説明

マイクロフォン感度調整方法およびそのシステム

【課題】複数のマイクロフォンの感度を揃えることができ、所望の指向特性を形成することができるマイクロフォン感度調整方法およびそのシステムを提供すること。
【解決手段】音源分離や音声認識等の各種処理を実現するための指向特性制御を行うにあたり、複数のマイクロフォン41,42に感度調整用の校正信号を入力し、これらの出力信号を用いて校正用情報を作成しておく。例えば、各出力信号のスペクトル比を各周波数帯域毎に求め、これに基づきインパルス応答を求めておく。そして、携帯電話機等の各種機器を実働状態にして実際に音源分離や音声認識等の各種処理を行う場面で、校正処理で作成しておいた校正用情報を用いて感度調整を行う。例えば、求めておいたインパルス応答を用いて畳み込み演算を行うことによりマイクロフォン42の出力信号を補正し、マイクロフォン41と同じレベルの感度に調整することで、目的の指向特性を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的の指向特性を形成するために組み合わせて使用される複数のマイクロフォン間の感度を調整するマイクロフォン感度調整方法およびそのシステムに係り、例えば、携帯電話機等の携帯機器や、カーナビゲーションシステム等の車載機器に搭載された複数のマイクロフォン間の感度を調整する場合等に利用できる。
【背景技術】
【0002】
通常の音声認識では、口元で発話した音声を接話型マイクロフォンにより収録し、認識処理を行う。一方、ロボットとの対話、カーナビゲーションシステム等の車載機器についての音声による操作、会議の議事録作成等、接話型マイクロフォンの利用をユーザに課すことが不自然となる用途も多い。このような用途においては、システム側に設置したマイクロフォンにより音声を収録し、認識処理することが望まれる。しかしながら、発話者から離れたところに設置したマイクロフォンで収音、音声認識を行う場合には、S/N比が悪化し、聞き取りにくかったり、音声認識の精度は極度に劣化する。
【0003】
このような問題に対し、本願出願人により、マイクロフォンアレーを用いて指向特性制御および帯域選択(Band Selection)等を行うことにより、所望の音声だけを選択的に収録するシステムが開発されている(特許文献1参照)。また、少数のマイクロフォンを用いて指向特性制御を行うものとして、2個の単一指向性マイクロフォンユニットを用いた超指向性マイクロフォン(特許文献2参照)、4個の無指向性マイクロフォンを用いたマルチチャンネルステレオ用の収音装置(特許文献3参照)がある。さらに、基準マイクロフォンを中心に3対のマイクロフォンを配置したマイクロフォン装置(特許文献4参照)もある。そして、最近では、本願出願人により、少数のマイクロフォンの出力信号を用いて目的音強調用の線形結合処理や目的音抑制用の線形結合処理を行うことにより指向特性制御を行うとともに、これらの指向特性制御で得られた複数の信号のスペクトルを用いて帯域選択(Band Selection)やスペクトラル・サブトラクション(Spectral Subtraction)を行って目的音と妨害音とを分離するシステムが開発されている(特願2004−366202、特願2005−270931参照)。以上のいずれの場合も複数のマイクロフォンの出力信号を用いて指向特性制御を行っている。
【0004】
例えば、図9に示すように、2個の無指向性マイクロフォン901,902を用いて指向特性制御を行う例を挙げると、(1)一方のマイクロフォン901の出力信号X1と他方のマイクロフォン902の出力信号X2との差の信号(X1−X2)を生成すれば、図中実線で示すような略8の字形状の指向特性が得られ、(2)一方のマイクロフォン901の出力信号X1に遅延処理を施した信号D(X1)と他方のマイクロフォン902の出力信号X2との差の信号(D(X1)−X2)を生成すれば、図中点線で示すようなカージオイド(ハート形状)の指向特性が得られ、(3)他方のマイクロフォン902の出力信号X2に遅延処理を施した信号D(X2)と一方のマイクロフォン901の出力信号X1との差の信号(D(X2)−X1)を生成すれば、図中一点鎖線で示すようなカージオイド(ハート形状)の指向特性が得られ、(4)一方のマイクロフォン901の出力信号X1と他方のマイクロフォン902の出力信号X2との和の信号(X1+X2)を生成すれば、図中二点鎖線で示すような略楕円形状の指向特性が得られる。そして、音源分離や音声認識等の各種処理を行うにあたり、これらの指向特性は、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0005】
【特許文献1】特開2005−77731号公報(請求項1、図1、図2、要約)
【特許文献2】特開平10−126876号公報(請求項1、図1、図2、要約)
【特許文献3】特開2002−223493号公報(請求項1、図1、図3、要約)
【特許文献4】特開2002−271885号公報(請求項1、図1、図11、要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した図9の例で示したような各種の指向特性を形成する場合に、2個のマイクロフォン901,902の感度が異なると、図示の通りの形状の指向特性を形成することができず、音源分離性能の劣化等に繋がることになる。
【0007】
特に、図9において、(1)差の信号(X1−X2)の指向特性では、θ=90度およびθ=−90度の方向に、その方向からの音がほぼ完全に抑圧されてしまう部分があり、(2)一方のマイクロフォン901の出力信号X1に遅延処理を施してから差をとった信号(D(X1)−X2)の指向特性では、θ=0度の方向に、その方向からの音がほぼ完全に抑圧されてしまう部分があり、(3)他方のマイクロフォン902の出力信号X2に遅延処理施してから差をとった信号(D(X2)−X1)の指向特性では、θ=180度(−180度)の方向に、その方向からの音がほぼ完全に抑圧されてしまう部分があるが、2個のマイクロフォン901,902の感度が異なると、これらの部分の指向特性を示すグラフ形状がゼロの位置(中心位置)から遠ざかり、音を抑圧できなくなってしまう。このため、マイクロフォン901,902の感度の差異は、信号の差(遅延処理後に差をとる場合も含む。)をとって形成される指向特性に対し、大きな影響を与えることになる。
【0008】
なお、3個以上のマイクロフォンを用いて指向特性制御を行う場合も同様であり、各マイクロフォンの感度が異なると、所望の指向特性を形成することができず、音源分離性能の劣化等に繋がることになる。
【0009】
本発明の目的は、複数のマイクロフォンの感度を揃えることができ、所望の指向特性を形成することができるマイクロフォン感度調整方法およびそのシステムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、目的の指向特性を形成するために組み合わせて使用される複数のマイクロフォン間の感度を調整するマイクロフォン感度調整方法であって、複数のマイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力し、このときの複数のマイクロフォンの各出力信号を用いて複数のマイクロフォンを同レベルの感度に調整するための校正用情報を作成しておき、目的の指向特性を形成する際には、校正用情報を用いて複数のマイクロフォンのうちの少なくとも1つのマイクロフォンの出力信号を補正することを特徴とするものである。
【0011】
このような本発明のマイクロフォン感度調整方法においては、音源分離や音声認識等の各種処理を実現するための指向特性制御を行うにあたり、予め複数のマイクロフォンに感度調整用の校正信号を入力して校正処理を行い、校正用情報を作成しておく。そして、実際に音源分離や音声認識等の各種処理を行う場面で目的の指向特性を形成する際には、校正処理で求めておいた校正用情報を用いて複数のマイクロフォンのうちの少なくとも1つのマイクロフォンの出力信号を補正する。
【0012】
このため、複数のマイクロフォンが同じレベルの感度に揃えられるので、所望の指向特性を形成することが可能となり、音源分離や音声認識等の各種処理の性能の向上が図られる。特に、複数のマイクロフォンの出力信号の差(遅延処理後に差をとる場合も含む。)をとって指向特性を形成する場合には、到来音が抑圧されるべき方向について、所望の抑圧効果が得られるようになるので、音源分離や音声認識等の各種処理の性能の向上が、より顕著に得られるようになり、これらにより前記目的が達成される。
【0013】
より具体的には、例えば、次のような方法を採ることができる。すなわち、前述したマイクロフォン感度調整方法において、校正用情報を求める際には、複数のマイクロフォンのうちの1つのマクロフォンを感度調整の基準となる基準マイクロフォンとして選定し、この基準マイクロフォン以外のマイクロフォンを、基準マイクロフォンと同レベルの感度になるように出力信号を補正される補正対象マイクロフォンとし、基準マイクロフォンおよび補正対象マイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力し、このときの基準マイクロフォンおよび補正対象マイクロフォンの各出力信号をそれぞれフーリエ変換し、フーリエ変換して得られた基準マイクロフォンの出力信号のスペクトルと補正対象マイクロフォンの出力信号のスペクトルとの比を各周波数帯域毎に求め、求めた各周波数帯域毎のスペクトル比をフーリエ逆変換して校正用情報としてのインパルス応答を求めておき、目的の指向特性を形成する際には、校正用情報としてのインパルス応答と補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行うことにより補正対象マイクロフォンの補正後の信号を求めるようにすることができる。
【0014】
ここで、「補正対象マイクロフォン」の個数は、1個でもよく、複数個でもよい。
【0015】
また、「校正信号」の音源は、環境音(例えば、人間の音声、雑音、自動車のクラクション等)でもよく、スピーカから出力された機械的な校正音でもよい。また、環境音のうち人間の音声を校正信号として用いる場合には、実効値の平均値(例えば20ms程度の平均値)が一定のレベルを超えた場合に、有声音区画であるか否かを判断し、有声音区画であるときに校正信号として採用するようにしてもよい。なお、校正信号は、必ずしも校正処理のための専用の信号である必要はなく、複数のマイクロフォン(基準マイクロフォンおよび補正対象マイクロフォン)に対し、同じレベルの同じ信号を同時に入力できる状況下であれば、実働状態で取得した環境音であってもよく、例えば、携帯電話機の使用中に取得された通話の音声を校正信号として用いてもよく、この場合には、携帯電話機を使用するユーザは、複数のマイクロフォン(基準マイクロフォンおよび補正対象マイクロフォン)に対し、対称な位置から発話すればよい。そして、ここで「校正信号」について言及したことは、上記のような各周波数帯域毎のスペクトル比をフーリエ逆変換してインパルス応答を求める場合に限らず、本発明で行われる校正処理の全てについて同様に言えることである。
【0016】
