、前記突起部は、先端に向かって幅が徐々に狭くなっており、前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の最表面における幅が前記突起部の先端の幅よりも広く、深さ方向に向かって徐々に狭くなっている溝部であることを特徴とする。
また、この発明の第16の形態は、第13の形態に係るマイクロチップであって、前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通する貫通孔であり、前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設され、前記他方の樹脂製基板の厚さよりも長い高さを有し、幅が前記貫通孔の幅と略等しい第1突起部と、前記第1突起部の先端に設けられ、幅が前記第1突起部の先端において前記貫通孔の幅よりも広く、先端に向かって徐々に狭くなる第2突起部とを有し、前記突起部と前記貫通孔とがスナップフィット方式により嵌合されたことを特徴とする。
また、この発明の第17の形態は、第13の形態から第16の形態のいずれかに係るマイクロチップであって、前記2つの樹脂製基板にはそれぞれ流路用溝が形成され、前記流路用溝の少なくとも一方は側面が曲面状に形成されており、前記2つの樹脂製基板は前記流路用溝をそれぞれ内側にして接合されたことを特徴とする。
また、この発明の第18の形態は、第13の形態から第17の形態のいずれかに係るマイクロチップであって、前記突起部及び前記被挿入部の少なくとも一方は曲面状となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によると、2つの樹脂製基板を接合する際に突起部を被挿入部に挿入することで、2つの樹脂製基板の位置決めを簡便に行うことができる。また、突起部を被挿入部に挿入することで、2つの樹脂製基板の位置ずれを防止することができる。また、突起部において仮止めを行うことで、樹脂製基板同士の密着性を向上させ、樹脂製基板同士を強固に接合することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1の実施形態]
この発明の第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法について図1を参照して説明する。図1は、この発明の第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0013】
図1(a)に示すように、マイクロチップ基板1の表面には、表面に沿って延びた流路用溝2が形成されている。流路用溝2は基板表面に沿って延びた溝状のものである。また、流路用溝2が形成された面には、表面に直交する方向に突設するピン3が設けられている。マイクロチップ基板4には、基板の厚さ方向に貫通する貫通孔5が形成されている。
【0014】
貫通孔5の孔の形状は例えば円形となっている。ピン3は例えば円柱状の形状を有している。貫通孔5の孔径と、ピン3の径はほぼ等しくなっている。また、ピン3の高さは、マイクロチップ基板4の厚さよりも長くなっている。ピン3と貫通孔5は、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を接合するときの基板の位置合わせに用いられる。
【0015】
なお、貫通孔5の孔の形状は円形状である必要はなく、例えば、多角形状の形状を有していても良い。また、ピン3は円柱状の形状を有している必要はなく、断面が多角形となる柱状のものであっても良い。
【0016】
また、流路用溝2が形成されたマイクロチップ基板1に、ピンの代わりに貫通孔を形成し、他方のマイクロチップ基板4に、貫通孔の代わりにピンを形成して、ピンと貫通孔によって位置決めを行って、マイクロチップ基板1、4を接合しても良い。また、両方のマイクロチップ基板に、ピンと貫通孔を設けても良い。
【0017】
さらに、複数のピン3をマイクロチップ基板1に形成し、そのピン3の数と同じ数の貫通孔5をマイクロチップ基板4に形成しても良い。この場合、複数のピン3の配置パターンと複数の貫通孔5の配置パターンが同じパターンとなるように、複数のピン3をマイクロチップ基板1に形成し、複数の貫通孔5をマイクロチップ基板4に形成する。これにより、マイクロチップ基板1、4を重ねることで、複数のピン3のそれぞれが、位置が一致する貫通孔5に挿入され、マイクロチップ基板1、4の位置決めがなされる。
【0018】
そして、図1(b)に示すように、マイクロチップ基板1については流路用溝2が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を重ねることで、ピン3は貫通孔5に挿入される。ピン3の高さは、マミクロチップ基板4の厚さよりも長くなっているため、貫通孔5に挿入されたピン3は、マイクロチップ基板4を貫通することになる。
【0019】
ピン3が貫通孔5に挿入されることで、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4の位置決めを簡便に行うことができ、その位置決めを正確に行うことができる。また、ピン3を貫通孔5に挿入することで、マイクロチップ基板1、4の接合時におけるマイクロチップ基板の位置ずれを防止することができる。
【0020】
そして、ピン3を貫通孔5に挿入した状態で、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を接合する。これにより、微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。
【0021】
マイクロチップ基板1、4の外形形状は、ハンドリング、分析しやすい形状であればどのような形状であってもよい。例えば、10mm角〜200mm角程度の大きさが好ましく、10mm角〜100mm角がより好ましい。マイクロチップ基板1、4の外形形状は、分析手法、分析装置に合わせれば良く、正方形、長方形、円形などの形状が好ましい。
【0022】
また、マイクロチップ基板1、4の板厚は、成形性を考慮して、0.2mm〜5mm程度が好ましく、0.5mm〜2mmがより好ましい。
【0023】
また、マイクロチップ基板1には、基板を貫通して形成された貫通孔が形成されている。この貫通孔は流路用溝2に接して形成されており、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を接合することで、外部と流路用溝2を繋げる開口部となる。この開口部は、ゲル、試料、緩衝液の導入、保存、排出を行うための孔である。開口部の形状は、円形状や矩形状の他、様々な形状であっても良い。この開口部に、分析装置に設けられたチューブやノズルを接続し、そのチューブやノズルを介して、ゲル、試料、又は緩衝液などを流路用溝2に導入し、又は、流路用溝2から排出する。なお、貫通孔をマイクロチップ基板4に形成して開口部を形成しても良い。
【0024】
また、流路用溝2の形状は、分析試料、試薬の使用量を少なくできること、成形金型の作製精度、転写性、離型性などを考慮して、幅、深さともに、10μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましいが、特に限定されるものではない。また、流路用溝2の幅と深さは、マイクロチップの用途によって決めれば良い。さらに、複数の流路用溝2をマイクロチップ基板1に形成しても良い。
【0025】
マイクロチップ基板1、4には樹脂が用いられる。その樹脂としては、金型成形における成形性(転写性、離型性)が良いこと、透明性が高いこと、紫外線や可視光に対する自己蛍光性が低いことなどが条件として挙げられるが、特に限定されるものではない。例えば、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、環状ポリオレフィンなどが好ましい。特に、ポリメタクリル酸メチル、環状ポリオレフィンなどが好ましい。マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4とで、同じ材料を用いてもよく、異なる材料を用いても良い。
【0026】
また、ピン3はマイクロチップ基板1と一体的に形成され、マイクロチップ基板と同じ樹脂で構成されている。
【0027】
また、ピン3の直径と貫通孔5の孔の直径が1mm以上であることが好ましい。直径が1mm以上であると、マイクロチップ基板1、4を重ねたときに、基板の位置ずれをより確実に防止することが可能となるからである。
【0028】
(接合)
そして、超音波溶着、レーザ溶着、熱圧着、又は接着剤によって、マイクロチップ基板1、4を接合する。
【0029】
(超音波溶着)
超音波溶着の場合、図1(b)に示すように、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を重ねた状態で、マイクロチップ基板1、4のいずれかの基板の表面に超音波を印加するたえのホーンを接触させ、そのホーンによってマイクロチップ基板1、4に超音波を印加することにより、マイクロチップ基板1、4の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板1、4を加圧することで両基板を接合する。超音波溶着は公知の方法を採用することができ、例えば特開2005−77239号公報に記載の方法を採用することができる。このようにマイクロチップ基板1、4を接合することで、図1(c)に示すように、流路用溝2による微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。この超音波照射によって、ピン3の先端部が溶融されて潰れた状態になる。
【0030】
(レーザ溶着)
また、レーザをマイクロチップ基板1、4に照射することで、マイクロチップ基板1、4を接合しても良い。例えば図1(b)に示すように、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を重ねた状態で、マイクロチップ基板1、4に対してレーザを照射することにより、マイクロチップ基板1、4の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板1、4を加圧することで両基板を接合する。これにより、図1(c)に示すように、流路用溝2による微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。レーザ溶着は公知の方法を採用することができ、例えば特開2005−74796号公報に記載の方法を採用することができる。このレーザ照射によって、ピン3の先端部が溶融されて潰れた状態になる。
【0031】
また、マイクロチップ基板1、4の接合面を溶融させる前に、ピン3の先端部に対して超音波又はレーザを集中的に照射することで、他の部分よりもピン3の先端部を先に溶融させる。これにより、先端部が溶融されたピン3によってマイクロチップ基板1、4の仮止めが可能となる。この仮止めによって、マイクロチップ基板1、4の接合時におけるマイクロチップ基板1、4の位置ずれを防止することができる。また、仮止めの時点でマイクロチップ基板1、4同士の密着性が確保される。そして、マイクロチップ基板1、4を仮止めした後、マイクロチップ基板1、4の接合面に対して超音波又はレーザを照射することで、マイクロチップ基板1、4の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板1、4を加圧することで、両基板を接合する。これにより、マイクロチップ基板1、4を強固に接合することが可能となる。
【0032】
なお、当該仮止めの構成は、ピン3を貫通孔に挿入する場合について述べたが、その仮止めの構成は、樹脂製基板の一方に形成された突起部と他方の樹脂製基板に形成された被挿入部との関係においても同様に適用可能なものである。
