説明

マイクロ流体デバイス

本発明は、マイクロ流体デバイスであって、第1の膜および第2の膜の積層物を含み、1つのまたは各々の膜は、膜が合わせてその間の流体封じ込めのための密閉体積(19)を画定するように一体的に熱成形された構造を含み、各々の膜自体は、比較的高い軟化温度の熱可塑性ポリマー材料(14,17)、およびそれに対して、比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料(15,16)の積層物を含み、各膜のそれぞれの比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料は、第1の膜と第2の膜とを一緒に貼り付けるために一緒に溶ける、マイクロ流体デバイスに関する。本発明は、マイクロ流体デバイスを製造する方法にさらに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体デバイスおよびそのデバイスを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ流体デバイスは、マイクロスケール上の流体サンプルを操作および分析するためのデバイスである。そのようなデバイスの特有な特徴は、分析または試験、あるいはデバイス上で何らかの方法において動作するために流体を保持および運ぶためのマイクロスケール体積(多くの場合「マイクロ構造」と呼ばれる)の存在である。そのようなマイクロスケール上で動作することによって得られる利点は周知である。疑義を回避するため、本明細書中に使用される「体積」および「マイクロ構造」の用語は、マイクロ流体デバイス内の流体の流れを、例えば、収容、操作、制御、または誘導するために使用されてもよい任意の構造を指すために使用される。そのようなマイクロ構造の例としては、チャネル、反応チャンバ、ハイブリダイゼーションチャンバ、ポンプおよびバルブが挙げられる。
【0003】
特定の形のマイクロ流体デバイスは、実質的に平面デバイス形式を利用する。そのような平面マイクロ流体デバイス形式に基づく統合システムの発展は、数十年の間進行中である。この統合システムは、分子生物学への研究の自動化および診断システムの発展のために使用されてもよい。化学および生化学分析に対する重要な画期的な出来事は、A.Manzらによるマイクロ総合分析システム(Sensors and Actuators B,1990,1,244−248)の概念の公表であった。この成果は、分析動作の全ての必要なステップを単一の平面の基板上に統合させる概念を導入した。このようにして、サンプル準備から分析までの全ての必要な処理ステップは、最小限の人間の介入を用いて行われ得る。例えば、実験室全体の設備を単一のデバイス上へと小型化することができ、それによって、かなりのコストおよび時間を節約できる。
【0004】
マイクロ流体デバイスは、一連の処理ステップを含む様々な材料から製造されてもよい。ガラスおよびシリコンのような材料は、通常、半導体処理技術を用いて構造化される。あるいは、ポリマー基板がマイクロ流体デバイスを製造するために使用される。これらを、例えば、レーザマイクロマシニング、熱エンボス加工、熱成形および射出成形のような幅広い技術を用いて構造化することができる。ローコストな大量製造を可能にするため、ポリマー基板は、ガラスまたはシリコンよりも多数のシステムにおいて好まれている。ポリマー基板からのマイクロ流体デバイスの製造のための設計の一例は、多層積層ポリイミド膜が粘着性を有さない性質において構造化および結合される、米国特許番号第5,932,799号で示される。この特許は、膜が積層物を形成するために結合できるようにSnのような無機結合エンハンサを有する芳香族ポリイミドからなるポリイミドの発展を扱う米国特許番号第5,525,405号を参照する。
【0005】
マイクロ流体工学の歴史の中の重要な画期的な出来事は、米国特許番号第6,843,262号に開示されるように、エラストマー材料、ポリジメチルシロキサン(PDMS)からなるデバイス全体の発展であった。これらの発展は、ほとんど、PDMS内にチャネルを生成するためにマイクロ加工された正のフィーチャにわたってエラストマー樹脂を流すことに基づいている。
【0006】
マイクロ流体デバイスのための様々な機能的要求は、構造的、光学的および化学的性質の観点から要約できる。例えば、蛍光ベースの検出スキームを使用する検出システムにおける使用のために、デバイスが形成される材料は、光学的透明度および最小自己蛍光を有するべきである。さらに、商業用に可能であるためには、そのようなデバイスは、正確な自動化された大量生産技術に対して敏感であるべきである。熱成形のような技術は、 この点においては有用であり、幅広い利用可能な熱成形可能ポリマー材料は、特定の機能的要件を達成することをより簡単にする。しかしながら、そのようなデバイス全てに対して、デバイスをマイクロスケールの流体封じ込めフィーチャを用いて正確に構造化できる能力を有する必要があることは、一般的な要件である。そのようなマイクロ構造のサイズおよび形は、これらのデバイスの正確な性能および任意の偏向への鍵であり、比較的小さな公差によって正確に機能することを損ない、または機能を全体的に妨げることもある。マイクロ構造形成に続く製造における熱成形または熱結合ステップの使用は、多くの場合必要条件であり、それらは全て、非常に簡単に、熱成形されたマイクロ構造の定義の損失の原因となる。
【0007】
