説明

マイクロ流体システムにおける流体混合および輸送

明細書は、通常マイクロ流体システムにおいて流体を混合し輸送するためのシステムおよび方法を開示する。所定の実施例において、流体は、1つ以上の化学的反応または生体反応に関与することができる試薬を含む。いくつかの実施例は、制御可能に流れ、且つ/またはマイクロ流体システム内の流体の部分を混合するために1つ以上の通気弁を使用するシステムおよび方法に関する。好適に、流体の流れの順序および流速の変化のうち少なくともいずれか一方のような流体の制御は、1つ以上の通気弁を開閉することにより、および略定圧にて操作される流体流(例えば真空)の単一の源の付与により行われ得る。これにより、意図した使用者による装置の操作および使用を単純化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
マイクロ流体システムにおいて流体を混合し輸送するためのシステムおよび方法が開示される。所定の例において、流体は、1つ以上の化学的反応または生体反応に関与することができる試薬を含む。
【背景技術】
【0002】
流体の処理は化学、微生物学および生化学のような分野において重要な役割を果たす。これらの流体は液体や気体を含み、化学的または生物学的工程に、試薬、溶媒、反応物あるいは洗い流し液を供給する。マイクロ流体の分析のような様々なマイクロ流体の方法および装置により、低コストで高感度且つ正確なプラットフォームが得られるが、複数の流体の混合、サンプル導入、試薬の導入、試薬の収容、流体の分離、廃棄物の収集、オフチップ分析のための流体の抽出、および1つのチップから次のチップへの流体の移動のような流体の操作により、コストおよび複雑さが更に増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、マイクロ流体システムにおいてコストを低減し、使用を単純化し、且つ/または流体の操作を改善することのできる分野における進歩が好適であろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
マイクロ流体システムにおいて流体を混合し輸送するためのシステムおよび方法が開示される。本発明の主題は、所定の例において、相互に関係する製品、所定の課題の代替解決策、および/または1つ以上のシステムおよび/または物の複数の異なる用途を含む。
【0005】
一組の実施例において、一連の方法が提供される。一実施例において、方法は、主チャネル、第1の流体を含む第1の分岐チャネル、第2の流体を含む第2の分岐チャネル、第1の分岐チャネルの一部と主チャネルの一部との間に配置される通気弁を含む装置を提供する工程を含み、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは、交差部にて連通し、且つ主チャネルに連通する。方法は、通気弁を始動させる工程と、交差部に第1の流体および第2の流体を略同時に流れ込ませる工程と、混合流体を形成するために第1の流体および第2流体の少なくとも一部を混合する工程とを含む。
【0006】
別例において、方法は、第1の流体を含む上流チャネル部、第1の流体とは異なる第2の流体を含む下流チャネル部、および上流チャネル部と下流チャネル部との間に配置される通気弁を含む装置を提供する工程を含む。第1のチャネル部および第2のチャネル部は、相互に連通するが、第2の流体は、第1の流体を実質的に流すことなくチャネル部を下流に流れる。方法は、第1の流体を流した後に、第2の流体を上流チャネル部から下流チャネル部に流す工程を更に含む。
【0007】
別の組の実施例において、一連の装置が提供される。一実施例において、装置は入口、出口、入口と連通する上流チャネル部、出口と連通する下流チャネル部、および下流チャネル部と上流チャネル部との間に配置される通気弁を備える。第1の流体は、上流チャネル部および下流チャネル部の少なくとも一方に収容され、装置は、初めて使用されるに先立って少なくとも1時間にわたって第1の流体を装置に収容するようにシールされ構成される。
【0008】
別例において、装置は、入口、出口、入口と出口との間の主チャネル、入口と出口との間の主チャネルに沿って直列に配置される第1の通気弁および第2の通気弁を含む。
本発明の他の効果および新規な特徴は、本発明を制限するものではない様々な実施例の後述の詳細な開示から、添付の図面と組み合わせて考慮することにより、明らかになるであろう。本明細書およびここに開示される文献が、矛盾し且つ/または一貫しない開示を含む場合は、本明細書の記載が優先するものとする。ここに開示される2つ以上の文献が相互に矛盾し且つ/または一貫しない開示を含む場合は、後の発効日を有する文献の記載が優先するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一組の実施例による複数の通気弁を含む装置を示す概略図。
【図2A】一組の実施例によるここに開示される装置において使用可能な通気弁を示す断面図。
【図2B】一組の実施例によるここに開示される装置において使用可能な通気弁を示す断面図。
【図2C】一組の実施例によるここに開示される装置において使用可能な通気弁を示す断面図。
【図2D】一組の実施例によるここに開示される装置において使用可能な通気弁を示す断面図。
【図2E】一組の実施例によるここに開示される装置において使用可能な通気弁を示す断面図。
【図2F】一組の実施例によるここに開示される装置において使用可能な通気弁を示す断面図。
【図3A】一組の実施例による1つ以上の通気弁を含むチャネルの例示的な概略図。
【図3B】一組の実施例による1つ以上の通気弁を含むチャネルの例示的な概略図。
【図3C】一組の実施例による1つ以上の通気弁を含むチャネルの例示的な概略図。
【図3D】一組の実施例による1つ以上の通気弁を含むチャネルの例示的な概略図。
【図4A】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4B】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4C】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4D】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4E】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4F】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4G】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4H】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図4I】一組の実施例による分岐チャネルを示す概略図。
【図5A】一組の実施例による装置のチャネルの流体プラグを示す概略図。
【図5B】一組の実施例による装置のチャネルの流体プラグを示す概略図。
【図6A】一組の実施例による装置のチャネルの流体プラグの様々な構成を示す例示的な概略図。
【図6B】一組の実施例による装置のチャネルの流体プラグの様々な構成を示す例示的な概略図。
【図6C】一組の実施例による装置のチャネルの流体プラグの様々な構成を示す例示的な概略図。
【図7】一組の実施例による複数の検知領域を含む装置を示す例示的な概略図。
【図8】時間の関数として一組の実施例による混合流体の蓄積量を示すプロット。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例は、概略図であって正確な寸法に描かれるものではない添付の図面を参照して例示により開示されるが、これらの実施例に限定されるものではない。図において、図示の同一または略同一の要素はそれぞれ、単一の参照符号によって通常示される。明瞭にすべく、全図において全ての要素に符号が付されているとは限らず、図示が当業者に本発明を理解させる上で必要ない場合には、本発明の各実施例の全ての要素が示されるものではない。
【0011】
マイクロ流体システムにおいて流体を混合し輸送するためのシステムおよび方法が開示される。所定の例において、流体は、1つ以上の化学的反応や生体反応に関与する試薬を含む。いくつかの実施例は、マイクロ流体システムにおいて流体の部分を制御可能に流し、且つ/または混合するために1つ以上の通気弁を使用するシステムおよび方法に関する。通気弁は、例えば、流体が配置されるマイクロ流体チャネルに連通するポートを含み、ポート開口部を覆うようにシールを位置決めすることにより、あるいはシールをポート開口部から取り払うことにより始動される。所定の実施例において、シールは、ポートと連通するチューブに処理的に関連する機械弁のような弁機構を含む。通常、通気弁を開放することにより、ポートを通気孔として機能させることができる。ポートが、通気孔として機能する場合に、通気弁の一方の側に配置される流体は流れるが、第1の流体に対して通気弁の反対側に配置される流体は静止した状態を保持する。弁が閉鎖される場合に、ポートは通気孔としては機能しないため、通気弁の両側に配置される流体は、システムを通って出口に向かって流れる。好適に、流体の流れの順序および流速の変化のうち少なくともいずれか一方のような流体の制御は、1つ以上の通気弁を開閉し、略定圧にて操作される流体流の1つの源(例えば真空)を付与することによって行われ得る。これにより、意図した使用者による装置の操作および使用を単純化することができる。
【0012】
マイクロ流体システムにおける流体の移動を制御するように通気弁を始動することができる。例えば、流体は、チャネルに連続して収容可能であり、チャネルに沿って配置される通気弁を閉鎖した後に、流体はチャネル出口に向かって連続して流れる。所定の場合に、流体は個別の交差するチャネルに収容され、通気弁を閉鎖した後に、流体は交差部の地点に向かって一体的に流れる。この組の実施例は、例えば、流体が一体的に流れるときに制御可能に流体を混合することに使用することができる。輸送のタイミングおよび輸送される流体の量は、例えば通気弁始動のタイミングによって制御することができる。
【0013】
好適に、ここに開示される通気弁は、先行技術における所定の弁により生じるであろう操作するマイクロ流体チャネルの断面の収縮を伴うことなく操作することができる。そのような操作モードは、弁を横断して漏れが生じるのを防止することに好適である。更に、通気弁を使用することができるので、ここに開示される所定のシステムおよび方法は、例えば高コスト、組立ての複雑さ、脆弱性、混合気体および液体システムと相溶性の制限、および/またはマイクロ流体システムの低信頼性による課題を生じ得る所定の内部弁を使用することを要求するものではない。通気弁のような外部弁を使用することによって、マクロの規模(マイクロの規模ではなく)の機械的な特徴が利用され、これは通常組立が高価でなく、操作においてより堅固である。付加的に、ここに開示される外部弁は、異種混合の流体(例えば気体および液体の組み合わせ)、並びに泡、小滴および/または粒子を含む流体と組み合わされて好適に機能する。
【0014】
所定の実施例において、ここに開示されるシステムにおいて使用される流体は、システム自体の内部に収容される。外部弁は試薬輸送のタイミングを制御するが、液体試薬の注入は、上述した所定のシステムを操作することに要求されるものではない。流体源への外部接続を形成することなくシステムを操作する性能により、操作を非常に単純化することができる。
【0015】
ここに開示される物とシステムは低コストにて形成可能であり、所定の場合に、使い捨てであってもよい。付加的に、いくつかの実施例において、ここに開示される物とシステムは、機械的特徴が複雑ではないため迅速に形成可能である。これらの効果により、多数の化学的および生物学的システム(例えば生物活性実験)に好適な広い範囲の構成を実験し、実施することができる。他の効果はより詳細に以下に開示される。
【0016】
ここに開示されるシステムおよび方法は、様々な分野に応用可能である。所定の場合に、システムおよび方法は、例えば特にマイクロ流体ポイントオブケア診断、マイクロ流体ラボ化学分析システム、細胞培養や生物反応槽における流体制御システムのような様々なマイクロ流体システムにおける流体流および混合を制御することに使用することができる。ここに開示される物、システム、および方法は、低コストで堅固且つ使い捨て可能なマイクロ流体装置が要求される所定の場合に、特に好適である。ここに開示される流体の制御は、任意の好適な化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方を行うために使用されてもよい。特定の例として、ここに開示される流体の制御は、例において後述する銀溶液分析のような不安定な反応先駆体を使用する抗体分析における試薬輸送を制御することに使用される。
【0017】
ここに開示される物、要素、システム、および方法は、2004年12月20日に出願され、発明の名称が「Assay Device and Method」である国際公開第WO2005/066613号明細書(国際出願公開第PCT/US2004/043585号明細書)、2005年1月26日に出願され、発明の名称が「Fluid Delivery System and Method」である国際公開第WO2005/072858号明細書(国際特許出願公開第PCT/US2005/003514号明細書)、2006年4月19日に出願され、発明の名称が「Fluidic Structures Including Meandering and Wide Channels」である国際公開第WO2006/113727号明細書(国際特許出願公開第PCT/US06/14583号明細書)、2008年5月1日に出願され、発明の名称が「Fluidic Connectors and Microfluidic Systems」である米国特許出願公開第12/113,503号明細書、2008年8月22日に出願され、発明の名称が「Liquid containment for integrated assays」である米国特許出願公開第12/196,392号明細書、2009年4月22日に出願され、発明の名称が「Flow Control in Microfluidic Systems」である米国特許出願公開第12/428,372号明細書、2008年12月18日に出願され、発明の名称が「Reagent Storage in Microfluidic Systems and Related Articles and Methods」である米国特許出願公開第61/138,726号明細書、2009年2月2日に出願され、発明の名称が「Structures for Controlling Light Interaction with Microfluidic Devices」である米国特許出願公開第61/149,253号明細書と組み合わされてもよい。これらの明細書は、その全体がここに開示されたものとする。
【0018】
通気弁および他の要素を含む一連の例示的な装置が以下に開示される。
図1は、一組の実施例による、1つ以上の通気弁および1つ以上の流体を含む装置の例示的な概要図である。図1に示す実施例において、装置10は、入口14、出口15、上流部16、および下流部18を含むチャネル12を備える。チャネルは、上流チャネル部および下流チャネル部の少なくとも1つに第1の流体20のような流体を更に含む。チャネルは、第1の流体に付加的に、あるいは第1の流体に代えて、第2の流体22を更に含んでもよい。複数の流体が収容される実施例において、これらの複数の流体は、1つ以上の混合不能な分離する流体プラグ(例えば気体(例、空気)や油のような分離流体)によって相互に分離することができる。いくつかの実例において、装置(任意の入口、出口および通気弁を含む)は、意図される使用者により初めて使用されるに先立って装置に流体(例、流体20および22のいずれかまたは両者)を収容するように、シールされ、構成される。
【0019】
図1に示すように、第1の流体20および第2の流体22は、相互に直接的に接触しない。例えば、チャネル内の第1の流体および第2の流体は、第1の流体および第2の流体の両者と混合不能な第3の流体21によって分離される。一組の実施例において、流体20および22はいずれも、例えばそれらの間に配置される気体のプラグによって分離される液体であってもよい。別例において、流体20および22は両方の液体と混合不能な第3の液体によって分離される液体である。2以上の流体が使用される場合に、気体と液体の任意の好適な組み合わせがチャネル内の流体の複数の部分を分離するために使用されてもよい。
【0020】
装置10は、下流チャネル部と上流のチャネル部との間に配置される通気弁24を更に含む。ここに使用されるように、「通気弁」は、チャネルと連通するポートを含む弁、およびポートを開閉するために操作可能な機構を示し、通気弁はチャネル内部に対する外部の環境にチャネル内部を暴露するか、外部の環境からチャネル内部をシールする。例示的な外部の環境は、例えば、周囲の環境(例えば空気)、および流体(例えば加圧された気体または加圧されない気体)を含むタンクを含む。
