説明

マイクロ波乾燥方法及び装置、し尿処理装置及び方法

【課題】 本発明は、マイクロ波を照射することにより液状又はペースト状の被加熱物を加熱して乾燥させるマイクロ波乾燥方法において、マイクロ波による加熱効率が高いマイクロ波乾燥方法及びマイクロ波乾燥装置。及び、マイクロ波の電力半減深度が比較的浅い物質である、し尿を効率よく、省エネルギーで、迅速に粉末化するし尿処理装置及びし尿処理方法を提案するものである。
【解決手段】 液状又はペースト状の被加熱物(a)及び撹拌材(7)を収納する処理釜(4)を回転することにより、被加熱物(a)中において撹拌材(7)を自由に回転移動させながら、マイクロ波(m)を照射することにより被加熱物(a)を加熱乾燥することを特徴とするマイクロ波乾燥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体や液状物資の加熱及び蒸発、化学物質の加熱やガス発生装置、食品の加熱や減容化、薬品の加熱処理、汚泥などの蒸発減容化及び粉末化を行う用途に用いるものであり、液状又はペースト状の被加熱物を加熱して乾燥させるマイクロ波乾燥方法及び装置、及び、し尿を加熱して乾燥、粉末化させるし尿処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミや有機物などの被乾燥物を乾燥処理するマイクロ波加熱乾燥装置として、真空引きされ低酸素条件下の容器内の被乾燥物を、被乾燥物の中に、複数個、一定間隔で配置された撹拌機構により、上下に撹拌しながら、マイクロ波を照射することにより、被乾燥物を加熱乾燥するものが知られている(特許文献1参照方)。
また、アスファルトや産業廃棄物などの被加熱物を加熱する加熱装置として、燃焼室を閉じる蓋体に、マイクロ波の導波管あるいはバーナーを設けて被加熱物を加熱する。更に、マイクロ波で一旦予備加熱した後に、燃焼室を回転させながらバーナーによる火炎を用いて、更に被加熱物を加熱するものが知られている(特許文献2参照方)。
また、し尿の糞と尿とを分離して加熱処理するし尿処理方法として、糞を粉体に付着させ、振動によって搬送し、加熱室に移送し、加熱室内で、マイクロ波で加熱、乾燥させて固形化し、固形化された糞を回収し、前記糞とは分離された尿を加熱室に導き加熱蒸発させるものが知られている(特許文献3参照方)。
しかし、上記加熱装置やし尿処理方法などは、マイクロ波の電力半減深度の浅い液状又はペースト状の被加熱物の加熱については考慮されてなく、それら被加熱物に対する加熱効率が悪い不具合があった。マイクロ波の電力半減深度が比較的浅い被加熱物は、例えば、水分や塩分が含有する物質であり、そのような物質の一つとして、し尿が上げられる。
【0003】
【特許文献1】特開平7−225082号公報(図1)
【特許文献2】特開平7−197413号公報(図1)
【特許文献3】特開平5−301088号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述の不具合に鑑み、マイクロ波を照射することにより液状又はペースト状の被加熱物を加熱して乾燥させるマイクロ波乾燥方法において、マイクロ波による加熱効率が高いマイクロ波乾燥方法及びマイクロ波乾燥装置、また、マイクロ波の電力半減深度が比較的浅い物質である、し尿を効率よく、省エネルギーで、迅速に粉末化するし尿処理装置及びし尿処理方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下(1)〜(11)の手段を提案する。
(1)第1の手段に係るマイクロ波乾燥方法は、液状又はペースト状の被加熱物及び撹拌材を収納する処理釜を回転することにより、被加熱物中において撹拌材を自由に回転移動させながら、マイクロ波を照射することにより被加熱物を加熱乾燥することを特徴とする。
なお、被加熱物及び撹拌材の処理釜への収納順序は、通常、予め撹拌材を収納している処理釜に被加熱物を収納すればよいが、それとは逆順序に収納又は両者を同時に収納してもよい。
