説明

マイクロ機械加工された超音波トランスデューサ及び製造方法

マイクロ機械加工された超音波トランスデューサ(MUT)とその製造方法。トランスデューサの膜は、空洞に溶融接合され、セルを形成する。犠牲材料のウェハ上に膜が形成される。このため、溶融接合のための取り扱いができる。次に、犠牲材料は除去されて、膜が残る。シリコン、窒化珪素等の膜を犠牲材料の上に形成することができる。cMUT、pMUT、mMUTについても述べる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、マイクロ機械加工された超音波トランスデューサ(MUT)に関し、より詳しくはウェハ接合技術を使用してマイクロ機械加工された超音波トランスデューサを製造する方法と、できたMUTに関する。
【背景技術】
【0002】
超音波トランスデューサは、医用像形成非破壊評価等の多くの検出の用途、ガス計測、医学療法、工業清浄等の多くの超音波発生の用途で使用されてきた。このようなトランスデューサの1つの種類は、静電トランスデューサである。静電トランスデューサは、音波を受け取り発生するため長い間使用されてきた。大面積静電トランスデューサアレイは、音響像形成に使用されてきた。静電トランスデューサは、第2のプレートの上に支持された静電トランスデューサの第1のプレートを形成する慣性が非常に小さい弾性膜を用いる。距離が小さいとき、トランスデューサは非常に大きい力を発揮することができる。空気分子の約半波長によりもたらされる運動量は、膜を動かすことができ、逆も同じである。静電的作動と検出は、このような膜の実現と制御を可能にする。又は、膜は、圧電及び磁気トランスデューサを使用して作動させることもできる。
【0003】
広帯域マイクロ機械加工された容量性超音波トランスデューサ(cMUT)は、絶縁材料の壁によりシリコン基板上に支持された同じ又は異なる大きさと形の膜を含む複数の素子を含むことができ、この絶縁材料の壁は膜及び基板と共にセルを形成する。壁は、酸化珪素、窒化珪素等の絶縁材料の層をマイクロ機械加工することにより形成される。基板は、ガラス又は他の基板材料でも良い。容量性トランスデューサは、導電層即ち膜と、基板又は導電領域を有する基板に適用された層等の導電手段とにより形成される。膜が圧電トランスデューサ(pMUT)により作動する他の種類の広帯域超音波トランスデューサでは、セルの壁は絶縁材料で作る必要はない。
【0004】
容量性マイクロ機械加工された超音波トランスデューサの製造は、多くの刊行物と特許に記述されている。例えば、米国特許第5,619,476号と、第5,870,351号と、第5,894,452号を個々に参照するが、これらの特許は、容量性又は静電タイプの超音波トランスデューサを記述し、窒化珪素、酸化珪素、又はポリアミド等の絶縁性支持体によりシリコン等の基板上に膜が支持されている。支持体は、各膜の縁部に係合し、1つ又は複数のセルを形成する。基板と膜の表面上の導電性フィルムの間にかけられる電圧により、膜が振動して音を出す、又は受け取った音が膜を振動させて、容量の変化をもたらす。膜をシールして、液体に浸漬したトランスデューサを動作させることができる。一般に、トランスデューサは、同じ又は異なる大きさ及び/又は形状の複数のセルを含む。ある用途では、多数セルのトランスデューサ素子が、アレイに配置され、素子の電気的励起を制御して、所望のビームパターンを与えることができる。同じ技術を用いて、pMUTとmMUTを製造することができる。
【0005】
一般に、従来のcMUTの膜は、絶縁フィルム上に成長即ち蒸着され、絶縁フィルムの膜は開口部を通して選択的にエッチングされ、下の空洞を与える。膜の特性は、プロセスパラメータと、予測精度と、再現性と、膜の均一性に依存し、妥協点を見出される。更に、下に空洞のある膜の成形は、複雑な処理ステップを必要とする。更に、従来のMUT製造技術を使用して、複雑な空洞膜構造を生成するのは困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一般的な目的は、溶融ウェハ接合技術を用いて、マイクロ機械加工された超音波トランスデューサを提供することである。
本発明の他の目的は、ここに記述した特性を有する溶融接合した膜を有するセルを備えるMUTを製造する方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、機械的特性がよく分り処理パラメータによらない単結晶で出来た膜を備えるMUTを提供することである。