【0021】
図2A乃至図2Fは、通気弁の例示的な断面図である。図2Aおよび図2Bに示す実施例の組において、通気弁24Aはチャネル12に隣接して配置される。通気弁はチャネルと連通するポート26Aを含む。付加的に、通気弁は、アクチュエータ30Aによって移動可能なシール28A(例えばカバー)を含む。図2Aにおいて、通気弁は、チャネル12がポート26Aを介して周囲の環境32に暴露されるように開放される。図2Bにおいて、通気弁は、チャネル12がシール28Aによって周囲の環境32から隔離されるように閉鎖される。図2Cおよび図2Dの実施例に示すように、通気弁24Bは、ポート26Bの開口部を閉鎖することができるプラグの形態のシール28Bを含む。シール28Bはいくつかの実施例において変形可能である。
【0022】
図2Eおよび図2Fの実施例に示すように、通気弁24Cは、流体を流すチャネル(例えばマイクロ流体チャネル)を形成するチューブ33と処理的に関連する弁機構31を含む。チューブは、マイクロ流体基板(例えば外側表面27)に対して押圧されると気密なシールを形成するプレート35に取り付けられる。シールは、圧縮したガスケットやOリング37、あるいはより詳細に後述する他の任意の好適な要素を使用して形成されてもよい。これに代えて、チューブはポートへ圧入されてもよい。図2Eおよび図2Fに示すように、弁はポート26Cと連通する。弁は弁機構31を始動させることにより開閉される。例えば、図2Eに示すように、弁が開放されると、チューブ33内の流体は、自由に弁機構を横断して流れる。上記実施例、および別例において、チャネル12は、チューブの他端にて環境39に暴露され、連通する。例えば、図2Fに示すように、弁が閉鎖されると、チューブ33内の流体は、弁機構を横断してもはや流れないため、チャネル12は、チューブの他端にて環境39と隔離され、連通しなくなる。環境39は、周囲の環境(例えば、チューブが空気に開放される)と、流体(例えば圧縮空気や窒素のような気体)を含むタンクとを含む任意の好適な環境であるものといえる。
【0023】
当業者は、好適な所定の応用に使用される始動機構およびシールのうち少なくともいずれか一方を選択することができるであろう。チューブや通気弁の他の任意の好適な要素に処理的に関係する弁機構の例は、ダイアフラム弁、ボール弁、ゲート弁、蝶形弁、玉形弁、ニードル弁、ピンチ弁、ポペット弁あるいはピンチ弁を含むが、これらに限定されるものではない。ソレノイド、モータを含む任意の好適な手段により、手動により、あるいは水圧や空圧により、弁機構は始動されてもよい。付加的に、任意の好適なシールが使用可能である。いくつかの実施例において、シールは、所定の場合にシステム内の1つ以上の流体と混合しても化学反応を生じないように選択されるゴムや他のエラストマ材料を含む。好適なシール材料は、天然ゴム、熱可塑性物質、合成ゴム(例えばフッ素重合体、ネオプレン、ニトリル、シリコン、フルオロシリコン(fluorosilicone)等)、あるいはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。シールは、いくつかの実施例において通気弁の表面に貼り付けられるか、表面に一体的に形成される。
【0024】
所定の場合に、シールは、装置の表面の対応する切り欠きに係合するように設計される通気弁の表面のリップ部(図示しない)を含み(逆もまたしかり)、これにより通気弁が閉鎖位置にあるときに、シールを形成するためにリップ部が切り欠きに係合する。所定の場合に、1つ以上の通気弁が、電子的に始動される。例えば、いくつかの実施例において、センサは、システム内にて決定された信号に応じて通気弁を開閉可能なアクチュエータおよびマイクロプロセッサのうち少なくともいずれか一方と作用する関係にある。所定の場合に、例えばマイクロプロセッサによって実行される予め定義したプログラムによって命令されるタイミングに基づいて、通気弁は電気的に始動されてもよい。ここに開示される任意の好適な制御システムおよび技術は、潜在的に他の制御システムと組み合わせて設けられてもよく、これらの他のシステムは、特に他の、あるいは付加的な機能を有することが開示されるものではない。
【0025】
通気弁は、所定の場合に、ポートがマイクロ流体チャネルの少なくとも一部に(例えば覆うように)隣接するように配置される。図2Aおよび図2Bに示すように、例えば、いくつかの実施例において、ポートはチャネルが形成される装置の外側表面27にチャネル内部を接続する開口部を含む。図2Aおよび図2Bは、外側表面27に直接隣接するポートの開口部を示すが、図2Cおよび図2Dに示す別例において、ポートの開口部は、介在するチャネル29によってチャネル内部に接続されてもよい。いくつかの実施例において、チャネルは物に形成され、ポートは物の平面から実質的に退出する方向に延びるように形成される。例えば、いくつかの実施例において、ポートは、チャネルが形成される基板の天面にドリルにより穴を空けることにより形成されてもよい。別例において、例えば、例1に示すように、ポートは型枠の空洞に配置されるピンを使用して射出成形によって形成される基板にモールド成型されてもよい。
【0026】
通気弁はチャネルシステム内の流体の移動を制御するために使用することができる。図1を参照すると、真空が出口92に(出口15を閉鎖した状態で、あるいは出口92を閉鎖した状態で出口15に)付与され、これにより、流体22を出口に向かって矢印52の方向に引くことができる。通気弁24が開放されているときに、環境外部からチャネル内部までの流体は通気弁を通して、チャネル内に引くことができる。例えば、外部環境における流体が周囲空気である場合に、空気は通気弁の開放時にチャネル内部に進入する。
【0027】
所定の場合に、外部環境からのこの流体は、チャネルシステム内の流体と混合される。例えば、通気弁24に配置される流体21が気体である実施例において、チャネルに進入する周囲空気は、流体21と混合される。通気弁のポートが周囲空気と連通する場合のような所定の場合に、流体21や流体20に隣接する任意の他の流れに対する抵抗は、流体20の流れ自体に対する抵抗より小さく、そのような場合、真空源が流体20の下流に適用されても、流体20は略静止した状態を保持する。これにより、流体20を実質的に流すことなくチャネルの下流部を通して流体22を流すことができる。通気弁24が閉鎖している場合に、周囲空気は、通気弁を通してチャネルに引くことができず、流体20は矢印52の方向にチャネル12を通して輸送される。
【0028】
いくつかの実施例において、ここに開示される装置は複数の通気弁を備える。装置は、例えば、主チャネルの入口と出口との間に主チャネルに沿って直列に配置される複数の通気弁を含む。図1に示す実施例の組は、例えば、チャネル12に沿って、入口14と出口15との間に、直列の通気弁24を配置した任意の第2の通気弁34を含む。
【0029】
所定の場合に、装置は、1本以上の分岐チャネル、すなわち交差部にて装置の別のチャネルと交差するチャネルを含む。例えば、いくつかの実施例において、装置は、第1の分岐チャネルを含む第1の上流部、および第2の分岐チャネルを含む第2の上流部を備える。第1および第2の分岐チャネルは所定の場合に相互に交差する。付加的に、1本以上の分岐チャネルは、下流のチャネル部と連通する。所定の場合に、装置は、主チャネルと連通する1本以上の分岐チャネルを含み、それらのうち任意のものは、内部に収容される(例えば初めての使用に先立って)1つ以上の流体を含む。例えば、図1に示す実施例の組において、装置10は、任意にチャネル36および38のうち少なくともいずれか一方を含み、これらは主チャネル12から分岐する。チャネル36および38は、任意の通気弁34の位置にて交差し、チャネル12の下流部(例えば下流部18)に連通する。分岐チャネルの各々は、いくつかの実施例において、更に分岐チャネルを含んでもよい。例えばチャネル36から分岐チャネル40、42および44のうち任意のものが装置に含まれてもよい。付加的に、例えばチャネル38から分岐チャネル46、48および50のうち任意のものが装置に含まれてもよい。任意に、1つ以上の通気弁が1本以上の分岐チャネルに関与してもよい。同じに関連した機能性と同様に通気弁とチャネルの付加的なレイアウトも、より詳細に下に開示される。
【0030】
1組の実施例において、(例えば主チャネルの)上流チャネル部は、第1の分岐チャネルとして機能し、装置は第2の分岐チャネルを更に備え、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは交差部にて接続し、下流チャネル部に連通する。図1に示す実施例において、主チャネル12の上流部16は、第1の分岐チャネルとして機能し、チャネル36および38のいずれか、あるいは両者は第2(あるいは第3)のチャネルとして機能する。
【0031】
ここに開示されるチャネルのレイアウトは任意の好適な構成に流体を収容することに使用することができる。分岐チャネルのうちのいずれも、主チャネル内に含まれる1つ以上の流体に代えて、あるいはその流体に付加的に1つ以上の流体を含むことができる。例えば、第1の流体は主チャネルに含まれ、第2の流体は第1の分岐チャネル内に含まれる。所定の例において、第3の流体は、第2の分岐チャネルに含まれてもよい等である。例えば、図1に示す実施例の組において、上流部16は任意の流体60を含み、任意の分岐チャネル36は任意の流体62を含み、また、任意の分岐チャネル38は任意の流体64を含む。付加的に、任意の分岐チャネル40、42、および44は、任意の流体66、68、および70をそれぞれ含み、任意の分岐チャネル40、42、および44は、任意の流体72、74、および76をそれぞれ含む。所定の場合に、そのような流体の1つ以上は、初めて使用されるに先立って装置に収容されシールされる。
【0032】
通気弁は、装置内の任意の好適な位置に配置される。所定の場合に、通気弁は、2つの流体(例えば2つの収容される流体)間に配置される。例えば、図1に示す実施例の組において、通気弁24は、第1の流体20と第2の流体22との間に配置される。付加的に、あるいはこれに代えて、任意の通気弁34は、任意の第3の流体60と、第1の流体20および第2の流体22のうち少なくともいずれか一方との間に配置されてもよい。所定の場合に、通気弁は、第1の分岐チャネルの一部と主チャネルの一部との間に配置される。例えば、通気弁は、分岐チャネルおよび主チャネルの交差部のような、2本以上のチャネルの交差部に配置される。例えば、図1において、任意の通気弁34は、チャネル12と、任意のチャネル36および38との交差部に配置される。付加的に、任意の通気弁78は、任意のチャネル40、42、44および36の交差部に配置される。所定の場合に、1つ以上の通気弁が分岐チャネルの一部に配置される。例えば、図1において、分岐チャネル46、48、および50は、通気弁80、82および84をそれぞれ含み、これらは分岐チャネルの非交差部に配置される。
【0033】
流体を輸送し、且つ/または混合する方法も開示される。一組の実施例において、方法は、1つ以上の流体を移動させる一方、1つ以上の他の流体を略静止した状態に保持する工程を含む。例えば、図1に示す実施例の組において、圧力勾配は、例えば出口(例えば、出口92を閉鎖した状態の出口15、あるいは出口15を閉鎖した状態の出口92)に負圧を付与することによってチャネル12に付与される。通気弁24が開放位置にある場合に、圧力勾配は、矢印52の方向にチャネル12を通して流体22を流す。ここに開示されるような流体20を実質的に流すことなくこれは生じる。いくつかの実施例において、チャネル12内の流体20より流体の流れに対して低い抵抗を有する周囲空気は、流体20が実質的に静止した状態を保持できるように通気弁24を通して引かれる。いくつかの実施例において、第1の流体が流される部分の上流のチャネル部からの第2の流体は、通気弁が閉鎖されるように上流チャネル部と下流チャネル部との間の通気弁を始動させることによって輸送される。例えば、図1において、通気弁24が閉鎖位置にあり、且つ上流の入口(例、入口14)や通気弁(例、通気弁34)が開放されるときに、圧力勾配により、矢印52の方向にチャネル12を通して流体20が流される。
【0034】
流体の流れのタイミングは、ここに開示されるシステムおよび方法を使用しても制御することができる。例えば、いくつかの実施例において、流体22および20は、(例えば通気弁24を閉鎖した後に真空を付与することによって)チャネル12を通して略同時に輸送することができる。例えば、いくつかの実施例において、流体22および20は、(例えば通気弁24を閉鎖するに先だって最初に真空を付与し、これにより流体22を輸送し、続いて通気弁24を閉鎖し、流体20を輸送することによって)チャネル12を通して連続して輸送することができる。これらの方法は、負圧源と、チャネル内に流すことを要求される流体との間の好適な通気弁を閉鎖することによって、任意のチャネル内の任意の流体の流れを制御することに通常使用可能である。例えば、任意の流体62の輸送が要求されると、負圧が出口92に付与されるが、出口15および通気弁24、34および94は、閉鎖される(且つ通気弁78のような流体62の上流の弁は、開放した状態を保持する)。所定の場合に、この輸送は、分岐部16および38のような他の分岐部が入口を含むとき、あるいは分岐部に含まれる任意の流体の上流に配置される通気弁が、閉鎖した位置、または分岐部16および38のような他の分岐部を含まない装置に配置されるときに行われる。これらおよび他の方法を使用して、流体は、流体システム内の所望の位置(すなわち、反応部位)に所定の時点にて所定の順に輸送され、反応あるいは他の流体の工程が実施される。更に、ここに開示される物および方法により、第1の組の工程を、第2の組の工程から切り離すことができる。例えば、これらの工程の各々を独立して制御することができるので、1つ以上の混合領域内の2つ以上の流体の混合時間は、反応領域内のサンプルの滞留時間から分離可能である。更なる効果および例がここに開示される。
【0035】
2つ以上の流体を混合する方法も開示される。混合工程は、所定の場合に分岐チャネルを使用する工程を含む。いくつかの実施例において、方法は、主チャネル、第1の流体を含む第1の分岐チャネル、および第2の流体を含む第2の分岐チャネルを含む装置を提供する工程を含み、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは、交差部にて連通し、且つ主チャネルに連通する。いくつかの実施例において、第1の分岐チャネルは、交差部の上流にある主チャネルの一部を含む。例えば、図1に示す実施例の組において、主チャネルはチャネル12を含み、第1の分岐チャネルは(流体60を含む)上流部16を含み、第2の分岐チャネルは(流体62を含む)チャネル36を含む。所定の場合に、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルの両者は、主チャネルからの方向から逸脱する。例えば、図1において、主チャネルはチャネル12を含み、第1の分岐チャネルは(流体62を含む)チャネル36を含み、第2の分岐チャネルは(流体64を含む)チャネル38を含む。いくつかの実施例において、装置は、第1の分岐チャネルの一部と主チャネルの一部との間に配置される通気弁を含む。所定の場合に、通気弁は、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルの交差部に配置されてもよい。例えば、図1において、通気弁34は、チャネル12、38および36の交差部に配置される。いくつかの実施例において、通気弁は、分岐チャネルの交差部から上流に配置される。例えば、図1において、任意の通気弁94はチャネル36および38の交差部の上流にチャネル36を覆うように配置される。いくつかの実例において、装置は、第2の分岐チャネルの一部と主チャネルの一部との間に配置される通気弁を含む。図1において、通気弁34は、第2の分岐チャネル38と主チャネル12との間に配置される。付加的に、任意の通気弁96は、第2のチャネル38の一部と、主チャネル12との間に配置される。
【0036】
いくつかの実施例において、混合方法は、少なくとも1つの通気弁を始動させる一方、第1の流体および第2の流体を2本以上のチャネルの交差部に流れ込ませるべく装置(例えば入口および出口)の2つの開口部を横断して圧力勾配を付与する工程を含む。交差部内への第1の流体および第2の流体の流れは、略同時に生じる。所定の場合に、交差部に輸送される流体の各々の少なくとも一部は、混合流体を形成すべく混合されてもよい。単一の通気弁を始動して、2つ以上の流体を流すことができる。例えば、図1において、通気弁34が閉鎖される場合(且つ任意の通気弁94および96が設けられない場合)に、2つ以上の流体62、60、および64は、これらの流体の各々の上流の少なくとも1つの入口あるいは通気弁が開放されている限り、チャネル12、36、および/または38の交差部に向かって流れる。別例として、任意の通気弁78が閉鎖される場合(弁79と圧力勾配源との間の他の通気弁も閉鎖される場合)に、2つ以上の流体66、68、および70は、これらの流体の各々の上流の少なくとも1つの入口あるいは通気弁が開放されている限り、チャネル40、42、および/または44の交差部に向かって輸送される。
