説明

マイクロリソグラフィ描画におけるビーム位置決め

【課題】感光性基板に対するマイクロリソグラフィ描画および検査のためのレーザ走査の時間効率および偏向器の制御を改善するシステムを提供する。
【解決手段】本システムは、偏向方向における基板のオフセットの程度を測定する少なくとも1つのセンサと、横方向に移動する走査に対応するように位置データまたは位置データの供給を修正するための手段と、前記のオフセットを補償するために、検出器によって測定されたオフセットに依存して偏向器のためのデータの読み出しを制御する制御ユニットとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性基板上でのマイクロリソグラフィ描画および検査のためのシステムおよび方法に関し、特に、半導体デバイス・パターン、表示パネル、集積光デバイス、および電子相互接続構造用のフォトマスクなどの、非常に高い精度を有するパターンの印刷および検査のためのシステムおよび方法に関する。描画および印刷という用語は、広い意味で理解すべきであり、フォトレジストおよび写真乳剤の露光を意味するが、また、光または熱で活性化される除去または化学プロセスによる、ドライプロセス・ペーパーなど他の感光性媒体上での光の作用も意味する。光は可視光を意味することに限らず、赤外から極紫外までの広い範囲の波長である。
【背景技術】
【0002】
基板のマイクロリソグラフィ描画のためのシステムおよび方法は、例えば同じ出願人による特許文献1から以前より知られている。一般に、マイクロリソグラフィ描画のためのそのようなシステムは、レーザなどの光源と、入力パターン・データに従って制御され、描画すべき所望のパターンを生成する変調器と、掃引周波数信号によって駆動されて、ビームの連続する位置を示す一組のデータに従って基板の上でビームを走査する音響光学偏向器と、ビームが基板に届く前にビームを収束させるレンズとを備える。さらに、基板は対物テーブル上で配列され、テーブル(ステージ)は、サーボ・システムによって制御されて、ビームの走査方向に対して直角に交わる方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許出願0467076
【特許文献2】米国特許第4541712号
【0004】
しかし、そのような知られている描画システムの問題は、テーブルが必ずしも線形運動を行わないことであり、また、テーブル移動が走査方向に対して直角でなく、他の傾斜した角度で行われることもありうる。
【0005】
この問題に対する解決策は、特許文献2にWhitneyによって提案された。ここでは、基板テーブルについて測定されたオフセットに従って、変調器を制御するためのデータを遅らせる。したがって、この場合には、問題はタイミング制御によって処理される。しかし、この方法は、全てのシステムで使用可能なわけではない。さらに、この知られている方法の問題には、遅延機能のために、各掃引の始めと終りに余分な時間を追加しなければならないことがあり、それによって、プロセスの時間効率が低下する。その結果、また、走査当りで分解されるパターン・フィーチャの数も少なくなるであろう。
【0006】
さらに、従来技術に関連する問題には、入力ビーム位置データから、基板に向かってビームを適正に向けるために音響光学変調器で使用される出力掃引周波数信号に、確実で正確に効率よく変換を行うことが困難であることがある。以前は、この変換は、通常、ディジタル・アナログ変換器(DAC)および電圧制御発振器(VCO)を含んだ一連の構成要素によって行われていた。これらの構成要素は、特にVCOは、非線形性であり、また、温度の変化、他の電子構成要素からの外乱などに敏感である。さらに、VCOは、高速な変化を妨げる固有のアナログの「慣性」を有する。入力ビーム位置データから出力掃引周波数信号への変換に関するこれらおよび他の問題のために、偏向器の制御もまた悪化する。
ラスタ走査検査システムは同じような構造をしているので、同様な問題を経験する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来技術の上述の問題点を解決し、または少なくとも改善するシステムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、添付の特許請求の範囲によるシステムおよび方法で達成される。
