マイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器
【課題】管壁と中間生成物、生成物との相互作用を絶ち、混合時間を抑制しながら複数の原料溶液を混合・反応を行わせて化合物を製造する方法と装置を提供する。
【解決手段】
溝を掘った薄層を積み重ねて作成した分流器を用い、2種以上の溶液を複数の細かいセグメントに細分化して適切に配置する方法を用いる。配置された溶液は下流において混合される。また、混合の際、乱流発生手段17によってマイクロ流路12を流れている溶液に乱流を起こし、マイクロ混合を行う。乱流の強さ(Re数)および乱流が起きている時間を調節することにより、上記課題を解決する。
【解決手段】
溝を掘った薄層を積み重ねて作成した分流器を用い、2種以上の溶液を複数の細かいセグメントに細分化して適切に配置する方法を用いる。配置された溶液は下流において混合される。また、混合の際、乱流発生手段17によってマイクロ流路12を流れている溶液に乱流を起こし、マイクロ混合を行う。乱流の強さ(Re数)および乱流が起きている時間を調節することにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の溶液をマイクロ流路内で反応させて、化合物を製造するためのマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器に関する。更に詳しくは、溶液を複数のセグメントに細分化して化学反応用のマイクロ流路内に供給して、効率的に化学反応を行うための化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物の生産や製造においては、化学反応試料の供給、混合、反応活性化のための熱供給、熱除去、触媒反応の効率化等、化学反応の反応制御を向上させることに日々努力が重ねられている。反応制御の向上によって、生産安全性、反応生成物の収率、反応生成物の純度、有用な高活性中間生成物の単離の向上が可能になる。
【0003】
従来から化学反応には大きな反応槽が用いられることが一般的である。近年は、微細な粒子を生成する装置として、マイクロリアクタ、又はマイクロミキサー等に代表される複数の溶液供給管に繋がったマイクロ流路内で、化学反応を行う装置の研究が行われている。これらの装置を用いた化学反応の効率化、新規化合物の創製等を目的とする研究が注目されている。このマイクロミキサー又はマイクロリアクタは、サブマイクロメータからミリメータまでのオーダーの内径を有する狭い流路内で、複数の流体の拡散、混合で化学反応を起こすものである。
【0004】
複数の流体を混合する目的のものは、マイクロミキサーと定義されることが一般的である。マイクロリアクタは、複数の流体を拡散、混合し、又は混合しながら化学反応を行うためのものである。以後は、マイクロリアクタはマイクロミキサーを含むものとして説明する。
【0005】
流路を小さくすると流路内の液体の熱容量が小さくなるので、マイクロリアクタを構成する他部から流路への熱交換を速やかに行うことが可能になる。これにより流路内の化学反応の温度制御が容易にできる。また、マイクロリアクタは高効率で、流路内を流れている溶液相間の化学反応を制御することが可能な点で、化学合成、新規化合物の造成、各種の試料の分析や解析等に革新的な変革をもたらすものとして大きく期待されている。
【0006】
アクティブな化学反応制御装置としては、マグネチックスターラ等のような微小な領域を機械的に混合することにより、迅速な混合を行っているものがある。マグネチックスターラは、反応液が入っている容器の中に棒状、又は板状の撹拌用の永久磁石を配置している。容器の外側に配置された駆動用の永久磁石をモータによって駆動すると、その磁力を受けて撹拌用の永久磁石が回転して、反応液を撹拌し、その反応を促すものである。
【0007】
特許文献1には、粒子径1μm〜1mmのマイクロ流路を用いたナノ粒子の製造方法が開示されている。詳しくは、マイクロ流路内に粒子形成用の前駆体含有溶液を、連続的に供給しながら反応開始温度までに急速加熱し、反応を行わせたのち、急速冷却してナノ粒子を製造するものである。この製造方法は、加熱温度と時間制御をすることにより粒径を制御するものである。
【0008】
特許文献2には、マイクロリアクタの構造が開示されている。マイクロリアクタのマイクロ流路に、流体A、Bを流体導入部から合流させて分子拡散により複合反応を行わせている。このとき、マイクロ流路の入口の径方向断面において、流体A、Bを複数の流体セグメントA、Bに分割して合流させ、これらの流体セグメントA、Bを層流として流通させつつ分子拡散により混合して複合反応を行わせる。
【0009】
また、可動部、動力部を持たない化学反応制御装置としては、スタティックミキサー等がある。スタティックミキサーは、管内を流れる混合液の流れを複雑にして混合を促すためのものである。スタティックミキサーは、長方形の板状のエレメントをねじって管内に配置し、混合液はこのエレメントを通過するごとにその流れが変わるものである。例えば、混合液がこのエレメントを通過するとき分割されたり、エレメントのねじれに沿って管の中央部から壁部へ、または、壁部から中央部へと替えられる。
【0010】
乱流ではなくカオス対流を用いた混合、反応器としてはカオス式ミキサーがある。特許文献3には、カオス式ミキサーを開示している。スタティックミキサー等では、基本的に、複数溶液の層流を交互に重ねることにより、混合を行う。カオス式ミキサーは、複数溶液の層流を3次元的に折り重ねることにより混合をおこなう。
【0011】
非特許文献1のセラミックマイクロリアクタは、層流で流れている2種類の反応溶液でナノ粒子を生成している。非特許文献2のジグザグ形のチャネルは、2種類の溶液を注入して、ナノ粒子を生成している。
非特許文献3のマイクロリアクタは、2重管を用いて同心円状の液の流れを作り、内側の液の中のみで粒子を合成することにより、合成された粒子が管壁に付着するのを抑止している。
【特許文献1】特許公開2003−225900号公報
【特許文献2】特許公開2005−262053号公報
【特許文献3】特許公開2004−283791号公報
【非特許文献1】H.Wang et.al., Chem. Comm., pp. 1462-1463 (2002)
【非特許文献2】Paul J.A.Kenis et.al., Science, vol285,p83-85 (1999)
【非特許文献3】M.Takagi et.al., Chem. Eng.J., 101, 269 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
1秒以下の時間で反応が進行するようなナノ粒子合成反応、即ち、タンニン酸及びクエン酸を還元剤とする金ナノ粒子の合成反応や、貧溶媒の添加による晶析反応等では、混合が不均一な時点での反応の進行があると、反応が不均一になる。このため、析出速度が速く、沈殿剤と原料の反応時間に比べて十分に短時間で均一に混合する必要がある。しかし、従来から、反応器として攪拌タンク等を用いたバッチ方式の合成法では、容器の容積が大きくなると、溶液間の混合は、センチメーターオーダーのマクロ混合、ミリメーターオーダーのメゾ混合、マイクロメーターオーダーのマイクロ混合の順に混合がなされる。このために、溶液間の混合に時間がかかる。
【0013】
一方で、最近開発されたマイクロリアクタによる拡散混合は、混合時間が反応種の拡散速度に規定される。層流下の溶液の拡散による混合速度は、次のペクレ数Peを用いて求めることができる。
Pe=Dt/L2 …(式1)
ただし、D[m2/s]は拡散係数、t[s]は時間、L[m]は拡散のための長さ(管径)である。
【0014】
完全混合するためには、ペクレ数Peが1になることが条件であり、時間tが
t<L2/D …(式2)
の時間で完全に混合する。また、拡散係数Dは、次のストークス−アインシュタインの式で大まかに計算可能である。
D=kT/(6πηα) …(式3)
ただし、k[J/K]はボルツマン定数、T[K]は絶対温度、η[Pa・s]は粘性係数、α[m]は粒子径又は分子の拡散径である。
【0015】
式3においては、拡散係数Dは粒子径αに反比例する。例えば、水中の(粒子径α=)0.3nmの大きさの分子の拡散係数Dは、約10−9m2/sになる。(粒子径α=)3nmのときは、拡散係数Dは10−10m2/sになる。これから、2秒で完全混合させるための層幅は、0.3nmの際には30μm、3nmの際には10μmになる。よって、低分子(大きさ0.3nm程度)の場合には、10秒以下で完結する反応に関しては、30μm以下の層厚であることが望ましい。
【0016】
しかしながら、この場合でも数秒程度で反応が十分に(反応の種類にもよるが、例えば、最終的な収率の数10%程度)進行するような場合では、式1から考えて、拡散長Lを数μm若しくはそれ以下のオーダーに低下させなければならない。このため、反応中間体又は反応生成物が副次的反応に関与する場合や、晶析速度がサブ秒以下の速い晶析反応等では、混合が不均一な時点が起こり、複生成物の生成、粒子径分布の増大や凝集等が起こりやすいという問題がある。
【0017】
更に、管型反応器の場合、反応器の壁に生成物、原料物質、副生成物等が接触するとそれらが析出し、連続的操業が妨げられることもある。しかしながら、スタティックミキサーでは、流れ方向に垂直な方向でのフローパターンは、一次元的にしか制御できない。また、カオス式ミキサーは、基本的には層流を3次元的に折りたたむということを行うが、複雑な構造であるために、特に流速が高くなると部分的に乱流を起こしやすく、そのために、反応器壁への反応種の接触が起こりやすい。アクティブなマイクロミキサーは、基本的に乱流であり、反応器壁への反応種の接触を妨げることは難しい。
【0018】
上記に挙げたスタティックミキサー等では、層界面が容器の壁面に接触するので、異なる溶液の接触により生じた界面も容器の壁面と接触する。このように容器の壁面と接触すると、層界面での反応により生じた生成物が管壁へ付着したり、この生成物と管壁の反応が起こることがある。このように、溶液の接触により生じた生成物が、容器の壁面との相互作用を起こし、それが全体の反応に影響を及ぼす場合がある。
【0019】
一方、管壁と反応溶液の接触を断つためには、2流管を用いる方法がある(非特許文献3を参照)。この内部は基本的に層流であるために、混合が拡散で起こる。しかし、拡散時間を短くするには、中心部の反応溶液を細くする必要があり、そのために生産量が低下し、逆に生産量を向上させるために中心部の反応溶液の層を太くすれば、混合時間が長くなる。
【0020】
さらに、特許文献1のナノ粒子の製造方法においては、ナノ粒子を合成する際、予め2液を混合したり、ナノ材料攪拌子によって、試料溶液と試薬溶液を強制的に攪拌したりし、その後加熱を行って生成物を得ている。この場合は、管の内壁と混合溶液が接触するために、上記の相互作用が起きる場合も多い。また、管内が層流であっても、壁との摩擦により流れと垂直な方向に流速分布が出来るため、加熱時間に若干のばらつきが生じて生成されたナノ粒子の粒度分布が広がる問題がある。
【0021】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、管壁と中間生成物、管壁と生成物との相互作用を絶ち、混合時間を抑制しながら複数の原料溶液を混合し、反応を行わせて化合物を製造するためのマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器を提供する。
【0022】
本発明の他の目的は、管壁への生成物の析出を妨ぎながら、生成物の生産性を向上させるためのマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の発明1のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させて化合物を製造するマイクロリアクタによる製造方法において用いられるものであり、前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに分流器によって細分化し、隣接する前記セグメントの前記溶液をマイクロ流路内に層流で合流させ、前記合流後、乱流発生手段によって前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合して前記反応を行わせることを特徴とする。
【0024】
本発明の発明2のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記層流で合流後に前記溶液の流れ方向の断面を絞って、前記溶液の流速を早くして前記乱流を発生させることを特徴とする。
【0025】
本発明の発明3のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記乱流は、前記溶液を前記溶液の流れる軸線を中心にして旋回させるものであることを特徴とする。
【0026】
本発明の発明4のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から3中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記複数のセグメントに細分化された前記溶液を層流で合流させた後、隣接する前記セグメント間に分子拡散反応を行わせた後、前記乱流発生手段によって前記溶液をマイクロ混合させて前記反応を行わせることを特徴とする。
【0027】
