説明

マイクロ波により製造された触媒を使用する炭化水素のヒドロ酸化

水素の存在下で酸素による、対応する部分的に酸化された炭化水素、好ましくはC3〜C8オレフィンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドへの、炭化水素、好ましくはC3〜C8オレフィン、例えばプロピレンのヒドロ酸化のための方法及びヒドロ酸化触媒。この触媒は、チタノシリケート、好ましくはTS−1上に堆積された、金、銀、1種若しくはそれ以上の白金族金属、1種若しくはそれ以上のランタニド希土類金属又はこれらの混合物からなり、チタノシリケートがマイクロ波加熱によって製造されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年4月1日付けで出願された米国仮特許出願第60/558,649号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、水素の存在下において、酸素によって、炭化水素、例えばオレフィンをヒドロ酸化(hydro-oxidation)して部分的に酸化された炭化水素、例えばオレフィンオキシドを生成させる方法及び触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
部分的に酸化された炭化水素、例えばオレフィンオキシド、アルコール、ケトン及びカルボン酸は多くの用途を見出している。オレフィンオキシド、例えばプロピレンオキシドは、アルコールをアルコキシル化して、ポリエーテルポリオール、例えばポリプロピレンポリエーテルポリオール(これは、ポリウレタン及び合成エラストマーの製造に於いて有用性を見出している)を生成するために使用される。オレフィンオキシドは、また、アルキレングリコール、例えばプロピレングリコール及びアルカノールアミン、例えばイソプロパノールアミン(これらは、溶媒及び界面活性剤としての有用性を見出している)の製造に於ける重要な中間体である。アルコール及びケトンは、溶媒として及び有機合成に於いて有用性を見出している。カルボン酸は、エステルの製造及びプラスチックスの製造に於いて有用性を見出している。
【0004】
「ヒドロ酸化方法」は、この用語を本明細書に於いて使用するとき、実質的な量の水素の存在下での、そしてヒドロ酸化触媒の存在下での、直接的に酸素による炭化水素の酸化に関する。これらの方法の生成物は、「部分的に酸化された炭化水素」を含み、これは本発明の目的のために、炭素、水素及び酸素を含む。例えば、オレフィンを、水素及びヒドロ酸化触媒の存在下で、酸素によりヒドロ酸化して、オレフィンオキシドを生成させることができる。アルカンをヒドロ酸化して、アルコール、ケトン及びカルボン酸を生成することができる。
【0005】
ヒドロ酸化方法は、これらの方法の部分的に酸化された生成物が、高い選択率で生成されるために、近年著しく注目を浴びてきた。例えばオレフィンオキシドは90モル%以上の選択率で得ることができる。深く酸化された望ましくない生成物、例えば一酸化炭素及び二酸化炭素は、通常、著しく低い選択率で生成する。ヒドロ酸化方法は、オレフィンを、実質的な量の水素の不存在下に、酸素により、典型的には、例えば空気中で、直接的に酸化して、オレフィンオキシドを生成する直接酸化方法を超えた目覚ましい利点をもたらす。直接酸化に於いて、オレフィンオキシドは、約60〜70モル%の選択率で生成されるに過ぎない。ヒドロ酸化方法を開示している代表的技術は、下記の特許刊行物、即ち特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9及び特許文献10に見出すことができる。
【0006】
ヒドロ酸化方法では、典型的には、好ましくはMFI又はMEL結晶学的構造のチタノシリケート(titanosilicate)上に付着(deposit)された、金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択された、1種又はそれ以上の触媒金属を含む触媒を使用する。一般的に、この触媒金属は、特許文献11に記載されているような含浸により又は特許文献12及び特許文献13に記載されているような付着(堆積)−沈殿により、チタノシリケート上に付着されている。典型的には、チタノシリケートは、特許文献14及び特許文献15に記載されているような、一般的な水熱法(hydro-thermal method)を使用して合成される。水熱合成には、約1〜約7日以上の範囲の結晶化時間が必要であり、従って、チタノシリケートの合成は、ヒドロ酸化触媒の効率的な製造及び結果として起こる商業的活性を妨げる。
【0007】
上記の観点で、ヒドロ酸化触媒を、効率よく、即ち、チタノシリケートの時間消費水熱結晶化の必要なしに製造することが望ましい。マイクロ波製造ヒドロ酸化触媒が、ヒドロ酸化方法に於いて、現在の水熱法によって製造されたヒドロ酸化触媒と比較したとき、匹敵する又はより良い性能、例えば、より良い活性、選択性、水素効率及び/又は寿命を示すことができたならば、より一層望ましいであろう。
【0008】
先行技術は、下記の文献、即ち、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4及び非特許文献5によって示されているように、マイクロ波加熱によるチタノシリケートの効率的な製造を教示している。これらの文献の或るものは、酸化剤としての過酸化水素によるアルカン又は芳香族化合物の液相酸化に於ける、マイクロ波合成したチタノシリケートの使用を教示している。上記の文献の何れも、マイクロ波加熱によって製造されたチタノシリケートが、水素の存在下で酸素による酸化のためのヒドロ酸化触媒を製造するために適切に使用できたことを、開示も示唆もしていない。
【0009】
【特許文献1】欧州特許出願公開第A1−0,709,360号明細書
【特許文献2】国際出願公開第WO96/02323号明細書
【特許文献3】国際出願公開第WO98/00413号明細書
【特許文献4】国際出願公開第WO98/00414号明細書
【特許文献5】国際出願公開第WO98/00415号明細書
【特許文献6】国際出願公開第WO99/00188号明細書
【特許文献7】国際出願公開第WO00/35893号明細書
【特許文献8】国際出願公開第WO00/59632号明細書
【特許文献9】独国特許出願公開第A1−19600709号明細書
【特許文献10】国際出願公開第WO97/25143号明細書
【特許文献11】国際出願公開第WO00/59633号明細書
【特許文献12】米国特許第4,839,327号明細書
【特許文献13】米国特許第4,937,219号明細書
【特許文献14】米国特許第4,778,666号明細書
【特許文献15】国際出願公開第WO01/64581号明細書
【0010】
【非特許文献1】W.S.Ahn等、Studies in Surface Science Catalysis、第55巻(2001年)、第104〜111頁
【非特許文献2】A.Belhekar等、Bulletin of the Chemical Society of Japan、第73巻(2000年)、第2605〜2608頁
【非特許文献3】K.K.Kang等、Catalysis Letters、第59巻(1999年)、第45〜49頁
【非特許文献4】P.J.Kooyman等、Journal of Molecular Catalysis A,Chemical、第111巻(1996年)第167−174頁
【非特許文献5】M.R.Prasad等、Catalysis Communications、第3巻(2002年)、第399〜404頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの面に於いて、本発明は、水素の存在下及びヒドロ酸化触媒の存在下で、部分的に酸化された炭化水素を製造するために十分な方法条件下で、炭化水素を酸素と接触させることを含んでなる、新規なヒドロ酸化方法を提供する。新規な面に於いて、本発明の方法に於いて使用する独特の触媒は、チタノシリケート上に付着された、金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択された、1種又はそれ以上の触媒金属を含み、このチタノシリケートがマイクロ波加熱によって製造されることを特徴とする。
【0012】
本発明の新規な方法は、水素の存在下で、炭化水素及び酸素から直接的に、部分的に酸化された炭化水素、例えばオレフィンオキシド、アルコール、ケトン及びカルボン酸を製造するのに有用である。本発明の目的のために、部分的に酸化された炭化水素は、炭素、水素及び酸素を含む。本発明の新規な方法では、一成分として、マイクロ波加熱によって製造されたチタノシリケートを含む触媒を使用する。有利なことに、マイクロ波加熱は、チタノシリケートの生成を数時間以内に促進する。反対に、従来の水熱法により良好な収率でチタノシリケートを製造するために、約1日から約7日以上までが必要である。予想外に、マイクロ波加熱によって製造されたチタノシリケートを使用する、本発明のヒドロ酸化触媒は、従来の水熱法によって製造されたチタノシリケートを有するヒドロ酸化触媒と比較したとき、ヒドロ酸化方法に於いて改良された性能を示す。
