説明

マイクロミキサー

【課題】溶融樹脂とガスを効率良く分散させて、ガスを溶融樹脂中へ急速かつ均一に溶解させるマイクロミキサーを提供する。
【解決手段】溶融樹脂とガスとを混合し、該ガスを前記溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサー20であって、溶融樹脂とガスのうちの一方が通過する微細流路23bと、溶融樹脂とガスのうちの他方が通過する導入路22bと、微細流路23bと導入路22bとが合流する第1合流領域25と、第1合流領域25で合流した溶融樹脂とガスとの混合を促進する混合促進領域24とを有し、混合促進領域24は、合流後の溶融樹脂とガスとの混合物がそれぞれ通過する複数の第1微細孔24aと、複数の第1微細孔を通過した混合物が合流する第2合流領域26と、第2合流領域26で合流した混合物が通過する微細吹出孔21cとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサーに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡樹脂は、気泡構造により軽量化が図れる他、柔軟性、緩衝性、断熱性、吸音性などに優れており、食品容器、梱包・包装、自動車成形材料、断熱材など幅広い分野で使用されている。
この発泡樹脂は、通常、化学発泡剤または物理発泡剤を使用して製造される。発泡樹脂の製造原理は、いずれの発泡剤を使用してもほぼ同じであり、物理的に導入したガスあるいは熱分解によって生じたガスを樹脂中へ溶解させ、次いで、条件を変化させて気泡核を発生させ、気泡を成長させ、最後に冷却などにより気泡を安定化させるというものである。
【0003】
化学発泡剤を使用する発泡樹脂の製造方法は、現在も主流の方法であるが、化学発泡剤の種類によっては、熱分解残渣物が製品中に混入する恐れや、アンモニア、窒素酸化物、ホルムアルデヒドなどの有害ガスが発生することなどの欠点を有している。
物理発泡剤は、環境上の理由から大きく変遷しており、以前は、特定フロン(CFC類:クロロフルオロカーボン)や指定フロン(HCFC類:ハイドロクロロフルオロカーボン)が使われていたが、オゾン破壊係数が高いため既に全廃されている。現在一部で使用されているHFC類(ハイドロフルオロカーボン)は、オゾン破壊係数能力がないため規制はないが、地球温暖化係数が高いため排出削減対象になっている。現在では、物理発泡剤として炭化水素系ガスが最も多く使用されているが、可燃性であるため取扱いに注意を要する。炭化水素系ガスも地球温暖化係数が3〜4程度と高いため、環境に配慮して、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを物理発泡剤として使用する方策が検討されている。
【0004】
この窒素や二酸化炭素などの不活性ガスは、樹脂となじみにくく、樹脂中への溶解度が低いため、ガスを樹脂中へ溶解させることが困難であったが、特許文献1で提案されるように、超臨界流体を用いることにより、超微細な発泡樹脂を製造することが可能となっている。
しかしながら、特許文献1に記載されているように、溶融押出機を排出されたシートに、超臨界流体を溶解させる方法は、装置が非常に大型化するとともに、溶解時間が長く、工業的に連続的に製造するには問題があった。
また、溶融押出機の中に超臨界流体を導入して樹脂と溶解混合する方法も記載されているが、実際に工業的に利用する場合、不活性ガスが逆流する等、様々な問題がある。
特に顕著な問題は、樹脂中に溶解しているガスと樹脂中に溶解されずに分散されているガスが混在していることであり、このため発泡樹脂を安定的に製造することが困難となっている。
溶融樹脂はガスを溶解する程、粘度が低下して可塑性が増加するため、溶解ガス量が均一でない場合、流動が不安定となる。溶融押出機の中では、溶解ガス量が多い樹脂や未溶解分散ガスが前方へ送り出されやすくなり、混練が不十分になる。また、射出成形やブロー成形においては、計量後、成形用金型に送られるが、ガスの溶解と分散が不安定であるため、計量も不安定になる。
これらの技術課題を解決するためには、溶融樹脂と不活性ガスを均一に溶解混合するための特殊で高価な溶融押出機が必要となり、実用上の大きな課題となっている。
【0005】