本発明の発明5のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から3中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記反応を制御するために、前記マイクロ流路を加熱又は冷却することを特徴とする。
【0028】
本発明の発明6のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から3中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記乱流は、Re数が200以下であることを特徴とする。
【0029】
本発明の発明7のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から6中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記化合物は、粒子の代表長さが1nmから100nmのナノ粒子であることを特徴とする。
【0030】
本発明の発明8のマイクロリアクタは、複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させるマイクロリアクタにおいて、前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)と、前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに細分化するためのもので、前記試料供給流路(14)に接続された分流器(20)と、前記セグメントを合流させるためのもので、分流器(20)に接続された合流流路(16)と、前記合流後の流路に接続され、前記溶液を混合し反応させるためのマイクロ流路(12)と、隣接する前記セグメントの前記溶液を層流で合流させた後、前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合するための乱流発生手段(17、26、30、31)と、及び前記マイクロ流路(12)で反応が行われた後、前記反応後の反応生成物を排出させるために前記マイクロ流路(12)と接続された試料排出流路(18)とからなることを特徴とする。
【0031】
本発明の発明9のマイクロリアクタは、発明8のマイクロリアクタにおいて、前記合流流路(16)は、前記合流した溶液の流速を早くするために前記断面を段階的に小さくして絞るための合流部(16)とを備えていることを特徴とする。
【0032】
本発明の発明10のマイクロリアクタは、発明8又は9のマイクロリアクタにおいて、前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路内を流れている前記溶液を攪拌するために前記溶液の流れを一部堰き止めるためのじゃま板(26)であることを特徴とする。
【0033】
本発明の発明11のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記溶液の流れる方向を軸線とする固定された螺旋状の固定翼(30)であることを特徴とする。
【0034】
本発明の発明12のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記容器の流れる方向を軸線とする回転自在な螺旋翼(31)であることを特徴とする。
【0035】
本発明の発明13のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路(12)の管の内径の大きさを小さく/又は大きくしたものであることを特徴とする。
【0036】
本発明の発明14のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、超音波を発生させる装置であり、前記超音波を前記マイクロ流路(12)に照射して、前記溶液に乱流を発生させることを特徴とする。
【0037】
本発明の発明15のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記合流流路(16)の排出端の内径を小さして前記溶液に乱流を発生させることを特徴とする。
【0038】
本発明の発明16のマイクロリアクタは、発明8から15の中から選択される1発明のマイクロリアクタにおいて、前記マイクロ流路(12)内に前記溶液の温度を加熱又は冷却して制御するための温度制御手段と、前記温度を測定するための温度センサ手段とを有することを特徴とする。
【0039】
本発明の発明17のマイクロリアクタは、発明9から14の中から選択される1発明のマイクロリアクタにおいて、前記分流器(20)から排出されて前記マイクロ流路(12)に導入される前記セグメントは、1mm以下に細分化され、並列に配置されたことを特徴とする。
【0040】
本発明の発明18のマイクロリアクタは、発明8のマイクロリアクタにおいて、
前記マイクロ流路(20)の断面積の直径は、前記絞りの後、1mm以下であることを特徴とする。
【0041】
本発明の発明19のマイクロリアクタ用の分流器は、発明8から18の中から選択される1発明のマイクロリアクタにおいて、前記分流器(20)は、前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)に接続され、前記試料供給流路(14)それぞれに接続された導入部(21、22、51、52)と、前記導入部(21、22、51、52)に接続され、前記溶液毎に流れの方向を変えて複数の流れに分流して、前記導入部(21、22、51、52)からの前記溶液の種類毎に複数のセグメントに細分化して排出する中間部(23、24、53、54、55、56)と、前記中間部(23、24、53、54、55、56)から排出され、細分化された前記溶液の各種類を合流させて前記溶液を混合させ、かつ、前記導入部、前記中間部で各セグメント間に生じる圧力損失差を相対的に小さくするための排出孔を有する排出部(16,25、40、56)とからなることを特徴とする。
【0042】
本発明の発明20のマイクロリアクタ用の分流器は、発明19のマイクロリアクタ用の分流器において、前記孔の大きさを調整して圧力損失を調整し、セグメント流量を調整することにより、前記排出部(16、25、40、56)から排出された後のセグメントの流れに垂直な方向の厚みを調整することを特徴とする。
【0043】
本発明の発明21のマイクロリアクタ用の分流器は、発明19のマイクロリアクタにおいて、前記合流流路(16)は、排出部に底面が連結され、頂点が前記マイクロ流路(12)に連結された円錐形であることを特徴とする。
【0044】
本発明の発明1から7のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、ナノ粒子を製造するための方法であると良い。更に、前記マイクロリアクタによる化合物の製造方法は、良溶媒に溶解させたナノ粒子原料を貧溶媒と短時間に混合してナノ粒子を製造する方法であると良い。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明のマイクロリアクタは、化合物の製造に必要な反応溶液を細かいセグメントに細分化して均一に混合し、隣接するセグメント間の異種の反応溶液同士の接触反応によって化合物を製造する。また、マイクロリアクタ内を流れている反応溶液に乱流を発生させてマイクロ混合して化合物を製造する。これにより、反応溶液はマイクロ混合され、混合時間が抑制できるので、反応溶液の均一な混合ができる。
【0046】
また、セグメントの大きさ、及び配置を制御してセグメントの最適化を図ることで、管壁への析出を妨ぎ、生成物の生産効率が向上した。
更に、セグメントの大きさ、及び配置を制御することで、品質の揃った、より粒度分布の細かいナノ粒子を連続的に生産することが可能になった。更に、本発明のマイクロリアクタ用の分流器は、通常の機械加工方法で製造可能であるから、大量生産も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器について、図に従って説明する。 図1は、本発明の実施の形態のマイクロリアクタ10の全体を示す概略図である。このマイクロリアクタ10は、複数の供給管14から供給された化合物生成用の溶液を分流器20内で複数のセグメントに分流し、合流部16内で混合し、マイクロ流路12内で反応させて化合物を生成する。
【0048】
分流器20は3次元的な流路配置を持ち、この内部は溶液を複数のセグメントに分流して、マイクロ流路12に層流、又は乱流で供給する構造である。分流器20は、溶液を流すための貫通した孔を空けた複数の平板を組み合わせて、流路に沿って積層して構成されており、3次元的な流路が形成されている。また、マイクロリアクタ10は、マイクロ流路12を流れている溶液に乱流を発生させるための乱流発生手段17を有する。
【0049】
以下、本実施の形態のマイクロリアクタ10、マイクロリアクタ10の分流器20、乱流を発生させるための乱流発生手段17等を図面を参照しながら更に詳細に説明する。図2は、分流器20を溶液の流れ線に沿ってある断面で切断したときの構造を示す断面図である。図3は、分流器20を構成する各層の構造を示す図である。
【0050】
〔マイクロリアクタ10の構造〕
マイクロリアクタ10の反応器としては、1μmから1mmの管路、空間を備えた反応器が利用される。例えば、本例では1μmから1mmの管内径を持つマイクロ流路12を利用した。図1に図示するように、マイクロリアクタ10は、溶液を供給する供給管14、供給された溶液を複数のセグメントに分流するための分流器20、溶液を絞るための合流部16、反応を行わせるためのマイクロ流路12、及び反応後の液体と生成粒子を取り出すための排出管18を有する。また、マイクロ流路12内には、この中を流れている溶液に乱流を発生させるための乱流発生手段17を有している。
【0051】
供給管14は、原料となる溶液をマイクロリアクタ10に導入するためのものであり、1種、又は複数の溶液を同時又は、時間差をおいて供給するために互いに平行に複数本配置されている。供給管14には、溶液を一定の圧力、流速で導入することが好ましい。そのためには、この供給管14には、溶液を入れたシリンジと、シリンジを供給管14と接続するためのシリンジコネクタと、シリンジから供給管14に供給される溶液の注入量を調整するためのポンプ、流量調整弁(図示せず)等が連結されている。
【0052】
本実施の形態においては、2種類の溶液(溶液Aと溶液B)をマイクロリアクタ10に導入し、その反応を行わせるものである。しかしながら、生成物の種類、反応の制御によっては、3以上の種類の溶液をマイクロリアクタ10に導入し、全溶液同士、又はその一部の溶液同士の反応を、同時、又は時間差を置いて供給して反応を行わせても良い。
【0053】
分流器20は、反応溶液を細かいセグメントに分流するためのものである。溶液Aと溶液Bは、供給管14から分流器20に供給される。分流器20に供給された溶液Aと溶液Bは、それぞれ複数の流れ、即ちセグメントに分流(分岐)されて、分流器20から排出される。この流れを、セグメントと定義して説明を行う。セグメントの形状は、分流器20の構造によるもので、分流器20の構造を変えることで変更することができる。
【0054】
図2に示すように、溶液Aは、2以上のセグメントAに分流される。同様に、溶液Bは、2以上のセグメントBに分流される。分流器20から排出されとき、セグメントAとセグメントBは、所定の配列をして配置される。例えば、セグメントAと隣接するセグメントは全てセグメントBになるように配置することができる。セグメントBは同様である。この配置は、分流器20の構造によるもので、その内部の区画を設計変更することによってセグメントAとBの互いの配置を変更することができる。
【0055】
本実施の形態においては、図3(e)に図示したように、最終的にはセグメントAとセグメントBが交互に配置されている構造になる。図2と図3に示すように、分流器20は、積層された複数の層、言い換えると所定の厚みを有した隔壁からなる。分流器20は、所定の形状の複数の貫通孔を空けた板を重ねたような構造になっている。これらの貫通孔は、溶液を通すための3次元的な流路を形成する。
【0056】
図2には、分流器20の断面図を示している。分流器20は、溶液の流れに沿って第1層21から第5層25の5層に構成されている。第1層21は、分流器20を供給管14に接続し、かつ分流器20に2本の供給管14から溶液を導入するためのものである。第1層21は、2本の供給管14から供給される溶液を貯留し、第2層22に供給するように、供給管14の本数に対応して2部屋に区画されている。
【0057】
第2層22から第4層24は、溶液の流れる流路を分岐し、溶液を各セグメントに分流するための層である。第2層22から第4層24から形成される3次元的な流路によって、第1層21から供給された溶液の流れの方向を変更、及びこの溶液を複数の流れに分流する。第5層25は、複数のセグメントに分流された溶液を合流部16に排出するためのものである。第5層25の前端面は、円錐状の合流部16の底面に接続されている。
【0058】
第1層21から第5層25の構造を、図3(a)から図3(e)に図示している。即ち、図3(a)は第1層21の切断面図、図3(b)は第2層22の切断面図、図3(c)は第3層23の切断面図、図3(d)は第4層24の切断面図、図3(e)は第5層25の切断面図である。第1層21は、区画された貫通孔である2つの三角形状の三角孔21A、及び三角孔21Bとから構成されている。各第1層21〜第5層25は、実線で示す複数の貫通孔を有する構造になっており、点線は想像線である。各層の孔には、「A」、「B」の文字を示しているが、それぞれ溶液A、溶液Bの通路を意味する。
【0059】