また、前記撹拌材の形状は回転移動が容易な形状でよく、例えば、球体や円柱など、外形面に曲面を有すものでよい。また、撹拌材の収納個数は1個又は2個以上でよい。
(2)第2の手段は、第1の手段に係るマイクロ波乾燥方法において、前記処理釜内に被加熱物を、前記撹拌材の少なくともその一部が浸漬する程度に収納した状態で、前記処理釜を回転することで、前記撹拌材の表面に薄膜状の被加熱物を形成しながらマイクロ波を照射することを特徴とする。
(3)第3の手段は、第1又は第2の手段に係るマイクロ波乾燥方法において、前記撹拌材が球形又は円柱形又は円錐形などの回転移動可能な外形であることを特徴とする。
(4)第4の手段は、第1ないし第3の手段の何れかに係るマイクロ波乾燥方法において
、前記撹拌材がセラミック又はガラス又は石又は珪素材又は金属又は合成樹脂などの固形物であることを特徴とする。
【0006】
(5)第5の手段は、第1ないし第4の何れかの手段に係るマイクロ波乾燥方法において、前記処理釜の底部付近に設けられている撹拌翼に、前記撹拌材を当接させることにより、前記撹拌材の回転移動を助長せしめることを特徴とする。
(6)第6の手段は、第3ないし第5の何れかの手段に係るマイクロ波乾燥方法において、前記処理釜の回転が垂直軸回りの正転及び逆転方向の反復回転であることを特徴とする。
(7)第7の手段は、液状又はペースト状の被加熱物の流路に回転ローラを水平設置しておき、回転ローラを回転することで、回転ローラの表面に薄膜状の被加熱物を形成しながらマイクロ波を照射することを特徴とする。
(8)第8の手段は、第1ないし第7の何れかの手段に係るマイクロ波乾燥方法において、前記マイクロ波の照射時に低酸素条件下とし、マイクロ波の照射により被加熱物を加熱乾燥して、炭化せしめることを特徴とする。
【0007】
(9)第9の手段は、マイクロ波を照射することにより液状又はペースト状の被加熱物を加熱して乾燥させるマイクロ波乾燥装置において、被加熱物にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、被加熱物を収納して回転する処理釜と、処理釜内にて自由に回転移動可能な複数の撹拌材と、を具えていることを特徴とする。
回転移動可能な前記撹拌材としては、小さい外力で転がるものなど、その外形に曲面を有すものでよい。
【0008】
(10)第10の手段は、マイクロ波を照射することによりし尿を加熱して乾燥、粉末化させるし尿処理装置であって、し尿にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、し尿を収納して回転する処理釜と、処理釜内にて自由に回転移動可能な複数の撹拌材と、処理釜内のし尿の粉末を吸引する吸引式集塵装置と、吸引式集塵装置の排気管路に設けている脱臭装置と、を具えていることを特徴とする。
回転移動可能な前記撹拌材としては、小さい外力で転がるものなど、その外形に曲面を有すものでよい。
【0009】
(11)第11の手段に係るし尿処理方法は、し尿及び撹拌材を収納する処理釜を回転することにより、し尿中において撹拌材を自由に回転移動させながら、マイクロ波を照射して、し尿を加熱して乾燥、粉末化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1の手段よりなる請求項1に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、マイクロ波照射中に、被加熱物が撹拌材を自由に回転移動しているので、撹拌材が位置する部分の被加熱物の層厚は他の部分に比べ薄く保たれ、マイクロ波の電力半減深度の浅い液状又はペースト状の被加熱物であっても、その加熱が効率よく迅速に行い得、ひいては、マイクロ波の稼動電力の省エネルギー化が図れる。また、撹拌材が回転移動することにより被加熱物を平均的に加熱することができる。また、被加熱物中の水分を加熱蒸発させることにより、被加熱物の減容化が効率よく行える。また、マイクロ波加熱では被加熱物表面での吸収効率が高いことを利用して効率を上げることができる。