本発明の第1の態様によれば、感光性基板に対するパターンのマイクロリソグラフィ描画または検査のためのレーザ走査システムが提供される。本システムは、少なくとも1つのレーザ光ビームを生成するレーザ光源と、入力パターン・データに従って制御されるコンピュータ制御光変調器と、光源からの光ビームを、それが基板に達する前に収束させるレンズと、基板を支持する基板支持テーブルとを備える。描画動作中に、その少なくとも1つのビームは、基板上のビームの連続する位置を示すデータの組に従って掃引周波数信号で駆動される音響光学偏向器によって、基板表面の領域にわたって偏向され、基板は、偏向の方向に対して傾斜した角度で、好ましくは垂直な角度で移動してビームの次のストローク時の露光のために再位置付けされる。さらに、本システムは、偏向方向における基板のオフセットの程度を測定する少なくとも1つのセンサと、横方向に移動する走査に対応するように位置データまたは位置データの供給を修正するための手段と、前記のオフセットを補償するために、検出器によって測定されたオフセットに依存して偏向器のためのデータの読み出しを制御する制御ユニットとを備える。レーザ源と変調器は、1つのユニットに集積化することができる。さらに、データを修正するための手段は、異なるデータの組を生成するための手段を備えるのが好ましい。したがって、オフセット補償は、変調器ではなくて偏向器を制御することで行われる。
【0009】
このようにして、測定されたオフセットの補償は、タイミング制御で行われないで、入力データに遅延を加えることで、または、異なる特性を有するいくつかの可能な入力位置データの組のうちの1つを選ぶことで行われるのが好ましい。これによって、各掃引の始めと終りに余計な補償時間が必要でなくなり、時間がより効率的に使用され、走査当りの分解されるパターンの特徴の可能な数が増加する。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によれば、本レーザ走査システムは、異なる組のデータを格納するためのいくつかのデータ記憶手段を備え、さらに、制御ユニットは、セレクタを備え、前記のオフセットを補償するために、検出器によって測定されたオフセットに依存して、偏向器のために読み出すそのデータ記憶手段のデータの1つを選ぶ。もしくは、制御ユニットは、測定されたオフセットに従って位置データを、好ましくはリアル・タイムで、修正するための加算器を備え、前記のオフセットを補償するために、前記偏向器のために読み出す修正されたデータを生成する。
【0011】
本発明の他の態様によれば、感光性基板に対するパターンのマイクロリソグラフィ描画または検査のためのレーザ走査システムが提供される。本システムは、少なくとも1つのレーザ光ビームを生成するレーザ光源と、入力パターン・データに従って制御されるコンピュータ制御光変調器と、光源からの光ビームを、それが基板に達する前に収束させるレンズと、基板を支持する基板支持テーブルとを備える。描画動作中に、その少なくとも1つのビームは、基板上のビームの連続する位置を示すデータの組に従って掃引周波数信号で駆動される音響光学偏向器によって、基板表面の領域にわたって偏向され、基板は、偏向の方向に対して傾斜した角度で、好ましくは垂直な角度で移動してビームの次のストローク時の露光のために再位置付けされる。さらに、本システムは、偏向方向における基板オフセットの程度を測定する少なくとも1つのセンサと、チャープの開始を生成するための直接ディジタル合成(DDS)ユニットを備え、このDDSユニットは今度は掃引の開始を示す入力データで制御される。
【0012】
DDSは、入力データから直接に出力周波数信号への変換を行い、通常使用されるいくつかの他の構成要素に取って代わるかもしれないので、この用途に非常に適した性能を有する。さらに、DDSは非常に安定で、他の構成要素のように環境の外乱の影響を受けない。さらにまた、DDSでの変換は基本的に線形であり、変化するデータに対する応答時間が非常に短い。
【0013】
しかし、本発明の前記の2つの態様は、組合せとして使用するのが最も好ましい。
【0014】
さらに、本システムは、第1の高周波信号を生成する第1の高周波生成器と、駆動信号をDDSで高周波信号に混合するための、すなわち加算または引算を行うための混合器とを備えるのが好ましい。これによって、描画および検査のプロセスで音響光学デバイスを駆動するのに適した範囲、一般には100〜250MHzに出力周波数が依然として維持されるのと同時に、遥かに安価で、またより信頼性が高く精度のよい低周波DDSを使用できるかもしれない。
【0015】
さらに、高周波生成器およびDDSユニットは、同期をとられたクロック信号、最も好ましくは同じクロックから生じるクロック信号を供給されるのが好ましい。これによって、変換プロセスでの同期化が維持されるかもしれない。
【0016】
さらに、本システムは、第2の高周波信号を生成する第2の高周波生成器と、第1の高周波信号に加えた後で、DDSからの駆動信号を第2の高周波信号から混合するための混合器とを備える。これによって、出力周波数の相対的な範囲は広くなるかもしれない。
