説明

マイクロメートル又はナノメートルの規模で構成された基板を得るための装置及び方法

物を得るべく、空間的に構成されたマイクロメートル、ナノメートル又はこれら両方の規模の局所的に粗い、且つ、基板によって形成される表面を提供するための方法。当該方法は予め決められた領域にて粗い基板を平らにするか、滑らかにするか、又はこれら両方を行う工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型成形のプロセスの結果として基板に形成された、マイクロメートル及び/又はナノメートルの、モチーフ(模様)及び/又は構造によって形成される、マイクロメートル及びナノメートルの規模で空間的に構成された形態を得るための装置及び方法に関する。
適用可能な分野は、例えば、光学装置、高密度の情報を有するラベルを含む情報記憶装置、センサ等である。
【背景技術】
【0002】
現在、多くのミクロ及びナノ製造の作業は、材料の表面の型成形に基づいている。
サブマイクロメートル又はナノメートルの処理を有する多くの工業生産作業は、光子、電子または他の粒子(通常イオン)に基づくリソグラフィー(描画)を使用する。
その後の作業で、基板が作られている材料を取り除くか、または別の材料を堆積させることによって、マスクのテンプレート(型)を基板に転写することができるように、リソグラフィーにおける重要な工程の1つは、薄膜を基板に堆積させ、そこにコンタクトマスクを生成させることを伴う。
【0003】
入射線の散乱及びその結果としての空間分解能の低下を防止するために、当該薄膜は、制限された表面の粗さを有していなければならない。
細部を製造するためのサブマイクロメートル又はナノメートルの仕事において、典型的で、知られているリソグラフィーの作業は、粗さの低い膜を媒体の上に堆積させて、次に対応する媒体と共に、選択されたテンプレートが与えられたマスクを通して、電子、光子またはイオンなどの高エネルギー粒子のビームに膜を選択的に曝すことにある。
【0004】
他のタイプのリソグラフィーは、粒子ビームの使用に基づいている。
そのような粒子ビームは、膜の曝されている領域の化学構造を変化させ、且つ、曝されていない領域をそのまま残す。
基板と膜を現像液に浸すことによって、エネルギービームに曝された膜の領域、又はその代わりに曝されていない部分が除去され、かかるマスクに写されたテンプレート、又は、対応するネガ(陰画)を複製する。
【0005】
リソグラフィーの作業で得ることができる印刷の分解能は、膜をエッチングするのに使用される粒子の波長、前記膜の特性、および現像作業によって制限される。
イオンか電子のビームに基づくリソグラフィーの方法は、高い空間分解能(数十ナノメートル)を許容するが、シリアルな方法であり、言い換えれば、モチーフが、粒子又は光子のビームによって1つずつ書かれる。
【0006】
これらのテクニックは、粒子のビームの走査速度によって制限され、それ故、大規模な処理及び大量生産にほとんど適さず、そして、いかなる場合でも現像工程を必要とする。
挙げられた欠点を取り除くべく、並列であると同時に、サブマイクロメートル及びナノメートルの寸法の細部を簡単且つ安価に膜に製造することを許容するという要件を有する、代替のリソグラフィーの技術が開発されている。
【0007】
一例が、S.Y.Chouによる米国特許5,772,905によって与えられている。これが開示及び提案するリソグラフィーの方法は、従来のリソグラフィー技術と、1ミリメートルのオーダーの分解能を有する既知のそれほど高価でない方法とを結合し、熱可塑性の重合体のナノメートル又はサブマイクロメートルの規模のインプリンティング(ナノインプリンティング)を提供する。
【0008】
かかる米国特許は、安価であるが、エネルギービーム又は粒子ビームの使用を放棄した高分解能のリソグラフィーの取り組みを開示している。
かかるナノインプリンティングは、硬い媒体上に配置された重合体の膜に、適当に形成された型を配置し、そして、媒体の適当な加熱を任意に伴いながら圧力を付与することを含む。
インプリンティングは、型の凹所及び浮き彫りの部分にそれぞれ対応する、一連の浮き彫りの部分及び凹所を膜に生成する。
【0009】
ナノインプリンティングでは、膜の粗さは、この方法で得ることができる分解能に影響を与える。かかるナノインプリンティングの発展は、例えば、S.Y.Chouによって米国特許6,518,189で開示され、重合体の型成形の結果として、凹所の膜の部分が、その後の現像によって取り除かれ、型の凹所に一致する膜のテンプレートが基板上に得られることを含む。
【0010】
例えば、H.H.Leeによって米国特許6,818,139で開示されたナノインプリンティングの一層の発展は、重合体の層のインプリントをより簡単にするように、溶剤による重合体の前処理を提供する。
