説明

マイクロ反応技術によってアルデヒドから脂肪族カルボン酸を製造する方法

本発明は、酸素または含酸素ガスで酸化することによって、アルデヒドから脂肪族カルボン酸を製造する方法に関する。該新規方法は、高められた圧力下に及び化学量論的に必要な酸素量に対して酸素過剰で、マイクロ反応器中で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高められた圧力及び酸素過剰の下にマイクロ反応技術によって、酸素または含酸素ガスで酸化することによりアルデヒドから脂肪族カルボン酸を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドは、カルボン酸を得るための慣用の原料である。この使用分野でのその優先的な地位は、それらの多様な入手可能性及びカルボニル基からカルボキシル基への酸化的転化の故である。工業的に実施されている方法の枠内では、アルデヒドからカルボン酸への転化は主として触媒の存在下に行われる。しかし、触媒の使用を無しで済ませる方法も知られている。副反応を避けるために、触媒方法、非触媒方法のいずれでも、できるだけ低い温度で作業され、一般的に100℃の反応温度を超えないようにする。触媒としては、主に、遷移金属の塩、特にコバルト及びマンガンの塩並びにクロム、鉄、銅、ニッケル、銀及びバナジウムの塩が挙げられる。アルデヒドからのカルボン酸の形成には、最適な温度条件を維持したとしても、副反応及び分解反応がしばしば伴う。このことは、触媒の存在下の反応にも、触媒の不存在下での反応にも同様に当てはまる。このような場合には、弱酸のアルカリ金属塩を反応体に加えることによって反応の選択性を大きく高めることができる。しかし、この方法変形の欠点は、上記の塩が阻害的に作用し、その結果、原料の完全な反応のためには、反応時間を長めなければならないという点である。酸素の使用下での対応するカルボン酸への脂肪族アルデヒドの酸化は、長年来、大規模に操業されてきた方法である。この方法に従い提供される重要な脂肪族カルボン酸は、異性体酢酸、異性体ペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−ノナン酸、並びに3,5,5−トリメチルヘキサン酸に基づくiso−ノナン酸である(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley−VCH,第6版,第6巻,“Carboxylic Acids,Aliphatic”の章(非特許文献1); K.Weissermel,H.−J.Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,第3版、1988,“Oxo−Carbonsaeuren”の章(非特許文献2))。
【0003】
脂肪族アルデヒドの酸化の慣用の実施形態の一つでは、アルデヒドを、適当な反応器、例えばバフルプレートを備えた管状反応器(これは場合によっては更に充填材も含む)に仕込み、そして酸素または含酸素ガス混合物を下から前記アルデヒドに通す。気泡塔を用いたこのような方法は、例えば独国特許第10010769C1号明細書(特許文献1)、独国特許第10010770C1号明細書(特許文献2)及び独国特許第10010771C1号明細書(特許文献3)に記載されている。液状の脂肪族アルデヒドとガス状酸素との反応は、一般的に、好ましくは40〜80℃の温度及び常圧下に行われる。より高い反応温度及び圧力は確かに可能であるが、それでも選択される反応温度は100℃を超えるべきではなく、そして圧力は1MPa超であるべきではない。非触媒方法(独国特許第10010769C1号明細書(特許文献1)、独国特許第10010769C1号明細書(特許文献1)も、遷移金属で触媒した方法(独国特許第10010771C1号明細書(特許文献3); G.R.Lappin,J.G.Sauer“Alpha Olefins Applications Handbook”,Marcel Dekker Inc.,New York and Basel,1989,第11章,“Fatty Acids”(非特許文献3))も知られている。
【0004】
更に別の実施形態では、充填材を含む滴下塔が反応器として使用される。充填材を介して、アルデヒドを滴下させ、そして同時に塔中に並流または向流で酸素または含酸素ガス混合物を流す。その他、気体状酸素によるアルデヒド酸化の際に、攪拌タンクの使用も従来技術に記載されている(国際公開第2001/46111A1号パンフレット(特許文献4))。
【0005】
大容量の慣用の反応器中でのガス状酸素による脂肪族アルデヒドの工業的な酸化は、常に最適化され続けられ、そして今や良好なカルボン酸選択性をもって高い転化率で操業されている。しかし、反応混合物の比較的長い滞留時間が欠点であり、これは数時間にも及ぶ場合があり、酸化プロセスの経済性を損なわせる。追加的に、酸化反応での滞留時間が長い場合には、増大した副生成物の生成、例えば低級カルボン酸、一酸化炭素または二酸化炭素などの分解生成物の生成が見込まれ、酸化反応の選択性が、現在達成されている良好な値にもかかわらず、被害を被り得る。同様に、大容量の反応器中での脂肪族アルデヒドと酸素との取り扱いは、安全技術上の設備に高い投資及び制御の手間を必要とする。また、酸化反応が発熱性の故に、不所望な温度上昇を避けるために、放出された反応熱を迅速にかつ制御下に除去し得ることを保証しなければならない。それ故、相応して寸法が決められた冷却装置を設置するのがよい。滞留時間の短縮のためには、確かに、高められた圧力下での作業を考慮し得るが、大容量の反応器中での脂肪族アルデヒドの酸素酸化でのそれの使用は、安全技術的な理由から問題が大きい場合があり、高い投資を要する。それ故、工業的に操業されるアルデヒド酸化は、大概は、常圧下でまたは場合によってはほんの僅かな負圧の下で行われる。