【0017】
本システムは、また、少なくとも1つの周波数逓倍のためのユニット、例えば入力信号をこの入力信号自体と混合するための混合器を備えるのが好ましく、この混合器は、第1の高周波信号と混合するための混合器と第2の高周波信号と混合するための混合器との間に配置されるのが好ましい。これによっても、出力周波数の絶対的な範囲が増加する。
【0018】
本発明の好ましい実施形態によれば、コンピュータ制御光変調器およびDDSユニットは、さらに、同期をとられたクロック信号を、最も好ましくは同じクロックから生じるクロック信号を供給される。このために、変調器および偏向器は、描画または検査のプロセス全体を通して同期した状態で維持されるかもしれない。これによって、データと走査の間のタイミング不確定による不確定は起こらなくなる。
【0019】
また、本発明により、制御された位相差を有する2以上のRF信号を得ることができるようにもなる。そのような位相制御された信号を使用して、いわゆる整相列駆動によって音響光学偏向器の有用な帯域幅を拡大することができるかもしれない。これは、システム内の異なる入力データで制御される少なくとも2つのDDSユニットを使用して行われるかもしれない。これによって、チャネルへの入力データは、小さな計算された差を有し、この差によって、位相差が生成される。2つのDDSユニットは、規則正しい間隔で位相同期しているのが好ましく、同じRF信号が、2つのユニットでアップ・コンバートとダウン・コンバートに使用される。このようにして、非常に正確な位相可干渉性を有するがなお任意の正確に制御された位相差を有する2つの信号を生成することが可能になる。しかし、これは、また、RF技術でよく知られているように、単一DDS、信号分配器、および1つまたは複数の位相変調器によって得られるかもしれない。
【0020】
本発明のさらに他の態様によれば、レーザ走査システムによる感光性基板に対するパターンのマイクロリソグラフィ描画の方法が提供される。そのシステムは、レーザ光源と、入力パターン・データに従って制御されるコンピュータ制御光変調器と、光源からの光ビームを、それが基板に達する前に収束させるレンズとを備える。描画動作中に、その少なくとも1つのビームは、基板上のビームの連続する位置を示すデータの組に従って掃引周波数信号で駆動される音響光学偏向器によって、基板表面の領域にわたって偏向され、基板は、偏向の方向に対して傾斜した角度で、好ましくは垂直な角度で移動してビームの次のストローク時の露光のために再位置付けされ、さらに、偏向方向における基板オフセットの程度が測定される。さらに、本方法は、横方向に移動する走査に対応する位置データの組を生成するステップと、前記のオフセットを補償するために、検出器で測定されたオフセットに依存して、偏向器のために読み出す位置データの前記の組の1つを選ぶステップとを含む。
【0021】
本発明のさらに他の態様によれば、レーザ走査システムによる感光性基板に対するパターンのマイクロリソグラフィ描画の方法が提供される。そのシステムは、レーザ光源と、入力パターン・データに従って制御されるコンピュータ制御光変調器と、光源からの光ビームを、それが基板に達する前に収束させるレンズとを備える。描画動作中に、その少なくとも1つのビームは、基板上のビームの連続する位置を示すデータの組に従って掃引周波数信号で駆動される音響光学偏向器によって、基板表面の領域にわたって偏向され、基板は、偏向の方向に対して傾斜した角度で、好ましくは垂直な角度で移動してビームの次のストローク時の露光のために再位置付けされ、また、偏向方向における基板オフセットの程度が測定される。さらに、掃引周波数駆動信号が直接ディジタル合成(DDS)ユニットで生成され、この直接ディジタル合成(DDS)ユニットは、今度は、掃引の開始を示す入力データによって制御される。
上記二つの方法は、組合せで使用されるのが最も好ましい。
【0022】
本発明の好ましい実施例は、以下に添付図面を参照して例を挙げて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態によるシステムの模式図である。
【図2】基板に対する位置誤差を補償するための、本発明による補償手段の模式図である。
【図3】従来技術で使用される位置誤差の補償を示す模式図である。
【図4】本発明で使用される位置誤差の補償を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による補償変換手段の模式図である。
【図6】本発明の第2の実施形態による補償変換手段の模式図である。
【図7】本発明の第3の実施形態による補償変換手段の模式図である。