本発明の他の目的は、絶縁体上シリコン(SOI)ウェハ上のシリコンから膜が形成されたMUTを製造する方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、膜の形状と大きさが、フォトリソグラフィー技術により画定され、任意の大きさと形状の膜を作ることができるMUTを製造する方法を提供することである。
本発明の別の目的は、異なる厚さの領域を有する単結晶膜を備えるMUTを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
フォトリソグラフィーの鮮明度と酸化物層のエッチングを用いて、空洞の大きさとMUTセルの形状を画定するMUTを製造する方法であって、絶縁体上シリコンのシリコン側と、酸化物層と、支持ウェハとを溶融接合し、絶縁体上シリコンの裏側と酸化物層を除去して、シリコン膜を形成し、SOIウェハのシリコン層を膜として含むMUTを製造する方法が提供される。
【0010】
フォトリソグラフィーの鮮明度と酸化物層のエッチングを用いて、選択した形状と空洞の大きさのセル壁を形成する、基板により支持された膜を備えるセルを有するMUTを製造する方法であって、膜を形成する材料の層を含むウェハを準備し、その層をセル壁と支持構造とに溶融接合し、ウェハを除去して材料の層を残して、膜を形成し、それにより膜とセル壁と基板とにより画定される壁を形成する方法が提供される。
【0011】
MUTを製造する方法であって、シリコンウェハと絶縁体上シリコンウェハを選択し、ウェハのシリコン上又はSOIウェハのシリコン上に所定の厚さの熱酸化層を形成し、フォトリソグラフィーとエッチングにより、熱酸化層を選択的に除去することにより、空洞の形状と大きさを画定し、ウェハを溶融接合し、絶縁体上シリコンウェハから絶縁体と酸化物を除去してシリコン層を残し、パターン化された酸化物上に支持された膜を形成する方法が提供される。
【0012】
トランスデューサの膜が絶縁体上シリコンウェハのシリコン層を備える容量性マイクロ機械加工された超音波トランスデューサが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
最初に、酸化物上シリコンウェハを酸化珪素セル壁に溶融接合して形成されたシリコン膜を有するcMUTの製造について述べ、次に同じ技術をpMUTとmMUTに使用することを述べる。次に、同じ溶融接合プロセスを使用して、選択した特性を有する他の種類の膜を製造することを述べる。
【0014】
図1.9と3.6を参照すると、本発明のcMUTは、支持ウェハ11上のセルを含み、複数のセル12は、酸化物壁13と、酸化物上シリコンウェハのシリコンを酸化物壁に溶融接合することにより形成されたシリコン膜14を有する。導電性電極は、ウェハ11と、導電層16とを備える(図1.9)。図3.7では、同様の部品は同じ参照番号を付してあり、電極は、埋め込み領域17と導電層16を備える。
【0015】
図1.9のcMUTを形成するステップは、真空下でウェハの溶融接合を用い、このステップを図1.1〜1.9を参照して説明する。プロセスは、2つのウェハでスタートする。第1のウェハ11は、キャリヤーウェハと呼ばれる優良な品質のシリコンウェハである(図1.1)。このウェハがcMUTの底部電極を作る。それは、低抵抗のウェハで、それが導電性バックプレートとなっても良く、又は高抵抗ウェハで選択的にドーピングして、パターン化されたバック電極を画定しても良い。第2のウェハは、図1.5に示すように絶縁体上シリコン(SOI)ウェハである。SOIウェハのシリコンの厚さが、膜の厚さを決める。SOIウェハは、シリコン支持ウェハ21と、酸化物層22と、cMUTの膜を形成するシリコン層14とを含む。SOIウェハは、膜の厚さと特性の設計上の要求に合うように選択される。
【0016】