第2の手段よりなる請求項2に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、第1の手段の作用効果を奏すると共に、撹拌材の回転移動中に、撹拌材の表面に薄膜状の被加熱物が形成されているので、瞬時に薄膜部の蒸発が行い得、マイクロ波の電力半減深度の浅い液状又はペースト状の被加熱物であっても、その加熱乾燥がより効率よく迅速に行うことができる。
【0011】
第3の手段よりなる請求項3に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、第1又は第2の手段の作用効果を奏すると共に、処理釜の回転により撹拌材が容易に回転移動し、撹拌材の回転移動量も大きくなり被加熱物の加熱効率が向上する。また、処理釜内に多数の撹拌材を投入した場合でも、それらを一挙に回転移動することができ、被加熱物の加熱効率が向上する。
第4の手段よりなる請求項4に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、第1ないし第3の手段の何れかの作用効果を奏すると共に、撹拌材が固形物であるので、被加熱物に固形物や懸濁物が混入している場合に、その破砕や細粒化が行い得、ひいては、加熱が促進される。
【0012】
第5の手段よりなる請求項5に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、第1ないし第4の何れかの手段の作用効果を奏すると共に、撹拌材の回転移動時の周速度変化や反転移動現象や移動量が大きくなり、被加熱物に対する加熱が更に促進できる。
第6の手段よりなる請求項6に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、第3ないし第5の手段の作用効果を奏すると共に、液状又はペースト状の被加熱物の加熱乾燥時に、その水分が蒸発すると粘性が高まり固まってしまう現象が発生する場合が多いが、処理釜を正転及び逆方向回転に反復回転することにより、被加熱物や撹拌材が反転運動し、被加熱物が固まって塊状となるのを防止できるので、加熱効率が向上する。
第7の手段よりなる請求項7に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、第1又は第2の手段の作用効果を奏すると共に、回転ローラの回転に伴い、回転ローラの表面に被加熱物が層状又は薄膜状に形成されるので、マイクロ波の電力半減深度の浅い液状又はペースト状の被加熱物の加熱を連続的に効率よく行い得る。
第8の手段よりなる請求項8に記載のマイクロ波乾燥方法によれば、第1ないし第7の何れかの手段の作用効果を奏すると共に、マイクロ波の電力半減深度の浅い液状又はペースト状の被加熱物の加熱乾燥、炭化が効率よく迅速に行い得る。
【0013】
第9の手段よりなる請求項9に記載のマイクロ波乾燥装置によれば、処理釜を回転することにより、複数の撹拌材が容易に回転移動し、撹拌材相互および撹拌材と処理釜との衝突、擦り合い時に、被加熱物中に固形物や懸濁物が混入している場合であっても粉砕され、マイクロ波による加熱効率が向上する。また、撹拌材が位置する部分の被加熱物の層厚は他の部分に比べ薄く保たれるので、マイクロ波の電力半減深度の浅い液状又はペースト状の被加熱物の加熱が効率よく迅速に行い得、ひいては、マイクロ波の稼動電力の省エネルギー化が図れる。また、被加熱物中の水分を加熱蒸発させることにより、被加熱物の減容化が効率よく行える。
【0014】