【図8】図6および7に示す第2および3の実施形態のより詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1を参照して、本発明によるシステムは、好ましくは連続レーザである光源1と、コンピュータ制御光変調器3と、光源からの光ビームを、それが感光性基板6に達する前に収束させる縮小レンズ5とを備える。さらに、本システムは、変調器の前に第2の収束レンズ2を備える。レーザは、例えば413nm、100mWのクリプトン・イオン・レーザのようなイオン・レーザである。変調器は、受渡し電子回路10によって変調器に送り出された入力パターン・データに従ってビームを制御する。
【0025】
本発明によるシステムは、好ましくはいわゆる「進行中に描画する」システムであり、基板は基板テーブルに配置され、描画プロセス中に基板テーブルは少なくとも一方向に連続移動を行い、同時にレーザ・ビームが別な方向に走査される。このマイクロリソグラフィ法は当技術分野ではよく知られており、一般にラスタ走査として知られている。さらに、本発明は検査システムに関し、そのようなラスタ走査検査が基本的に同じように行われる。そのようなシステムでは、反射または透過走査ビームを検出するようにセンサが配列されるか、またはレーザを検出器と置き換えて、検出器が基板を走査する。この場合、データを読む代わりに、データが出力される。
【0026】
本システムは、さらに、ビームの連続する位置を示すデータの組に従って基板6にビームを向け、基板の走査線上にビームを走査するように、チャープ周波数信号によって駆動される音響光学偏向器4を備える。テーブル(ステージ)は、サーボ・システム等で制御されて、ビームの走査方向に対して垂直な方向に移動するのが好ましい。
【0027】
もしくは、いくつかのビームを生成するようにビーム・スプリッタ(図示されない)が配列されるかもしれないし、または、いくつかのレーザ源でいくつかのビームが生成されるかもしれない。また、変調器は、レーザに一体化することができる。そのときには、音響光学偏向器で、同時に、基板表面全体にわたってビームが偏向されるかもしれない。
【0028】
音響光学偏向器は当技術分野ではよく知られており、レーザ・ビームのエネルギーのかなりの部分をある範囲の角度に偏向させる。その偏向の角度は、音響光学偏向器を駆動するために使用される信号の周波数に依存している。
【0029】
好ましくは使用されている光の波長の何分の1以下までテーブルの位置を測定するレーザ干渉計または他の手段のような少なくともオン・センサ7によって、走査方向における基板のオフセットの程度が測定される。それに応じて、センサが位置誤差信号を生成する。
【0030】
偏向器は、カウンタ、位置データ、および位置誤差信号によって通常生成される走査ピクセル番号に従って制御され、さらに、偏向ストロークの各開始が制御されて、生成されるパターンの各部分が基板表面の一定の基準線から始まるようになる。位置誤差信号を使用して、補償手段8で位置データ信号を修正して、偏向器に伝えるべき補正された位置データ信号を生成するのが好ましい。この修正は、入力データを修正して行うのが好ましいが、データを供給するタイミングを修正することもまた可能である。この信号は、通常、ディジタル信号であり、変換手段9が上記のディジタル信号を、音響光学偏向器で使用すべきアナログRF周波数信号に変換する。
【0031】
図2を参照して、本発明による補償手段を示す。この実施形態で、補償手段は、いくつかの記憶領域801’を有するデータ記憶装置801を備える。しかし、いくつかの別個のデータ記憶装置もまた使用されるかもしれない。記憶装置/記憶領域は、横方向に移動する走査に対応してデータを供給される。その後で、入力走査ピクセル番号で制御された順番で、データが読み出されて偏向器に伝えられる。しかし、記憶装置/記憶領域のどれを読み出すかは、入力位置誤差信号に従って、セレクタで制御される。したがって、補償手段からの出力は補正された位置データであり、ここでは、測定された誤ったオフセットを補償するためにデータが修正される。そのような随意選択可能なメモリアレイは大きな記憶容量を必要とするが、これはむしろ安価である。さらに、これによって、システムの非線形性に対処し、これを補償することができる。
【0032】
このようにして、この補償は、従来技術から知られるように変調器へのデータを送らせることによって行われれない。これを模式的に図3に示す。その代わりに、代替えの組の位置データが供給されて、測定された誤りを補償するために選択が行われる。これを同じ様に模式的に図4に示す。
【0033】