例えば、J.H.Jeongによって米国特許出願20040192041で開示されたナノインプリンティングの一層の発展は、インプリンティング工程の間、紫外線による処理を提供する。この照射は、インプリントされる全体の領域に広げられ、または空間的に局所化させることができる。
【0011】
例えば、可能性があるナノインプリンティングの代替手段は、M.Yasuhikoによって米国特許6,342,178で開示され、レプリカモールド作業に関連する。レプリカ作業では、重合体又は他の材料が溶かされた溶液が型に堆積され、溶媒の蒸発が終了するとすぐに重合体は硬化して型の形状をなす。
マイクロメートル又はナノメートルの規模の製造に関連する他の特許、例えば、米国特許6,375,870(N.J.Visovsky等)は、知られているレプリカ成形法にて基板にナノメートルのモチーフを型成形することによって、形態学的に構成されている薄膜を媒体に提供することを含む。
【0012】
他の作業、例えば、M.Cavallini等によって国際特許出願PCTWO2005078521で開示されたようなものは、その後の現像によってマイクロスケール及び/又はナノスケールで空間的に定義された化学的な構造を得る、媒体中に材料を分散させることによって得られる混合物の膜、例えば、重合体の膜の型成形を提供する。
引用した特許で言及した、知られている解決策の最も大きい不利な点及び欠点は、インプリンティング工程の後に現像工程を実行する必要があることに起因している。かかる現像工程は、少なくとも1つの追加工程を伴い、化学試薬、及び/又は、照射システムの使用を必要とする。
【0013】
引用した特許で言及した、知られている解決策の他の不利な点は、ナノメートルで構成されたモチーフが型自体にエッチングされなければいけないので、作業自体に関連する。
【特許文献1】米国特許5,772,905号
【特許文献2】米国特許6,518,189号
【特許文献3】米国特許6,818,139号明細書
【特許文献4】米国特許出願20040192041号
【特許文献5】米国特許6,342,178号明細書
【特許文献6】米国特許6,375,870号明細書
【特許文献7】国際公開PCTWO2005078521号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の狙いは、上で引用した背景技術の欠点を克服することである。
1つの目的は、以下に記載される方法によって得られることを特徴とした、ナノメートル及びマイクロメートルの寸法の空間的に構成されたモデル又はパターン(模様)を基板の表面に得ることである。
別の目的は、記載された方法によって得られることを特徴とした、光学的に読込可能なメモリ要素を、光学的及び/又は分光学的な特性を有する材料によって規定されている基板に得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
サブマイクロメートル又はナノメートルの作業を伴う工業生産のために挙げられた全ての方法は、モチーフの直接の製造又は型成形によって装置及び/又は物品を提供し、そして、低い表面の粗さを有する薄膜を使用する。
本発明によれば、基板の表面のナノメートル及びマイクロメートルの寸法の粗いモチーフによって規定される物を得るための製造方法において、前記基板の限定された領域において前記基板の表面の粗さを減少させる工程を備えることを特徴とする製造方法が提供される。
本発明は、間接的に記述された方法で構成された型又はパターンを媒体に提供するための装置と方法に関し、そして特に、その形態がマイクロメートル及びナノメートルのスケールで空間的に構造化され、且つ、基板の領域を滑らかにするか又は平らにする作業の結果として粗い基板に形成された、マイクロメートル及び/又はナノメートルのサイズのモチーフ及び/又は構造によって規定される表面を提供する方法に関する。
【0016】
装置は、異なった粗さを有する空間的に構成された領域を含む型成形された基板からなる。例えば、前記装置は、白色及び/又は有色及び/又は紫外及び/又はグレージング(grazing)の光で照らされ、光学的に検出可能なコントラストを示す。かかるコントラストは、異なる粗さの結果であると考えることができ、光学的にポジ(より粗い領域が他より明るく見える)であるか、それとも光学的にネガ(より粗い領域が他より暗く見える)である。コントラストのタイプは、装置がどう照らされるかによる(例えば、上方からの光の代わりにグレージング光)。
【0017】
またコントラストは、粗さと直接に相互に関連を有する化学的及び/又は物理的な特性を測定すること(例えば、単位表面あたりの領域のあらゆる技術による測定)によって、又は、間接的に関連する特性(例えば光学的及び/又は回折現象によって引き起こされた変色)を測定することによって、表面粗さの変化に敏感なあらゆる技術で検出され得る。