【0033】
(熱圧着)
また、マイクロチップ基板1、4を加熱することで、マイクロチップ基板1、4を接合しても良い。例えば図1(b)に示すように、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を重ねた状態で、マイクロチップ基板1、4を加熱し、マイクロチップ基板1、4の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板1、4を加圧することで両基板を接合する。これにより、図1(c)に示すように、流路用溝2による微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。この熱圧着によって、ピン3の先端が溶融されて潰れた状態になる。
【0034】
(接着剤)
また、接着剤によってマイクロチップ基板1、4を接合しても良い。接着剤には、例えば、UV硬化型接着剤、や遅延硬化型接着剤などが用いられる。例えば、マイクロチップ基板4の表面に接着剤を塗布し、その後、マイクロチップ基板1とマイクロチップ基板4を重ねることで、マイクロチップ基板1、4を接合する。
【0035】
以上のように、ピン3を貫通孔5に挿入することで、マイクロチップ基板1、4の位置決めを簡便に行い、その位置決めを正確に行うことができる。また、ピン3と貫通孔5によって、マイクロチップ基板1、4の位置ずれを防止することができる。そのことにより、マクロチップ基板1、4の密着性を向上させることができ、マイクロチップ基板1、4を強固に接合することが可能となる。また、凹部を貫通孔とすることで、余分量の接着剤が接合面(流路が形成されている側の面)にはみ出さず、逆の面に流れ出すことで、流路内に入り込むことを防止することができる。
【0036】
[第2の実施の形態]
次に、この発明の第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法について、図2を参照して説明する。図2は、この発明の第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0037】
第2実施形態では、一方のマイクロチップ基板の表面に溝部を形成し、他方のマイクロチップ基板の表面に、その溝部に嵌合する突起部を設けた。
【0038】
図2(a)に示すように、マイクロチップ基板6の表面には、表面に沿って延びた流路用溝7が形成されている。流路用溝7は基板表面に沿って延びた溝状のものである。また、流路用溝7が形成された面には、流路用溝7の他に、テーパ状の側面を有する溝部8が形成されている。溝部8の幅は、マイクロチップ基板6の最表面において最大の幅となり、溝の深さ方向に向かって徐々に狭くなっている。なお、説明の便宜上、図2においては、溝部8の側面は直線状となっているが、曲線状となっていても良い。
【0039】
また、マイクロチップ基板9の表面には、表面に直交する方向に突設する突起部10が設けられている。溝部8の幅方向における突起部10の幅は、突起部10の高さ方向に向けて徐々に狭くなっている。また、溝部8の深さと突起部10の高さはほぼ等しくなっている。さらに、マイクロチップ基板6の最表面における溝部8の幅は、突起部10の先端の幅よりも広くなっており、突起部10を溝部8に嵌合することが可能となっている。溝部8と突起部10は、マイクロチップ基板6、9を接合するときの基板の位置合わせに用いられる。また、突起部10はマイクロチップ基板9と一体的に形成され、マイクロチップ基板と同じ樹脂で構成されている。
【0040】
なお、流路用溝7が形成されたマイクロチップ基板6に、溝部の代わりに突起部を形成し、他方のマイクロチップ基板9に、突起部の代わりに溝部を形成して、突起部と溝部によって位置決めを行って、マイクロチップ基板6、9を接合しても良い。また、両方のマイクロチップ基板に、突起部と溝部を設けても良い。
【0041】
さらに、複数の溝部8をマイクロチップ基板6に形成し、その溝部8の数と同じ数の突起部10をマイクロチップ基板9に形成しても良い。この場合、複数の溝部8の配置パターンと複数の突起部10の配置パターンが同じパターンとなるように、複数の溝部8をマイクロチップ基板6に形成し、複数の突起部10をマイクロチップ基板9に形成する。これにより、マイクロチップ基板6、9を重ねることで、複数の突起部10のそれぞれが、位置が一致する溝部8に嵌合され、マイクロチップ基板6、9の位置決めがなされる。
【0042】
そして、図2(b)に示すように、マイクロチップ基板6については流路用溝7が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板9については突起部10が形成された面を内側にし、溝部8と突起部10の位置を合わせて、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9を重ねる。これにより、突起部10が溝部8に嵌め込まれ、突起部10の側面と溝部8の側面が接し、その状態で、突起部10と溝部8とが嵌合することになる。
【0043】
突起部10と溝部8が嵌合することで、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9の位置決めを簡便に行うことができ、その位置決めを正確に行うことができる。また、突起部10を溝部8に嵌合させることで、マイクロチップ基板6、9の接合時におけるマイクロチップ基板の位置ずれを防止することができる。
【0044】
そして、突起部10を溝部8に嵌合させた状態で、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9を接合する。これにより、微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。
【0045】
(接合)
そして、第1実施形態と同様に、超音波溶着、レーザ溶着、熱圧着、又は接着剤によって、マイクロチップ基板6、9を接合する。
【0046】
(超音波溶着)
超音波溶着の場合、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9を重ねた状態で、マイクロチップ基板6、9のいずれかの基板の表面に超音波を印加するホーンを設置し、そのホーンによってマイクロチップ基板6、9に超音波を印加することにより、マイクロチップ基板6、9の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板6、9を加圧することで両基板を接合する。これにより、図2(c)に示すように、流路用溝7による微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。また、超音波溶着においては、特に突起部10において発熱が収集し、溶着がスムーズに進行する。そのことにより、マイクロチップ基板同士を更に強固に接合することができる。
【0047】
(レーザ溶着)
また、レーザ溶着の場合、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9を重ねた状態で、レーザをマイクロチップ基板6、9に照射することにより、マイクロチップ基板6、9の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板6、9を加圧することで両基板を接合する。
【0048】
(熱圧着)
また、熱圧着の場合、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9を重ねた状態で、マイクロチップ基板6、9を加熱し、マイクロチップ基板6、9の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板6、9を加圧することで両基板を接合する。また、熱圧着においては、特に突起部10において発熱が収集し、溶着がスムーズに進行する。そのことにより、マイクロチップ基板同士を更に強固に接合することができる。
【0049】
また、溝部8に突起部10を嵌合させることで、溝部8の側面と突起部10の側面が接触し、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9の接触部分が増える。そのことにより、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9の接合に供する部分が増えるため、その状態で超音波印加、レーザ照射、又は加熱によってマイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9の接合面を溶融させることで、マイクロチップ基板6とマイクロチップ基板9を更に強固に接合することが可能となる。
【0050】
(接着剤)
また、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板6、9を接着剤によって接合しても良い。
【0051】
以上のように、突起部10を溝部8に嵌合させることで、マイクロチップ基板6、9の位置決めを簡便に行い、その位置決めを正確に行うことができる。また、突起部10と溝部8によって、マイクロチップ基板6、9の位置ずれを防止することができる。そのことにより、マイクロチップ基板6、9の密着性を向上させることができ、マイクロチップ基板6、9を強固に接合することが可能となる。
【0052】
なお、マイクロチップ基板6、9の形状、サイズ、板厚、材料は、第1実施形態で説明した形状、サイズ、板厚、材料と同じである。
【0053】
[第3の実施の形態]
次に、この発明の第3実施形態に係るマイクロチップの製造方法について、図3を参照して説明する。図3は、この発明の第3実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0054】
第3実施形態では、一方のマイクロチップ基板に、基板の厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、他方のマイクロチップ基板の表面に、その貫通孔に対してスナップフィット方式により嵌合する突起部を設けた。
【0055】
なお、スナップフィット方式とは、図3(a)に示すように、第1突起部14とその第1突起部14の先端部に第1突起部14より径がわずかに大きい第2突起部15とからなる突起部13と、貫通孔17より構成され、貫通孔17と第1突起部14の径は、両者が嵌合する寸法となっている。突起部13及び貫通孔17は、例えば樹脂のようにある程度伸縮性に富んだ樹脂からなっており、マイクロチップ基板11、16を押圧することで、貫通孔17より径が大きい第2突起部15が貫通孔17に貫通する。第2突起部15が貫通した後には、貫通孔17は自身の伸縮性によって元の径に戻り、第1突起部14と嵌合し、第2突起部15が仮止め機能を有することになる。
【0056】
図3(a)に示すように、マイクロチップ基板16には、基板の厚さ方向に貫通する貫通孔17が形成されている。マイクロチップ基板11の表面には、表面に沿って延びた流路用溝12が形成されている。流路用溝12は基板表面に沿って延びた溝状のものである。また、流路用溝12が形成された面には、表面に直交する方向に突設され、マイクロチップ基板16とスナップフィット方式により嵌合する突起部13が形成されている。突起部13はマイクロチップ基板11と一体的に形成され、マイクロチップ基板と同じ樹脂で構成されている。
【0057】
