説明

マイクロ構造体の製造方法及び光パターン形成性犠牲膜形成用組成物

【解決手段】(i)犠牲膜パターン上に無機材料膜を形成し、犠牲膜パターンの形状を持つ空間を形成する工程を含むマイクロ構造体の製造方法において、(A)一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂を含むと共に、架橋剤を含み、かつ200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を含む光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を用い、犠牲膜として塗布する工程、(B)基板を加熱する工程、(C)パターンレイアウトイメージに沿った照射を行う工程、(D)犠牲膜パターンを形成する工程、(E)上記犠牲膜パターン中のクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成する工程を含む。
【効果】高精度な欠陥損失のない平面形状及び85°以上90°未満側壁の形状を有し、かつ熱耐性に優れる犠牲膜パターンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された犠牲膜パターン(樹脂構造体)上に無機材料膜を成膜後、必要に応じて無機材料膜を所定の形状に加工し、更に、犠牲膜パターン(樹脂構造体)をエッチング除去する、いわゆる犠牲層エッチング法によって所望の空間を有する構造体を形成するマイクロ構造体の製造方法に関し、特に、いわゆるMEMS(Micro Electro−Mechanical System)素子の製造方法に関する。また、本発明は、かかる方法に用いる光パターン形成性犠牲膜形成用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種基板上に機械要素部品であるセンサ、アクチュエータ等を集積化したMEMS素子の製造では、主要部分を半導体集積回路の製造技術を利用して作製するが、可動構造部分や立体構造部分を形成するために、犠牲層エッチング技術や深堀りエッチング、異方性エッチング技術等のMEMS特有のプロセス技術が重要となってくる。その中でも、犠牲層エッチングは、基板上に複数の層を成膜した後、犠牲層と呼ばれる下層を選択的に除去し上層を残すという重要な技術の一つであり、この犠牲層に用いられる材料については、種々の報告がされている。そのうちの一つである特開2000−255072号公報(特許文献1)のようなポジ型のノボラックレジスト材料を用いた場合には、微細加工の形成に有利であるものの、熱耐性が低いために上層となる材料膜の選択性が限定されるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−255072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、MEMS製造時の重要工程である犠牲層エッチング法において、高精度の微細構造の形成が可能であると共に、高温でのシリコン系材料やメタルの成膜に最適なパターン形状を有し、かつ、耐熱性の高い犠牲膜パターンを形成することができるマイクロ構造体の製造方法及び光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物として、まずは、高解像性が得られる材料を用いること、犠牲膜パターンの形状が逆テーパー状にならないものを選択し、これに熱耐性が与える工程の導入を試みたところ、下記の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を用い、下記の工程を採用することにより、目的の性能を持つ犠牲膜パターンを得ることができることを見出した。
【0006】
即ち、本出願人は先に特願2010−133606号において、マイクロ構造体の製造方法を提案し、そこでは、
(A−1)1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルにより一部又は全部のフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂、又は該一部又は全部のフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂とフェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂、
(A−2)(A−1)のノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、
(A−3)フェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物
のいずれかを含むと共に、酸触媒によりクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成しうる架橋剤を含む光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を用いることを提案したが、この組成物に更に200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を配合することにより、更に歩留まりや再現性が改善され、高精度の微細構造の性能を維持しつつ、制御性の高い犠牲膜を形成し得ることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は、下記に示すマイクロ構造体の製造方法及び光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を提供する。
請求項1:
(i)基板上に成膜された犠牲膜を加工して犠牲膜パターンを形成する段階、
(ii)犠牲膜パターン上に無機材料膜を形成する段階、
(iii)上記無機材料膜の一部にエッチング用の開口部を設け、該開口部を通じてエッチングにより犠牲膜パターンを除去し、犠牲膜パターンの形状を持つ空間を形成する段階
を含むマイクロ構造体の製造方法において、
上記(i)段階である犠牲膜パターンを形成する段階は、
(A)
(A−1)一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂(i)、又は該一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂とフェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂との混合物(ii)、
(A−2)(A−1)のノボラック樹脂(i)又はノボラック樹脂混合物(ii)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、
(A−3)フェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物
のいずれかを含むと共に、酸触媒によりクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成しうる架橋剤を含み、かつ200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を含む光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を用い、2〜20μmの膜厚を持つ犠牲膜として塗布する工程、
(B)光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を塗布した基板を加熱する工程、
(C)該光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線を用いて、パターンレイアウトイメージに沿った照射を行う工程、
(D)アルカリ性現像液による現像でポジ型の犠牲膜パターンを形成する工程、
(E)得られた該犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として、254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作を含み、上記犠牲膜パターン中のクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成する工程
を含むことを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。
請求項2:
上記(E)工程が、30〜220℃の範囲で加熱を行いながら254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作、254nmの波長を含む紫外線の照射後に100〜220℃で加熱する操作、又は30〜220℃の範囲で加熱を行いながら254nmの波長を含む紫外線の照射を行い、更に100〜220℃で加熱する操作を含む請求項1記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項3:
上記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物に用いるクレゾールノボラック樹脂、又は上記フェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂の製造原料であるクレゾールノボラック樹脂が、パラクレゾールを40モル%以上含有し、重量平均分子量が2,000〜30,000で、かつ樹脂溶融温度が130℃以上であるクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項4:
上記1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドにより一部又は全部のフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂は、該樹脂に含まれるフェノール性水酸基の0.5〜30モル%が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドでエステル化されたクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項5:
上記(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分の含有量は、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中45〜98質量%であり、かつ(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分中のエステル化されたクレゾールノボラック樹脂及びエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂の合計量が67質量%以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項6:
上記架橋剤は、メラミン化合物又はグリコールウリル化合物であり、該架橋剤を光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中2〜30質量%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項7:
上記メラミン化合物は、ヘキサメトキシメチルメラミンの単量体を80質量%以上含有するメラミン化合物であることを特徴とする請求項6記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項8:
200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤のうち、300nmを超えた波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数に対する200〜300nmの波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数の比(A<300/>300)が、2.0以上である光酸発生剤を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項9:
上記(A)〜(E)工程を行った際、上記(E)工程である上記犠牲膜パターン中のクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成する工程後に得られる犠牲膜パターンは、該犠牲膜パターンの側壁が順テーパーであり、かつ基板に対して85°以上90°未満の角度をなす犠牲膜パターンを与える犠牲膜形成用組成物を、前記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物として用いる、請求項1乃至8のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
請求項10:
(A−1)一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂(i)、又は該一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂とフェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂との混合物(ii)、
(A−2)(A−1)のノボラック樹脂(i)又はノボラック樹脂混合物(ii)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、
(A−3)フェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物
のいずれかを含むと共に、酸触媒によりクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成しうる架橋剤を含み、かつ200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を含むことを特徴とする光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
請求項11:
(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分のクレゾールノボラック樹脂又はフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂の製造原料であるクレゾールノボラック樹脂が、パラクレゾールを40モル%以上含有し、重量平均分子量が2,000〜30,000で、かつ樹脂溶融温度が130℃以上であるクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項10記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
請求項12:
上記1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドにより一部又は全部のフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂は、該樹脂に含まれるフェノール性水酸基の0.5〜30モル%が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドでエステル化されたクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項10又は11記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
請求項13:
上記(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分の含有量は、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中45〜98質量%であり、かつ(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分中のエステル化されたクレゾールノボラック樹脂及びエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂の合計量が67質量%以上である請求項10乃至12のいずれか1項記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
請求項14:
上記架橋剤はメラミン化合物であり、該メラミン化合物を組成物の固形分総量中2〜30質量%含有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
請求項15:
上記メラミン化合物は、ヘキサメトキシメチルメラミンの単量体を80質量%以上含有するメラミン化合物であることを特徴とする請求項14記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
請求項16:
200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤のうち、300nmを超えた波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数と、200〜300nmの波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数の比(A<300/>300)が、2.0以上である光酸発生剤を含むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
【0008】
なお、本明細書において、マイクロ構造体とは、シリコン基板やガラス基板等の表面に各種の3次元構造物等が形成された構造体のことをいい、具体的には例えば、自動車に搭載される圧力センサやDMD(Digital Micromirror Device)等の各種デバイスを構成する部品等や、SAWフィルター(Surface Acoustic Wave Filter)、インクジェットプリンタのプリンタヘッド等が挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のマイクロ構造体の製造方法を行うことにより、高精度な欠陥損失のない平面形状及び85°以上90°未満側壁の形状を有し、かつ熱耐性に優れる犠牲膜パターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ポジ型レジストパターンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、表面マイクロマシニングによるMEMS製造に有利に使用しうるマイクロ構造体の製造方法に関する。
【0012】
表面マイクロマシニングでは、空洞あるいは空間を形成する際、
(i)基板上に成膜された犠牲膜を加工して犠牲膜パターンを形成する段階、
(ii)犠牲膜パターン上に無機材料膜を形成する段階、
(iii)上記無機材料膜の一部にエッチング用の開口部を設け、該開口部を通じてエッチングにより犠牲膜パターンを除去し、犠牲膜パターンの形状を持つ空間を形成する段階