【0037】
いくつかの実施例において、装置は、主チャネル、第1の流体を含む第1の分岐チャネル、および第2の流体を含む第2の分岐チャネルを含み、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは、交差部にて連通し、且つ主チャネルに連通する。第3の流体が、主チャネルに任意に設けられてもよく、これは例えば分岐チャネルの下流である。通気弁は、第1の分岐チャネルの一部と、主チャネルの一部との間に(例えば第1のチャネルおよび第2のチャネルの交差部に、あるいは主チャネルに沿って)配置されてもよい。システムを操作する工程は、通気弁を始動させる工程と、交差部に第1の流体および第2の流体を略同時に流れ込ませる工程と、混合流体を形成するために第1の流体および第2流体の少なくとも一部を混合する工程とを含む。いくつかの実施例において、主チャネルの第3の流体は、第1の流体および第2の流体を実質的に流すことなく通気弁(あるいは一連の通気弁)を始動させるに先だって流れてもよい。第3の流体が主チャネル(例えば反応部位あるいは装置の他の一部への)で流された後に、上述したように第1の流体および第2の流体を流すべく、第1の分岐チャネルの一部と主チャネルの一部との間に配置される通気弁を始動してもよい。いくつかの実例において、略一定の真空が、主チャネルの出口に付与され、第3の流体、第2の流体、および第1の流体の流れのタイミングが、通気弁の始動のタイミングによって得られる。システムを操作する工程は、所定の場合に、(例えば第1の流体および第2の流体の全てを混合させないように)所定量を混合させるべく通気弁を始動させた後に所定の時間待機する工程と、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルに残留する第1の流体および第2の流体がそれぞれ主チャネルに流れることを防止すべく通気弁を続いて開放する工程とを含む。従って、所定の混合量の第1の流体および第2の流体が、このタイミングの方法を使用して、主チャネルに輸送される。
【0038】
いくつかの実施例において、チャネル交差部に向かって2つ以上の流体を流すべく複数の通気弁が始動される。例えば、図1において、通気弁94および96の両者は(例えば略同時に)閉鎖され、これにより、流体62および64がチャネル36および38の交差部に向かって(例えば略同時に)流される。入口14も、存在する場合に、閉鎖した状態を保持する。流体は、例えば出口92にて低減された略一定の圧力を付与するとともに、全ての他の入口、出口、あるいは流体と出口92との間の通気弁を閉鎖した状態を保持することによって生ぜられる圧力勾配の存在により流れる。付加的に、通気弁80、82、および84は(例えば略同時に)閉鎖され、これにより流体72、74、および76がチャネル38の部分98に向かって(例えば略同時に)流される。所定の実施例において、流体は共通の領域(例えば交差部、混合領域等)に略同時に至る。共通の領域に2つ以上の流体を略同時に輸送および/または輸送することは、例えば2つ以上の流体間の共通の表面積を最大限にすることによって、2つの流体を効率的に混合することができる点において好適である。付加的に、より詳細に後述するように、共通の領域に2つ以上の流体を略同時に輸送することにより、2つ以上の流体を略等量輸送することが補助される。これは、流体の正確な量の混合が要求される工程において重要である。所定の場合に、より詳細に後述するように、共通の領域に2つ以上の流体を略同時に輸送することにより、混合流体とシステム内の他の流体との間の泡の形成を回避することが補助される。
【0039】
所定の場合に、装置の1つ以上のパラメータは、装置を通して輸送される2つ以上の流体が装置の領域内にて相互に略同時に接触するように、選択される。例えば、所定の場合に、少なくとも2本のチャネル(例えば2本の分岐チャネル、分岐チャネルおよび主チャネル等)の断面積、混合される流体の粘性、混合される流体の相対的な量、混合される流体を含むチャネルの直線状の長さ、付与される圧力の量、流体の各々から交差部の地点への距離は、等圧が2本のチャネルの各々に付与されるときに、これらのチャネル内の流体が交差部、あるいは他の共通の領域に略同時に流れ込むように選択される。
【0040】
システム内の混合を制御するために、システムにおける流体の流速を制御することは有用であろう。例えば、1つの流体(例えば図1における流体62)が別の流体(例えば図1における流体60)に先だって通気弁のような共通の領域に至る場合に、課題が生じ得る。そのような場合、予想されるように、混合が生じない可能性がある。例えば、所定の場合に、第1の流体(例えば流体62)は、第2の流体(例えば流体60)に先だって通気弁34に至ると、通気弁を満たし、通気弁と第2の流体の前方端部との間の分離する流体プラグの泡を効率よく捉えることができる。この場合に、流体62の一部は、流体60と混合することなく分離され、主チャネルの下流に流れるであろう。いくつかの実施例において、これにより、第1の量の混合されていない試薬(例えば流体62中の試薬)に対して分析の反応領域あるいは他の領域が暴露され、分離する流体プラグのセグメントがこれに続き、流体60および62の略再生不能な混合物がこれに続く。いくつかのそのような場合において、反応領域に生じる化学的反応や生体反応は、再生不可能である。
【0041】
理論によって拘束されることなく、発明者は、チャネルシステム内を流れる流体の流速、チャネル容量、および粘性間の関係をより良好に理解することに後述する理論を使用することができると思料する。ポアズイユの法則は、圧力によって駆動されるチューブ内の圧縮不能な一様な粘性流体(例えばニュートン流体)の層流を示し、これは以下のように表される:
【数1】

例えば、Qは容積測定の流速(例えばm/秒)であり、Rはチューブ(m)の半径であり、ΔPはチューブ(Pa)を横断する圧力の変化であり、ηは動的な流体の粘性(Pa・s)であり、Lはチューブ(m)の長さである。任意の閉鎖されるチャネルへの円形のチューブを越えて一般化するために、この方程式を次のように表すことができる:
【数1b】

Aはチャネルの断面積であり、RHは水力半径であり、Pはチャネルのパラメータであり、RH=2A/Pである。円形のチューブにおいて、ARH=πRである。幅wおよび深みdの矩形のチャネルにおいて、ARH=(wd)/(w+d)である。複数の流体を制御して混合する場合に、個別の流体の流れに影響する要因を考慮することが重要である。ΔP、η、RHおよびLが等しいように設計されるシステムにおいて、流体の両者は、同様の態様にて流れる必要があり、流体の再生可能な混合がなされる必要がある。これらのパラメータのうちの1つ以上が流体において異なる場合に、システムの設計は、差異が相殺されるようになされる必要がある。
【0042】
いくつかの実施例において、混合される2つ以上の流体は、略等しい量を有する。2つ以上の流体は更に同様の粘性を有し、同様のチャネル断面を有するチャネルに配置される。所定の場合に、混合される流体の前方の接合部と、これらが混合される交差部(例えば混合室)との間の1つ以上の分離する流体プラグの量は、試薬の両者に対して類似する。これにより、流体が交差部に移動を開始するときに流体が交差部に略同時に確実に至ることが補助される。これらおよび他のパラメータにより、2つ以上の流体は共通の領域に略同時に輸送され、これにより、再生可能な混合を生じる。
【0043】
第1の流体が第1の量を有し、第2の流体が第1の量とは異なる第2の量を有するいくつかの実施例において、より小容量の流体の速度は、比較的より小容量の流体が示す流体流に対する比較的小さな抵抗により、より大容量の流体に対して増加する(液体の流れに対する流体力学的抵抗は、1/Lに等しく、Lは流体セグメントの長さである。チャネルの寸法および粘性が等しい場合に、より短い流体セグメントは、より長い流体セグメントと比較して速く流れる)。これにより要求される混合比からずれが生じ得る。この理由として、より大容量の流体に対して付加されるより小容量の流体が比較的大量に生じてしまうことによる。この作用は自己増幅である。その理由として、より小容量の流体が、より速く移動すると、その容量は不均衡に減少し、これにより速度が更に高められることによる。この潜在的な課題を解決すべく、チャネルの流体流に対して等しい抵抗が生じるように、チャネルの断面を選択することができ、あるいは、混合される流体の粘性を選択することができる。例えば、より小容量の流体に対する抵抗を高めるべく、より小容量の流体は、より大容量の流体の全体的な抵抗と整合すべくより大容量の流体を含むチャネルと比較してより小さな断面を有するチャネルに配置される。付加的に、あるいはこれに代えて、より少量の流体の粘性は、より大容量の流体の全体的な抵抗と整合させるべく流体流に対するその抵抗を増加させるために増加されてもよい。
【0044】
所定の場合に、チャネル内の流体の輸送および混合のうち少なくともいずれか一方は、比較的少量の表面の粗さを備えたチャネルを使用することによって促進することができる。各液体と混合室の収容位置間のチャネルの表面の異質性(例えば粗さ、チャネル表面の欠陥、チャネル表面の化学的堆積の変化)は、流体部分と分離する流動性のプラグの間の接合面(すなわち、液体の大部分)の前進に影響を付与し得る。従って、ここに開示されるいくつかの実施例において、チャネル表面は比較的低い表面の粗さを有する。チャネルの表面は、例えば約5μm未満の二乗平均平方根(RMS)の表面の粗さを有する。別例において、RMSの表面の粗さは、約3μm未満、約1μm未満、約0.8μm未満、約0.5μm未満、約0.3μm未満あるいは約0.1μm未満である。
【0045】
流体に湿潤剤を付加することによっても、チャネル内の流体の再生可能な進行を促進することができる。湿潤剤は、流体と分離する流体プラグとの間の接合部を固定させ、且つ/またはチャネルの表面への異質部分の影響を低減することができる。いくつかの実施例において、湿潤剤は流体内において1つ以上の要素(例えば試薬)と悪い反応をしないようなものを選択することができる。好適な湿潤剤の例は、非イオン性洗剤(例えば登録商標Tween 20および登録商標Triton、脂肪アルコールのようなポリ(エチレンオキシド)誘導体)、陰イオン洗剤(例えば、デシル硫酸ナトリウム、硫酸オクタデシルナトリウム、あるいは脂肪酸塩のような、より短いかより長いアルカン鎖を備えるドデシル硫酸ナトリウムおよび関連する洗剤)、陽イオン洗剤(例えば、臭化セチルトリメチルアンモニウムのような第四アンモニウム陽イオン)、両性イオン界面活性剤(例えばドデシル・ベタイン)およびパーフルオロ界面活性剤(例えば登録商標Capstone FS−10)を含むが、これらに制限されるものではない。
【0046】
付加的に、あるいはこれに代えて、チャネルの表面は流体流(例えば疎水性または親水性の試薬)の抑制あるいは増強を促進するために物質により処理されてもよい。
いくつかの実施例において、チャネル内の流体の比較的高い流速を使用することによって、予測不能な流体の反応を防止することができる。流速は、要因の中で特に、輸送される流体の粘性、輸送される流体の量、流体を含むチャネルの断面積および断面形状のうち少なくともいずれか一方、圧力勾配等の要因に依存する。所定の場合に、チャネル内の少なくとも1つの流体は、少なくとも約1mm/秒、少なくとも約5mm/秒、少なくとも約10mm/秒、あるいは少なくとも約15mm/秒、少なくとも約25mm/秒、あるいは少なくとも約100mm/秒の直線的な流れの速度にて輸送される。いくつかの実施例において、直線的な流れの速度は、約1mm/秒と約100mm/秒の間、約5mm/秒と約100mm/秒の間、約10mm/秒と約100mm/秒の間、約15mm/秒と約100mm/秒の間、約1mm/秒と約25mm/秒の間、約5mm/秒と約25mm/秒の間、約10mm/秒と約25mm/秒の間、あるいは約15mm/秒と約25mm/秒の間である。異なる流速が、輸送される流体および装置において行なわれる工程のうち少なくともいずれか一方に応じて異なる時点にて実施される。例えば、1組の実施例において、第1の工程の間にサンプルが比較的緩慢に(例えば0.5mm/秒にて)反応領域を通して流れるが、第2の工程の間に2つの流体が比較的より高い流速(例えば15mm/秒)にて混合地域において混合されることが望ましい。ここに開示される通気弁、並びに他の物および方法は、2009年4月22日に出願され発明の名称が「Flow Control in Microfluidic Systems」である米国特許出願公開第12/428,372号明細書に開示されるシステムおよび方法と任意に組み合わせて使用され、装置の操作においてそのような流速および流量の変化を制御し実施してもよい。同明細書はその全体がここに開示されたものとする。装置において行なわれる処理の2つの異なる工程の間に適用される直線的な2つの流速は、例えば、等倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、40倍あるいは50倍より大きな差異を有してもよい。例えば、15mm/秒の比較的高い直線的な流れの速度は、0.5mm/秒の比較的遅い直線的な流れの速度より30倍速い。所定の場合に、そのような流体の制御は、任意に1つ以上の工程において圧力あるいは減圧された圧力(例えば真空)源が装置に略連続して付与される場合にも1つ以上の通気弁を使用して行われ得る。
【0047】
ここに開示されるように、2本以上のチャネルの交差部は混合領域を含む。そのような領域は、複数のチャネルから交差部まで流れる複数の流体の混合を促進することに好適である。いくつかの実施例において、混合領域は、混合領域にて交差する第1の、第2の、(あるいは第3の、第4等の)チャネル(例えば分岐チャネル)のいずれより大きな断面積を有し得る。例えば、混合領域は、混合地域と交差する最大のチャネルの平均断面積の少なくとも1.2倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.7倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍あるいは少なくとも5倍である平均断面積を有し得る。交差部にて比較的大容量を有する混合室により、2本以上のチャネルの交差部における2つ以上の流体の到着時間の不一致を補償することが補助される。
【0048】
しかしながら、別例において、比較的より小さな混合領域がここに開示される装置に設けられてもよい。例えば、混合領域は、混合地域と交差する最大のチャネルの平均断面積の5倍未満、3倍未満、2倍未満、1.7倍未満、1.5倍未満、あるいは1.2倍未満である平均断面積を有し得る。所定の場合に、混合領域は、混合領域と交差する最大のチャネルの平均断面積と略同じである平均断面積を有する。
【0049】
所定の場合に、混合領域は通気弁を含む。例えば、通気弁のポートにより、複数の流体が混合される容量が得られる。いくつかの実施例において、要素(例えばチャネル、通気弁要素(例えばポート)、混合領域等)の断面積、長さや他のパラメータは、要素内に2つ以上の流体を流すことで所望の混合結果が得られるように選択され得る。例えば、いくつかの実施例において、通気弁(例えば通気弁のポート、あるいは通気弁の開口部に主チャネルを接続する通気弁の介在するチャネル)の容量は、2つ以上の流体が、通気弁内におけるこれらの滞留時間において(例えば拡散によって)完全に混合され得るように選択される。任意の介在するチャネルも含む通気弁の容量は、例えば、50μL未満、約20μL未満、約10μL未満、約5μL未満、約3μL未満、約1μL未満、約0.1μL未満、約0.01μL未満、約10nL未満あるいは約1nL未満である。更に、他の量も可能である。
【0050】
層流環境(これはほとんどのマイクロ流体システムに共通である)において、試薬の混合は拡散に略依存する。本明細書において、試薬がチャネルに沿ってともに流れるにつれ、試薬間の混合は徐々に増加する。そのような場合に、主チャネルの長さ(例えば混合が生じる通気孔と、反応領域のような混合試薬の使用点との間)は、2つ以上の流体をチャネル内におけるそれらの滞留時間中に完全にまたは十分に(例えば拡散によって)混合することができるように選択され得る。
【0051】
拡散に基づく混合は、混合流体のチャネル内における滞留時間を増加させることによっても増加され得る。所定の場合に、滞留工程をシステムに付加することができる。例えば、略一定の圧力が出口92に付与され、通気弁34(通気弁34、24、および15が閉鎖した状態)の上流に2つの混合した液体を有するシステムにおいて、これらの液体は、通気弁15を開放することにより(あるいは、任意に通気弁24を開放することにより)、チャネル12内に滞留され得る。通気弁15(または24)を開放することによって、空気は通気弁15(または24)を通して出口92に向かって優先的に引かれ、これにより液体がチャネル12内の所定の位置に保持される。十分な滞留の後に、通気弁15(または24)は閉鎖され、これにより、反応領域86内に液体を流れ込ませる。好適に、本実施例および別例に示すように、略一定の真空源あるいは流体流の他の源が装置に付与されるときにも、流体流の制御が可能である。