貫通孔17の孔の形状は円形となっている。また、突起部13は、基板表面に突設して形成された円柱状の第1突起部14と、その第1突起部14の先端部に形成された第2突起部15とを備えて構成されている。第2突起部15の径の大きさは、第1突起部14の径の大きさよりも大きく、先端に向かって徐々に狭くなっている。さらに、第2突起部15の径の大きさは、第1突起部14の先端部において貫通孔17の径よりも大きくなっており、先端に向かって徐々に狭くなっている。第1突起部14の高さは、マイクロチップ基板16の厚さとほぼ同じ長さとなっている。第1突起部14の径の大きさは、マイクロチップ基板16に形成された貫通孔17の径の大きさとほぼ等しい。突起部13と貫通孔17は、マイクロチップ基板11、16を接合するときの基板の位置合わせに用いられる。
【0058】
なお、流路用溝12が形成されたマイクロチップ基板11に、突起部の代わりに貫通孔を形成し、他方のマイクロチップ基板16に、貫通孔の代わりに突起部を形成して、突起部と溝部によって位置決めを行って、マイクロチップ基板11、16を接合しても良い。また、両方のマイクロチップ基板に、突起部と溝部を設けても良い。
【0059】
さらに、複数の突起部13をマイクロチップ基板11に形成し、その突起部13の数と同じ数の貫通孔17をマイクロチップ基板16に形成しても良い。この場合、複数の突起部13の配置パターンと複数の貫通孔17の配置パターンが同じパターンとなるように、複数の突起部13をマイクロチップ基板11に形成し、複数の貫通孔17をマイクロチップ基板16に形成する。これにより、マイクロチップ基板11、16を重ねることで、複数の突起部13のそれぞれが、位置が一致する貫通孔17に嵌合され、マイクロチップ基板11、16の位置決めがなされる。
【0060】
そして、図3(b)に示すように、マイクロチップ基板11については流路用溝12が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板11とマイクロチップ基板16を重ねる。これにより、突起部13は貫通孔17に挿入される。突起部13の第1突起部14の高さは、マイクロチップ基板16の厚さとほぼ等しいため、第1突起部14の先端部に形成されている第2突起部15は、マイクロチップ基板16に形成された貫通孔17を貫通することになる。円柱状の第1突起部14の径の大きさは、貫通孔17の径の大きさとほぼ等しいため、第1突起部14は貫通孔17に嵌合されることになる。これにより、突起部13と貫通孔17はスナップフィット方式によって嵌合することになる。
【0061】
突起部13が貫通孔17に挿入されて、スナップフィット方式によって突起部13と貫通孔17が嵌合することで、マイクロチップ基板11とマイクロチップ基板16の位置決めを簡便に行うことができ、その位置決めを正確に行うことができる。また、突起部13を貫通孔17に嵌合させることで、マイクロチップ基板11、16の接合時におけるマイクロチップ基板の位置ずれを防止することができる。
【0062】
さらに、スナップフィット方式による固定手段によって、マイクロチップ基板11、16同士を仮止めすることができ、この仮止めによってマイクロチップ基板11、16同士の密着性を向上させることができる。このように密着性を向上させることができるため、マイクロチップ基板11、16を強固に接合することが可能となる。
【0063】
そして、突起部13を貫通孔17に嵌合させた状態で、マイクロチップ基板11とマイクロチップ基板16を接合する。これにより、微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。
【0064】
(接合)
そして、第1実施形態と同様に、超音波溶着、レーザ溶着、熱圧着、又は接着剤によって、マイクロチップ基板11、16を接合する。
【0065】
(超音波溶着)
超音波溶着の場合、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板11とマイクロチップ基板16を重ねた状態で、マイクロチップ基板11、16のいずれかの基板の表面に超音波を印加するホーンを設置し、そのホーンによってマイクロチップ基板11、16に超音波を印加することにより、マイクロチップ基板11、16の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板11、16を加圧することで両基板を接合する。これにより、図3(c)に示すように、流路用溝12による微細流路が形成されたマイクロチップが製造される。この超音波溶着によって、第2突起部15は溶融されて潰れた状態になる。
【0066】
(レーザ溶着)
また、レーザ溶着の場合、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板11とマイクロチップ基板16を重ねた状態で、レーザをマイクロチップ基板11、16に照射することにより、マイクロチップ基板11、16の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板11、16を加圧することで両基板を接合する。このレーザ溶着によって、第2突起部15は溶融されて潰れた状態になる。
【0067】
(熱圧着)
また、熱圧着の場合、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板11とマイクロチップ基板16を重ねた状態で、マイクロチップ基板11、16を加熱し、マイクロチップ基板11、16の接合面における樹脂を溶融させ、さらに、マイクロチップ基板11、16を加圧することで両基板を接合する。この熱圧着によって、第2突起部15は溶融されて潰れた状態になる。
【0068】
(接着剤)
また、第1実施形態と同様に、マイクロチップ基板11、16を接着剤によって接合しても良い。
【0069】
以上のように、突起部13を貫通孔17に嵌合することで、マイクロチップ基板11,16の位置決めを簡便に行い、その位置決めを正確に行うことができる。また、突起部13と貫通孔17によって、マイクロチップ基板11、16を仮止めすることができ、そのことにより、マイクロチップ基板11、16の密着性を向上させることができ、マイクロチップ基板11、16を強固に接合することが可能となる。
【0070】
なお、マイクロチップ基板11、16の形状、サイズ、板厚、材料は、第1実施形態で説明した形状、サイズ、板厚、材料と同じである。
【0071】
[変形例]
次に、上記第1実施形態から第3実施形態の変形例について説明する。
【0072】
(変形例1)
まず、変形例1について図4から図6を参照して説明する。図4から図6は、変形例1に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0073】
上述した第1実施形態から第3実施形態では、2つのマイクロチップ基板のうち、いずれか一方のマイクロチップ基板に流路用溝を形成し、2つのマイクロチップ基板を接合することで、その流路用溝による微細流路が形成されたマイクロチップを製造する。これに対して、変形例1では、両方のマイクロチップ基板に流路用溝を形成し、2つのマイクロチップ基板を接合することで、微細流路が形成されたマイクロチップを製造する。
【0074】
例えば図4(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手方となるマイクロチップ基板22の表面にも流路用溝23が形成されている。流路用溝21、23は、表面に沿った溝状のものであり、流路用溝21、23は同じパターンを有している。なお、図示しないが、マイクロチップ基板20、22には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は、第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、表面にピン(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板20と、そのピンが挿入される貫通孔(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板22を接合する場合について説明する。
【0075】
マイクロチップ基板20に形成された流路用溝21は、断面形状が矩形状となっており、流路用溝21の幅は深さ方向において一定となっている。また、マイクロチップ基板22に形成された流路用溝23は、側面が曲面状となっており、流路用溝23の幅は深さ方向に向けて徐々に狭くなっている。マイクロチップ基板20の最表面における流路用溝21の幅は、マイクロチップ基板22の最表面における流路用溝23の幅と等しくなっている。
【0076】
そして、第1実施形態から第3実施形態と同様に、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板22を重ねて、超音波溶着、レーザ溶着、熱圧着、又は接着剤によってマイクロチップ基板20、22を接合する。このとき、マイクロチップ基板20に形成されたピンと、マイクロチップ基板22に形成された貫通孔の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、22を重ね、接合する。なお、ピンと貫通孔の位置合わせによって流路用溝21と流路用溝23の位置が一致するように、ピン、貫通孔、流路用溝21、23をマイクロチップ基板20、22に形成しておく。これにより、図4(b)に示すように、流路用溝21と流路用溝23による微細流路24が形成されたマイクロチップが製造される。
【0077】
変形例1によると、上述した第1実施形態から第3実施形態における効果に加えて、以下の効果を奏することが可能となる。すなわち、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、側面の一部分が曲面となっている微細流路24を形成することが可能となる。1つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成して、このような形状の微細流路24を形成しようとすると、金型上、アンダーカットができてしまうため、作製が非常に困難である。これに対して、変形例1によると、例えば、射出成形によって曲面状の流路用溝23を形成することが可能であるため、側面の一部分が曲面状の微細流路24を容易に形成することが可能となる。
【0078】
以上のように、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、微細流路の断面形状の自由度を大きくすることが可能となる。
【0079】
他の例について図5を参照して説明する。例えば図5(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手方となるマイクロチップ基板25にも流路用溝26が形成されている。流路用溝21、26は、表面に沿った溝状のものであり、流路用溝21、26は同じパターンを有している。なお、図示しないが、マイクロチップ基板20、25には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は、第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、表面にピン(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板20と、そのピンが挿入される貫通孔(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板25を接合する場合について説明する。
【0080】
マイクロチップ基板25に形成された流路用溝26は、側面がテーパ状になっている。これにより、流路用溝26の幅は、マイクロチップ基板25の最表面において最大の幅となり、深さ方向に向かって徐々に狭くなり、底面が平面状となっている。マイクロチップ基板20の最表面における流路用溝21の幅は、マイクロチップ基板25の最表面における流路用溝26の幅と等しくなっている。