さらに、インパルス応答を求める校正処理は、工場でのプリセットでもよく、工場出荷後の実働状態(機器使用状態)等での自動調整でもよい。前者の場合には、例えば、携帯電話機等の携帯機器やカーナビゲーションシステム等の車載機器などの各種機器(製品)に搭載するマイクロフォンであれば、それらの機器(製品)を工場から出荷する前に、工場で予め校正処理を行っておくことができる。後者の場合には、各種機器がユーザの手許に渡った後、ユーザがそれらの機器を使用している最中(実働状態)、使用を開始する直前、使用を終了した直後、あるいは使用はしていないが機器の電源を入れている状態において、校正処理を自動的に行うことができる。そして、機器を使用している最中に校正処理を行う場合には、機器使用開始直後に1回だけ校正処理を行って出力補正処理用のインパルス応答を固定しておいてもよく、機器使用中に定期的に校正処理を行って出力補正処理用のインパルス応答を更新していってもよく、あるいは後述するように各周波数帯域毎のスペクトル比を複数回の平均値として求めるときには、機器使用中に継続的に各周波数帯域毎のスペクトル比を新たに求め、各周波数帯域毎のスペクトル比についての移動平均値または累積平均値を求め、この移動平均または累積平均により更新されるスペクトル比を用いて出力補正処理用のインパルス応答を更新していってもよい。また、工場出荷後において校正処理を自動的に行う場合には、処理を行うタイミングは、予め定められた時刻(例えば、毎晩22時、毎週月曜日の22時、毎月20日の22時等)としてもよいが、機器の動作(校正処理以外の動作)やユーザ操作と連動させてもよく、例えば、携帯電話機であれば、通話信号の着信時や発信時、折り畳み式の携帯電話機の開閉操作時等に対応させて校正処理を行ってもよい。なお、校正処理を行うタイミングの制御を含めた完全な自動調整とすることが、ユーザの手間の軽減やユーザの指示忘れの影響回避等の観点から好ましいが、ユーザ指示による調整、すなわち校正処理自体は自動で機械的に行うものの、校正処理を開始させる指示は、ユーザが行うようにしてもよい。そして、ここで校正処理を行うタイミングについて言及したことは、各周波数帯域毎のスペクトル比をフーリエ逆変換してインパルス応答を求める場合に限らず、本発明で校正用情報を作成するための校正処理を行う場合には、全て同様に言えることである。
【0017】
このように、より具体化されたマイクロフォン感度調整方法を例として、本発明の作用・効果を、より具体的に説明すると、次のようになる。この例においては、音源分離や音声認識等の各種処理を実現するための指向特性制御を行うにあたり、予め複数のマイクロフォンに感度調整用の校正信号を入力して校正処理を行っておく際には、校正信号を入力したときの基準マイクロフォンの出力信号と補正対象マイクロフォンの出力信号とのスペクトル比を各周波数帯域毎に求め、さらに各周波数帯域毎のスペクトル比に基づきインパルス応答を求めておく。このインパスル応答は、校正用情報となるものである。そして、実際に音源分離や音声認識等の各種処理を行う場面で目的の指向特性を形成する際には、校正処理で求めておいたインパルス応答を用いて畳み込み演算を行うことにより補正対象マイクロフォンの出力信号を補正し、補正対象マイクロフォンの感度を、基準マイクロフォンと同じレベルの感度に調整する。
【0018】
このため、基準マイクロフォンと補正対象マイクロフォンとが同じレベルの感度に揃えられるので、所望の指向特性を形成することが可能となり、音源分離や音声認識等の各種処理の性能の向上が図られる。特に、複数のマイクロフォンの出力信号の差(遅延処理後に差をとる場合も含む。)をとって指向特性を形成する場合には、到来音が抑圧されるべき方向について、所望の抑圧効果が得られるようになるので、音源分離や音声認識等の各種処理の性能の向上が、より顕著に得られるようになる。
【0019】
また、前述したマイクロフォン感度調整方法において、インパルス応答を求める際には、校正用情報として各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値を求め、求めた平均値と1との差分を各周波数帯域毎のスペクトル比からそれぞれ減じることにより各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値が1になるように調整した後、調整後の各周波数帯域毎のスペクトル比についてフーリエ逆変換を行い、目的の指向特性を形成する際には、インパルス応答と補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行った後、畳み込み演算を行って得られた信号に校正用情報としての各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値を乗じることにより補正対象マイクロフォンの補正後の信号を求めるようにしてもよい。
【0020】
さらに、前述したマイクロフォン感度調整方法において、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際には、複数回の平均値とすることが望ましい。
【0021】
このように各周波数帯域毎のスペクトル比を複数回の平均値として求める場合には、安定した校正用情報を得ることができるので、補正対象マイクロフォンの出力信号に対し、より適正な補正処理を行うことが可能となる。
【0022】
そして、前述したマイクロフォン感度調整方法において、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際には、前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて異常値を示すスペクトル比を補間修正することが望ましい。
【0023】
ここで、「前後の周波数帯域のスペクトル比」には、異常値を示している補間修正すべきスペクトル比の1つ前(低周波側)や1つ後(高周波側)の周波数帯域のスペクトル比のみならず、2つ以上前や2つ以上後の周波数帯域のスペクトル比が含まれる。従って、例えば、2つ前、1つ前、1つ後、2つ後の合計4つの周波数帯域のスペクトル比を用いて、異常値を示すスペクトル比の補間修正処理を行ってもよい。
【0024】
また、「前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて異常値を示すスペクトル比を補間修正すること」には、(1)前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて各周波数帯域のスペクトル比が異常値であるか否かを判断するとともに、前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて補間修正後のスペクトル比を求めて異常値を示すスペクトル比と置き換えること、(2)前後の周波数帯域のスペクトル比に限らず、例えば各周波数帯域のスペクトル比の平均値からの乖離度合い等のような様々な指標に基づき、各周波数帯域のスペクトル比が異常値であるか否かを判断するとともに、前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて補間修正後のスペクトル比を求めて異常値を示すスペクトル比と置き換えることが含まれる。
【0025】
このようにスペクトル比の異常値を補間修正するようにした場合には、安定した校正用情報を得ることができるので、補正対象マイクロフォンの出力信号に対し、より適正な補正処理を行うことが可能となる。
【0026】
以上に述べたマイクロフォン感度調整方法において、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際には、100Hz〜1kHzの範囲内の周波数帯域のスペクトルを対象とすることが望ましい。
【0027】
このように100Hz〜1kHzの範囲内の周波数帯域のスペクトルを対象として各周波数帯域毎のスペクトル比を求めるようにした場合には、複数のマイクロフォンの出力信号の差(遅延処理後に差をとる場合も含む。)をとって指向特性を形成するときに特定方向の音の抑圧効果の確保が必要となるのは、このような低周波の領域であることと、これらの範囲内では各周波数帯域毎のスペクトル比に比較的ばらつきが少ないことと、校正処理のための演算量が抑えられることから、少ない演算量で適正かつ効果的な校正用情報を得ることが可能となる。
【0028】
また、以上に述べたマイクロフォン感度調整方法において、操作部が設けられた本体部分と操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載された複数のマイクロフォン間の感度を調整する場合に、本体部分の操作部が設けられた面に凹部を形成し、この凹部の空間に臨む状態で本体部分に複数のマイクロフォンを設けるとともに、本体部分の操作部を蓋部分で覆ったときに凹部と対向位置に配置される状態で蓋部分にスピーカを設けておき、校正用情報を求める際には、本体部分の操作部を蓋部分で覆った状態で、スピーカから感度調整用の校正信号を出力し、出力した校正信号を凹部の空間を経由して複数のマイクロフォンに入力させるようにしてもよい。
【0029】
ここで、「携帯機器」には、携帯電話機(PHSも含む。)や携帯情報端末(PDA)の他に、例えば、電子辞書や電子手帳等も含まれる。以下の発明においても同様である。
【0030】
このように携帯機器の本体部分の操作部を蓋部分で覆った状態でスピーカから凹部に向けて校正信号を出力するようにした場合には、本体部分と蓋部分とを備えて構成される携帯機器の構造を利用して校正処理を実現することが可能となる。
【0031】
そして、上記において、携帯機器が、操作部が設けられた本体部分と、画面表示部が設けられた蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機(PHSも含む。)である場合には、この携帯電話機を折り畳んだときに凹部と対向位置に配置される状態で蓋部分にスピーカを設けておき、校正用情報を求める際には、携帯電話機を折り畳んだ状態で、スピーカから感度調整用の校正信号を出力し、出力した校正信号を凹部の空間を経由して複数のマイクロフォンに入力させるようにすることができる。
【0032】
また、上記において、携帯機器が、本体部分と蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末(PDA)である場合(画面表示部は、本体部分または蓋部分のいずれに設けられていてもよい。)には、この携帯情報端末を折り畳んだときに凹部と対向位置に配置される状態で蓋部分にスピーカを設けておき、校正用情報を求める際には、携帯情報端末を折り畳んだ状態で、スピーカから感度調整用の校正信号を出力し、出力した校正信号を凹部の空間を経由して複数のマイクロフォンに入力させるようにすることができる。
【0033】
以上のように携帯電話機や携帯情報端末を折り畳んだ状態でスピーカから凹部に向けて校正信号を出力するようにした場合には、折り畳み式の携帯電話機や携帯情報端末の構造を利用して校正処理を実現することが可能となる。
【0034】
さらに、以上に述べたマイクロフォン感度調整方法において、操作部が設けられた本体部分と操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載された複数のマイクロフォン間の感度を調整する場合に、本体部分の操作部が設けられた面に凹部を形成し、この凹部の空間に臨む状態で本体部分に複数のマイクロフォンを設けるとともに、本体部分の操作部を蓋部分で覆ったときに蓋部分により塞がれた状態となる凹部の空間と外部の空間とを連通する音道を本体部分または蓋部分に形成しておき、校正用情報を求める際には、本体部分の操作部を蓋部分で覆った状態で、感度調整用の校正信号を外部の空間から音道を介して凹部の空間内に導いて複数のマイクロフォンに入力させるようにしてもよい。
【0035】
このように携帯機器の本体部分の操作部を蓋部分で覆った状態で外部の空間から音道を介して凹部の空間内に校正信号を導くようにした場合には、本体部分と蓋部分とを備えて構成される携帯機器の構造を利用して校正処理を実現することが可能となる。
【0036】