第10の手段よりなる請求項10に記載のし尿処理装置によれば、処理釜を回転することにより、複数の撹拌材が容易に回転移動し、撹拌材相互および撹拌材と処理釜との衝突、擦り合い時に、し尿中の糞分が分断され、マイクロ波による加熱効率が向上する。また、撹拌材が位置する部分のし尿の層厚は他の部分に比べ薄く保たれる。更に、し尿の蒸発が進み撹拌材の一部がし尿液面から露出する状態となった時には、回転移動する撹拌材の露出表面にし尿の薄膜が生じるので、マイクロ波の電力半減深度の浅い液状又はペースト状のし尿であっても、その加熱、乾燥粉末化が効率よく迅速に行い得、ひいては、マイクロ波の稼動電力の省エネルギー化が図れる。また、し尿中の水分を加熱蒸発させることにより、し尿の減容化が効率よく行える。
【0015】
第11の手段よりなる請求項11に記載のし尿処理方法によれば、マイクロ波照射中に撹拌材が回転移動しているので、撹拌材が位置する部分のし尿の層厚は他の部分に比べ薄く保たれ、次に、し尿の蒸発が進み、撹拌材の一部がし尿液面から露出する状態となった時には、回転移動する撹拌材の露出表面にし尿の薄膜が生じるので、し尿のマイクロ波加熱乾燥が効率よく迅速に行い得、ひいては、マイクロ波の稼動電力の省エネルギー化が図れる。また、撹拌材が移動することにより被加熱物を平均的に加熱することができる。また、し尿中の水分を加熱蒸発させることにより、し尿の減容化が効率よく行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係るマイクロ波乾燥方法及びマイクロ波乾燥装置を、図1及び図2に示す、各実施例図に基づき説明する。図1の(A)は本発明に係るマイクロ波乾燥装置を説明する正面図、(B)は撹拌材の薄膜状態化を説明する説明図である。図2の(A)は本発明に係るマイクロ波乾燥装置の第2実施例を示す斜視図、(B)は撹拌材の薄膜状態化を説明する説明図、(C)は撹拌材の第3実施例を示す斜視図である。
【0017】
(第1実施例)
本発明に係るマイクロ波乾燥装置及び方法を図1に基づき説明する。
図1の(A)、(B)において、1はマイクロ波mを照射することにより液状又はペースト状の被加熱物aを加熱して乾燥させるマイクロ波乾燥装置を示す。マイクロ波mはマイクロ波照射装置2のマグネトロン3aから導波管3bを経て処理釜4内の被加熱物aに向けて照射される。
処理釜4は水平に設置されており、垂直軸9を中心として、図1の(A)の図中矢印方向及びその反対方向に回転装置(モータ)5により反復回転される。
また、処理釜4は有底円筒状の陶器製の容器であり、その内部に多数個の撹拌材7が納められている。撹拌材7の投入個数は、処理釜4の底板4a上にて、各撹拌材7が自由に移動可能な程度の個数が投入されている。処理釜4はハウジング6により覆われている。
また、撹拌材7は本実施例ではセラミック製の球体を採用しており、球形ゆえに撹拌材7は処理釜4内にて容易に回転移動する。この撹拌材7は被加熱物aよりも比重が大きく、被加熱物aと混在したときに浮上しない程度の質量を有するものとすればよく、材質としては、セラミックの他、ガラスや自然石や珪素材、又は、金属又は合成樹脂などの固形物を採用しても良い。
【0018】
また、撹拌材7や処理釜4に、セラミックや陶器など、比較的、蓄熱効率が高い材質を用いており、その蓄熱効果により連続した処理において加熱効率を向上せしめている。また、セラミック製の撹拌材7は、多孔性セラミック材としてもよい。
液状又はペースト状の被加熱物aの加熱乾燥時に、その水分が蒸発すると粘性が高まり固まってしまう現象が発生する場合が多いが、上記のように処理釜4を反復回転すれば、被加熱物a及び撹拌材7を反転移動し、被加熱物aが固まって塊状となるのを防止して、加熱効率を向上することができる。
【0019】
処理釜4の底部付近には撹拌材7を撹拌移動させる撹拌翼8が設けられている。この撹拌翼8はハウジング6より支持部8aを介して処理釜4の上方より差込まれていて、撹拌翼8自身は動かないように設置されている。