【0013】
別の面に於いて、本発明は、チタノシリケート上に付着された、金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択された、1種又はそれ以上の触媒金属を含む独特の触媒組成物であって、このチタノシリケートがマイクロ波加熱によって製造されることを特徴とする触媒組成物である。
【0014】
有利なことに、本発明の新規なヒドロ酸化触媒は、僅かに数時間の商業的に許容できる時間内に製造することができる。これに関して、本発明の触媒は、チタノシリケート成分の製造のために多くの日数を必要とする先行技術のヒドロ酸化触媒を超えて利益をもたらす。更に、そのチタノシリケート成分がマイクロ波加熱によって製造される本発明の触媒は、そのチタノシリケート成分が従来の水熱法によって製造される先行技術のヒドロ酸化触媒と比較したとき、改良された活性及び高い選択率の形で、改良された性能を達成する。
【0015】
更に別の面に於いて、本発明は、ヒドロ酸化触媒の新規な製造方法であって、(a)チタン源、ケイ素源、構造指定剤(structure directing agent)(又はテンプレート)及び水を含む合成溶液を、チタノシリケートを製造するのに十分な条件下で、マイクロ波放射線によって加熱し、(b)合成溶液からチタノシリケートを回収し、そしてチタノシリケートをか焼して、構造指定剤(又はテンプレート)を除去し、(c)触媒金属を、か焼したチタノシリケートの上に付着させて(触媒金属は、金、銀、1種又はそれ以上の白金族金属、1種又はそれ以上のランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択される)、金属−チタノシリケートコンポジットを形成し、そして任意的に(d)金属−チタノシリケートコンポジットを、酸素含有ガス下で又は還元雰囲気下で又は不活性ガス下で、ヒドロ酸化触媒を製造するのに十分な条件下で加熱することを含んでなる方法を提供する。
【0016】
ヒドロ酸化触媒の上記の製造方法は、先行技術の方法と比較したとき、製造時間を有利に短縮する。更に、製造された触媒は、部分的に酸化された炭化水素を製造するためのヒドロ酸化方法に於いて改良された性能を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書に記載した発明は、一つの面に於いて、部分的に酸化された炭化水素を製造するための、新規なヒドロ酸化方法を提供する。この方法は、炭化水素を酸素と、水素及びヒドロ酸化触媒の存在下で接触させることを含んでなり、この触媒は、チタノシリケート上に付着された、金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択された、1種又はそれ以上の触媒金属を含み、この接触は、部分的に酸化された炭化水素を製造するために十分な方法条件下で実施する。本発明の新規な面に於いて、このチタノシリケートは、マイクロ波加熱によって製造されることで特徴付けられる。
【0018】
本発明の好ましい態様に於いて、酸化させる炭化水素は、オレフィン、更に好ましくは、C3〜C12オレフィンである。なお更に好ましい態様に於いて、オレフィンは、C3〜C8オレフィンであり、そしてこれは、対応するC3〜C8オレフィンオキシドに転化される。最も好ましい態様に於いて、オレフィンはプロピレンであり、そしてこれはプロピレンオキシドに転化される。
【0019】
本発明のヒドロ酸化方法に於いて使用する新規な触媒は、チタノシリケート上に付着された、金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択された、1種又はそれ以上の触媒金属を含み、このチタノシリケートは、それがマイクロ波加熱によって製造されるという点で特徴付けられる。好ましい態様に於いて、触媒金属は、任意に、銀、1種若しくはそれ以上の白金族金属、1種若しくはそれ以上のランタニド希土類金属又はこれらの混合物と組み合わさった金である。好ましくは、チタノシリケートは、X線回折(XRD)によって決定したときに、結晶性である。更に好ましくは、チタノシリケートは、その結晶性骨格構造内の細孔又はチャンネル又はキャビティのネットワークによって特徴付けられる、多孔質結晶性チタノシリケートである。チタノシリケートの最も好ましい形は、MFI結晶学的構造、例えばチタンシリカライト−1(titanium silicalite-1)(TS−1)を含む。
【0020】
更に別の面に於いて、本発明は、ヒドロ酸化触媒の新規な製造方法であって、(a)チタン源、ケイ素源、好ましくはアミン又は第四級アンモニウム化合物の形での構造指定剤(又はテンプレート)及び水を含む合成溶液を、チタノシリケートを製造するのに十分な条件下で、マイクロ波放射線によって加熱し、(b)合成溶液からチタノシリケートを回収し、そしてこのようにして形成されたチタノシリケートをか焼して、構造指定剤(又はテンプレート)を除去し、(c)触媒金属を、チタノシリケートの上に付着させて(触媒金属は金、銀、1種又はそれ以上の白金族金属、1種又はそれ以上のランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択される)、金属−チタノシリケートコンポジットを形成し、そして任意的に(d)金属−チタノシリケートコンポジットを、酸素含有ガス下で又は還元雰囲気下で又は不活性ガス下で、ヒドロ酸化触媒を製造するのに十分な条件下で加熱することを含んでなる方法を提供する。
【0021】
触媒製造の好ましい態様に於いて、合成溶液は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、チタンテトラ(n−ブトキシド)、構造指定剤としてのテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)及び水を含む。別の好ましい態様に於いて、合成溶液は、モル基準で、約5〜約20,000の範囲内のSiO2/TiO2比、約1.7〜約8.3の範囲内のSiO2の構造指定剤に対する比及び約0.005〜約0.49の範囲内のSiO2/H2O比を含む。更に好ましい態様に於いて、合成溶液は、モル基準で、約35〜約1000の範囲内のSiO2/TiO2比、約2.08〜約6.25の範囲内のシリカの構造指定剤に対する比及び約0.070〜約0.028の範囲内のSiO2/H2O比を含む。上記の合成溶液は、好ましい態様に於いて、下記の条件、即ち、合成溶液1リットル当たり約100ワットよりも大きくから約6,000未満ワットまでのエネルギー入力下でマイクロ波放射線により加熱し、約0.5℃/分よりも大きく、約40℃/分よりも小さい速度で、予定の最終温度まで加熱し、次いで約140℃よりも高くそして約250℃よりも低い最終温度で、約3分間よりも長くから約16時間よりも短くまでの範囲内の時間加熱する。上記の条件下で、最も好ましい態様に於いて、製造されたチタノシリケートは、MFI構造TS−1を含む。別の好ましい態様に於いて、チタノシリケート上に付着された触媒金属は金である。
【0022】
炭化水素は、このようなヒドロ酸化方法に関与することができる任意の炭化水素、好ましくはアルカン又はオレフィンであってよい。典型的なアルカンは、1〜約20個の炭素原子、好ましくは1〜約12個の炭素原子を含む。典型的なオレフィンは、2〜約20個の炭素原子、好ましくは2〜約12個の炭素原子を含む。オレフィンの中で、モノオレフィンが好ましいが、2個又はそれ以上の二重結合を含有するオレフィンも使用することができる。炭化水素には炭素及び水素原子のみが含有され又は、任意的に、任意の炭素原子が不活性置換基によって置換されていてもよい。本明細書で使用するとき、用語「不活性」は、置換基が、本発明の方法に於いて実質的に非反応性であることを必要とする。適当な不活性置換基は、これらに限定しないが、ハロ、エーテル、エステル、アルコール及び芳香族単位を含む。好ましくは、ハロ置換基はクロロである。好ましくは、エーテル、エステル及びアルコール単位は、1〜約12個の炭素原子を含む。好ましくは、芳香族単位は、約6〜約12個の炭素原子を含む。本発明の方法のために適しているオレフィンの限定しない例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン並びに同様に、メチルペンテン、エチルブテン、ヘプテン、メチルヘキセン、エチルペンテン、プロピルブテン、好ましくは1−オクテンを含むオクテン及びこれらの他のより高級類似体の種々の異性体並びにブタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、塩化アリル、アリルアルコール、アリルエーテル、アリルエチルエーテル、酪酸アリル、酢酸アリル、アリルベンゼン、アリルフェニルエーテル、アリルプロピルエーテル及びアリルアニソールが含まれる。好ましくは、オレフィンは、非置換の又は置換されたC3〜C12オレフィン、更に好ましくは、非置換の又は置換されたC3〜C8オレフィン、最も好ましくはプロピレンである。