を含む段階を経て目的とするマイクロ構造体を形成する。
【0013】
表面マイクロマシニングでは、上記のように、上記(ii)段階で、無機材料膜を(i)段階で形成した犠牲膜パターン上に形成してマイクロ構造体中の空洞あるいは空間の外壁構造を形成するが、この際、犠牲膜パターンが逆テーパー形状を持っていると無機材料の完全な充填が困難となり、空洞あるいは空間の外壁構造を精密に制御することができない。そこで、犠牲膜パターンは(ii)段階を行う際に順テーパーを持つ形状としておく必要がある。
【0014】
本発明者らは、(i)段階で、特定のポジ型の感光材料を用い、後述する工程から犠牲膜パターンを形成することで、(ii)段階での高温条件が適用可能な犠牲膜パターンを得ることができることを見出した。また、より微細かつ高精度なマイクロ構造体を製造する場合、犠牲膜パターンの側壁は垂直性が高いことが望ましいが、光感光材料膜を用いてパターン形成をするには比較的膜厚の厚い2〜20μm膜厚の感光性膜であっても、図1に示されるパターンの側壁角度(α)を85°以上90°未満という限定された側壁角度をもって基板上に形成し、続く特定の処理によって、その側壁角度を85°以上90°未満に保持したまま、200℃以上の耐熱性を有する犠牲膜パターンとすることに成功したものである。
【0015】
以下、本発明における(i)段階を詳述する。
上述のように、本発明の(i)段階は、
(A)
(A−1)一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂(i)、又は該一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂とフェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂との混合物(ii)、
(A−2)(A−1)のノボラック樹脂(i)又はノボラック樹脂混合物(ii)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、
(A−3)フェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物
のいずれかを含むと共に、酸触媒によりクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成しうる架橋剤を含み、かつ200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を含むことを特徴とする光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を用い、2〜20μmの膜厚を持つ犠牲膜として塗布する工程、
(B)光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を塗布した基板を加熱する工程、
(C)該光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線を用いて、パターンレイアウトイメージに沿った照射を行う工程、
(D)アルカリ性現像液による現像でポジ型の犠牲膜パターンを形成する工程、
(E)得られた該犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として、254nmの波長を含む紫外線の照射を行う工程、好ましくは30〜220℃の範囲で加熱を行いながら、254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作、もしくは該第2の高エネルギー線照射後に100〜220℃で加熱する操作を含む操作、もしくは30〜220℃で加熱を行いながら紫外線照射を行い、更に100〜220℃で加熱する操作を含む操作を行い、上記犠牲膜パターン中のクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成する工程である。
【0016】
(A)の工程で用いられる光パターン形成性犠牲膜形成用組成物としては、基本的には、公知のi線やg線によるリソグラフィーに用いるナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを光活性構造として含むポジ型ノボラックレジスト組成物をいずれもベースとして用いることができ、それに特定の光酸発生剤と架橋剤を添加して調製される。上記(ii)段階で無機材料膜を犠牲膜パターン上に形成する際、犠牲膜パターンの側壁が逆テーパーであると高精度に制御された空間を作ることができなくなるが、ポジ型感光材料を用いることで、逆テーパー形状となることを避けることができる。
【0017】
上記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物のベースとして用いるポジ型ノボラックレジスト組成物は多数の公知例が知られており、主要成分は結合剤として用いられる樹脂としての、いわゆるクレゾールノボラック樹脂と、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルである。ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルはクレゾールノボラック樹脂に一部あるいは全部がエステル結合で結合し、一体となったものでもよく、全部が結合されている場合には、クレゾールノボラック樹脂はナフトキノンジアジドエステルでもある。すなわち、組み合わせとして、
(A−1)一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライド(なお、ハライドとしては、クロライド、ブロマイド等が挙げられる。)によりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂(i)、又は該一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂とフェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂との混合物(ii)、
(A−2)(A−1)のノボラック樹脂(i)又はノボラック樹脂混合物(ii)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、
(A−3)フェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物
の場合がありうる。
【0018】
上記(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分の含有量は、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中45〜98質量%、好ましくは70〜98質量%であり、かつ(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分中のエステル化されたクレゾールノボラック樹脂及びエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂の合計量が67質量%以上(67〜100質量%)であることが好ましい。また、(A−2)成分、(A−3)成分の場合は67〜99質量%、より好ましくは75〜99質量%が好ましい。なお、(A−1)、(A−2)、(A−3)成分のうちでは、(A−1)成分を用いることが好ましい。
【0019】
上記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物は、高解像性と架橋形成工程における形状変化が僅かであるという性質を同時に与えるものであることが必要であることから、上記で用いられるクレゾールノボラック樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2,000〜30,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜20,000である。また、このクレゾールノボラック樹脂は、該クレゾールノボラック樹脂の原料となるクレゾール原料のうち、パラクレゾールを40モル%以上含有する樹脂であり、より好ましくは45モル%以上含有する樹脂である。なお、ここで用いる樹脂は単一種類のものを用いてもよく、また、異なる種類のものを混合して使用してもよい。
【0020】
上記クレゾールノボラック樹脂において、樹脂の重量平均分子量が2,000より低い場合、次の工程である犠牲膜パターン中の樹脂に架橋を形成する工程での、光・熱処理操作中に、一部低分子成分の揮発によるパターン変形を生じる場合がある。また、分子量が30,000を超える場合、リソグラフィー工程において、高精度なパターン形状が確保できない場合がある。
【0021】
上記クレゾール原料のうちのパラクレゾールの含有量は、現像液に対する溶解性に影響を与え、得られるパターン形状を支配する因子の一つとなる。この量が40モル%より少ない場合、ポジ型の未露光部の現像液に対する耐性が不十分となり、リソグラフィーによるパターン形成工程中の現像工程において、膜減りという現象が生じ、膜厚を維持できないことがある。また、この樹脂のアルカリ性現像液に対する溶解性調節のため、樹脂のフェノール基の一部をメチルカルボキシル基、エチルカルボキシル基のようなエステル基でエステル化することも可能である。
【0022】
一方、後述の犠牲膜パターン中の樹脂に架橋を形成させるための加熱操作を行う際、このクレゾール樹脂の溶融温度が130℃より高いものとすることが好ましく、より好ましくは135℃以上のものである。溶融温度が低い場合、熱処理操作において、樹脂パターンの熱変形の原因となる可能性がある。そこで、このクレゾール樹脂には、樹脂溶融温度調節のため、一部にキシレノールやトリメチルフェノール構造を含有することも可能である。