【0052】
いくつかの実施例において、交差部や他の好適な混合領域内への1つ以上の流体の流れは、流体の全容量が交差部または混合領域に移動するに先立って遮断することができる。これは、例えば流体の部分が通気弁の反対側のチャネルに位置される間に通気弁を開放することによって可能である。例えば、流体の第1の部分は下方に配置されるチャネルの第1のチャネル部に配置され、流体の第2の部分は下方に配置されるチャネルの第2のチャネル部に配置され、第1のチャネル部および第2チャネル部は、通気弁の反対側に配置される。通気弁が開放されるとともに流体がそのポートの下方に配置される場合に、例えば周囲空気のような、チャネル内部に対する外的環境からの流体は、外的環境における流体流に対する抵抗が通気弁の下方の流体の残りの部分の流体流に対する抵抗より小さい場合に、ポートを介してチャネル内部に輸送可能である。例えば、チャネルへ気体のセグメントを導入することによって、チャネルに含まれる流体は、気体のセグメントによって分離される第1の部分および第2部分に分割することができる。
【0053】
図3A乃至図3Dは、通気弁を始動させることにより流体の流れを遮断することができる方法を示す概要図である。図3A乃至図3Dに示す実施例の組において、チャネル100は、入口102、出口104および通気弁106を含む。付加的に、チャネル100は流体108を含む。図3A乃至図3Dに、流体流の方向を矢印によって示す。図3Aにおいて、通気弁106が開放されることにより、負圧が出口104に付与される場合に通気弁106を介して外部流体をチャネルに流れ込ませる。図3Bにおいて、通気弁106が閉鎖されるとともに入口102が開放されることにより、チャネル100を介して流体108を出口104に向かって流す。図3Cにおいて、通気弁106は、流体108が通気弁を完全に通過するに先だって開放されることにより、外部流体に通気弁のポートを通過させ、チャネル内に至らしめ、流体108からセグメント110を分離する。この工程の繰り返しは、元の単一の流体から複数の流体セグメントを形成する。図3Dにおいて、例えば、流体セグメント110、111、112、および113は、通気弁106を4回開閉することにより形成されている。そのような方法は、予め選択された長さ、容量、あるいは他の好適な特徴を備える1つ以上の流体部を形成することに使用される。
【0054】
単一の流体セグメントに由来する一連の流体セグメントまたは部分の形成は、所定の場合に、単一の流体セグメントにおける2つ以上の要素の混合と比較して、複数の流体における2つ以上の要素の混合を改善する。例えば、流体セグメント内の要素(例えば粒子、試薬あるいは他の要素)は、セグメント化された流れにて視認されるように、セグメントの直線的な流れ時にセグメント内で再循環する。いくつかの実施例において、混合される2つ以上の要素を含む流体は、通気弁の下方を通過し、例えば各流体部内における2つ以上の要素の混合を促進するために流体の複数の部分を形成すべく開閉される。この特徴は、乱流が生じないシステムにおいて(例えば多くのマイクロ流体システムにおいて)特に好適である。
【0055】
分離された流体部を形成すべく通気弁を開閉することは、混合以外の工程においても好適である。単一の試薬の複数のプラグは、所定の状況において単一の長手のプラグに対して好ましく、その状況は、2005年1月26日に出願され発明の名称が「Fluid Delivery System and Method」である国際公開第WO2005/072858号明細書(国際特許出願公開第PCT/US2005/003514号明細書)に開示され、その全体がここに開示されたものとする。所定の例として、いくつかの実施例において、洗い流し流体の複数の部分により、単一の長尺状をなす流体部と比較して表面のより良好な洗い流しや洗浄が行われる。
【0056】
2つ以上の流体部に単一の流体部を分離することは、所定の場合に、混合領域や他の領域内にて混合するための流体の好適な容量を得ることに使用される。例えば、所定の場合に、第1の分岐チャネルは第1の流体を含み、第2の分岐チャネルは、第1の流体より実質的に大きな容量を備えた第2の流体を含む。第1の流体および第2の流体は、第1の分岐チャネル、第2の分岐チャネル、および/または主チャネルの交差部に向かって流れる。いくつかの実施例において、第1の流体および第2の流体のうち少なくともいずれか一方の全容量が交差部を横断して通過するに先だって、第1の分岐チャネルまたは第2分岐チャネルの少なくとも1つの通気弁は、第1の流体および第2の流体のうち少なくともいずれか一方が第1のセグメントおよび第2のセグメントに分割されるように開放される。別例において、第1の流体および第2の流体のうち少なくともいずれか一方の全容量が交差部を横断して通過するに先だって、第1の分岐チャネルまたは第2分岐チャネルの少なくとも1つの通気弁は、第2の流体がより小さな複数のセグメントに(例えば第1の流体の容量に匹敵するように)分割されるように開放される。第2の流体のセグメントのうちの1つのみが第1の流体の全てまたは部分と混合するように交差部に輸送されてもよい。これらおよび他の方法により、所定の場合に、等量または好適な量の第1の流体および第2の流体が、(例えば第1の流体および第2の流体が共通の領域に略同時に輸送される場合に)主チャネル、混合領域、反応領域、あるいは他の好適な目的地に輸送され得る。従って、いくつかの実施例において、第1の流体の全てではなく一部、および第2の流体の全てではなく一部のうち少なくともいずれか一方が、使用されるか好適な目的地に輸送される混合流体を形成すべく一体的に混合される。
【0057】
図4Aおよび4Bに、共通の領域(例えば2つ以上のチャネルの交差部)に略等量の複数の流体を輸送する方法の一例を概略的に示す。図4Aにおいて、主チャネル200は出口202を含み、通気弁208にて分岐チャネル204および206に連通する。分岐チャネル204は入口210を備え、流体212を含み、分岐チャネル206は、入口214を備え、流体216を含む。図4Aにおいて、流体212は、流体216より容量において実質的により小さい。図4Aにおいて、通気弁208が開放されることにより、負圧が出口に付与されると、通気弁を介し、且つ主チャネル200を介して(矢印によって示すように)外部流体が流れる。図4Bにおいて、通気弁208が閉鎖されるとともに入口210および214が開放され、負圧を付与されると流体212および216を出口202に向かって流す。実施例のこの組において、流体の粘性、およびチャネル204および206の断面寸法は、流体212および216がチャネル204および206の交差部にて相互に略同時に接触するように選択される。図4Cにおいて、流体212および216がチャネル204および206の交差部を完全に通過するに先だって通気弁208が開放されることにより、流体212および流体216の略等しい部分を含む混合流体のセグメント218が形成される。
【0058】
いくつかの実施例において、混合流体の複数の部分は、通気弁208を任意の回数開閉することによって形成される。例えば、流体212および216が分岐チャネルの交差部にて最初に相互に同時に接触しない場合に、そのような実施例は好適である。いくつかのそのような場合において、混合流体の第1の部分は第2の流体よりむしろ第1の流体を含み、混合流体の後続の部分は略等量の第1の流体および第2の流体を含む。いくつかの実例において、混合流体の第1の部分は下流の加工に好適ではないため、主チャネルあるいは装置の他の領域から離間するように配流される。例えば、混合流体の望ましくない第1の部分は、廃棄物格納領域に通じる分岐チャネルに向かって案内される。流体流は、ここに開示される方法と組み合わされて1つ以上の弁(例えば外部弁)を使用することによって任意に制御することができる。混合流体の1つ以上の後続の部分(下流の加工に好適である)は、主チャネルあるいは反応領域のような装置の他の領域に輸送される。
【0059】
図4D乃至4Iに混合流体(あるいは任意の他の流体)の一部を転換する一方法を示す。図4D乃至図4Iに示す実施例に示すように、出口220を有する分岐チャネル215が含まれる。この出口は、出口202に処理的に関連する同じ真空源に処理的に関係する。例えば、管材料(図示しない)が、真空源に出口の各々を接続してもよい。所定の場合に、弁機構(図示しない)は、管材料に処理的に関与する。出口はそれぞれ個別に制御される弁を備える。図4Dに示すように、混合流体を形成すべく流体212および216を混合するために、システムは、出口220を開放し、出口202を閉鎖することによって操作される。図4Eに示すように、通気弁208は混合を開始すべく閉鎖され、続いて図4Fに示すように主チャネル220内に流体218の第1の部分のみを輸送すべく開放される。混合部分が主チャネルに至ると、出口に処理的に関与する弁機構(図示しない)が駆動され、図4Gに示すように真空と出口202との間を連通させるとともに真空と出口220とを連通させる。真空が出口220に付与されているため、図4Hに示すように、流体218は、主チャネルから分岐チャネル215に配流される。出口に処理的に関与する弁機構が始動され、図4Iに示すように、真空と出口202とを連通させるとともに真空と出口220とを連通させる。
【0060】
単一の流体部を2つ以上の流体部に分離する工程により、流体を混合し流体セグメントを形成することとは別に他の効果が得られる。例えば、所定の場合に、流体の後縁が通気弁に至ると、液体の僅かな破裂が、通気弁(例えば通気弁のポートに向かって、あるいは通気弁に関与するアクチュエータに向かって)に向かって放出され得る。所定の場合に、放出された液体は、外部の弁機構を妨害し得る。所定の場合に、これは通気弁の機能に直接影響するものではないが、期間にわたって、例えば流体の要素(例えば化学薬品)による通気弁の汚染のような、処理の低下を生じ得る。機構(例えば複数の実験を行なうこと)を繰り返し使用する際に、そのような汚染は、外部の弁機構の正常な機能を変更し得る。出願人は、本発明のいくつかの実施例において、流体の全てが弁の下方のチャネルを通過するに先だって(例えば、複数の流体セグメントを形成するように)通気弁を開放することによって、ほとんどあるいは全く後縁が通気弁に至らず、液体の放出が生じないことを発見した。
【0061】
いくつかの実施例において、ここに開示されるシステム、装置、および方法は、1つ以上の化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方を行なうことに使用することができる。ここに開示される装置は、そのような目的および他の目的(例えば血液サンプル分析)に好適である付加的な要素を含んでもよい。所定の場合に、装置は例えば主チャネルの下流に配置される反応領域を含む。図1に示す実施例の組は、主チャネル12の下流の任意の反応領域86を含む。反応領域は、主チャネルの出口(例えば図1における出口15)に連通する。反応領域は、例えば化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方が生じ得る量として機能する。いくつかの実施例において、試薬および触媒のうち少なくともいずれか一方は、反応領域内に配置される(例えば、反応領域の壁部に固定される)。例えば、いくつかの実施例において、結合パートナーが、反応領域(例えば表面に、あるいは反応領域に含まれる要素に、あるいはその要素内に)に配置されてもよい。ここに開示される装置において使用可能な例示的な反応領域は、2006年4月19日に出願され、発明の名称が「Fluidic Structures Including Meandering and Wide Channels」である国際公開第WO2006/113727号明細書(国際特許出願公開第PCT/US06/14583号明細書)、2008年5月1日に出願され、発明の名称が「Fluidic Structures Including Meandering and Wide Channels」である米国特許出願公開第12/113,503号明細書、および2008年8月22日に出願され、発明の名称が「Liquid containment for integrated assays」である米国特許出願公開第12/196,392号明細書に開示され、これらの全体がここに開示されたものとする。
【0062】
付加的に、いくつかの実施例において、流体廃棄物室は、例えば反応領域の下流に含まれる。流体廃棄物室は、例えば装置の操作時に負圧源(例えば真空)に使用済みの流体が流れ込まないように使用済み流体を収容可能な容積を設ける点において有用である。例えば、図1に示す実施例の組は、使用済みの流体が反応領域86から流されるときに流体を保持する廃棄物室88を含む。ここに開示される装置において使用することができる例示的な廃棄物格納領域は、2008年8月22日に出願され、発明の名称が「Liquid containment for integrated assays」である米国特許出願公開第12/196,392号明細書に開示され、その全体がここに開示されたものとする。
【0063】
図1に示す実施例の組において、負圧源は、例えば出口15、地点90、および出口92のうちの任意のものに付与される。例えば、所定の場合に、図1における流体22はサンプル(例えば血液サンプル)を含む。サンプルは様々な方法を使用して、装置に導入可能である。ここに開示された装置と組み合わせて使用することができるサンプル導入のための例示的な方法および物は、2008年5月1日に出願され、発明の名称が「Fluidic Connectors and Microfluidic Systems」である米国特許出願公開第12/113,503号明細書、2008年8月22日に出願され、発明の名称が「Liquid containment for integrated assays」である米国特許出願公開第12/196,392号明細書に開示され、これらはその全体がここに開示されたものとする。サンプルは、最初に反応領域86、続いて廃棄物格納領域88に流れ込むことができる。反応領域は、それに反応領域の要素の特性を決定することができる検知器に関与する。サンプルが反応領域を通過することにより、所定の場合に、サンプルの1つ以上の要素(例えば抗原)と反応領域の1つ以上の要素(例えば抗体)との間を相互に作用(例えば、バインド)させる。いくつかの実施例において、反応領域の要素は、初めて使用されるに先立って反応領域に収容される乾燥した試薬の形態にあってもよい。この相互作用は、バインド対錯体のような製品を形成する。所定の場合に、この相互作用は、単独でマイクロ流体システムに関連する検知器によって信号を決定させる(例えば、測定される)。他の場合において、正確な信号が検知器によって決定されるために、製品は1つ以上の試薬によって処理される。例えば、流体は、サンプルの抗原と相互に作用する標識抗体を含んでもよい。この相互作用により、製品は標識を設けられるか、あるいは製品からの信号が増幅される。
【0064】
いくつかの実施例において、サンプルおよび試薬のうち少なくともいずれか一方は、所定の時間にわたって反応領域内に滞留する。異種混合の親和性反応が使用される場合に、例えば、サンプルの種は、反応領域の表面に固定される捕捉プローブにバインドされるであろう。例えばサンプルが反応領域を通過して流れるのに必要な時間を制御することによって、十分な滞留時間が得られる。通気弁から真空源までのシステムの流速は、システム(例えば、流れの隘路として機能する)のチャネルの最も小さな断面積によって最も高い相対粘度流体の流量に依存し得る。いくつかの実施例において、システムの1つ以上の特性は、反応領域内の流体(例えばサンプル)の所望の滞留時間が得られるように選択することができる。滞留時間を制御すべく調整可能なパラメータの例は、サンプルの入手可能性によって決定されるか使用者の便宜に応じて決定されるサンプル自体の量(例えば、血液のフィンガーピックを使用する分析のための血一滴の量);サンプルの粘性;システムの(負圧を付与するための)出口に付与されるか、システムの(正圧を付与するための)入口に付与される差圧(Δp);並びに流速隘路の外形(例えば断面積、長さ等)および位置の変化を含むが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施例において、システム・パラメータは、システムの1つ以上の混合領域(例えば通気弁)内の2つ以上の流体の混合の時間が、反応領域内のサンプルの滞留時間から独立して選択される。
【0065】