【0023】
このヒドロ酸化方法で使用する炭化水素の量は、広範囲に亘って変化させることができる。典型的には、炭化水素の量は、炭化水素、酸素、水素及び下記のような使用することができる任意の任意的な希釈剤の全モル数基準で、約1モル%よりも多く、更に好ましくは約10モル%よりも多く、最も好ましくは約20モル%よりも多い。典型的に、炭化水素の量は、炭化水素、酸素、水素及び任意的な希釈剤の全モル数基準で、約99モル%よりも少なく、更に好ましくは約85モル%よりも少なく、最も好ましくは約70モル%よりも少ない。
【0024】
本発明の方法のために酸素が必要である。任意の酸素源が許容されるが、空気及び本質的に純粋な分子状酸素が好ましい。使用する酸素の量は、また、広範囲に亘って変化させることができる。好ましくは、酸素の量は、炭化水素、水素、酸素及び任意的な希釈剤の全モル数基準で、約0.01モル%よりも多く、更に好ましくは約1モル%よりも多く、最も好ましくは約5モル%よりも多い。好ましくは、酸素の量は、炭化水素、水素、酸素及び任意的な希釈剤の全モル数基準で、約30モル%よりも少なく、更に好ましくは約20モル%よりも少なく、最も好ましくは約15モル%よりも少ない。
【0025】
本発明の方法のために水素も必要であり、任意の水素源が適当に使用される。使用する水素の量は、ヒドロ酸化を実施することができる任意の実質的な量であってよい。典型的に、使用する水素の量は、炭化水素、水素、酸素及び任意的な希釈剤の全モル数基準で、約0.01モル%よりも多く、好ましくは約0.1モル%よりも多く、更に好ましくは約1モル%よりも多い。水素の適当な量は、炭化水素、水素、酸素及び任意的な希釈剤の全モル数基準で、典型的に約50モル%よりも少なく、好ましくは約30モル%よりも少なく、更に好ましくは約15モル%よりも少ない。
【0026】
上記の反応剤に加えて、希釈剤を使用することが望ましい。この方法は発熱性であるので、希釈剤は、有利に、発生する熱を除去し、そして消散させる手段を提供する。更に、希釈剤は、反応剤が非引火性である拡大した濃度状況を提供する。希釈剤は、本発明の方法を妨害しない任意の気体又は液体であってよい。プロセスを気相で実施する場合、適当な気体状希釈剤には、これらに限定しないが、ヘリウム、窒素、アルゴン、メタン、プロパン、二酸化炭素、スチーム及びこれらの混合物が含まれる。プロセスを液相で実施する場合、希釈剤は、任意の酸化安定性及び熱安定性液体であってよい。適当な液体希釈剤の例には、脂肪族アルコール、好ましくはC1〜C10脂肪族アルコール、例えば、メタノール及びt−ブタノール;塩素化脂肪族アルコール、好ましくはC1〜C10塩素化脂肪族アルカノール、例えば、クロロプロパノール;塩素化芳香族化合物、好ましくは塩素化ベンゼン、例えば、クロロベンゼン及びジクロロベンゼン並びに液体ポリエーテル、ポリエステル及びポリアルコールが含まれる。使用する場合、希釈剤の量は、炭化水素、酸素、水素及び希釈剤の全モル数基準で、典型的に約0モル%よりも多く、好ましくは約0.1モル%よりも多く、更に好ましくは約15モル%よりも多い。希釈剤の量は、炭化水素、酸素、水素及び希釈剤の全モル数基準で、典型的に約95モル%よりも少なく、好ましくは約85モル%よりも少なく、更に好ましくは約50モル%よりも少ない。
【0027】
本発明の方法に於いて有利に使用される独特の触媒は、チタノシリケート上に付着された1種又はそれ以上の触媒金属を含み、この金属は、金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択される。本発明の目的のために、白金属金属には、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、オスミウム及びイリジウムが含まれ、そしてランタニド金属にはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムが含まれる。好ましくは、白金属金属はパラジウムである。好ましくは、ランタニド希土類金属は、エルビウム及びルテチウムから選択される。更に好ましくは、触媒金属は、金又は金と銀、1種若しくはそれ以上の白金族金属、1種若しくはそれ以上のランタニド希土類金属との組合せ又はこれらの混合物を含む。
【0028】
一般的に、チタノシリケートは、SiO44-四面体から形成された、結晶性、準結晶性又は無定形骨格を含み、ここで、ケイ素原子の一部は、チタン原子によって置換されて、見かけ上TiO44-四面体を与えている。好ましくは、チタノシリケートは結晶性であり、これは、骨格が、X線回折(XRD)によって同定することができる周期的規則性を有することを暗示している。好ましくは、チタノシリケートは、また多孔質であり、これは、チタノシリケート骨格内に、細孔又はチャンネルの規則的又は不規則的システムが存在していることを意味する。好ましくは、細孔は、ミクロ細孔若しくは中間細孔(mesopore)又はこれらの幾つかの組合せである。本発明の目的のために、ミクロ細孔は、約4Å〜約20Åの範囲内の細孔直径(又は非円形垂直断面の場合に於けるような限界寸法(critical dimension))によって特徴付けられ、そして中間細孔は、約20Åよりも大きく約200Åよりも小さい範囲内の細孔直径(又は限界寸法)によって特徴付けられる。ミクロ細孔及び中間細孔の一緒にした体積は、好ましくは、全細孔体積の約70%よりも大きく、好ましくは、全細孔体積の約80%よりも大きく占める。細孔体積の残りは、約200Åよりも大きい細孔直径を有するマクロ細孔からなる。適当なチタノシリケートの限定しない例には、チタンシリカライト−1(TS−1)、チタンシリカライト−2(TS−2)、チタノシリケートベータ(Ti−ベータ)、チタノシリケートZSM−5(Ti−ZSM−5)、チタノシリケートZSM−12(Ti−ZSM−12)、チタノシリケートZSM−48(Ti−ZSM−48)及び中間細孔チタノシリケート、例えば、チタノシリケートMCM−41(Ti−MCM−41)及び同様にTi−MCM−48並びにSMAファミリーが含まれる。チタノシリケートのケイ素対チタン原子比(Si/Ti)は、活性で選択的ヒドロ酸化触媒を提供するどのようなものであってもよい。一般的に有利なSi/Ti原子比は、約5/1以上、好ましくは約10/1以上、好ましくは約35/1以上、更に好ましくは約50/1以上である。一般的に有利なSi/Ti原子比は、約20,000/1以下、好ましくは約10,000/1以下、更に好ましくは約1,000/1以下、最も好ましくは約300/1以下である。上記定義されたSi/Ti原子比は、骨格チタン及び存在していてよい任意の余分骨格チタンの合計を含むバルク比を指す。
【0029】
上記のチタノシリケートの製造は、チタン源及びケイ素源を含有する合成溶液を、チタノシリケートを製造するために十分な条件下で、マイクロ波放射線によって加熱することを含む。典型的に、合成溶液は、チタン源、ケイ素源、水及びテンプレート又は構造指定剤、例えばアミン又はテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドからなる。適当な合成溶液は、チタノシリケートでの従来の水熱技術中に見出すことができる。米国特許第4,410,501号明細書及び米国特許第6,255,499B1号明細書(参照して本明細書に含める)に記載されている、TS−1の製造が参照される。適当なチタンの原料の限定しない例には、好ましくは、チタンテトラ(アルコキシド)、更に好ましくは、チタンテトラ(エトキシド)、チタンテトラ(イソプロポキシド)、チタンテトラ(n−ブトキシド)及び四ハロゲン化チタン、好ましくは、四フッ化チタン又は四塩化チタン及びオキシハロゲン化チタン、例えばオキシ塩化チタンから選択される、任意の加水分解性チタン化合物が含まれる。好ましくは、チタン源はチタンテトラ(n−ブトキシド)である。適当なケイ素源の限定しない例には、オルトケイ酸テトラアルキル、例えばオルトケイ酸テトラエチル又はヒュームドシリカ若しくは沈殿シリカが含まれるが、好ましくはナトリウムイオンを含有しないシリカが含まれる。好ましくは、ケイ素源は、オルトケイ酸テトラエチルである。適当なテンプレート又は構造指定剤の限定しない例には、トリアルキルアミン及び第四級アンモニウム化合物が含まれる。トリアルキルアミンは、好ましくは、トリ(C1〜C15アルキル)アミン、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン及びトリ(n−ブチル)アミンである。第四級アンモニウム化合物は、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド又はテトラアルキルアンモニウムハライド、例えば、テトラ(エチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(プロピル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(n−ブチル)アンモニウムヒドロキシド及び対応するハライドであってよい。好ましくは、構造指定剤(又はテンプレート)は、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH)である。