第1のステップは、空洞の大きさと形状を決めることである。最初に、キャリヤーウェハは、熱酸化されて、酸化物層24,26を形成する(図1.2)。熱酸化層の厚さが、cMUTの空洞の高さを決める。それは、設計上の要求に合うように選択される。フォトリソグラフィステップが、空洞の形状を決める開口部を有する好適なマスクを形成する。次に、プラズマエッチング等のエッチングステップを行い、空洞を画定する。空洞は事実上任意の大きさと形状でよいことは明らかである(図1.3)。二酸化珪素層のドライエッチングは、シリコンウェハで止まり、それゆえ空洞の深さは初期の熱酸化層で決まる。より深い空洞を望むなら、追加のシリコンエッチング(ドライ又はウェット)を使用して、図2に示すように、より深い空洞を画定することができる。底部電極と頂部電極(SOIシリコン)を電気的絶縁するために、図1.4に示すように、キャリヤーウェハ上に薄い酸化物層27を熱的に成長させる。こうすると、膜が壊れて空洞の底部に接触する点まで達しても、短絡とデバイスの故障を防ぐことができる。
【0017】
次のステップは、cMUT膜を形成することである。SOIウェハは、薄いシリコン層14がキャリヤーウェハに向くようにして、キャリヤーウェハ上に置かれる(図1.6)。次に2つのウェハは、真空下のウェハ溶融接合により接合される。もし、接合が非常に低圧で行われるなら、形成された空洞即ちセルは真空シールされる。このステップに続いて、SOI支持ウェハの裏側の厚いシリコン部分21と酸化物層22は、除去される(図1.7)。これは、研削とエッチングプロセスで行うことができ、薄いシリコン層だけが残り、これが空洞の上に膜を形成する。(図1.7)キャリヤーウェハ上の酸化物層26もまた除去される。次のステップは、頂部電極を形成することである。しかし、電極を形成する前に、他のフォトリソグラフィーとドライエッチングのシーケンスを行うこともできる。このステップで、デバイスの周縁の周りの頂部シリコンと酸化物層が除去される(図1.8)。これには2つの理由があり、その1つは個々の電極をアレイ内の隣接する素子から電気的に分離することである。他の理由は、cMUTの底部電極を作るキャリヤーウェハと電気的接触させることである。次に、膜の上に薄い金属層16を蒸着し、頂部電極を作る(図1.9)。頂部電極は、フォトリソグラフィーとエッチングのシーケンスによりパターン化し、寄生キャパシタンスを減らすことができる。従って、単結晶シリコン膜のある真空のセル即ち空洞を有するcMUTが形成され、単結晶シリコン膜の厚さと特性は、SOIウェハの製造を制御することにより制御することができる。
【0018】
ウェハ溶融接合技術とSOIウェハを使用して、電気的ウェハ貫通接続のあるcMUTを製造することができる。この実施の形態では、キャリヤーウェハが処理されて、ウェハ貫通接続を与える。ウェハ貫通接続のあるウェハを図3.4に示す。ウェハは、電気的ウェハ貫通接続技術で前処理され、前側パッドの信号と接地の両方の電気的接続は、キャリヤーウェハの裏側と接続する。簡単にいうと、相互接続ウェハは、高抵抗シリコンの本体31を含み、その中にpn接合32を形成するN型とP型領域が埋め込まれ、絶縁のため熱酸化物層33を成長させる。ウェハ貫通接続のあるウェハは、図1.1のウェハと同様に処理することができ、酸化珪素壁を有する空洞を画定し、その上にSOIウェハを溶融接合することができる。しかし、全く異なるプロセスにより、図3.6のデバイスを形成することができる。裏側支持板21と酸化物層22とシリコン層を含む図3.1のSOIウェハが熱的に酸化され(図3.2)、できた酸化珪素層34の厚さが空洞の深さを決める。初期のSOIウェハと、熱酸化条件は、膜の厚さと特性、及び空洞の深さの設計条件に合うように選択される。熱酸化ステップに続いて、フォトリソグラフィーとドライエッチングのシーケンスが続き、空洞の形状と大きさを画定し、これは膜の形状と大きさに等しい。(図3.7)
【0019】
膜の形成は、上述したのと非常に近似している。SOIウェハとキャリヤーウェハは、低圧化の溶融接合技術を使用して溶融接合され、その結果真空シールされた空洞ができる(図3.4)。SOIウェハの裏面を研削してエッチングして、シリコン層と酸化珪素層21,22を除去し、薄いシリコン層を残し、これが容量性マイクロ機械加工された超音波トランスデューサの膜を形成する。この後、金属化ステップが続き、これは上述したのと少し異なる。この場合、頂部電極は接地として作用し、そのため図3.7の34で示されるように、キャリヤーのシリコン基板に接続される。2次元cMUTアレイの場合は、電気的ウェハ貫通接続が最も適切であるが、頂部電極は接地電極であり、全てのアレイ素子に接続する。他方、各素子の信号電極は、電気的ウェハ貫通接続を通って、それぞれキャリヤーウェハの裏面に戻る。前述した2つのプロセスから、大きさと配置はフォトリソグラフィーステップにより決まり、空洞の深さは酸化物の厚さとエッチングにより決まり、膜の特性はSOIウェハの薄いシリコン層により決まることは明らかである。全ての例で、空洞は真空シールされ、cMUTは空気中でも水中の用途でも実施できる。