所定の場合に、システム・パラメータは、2つ以上の流体を混合した後に、2つ以上の流体が所定期間内に反応領域と接触することができるように選択することができる。例えば、いくつかの実施例において、混合流体は、混合流体内の2つ以上の流体を混合する10分以内に反応領域と接触することができる。例えば、混合流体内の1つ以上の要素が比較的短期間の後にそれらの有効性を分解し且つ/または失う場合に、そのような実施例は好適である。所定の例として、いくつかの実施例において、銀塩溶液は還元剤と混合可能であり、混合の10分以内に効果的に使用可能な活性化された銀溶液を生成する。様々な還元剤が写真工業によって開発されており、ここに開示される実施例において使用することができる。最もよく使用される還元剤のうちのいくつかは、ヒドロキノン、クロロヒドロキノン、ピロガロール、メトール(登録商標)、4−アミノフェノールおよびフェニドンを含む。
【0066】
視認されるように、混合条件および時間は、サンプルの滞留時間とは独立したものとすることが好適である(これにより、より長い滞留時間であってもより長い混合時間を生じるものではない)。ここに開示される通気弁および方法の効果が明白になる。所定の場合に、反応領域のチャネルの寸法や、流体流を生じさせるべく付与される圧力等のような流体システムの所定の要素は、反応領域においてサンプル滞留時間がどれだけ必要とされてもいいように設計され、また、試薬の混合のタイミングは1つ以上の通気弁によって制御される。
【0067】
ここに開示される装置において様々な流体を使用することができること(例えば、配置され、流され、あるいは収容される)を認識する必要がある。いくつかの実施例において、1つ以上の流体は、分析されるサンプルを含む。例えば、所定の場合に、流体は全血を含む。所定の場合に、流体は、試薬(例えば抗体流体)、洗い流し流体、あるいは任意の他の好適な流体を含む。所定の場合に、流体は、金属溶液を含む。例えば、流体は、コロイド懸濁液を形成することができる金属粒子(例えば銀、金等)の懸濁液を含む。所定の場合に、流体は、例えばヒドロキノンのような還元剤を含む。いくつかの実施例において、1つ以上の流体は、化学的または生物学的検定法の一部になり得る。
【0068】
チャネル内の流体の各々は、略類似の、あるいは異なる化学的性質を有する。例えば、いくつかの実施例において、チャネルの第1の流体は、分析されるサンプル(例、血液)を含み、第2の流体は、例えば第3の流体の通路を予め下流部に形成すべく使用される洗い流し溶液を含む。いくつかの実施例において、第1の流体は、化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方のための第1の試薬を含み、第2の流体は、化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方のための、第1試薬とは異なる第2の試薬を含む。
【0069】
付加的に、チャネル内の流体の各々は、略類似するか、異なる物理的特性を有する。例えば、いくつかの実施例において、チャネル内の第1の流体および第2流体は略異なる粘性を有する。粘性の差により、チャネルに圧力を付与すると流量に差が生じる。
【0070】
ここで注目されるように、いくつかの実施例において、ここに開示されるマイクロ流体システムは、装置の初めて使用されるに先だって、且つ/または装置内へのサンプルの導入に先立って収容される試薬を含む。収容される試薬を使用することにより、装置を操作するために使用者が行う必要のある工程の数が最小限となるため、使用者によるマイクロ流体システムの使用が単純化される。この単純化により、ここに開示されるマイクロ流体システムは、ポイントオブケア設定のような操作を練習していない使用者によっても操作可能となる。マイクロ流体装置に収容される試薬は、免疫測定を行うように設計される装置に特に好適である。
【0071】
ここで使用されるように、「装置が初めて使用されるに先立って」とは、販売後に意図される使用者によって初めて装置が使用される前の1つ以上の段階を示す。最初の使用は、使用者による装置の操作を要求する任意の1つ以上の工程を含む。例えば、最初の使用は、装置の中への試薬を導入する密封した入口を穿刺する工程、チャネル間を連通させるべく2本以上のチャネルを接続する工程、サンプルの分析に先だって装置を準備する工程(例えば、装置に試薬を装填する)、装置にサンプルを装填する工程、装置の領域にサンプルを準備する工程、サンプルにより反応を行う工程、サンプルを検知する工程等の1つ以上の工程を含む。最初の使用は、本明細書において、装置の製造業者によって行われる製造工程や他の準備工程、あるいは品質管理工程を含むものではない。当業者は、本明細書における最初の使用の意味を認識し、本発明の装置が最初の使用を行われたか否かを容易に判断することができるであろう。本発明の1組の実施例において、装置は初めて使用された後に使い捨てでき、初めて使用された後に装置を使用することは通常非実用的であるため、使い捨てであることは、そのような装置が初めて使用される場合に特に明白である。
【0072】
試薬は流体および乾燥した形態のうち少なくともいずれか一方にて装置に収容され且つ/または配置され、収容または配置の方法は特定の用途に依存する。試薬は、液体、気体、ゲル、複数の粒子あるいはフィルムとして、例えば収容され、且つ/または配置される。試薬は、任意に試薬収容領域の一部となるチャネル内、タンク、表面上、薄膜内または上を含む、装置の任意の好適な部分に配置されるが、これらに限定されるものではない。試薬は任意の好適な方法にてマイクロ流体システム(あるいはシステムの要素)に関係する。例えば、試薬はマイクロ流体システム内の表面上に(例えば共有結合によりあるいはイオン結合により)架橋され、吸収され、あるいは吸着されてもよい(physisorbed)。所定の一実施例において、(流体接続部の流体通路や装置基板のチャネルのような)チャネルの全てまたは一部は、抗凝血剤(例えばヘパリン)により覆われる。所定の場合に、液体は、初めて使用されるに先だって、且つ/または装置内へのサンプルの導入に先立って装置のチャネルやタンク内に含まれる。
【0073】
いくつかの実施例において、乾燥した試薬はマイクロ流体装置の一セクションに収容され、濡れた試薬はマイクロ流体装置の第2のセクションに収容される。これに代えて、装置の2つの個別のセクションの両者が乾燥した試薬および濡れた試薬のうち少なくともいずれか一方を含んでもよい。第1のセクションおよび第2のセクションは、いくつかの実例において、初めて使用されるに先だって、且つ/または装置内へのサンプルの導入に先立って相互に連通する。他の場合において、セクションは、初めて使用されるに先だって、且つ/または装置内へのサンプルの導入に先立って相互に連通するものではない。初めて使用される時に、収容される試薬は、装置の一方のセクションから他方のセクションに移動する。例えば、流体の形態にて収容される試薬は、第1のセクションおよび第2のセクションが流体通路(例えば流体接続部であり、これは2008年5月1日に出願され、発明の名称が「Fluidic Connectors and Microfluidic Systems」である米国特許出願公開第12/113,503号明細書、2008年8月22日に出願され、発明の名称が「Liquid containment for integrated assays」である米国特許出願公開第12/196,392号明細書により詳細に開示され、これらはその全体がここに開示されたものとする)を介して接続された後に第1のセクションから第2のセクションに移動可能である。他の場合において、乾燥物として収容される試薬は、流体により水和され、続いてセクションの接続の際に第1のセクションから第2のセクションまで移動する。更なる他の場合において、乾燥物として収容される試薬は、流体により水和されるが、セクションの接続の際に一方のセクションから他方のセクションまで移動するものではない。
【0074】
試薬収容領域において試薬の各々間で混合されない流体(分離流体)を保持することによって、収容される流体は、試薬収容領域から順に輸送されるとともに、収容される流体のうちの任意のものの間における接触が回避される。収容される試薬を分離する任意の混合されない流体は、反応領域の状態を変更することなく反応領域に適用される。例えば、抗体抗原結合が反応領域の検知領域のうちの1つにて生じている場合に、生じた結合に最小限の影響を付与するか、全く影響を付与しないように、空気が部位に付与される。
【0075】
ここに開示されるように、マイクロ流体システムに試薬を収容することにより、下流の工程において試薬を所定の順に投与することができる(例えば、反応領域の信号を増幅する)。試薬に対して所定の暴露時間が要求される場合に、マイクロ流体システムにおける各流体の量は、試薬が下流の反応領域に暴露される時間の量に比例する。例えば、第1の試薬に対して要求される暴露時間が、第2の試薬に対して要求される暴露時間の2倍である場合に、チャネルの第1の試薬の量は、チャネルの第2の試薬の量の2倍となる。略一定の圧力差、あるいは流体流の源がチャネルから反応領域へ試薬を流す際に付与される場合、および流体の粘性が同じか類似する場合に、反応領域のような所定の地点の各流体の暴露時間は、流体の相対的な量に比例する。チャネル外形、圧力、あるいは粘性のような要因も、チャネルからの所定の流体の流速を変更するために変更されてもよい。ここに開示される通気弁、並びに他の物および方法を使用する使用者によって、収容される流体は、収容(例えば最初の使用)後に操作されてもよい。
【0076】
付加的に、順に試薬を収容するこの方針(特に増幅試薬)は、広範囲の化学作用に適合される。例えば、光信号(例えば吸光度、蛍光、光あるいはフラッシュ化学発光、電気化学発光)、電気的信号(例えば無電解工程によって形成される金属構造体の抵抗、伝導性あるいはインピーダンス)、あるいは磁気信号(例えば磁気玉)を生成する様々な増幅の化学作用が、検知器によって信号を検知させるべく使用される。
【0077】
試薬は様々な時間量にわたってマイクロ流体システムに収容され得る。例えば、試薬は1時間以上、6時間以上、12時間以上、1日以上、1週間以上、1か月以上、3か月以上、6か月以上、1年以上、あるいは2年以上収容されてもよい。任意に、マイクロ流体システムは収容期間を延長すべく好適な方法にて処理されてもよい。例えば、内部に収容される試薬を含むマイクロ流体システムは、真空シールされ、暗い環境に収納され、且つ/または、低温(例えば、2℃乃至8℃に、あるいは0℃未満に冷却される)にて収納される。収容期間は、使用される所定の試薬、収容される試薬の形態(例えば、濡れているか乾燥している)、基板およびカバー層を形成することに使用される寸法および材料、基板およびカバー層を取り付ける方法、および装置が全体としてどのように処理され収容されるか等の1つ以上の要因に依存する。
【0078】
いくつかの実施例において、入口、出口および/または通気弁のうち任意のものが、初めて使用されるに先立ってシールされ得る。入口、出口および/または通気弁をシールすることにより、装置内に配置されるか収容される流体の蒸発および汚染のうち少なくともいずれか一方を防止することができる。入口、出口および/または通気弁を覆うシールは、外部流体が入口および通気弁のうち少なくともいずれか一方に進入できるように貫通されるか、取り払われるか、破壊される。所定の例として、いくつかの実施例において、通気弁24および入口14は初めて使用されるに先立ってシールされ、これらのシールは外部流体が進入できるように貫通されるか、取り払われるか、破壊される。所定の実施例において、通気弁からカバーを取り払った後にのみ通気弁は始動される。付加的に、出口15(あるいは地点90または出口92)は初めて使用されるに先立ってシールされ、負圧(例えば真空)の付与の直前に、あるいは、(例えば正圧が入口に付与される場合に)通気させるべく貫通されるか、取り払われるか、破壊される。
【0079】
所定の一実施例において、装置10はヒトIgGのための免疫測定を行なうために使用することができ、信号増幅のために銀による増強を使用することができる。ヒトIgGを含むサンプル(例えば流体22)をチャネル12から反応領域に輸送した後に、ヒトIgGおよび収容される乾燥した試薬、反ヒトIgG間の結合が行われる。この結合により、反応領域近傍の検知領域(例えば、検知器を含む)にバインド対錯体を形成することができる。チャネル12の上流部からの収容される試薬は、続いてこのバインド対錯体を覆うように流れる。収容される流体(例えば流体20)のうちの1つは、検知される抗原(例えばヒトIgG)に特に結合する金属コロイド(例えば金結合抗体)の溶液を含む。この金属コロイドにより、検知領域の表面に、金属(例えば複数の銀の粒)の層のような不透明な材料の堆積のための触媒の表面が得られる。金属の層は、2つの要素のシステムを使用することにより形成することができる。所定の場合に、金属先駆体(例えば銀塩溶液)がチャネル36に収容される流体62に含まれ、還元剤(例えばヒドロキノン、あるいは上述した他の還元剤)が、チャネル38に収容される流体64に含まれる。混合されると信号を増幅することができるこれらの2つの要素は、相互に反応し、数分間のみ混合物として保持される。その理由により、これらは個別に収容され、流れにより溶液の両者が通気弁34近傍の交差部に向かって移動されるまで、相互に混合されない。負圧が出口92に付与され、通気弁24および34が閉鎖されると、銀塩およびヒドロキノン溶液は、通気弁34近傍の交差部にて混合される。これらはチャネル12に沿って流れるにつれ、緩慢に(例えば拡散により)混合され、続いて反応領域を覆うように流れる。従って、抗体抗原結合が反応領域において生じる場合に、領域を金属先駆体溶液が流れることにより、抗体抗原複合体に関連する触媒の金属コロイドの存在により銀層のような不透明な層が形成される。不透明な層は、1つ以上の波長にて光の伝達を妨害する物質を含む。マイクロ流体チャネルに形成される任意の不透明な層は、抗体や抗原を含まない領域の一部と比較して、例えば反応領域(例えば蛇行するチャネル)の一部を介した光線透過率の低減を測定することにより、光学上検知することができる。これに代えて、フィルムが検知領域に形成されているので、光線透過率の変化を測定することにより信号を時間の関数として得てもよい。不透明な層を形成しない技術と比較すると、不透明な層は、分析感度を高める。
【0080】
免疫測定が主として開示されるが、ここに開示される装置は、任意の好適な化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方に使用されてもよく、例えば、タンパク質や他の生体分子(例えばDNA、RNA、炭水化物)、あるいは非天然素材の分子(例えばアプタマーや合成アミノ酸)間の親和性反応に関する他の固相分析を含むものといえる。
【0081】
チャネル内の流体流は任意の好適な方法により得られる。いくつかの実施例において、流れは、流体が含まれるチャネル内の圧力勾配を確立することによって得られる。そのような圧力勾配は、例えばチャネル(例えばチャネルの出口)の一端に負圧を付与することによって確立される。負圧を付与する例示的な方法は、出口への真空ポンプの取り付け、出口に取り付けられる注射器からの空気の排出、あるいは他の好適な方法を含むが、これらに限定されるものではない。
【0082】
圧力勾配は、1つ以上の通気弁に正圧を付与し、周囲圧力のような比較的より小さな圧力を出口に付与することによっても確立することができる。例えば、図4A乃至4Cにおいて、出口202は周囲圧力に暴露される。周囲圧力より大きな正圧を開放した通気弁208を介して付与してもよく、これにより、入口210および214が閉鎖された状態を保持する限り、図4Aに示す矢印の方向に流体流が生じる。図4Bに例示的に示すように、通気弁208が閉鎖され、入口210および214が周囲圧力より大きな圧力に対して開放されてもよい。図4Cに示すような流体の混合プラグを移動させるために、入口210および214が閉鎖されるとともに通気弁208が正圧に対して再び開放されてもよい。正圧の使用は、流れの要求される通路における通気弁以外の装置に関与する全ての通気弁を閉鎖する工程を含む。任意の通気弁の閉鎖は気密である。正圧は、例えばポンプによって、重力を使用して、あるいは他の好適な方法によって、付与することができる。
【0083】
所定の実施例において、流体流の源(例えば真空またはポンプ)から流体流(例えば正圧または負圧)を生じさせるべく付与される圧力は、チャネルシステムに流体流の源が最初に付与された後は、ここに開示される弁および他の要素のうち少なくともいずれか一方が始動される場合においても、装置における工程(例えば反応)の実行時において、略一定に保持される。しかしながら、チャネルの流体の直線的な流れの速度は変化し、2009年4月22日に出願され、発明の名称が「Flow Control in Microfluidic Systems」である米国特許出願公開第12/428,372号明細書に開示されるような様々な方法によって制御される。同明細書はその全体がここに開示されたものとする。別例において、流体流の源からの圧力は、装置の操作時に変更可能である。
【0084】