【0023】
光パターン形成性犠牲膜形成用組成物のもう一つの成分であるナフトキノンジアジドスルホン酸エステルは、1,2,3−トリヒドロキシベンゾフェノンのような複数のフェノール性水酸基を持つ化合物に1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸塩化物のようなナフトキノンジアジドスルホン酸塩化物を用いてエステル結合させた比較的低分子性のものでもよく、クレゾールノボラック樹脂にエステル結合させて使用してもよい。これらはすでに多数の化合物が知られており、基本的にはいずれも用いることができる。しかし、上記犠牲膜パターンの側壁の角度は、85°以上90°未満とすることで、より微細かつ高精度なマイクロ構造体を形成することができるが、この形状を2〜20μmの膜厚を持つ光パターン形成性犠牲膜から加工するためには、上述のクレゾールノボラック材料の最適化に加え、上記クレゾールノボラック樹脂にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル化されたものを用いると上記形状を得やすくなる。
【0024】
低分子のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルのみを用いる場合には、特に分子量1,500以下の1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を用いることが好ましい。低分子ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の配合量は、(A−2)又は(A−3)成分中1〜33質量%、特に1〜25質量%が好ましい。
【0025】
上記低分子のナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物の好ましい具体例としては、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンのナフトキノンジアジドスルホン酸エステル等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0026】
一方、クレゾールノボラック樹脂にナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合させて用いる場合には、樹脂中、全フェノール性水酸基のうちの、1〜30モル%、より好ましくは2〜25モル%が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸でエステル化されたものを用いると、より容易に、上記の85°以上90°未満の側壁を持った形状を得ることができる。このエステル化が1モル%よりも低いと、クレゾールノボラック樹脂自体の現像液に対する耐性が下がり、エステル結合させる効果が失われることがある。また、30モル%よりもエステル化率が高い場合には、パターン側壁角度がその樹脂透明性の低下により、85°以上を保持することが難しくなる。また、上述のような光透過性の問題を生じない範囲であれば、ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合させた樹脂と比較的低分子のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルを併用してもよい。
【0027】
なお、(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分の配合量は、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中45〜98質量%、より好ましくは70質量%以上98質量%未満である。
【0028】
本発明のマイクロ構造体の製造方法に用いる光パターン形成性犠牲膜形成用組成物は、常用されるクレゾールノボラック−ナフトキノンジアジド系レジスト組成物に対し、更に酸触媒でクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成することができる架橋剤が添加される。この架橋剤は、化学増幅ネガ型レジスト組成物で用いるアルカリ可溶性樹脂を架橋してネガ化するための架橋剤をいずれも使用することができ、例えばメラミン類、アルコキシメチルウレア類、アルコキシメチルグリコールウリル類等を挙げることができる。この架橋剤は、犠牲膜パターンが形成された後、第2の光照射によってナフトキノンジアジドスルホン酸エステル、あるいは別途添加された酸発生剤より発生した酸によって活性化され、クレゾールノボラック樹脂のフェノール性水酸基あるいは芳香環に求電子的に反応して架橋を形成することで、樹脂を高分子量化し、熱耐性を向上させるものである。
【0029】
光照射によってクレゾールノボラック樹脂より発生するラジカルによる樹脂の多量化や、ナフトキノンジアジドの熱反応によって樹脂間に架橋を形成できることは知られているが、本発明の目的である上記(ii)段階における耐熱条件を優位に挙げるためには、上記架橋剤による架橋形成の効果が高く、形状変化を強く抑制するためには必須である。
【0030】
上記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物に対する上記架橋剤の添加量は光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中2〜30質量%、より好ましくは3〜25質量%である。
【0031】
効果の高く、好ましい架橋剤としてはメラミン化合物、グリコールウリル化合物が選ばれる。更にこのメラミン化合物は、ヘキサメトキシメチルメラミンの単量体及びその縮合物からなることが好ましく、その単量体成分の質量が、全メラミン化合物中80質量%以上、より好ましくは85質量%以上である。好ましいグリコールウリル化合物については、テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリルを好適に用いることができる。前記化合物を用いることで、形成された樹脂構造体の高い耐熱性が容易に確保され、(ii)段階において200℃を超える条件を用いることも可能になる。
なお、架橋剤の添加量が2質量%未満の場合には十分な添加効果が得られず、30質量%を超える場合は、そのリソグラフィー工程の現像工程中に未露光部の現像液耐性が十分ではなくなることがある。
【0032】
更に、本発明においては、200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を添加することによって、パターン形状を保持する効果的な架橋を形成することができる。200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤の中でも、好ましくは、300nmを超える長波長側での最大の吸収率に対する200〜300nmの吸収極大での吸収率の比(A<300/>300と表記)が2.0以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは100以上である光酸発生剤であれば、好適に用いることができる。この吸収率の比が小さくなることは、300nm以上の波長領域に大きな吸収があることを意味している。そのような光酸発生剤を用いると、(C)工程での第1の高エネルギー線を照射した際に、光酸発生剤から多量に酸が発生し、その発生した酸によって架橋剤と樹脂の反応が促進されるために、低感度化してしまい、実用的な感度が得られがたくなる。そのため、吸収率の比が大きいことが好ましい。
【0033】
具体的には、好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤等がある。以下に詳述するが、これらは1種単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0034】
スルホニウム塩はスルホニウムカチオンとスルホネートの塩である。スルホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジtert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル2−ナフチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニルジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシルメチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、トリベンジルスルホニウム等が挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのスルホニウム塩が挙げられる。
【0035】
ヨードニウム塩はヨードニウムカチオンとスルホネートの塩である。ヨードニウムカチオンとしては、例えば、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム等のアリールヨードニウムカチオンが挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられ、これらの組み合わせのヨードニウム塩が挙げられる。
【0036】