文字「A」は、溶液Aがこの孔を通って流れることを意味する。文字「B」は、溶液Bがこの孔を通って流れることを意味する。また、分流器20中の溶液の流れを理解しやすくするために、図3(b)〜(e)には想像線で各層と隣接する前層の孔を重ねて想像線で図示している。例えば、図3(a)の三角孔21A、三角孔21Bを図3(b)に想像線で図示している。同様に、図3(c)から図3(e)には、前の層から各層に溶液が流れ込むとき、前の層の孔を各層に想像線で図示している。
【0060】
前述したように、第1層21は、図3(a)に図示するように、区画された空間である三角形の2つの三角孔21A、21Bを有している。三角孔21Aには、溶液Aが供給管14から供給される。三角孔21Bには、溶液Bが供給管14から供給される。第2層22は、図3(b)に図示するように、第1層21から第2層22に分岐しており、供給された溶液Aを3つの流れに分流している。同様に、第1層21の三角孔21Bから供給される溶液Bは、第2層22で4つの流れに分流している。
【0061】
この分岐のみでは、図3(b)に示すように、溶液A、溶液Bは矩形の対角線で結んだ一方側のみに、それぞれ流れることになる。第3層23は、図3(c)に図示するように、第2層22の各孔から供給された溶液の一部を横方向(角度90度曲げた方向)に方向変換して流れる。これによって、図3(c)に示すように、第3層23の溶液Aは、細長い3本の流れとなり、溶液Bは4本の流れとなる。第4層24は、図3(d)に図示するように、小さい四角形の孔を複数個有し、第3層23の各孔から供給された溶液それぞれを更に複数の流れに分流している。
【0062】
第5層25は、第4層24の孔を1ないし2個をまとめるような構造になっている。結果的に溶液Aと溶液Bは、交互に配置された複数のセグメントに分流されている。合流部16の内部空間は、角錐状の形をしており、分流器20の第5層25に接続され固定されている。合流部16は、内部は区画されておらず1つの流路からなる。分流器20の第5層25から排出される各セグメントは、全て合流部16に供給される。
【0063】
合流部16の内径は、溶液の流れが下流になるほど細くなって、それにともない連続の理により溶液の流速が速くなる。マイクロ流路12の後端は、合流部16の前端に接続されている。マイクロ流路12内では、溶液Aと溶液B同士の反応が行われる。合流部16に接続されていないマイクロ流路12の前端は排出管18に接続されている。排出管18は、マイクロ流路12の下流の一部とするものであっても良い。排出管18からは、溶液Aと溶液Bの反応生成物と、残留溶液が排出される。
【0064】
なお、上述したように合流部16の内径は溶液の流れが下流になるほど細くなる構造でなくても良い。合流部16の内径は、反応に大きな影響を及ぼさない場合は、必ずしも溶液の流れが下流になるほど細くする必要はない。合流部16は、分流器20から排出された溶液をマイクロ流路12内に導くためのものであるので、合流部16の内径は、合流部16の排出端の径と、マイクロ流路12の内径をスムースに接続できるような構造になることが望ましい。
【0065】
〔マイクロリアクタ10の材質〕
マイクロリアクタ10の材質は、基本的に原料溶液および副生成物との反応により操業に悪影響を与えない物を使用する。マイクロリアクタ10のマイクロ流路12、分流器20、合流部16、排出管18等には、次ぎのような材質を使用する。例えば、ステンレス、ニッケル(Ni)、ハステロイ等の耐薬品制の高い金属材料、ガラス、アルミナ、ムライト、炭化珪素等のセラミックス製品等の無機材料、及びPTFE,PEEK、ポリイミド、ポリプロピレン等の高分子材料を、原料溶液、副産物との反応、及び、マイクロリアクタ10の操作時の圧力、温度、更に、熱伝導等を勘案して選択する。
【0066】
〔分流器20の製造方法〕
分流器20は、3次元的な流路を形成する第1層21から第5層25の5層からなる。第1層21から第5層25までをそれぞれ平板に孔を開け作成し、これを重ねてボルト、接着剤、溶接、拡散接合、圧着等で組み立てることにより、製造することが可能である。このために、低コストで大量生産が可能である。更に、第1層21から第5層25の各層を独立して設計することができ、分流器20の設計変更も容易にできる。分流器20は、
第1層21から第5層25を組み立てるとき、各層間の接合部から他のセルに溶液が流入したり、溶液の流れが大きく妨げられないようにする必要があることが好ましい。
【0067】
〔分流器20の大きさ〕
ここで、マイクロリアクタ10の構成部分の代表的な大きさを示す。分流器20によって分流されたそれぞれのセグメントは、1mm以下の直径であることが好ましい(図3(e)を参照)。つまり、供給管14から供給された溶液は、辺の長さが1mm以下の断面が円形、又は矩形の流れに細分化される。これらの細分化されたセグメント全てを合流部16で合流させている。それから、合流部16の内径を小さくすることで、合流された溶液を収縮させている。このとき、各セグメントの幅は狭い方が混合速度の向上には望ましく、100μm以下になることが特に好ましい。
【0068】
分流器20の代表的なディメンジョンは、以下の通りである。外観は、1cm四方の立方体であり、これが上述のように6層に分割されている。各層の厚みは、2mmである。マイクロリアクタ10は、これらの大きさに制限されるものではなく、必要に応じて設計変更し、使用することが可能である。
【0069】
〔様々なセグメントの配置〕
分流器20から合流部16に供給される各セグメントの形状は、第5層25の設計変更によって決まるので、第5層25の設計を変更して分流器20を製造することで、様々形状のセグメントに対応できる。例えば、図3(e)に図示した第5層25の正方形の形状を、四角、円形、楕円形、三角形、その他の多角形に自由に変更することが可能である。
【0070】
分流器20から合流部16に供給される各セグメントの断面配置は、基本的に第1層21から第5層25の設計を変更することで代えることができる。図3(e)には、溶液Aと溶液Bのセグメント同士が交互に配置されるように設計しているが、これを変更して、特定の形状に変更することが可能である。例えば、図5に図示したように断面が円形のセグメントにすることが可能である。
【0071】
〔乱流発生手段17について〕
セグメントを配列した溶液の束に乱流を生じさせることにより、直接ミクロ混合を施する。このミクロ混合により、混合時間を抑制し、均一な混合を達成する。乱流を発生させるための乱流発生手段17としては、次のような手段をとる。
【0072】
第1の乱流発生手段
マイクロ流路12の管の内径の大きさを変えることにより、流体の線速(m/s)を調整し、乱流を発生させる。乱流の強さは、基本的にはRe数に依存するので、それを制御することで溶液の混合を制御できる。マイクロ流路12の内径、溶液の粘度からRe数が計算できる。マイクロ流路12の内径を大きくしたり小さくしたりする操作を繰り返すことで、乱流を発生させたりすることが可能である。Re数が、例えば200以下(Re<200)の低い場合は、その乱流は抑えられ、溶液は元の層流になる。このように、マイクロ流路12の一部にのみに乱流を生じさせることが可能である。
【0073】
第2の乱流発生手段
図4に示すように、マイクロ流路12の中にじゃま板26や羽根車等の装置を配置する。マイクロ流路12を流通している溶液は、これらの装置を通るときに、溶液の層流が局所的に乱れ乱流になる。上記と同様に、Re数が、例えば200以下(Re<200)の低い場合は、乱流は元の層流になり、マイクロ流路12の一部にのみに乱流を生じさせる。図4の(a)の断面図には、マイクロ流路12の中にじゃま板26を乱流発生手段17として設置している概要を図示している。図4(b)には、図4(a)のA−A断面図を図示している。領域27は、マイクロ流路12に乱流が起こる部分を示している。溶液がこの領域27より下流になると層流になる。
【0074】
第3の乱流発生手段
図5は、第3の乱流発生手段を示すマイクロ流路12の断面図である。マイクロ流路12内には、螺旋固定翼30が固定配置されている。螺旋固定翼30の中心線は、マイクロ流路12の中心線と一致する位置に配置されている。螺旋固定翼30は、板金材を螺旋状に捻って作られたものである。合流部16から送られた混合された溶液Aと溶液Bとは、固定螺旋翼30でその翼に沿って螺旋状に捻られて送られている間に混合が促進される。
【0075】
第4の乱流発生手段
図6(a)及び図6(b)は、回転するプロペラをマイクロ流路12に配置した例である。近年は、微細な金属、合成樹脂等の機械加工が可能となり、マイクロ流路12内でも回転するマイクロ機器である回転するプロペラ機構を製造できる。2枚の羽根を備えたプロペラ31は、軸受32で回転自在に支持されている。軸受32は、支持部材33でマイクロ流路12内で固定されている。従って、溶液が流れてくると、プロペラ31は回転を開始し、溶液を攪拌することになる。
【0076】
第5の乱流発生手段
マイクロ流路12を超音波で照射し、マイクロ流路12を流通する溶液を擾乱させて乱流を発生させる。
【0077】
第6の乱流発生手段
混合部16の排出端の内径を溶液に乱流を発生するまでに絞って小さくする。上述した混合部16の排出端は、各セグメントを0.1mm以下になるように絞っているが、それより細くなるまでに絞り、乱流を発生させる。
【0078】
第7の乱流発生手段
混合部16から排出された溶液は、スパイラル状又はカーブを形成しているマイクロ流路12に導入される。溶液がマイクロ流路12に流入し、すぐにスパイラル状又はカーブのところで乱流を発生させる。
【0079】
第8の乱流発生手段
上記の第1から第7の乱流発生手段を繰り返して又は組み合わせて利用する。Re数が低い場合は、乱流はすぐに層流になるので、溶液が更に分子拡散し、反応が行われる。第1から第7の乱流発生手段の一つを繰り返して又は組み合わせて実施すると、溶液に部分的に乱流を発生されてマイクロ混合を行い、それから分子拡散で反応を行わせてから再度乱流を発生されてマイクロ混合を行って反応を行うようになる。これによって、リアクター内での反応が均一になり、副生成物の生成量が低下し、製造される粒子の大きさが均一になる。
【0080】
混合部16と、マイクロ流路12に設置されている乱流発生手段17との間にはマイクロ流路12を流れる溶液は、そのセグメント間に分子拡散を起こしながら反応が行われる。この混合部16と乱流発生手段17との距離を変更することで、反応の制御を行うこともできる。この距離が短くし、セグメントが混合されてからできるだけ短距離で乱流によってマイクロ混合されることが、生成物が単一大きさの粒子になる。
【0081】
〔乱流の強さについて〕
Re数で規定される乱流の強さを制御することにより、混合速度と、管壁への付着の抑止を両立させる。
【0082】
〔加熱・冷却〕
マイクロリアクタ10は、必要に応じて、熱交換板を配置し、温度分布の発生を防ぐことができる。また、所定の温度にしたオイルバス等の液体中にマイクロ流路12を配置させて、反応溶液を加熱又は冷却することができる。
【0083】
〔ナノ粒子〕
本実施の形態のマイクリアクタ10は、粒径1nm〜100nmのナノ粒子を生成する反応に適応することができるものである。このナノ粒子を生成するためのものとしては、貧溶媒中での晶析反応、タンニン酸およびクエン酸を還元剤・保護材とする金ナノ粒子の合成、反応溶液を反応温度まで加熱した後に急速に混合する半導体ナノ粒子の合成が掲げられる。
【0084】
〔他の実施の形態〕
以下に、本発明の他の実施の形態を示す。本発明の他の実施の形態は、本発明の実施の形態と基本的に同じであり、その異なる部分だけの説明を行う。
【0085】
〔圧力損失の調整〕
図10には、分流器20の他の実施の形態の概要を図示している。図10のぶんりゅう20器の構成と構成部分の機能は図3の分流器20と同じであり、次の点が異なる。図10(b)の第2層22は溶液Aが流れるための孔が5を備えている。これに伴い、図10(c)、図10(d)、図10(e)にも溶液A用の孔が備えられている。図10では、孔の大きさを適切に調節することで、各孔を通過する溶液の分布を調節することができる。すなわち、孔の大きさが大きいほど孔通過時の圧力損失が小さくなるために、孔を通過する溶液の量は大きくなる。
【0086】
第4層24の後に孔の大きさを小さくする層を設けることで、圧力損失調整を行うことも可能である。例えば、図10(f)で図示した層40を第5層25の後に設ける。層40では、孔の大きさを図10(d)の孔より小さくし、全体の圧力損失が大きくなりすぎない程度(操業に問題がない程度)とすることが望ましい。これにより、図10(a)〜(d)で生じる、各セグメント間の圧力損失の差を相対的に小さくすることが可能になる。
【0087】
〔不活性な溶媒の活用〕
管壁への析出を妨ぎながら、生産性を向上させるために、セグメントの配置を最適化する。例えば、マイクロ流路12の管内を流れる溶液の外周に不活性な溶媒(もしくは沈殿剤の溶媒)を配置しておき(図7を参照)、内側に原料と沈殿剤を市松模様のように交互に組み合わせて配置する。図7には、マイクロ流路12の断面図を図示しており、円28の外側が不活性溶媒C、円28の内側が溶液A、Bになっている。外側の不活性層の厚さは、分流器20の構造により制御することができる。つまり、反応用の溶液A、Bとは別に不活性溶媒Cを分流器20に供給し、分流器20から排出されるときに溶液A、BのセグメントA、Bの外側に不活性溶媒のセグメントCが配置されるようにする。
【0088】
〔反応温度のコントロールについて〕
複数の原料溶液および溶媒が接触したあと、(若しくは接触する前に)途中に適切な熱交換器を設置することにより、反応温度をコントロールすることが可能である。分流器20よりも上流では、伝熱ヒーター、熱媒体や熱交換器等による加熱等、通常用いられている方法で熱交換してから分流器20に流し込む方法が用いられる。分流器20よりも下流では、マイクロ流路12が細いので、適切な温度に設定したオイルバスの中をマイクロ流路12を流通させる方法が用いられる。