そして、上記において、携帯機器が、操作部が設けられた本体部分と、画面表示部が設けられた蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機(PHSも含む。)である場合には、この携帯電話機を折り畳んだときに蓋部分により塞がれた状態となる凹部の空間と外部の空間とを連通する状態で音道を本体部分に形成しておき、校正用情報を求める際には、携帯電話機を折り畳んで凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号を外部の空間から音道を介して凹部の空間内に導いて複数のマイクロフォンに入力させるようにすることができる。
【0037】
また、上記において、携帯機器が、本体部分と蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末(PDA)である場合(画面表示部は、本体部分または蓋部分のいずれに設けられていてもよい。)には、この携帯情報端末を折り畳んだときに蓋部分により塞がれた状態となる凹部の空間と外部の空間とを連通する状態で音道を本体部分または蓋部分に形成しておき、校正用情報を求める際には、携帯情報端末を折り畳んで凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号を外部の空間から音道を介して凹部の空間内に導いて複数のマイクロフォンに入力させるようにすることができる。
【0038】
以上のように携帯電話機や携帯情報端末を折り畳んだ状態で外部の空間から音道を介して凹部の空間内に校正信号を導くようにした場合には、折り畳み式の携帯電話機や携帯情報端末の構造を利用して校正処理を実現することが可能となる。
【0039】
また、以上に述べた本発明のマイクロフォン感度調整方法を実現するシステムとして、以下のような本発明のマイクロフォン感度調整システムが挙げられる。
【0040】
すなわち、本発明は、目的の指向特性を形成するために組み合わせて使用される複数のマイクロフォン間の感度を調整するマイクロフォン感度調整システムであって、複数のマイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力したときの複数のマイクロフォンの各出力信号を用いて複数のマイクロフォンを同レベルの感度に調整するための校正用情報を作成する校正用情報作成手段と、この校正用情報作成手段により作成された校正用情報を記憶する校正用情報記憶手段と、この校正用情報記憶手段に記憶された校正用情報を用いて複数のマイクロフォンのうちの少なくとも1つのマイクロフォンの出力信号を補正する出力補正手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0041】
このような本発明のマイクロフォン感度調整システムにおいては、前述した本発明のマイクロフォン感度調整方法で得られる作用・効果がそのまま得られ、これにより前記目的が達成される。
【0042】
より具体的には、例えば、次のような構成を採ることができる。すなわち、上述したマイクロフォン感度調整システムにおいて、校正用情報作成手段は、複数のマイクロフォンのうちの感度調整の基準となる1つの基準マイクロフォンおよびこの基準マイクロフォンと同レベルの感度になるように出力信号を補正される補正対象マイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力したときの基準マイクロフォンおよび補正対象マイクロフォンの各出力信号をそれぞれフーリエ変換するフーリエ変換手段と、このフーリエ変換手段により得られた基準マイクロフォンの出力信号のスペクトルと補正対象マイクロフォンの出力信号のスペクトルとの比を各周波数帯域毎に求めるスペクトル比算出手段と、このスペクトル比算出手段により求めた各周波数帯域毎のスペクトル比をフーリエ逆変換して校正用情報としてのインパルス応答を求めるフーリエ逆変換手段とを含んで構成され、校正用情報記憶手段は、フーリエ逆変換手段により得られたインパルス応答を記憶するインパルス応答記憶手段を含んで構成され、出力補正手段は、インパルス応答記憶手段に記憶された校正用情報としてのインパルス応答と補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行うことにより補正対象マイクロフォンの補正後の信号を求める構成とすることができる。
【0043】
また、上述したマイクロフォン感度調整システムにおいて、校正用情報作成手段は、スペクトル比算出手段により求めた各周波数帯域毎のスペクトル比について校正用情報としてこれらのスペクトル比の平均値を求めるスペクトル比平均値算出手段と、スペクトル比平均値算出手段により求めた平均値と1との差分を各周波数帯域毎のスペクトル比からそれぞれ減じることにより各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値が1になるように調整するスペクトル比調整手段とを含んで構成され、校正用情報記憶手段は、スペクトル比平均値算出手段により求めた校正用情報としての平均値を記憶するスペクトル比平均値記憶手段を含んで構成され、フーリエ逆変換手段は、スペクトル比調整手段による調整後の各周波数帯域毎のスペクトル比についてフーリエ逆変換を行う構成とされ、出力補正手段は、インパルス応答記憶手段に記憶された校正用情報としてのインパルス応答と補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行った後、畳み込み演算を行って得られた信号にスペクトル比平均値記憶手段に記憶された校正用情報としての平均値を乗じる構成としてもよい。
【0044】
さらに、前述したマイクロフォン感度調整システムにおいて、スペクトル比算出手段は、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際に、複数回の平均値をとる構成とされていることが望ましい。
【0045】
そして、前述したマイクロフォン感度調整システムにおいて、スペクトル比算出手段は、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際に、前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて異常値を示すスペクトル比を補間修正する構成とされていることが望ましい。
【0046】
また、以上に述べたマイクロフォン感度調整システムにおいて、スペクトル比算出手段は、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際に、100Hz〜1kHzの範囲内の周波数帯域のスペクトルを対象とする構成とされていることが望ましい。
【0047】
また、以上に述べたマイクロフォン感度調整システムにおいて、複数のマイクロフォンは、操作部が設けられた本体部分と操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載され、本体部分の操作部が設けられた面には凹部が形成され、この凹部の空間に臨む状態で本体部分に複数のマイクロフォンが設けられ、本体部分の操作部を蓋部分で覆ったときに凹部と対向位置に配置される状態で蓋部分にスピーカが設けられ、本体部分の操作部を蓋部分で覆った状態で、スピーカから感度調整用の校正信号が出力され、出力された校正信号が凹部の空間を経由して複数のマイクロフォンに入力される構成としてもよい。
【0048】
そして、上記において、携帯機器が、操作部が設けられた本体部分と、画面表示部が設けられた蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機である場合には、この携帯電話機を折り畳んだときに凹部と対向位置に配置される状態で蓋部分にスピーカが設けられ、携帯電話機を折り畳んだ状態で、スピーカから感度調整用の校正信号が出力され、出力された校正信号が凹部の空間を経由して複数のマイクロフォンに入力される構成とすることができる。
【0049】
また、上記において、携帯機器が、本体部分と蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末である場合には、この携帯情報端末を折り畳んだときに凹部と対向位置に配置される状態で蓋部分にスピーカが設けられ、携帯情報端末を折り畳んだ状態で、スピーカから感度調整用の校正信号が出力され、出力された校正信号が凹部の空間を経由して複数のマイクロフォンに入力される構成とすることができる。
【0050】
さらに、以上に述べたマイクロフォン感度調整システムにおいて、複数のマイクロフォンは、操作部が設けられた本体部分と操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載され、本体部分の操作部が設けられた面には凹部が形成され、この凹部の空間に臨む状態で本体部分に複数のマイクロフォンが設けられ、本体部分の操作部を蓋部分で覆ったときに蓋部分により塞がれた状態となる凹部の空間と外部の空間とを連通する音道が本体部分または蓋部分に形成され、本体部分の操作部を蓋部分で覆った状態で、感度調整用の校正信号が外部の空間から音道を介して凹部の空間内に導かれて複数のマイクロフォンに入力される構成としてもよい。
【0051】
そして、上記において、携帯機器が、操作部が設けられた本体部分と、画面表示部が設けられた蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機である場合には、この携帯電話機を折り畳んだときに蓋部分により塞がれた状態となる凹部の空間と外部の空間とを連通する状態で音道が本体部分に形成され、携帯電話機を折り畳んで凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号が外部の空間から音道を介して凹部の空間内に導かれて複数のマイクロフォンに入力される構成とすることができる。
【0052】
また、上記において、携帯機器が、本体部分と蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末である場合には、この携帯情報端末を折り畳んだときに蓋部分により塞がれた状態となる凹部の空間と外部の空間とを連通する状態で音道が本体部分または蓋部分に形成され、携帯情報端末を折り畳んで凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号が外部の空間から音道を介して凹部の空間内に導かれて複数のマイクロフォンに入力される構成とすることができる。
【発明の効果】
【0053】
以上に述べたように本発明によれば、音源分離や音声認識等の各種処理を行うために目的の指向特性を形成するにあたり、予め複数のマイクロフォンに感度調整用の校正信号を入力して校正処理を行って校正用情報を作成しておき、実際に目的の指向特性を形成する際に、校正処理で作成しておいた校正用情報を用いて複数のマイクロフォンのうちの少なくとも1つのマイクロフォンの出力信号を補正して感度を調整するので、複数のマイクロフォンの感度を揃えることができ、所望の指向特性を形成することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0054】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1には、本実施形態のマイクロフォン感度調整システム10の全体構成が示されている。図2は、マイクロフォン感度調整システム10を搭載した携帯電話機40の斜視図である。図3には、マイクロフォン感度調整システム10による校正処理(キャリブレーション)の流れがフローチャートで示され、図4には、実働状態(携帯電話機40の使用中の状態)での音響信号(発話音声や雑音等)の処理の流れがフローチャートで示されている。
【0055】