【0030】
チタン源、ケイ素源、テンプレート又は構造指定剤及び水の相対的量は、合成すべき特定のチタノシリケートに依存して変化する。手引きは、先行技術中に見出すことができる。好ましい合成溶液は、モル基準で示される下記の一般的組成、即ち、約5〜約20,000の範囲内のSiO2/TiO2比、約1.7〜約8.3の範囲内のSiO2の構造指定剤に対する比及び約0.005〜約0.49の範囲内のSiO2/H2O比を含む。更に好ましい態様に於いて、合成溶液は、モル基準で、約35〜約1000の範囲内のSiO2/TiO2比、約2.08〜約6.25の範囲内のSiO2の構造指定剤に対する比及び約0.070〜約0.028の範囲内のSiO2/H2O比を含む。典型的には、最も好ましい合成溶液は、約50/1よりも大きく、約300/1よりも小さいSi/Ti原子比を有するチタノシリケートを作る。
【0031】
マイクロ波放射線発生器、電力入力及び結晶化条件は、このような発生器及び結晶化条件が、許容できる時間内に、典型的に約16時間以内にチタノシリケート生成物を製造するという条件で、変化させることができる。任意の市販のマイクロ波発生器、例えばイーソス900プラス・マイクロ波温浸システム(Ethos 900 Plus Microwave Digestion System)(これは、所望の温度プロフィールを維持するための変動性エネルギー入力のプログラム可能なプログラムを提供する)を使用することができる。好ましくは、合成溶液1リットル当たり、約100〜約6,000ワット又はそれ以上、更に好ましくは合成溶液1リットル当たり、約100〜約1,500ワット、最も好ましくは合成溶液1リットル当たり、約200〜約600ワットの範囲内の電力入力は、適当な製造条件を提供する。一般的に、加熱速度は、約0.5℃/分よりも大きく、好ましくは約5℃/分よりも大きく、更に好ましくは約8℃/分よりも大きい。一般的に、加熱速度は、約40℃/分よりも小さく、好ましくは約25℃/分よりも小さく、更に好ましくは約15℃/分よりも小さい。典型的に、合成溶液の温度は、室温から、任意に、第一の保持時間の間、第一の温度で1回の中間停止を伴って、最終保持時間の間、最終温度まで上昇させる。最終保持時間の後、生成物の回収のために、温度を室温にまでゆっくり戻す。このスキームに基づいて、第一の温度を使用する場合、第一の温度は、典型的には約80℃よりも高く、好ましくは約95℃よりも高く、更に好ましくは約100℃よりも高い。典型的には、第一の温度は、約150℃よりも低く、好ましくは約125℃よりも低く、更に好ましくは約110℃よりも低い。使用する場合、第一の温度保持時間は、典型的には約0分間よりも長く、好ましくは約10分間よりも長い。第一の温度保持時間は、典型的には約120分間よりも短く、好ましくは約60分間よりも短い。好ましくは、温度は、第一の加熱温度での中間停止なしに最終温度まで上昇させる。一般的に、最終温度は、約140℃よりも高く、好ましくは約150℃よりも高く、更に好ましくは約160℃よりも高い。一般的に、最終温度は、約250℃よりも低く、好ましくは約210℃よりも低く、更に好ましくは約200℃よりも低く、最も好ましくは約190℃よりも低い。最終温度保持時間は、典型的には約3分間よりも長く、好ましくは約30分間よりも長く、更に好ましくは約60分間よりも長く、最も好ましくは約120分間よりも長い。最終温度保持時間は、典型的には約960分間(16時間)よりも短く、好ましくは約480分間(8時間)よりも短い。
【0032】
チタノシリケート生成物の回収は、これらに限定しないが、濾過、遠心分離又はフロキュレーションとこれに続く濾過若しくは遠心分離を含む、当該技術分野で公知の任意の方法によって実施することができる。濾過を使用する場合、生成物を集めるために、典型的に、約0.05ミクロンよりも大きいが約0.5よりも小さいフィルターが、有利に使用される。その代わりに、合成混合物を超遠心分離して、固体を得、この固体を洗浄し、乾燥、例えば凍結乾燥して、チタノシリケート生成物を得ることができる。第三の回収方法に於いて、合成混合物を遠心分離することができ、次いで遠心分離から得られた液体を、約50℃と約110℃との間の温度で加熱して、揮発性化合物、例えばアルコール又はアミンの液体を除去することができる。その後、合成溶液のpHを、任意の適切な無機又は有機の酸又は塩基によって、約5よりも大きく、好ましくは約7よりも大きいが、約10よりも小さく、好ましくは約9よりも小さく、更に好ましくは約8.5よりも小さい値に調節して、沈殿を得、その後、濾過又は遠心分離を実施してチタノシリケートを集める。第四の回収方法に於いて、合成溶液を無機酸で処理して、pHを約7と約9との間に調節することができ、その後、酸処理した混合物を濾過するか又は遠心分離して、チタノシリケート生成物を集めることができる。第五の回収方法には、合成混合物を遠心分離して結晶性固体を集め、その後、この結晶性固体を酸、例えば0.01M〜5.0M硝酸又は塩酸で洗浄することが含まれる。この洗浄は繰り返すことができ、一般的に、約23℃〜約90℃の温度で実施される。
【0033】
上記の任意の回収方法によって集められた固体生成物は、典型的には、約20℃としてとられるほぼ環境温度と約110℃の間の温度で乾燥させる。その後、乾燥した生成物をか焼して、チタノシリケート生成物から構造指定剤(又はテンプレート)を除去する。か焼は、典型的に、体積で、約0〜約30%の酸素、好ましくは約10〜約25%の酸素を含有する窒素の雰囲気中で実施する。か焼温度は、有利には、約450℃よりも高く、好ましくは約500℃よりも高く、更に好ましくは約525℃よりも高い。か焼温度は、有利には、約900℃よりも低く、好ましくは約750℃よりも低く、更に好ましくは約600℃よりも低い。室温からか焼温度までの加熱速度は、典型的には、約0.1℃/分よりも大きく、好ましくは約0.5℃/分よりも大きく、更に好ましくは約1.5℃/分よりも大きい。室温からか焼温度までの加熱速度は、典型的には、約20℃/分よりも小さく、好ましくは約15℃/分よりも小さく、更に好ましくは約10℃/分よりも小さい。か焼温度で、保持時間は、典型的に約2時間よりも長く、好ましくは約5時間よりも長く、更に好ましくは約8時間よりも長く、一方、保持時間は、典型的に約15時間よりも短く、好ましくは約12時間よりも短い。
【0034】
上記の合成から単離されたチタノシリケート生成物は、典型的には、結晶性又は少なくとも準結晶性であり、そして好ましくは、X線回折により決定したとき、MFI TS−1結晶学的構造を有する。結晶サイズは、結晶化条件に依存する。前記のこれらの結晶化条件について、平均結晶サイズは、直径(又は非球状粒子について限界断面寸法(critical cross-sectional dimension))に於いて、典型的には約0.01ミクロンよりも大きく、好ましくは約0.1ミクロンよりも大きい。平均結晶サイズは、典型的には約5ミクロンよりも小さく、好ましくは約2ミクロンよりも小さい。
【0035】
図1を参照して、マイクロ波放射線結晶化を使用してチタノシリケートを製造する合成反応方法を説明する。例示する態様に於いて、反応器容器(図1、装置1)に、水、チタン源、ケイ素源及び構造指定剤又はテンプレートからなる合成反応混合物を装入する。合成反応混合物を、ポンプ装置(図1、装置2)及び連結導管を介して、反応器容器(図1、装置1)とマイクロ波源装置(図1、装置5)との間で循環させる。チタノシリケート結晶を製造するために十分な、適当な長さの時間の後に、合成混合物の一部を、冷却目的のために、熱交換器(図1、装置3)に通して輸送し、そして冷却された混合物を、固体回収装置(図1、装置4)に輸送して、チタノシリケート結晶を、合成混合物の液相から分離し、回収する。固体回収装置は、濾過、遠心分離又は他の分離デバイスの1種又は組合せを含んでいてよい。
【0036】