被加熱物aを加熱乾燥する場合には、所定量の被加熱物aを処理釜4内に投入し、処理釜4を回しながらマイクロ波mを照射する。処理釜4を回すことにより撹拌材7が、被加熱物a内を自由に回転及び移動すると共に、撹拌材7が撹拌翼8に当接して、その回転、移動が更に促進される。この撹拌翼8により、撹拌材7の回転移動速度変化や反転移動現象や移動量が大きくなり、被加熱物aの撹拌加熱効率が高まる。
撹拌材7の回転、移動時には図1の(B)に示すように撹拌材7の上部表面に被加熱物aの薄膜bが形成されるので、被加熱物a中の水分はマイクロ波mにより瞬時に蒸発される。従って、被加熱物aがマイクロ波mの電力半減深度が比較的浅い物質であっても効率よく加熱乾燥することができる。また、本実施例では撹拌材7の外形が球体であるので、他形状のものより表面積が大きく、その点からも効率よく加熱乾燥及びガス化、減容化、粉体粉末化処理などができる。
【0020】
なお、本実例においては、撹拌材7の一部が被加熱物a中に浸漬する程度となるよう、被加熱物a量を投入しているので、処理直後から薄膜b部が発生し、最も加熱効率が良いが、本実施例において、撹拌材7が全て浸漬する程度まで被加熱物aを投入してもよく、その場合であっても、撹拌材7の上部位置の被加熱物aの層厚はその他の部分に比べ薄いので、撹拌材7を投入しないものに比べ加熱効率が向上する。また、多数の撹拌材7が転動及び移動する時に、撹拌材7相互がぶつかり、被加熱物a中に固形物や懸濁物が混入していても、粉砕、微粒化できる。
要するに、本実施例のものは、処理釜4の底板4a上の全域を、球形の撹拌材7が自由に転動(回転移動)し、その転動に伴い、被加熱物aの層厚を変化させながら、被加熱物aにマイクロ波mを照射すると共に、被加熱物aの薄膜bを形成せしめながら、被加熱物aにマイクロ波mを照射するものである。
なお、上記処理釜4の底板4aは平板状であるが、外周囲が上方向に湾曲する皿状のものとしてもよく、そうすれば、処理釜4の回転に伴う撹拌材7の、内外周位置の周速変化および底板4aの外周から内周方向への変位移動が生じると共に、内外周位置の撹拌材7の被加熱物aの喫水位置を相違せしめることができ、多様な加熱乾燥を行い得る。また、処理釜4の周壁や底板4aに突起部を設けておき、撹拌材7の上下方向の変位変化を図ってもよい。また、マイクロ波mと各装置との間のスパーク発生防止は、インピーダンス調整により抑制できる。
【0021】
(第2実施例)
本発明に係るマイクロ波乾燥装置及び方法を図2に基づき説明する。
図2の(A)、(B)に示すマイクロ波乾燥装置は、マイクロ波mを照射することにより液状又はペースト状の被加熱物aを加熱して乾燥させるマイクロ波乾燥装置であり、図中、d矢印方向に流れる被加熱物aの流路に間隔を置いて水平設置された複数の回転ローラ10を備えており、被加熱物aを回転ローラ10に通過させながら、マイクロ波照射装置2からマイクロ波mを照射する。なお、回転ローラ10の回転方向は(B)図示中の矢印方向及びその反対方向でも良い。
本実施例のものは、図2の(B)に示すように、被加熱物aが回転ローラ10を通過する際に、回転ローラ10の上部表面に、被加熱物aの薄膜bが形成されることになり、被加熱物aがマイクロ波mの電力半減深度が比較的浅い物質であっても効率よく加熱乾燥することができると共に、被加熱物aを連続的に加熱処理できる。
【0022】
また、上記回転ローラ10は、比較的、蓄熱効率が高い材質を用いているので、その蓄熱効果により連続した処理において加熱効率を向上せしめている。
更に、回転ローラ10の設置数を増加することや、被加熱物aを循環して供給して、被加熱物aの加熱乾燥、ひいては粉末化を行えばよい。また、回転ローラ10の回転速度、又は回転ローラ10表面の濡れ性や、被加熱物a中への浸漬深さを変えることにより、被加熱物aの層厚を増減変化させてもよい。
また、図2の(A)に示す円柱状の回転ローラ10に代えて、(C)に示すように複数の球形の撹拌材を軸により連結した、所謂、串刺し団子状の回転ローラ10aとしてもよく、この回転ローラ10aの場合には、図示(A)のものに比べ、薄膜表面積が広がり、加熱効率が更に高まる。なお、上記回転ローラ10、10aの外形は上記の他、円筒状や角柱状、円盤状及び非円形状などの形状のものでもよい。