また、特許文献2では、不活性ガスと溶融樹脂を充分に混ぜ合わせることが可能な射出成形機を提供することを目的とし、溶融押出機の先端に往復移動可能なピストンとサブシリンダを設置し、ピストンの往復移動により溶融樹脂とガスを充分混ぜ合わせ、さらに複数の貫通孔を形成したミキシングヘッドを設置して、攪拌性能の向上を図っている。
特許文献2の射出成形機は、主に、樹脂を加熱溶融供給するためのメインシリンダ部、不活性ガスの供給部、溶融樹脂と不活性ガスを混合するための混合筒・サブシリンダ部、溶融樹脂と不活性ガスの混合物を射出する射出ノズル部で構成されている。
特許文献2によれば、樹脂はメインシリンダ部によって加熱溶融供給され、混合筒へ導入される。一方、不活性ガスは、微細孔が多数形成された多孔質焼結体を介して、混合筒へ導入される。混合筒とサブシリンダ部は、複数の貫通孔が形成されたスタティックミキシングヘッドを介して接続されており、混合筒へ導入された溶融樹脂と不活性ガスは、サブシリンダ部の往復移動可能なピストンによって、サブシリンダ部と混合筒を往復し、この過程で混合される。さらに、射出ノズル部には多貫通孔ブロックが備えられており、多貫通孔ブロックを通すことによって、せん断熱発生による混合流体の温度上昇および気泡の微細化を図っている。また、混合筒内では、溶融樹脂と不活性ガスは、ランダムな状態になり、複数の貫通孔を有するスタティックミキシングヘッドを往復流動する際にも、ランダムな状態で流動する。即ち、複数の貫通孔のうち、溶融樹脂のみが流動する孔や不活性ガスのみが流動する孔が存在することになる。このランダムな状態を、ピストン往復移運動とサブシリンダ空間によって、マクロ流動させることにより、次第に均一な流動状態になり、混合されていくものと考えられる。射出ノズル部では、多貫通孔ブロックや先細りのノズルを混合流体が流動するため、ここでも一定の混合効果が得られるものと考えられる。しかしながら、特許文献2の構成では、混合を促進するために、ピストン駆動手段やサブシリンダを設けているので、設備の大型化やコスト高になる。
【0006】
さらに、特許文献3には、ガスを高粘度流体に分散させる発泡装置として、数メートル以上の分散用管路ユニットを使用し、さらにスタティックミキサーやパワーミキサーと併用する装置が提案されている。特許文献3には、管路の径は明記されていないが、ガスと高粘度流体を加圧状態で分散用管路を通過することにより、ガスがせん断力によって微細化され、高粘度流体内に分散されることが記述されている。
しかしながら、特許文献3では、数メートル以上の分散用管路ユニットを使用していることから設備が大型になり、しかも管路が長くなると、それに比例して圧力損失も大きくなり、供給エネルギーが過剰になる恐れや、ガスと高粘度流体の粘度差が非常に大きいために流れ方向にムラが生じガスが均一に分散されない恐れがある。
【0007】
またさらに、特許文献4には、流動性材料とガスを交互に送り出し、高圧に加圧して、管路内で流動性材料とガスを混合する方法及び装置が開示され、この構成によれば、高圧管路よりも狭い通路を有する狭路手段を通過させることにより一層緻密に混合されるとされている。この特許文献4において、高圧管路は、内径10mm、長さ2mであり、狭小手段は、高圧配管内に装着された鋼線メッシュ(線径0.5〜0.3mm、1mm角程度のメッシュ)である。この特許文献4の構成において、高圧管路内での混合は、加圧圧送されることにより、液体樹脂とガスの間に混合作用が生じ、分断されていたガスが液体樹脂中に溶け込んでいくことによるものとされており、狭路手段による混合は、それをさらに緻密化させると記述されている。しかしながら、特許文献4の構成では、液体樹脂とガスを交互に送りだしても、液体樹脂とガスの粘度差が大きいため、加圧手段や管路内で樹脂同士あるいはガス同士が合一する恐れがあり、また、流れ方向にムラが生じる恐れがあることから、必ずしも微細なガスを均一に分散させることは容易ではなかった。
【0008】
また、特許文献5では、ミクロンオーダーの微細な通路を有する樹脂用エレメントおよび空気用エレメントを交互に多段上に積層させた分散部を構成し、溶融樹脂および空気を夫々通過させることにより、規則正しく分散させることが開示されている。しかし、この分散部では、溶融樹脂と空気は直接接触することはなく、規則正しく分散された状態で分散部から排出され、分散部から排出された後に始めて溶融樹脂と空気が接触・混合される。分散部から直接成形機ノズルに供給、または、分散部と成形機ノズルの間にスタティックミキサーを有する混合部を設けて、均質な発泡樹脂を得ようとしている。