いくつかの実施例において、化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方は結合を含む。異なるタイプの結合が、ここに開示される装置において行われてもよい。用語「結合」は、相互に親和性や結合能力を示す分子の対応する対間の相互作用、通常生化学的、生理学的、および/または製薬的相互作用を含む特異的または非特異的結合や相互作用を示す。生物学的な結合は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモン等を含む分子の対間に生じる一種の相互作用をなす。所定の例は、抗体/抗原、抗体/ハプテン、酵素/基質、酵素/阻害剤、酵素/共同因子、結合蛋白質/基質、キャリア蛋白質/基質、レクチン/炭水化物、受容器/ホルモン、受容器/エフェクター、核酸の相補鎖、タンパク質/核酸、抑制因子/誘発物、配位子/細胞の表面にある受容体、ウィルス/配位子等を含む。
【0085】
所定の場合に、不均一反応(あるいは分析)がチャネルにおいて行われてもよく、例えば、結合パートナーは、チャネルの表面に関与し、相補的な結合パートナーが、流体相に設けられてもよい。用語「結合パートナー」は、所定の分子と結合可能な分子を示す。生物学的な結合パートナーが例であり、例えば、タンパク質Aは、生体分子IgGの結合パートナーであり、その逆も結合パートナーである。同様に、抗体はその抗原の結合パートナーであり、その逆も結合パートナーである。他の場合において、均一系反応がチャネルにて生じる。例えば、結合パートナーの両者は、流体相にて(例えば2流体層流システムにおいて)設けられる。蛇行するチャネルシステムにおいて行われる通常の反応の例は、化学反応、酵素の反応、免疫ベースの反応(例えば抗原抗体)および細胞ベースの反応を含むが、これらに限定されるものではない。
【0086】
装置は任意の好適な材料から形成される。材料の例は、ポリマ(例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(ジメチルシロキサン)、PMMA、PFFE、環状オレフィンコポリマ(COC)、および環状オレフィンポリマー(COP)、ガラス、石英、およびシリコンを含むが、これらに限定されるものではない。当業者は、例えばその剛性、例えば、その剛性は、通過する流体に対するその不活性(例えば、流体による劣化からの解放)、所定の装置が使用される温度におけるその堅牢性、および/または(例えば、紫外線および可視領域内における)光に対するその透過性/不透過性に基づいて容易に好適な材料を選択することができる。いくつかの実施例において、基板の材料および寸法(例えば厚み)は、基板が水蒸気を略通さないように選択される。
【0087】
いくつかの実例において、マイクロ流体基板は、上述したような2つ以上の材料の組み合わせから構成される。例えば、装置のチャネルは、第1の材料(例えばポリ(ジメチルシロキサン)にて形成され、第2の材料(例えばポリスチレン)にて形成されるカバーは、チャネルをシールすることに使用される。別例において、装置のチャネルはポリスチレンや他のポリマ(例えば射出成形による)にて形成され、生体適合性を備えたテープがチャネルをシールすることに使用される。様々な方法が、マイクロ流体チャネルやチャネルの部分をシールすることに使用される。方法は、接着剤の使用、接着、接合、溶接(例えば超音波)、あるいは機械的方法(例えば、クランプ)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0088】
チャネルは任意の断面形状(円形、半円形、楕円形、半楕円形、三角形、不規則、正方形、あるいは矩形等)を有し、覆われていても覆われていなくてもよい。チャネルが完全に覆われる実施例において、チャネルの少なくとも一部は、完全に包囲される断面を有するか、あるいはチャネル全体がその入口と出口を除きその全長に沿って完全に包囲される。チャネルには更に少なくとも2:1、通常少なくとも3:1、5:1、あるいは10:1以上の縦横比(平均の断面寸法に対する長さ)を有する。開放された、あるいは部分的に開放されたチャネルは、設けられる場合に、流体の輸送に対して容易に制御可能である特徴、すなわち構造的な特徴(長尺状をなす刻み目)、および/または物理的または化学的特徴(疎水性対親水性)、あるいは流体に圧力(例えば包含圧力(containing force))を付与可能な特徴を含む。チャネル内の流体は、部分的にあるいは完全にチャネルを満たしてもよい。開放されるチャネルが使用される所定の場合に、流体は、例えば表面張力(例えば凹面または凸面のメニスカス)を使用して、チャネル内に保持される。
【0089】
いくつかの実施例において、本発明のシステムはマイクロ流体であるが、所定の実施例において、本発明はマイクロ流体システムに制限されるものではなく、他のタイプの流体システムに関するものであってもよい。ここに使用されるような「マイクロ流体」は、1mm未満の断面寸法を有し、最大の断面寸法に対する長さの比が少なくとも3:1である少なくとも1本の流体チャネルを含む器具、装置、あるいはシステムを示す。ここに使用される「マイクロ流体チャネル」は、これらの基準を満たすチャネルである。
【0090】
チャネルの「断面寸法」(例えば直径)は、流体流の方向に直交するように測定される。本発明の要素におけるほとんどの流体チャネルは、2mm未満の、所定の場合に、1mm未満の最大の断面寸法を有する。1組の実施例において、本発明の実施例を含む全ての流体チャネルは、マイクロ流体であるか、あるいは最大でも2mm以下あるいは1mm以下の断面寸法を有する。別の組の実施例において、本発明の実施例を含むチャネルの最大の断面寸法は、500マイクロメートル未満、200マイクロメートル未満、100マイクロメートル未満、50マイクロメートル未満あるいは25マイクロメートル未満である。所定の場合に、チャネルの寸法は、流体が物や基板を自由に流れることができるように選択される。更に、チャネルの寸法は、例えば、チャネルの流体の所定の容積測定や直線的な流れの速度測定ができるように選択される。もちろん、チャネルの数およびチャネルの形状は当業者に周知の任意の方法によって変更可能である。所定の場合に、1本以上のチャネルや毛細管が使用されてもよい。
【0091】
いくつかの実例において、試薬はマイクロ流体チャネルシステムの完全な組立てに先立ってチャネルに配置される。例えば、包囲されるチャネルを有するように設計されるシステムがなお完全に包囲されていないチャネルを有する場合に、マイクロ流体チャネルシステムは完全ではない。チャネルの少なくとも一部が完全に包囲される断面を有する場合に、あるいは全チャネルがその全長に沿ってその入口および出口のうち少なくともいずれか一方を除いて完全に包囲される場合に、チャネルは包囲される。
【0092】
システムのチャネルが完全に覆われた後に、濡れた試薬はマイクロ流体システムに通常収容される。システムに収容される流体の試薬は、チャネルの入口へ導入されてもよく、チャネルを流体により少なくとも部分的に満たした後にチャネルの入口および出口のうち少なくともいずれか一方は、例えば、流体を保持し、且つ外部源からの汚染を防止すべくシールすることができる。
【0093】
ここに使用される用語「測定」は、通常、例えば定量的、あるいは質的な(例えば反応部位内の)物質の測定および分析のうち少なくともいずれか一方、あるいは物質の存在または不存在の検知を示す。更に「測定」は、例えば、定量的あるいは質的な、2つ以上の物質間の相互作用の測定および分析のうち少なくともいずれか一方、あるいは相互作用の存在または不存在の検知を示す。
【0094】
様々な測定(例えば、測定、計量、検知、および制限)技術が使用される。測定技術は、光送信、吸光度、光散乱、光反射および視覚的な技術のような光学に基づいた技術を含む。測定技術は、さらにホトルミネセンス(例えば蛍光)、化学発光、生物発光、および/または電気化学発光のような発光技術を含む。使用される測定技術に従ってマイクロ流体装置を修正する方法は当業者に周知である。例えば、測定に使用される化学発光の種を含む装置に関して、不透明且つ/暗い背景が好ましい。金属コロイドを使用した測定に関して、透明な背景が好ましい。更に、任意の好適な検知器もここに開示される装置と組み合わせて使用されてもよい。例えば、公知の分光光度計および光学読み取り装置(例えば96−wellプレートリーダ)と同様に単純な光学検波器を使用することができる。
【0095】
(例)
次の例は、本発明の所定の実施例を示すことを意図するが、本発明の範囲を完全に示すものではない。
【0096】
(例1)
マイクロ流体チャネルシステムを組み立てる方法が開示される。
図1Aおよび1Bに示すチャネルシステムは、コンピュータ利用設計(CAD)プログラムにより設計される。マイクロ流体装置は、SU8フォトレジスト(マサチューセッツ州ニュートンに所在するMicroChem社)にて製造されたマスタを使用して迅速なプロトタイピングによって、ポリ(ジメチルシロキサン)Sylgard 184(PDMS、登録商標ダウコーニング、ウィスコンシン州ジャーマンタウンに所在するエルズワース社)にて形成される。マスタはシリコンウェハに設けられ、PDMSにネガ・パターンを複製することに使用される。マスタは2レベルのSU8を含み、1レベルは、70マイクロメートル以下の厚み(高さ)を有し、免疫測定領域においてチャネルを形成し、且つ360マイクロメートル以下の第2の厚み(高さ)を有し、試薬収容領域および廃棄物格納領域を形成する。別のマスタは33μmの厚み(高さ)を有するチャネルにより設計される。マスタは(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリクロロシラン(独国ABC−R社)によりシラン処理される。PDMSはメーカーの指示によって混合され、マスタに注がれる。重合(4時間、65℃)の後に、PDMSの複製が、マスタからはぎ取られ、アクセス・ポートが鋭端(直径1.5mm)を備えるステンレス鋼管材料を使用して、PDMSを打ち抜いて形成される。流体のネットワークを完成させるべく、スライド・ガラス、シリコンウェハ、ポリスチレン表面、PDMSのフラットスラブ、あるいは接着テープのような平坦な基板が、カバーとして使用され、PDMS表面に対して配置される。カバーは、分子間力によって適所に保持されても、接着剤を使用してマイクロ流体装置に固定されてもよい。
【0097】
別例において、マイクロ流体チャネルは、射出成形によってポリスチレン、環状オレフィンコポリマ、あるいは他の熱可塑性物質にて形成される。この方法は当業者に周知である。射出成形キャビティの容量は、成形品の厚みを決定する中空の構造によって分離される底面および天面によって定められる。物の2つの対向側にチャネル特徴部および/または他のマイクロ寸法の要素を含む物において、成形キャビティの底面および天面は、物の両側にチャネル特徴部を形成する隆起した特徴部を含む。物の一方の側にのみチャネル特徴部を含む物については、成形キャビティの天面または底面のみがそのような特徴を含む。物の厚み全体を貫通する貫通孔が、キャビティを横断し、キャビティの1つ以上の表面に埋め込まれ、反対側と接触するピンによって形成される。例えば、ピンは、天面のみから、底面のみから、あるいは天面および底面の両者から延びてもよい。キャビティが加圧され溶解したプラスチックにより満たされ、続いて冷却されると、一方の側または両側にチャネルを備え、且つ接続部や入口および出口として機能する穴を備える物が形成される。流体のネットワークを完成させるべく、接着テープがチャネルをシールすべく物の表面に貼り付けられる。
【0098】
(例2)
本例は、流体の移動を制御するために少なくとも1つの通気弁が組み込まれる1本のチャネルを含むマイクロ流体システムにおける流体の移動の制御について開示する。図5Aおよび図5Bは、本例に開示されるシステムの概要を示す。
【0099】
図5Aに示すシステムは1本のチャネルを含み、このチャネルに入口、出口、通気弁が形成される。本システムは、例1に開示されるような射出成形によって形成される。単一のチャネル302は、矢印308の方向に流体部304および306を流すように構成される。水が本実験において流体部304および306に使用され、これらの流体部は空気のプラグによって分離される。チャネルは通気弁310、および通気弁310の上流の入口312を含む。実験全体において、マイクロ流体チャネルを横断して圧力を降下させるべく−40kPaの略定圧にて作用する真空がチャネル出口314に付与される。
【0100】
通気弁310は開放されると、選択的弁として機能し、これは弁を通過して流れる空気が出口を通過してシステムを退出する流体に代わることを示す。通気弁310(弁310と入口312との間の流体を含む)の上流に配置される流体は、入口が開放されているか閉鎖されているかにかかわらず流れない。通気弁310が閉鎖されていると、入口312が開放されている限りチャネルの全ての流体は流れる。このように、通気弁310はマイクロ流体チャネルの流体の輸送を制御することに使用される。通気弁310および入口312の両者が閉鎖されていると、流体は(真空が付与されると、所定の運動が流体の膨張により観察されるが)チャネルを流れないものといえる。
【0101】
図5Bに示すシステムは1本のチャネルを含み、このチャネルに3つの通気弁が組み込まれる。単一のチャネル320は、矢印308の方向に流体部322、324、326、および328を流すように構成される。チャネルは入口330、通気弁332、334、および336を含む。図5Aに開示されるシステムと同様に、マイクロ流体チャネルを横断して圧力を降下させるべく真空がチャネル出口340に付与される。
【0102】
一実験において、通気弁332が開放され、出口340に真空が付与されると、流体322のみがチャネル320を通して輸送される。続いて、通気弁332が閉鎖されるとともに弁334が開放されると、流体324のみがチャネル320を通して輸送される。次に、通気弁332および334が閉鎖されるとともに弁336が開放されると、流体部326がチャネルを通して輸送される。次に、通気弁332、334、および336が閉鎖されるとともに入口330が開放されると、流体部328がチャネルを通して輸送される。
【0103】
実験の別例において、複数の流体が、チャネルを通して同時に輸送される。一例において、初めて使用されるに先立って、通気弁332は閉鎖されるが、弁334は開放される。出口340に真空を付与すると、流体部322および324は、矢印308の方向にチャネル320を通して同時に輸送される。別の実験において、初めて使用されるに先立って、通気弁332および334は閉鎖されるが、弁336は開放される。出口340に真空を付与すると、流体部322、324、および326は、矢印308の方向にチャネル320を通して同時に輸送される。最後に、一実験において、通気弁の全てが閉鎖されるとともに入口330が開放される場合に、出口340に真空が付与されると、流体部322、324、326、および328が同時に輸送される。
【0104】
この例は、流体プラグのタイミングを含む流体の制御が、装置において、1つ以上の通気弁を開閉し、装置の使用全体にわたって略定圧にて操作される流体流の1つの源(例えば真空)を付与することによって行われ得ることを示す。
【0105】
(例3)
本例は、流体の移動を制御するために複数のチャネルおよび少なくとも1つの通気弁を備えるマイクロ流体システムにおける流体の移動の制御について開示する。図6A乃至6Cは、本例に開示されるシステムの概要を示す。図6Aに示す装置において、マイクロチャネル410は、通気弁416で交差する2本の分岐チャネル412および414に連通する。マイクロチャネル410は流体418を含む。付加的に、流体420および422は、分岐412および414にそれぞれ収容される。チャネル410が出口424に接続されるとともに分岐412および414が入口426および428にそれぞれ接続される。装置における全ての流体は、気体(流体418、420および422に混ざらない)のプラグによって分離される。
【0106】
実験全体において−40kPaの略定圧にて作用する真空が、出口424に付与される。最初に、通気弁416が開放され、これにより流体418が矢印408の方向にマイクロチャネル410を通して流され、空気が通気弁416を通して流される。入口426および428が開放されても、流体420および422は移動しない。流体418が出口424を退出した後に、通気弁416を通過する気体の流速は、流体418によって生じる圧力降下がなくなると、高められる。次に、通気弁416が閉鎖される。通気弁が閉鎖されると、図6Bに示す混合流体430を生成すべく流体420および422が通気弁416にて混合される。
【0107】
実験の別例において、流体420および422は、通気弁416を同時にではなく順に輸送される。第1の実験における図6Cに示す実施例において、流体418が出口424を通して輸送された後に、通気弁416および入口426の両者が閉鎖される(とともに入口428は開放される)。入口426を閉鎖することによって、流体420は、入口426に気体が進入できないため、分岐412において略静止した状態を保持される。他方、気体が入口428を通して輸送されると、流体422は分岐414を通して輸送され、閉鎖される通気弁416を通過して輸送される。