さらに、膜は、一度構造化されると、経時的に安定する必要があり、商業市場で容認可能な寿命を提供するために、ポリマーから浸出、試薬の吸着およびガスの透過なしに試薬が構造物内に格納されることを可能とする必要がある。デバイス内で行われる反応が影響されないように、例えば、チャネルまたは反応チャンバの中への最小限のたんぱく質および核酸吸着を保証するように、膜が生体適合性材料から形成されることも望ましい。
【0008】
このような問題を緩和するために探求することが本発明の目的である。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様によると、本発明は、マイクロ流体デバイスであって、第1の膜および第2の膜の積層物を含み、1つのまたは各々の膜は、膜が合わせてその間の流体封じ込めのための密閉体積を画定するように熱成形された構造を含み、各々の膜自体は、比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料との比較的高い軟化温度の熱可塑性ポリマー材料の積層物を含み、膜のそれぞれの比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料は、第1の膜と第2の膜とを一緒に貼り付けるように一緒に溶ける、マイクロ流体デバイスを提供する。したがって、本発明が、流体封じ込め体積の変形なしに組み立てることが簡単および経済的である、正確にサイズ決定および形作られたマイクロ流体構造を含むマイクロ流体デバイスを提供することが分かる。
【0010】
第1の膜および第2の膜のそれぞれが同時押出膜を含むことが好ましい。比較的高い軟化温度および比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料の同時押出膜からのマイクロ流体デバイスの形成は、大量生産することが簡単である比較的高い構造統合性をマイクロ流体デバイスに提供する。
【0011】
第1の膜および第2の膜の比較的低い溶融温度材料の各々は、同じ材料を含んでもよい。これは、流体封じ込め体積が一様の内面を有することを確実にする。あるいは、第1の膜および第2の膜の比較的低い溶融温度材料の各々は、流体封じ込め体積に変化する内面特性を提供するために異なる材料を含み得る。
【0012】
1つのまたは各々の膜は、比較的高い軟化温度材料上に配置された構造層をさらに含む。好ましくは、構造層は、比較的高い軟化温度材料より高い溶融温度を有する材料を含む。構造層は、デバイス内の他の材料に対してサポートを提供し、ここでは、膜は同時押出され、同時押出中にそれらを平らに保つことに役立つ。これは、比較的高い軟化温度材料が形成されるツールに貼りつくことを防ぐことによって流体封じ込め体積構造の熱成形中に援助することもでき、光学的透明度を影響し得るツールにおける欠陥へと溶けることも阻止する。
【0013】
1つのまたは各々の膜は、ガスバリア層をさらに含み得る。調整されたガス透過率を提供するために1つ以上の層が組み合わされてもよい。ガスバリア材料の例としては、EVOHおよびポリアミドがある。
【0014】
1つの好ましい実施形態では、デバイスは、流体封じ込め体積内の流体と動作接続されるように配置された外部にエネルギー供給可能な電極を含んでもよく、流体封じ込め体積は、電気泳動容器を含む。好ましくは、デバイスは、反応混合物保持容器をさらに含む。
【0015】
1つまたは両方の膜が光学的に透明であり、比較的低い溶融温度材料が生体適合性の、生理学的に不活性な材料を含むことが好ましい。
【0016】
1つのまたは各々膜は、予め包装された試薬の寿命および性能を強化するために液体バリア層を含んでもよい。調整された水分透過率を提供するために1つ以上の層が組み合わされても良い。COCは、液体バリアの一例である。
【0017】
第1の膜および/または第2の膜の比較的高い軟化温度材料は、好ましくは、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、あるいはそれらの混合物またはコポリマーを含む。比較的低い溶融温度材料は、好ましくは、ポリエチレンを含む。
【0018】
第2の態様によると、本発明は、マイクロ流体デバイスを製造する方法であって、デバイスは、第1の膜および第2の膜の積層物を含み、1つのまたは各々の膜は、膜が合わせてその間の流体封じ込めのための密閉体積を画定するように熱成形された構造を含み、第1の膜および第2の膜を提供するステップであって、各々の膜自体は、比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料との比較的高い軟化温度の熱可塑性ポリマー材料の積層物を含む、ステップと、比較的低い溶融温度材料を一緒に溶かすことによって第1の膜と第2の膜とを一緒に組み合わせるステップとによって特徴付けられ、溶かすステップは、比較的高い軟化温度の熱可塑性ポリマー材料の軟化温度より低い温度で行われている、マイクロ流体デバイスを製造する方法を提供する。したがって、方法は、熱成形された流体封じ込め構造の整合性が膜の貼り付けのためのプロセスによって影響されないことを保証する。
【0019】
方法が、流体封じ込め構造を熱成形して膜が一緒に溶ける前に、比較的高い軟化温度および比較的低い溶融温度材料の同時押出によって第1の膜および第2の膜を形成するステップを含むことが好ましい。
【0020】
方法は、支持層、ガスバリア層または液体バリア層のような各々の膜を用いて1つ以上の更なる材料を同時押出するステップをさらに含んでもよい。
【0021】