【0020】
cMUTを製造するためのウェハ接合技術により、複雑な空洞の設計が可能になる。このように、cMUTに伴う問題の幾つかは解決することができる。次に述べるのは、ウェハ接合技術の1つの変形であり、接合しないポストで複雑な空洞構造を作るもので、色々の用途で使用できる。例えば、低周波数範囲のcMUTの用途で、大きい初期圧力負荷による大きいたわみと硬化の問題を解決できるかもしれない。図4.1を参照すると、スタートの材料は、図1.1〜1.9の実施の形態に使用したのと同じである。空洞の画定の最初の部分は、図1.3について述べたのと同様である(図4.1)。他のフォトリソグラフィーとドライエッチングステップが使用され、図4.2に示すように、第1の空洞の内側に第2の空洞構造を画定する。短い熱酸化ステップが続き、シリコン上に薄い酸化物層42を作り、低部と頂部電極の間を電気的に絶縁する。膜の形成と電極の画定は、図1.5〜1.9について述べたのと同様であり、図4.3に示すデバイスができ、これは支持酸化物ポスト43と非接合ポスト44を示す。
【0021】
前述したことから明らかなように、cMUTトランスデューサでは、膜は縁部で支持される。即ち、膜の縁部はクランプされ、それゆえ移動しない。膜の中心へ行くに従って、動作電圧に応答する移動は大きくなる。言い換えると、膜の縁部は、中心ほど放射した圧力に寄与せず、これは効率の損失を意味する。ウェハ接合技術の柔軟性を使用して、cMUTは、ピストン状の移動で設計することができ、こうすると効率が高くなる。これは、膜の中央部に余分の質量を置くことにより達成される。更に、通常のcMUTでは、膜の厚さは、膜の中で均一であり、これがバネ定数と質量を決める。cMUTの機械的応答を決める2つの重要なパラメータがある。ウェハ接合技術を使用してcMUTを製造することにより、膜の中央部に余分の質量を置くことができ、バネ定数と膜の質量を独立して調節することができる。決まった設計周波数について、異なる有効質量とバネ定数を選択し、ピストン部分の位置の選択により、cMUTの高調波の応答を操作することができる。図5.1〜5.7に示すプロセスフローは、ピストン状の膜を有するcMUTを製造する方法を示す。
【0022】
デバイスを製造するとき、2つのSOIウェハと優良な品質のシリコンウェハを使用する。第1のステップは、余分の質量を画定することである。この目的のため、第1のSOIウェハは、フォトリソグラフィーとドライエッチングのシーケンスでパターン化され、膜に固着すべき余分の質量領域を画定する(図5.1)。このステップで、SOIウェハの薄いシリコン層は選択的にエッチングされ、所定の形状、大きさ、厚さの領域、即ち島が残り、膜に導入すべき追加の質量の設計上の要求に合うようにする。次に、図5.2に示すように、このウェハは、第2のSOIウェハに溶融接合される。第1のSOIウェハの支持部分と酸化物は、研削されエッチングされて除去され、第2のSOIウェハのシリコン層52上に、シリコンの余分の質量51のあるSOIウェハを残す。
【0023】
優良な品質のキャリヤーシリコンウェハ11を熱酸化して空洞の深さを画定し、空洞の形状と大きさはフォトリソグラフィーにより画定され、ドライエッチングシーケンスにより露出した酸化物を除去する。空洞の深さは、SOIウェハの薄いシリコン層上の余分の質量の厚さより大きくなければならない。設計によっては、熱酸化は、空洞の深さを画定する十分ではなく、図2に示すように、更にシリコンエッチングが必要かもしれない。次に、キャリヤーウェハは、再度熱酸化57され、電気的絶縁の目的で、二酸化珪素の薄い層を成長させる(図5.4)。図5.5に示すように、キャリヤーウェハと、薄いシリコン層上に余分のシリコン質量のあるSOIウェハは、真空下で溶融接合される。SOIウェハ上の余分の質量は、キャリヤーウェハ上の空洞と整列する。図5.6に示すように、SOIウェハのハンドル部分即ち支持部分と、シリコン酸化物が、研削とエッチングにより除去され、余分のシリコン質量のあるシリコン膜と、真空シールされた空洞が残る。この図はまた、図1.8と1.9により述べた絶縁と電極画定のステップに従った電極の適用を示す。cMUTは、余分の質量51のある膜14と、空洞12と、電極16とを含む。又は、図3のプロセスのように、酸化物はSOIウェハの上に形成することができる。