【0006】
1960年代来の情報技術及び通信技術における絶えず発展してきた小型化は、1980年代来、先ず実験室でそして近年では生産でも益々、化学分野にも浸透してきた。いわゆる高スループット試験では、例えば適当な触媒を目的通りに開発するために、できるだけ多くの様々な条件下に並行に小さなスペースでの所定の反応を試験するのに反応スペースの小型化が使用されているが(国際公開第00/51720号パンフレット(特許文献5))、マイクロ反応技術における小型化は、定められた条件下で相当量の化学生成物を製造できるようにするために、多くの並列な反応スペース中で同一の条件下に化学反応を実施するのに役立つ。巨視的な方法の実行からマイクロ反応技術への移行は次の方法技術上の利点を供する。すなわち、横方向の寸法が小さいために、熱及び物質輸送過程は、熱伝導及び拡散によって大きく強化され、そして熱交換器及び混合機の高い性能を可能にする。それ故、発熱性の反応では、反応熱は、大容量の慣用の反応器の場合よりも本質的により速く除去され得る。マイクロ反応技術の特徴は、体積に対する面積の高い比率である、すなわち比表面積が大きく、そのため表面決定的な現象が明らかに強化され得る。
【0007】
これらの強化の結果、より高い空時収量、すなわちより短い滞留時間が可能である。マイクロ反応器の強化ポテンシャルは、慣用の反応器では通常ではないかまたはこのような慣用の反応器では実現できない新しい反応条件を調節する場合に、特に完全に利用される。これに関して、例えばEnergy Environ.Sci.,2008,1,第467〜478頁(非特許文献4)から知られる用語である“新規プロセスウィンドウ”と称される。それによって、特に、より高い圧力及び温度の調節が可能である。それに加えて、これらの条件は、大容量の慣用の反応器では大概制御できず、マイクロ反応器でしか安全に調節できないという安全技術上の面もある。しかし、これらの強化ポテンシャル無しでも、すなわち並外れて高い圧力及び温度を使用しなくとも、マイクロ反応器は、慣用の技術よりも安全な操業を可能にし得る。
【0008】
マイクロ反応技術に典型なのは、数ミリメータ〜数マイクロメータの範囲の装置寸法である。これらの寸法でマイクロ法技術的な部材を製造するためには、例えば精密加工技術法、例えば微細機械加工または微細放電加工、レーザー掘削法、変形もしくは成形法またはエッチング法などの適当な構造化法が使用される。特に100ナノメータを下回る寸法ではナノ技術と呼称され、他方、数ミリメータを超える寸法では先ずミリ装置を理解する。そして、慣用の反応器、例えば管束型装置、管状反応器、そして最後に攪拌タンクが続く。
【0009】
マイクロ法技術の分野についての概要及びマイクロ法技術用部材の製造についての概要は、Winnacker,Kuechler,Chemische Technik,Wiley−VCH 第5版,2004,第2巻,第8章“Mikroverfahrenstechnik”(非特許文献5)、及びMicroreactors in Organic Synthesis and Catalyst,Wiley−VCH,2008,第1章“Fabrication of Microreactors Made from Metals and Ceramics”及び第2章“Fabrication and Assembling of Microreactors Made from Glass and Silicon”(非特許文献6)に記載されている。
【0010】
慣用の大容量の反応器中での酸素または含酸素ガスによる脂肪族アルデヒドの酸化が有する上述した欠点を背景にして、本発明の課題は、高いアルデヒド転化率及び所望のカルボン酸への高い選択性を達成しながらも滞留時間の短縮を可能にする、脂肪族アルデヒドから対応するカルボン酸への酸化方法を提供することである。それに伴う所望のカルボン酸の空時収量の上昇は、酸化方法の経済性を高める。また、提供すべき方法はより安全に操業できるべきであり、そして安全装置に対するより少ない投資要求を特色とすべきである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許第10010769C1号明細書
【特許文献2】独国特許第10010770C1号明細書
【特許文献3】独国特許第10010771C1号明細書
【特許文献4】国際公開第2001/46111A1号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/51720号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Wiley−VCH,第6版,第6巻,“Carboxylic Acids,Aliphatic”の章
【非特許文献2】K.Weissermel,H.−J.Arpe,Industrielle Organische Chemie,VCH Verlagsgesellschaft,第3版、1988,“Oxo−Carbonsaeuren”の章