【0089】
また、分流器20の出るセグメント全てを合流部16によって合流させて、第2分流器34によってこれを2以上に再度分流させて、それぞれ別々のマイクロ流路35に供給し、それぞれのマイクロ流路35を熱交換器36によって温度制御することが可能である。この場合は、第2分流器34の構造を適切に設計する(図8を参照)。
【0090】
〔分流器20の他の構成〕
図9は、分流器20を構成する各層の構造を示す図である。分流器20は、第1層51から第6層56の6層から構成される。第1層51から第6層56の構造を、図9(a)から図9(f)に図示している。第1層51は、区画された貫通孔である2つの三角形状の三角孔21A、及び三角孔21Bとから構成されている。各第1層51〜第6層56は、実線で示す複数の貫通孔を有する構造になっており、点線は想像線である。各層の孔には、「A」、「B」の文字を示しているが、それぞれ溶液A、溶液Bの通路を意味する。
【0091】
文字「A」は、溶液Aがこの孔を通って流れることを意味する。文字「B」は、溶液Bがこの孔を通って流れることを意味する。また、分流器20中の溶液の流れを理解しやすくするために、図9(b)〜(f)には想像線で各層と隣接する前層の孔を重ねて想像線で図示している。第1層51は、図9(a)に図示するように、区画された空間である三角形の2つの三角孔51a、51bを有している。
【0092】
三角孔51aには、溶液Aが供給管14から供給される。三角孔51bには、溶液Bが供給管14から供給される。第2層52は、図9(b)に図示するように、第1層51から第2層52に分岐しており、供給された溶液Aを5つの流れに分流している。同様に、第1層51の三角孔51bから供給される溶液Bは、第2層52で4つの流れに分流している。この分岐のみでは、図9(b)に示すように、溶液A、溶液Bは矩形の対角線で結んだ一方側のみに、それぞれ流れることになる。
【0093】
第3層53は、図9(c)に図示するように、第2層52の各孔から供給された溶液の一部を横方向(角度90度曲げた方向)に方向変換して流れる。これによって、図9(c)に示すように、第3層53の溶液Aは、細長い5本の流れとなり、溶液Bは4本の流れとなる。第4層54は、図9(d)に図示している。第5層55は、図9(e)に図示している。 第4層54と第5層55は、溶液A、Bの流れを大きくしたり、小さくしたりしている。
【0094】
更に、溶液A、Bを合流、分流している。第6層56は、第5層55の孔を流れる溶液を1以上に分流するような構造になっている。結果的に溶液Aと溶液Bは、複数のセグメントに分流されている。合流部16の内部空間は、分流器20の第6層56に接続され固定される。合流部16は、内部は区画されておらず1つの流路からなる。分流器20の第6層56から排出される各セグメントは、全て合流部16に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、新材料開発分野、バイオ技術分野、医療分野に利用すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明の実施の形態のマイクロリアクタ10の概要を図示した図である。
【図2】図2は、マイクロリアクタ10の分流器20の構造を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(e)は、分流器20を構成する各層の概略図である。図3(a)は図2のa−a線の切断面図、図3(b)は図2のb−b線の切断面図、図3(c)は図2のc−c線の切断面図、図3(d)は図2のd−d線の切断面図、図3(e)は図2のe−e線の切断面図、図3(f)は他の実施の形態の圧力損失の調整を行うための層の断面図である。
【図4】図4は、マイクロリアクタ内にじゃま板を設置した概要を示す断面図であり、図4(a)は、マイクロ流路12の断面図、図4(b)は、じゃま板26の断面図である。
【図5】図5は、マイクロリアクタ内に固定螺旋翼を配置した例を示す断面図である。
【図6】図6は、マイクロリアクタ内に回転するプロペラを配置した例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施の形態のマイクロリアクタ内に不活性な溶媒を活用する例を図示した図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施の形態のマイクロリアクタの概要を図示した図である。
【図9】図9(a)〜(f)は、分流器20を構成する各層の概略図である。
【図10】図10(a)〜(f)は、その他の実施の形態の分流器20を構成する各層の概略図である。
【符号の説明】
【0097】
10…マイクロリアクタ
12、35…マイクロ流路
14…供給管
16…合流部
17…乱流発生手段
18…排出管
20…分流器
21、51…第1層
22、52…第2層
23、53…第3層
24、54…第4層
25、55…第5層
26…じゃま板
30…固定螺旋翼
31…プロペラ
33…支持部材
32…軸受
36…熱交換器
34…第2分流器
56…第6層
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の溶液をマイクロ流路内で反応させて、化合物を製造するためのマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器に関する。更に詳しくは、溶液を複数のセグメントに細分化して化学反応用のマイクロ流路内に供給して、効率的に化学反応を行うための化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物の生産や製造においては、化学反応試料の供給、混合、反応活性化のための熱供給、熱除去、触媒反応の効率化等、化学反応の反応制御を向上させることに日々努力が重ねられている。反応制御の向上によって、生産安全性、反応生成物の収率、反応生成物の純度、有用な高活性中間生成物の単離の向上が可能になる。
【0003】
従来から化学反応には大きな反応槽が用いられることが一般的である。近年は、微細な粒子を生成する装置として、マイクロリアクタ、又はマイクロミキサー等に代表される複数の溶液供給管に繋がったマイクロ流路内で、化学反応を行う装置の研究が行われている。これらの装置を用いた化学反応の効率化、新規化合物の創製等を目的とする研究が注目されている。このマイクロミキサー又はマイクロリアクタは、サブマイクロメータからミリメータまでのオーダーの内径を有する狭い流路内で、複数の流体の拡散、混合で化学反応を起こすものである。
【0004】
複数の流体を混合する目的のものは、マイクロミキサーと定義されることが一般的である。マイクロリアクタは、複数の流体を拡散、混合し、又は混合しながら化学反応を行うためのものである。以後は、マイクロリアクタはマイクロミキサーを含むものとして説明する。
【0005】
流路を小さくすると流路内の液体の熱容量が小さくなるので、マイクロリアクタを構成する他部から流路への熱交換を速やかに行うことが可能になる。これにより流路内の化学反応の温度制御が容易にできる。また、マイクロリアクタは高効率で、流路内を流れている溶液相間の化学反応を制御することが可能な点で、化学合成、新規化合物の造成、各種の試料の分析や解析等に革新的な変革をもたらすものとして大きく期待されている。
【0006】
アクティブな化学反応制御装置としては、マグネチックスターラ等のような微小な領域を機械的に混合することにより、迅速な混合を行っているものがある。マグネチックスターラは、反応液が入っている容器の中に棒状、又は板状の撹拌用の永久磁石を配置している。容器の外側に配置された駆動用の永久磁石をモータによって駆動すると、その磁力を受けて撹拌用の永久磁石が回転して、反応液を撹拌し、その反応を促すものである。
【0007】
特許文献1には、粒子径1μm〜1mmのマイクロ流路を用いたナノ粒子の製造方法が開示されている。詳しくは、マイクロ流路内に粒子形成用の前駆体含有溶液を、連続的に供給しながら反応開始温度までに急速加熱し、反応を行わせたのち、急速冷却してナノ粒子を製造するものである。この製造方法は、加熱温度と時間制御をすることにより粒径を制御するものである。
【0008】
特許文献2には、マイクロリアクタの構造が開示されている。マイクロリアクタのマイクロ流路に、流体A、Bを流体導入部から合流させて分子拡散により複合反応を行わせている。このとき、マイクロ流路の入口の径方向断面において、流体A、Bを複数の流体セグメントA、Bに分割して合流させ、これらの流体セグメントA、Bを層流として流通させつつ分子拡散により混合して複合反応を行わせる。
【0009】
また、可動部、動力部を持たない化学反応制御装置としては、スタティックミキサー等がある。スタティックミキサーは、管内を流れる混合液の流れを複雑にして混合を促すためのものである。スタティックミキサーは、長方形の板状のエレメントをねじって管内に配置し、混合液はこのエレメントを通過するごとにその流れが変わるものである。例えば、混合液がこのエレメントを通過するとき分割されたり、エレメントのねじれに沿って管の中央部から壁部へ、または、壁部から中央部へと替えられる。
【0010】
乱流ではなくカオス対流を用いた混合、反応器としてはカオス式ミキサーがある。特許文献3には、カオス式ミキサーを開示している。スタティックミキサー等では、基本的に、複数溶液の層流を交互に重ねることにより、混合を行う。カオス式ミキサーは、複数溶液の層流を3次元的に折り重ねることにより混合をおこなう。
【0011】
非特許文献1のセラミックマイクロリアクタは、層流で流れている2種類の反応溶液でナノ粒子を生成している。非特許文献2のジグザグ形のチャネルは、2種類の溶液を注入して、ナノ粒子を生成している。
非特許文献3のマイクロリアクタは、2重管を用いて同心円状の液の流れを作り、内側の液の中のみで粒子を合成することにより、合成された粒子が管壁に付着するのを抑止している。
【特許文献1】特許公開2003−225900号公報
【特許文献2】特許公開2005−262053号公報
【特許文献3】特許公開2004−283791号公報
【非特許文献1】H.Wang et.al., Chem. Comm., pp. 1462-1463 (2002)
【非特許文献2】Paul J.A.Kenis et.al., Science, vol285,p83-85 (1999)
【非特許文献3】M.Takagi et.al., Chem. Eng.J., 101, 269 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
1秒以下の時間で反応が進行するようなナノ粒子合成反応、即ち、タンニン酸及びクエン酸を還元剤とする金ナノ粒子の合成反応や、貧溶媒の添加による晶析反応等では、混合が不均一な時点での反応の進行があると、反応が不均一になる。このため、析出速度が速く、沈殿剤と原料の反応時間に比べて十分に短時間で均一に混合する必要がある。しかし、従来から、反応器として攪拌タンク等を用いたバッチ方式の合成法では、容器の容積が大きくなると、溶液間の混合は、センチメーターオーダーのマクロ混合、ミリメーターオーダーのメゾ混合、マイクロメーターオーダーのマイクロ混合の順に混合がなされる。このために、溶液間の混合に時間がかかる。
【0013】
一方で、最近開発されたマイクロリアクタによる拡散混合は、混合時間が反応種の拡散速度に規定される。層流下の溶液の拡散による混合速度は、次のペクレ数Peを用いて求めることができる。
Pe=Dt/L2 …(式1)
ただし、D[m2/s]は拡散係数、t[s]は時間、L[m]は拡散のための長さ(管径)である。
【0014】
完全混合するためには、ペクレ数Peが1になることが条件であり、時間tが
t<L2/D …(式2)
の時間で完全に混合する。また、拡散係数Dは、次のストークス−アインシュタインの式で大まかに計算可能である。
D=kT/(6πηα) …(式3)
ただし、k[J/K]はボルツマン定数、T[K]は絶対温度、η[Pa・s]は粘性係数、α[m]は粒子径又は分子の拡散径である。
【0015】
式3においては、拡散係数Dは粒子径αに反比例する。例えば、水中の(粒子径α=)0.3nmの大きさの分子の拡散係数Dは、約10−9m2/sになる。(粒子径α=)3nmのときは、拡散係数Dは10−10m2/sになる。これから、2秒で完全混合させるための層幅は、0.3nmの際には30μm、3nmの際には10μmになる。よって、低分子(大きさ0.3nm程度)の場合には、10秒以下で完結する反応に関しては、30μm以下の層厚であることが望ましい。
【0016】
しかしながら、この場合でも数秒程度で反応が十分に(反応の種類にもよるが、例えば、最終的な収率の数10%程度)進行するような場合では、式1から考えて、拡散長Lを数μm若しくはそれ以下のオーダーに低下させなければならない。このため、反応中間体又は反応生成物が副次的反応に関与する場合や、晶析速度がサブ秒以下の速い晶析反応等では、混合が不均一な時点が起こり、複生成物の生成、粒子径分布の増大や凝集等が起こりやすいという問題がある。
【0017】
更に、管型反応器の場合、反応器の壁に生成物、原料物質、副生成物等が接触するとそれらが析出し、連続的操業が妨げられることもある。しかしながら、スタティックミキサーでは、流れ方向に垂直な方向でのフローパターンは、一次元的にしか制御できない。また、カオス式ミキサーは、基本的には層流を3次元的に折りたたむということを行うが、複雑な構造であるために、特に流速が高くなると部分的に乱流を起こしやすく、そのために、反応器壁への反応種の接触が起こりやすい。アクティブなマイクロミキサーは、基本的に乱流であり、反応器壁への反応種の接触を妨げることは難しい。