方法は、反応体積内の流体と動作接続されるように配置された外部にエネルギー供給可能な電極を形成するステップをさらに含んでもよい。
【0022】
第1の熱可塑性膜および第2の熱可塑性膜は、1つの側面に熱シール層、他方には支持層を有して、同時押出によって形成されてもよい。方法は、支持層がツール表面と接触して、ツール内に(真空)形成することによって熱成形された反応体積を形成するステップをさらに含む。反応体積形成ステップは、好ましくは、支持層の溶融温度より低い温度で行われる熱成形ステップである。
【0023】
第1の膜および第2の膜は、好ましくは、ポリエチレンを有する環状オレフィンコポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド(PA)、およびそれらの混合物またはコポリマーの同時押出によって形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明を、一例として、以下の図面を参照して以下に説明する。
【図1】本発明による膜の第1の実施形態を示す。
【図2】本発明による膜の第2の実施形態を示す。
【図3】本発明による膜の第3の実施形態を示す。
【図4】図3の膜の写真である。
【図5】ヒーターを有する図3の膜を示す。
【図6】本発明による膜の第4の実施形態を示す。
【図7】本発明による膜の第5の実施形態を示す。
【図8】第1の位置における本発明による膜の第6の実施形態を示す。
【図9】第2の位置における図8の膜を示す。
【図10a】本発明による膜の第7の実施形態の平面図写真である。
【図10b】図10aの膜のa−aに沿った断面である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示される膜は、3つの層1、2および3を含む同時押出ユニットである。第1の層1は、DEX Plastics社(ヘールレン、オランダ)によるExact0210というポリエチレンから作られる。第2の層2は、Ticona社によるTopazというCOCの混合物から作られる。混合物は、70%のTopaz6013および30%のTopaz8007である。第3の層3は、Basell社(ホーフトドルプ、オランダ)によるHP420Mというポリプロピレンから作られる。押し出しは、それらのための任意の公知のプロセスによって行われてもよい。
【0026】
第2の層2は、2つの外層1および3の間に挟まれ、押し出しによって薄い層として形成され得る。外層1および3は、膜がより頑強になることを可能とし、薄い層2の破損を回避する。膜は、3つの層を同時押出しすることによって作られた。押出機は、COCの中心コアが130μmの厚さを有する、160μmの膜全体の厚さを得るようにプログラミングされていた。
【0027】
同時押出しの後、膜は、1つ以上のマイクロ構造(図示せず)を提供するために熱成形されてもよい。マイクロ構造は、チャネル、反応チャンバ、ハイブリダイゼーションチャンバ、ポンプおよびバルブのような従来のマイクロ構造であってもよく、あるいは、本発明の膜との使用のために特別に作り出されてもよい。任意の特定の膜のために選択されるマイクロ構造は、その膜の用途による。
【0028】
図1の膜の一用途は、DNA分析における使用のためにマイクロ流体デバイスを製造するためである。そのような用途に対して、膜は、いずれかの一端にバッファチャンバを有するチャネルから成るマイクロ構造を含んでもよい。バッファチャンバ内には、電気泳動ステップを用いてDNAを分けるために使用される平面電極がある。電極は、ポリエチレン層(溶融シール層)上にスクリーン印刷された炭素電極である。本発明の文脈においては、プラチナおよび銀の電極が使用されてもよく、例えば、Ag/AgClを基準電極として、かつPtを対電極として使用してもよい。
【0029】
電極は、1つのポイントでは外面的に露出されて別のポイントでは内面的に露出される一方、カプセルに包まれなければならない。電極を溶融シール層に適用することによって、電極が一側面で内面的に露出されるように溶融シール層をチャネルを含む別の層またはユニットに積層することが可能になる。次いで、電極が外面的にも露出されるように、穴が電極のもう一方の側面の溶融シール層を介してあけられてもよい。スクリーン印刷された炭素電極は、マイクロ流体デバイスを形成するための膜の積層中における熱および圧力の付与の際に簡単に破壊し得るが、これは、適切な厚さのポリエチレンを有する同時押出膜を使用することによって、かつ積層のための適切な圧力、温度、および時間を使用することによって回避することができる。これらの組み合わされた変数は、ポリエチレンが十分に流れてスクリーン印刷された電極を破壊しないことを保証する一方、膜が積層されることを可能にする。
【0030】
図2は、多層デバイスに電極を挿入する概念を説明するために使用されている。デバイスは、ポリプロピレン層4、COC層5、ポリエチレン層6、ポリエチレン層7、COC層8およびポリプロピレン層9を含む。領域10は、電極へのアクセスを可能にする穴であり、それによって、電極は、外部にアクセス可能である。領域11は、バッファチャンバであるか、または、電圧が付与される何らかの内部ルーメンであり、最後に、領域12は電極そのものである。電極は、印刷によって適用されてもよく、印刷可能な導電性材料からなってもよい。そのような材料は、炭素、黒鉛および金属ベースのインクである。
【0031】