スルホニルジアゾメタンとしては、例えば、ビス(エチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(tert−ブチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(パーフルオロイソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert−ブチルカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタン、2−ナフチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニル−2−ナフトイルジアゾメタン、メチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert−ブトキシカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタンとスルホニルカルボニルジアゾメタンが挙げられる。
【0037】
N−スルホニルオキシイミド型光酸発生剤としては、例えば、コハク酸イミド、ナフタレンジカルボン酸イミド、フタル酸イミド、シクロヘキシルジカルボン酸イミド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、7−オキサビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸イミド等のイミド骨格と、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等の組み合わせの化合物が挙げられる。
【0038】
ベンゾインスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、ベンゾインブタンスルホネート等が挙げられる。
【0039】
ピロガロールトリスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、ピロガロール、フロログリシン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンのヒドロキシル基の全てを、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等で置換した化合物が挙げられる。
【0040】
ニトロベンジルスルホネート型光酸発生剤としては、例えば、2,4−ジニトロベンジルスルホネート、2−ニトロベンジルスルホネート、2,6−ジニトロベンジルスルホネートが挙げられ、スルホネートとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、メタンスルホネート等が挙げられる。またベンジル側のニトロ基をトリフルオロメチル基で置き換えた化合物も同様に用いることができる。
【0041】
スルホン型光酸発生剤の例としては、例えば、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)メタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)メタン、2,2−ビス(フェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(2−ナフチルスルホニル)プロパン、2−メチル−2−(p−トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2−(シクロヘキシルカルボニル)−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、2,4−ジメチル−2−(p−トルエンスルホニル)ペンタン−3−オン等が挙げられる。
【0042】
グリオキシム誘導体型の光酸発生剤としては、例えば、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(シクロヘキシルスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシム等が挙げられる。
【0043】
また、好適なアニオンは、例えば、ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、4−(4−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸アニオン、2,2,2−トリフルオロエタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン等である。
【0044】
これらの光酸発生剤の添加量については、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中0.001〜15質量%、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.2〜10質量%、最も好ましくは0.3〜7質量%であれば、好適に用いることができる。0.001質量%未満の添加量では、第2の高エネルギー線を照射した後の熱処理を行う工程において、効果的に側壁角度を保持することは困難である場合があり、15質量%を超えると、光酸発生剤自体のアルカリ可溶性の低さから、感度が低下してしまう場合があり、実用的でない。
【0045】
上記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物には、上記主要成分の他、その他の公知の添加剤を加えることができる。
【0046】
例えば感度を調整する目的や、パターン側壁角度を調整する目的で、350〜450nmに有効な色素や上記以外の光酸発生剤を添加することができる。この場合の添加量は、通常組成物に含有される固形分総量中0〜10質量%、特に添加する場合は0.1〜10質量%である。色素としては、1,2,3−トリヒドロキシベンゾフェノンのようなベンゾフェノン類、クルクミン、2−フェニル−アゾ−4−メチルフェノールのようなアゾ色素類が挙げられる。なお、犠牲膜パターンの側壁の角度が85°未満のものが望まれる場合にも、上記色素あるいはナフトキノンジアジドスルホン酸エステル量を調整することで、期待する角度を持つ犠牲膜パターンを得ることができる。
【0047】
本発明におけるパターン形成材料には、更に必要に応じて、塗布性を改良するために、ノニオン系、フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤を添加することができる。界面活性剤の添加量は、一般に、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中0〜0.5質量%、配合する場合は0.01〜0.5質量%、特に0.01〜0.3質量%が好ましい。
【0048】
上記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物は上述の固形分の他、固形分を溶解し、成膜することができる溶剤を含有する。溶剤の含有率は、一般に、本発明材料全体の50〜90質量%である。溶剤としては公知のレジスト用溶剤がいずれも使用することができるが、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル及びそのアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル及びそのアセテート類、ジエチレングリコールモノもしくはジアルキルエーテル類、乳酸アルキルエステル類、アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル等の酢酸エステル類などが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
本発明に用いる光パターン形成性犠牲膜は、上述した光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を用いて基板上に成膜する。成膜法は多数が公知であり、特に限定されないが、通常、目的の基板上にポジ型フォトレジスト組成物を含有する溶液をスピンコート法や印刷法等の公知の方法などいずれの塗工方法も適用しうる。
【0050】
(B)の工程では、上記、塗布成膜をした後、ホットプレートやオーブンを用いて、80〜130℃程度の温度で熱処理することで、マイクロ構造体の空洞や空間に必要な膜厚である、2〜20μmの光パターン形成性犠牲膜を形成する。
【0051】
(C)の工程である、光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線によるパターン照射を行う工程は、上記(A)の工程で得られた光パターン形成性犠牲膜の不要な部分を次工程の現像で溶解除去されるように溶解性変化をさせる工程である。第1の高エネルギー線によるパターン照射に用いる高エネルギー線は、ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルが感度を持つものであれば特に限定されないが、好ましくは350〜450nmの紫外線が用いられる。また、最適な照射量は用いる光パターン形成性犠牲膜に依存して決まるため、予めパターン形成に必要な最適な露光量を求め、得られたものをパターン照射に用いる。
【0052】