ここで使用される「粗さ」という用語は、通常表面に存在しているか又は機械プロセスの結果でもある幾何学的にミクロ及びナノの欠陥によって構成される、物体の表面の特性を参照する。一般に、これらの欠陥は、不定の又は配向された形状、深さ及び方向を有する、溝、スクラッチ又はバンプの外観を有する。
【0018】
ミクロン又はナノメートルで表現される粗さの大きさは、かかる表面の平均高さに対する表面の実際のプロファイルの変化の平均値である。この大きさは、他のタイプの凸凹の影響を避けるために分析される、プロファイルの基準長さ(baselength)を参照する。
材料の化学的及び/又は物理的な特性によって、それゆえに、かかる装置は電子部品(例えば、導体である基板の材料を使用することによって、電極)、電子光学部品(例えば、分光学的な特性を有する電気活性である基板の材料を使用することによって)、光学的なメモリ要素(例えば、光学的及び/又は分光学的な特性を有する基板の材料を使用することによって)、磁気的なメモリ要素(例えば、磁気的な特性を有する基板の材料を使用することによる)、または他の装置であることができる。
【0019】
有利には、本発明によるプロセスの物のナノ及び/又はマイクロの構造化は、例えば上で引用された背景技術の特許で生じるものとは異なり、基板の表面に自然又は人工的に存在するものである。
上述のねらい及び目的に一致して、本発明の技術的特徴は、添付の請求項の内容から明確に観察可能であり、そして、その有利な点は、添付の図面及び写真を参照して与えられた、詳細な説明にてより明らかになる。図面及び写真は、好ましい且つ単に例示されるその実施形態を例証するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
添付の図面に従って、特に図1及び2を参照すると、符号1は基板を指し、符号1aは、その表面を指している。形態は、表面1aに形成される。また、かかる形態は、媒体上に配置された薄膜に構成することができ、前記媒体と同じ種類又は異なる種類のものであることができる。
【0021】
本記載の続きにおいては、単なる一例として、それにより一般性を失わないで、重合体、詳しくはポリカーボネートによって形成される基板1が参照される。
この材料は、方法を説明するための例とみなされるが、かかる方法は、例えば、生体高分、タンパク質及び同様のもの等の生体分子、共重合体、分子材料、金属、半導体、複合材料、合金、又は、他の材料を含む、広範な材料及び基板に適用され得る。同様に、マイクロメートル及びナノメートルの空間的なスケールが参照されるが、これは記述される方法の適用の関心が最も高い分野であるからであり、この方法は、より大きな寸法にも有効且つ効果的である。
【0022】
図1a、b、c及び2a、b、cを特に参照すると、この方法は、表面粗さを有する材料を使用し、装置(デバイス)を形成することを意図している。かかる表面粗さは、基板表面の自然な粗さであることができ(図1の例)、形態学的に無原則(図6参照)又は人工的であることができ(図6参照)、又は、型成形プロセス(図2の例)を含む、工業的なプロセスによって非常に制御された方法で得られた形態であることもできる。
【0023】
また、人工的な粗さをもって形成されたかかる表面は、回折格子及び/又はホログラフィック回折格子を含む、特に光学的な特性を備えた規則的な格子によって構成されることができる。
次に、媒体の表面は、かかる表面の部分を滑らかにすること、及び/又は、平らにすることによって、成形される。
【0024】
図1a、1b、1c、2a、2b、および2cに示されるところによると、基板の表面は、型を用いた圧力成形に、及び/又は、熱処理によって補助された圧力成形に、及び/又は、化学処理によって補助された圧力成形に、及び/又は、イオン及び/又は光子の照射、及び/又は、局所的な物理的処理、及び/又は、局所的な化学処理によって補助された圧縮成形に、供される。
【0025】
圧力、温度、及び、処理時間の範囲、並びに、他の化学的及び/又は物理的な薬品のどのような使用も、成形される材料の性質に依存する。単に、制限されない例として、プロセスの間に加えられる圧力は、1N/cmから100MN/cmの範囲で変化することができる。温度の範囲は10から5000°Kである。
参照される全ての場合において、これらの方法は基板が重合体であるかのように基板に適用されるため、これらの方法は、例えば、重合体の成形で知られており、それ故、テキストの理解のために排他的に参照される。
【0026】
図1a、1b、1c、2a、2b、および2cを特に参照すると、圧力インプリンティングを提供するために、関係のあるモチーフが型の(平坦な)表面の中にエッチングされた型の凹所として提供されるような方法で、型が構造化される。かかる型は、浮き彫りされた部分が、基板表面の対応する部分を平らにし、及び/又は、滑らかにするために、基板に接触して配置され、そして、それに押し付けられる。このインプリンティング作業は、基板を加熱した後、及び/又は、化学処理の後、及び/又は、物理的処理の後、及び/又は、イオン及び/又は光子の照射の後に、実行され得る。