図5に、本発明による補償変換手段の第1の実施形態を示す。この補償変換手段はカウンタ803を備える。このカウンタ803は、クロック信号を与えられ、補償手段で使用すべき走査ピクセル番号を生成する。さらに、補償変換手段は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)のようなメモリを備え、入力位置データ(図示しない)を供給される。セレクタ802は、位置誤差信号を受け取り、それに応じて読み出すための記憶領域を選ぶ。読み出されたディジタル信号は、ディジタル・アナログ変換器804によってアナログ信号に変換され、この信号は、引き続き、電圧制御発振器901(VCO)によってRF信号に変換され、その後で、音響光学偏向器4(AOD)に送られる。
【0034】
図6に、本発明による補償変換手段の第2の実施形態を示す。この実施形態は、直接ディジタル合成(DDS)ユニット902を使用してディジタル位置信号をAOD4で使用できるRF信号に変換するという点で、上記の第1の実施形態と異なる。DDSは、入力データから出力周波数信号への変換を行うかもしれないので、この用途に非常に適した性能を有し、VCOとDACに取って替わる。さらに、DDSは、非常に安定しており、他の構成要素のように環境の外乱の影響を受けない。具体的には、VCOは、温度変化、電子雑音などに非常に敏感である。さらにその上、DDSでの変換は、基本的に線形であり、また非常に高速であるので、高い周波数分解能が得られる。
【0035】
DDSは、通常、位相累積器、サイン・テーブル、およびディジタル・アナログ変換器を備え、例えば、Qualcom corpおよびStanford Telecom corpから市販されている。DDSでは、位相累積器は、連続して接続された加算器とラッチを備え、位相累積器はクロック・パルスごとに前の値にある値を加える。このように、位相累積器の値は、クロック信号速度で増加して、位相累積器の出力に増加するランプが形成される。累積器はオーバフローしてもよい。位相累積器の出力は、正弦波信号の周期が格納されているサイン・テーブルに、読み出しアドレスとして接続されている。サイン・テーブルから受け取られたディジタル正弦波信号は、ディジタル・アナログ変換器に伝えられ、そこでアナログ形に変換され、その出力にサイン波が受け取られる。好ましくは、周波数に依存して、RF信号が受け取られる。
【0036】
図7に、本発明による補償変換手段の第3の実施形態を示す。この実施形態は、位置誤差信号に従って補償するためにいくつかの予め格納された位置データの組を使用しない点で、上記の第2の実施形態と異なる。その代わりに、加算器805を使用して、位置誤差信号に従ってリアル・タイムで位置データを修正する。この解決策は、観念的には比較的容易であるが、非線形性のある場合を取り扱うことができない。さらに、データまたはデータの供給を他の方法で修正することが可能である。
【0037】
ディジタル信号からRF信号への変換にDDSユニットを使用することの問題は、上述の用途で使用するのに十分に高速なDDSユニットは、高いクロック周波数が必要なために、通常、比較的高価なことである。さらに、出力信号に誤りがあることが多く、また、クロック周波数が高いために、同期に関する問題がある。低周波DDSは、信号の誤り率は非常に少くなく、データのローディングは全体的に同期を取られる。さらに、低周波DDSユニットは余り高価ではない。しかし、このユニットは、帯域幅が狭いために上述の用途で使用できないかもしれない。
【0038】
しかし、低周波DDSユニットに関するこの問題は、信号条件付けを使用して帯域幅を増加させることで克服できるかもしれない。これは、周波数逓倍と周波数偏移の組合せで行われるかもしれない。
【0039】
図8に示す好ましい実施形態は、基本的に上述の第2および第3の実施形態に対応し、そこでは低周波DDS(LF DDS)ユニット901が使用される。このユニットは、主クロック806からクロック信号を供給される。例えば、10MHzの主クロックが使用され、10MHzの信号S1を生成するかもしれない。次に、当技術分野でよく知られている位相ロック・ループ(PLL)・ユニット903を使用して、この周波数を高くし、例えば、200MHzの信号S2を生成するのが好ましい。次に、この同じ信号を使用して、変調器3にパターンを供給するための受渡し電子回路10を制御するのが好ましい。これによって、変調器3と偏向器4の間の同期化が容易に得られるかもしれない。変調器に好適であるように、クロック信号はユニット904で周波数分割され、例えば4で分割されるかもしれない。
【0040】
LF DDS902からの信号S4は、例えば、14〜64MHzの範囲にあるかもしれない。次に、この信号を周波数偏移するのが好ましい。これは、この信号を混合器907で高周波信号S5と混合することで得られるかもしれない。その高周波信号は、第2のPLL905で同じクロック信号S1を使用して生成するのが好ましい。例えば、315MHzの高周波信号S5が使用される場合は、S4との混合後の信号S6の範囲は251〜301MHzであるだろう。