(D)の工程である、アルカリ性現像液による現像でポジ型の犠牲膜パターンを形成する工程は、水性アルカリ性現像液を用い、上記(C)の工程で高エネルギー線が照射された部分を溶解除去する工程である。水性アルカリ性現像液としては、例えば、1.0〜3.5質量%、好ましくは1.3〜3.0質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を用い、現像処理を行って、紫外線を照射した部分の樹脂膜を溶解除去することで、目的とする犠牲膜パターンを得る。なお、水性アルカリ性現像液については、上記のような有機現像液に限らず、例えば、KOH等を用いた無機現像液であっても、所望の現像速度が得られるのであれば、使用することに何ら制限はなく、水性アルカリ性現像液であれば、使用可能である。
【0053】
本発明において、(ii)段階における高温の条件も使用できるよう、犠牲膜パターンに熱耐性を与える工程が、(E)の工程である、得られた犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として、254nmの波長を有する紫外線の照射を行う操作である。この場合、好ましくは30〜220℃の範囲で加熱を行いながら、254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作、該第2の高エネルギー線照射後に100〜220℃で加熱する操作、又は30〜220℃で加熱を行いながら、紫外線照射を行った後100〜220℃で加熱する操作を行うことにより、上記犠牲膜パターン中のクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成する工程を施す。
【0054】
上記第2の高エネルギー線の照射は、254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作であり、この波長を含む紫外線を照射することによって、前述の光酸発生剤からの酸の発生と未反応のナフトキノンジアジドスルホン酸エステルから発生する酸によって、メラミン等の架橋剤が持つ複数の活性化部位にカチオンが発生し、クレゾールノボラック樹脂の水酸基あるいは芳香環に求電子置換反応を起こすことでクレゾールノボラック樹脂間に架橋が形成される。
【0055】
この工程における第2の高エネルギー線照射は、基板全体に対して一括の照射によって行うことができ、従って、254nmの波長のみの紫外線を用いてもよいし、254nmを含むブロードバンドの紫外線を用いてもよい。この照射の際に、照射を行いながら、基板を30〜220℃の範囲で加熱を行うことにより、更に効果的に架橋を形成することができる。この温度は、一段でも、多段の加熱を行っても、構わない。ここでの照射量は、特に制限はないが、効果的な架橋形成のためには、第1の高エネルギー線の照射に用いたエネルギー量の0.5〜1,000倍、より好ましくは5〜500倍、更に好ましくは10〜100倍のエネルギー量の照射が好ましい。
【0056】
更に、第2の高エネルギー線の照射後、架橋反応を促進するために、必要に応じて、100〜220℃の温度で熱処理を行う。高エネルギー線照射後の加熱工程では、ホットプレートやオーブンのような装置による加熱が通常用いられるが、特段制約はない。また、この温度は、1段でもよいし、多段の加温を行ってもよく、例えば160℃以上の加熱を行う場合には、160℃未満の温度で加熱を行った後、160℃以上の加熱を行うと、パターン形状の変形をより強く抑制することができる。
【0057】
この光酸発生剤と架橋剤を用いた架橋形成を行うと、高効率に架橋が導入されるため、より容易に高い耐熱性が確保でき、上記(E)の工程で得られた構造体の側壁角度が85°以上90°未満である犠牲膜パターンの形状を、例えば200℃の熱に暴露した場合にも形状変化が抑制された犠牲膜パターンを容易に得ることができる。
【0058】
上記のようにして犠牲膜パターンを形成した後、犠牲膜パターン上に無機材料膜を被覆、形成する。無機材料膜としてはアモルファスシリコン膜やシリコン酸化膜等が挙げられる。また、無機材料膜を形成する方法としては、いわゆるスパッタ法のようなPVD法や、CVD法等を採用することができる。特に、アモルファスシリコンCVDは、容易に均一な無機材料膜を得ることができる好ましい方法であるが、この方法を採用した場合には基板表面の温度が200℃以上に上昇しやすく、本発明が有利に採用される。また、上記無機材料膜の厚さは、目的とする装置にもよるが、0.1〜2μmであることが好ましい。もしくは一般的に0.3〜1μmである。
【0059】
なお、通常、上述の方法によって高い精度で形状が維持された犠牲膜パターン上に成膜された無機材料膜は、更に目的に応じて追加の加工や成形が行われるが、この段階で、上記無機材料膜の一部には犠牲膜パターンをエッチング除去するための開口部が設けられる。なお、開口部の形成に用いる方法は、目的とする装置の機能や形状によって好ましい方法を用いればよく、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィー方法による開口部形成(スルーホール形成)や、CMPによる天井面の剥離等の公知の方法を用いることができる。
【0060】
そして、この開口部を通じて犠牲膜パターンはエッチング除去されることで犠牲膜パターンの形状を持つ空間が完成する。
【0061】
上述した犠牲膜パターン材料は、クレゾールノボラック樹脂系のものであるため、特に公知のクレゾールノボラック樹脂によるネガ型レジスト組成物の除去に用いるようなウェットあるいはドライのエッチング方法を用いることで、容易に除去することが可能であり、特に、酸素プラズマアッシングのような簡単で、かつ無機材料膜等に影響を与えない方法で容易に除去することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。また、光酸発生剤の吸収度についてはU−3000形分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて200〜600nmの波長範囲を測定し、200〜300nmと>300nmでの吸収極大を求め、それらを用いて比を算出した。溶融温度(ガラス転移点)は示差走査熱量分析装置サーモプラスDSC−8230(リガク社製)により測定した。
【0063】
[感光性樹脂合成例1]
撹拌機、窒素置換装置及び温度計を具備したフラスコ中に、p−クレゾール50モル%、m−クレゾール50モル%でその樹脂溶融温度が145℃である重量平均分子量4,500のクレゾールノボラック樹脂120g、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライド8.1g(樹脂のフェノール性水酸基に対して3モル%)、及び1,4−ジオキサン500gを仕込み、均一になるまで混合した。得られた溶液に、室温で、トリエチルアミン10.6gを滴下して添加した。添加終了後、1時間撹拌を続け、その後、反応溶液を大量の0.1N塩酸水溶液中に投入して、析出した樹脂を回収した。回収した樹脂を減圧乾燥機で乾燥して、目的とする感光性樹脂である、部分的に1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニル化されたノボラック樹脂(1)130gを得た。この樹脂中に含まれるノボラック樹脂の総量は92質量%であった。
【0064】
[感光性樹脂合成例2]
感光性樹脂合成例1の方法に従い、p−クレゾール55モル%、m−クレゾール45モル%でその樹脂溶融温度が149℃である重量平均分子量10,000のクレゾールノボラック樹脂120gと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライド16.1g(樹脂のフェノール性水酸基に対して6モル%)の反応によってノボラック樹脂を得た。この樹脂中に含まれるノボラック樹脂の総量は85質量%であった。
【0065】
[感光性樹脂合成例3]
感光性樹脂合成例1の方法に従い、p−クレゾール45モル%、m−クレゾール55モル%でその樹脂溶融温度が143℃である重量平均分子量6,000のクレゾールノボラック樹脂120gと1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライド32.2g(樹脂のフェノール性水酸基に対して12モル%)の反応によってノボラック樹脂を得た。この樹脂中に含まれるノボラック樹脂の総量は77質量%であった。
【0066】
[実施例1]
〈光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の製造〉
感光性樹脂合成例1で得られたクレゾールノボラック樹脂33.17g、単量体濃度が97質量%であるヘキサメトキシメチルメラミン(CL1)6.63g、波長200〜300nmの領域で最大の吸収極大を有するp−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホネート(PAG1、A<300/>300>1,500)2.84g、及び1,2,3−トリヒドロキシベンゾフェノンの3つの水酸基が1,2−ナフトキノンアジド−5−スルホン酸とエステル結合を形成したナフトキノンジアジドスルホン酸エステル(NT−300P、東洋合成工業(株)製)0.47g、フッ素シリコーン系界面活性剤であるX−70−093(商品名、信越化学工業(株)製)0.01gを、乳酸エチル56.87gに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して、目的とするパターン形成用組成物(1)を得た。
【0067】
[実施例2]
感光性樹脂合成例1で得られたクレゾールノボラック樹脂35.89g、CL1を1.54g、波長200〜300nmの領域で最大の吸収極大を有するノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホネート(PAG2、A<300/>300>1,500)1.03g、フッ素シリコーン系界面活性剤であるX−70−093(商品名、信越化学工業(株)製)0.01gを用い、乳酸エチル61.53gに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して、目的とするパターン形成用組成物(2)を得た。