【0024】
図4について述べた複雑な空洞構造と、図5について述べた余分の質量のある膜とを組合わせることにより、両方の利点を達成することができる。このようなデバイスを図6に示し、同じ数は同じ部分を示す。
【0025】
cMUTは、空気中において、かなり高いQファクター(quality factor)で共振構造である。しかし、浸漬すると、媒体の音響インピーダンスが、cMUTの機械的インピーダンスより優位になり、その結果非常に広帯域の作動周波数になる。cMUTでは、100%を超える帯域幅が典型的である。膜の下に余分の質量を使用することにより、cMUTの帯域幅を更に増加させることができ、これは前述したウェハ接合技術により可能である。浸漬では、cMUTの周波数応答の低端部は、トランスデューサの全体の大きさで決まる。周波数が低くなると、デバイスは波長よりずっと小さくなり、cMUTの出力する圧力は低下する。cMUTの周波数応答の高端部は、膜の2次共振により制限される。cMUT膜の2次共振を高い周波数にすることにより、帯域幅を増加させることができる。例えば、余分の質量は、酸化物層64によりキャリヤーウェハ63上に支持された膜62上に形成されたリング61の形で画定される。1例として寸法を図7に示す。図8は、図7に示す膜について、質量の厚さの関数として、最初の2つの共振周波数のプロットを示す。図9は、2つの周波数の比のプロットを示し、1次共振周波数に対して2次共振周波数の明確な増加を示す。
【0026】
図4に関連して説明した複雑な空洞構造を作る方法は、他の問題を解決するためにも使用することができる。空洞内のポストの代わりに、図10に示すようにピストンを作ることができる。この構造が解決できる1つの問題は、寄生キャパシタンスである。cMUTでは、任意の移動しないキャパシタンスと、任意の周縁キャパシタンスとは、寄生キャパシタンスと考えられる。任意の音波を発生又は検出しないからである。通常は、頂部電極をパターン化して、移動しない領域上の金属化する面積を最小限にすることにより、寄生キャパシタンスを減らす。底部電極もまたパターン化して、寄生キャパシタンスを更に減らすことができる。しかしそれでも、不可避の周縁キャパシタンスがありえる。cMUTを作るウェハ接合技術を使用して、空洞の形状を設計して支配し、周縁領域を最小限にすることができ、こうするとcMUTの性能は更に改善される。
【0027】
前述したように、同じ溶融接合プロセスは、pMUTとmMUTを製造するのに用いることができる。導電性層を適用してcMUTを形成するのではなく(図1.9、4.3、5.6、6、7)、膜の上に圧電トランスデューサ又は磁気トランスデューサを形成することができる。これを1つのセルについて、図11、12、13に概略的に示す。
【0028】
図11を参照すると、セルは基板51を含み、これがマイクロ機械加工されてセル壁52を形成する。セル壁は、また酸化物又は他の層をマイクロ機械加工することにより形成することができる。膜53が壁に溶融接合され、膜の上に圧電トランスデューサ54が堆積される。トランスデューサは、金属電極56,57と圧電材料58とを含む。電極間にかけられる電圧が、圧電材料内に応力を発生し、膜を振動させて、音波を発生する。圧電材料内の応力は、pMUTにより受け取られる音波により測定される。
【0029】
図12、13において、図11と同じ部分には同じ参照番号を付す。図12は膜53上のコイル61を示し、図13は膜53上の磁気材料62を示す。膜は磁界63により振動し、音波を発生する、又は膜の振動が磁気的に検知される。
【0030】
酸化物上シリコンを溶融接合することにより製造されたシリコン膜を使用してセルを作ることを述べたが、他の材料の膜の溶融接合を行うこともできる。例えば、犠牲材料のキャリヤーウェハの上に、材料66(例えば、SiX、NX、Sil等)のフィルムを蒸着又はエピタキシャル成長させることにより、膜を生成することができ(図14)、フィルム即ち層を溶融接合した後、これを除去して、セル膜を形成することができる。他の実施の形態では、所望の材料のウェハを溶融接合し、次にエッチング、研削、研磨によりウェハ材料を除去し、所望の厚さの膜を残すことにより、膜を画定することができる。
【0031】