【0081】
そして、第1実施形態から第3実施形態と同様に、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板25を重ねて、超音波溶着、レーザ溶着、熱圧着、又は接着剤によってマイクロチップ基板20、25を接合する。このとき、マイクロチップ基板20に形成されたピンと、マイクロチップ基板25に形成された貫通孔の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、25を重ね、接合する。なお、ピンと貫通孔の位置合わせによって流路用溝21と流路用溝26の位置が一致するように、ピン、貫通孔、流路用溝21、26をマイクロチップ基板20、25に形成しておく。これにより、図5(b)に示すように、流路用溝21と流路用溝26による微細流路27が形成されたマイクロチップが製造される。
【0082】
このように、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、側面の一部分が傾斜した微細流路27を形成することが可能となる。1つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成して、このような形状の微細流路27を形成しようとすると、金型上、アンダーカットができてしまうため、作製が非常に困難である。これに対して、変形例1によると、例えば、射出成形によってテーパ状の流路用溝26を形成することが可能であるため、側面の一部分が傾斜した微細流路27を容易に形成することが可能となる。
【0083】
他の例について図6を参照して説明する。例えば図6(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手方となるマイクロチップ基板28には、断面形状がV字状の流路用溝29が形成されている。流路用溝21、29は、表面に沿った溝状のものであり、流路用溝21、29は同じパターンを有している。なお、図示しないが、マイクロチップ基板20、28には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は、第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、表面にピン(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板20と、そのピンが挿入される貫通孔(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板28を接合する場合について説明する。
【0084】
マイクロチップ基板28に形成されたV字の流路用溝29の幅は、流路用溝29の幅は、マイクロチップ基板28の最表面において最大の幅となり、深さ方向に向かって徐々に狭くなっている。マイクロチップ基板20の最表面における流路用溝21の幅は、マイクロチップ基板28の最表面における流路用溝29の幅と等しくなっている。
【0085】
そして、第1実施形態から第3実施形態と同様に、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板28を重ねて、超音波溶着、レーザ溶着、熱圧着、又は接着剤によってマイクロチップ基板20、28を接合する。このとき、マイクロチップ基板20に形成されたピンと、マイクロチップ基板28に形成された貫通孔の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、28を重ね、接合する。なお、ピンと貫通孔の位置合わせによって流路用溝21と流路用溝29の位置が一致するように、ピン、貫通孔、流路用溝21、29をマイクロチップ基板20、28に形成しておく。これにより、図6(b)に示すように、流路用溝21と流路用溝29による微細流路27が形成されたマイクロチップが製造される。
【0086】
このように、2つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成することで、側面の一部分が傾斜した微細流路30を形成することが可能となる。1つのマイクロチップ基板に流路用溝を形成して、このような形状の微細流路30を形成しようとすると、金型上、アンダーカットができてしまうため、作製が非常に困難である。これに対して、変形例1によると、例えば、射出成形によってV字状の流路用溝29を射出成形によって形成することが可能であるため、側面の一部分が傾斜した微細流路30を容易に形成することが可能となる。
【0087】
(変形例2)
次に、変形例2について図7及び図8を参照して説明する。図7及び図8は、変形例2に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0088】
変形例2では、微細流路の内面に機能性膜を形成する。機能性膜は、親水性機能を有する膜などが挙げられる。ここでは、親水性機能を有する膜の1例として、SiO膜を微細流路の内面に形成する場合について説明する。
【0089】
例えば図7(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手となるマイクロチップ基板31は平板状の基板である。なお、図示しないが、マイクロチップ基板20、31には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は、第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、表面にピン(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板20と、そのピンが挿入される貫通孔(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板31を接合する場合について説明する。
【0090】
そして、図7(b)に示すように、マイクロチップ基板20に対して、流路用溝21が形成されている面に機能性の1例としてのSiO膜32を形成し、マイクロチップ基板31の表面に機能性膜の1例としてのSiO膜33を形成する。マイクロチップ基板20に対しては、流路用溝21の内面にもSiO膜32を形成する。SiO膜32、33は、SiOを主成分とする膜である。機能性膜は、無機材料又は有機材料を用いることができる。ここでは、機能性膜の1例として親水性機能を有するSiO膜を形成する場合について説明する。
【0091】
(SiO膜の形成方法)
SiO膜32、33は、例えば、蒸着、スパッタリング、CVD、又は塗布によって形成することができ、その成膜方法は特に限定されない。塗布、スパッタリング、又はCVDによる成膜方法が、流路用溝21の内面、特に流路用溝21の垂直壁面に密着性の良好なSiO膜を形成できるため、より好ましい方法である。
【0092】
(塗布によるSiO膜の形成例)
例えば、塗布によってSiO膜32、33を形成する場合、硬化後にSiOの膜となる塗布溶液をマイクロチップ基板20、31の表面に塗布し、その後、塗布溶液を硬化させることで、マイクロチップ基板20、31の表面にSiO膜32、33を形成することができる。
【0093】
塗布溶液としては、例えば、アルコキシシランを加水分解、縮重合して得られるポリシロキサンオリゴマーをアルコール溶媒に溶かしたものを用いる。この場合、塗布溶液を加熱してアルコール溶媒を揮発させ、SiO膜を形成する。具体的には、JSR社製のグラスカ7003や、コルコート社製のメチルシリケート51などが挙げられる。
【0094】
また、パーヒドロポリシラザンをキシレン、ジブチルエーテル溶媒に溶かしたものを塗布溶液に用いる。この場合、塗布溶液を加熱して溶媒を揮発させると同時に水と反応させて、SiO膜を形成する。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製のアクアミカなどが挙げられる。
【0095】
また、アルコキシシリル基含有ポリマーとアルコキシシランを加水分解・共縮合して得られる無機−有機ハイブリッドポリマーをアルコール溶媒に溶かしたものを塗布溶液に用いる。この場合、加熱してアルコール溶媒を揮発させ、SiOが主成分となるハイブリッド膜を形成する。具体的には、JSR社製のグラスカ7506などが挙げられる。
【0096】
(塗布溶液の塗布方法)
塗布溶液をマイクロチップ基板10、20に均一に塗布することが重要である。塗布溶液の物性(粘度、揮発性)を考慮し、塗布方法を適宜選択する。例えば、ディッピング、スプレーコーティング、スピンコーティング、スリットコーティング、スクリーン印刷、パッド印刷、インクジェット印刷などが挙げられる。
【0097】
そして、塗布溶液を硬化させることで、SiO膜32、33を形成する。例えば、熱硬化性の塗布溶液を用いた場合は、熱処理を施すことにより塗布溶液を硬化させて、SiO膜32、33を形成する。
【0098】
(塗布溶液の硬化方法)
塗布溶液を硬化させてSiO膜を形成する際には、塗布溶液の溶媒を十分に揮発させ、SiOの強固なネットワークを形成できることが望ましい。塗布溶液の物性(粘度、揮発性、触媒)を考慮し、硬化方法を適宜選択する。例えば、常温で塗布溶液を放置して硬化させたり、塗布溶液を60℃〜100℃の温度で加熱することで硬化させたり、塗布溶液を高温高湿下(温度60℃で湿度90%、温度80℃で湿度90%など)で硬化させたりする。また、紫外線硬化や、可視光硬化などを利用して塗布溶液を硬化させても良い。
【0099】
(スパッタリングによるSiO膜の形成例)
また、スパッタリングによってSiO膜32、33を形成する場合、例えば、シンクロン製スパッタリング装置(装置名:RAS−1100C)を使用してSiO膜32、33を形成した。シリコンのメタル成膜室と酸化室に分かれており、基材を貼り付けたドラムを回転させてSiO膜32、33を形成する。例えば、アルゴンガス流量が250sccm、酸素ガス流量が120sccm、RF出力が4.5kW、成膜レートが4Å/secの条件で、SiO膜32、33を200nm成膜した。
【0100】
(CVDによるSiO膜の形成例)
また、CVDによってSiO膜32、33を形成する場合、例えば、サムコ社製CVD装置(装置名:PD−270ST)を使用してSiO膜32、33を形成した。TEOS(Tetra Ethoxy Silane)、TMOS(Tetra Mthoxy Silane)など、シリコンを含む液体ソースを気化させ、プラズマ空間中で分解、酸化させることでSiO膜32、33を形成する。例えば、TEOS流量が12sccm、酸素ガス流量が400sccm、RF出力が300W、圧力が50Pa、成膜レートが30Å/secの条件で、SiO膜32、33を200nm成膜した。
【0101】
(SiO膜の膜厚)
SiO膜32、33の膜厚は、流路用溝21の内面がすべてSiOで覆われること、流路用溝21への密着性が確保できること、流路用溝21を塞いでしまわないことなどを考慮して決定する。塗布によってSiO膜を形成する場合は、塗布溶液の特性、種類に応じて膜厚を調整する。例えば、10nm〜3μmの範囲内の値であることが好ましく、10nm〜2μmの範囲内の値であることがより好ましい。また、スパッタリングやCVDによってSiO膜を形成する場合であって、緻密なSiO膜を形成する場合、SiO膜の内部応力が増加する傾向にあるため、10nm〜1μmの範囲内の値であることが好ましく、10nm〜200nmの範囲内の値であることがより好ましい。
【0102】