図2を参照して、マイクロ波放射線結晶化を使用してチタノシリケートを連続的に製造する合成反応方法を示す。例示する態様に於いて、反応器容器(図2、装置1)に、水、チタン源、ケイ素源及び構造指定剤又はテンプレートを含む合成反応混合物を連続的に装入する。反応混合物を、循環ポンプ(図2、装置2)の手段によって、反応器容器からマイクロ波源装置(図2、装置5)に循環させる。マイクロ波源装置から出た後、合成混合物を熱交換器(図2、装置3)に通してポンプ輸送して、混合物を冷却し、次いで、冷却された混合物を、固体回収装置(図2、装置4)に輸送して、チタノシリケート結晶を合成混合物の液相から分離し、回収する。分離された液相を、使用済み液体タンク(図2、装置6)の中に輸送し、そして任意に、液相を、導管(図2、ライン7)を経て合成反応器(図2、装置1)に再循環させる。
【0037】
有利なことに、マイクロ波加熱によって得られたチタノシリケートは、水熱法によって製造されたチタノシリケートを使用する従来のヒドロ酸化触媒と比較したとき、ヒドロ酸化方法に於いて少なくとも匹敵する結果をもたらすヒドロ酸化触媒を提供する。有利なことに、マイクロ波加熱によって製造されたチタノシリケートは、従来法で製造されたヒドロ酸化触媒と比較したとき改良された性能を示すヒドロ酸化触媒を提供する。
【0038】
チタノシリケートの上への触媒金属の担持量は、得られる触媒がヒドロ酸化方法に於いて活性であるという条件で、変化することができる。一般的に、触媒金属の全担持量は、触媒金属(群)及びチタノシリケートの合計重量基準で、約0.001重量%よりも多い。好ましくは、この全担持量は、約0.003重量%よりも多く、更に好ましくは約0.005重量%よりも多く、最も好ましくは約0.01重量%よりも多い。一般的に、この全担持量は、約20重量%よりも少ない。好ましくは、全金属担持量は、触媒金属(群)及びチタノシリケートの合計重量基準で、約10.0重量%よりも少なく、更に好ましくは約5.0重量%よりも少なく、最も好ましくは約1.0重量%よりも少ない。
【0039】
触媒金属成分(群)は、活性且つ選択的触媒を提供する、当該技術分野で公知の任意の方法によって、チタノシリケートの上に付着させることができる。公知の付着方法の限定されない例には、含浸、イオン交換、堆積−沈殿、噴霧乾燥、蒸着及び固体−固体反応が含まれる。堆積−沈殿方法は、「触媒の製造V(Preparation of Catalysts V)」、G. Poncelet、P.A. Jacobs、P. Grange及びB. Delmon編、Elsevier Science Publishers B.V.、アムステルダム、1991年、第695頁以降中のS.Tsubota、M.Haruta、T.Kobayashi、A.Ueda及びY.Nakahara、「チタン及びマグネシウム酸化物上の高分散金の製造(Preparation of Highly Dispersed Gold on Titanium and Magnesium Oxide)」(引用して本明細書に組み入れる)によって開示されている。好ましい含浸方法は、特許文献11(引用して本明細書に組み入れる)中に開示されている。他の付着方法も当該技術分野で開示されている。
【0040】
任意に、本発明の触媒は、有利に、1種又はそれ以上のプロモーター金属を含んでいてよい。ヒドロ酸化方法のためのプロモーター金属は、例えば、特許文献4(引用して本明細書に組み入れる)に記載されているように、当該技術分野で公知である。好ましくは、プロモーター金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムを含む周期表の第1族金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム及びバリウムを含む第2族金属;ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテチウムを含むランタニド希土類金属並びにアクチニド類、特にトリウム及びウランから選択される。好ましくは、プロモーター金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、エルビウム、ルテチウム及びこれらの混合物から選択される。ランタニドは、金及び銀が不存在であるとき(例えば、La/Na)触媒金属として機能すると考えることができ又は金若しくは銀が存在するとき(例えば、Au/La)プロモーター金属の能力に於いて一層機能すると考えることができる。
【0041】
1種又はそれ以上のプロモーター金属を使用する場合、プロモーター金属(群)の全量は、触媒の全重量基準で、一般的に約0.001重量%よりも多く、好ましくは約0.010重量%よりも多く、更に好ましくは約0.1重量%よりも多い。プロモーター金属(群)の全量は、触媒の全重量基準で、一般的に約20重量%よりも少なく、好ましくは約15重量%よりも少なく、更に好ましくは約10重量%よりも少ない。先行技術には、チタノシリケートの上へのプロモーター金属の付着について適切に記載されている。特許文献4(引用して本明細書に組み入れる)を参照されたい。
【0042】
プロモーター金属に加えて、本発明の触媒には、例えば、ハライド、炭酸塩、リン酸塩並びにカルボン酸アニオン、例えば酢酸塩、マレイン酸塩及び乳酸塩を含むプロモーターアニオンが含有されていてよい。このようなプロモーターアニオンは、特許文献8(引用して本明細書に組み入れる)に記載されているように、当該技術分野で公知である。
【0043】
一般的に、チタノシリケートの上に付着された1種又はそれ以上の触媒金属並びに任意的に1種又はそれ以上のプロモーター金属及び/又はプロモーターアニオンからなるコンポジットは、真空下又は空気下で、20℃〜約120℃の温度で乾燥に付される。任意的に、最終加熱は、空気若しくは酸素下で又は還元雰囲気、例えば水素下で又は不活性雰囲気、例えば窒素下で、本発明の触媒を製造するために十分な温度下で使用することができる。最終か焼を使用する場合、コンポジットは、任意的に酸素を含有する窒素下でか焼される。好ましくは、コンポジットは、約0〜約30体積%の酸素、好ましくは約10〜約25体積%の酸素を含有する窒素の雰囲気中でか焼される。か焼温度は、有利には、約450℃よりも高く、好ましくは約500℃よりも高く、そして更に好ましくは約525℃よりも高い。か焼温度は、有利には、約900℃よりも低く、好ましくは約750℃よりも低く、そして更に好ましくは約600℃よりも低い。室温からか焼温度までの加熱速度は、典型的には、約0.1℃/分よりも大きく、好ましくは約0.5℃/分よりも大きく、更に好ましくは約1.5℃/分よりも大きい。室温からか焼温度までの加熱速度は、典型的には、約20℃/分よりも小さく、好ましくは約15℃/分よりも小さく、更に好ましくは約10℃/分よりも小さい。か焼温度で、保持時間は、典型的には約2時間よりも長く、好ましくは約5時間よりも長く、更に好ましくは約8時間よりも長く、一方、保持時間は、典型的には約20時間よりも短く、好ましくは約15時間よりも短く、更に好ましくは約12時間よりも短い。
【0044】
任意的に、本発明の触媒は、第二の担体、例えばシリカ、アルミナ、アルミノシリケート、マグネシア、チタニア、炭素又はこれらの混合物と共に押し出すことができ、第二の担体に結合することができ又は第二の担体の上に担持させることができる。第二の担体は、触媒の物理的特性、例えば、その強度若しくは耐摩耗性を改良するために又は触媒粒子を一緒に結合するために機能することができる。一般的に、第二の担体の量は、触媒及び第二の担体の一緒にした重量基準で、約0〜約95重量%の範囲である。
【0045】
本発明のヒドロ酸化方法の方法条件は当該技術分野で公知である。バッチ、固定床、輸送床(transport bed)、流動床、移動床、トリックルベッド及び多管式反応器並びに連続式及び間欠式流動及び揺動反応器(flow and swing reactor)が、全て適当な反応器設計である。好ましくは、この方法は気相で実施し、そして反応器は、発生した熱の除去のための熱移動特徴で設計される。この目的のために設計された好ましい反応器には、固定床、多管式、流動床及び移動床反応器並びに平行に連結された複数の触媒床から構成され、そして交替方式で使用される揺動反応器(swing reactor)が含まれる。
【0046】
ヒドロ酸化方法は、典型的には、20℃としてとられる環境よりも高い、好ましくは約70℃よりも高い、更に好ましくは約100℃よりも高い、最も好ましくは約120℃よりも高い温度で実施される。通常、この方法は、好ましくは約300℃よりも低い、更に好ましくは約230℃よりも低い、そして最も好ましくは約175℃よりも低い温度で実施される。典型的には、圧力は、ほぼ大気圧よりも高く、好ましくは約15psig(205kPa)よりも高く、そして更に好ましくは約200psig(1379kPa)よりも高い。典型的に、圧力は、約600psig(4137kPa)よりも低く、好ましくは約400psig(2758kPa)よりも低く、そして更に好ましくは約325psig(2241kPa)よりも低い。
【0047】