【0068】
[実施例3]
感光性樹脂合成例2で得られたクレゾールノボラック樹脂35.35gを用い、CL1を3.03g、波長200〜300nmの領域で最大の吸収極大を有する(1−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン(PAG3、A<300/>300=300)1.01g、フッ素シリコーン系界面活性剤であるX−70−093(商品名、信越化学工業(株)製)0.01gを、乳酸エチル60.60gに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して、目的とするパターン形成用組成物(3)を得た。
【0069】
[実施例4]
感光性樹脂合成例3で得られたクレゾールノボラック樹脂32.26g、CL1を6.45g、PAG3を1.38g及び1,2,3−トリヒドロキシベンゾフェノンの3つの水酸基が1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸とエステル結合を形成したナフトキノンジアジドスルホン酸エステル4.61g、フッ素シリコーン系界面活性剤であるX−70−093(商品名、信越化学工業(株)製)0.01gを、乳酸エチル55.29gに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して、目的とするパターン形成用組成物(4)を得た。
【0070】
[実施例5]
感光性樹脂合成例3で得られたクレゾールノボラック樹脂33.33g、CL1を6.67g、PAG1を2.86g、フッ素シリコーン系界面活性剤であるX−70−093(商品名、信越化学工業(株)製)0.01gを、乳酸エチル57.14gに溶解した。この溶液を孔径0.2μmのフィルターで濾過して、目的とするパターン形成用組成物(5)を得た。
【0071】
[実施例6]
上記実施例1の組成物をシリコンウェーハ上にスピンコートし、その後、ホットプレート上で100℃で120秒間プリベークして、膜厚5μmの皮膜を形成した。これをi線ステッパーNSR−1755i7A(商品名、(株)ニコン製、365nmの単色光)で露光し、そして2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で100秒間現像し、その後、純水で30秒間リンスし、スピンドライした。この時の露光量は、100mJ/cm2で、5μmのラインアンドスペースパターンを形成することができた。また、上記と同様の方法で、10μmのラインアンドスペースパターンを形成した。ラインパターンの側壁角度については、電界放出形走査電子顕微鏡S−4700(商品名、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、パターン断面形状の基板からのレジスト側壁角度を測定し、5μm、10μm、共に89°であった。ここで、第2の高エネルギー線を照射し、硬化した後の形状変化量が、パターンサイズに依存する場合があるために、2種類のパターンサイズを用いて、評価を行った。なお、膜厚の測定は光学式測定機を用いた。
【0072】
これらのウェーハに対し、第2の高エネルギー線としてUMA−802−HC551TZ(ウシオ電機(株)製、254nmを含む紫外線)を用いて、50℃での加熱を行いながら、照度20mW/cm2で400秒間の露光を加えた後、オーブンを用いて150℃で30分間、更に200℃で30分間の合計1時間の熱処理を加え、表面マイクロマシニング用ウェーハを作製した。このとき、第2の高エネルギー線照射を行ったウェーハの5μmパターンの側壁角度は88°、10μmパターンの側壁角度は89°であった。
【0073】
これを、プラズマCVDによる無機材料膜の形成を想定し、250℃で30分間熱処理し、その膜厚を測定したところ、前後で膜厚の変動は見られず、かつ、そのパターン側壁角度の変動も生じなかった。この熱処理を終えたパターンを有するウェーハ上に、アモルファスシリコンを成膜するため、プラズマCVD装置(PD−220/サムコ(株)製)にて、上記で作製したラインアンドスペースパターンを持つ基板上に、0.4μm膜厚のアモルファスシリコン膜を、250℃,30分間の処理によって形成した。その後、走査電子顕微鏡S−4700を用いて、パターン側壁部分を観察したところ、この膜は、パターン側壁部分に欠陥もなく、良好に成膜できていた。
【0074】
更に、上記犠牲膜パターン上のアモルファスシリコン膜の上に一般的なクレゾールノボラック樹脂を利用したi線露光用ポジ型レジスト組成物SIPR−9740(信越化学工業(株)製)を膜厚2μmでコート、パターン形成を行い、次いで、このフォトレジストパターンをマスクとしてSF6によるフッ素系プラズマエッチングにより、アモルファスシリコンの一部に上記犠牲膜パターンにつながる開口部を設けた。その後、アセトンで上記SIPR−9740によるパターンを溶解除去した。次いで、RFプラズマ法による酸素プラズマにより10分間アッシングを行った後、電子顕微鏡S−4700を用いて、基板の表面状態を確認し、残渣がないことを確認した。上述のような250℃の熱処理を加えた樹脂皮膜であっても容易に剥離できることを確認した。
【0075】
この結果より、本発明の方法により形成された犠牲膜パターンは、無機材料膜等の犠牲層エッチング法による表面マイクロマシニングに好適な特性を有していることが確認された。
【0076】
実施例2,3の組成物についても実施例6と同様の実験を行い、順に実施例7,8として、その結果を下表に示す。実施例9,10については、上記実施例4及び5の犠牲膜を用い、第2の高エネルギー線を照射する際にUBX601−03(岩崎電気製、波長254nmを含む紫外線)を用いて、50℃の加熱することなく8,000mJ/cm2の露光を行った。その後の工程は、実施例6と同様に行い、その結果を実施例9,10として表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
[比較例1〜5]
実施例1〜5の組成物を用いて、第2の高エネルギー線照射処理を、i線ステッパーNSR−1755i7A(商品名、(株)ニコン製)による8,000mJ/cm2照射に変更し、実施例6と同じオーブン処理を行った場合の側壁角度の結果を下表に示す。
【0079】
【表2】

【0080】
[比較例6〜9]
下表の組成物を作製し、実施例6と同様の実験を行った。括弧内の数字は、感光性樹脂100質量%に対する質量%を示している。
【0081】
【表3】

【0082】
評価結果は、下記の通りであった。
【0083】
【表4】

【0084】
以上、説明した通り、本発明によれば、簡易な方法で、表面マイクロマシニングの重要技術である犠牲層エッチングに適した樹脂構造体を基板上に形成することができ、MEMS素子の製造工程等に好適に用いることができる。
【0085】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではない。上記実施例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0086】
1 基板
2 犠牲膜パターン
α 基板に対する犠牲膜パターンの側壁角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)基板上に成膜された犠牲膜を加工して犠牲膜パターンを形成する段階、
(ii)犠牲膜パターン上に無機材料膜を形成する段階、
(iii)上記無機材料膜の一部にエッチング用の開口部を設け、該開口部を通じてエッチングにより犠牲膜パターンを除去し、犠牲膜パターンの形状を持つ空間を形成する段階
を含むマイクロ構造体の製造方法において、
上記(i)段階である犠牲膜パターンを形成する段階は、
(A)
(A−1)一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂(i)、又は該一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂とフェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂との混合物(ii)、
(A−2)(A−1)のノボラック樹脂(i)又はノボラック樹脂混合物(ii)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、
(A−3)フェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物
のいずれかを含むと共に、酸触媒によりクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成しうる架橋剤を含み、かつ200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を含む光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を用い、2〜20μmの膜厚を持つ犠牲膜として塗布する工程、
(B)光パターン形成性犠牲膜形成用組成物を塗布した基板を加熱する工程、
(C)該光パターン形成性犠牲膜に第1の高エネルギー線を用いて、パターンレイアウトイメージに沿った照射を行う工程、
(D)アルカリ性現像液による現像でポジ型の犠牲膜パターンを形成する工程、