【非特許文献3】G.R.Lappin,J.G.Sauer“Alpha Olefins Applications Handbook”,Marcel Dekker Inc.,New York and Basel,1989,第11章,“Fatty Acids”
【非特許文献4】Energy Environ.Sci.,2008,1,第467〜478頁
【非特許文献5】Winnacker,Kuechler,Chemische Technik,Wiley−VCH 第5版,2004,第2巻,第2章,第8章“Mikroverfahrenstechnik”
【非特許文献6】Microreactors in Organic Synthesis and Catalyst,Wiley−VCH,2008,第1章“Fabrication of Microreactors Made from Metals and Ceramics”及び第2章“Fabrication and Assembling of Microreactors Made from Glass and Silicon”
【非特許文献7】Winnacker,Kuechler,Chemische Technik,Wiley−VCH 第5版,2004,第2巻,第3章“Mikrofluidik”
【非特許文献8】Chemical Micro Process Engineering,Wiley−VCH,2004,第5.1章“Micro Reactors for Gas/Liquid Reactions”
【非特許文献9】Microreactors in Organic Synthesis and Catalyst,Wiley−VCH,2008,第4.4章“Gas−Liquid−Reactions”
【非特許文献10】Fortschritts−Berichte VDI,シリーズ3第771号,VDI Verlag GmbH,Dueeldorf 2003
【非特許文献11】Winnacker,Kuechler,Chemische Technik,Wiley−VCH第5版,2004,第2巻,第4.2章“Mischen”
【非特許文献12】Chemical Micro Process Engineering,Wiley−VCH,2004,第4.1章“Micro Reactors for Liquid−phase and Liquid/Liquid−phase Reactions”
【非特許文献13】Microreaction Technology,IMRET:Proceedings of the 5th.International Conference on Microreaction Technology;Springer−Verlag,2001, 202〜214頁
【非特許文献14】Fortschritts−Berichte VDIシリーズ3第771号,VDI Verlag GmbH,Duesseldorf 2003;108〜125頁及び143〜144頁
【発明の概要】
【0013】
それ故、本発明は、対応するアルデヒドを酸素または含酸素ガスで酸化することによって、炭素原子数3〜10の脂肪族カルボン酸を製造する方法に関する。該方法は、高められた圧力下に及び化学量論的に必要な酸素量に対して酸素過剰でマイクロ反応器中で反応を行うことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0014】
マイクロ反応技術を用いて本発明に従い行われる酸化方法では、ガス状酸素または含酸素ガスを、液状の脂肪族アルデヒドと接触させる。それ故、マイクロ反応器、例えばマイクロチャネルを有するマイクロキャピラリー型反応器中で、ガス/液多相流が形成され、これは、気相及び液相の流速に従って特定の流れ特性を示す。気相が分散して存在しそして気泡がほぼ球形でありかつその直径がマイクロチャネルの直径よりも小さい気泡流と、気相が同様に分散して存在するが、気泡が様々な長さの筒状の形態を持ちかつマイクロチャネルの全横断面を満たし、ここで交互のガスプラグと液体プラグへの分割が生ずるプラグ流と、気相が、マイクロチャネルの壁上に液体フィルムを有する連続的なコア流を形成する環状流とは区別される。ガス−液体多相流の流れ特性については、Winnacker,Kuechler,Chemische Technik,Wiley−VCH 第5版,2004,第2巻,第3章“Mikrofluidik”(非特許文献7)に論じられている。
【0015】
本発明の方法に従う酸素または含酸素ガスでのアルデヒド酸化には、気体状の含酸素相と液状含アルデヒド相との反応の際に不均一な気体/液体流を形成するものであれば全てのマイクロ反応器が適している。気泡、プラグまたは環状流またはそれらの混合物の生ずる流れ特性は、気相と液相との十分な混合を保証する。本発明の方法の実施に適したマイクロ反応器の例は、Chemical Micro Process Engineering, Wiley−VCH,2004,第5.1章“Micro Reactors for Gas/Liquid Reactions”(非特許文献8)から知られている。特に適したマイクロ反応器は、相応する寸法を有するマイクロチャネルを有し、そして前述の流れ特性が生じ得る、マイクロキャピナリー型反応器またはマイクロ気泡塔型反応器である。このようなマイクロ反応器は、例えばMicroreactors in Organic Synthesis and Catalyst,Wiley−VCH,2008,第4.4章“Gas−Liquid−Reactions”(非特許文献9)にまたはFortschritts−Berichte VDI,シリーズ3第771号,VDI Verlag GmbH,Duesseldorf 2003(非特許文献10)に記載されている。同様に、相応する寸法のマイクロチャネルを有する複数のマイクロ反応器をマルチチャネルシステムに並列に配置してもよい。