流動反応器に於いて、反応剤の滞留時間及び触媒に対する反応剤のモル比は、空間速度(space velocity)によって決定されるであろう。気相方法に対しては、炭化水素反応剤の時間基準気体空間速度(GHSV)は、広い範囲に亘って変化し得るが、典型的には、約10mLの炭化水素/1mLの触媒/1時間(時-1)よりも大きく、好ましくは約250時-1よりも大きく、更に好ましくは約1,400時-1よりも大きい。典型的には、炭化水素反応剤のGHSVは、約50,000時-1よりも小さく、好ましくは約35,000時-1よりも小さく、更に好ましくは約20,000時-1よりも小さい。同様に、液相方法に対しては、炭化水素反応剤の時間基準重量空間速度(WHSV)は、典型的には、約0.01gの炭化水素/1gの触媒/1時間(時-1)よりも大きく、好ましくは約0.05時-1よりも大きく、更に好ましくは約0.1時-1よりも大きい。典型的には、炭化水素反応剤のWHSVは、約100時-1よりも小さく、好ましくは約50時-1よりも小さく、そして更に好ましくは約20時-1よりも小さい。酸素、水素及び任意的な希釈剤の時間基準気体空間速度及び時間基準重量空間速度は、所望の相対モル比を考慮に入れて、炭化水素の空間速度から決定することができる。
【0048】
本発明の方法に於いて炭化水素の転化率は、特定の炭化水素、温度、圧力、モル比及び触媒の形態を含む、使用する特定の方法条件に依存して変化し得る。本明細書で使用するとき、用語「転化率」は、反応して生成物を生成する炭化水素のモル%として定義される。典型的には、約0.5モル%よりも高い炭化水素転化率が達成される。好ましくは炭化水素転化率は、約1モル%よりも高く、更に好ましくは約1.40モル%よりも高い。
【0049】
同様に、部分的に酸化された炭化水素への選択率は、使用する特定のプロセス条件に依存して変化し得る。本明細書で使用するとき、用語「選択率」は、特定の部分的に酸化された炭化水素、例えばオレフィンオキシドを生成する、反応した炭化水素のモル%として定義される。本発明の方法によって、予想外に高い選択率で、部分的に酸化された炭化水素、好ましくはオレフィンオキシドが製造される。典型的には、部分的に酸化された炭化水素への選択率は、約70モル%よりも高く、好ましくは約80モル%よりも高く、更に好ましくは約90モル%よりも高く、そして最も好ましくは約95モル%よりも高い。
【0050】
本発明の方法に於いて、炭化水素の部分酸化の副生物として水が生成する。追加の水素は、直接燃焼されて、水を生成するであろう。従って、水の生成をできる限り最小にすることが望ましい。本発明に於けるオレフィンオキシドへのオレフィンの酸化に於いて、水/オレフィンオキシドモル比は、典型的には、約1/1よりも大きいが、約10/1よりも小さく、好ましくは約4/1よりも小さく、更に好ましくは約2.5/1よりも小さい。
【0051】
本発明は、本発明の使用の純粋に例示であることを意図する、下記の実施例を考慮することによって、一層明瞭になるであろう。本発明の他の態様は、本明細書又は本明細書に開示された本発明の実施を考慮することから、当業者に明らかであろう。他の方法で記載しない限り、全ての%は重量%基準で示す。
【0052】
実施例1
(a)オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、540mL)、チタンテトラ(n−ブトキシド)(11.6mL)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(水中40%、442mL)及び水(506.4mL)を含有する合成溶液(1500mL体積)を製造した。この反応剤を、オーバーヘッド攪拌機及び循環冷却装置を取り付けた2リットルのジャケット付きガラス反応器の中に装入した。TEOSの添加に続いて、チタンテトラ(n−ブトキシド)を、5分間の時間をかけて増分的に(incrementally)添加した。この混合物を5分間攪拌した。5分間の期間の終わりでの溶液の温度を、0℃と−6℃との間、典型的に−4℃に下げた。テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及び水を、1時間かけて同時に添加した。循環器を切り、そして合成溶液を、室温で一夜(約16時間)攪拌しながら乳化させた。乳化した溶液は透明で、粒子はなかった。
【0053】
合成溶液の約70mLを、マイクロ波テフロン(登録商標)(Teflon)反応器容器の中に入れた。テフロン(登録商標)反応器を、メーカーの勧告に従って密閉し、そしてマイクロ波オーブンの中に載せた。9個の反応器の全部を、この方法で載せた。温度制御のために、サーモカップルを反応容器の1個の中に挿入した。更に、圧力モニターのために、同じ反応器を圧力変換器に取り付けた。反応器を室温から160℃まで15分間かけて加熱するように、マイクロ波をプログラムした。反応進行を、モニター上の温度及び圧力プロットを観察することによってモニターした。温度を、160℃で2時間維持した。完結して、反応器を室温にまで冷却し、そしてオーブンから取り出した。
【0054】
(b)第二組の9個の反応器に、合成溶液を装入し、そして同じプロトコルを使用して結晶化させた。しかしながら、これらの反応器は、160℃で4時間維持し、次いで冷却し、そしてオーブンから取り出した。
【0055】
マイクロ波製造した結晶を、冷却条件(約5℃)下で高速遠心分離によって回収した。母液を除去し、そして結晶を、脱イオン水で合計4回洗浄した。洗浄した結晶を80℃で乾燥し、篩い分けし、そして空気雰囲気中で550℃で10時間か焼した。か焼した結晶のサンプル(30メッシュよりも微細)に、22:1の酢酸ナトリウムの金に対するモル比を含有し、それによって1600ppmの金含有量になる、酢酸ナトリウム及びテトラクロロ金(III)酸三水和物のメタノール溶液を使用して、最小湿潤度技術により含浸させた。
【0056】
得られた触媒(2g)を、プロピレンオキシドを生成するための、水素の存在下で酸素によるプロピレンのヒドロ酸化に於いて評価するために、ステンレススチール管型反応器(1/2インチ直径×12インチ)(1.27cm直径×30.48cm)の中に装入した。性能評価プロトコルは、体積で、40%のプロピレン、10%の酸素及び5%の水素のガス組成物を、1800SCCM(標準立方センチメートル/分)の流量で使用した。反応器圧力を300psig(2,068kPa)で維持した。反応器温度を、140℃から150℃までゆっくり上昇させた。初期性能データ(150℃で30±10分間運転)を、下記の表Iに示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表Iから、チタノシリケート上の金からなる触媒(チタノシリケートは、マイクロ波加熱によって製造される)が、プロピレンオキシドへのプロピレンのヒドロ酸化に於いて良好な活性及び優れた選択率を示すことがわかる。
【0059】
比較実験1(CE−1)
チタノシリケート合成溶液を、ステンレススチールシリンダーの中に入れ、従来のオーブン内で160℃で4日間加熱した以外は、実施例1を繰り返した。チタノシリケート結晶を、実施例1に記載したのと同じ方法で回収した。チタノシリケート上の金を製造し、チタノシリケートを、マイクロ波加熱によるのではなく、従来の加熱により製造した以外は、実施例1に記載した方法で評価した。
【0060】
比較実験1を実施例1と比較したとき、マイクロ波加熱を使用して製造した触媒の活性が、従来の加熱により製造した触媒の活性よりも、約10〜20%の係数ほど高いことが分かる。更に、マイクロ波処理した触媒のプロピレンオキシド選択率は、従来触媒の選択率に匹敵し、両方の選択率は高い。従来触媒は、幾らか少ない水副生成物を生成したが、マイクロ波処理した触媒で得られた水の量は許容できる。
【0061】
実施例2
第二合成溶液(750mL)を、下記の反応剤組成物、即ち、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、238mL)、チタンテトラ(n−ブトキシド)(2.5mL)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(水中40%、87mL)及び水(422.5mL)で、実施例1に記載したのと同じ方法で製造した。再び、室温で16時間後の乳化した溶液は、透明で、粒子はなかった。
【0062】
9個の反応器の組を、実施例1に於いて前記したようなマイクロ波結晶化に付した。マイクロ波は、反応器を、15分間に亘って、室温から175℃まで加熱するようにプログラムした。反応進行を、モニター上で温度及び圧力プロットを観察することによってモニターした。この温度を2時間維持した。完結して、反応器を室温まで冷却し、そしてオーブンから取り出した。
【0063】