しかしながら、分散部から直接成形機ノズルに供給するだけでは十分な混合が確保できないという問題があり、十分な混合を確保するためにはスタティックミキサーを設けるなど装置が複雑になるという問題があった。
【0009】
また、特許文献6〜7では、2液以上の流体の迅速かつ均一な混合を達成させるために、マイクロデバイスが提案されている。例えば、特許文献6で示されているマイクロデバイスでは、2つの流体をそれぞれ分割させ、中心軸の一点で合流させるように流路が構成され、合流後の混合部における排出チャンネルは、相当径1mm以下の単純な流路となっている。また、特許文献7で示されているマイクロデバイスでは、それぞれ分割させた2以上の流体を、合流させるように工夫している。
しかしながら、このようなマイクロデバイスを用いて、溶融樹脂とガスの混合を行おうとする場合、粘度の低いガスのみが優先的に通過してしまい、充分な混合が達成できない。すなわち、混合させようとする2つの流体の流量や粘度に大きな差が無ければ、このようなマイクロデバイスを用いて、迅速かつ均一な混合が達成されるが、溶融樹脂とガスのような場合、溶融樹脂に比べて、ガスの体積流量は非常に大きく、ガスの粘度は非常に低い。このため、ガスのみが優先的に通過してしまい、充分な混合が達成できず、溶融樹脂中へのガスの溶解は不十分になる。
【0010】
また、特許文献8では、海島構造のマイクロデバイスを提案しているが、高流速条件や流量比が同一な条件で運転しない限り、ノズルによって構造的に島状に分散させた流体が、もう一方の流体(海)の中で、合一する恐れがあり、溶融樹脂中へのガスの溶解が不十分になる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2626676号(特表平6−506724)
【特許文献2】特許第3339756号(特開平8−207094)
【特許文献3】特許第3851895号(特開2004−1571)
【特許文献4】特許第3685531号(特開平9−94450)
【特許文献5】特開2007−125704
【特許文献6】特許第4339163号(特開2005−288254)
【特許文献7】特開2010−428
【特許文献8】特開2006−231255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のように、従来の物理発泡装置は、溶融樹脂とガスを均一に溶解混合させるために、特殊な溶融押出機や大型の混合装置が必要であったため、コスト高となり、実用上の大きな課題となっていた。また、従来のマイクロデバイスでは、溶融樹脂とガスのように粘度差の大きな流体同士を混合させることが困難であり、短時間で効率良くガスを溶融樹脂中に均一に分散または溶解させるような物理発泡装置に適用することができなかった。
【0013】
そこで、本発明は、ガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることができる小型で簡単な構成のマイクロミキサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上の目的を達成するために本発明に係るマイクロミキサーは、溶融樹脂とガスとを混合し、該ガスを前記溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサーであって、前記溶融樹脂と前記ガスのうちの一方が通過する微細流路と、前記溶融樹脂と前記ガスのうちの他方が通過する導入路と、前記微細流路と前記導入路とが合流する第1合流領域と、前記第1合流領域で合流した溶融樹脂とガスとの混合を促進する混合促進領域とを有し、該混合促進領域は、合流後の溶融樹脂とガスとの混合物がそれぞれ通過する複数の第1微細孔と、該複数の第1微細孔を通過した混合物が合流する第2合流領域と、第2合流領域で合流した混合物が通過する微細吹出孔とを含むことを特徴とする。
【0015】
以上のように構成された本発明に係るマイクロミキサーによれば、溶融樹脂とガスとを第1合流領域で合流させた後、合流後の溶融樹脂とガスとの混合物を複数の第1微細孔に分割してさらに第2合流領域で合流させるという簡単な構成でガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることができる。