【0016】
更に、実際のマイクロ反応器の前に、例えばマイクロキャピナリー型反応器の前に、マイクロミキサーを操業し、次いで反応混合物をマイクロ反応器に供給することもできる。適当なミキサータイプは、例えばWinnacker,Kuechler,Chemische Technik,Wiley−VCH第5版,2004,第2巻,第4.2章“Mischen”(非特許文献11)またはChemical Micro Process Engineering,Wiley−VCH,2004,第4.1章“Micro Reactors for Liquid−phase and Liquid/Liquid−phase Reactions”(非特許文献12)から知られている。元々は液体の強力な混合のために構想されたこれらのミキサータイプは、同様に、気相と液相との混合にも適している。
【0017】
このようなマイクロミキサーでは、液相及び気相を、毛管供給ラインを介してミキサー中に導入し、混合室中で混合し、そしてこの混合室から導出する。二つの毛管供給ラインが、毛管導出ラインの出発点である領域に流れ込み、そこで不均一系の気体/液体混合物がマイクロ反応器に供給されるということも可能である。毛管供給ラインが約180°の角度で配置され、そうして気相及び液相が正面から合わさりそして毛管導出ラインが毛管供給ラインの合流範囲に対して約90°の角度で配置されている場合には、T型の混合装置が得られる。その他、両毛管供給ラインを、90〜180°の角度でまたは0〜90°の角度で配置し、毛管導出ラインと一緒にY型混合装置を形成することもできる。
【0018】
マイクロキャピラリー型反応器が特に適していることが分かった。マイクロキャピラリー型反応器は、個々のマイクロキャピラリーであることができ、これは、好ましくは上流にマイクロミキサーが接続されている。その他、プレートにマイクログルーブが設けられており、これが多数の並行なマイクロ反応チャネルを形成するようなマイクロキャピラリー型反応器も適している。並行なマイクロ反応チャンネルのこのような配置はマイクロ気泡塔型反応器としても操業でき、この場合、液相は、垂直に配置されたプレートの頂部範囲に供給され、そして液体フィルムが底の方向に流下する。気相は、並流、向流または交差流で供給することができる。独国特許第10257239B3号明細書(特許文献6)から、適したマイクロ気泡塔型反応器が知られており、この反応器では、液状のオレフィン含有溶液を、均一系反応システムで感光剤の存在下にガス状酸素で酸化する。
【0019】
国際公開第2007/027785A2パンフレット(特許文献7)は、水素含有有機化合物、例えばヒドロキノン誘導体を、マイクロ反応器中でガス状酸素と反応させて、目的生成物である過酸化水素を生成することを記載している。マイクロ反応器としては、例えば、並列に配置された多数のマクロ反応チャンネルを使用することができる。
【0020】
独国特許出願公開第102004049730A1号明細書(特許文献8)は、少なくとも二つのスタティックミキサーを含むマイクロキャピラリー型反応器を使用して有機化合物を触媒酸化する方法を開示しており、この際、第一のミキサーで、互いに均一に混合できない二つの液体を一緒にし、そしてこうして得られた液状の不均一系相を、下流に接続された第二のミキサー中に導き、ここに別個の毛管ラインを介して気体状成分を導入する。次いで、生じた液/液/気体混合物を毛管中に通す。一方の液相とは、そこに溶解された、酸素で酸化可能な少なくとも一種の有機系原料を含む有機相であり、他方の液相とは、溶解された酸化触媒を含む水溶液である。酸素は、第二のミキサー中に気相として導かれる。
【0021】
マイクロ気泡塔中でのガス状酸素によるn−ブチルアルデヒドの酸化は、Microreaction Technology,IMRET:Proceedings of the 5th.International Conference on Microreaction Technology;Springer−Verlag,2001,202〜214頁(非特許文献13)及びFortschritts−Berichte VDIシリーズ3第771号,VDI Verlag GmbH,Duesseldorf 2003;108〜125頁及び143〜144頁(非特許文献14)で論じられている。マイクロ気泡塔中での転化挙動は、比表面積と滞留時間との相互作用によって決定的に影響を受け、そして実験的に観察された転化率データとマイクロ気泡塔について行われたモデル計算との比較によって、所与の液体体積流において、特定の比表面積と滞留時間におけるn−ブチルアルデヒドの最適な転化率を算出することができる。報告された転化率の数値は、使用したアルデヒドに基づいて約40%の範囲にある。
【0022】