【0018】
上記に挙げたスタティックミキサー等では、層界面が容器の壁面に接触するので、異なる溶液の接触により生じた界面も容器の壁面と接触する。このように容器の壁面と接触すると、層界面での反応により生じた生成物が管壁へ付着したり、この生成物と管壁の反応が起こることがある。このように、溶液の接触により生じた生成物が、容器の壁面との相互作用を起こし、それが全体の反応に影響を及ぼす場合がある。
【0019】
一方、管壁と反応溶液の接触を断つためには、2流管を用いる方法がある(非特許文献3を参照)。この内部は基本的に層流であるために、混合が拡散で起こる。しかし、拡散時間を短くするには、中心部の反応溶液を細くする必要があり、そのために生産量が低下し、逆に生産量を向上させるために中心部の反応溶液の層を太くすれば、混合時間が長くなる。
【0020】
さらに、特許文献1のナノ粒子の製造方法においては、ナノ粒子を合成する際、予め2液を混合したり、ナノ材料攪拌子によって、試料溶液と試薬溶液を強制的に攪拌したりし、その後加熱を行って生成物を得ている。この場合は、管の内壁と混合溶液が接触するために、上記の相互作用が起きる場合も多い。また、管内が層流であっても、壁との摩擦により流れと垂直な方向に流速分布が出来るため、加熱時間に若干のばらつきが生じて生成されたナノ粒子の粒度分布が広がる問題がある。
【0021】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記の目的を達成する。
本発明の目的は、管壁と中間生成物、管壁と生成物との相互作用を絶ち、混合時間を抑制しながら複数の原料溶液を混合し、反応を行わせて化合物を製造するためのマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器を提供する。
【0022】
本発明の他の目的は、管壁への生成物の析出を妨ぎながら、生成物の生産性を向上させるためのマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、前記目的を達成するため、次の手段を採る。
本発明の発明1のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させて化合物を製造するマイクロリアクタによる製造方法において用いられるものであり、前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに分流器によって細分化し、隣接する前記セグメントの前記溶液をマイクロ流路内に層流で合流させ、前記合流後、乱流発生手段によって前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合して前記反応を行わせることを特徴とする。
【0024】
本発明の発明2のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記層流で合流後に前記溶液の流れ方向の断面を絞って、前記溶液の流速を早くして前記乱流を発生させることを特徴とする。
【0025】
本発明の発明3のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記乱流は、前記溶液を前記溶液の流れる軸線を中心にして旋回させるものであることを特徴とする。
【0026】
本発明の発明4のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から3中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記複数のセグメントに細分化された前記溶液を層流で合流させた後、隣接する前記セグメント間に分子拡散反応を行わせた後、前記乱流発生手段によって前記溶液をマイクロ混合させて前記反応を行わせることを特徴とする。
【0027】
本発明の発明5のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から3中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記反応を制御するために、前記マイクロ流路を加熱又は冷却することを特徴とする。
【0028】
本発明の発明6のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から3中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記乱流は、Re数が200以下であることを特徴とする。
【0029】
本発明の発明7のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、発明1から6中から選択される1発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、前記化合物は、粒子の代表長さが1nmから100nmのナノ粒子であることを特徴とする。
【0030】
本発明の発明8のマイクロリアクタは、複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させるマイクロリアクタにおいて、前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)と、前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに細分化するためのもので、前記試料供給流路(14)に接続された分流器(20)と、前記セグメントを合流させるためのもので、分流器(20)に接続された合流流路(16)と、前記合流後の流路に接続され、前記溶液を混合し反応させるためのマイクロ流路(12)と、隣接する前記セグメントの前記溶液を層流で合流させた後、前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合するための乱流発生手段(17、26、30、31)と、及び前記マイクロ流路(12)で反応が行われた後、前記反応後の反応生成物を排出させるために前記マイクロ流路(12)と接続された試料排出流路(18)とからなることを特徴とする。
【0031】
本発明の発明9のマイクロリアクタは、発明8のマイクロリアクタにおいて、前記合流流路(16)は、前記合流した溶液の流速を早くするために前記断面を段階的に小さくして絞るための合流部(16)とを備えていることを特徴とする。
【0032】
本発明の発明10のマイクロリアクタは、発明8又は9のマイクロリアクタにおいて、前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路内を流れている前記溶液を攪拌するために前記溶液の流れを一部堰き止めるためのじゃま板(26)であることを特徴とする。
【0033】
本発明の発明11のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記溶液の流れる方向を軸線とする固定された螺旋状の固定翼(30)であることを特徴とする。
【0034】
本発明の発明12のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記容器の流れる方向を軸線とする回転自在な螺旋翼(31)であることを特徴とする。
【0035】
本発明の発明13のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路(12)の管の内径の大きさを小さく/又は大きくしたものであることを特徴とする。
【0036】
本発明の発明14のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、超音波を発生させる装置であり、前記超音波を前記マイクロ流路(12)に照射して、前記溶液に乱流を発生させることを特徴とする。
【0037】
本発明の発明15のマイクロリアクタは、発明8又は9において、前記乱流発生手段(17)は、前記合流流路(16)の排出端の内径を小さして前記溶液に乱流を発生させることを特徴とする。
【0038】
本発明の発明16のマイクロリアクタは、発明8から15の中から選択される1発明のマイクロリアクタにおいて、前記マイクロ流路(12)内に前記溶液の温度を加熱又は冷却して制御するための温度制御手段と、前記温度を測定するための温度センサ手段とを有することを特徴とする。
【0039】
本発明の発明17のマイクロリアクタは、発明9から14の中から選択される1発明のマイクロリアクタにおいて、前記分流器(20)から排出されて前記マイクロ流路(12)に導入される前記セグメントは、1mm以下に細分化され、並列に配置されたことを特徴とする。
【0040】
本発明の発明18のマイクロリアクタは、発明8のマイクロリアクタにおいて、
前記マイクロ流路(20)の断面積の直径は、前記絞りの後、1mm以下であることを特徴とする。
【0041】
本発明の発明19のマイクロリアクタ用の分流器は、発明8から18の中から選択される1発明のマイクロリアクタにおいて、前記分流器(20)は、前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)に接続され、前記試料供給流路(14)それぞれに接続された導入部(21、22、51、52)と、前記導入部(21、22、51、52)に接続され、前記溶液毎に流れの方向を変えて複数の流れに分流して、前記導入部(21、22、51、52)からの前記溶液の種類毎に複数のセグメントに細分化して排出する中間部(23、24、53、54、55、56)と、前記中間部(23、24、53、54、55、56)から排出され、細分化された前記溶液の各種類を合流させて前記溶液を混合させ、かつ、前記導入部、前記中間部で各セグメント間に生じる圧力損失差を相対的に小さくするための排出孔を有する排出部(16,25、40、56)とからなることを特徴とする。
【0042】
本発明の発明20のマイクロリアクタ用の分流器は、発明19のマイクロリアクタ用の分流器において、前記孔の大きさを調整して圧力損失を調整し、セグメント流量を調整することにより、前記排出部(16、25、40、56)から排出された後のセグメントの流れに垂直な方向の厚みを調整することを特徴とする。
【0043】
本発明の発明21のマイクロリアクタ用の分流器は、発明19のマイクロリアクタにおいて、前記合流流路(16)は、排出部に底面が連結され、頂点が前記マイクロ流路(12)に連結された円錐形であることを特徴とする。
【0044】
本発明の発明1から7のマイクロリアクタによる化合物の製造方法は、ナノ粒子を製造するための方法であると良い。更に、前記マイクロリアクタによる化合物の製造方法は、良溶媒に溶解させたナノ粒子原料を貧溶媒と短時間に混合してナノ粒子を製造する方法であると良い。
【発明の効果】
【0045】
本発明によると、次の効果が奏される。
本発明のマイクロリアクタは、化合物の製造に必要な反応溶液を細かいセグメントに細分化して均一に混合し、隣接するセグメント間の異種の反応溶液同士の接触反応によって化合物を製造する。また、マイクロリアクタ内を流れている反応溶液に乱流を発生させてマイクロ混合して化合物を製造する。これにより、反応溶液はマイクロ混合され、混合時間が抑制できるので、反応溶液の均一な混合ができる。
【0046】
また、セグメントの大きさ、及び配置を制御してセグメントの最適化を図ることで、管壁への析出を妨ぎ、生成物の生産効率が向上した。
更に、セグメントの大きさ、及び配置を制御することで、品質の揃った、より粒度分布の細かいナノ粒子を連続的に生産することが可能になった。更に、本発明のマイクロリアクタ用の分流器は、通常の機械加工方法で製造可能であるから、大量生産も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明のマイクロリアクタによる化合物の製造方法、そのマイクロリアクタ、及びマイクロリアクタ用の分流器について、図に従って説明する。 図1は、本発明の実施の形態のマイクロリアクタ10の全体を示す概略図である。このマイクロリアクタ10は、複数の供給管14から供給された化合物生成用の溶液を分流器20内で複数のセグメントに分流し、合流部16内で混合し、マイクロ流路12内で反応させて化合物を生成する。
【0048】
分流器20は3次元的な流路配置を持ち、この内部は溶液を複数のセグメントに分流して、マイクロ流路12に層流、又は乱流で供給する構造である。分流器20は、溶液を流すための貫通した孔を空けた複数の平板を組み合わせて、流路に沿って積層して構成されており、3次元的な流路が形成されている。また、マイクロリアクタ10は、マイクロ流路12を流れている溶液に乱流を発生させるための乱流発生手段17を有する。
【0049】
以下、本実施の形態のマイクロリアクタ10、マイクロリアクタ10の分流器20、乱流を発生させるための乱流発生手段17等を図面を参照しながら更に詳細に説明する。図2は、分流器20を溶液の流れ線に沿ってある断面で切断したときの構造を示す断面図である。図3は、分流器20を構成する各層の構造を示す図である。
【0050】
〔マイクロリアクタ10の構造〕
マイクロリアクタ10の反応器としては、1μmから1mmの管路、空間を備えた反応器が利用される。例えば、本例では1μmから1mmの管内径を持つマイクロ流路12を利用した。図1に図示するように、マイクロリアクタ10は、溶液を供給する供給管14、供給された溶液を複数のセグメントに分流するための分流器20、溶液を絞るための合流部16、反応を行わせるためのマイクロ流路12、及び反応後の液体と生成粒子を取り出すための排出管18を有する。また、マイクロ流路12内には、この中を流れている溶液に乱流を発生させるための乱流発生手段17を有している。