【0108】
この例は、流体プラグの混合およびタイミングを含む流体の制御が、装置において、1つ以上の通気弁を開閉し、装置の使用全体にわたって略定圧にて操作される流体流の1つの源(例えば真空)を付与することによって行われ得ることを示す。
【0109】
(例4)
本例は、金の粒子上に無電解に銀を析出させることによって光学上検知可能な信号の分析を行なうための分岐チャネルシステムの使用を開示する。図7は、本例において使用される分析装置300を示す概略図である。本例において使用される分析は、通常2004年12月20日に出願され、発明の名称が「Assay Device and Method」である国際公開第WO2005/066613号明細書(国際特許出願公開第PCT/US2004/043585号明細書)に開示され、その全体がここに開示されたものとする。
【0110】
装置は反応領域510、廃棄物格納領域512、および出口514を含む。反応領域は、全長175mm、深み50マイクロメートル、幅120マイクロメートルのマイクロ流体チャネルを含む。装置は、更にマイクロ流体チャネル516、並びに分岐チャネル518および520(それぞれ入口519および521を含む)を含む。チャネル516、並びに分岐518および520は、深みが350マイクロメートル、幅が500マイクロメートルである。付加的に、チャネル516は、長さ390mmであり、分岐518および520は、各々長さ360mmである。例1に開示されるように、反応領域およびマイクロ流体チャネルは形成される。チャネルをシールするに先だって、反PSA抗体が、反応領域510のセグメントにおいて装置の表面に取り付けられる。
【0111】
初めて使用されるに先立って、装置に液体試薬が装填される。液体が、2マイクロリットルの水542のプラグ、2マイクロリットルの緩衝液541のプラグ、コロイド状の金526標識の反PSA抗体を含む20マイクロリットルの水溶液のプラグ、1マイクロリットル緩衝液524のプラグの順番にてチャネル516に装填される。この連続した流体プラグは、入口ポート539を通してピペットを使用して装填される。銀塩溶液を含む流体528は、ピペットを使用してポート519を通して、分岐チャネルに装填される。還元溶液を含む流体530は、ポート521を通して分岐チャネル520内に装填される。図7に示す液体の各々は、空気のプラグによって他の液体から分離される。ポート514、519、521、536、539、および540は、容易に取り払いまたは貫通することができる接着テープによりシールされる。従って、液体は初めて使用されるに先立って装置に収容される。
【0112】
最初の使用において、ポート514、519、521、536、539、および540が開封される。10マイクロリットルのサンプル血液(522)を含むチューブ544は、ポート539および540に接続される。これにより、反応領域510とチャネル516との間に流体の接合部が形成されるが、これがなければ初めて使用されるに先立って反応領域510およびチャネル516は接合されるものではなく、相互に連通するものでもない。−40kPaの真空がポート514に付与される。サンプル522が、反応領域510において矢印538の方向に流れる。流体が反応領域を通過すると、サンプル522のPSAのタンパク質が反応エリアの壁に固定される反PSA抗体によって捕捉される。サンプルが反応領域を通過するのに5分かかり、その後、サンプルは廃棄物格納領域512に捕捉される。ここに開示される装置において使用可能な例示的な廃棄物格納領域は2008年8月22日に出願され、発明の名称が「Liquid containment for integrated assays」である米国特許出願公開第12/196,392号明細書に開示され、その全体がここに開示されたものとする。
【0113】
流体524、526、541、および542は、反応領域510を介して廃棄物格納領域512に向かってサンプルに続く。これにより流体524が反応領域510に向かって矢印538の方向に輸送される。流体524が反応領域を通過すると、残存する結合していないサンプル要素を洗い流す。流体526が反応領域を通過すると、金標識反PSA抗体は、(サンドイッチ免疫複合体を形成すべく)反応領域の壁に捕捉されるPSAに連結される。流体541および542は、任意の結合していない試薬要素の反応領域に続き更に洗浄する。最後の洗浄流体542(水)は、銀塩(すなわち塩化物、リン酸塩、アジ化物)と反応可能な塩類を洗い流す。
【0114】
信号を増幅するためにコロイドの径を増加させるべく銀が捕捉される金の粒子に堆積される。いくつかの実施例において、信号は光学的濃度として光学的方法によって記録することができる。これを遂行するために、流体528および530は反応的な銀溶液を生成すべく混合される。流体528および530の容量の比は約1:1である。流体528および530の混合を開始すべく、通気弁536が閉鎖されるとともに514にて付与される真空は保持され、これらにより、通気弁536に向かって流体528および530が同時に流れる。通気弁は、最終となる前の流体542が反応領域を退出した後にのみ、混合を開始すべく閉鎖される。閉鎖は、接着テープによりポート536をシールすることによって一実験において行なわれる。別の実験において、電磁弁(SMC社V124A−6G−M5(図示しない))に処理的に関連するチューブ(図示しない)が、通気弁536にOリングにより気密に接続される。電磁弁は図2Eおよび2Fに関してここに開示されたものと類似の方法によりポートをシールするために活性化される(ポートを開封するために後に非活性化される)。流体528および530は、通気弁536にて相互に混合され、約1x10−3Pa sの粘性を備える活性化された銀溶液を生成する。通気弁536下のマイクロ流体チャネルの断面積は、チャネル518および520の断面積の約2倍である。10秒後に、通気弁536が開放される。その時に、流体528および530の両者の約55%が混合され、残りの流体528および530は、チャネル518および520にそれぞれ残される。
【0115】
堆積される銀を得るべく、活性化された銀溶液は、反応領域510を通過して流れる。混合溶液は数分しか(通常10分未満)安定しないため、混合は反応領域510にて使用するに先だって1分未満行なわれる。更に、コロイドに銀を再生可能に堆積できるように、活性化された銀溶液を生成するための試薬の混合と、反応領域への活性化された銀溶液の輸送との間の時間は、それらが複数の実験間において一貫するように制御される。
【0116】
システムを通して流体を流す場合に、チャネル516および反応領域510内の流体の流速の制御は重要である。反応領域の比較的狭小な横断面積により、反応領域は隘路として機能し、これによりシステムにおける全体的な流速を制御する。反応領域が液体を含む場合に、チャネル516の流体の直線的な流れの速度は、約0.5mm/秒である。分岐チャネル518および520から主チャネル516に流れ込む流体は、この速度においては再生可能に混合されるものではなく、その理由として、一方の流体が他方の流体より速く流れ、これにより、流体528および530の不等な部分を混合させることが挙げられる。他方では、反応領域が空気を含む場合に、チャネル516、並びに分岐チャネル518および520における流体の直線的な流れの速度は、約15mm/秒である。このより高い流速にて、分岐チャネル518および520における流速は等しく、且つ再生可能であり(通気弁536が閉鎖されている場合に)、これにより再生可能な混合が行われる。この理由により、通気弁536は、流体542が反応領域を通して廃棄物格納領域に移動するまで閉鎖される。流体542がいつ反応領域510を退出したかを視認により(目により)決定可能である。これに代えて、2004年12月20日に出願され、発明の名称が「Assay Device and Method」である国際特許第WO2005/066613号明細書(国際特許出願第PCT/US2004/043585号明細書)に詳細に開示されるように、光学検波器は反応領域510の一部を通した光の送信を測定するように配置される。明細書はその全体がここに開示されたものとする。
【0117】
図7に示すマイクロ流体システムは、通気弁536と反応領域510との間のチャネルの量が、混合され活性化された銀溶液(すなわち、流体528および530の結合した部分がチャネル516へ移動するとともに、通気弁536が閉鎖される)の予想される量より大きくなるように設計される。これにより、比較的高い直線的な流れの速度にて混合の略全てが、活性化された溶液が反応領域に至るに先立って確実に行われる(この時点において液体は反応領域510内になく空気のみが反応領域510内に配置されるため)。この構成により、再生可能且つ一様な混合の促進が補助される。
【0118】
本例に開示される分析において、数分(例えば2乃至10分)間反応領域内の活性化された銀混合物の流れを保持することが重要である。第1の実験において、流体528および530の45マイクロリットルの量が装填され、その一部は、混合に使用される(合計55マイクロリットルの活性化された銀溶液を生成する)。この量の結合した流体は、約300秒の反応領域における滞留時間を有する。しかしながら、液体のこの比較的少量の使用は、課題を提起し得る。比較的短い長さの流体セグメント528および530が使用される場合に、1:1の比率にて2つの流体を確実に混合することは比較的困難である。セグメント長さにおける小さな変化により、2つの流体の流速は不均一となり、より長いセグメントと比較してより短いセグメントは(比較的小さな抵抗により流れることにより)比較的高い流速を示す。この結果、混合比にずれが生じ得る。
【0119】
この結果を区別するために、第2の組の実験が行われ、90マイクロリットルの量の活性化された銀溶液を生成すべく、45マイクロリットルの量の銀塩溶液と、45マイクロリットルの量の還元溶液が混合される。銀塩溶液は、(化学組成の違いによる製造における僅かな差異、およびチャネル形成に使用される加工技術の公差によるチャネル断面の僅かな変動を含む理由の組み合わせにより)還元溶液に対して僅かに速く流れることがわかったため、真空が付与されるときに分岐を通して僅かに高い流速を示す。図8は、銀塩および還元溶液の最初の接触後の経過時間の関数として混合チャネル(単位:マイクロリットル)に進入する銀塩溶液(破線)および還元溶液(実線)の量を示すプロットを含む。図8において、流速のこの差は、t=0秒乃至t=9秒までの線の傾斜の僅かな差によって示される。t=9秒で、セグメントの長さの絶対差は重要なものとなる。また、銀塩溶液(より速い流速を有するため、その分岐により短いセグメントの液体が残る)は、還元溶液に比べて更に速く流れる。この結果は、銀塩の(直線的な推定に対する)曲線の上昇傾向および還元溶液の曲線の下降傾向によって示される。
【0120】
付加的に、流体528および530の試薬のうちの一方の後縁が、通気弁536に至ったときに、通気弁536の穴の頂部に向かって液体の僅かな爆発が放出されることが観察される。その液体は、外部の弁機構と接触すべく進入すると分かった。これらは弁の効率に迅速にして、且つ顕著な影響を付与するものではないが、弁の望ましくない汚染を生じる。この方法にて(例えば複数の実験を実行すること)弁を繰り返し使用することによって、弁の正常機能が変更される。流体528および530の全てが混合されるに先だって通気弁536を再び開放することにより、流体528および530のいずれの後縁も通気弁526には確実に至らず、また、液体の排出も確実に生じない。従って、(流れる際に流体528および530の長さ間に大きな変化が確実に生じないように)分岐518および520に過剰な試薬を装填することによって、および通気弁536を再び開放するに先立って約2/3未満の量の収容される試薬を使用することによって、一貫した混合比が混合工程の全体にわたって保持されるとともに、通気弁536における外部弁機構の液体の突出または汚染が回避される。弁は、所定の組の試薬の流れの状態に応じて完了の様々な段階にて再び開放される。
【0121】
本例は、試薬の混合、流速の変更、および流速のタイミングを含む流体の制御が装置において行われ、1つ以上の通気弁を開閉し、装置の使用全体にわたって略定圧にて操作される流体流の1つの源(例えば真空)を付与することによって分析が行われることを示す。本例は、装置において混合される流体の個別のプラグの流速を制御する重要性を更に示す。
【0122】
本発明のいくつかの実施例がここに開示されたが、当業者は機能を実施し、且つ/または結果を得るための様々な他の手段および/または構造体、および/または、ここに開示される1つ以上の効果の構想を容易に描き、そのような変更および/または変形は本発明の範囲内にあるものといえる。通常、当業者はここに開示される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示的なものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の1つ以上の応用に依存することを容易に認識するであろう。当業者は、ただのルーチン実験を使用して、ここに開示される本発明の所定の実施例に対する多くの均等物を認識するかあるいは確認することができるであろう。従って、先の実施例は、添付の特許請求の範囲およびこれらの均等物の範囲内において例示によってのみ示されたものであり、本発明は具体的に開示され特許請求の範囲に請求されるもの以外によって実施されてもよいものといえる。本発明は、ここに開示される個別の特徴、システム、物、材料、キットおよび/または方法に関する。付加的に、2つ以上のそのような特徴、システム、物、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせも、そのような特徴、システム、物、材料、キット、および/または方法が、相互に一貫しないわけではない場合に、本発明の範囲内に含まれる。
【0123】
明細書および特許請求の範囲においてここに使用されるような不定冠詞「1つ(a)」および「1つ(an)」は、特に明示されない限り「少なくとも1つ(at least one)」を意味するものといえる。
【0124】
明細書および特許請求の範囲においてここに使用される句「および/または(and/or)」は、要素の「いずれかまたは両者(either or both)」を示し、要素がそのように結合されたこと、すなわち、所定の場合に結合して設けられ、他の場合に分離して設けられることを示すものといえる。他の要素は、「および/または(and/or)」節によって特に識別される要素以外に任意に設けられてもよく、反対の趣旨が明示されない限り特に識別される要素に関連づけられても無関係であってもよい。従って、例として、「含む(comprising)」のような非制限的用語と組み合わせて使用される場合に「Aおよび/またはB(A and/or B)」は、一実施例において、Bを伴わないA(B以外の要素を任意に含む)を示し、別例において、Aを伴わないB(任意にA以外の要素を含む)を示し、更なる別例において、AおよびBの両者(任意に他の要素を含む)を示すこと等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
明細書および特許請求の範囲においてここに使用されるように、「あるいは(or)」は、上述したように「および/または(and/or)」と同じ意味を有するものといえる。例えば、リスト中の項目を分離する場合に、「あるいは(or)」や「および/または(and/or)」は、包括的であると解釈されるものとする。すなわち少なくとも1つを包含するが、1つ以上、多数の要素またはリストに示す要素、および任意に付加的なリストに無記載の項目を含む。「〜のうち1つのみ(only one of)」、「〜のうちまさに1つ(exactly one of)」、あるいは特許請求の範囲に使用される場合の「〜からなる(consisting of)」のような、それと反対に明示される用語のみ、多くの要素あるいはリストに挙げられる要素のうちまさに一要素を包含するものとする。通常、ここに使用される用語「あるいは(or)」は、「いずれか(either)」、「〜のうちの1つ(one of)」、「〜のうち1つのみ(only one of)」、「〜のうちまさに1つ(exactly one of)」のような排他的用語が先行する場合に、排他的な選択肢(すなわち、「一方または他方であるが両者ではない(one or the other but not both)」)を示すものとのみ解釈されるものとする。「〜のみからなる(consisting essentially of)」は、特許請求の範囲において使用される場合に、特許法の分野において使用されるようなその通常の意味を有するものとする。
【0126】