本発明の作業方式の非常に本質的な特徴の一つは、反応が行われる圧力範囲の選択にある。高められた圧力下かつ化学量論的に必要な酸素量に対して過剰な酸素の使用下に、0.5〜10分間、好ましくは1〜5分間の範囲の滞留時間で既に、十分に高いアルデヒドの転化率を達成でき、この際、所望のカルボン酸への選択性の値は、大容量反応器中での慣用の作業方式で観察される値と同等である。圧力が上昇すると、化学量論的に必要な酸素量に基づいて、液相中の気泡/気体プラグの大きさが小さくなり、その結果、気泡/気体プラグの比表面積が大きくなり、そして気相から液相中への物質交換が強化される。更に、圧力の上昇は、溶解された酸素のより高い飽和濃度ももたらす。好ましくは、化学量論的に必要な酸素量に対して酸素過剰で0.2〜5.0MPaの範囲の圧力で作業する。特に、0.3〜2.5MPaの範囲の圧力、就中0.4〜2.0MPaの範囲の圧力が有効であることが実証された。一般的に、酸素過剰量は、化学量論的に必要な酸素量の4倍まで、好ましくは2倍までである。
【0023】
該新規方法では、アルデヒドを0〜130℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度、特に40〜80℃の温度で酸化することが有用であることが実証された。反応は、一定のまたは技術的な可能性内でほぼ一定の温度で行われる。温度を一定に保つために、マイクロ反応器は、伝熱媒体を含む容器中に配置される。伝熱媒体をポンプ循環することによって、連続的に熱が除去または供給される。その他、同様に、マイクロ反応器にマイクロ熱交換プレートを取り付けることができ、伝熱媒体はそれを通って流れ、マイクロ反応器中の一定の温度を保証する。
【0024】
マイクロ反応器から導出される反応混合物は、先ず、圧力分離器中で常圧に解圧し、その際、液相が分離しそして排ガスが形成される。この含酸素排ガスは排出され、そして液相は更なる仕上げ処理のために導出される。液相中に含まれる粗製酸は、それ自体既知の蒸留方法に従い仕上げ処理して純粋な酸とする。この際、生ずるアルデヒドの残量は、再び酸化プロセスに再循環できる。
【0025】
本発明方法の更に別の形態の一つでは、圧力分離器中に含まれる第一の反応段階からの液状の反応生成物を、同様にマイクロ反応器中で行われる第二の反応段階に供給する。この際、第二の反応段階で使用されるマイクロ反応器は、第一の段階で使用されるマイクロ反応器と同じ構造であることができるが、しかし、それとは構造的に相違する慣用のマイクロ反応器も使用できる。
【0026】
第一の反応段階からの分離された液相を、解圧ステップの後に、酸素を更に加えることなく、第二のマイクロ反応器にポンプ輸送し、この際、ポンプの作用によって、液圧が生ずる。それ故、第一のマイクロ反応器は酸化反応器と、第二のマイクロ反応器は後反応器と理解し得る。第二のマイクロ反応器には気相は供給されないので、このプロセスステップには、気相及び液相との間の良好な物質交換をかならずしも保証しなくともよいマイクロ反応器も使用できる。第二のマイクロ反応器または後反応器は、適当な熱交換装置によって、第一のマイクロ反応器の温度に相当する温度に調節される。後反応器をより低い温度で稼働させることも可能であり、この際、温度差は、5〜50℃、好ましくは10〜20℃である。好ましくは、この二段階の作業方式では、マイクロ反応器及び後反応器を同じ温度で操業する。
【0027】
場合によっては、第二のマイクロ反応器の後に生ずる反応混合物をポンプ輸送して、酸素を添加しないで、もう一度、第三のもしくは更に別のマイクロ反応に通す。それ故、本発明方法のこの実施形態では、第一のマイクロ反応器中では、反応を高められた圧力下に及び化学量論的に必要な酸素量に対して酸素過剰で行い、他方、解圧ステップ後では、下流のマイクロ反応器または後反応器のカスケード中で、酸素を有効量添加することなく反応を終了する。後反応カスケードにおけるマイクロ反応器は、第一のマイクロ反応器の温度で操業することができる。後反応器カスケード内で、隣接する段階間で温度差を調節し、この際段階毎に温度を低下させることも可能である。温度差は5〜50℃、好ましくは10〜20℃であることができる。上記の温度の記載は単に基準値であり、個々の場合において、特定の状況に合わせて適合させるべきものである。二つを超える反応段階、すなわち第一マイクロ反応器における酸素過剰圧の下での反応と後反応段階より多い反応段階を使用する場合には、個々の段階間で同じ温度差を維持する必要はない。それどころか温度差は様々に選択して、個別の要求に順応させることができる。第二のマイクロ反応器からまたは複数の後反応器の場合には最後のマイクロ反応器から流出する粗製酸混合物は受け器に集め、次いで既知の蒸留方法に従い蒸留して精製品にすることができる。
【0028】
驚くべきことに、二段階またはそれより多い段階で方法を実行する場合には、高められた圧力及び化学量論的に必要な量に対して酸素過剰での第一マイクロ反応器中の酸化反応を、反応排出物(Reaktionsaustrag)中において、アルデヒドと生成した過カルボン酸が1:(0.9〜1.1)、好ましくは1:(0.95:1.05)のモル比で存在するような条件で行った場合に、カルボン酸選択性が、一段階方式と比べて再度向上できる。厳密な機序的な考察に立ち入るものではないが、これらの反応条件下では、アルデヒドの転化は第一の反応段階では未だ完全ではなく、反応排出物中に過カルボン酸及びアルデヒドがほぼ同じモル比で存在し、これらは、次いで後反応器中で、バイヤービリガー反応に従い制御下に反応し尽くて所望のカルボン酸となるものと推測できる。二段階またはそれより多段階の方式によって、反応の選択性を損なわせる不制御の過カルボン酸の分解を効果的に阻止できる。それ故、このように反応を実施する場合、高められた圧力及び酸素過剰で行われる第一の反応段階では、アルデヒドの部分的な転化に向けてのみ作業が行われる。次いで、アルデヒドの残量は、後反応器中で、過カルボン酸との反応によって消費される。概二段階またはそれより多段階の方式では、酸化反応は好ましくは0.4〜2.0MPaで及び最大で二倍の必要酸素量に相当する酸素過剰で行われ、そして得られた反応混合物は、有効量の酸素を更に加えることなく、同様にマイクロ反応器として構築される第二のまたはそれ以上の後続の後反応器に導通される。