(E)得られた該犠牲膜パターンに第2の高エネルギー線として、254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作を含み、上記犠牲膜パターン中のクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成する工程
を含むことを特徴とするマイクロ構造体の製造方法。
【請求項2】
上記(E)工程が、30〜220℃の範囲で加熱を行いながら254nmの波長を含む紫外線の照射を行う操作、254nmの波長を含む紫外線の照射後に100〜220℃で加熱する操作、又は30〜220℃の範囲で加熱を行いながら254nmの波長を含む紫外線の照射を行い、更に100〜220℃で加熱する操作を含む請求項1記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項3】
上記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物に用いるクレゾールノボラック樹脂、又は上記フェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂の製造原料であるクレゾールノボラック樹脂が、パラクレゾールを40モル%以上含有し、重量平均分子量が2,000〜30,000で、かつ樹脂溶融温度が130℃以上であるクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項4】
上記1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドにより一部又は全部のフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂は、該樹脂に含まれるフェノール性水酸基の0.5〜30モル%が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドでエステル化されたクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項5】
上記(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分の含有量は、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中45〜98質量%であり、かつ(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分中のエステル化されたクレゾールノボラック樹脂及びエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂の合計量が67質量%以上である請求項1乃至4のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項6】
上記架橋剤は、メラミン化合物又はグリコールウリル化合物であり、該架橋剤を光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中2〜30質量%含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項7】
上記メラミン化合物は、ヘキサメトキシメチルメラミンの単量体を80質量%以上含有するメラミン化合物であることを特徴とする請求項6記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項8】
200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤のうち、300nmを超えた波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数に対する200〜300nmの波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数の比(A<300/>300)が、2.0以上である光酸発生剤を含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項9】
上記(A)〜(E)工程を行った際、上記(E)工程である上記犠牲膜パターン中のクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成する工程後に得られる犠牲膜パターンは、該犠牲膜パターンの側壁が順テーパーであり、かつ基板に対して85°以上90°未満の角度をなす犠牲膜パターンを与える犠牲膜形成用組成物を、前記光パターン形成性犠牲膜形成用組成物として用いる、請求項1乃至8のいずれか1項記載のマイクロ構造体の製造方法。
【請求項10】
(A−1)一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂(i)、又は該一部又は全部のフェノール性水酸基が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドによりエステル化されたクレゾールノボラック樹脂とフェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂との混合物(ii)、
(A−2)(A−1)のノボラック樹脂(i)又はノボラック樹脂混合物(ii)と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、
(A−3)フェノール性水酸基がエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂と1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物
のいずれかを含むと共に、酸触媒によりクレゾールノボラック樹脂間に架橋を形成しうる架橋剤を含み、かつ200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤を含むことを特徴とする光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
【請求項11】
(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分のクレゾールノボラック樹脂又はフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂の製造原料であるクレゾールノボラック樹脂が、パラクレゾールを40モル%以上含有し、重量平均分子量が2,000〜30,000で、かつ樹脂溶融温度が130℃以上であるクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項10記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
【請求項12】
上記1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドにより一部又は全部のフェノール性水酸基がエステル化されたクレゾールノボラック樹脂は、該樹脂に含まれるフェノール性水酸基の0.5〜30モル%が1,2−ナフトキノンジアジドスルホン酸ハライドでエステル化されたクレゾールノボラック樹脂であることを特徴とする請求項10又は11記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
【請求項13】
上記(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分の含有量は、光パターン形成性犠牲膜形成用組成物の固形分総量中45〜98質量%であり、かつ(A−1)、(A−2)又は(A−3)成分中のエステル化されたクレゾールノボラック樹脂及びエステル化されていないクレゾールノボラック樹脂の合計量が67質量%以上である請求項10乃至12のいずれか1項記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
【請求項14】
上記架橋剤はメラミン化合物であり、該メラミン化合物を組成物の固形分総量中2〜30質量%含有することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
【請求項15】
上記メラミン化合物は、ヘキサメトキシメチルメラミンの単量体を80質量%以上含有するメラミン化合物であることを特徴とする請求項14記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。
【請求項16】
200〜300nmの波長領域に最大の吸収極大を持つ光酸発生剤のうち、300nmを超えた波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数と、200〜300nmの波長領域で最大の光吸収となる波長での吸光係数の比(A<300/>300)が、2.0以上である光酸発生剤を含むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項記載の光パターン形成性犠牲膜形成用組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2013−6265(P2013−6265A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100873(P2012−100873)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】