【0023】
(第3実施例)
本発明に係るし尿処理装置及び方法を図3〜図5に基づき説明する。図3はし尿処理装置のシステム図、図4の(A)はし尿処理装置の処理釜の斜視図、(B)は撹拌翼の側面図、図5の(A)は撹拌翼の第2実施例を示す側面図、(B)は撹拌翼の第3実施例を示す側面図である。
図3及び図4に示す、し尿処理装置は、マイクロ波を照射することにより、被加熱物(以下、し尿と称す)を加熱して乾燥、粉末化させるし尿処理装置であり、本実施例では緊急時などに仮設、搬送設置が容易な処理装置別置型の装置実施例で説明するが、当然ながら恒久的に設置しても良い。
本し尿処理装置は、上記第1実施例でのマイクロ波乾燥装置1と、切替ダンパー17と、処理釜4内のし尿(被加熱物)aの粉末cを吸引する吸引式集塵装置(バキュームクリーナー)18と、吸引式集塵装置18の排気管路21に設けている触媒脱臭式の脱臭装置20と、バルブ15及びマイクロ波照射装置2及び回転装置5及び切替ダンパー17を制御する制御盤22とを具えている。
【0024】
仮設トイレ11の貯槽12内のし尿は、し尿吸引管13を経て貯留タンク14に貯留され、次に、バルブ15を経て所定量のし尿aが陶器製の処理釜4内に投入され、処理釜4を垂直軸9回りに回転させながらマイクロ波を照射すると、し尿a中を撹拌材7が自由に回転移動する間にし尿aは加熱乾燥され、し尿a中の水分が蒸発し粉末化されたし尿cは、集塵装置12内に吸引回収される。
し尿aの加熱乾燥中に発生した蒸気は、管路25より吸引式集塵装置18を経て、脱臭され排気管路(臭突)21より排気される。
本実施例でのし尿処理装置によれば、マイクロ波の照射によりし尿aの水分が蒸発し、し尿aの水位が撹拌材7よりも下がれば、し尿aは撹拌材7の表面に薄膜として循環付着し、その状態で、マイクロ波が照射されるため、マイクロ波の電力半減深度が比較的浅い物質である、し尿aを効率よく加熱乾燥、ひいては粉末化できる。
また、し尿aの加熱乾燥時に、その水分が蒸発すると粘性が高まり固まってしまう現象が発生する場合が多いが、本実施例では、処理釜4を正転及び逆方向回転に反復回転しており、処理釜4内のし尿a及び撹拌材7を反転運動することで、し尿aが団子状に固まるのを防ぎ、し尿aを迅速に加熱乾燥、粉末化せしめている。
なお、上記し尿吸引管13の吸引は吸引式集塵装置18の吸引力を利用している。
【0025】
また、図4(A)、(B)に示すように、処理釜4内の底板4aに近接して設置している撹拌翼8は、ハウジング6側に固定されている支持部8aの下端に角度θ傾斜して設けられていて、処理釜4の中心点O回りの回転に伴う球形の撹拌材7の転動を助長せしめている。この撹拌翼8により撹拌材7の回転移動速度変化や反転移動現象や移動量が大きくなり、し尿aの撹拌加熱効率が高まる。
また、図5の(A)に示すように、球形の撹拌材7の半径r位置範囲内に水平設置した撹拌翼8Aとしてもよく、更に、図5の(B)に示すように、への字形の撹拌翼8Bとしても良い。なお、バルブ15は制御盤22により開閉制御されていて、所定量のし尿aの導入を図っているが、フロート式やタイマー等を用いて、一定量のし尿aを処理釜4に投入する機構のものとしてもよく、また、し尿aを処理釜4内に自然流下させるものでも良い。
なお、撹拌材7の形状は、上述の球形のほか、円柱形、円錐形のものを採用しても良く、要するに容易に転がりうる低摩擦形状であればよい。
【0026】
また、球形の撹拌材7が動くことにより、新しい薄膜の形成が継続されることで、効率の良いマイクロ波吸収加熱が行われ、し尿を短時間で加熱乾燥、粉末化、減容化処理することができ、更にマイクロ波稼動電力の省エネルギー化が図れる。また、撹拌材7や処理釜4に、セラミックや陶器など、比較的、蓄熱効率が高い材質を用いているので、その蓄熱効果により連続した処理において加熱効率を向上せしめている。