図1において、マイクロフォン感度調整システム10は、校正信号出力手段11と、窓処理手段12と、フーリエ変換手段13と、スペクトル比算出手段14と、スペクトル比平均値算出手段15と、スペクトル比調整手段16と、フーリエ逆変換手段17と、出力補正手段18と、スペクトル比平均値記憶手段21と、インパルス応答記憶手段22とを含んで構成されている。
【0056】
このうち、校正信号出力手段11と、窓処理手段12と、フーリエ変換手段13と、スペクトル比算出手段14と、スペクトル比平均値算出手段15と、スペクトル比調整手段16と、フーリエ逆変換手段17とにより、校正処理を行って校正用情報を作成する校正用情報作成手段10Aが構成されている。また、スペクトル比平均値記憶手段21と、インパルス応答記憶手段22とにより、校正用情報作成手段10Aにより作成された校正用情報を記憶する校正用情報記憶手段20が構成されている。
【0057】
校正信号出力手段11は、携帯電話機40に搭載された基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42に与える校正信号(本実施形態では、一例として、機械的な校正音とする。)を、携帯電話機40のスピーカ43から出力させる処理を行うものである。この校正信号出力手段11は、校正信号の出力タイミングの制御も行う。例えば、携帯電話機40が折り畳まれている状態であるか否かを把握し、折り畳まれている状態で通話信号を着信した直後(この場合、着信音そのものを校正信号としてもよい。)、携帯電話機40を折り畳む操作が行われた直後、あるいは携帯電話機40が折り畳まれている状態で所定の時刻(日時)になったとき等のタイミングで、校正信号をスピーカ43から出力させる。
【0058】
窓処理手段12は、感度調整用の同じ校正信号を入力したときの基準マイクロフォン41の出力信号XC1および補正対象マイクロフォン42の出力信号XC2について、それぞれ窓処理を行うものである。
【0059】
フーリエ変換手段13は、窓処理手段12により窓処理を行った後の基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42の各出力信号について、それぞれ高速フーリエ変換(FFT)を行うものである。
【0060】
スペクトル比算出手段14は、フーリエ変換手段13により得られた基準マイクロフォン41の出力信号のスペクトルS1と、補正対象マイクロフォン42の出力信号のスペクトルS2との比S1/S2を各周波数帯域毎に求める処理を行うものである。本実施形態では、一例として、100Hz〜1kHzの範囲内の各周波数帯域のスペクトルを対象として、スペクトル比S1/S2を求める。
【0061】
また、スペクトル比算出手段14は、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を求める際に、各周波数帯域のそれぞれについて、複数回(N回)の高速フーリエ変換処理でそれぞれ得られたスペクトル比S1/S2の平均値をとる。
【0062】
さらに、スペクトル比算出手段14は、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を求める際に、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて各周波数帯域のスペクトル比S1/S2が異常値であるか否かを判断し、異常値であった場合には、その異常値を示すスペクトル比S1/S2を、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて補間処理を行って算出された正常なスペクトル比S1/S2に置き換えて修正する処理を行う。
【0063】
スペクトル比平均値算出手段15は、スペクトル比算出手段14により求めた各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2(本実施形態では、それぞれN回の平均値)について平均値RAVEを求める処理を行うものである。すなわち、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を合計して帯域数で割ることにより、平均値RAVEを求める。この平均値RAVEは、校正用情報となるものである。
【0064】
スペクトル比調整手段16は、スペクトル比平均値算出手段15により求めた平均値RAVEと1との差分を各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2からそれぞれ減じることにより、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2の平均値が1になるように調整する処理を行うものである。
【0065】
フーリエ逆変換手段17は、スペクトル比算出手段14により求めた各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2(本実施形態では、それぞれN回の平均値)をフーリエ逆変換(IFFT)してインパルス応答を求める処理を行うものである。このインパルス応答は、校正用情報となるものである。本実施形態では、フーリエ逆変換手段17は、スペクトル比調整手段16による調整後の各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2(平均値が1になるように調整されたスペクトル比S1/S2)についてフーリエ逆変換を行う。
【0066】
出力補正手段18は、インパルス応答記憶手段22に記憶されたインパルス応答と、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2とを用いて畳み込み演算を行うことにより、補正対象マイクロフォン42の補正後の信号を求める処理を行うものである。本実施形態では、出力補正手段18は、上記の畳み込み演算を行った後、畳み込み演算を行って得られた信号にスペクトル比平均値記憶手段21に記憶された平均値RAVEを乗じる処理も行う。
【0067】
スペクトル比平均値記憶手段21は、スペクトル比平均値算出手段15により求めた校正用情報である平均値RAVEを記憶するものである。この際、記憶される平均値RAVEは、1つの実数値(例えば、1.1等)である。
【0068】
インパルス応答記憶手段22は、フーリエ逆変換手段17により得られた校正用情報であるインパルス応答を記憶するものである。この際、インパルス応答は、時間領域上の応答波形をサンプリングして得られる値の配列として記憶される。
【0069】
以上において、マイクロフォン感度調整システム10を構成する各手段11〜18は、携帯電話機40に搭載された中央演算処理装置(CPU)、およびこのCPUの動作手順を規定する一つまたは複数のプログラムにより実現される。なお、携帯電話機40以外の機器やコンピュータにより、本発明のマイクロフォン感度調整システムを実現する場合も同様であり、各手段11〜18に相当する機能は、各種機器やコンピュータに搭載された中央演算処理装置(CPU)、およびこのCPUの動作手順を規定する一つまたは複数のプログラムにより実現される。また、一部の機能をハードウェア回路により実現してもよい。
【0070】
また、スペクトル比平均値記憶手段21およびインパルス応答記憶手段22は、携帯電話機40に搭載された各種メモリにより実現される。なお、携帯電話機40以外の機器やコンピュータにより、本発明のマイクロフォン感度調整システムを実現する場合も同様であり、各記憶手段21,22に相当する記憶手段として、例えば、ハードディスク、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリ、RAM、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、FD、磁気テープ、あるいはこれらの組合せ等を採用することができる。
【0071】
図2において、携帯電話機40は、各種キーにより構成される操作部44が設けられた本体部分45と、液晶ディスプレイ等の画面表示部46が設けられた蓋部分47とにより構成された折り畳み式の携帯電話機である。本体部分45の表面48には、凹部49が形成され、この凹部49の空間に臨む状態で、つまり凹部49の空間内で集音できるように基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42が配置されている。
【0072】
携帯電話機40は、折り畳んだ状態にすると、画面表示部46が設けられた蓋部分47の表面50に配置されたスピーカ43と、操作部44が設けられた本体部分45の表面48に形成された凹部49とが、対向する状態となるように構成されている。凹部49の開口形状は、図示の例では、略楕円形状であるが、これに限定されるものではなく、スピーカ43から出力された校正信号を、基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42に均等なレベルで伝達することができるようになっていればよい。携帯電話機40を折り畳んだ状態では、基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42は、スピーカ43から見て対称位置に配置されるので、凹部49の開口形状は、基準マイクロフォン41側と補正対象マイクロフォン42側とで対称な形状となっている。なお、本実施形態では、基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42は、無指向性マイクロフォンであるが、本発明は、指向性マイクロフォンに適用してもよい。
【0073】
このような本実施形態においては、以下のようにしてマイクロフォン感度調整システム10により複数のマイクロフォン間の感度の調整を行う。
【0074】
先ず、図3に示すように、携帯電話機40を使用して通話(テレビ電話を含む。)やその他の用途(ゲーム等)での音声入力を行う前に、予めマイクロフォンの校正処理(キャリブレーション)を行っておくために、携帯電話機40の電源を投入し、校正処理実行機能を含むプログラムを立ち上げて校正処理を開始する(ステップS1)。なお、以下に述べるような校正処理は、携帯電話機40の製造時に工場でも行われ、携帯電話機40内のスペクトル比平均値記憶手段21やインパルス応答記憶手段22には、工場出荷の段階で、既に工場での校正処理で得られたスペクトル比平均値やインパルス応答が記憶され、プリセットされた状態となっている。このように工場でのプリセットだけとしてもよいが、本実施形態では、携帯電話機40がユーザの手許に渡った後も、校正処理を行ってスペクトル比平均値やインパルス応答を更新する。また、工場でのプリセットを行わずに、携帯電話機40がユーザの手許に渡った後に、初めて校正処理が行われるようにしてもよい。
【0075】
校正信号出力手段11は、例えば、ユーザによる携帯電話機40の折り畳み操作が行われた直後、あるいは携帯電話機40が折り畳まれている状態で所定の時刻(日時)になったとき等の所定のタイミングで、校正信号をスピーカ43から出力させる(ステップS2)。
【0076】
スピーカ43から出力された校正信号は、携帯電話機40の本体部分45の表面48に形成された凹部49を経由して基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42に均等なレベルで同時に入力されるので、このときの基準マイクロフォン41の出力信号XC1および補正対象マイクロフォン42の出力信号XC2を、サンプリングしてマイクロフォン感度調整システム10に取り込む(ステップS3)。この際、フレーム長は、例えば、2048サンプル(64ms)等である。
【0077】
続いて、マイクロフォン感度調整システム10では、窓処理手段12により、取得した基準マイクロフォン41の出力信号XC1および補正対象マイクロフォン42の出力信号XC2について、それぞれ窓処理を行う(ステップS4)。