【0029】
マイクロ反応器の使用によって、酸素の添加の下に行われる第一の酸化反応でばかりではなく、後続の後反応段階においても、大容量反応器中で行われる慣用のアルデヒド酸化プロセスと比較して、滞留時間を同様に大きく短縮することができる。それで、滞留時間は、各反応段階につき、0.5〜10分間、好ましくは1〜5分間である。同時に、最後の後反応器から流出する粗製酸混合物において優れたアルデヒド転化率及びカルボン酸選択性が観察される。
【0030】
酸化反応が、マイクロ反応器中で行われるか、または少なくとも一つの後反応器がマイクロ反応器として構築される一つまたは複数の後反応器との組み合わせにおいて行われるかには拘わらず、使用されるマイクロ反応器は一般的に1ミリメータ〜0.01ミリメータの直径の反応スペースを有する。
【0031】
概新規方法の中心は、非分枝状及び分枝状C〜C10アルデヒドの酸化である。アルデヒドの由来は、特定の製造方法には限定されない。入手の簡単さから、オキソ合成、すなわちC〜Cオレフィンと一酸化炭素及び水素との反応によって得られるアルデヒドが好ましい。これに関連して、アルデヒドを得るためのオキソ合成のどの実施形態が使用されるか、すなわち、反応が、例えばコバルトまたはロジウムで触媒されたか、金属を単独でまたは錯形成体と一緒に使用したか、及び触媒が反応混合物中に均一に溶解していたかまたは自身の不均一系相を形成していたかは、重要ではない。
【0032】
本発明の方法は、プロピオン酸、n−酪酸、iso−酪酸、n−ペンタン酸、2−メチル酪酸、3−メチル酪酸、n−ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、n−ノナン酸、2−メチルオクタン酸、並びに主構成要素として3,5,5−トリメチルヘキサン酸を有するiso−ノナン酸の製造に特に適しており、後者の場合、対応するアルデヒドはジイソブチレンのオキソ合成によって入手できる。
【0033】
酸化剤としては、本発明の方法では、分子状酸素、または分子状酸素を含むガス混合物が使用される。このようなガス混合物の他の構成要素は、不活性ガス、例えば窒素、希ガス及び二酸化炭素である。酸素含有ガス混合物の不活性構成要素の割合は90体積%まで、特に30〜80体積%である。好ましい酸化剤は酸素または空気である。
【0034】
アルデヒドは、そのままでまたは反応条件下に不活性な溶剤中に溶解させて使用することができる。適当な溶剤の例は、ケトン類、例えばアセトン、エステル類、例えば酢酸エチル、炭化水素類、例えばトルエン、及びニトロ炭化水素類、例えばニトロベンゼンである。アルデヒドの濃度は、溶剤中への溶解性によって制限される。
【0035】
本発明の方法は一般的に連続的に行われる。未反応反応体の再循環が可能である。
【0036】
単位時間当たりのアルデヒド酸化からの反応生成物の量を高めるために、多チャンネルシステムにおける複数のマイクロチャンネル、または複数のマイクロ反応器、例えばマイクロ気泡塔を、並行に稼働させることができる。このようにして、生産量を高めつつも、同時にマイクロ反応技術の利点、例えば高い比表面積及び良好な廃熱を活用できる。
【0037】
以下の例では、特許請求の範囲に記載の方法に従うn−ペンタン酸及びiso−ノナン酸の製造を記載する。
【0038】
自明なことではあるが、概新規方法は、以下に記載の実施形態には限定されない。
【実施例】
【0039】
使用したアルデヒドの液相酸化は、以下の試験構成に基づいて実施する。これについては図1及び2にその原理を示す。液状アルデヒドをライン(1)を介して、そして気体状酸素をライン(2)を介してマイクロミキサー(3)に供給する。前記のマイクロミキサー(3)は、0.75mmの内径を有するマイクロT字型品である。次いで、この反応体混合物を、同様に0.75mmの内径を有するライン(4)を介して三方コック(4’)に送る。反応体流の分析のために、三方コック(4’)は、バイパスモード方式に設定され、そこで反応体流は、ライン(4’’)を介してマイクロ反応器(5)を迂回しながら、直接、圧力分離器(7)中に流れ、そこで解圧される。その際得られる液相はガスクロマトグラフィにより分析される。作業モードでは、三方コック(4’)は、反応体流がマイクロ反応器(5)に流入するように設定される。マイクロ反応器(5)は、0.75mmの内径を有する5m長のマイクロキャピラリーからなる。反応体混合物は、下からマイクロ反応器(5)中に入り、そしてそれの頂部から生成物混合物がライン(6)を介して排出され、そして圧力分離器(7)に供給され、そこで生成物混合物は常圧に解圧される。酸素含有廃ガスはライン(8)を介して導出し、他方、生じた粗製酸はライン(9)を介して取り出し、そして慣用の方法に従い蒸留により精製される。マイクロ反応器(5)及びマイクロミキサー(3)は、図に輪郭を示した温度制御セル内に存在する。この温度制御セルは、サーモスタットを介して加熱される。