【0027】
図3は、明るい領域を除いて、粗い基板を滑らかにすることによって得られる、かみ合い構造によって形成される装置の例を示す。この場合、光学的なコントラストは、光学顕微鏡によって検出され、グレージング光で装置を照らすことによって得られる。
図4は、表面に配置された一連の正方形によって形成される装置の例を示す。明るい領域を除いて、粗い基板を滑らかにすることによって装置が得られる。この例では、光学的なコントラストは、光学顕微鏡によって検出され、グレージング光で装置を照らすことによって得られる。この例は、ビットが成形された正方形によって構成される、メモリ要素を構成している。
【0028】
図5は、更に拡大されたスケールで、図4の細部を示す。
この場合、人工的な表面粗さは、間隔が1.5マイクロメートルで深さが250ナノメートルである平行線によって構成され、目に見える。それ故、かかる粗さは、正方形の構造でより大きい。
図6は、自然に(無原則に)粗い表面を形態学的に平らにすることによる地形効果を例証する、原子間力顕微鏡イメージを示す。
【0029】
図7は、表面に配置された一連の4つの正方形によって形成された装置の例を示す。この装置は、暗い領域を除いて、粗い基板を滑らかにすることによって得られる。この例では、光学的なコントラストは、光学顕微鏡によって検出され、通常光で装置を照らすことによって得られる。
有利には、表面を成形するための工程は、どんな方法でも、例えば、単純なエッチング又は表面の形態の平坦化をもたらすどのような方法によっても、起こり得る。
【0030】
図3、4、5、および7を特に参照して、それらがグレージング光によって照らされるとき、滑らかな部分に対して、粗い部分ではっきりしたコントラストが観測されることが注目される。
このコントラストは、特定の場合、可能性のある永久的なメモリ要素を規定する。
従って、一般に、方法は、基板を形成する材料の形態学的な特徴が、かかる方法で得られる物の特性を定義するように、空間的に制御された方法にて、サブマイクロメートル及び/又はナノメートルのスケールで基板を組織化する。
【0031】
例えば光学的に読むことができる高密度のメモリ要素、又は、ラベルなどのような、空間的に制御された構造の分布は、それ自体が有用な物である。
基板表面に空間的に分散させられた粗さの減少は、光の反射及び吸収の現象の強度及び状態について、異なる振舞いを引き起こす。
光学的な振る舞いにおけるこの違いは、粗さが減少している領域と粗さが変化していない領域との間で非常にはっきりとなり得る、光学的なコントラストを生成する。このコントラストは、光学的な読み取り機にて、本発明の方法でインプリントされたパターンを読むことを許容する。
【0032】
基板の粗さは、基板の自然な表面粗さ(一般に、無原則な外観を有する)や、異なるインプリンティング及び/又はエッチング方法によって、いくつかの目的のために特に生成された粗さであり得る。粗さが変化していない領域と粗さが減少している領域との間のはっきりとした光学的なコントラストを提供するための要件は、表面の平均高さに対する基板表面の高さの値の振動の水平方向の拡大(horizontal extension)が、インプリントされることが望まれているパターンの代表的な寸法の水平方向の拡大よりも非常に低くなければならないことである。
【0033】
例えば、表面のマイクロバンプ(微小隆起)の側部の寸法と、構造の寸法との間の比が1よりも小さいときである。
詳しくは、辺の長さが20ミクロンの正方形のパターンの場合、表面のマイクロバンプの側部の寸法は、2ミクロン未満であり得る。
簡単にするために、本記述では、本発明の好ましい実施例であり、逆エンボス加工(inverse embossing)として知られているこの方法が参照されている。
1.コントラストパターンの提供
この方法によって供給される物の例は、重合体の薄膜とともに形成された、小さい膜である(辺の長さが1ミリメートルの何分の1から数センチメートルの寸法)。重合体の薄膜には、ホログラフィック回折格子が、知られている任意の方法で、既にインプリントされている。かかるホログラフィック回折格子は、表面の高さの1次元又は2次元の周期的な変化によって特徴づけられている(図8)。そして、重合体の薄膜には、本記述で与えられた教えの1つに従って、パターンがインプリントされている。パターンのモチーフの寸法は、ホログラフィック回折格子の周期性よりはるかに、例えば1桁以上、大きい。パターンは、粗さが変化させられた領域と粗さが減少させられた領域との交互の様子にしたがって、符号化されたバイナリ情報を有する。図9は、各辺が20ミクロンの正方形(2進値が1)(深さ300ナノメートル)によって構成されたパターンを逆エンボス加工によってインプリンティングすることによって得られる例を示す。