【0078】
それから、フーリエ変換手段13により、窓処理を行った後の基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42の各出力信号について、それぞれ高速フーリエ変換(FFT)を行う(ステップS5)。
【0079】
その後、スペクトル比算出手段14により、100Hz〜1kHzの範囲の各周波数帯域において、フーリエ変換手段13により得られた基準マイクロフォン41の出力信号のスペクトルS1(S1(1)、S1(2)、S1(3)…;但し、括弧内は各周波数帯域に付した番号)と、補正対象マイクロフォン42の出力信号のスペクトルS2(S2(1)、S2(2)、S2(3)…;但し、括弧内は各周波数帯域に付した番号)との比S1/S2(S1(1)/S2(1)、S1(2)/S2(2)、S1(3)/S2(3)…)を各周波数帯域毎に求める(ステップS6)。
【0080】
この際、スペクトル比算出手段14は、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて、各周波数帯域のスペクトル比S1/S2が異常値であるか否かを判断し、異常値であった場合には、その異常値を示すスペクトル比S1/S2を、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて補間処理を行って算出された正常なスペクトル比S1/S2に置き換えて修正する(ステップS7)。
【0081】
例えば、周波数帯域fjのスペクトル比S1(j)/S2(j)が、異常値であるか否かを判断する場合には、先ず、その前(低域側)の周波数帯域fj-1のスペクトル比S1(j−1)/S2(j−1)と、その後(高域側)の周波数帯域fj+1のスペクトル比S1(j+1)/S2(j+1)との差の絶対値が、一定値以下であるか否かを判断する。すなわち、|{S1(j−1)/S2(j−1)}−{S1(j+1)/S2(j+1)}|≦α(一定値)であるか否かを判断する。そして、一定値α以下であった場合には、判断対象のスペクトル比S1(j)/S2(j)と、その前後の周波数帯域fj-1,fj+1のスペクトル比S1(j−1)/S2(j−1)、S1(j+1)/S2(j+1)のいずれかとの差の絶対値が、一定値以上であるか否かを判断する。すなわち、|{S1(j)/S2(j)}−{S1(j−1)/S2(j−1)}|≧β(一定値)、または|{S1(j)/S2(j)}−{S1(j+1)/S2(j+1)}|≧β(一定値)であるか否かを判断する。ここで、一定値β以上であった場合には、周波数帯域fjのスペクトル比S1(j)/S2(j)が異常値であると判断し、前後の周波数帯域fj-1,fj+1のスペクトル比S1(j−1)/S2(j−1)、S1(j+1)/S2(j+1)を用いて、1次(線形)補間処理を行い、修正後の周波数帯域fjのスペクトル比S1(j)/S2(j)を算出し、異常値と置き換える。すなわち、修正後のS1(j)/S2(j)=[{S1(j−1)/S2(j−1)}+{S1(j+1)/S2(j+1)}]/2とする。また、前後2つずつで合計4つの周波数帯域fj-2,fj-1,fj+1,fj+2のスペクトル比S1(j−2)/S2(j−2)、S1(j−1)/S2(j−1)、S1(j+1)/S2(j+1)、S1(j+2)/S2(j+2)を用いて、2次補間処理(最小自乗2次補間処理等)や4点線形補間処理を行ってもよく、あるいは前後合計3つの周波数帯域のスペクトル比を用いて、3点2次補間処理や3点線形補間処理を行ってもよく、その他の様々な補間処理を採用することができる。さらに、異常値であるか否かの判断に用いる前後の周波数帯域のスペクトル比の個数と、補間修正を行う際に用いる前後の周波数帯域のスペクトル比の個数とを異なるものとしてもよい。
【0082】
それから、基準マイクロフォン41の出力信号XC1および補正対象マイクロフォン42の出力信号XC2の取得処理(ステップS3)から異常値の補間修正処理(ステップS7)までの各処理が所定回数(N回)繰り返されたか否かを判断し(ステップS8)、N回に達していない場合には、再び、ステップS3の処理に戻り、以降、N回に達するまで、ステップS3〜S8の処理を繰り返す。一方、N回に達していた場合には、スペクトル比算出手段14により、各周波数帯域f1,f2,f3,f4…のそれぞれについて、複数回(N回)の高速フーリエ変換処理でそれぞれ得られたスペクトル比S1/S2の平均値(N個のS1(j)/S2(j)の平均値;但し、j=1,2,3,4…)をとる(ステップS9)。すなわち、周波数帯域f1における1回目のスペクトル比S1(1)/S2(1)からN回目のスペクトル比S1(1)/S2(1)までを合計してNで割ることにより、周波数帯域f1における平均化されたスペクトル比S1(1)/S2(1)を求め、同様にして、周波数帯域f2における1回目のスペクトル比S1(2)/S2(2)からN回目のスペクトル比S1(2)/S2(2)までを合計してNで割ることにより、周波数帯域f2における平均化されたスペクトル比S1(2)/S2(2)を求め、このような平均化処理を、その他の周波数帯域f3,f4…においても行う。
【0083】
続いて、スペクトル比平均値算出手段15により、スペクトル比算出手段14により求めた各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2(S1(1)/S2(1)、S1(2)/S2(2)、S1(3)/S2(3)、S1(4)/S2(4)…)について平均値RAVEを求める処理を行う(ステップS10)。すなわち、周波数帯域f1のスペクトル比S1(1)/S2(1)(本実施形態では、N回の平均値)と、周波数帯域f2のスペクトル比S1(2)/S2(2)(本実施形態では、N回の平均値)と、その他の周波数帯域f3,f4…の各スペクトル比S1(3)/S2(3)、S1(4)/S2(4)…(本実施形態では、それぞれN回の平均値)とを合計して帯域数で割ることにより、平均値RAVEを求める。また、スペクトル比平均値算出手段15は、求めた平均値RAVEをスペクトル比平均値記憶手段21に記憶させて保存する(ステップS10)。
【0084】
その後、スペクトル比調整手段16により、スペクトル比平均値算出手段15により求めた平均値RAVEと1との差分を各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2(S1(1)/S2(1)、S1(2)/S2(2)、S1(3)/S2(3)…)からそれぞれ減じることにより、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2(S1(1)/S2(1)、S1(2)/S2(2)、S1(3)/S2(3)…)の平均値が1になるように調整する(ステップS11)。例えば、RAVE=1.1であれば、この1.1と1との差分である0.1を、各周波数帯域f1,f2,f3…のスペクトル比S1(1)/S2(1)、S1(2)/S2(2)、S1(3)/S2(3)…(本実施形態では、それぞれN回の平均値)からそれぞれ減じる。
【0085】
それから、フーリエ逆変換手段17により、スペクトル比調整手段16により平均値が1になるように調整された各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2(調整後のS1(1)/S2(1)、S1(2)/S2(2)、S1(3)/S2(3)…)についてフーリエ逆変換(IFFT)を行うことにより、インパルス応答を求める(ステップS12)。また、フーリエ逆変換手段17は、求めたインパルス応答をインパルス応答記憶手段22に記憶させて保存する(ステップS12)。
【0086】
以上により、マイクロフォンの校正処理(キャリブレーション)を終了する(ステップS13)。なお、以上の校正処理は、校正信号出力手段11により所定のタイミングで校正信号をスピーカ43から出力させることにより、繰り返し行われる。
【0087】
次に、図4に示すように、携帯電話機20を使用して通話を行う場合、あるいは携帯電話機20をゲーム等のその他の用途で使用して音声入力を行う場合等のような実働状態での音響信号の処理を開始する(ステップS21)。
【0088】
実働状態で音源分離や音声認識等の処理対象となる音響信号が基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42に入力されると、このときの補正対象マイクロフォン42の出力信号X2が、サンプリングされてマイクロフォン感度調整システム10に取り込まれる(ステップS22)。一方、基準マイクロフォン41の出力信号X1は、補正対象ではないため、サンプリングされてそのまま後行程の音源分離システム30に送られる(図1参照)。
【0089】
続いて、出力補正手段18により、インパルス応答記憶手段22に記憶されたインパルス応答Hと、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2とを用いて、次の式(1)に基づき畳み込み演算を行うことにより、補正対象マイクロフォン42の補正後の信号Y2を求める(ステップS23)。
【0090】
2(n)=Σk{X2(k)×H(n−k)} ・・・・・・・・・・・・(1)
【0091】
ここで、X2(k)は、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2についての時間軸上のk番目のサンプリングデータであり、Y2(n)は、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2を畳み込み演算で補正して得られる信号Y2についての時間軸上のn番目のデータであり、H(n−k)は、系のインパルス応答であり、Σkは、k=−∞〜k=∞の和である。
【0092】
さらに、出力補正手段18は、畳み込み演算を行って得られた信号Y2に、スペクトル比平均値記憶手段21に記憶された平均値RAVEを乗じる平均利得補正を行い、RAVE倍された信号Y2を、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2についての補正後の信号として出力する(ステップS24)。
【0093】
その後、ゲインを変化させていない基準マイクロフォン41の出力信号X1と、出力補正手段18により補正対象マイクロフォン42の出力信号X2を補正して得られた信号Y2×RAVEとを、音源分離システム30に取り込み、これらの信号を用いて指向特性制御(図9参照)を伴う音源分離処理を行って目的音と妨害音とを分離し、さらに必要に応じ、分離して得られた目的音についての音声認識処理等の各種処理を行い(ステップS25)、実働状態での音響信号の処理を終了する(ステップS26)。なお、音源分離システム30は、複数のマイクロフォンの出力信号を用いて指向特性制御を行うシステムであれば任意であり、既存のシステムでもよく、あるいは本願出願人により特願2004−366202や特願2005−270931で提案されている音源分離システム、すなわち少数のマイクロフォンの出力信号を用いて目的音強調用の線形結合処理や目的音抑制用の線形結合処理を行うことにより指向特性制御を行うとともに、これらの指向特性制御で得られた複数の信号のスペクトルを用いて帯域選択(Band Selection)やスペクトラル・サブトラクション(Spectral Subtraction)を行って目的音と妨害音とを分離するシステム等でもよい。同様に、音声認識処理等のその他の後工程の処理を行うシステムも任意である。
【0094】