そして、第1実施形態から第3実施形態と同様に、マイクロチップ基板20については流路用溝21が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板31についてはSiO膜33が形成された面を内側にして、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板31を重ねて、接着剤によってマイクロチップ基板20、31を接合する。このとき、マイクロチップ基板20に形成されたピンと、マイクロチップ基板31に形成された貫通孔の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、31を重ね、接合する。これにより、図7(c)に示すように、内部に微細流路34が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路34の内面には、SiO膜が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0103】
変形例2によると、上述した第1実施形態から第3実施形態における効果に加えて、機能性膜による効果を奏することが可能となる。例えば、SiO膜は親水性機能を有するため、タンパク質などの低分子や高分子の微細流路34の壁面への付着を抑制することが可能となる。マイクロチップ基板20、31は樹脂で構成されているため、通常、疎水性であり、タンパク質などの低分子や高分子は、微細流路34に付着しやすいが、SiO膜を形成することで、その付着を抑制することが可能となる。
【0104】
なお、この変形例2ではSiO膜を流路用溝に形成したが、他の機能を有する膜を流路用溝に形成しても良い。例えば、液体試料に対する撥水性、選択的に分子に対する吸着機能を持たせるためのフッ素系樹脂を用いた膜も、ここでいう機能性膜の1例である。
【0105】
他の例について図8を参照して説明する。例えば図8(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板35の表面には流路用溝36が形成されている。また、マイクロチップ基板35の接合の相手方となるマイクロチップ基板37の表面にも流路用溝38が形成されている。流路用溝36、38は、表面に沿った溝状のものであり、流路用溝36、38は同じパターンを有している。なお、図示しないが、マイクロチップ基板35、37には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は、第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、表面にピン(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板35と、そのピンが挿入される貫通孔(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板37を接合する場合について説明する。
【0106】
マイクロチップ基板35に形成された流路用溝36は、断面形状が矩形状となっており、流路用溝36の幅は深さ方向において一定となっている。また、マイクロチップ基板37に形成された流路用溝38は、断面形状が矩形状となっており、流路用溝38の幅は深さ方向において一定となっている。流路用溝36の幅と流路用溝38の幅は等しくなっている。なお、流路用溝36の深さと流路用溝38の深さは、等しくても良く、異なっていても良い。
【0107】
そして、図8(b)に示すように、マイクロチップ基板35に対して、流路用溝36が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜39を形成し、マイクロチップ基板37の表面に機能性膜の1例としてのSiO膜40を形成する。流路用溝36、38の内面にもSiO膜を形成する。
【0108】
そして、第1実施形態から第3実施形態と同様に、マイクロチップ基板35とマイクロチップ基板37を重ねて、接着剤によってマイクロチップ基板35、37を接合する。このとき、マイクロチップ基板35に形成されたピンと、マイクロチップ基板37に形成された貫通孔の位置を合わせて、マイクロチップ基板35、37を重ね、接合する。なお、ピンと貫通孔の位置合わせによって流路用溝36と流路用溝38の位置が一致するように、ピン、貫通孔、流路用溝36、38をマイクロチップ基板35、37に形成しておく。これにより、図8(c)に示すように、流路用溝36と流路用溝38による微細流路41が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路41の内面には、SiO膜が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0109】
この例によると、微細流路の断面形状の自由度を大きくすることができるとともに、機能性膜の効果を奏することが可能となる。
【0110】
(変形例3)
次に、変形例3について図9から図11を参照して説明する。図9から図11は、変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0111】
変形例3では、微細流路の内面に機能性膜を形成する。微細流路の幅が数μmであるため、流路用溝の内面のみが機能性膜で成膜されるようにマスキングを行ってマイクロチップ基板に機能性膜を形成することは困難である。特に、表面に形成された流路用溝のパターンが複雑の場合、そのパターンの位置に合わせてパターニングによって機能性膜を形成することは困難である。上記変形例2のように、流路用溝を含む面全体に機能性膜を形成した場合、接合の相手方となるマイクロチップ基板との接合面にも機能性膜が形成され、接合面において樹脂同士の接触とならないため、マイクロチップ基板同士を接着剤によって接合する必要がある。
【0112】
すなわち、樹脂製のマイクロチップ基板に機能性膜を形成しない場合、超音波溶着、熱圧着、又はレーザ溶着によってマイクロチップ基板同士を接合することができるが、これらの方法では、いずれも基板の樹脂表面を溶かして再度固化させることで樹脂製のマイクロチップ基板同士を接合するため、接合面に機能性膜が形成されている場合は、それらの方法によってマイクロチップ基板同士を接合することが困難になる。
【0113】
そこで、変形例3では、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によってマイクロチップ基板同士を接合するために、流路用溝が形成された面に機能性膜を形成した後、粘着部材を用いることで、流路用溝以外の表面に形成された機能性膜を剥離する。これにより、マイクロチップ基板の接合面は樹脂が剥き出しの状態となり、樹脂同士の接合が可能となるため、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によってマイクロチップ基板同士を接合することが可能となる。
【0114】
例えば図9(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手となるマイクロチップ基板31は平板状の基板である。なお、図示しないが、マイクロチップ基板20、31には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、表面にピン(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板20と、そのピンが挿入される貫通孔(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板31を接合する場合について説明する。
【0115】
そして、図9(b)に示すように、マイクロチップ基板20に対して、流路用溝21が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜32を形成する。このとき、流路用溝21の内面にもSiO膜を形成する。SiO膜32は、上述した変形例2の成膜方法で成膜することができる。
【0116】
そして、図9(c)に示すように、マイクロチップ基板20の流路用溝21の内面に形成されたSiO膜以外のSiO膜を粘着部材によって剥離することで、流路用溝21の内面にSiO膜42を残存させる。すなわち、マイクロチップ基板20の流路用溝21以外の表面に形成されたSiO膜を剥離することで、流路用溝21の内面にSiO膜を残存させる。ここで、粘着部材によるSiO膜の剥離工程について、図10を参照して説明する。図10は、機能性膜の剥離工程を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0117】
まず、図10(a)に示すように、マイクロチップ基板20の流路用溝21が形成された面に、粘着部材50を接着させる。この粘着部材50には、例えば粘着テープなどのようにシート状の部材が用いられる。粘着テープとしては、例えばJIS Z1522に規定されているセロハン粘着テープが用いられる。その1例として、ニチバン製粘着テープ(NO405)が用いられる。
【0118】
また、粘着部材50は、厚さが0.09mm以下、粘着力が1.18N/cm以上、粘着層の厚さが0.03mm程度であることが好ましい。この範囲は、流路用溝の内面以外の表面に形成された機能性膜のみを剥離するための好ましい条件である。すなわち、機能性膜の密着強度を、粘着部材の粘着力以下の範囲で、いかに高い密着強度のものを選択するかという点を製造条件内で考慮した範囲である。
【0119】
また、粘着部材50の粘着力は、1.18N/cm以上であるため、SiO膜の密着強度を1N/cm程度にすることが好ましい。これにより、流路用溝21内に残存するSiO膜の密着強度を維持しつつ、粘着部材50が接着された部分のSiO膜を剥離することが可能となる。
【0120】
流路用溝21の深さが30μm〜200μmの範囲内の値であるため、このような粘着部材50を用いることで、流路用溝21内への粘着部材50の入り込みを防止することができる。そのことにより、流路用溝21の内面に形成されたSiO膜の剥離を防止し、流路用溝21以外の表面に形成されたSiO膜を剥離することができる。換言すると、流路用溝21の深さは、粘着部材50が入り込まない深さにする必要がある。
【0121】
そして、図10(b)に示すように、マイクロチップ基板20から粘着部材50を剥がすことで、流路用溝21内に形成されたSiO膜42を残存させて、流路用溝21以外の表面に形成されたSiO膜44を剥離する。
【0122】
以上のように粘着部材を用いることで、流路用溝21の内面にSiO膜を残存させた状態で、流路用溝21以外の表面に形成されたSiO膜を剥離することができる。そのことにより、マイクロチップ基板同士の接合面においては樹脂を剥き出しの状態にすることができる。
【0123】
そして、第1実施形態から第3実施形態と同様に、マイクロチップ基板20については流路用溝21が形成された面を内側にして、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板31を重ねて、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によってマイクロチップ基板20、31を接合する。このとき、マイクロチップ基板20に形成されたピンと、マイクロチップ基板31に形成された貫通孔の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、31を重ね、接合する。これにより、図9(d)に示すように、内部に微細流路43が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路43の内面には、SiO膜42が形成されている。この例では、流路用溝21の内面のみにSiO膜を形成し、マイクロチップ基板31にSiO膜を形成していないため、微細流路43の全面がSiO膜で覆われることはなく、流路用溝21の内面に相当する面のみにSiO膜が形成されている。