また、乾燥工程において撹拌材7が動くことで、撹拌材7相互および撹拌材7と処理釜4とが、擦れ合ったり衝突するので、し尿a中の糞成分などが塊状になるのを防げると共に、乾燥促進と処理物の粉砕が行い得、し尿を短時間で粉末化、減容化処理できる。
【0027】
また、撹拌材7や処理釜4に、セラミックや陶器など、比較的、蓄熱効率が高い材質を用いており、その蓄熱効果により連続した処理において加熱効率を向上せしめている。
また、撹拌材7の外形は球形であり、球形ゆえに撹拌材7は処理釜4内にて容易に回転移動する。この撹拌材7はし尿aよりも比重が大きく、し尿aと混在したときに浮上しない程度の質量を有するものとすればよく、材質としては、セラミックの他、ガラスや自然石や珪素材、又はステンレスなどの金属や合成樹脂などの固形物を採用しても良い。
また、本実施例でのし尿処理装置は、仮設トイレ11のタンク12に接続し、同タンク12から吸引して処理するタイプであり、工事現場や災害時の仮設トイレ用途に好適なものである。本装置を用いれば、工事現場や被災地の仮設トイレなどでの汲み取りが不要になり、タンク12が一杯になって使用できなくなる等の不具合を解消できる。
なお、本実施例のパイロット装置により検証した結果、し尿aの粉末化処理、炭化する手前の5%質量の固形物化が可能なことを確認できた。
【0028】
なお、上記処理釜4の底板4aは平板状であるが、外周囲が上方向に湾曲する皿状のものとしてもよく、そうすれば、処理釜4の回転に伴う撹拌材7の、内外周位置の周速変化および底板4aの外周から内周方向への変位移動が生じると共に、内外周位置の撹拌材7のし尿aの喫水位置を相違せしめることができ、多様な加熱乾燥を行い得る。また、処理釜4の周壁や底板4aに突起部を設けておき、撹拌材7の上下方向の変位変化を図ってもよい。また、マイクロ波mと各装置との間のスパーク発生は、内部インピーダンス調整により抑制できる。
また、撹拌材7は上記実施例ではセラミック製の球体を採用しており、球形ゆえに撹拌材7は処理釜4内にて容易に回転移動する。この撹拌材7は被加熱物aよりも比重が大きく、被加熱物aと混在したときに浮上しない程度の質量を有するものとすればよく、材質としては、セラミックの他、ガラスや自然石や珪素材、又は、金属又は合成樹脂などの固形物を採用しても良い。
また、上記各実施例においては、処理釜4内に予め撹拌材7を収納している実施例で説明したが、処理釜4内に被加熱物(し尿)aを導入後、撹拌材7を投入、又は両者を同時に投入してもよい。
また、上記第1、2実施例に記載する構成を、第3実施例に適用してもよい。
本発明は上記実施例に限定されるものではなく必要に応じ、適宜設計変更し得るものである。また、上記実施例における各構成要素には、当業者が容易に想定できるものや、実質的に同一のものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)は本発明に係るマイクロ波乾燥装置を説明する正面図、(B)は撹拌材の薄膜状態化を説明する説明図である。
【図2】(A)は本発明に係るマイクロ波乾燥装置の第2実施例を示す斜視図、(B)は撹拌材の薄膜状態化を説明する説明図、(C)は撹拌材の第3実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係るし尿処理装置のシステム図である。
【図4】(A)は本発明に係るし尿処理装置の処理釜の斜視図、(B)は撹拌翼の側面図である。
【図5】(A)は本発明に係る撹拌翼の第2実施例を示す側面図、(B)は撹拌翼の第3実施例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 マイクロ波乾燥装置
2 マイクロ波照射装置
3a マグネトロン
3b 導波管
4 処理釜
5 回転装置
6 ハウジング
7 撹拌材
8 撹拌翼
9 垂直軸
10 回転ローラ
20 脱臭装置
21 排気管路
a 被加熱物