このような本実施形態によれば、次のような効果がある。すなわち、マイクロフォン感度調整システム10は、フーリエ変換手段13、スペクトル比算出手段14、およびフーリエ逆変換手段17を備えているので、基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42に感度調整用の校正信号を入力し、このときの基準マイクロフォン41の出力信号XC1と補正対象マイクロフォン42の出力信号XC2とのスペクトル比S1/S2を各周波数帯域毎に求め、さらに各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2に基づきインパルス応答を求めておくことができる。このため、音源分離や音声認識等の各種処理を実現するための指向特性制御を行うにあたり、予めマイクロフォンの校正処理を行っておくことができる。
【0095】
そして、マイクロフォン感度調整システム10は、出力補正手段18を備えているので、実働状態で音源分離や音声認識等の各種処理を実現するにあたって目的の指向特性を形成する際には、校正処理で求めておいたインパルス応答を用いて畳み込み演算を行うことにより補正対象マイクロフォン42の出力信号X2を補正し、基準マイクロフォン41と同じレベルの感度に調整することができる。このため、基準マイクロフォン41と補正対象マイクロフォン42とを同じレベルの感度に揃えることができるので、所望の指向特性を形成することができ、音源分離や音声認識等の各種処理の性能を向上させることができる。特に、複数のマイクロフォンの出力信号の差(遅延処理後に差をとる場合も含む。)をとって指向特性を形成する場合(例えば、図9の(1)〜(3)の場合等)には、到来音が抑圧されるべき方向について、所望の抑圧効果を得ることができるので、音源分離や音声認識等の各種処理の性能の向上を、より顕著なものとすることができる。
【0096】
また、スペクトル比算出手段14は、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を求める際には、複数回(N回)の平均値として求めるので、安定した校正用情報を得ることができるため、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2に対し、より適正な補正処理を行うことができる。
【0097】
さらに、スペクトル比算出手段14は、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を求める際には、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて異常値を示すスペクトル比S1/S2を補間修正するので、この点でも安定した校正用情報を得ることができるため、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2に対し、より適正な補正処理を行うことができる。
【0098】
そして、スペクトル比算出手段14は、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を求める際には、100Hz〜1kHzの範囲内の周波数帯域のスペクトルを対象とするので、少ない演算量で適正かつ効果的な校正用情報を得ることができる。
【0099】
また、マイクロフォン感度調整システム10は、スペクトル比平均値算出手段15およびスペクトル比調整手段16を備えているので、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2の平均値RAVEを求め、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2の平均値が1になるように調整した後に、インパルス応答を求めることができる。このため、出力補正手段18による補正処理において、各周波数帯域間でのスペクトル比S1/S2のばらつき分と、平均値RAVEの分とを分離して取り扱うことができ、インパルス応答を用いた畳み込み演算では、ばらつき分を考慮した補正を行い、その後に平均値RAVEを用いて平均利得補正を行うことができる。
【0100】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形等は本発明に含まれるものである。
【0101】
すなわち、前記実施形態では、マイクロフォン感度調整システム10は、基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42の合計2個のマイクロフォン間の感度調整を行う構成とされていたが、本発明は、3個以上のマイクロフォン間の感度調整に用いてもよく、この場合には、1つのマイクロフォンを基準マイクロフォンとして選定し、残りの2個以上のマイクロフォンについては、それぞれを補正対象マイクロフォンとして、選定した1つの基準マイクロフォンとの間でそれぞれ本発明による感度調整を行えばよい。
【0102】
そして、前記実施形態では、基準マイクロフォン41のゲインを変えず、補正対象マイクロフォン42の出力信号のみを補正していたが、本発明は、感度を揃えるべき複数のマイクロフォンの全てについて出力信号の補正を行う構成としてもよく、要するに、複数のマイクロフォンのうちの少なくとも1つのマイクロフォンの出力信号について補正を行う構成であればよい。
【0103】
また、前記実施形態では、スペクトル比算出手段14は、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を、複数回(所定のN回)の平均値として求める構成とされていたが(図3のステップS9参照)、このような平均化処理を行わずに、1回のフーリエ変換処理で得られたスペクトル比S1/S2をそのまま採用してもよい。但し、安定した校正用情報を得て、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2に対し、より適正な補正処理を行うという観点から、平均化処理を行うことが好ましい。
【0104】
さらに、前記実施形態では、所定回数(N回)のループ処理(図3のステップS3〜S8)を行ってから、N回求めたスペクトル比S1/S2の平均値をとるようになっているので(図3のステップS9参照)、次回の校正処理を行ってインパルス応答を更新するには、再度、N回のループ処理(図3のステップS3〜S8)を行ってから、N回求めたスペクトル比S1/S2の平均値をとるようになっていたが、継続的にフーリエ変換処理を行ってスペクトル比S1/S2を求める構成とする場合には、前記実施形態のループ処理(図3のステップS3〜S8)の中に(ステップS7の直後の位置が好ましい。)、ステップS9に相当する平均化処理を入れるようにしてもよい。この場合、継続的に次々に算出されるスペクトル比S1/S2の移動平均値(例えば、直近のN回の移動平均値)を算出してもよく、あるいは累積平均値(初回のスペクトル比S1/S2から最新のスペクトル比S1/S2までの平均値)としてもよい。
【0105】
そして、前記実施形態では、スペクトル比算出手段14は、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて異常値の補間修正を行う構成とされていたが、このような異常値の補間修正処理を省略してもよい。但し、補正対象マイクロフォン42の出力信号X2に対し、より適正な補正処理を行うことができるという点で、異常値の補間修正処理を行うことが好ましい。また、異常値を発見したときに、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて補間処理を行って修正後の値を算出するのではなく、単にその異常値を各周波数帯域のスペクトル比S1/S2の平均値に置き換えるようにしてもよい。但し、周波数の高低の相違等を反映させるという観点等から、前後の周波数帯域のスペクトル比S1/S2を用いて補間処理を行うことが好ましい。
【0106】
また、前記実施形態では、スペクトル比算出手段14は、100Hz〜1kHzの範囲内で各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を求める構成とされていたが、この範囲内に限定されるものではない。但し、少ない演算量で適正かつ効果的な校正用情報を得ることができるという点で、100Hz〜1kHzの範囲内とすることが好ましい。
【0107】
さらに、前記実施形態では、マイクロフォン感度調整システム10は、校正処理において、スペクトル比平均値算出手段15により各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2の平均値RAVEを求め、スペクトル比調整手段16により各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2の平均値が1になるように調整した後に、フーリエ逆変換手段17によりインパルス応答を求め、出力補正手段18による補正処理において、畳み込み演算後に平均値RAVEを乗じる構成とされていたが、このように各周波数帯域間でのスペクトル比S1/S2のばらつき分と、平均値RAVEの分とを分離して取り扱う構成とするのではなく、図5に示すように、校正処理においては、各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2の平均値が1になるように調整する処理を行うことなくフーリエ逆変換を行って校正用情報としてのインパスル応答を求め、出力補正手段18による補正処理においては、平均値RAVEを乗じる平均利得補正を行わない構成としてもよい。
【0108】
図5において、マイクロフォン感度調整システム60は、前記実施形態のマイクロフォン感度調整システム10の場合と同じ構成および機能を有する校正信号出力手段11、窓処理手段12、フーリエ変換手段13、およびスペクトル比算出手段14を備えているが、スペクトル比平均値算出手段15、スペクトル比調整手段16、およびスペクトル比平均値記憶手段21に相当する手段を備えていない。
【0109】
また、マイクロフォン感度調整システム60は、フーリエ逆変換手段61と、出力補正手段62と、インパルス応答記憶手段63とを備えているが、フーリエ逆変換手段61については、前記実施形態のフーリエ逆変換手段17のように平均値が1になるように調整された後の各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を用いてフーリエ逆変換を行うのではなく、平均値を1にする調整処理を行っていない状態の各周波数帯域毎のスペクトル比S1/S2を用いてフーリエ逆変換を行い、その結果得られたインパルス応答をインパルス応答記憶手段63に記憶させて保存する構成とされている。従って、インパルス応答記憶手段63には、前記実施形態のインパルス応答記憶手段22とは異なる処理を経て得られたインパルス応答が記憶される。また、出力補正手段62については、インパルス応答記憶手段63に記憶されたインパルス応答を用いた畳み込み演算は行うが、前記実施形態の出力補正手段18のような畳み込み演算後における平均値RAVEを乗じる処理は行わない構成とされている。
【0110】
このため、図5のマイクロフォン感度調整システム60による校正処理(キャリブレーション)では、図3に示した前記実施形態のマイクロフォン感度調整システム10による校正処理の流れにおいて、ステップS10の平均値RAVEを求める処理、およびステップS11の平均値を1にする調整処理に相当する各処理は行われない。また、図5のマイクロフォン感度調整システム60による実働状態(携帯電話機の使用中の状態)での音響信号(発話音声や雑音等)の処理では、図4に示した前記実施形態のマイクロフォン感度調整システム10による実働状態での音響信号の処理の流れにおいて、ステップS24の平均値RAVEを乗じる平均利得補正は行われない。
【0111】