【0051】
供給管14は、原料となる溶液をマイクロリアクタ10に導入するためのものであり、1種、又は複数の溶液を同時又は、時間差をおいて供給するために互いに平行に複数本配置されている。供給管14には、溶液を一定の圧力、流速で導入することが好ましい。そのためには、この供給管14には、溶液を入れたシリンジと、シリンジを供給管14と接続するためのシリンジコネクタと、シリンジから供給管14に供給される溶液の注入量を調整するためのポンプ、流量調整弁(図示せず)等が連結されている。
【0052】
本実施の形態においては、2種類の溶液(溶液Aと溶液B)をマイクロリアクタ10に導入し、その反応を行わせるものである。しかしながら、生成物の種類、反応の制御によっては、3以上の種類の溶液をマイクロリアクタ10に導入し、全溶液同士、又はその一部の溶液同士の反応を、同時、又は時間差を置いて供給して反応を行わせても良い。
【0053】
分流器20は、反応溶液を細かいセグメントに分流するためのものである。溶液Aと溶液Bは、供給管14から分流器20に供給される。分流器20に供給された溶液Aと溶液Bは、それぞれ複数の流れ、即ちセグメントに分流(分岐)されて、分流器20から排出される。この流れを、セグメントと定義して説明を行う。セグメントの形状は、分流器20の構造によるもので、分流器20の構造を変えることで変更することができる。
【0054】
図2に示すように、溶液Aは、2以上のセグメントAに分流される。同様に、溶液Bは、2以上のセグメントBに分流される。分流器20から排出されとき、セグメントAとセグメントBは、所定の配列をして配置される。例えば、セグメントAと隣接するセグメントは全てセグメントBになるように配置することができる。セグメントBは同様である。この配置は、分流器20の構造によるもので、その内部の区画を設計変更することによってセグメントAとBの互いの配置を変更することができる。
【0055】
本実施の形態においては、図3(e)に図示したように、最終的にはセグメントAとセグメントBが交互に配置されている構造になる。図2と図3に示すように、分流器20は、積層された複数の層、言い換えると所定の厚みを有した隔壁からなる。分流器20は、所定の形状の複数の貫通孔を空けた板を重ねたような構造になっている。これらの貫通孔は、溶液を通すための3次元的な流路を形成する。
【0056】
図2には、分流器20の断面図を示している。分流器20は、溶液の流れに沿って第1層21から第5層25の5層に構成されている。第1層21は、分流器20を供給管14に接続し、かつ分流器20に2本の供給管14から溶液を導入するためのものである。第1層21は、2本の供給管14から供給される溶液を貯留し、第2層22に供給するように、供給管14の本数に対応して2部屋に区画されている。
【0057】
第2層22から第4層24は、溶液の流れる流路を分岐し、溶液を各セグメントに分流するための層である。第2層22から第4層24から形成される3次元的な流路によって、第1層21から供給された溶液の流れの方向を変更、及びこの溶液を複数の流れに分流する。第5層25は、複数のセグメントに分流された溶液を合流部16に排出するためのものである。第5層25の前端面は、円錐状の合流部16の底面に接続されている。
【0058】
第1層21から第5層25の構造を、図3(a)から図3(e)に図示している。即ち、図3(a)は第1層21の切断面図、図3(b)は第2層22の切断面図、図3(c)は第3層23の切断面図、図3(d)は第4層24の切断面図、図3(e)は第5層25の切断面図である。第1層21は、区画された貫通孔である2つの三角形状の三角孔21A、及び三角孔21Bとから構成されている。各第1層21〜第5層25は、実線で示す複数の貫通孔を有する構造になっており、点線は想像線である。各層の孔には、「A」、「B」の文字を示しているが、それぞれ溶液A、溶液Bの通路を意味する。
【0059】
文字「A」は、溶液Aがこの孔を通って流れることを意味する。文字「B」は、溶液Bがこの孔を通って流れることを意味する。また、分流器20中の溶液の流れを理解しやすくするために、図3(b)〜(e)には想像線で各層と隣接する前層の孔を重ねて想像線で図示している。例えば、図3(a)の三角孔21A、三角孔21Bを図3(b)に想像線で図示している。同様に、図3(c)から図3(e)には、前の層から各層に溶液が流れ込むとき、前の層の孔を各層に想像線で図示している。
【0060】
前述したように、第1層21は、図3(a)に図示するように、区画された空間である三角形の2つの三角孔21A、21Bを有している。三角孔21Aには、溶液Aが供給管14から供給される。三角孔21Bには、溶液Bが供給管14から供給される。第2層22は、図3(b)に図示するように、第1層21から第2層22に分岐しており、供給された溶液Aを3つの流れに分流している。同様に、第1層21の三角孔21Bから供給される溶液Bは、第2層22で4つの流れに分流している。
【0061】
この分岐のみでは、図3(b)に示すように、溶液A、溶液Bは矩形の対角線で結んだ一方側のみに、それぞれ流れることになる。第3層23は、図3(c)に図示するように、第2層22の各孔から供給された溶液の一部を横方向(角度90度曲げた方向)に方向変換して流れる。これによって、図3(c)に示すように、第3層23の溶液Aは、細長い3本の流れとなり、溶液Bは4本の流れとなる。第4層24は、図3(d)に図示するように、小さい四角形の孔を複数個有し、第3層23の各孔から供給された溶液それぞれを更に複数の流れに分流している。
【0062】
第5層25は、第4層24の孔を1ないし2個をまとめるような構造になっている。結果的に溶液Aと溶液Bは、交互に配置された複数のセグメントに分流されている。合流部16の内部空間は、角錐状の形をしており、分流器20の第5層25に接続され固定されている。合流部16は、内部は区画されておらず1つの流路からなる。分流器20の第5層25から排出される各セグメントは、全て合流部16に供給される。
【0063】
合流部16の内径は、溶液の流れが下流になるほど細くなって、それにともない連続の理により溶液の流速が速くなる。マイクロ流路12の後端は、合流部16の前端に接続されている。マイクロ流路12内では、溶液Aと溶液B同士の反応が行われる。合流部16に接続されていないマイクロ流路12の前端は排出管18に接続されている。排出管18は、マイクロ流路12の下流の一部とするものであっても良い。排出管18からは、溶液Aと溶液Bの反応生成物と、残留溶液が排出される。
【0064】
なお、上述したように合流部16の内径は溶液の流れが下流になるほど細くなる構造でなくても良い。合流部16の内径は、反応に大きな影響を及ぼさない場合は、必ずしも溶液の流れが下流になるほど細くする必要はない。合流部16は、分流器20から排出された溶液をマイクロ流路12内に導くためのものであるので、合流部16の内径は、合流部16の排出端の径と、マイクロ流路12の内径をスムースに接続できるような構造になることが望ましい。
【0065】
〔マイクロリアクタ10の材質〕
マイクロリアクタ10の材質は、基本的に原料溶液および副生成物との反応により操業に悪影響を与えない物を使用する。マイクロリアクタ10のマイクロ流路12、分流器20、合流部16、排出管18等には、次ぎのような材質を使用する。例えば、ステンレス、ニッケル(Ni)、ハステロイ等の耐薬品制の高い金属材料、ガラス、アルミナ、ムライト、炭化珪素等のセラミックス製品等の無機材料、及びPTFE,PEEK、ポリイミド、ポリプロピレン等の高分子材料を、原料溶液、副産物との反応、及び、マイクロリアクタ10の操作時の圧力、温度、更に、熱伝導等を勘案して選択する。
【0066】
〔分流器20の製造方法〕
分流器20は、3次元的な流路を形成する第1層21から第5層25の5層からなる。第1層21から第5層25までをそれぞれ平板に孔を開け作成し、これを重ねてボルト、接着剤、溶接、拡散接合、圧着等で組み立てることにより、製造することが可能である。このために、低コストで大量生産が可能である。更に、第1層21から第5層25の各層を独立して設計することができ、分流器20の設計変更も容易にできる。分流器20は、
第1層21から第5層25を組み立てるとき、各層間の接合部から他のセルに溶液が流入したり、溶液の流れが大きく妨げられないようにする必要があることが好ましい。
【0067】
〔分流器20の大きさ〕
ここで、マイクロリアクタ10の構成部分の代表的な大きさを示す。分流器20によって分流されたそれぞれのセグメントは、1mm以下の直径であることが好ましい(図3(e)を参照)。つまり、供給管14から供給された溶液は、辺の長さが1mm以下の断面が円形、又は矩形の流れに細分化される。これらの細分化されたセグメント全てを合流部16で合流させている。それから、合流部16の内径を小さくすることで、合流された溶液を収縮させている。このとき、各セグメントの幅は狭い方が混合速度の向上には望ましく、100μm以下になることが特に好ましい。
【0068】
分流器20の代表的なディメンジョンは、以下の通りである。外観は、1cm四方の立方体であり、これが上述のように6層に分割されている。各層の厚みは、2mmである。マイクロリアクタ10は、これらの大きさに制限されるものではなく、必要に応じて設計変更し、使用することが可能である。
【0069】
〔様々なセグメントの配置〕
分流器20から合流部16に供給される各セグメントの形状は、第5層25の設計変更によって決まるので、第5層25の設計を変更して分流器20を製造することで、様々形状のセグメントに対応できる。例えば、図3(e)に図示した第5層25の正方形の形状を、四角、円形、楕円形、三角形、その他の多角形に自由に変更することが可能である。
【0070】
分流器20から合流部16に供給される各セグメントの断面配置は、基本的に第1層21から第5層25の設計を変更することで代えることができる。図3(e)には、溶液Aと溶液Bのセグメント同士が交互に配置されるように設計しているが、これを変更して、特定の形状に変更することが可能である。例えば、図5に図示したように断面が円形のセグメントにすることが可能である。
【0071】
〔乱流発生手段17について〕
セグメントを配列した溶液の束に乱流を生じさせることにより、直接ミクロ混合を施する。このミクロ混合により、混合時間を抑制し、均一な混合を達成する。乱流を発生させるための乱流発生手段17としては、次のような手段をとる。
【0072】
第1の乱流発生手段
マイクロ流路12の管の内径の大きさを変えることにより、流体の線速(m/s)を調整し、乱流を発生させる。乱流の強さは、基本的にはRe数に依存するので、それを制御することで溶液の混合を制御できる。マイクロ流路12の内径、溶液の粘度からRe数が計算できる。マイクロ流路12の内径を大きくしたり小さくしたりする操作を繰り返すことで、乱流を発生させたりすることが可能である。Re数が、例えば200以下(Re<200)の低い場合は、その乱流は抑えられ、溶液は元の層流になる。このように、マイクロ流路12の一部にのみに乱流を生じさせることが可能である。
【0073】
第2の乱流発生手段
図4に示すように、マイクロ流路12の中にじゃま板26や羽根車等の装置を配置する。マイクロ流路12を流通している溶液は、これらの装置を通るときに、溶液の層流が局所的に乱れ乱流になる。上記と同様に、Re数が、例えば200以下(Re<200)の低い場合は、乱流は元の層流になり、マイクロ流路12の一部にのみに乱流を生じさせる。図4の(a)の断面図には、マイクロ流路12の中にじゃま板26を乱流発生手段17として設置している概要を図示している。図4(b)には、図4(a)のA−A断面図を図示している。領域27は、マイクロ流路12に乱流が起こる部分を示している。溶液がこの領域27より下流になると層流になる。
【0074】
第3の乱流発生手段
図5は、第3の乱流発生手段を示すマイクロ流路12の断面図である。マイクロ流路12内には、螺旋固定翼30が固定配置されている。螺旋固定翼30の中心線は、マイクロ流路12の中心線と一致する位置に配置されている。螺旋固定翼30は、板金材を螺旋状に捻って作られたものである。合流部16から送られた混合された溶液Aと溶液Bとは、固定螺旋翼30でその翼に沿って螺旋状に捻られて送られている間に混合が促進される。
【0075】
第4の乱流発生手段
図6(a)及び図6(b)は、回転するプロペラをマイクロ流路12に配置した例である。近年は、微細な金属、合成樹脂等の機械加工が可能となり、マイクロ流路12内でも回転するマイクロ機器である回転するプロペラ機構を製造できる。2枚の羽根を備えたプロペラ31は、軸受32で回転自在に支持されている。軸受32は、支持部材33でマイクロ流路12内で固定されている。従って、溶液が流れてくると、プロペラ31は回転を開始し、溶液を攪拌することになる。
【0076】
第5の乱流発生手段
マイクロ流路12を超音波で照射し、マイクロ流路12を流通する溶液を擾乱させて乱流を発生させる。
【0077】
第6の乱流発生手段
混合部16の排出端の内径を溶液に乱流を発生するまでに絞って小さくする。上述した混合部16の排出端は、各セグメントを0.1mm以下になるように絞っているが、それより細くなるまでに絞り、乱流を発生させる。
【0078】
第7の乱流発生手段
混合部16から排出された溶液は、スパイラル状又はカーブを形成しているマイクロ流路12に導入される。溶液がマイクロ流路12に流入し、すぐにスパイラル状又はカーブのところで乱流を発生させる。