m マイクロ波


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状又はペースト状の被加熱物及び撹拌材を収納する処理釜を回転することにより、被加熱物中において撹拌材を自由に回転移動させながら、マイクロ波を照射することにより被加熱物を加熱乾燥することを特徴とするマイクロ波乾燥方法。
【請求項2】
前記処理釜内に被加熱物を、前記撹拌材の少なくともその一部が浸漬する程度に収納した状態で、前記処理釜を回転することで、前記撹拌材の表面に薄膜状の被加熱物を形成しながらマイクロ波を照射することを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波乾燥方法。
【請求項3】
前記撹拌材が球形又は円柱形又は円錐形などの回転移動可能な外形であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のマイクロ波乾燥方法。
【請求項4】
前記撹拌材がセラミック又はガラス又は石又は珪素材又は金属又は合成樹脂などの固形物であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のマイクロ波乾燥方法。
【請求項5】
前記処理釜の底部付近に設けられている撹拌翼に、前記撹拌材を当接させることにより、前記撹拌材の回転移動を助長せしめることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のマイクロ波乾燥方法。
【請求項6】
前記処理釜の回転が垂直軸回りの正転及び逆転方向の反復回転であることを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れかに記載のマイクロ波乾燥方法。
【請求項7】
液状又はペースト状の被加熱物の流路に回転ローラを水平設置しておき、回転ローラを回転することで、回転ローラの表面に薄膜状の被加熱物を形成しながらマイクロ波を照射することを特徴とするマイクロ波乾燥方法。
【請求項8】
前記マイクロ波の照射時に低酸素条件下とし、マイクロ波の照射により被加熱物を加熱乾燥して、炭化せしめることを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかに記載のマイクロ波乾燥方法。
【請求項9】
マイクロ波を照射することにより液状又はペースト状の被加熱物を加熱して乾燥させるマイクロ波乾燥装置において、被加熱物にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、被加熱物を収納して回転する処理釜と、処理釜内にて自由に回転移動可能な複数の撹拌材と、を具えていることを特徴とするマイクロ波乾燥装置。
【請求項10】
マイクロ波を照射することによりし尿を加熱して乾燥、粉末化させるし尿処理装置であって、し尿にマイクロ波を照射するマイクロ波照射装置と、し尿を収納して回転する処理釜と、処理釜内にて自由に回転移動可能な複数の撹拌材と、処理釜内のし尿の粉末を吸引する吸引式集塵装置と、吸引式集塵装置の排気管路に設けている脱臭装置と、を具えていることを特徴とするし尿処理装置。
【請求項11】
し尿及び撹拌材を収納する処理釜を回転することにより、し尿中において撹拌材を自由に回転移動させながら、マイクロ波を照射して、し尿を加熱して乾燥、粉末化することを特徴とするし尿処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−329462(P2006−329462A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150309(P2005−150309)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000236089)菱日エンジニアリング株式会社 (4)
【Fターム(参考)】