また、前記実施形態では、携帯電話機40を折り畳んだ状態において、画面表示部46が設けられた蓋部分47の表面50に配置されたスピーカ43から、操作部44が設けられた本体部分45の表面48に形成された凹部49の空間内に向けて校正信号を出力し、この校正信号を、凹部49の空間に臨む状態で配置された基準マイクロフォン41および補正対象マイクロフォン42で入力するようになっていたが、図6に示すように、折り畳み式の携帯電話機70において、操作部71が設けられた本体部分72の表面73に形成された凹部74と外部の空間とを連通する音道75を形成しておき、携帯電話機70を折り畳んだときに携帯電話機70の画面表示部側の面(蓋部分の表面)で凹部74の空間が塞がれた状態となり、この状態で音道75を介して感度調整用の校正信号(人間の音声等の環境音)が外部の空間から凹部74の空間内に導かれて基準マイクロフォン76および補正対象マイクロフォン77に入力されるようにしてもよい。この場合、音道75から見て基準マイクロフォン76および補正対象マイクロフォン77が対称位置にくるように、音道75を配置する。すなわち、音道75の凹部74の空間側の出口から、基準マイクロフォン76までの距離と、補正対象マイクロフォン77までの距離とが、等しくなるようにする。このようにすれば、音道75を介して外部の空間から凹部74の空間内に導かれた校正信号を、基準マイクロフォン76および補正対象マイクロフォン77に対し、同レベルの信号として同時に入力させることができる。
【0112】
さらに、図6に示すような本体部分72を貫通する貫通孔として形成された音道75に限らず、例えば、図7に示すように、携帯電話機や携帯情報端末(PDA)等の携帯機器80の本体部分81の操作部82が設けられた面83に、基準マイクロフォン84と補正対象マイクロフォン85とが対称位置にくるようにして溝状に形成された音道86としてもよく、あるいは図8に示すように、携帯機器90の本体部分91の操作部が設けられた面92に形成された凹部93に対応するように、蓋部分94(画面表示部が設けられている蓋部分であるか否かは問わない。)を貫通して形成された音道95としてもよく、要するに、携帯機器の本体部分の操作部を蓋部分で覆ったときに、蓋部分により塞がれた状態となる凹部の空間と、外部の空間とを連通することができる音道であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
以上のように、本発明のマイクロフォン感度調整方法およびそのシステムは、例えば、携帯電話機等の携帯機器や、カーナビゲーションシステム等の車載機器に搭載された複数のマイクロフォン間の感度を調整する場合等に用いるのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の一実施形態のマイクロフォン感度調整システムの全体構成図。
【図2】前記実施形態のマイクロフォン感度調整システムを搭載した携帯電話機の斜視図。
【図3】前記実施形態のマイクロフォン感度調整システムによる校正処理(キャリブレーション)の流れを示すフローチャートの図。
【図4】前記実施形態のマイクロフォン感度調整システムによる実働状態(携帯電話機の使用中の状態)での音響信号(発話音声や雑音等)の処理の流れを示すフローチャートの図。
【図5】本発明の第1の変形の形態を示すマイクロフォン感度調整システムの全体構成図。
【図6】本発明の第2の変形の形態を示す携帯電話機の一部の斜視図。
【図7】本発明の第3の変形の形態を示す携帯機器の一部の斜視図。
【図8】本発明の第4の変形の形態を示す携帯機器の一部の断面図。
【図9】2個の無指向性マイクロフォンを用いた指向特性制御の例を示す図。
【符号の説明】
【0115】
10,60 マイクロフォン感度調整システム
10A 校正用情報作成手段
13 フーリエ変換手段
14 スペクトル比算出手段
15 スペクトル比平均値算出手段
16 スペクトル比調整手段
17,61 フーリエ逆変換手段
18,62 出力補正手段
20 校正用情報記憶手段
21 スペクトル比平均値記憶手段
22,63 インパルス応答記憶手段
40,70 携帯電話機
41,76,84 基準マイクロフォン
42,77,85 補正対象マイクロフォン
43 スピーカ
44,71,82 操作部
45,72,81,91 本体部分
46 画面表示部
47,84,94 蓋部分
49,74,83,93 凹部
75,86,95 音道
80,90 携帯機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の指向特性を形成するために組み合わせて使用される複数のマイクロフォン間の感度を調整するマイクロフォン感度調整方法であって、
前記複数のマイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力し、このときの前記複数のマイクロフォンの各出力信号を用いて前記複数のマイクロフォンを同レベルの感度に調整するための校正用情報を作成しておき、
前記目的の指向特性を形成する際には、前記校正用情報を用いて前記複数のマイクロフォンのうちの少なくとも1つのマイクロフォンの出力信号を補正することを特徴とするマイクロフォン感度調整方法。
【請求項2】
前記校正用情報を求める際には、
前記複数のマイクロフォンのうちの1つのマクロフォンを感度調整の基準となる基準マイクロフォンとして選定し、この基準マイクロフォン以外のマイクロフォンを、前記基準マイクロフォンと同レベルの感度になるように出力信号を補正される補正対象マイクロフォンとし、
前記基準マイクロフォンおよび前記補正対象マイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力し、このときの前記基準マイクロフォンおよび前記補正対象マイクロフォンの各出力信号をそれぞれフーリエ変換し、
フーリエ変換して得られた前記基準マイクロフォンの出力信号のスペクトルと前記補正対象マイクロフォンの出力信号のスペクトルとの比を各周波数帯域毎に求め、
求めた各周波数帯域毎のスペクトル比をフーリエ逆変換して前記校正用情報としてのインパルス応答を求めておき、
前記目的の指向特性を形成する際には、前記校正用情報としての前記インパルス応答と前記補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行うことにより前記補正対象マイクロフォンの補正後の信号を求めることを特徴とする請求項1に記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項3】
前記インパルス応答を求める際には、
前記校正用情報として各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値を求め、求めた平均値と1との差分を各周波数帯域毎のスペクトル比からそれぞれ減じることにより各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値が1になるように調整した後、調整後の各周波数帯域毎のスペクトル比についてフーリエ逆変換を行い、
前記目的の指向特性を形成する際には、
前記インパルス応答と前記補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行った後、畳み込み演算を行って得られた信号に前記校正用情報としての各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値を乗じることにより前記補正対象マイクロフォンの補正後の信号を求める
ことを特徴とする請求項2に記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項4】
各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際には、複数回の平均値とすることを特徴とする請求項2または3に記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項5】
各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際には、前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて異常値を示すスペクトル比を補間修正することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項6】
各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際には、100Hz〜1kHzの範囲内の周波数帯域のスペクトルを対象とすることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項7】
操作部が設けられた本体部分と前記操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載された前記複数のマイクロフォン間の感度を調整する場合に、
前記本体部分の前記操作部が設けられた面に凹部を形成し、この凹部の空間に臨む状態で前記本体部分に前記複数のマイクロフォンを設けるとともに、前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆ったときに前記凹部と対向位置に配置される状態で前記蓋部分にスピーカを設けておき、
前記校正用情報を求める際には、
前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆った状態で、前記スピーカから感度調整用の校正信号を出力し、出力した校正信号を前記凹部の空間を経由して前記複数のマイクロフォンに入力させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項8】
前記携帯機器は、前記操作部が設けられた前記本体部分と、画面表示部が設けられた前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機であり、この携帯電話機を折り畳んだときに前記凹部と対向位置に配置される状態で前記蓋部分に前記スピーカを設けておき、
前記校正用情報を求める際には、
前記携帯電話機を折り畳んだ状態で、前記スピーカから感度調整用の校正信号を出力し、出力した校正信号を前記凹部の空間を経由して前記複数のマイクロフォンに入力させることを特徴とする請求項7に記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項9】
前記携帯機器は、前記本体部分と前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末であり、この携帯情報端末を折り畳んだときに前記凹部と対向位置に配置される状態で前記蓋部分に前記スピーカを設けておき、
前記校正用情報を求める際には、
前記携帯情報端末を折り畳んだ状態で、前記スピーカから感度調整用の校正信号を出力し、出力した校正信号を前記凹部の空間を経由して前記複数のマイクロフォンに入力させることを特徴とする請求項7に記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項10】
操作部が設けられた本体部分と前記操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載された前記複数のマイクロフォン間の感度を調整する場合に、
前記本体部分の前記操作部が設けられた面に凹部を形成し、この凹部の空間に臨む状態で前記本体部分に前記複数のマイクロフォンを設けるとともに、前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆ったときに前記蓋部分により塞がれた状態となる前記凹部の空間と外部の空間とを連通する音道を前記本体部分または前記蓋部分に形成しておき、
前記校正用情報を求める際には、