明細書および特許請求の範囲においてここに使用されるように、1つ以上の要素のリストに関する句「少なくとも1つ(at least one)」は、要素のリスト中の要素のうちの任意の1つ以上から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、具体的にリストされる各要素および全ての要素のうち少なくとも1つを含む必要はなく、要素のリスト中の要素の任意の組み合わせを排除するものではないものといえる。この定義により、要素は、句「少なくとも1つ(at least one)」が示す要素のリスト内において特に識別される要素以外に任意に設けられてもよく、特に識別される要素に関係しても無関係であってもよい。従って、例として、「AおよびBのうち少なくとも1つ(at least one of A and B)」(あるいは、同義の「AまたはBのうち少なくとも1つ(at least one of A or B)」、あるいは、同義の「Aおよび/またはBのうち少なくとも1つ(at least one of A and/or B)」)は、一実施例において、少なくとも1つのA、任意に1つ以上のAを含み、Bは設けられない(任意にB以外の要素を含む)ことを示し、別例において、少なくとも1つのB、任意に1つ以上のBを含み、Aは設けられない(任意にA以外の要素を含む)ことを示し、更なる別例において、少なくとも1つのA、任意に1つ以上のA、および少なくとも1つのB、任意に1つ以上のBを含む(任意に他の要素を含む)こと等を示す。
【0127】
特許請求の範囲においては、上記明細書と同様に、「comprising」、「including」、「carrying」、「having」、「containing」、「involving」、「holding」等の全ての移行句は、無制限、すなわち含むがこれらに限定されるものではないことを示すものといえる。移行句「consisting of」、および「consisting essentially of」のみは、米国特許庁の米国特許審査基準セクション2111.03に示すように、それぞれ限定的、または半限定的な移行句である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主チャネルと、
第1の流体を含む第1の分岐チャネルと、
第2の流体を含む第2の分岐チャネルであって、前記第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは、交差部にて接合し且つ主チャネルに連通する、前記第2の分岐チャネルと、
第1の分岐チャネルの一部と主チャネルの一部との間に配置された通気弁とを備える装置を提供する工程と、
通気弁を駆動する工程と、
第1の流体および第2の流体を交差部に略同時に流れ込ませる工程と、
混合流体を生成すべく第1の流体および第2の流体の少なくとも一部を混合する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
第1の流体を含む上流のチャネル部と、
第1の流体とは異なる第2の流体を含む下流のチャネル部と、
上流のチャネル部と下流のチャネル部との間に配置される通気弁とを備える装置を提供する工程と、
第1の流体および第2の流体が相互に繋がりをもった状態で、第1の流体を実質的に流すことなく第2の流体を下流のチャネル部に流す工程と、
第2の流体を流した後に第1の流体を上流のチャネル部から下流のチャネル部に流す工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
入口と、
出口と、
入口と連通する上流のチャネル部と、
出口と連通する下流のチャネル部と、
下流のチャネル部と上流のチャネル部との間に配置される通気弁と、
上流のチャネル部および下流のチャネル部のうち少なくとも一方に収容される第1の流体とを備え、装置は、初めて使用されるに先立って少なくとも1時間にわたって装置に第1の流体を収容するようにシールされ、構成されることを特徴とする装置。
【請求項4】
入口と、
出口と、
入口と出口との間の主チャネルと、
入口と出口との間の主チャネルに沿って直列に配置された第1の通気弁および第2の通気弁とを備えることを特徴とする装置。
【請求項5】
前記チャネルの少なくとも1つはマイクロ流体チャネルであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項6】
前記第1の流体および第2の流体のうち少なくともいずれか一方を流す工程は、第1の流体および第2の流体のうち少なくともいずれか一方を含む1つ以上のチャネルに圧力勾配を付与する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項7】
前記第1の流体および第2の流体のうち少なくともいずれか一方を流す工程は、第1の流体および第2の流体のうち少なくともいずれか一方を含むチャネルの一端に真空を付与する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項8】
前記第1の流体は液体であることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項9】
前記第1の流体は気体であることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項10】
前記第2の流体は液体であることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項11】
前記第2の流体は気体であることを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項12】
前記流体の少なくとも1つは全血であることを特徴とする請求項1乃至11のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項13】
前記装置は、
第1の分岐チャネルを含む上流のチャネル部と、
第2の分岐チャネルを含む上流のチャネル部とを備え、
第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは交差部にて接合するとともに、下流のチャネル部に連通することを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項14】
前記第1の流体および第2の流体を略同時に交差部に流し込む工程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至13のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項15】
混合流体を形成するために、前記第1の流体および第2の流体の少なくとも一部を混合する工程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至14のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項16】
前記第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは、第1の流体が収容される間に主チャネルと連通することを特徴とする請求項1乃至15のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項17】
前記装置は第1の分岐チャネルに収容される第2の流体を含むことを特徴とする請求項1乃至16のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項18】
前記第1の流体は金属溶液であることを特徴とする請求項1乃至17のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項19】
前記第2の流体は還元剤であることを特徴とする請求項1乃至18のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項20】
前記チャネルに含まれる流体は、最初に使用されるに先立って少なくとも1時間にわたってチャネルに収容されることを特徴とする請求項1乃至19のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項21】
前記第1の流体および第2の流体は、第1の流体および第2の流体の両者と混合不能な第3の流体によって分離されることを特徴とする請求項1乃至20のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項22】
前記弁は、第1の流体と第2の流体との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至21のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項23】
前記弁は、第1の流体と第3の流体との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至22のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項24】
前記弁は第1の分岐チャネルの一部に配置されることを特徴とする請求項1乃至23のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項25】
前記弁は第2の分岐チャネルの一部に配置されることを特徴とする請求項1乃至24のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項26】
前記第1の流体および第2の流体は略異なる粘性を有することを特徴とする請求項1乃至25のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項27】
前記混合された第1の流体および第2の流体を、第1の流体および第2の流体の混合工程の10分以内に反応領域に接触させる工程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至26のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項28】
前記上流のチャネル部は、第1の分岐チャネルであり、前記装置は、第2の分岐チャネルを更に備え、前記第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルは交差部にて接合し、且つ下流のチャネル部に連通することを特徴とする請求項1乃至27のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項29】
前記第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルの交差部は、混合領域を含み、同混合領域は、第1の分岐チャネルまたは第2の分岐チャネルのいずれかより大きな横断面積を有することを特徴とする請求項1乃至28のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項30】
前記混合領域は通気弁を含むことを特徴とする請求項1乃至29のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項31】
前記第1の流体および第2の流体の少なくとも一部を混合する工程は、乱流混合工程を含むことを特徴とする請求項1乃至30のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項32】
前記主チャネルは拡散によって第1の流体および第2の流体を完全に混合できるように十分に長いことを特徴とする請求項1乃至31のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項33】
前記交差部の下流の反応領域に配置される結合パートナーを更に含むことを特徴とする請求項1乃至32のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項34】
前記流体の少なくとも1つは、化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方のための試薬を含むことを特徴とする請求項1乃至33のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項35】
前記第1の流体は、化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方のための第1の試薬を含み、第2の流体は、化学的反応および生体反応のうち少なくともいずれか一方のための、第1の試薬とは異なる第2の試薬を含むことを特徴とする請求項1乃至34のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項36】
前記1つ以上の試薬は、異種混合の親和性反応に関与することを特徴とする請求項1乃至35のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項37】
前記第1の流体を実質的に流すことなく第2の流体を下流のチャネル部にて流す工程は、通気弁が開放されるように通気弁を始動させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至36のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項38】
前記第2の流体を流した後に第1の流体を上流のチャネル部から下流のチャネル部に流す工程は、通気弁が閉鎖されるように通気弁を始動させる工程を含むことを特徴とする請求項1乃至37のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項39】
通気弁が開放されるように通気弁を始動させることによって通気弁に隣接するチャネルに気体のセグメントを導入する工程を更に含むことを特徴とする請求項1乃至38のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項40】
前記チャネルへ気体のセグメントを導入する工程は、チャネルに含まれる流体を、気体のセグメントによって分離される第1の部分および第2の部分に分割する工程を含むことを特徴とする請求項1乃至39のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項41】
第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルの少なくとも1つの横断面積は、等圧が第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルに付与される場合に、第1の流体および第2の流体が交差部に略同時に流れ込むように選択されることを特徴とする請求項1乃至40のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項42】
前記第1の流体および第2の流体を実質的に流すことなく通気弁を始動させるに先だって主チャネルに第3の流体を流す工程を含むことを特徴とする請求項1乃至41のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
略一定の圧力が主チャネルの出口に付与され、第1の流体、第2の流体、および第3の流体の流れのタイミングは、通気弁の始動のタイミングによって定まることを特徴とする請求項1乃至42のうちいずれか一項に記載の装置または方法。
【請求項44】
前記第1の流体および第2の流体の少なくとも一部を所定量混合させるべく通気弁を始動させた後に所定の時間待機する工程と、第1の分岐チャネルおよび第2の分岐チャネルにそれぞれ残留する第1の流体および第2の流体の流れを止めるべく通気弁を続いて開放する工程とを含み、これにより所定の混合量の第1の流体および第2の流体を主チャネルに流すことを特徴とする請求項1乃至43のうちいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図3A】
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【図3D】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−512438(P2013−512438A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541187(P2012−541187)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/057969
【国際公開番号】WO2011/066361
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512134923)オプコ ダイアグノスティックス エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】OPKO DIAGNOSTICS,LLC
【Fターム(参考)】