マイクロ波加熱によって製造したチタノシリケート触媒を、実施例1に記載した方法で回収し、そして洗浄した。また、実施例1に記載した方法で、マイクロ波処理したチタノシリケート上の金からなる触媒を製造し、そしてプロピレンオキシドへのプロピレンのヒドロ酸化に於いて評価した。初期性能データ(150℃で30±10分間運転)を、下記の表IIに示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表IIから、チタノシリケート上の金からなる触媒(チタノシリケートは、マイクロ波加熱によって製造される)が、プロピレンオキシドへのプロピレンのヒドロ酸化に於いて良好な活性及び優れた選択率を示すことがわかる。
【0066】
比較実験2(CE−2)
チタノシリケート合成溶液の大量バッチを、実施例2と同じ配合を使用して製造した。この材料を、160℃に加熱した従来の30ガロンのステンレススチール反応器の中で、4日間結晶化させた。チタノシリケート結晶を回収し、そしてか焼した。実施例2と同じ方法で、チタノシリケート上の金触媒を製造し、そして評価した。結果を表IIに示す。
【0067】
比較実験2を実施例2と比較したとき、マイクロ波加熱を使用して製造した触媒の活性が、従来の加熱により製造した触媒の活性よりも、約16%の係数ほど高いことが分かる。更に、マイクロ波処理した触媒のプロピレンオキシド選択率は、従来触媒の選択率に匹敵し、両方の選択率は非常に高い。マイクロ波処理した触媒は、幾らか少ない水副生成物を生成した。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】マイクロ波放射線による結晶化によりチタノシリケートを製造する合成反応方法を示す。
【図2】マイクロ波放射線による結晶化によりチタノシリケートを製造する連続式合成反応方法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素並びにチタノシリケート上に、金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択された1種又はそれ以上の触媒金属を付着させてなるヒドロ酸化触媒の存在下に、部分的に酸化された炭化水素を製造するのに十分な接触条件下で炭化水素を酸素と接触させることを含んでなり、前記チタノシリケートがマイクロ波加熱によって製造されたものであることを特徴とするヒドロ酸化方法。
【請求項2】
炭化水素がC1〜C20アルカン又はC2〜C20オレフィンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒金属が金又は銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの組合せからなる群から選択された1種又はそれ以上の金属と組合わせた金である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
触媒金属が、触媒金属(群)及びチタノシリケートの合計重量基準で、約0.001重量%よりも多くそして約20重量%よりも少ない量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
触媒が、周期表の第1族金属、第2族金属、ランタニド希土類金属及びアクチニド金属及びこれらの混合物から選択された1種又はそれ以上のプロモーター金属並びに任意的に、ハライド、炭酸塩、リン酸塩、カルボン酸アニオン及びこれらの混合物からなる群から選択された1種又はそれ以上のプロモーターアニオンを更に含み、そして更に、1種又はそれ以上のプロモーター金属が、触媒の全重量基準で、約0.001重量%よりも多くそして約20重量%よりも少ない全量で、触媒中に存在する請求項1に記載の方法。
【請求項6】
触媒がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、エルビウム、ルテチウム及びこれらの混合物からなる群から選択された1種又はそれ以上のプロモーター金属を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
チタノシリケートが約5/1〜約20,000/1の範囲内のSi/Ti原子比を有する結晶性、準結晶性及び無定形チタノシリケートから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
チタノシリケートがTS−1、TS−2、Ti−ベータ、Ti−ZSM−5、Ti−ZSM−12、Ti−ZSM−48、Ti−MCM−41、Ti−MCM−48及びSMAのファミリーのチタノシリケートからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
触媒が(a)チタン源、ケイ素源、構造指定剤(又はテンプレート)及び水を含む合成溶液を、チタノシリケートを製造するのに十分な条件下で、マイクロ波放射線によって加熱し、(b)合成溶液からチタノシリケートを回収し、そしてチタノシリケートを酸素又は空気の下でか焼して、構造指定剤(又はテンプレート)を除去し、(c)1種又はそれ以上の触媒金属を、チタノシリケート上に付着させ、並びに任意的に(d)得られる触媒金属(群)−チタノシリケートコンポジットを、酸素下で又は還元剤下で又は不活性ガス下で、触媒を製造するのに十分な条件下で加熱する
ことによって製造される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
チタン源が、チタンテトラ(アルコキシド)、四ハロゲン化チタン、オキシハロゲン化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チタン源がチタンテトラ(エトキシド)、チタンテトラ(イソプロポキシド)、チタンテトラ(n−ブトキシド)、四フッ化チタン、四塩化チタン、オキシ塩化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ケイ素源がオルトケイ酸テトラアルキル及びヒュームドシリカ又は沈殿シリカからなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項13】
テンプレート又は構造指定剤がトリアルキルアミン、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、テトラアルキルアンモニウムハライド及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項9に記載の方法。
【請求項14】
チタノシリケートが、モル基準で、約5〜約20,000の範囲内のSiO2/TiO2比、約1.7〜約8.3の範囲内のSiO2の構造指定剤に対する比及び約0.005〜約0.49の範囲内のSiO2/H2O比で含む合成溶液から製造される請求項9に記載の方法。
【請求項15】
マイクロ波加熱が合成溶液1リットル当たり約100ワット〜約6,000ワットのエネルギー入力を有するマイクロ波発生器により与えられ、そして、約0.5℃/分よりも大きく、約40℃/分よりも小さい加熱速度でマイクロ波加熱を実施する請求項9に記載の方法。
【請求項16】
約80℃よりも高く約150℃よりも低い第一の温度で、約0分間よりも長く約120分間よりも短い第一の温度保持時間、そして約140℃よりも高く約250℃よりも低い最終温度で、約3分間よりも長く約16時間よりも短い最終温度保持時間の2段階でマイクロ波加熱を実施する請求項9に記載の方法。
【請求項17】
約140℃よりも高く約250℃よりも低い最終温度で、約3分間よりも長く約16時間よりも短い最終温度保持時間の1段階でマイクロ波加熱を実施する請求項9に記載の方法。
【請求項18】
マイクロ波加熱によって製造されたチタノシリケート生成物が、直径(又は非球状粒子について限界断面寸法)が約0.01ミクロンよりも大きく、約5ミクロンよりも小さい平均結晶サイズを有する請求項1に記載の方法。
【請求項19】
約20℃よりも高く約300℃よりも低い温度で、そして約15psigよりも高く約600psigよりも低い圧力で、そして任意的に、ヘリウム、窒素、プロパン、メタン、アルゴン、二酸化炭素、スチーム及びこれらの混合物からなる群から選択された希釈剤の存在下に、ヒドロ酸化を実施する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
炭化水素がオレフィンであり、オレフィン転化率が約0.5モル%よりも高く、そしてオレフィンオキシドへの選択率が約70モル%よりも高く、そして任意的に、水/オレフィンオキシドモル比によって測定して、約10/1よりも小さい効率で、水素を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項21】
プロピレンをプロピレンオキシドにヒドロ酸化し、そしてチタノシリケートを、
(a)マイクロ波発生器が、合成溶液1リットル当たり、約100ワットよりも大きく約6,000ワットよりも小さいエネルギー入力を与え、そして、約0.5℃/分よりも大きく約40℃/分よりも小さい加熱速度で、約140℃よりも高く約250℃よりも低い最終温度で、約3分間よりも長く、約16時間よりも短い最終温度保持時間の1段階でマイクロ波加熱を実施して、チタノシリケートTS−1を製造する条件下に、テトラエチルオルトシリケート、チタンテトラ(n−ブトキシド)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及び水を含む合成溶液を、マイクロ波放射線により加熱し、