【0040】
図2は、二段階の反応方式を図示するものである。参照記号(1)〜(9)は上述と同じ意味を有する。第一の反応段階の圧力分離器(7)からライン(9)を介して導かれた液状粗製混合物は、ピストンポンプ(10)によって、0.75mmの内径を有するライン(11)を介して、下から第二のマイクロ反応器(12)または後反応器に供給される。マイクロ反応器(12)は、同様に、0.75mmの内径で5m長のマイクロキャピラリーである。粗製生成物は、第二のマイクロ反応器の頂部から取り出され、そしてライン(13)を介して受け器(14)に導かれる。気体状部分はライン(15)を介して取り出され、粗製の酸はライン(16)を介して蒸留による仕上げ処理に付される。第二のマイクロ反応器も同様に、図に輪郭を示した温度制御設備中に存在する。
【0041】
ライン(1)を介して各個のアルデヒドがピストンポンプによって0.9ml/分の量で、そしてライン(2)を介して酸素が140ml/分の量で圧力瓶から、マイクロミキサー(3)に供給される。アルデヒドに対する酸素のモル比は1.5であり、酸素との反応が行われる第一のマイクロ反応器中でのアルデヒドの滞留時間、及び第二のマイクロ反応器または後反応器中での滞留時間はそれぞれ2.5分間である。
【0042】
アルデヒドの転化率、及び転化されたアルデヒドからカルボン酸への選択性の測定は、マイクロ反応器を迂回させながらバイパスモードで反応体混合物をガスクロマトグラフィ検査し、並びにライン(9)(単段階方式)またはライン(16)(二段階方式)を介して得られた粗製酸を作業モード中にガスクロマトグラフィ検査することによって行う。次いで、バイパスモード及び作業モードで記録されたガスクロマトグラフから求められたアルデヒド量から、アルデヒド転化率が得られる。
【0043】
カルボン酸選択性は、作業モードで及びバイパスモードでガスクロマトグラフィによって求められたアルデヒド量に基づいて、作業モードでガスクロマトグラフィによって求められるカルボン酸量からバイパスモードでガスクロマトグラフィによって求められるカルボン酸量(投入アルデヒド中に既に存在する酸痕跡量に由来する)を差し引いて得られる。
【0044】
n−ペンタン酸の製造
1.単段階方式
n−ペンタナールからn−ペンタン酸への液相酸化を、図1のプロセススキームに従って、80℃の一定の反応温度及び上記の一般的な説明に記載の条件下に行う。以下の表1には、n−ペンタナール転化率及びn−ペンタン酸への選択性を、調節した酸素過剰圧に対して示す。
【0045】
【表1】

【0046】
酸素過剰圧が上昇すると、n−ペンタナール転化率が明らかに高まるが、これと同時に、n−ペンタン酸選択性は、引き続いて選択性を損失させながら不制御に分解する過酸の生成が増強されるために低下する。それにもかかわらず、マイクロ反応器を用いて実施された公知のアルデヒド酸化反応と比べて、n−ペンタン酸のかなりより高い収量値が観察される。
【0047】
2.二段階方式
n−ペンタナールからn−ペンタン酸への液相酸化を、図2のプロセススキームに従い、第一のマイクロ反応器中では80℃の一定の反応温度で、第二のマイクロ反応器(後反応器)では3.4MPaの一定の液体圧で、及び上記の一般的な説明に記載の条件下で、行う。以下の表2には、調節された酸素過剰圧に及び第二のマイクロ反応器(後反応器)中での温度に対する、n−ペンタナール転化率及びn−ペンタン酸への選択性を示す。
【0048】
【表2】

【0049】
試験4及び5によると、第二のマイクロ反応器中の温度が上昇するとn−ペンタン酸への選択性の向上が観察され、よって、それから過酸が目的通りに反応し尽くしていることが推察できる。試験7は、試験2に従う単一段階方式と比較して、向上した転化率値及び選択性値を示す。ここで、第一のマイクロ反応器からの排出物中では、パー−n−ペンタン酸と、n−ペンタナールの残渣とが約1:1のモル比で存在し、そのため第二のマイクロ反応器(後反応器)中では、バイヤービリガー酸化を介して、n−ペンタナールを消費しながら更にn−ペンタン酸が生成していることが推測できる。
【0050】
試験8では、先ず、例3に従う反応条件下に従い第一マイクロ反応器中で反応を行う。同じ温度下での後続の後反応では、満足すべき結果はもはや観察されない。この反応の設定では、第一の反応段階の反応排出物中には、n−ペンタナールはもう殆ど存在せず、そしてn−ペンタン酸の他に、比較的高い濃度のパー−n−ペンタン酸が存在し、これが後反応段階で不制御に分解するものと推察できる。
【0051】
iso−ノナン酸の製造
iso−ノナナールからiso−ノナン酸への液相酸化を、図1のプロセススキームに従い、80℃の一定の反応温度で及び上記の一般的な説明に記載の条件下に行う。以下の表3には、それぞれ主異性体である3,5,5−トリメチルヘキサナールもしくは3,5,5−トリメチルヘキサン酸に基づくiso−ノナナールの転化率及びiso−ノナン酸への選択性を、調節された酸素過剰圧に対して、示す。
【0052】
【表3】

【0053】