図1の膜の別の用途は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のような核酸増幅反応における使用のためのマイクロ流体デバイスを製造するためである。そのような用途に対して、膜は、1.5μl反応チャンバから成るマイクロ構造を含み得る。さらに、良好な積層を維持する一方、同時押出ポリマーの特定な設計は、PCRの高温条件に対して安定していた。さらに、薄膜は、反応をできる限り早く行うために非常に重要である急速な熱伝達を可能にする。膜性質は、積層物がわずかに可撓性であることを可能にし、反応チャンバとヒーターとの間に非常にぴったりの適合度を許し、それによって、急速な熱伝達を容易にする。最後に、バルク層としてのCOCの選択およびその優れた光学的性質は、通常さらに大きな体積に採用されるリアルタイムPCR技術を用いた定量化を可能にする。PCRに使用される試薬が特定のポリマーを吸収することができ、したがって、反応収量を改善し、LiuらによるLab on Chip,2006,769−775で説明されたように、良好な反応の達成もするために表面特性を制御することが重要であることに留意されたい。
【0032】
PCR反応は、あらゆる数の方法を用いて熱サイクルによって行われてもよい。これらは、熱電ヒーター、温度変化する水槽、薄膜加熱要素、赤外線ベースの過熱、連続的な流れの設計および熱風設計を含むが、それらに限定されない。加熱の方法は、正確な適用に適合するように変更されてもよいが、多くの場合、設計の基準は、急速な熱伝達を可能にすることである。
【0033】
PCR反応チャンバは、2つのチャネルを有する半球状の雌ツールを使用して熱成形された。1つのチャネルは、予混合PCR試薬を反応チャンバに載せるために使用された。もう一方のチャネルは、通気孔として使用された。次いで、テープは、熱サイクルされ、その後、PCR試薬は引き抜かれてPCRアンプリコンの分析のために電気泳動ゲル上に流された。
【0034】
図3は、第3の実施形態を示し、ここでは、デバイスは、ポリプロピレン層コアポリマー層14(本実施形態ではCOC)、ポリエチレン溶融シール層15および16、形成されたチャネルおよび反応チャンバを有するバルク層17、ポリプロピレン層18、および最後に、半球状の反応チャンバ19を含む。図4は、同時押出膜に形成された2つのチャネルおよび装荷チャンバを含む図3の半球状の反応チャンバの写真である。図5は、熱サイクルを行うために使用されるヒーターHを有するPCR反応チャンバ19を示す。
【0035】
図6に示される膜は、5つの層20、21、22、23および24を含む同時押出ユニットである。第1の層20の厚さは15μmであり、DEX Plastics社(ヘールレン、オランダ)によるExact0210というポリエチレンから作られる。第2の層21の厚さは100μmであり、図1の実施形態と同じように、TopazCOCという同じCOCの混合物から作られる。第3の層22は、80%のExact0210および20%のBynel 47E710というDupont社による無水マレイン酸グラフトポリエチレンの混合物から作られる。第4の層23の厚さは、15μmであり、Mutsui社によるエチレンビニルアルコール(EVOH)KurrarayLCF101から作られる。第5の層24の厚さは、15μmであり、Arkema社による無水マレイン酸グラフとポリプロピレン18707から作られる。
【0036】
膜は、5つの層を同時押出しすることによって作られた。層23は、ガスバリアの働きをする。層22は、層21への連結層23への連結層の働きをする。
【0037】
図7に示される膜は、さらに大きいより複雑な流体制御構造を形成するために一緒に積層された多数の個別の同時押出ユニットを含む。コアエラストマーユニット25は、3つの層26、27および28を含む。2つの外層26および28の両方は、DEX Plastomers社(ヘールレン、オランダ)によるExact0210というポリエチレンから作られる。中央層27は、Basell社(ホーフトドルプ、オランダ)によるAdflex X100Fというエラストマーから作られる。3つの押出線は、3.75μmの厚さの外層26および28を有する、約30μmの厚さの中央層27を生成するために適切な速度で走行する。
【0038】
各々がExact0210というポリエチレンの2つの層32と33との間で同時押出されたCOCの層31からなる2つのユニット29および30は、コアエラストマーユニット25のいずれかの側面に積層される。各ユニット29および30は、ユニット29および30全体を通って延在するバイアル34の形を有する1つ以上のマイクロ構造を含む。
【0039】
各々がExact0210というポリエチレンの層38とポリプロピレンの層39との間に同時押出されたCOCの層37からなる2つのさらなるユニット35および36は、2つのユニット29および30のいずれかの側面に積層され、最も外側のユニットを形成する。層31および37は、通常、約130μmの厚さであり、層32、33、38および39の各々は、15μmの厚さである。
【0040】
3つのユニット29、35および36は、ボイド(空隙、空間)領域40およびチャネル41の形で多数のマイクロ構造をユニットの間に提供するために、積層の前に熱成形によって形づくられる。
【0041】