【0034】
型(図10参照)は、20ミクロンの辺の長さと、1.5ミクロの深さがある正方形によって構成されている。ポリアセテートの重合体のパターン化された表面を型で圧縮することによって(この場合、300秒間、80℃の温度で、10KN/cmの圧力を加える)、型のエッチングされていない領域に接触した領域は、型の凹んでいる領域に接触していた領域に対して、図9に示されるように平らにされる。この溝を平らにすることは、溝が平らにされたところで、光の回折(溝によって反射された様々な光線の干渉)の高い抑制を起こす。
【0035】
図4及び5は、ホログラフィの溝によって引き起こされた粗さが選択的に抑制された領域の、減少させられた輝度を示す。有色の輝く正方形のパターンは、どんなデジタルの光学読み取り機によっても書き込み可能であり、ホログラフィック回折格子の圧縮及びその結果としての回折された光の減少によって引き起こされた暗い背景の中で目立つ。
2.材料
10nmよりも大きい自然な粗さを有し、及び/又は、有利にパターンをインプリントすることができる、すべての材料を使用することが可能である。例えば、ほとんどの単層及び多層の重合体の膜を、有利には、金属反射膜とホログラフィック回折格子を含む重合体の膜とを含む多層膜を含めて、使用することができる。
3.パターン符号化
単に、一例として、異なる光学的なコントラストを有する領域の連続に含まれたバイナリ情報の簡単な復号を許容するために、アズテック(Aztec)として知られている、広く知られ且つ使用されている符号化の規格をドットマトリクスに適合させることが選択されている。もちろん、2進値に一致させられる「明るい」及び「暗い」領域の連続を生成する任意の形式の情報の符号化は、ここで記述されるラベルの提供に完全に適する。
【0036】
図11に示されたラベルは、アズテック(Aztec)符号化(3つのフレーム、その2つの方向に沿ったチェックビット、及び、規格によって指定された他の様々な特性とともに、標的(bull‘s−eye)を備えた151×151ドットのマトリクス)によるパターンを有する。
4.en−code(商標)ラベル
本発明によって得られ、en−code(商標)ラベルとして知られているラベルの実施例は、15×10ミリメートルで、80ミクロンの厚みを有するポリプロピレン−Al−ポリプロピレンの多層の膜によって構成される。
【0037】
一様な一次元のホログラフィの浮き彫りは、前記膜の表面に、知られている方法によって、インプリントされ、そして、およそ250nmの深さを有し、相互に1ミクロンの間隔をあけた平行な溝によって構成される。後のインプリンティング工程で、逆インプリンティング技術(inverse imprinting techniques)が行われ、そのホログラフィの浮き彫りの部分が、型(シリコンで作られるなら平ら、又は、ニッケルで作られるなら筒状)によって、選択的に平らにされる。かかる型は、各ビットが正方形の形を有し且つ辺の長さが20ミクロンである、151×151ビットのアズテック規格に対応する浮き彫りのパターンを有する。従って、各アズテックモジュールは、3.02x3.02mmであり、且つ、2850バイトと等しい情報を有する。22.8KB/cmの密度と等しい、34.20KBまでの格納されたデジタル情報とともに、1乃至12個のアズテックモジュール(図12)を各en−code(商標)ラベルに与えることができる。
【0038】
また、有利には、有機、無機、または、生物学的な媒体と共に、提案された方法を使用できる。
また、この方法も、一般性を失うことなく、他の装置を得るために任意のタイプの材料及び媒体に使用することができる。
また、本発明は以下のことに関連する。
−論理的なパターンにおいて、光学的性質を有する材料によって形成された基板を型成形することによって得られる、光学的に読み込み可能、書き換え可能、又は、書き換え不可能なメモリ要素。
−論理的なパターンにおいて、磁気特性を有する材料によって形成される基板を型成形することによって得られる、磁気的に読み込み可能、書き換え可能、又は、書き換え不可能なメモリ要素。
−表面の粗さに依存する化学的及び/又は物理的な性質を有する材料によって形成される基板を型成形することによって得られる、空間的に構造化されたパターン。
【0039】
本発明は、意図した狙い及び目的を達成し、そして特に、この方法は、リソグラフィーのプロセスを使用する必要なく、基板にモチーフを直接製造することを許容する。
この方法は、新しいやり方で、表面に与えられた突出部を滑らかにし、平らにするプロセスを利用する。