前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆った状態で、感度調整用の校正信号を前記外部の空間から前記音道を介して前記凹部の空間内に導いて前記複数のマイクロフォンに入力させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項11】
前記携帯機器は、前記操作部が設けられた前記本体部分と、画面表示部が設けられた前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機であり、この携帯電話機を折り畳んだときに前記蓋部分により塞がれた状態となる前記凹部の空間と前記外部の空間とを連通する状態で前記音道を前記本体部分に形成しておき、
前記校正用情報を求める際には、
前記携帯電話機を折り畳んで前記凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号を前記外部の空間から前記音道を介して前記凹部の空間内に導いて前記複数のマイクロフォンに入力させることを特徴とする請求項10に記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項12】
前記携帯機器は、前記本体部分と前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末であり、この携帯情報端末を折り畳んだときに前記蓋部分により塞がれた状態となる前記凹部の空間と前記外部の空間とを連通する状態で前記音道を前記本体部分または前記蓋部分に形成しておき、
前記校正用情報を求める際には、
前記携帯情報端末を折り畳んで前記凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号を前記外部の空間から前記音道を介して前記凹部の空間内に導いて前記複数のマイクロフォンに入力させることを特徴とする請求項10に記載のマイクロフォン感度調整方法。
【請求項13】
目的の指向特性を形成するために組み合わせて使用される複数のマイクロフォン間の感度を調整するマイクロフォン感度調整システムであって、
前記複数のマイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力したときの前記複数のマイクロフォンの各出力信号を用いて前記複数のマイクロフォンを同レベルの感度に調整するための校正用情報を作成する校正用情報作成手段と、
この校正用情報作成手段により作成された前記校正用情報を記憶する校正用情報記憶手段と、
この校正用情報記憶手段に記憶された前記校正用情報を用いて前記複数のマイクロフォンのうちの少なくとも1つのマイクロフォンの出力信号を補正する出力補正手段と
を備えたことを特徴とするマイクロフォン感度調整システム。
【請求項14】
前記校正用情報作成手段は、
前記複数のマイクロフォンのうちの感度調整の基準となる1つの基準マイクロフォンおよびこの基準マイクロフォンと同レベルの感度になるように出力信号を補正される補正対象マイクロフォンに感度調整用の同じ校正信号を入力したときの前記基準マイクロフォンおよび前記補正対象マイクロフォンの各出力信号をそれぞれフーリエ変換するフーリエ変換手段と、
このフーリエ変換手段により得られた前記基準マイクロフォンの出力信号のスペクトルと前記補正対象マイクロフォンの出力信号のスペクトルとの比を各周波数帯域毎に求めるスペクトル比算出手段と、
このスペクトル比算出手段により求めた各周波数帯域毎のスペクトル比をフーリエ逆変換して前記校正用情報としてのインパルス応答を求めるフーリエ逆変換手段とを含んで構成され、
前記校正用情報記憶手段は、前記フーリエ逆変換手段により得られた前記インパルス応答を記憶するインパルス応答記憶手段を含んで構成され、
前記出力補正手段は、前記インパルス応答記憶手段に記憶された前記校正用情報としての前記インパルス応答と前記補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行うことにより前記補正対象マイクロフォンの補正後の信号を求める構成とされている
ことを特徴とするマイクロフォン感度調整システム。
【請求項15】
前記校正用情報作成手段は、
前記スペクトル比算出手段により求めた各周波数帯域毎のスペクトル比について前記校正用情報としてこれらのスペクトル比の平均値を求めるスペクトル比平均値算出手段と、
前記スペクトル比平均値算出手段により求めた前記平均値と1との差分を各周波数帯域毎のスペクトル比からそれぞれ減じることにより各周波数帯域毎のスペクトル比の平均値が1になるように調整するスペクトル比調整手段とを含んで構成され、
前記校正用情報記憶手段は、前記スペクトル比平均値算出手段により求めた前記校正用情報としての前記平均値を記憶するスペクトル比平均値記憶手段を含んで構成され、
前記フーリエ逆変換手段は、前記スペクトル比調整手段による調整後の各周波数帯域毎のスペクトル比についてフーリエ逆変換を行う構成とされ、
前記出力補正手段は、前記インパルス応答記憶手段に記憶された前記校正用情報としての前記インパルス応答と前記補正対象マイクロフォンの出力信号とを用いて畳み込み演算を行った後、畳み込み演算を行って得られた信号に前記スペクトル比平均値記憶手段に記憶された前記校正用情報としての前記平均値を乗じる構成とされている
ことを特徴とする請求項14に記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項16】
前記スペクトル比算出手段は、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際に、複数回の平均値をとる構成とされていることを特徴とする請求項14または15に記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項17】
前記スペクトル比算出手段は、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際に、前後の周波数帯域のスペクトル比を用いて異常値を示すスペクトル比を補間修正する構成とされていることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項18】
前記スペクトル比算出手段は、各周波数帯域毎のスペクトル比を求める際に、100Hz〜1kHzの範囲内の周波数帯域のスペクトルを対象とする構成とされていることを特徴とする請求項14〜17のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項19】
前記複数のマイクロフォンは、操作部が設けられた本体部分と前記操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載され、
前記本体部分の前記操作部が設けられた面には凹部が形成され、この凹部の空間に臨む状態で前記本体部分に前記複数のマイクロフォンが設けられ、
前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆ったときに前記凹部と対向位置に配置される状態で前記蓋部分にスピーカが設けられ、
前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆った状態で、前記スピーカから感度調整用の校正信号が出力され、出力された校正信号が前記凹部の空間を経由して前記複数のマイクロフォンに入力される構成とされている
ことを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項20】
前記携帯機器は、前記操作部が設けられた前記本体部分と、画面表示部が設けられた前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機であり、
この携帯電話機を折り畳んだときに前記凹部と対向位置に配置される状態で前記蓋部分に前記スピーカが設けられ、
前記携帯電話機を折り畳んだ状態で、前記スピーカから感度調整用の校正信号が出力され、出力された校正信号が前記凹部の空間を経由して前記複数のマイクロフォンに入力される構成とされている
ことを特徴とする請求項19に記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項21】
前記携帯機器は、前記本体部分と前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末であり、
この携帯情報端末を折り畳んだときに前記凹部と対向位置に配置される状態で前記蓋部分に前記スピーカが設けられ、
前記携帯情報端末を折り畳んだ状態で、前記スピーカから感度調整用の校正信号が出力され、出力された校正信号が前記凹部の空間を経由して前記複数のマイクロフォンに入力される構成とされている
ことを特徴とする請求項19に記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項22】
前記複数のマイクロフォンは、操作部が設けられた本体部分と前記操作部を覆う少なくとも1つの蓋部分とを備えて構成される携帯機器に搭載され、
前記本体部分の前記操作部が設けられた面には凹部が形成され、この凹部の空間に臨む状態で前記本体部分に前記複数のマイクロフォンが設けられ、
前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆ったときに前記蓋部分により塞がれた状態となる前記凹部の空間と外部の空間とを連通する音道が前記本体部分または前記蓋部分に形成され、
前記本体部分の前記操作部を前記蓋部分で覆った状態で、感度調整用の校正信号が前記外部の空間から前記音道を介して前記凹部の空間内に導かれて前記複数のマイクロフォンに入力される構成とされている
ことを特徴とする請求項13〜18のいずれかに記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項23】
前記携帯機器は、前記操作部が設けられた前記本体部分と、画面表示部が設けられた前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯電話機であり、
この携帯電話機を折り畳んだときに前記蓋部分により塞がれた状態となる前記凹部の空間と前記外部の空間とを連通する状態で前記音道が前記本体部分に形成され、
前記携帯電話機を折り畳んで前記凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号が前記外部の空間から前記音道を介して前記凹部の空間内に導かれて前記複数のマイクロフォンに入力される構成とされている
ことを特徴とする請求項22に記載のマイクロフォン感度調整システム。
【請求項24】
前記携帯機器は、前記本体部分と前記蓋部分とを備えて構成される折り畳み式の携帯情報端末であり、
この携帯情報端末を折り畳んだときに前記蓋部分により塞がれた状態となる前記凹部の空間と前記外部の空間とを連通する状態で前記音道が前記本体部分または前記蓋部分に形成され、
前記携帯情報端末を折り畳んで前記凹部の空間を塞いだ状態で、感度調整用の校正信号が前記外部の空間から前記音道を介して前記凹部の空間内に導かれて前記複数のマイクロフォンに入力される構成とされている
ことを特徴とする請求項22に記載のマイクロフォン感度調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−129373(P2007−129373A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318931(P2005−318931)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】