【0041】
その後、この信号を周波数逓倍するのが好ましい。例えば、2の逓倍は、混合器908で信号をその信号自体と混合することで得られるかもしれないし、4の逓倍は、他の混合器909でこの信号をそれ自体ともう一度混合することで得られるかもしれない。使用した実施例では、第1の逓倍後の信号S7は502〜602MHzの範囲を持つかもしれないし、第2の逓倍後の信号S8は1004〜1204MHzの範囲を持つかもしれない。他の逓倍値もまた得られるかもしれない。このことは、RF技術の当業者は理解するであろう。
【0042】
必要な場合は、帯域幅(BP)フィルタ910をその後で使用して、信号中の雑音およびスプリアス周波数を抑制するかもしれない。
【0043】
好ましい実施形態によれば、その後、信号は再び周波数を下げられる。これは、さらに他の混合器911で信号を第2の高周波信号S9と混合して行われるかもしれない。この第2の高周波信号は、PLL906を使用して同じクロック信号から生成するのが好ましい。例えば、信号S9は周波数が904MHzであるかもしれない。それで、結果として生じる信号S10は100〜300MHzの範囲を持つかもしれない。LF DDSからの元の信号S4に比べて、今や、帯域幅は50MHzから200MHzに相当に増加し、適当な周波数範囲にある。
【0044】
それから、必要であれば、別のBPフィルタ912で、信号をもう一度帯域幅フィルタ処理して、増幅器914で増幅してから偏向器4に伝えるかもしれない。周波数に応じて電力を制御するために、振幅変調器913がさらに設けられる。
【0045】
偏向器の帯域幅を大きくするために、異なる入力データで制御されるいくつかのDDSユニットを使用して、ビーム方向の位相制御を得るかもしれない。しかし、そのような位相制御は、単一のDDS、信号分配器、および1つまたは複数の位相変調器を使用しても得られるかもしれない。それによって、分配信号は、ビーム方向の位相制御を得るように制御される。
【0046】
本発明を実施例により説明した。しかし、時間遅延のような他の種類の基板オフセット補償を有するDDSユニットを使用するような、いくつかの他の代替物が可能である。さらに、混合は、引算の外に加算としても理解すべきであり、これらは等価であり、交換可能である。さらに、直接ディジタル合成は、DDS法と電圧制御発振器の組合せを使用するハイブリッドも含むものとして解すべきである。そのような代替物は、添付の特許請求の範囲で定義されているような本発明の範囲内であると考えるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性基板(6)上でのパターンのマイクロリソグラフィ描画または検査のためのレーザ走査システムであって、前記システムは、少なくとも1つのレーザ光ビームを生成するレーザ光源(1)と、入力パターン・データに従って制御されるコンピュータ制御光変調器(3)と、前記光源からの光ビームを、前記基板に達する前に収束させるレンズと、前記基板を支持する基板支持テーブルとを備え、前記描画動作中に、前記少なくとも1つのビームは、前記基板上の前記ビームの連続する位置を示すデータの組に従ってチャープ周波数信号で駆動される音響光学偏向器によって、前記基板表面の領域にわたって偏向され、前記基板は、偏向の方向に対して傾斜した角度で、好ましくは垂直な角度で移動して前記ビームの次のストローク時の露光のために再位置付けされるようにしたレーザ走査システムにおいて、さらに、異なる入力データにより制御されて前記ビーム方向の位相制御を得るために、少なくとも二つの直接ディジタル合成(DDS)ユニットが設けられ、かつ異なる入力データで制御される前記少なくとも二つのDDSのユニットを使用することにより、前記音響光学偏向器の帯域幅が増大させることを特徴とする、レーザ走査システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−124586(P2011−124586A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2232(P2011−2232)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【分割の表示】特願2001−539081(P2001−539081)の分割
【原出願日】平成12年11月17日(2000.11.17)
【出願人】(504095793)マイクロニック レーザー システムズ アクチボラゲット (50)
【Fターム(参考)】