説明した方法は、マイクロメートル及びナノメートルのスケールでは機能し、そして、ミクロ及びナノテクノロジーの分野の中に完全にある。
【0040】
このようにして発想された発明は、明らかに工業に適用が可能である。また、発明は、発明の要旨の範囲内で、多数の変更及び変化の対象であり得る。さらに、技術的に等価な要素で全ての細部を置換してもよい。
この出願が優先権を主張するイタリアの特許出願BO2006A000340の開示は、ここに参照により導入される。
【0041】
任意の請求項において述べられた技術的特徴のあとに符号が続いているところでは、それらの符号は、その請求項の明瞭さを増大させる目的のためのみ含まれている。それ故、そのような符号は、一例としてそれらの符号によって特定される各要素の解釈に対し、いかなる制限効果も有さない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1a、1b、および1cは、概略的に拡大したスケールの側面図で、本発明による、自然に粗い材料の表面に圧力インプリンティングによって型成形するための一連の操作を示す。図1dは、対応する装置の一部の概略的に拡大したスケールの側面図である。
【図2】図2a、2b、および2cは、圧力インプリンティングによって、人工的に初期に型成形された材料の表面を型成形するための一連の操作の概略的に拡大したスケールの側面図である。図2dは、対応する装置の一部の概略的に拡大したスケールの側面図である。
【図3】図3は、互いにかみ合う構造によって形成された装置の一例の図であり、この構造は、粗い基板を滑らかにすることによって得られる。この例では、より粗い領域が白く見える。この例では、光学的なコントラストは、光学顕微鏡によって検出され、グレージング光で装置を照らすことによって得られる。
【図4】図4は、表面に配置された一連の正方形によって形成される装置の例を例示する。この装置は、明るい領域を除いて、粗い基板を滑らかにすることによって得られる。この例では、光学的なコントラストは、光学顕微鏡によって検出され、グレージング光で装置を照らすことによって得られる。
【図5】図5は更に拡大されたスケールで、図4の細部を示す。この場合、正方形の構造では、表面の粗さがより大きいことが分かる。この粗さは、間隔が1.5マイクロメートルで深さが250ナノメートルである一連の平行線によって決定される。
【図6】図6は、形態学的に平らにすることによる地形効果を例証する、原子間力顕微鏡イメージである。
【図7】図7は、表面に配置された一連の4つの正方形によって形成された装置の例を例証する。この装置は、暗い領域を除いて、粗い基板を滑らかにすることによって得られる。この例では、光学的なコントラストは、光学顕微鏡によって検出され、通常光で装置を照らすことによって得られる。
【図8】図8は、ホログラフィック回折格子がインプリントされた重合体の薄膜の原子間力顕微鏡イメージである。
【図9】図9は、本発明の方法によって、ホログラフィック回折格子がインプリントされ、且つ、モチーフがインプリントされた、重合体の薄膜の原子間力顕微鏡イメージであり、その特徴的な寸法は、ホログラフィック回折格子の周期よりはるかに大きく、バイナリ情報(2進情報)を有する。
【図10】図10はホログラフィック回折格子を形態学的に平らにするのに使用される型(フォトリソグラフィー技術によってシリコンプレートに得られる)の原子間力顕微鏡イメージである。型のモチーフは、20ミクロンの辺の長さ及び1.5μmの深さを有する正方形によって構成される。
【図11】図11は、アズテック(Aztec)符号化(3つのフレーム、その2つの方向に沿ったチェックビット、及び、規格によって指定された他の様々な特性とともに、標的(bull‘s−eye)を備えた151×151ドットのマトリクス)によるデジタル情報が格納されているラベルの図である。
【図12】図12は、本発明によって得られ、en−code(商標)と呼ばれる、15×10mmで厚さが80ミクロンの、ポリプロピレン−Al−ポリプロピレンの多層膜によって構成された、アズテック符号化によるデジタル情報が格納されているラベルの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面のナノメートル及びマイクロメートルの寸法の粗いモチーフによって規定される物を得るための製造方法において、
前記基板の限定された領域において前記基板の表面の粗さを減少させる工程を備えることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記減少工程は、前記領域を平らにすることからなることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記粗さ減少工程は、前記基板にインプリントする工程を具備することを特徴とする請求項1又は2の方法。