【0079】
第8の乱流発生手段
上記の第1から第7の乱流発生手段を繰り返して又は組み合わせて利用する。Re数が低い場合は、乱流はすぐに層流になるので、溶液が更に分子拡散し、反応が行われる。第1から第7の乱流発生手段の一つを繰り返して又は組み合わせて実施すると、溶液に部分的に乱流を発生されてマイクロ混合を行い、それから分子拡散で反応を行わせてから再度乱流を発生されてマイクロ混合を行って反応を行うようになる。これによって、リアクター内での反応が均一になり、副生成物の生成量が低下し、製造される粒子の大きさが均一になる。
【0080】
混合部16と、マイクロ流路12に設置されている乱流発生手段17との間にはマイクロ流路12を流れる溶液は、そのセグメント間に分子拡散を起こしながら反応が行われる。この混合部16と乱流発生手段17との距離を変更することで、反応の制御を行うこともできる。この距離が短くし、セグメントが混合されてからできるだけ短距離で乱流によってマイクロ混合されることが、生成物が単一大きさの粒子になる。
【0081】
〔乱流の強さについて〕
Re数で規定される乱流の強さを制御することにより、混合速度と、管壁への付着の抑止を両立させる。
【0082】
〔加熱・冷却〕
マイクロリアクタ10は、必要に応じて、熱交換板を配置し、温度分布の発生を防ぐことができる。また、所定の温度にしたオイルバス等の液体中にマイクロ流路12を配置させて、反応溶液を加熱又は冷却することができる。
【0083】
〔ナノ粒子〕
本実施の形態のマイクリアクタ10は、粒径1nm〜100nmのナノ粒子を生成する反応に適応することができるものである。このナノ粒子を生成するためのものとしては、貧溶媒中での晶析反応、タンニン酸およびクエン酸を還元剤・保護材とする金ナノ粒子の合成、反応溶液を反応温度まで加熱した後に急速に混合する半導体ナノ粒子の合成が掲げられる。
【0084】
〔他の実施の形態〕
以下に、本発明の他の実施の形態を示す。本発明の他の実施の形態は、本発明の実施の形態と基本的に同じであり、その異なる部分だけの説明を行う。
【0085】
〔圧力損失の調整〕
図10には、分流器20の他の実施の形態の概要を図示している。図10のぶんりゅう20器の構成と構成部分の機能は図3の分流器20と同じであり、次の点が異なる。図10(b)の第2層22は溶液Aが流れるための孔が5を備えている。これに伴い、図10(c)、図10(d)、図10(e)にも溶液A用の孔が備えられている。図10では、孔の大きさを適切に調節することで、各孔を通過する溶液の分布を調節することができる。すなわち、孔の大きさが大きいほど孔通過時の圧力損失が小さくなるために、孔を通過する溶液の量は大きくなる。
【0086】
第4層24の後に孔の大きさを小さくする層を設けることで、圧力損失調整を行うことも可能である。例えば、図10(f)で図示した層40を第5層25の後に設ける。層40では、孔の大きさを図10(d)の孔より小さくし、全体の圧力損失が大きくなりすぎない程度(操業に問題がない程度)とすることが望ましい。これにより、図10(a)〜(d)で生じる、各セグメント間の圧力損失の差を相対的に小さくすることが可能になる。
【0087】
〔不活性な溶媒の活用〕
管壁への析出を妨ぎながら、生産性を向上させるために、セグメントの配置を最適化する。例えば、マイクロ流路12の管内を流れる溶液の外周に不活性な溶媒(もしくは沈殿剤の溶媒)を配置しておき(図7を参照)、内側に原料と沈殿剤を市松模様のように交互に組み合わせて配置する。図7には、マイクロ流路12の断面図を図示しており、円28の外側が不活性溶媒C、円28の内側が溶液A、Bになっている。外側の不活性層の厚さは、分流器20の構造により制御することができる。つまり、反応用の溶液A、Bとは別に不活性溶媒Cを分流器20に供給し、分流器20から排出されるときに溶液A、BのセグメントA、Bの外側に不活性溶媒のセグメントCが配置されるようにする。
【0088】
〔反応温度のコントロールについて〕
複数の原料溶液および溶媒が接触したあと、(若しくは接触する前に)途中に適切な熱交換器を設置することにより、反応温度をコントロールすることが可能である。分流器20よりも上流では、伝熱ヒーター、熱媒体や熱交換器等による加熱等、通常用いられている方法で熱交換してから分流器20に流し込む方法が用いられる。分流器20よりも下流では、マイクロ流路12が細いので、適切な温度に設定したオイルバスの中をマイクロ流路12を流通させる方法が用いられる。
【0089】
また、分流器20の出るセグメント全てを合流部16によって合流させて、第2分流器34によってこれを2以上に再度分流させて、それぞれ別々のマイクロ流路35に供給し、それぞれのマイクロ流路35を熱交換器36によって温度制御することが可能である。この場合は、第2分流器34の構造を適切に設計する(図8を参照)。
【0090】
〔分流器20の他の構成〕
図9は、分流器20を構成する各層の構造を示す図である。分流器20は、第1層51から第6層56の6層から構成される。第1層51から第6層56の構造を、図9(a)から図9(f)に図示している。第1層51は、区画された貫通孔である2つの三角形状の三角孔21A、及び三角孔21Bとから構成されている。各第1層51〜第6層56は、実線で示す複数の貫通孔を有する構造になっており、点線は想像線である。各層の孔には、「A」、「B」の文字を示しているが、それぞれ溶液A、溶液Bの通路を意味する。
【0091】
文字「A」は、溶液Aがこの孔を通って流れることを意味する。文字「B」は、溶液Bがこの孔を通って流れることを意味する。また、分流器20中の溶液の流れを理解しやすくするために、図9(b)〜(f)には想像線で各層と隣接する前層の孔を重ねて想像線で図示している。第1層51は、図9(a)に図示するように、区画された空間である三角形の2つの三角孔51a、51bを有している。
【0092】
三角孔51aには、溶液Aが供給管14から供給される。三角孔51bには、溶液Bが供給管14から供給される。第2層52は、図9(b)に図示するように、第1層51から第2層52に分岐しており、供給された溶液Aを5つの流れに分流している。同様に、第1層51の三角孔51bから供給される溶液Bは、第2層52で4つの流れに分流している。この分岐のみでは、図9(b)に示すように、溶液A、溶液Bは矩形の対角線で結んだ一方側のみに、それぞれ流れることになる。
【0093】
第3層53は、図9(c)に図示するように、第2層52の各孔から供給された溶液の一部を横方向(角度90度曲げた方向)に方向変換して流れる。これによって、図9(c)に示すように、第3層53の溶液Aは、細長い5本の流れとなり、溶液Bは4本の流れとなる。第4層54は、図9(d)に図示している。第5層55は、図9(e)に図示している。 第4層54と第5層55は、溶液A、Bの流れを大きくしたり、小さくしたりしている。
【0094】
更に、溶液A、Bを合流、分流している。第6層56は、第5層55の孔を流れる溶液を1以上に分流するような構造になっている。結果的に溶液Aと溶液Bは、複数のセグメントに分流されている。合流部16の内部空間は、分流器20の第6層56に接続され固定される。合流部16は、内部は区画されておらず1つの流路からなる。分流器20の第6層56から排出される各セグメントは、全て合流部16に供給される。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、新材料開発分野、バイオ技術分野、医療分野に利用すると良い。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1は、本発明の実施の形態のマイクロリアクタ10の概要を図示した図である。
【図2】図2は、マイクロリアクタ10の分流器20の構造を示す断面図である。
【図3】図3(a)〜(e)は、分流器20を構成する各層の概略図である。図3(a)は図2のa−a線の切断面図、図3(b)は図2のb−b線の切断面図、図3(c)は図2のc−c線の切断面図、図3(d)は図2のd−d線の切断面図、図3(e)は図2のe−e線の切断面図、図3(f)は他の実施の形態の圧力損失の調整を行うための層の断面図である。
【図4】図4は、マイクロリアクタ内にじゃま板を設置した概要を示す断面図であり、図4(a)は、マイクロ流路12の断面図、図4(b)は、じゃま板26の断面図である。
【図5】図5は、マイクロリアクタ内に固定螺旋翼を配置した例を示す断面図である。
【図6】図6は、マイクロリアクタ内に回転するプロペラを配置した例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の他の実施の形態のマイクロリアクタ内に不活性な溶媒を活用する例を図示した図である。
【図8】図8は、本発明の他の実施の形態のマイクロリアクタの概要を図示した図である。
【図9】図9(a)〜(f)は、分流器20を構成する各層の概略図である。
【図10】図10(a)〜(f)は、その他の実施の形態の分流器20を構成する各層の概略図である。
【符号の説明】
【0097】
10…マイクロリアクタ
12、35…マイクロ流路
14…供給管
16…合流部
17…乱流発生手段
18…排出管
20…分流器
21、51…第1層
22、52…第2層
23、53…第3層
24、54…第4層
25、55…第5層
26…じゃま板
30…固定螺旋翼
31…プロペラ
33…支持部材
32…軸受
36…熱交換器
34…第2分流器
56…第6層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させて化合物を製造するマイクロリアクタによる製造方法において、
前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに分流器によって細分化し、
隣接する前記セグメントの前記溶液をマイクロ流路内に層流で合流させ、
前記合流後、乱流発生手段によって前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合して前記反応を行わせる
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記層流で合流後に前記溶液の流れ方向の断面を絞って、前記溶液の流速を早くして前記乱流を発生させる
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記乱流は、前記溶液を前記溶液の流れる軸線を中心にして旋回させるものである
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記複数のセグメントに細分化された前記溶液を層流で合流させた後、隣接する前記セグメント間に分子拡散反応を行わせた後、前記乱流発生手段によって前記溶液をマイクロ混合させて前記反応を行わせる
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記反応を制御するために、前記マイクロ流路を加熱又は冷却する
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から3中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記乱流は、Re数が200以下である
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記化合物は、粒子の代表長さが1nmから100nmのナノ粒子である
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項8】
複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させるマイクロリアクタにおいて、
前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)と、
前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに細分化するためのもので、前記試料供給流路(14)に接続された分流器(20)と、
前記セグメントを合流させるためのもので、分流器(20)に接続された合流流路(16)と、
前記合流後の流路に接続され、前記溶液を混合し反応させるためのマイクロ流路(12)と、
隣接する前記セグメントの前記溶液を層流で合流させた後、前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合するための乱流発生手段(17、26、30、31)と、及び
前記マイクロ流路(12)で反応が行われた後、前記反応後の反応生成物を排出させるために前記マイクロ流路(12)と接続された試料排出流路(18)と
からなることを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記合流流路(16)は、前記合流した溶液の流速を早くするために前記断面を段階的に小さくして絞るための合流部(16)と
を備えている
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路内を流れている前記溶液を攪拌するために前記溶液の流れを一部堰き止めるためのじゃま板(26)である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項11】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記溶液の流れる方向を軸線とする固定された螺旋状の固定翼(30)である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項12】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記容器の流れる方向を軸線とする回転自在な螺旋翼(31)である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項13】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路(12)の管の内径の大きさを小さく/又は大きくしたものである