別の方法では、所望の膜材料のウェハ68(図15.1)が埋め込まれ、高応力の界面69を形成し、セル72の壁71に溶融接合される(図15.2)。次に、組立体を熱サイクル(衝撃)にかけ、応力のかかった材料の薄い層をバルクから分離し(図15.3)、次に精密に研磨し(図15.4)、選択した材料と特性の膜73を有するMUTを残す。
【0032】
従って、厚さと特性が精密に制御された膜を有するMUTが提供され、MUTデバイスの予測精度、均一性、再現性が向上する。更に、MUTデバイスは、音響特性が改善される、寄生キャパシタンスが減少する等、作用が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1.1〜1.9は、本発明の1実施の形態に従ってcMUTを形成するステップを示す図である。
【図2】図1.3の処理したウェハの他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】図3.1〜3.7は、本発明の他の実施の形態に従ってcMUTを形成するステップを示す図である。
【図4】図4.1〜4.3は、本発明の別の実施の形態に従ってcMUTを形成するステップを示す図である。
【図5】図5.1〜5.6は、本発明の他の実施の形態に従った異なる厚さの部分を有するcMUTを形成するステップを示す図である。
【図6】本発明の別の実施の形態に従ったcMUTを示す図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に従ったcMUTを示す図である。
【図8】図7の膜上の余分の質量の関数として、第1と第2の共振周波数を示す図である。
【図9】図8の第1と第2の共振周波数の比を示す図である。
【図10】本発明の他の実施の形態に従ったcMUTを示す図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に従って製造されたpMUTを示す図である。
【図12】本発明の他の実施の形態に従って製造されたmMUTを示す図である。
【図13】本発明の他の実施の形態に従って製造されたmMUTを示す図である。
【図14】本発明に従った溶融接合のための膜として機能する薄い層の形成の概略を示す図である。
【図15】図15.1〜15.4は、本発明に従った溶融接合のための他の膜を形成するステップを示す図である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ製作された超音波トランスデューサを製造する方法であって、
シリコンキャリヤウェハを選択し、
酸化物層上に支持された薄いシリコンを有する絶縁体上シリコンウェハを選択し、
前記シリコンウェハ又は前記絶縁体上シリコンウェハの前記シリコン層を熱酸化して、所定の厚さの酸化珪素層を形成し、
所定の大きさと形状の開口部を有するマスクを適用し、前記酸化物層の領域を露出し、
前記露出した開口部の前記酸化物層をエッチング除去して、酸化物壁を画定し、
前記薄いシリコン層が前記シリコンキャリヤウェハに面しそこから間隔をあけるようにして、前記酸化物層により2つのウェハを接合し、それによりセルが形成され、
前記ウェハと前記絶縁体上シリコンウェハの前記酸化物層を除去して、前記酸化珪素層により、前記シリコンキャリヤウェハから間隔をあけて支持された前記薄いシリコン膜を残すステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記酸化物層は、前記シリコンキャリヤウェハ上に形成される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化物層は、前記絶縁体上シリコンウェハの前記シリコン層上に形成される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
接合前に、前記支持する酸化物と前記シリコンキャリヤウェハ上に、薄い酸化物層を適用する追加のステップを備える請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ウェハを接合する前に、前記シリコンキャリヤウェハ上に、薄い酸化物層を形成するステップを備える請求項2に記載の方法。
【請求項6】
酸化物上に支持された薄いシリコン層を有する絶縁体上シリコンウェハを選択し、
前記薄いシリコン層のエッチング除去する部分をマスキングして、所定の大きさと形状の島を残し、
前記絶縁体上シリコンウェハの前記薄いシリコン層に、前記島を接合し、