【0124】
変形例3によると、上述した第1実施形態から第3実施形態における効果に加えて、以下の効果を奏することができる。すなわち、粘着部材によって接合面に形成されたSiO膜を剥離することで、マイクロチップ基板20の接合面は樹脂が剥き出し状態となり、樹脂同士を接触させることができる。これにより、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によって樹脂を溶融させてマイクロチップ基板20、31を接合することができる。その結果、微細流路の内面に機能性膜を形成することができるとともに、マイクロチップ基板20、31をより強固に接合することが可能となる。また、レーザ溶着、超音波溶着、又は熱圧着によって接合することができるため、接着剤などの物質を介さずにマイクロチップ基板20、31を接合することができる。そのことにより、微細流路43の内部に接着剤などの物質が染み出すおそれがない。
【0125】
また、流路用溝が形成された2つのマイクロチップ基板を接合する場合においても、各マイクロチップ基板の流路用溝が形成された面にSiO膜を形成し、上述した粘着部材によって表面のSiO膜を剥離することで、流路用溝の内面にSiO膜を残存させることができる。
【0126】
例えば図11(a)に示すように、一方のマイクロチップ基板20の表面には流路用溝21が形成されている。また、マイクロチップ基板20の接合の相手となるマイクロチップ基板45の表面には流路用溝46が形成されている。流路用溝21と流路用溝46は同じパターンを有している。流路用溝21、46は基板表面に沿った溝状のものであり、流路用溝21、46同じパターンを有している。なお、図示しないが、マイクロチップ基板20、45には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は、第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、表面にピン(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板20と、そのピンが挿入される貫通孔(図示しない)が形成されたマイクロチップ基板45を接合する場合について説明する。
【0127】
また、流路用溝46の幅は、流路用溝21の幅と等しくし、10μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましい。流路用溝46と流路用溝21の幅を同じにすることで、幅が一定の微細流路を形成することができる。また、流路用溝46の深さは、30μm〜200μmの範囲内の値であることが好ましい。流路用溝46の深さは、流路用溝21の深さと同じであっても良く、異なる深さであっても良い。
【0128】
そして、図11(b)に示すように、マイクロチップ基板20に対して、流路用溝21が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜32を形成し、マイクロチップ基板45に対して、流路用溝46が形成されている面に機能性膜の1例としてのSiO膜47を形成する。流路用溝21、46の内面にもSiO膜を形成する。
【0129】
そして、図11(c)に示すように、マイクロチップ基板20の流路用溝21の内面に形成されたSiO膜以外のSiO膜を粘着部材によって剥離することで、流路用溝21の内面にSiO膜42を残存させる。また、マイクロチップ基板45の流路用溝46の内面に形成されたSiO膜以外のSiO膜を粘着部材によって剥離することで、流路用溝46の内面にSiO膜48を残存させる。
【0130】
以上のように粘着部材を用いることで、流路用溝21の内面にSiO膜を残存させた状態で、流路用溝21以外の表面に形成されたSiO膜を剥離することができる。また、流路用溝46の内面にSiO膜を残存させた状態で、流路用溝46以外の表面に形成されたSiO膜を剥離することができる。そのことにより、マイクロチップ基板同士の接合面においては樹脂を剥き出しの状態にすることができる。
【0131】
そして、第1実施形態から第3実施形態と同様に、マイクロチップ基板20については流路用溝21が形成された面を内側にし、マイクロチップ基板45については流路用溝46が形成された面を内側にして、マイクロチップ基板20とマイクロチップ基板45を重ねて、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によってマイクロチップ基板20、45を接合する。このとき、マイクロチップ基板20に形成されたピンと、マイクロチップ基板45に形成された貫通孔の位置を合わせて、マイクロチップ基板20、45を重ね、接合する。これにより、図11(d)に示すように、内部に微細流路49が形成されたマイクロチップが製造される。微細流路49の内面には、SiO膜42、48が形成されて、全面がSiO膜で覆われている。
【0132】
以上のように、2つのマイクロチップ基板20、45に流路用溝21、46を形成し、マイクロチップ基板20、45の流路用溝21、46の内面に機能性膜を形成し、2つのマイクロチップ基板20、45を接合することで、流路用溝によって形成される微細流路49の全内面を機能性膜で覆うことが可能となる。さらに、マイクロチップ基板20、45を超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によって接合することができるため、マイクロチップ基板20、45をより強固に接合することが可能となる。
【0133】
(変形例4)
次に、変形例4について図12から図14を参照して説明する。図12から図14は、変形例4に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【0134】
微細流路が形成されたマイクロチップにおいては、微細流路の外部に流体が染み出してはならず、微細流路のシール性確保が重要な接合の要件となる。また、微細な流路用溝をマイクロチップ基板に高精度に転写する必要があるため、マイクロチップ基板の平面性を同時に確保することは困難である。平面性が劣るマイクロチップ基板同士を接合する場合、接合面における密着性の確保が困難となり、接合におけるシール性や密着強度も十分ではない。
【0135】
そこで、この変形例4においては、マイクロチップ基板を意図的に所定方向に反らすことで、マイクロチップ基板同士の接合時における基板の加圧位置を限定し、そのことにより、マイクロチップ基板同士の密着性を向上させる。この場合、基板の反りによる突起部と溝部又は貫通孔との位置ずれが生ずる可能性があるが、その場合、突起部を曲面状、好ましくは球面状とすることが好ましい。突起部を曲面状とすることで、突起部の中心軸と溝部の中心軸とがずれている場合であっても、曲面部と溝部との接触により軸ずれを矯正し、溝部に突起部を挿入することができる。
【0136】
例えば図12(a)に示すように、表面に流路用溝61が形成されたマイクロチップ基板60と、マイクロチップ基板70を接合させる。流路用溝61は基板表面に沿って延びた溝状のものである。また、マイクロチップ基板60、70には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、1例として、図12(a)に示すように、マイクロチップ基板60の表面にはピン62が形成され、そのピンが挿入される貫通孔71がマイクロチップ基板70に形成されている。
【0137】
マイクロチップ基板60は、流路用溝61が形成された面が凸面となるように基板全体が反っている。同様に、マイクロチップ基板70はマイクロチップ基板60と接合する面が凸面となるように基板全体が反っている。このように、接合面が凸面となるように意図的に基板全体を反らしたマイクロチップ基板60、70を作製する。マイクロチップ基板60、70の反りは、例えば1〜2μmとなっていれば良い。すなわち、基板中心と基板端部との高さの差が1〜2μmとなっていれば良い。
【0138】
そして、図12(a)に示すように、マイクロチップ基板60については流路用溝61が形成された面を内側にして、ピン62と貫通孔71の位置を合わせて、マイクロチップ基板60とマイクロチップ基板70を重ねる。これにより、ピン62は貫通孔71に挿入される。そして、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によってマイクロチップ基板60、70を接合する。また、図12(a)に示すように、マイクロチップ基板60を平面状の台80の上に設置し、マイクロチップ基板60、70の周辺部を加圧することで、マイクロチップ基板60、70を接合する。これにより、図12(b)に示すように、流路用溝61による微細流路が形成されたマイクロチップを作製することが可能となる。
【0139】
以上のように接合することで、上述した第1実施形態から第3実施形態による効果に加えて、以下の効果を奏することが可能となる。すなわち、変形例4によると、両マイクロチップ基板がなじむことになり、マイクロチップ基板の全接合面に亘って密着性を確保することが可能となる。すなわち、マイクロチップ基板60、70を、接合面が凸面となるように意図的に基板を反らすことで、マイクロチップ基板60、70同士の接合時における基板の加圧位置を限定し、その位置を加圧することで、マイクロチップ基板同士の密着性を向上させることができ、基板同士を容易に接合することができる。その結果、流路のシール性を向上させることが可能となる。
【0140】
他の例について図13を参照して説明する。例えば図13(a)に示すように、表面に流路用溝91が形成されたマイクロチップ基板90と、マイクロチップ基板100を接合させる。流路用溝91は基板表面に沿って延びた溝状のものである。また、マイクロチップ基板90、100には、第1実施形態で説明したピンと貫通孔の対、第2実施形態で説明した突起部と溝部の対、又は第3実施形態で説明した突起部と貫通孔の対が形成されている。ここでは、1例として、図13(a)に示すように、マイクロチップ基板90の表面にはピン92が形成され、そのピンが挿入される貫通孔101がマイクロチップ基板100に形成されている。
【0141】
マイクロチップ基板90は、流路用溝91が形成された面が凹面となるように基板全体が反っている。同様に、マイクロチップ基板100はマイクロチップ基板90と接合する面が凹面となるように基板全体が反っている。このように、接合面が凹面となるように意図的に基板全体を反らしたマイクロチップ基板90、100を作製する。
【0142】
そして、図13(a)に示すように、マイクロチップ基板90については流路用溝91が形成された面を内側にして、ピン92と貫通孔101の位置を合わせて、マイクロチップ基板90とマイクロチップ基板100を重ねる。これにより、ピン92は貫通孔101に挿入される。そして、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によってマイクロチップ基板90、100を接合する。また、図13(a)に示すように、マイクロチップ基板90を台80の上に設置し、マイクロチップ基板90、100の中央部を加圧することで、マイクロチップ基板90、100を接合する。これにより、図13(b)に示すように、流路用溝91による微細流路が形成されたマイクロチップを作製することが可能となる。
【0143】