【0016】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記第1合流領域において、前記溶融樹脂の吹き出し方向と前記ガスの吹き出し方向とが異なる。
【0017】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記第2合流領域において複数の第2微細孔を有する混合促進板を有し、前記第2微細孔の中心軸と前記第1微細孔の中心軸とがずれている。
【0018】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記第1合流領域は、複数に分割されており、その分割された各合流領域にそれぞれ前記微細流路が対応するように設けられている。
【0019】
本発明に係るマイクロミキサーのある形態では、前記第1合流領域が分割された複数の合流領域は、前記導入路を中心として放射状に形成されて、前記中心に近い一端部が前記導入孔に接続され、前記中心から離れた他端部に前記微細流路がそれぞれ接続されており、前記複数の合流領域における前記一端部と前記他端部の間に前記第1微細孔がそれぞれ接続されている。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、ガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることができる小型で簡単な構成のマイクロミキサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る実施形態のマイクロミキサーを用いて構成した成形装置の断面図である。
【図2】実施形態1のマイクロミキサーの断面図である。
【図3】実施形態2のマイクロミキサーの断面図である。
【図4】実施形態3のマイクロミキサーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施形態のマイクロミキサーについて説明する。
実施形態1.
図1は、本発明に係るマイクロミキサーを用いて構成した実施形態の成形装置の断面図である。
実施形態1の成形装置は、マイクロミキサー20を挟んで溶融樹脂供給部200と成形部300とが配置されてなる。成形部300は、用途に応じて種々の成形方法が選択されるが、例えば、押出、射出、ブロー成形などから選択される。溶融樹脂供給部200も用途に応じて種々の供給方法が選択される。図1では、押出溶融機を例示しているが、押出溶融機にギアポンプを備えたものや、攪拌溶融槽にギアポンプまたはスクリューポンプを備えたものなどから選択される。溶融樹脂供給部200は、樹脂投入口220を備えた筒体210と筒体210の空洞内に挿入されたスクリュー230とからなり、筒体210の空洞の内壁とスクリュー230の間に樹脂搬送部240が形成されて溶融樹脂がスクリュー230の回転によって搬送される。樹脂搬送部240の先端に樹脂供給孔250が設けられて、溶融樹脂がマイクロミキサー20に供給される。
本明細書において、溶融樹脂とは、流動性のある樹脂を指し、常温でも流動性のある樹脂や、常温で固体状態であっても、高温では溶融して、流動性が生じ、ポンプなどで移送可能な樹脂を指す。また、樹脂は、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーであってもよく、硬化前の熱硬化性樹脂や熱可塑性エラストマーの原料樹脂であっても良い。
【0023】
実施形態1.
図2は、本発明に係る実施形態1のマイクロミキサー20の断面図である。
【0024】
実施形態1のマイクロミキサー20は、溶融樹脂を分割して合流させるマイクロミキサーであって、樹脂搬送路21bの途中に樹脂分割部23が設けられる。樹脂分割部23は、板状部材23aに複数の樹脂用微細流路23bが形成されることにより構成されており、樹脂搬送路21bを搬送される溶融樹脂が複数の樹脂用微細流路23bに分かれて搬送されて樹脂吐出口から吐出される。このようにすると、溶融樹脂は、樹脂用微細流路23bによって複数に分割縮流させることにより、見かけ上の断面積が減少し、線速度が増加する。また、板状部材23aにおいて樹脂用微細流路23bの周りが樹脂吐出口方向に円柱形状に突出しており、その円柱突起23cの中心にそれぞれ樹脂用微細流路23bが形成されている。
【0025】