【請求項4】
前記粗さ減少工程は、前記基板を型成形により複製するための工程を具備することを特徴とする先行の請求項1乃至3のいずれか1つの方法。
【請求項5】
前記基板を化学的に処理するか、物理的な処理手段によって処理するか、又は、これらの両方によって処理する工程を具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つの方法。
【請求項6】
前記粗さ減少工程は、溶剤、または、前記溶剤の蒸気に前記基板を曝す工程を具備することを特徴とする先行の請求項1乃至5のいずれか1つの方法。
【請求項7】
前記粗さ減少工程は、前記基板を加熱する工程を具備することを特徴とする先行の請求項1乃至6のいずれか1つの方法。
【請求項8】
前記粗さ減少工程は、前記基板をエッチングする工程を具備することを特徴とする先行の請求項1乃至7のいずれか1つの方法。
【請求項9】
前記基板は、重合体又は重合体の混合物を含むことを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項10】
前記重合体又は前記重合体の混合物は、ポリカーボネートを含むことを特徴とする請求項9の方法。
【請求項11】
前記基板の材料は、インプリントの間に重合可能な可溶性ポリマー又は前駆物質によって形成される群(例えば、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリ−(3−アルキル−チエニル))から選択される先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項12】
前記基板は、共重合体を含むことを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項13】
前記基板は、1つ又はそれ以上の重合体と他の材料との混合物を含むことを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項14】
前記基板は、分子材料を含むことを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項15】
前記基板は、生体分子を含むことを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項16】
前記基板は、ゲルを含むことを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項17】
前記基板は、有機的であることを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項18】
前記基板は、生物学的であることを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項19】
前記基板は、無機物によって形成されることを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項20】
前記基板は、空間的に構成可能な材料によって形成されることを特徴とする先行の請求項1乃至19のいずれか1つの方法。
【請求項21】
前記基板は導電性材料によって形成され、前記基板が導電性あるために結果として生じる物は電子デバイスであることを特徴とする先行の請求項1乃至20のいずれか1つの方法。
【請求項22】
前記基板は半導体材料によって形成され、結果として生じる物は電子デバイス又は光電子デバイスであることを特徴とする先行の請求項1乃至21のいずれか1つの方法。
【請求項23】
前記基板は磁性材料によって形成され、結果として生じる物は磁気的に読み込み可能なメモリ要素であることを特徴とする先行の請求項1乃至22のいずれか1つの方法。
【請求項24】
磁気的に読み込み可能な前記メモリ要素は書き換え可能であり、前記磁性材料は強磁性であることを特徴とする先行の請求項23の方法。
【請求項25】
前記基板は光学的に活性な材料によって形成され、結果として生じる物は光学的に読み込み可能なメモリ要素であることを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項26】
前記基板の表面の初期の粗さの値に対し、粗さが減少させられた前記領域の粗さの値が0%から99.9%の範囲にあることを特徴とする先行の請求項のいずれか1つの方法。
【請求項27】
前記基板は、単層又は多層の重合体の膜によって提供され、前記多層の重合体の膜は随意に金属膜を含むことを特徴とする請求項26の方法。
【請求項28】
光学的に読み込み可能な前記メモリ要素は書き換え可能であることを特徴とする請求項25の方法。
【請求項29】
空間的に構成されたテンプレート又はパターンであって、先行の請求項1乃至28のいずれか1つに記載された方法によって得られ、前記パターンは基板に形成されている、ことを特徴とするテンプレート又はパターン。