このように接合することで、マイクロチップ基板の全接合面に亘って密着性を確保することが可能となる。すなわち、マイクロチップ基板90、100を、接合面が凹面となるように意図的に基板を反らすことで、マイクロチップ基板90、100同士の接合時における基板の加圧位置を限定し、その位置を加圧することで、マイクロチップ基板同士の密着性を向上させることができ、基板同士を容易に接合することができる。その結果、流路のシール性を向上させることが可能となる。
【0144】
マイクロチップ基板同士の接合は、超音波溶着、レーザ溶着、熱圧着、又は接着剤によって行われる。
【0145】
例えば超音波溶着によってマイクロチップ基板同士を接合する場合、超音波を発するホーンによってマイクロチップ基板を押さ付け、そのホーンによってマイクロチップ基板を加圧しながら、超音波をマイクロチップ基板に印加することで、マイクロチップ基板同士を接合する。例えば、図12に示すように、接合面が凸面のマイクロチップ基板同士を接合する場合、超音波を発するホーンによってマイクロチップ基板70の全面を押さえ付け、そのホーンによってマイクロチップ基板70の周辺部を加圧しながら超音波をマイクロチップ基板60、70に印加することで、マイクロチップ基板60、70を接合する。また、図13に示すように、接合面が凹面のマイクロチップ基板同士を接合する場合、超音波を発するホーンによってマイクロチップ基板100の全面を押さえ付け、そのホーンによってマイクロチップ基板100の中央部を加圧しながら超音波をマイクロチップ基板90、100に印加することで、マイクロチップ基板90、100を接合する。
【0146】
また、レーザ溶着によってマイクロチップ基板同士を接合する場合、例えば図14(a)に示すように、融着に用いられる波長のレーザを透過させる平板状の基板110によって、マイクロチップ基板100を押さえ付け、その基板110によってマイクロチップ基板の中央部を加圧しながらレーザを照射することで、図14(b)に示すように、マイクロチップ基板同士を接合する。基板110には、例えばガラス基板が用いられる。なお、図9に示す例では、接合面が凹面となっているマイクロチップ基板90とマイクロチップ基板100とを接合する場合について説明したが、接合面が凸面となっているマイクロチップ基板60とマイクロチップ基板70とを接合する場合についても、基板110でマイクロチップ基板を押さえ付け、レーザを照射することでマイクロチップ基板同士を接合しても良い。
【0147】
また、接合面が凸面となっているマイクロチップ基板60とマイクロチップ基板70を接合する場合には、接着剤を用いても良い。接合面が凸面となっているマイクロチップ基板同士を接着剤で接合する場合、余分な接着剤は基板の外側に押し出されるため、マイクロチップ基板同士を均一に接合することができる。
【0148】
また、変形例4においても、流路用溝が形成されたマイクロチップ基板同士を接合しても良く、また、機能性膜が表面に形成されたマイクロチップ基板を接合しても良い。
【0149】
(実施例)
次に、具体的な実施例について説明する。
【0150】
(実施例1)
実施例1では、第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法の具体例について説明する。
【0151】
(マイクロチップ基板)
射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成形し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅50μm、深さ50μmの複数の流路用溝と、高さ1.5mm、直径1mmのピンと、内径2mmの複数の貫通孔とで構成される流路側マイクロチップ基板を作製した。この流路側マイクロチップ基板が、上記第1実施形態における流路用溝2とピン3が形成されたマイクロチップ基板1に相当する。
また、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に直径1mmの貫通孔が形成されたカバー側マイクロチップ基板を作製した。
このカバー側マイクロチップ基板が、上記第1実施形態における貫通孔5が形成されたマイクロチップ基板4に相当する。
【0152】
(超音波溶着による接合)
そして、超音波溶着によって流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を接合した。まず、流路側マイクロチップ基板については流路用溝が形成された面を内側にし、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を重ねた。これにより、ピンを貫通孔に挿入した。
【0153】
そして、両基板に対して超音波を照射しながら基板を加圧することで、両基板を接合した。超音波の照射条件と加圧条件を以下に示す。
0.5Nの加圧力で流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を加圧した状態で、周波数:15kHzの超音波を1秒間印加することで両基板を接合した。
【0154】
(レーザ溶着による接合)
また、レーザ溶着によって流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を接合した。まず、流路側マイクロチップ基板については流路用溝が形成された面を内側にし、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を重ねた。これにより、ピンを貫通孔に挿入した。
【0155】
そして、両基板に対してレーザを照射しながら基板を加圧することで、両基板を接合した。レーザの照射条件と加圧条件を以下に示す。
100Nの加圧力で流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を加圧した状態で、波長:808nm、スポット径:φ0.6mmの赤外線レーザを用いて、出力:5Wで照射しながら、走査速度:10mm/secで全面スキャンすることで両基板を接合した。
【0156】
(熱圧着による接合)
また、熱圧着によって流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を接合した。まず、流路側マイクロチップ基板については流路用溝が形成された面を内側にし、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を重ねた。これにより、ピンを貫通孔に挿入した。
【0157】
そして、両基板に対して熱を加えながら基板を加圧することで、両基板を接合した。
加熱条件と、加圧条件を以下に示す。
加熱プレス機にて120℃、1kgf/cmの条件下で1分間保持することで、基板同士を接合した。
【0158】
(評価)
以上のように、ピンを貫通孔に挿入することで、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板の位置決めを簡便に行うことができ、その位置決めを正確に行うことができた。また、ピンを貫通孔に挿入することで、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板の位置ずれを防止することができ、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を強固に接合することができた。
【0159】
(実施例2)
実施例2では、第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法の具体例について説明する。
【0160】
(マイクロチップ基板)
射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成形し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に、幅50μm、深さ50μmの複数の流路用溝と、側面がテーパ状の溝部と、内径2mmの複数の貫通孔で構成される流路側マイクロチップ基板を作製した。このテーパ状の溝部の幅は、基板表面において最大100μmとなり、溝の深さ方向に向かって徐々に狭くなっている。また、溝部の深さは100μmである。
この流路側マイクロチップ基板が、上記第2実施形態における流路用溝7と溝部8が形成されたマイクロチップ基板6に相当する。
また、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に幅70μm、高さ50μmの突起部が形成されたカバー側マイクロチップ基板を作製した。
このカバー側マイクロチップ基板が、上記第2実施形態における突起部10が形成されたマイクロチップ基板9に相当する。
【0161】
(接合)
そして、実施例1と同様に、流路側マイクロチップ基板については流路用溝が形成された面を内側にし、カバー側マイクロチップ基板については突起部が形成された面を内側にし、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を重ねた。これにより、突起部を溝部に嵌合させた。そして、実施例1と同様に、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によって流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を接合した。
【0162】
(評価)
以上のように、突起部を溝部に嵌合させることで、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板の位置決めを簡便に行うことができ、その位置決めを正確に行うことができた。また、突起部を溝部に嵌合させることで、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板の位置ずれを防止することができ、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を強固に接合することができた。
【0163】
(実施例3)
実施例3では、第3実施形態に係るマイクロチップの製造方法の具体例について説明する。
【0164】
(マイクロチップ基板)
射出成形機で透明樹脂材料の環状ポリオレフィン樹脂(日本ゼオン社製、ゼオノア)を成形し、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に、幅50μm、深さ50μmの複数の流路用溝と、高さ2mmの突起部と、内径2mmの複数の貫通孔で構成される流路側マイクロチップ基板を作製した。この流路側マイクロチップ基板が、上記第3実施形態における流路用溝12と突起部13が形成されたマイクロチップ基板11に相当する。突起部は、高さ1mm、直径1mmの第1突起部と、その第1突起部の先端に形成された、高さ1mm、最大の幅が1.1mmの第2突起部とを備えて構成されている。第2突起部の幅は、先端に向かって徐々に狭くなっている。
また、外形寸法が50mm×50mm×1mmの板状部材に直径1mmの貫通孔が形成されたカバー側マイクロチップ基板を作製した。
このカバー側マイクロチップ基板が、上記第3実施形態における貫通孔17が形成されたマイクロチップ基板16に相当する。
【0165】
(接合)
そして、実施例1と同様に、流路側マイクロチップ基板については流路用溝が形成された面を内側にし、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を重ねた。これにより、突起部を貫通孔に挿入し、スナップフィット方式によって突起部を貫通孔に嵌合させた。そして、実施例1と同様に、超音波溶着、レーザ溶着、又は熱圧着によって流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を接合した。
【0166】
(評価)