また、樹脂吐出口が設けられた円柱突起23cの先端面から離れた位置にガスが混合された溶融樹脂が通過する複数の微細孔24aが設けられた混合促進板24が設けられる。円柱突起23cは、互いに分離して設けられている。これにより、円柱突起23cの先端面と混合促進板24間の空間によって第1合流領域25が構成される。そして、第1合流領域25に連通するガス導入路22bが設けられる。以上のような構成により、ガス導入路22bから導入されるガスは、広くなった第1合流領域25に充満させることによって、線速度が減少する。
尚、図2(b)の平面図には、樹脂搬送路21b内に設けられた樹脂分割部23を混合促進板24側から見た様子を示している。
図2(a)の断面図では、図を見やすくするため、3つの樹脂用微細流路23b(円柱突起23c)のみを描いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、通常は、図2(b)に示すようにより多くの樹脂用微細流路23b(円柱突起23c)が設けられる。
樹脂用微細流路23bおよび微細孔24aの径は、溶融樹脂の粘度や吐出圧及びガスの流量や吐出圧などによって考慮して設定されるが、例えば、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0026】
さらに、実施形態1のマイクロミキサー20は、複数の微細孔24aに分かれて通過した溶融樹脂(ガスと混合された溶融樹脂)が再度合流する第2合流領域26を有し、第2合流領域26の先端部が細く絞られて樹脂射出孔21cに繋がっている。
【0027】
以上のように構成されたマイクロミキサー20において、溶融樹脂供給部200から導入された溶融樹脂は、複数の樹脂用微細流路23bに分割されて高速に搬送されて吐出口から粒状に噴き出されて、ガス拡流部22aを介して第1合流領域25に充満されて線速度が減少したガスと混合される。
【0028】
実施形態1のマイクロミキサー20では、樹脂用微細流路23bから噴き出された溶融樹脂及び充満されたガスを障害物である混合促進板24に衝突させることによってガスとの混合が促進される。すなわち、粘度の低いガスは、優先的に先方へ進行していく性質があるが、混合促進板24にガスが衝突し、流れが変化して、バックミキシングされ、広く分散混合させることができる。また、複数の樹脂用微細流路23bから噴き出された溶融樹脂は、樹脂の噴き出し方向とは異なる方向に流れが変化したガスと効率良く混合される。
【0029】
第1合流領域25でガスと合流混合された溶融樹脂は、複数の微細孔24aに分割された後、再度第2合流領域26で合流して混合が促進される。すなわち、複数の微細孔24aから分割して噴出された溶融樹脂は細く絞られた第2合流領域26の先端部が障害物となって流れが変化した溶融樹脂が合流することにより混合が促進される。
【0030】
以上のように、実施形態1のマイクロミキサー20では、樹脂用微細流路23bから噴出させた溶融樹脂を広いバルク空間である第1合流領域25でガスと混合して、その第1合流領域25において障害物である混合促進板24によって溶融樹脂の流れを変化させることによりに混合を促進し、再び溶融樹脂を複数の微細孔24aに分割して第2合流領域26で合流させるという簡単な構成により、ガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることが可能になる。
【0031】
以上の実施形態1のマイクロミキサーにおいて、ガス導入路22bは、導入されたガスが円柱突起23cに衝突するような位置に設けられることが好ましい。このように、ガス導入路22bのガス吹出口を樹脂吐出口が設けられた円柱突起23cの先端面より後方にすることにより、ノズルによって分割された溶融樹脂の合一を防ぐことが可能となる。
【0032】
以上の説明では、円形の樹脂用微細流路23bを形成した例で示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図2(c)に示すように、幅の狭い隙間を同心円状に形成するようにして樹脂用微細流路23b’を設けるようにしても良いし、図2(d)に示すように、幅の狭い隙間を互いに平行に形成するようにして樹脂用微細流路23b’’を設けるようにしてもよい。
尚、図2(c)及び図2(d)には図示していないが、樹脂用微細流路23b’及び樹脂用微細流路23b’’の周囲を突出させて、その突出部の間の空間をガス拡流部の一部とし、ガス拡流部に通じるガス導入路を、導入されたガスが突出部に衝突するような位置に設けることが好ましいことは言うまでもない。
【0033】
実施形態2.