(b)チタノシリケートTS−1を合成溶液から、濾過、遠心分離又はフロキュレーションとそれに続く濾過若しくは遠心分離によって回収し、そして
(c)回収したチタノシリケートをか焼して、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを除去する
ことを含む方法によって製造する請求項1に記載の方法。
【請求項22】
金、銀、白金族金属、ランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択された、1種又はそれ以上の触媒金属をチタノシリケート上に付着させてなる、ヒドロ酸化触媒組成物であって、チタノシリケートがマイクロ波加熱によって製造されることを特徴とする触媒組成物。
【請求項23】
触媒金属が金、又は銀、1種若しくはそれ以上の白金族金属、1種若しくはそれ以上のランタニド希土類金属若しくはこれらの混合物と組合わせた金であり、そして任意的に、触媒金属が、触媒金属(群)及びチタノシリケートの合計重量基準で、約0.001重量%よりも多く、そして約20重量%よりも少ない量で存在する請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項24】
触媒が、更に、周期表の第1族金属、第2族金属、ランタニド希土類金属及びアクチニド金属並びにこれらの混合物から選択された1種又はそれ以上のプロモーター金属を更に含み、そして任意的に、触媒が、ハライド、炭酸塩、リン酸塩、カルボン酸アニオン及びこれらの混合物からなる群から選択された1種又はそれ以上のプロモーターアニオンを更に含み、そして更に、1種又はそれ以上のプロモーター金属が、触媒の全重量基準で、約0.001重量%よりも多くそして約20重量%までの全量で、触媒中に存在する請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項25】
1種又はそれ以上のプロモーター金属がリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、エルビウム、ルテチウム及びこれらの混合物からなる群から選択される請求項24に記載の触媒組成物。
【請求項26】
チタノシリケートが約5/1〜約20,000/1の範囲内のSi/Ti原子比を有する結晶性、準結晶性及び無定形チタノシリケートから選択される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項27】
チタノシリケートがTS−1、TS−2、Ti−ベータ、Ti−ZSM−5、Ti−ZSM−12、Ti−ZSM−48、Ti−MCM−41、Ti−MCM−48及びSMAのファミリーのチタノシリケートからなる群から選択される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項28】
触媒がシリカ、アルミナ、アルミノシリケート、マグネシア、チタニア、炭素及びこれらの混合物からなる群から選択された第二の担体上に担持されている請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項29】
チタノシリケートが(a)チタン源、ケイ素源、テンプレート又は構造指定剤及び水を含む合成溶液をマイクロ波加熱し、そして(b)合成溶液からチタノシリケートを回収し、そして回収したチタノシリケートを、構造指定剤(又はテンプレート)を除去するのに十分な条件下でか焼することによって製造される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項30】
チタン源がチタンテトラ(アルコキシド)、四ハロゲン化チタン、オキシハロゲン化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択され、そしてケイ素源がオルトケイ酸テトラアルキル及びヒュームドシリカ又は沈殿シリカからなる群から選択され、そしてテンプレート又は構造指定剤がトリ(アルキル)アミン、テトラ(アルキル)アンモニウムヒドロキシド及びテトラ(アルキル)アンモニウムハライドから選択される請求項29に記載の触媒組成物。
【請求項31】
チタノシリケートが、モル基準で、約5〜約20,000の範囲内のSiO2/TiO2比、約1.7〜約8.3の範囲内のSiO2の構造指定剤に対する比及び約0.005〜約0.49の範囲内のSiO2/H2O比で、ケイ素源、チタン源、構造指定剤(又はテンプレート)及び水を含む合成溶液をマイクロ波加熱することによって製造される請求項29に記載の触媒組成物。
【請求項32】
マイクロ波加熱が、合成溶液1リットル当たり、約100ワット〜約6,000ワットのエネルギー入力を有するマイクロ波発生器により与えられ、そしてマイクロ波加熱が約0.5℃/分よりも大きく約40℃/分よりも小さい加熱速度で実施される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項33】
マイクロ波加熱が、約80℃よりも高く約150℃よりも低い第一の温度へ、約0分間よりも長く約120分間よりも短い第一の温度保持時間上昇させ、次いで約140℃よりも高く約250℃よりも低い最終温度へ、約3分間よりも長く約16時間よりも短い最終温度保持時間上昇させる、2段階で実施される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項34】
マイクロ波加熱が、約140℃よりも高く約250℃よりも低い最終温度へ、約3分間よりも長く約16時間よりも短い最終温度保持時間上昇させることにより実施される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項35】
マイクロ波加熱によって製造されたチタノシリケート生成物が、直径(又は非球状粒子について限界断面寸法)が約0.01ミクロンよりも大きく、約5ミクロンよりも小さい平均結晶サイズを有する請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項36】
チタノシリケートが、
(a)マイクロ波発生器が、合成溶液1リットル当たり、約100ワットよりも大きく約6,000ワットよりも小さいエネルギー入力を有し、そしてマイクロ波加熱が約0.5℃/分よりも大きく約40℃/分よりも小さい加熱速度で、約140℃よりも高く約250℃よりも低い最終温度で、約3分間よりも長く約16時間よりも短い最終温度保持時間の1段階で実施されて、チタノシリケートTS−1を製造する条件下に、マイクロ波放射線により、加熱し、テトラエチルオルトシリケート、チタンテトラ(n−ブトキシド)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及び水を含む合成溶液を
(b)チタノシリケートTS−1を合成溶液から、濾過、遠心分離又はフロキュレーションとこれに続く濾過若しくは遠心分離によって回収し、そして
(c)回収したチタノシリケートをか焼して、構造指定剤(又はテンプレート)を除去する
ことを含んでなる方法によって製造される請求項22に記載の触媒組成物。
【請求項37】
(a)チタン源、ケイ素源、構造指定剤(又はテンプレート)及び水を含む合成溶液を、チタノシリケートを製造するのに十分な条件下で、マイクロ波放射線によって加熱し、
(b)合成溶液からチタノシリケートを回収し、そしてチタノシリケートを、構造指定剤(又はテンプレート)を除去するのに十分な条件下にか焼し、
(c)触媒金属を、チタノシリケートの上に付着させて(触媒金属は、金、銀、1種又はそれ以上の白金族金属、1種又はそれ以上のランタニド希土類金属及びこれらの混合物から選択される)、金属−チタノシリケートコンポジットを形成させ、そして
任意的に(d)金属−チタノシリケートコンポジットを、酸素含有ガス下で又は還元雰囲気下で又は不活性ガス下で、ヒドロ酸化触媒を製造するのに十分な条件下で加熱することを含んでなるヒドロ酸化触媒組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−530677(P2007−530677A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506195(P2007−506195)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/007528
【国際公開番号】WO2005/102525
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】