酸素過剰圧を高めると、iso−ノナナールの転化率が明らかに向上するが、これと同時に、次いで選択性の損失を伴い不制御に分解する過酸の増強した生成のためにiso−ノナン酸選択性が低下する。それにもかからわず、本発明方法ではiso−ノナナールの酸化でも、マイクロ反応器を用いて行った既知のアルデヒド酸化反応と比較して、目的のカルボン酸について明らかにより高い収量が観察される。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するアルデヒドを酸素または含酸素ガスで酸化することによって、炭素原子数3〜10の脂肪族カルボン酸を製造する方法であって、前記酸化を、マイクロ反応器中で、高められた圧力及び化学量論的に必要な酸素量に対して酸素過剰の下に行うことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
前記酸化を、0.2〜5.0MPa、好ましくは0.3〜2.5MPa、特に0.4〜2.0MPaの圧力下に行うことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
酸素過剰が、化学量論的に必要な酸素量の四倍まで、好ましくは2倍までであることを特徴とする、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記酸化が、0〜130℃、好ましくは20〜100℃、特に40〜80℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜3の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項5】
マイクロ反応器から導出される反応混合物が、更に酸素を添加することなく、少なくとも一つの後反応器に導通されることを特徴とする、請求項1〜4の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項6】
マイクロ反応器及びその直後の後反応器が同じ温度で操業されることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項7】
マイクロ反応器及び少なくとも一つの後反応器が異なる温度で操業され、この際、段階毎に温度が低下し、そして隣接する段階間で温度差が5〜50℃、好ましくは10〜20℃であることを特徴とする、請求項5の方法。
【請求項8】
マイクロ反応器中での酸化反応が、高められた圧力下に及び化学量論的に必要な酸素量に対して酸素過剰で、導出される反応混合物中においてアルデヒド及び生成した対応する過酸が1:(0.9〜1.1)、好ましくは1:(0.95〜1.05)の範囲のモル比で存在するような条件下に、行われることを特徴とする、請求項5〜7の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項9】
酸化反応が、0.4〜2.0MPaの圧力下に及び化学量論的に必要な酸素量の二倍量までの酸素を用いて行われることを特徴とする、請求項5〜8の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項10】
酸化剤が分子状酸素であることを特徴とする、請求項1〜9の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項11】
酸化剤が、分子状酸素と、90体積%まで、特に30〜80体積%の不活性ガスとを含むガス混合物であることを特徴とする、請求項1〜10の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項12】
ガス混合物が空気であることを特徴とする、請求項11の方法。
【請求項13】
脂肪族カルボン酸が、n−酪酸、n−ペンタン酸、2−メチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、2−プロピルヘプタン酸、またはiso−ノナン酸であることを特徴とする、請求項1〜12の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項14】
マイクロ反応器がマイクロキャピラリーまたはマイクロ気泡塔型反応器であることを特徴とする、請求項1〜13の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項15】
マイクロ反応器が、1ミリメータ〜0.01ミリメータ径の反応スペースを有することを特徴とする、請求項1〜14の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項16】
複数の並行に配置されたマイクロ反応器が操業されることを特徴とする、請求項1〜15の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項17】
少なくとも一つの後反応器がマイクロ反応器であることを特徴とする、請求項5の方法。

【公表番号】特表2012−521373(P2012−521373A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501157(P2012−501157)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001298
【国際公開番号】WO2010/108586
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(507254975)オクセア・ゲゼルシャフト・ミト・べシュレンクテル・ハフツング (10)
【Fターム(参考)】