本発明に係る実施形態2のマイクロミキサー30は、実施形態1のマイクロミキサー20において、図3に示すように、混合促進板24と樹脂射出孔21cの間に、複数の微細孔27aが形成された混合促進板27を設けた以外は実施形態1と同様に構成されている。このように構成された実施形態2のマイクロミキサー30において、第2合流領域が前段の第2合流領域26aと後段の第2合流領域26bに分離されて2段階で混合が促進される。
混合促進板27の微細孔27aの径は、微細孔24aと同様に、例えば、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0034】
以上のように構成された実施形態2のマイクロミキサー30では、第2合流領域が前段の第2合流領域26aと後段の第2合流領域26bに分離されて2段階で混合が促進されるので、より効果的にガスを溶融樹脂中へ均一に溶解させることが可能になる。
さらに、混合促進板を複数設置することにより、多段階で混合を促進させることも可能になる。
【0035】
実施形態3.
図4は、本発明に係る実施形態3のマイクロミキサー40の断面図であり、(a)は溶融樹脂が流れる方向と平行な縦断面であり、(b)は、(a)のA−A’線についての横断面図であり、(c)は、(a)のB−B’線についての横断面図である。
尚、実施形態3のマイクロミキサー40を用いて成形装置を構成する場合には、マイクロミキサー40は、実施形態1と同様、溶融樹脂供給部200と成形部300との間に配置される。その際、溶融樹脂供給部200と成形部300は実施形態1と同様に構成される。
【0036】
実施形態3のマイクロミキサー40において、樹脂導入孔31bに連通する複数の微小合流領域35が樹脂導入孔31bの中心軸を中心として放射状に設けられる。この微小合流領域35は、例えば、樹脂導入孔31bの開口端面に対向して接するように配置された板状部材33aの対向面に放射状に形成された溝によって構成される。また、微小合流領域35にはそれぞれ連通するガス用微細流路33と微細孔36が設けられる。ガス用微細流路33は微小合流領域35において樹脂導入孔31bから離れた端部に設けられ、微細孔36は、微小合流領域35において略中央部に設けられる。例えば、ガス用微細流路33は、板状部材33aに形成された溝の底面から反対側の主面に貫通するように形成された微小径の貫通孔によって構成され、微細孔36は溝底面の中央部から反対側の主面に貫通するように形成された微小径の貫通孔によって構成される。
微小合流領域35、ガス用微細流路33、微細孔36の径は、溶融樹脂の粘度や吐出圧及びガスの流量や吐出圧などによって考慮して設定されるが、例えば、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0037】
ガス用微細流路33は、ガス拡流部32aに繋がっており、ガス拡流部32aはガス導入路32bに繋がっている。ガス拡流部32aは、例えば、ガス導入路32bの開口端面と該開口端面から離れて対向するように設けられた部材との間に形成された空間によって構成され、その空間にガス用微細流路33が通じている。このガス導入路32bとガス拡流部32aとによってガス供給部32が構成されている。
一方、微細孔36は、板状部材33aにおける上記対向面とは反対側に設けられた第2合流領域37で合流し、その第2合流領域37が徐々に絞られて樹脂射出孔31cに通じている。尚、第2合流領域37を形成するための部材は、板状部材33aと一体で構成されていても良いし、別体で構成されていても良い。
また、第2合流領域37内に複数の微細孔が形成された混合促進板を設置して、多段階で混合を促進させることも可能である。
【0038】
以上のように構成された実施形態3のマイクロミキサーにおいて、溶融樹脂供給部200から導入された溶融樹脂は、板状部材33aの対向面に衝突し、その対向面に形成された溝によって構成された複数の微小合流領域35に分割されて放射状に搬送される。一方、ガス導入路32bから導入されたガスは、ガス拡流部32aに沿って放射状に拡がって板状部材33aに形成されたガス用微細流路33を介して微小合流領域35に注入されて溶融樹脂と衝突合流される。
【0039】
微小合流領域35でガスと混合された溶融樹脂は、複数の微細孔36に分割された後、第2合流領域37で合流することにより混合が促進される。
すなわち、実施形態1の第2合流領域と同様に、複数の微細孔36から分割して噴出された溶融樹脂は細く絞られた第2合流領域37の細く絞られた先端部が障害物となって流れが変化した溶融樹脂が合流することになるので混合が促進される。また、このとき微細孔36を通過した溶融樹脂は、第2合流領域37で拡流されることにより、粘度が低く、流速が速いガスとバックミキシングが行なわれ、次いで、縮流化されることによりさらに混合が促進される。