バイアル34、ボイド領域40およびチャネル41の間およびそれらに直接隣接する領域以外でユニットが表面全体にわたって結合されるような方法において、積層が行われる。外側ユニット35および20は、各外側ユニットのポリエチレン層38が内側ユニット29および30の隣接するポリエチレン層32と結合するように、それらの溶融温度より上に上昇される。コアエラストマーユニット25は、実質的に堅いままであり、したがって、エラストマーユニット25上のポリエチレン層26および28がエラストマーユニット25に隣接するマイクロ構造18、23および24に流れ込まないように、その統合性を維持する。
【0042】
エラストマーユニット25のいずれかの側面に圧力または真空を付与することによって、膜を通る流体の流れを制御することができ、例えば、エラストマーユニット25の上方への動きは(負圧によって)、下方チャネル41内の流体がバイアル34を通り抜けることを可能にし、それによって、バルブの働きをする。
【0043】
これは、Basell社(ホーフトドルプ、オランダ)によるAdflex X100Fというエラストマーから作られる層42を含む、図8および図9に示される膜によって図示される。さらに、エラストマー層の表面の分子密度は、変化してもよく、これは、反応を制御して信号対雑音比を上げるための用途を有する。
【0044】
エラストマー層42の1つの側面には、空隙領域43がある。エラストマー層42のもう一方の側面には、表面結合反応を有する被分析生体分子を含有するT型チャネル44がある。真空が空隙領域43に付与された場合、エラストマー層42は、図8に示されるように空隙領域43へと変形する。これは、表面上の生体分子の密度を変化させる。これは、核酸のハイブリダイゼーションを制御するか、あるいは、抗原抗体相互作用またはビオチン−ストレプトアビジン複合体形成を制御するために使用されてもよい。これは、さらに、調査中の領域を減少させて信号を集中させると同時に信号対雑音比を上げることができる。圧力が空隙領域43に付与された場合、エラストマー層42は、T型チャネル44へと変形する。これは、溶液内でのより良い生体分子の結合を有するさらに大きな面積という結果となる。
【0045】
最後に、図10aは、本発明によるデバイスの平面図であり、a−aは、図10bで示されるように断面の位置を表す。デバイスは、マイクロ流体チャネルb(ハッチ領域)、可撓性ポリマーフィルムc、計量チャンバdおよび空気圧制御チャンバeを含む。図10bの円が単に顕微鏡検査準備で生成される空隙であることが指摘される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ流体デバイスであって、
第1の膜および第2の膜の積層物を含み、1つのまたは各々の膜は、前記膜が合わせてその間の流体封じ込めのための密閉体積を画定するように一体的に熱成形された構造を含み、
各々の膜自体は、比較的高い軟化温度の熱可塑性ポリマー材料、およびそれに対して、比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料の積層物を含み、各々の膜の前記比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料は、前記第1の膜と前記第2の膜とを一緒に貼り付けるように一緒に溶ける、マイクロ流体デバイス。
【請求項2】
前記第1の膜および前記第2の膜は、それぞれ、同時押出膜である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1の膜または前記第2の膜は、反応体積内の流体と動作接続されるように配置された外部にエネルギー供給可能(energisable)な電極を含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
全ての層の溶融温度は、PCR熱サイクル反応プロセスに使用される上部温度に耐えることができ、前記比較的高い溶融温度層は、これらの状況下で実質的に固定したままである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
各々の第1の比較的高い溶融温度材料は、10〜50℃の温度で実質的に固定している、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
1つまたは両方の膜は、光学的に透明な材料を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記熱シール層材料は、生体適合性の、生理学的に不活性な材料を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記熱シール層材料は、一体的に形成された反応体積の内面の少なくとも一部を覆う、請求項1〜7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記熱シール層材料は、前記一体的に形成された反応体積の前記内面全体を実質的に覆う、請求項1〜7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1の膜および前記第2の膜の前記比較的低い融点材料は、同じ材料を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の膜および前記第2の膜の前記比較的低い融点材料は、異なる材料を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記一体的に形成された反応容器は、電気泳動容器を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