以上のように、突起部を貫通孔に挿入してスナップフィット方式によって嵌合させることで、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板の位置決めを簡便に行うことができ、さらに、両基板の仮止めを行うことができた。これにより、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板の密着性が向上したため、流路側マイクロチップ基板とカバー側マイクロチップ基板を強固に接合することができた。
【0167】
上記実施例1から実施例3において説明したマイクロチップ基板の材料、ピンの寸法、貫通孔の寸法、突起部の寸法、超音波溶着の条件、レーザ溶着の条件、熱圧着の条件、及び接着材は1例であり、この発明がこれらの条件に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】この発明の第1実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図2】この発明の第2実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図3】この発明の第3実施形態に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図4】変形例1に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図5】変形例1に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図6】変形例1に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図7】変形例2に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図8】変形例2に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図9】変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図10】変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図11】変形例3に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図12】変形例4に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図13】変形例4に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【図14】変形例4に係るマイクロチップの製造方法を説明するためのマイクロチップ基板の断面図である。
【符号の説明】
【0169】
1、4、6、9、11、16、20、22、25、28、31、35、37、45、60、70、90、100 マイクロチップ基板
2、7、12、21、23、26、29、36、38、46、61、91 流路用溝
3、62、92 ピン
5、17、71、101 貫通孔
8 溝部
10、13 突起部
14 第1突起部
15 第2突起部
24、27、30、34、41、43、49 微細流路
32、33、39、40、42、47、48 SiO
50 粘着部材
80 台
110 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの樹脂製基板の少なくとも一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、前記流路用溝が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板を接合するマイクロチップの製造方法であって、
前記少なくとも一方の樹脂製基板の前記接合する面には樹脂製の突起部が形成され、
他方の樹脂製基板の前記接合する面には、前記流路用溝とは異なる位置に前記突起部が挿入される被挿入部が形成され、
前記突起部と前記被挿入部が形成された面を内側にし、前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記突起部を前記被挿入部に挿入し、その状態で前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とするマイクロチップの製造方法。
【請求項2】
前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設されたピンであり、
前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通し、前記ピンの径とほぼ等しい大きさの径を有する貫通孔であり、
前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記ピンを前記貫通孔に挿入し、その状態で前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項3】
前記ピンの高さは、前記他方の樹脂製基板の厚さよりも長いことを特徴とする請求項2に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項4】
前記突起部は、先端に向かって幅が徐々に狭くなっており、
前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の最表面における幅が前記突起部の先端の幅よりも広く、深さ方向に向かって徐々に狭くなる溝部であり、
前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記突起部を前記溝部に嵌合させ、その状態で前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項5】
前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通する貫通孔であり、
前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設され、前記他方の樹脂製基板の厚さよりも長い高さを有し、幅が前記貫通孔の幅と略等しい第1突起部と、前記第1突起部の先端に設けられ、幅が前記第1突起部の先端において前記貫通孔の幅よりも広く、先端に向かって徐々に狭くなる第2突起部とを有し、
前記2つの樹脂製基板を重ねることで前記突起部を前記貫通孔に挿入し、前記突起部と前記貫通孔とをスナップフィット方式により嵌合させることを特徴とする請求項1に記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項6】
前記2つの樹脂製基板を重ねた後、その状態で前記2つの樹脂製基板を加熱することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項7】
前記2つの樹脂製基板を重ねた後、その状態で前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項8】
前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対して超音波を印加することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項9】
前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対して超音波を印加することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対してレーザを照射することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項10】
前記2つの樹脂製基板を重ねた後、その状態で前記2つの樹脂製基板に対してレーザを照射することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項11】
前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対してレーザを照射することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対してレーザを照射することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項12】
前記2つの樹脂製基板を重ねた後、前記突起部の先端部に対してレーザを照射することで前記突起部の先端部を溶融させ前記被挿入部との仮止めを行った後、前記2つの樹脂製基板に対して超音波を印加することで前記接合する面を溶融させ、前記2つの樹脂製基板を加圧することで、前記2つの樹脂製基板を接合することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項13】
2つの樹脂製基板の少なくとも一方の樹脂製基板の表面に流路用溝が形成され、前記流路用溝が形成された面を内側にして前記2つの樹脂製基板が接合されたマイクロチップであって、
前記少なくとも一方の樹脂製基板の接合する面には樹脂製の突起部が形成され、
他方の樹脂製基板の前記接合する面には、前記流路用溝とは異なる位置に前記突起部が挿入された被挿入部が形成されていることを特徴とするマイクロチップ。
【請求項14】
前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設されたピンであり、
前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通し、前記ピンの径とほぼ等しい大きさの径を有する貫通孔であることを特徴とする請求項13に記載のマイクロチップ。
【請求項15】
前記突起部は、先端に向かって幅が徐々に狭くなっており、
前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の最表面における幅が前記突起部の先端の幅よりも広く、深さ方向に向かって徐々に狭くなっている溝部であることを特徴とする請求項13に記載のマイクロチップ。
【請求項16】
前記被挿入部は、前記他方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に貫通する貫通孔であり、
前記突起部は、前記一方の樹脂製基板の前記接合する面に対して略直交する方向に突設され、前記他方の樹脂製基板の厚さよりも長い高さを有し、幅が前記貫通孔の幅と略等しい第1突起部と、前記第1突起部の先端に設けられ、幅が前記第1突起部の先端において前記貫通孔の幅よりも広く、先端に向かって徐々に狭くなる第2突起部とを有し、
前記突起部と前記貫通孔とがスナップフィット方式により嵌合されたことを特徴とする請求項13に記載のマイクロチップ。
【請求項17】
前記2つの樹脂製基板にはそれぞれ流路用溝が形成され、前記流路用溝の少なくとも一方は側面が曲面状に形成されており、前記2つの樹脂製基板は前記流路用溝をそれぞれ内側にして接合されたことを特徴とする請求項13から請求項16のいずれかに記載のマイクロチップ。
【請求項18】
前記突起部及び前記被挿入部の少なくとも一方は曲面状となっていることを特徴とする請求項13から請求項17のいずれかに記載のマイクロチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−224431(P2008−224431A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63524(P2007−63524)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】