前記酸化物とウェハを除去して、異なる厚さを有し、薄いシリコン層のある選択したウェハを残し、その結果できたシリコン膜は異なる厚さの領域を有する追加のステップを備える請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化物空洞壁の間の前記キャリヤウェハをエッチングして、底部壁を形作る追加のステップを備える請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記酸化物空洞壁の間の前記キャリヤウェハをエッチングして、底部壁を形作る追加のステップを備える請求項3に記載の方法。
【請求項9】
所定の大きさと形状のパターン化された酸化物支持体によりキャリヤウェハ上に支持された膜を備える超音波トランスデューサを製造する方法であって、
キャリヤウェハを選択し、
酸化物層により支持された薄いシリコン層を有する絶縁体上シリコンウェハを選択し、
所定の厚さの酸化物層を形成し、マスキングとエッチングにより、選択された領域から前記酸化物層を除去し、所定の大きさと形状の領域を与え、
前記キャリヤウェハと、前記絶縁体上シリコンウェハの前記シリコン層とを接合し、
前記支持する酸化物とウェハを除去してシリコン層を残し、所定の大きさと形状の空洞を画定する膜を形成するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項10】
1つの壁が膜で画定されたセルを有する超音波トランスデューサであって、
空洞の1つの壁を形成する表面を有するシリコン本体と、
前記空洞の側壁を画定するように形作られた酸化珪素層と、
前記酸化珪素層の壁に溶融接合され、前記シリコン本体から間隔をあけて支持された膜とを備え、前記膜と前記シリコン本体とで前記セルを画定することを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記シリコン膜は、前記セルの各々で異なる厚さの領域を有する請求項10に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記シリコン本体は、前記セルの各々で異なる高さの領域を有するように形作られる請求項10に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記シリコン膜は前記セルの各々で異なる厚さの領域を有し、前記シリコン本体は、前記空洞の各々で異なる高さの領域を有するように形作られる請求項10に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項14】
前記絶縁体上シリコンウェハの前記シリコン層により、単結晶膜が形成される請求項10に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項15】
マイクロ機械加工された超音波トランスデューサを製造する方法であって、
キャリヤウェハを機械加工して、膜の支持壁を有する選択した大きさと形状の空洞を形成し、
選択した機械特性を有する選択した材料の膜を、前記支持壁に接合し、それによりセルを形成するステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項16】
前記セルの各々の前記膜の上に圧電トランスデューサを形成するステップを備える請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記セルの各々の前記膜の上に磁気トランスデューサを形成するステップを備える請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記膜の上に導電性電極を形成し、それにより静電的に振動可能である請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記膜は犠牲材料上に支持された層であり、前記犠牲材料は前記溶融接合後に除去される請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記層は犠牲材料の応力のある領域であり、応力のない材料は熱衝撃により除去される請求項15に記載の方法。
【請求項21】