【0040】
第2合流領域37でガスとの混合が促進された溶融樹脂は、樹脂射出孔31cから排出される。
【0041】
以上のように構成された実施形態3のマイクロミキサー40では、ガスと合流した後の溶融樹脂を複数の微細孔36から分割して噴出させて第2合流領域37において混合を促進させるという簡単な構成により、ガスを溶融樹脂中へ短時間で均一に溶解させることが可能になる。
【0042】
また、実施形態3のマイクロミキサーでは、溶融樹脂を板状部材33aの対向面に衝突させて複数の微小合流領域35に分割して搬送し、ガス用微細流路33から導入されたガスと微小合流領域35において衝突合流させている。これにより、微小合流領域35内の合流時においても混合を良好に行うことができ、良好な混合状態の混合物を第2合流領域37においてさらに混合を促進させるので、ガスを溶融樹脂中へ短時間でより均一に溶解させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように本発明によれば、溶融樹脂中への溶解度が非常に低いガスだけでなく、溶融樹脂中への溶解度が高く、従来から使用されている炭化水素系ガスにも適用することが可能な汎用性のあるマイクロミキサーを提供することができる。
また、溶融樹脂とガスを均一に溶解混合させるための高価で特殊な溶融押出機を必要とせずに、安価で汎用の溶融押出機に、本発明のマイクロミキサーを取り付けることにより、発泡樹脂を安価に製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
20,30,40 マイクロミキサー
21b 樹脂搬送路
21c,31c 樹脂射出孔
22a,32a ガス拡流部
22b,32b ガス導入路
23 樹脂分割部
23b 23b’,23b’’ 樹脂用微細流路
23c 円柱突起
24 混合促進板
24a,36 微細孔
25 第1合流領域
26 第2合流領域
26a 前段の第2合流領域
26b 後段の第2合流領域
27 混合促進板
27a 微細孔
31b 樹脂導入孔
33 ガス用微細流路
33a 板状部材
35 微小合流領域
37 第2合流領域
200 溶融樹脂供給部
210 筒体
220 樹脂投入口
230 スクリュー
240 樹脂搬送部
250 樹脂供給孔
300 成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂とガスとを混合し、該ガスを前記溶融樹脂中に分散または溶解させるマイクロミキサーであって、
前記溶融樹脂と前記ガスのうちの一方が通過する微細流路と、
前記溶融樹脂と前記ガスのうちの他方が通過する導入路と、
前記微細流路と前記導入路とが合流する第1合流領域と、
前記第1合流領域で合流した溶融樹脂とガスとの混合を促進する混合促進領域とを有し、
該混合促進領域は、
合流後の溶融樹脂とガスとの混合物がそれぞれ通過する複数の第1微細孔と、該複数の第1微細孔を通過した混合物が合流する第2合流領域と、第2合流領域で合流した混合物が通過する微細吹出孔とを含むことを特徴とするマイクロミキサー。
【請求項2】
前記第1合流領域において、前記溶融樹脂の吹き出し方向と前記ガスの吹き出し方向とが異なる請求項1に記載のマイクロミキサー。
【請求項3】
前記第2合流領域において複数の第2微細孔を有する混合促進板を有し、前記第2微細孔の中心軸と前記第1微細孔の中心軸とがずれている請求項1又は2に記載のマイクロミキサー。
【請求項4】
前記第1合流領域は、複数に分割されており、その分割された各合流領域にそれぞれ前記微細流路が対応するように設けられている請求項1又は2に記載のマイクロミキサー。
【請求項5】
前記第1合流領域が分割された複数の合流領域は、前記導入路を中心として放射状に形成されて、前記中心に近い一端部が前記導入孔に接続され、前記中心から離れた他端部に前記微細流路がそれぞれ接続されており、前記複数の合流領域における前記一端部と前記他端部の間に前記第1微細孔がそれぞれ接続されている請求項4記載のマイクロミキサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−254581(P2012−254581A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129381(P2011−129381)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】