【請求項30】
光学的に読み込み可能なメモリ要素であって、請求項1乃至28のいずれか1つに記載された方法によって得られ、前記基板は、光学的、分光学的、又は、これら両方の特性を有する材料によって形成されている、ことを特徴とするメモリ要素。
【請求項31】
光学的に読み込み可能な前記メモリ要素は書き換え可能であることを特徴とする請求項30のメモリ要素。
【請求項32】
磁気的に読み込み可能なメモリ要素であって、請求項1乃至28のいずれか1つに記載された方法によって得られ、前記基板は磁性材料によって形成されている、ことを特徴とするメモリ要素。
【請求項33】
前記基板は強磁性体によって形成されていることを特徴とする請求項32のメモリ要素。
【請求項34】
電極であって、先行の請求項1乃至28のいずれか1つに記載された方法によって得られ、前記基板は導電性の材料によって形成されている、ことを特徴とする電極。
【請求項35】
電極であって、先行の請求項1乃至28のいずれか1つに記載された方法によって得られ、前記基板は半導体の材料によって形成されている、ことを特徴とする電極。
【請求項36】
電極であって、先行の請求項1乃至28のいずれか1つに記載された方法によって得られ、前記基板は金属の導電性の材料によって形成されている、ことを特徴とする電極。
【請求項37】
粗いモチーフに対し減少された粗さを有する領域と交互の粗いモチーフによって形成されたパターンを備える表面を有する基板を備え、請求項1乃至28の1つ又はそれ以上の方法によって得ることができ、前記粗いモチーフ及び減少された粗さを有する前記領域の交互の様子にしたがうバイナリ情報を有することを特徴とするラベル。
【請求項38】
前記基板は、単層又は多層の重合体の膜によって提供され、前記多層の重合体の膜は随意に金属膜を含むことを特徴とする請求項37のラベル。
【請求項39】
前記基板は、ホログラフィック格子を規定する形態を有することを特徴とする請求項37又は38のラベル。
【請求項40】
前記基板は、媒体に堆積された材料の膜によって形成されていることを特徴とする先行の請求項1乃至28の方法。
【請求項41】
前記基板は、制御された方法によって形態的に構造化されることを特徴とする先行の請求項1乃至28及び40の方法。
【請求項42】
前記基板は、規則的な格子を規定する形態を有することを特徴とする先行の請求項1乃至28、40及び41の方法。
【請求項43】
前記基板は、ホログラフィック格子を規定する形態を有することを特徴とする先行の請求項1乃至28及び40乃至41の方法。
【請求項44】
光学的、磁気的、電気的、化学的、物理的、又は、化学的及び物理的に異なる性質を有する表面の交互領域の所定の分布を有する表面を備えた物を得るための方法であって、
マイクロメートル又はナノメートルの寸法の所定の初期の粗さを前記物の表面に与え、そして、
前記表面の選択された領域で前記初期の粗さを減少させ、これにより前記初期の粗さ、及び、前記初期の粗さに対して減少させられた粗さを有する前記表面の交互領域であって、マイクロメートル又はナノメートルの寸法の表面を有する交互領域を形成する
工程を備える方法。
【請求項45】
請求項1乃至28及び40乃至44のいずれか1つの方法によって得られる物であって、
ナノメートル又はマイクロメートルの寸法の粗いモチーフを与えられた表面を有する基板を備え、前記表面は、第1の粗さを有する領域と、前記第1の粗さを有する領域と交互の第2の粗さを有する領域とを備え、これら領域は、ナノメートル又はマイクロメートルの寸法を有し、前記第1の粗さと前記第2の粗さとの比は1:1乃至1:1000の範囲にある物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−536104(P2009−536104A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508680(P2009−508680)
【出願日】平成19年5月4日(2007.5.4)
【国際出願番号】PCT/IT2007/000331
【国際公開番号】WO2007/129355
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508332232)スクリーバ ナノテクノロジー ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【氏名又は名称原語表記】SCRIBA NANOTECNOLOGIE S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Fanin, 48, I−40127 Bologna, ITALY
【Fターム(参考)】