支持構造をマイクロ機械加工し、真空下で膜を前記支持構造に膜を溶融接合することにより、空洞を画定し、空洞をシールし、真空のセルを形成することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記膜を振動させるため、圧電トランスデューサを形成するステップを含む請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記膜を振動させるため、磁気トランスデューサを形成するステップを含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記膜を振動させるため、静電トランスデューサを形成するステップを含む請求項21に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサのセルを製造する方法であって、
支持構造を選択し、
犠牲材料に支持された薄い膜を有するウェハを選択し、
所定の厚さで、選択した大きさと形状の窓のある絶縁フィルムを形成し、
前記支持構造の間の前記薄い膜と、前記絶縁フィルムとを溶融接合し、
前記犠牲材料を除去して、前記絶縁フィルム上に支持された薄い膜を残すステップを備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記支持構造はシリコン基板であり、前記絶縁フィルムは酸化物フィルムである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記膜は、シリコン又は窒化珪素である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記絶縁フィルムは前記シリコン基板又は前記膜上に形成された酸化物フィルムである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記膜は、異なる厚さの領域を有する請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記支持構造がエッチングされて、前記セルの底壁が形作られる請求項5に記載の方法。
【請求項7】
1つの壁が膜で画定されたセルを有する超音波トランスデューサであって、
空洞の1つの壁を形成する表面を有するシリコン本体と、
前記空洞の側壁を画定するように形作られた酸化珪素層と、
前記酸化珪素層の壁に溶融接合され、前記シリコン本体から間隔をあけて支持された膜とを備え、前記膜と前記シリコン本体とで前記セルを画定することを特徴とする超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記シリコン膜は、前記セルの各々で異なる厚さの領域を有する請求項7に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記シリコン本体は、前記セルの各々で異なる高さの領域を有するように形作られる請求項8に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記シリコン膜は、前記セルの各々で異なる厚さの領域を有し、前記シリコン本体は、前記セルの各々で異なる高さの領域を有するように形作られる請求項9に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記膜は、絶縁体上シリコンウェハのシリコン層である請求項7乃至10の何れか1項に記載の超音波トランスデューサ。

【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2006−516368(P2006−516368A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−527860(P2004−527860)
【出願日】平成15年8月8日(2003.8.8)
【国際出願番号】PCT/US2003/024777
【国際公開番号】WO2004/016036
【国際公開日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(599108976)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・レランド・スタンフォード・ジュニア・ユニバーシティ (61)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE LELAND STANFORD JUNIOR UNIVERSITY
【Fターム(参考)】