反応混合物収容器をさらに含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記第1の膜および/または前記第2の膜の前記比較的高い融点材料上に配置された構造層をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記構造層は、前記比較的高い融点材料より高い溶融温度を有する材料を含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
ガスバリア層をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
液体バリア層をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第1の膜および/または前記第2の膜の前記比較的高い融点材料は、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、あるいはそれらの混合物またはコポリマーを含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記溶融シール層は、ポリエチレンを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記熱シール層は、コロナ処理されたポリエチレンを含む、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
1つまたは両方の膜は、エラストマー層を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記エラストマー層は、エラストマーユニットを形成するために2つの溶融シール層の間に挟まれている、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記エラストマーユニットは、2つの同時押出ユニットの間に挟まれ、前記同時押出ユニットは、2つの溶融シール層の間に挟まれたバルク層を含む、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
1つまたは両方の膜は、前記エラストマー層またはユニットのいずれかの側面に空隙領域またはチャネルを含む、請求項21〜23のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項25】
マイクロ流体デバイスを製造する方法であって、前記デバイスは、
第1の膜および第2の膜の積層物を含み、1つのまたは各々の膜は、前記膜が合わせてその間の流体封じ込めのための密閉体積を画定するように熱成形された構造を含み、
第1の膜および第2の膜を提供するステップであって、各々の膜自体は、比較的高い軟化温度の熱可塑性ポリマー材料、およびそれに対して、比較的低い溶融温度の熱可塑性ポリマー材料の積層物を含む、ステップと、
前記比較的低い溶融温度材料を一緒に溶かすことによって前記第1の膜と前記第2の膜とを一緒に組み合わせるステップとによって特徴付けられ、
前記溶かすステップは、前記比較的高い軟化温度の熱可塑性ポリマー材料の前記軟化温度より低い温度で行われている、マイクロ流体デバイスを製造する方法。
【請求項26】
前記第1の熱可塑性膜および前記第2の熱可塑性膜は、前記反応容器の形成の前に、比較的高い軟化点の熱可塑性ポリマー材料および比較的低い融点の熱可塑性ポリマー材料の同時押出によって形成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
反応体積内の流体と動作接続されるように配置された外部にエネルギー供給可能な電極を形成するステップをさらに含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記第1熱可塑性膜のおよび前記第2の熱可塑性膜は、1つの側面に熱シール層、他方には支持層を有して、同時押出によって形成され、前記方法は、前記支持層がツール表面と接触して、ツール内に形成することによって熱成形された反応体積を形成するステップをさらに含む、請求項26または27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記反応体積形成ステップは、前記支持層の溶融温度より低い温度で行われる熱成形ステップである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の膜および前記第2の膜は、ポリエチレンを有する環状オレフィンコポリマーの同時押出によって形成される、請求項26〜29のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a−10b】
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【公表番号】特表2010−515924(P2010−515924A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545993(P2009−545993)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000143
【国際公開番号】WO2008/087405
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(507136073)ラブ901 リミテッド (2)
【Fターム(参考)】