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項14】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、超音波を発生させる装置であり、
前記超音波を前記マイクロ流路(12)に照射して、前記溶液に乱流を発生させる
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項15】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記合流流路(16)の排出端の内径を小さして前記溶液に乱流を発生させる
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項16】
請求項8から15の中から選択される1項に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記マイクロ流路(12)内に前記溶液の温度を加熱又は冷却して制御するための温度制御手段と、
前記温度を測定するための温度センサ手段と
を有することを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項17】
請求項9から14の中から選択される1項に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記分流器(20)から排出されて前記マイクロ流路(12)に導入される前記セグメントは、1mm以下に細分化され、並列に配置された
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項18】
請求項8に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記マイクロ流路(20)の断面積の直径は、前記絞りの後、1mm以下である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項19】
請求項8から18の中から選択される1項に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記分流器(20)は、
前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)に接続され、前記試料供給流路(14)それぞれに接続された導入部(21、22、51、52)と、
前記導入部(21、22、51、52)に接続され、前記溶液毎に流れの方向を変えて複数の流れに分流して、前記導入部(21、22、51、52)からの前記溶液の種類毎に複数のセグメントに細分化して排出する中間部(23、24、53、54、55、56)と、
前記中間部(23、24、53、54、55、56)から排出され、細分化された前記溶液の各種類を合流させて前記溶液を混合させ、かつ、前記導入部、前記中間部で各セグメント間に生じる圧力損失差を相対的に小さくするための排出孔を有する排出部(16,25、40、56)と
からなることを特徴とするマイクロリアクタ用の分流器。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロリアクタ用の分流器において、前記孔の大きさを調整して圧力損失を調整し、セグメント流量を調整することにより、前記排出部(16、25、40、56)から排出された後のセグメントの流れに垂直な方向の厚みを調整する
ことを特徴とするマイクロリアクタ用の分流器。
【請求項21】
請求項19に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記合流流路(16)は、排出部に底面が連結され、頂点が前記マイクロ流路(12)に連結された円錐形である
ことを特徴とするマイクロリアクタ用の分流器。
【請求項1】
複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させて化合物を製造するマイクロリアクタによる製造方法において、
前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに分流器によって細分化し、
隣接する前記セグメントの前記溶液をマイクロ流路内に層流で合流させ、
前記合流後、乱流発生手段によって前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合して前記反応を行わせる
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記層流で合流後に前記溶液の流れ方向の断面を絞って、前記溶液の流速を早くして前記乱流を発生させる
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記乱流は、前記溶液を前記溶液の流れる軸線を中心にして旋回させるものである
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記複数のセグメントに細分化された前記溶液を層流で合流させた後、隣接する前記セグメント間に分子拡散反応を行わせた後、前記乱流発生手段によって前記溶液をマイクロ混合させて前記反応を行わせる
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項5】
請求項1から3中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記反応を制御するために、前記マイクロ流路を加熱又は冷却する
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項6】
請求項1から3中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記乱流は、Re数が200以下である
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6中から選択される1項に記載のマイクロリアクタによる化合物の製造方法において、
前記化合物は、粒子の代表長さが1nmから100nmのナノ粒子である
ことを特徴とするマイクロリアクタによる化合物の製造方法。
【請求項8】
複数の種類の溶液をマイクロ流路に導入して層流で合流させて反応させるマイクロリアクタにおいて、
前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)と、
前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記溶液それぞれを複数のセグメントに細分化するためのもので、前記試料供給流路(14)に接続された分流器(20)と、
前記セグメントを合流させるためのもので、分流器(20)に接続された合流流路(16)と、
前記合流後の流路に接続され、前記溶液を混合し反応させるためのマイクロ流路(12)と、
隣接する前記セグメントの前記溶液を層流で合流させた後、前記溶液に乱流を発生させて前記溶液をマイクロ混合するための乱流発生手段(17、26、30、31)と、及び
前記マイクロ流路(12)で反応が行われた後、前記反応後の反応生成物を排出させるために前記マイクロ流路(12)と接続された試料排出流路(18)と
からなることを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記合流流路(16)は、前記合流した溶液の流速を早くするために前記断面を段階的に小さくして絞るための合流部(16)と
を備えている
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項10】
請求項8又は9に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路内を流れている前記溶液を攪拌するために前記溶液の流れを一部堰き止めるためのじゃま板(26)である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項11】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記溶液の流れる方向を軸線とする固定された螺旋状の固定翼(30)である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項12】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記容器の流れる方向を軸線とする回転自在な螺旋翼(31)である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項13】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記マイクロ流路(12)の管の内径の大きさを小さく/又は大きくしたものである
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項14】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、超音波を発生させる装置であり、
前記超音波を前記マイクロ流路(12)に照射して、前記溶液に乱流を発生させる
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項15】
請求項8又は9において、
前記乱流発生手段(17)は、前記合流流路(16)の排出端の内径を小さして前記溶液に乱流を発生させる
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項16】
請求項8から15の中から選択される1項に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記マイクロ流路(12)内に前記溶液の温度を加熱又は冷却して制御するための温度制御手段と、
前記温度を測定するための温度センサ手段と
を有することを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項17】
請求項9から14の中から選択される1項に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記分流器(20)から排出されて前記マイクロ流路(12)に導入される前記セグメントは、1mm以下に細分化され、並列に配置された
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項18】
請求項8に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記マイクロ流路(20)の断面積の直径は、前記絞りの後、1mm以下である
ことを特徴とするマイクロリアクタ。
【請求項19】
請求項8から18の中から選択される1項に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記分流器(20)は、
前記合流の前に前記溶液の流れ方向の断面において、前記複数の種類の溶液を供給するための複数の試料供給流路(14)に接続され、前記試料供給流路(14)それぞれに接続された導入部(21、22、51、52)と、
前記導入部(21、22、51、52)に接続され、前記溶液毎に流れの方向を変えて複数の流れに分流して、前記導入部(21、22、51、52)からの前記溶液の種類毎に複数のセグメントに細分化して排出する中間部(23、24、53、54、55、56)と、
前記中間部(23、24、53、54、55、56)から排出され、細分化された前記溶液の各種類を合流させて前記溶液を混合させ、かつ、前記導入部、前記中間部で各セグメント間に生じる圧力損失差を相対的に小さくするための排出孔を有する排出部(16,25、40、56)と
からなることを特徴とするマイクロリアクタ用の分流器。
【請求項20】
請求項19に記載のマイクロリアクタ用の分流器において、前記孔の大きさを調整して圧力損失を調整し、セグメント流量を調整することにより、前記排出部(16、25、40、56)から排出された後のセグメントの流れに垂直な方向の厚みを調整する
ことを特徴とするマイクロリアクタ用の分流器。
【請求項21】
請求項19に記載のマイクロリアクタにおいて、
前記合流流路(16)は、排出部に底面が連結され、頂点が前記マイクロ流路(12)に連結された円錐形である
ことを特徴とするマイクロリアクタ用の分流器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2007−252979(P2007−252979A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77058(P2006−77058)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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